JP2004336949A - モータ駆動制御方法及びモータ駆動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブラシレスモータのトルクリップルを、モータ駆動中に複雑な演算を行うことなく、しかも、モータによらず確実に精度よく低減するようにし、とくに、この種のブラシレスモータを量産する場合のトルクリップルの低減に好適な構成を提供する。
【解決手段】ブラシレスモータからなる制御対象モータ1のトルクリップル補償前のトルク出力を予め測定し、トルク指令値とトルクリップル補償前のトルク出力の測定結果との比から、モータ1の固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部14に保持し、モータ1のロータ位置の検出に基づき、モータ1の回転にしたがって補償記憶部14の各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出してトルク指令値に乗算し、モータ1のトルクリップルを低減する。
【選択図】 図1
【解決手段】ブラシレスモータからなる制御対象モータ1のトルクリップル補償前のトルク出力を予め測定し、トルク指令値とトルクリップル補償前のトルク出力の測定結果との比から、モータ1の固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部14に保持し、モータ1のロータ位置の検出に基づき、モータ1の回転にしたがって補償記憶部14の各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出してトルク指令値に乗算し、モータ1のトルクリップルを低減する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ブラシレスのサーボモータ又はブラシレスDCモータ等のブラシレスモータからなる制御対象モータのトルクリップルを低減するモータ駆動制御方法及びモータ駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブラシレスDCサーボモータ(3相永久磁石同期モータ)に代表されるブラシレスのサーボモータやブラシレスDCモータは、ブラシの保守が不要であり、制御精度が要求される産業用、民生用の種々の機器に用いられる。
【0003】
そして、これらのモータは、ロータ(回転子)位置を検出するため、電磁式のレゾルバや光学式、磁気式のインクリメンタルエンコーダ等の位置センサが設けられ、これらの位置センサのロータ位置の検出に基づき、フィードバックループの電流制御により、ステータ側の電機子巻線(固定子巻線)の駆動電流(3相交流電流)が制御されて駆動される。
【0004】
この場合、制御系の簡素化等を図るため、駆動電流(電機子電流)の3相座標系の検出信号は、モータ回転に同期して回転する直交座標系の2信号、すなわち、d−q座標系の界磁磁束方向のd軸成分、トルク出力のq軸成分の信号に座標変換され、この2軸成分の信号のフィードバック制御で制御対象モータが電流制御で駆動される(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
このd−q座標系の駆動制御においては、位置センサのロータ位置の検出に基づく3相座標系からd−q座標系への変換により、3相駆動電流の検出信号がd軸成分、q軸成分に変換され、界磁磁束方向のd軸成分については、界磁磁束方向の指令値(通常、0又は負)との誤差が求められ、トルク出力のq軸成分については、トルク指令値との誤差が求められる。
【0006】
そして、両軸成分の誤差信号が再び3相座標系の信号に戻され、この3相座標系の信号により、3相インバータを駆動して前記の3相駆動電流が形成される。
【0007】
ところで、この3相駆動電流は120度通電、90度通電等と呼ばれるパルス通電の電流であり、理想的な正弦波電流にならないことから、モータ駆動中にトルクリップルが発生する。
【0008】
このトルクリップルを低減するため、従来、制御対象モータの駆動中に、そのロータの一回転(電気角1周期分)のトルク指令から、有限フーリエ級数の理論に基づく所定の演算によって2相分のオフセット電流を求め、その結果に基づいて、モータその駆動電流の検出値に加算されるトルクリップルの補正量(補償量)を求めてトルクリップルの補償を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、制御対象モータの駆動中に、前記の電機子電流に含まれる複数周波数の電流リップル成分から演算でトルクリップルの補償量を求め、この補償量をd軸、q軸の検出電流に加算してトルクリップルを低減することも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−186784号公報(第1−4頁、図1)
【特許文献2】
特開2001−54300号公報(第6−8頁、図3)
【非特許文献1】
杉本英彦編著「ACサーボシステムの理論と設計の実際」、第5版、電子総合出版社、1999年7月10日、p.86−98
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のように、制御対象モータの駆動中に、ロータの一回転のトルク指令から演算によってトルクリップルの補正量を求めたり、電機子電流に含まれる複数周波数の電流リップル成分から演算によってトルクリップルの補償量を求めたりして、トルクリップルを低減する場合は、モータ駆動中に複雑かつ負担の大きな演算を要し、構成が複雑化して高価になる等の問題がある。
【0012】
なお、演算を行う代わりに、制御対象モータの標準のトルク出力波形に基づき、この出力波形の逆位相のトルクリップル補償用の基準電流を求めておき、この基準電流をトルク指令値に基づく電流に加算してトルクリップルを打ち消すことが考えられるが、この種のブラシレスモータのトルクリップルは、一般にトルク出力の1〜2パーセント程度であって、モータ毎に異なる固有のリップルであるため、モータによっては、前記の逆位相のトルクリップル補償用の基準電流の加算により、却ってトルクリップルが増大する不都合があり、とくに、量産されるこの種のブラシレスモータ全てのトルクリップルを確実に低減することは困難である。
【0013】
