JP2004335971A - マーク検出方法及び装置、並びに露光方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アライメントセンサのようなマーク検出系の計測誤差の要因又は要因別の誤差を、容易にかつ迅速に求める。
【解決手段】ウエハ上の検出対象のウエハマーク48Xをアライメントセンサによって検出し、その撮像信号を処理して波形データI(x)を得る。この波形データI(x)を計測方向の位置xに関してn次(n=1,2,3,…)の成分i1(x),i2(X),i3(x),…からなるフーリエ級数で表し、各次数nの成分において1次の成分(基準次数の成分)に対する位相ずれをそれぞれ求める。ウエハマーク48Xを180°回転した状態でも同じ計算を行い、回転角が0°での位相ずれと回転角が180°での位相ずれとを演算処理して装置起因の誤差とウエハ起因の誤差とを求める。
【選択図】 図4
【解決手段】ウエハ上の検出対象のウエハマーク48Xをアライメントセンサによって検出し、その撮像信号を処理して波形データI(x)を得る。この波形データI(x)を計測方向の位置xに関してn次(n=1,2,3,…)の成分i1(x),i2(X),i3(x),…からなるフーリエ級数で表し、各次数nの成分において1次の成分(基準次数の成分)に対する位相ずれをそれぞれ求める。ウエハマーク48Xを180°回転した状態でも同じ計算を行い、回転角が0°での位相ずれと回転角が180°での位相ずれとを演算処理して装置起因の誤差とウエハ起因の誤差とを求める。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、物体上に形成されたマークに関する情報を求めるマーク検出技術に関し、例えば半導体素子、液晶表示素子、又は薄膜磁気ヘッド等のデバイスを製造するためのリソグラフィ工程中で使用される露光装置に備えられたアライメントセンサの誤差要因を評価する場合に使用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、例えば半導体素子を製造するためのリソグラフィ工程においては、マスクとしてのレチクルのパターンをステッパー等の露光装置を用いて、基板としてのレジストが塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上に転写する露光工程、現像工程、及びエッチング等のパターン形成工程等を繰り返して行うことで、複雑な回路が多数のレイヤに亘って形成されていく。その露光工程において露光装置は、レジストが塗布されたウエハ上の所定の複数のショット領域に形成されたアライメントマーク(ウエハマーク)の位置をアライメントセンサによって計測し、この計測結果を統計処理してウエハ全体の位置と回転量を算出し、この算出結果に基づいてレチクルのパターンをウエハ上の各ショット領域に既に形成されている回路パターンに高精度に重ね合わせている。極めて細い線幅の回路パターンを露光するためには、この重ね合わせは数nm程度の精度で行われる必要がある。よって、アライメント精度にはそれ以下の精度が必要とされている。
【0003】
そのような露光装置用の高精度なアライメントセンサとして、従来より明視野型の顕微鏡を用いてウエハマークの像を形成し、その像を撮像して得られた撮像信号を画像処理してそのウエハマークの位置を検出する、FIA(Field Image Alignment)方式のセンサが用いられている(例えば特許文献1参照)。また、露光装置においては、デバイスを製造する際のスループット(単位時間当たりに露光できるウエハの枚数)を高めることも常に要求されている。そのため、FIA方式のアライメントセンサにおいても、高いアライメント精度を保つことに加え、高速にマーク計測できることが要求されている。
【0004】
一方、アライメント結果に基づく重ね合わせ精度が十分良好か否かを判断するために、重ね合わせ測定機が用いられる。具体的な測定方法としては、予め前工程において、ウエハマークと同時に重ね合わせ測定用の指標マークをウエハ上の各ショット領域内に焼き付けておく。そして、その指標マークの内側に転写される相対位置検出用の計測マークを含むレチクルパターンを用いて、かつFIA方式のアライメントセンサを用いてアライメントを行いながら、そのウエハの各ショット領域に重ね合わせ露光を行う。その後、ウエハの現像を行い、現像されたウエハの各ショット領域で指標マークに対する計測マークの相対的な位置ずれを重ね合わせ測定機で計測することによって、当該露光工程における重ね合わせ誤差を検出することができる。