本発明は、ブラシレスモータのトルクリップルを、モータ駆動中に複雑な演算を行うことなく、しかも、モータによらず、確実に精度よく低減するようにし、とくに、この種のブラシレスモータを量産する場合のトルクリップルの低減に好適な構成を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明のモータ駆動制御方法は、ブラシレスモータからなる制御対象モータのトルクリップル補償前のトルク出力を予め測定し、トルク指令値と前記トルクリップル補償前のトルク出力の測定結果との比から、前記制御対象モータの固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持し、前記制御対象モータのロータ位置の検出に基づき、前記制御対象モータの回転にしたがって前記補償記憶部の各回転角度の前記トルクリップル補償係数を読み出し、前記補償記憶部から読み出した前記トルクリップル補償係数を前記トルク指令値に乗算して前記制御対象モータのトルクリップルを低減することを特徴としている(請求項1)。
【0015】
この構成によれば、制御対象モータのトルク指令値と測定した実際のトルク出力とから、そのモータの各回転角度の固有のトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数が求められて補償記憶部に保持され、その後、制御対象モータの駆動中に、補償記憶部の各回転角度のトルクリップル補償係数がトルク指令値に乗算されることにより、トルク指令値が前記固有のトルクリップルに応じて可変調整される。
【0016】
そのため、モータ駆動中に複雑な演算をすることなく、制御対象モータの回転にしたがって補償記憶部から各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す簡単な構成で、制御対象モータによらず、そのモータの固有のトルクリップルが、確実に精度よく低減され、とくに、この種のブラシレスモータを量産する際のトルクリップルの低減に適用することにより、全てのモータのトルクリップルが確実に低減される。
【0017】
また、本発明のモータ駆動制御方法は、ブラシレスモータからなる制御対象モータのロータ位置の検出に基づいて前記制御対象モータの駆動電流をd−q座標系のd軸成分とq軸成分に変換し、トルク指令値と前記q軸成分の誤差信号により、前記駆動電流を前記トルク指令値に基づいてフィードバック制御するモータ駆動制御方法において、前記制御対象モータの各回転角度のトルクリップル補償前の前記q軸成分を予め測定し、前記トルク指令値と前記トルクリップル補償前の前記q軸成分の測定結果との比から、前記制御対象モータの固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持し、前記ロータ位置の検出に基づき、前記制御対象モータの回転にしたがって前記補償記憶部の各回転角度の前記トルクリップル補償係数を読み出し、前記補償記憶部から読み出した前記トルクリップル補償係数を前記トルク指令値に乗算して前記制御対象モータのトルクリップルを低減することを特徴としている(請求項2)。
【0018】
また、本発明のモータ駆動制御装置は、ブラシレスモータからなる制御対象モータのロータ位置を検出する位置センサと、前記ロータ位置の検出に基づいて前記モータの駆動電流をd−q座標系のd軸成分とq軸成分に変換し、トルク指令値と前記q軸成分の誤差信号により、前記駆動電流を前記トルク指令値に基づいてフィードバック制御するフィードバックループと、前記トルク指令値と予め測定した前記制御対象モータの各回転角度のトルクリップル補償前の前記q軸成分の測定結果との比から求めた前記制御対象モータの固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を保持し、前記ロータ位置の検出に基づき、前記制御対象モータの回転にしたがって前記トルクリップル補償係数が読み出される補償記憶部と、前記補償記憶部から読み出された前記トルクリップル補償係数を前記トルク指令値に乗算して前記制御対象モータのトルクリップルを低減する補償乗算部とを備えたことを特徴としている(請求項4)。
【0019】
これらの構成によれば、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分に座標変換してフィードバック制御する際に、制御対象モータのトルク指令値と、測定した実際のトルク出力としてのq軸成分とから、そのモータの各回転角度の固有のトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数が求められて補償記憶部に保持され、その後、制御対象モータの駆動中に、補償記憶部の各回転角度のトルクリップル補償係数がトルク指令値に乗算されることにより、トルク指令値が前記固有のトルクリップルに応じて可変調整される。
【0020】
そのため、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分(d軸成分、q軸軸成分)に座標変換してフィードバック制御する際に、モータ駆動中に複雑な演算をすることなく、制御対象モータのロータ位置に応じて補償記憶部から各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す簡単な構成で、制御対象モータによらず、そのモータの固有のトルクリップルが、確実に精度よく低減され、とくに、d−q座標系制御のこの種のブラシレスモータを量産する際のトルクリップルの低減に適用することにより、全てのモータのトルクリップルが確実に低減される。
【0021】
そして、補償記憶部が不揮発性の半導体メモリからなることが実用的である(請求項3、5)。
【0022】
【発明の実施の形態】
制御対象モータがACサーボモータの1つである3相ブラシレスDCサーボモータであって、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分に座標変換し、トルク制御に基づいて電流制御のフィードバック制御を行う場合に適用した本発明の一実施形態について、図1のモータ駆動制御装置のブロック図を参照して説明する。
【0023】
図1に示す制御対象モータとしてのブラシレスDCサーボモータ1は、駆動制御部2の3相PWMインバータ(出力部)3から各相の端子1u、1v、1wに、例えば120度通電で電圧Vua、Vva、Vwaの3相の駆動電流iua、iva、iwaが3相の電機子巻線に供給され、この供給に基づき、トルクが発生してモータ1のロータが回転する。
【0024】
このモータ1は、その回転軸1rに、例えばレゾルバからなる位置センサ4が取り付けられた後、機器・装置に組み込まれて負荷が実装される。
【0025】
つぎに、位置センサ4は、モータ1のロータの各1回転の交錯磁束の変化から各磁極位置を検出し、ロータの電気角変化に応じて振幅変化する2相の信号(三角関数波形の信号)を、ロータ位置の信号として発生し、この信号の位相差が、時々刻々のロータ位置の電気角の検出信号である。
【0026】
さらに、いわゆるソフトウエア処理でモータ1を駆動制御するため、演算処理が高速に行える、高速で処理能力の高いマイクロコンピュータ(MPU)を用いて、図1のインバータ3、位置信号処理器5を除く駆動制御部2の各分が形成される。
【0027】
そして、位置センサ4のロータ位置の電気角の検出信号が、位置信号処理器5に入力され、この処理器5によって、前記電気角(位相)θreのデジタルデータに変換され、このデータが三角関数発生器6に供給される。
【0028】
この発生器6は、電気角θreの正弦波、余弦波の関数値sin(θre)、cos(θre)を演算し、これらの関数値sin(θre)、cos(θre)を3相交流/d−qの座標変換器7及びd−q/3相交流の座標変換器8に供給する。
【0029】
一方、インバータ3からモータ1に供給される3相の駆動電流iua、iva、iwaのうちの2相の電流iua、ivaが電流検出器9u、9vによって検出され、電流iua、ivaの検出信号が座標変換器7に入力される。
【0030】
そして、座標変換器7は、三角関数の座標変換行列に関数値sin(θre)、cos(θre)を代入し、この代入後の変換行列を用いた座標変換の行列演算により、駆動電流iua,ivaの検出交流の信号と、これらの信号を用いて演算から求めた駆動電流iwaの信号とを、回転する直交座標系であるd−q座標系のd軸、この軸より90度進み位相のq軸の検出電流成分ida、iqaに変換する。
【0031】
このとき、d−q座標系にあっては、d軸がロータの各磁極によって発生する界磁磁束方向の軸であり、q軸がトルク出力の軸である。
【0032】
そして、検出電流成分ida、iqaは、減算器10d、10q、電流制御器11d、11q、及び座標変換器6、7、インバータ3、電流検出器9u、9vが形成するd−q座標系のサーボループ12の前記減算器10d、10qに、フィードバック入力され、減算器10d、10qはd軸、q軸の電流指令値i*da、i*qaから検出電流成分ida、iqaを減算し、d軸、q軸の制御偏差を電流制御器11d、11qに供給する。
【0033】
このとき、モータ1の効率を定める電流指令値i*daは、サーボループ12外の装置である駆動制御部2の上位装置13において、d軸指令設定器13aの予め設定された電流値のd軸指令を、d軸指令電流演算器13bにより、指令に対応する大きさの電流に変換して形成され、通常、0又は負である。
【0034】
また、モータ1のトルク出力を定める電流指令値i*qaは、上位装置13において、q軸指令設定器(トルク指令設定器)13cの予め設定されたトルク値のトルク指令を、q軸指令電流演算器13dにより、そのトルク値に対応する電流に変換して形成され、例えば、3Nmのトルク指令に対して40Aの電流指令値i*qaが形成される。
【0035】
さらに、電流制御器11d、11qは、PI制御により、入力の制御偏差に電流制御のゲイン、応答特性の調整を施してd軸、q軸の電機子電圧指令V*da、V*qaを形成し、この電圧指令V*da、V*qaを座標変換器8に出力する。
【0036】
この座標変換器8は、三角関数発生器6の関数値sin(θre)、cos(θre)に基づき、電圧指令V*da、V*qaに座標変換器7と逆の座標変換を施し、電圧指令V*da、V*qaを、3相交流の電機子電圧指令V*ua、V*va、V*waに変換し、これらの電機子電圧指令V*ua、V*va、V*waをインバータ3の3相制御端子3*u、3*v、3*wに出力する。
【0037】
そして、インバータ3は、電機子電圧指令V*ua、V*va、V*waに基づき、出力端子3u、3v、3wからモータ1の各相の端子1u、1v、1wに、フィードバック制御された駆動電流iua、iva、iwaを供給する。
【0038】
つぎに、トルクリップルの補償について説明する。
【0039】
まず、モータ1の回転角度に応じた固有のトルクリップルを予め測定する。この測定は、モータ1を量産する場合、モータ1毎に個別に行う。
【0040】
この場合、例えばトルク指令値を3Nmに設定してトルクリップル無補償状態で無負荷のモータ1を駆動し、モータ1の各回転角度のトルクリップル補償前のq軸成分を補償前トルク出力として予め測定する。
【0041】
この測定により、複数のロータ位置の回転角度(機械角度)におけるモータ1のトルク出力の測定結果、例えば(回転角度、トルク出力)=(0度、3.02Nm)、(15度、2.95Nm)、…が得られて、モータ1の固有のトルクリップルを含んだ各回転角度のトルク出力が求まる。
【0042】
なお、測定する回転角度の間隔は、トルクリップルの補償精度等に基づき、実験等によって予め決定される。
【0043】
さらに、トルク指令値(3Nm)とトルクリップルを含んだ各回転角度のトルク出力との比、例えば、(3/3.02)、(3/2.95)、…を、前記の固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数として求め、これらのトルクリップル補償係数を補償記憶部14の各回転角度のアドレスに書き込む。
【0044】
この補償記憶部14は不揮発性の半導体メモリ、例えば、EEPROMからなり、書き込まれた最新の測定結果を保持する。
【0045】
つぎに、各回転角度のトルクリップル補償係数が書き込まれた補償記憶部14を駆動制御部2に組み込み、以降は、モータ1の駆動毎に、位置信号処理器5の電気角θreを読み出しアドレスとして、補償記憶部14から補償乗算部15にロータ位置の各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す。
【0046】