【0005】
例えば図9(A)に示すように、指標マーク82として白抜きのボックス形状のパターンを形成しておき、重ね合わせ露光後の計測マーク81としては、斜線を施して示すボックス形状のパターンを形成する。9(B)には図9(A)の一点鎖線に沿った断面構造を示す。例えば、指標マーク部84は段差構造、計測マーク部83はレジストを残したパターンとなっている。このような断面構造のマークを撮像すると、図9(C)に示すような撮像信号が得られる。図9(C)の中心部の計測マークによる信号85と、周辺の指標マークによる信号86との相対位置を計測することによって、重ね合わせ誤差を計測することができる。この計測の結果、重ね合わせ誤差がある場合には、その誤差分をオフセットとして露光装置に認識させ、この露光装置でアライメントする際にそのオフセット分の補正を行うことで、より高い重ね合わせ精度で露光することが可能となる。このため、重ね合わせ測定機の相対位置計測には、露光装置のアライメント精度や重ね合わせ精度に比べて更に良好な計測精度が要求される。
【0006】
高精度な位置計測のために、計測対象のマークの撮像信号をデジタル化した波形データは歪みが無く計測誤差が生じないものが望ましい。しかしながら、撮像信号を得るために用いる顕微鏡の結像光学系に収差が残存していると、波形データが歪み、その結果として計測誤差が発生する。また、ウエハマークが形状誤差を持つと、それに起因して波形データが歪んで計測誤差が発生する。そこで、重ね合わせ測定機においては、指標マークと計測マークとの相対位置を、ウエハを普通に設置して計測した結果(回転角0°の計測結果)と、ウエハを180°回転させて計測した結果(回転角180°の計測結果)とを用いて、その計測誤差を補正している。
【0007】
即ち、結像光学系の収差に起因する波形データの歪みは、回転角0°の計測結果と回転角180°の計測結果とで変化しないが、ウエハマークの形状誤差に起因する波形データの歪みは、回転角0°の計測結果と回転角180°の計測結果とで反転する。そこで、回転角0°の計測結果をM0、回転角180°の計測結果をM180とすると、装置起因の誤差であるTIS(Tool Induced Shift)、及びウエハ起因の誤差であるWIS(Wafer Induced Shift)は、それぞれ次のように表すことができる。
【0008】
TIS=(M0+M180)/2 …(1)
WIS=(M0−M180)/2 …(2)
また、重ね合わせ測定機での重ね合わせ誤差の計測値をMとすると、計測値Mは以下のように回転角0°の計測結果M0からTISの影響を除いて表される。
M=M0−TIS …(3)
【0009】
【特許文献1】
特開平7−183186号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、FIA方式のアライメントセンサにおいても、重ね合わせ測定機と同様に非常に高いアライメント精度が要求されており、重ね合わせ測定機におけるTIS及びWISに相当する誤差成分を減らすことは同様に重要である。
しかしながら、FIA方式のアライメントセンサの場合は、指標マークと計測マークとを用いた相対位置計測ではなく、ウエハ上のウエハマークの位置(絶対位置)を高速に計測しなければならない。また、計測対象のウエハマークの形状も絶対位置計測用に最適化されている。このような条件の違いにより、FIA方式のアライメントセンサの計測誤差を重ね合わせ測定機の場合と同様の装置起因の誤差(TIS)とウエハ起因の誤差(WIS)とに分けて求めることは、従来は行われていなかった。
【0011】
また、例えばFIA方式のアライメントセンサの調整時やメンテナンス時において、マーク検出用の顕微鏡の収差を求める手法として、重ね合わせ測定機の場合と同様の2つのマーク(指標マーク及び計測マーク)を用いて重ね合わせ露光を行い、露光後の2つのマークの位置ずれ量を計測してその顕微鏡に起因するTISを求めるものとすると、その計測時間が長くなり、露光工程を停止する時間が長くなるという不都合がある。更に、それによって求められるTISは、アライメントセンサの実際の使用条件下での計測誤差とは異なる恐れもある。
【0012】
本発明は、斯かる点に鑑み、アライメントセンサのようなマーク検出系の計測誤差の要因又は要因別の誤差を、容易にかつ迅速に求めることができるマーク検出技術を提供することを第1の目的とする。