そして、補償乗算部15は、補償記憶部14から読み出されたトルクリップル補償係数を、上位装置13から減算器10qに与えられた電流指令値i*qaに乗算し、モータ1の各回転角度のときに、それぞれの角度でのトルクリップルを打ち消すようにトルク指令値を可変調整する。
【0047】
この調整により、例えば40Aの電流指令値i*qaが、モータ1の固有のトルクリップルに応じて、ロータ位置の回転角度が0度のときに、(40×(3/3.02)=)39.7A、15度のときに、(40×(3/2.95)=)40.6A、…に補償され、補償後の電流指令値i*qaに基づくフィードバック制御でモータ1が正確に駆動される。
【0048】
したがって、モータ1のトルクリップルが、モータ1毎に測定された固有のトルクリップルに基づいて過不足なく正確に低減される。
【0049】
そして、モータ1の出荷調整等の工程において、モータ1の固有のトルクリップルを予め測定し、そのトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数を補償記憶部14に保持し、出荷後、機器・装置等に組み込まれたモータ1の駆動中は、位置センサ4が検出したロータ位置の電気角θreにしたがって補償記憶部14から、各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出せばよいため、モータ1の駆動中にトルクリップル補正係数等を生成する演算は不要であり、コンピュータの処理負担を大きくすることなく、簡単な構成でモータ1のトルクリップルが低減される。
【0050】
しかも、各回転角度のトルクリップル補償係数が、モータ1毎の個別の測定結果から求められるため、とくに、モータ1を量産する場合に、実測結果に基づく各回転角度のトルクリップル補償係数を補償記憶部14に書き込んで全てのモータ1のトルクリップルを過不足なく正確に低減することができ、この場合、複雑な演算のプログラミングや補償量の調整等が不要であり、全てのモータ1につき、簡単な構成で過不足なく正確にトルクリップルを低減することができ、この種のブラシレスモータを量産する場合のトルクリップルの低減に好適な構成を提供することができる。
【0051】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、d軸、q軸間の干渉で生じた速度起電力の検出電流成分ida、iqaへの影響を排除するため、座標変換器7と減算器10d、10qとの間に、非干渉化制御器を設けてもよく、記憶部14がEEPROM以外の不揮発性の半導体メモリによって形成されていてもよい。
【0052】
また、制御対象モータがブラシレスDCサーボモータ以外のサーボモータ、ブラシレスDCモータ等の種々のブラシレスモータであっても、本発明を同様に適用することができる。
【0053】
さらに、図1の駆動制御部2内の各部がいわゆるハードウエア回路で形成されていてもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、ブラシレスモータからなる制御対象モータのトルク指令と予め測定した実際のトルク出力とから、そのモータの各回転角度の固有のトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持し、その後、制御対象モータの駆動中に、補償記憶部の各回転角度のトルクリップル補償係数をトルク指令値に乗算し、トルク指令値を前記固有のトルクリップルに応じて可変調整することができる。
【0055】
したがって、モータ駆動中に複雑な演算をすることなく、制御対象モータのロータ位置に応じて補償記憶部から各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す簡単な構成で、制御対象モータによらず、そのモータの固有のトルクリップルを、確実に精度よく低減することができ、とくに、この種のモータを量産する際のトルクリップルの低減に適用することにより、全てのモータのトルクリップルを確実に低減することができ、この種のブラシレスモータを量産する際のトルクリップルの低減に好適な構成を提供することができる。
【0056】
また、請求項2、4に記載の発明によれば、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分(d軸成分、q軸軸成分)に座標変換してフィードバック制御する際に、制御対象モータのトルク指令値と、予め測定した実際のトルク出力としてのq軸成分とから、そのモータの各回転角度の固有のトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持することができ、その後、制御対象モータの駆動中に、補償記憶部の各回転角度のトルクリップル補償係数をトルク指令値に乗算してトルク指令値を前記固有のトルクリップルに応じて可変調整することができる。
【0057】
したがって、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分に座標変換してフィードバック制御する際に、モータ駆動中に複雑な演算をすることなく、制御対象モータのロータ位置に応じて補償記憶部から各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す簡単な構成で、制御対象モータによらず、そのモータの固有のトルクリップルを、確実に精度よく低減することができ、請求項1と同様の効果が得られる。
【0058】
さらに、請求項3、5に記載の発明によれば、補償記憶部が不揮発性の半導体メモリからなり、きわめて実用的な構成で前記の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態のブロック図である。
【符号の説明】
1 ブラシレスDCサーボモータ
2 駆動制御部
4 位置センサ
12 サーボループ
14 補償記憶部
15 補償乗算部
【発明の属する技術分野】
この発明は、ブラシレスのサーボモータ又はブラシレスDCモータ等のブラシレスモータからなる制御対象モータのトルクリップルを低減するモータ駆動制御方法及びモータ駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブラシレスDCサーボモータ(3相永久磁石同期モータ)に代表されるブラシレスのサーボモータやブラシレスDCモータは、ブラシの保守が不要であり、制御精度が要求される産業用、民生用の種々の機器に用いられる。
【0003】
そして、これらのモータは、ロータ(回転子)位置を検出するため、電磁式のレゾルバや光学式、磁気式のインクリメンタルエンコーダ等の位置センサが設けられ、これらの位置センサのロータ位置の検出に基づき、フィードバックループの電流制御により、ステータ側の電機子巻線(固定子巻線)の駆動電流(3相交流電流)が制御されて駆動される。
【0004】
この場合、制御系の簡素化等を図るため、駆動電流(電機子電流)の3相座標系の検出信号は、モータ回転に同期して回転する直交座標系の2信号、すなわち、d−q座標系の界磁磁束方向のd軸成分、トルク出力のq軸成分の信号に座標変換され、この2軸成分の信号のフィードバック制御で制御対象モータが電流制御で駆動される(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
このd−q座標系の駆動制御においては、位置センサのロータ位置の検出に基づく3相座標系からd−q座標系への変換により、3相駆動電流の検出信号がd軸成分、q軸成分に変換され、界磁磁束方向のd軸成分については、界磁磁束方向の指令値(通常、0又は負)との誤差が求められ、トルク出力のq軸成分については、トルク指令値との誤差が求められる。
【0006】
そして、両軸成分の誤差信号が再び3相座標系の信号に戻され、この3相座標系の信号により、3相インバータを駆動して前記の3相駆動電流が形成される。
【0007】
ところで、この3相駆動電流は120度通電、90度通電等と呼ばれるパルス通電の電流であり、理想的な正弦波電流にならないことから、モータ駆動中にトルクリップルが発生する。
【0008】
このトルクリップルを低減するため、従来、制御対象モータの駆動中に、そのロータの一回転(電気角1周期分)のトルク指令から、有限フーリエ級数の理論に基づく所定の演算によって2相分のオフセット電流を求め、その結果に基づいて、モータその駆動電流の検出値に加算されるトルクリップルの補正量(補償量)を求めてトルクリップルの補償を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、制御対象モータの駆動中に、前記の電機子電流に含まれる複数周波数の電流リップル成分から演算でトルクリップルの補償量を求め、この補償量をd軸、q軸の検出電流に加算してトルクリップルを低減することも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−186784号公報(第1−4頁、図1)
【特許文献2】
特開2001−54300号公報(第6−8頁、図3)
【非特許文献1】
杉本英彦編著「ACサーボシステムの理論と設計の実際」、第5版、電子総合出版社、1999年7月10日、p.86−98
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のように、制御対象モータの駆動中に、ロータの一回転のトルク指令から演算によってトルクリップルの補正量を求めたり、電機子電流に含まれる複数周波数の電流リップル成分から演算によってトルクリップルの補償量を求めたりして、トルクリップルを低減する場合は、モータ駆動中に複雑かつ負担の大きな演算を要し、構成が複雑化して高価になる等の問題がある。
【0012】
なお、演算を行う代わりに、制御対象モータの標準のトルク出力波形に基づき、この出力波形の逆位相のトルクリップル補償用の基準電流を求めておき、この基準電流をトルク指令値に基づく電流に加算してトルクリップルを打ち消すことが考えられるが、この種のブラシレスモータのトルクリップルは、一般にトルク出力の1〜2パーセント程度であって、モータ毎に異なる固有のリップルであるため、モータによっては、前記の逆位相のトルクリップル補償用の基準電流の加算により、却ってトルクリップルが増大する不都合があり、とくに、量産されるこの種のブラシレスモータ全てのトルクリップルを確実に低減することは困難である。
【0013】
本発明は、ブラシレスモータのトルクリップルを、モータ駆動中に複雑な演算を行うことなく、しかも、モータによらず、確実に精度よく低減するようにし、とくに、この種のブラシレスモータを量産する場合のトルクリップルの低減に好適な構成を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明のモータ駆動制御方法は、ブラシレスモータからなる制御対象モータのトルクリップル補償前のトルク出力を予め測定し、トルク指令値と前記トルクリップル補償前のトルク出力の測定結果との比から、前記制御対象モータの固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持し、前記制御対象モータのロータ位置の検出に基づき、前記制御対象モータの回転にしたがって前記補償記憶部の各回転角度の前記トルクリップル補償係数を読み出し、前記補償記憶部から読み出した前記トルクリップル補償係数を前記トルク指令値に乗算して前記制御対象モータのトルクリップルを低減することを特徴としている(請求項1)。
【0015】
この構成によれば、制御対象モータのトルク指令値と測定した実際のトルク出力とから、そのモータの各回転角度の固有のトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数が求められて補償記憶部に保持され、その後、制御対象モータの駆動中に、補償記憶部の各回転角度のトルクリップル補償係数がトルク指令値に乗算されることにより、トルク指令値が前記固有のトルクリップルに応じて可変調整される。
【0016】
そのため、モータ駆動中に複雑な演算をすることなく、制御対象モータの回転にしたがって補償記憶部から各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す簡単な構成で、制御対象モータによらず、そのモータの固有のトルクリップルが、確実に精度よく低減され、とくに、この種のブラシレスモータを量産する際のトルクリップルの低減に適用することにより、全てのモータのトルクリップルが確実に低減される。
【0017】