更に本発明は、そのマーク検出技術を用いて重ね合わせ精度等を高めることができる露光技術を提供することを第2の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1のマーク検出方法は、物体(W)上で所定方向の位置を示すマーク(48X)に関する情報を求めるマーク検出方法において、そのマークからの光束を検出用光学系(20,18,23,24,26)を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得る第1工程(ステップ102)と、その第1工程で得られた検出信号をその所定方向の位置に関して基準次数及びそれ以外の次数を含む複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開する第2工程(ステップ103)と、そのフーリエ級数のそのそれ以外の次数の成分とその基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、その検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める第3工程(ステップ112)とを有するものである。
【0014】
斯かる本発明によれば、そのマークの検出信号の基準次数のフーリエ成分を基準としたそれ以外の次数のフーリエ成分のずれ量から、そのマークに関する情報に作用する誤差要因(又は検出用光学系等に起因する誤差)を求めることができる。従って、2つのマークを比較する方法と比べて容易にかつ迅速に、その検出用光学系を含むマーク検出系の誤差要因を求めることができる。
【0015】
この場合、そのマーク又はその検出用光学系をこの検出用光学系の光軸(BX)に平行な軸の回りに180°回転する第4工程(ステップ106)と、その第4工程の後でそのマークからの光束をその検出用光学系を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得る第5工程(ステップ108)と、その第5工程で得られた検出信号をその所定方向の位置に関してその基準次数及びそのそれ以外の次数を含む複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開する第6工程(ステップ109)とを更に有し、その第3工程は、その第2工程及びその第6工程でそれぞれ得られたフーリエ級数のそのそれ以外の次数の成分とその基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、その検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める工程を含むことが望ましい。
【0016】
この際にその第4工程でそのマーク(その物体)を180°回転すると、その第5工程で得られる検出信号は、その第2工程で得られる検出信号に比べてその検出用光学系に起因する誤差は実質的に同じであるが、その物体に起因する誤差は位置に関して反転する。そこで、その検出用光学系に起因する誤差とその物体に起因する誤差とを容易にかつ正確に分離することができる。その後、その検出用光学系に起因する誤差を補正することによって、より高精度にマーク位置を検出することができる。
【0017】
また、その第3工程は、その第2工程及びその第6工程でそれぞれ得られたフーリエ級数のそのそれ以外の次数の成分のその基準次数の成分に対する位相ずれを求め、この位相ずれの和及び差に基づいて、それぞれその検出用光学系に起因する誤差及びその物体に起因する誤差を求める工程を有することが望ましい。これによれば、簡単な計算で検出用光学系に起因する誤差及びその物体に起因する誤差を分離して求めることができる。
【0018】
また、その第1工程及びその第2工程と、その第5工程及びその第6工程とを、そのマークのその検出用光学系に対するフォーカス位置を変えながら複数回実行し(ステップ105,111)、その第3工程は、その第2工程及びその第6工程でそれぞれ得られたフーリエ級数のそのそれ以外の次数の成分とその基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、その検出用光学系に対するそのマークのベストフォーカス位置に関する情報を求める工程を有することが望ましい。
【0019】
この際に、例えばフォーカス位置を変えたときに各次数のフーリエ成分の振幅が全体として最も大きくなるときのフォーカス位置をベストフォーカス位置とするなどによって、マーク検出系に対するベストフォーカス位置を容易に決定することができる。