また、本発明のモータ駆動制御方法は、ブラシレスモータからなる制御対象モータのロータ位置の検出に基づいて前記制御対象モータの駆動電流をd−q座標系のd軸成分とq軸成分に変換し、トルク指令値と前記q軸成分の誤差信号により、前記駆動電流を前記トルク指令値に基づいてフィードバック制御するモータ駆動制御方法において、前記制御対象モータの各回転角度のトルクリップル補償前の前記q軸成分を予め測定し、前記トルク指令値と前記トルクリップル補償前の前記q軸成分の測定結果との比から、前記制御対象モータの固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持し、前記ロータ位置の検出に基づき、前記制御対象モータの回転にしたがって前記補償記憶部の各回転角度の前記トルクリップル補償係数を読み出し、前記補償記憶部から読み出した前記トルクリップル補償係数を前記トルク指令値に乗算して前記制御対象モータのトルクリップルを低減することを特徴としている(請求項2)。
【0018】
また、本発明のモータ駆動制御装置は、ブラシレスモータからなる制御対象モータのロータ位置を検出する位置センサと、前記ロータ位置の検出に基づいて前記モータの駆動電流をd−q座標系のd軸成分とq軸成分に変換し、トルク指令値と前記q軸成分の誤差信号により、前記駆動電流を前記トルク指令値に基づいてフィードバック制御するフィードバックループと、前記トルク指令値と予め測定した前記制御対象モータの各回転角度のトルクリップル補償前の前記q軸成分の測定結果との比から求めた前記制御対象モータの固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を保持し、前記ロータ位置の検出に基づき、前記制御対象モータの回転にしたがって前記トルクリップル補償係数が読み出される補償記憶部と、前記補償記憶部から読み出された前記トルクリップル補償係数を前記トルク指令値に乗算して前記制御対象モータのトルクリップルを低減する補償乗算部とを備えたことを特徴としている(請求項4)。
【0019】
これらの構成によれば、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分に座標変換してフィードバック制御する際に、制御対象モータのトルク指令値と、測定した実際のトルク出力としてのq軸成分とから、そのモータの各回転角度の固有のトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数が求められて補償記憶部に保持され、その後、制御対象モータの駆動中に、補償記憶部の各回転角度のトルクリップル補償係数がトルク指令値に乗算されることにより、トルク指令値が前記固有のトルクリップルに応じて可変調整される。
【0020】
そのため、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分(d軸成分、q軸軸成分)に座標変換してフィードバック制御する際に、モータ駆動中に複雑な演算をすることなく、制御対象モータのロータ位置に応じて補償記憶部から各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す簡単な構成で、制御対象モータによらず、そのモータの固有のトルクリップルが、確実に精度よく低減され、とくに、d−q座標系制御のこの種のブラシレスモータを量産する際のトルクリップルの低減に適用することにより、全てのモータのトルクリップルが確実に低減される。
【0021】
そして、補償記憶部が不揮発性の半導体メモリからなることが実用的である(請求項3、5)。
【0022】
【発明の実施の形態】
制御対象モータがACサーボモータの1つである3相ブラシレスDCサーボモータであって、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分に座標変換し、トルク制御に基づいて電流制御のフィードバック制御を行う場合に適用した本発明の一実施形態について、図1のモータ駆動制御装置のブロック図を参照して説明する。
【0023】
図1に示す制御対象モータとしてのブラシレスDCサーボモータ1は、駆動制御部2の3相PWMインバータ(出力部)3から各相の端子1u、1v、1wに、例えば120度通電で電圧Vua、Vva、Vwaの3相の駆動電流iua、iva、iwaが3相の電機子巻線に供給され、この供給に基づき、トルクが発生してモータ1のロータが回転する。
【0024】
このモータ1は、その回転軸1rに、例えばレゾルバからなる位置センサ4が取り付けられた後、機器・装置に組み込まれて負荷が実装される。
【0025】
つぎに、位置センサ4は、モータ1のロータの各1回転の交錯磁束の変化から各磁極位置を検出し、ロータの電気角変化に応じて振幅変化する2相の信号(三角関数波形の信号)を、ロータ位置の信号として発生し、この信号の位相差が、時々刻々のロータ位置の電気角の検出信号である。
【0026】
さらに、いわゆるソフトウエア処理でモータ1を駆動制御するため、演算処理が高速に行える、高速で処理能力の高いマイクロコンピュータ(MPU)を用いて、図1のインバータ3、位置信号処理器5を除く駆動制御部2の各分が形成される。
【0027】
そして、位置センサ4のロータ位置の電気角の検出信号が、位置信号処理器5に入力され、この処理器5によって、前記電気角(位相)θreのデジタルデータに変換され、このデータが三角関数発生器6に供給される。
【0028】
この発生器6は、電気角θreの正弦波、余弦波の関数値sin(θre)、cos(θre)を演算し、これらの関数値sin(θre)、cos(θre)を3相交流/d−qの座標変換器7及びd−q/3相交流の座標変換器8に供給する。
【0029】
一方、インバータ3からモータ1に供給される3相の駆動電流iua、iva、iwaのうちの2相の電流iua、ivaが電流検出器9u、9vによって検出され、電流iua、ivaの検出信号が座標変換器7に入力される。
【0030】
そして、座標変換器7は、三角関数の座標変換行列に関数値sin(θre)、cos(θre)を代入し、この代入後の変換行列を用いた座標変換の行列演算により、駆動電流iua,ivaの検出交流の信号と、これらの信号を用いて演算から求めた駆動電流iwaの信号とを、回転する直交座標系であるd−q座標系のd軸、この軸より90度進み位相のq軸の検出電流成分ida、iqaに変換する。
【0031】
このとき、d−q座標系にあっては、d軸がロータの各磁極によって発生する界磁磁束方向の軸であり、q軸がトルク出力の軸である。
【0032】
そして、検出電流成分ida、iqaは、減算器10d、10q、電流制御器11d、11q、及び座標変換器6、7、インバータ3、電流検出器9u、9vが形成するd−q座標系のサーボループ12の前記減算器10d、10qに、フィードバック入力され、減算器10d、10qはd軸、q軸の電流指令値i*da、i*qaから検出電流成分ida、iqaを減算し、d軸、q軸の制御偏差を電流制御器11d、11qに供給する。
【0033】
このとき、モータ1の効率を定める電流指令値i*daは、サーボループ12外の装置である駆動制御部2の上位装置13において、d軸指令設定器13aの予め設定された電流値のd軸指令を、d軸指令電流演算器13bにより、指令に対応する大きさの電流に変換して形成され、通常、0又は負である。
【0034】
また、モータ1のトルク出力を定める電流指令値i*qaは、上位装置13において、q軸指令設定器(トルク指令設定器)13cの予め設定されたトルク値のトルク指令を、q軸指令電流演算器13dにより、そのトルク値に対応する電流に変換して形成され、例えば、3Nmのトルク指令に対して40Aの電流指令値i*qaが形成される。
【0035】
さらに、電流制御器11d、11qは、PI制御により、入力の制御偏差に電流制御のゲイン、応答特性の調整を施してd軸、q軸の電機子電圧指令V*da、V*qaを形成し、この電圧指令V*da、V*qaを座標変換器8に出力する。
【0036】
この座標変換器8は、三角関数発生器6の関数値sin(θre)、cos(θre)に基づき、電圧指令V*da、V*qaに座標変換器7と逆の座標変換を施し、電圧指令V*da、V*qaを、3相交流の電機子電圧指令V*ua、V*va、V*waに変換し、これらの電機子電圧指令V*ua、V*va、V*waをインバータ3の3相制御端子3*u、3*v、3*wに出力する。
【0037】
そして、インバータ3は、電機子電圧指令V*ua、V*va、V*waに基づき、出力端子3u、3v、3wからモータ1の各相の端子1u、1v、1wに、フィードバック制御された駆動電流iua、iva、iwaを供給する。
【0038】
つぎに、トルクリップルの補償について説明する。
【0039】
まず、モータ1の回転角度に応じた固有のトルクリップルを予め測定する。この測定は、モータ1を量産する場合、モータ1毎に個別に行う。
【0040】
この場合、例えばトルク指令値を3Nmに設定してトルクリップル無補償状態で無負荷のモータ1を駆動し、モータ1の各回転角度のトルクリップル補償前のq軸成分を補償前トルク出力として予め測定する。
【0041】
この測定により、複数のロータ位置の回転角度(機械角度)におけるモータ1のトルク出力の測定結果、例えば(回転角度、トルク出力)=(0度、3.02Nm)、(15度、2.95Nm)、…が得られて、モータ1の固有のトルクリップルを含んだ各回転角度のトルク出力が求まる。
【0042】
なお、測定する回転角度の間隔は、トルクリップルの補償精度等に基づき、実験等によって予め決定される。
【0043】
さらに、トルク指令値(3Nm)とトルクリップルを含んだ各回転角度のトルク出力との比、例えば、(3/3.02)、(3/2.95)、…を、前記の固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数として求め、これらのトルクリップル補償係数を補償記憶部14の各回転角度のアドレスに書き込む。
【0044】
この補償記憶部14は不揮発性の半導体メモリ、例えば、EEPROMからなり、書き込まれた最新の測定結果を保持する。
【0045】
つぎに、各回転角度のトルクリップル補償係数が書き込まれた補償記憶部14を駆動制御部2に組み込み、以降は、モータ1の駆動毎に、位置信号処理器5の電気角θreを読み出しアドレスとして、補償記憶部14から補償乗算部15にロータ位置の各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す。
【0046】
そして、補償乗算部15は、補償記憶部14から読み出されたトルクリップル補償係数を、上位装置13から減算器10qに与えられた電流指令値i*qaに乗算し、モータ1の各回転角度のときに、それぞれの角度でのトルクリップルを打ち消すようにトルク指令値を可変調整する。
【0047】
この調整により、例えば40Aの電流指令値i*qaが、モータ1の固有のトルクリップルに応じて、ロータ位置の回転角度が0度のときに、(40×(3/3.02)=)39.7A、15度のときに、(40×(3/2.95)=)40.6A、…に補償され、補償後の電流指令値i*qaに基づくフィードバック制御でモータ1が正確に駆動される。
【0048】
したがって、モータ1のトルクリップルが、モータ1毎に測定された固有のトルクリップルに基づいて過不足なく正確に低減される。
【0049】
そして、モータ1の出荷調整等の工程において、モータ1の固有のトルクリップルを予め測定し、そのトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数を補償記憶部14に保持し、出荷後、機器・装置等に組み込まれたモータ1の駆動中は、位置センサ4が検出したロータ位置の電気角θreにしたがって補償記憶部14から、各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出せばよいため、モータ1の駆動中にトルクリップル補正係数等を生成する演算は不要であり、コンピュータの処理負担を大きくすることなく、簡単な構成でモータ1のトルクリップルが低減される。
【0050】
しかも、各回転角度のトルクリップル補償係数が、モータ1毎の個別の測定結果から求められるため、とくに、モータ1を量産する場合に、実測結果に基づく各回転角度のトルクリップル補償係数を補償記憶部14に書き込んで全てのモータ1のトルクリップルを過不足なく正確に低減することができ、この場合、複雑な演算のプログラミングや補償量の調整等が不要であり、全てのモータ1につき、簡単な構成で過不足なく正確にトルクリップルを低減することができ、この種のブラシレスモータを量産する場合のトルクリップルの低減に好適な構成を提供することができる。
【0051】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、d軸、q軸間の干渉で生じた速度起電力の検出電流成分ida、iqaへの影響を排除するため、座標変換器7と減算器10d、10qとの間に、非干渉化制御器を設けてもよく、記憶部14がEEPROM以外の不揮発性の半導体メモリによって形成されていてもよい。