また、その基準次数の成分は、1次の正弦波成分及び1次の余弦波成分の少なくとも一方であることが望ましい。1次の成分は最も周期(ピッチ)が長いと共に、通常は振幅が最も大きいため、基準次数として好適である。
【0020】
また、本発明による第2のマーク検出方法は、物体(W)上で所定方向の位置を示すマーク(48X)に関する情報を求めるマーク検出方法において、そのマークからの光束を検出用光学系(20,18,23,24,26)を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得る第1工程(ステップ102)と、その第1工程で得られた検出信号をその所定方向の位置に関して複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開し、このフーリエ級数のその複数次数の成分の振幅情報を求める第2工程(ステップ103)と、その第2工程で求められた振幅情報に基づいて、その検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める第3工程(ステップ113)とを有するものである。
【0021】
本発明によれば、そのマークの検出信号のフーリエ成分の振幅情報から、そのマークに関する情報に作用する誤差要因、例えばデフォーカスを求めることができる。従って、2つのマークを比較する方法と比べて容易にかつ迅速に、その検出用光学系を持つマーク検出系の誤差要因を求めることができる。
この場合、その第1工程及び第2工程を、そのマークのその検出用光学系に対するフォーカス位置を変えながら複数回実行し(ステップ105)、その第3工程は、その第2工程で求められた振幅情報に基づいて、その検出用光学系に対するそのマークのベストフォーカス位置に関する情報を求める工程を有することが望ましい。これによれば、振幅情報を比較するだけで、容易に例えばベストフォーカス位置を求めることができる。
【0022】
次に、本発明による第1のマーク検出装置は、物体(W)上で所定方向の位置を示すマーク(48X)に関する情報を求めるマーク検出装置において、そのマークからの光束を検出用光学系(20,18,23,24,26)を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得るマーク検出系(12)と、そのマーク検出系で得られた検出信号をその所定方向の位置に関して基準次数及びそれ以外の次数を含む複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開し、このフーリ級数のそのそれ以外の次数の成分とその基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、その検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める演算装置(47,4)とを有するものである。
【0023】
斯かる本発明によれば、本発明の第1のマーク検出方法を実施でき、2つのマークを比較する方法と比べて容易にかつ迅速に、そのマーク検出系の誤差要因を求めることができる。また、そのマーク検出系において求められた誤差要因に基づく誤差を補正することによって、マークの計測精度を高めることができる。
この場合、その基準次数の成分は、1次の正弦波成分及び1次の余弦波成分の少なくとも一方であり、その物体をその検出用光学系に対して180°回転するための回転機構(50)を更に備えることが望ましい。その回転機構でその物体を180°回転することによって、上記のマーク検出方法の第4工程〜第6工程を実行でき、その検出用光学系に起因する誤差とその物体に起因する誤差とを容易にかつ正確に分離することができる。
【0024】
また、本発明による第2のマーク検出装置は、物体(W)上で所定方向の位置を示すマーク(48X)に関する情報を求めるマーク検出装置において、そのマークからの光束を検出用光学系(20,18,23,24,26)を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得るマーク検出系(12)と、そのマーク検出系で得られた検出信号をその所定方向の位置に関して複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開し、このフーリエ級数のその複数次数の成分の振幅情報を求め、その振幅情報に基づいてその検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める演算装置(47,4)とを有するものである。
【0025】
本発明によれば、本発明の第2のマーク検出方法を実施でき、2つのマークを比較する方法と比べて容易にかつ迅速に、そのマーク検出系の誤差要因を求めることができる。また、そのマーク検出系において求められた誤差要因に基づく誤差を補正することによって、マークの計測精度を高めることができる。
また、本発明による露光方法は、第1物体(R)を露光ビームで照明し、その露光ビームでその第1物体及び投影光学系(PL)を介して第2物体(W)を露光する露光方法において、本発明の何れかのマーク検出方法でその第2物体上に形成されたマーク(WM)に関する情報を求めるものである。本発明のマーク検出方法を適用して求めた誤差を補正することによって、重ね合わせ精度等を向上させることができる。
【0026】
また、本発明による露光装置は、第1物体(R)を露光ビームで照明し、その露光ビームでその第1物体及び投影光学系(PL)を介して第2物体(W)を露光する露光装置において、本発明の何れかのマーク検出装置を備えるものである。本発明のマーク検出装置で求めた誤差要因による誤差、例えばマーク検出装置に起因する誤差を補正することによって、重ね合わせ精度等を向上させることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例につき図面を参照して説明する。
図1は、本例で使用される走査露光型の投影露光装置を示し、この図1において露光時には、KrF(波長248nm)又はArF(波長193nm)よりなるエキシマレーザ光源等の露光光源(不図示)からの露光ビームとしての露光光ILは、照明光学系1を介してマスクとしてのレチクルRのパターン面の細長い照明領域を均一な照度分布で照明する。照明光学系1は、照度分布均一化用のオプティカル・インテグレータ、照明領域を規定する視野絞り(レチクルブラインド)、及びコンデンサレンズ系等から構成されている。
【0028】
そして、露光光ILのもとで、レチクルR上の回路パターンの一部の像が、両側テレセントリックな投影光学系PLを介して投影倍率β(βは1/5,1/4等)で、ウエハW上の一つのショット領域上の細長い露光領域に投影される。ウエハWは例えば半導体(シリコン等)又はSOI(silicon on insulator)等の直径が150〜300mm程度の円板状の基板であり、その表面にフォトレジストが塗布されている。レチクルR及びウエハWはそれぞれ第1物体及び第2物体(又は単に物体)ともみなすことができる。以下、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1の紙面に平行にX軸を取り、図1の紙面に垂直にY軸を取って説明する。本例の走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向はY方向である。
【0029】
このとき、レチクルRはレチクルステージ2上に吸着保持され、レチクルステージ2は、レチクルベース3上にエアーベアリングを介してY方向に一定速度で駆動され、かつX方向、Y方向、及びZ軸の回りの回転方向に微動できるように載置されている。レチクルステージ2のX方向、Y方向の位置、及び回転角はレチクルステージ駆動系5内のレーザ干渉計によって計測されている。この計測値及び装置全体の動作を制御するコンピュータよりなる主制御系4からの制御情報に基づいて、レチクルステージ駆動系5は、リニアモータ等の駆動機構(不図示)を介してレチクルステージ2の速度及び位置を制御する。
【0030】
一方、ウエハWは不図示のウエハホルダを介してウエハテーブル6上に真空吸着によって保持されており、このウエハテーブル6がZ方向の位置及びX軸、Y軸の回りの傾斜角を制御するためのZチルトステージ7上に固定され、Zチルトステージ7はXYステージ8上に固定されている。XYステージ8は、定盤よりなるウエハベース9上にエアーベアリングを介してY方向に一定速度で移動でき、かつX方向、Y方向にステップ移動できるように載置されている。また、投影光学系PLの下部側面に、ウエハWの表面に複数のスリット像を斜めに投影する投射光学系11Aと、ウエハWからの反射光を受光してそのスリット像を再結像して、この再結像された像のシフト量に応じた信号を出力する受光光学系11Bとからなる斜入射方式の多点のオートフォーカスセンサ(11A,11B)が配置されている。走査露光時には、このオートフォーカスセンサ(11A,11B)の計測値に基づいてウエハステージ駆動系10は、Zチルトステージ7を介してオートフォーカス方式でウエハWの表面を投影光学系PLの像面に合わせ込む。
【0031】