【0052】
また、制御対象モータがブラシレスDCサーボモータ以外のサーボモータ、ブラシレスDCモータ等の種々のブラシレスモータであっても、本発明を同様に適用することができる。
【0053】
さらに、図1の駆動制御部2内の各部がいわゆるハードウエア回路で形成されていてもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、ブラシレスモータからなる制御対象モータのトルク指令と予め測定した実際のトルク出力とから、そのモータの各回転角度の固有のトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持し、その後、制御対象モータの駆動中に、補償記憶部の各回転角度のトルクリップル補償係数をトルク指令値に乗算し、トルク指令値を前記固有のトルクリップルに応じて可変調整することができる。
【0055】
したがって、モータ駆動中に複雑な演算をすることなく、制御対象モータのロータ位置に応じて補償記憶部から各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す簡単な構成で、制御対象モータによらず、そのモータの固有のトルクリップルを、確実に精度よく低減することができ、とくに、この種のモータを量産する際のトルクリップルの低減に適用することにより、全てのモータのトルクリップルを確実に低減することができ、この種のブラシレスモータを量産する際のトルクリップルの低減に好適な構成を提供することができる。
【0056】
また、請求項2、4に記載の発明によれば、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分(d軸成分、q軸軸成分)に座標変換してフィードバック制御する際に、制御対象モータのトルク指令値と、予め測定した実際のトルク出力としてのq軸成分とから、そのモータの各回転角度の固有のトルクリップルを打ち消すトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持することができ、その後、制御対象モータの駆動中に、補償記憶部の各回転角度のトルクリップル補償係数をトルク指令値に乗算してトルク指令値を前記固有のトルクリップルに応じて可変調整することができる。
【0057】
したがって、制御対象モータの駆動電流をd−q座標系の回転2軸成分に座標変換してフィードバック制御する際に、モータ駆動中に複雑な演算をすることなく、制御対象モータのロータ位置に応じて補償記憶部から各回転角度のトルクリップル補償係数を読み出す簡単な構成で、制御対象モータによらず、そのモータの固有のトルクリップルを、確実に精度よく低減することができ、請求項1と同様の効果が得られる。
【0058】
さらに、請求項3、5に記載の発明によれば、補償記憶部が不揮発性の半導体メモリからなり、きわめて実用的な構成で前記の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態のブロック図である。
【符号の説明】
1 ブラシレスDCサーボモータ
2 駆動制御部
4 位置センサ
12 サーボループ
14 補償記憶部
15 補償乗算部
Claims (5)
- ブラシレスモータからなる制御対象モータのトルクリップル補償前のトルク出力を予め測定し、
トルク指令値と前記トルクリップル補償前のトルク出力の測定結果との比から、前記制御対象モータの固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持し、
前記制御対象モータのロータ位置の検出に基づき、前記制御対象モータの回転にしたがって前記補償記憶部の各回転角度の前記トルクリップル補償係数を読み出し、
前記補償記憶部から読み出した前記トルクリップル補償係数を前記トルク指令値に乗算して前記制御対象モータのトルクリップルを低減することを特徴とするモータ駆動制御方法。 - ブラシレスモータからなる制御対象モータのロータ位置の検出に基づいて前記制御対象モータの駆動電流をd−q座標系のd軸成分とq軸成分に変換し、
トルク指令値と前記q軸成分の誤差信号により、前記駆動電流を前記トルク指令値に基づいてフィードバック制御するモータ駆動制御方法において、
前記制御対象モータの各回転角度のトルクリップル補償前の前記q軸成分を予め測定し、
前記トルク指令値と前記トルクリップル補償前の前記q軸成分の測定結果との比から、前記制御対象モータの固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を求めて補償記憶部に保持し、
前記ロータ位置の検出に基づき、前記制御対象モータの回転にしたがって前記補償記憶部の各回転角度の前記トルクリップル補償係数を読み出し、
前記補償記憶部から読み出した前記トルクリップル補償係数を前記トルク指令値に乗算して前記制御対象モータのトルクリップルを低減することを特徴とするモータ駆動制御方法。 - 補償記憶部が不揮発性の半導体メモリからなることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ駆動制御方法。
- ブラシレスモータからなる制御対象モータのロータ位置を検出する位置センサと、
前記ロータ位置の検出に基づいて前記モータの駆動電流をd−q座標系のd軸成分とq軸成分に変換し、トルク指令値と前記q軸成分の誤差信号により、前記駆動電流を前記トルク指令値に基づいてフィードバック制御するフィードバックループと、
前記トルク指令値と予め測定した前記制御対象モータの各回転角度のトルクリップル補償前の前記q軸成分の測定結果との比から求めた前記制御対象モータの固有のトルクリップルを打ち消す各回転角度のトルクリップル補償係数を保持し、前記ロータ位置の検出に基づき、前記制御対象モータの回転にしたがって前記トルクリップル補償係数が読み出される補償記憶部と、
前記補償記憶部から読み出された前記トルクリップル補償係数を前記トルク指令値に乗算して前記制御対象モータのトルクリップルを低減する補償乗算部とを備えたことを特徴とするモータ駆動制御装置。 - 補償記憶部が不揮発性の半導体メモリからなることを特徴とする請求項4に記載のモータ駆動制御装置。
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