ウエハテーブル6、Zチルトステージ7、及びXYステージ8よりウエハステージが構成されている。ウエハテーブル6(ウエハW)のX方向、Y方向の位置及び回転角は、ウエハステージ駆動系10内のレーザ干渉計によって例えば1nm程度の位置分解能で計測されている。この計測値及び主制御系4からの制御情報に基づいて、ウエハステージ駆動系10は、リニアモータ等の駆動機構(不図示)を介してXYステージ8(ウエハステージ)の速度及び位置を制御する。
【0032】
また、ウエハベース9の+Y方向の近傍にウエハローダ系50が配置されている。ウエハローダ系50は、不図示のコラムによって支持されたX軸ガイド53と、X軸ガイド53に沿ってリニアモータ等によってX方向に駆動できるように配置されたY軸ガイド52と、Y軸ガイド52に沿ってリニアモータ等によってY方向に駆動できるように配置されたウエハアーム51と、後述の昇降ターンテーブル54とを含んでいる。一例としてウエハテーブル6の中央には、ウエハを昇降するための昇降ピン(不図示)が配置されている。そして、ウエハのロード時には、この昇降ピンを或る程度上昇させた状態でウエハアーム51を介してその昇降ピンの上方にウエハを移動させた後、その昇降ピンを更に上昇させて、ウエハアーム51を引き抜いてから、その昇降ピンを下降させることで、ウエハテーブル6上にウエハを受け渡すことができる。この逆の手順で、ウエハテーブル6からウエハアーム51上へのウエハWのアンロードも行うことができる。ウエハアーム51は更に不図示のウエハ搬送系(又はウエハカセット)との間でウエハの受け渡しを行う。
【0033】
また、X軸ガイド53の−X方向の端部に、Z方向への昇降及び光軸AXに平行な軸の回りに180°の回転ができる昇降ターンテーブル54が配置されている。この構成において、ウエハアーム51上の位置P1にウエハを移動した状態で、更にウエハアーム51を昇降ターンテーブル54上に移動した後、昇降ターンテーブル54を上昇させてウエハアーム51から昇降ターンテーブル54にウエハを受け渡す。続いて、昇降ターンテーブル54を180°回転した後、昇降ターンテーブル54を下降させてウエハアーム51上にウエハを受け渡すことで、ウエハアーム51上のウエハを光軸AXに平行な軸の回りに180°回転することができる。本例のウエハローダ系50が、第2物体としてのウエハの回転機構に対応している。
【0034】
そして、ウエハWに対する走査露光時には、レチクルステージ2及びXYステージ8を駆動して、露光光ILの照明領域及びこれに投影光学系PLに関して共役な露光領域に対してそれぞれレチクルRとウエハW上の一つのショット領域とをY方向に同期走査する動作と、XYステージ8を駆動してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作とが繰り返される。この動作によって、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の各ショット領域にレチクルRのパターン像が露光される。
【0035】
さて、この露光が重ね合わせ露光であるとすると、その露光前に予めレチクルRのアライメント及びウエハWのアライメントを行っておく必要がある。そのため、レチクルRの上方には、例えば特開平7−176468号公報等に開示されているレチクルアライメント顕微鏡(不図示)が配置されている。そして、このレチクルアライメント顕微鏡によってレチクルR上の所定のアライメントマーク(レチクルマーク)と、ウエハテーブル6上の所定の基準マーク(不図示)との位置ずれ量を検出し、この位置ずれ量に基づいてレチクルRの位置及び回転角が補正される。
【0036】
また、ウエハW上の各ショット領域にはそれぞれアライメントマークとしてのウエハマークが付設されており、そのウエハマークの位置を検出するために、投影光学系PLの側面にオフ・アクシス方式でFIA(Fie1d Image A1ignment )方式よりなる画像処理方式のアライメントセンサ12が配置されている。アライメントセンサ12は、白色光で被検マークを照明する照明系と、その被検マークの拡大像を形成する検出用光学系と、その像を撮像するCCD型の2次元撮像素子とを備えると共に、内部にオートフォーカスセンサを備えている(詳細後述)。
【0037】
アライメントセンサ12からの撮像信号より、アライメント信号処理系47は検出対象のマークの検出中心(指標マークの中心)からの位置ずれ量を求めて主制御系4に供給する。主制御系4は、ウエハステージ駆動系10内のレーザ干渉計を介して検出されるウエハテーブル6(ウエハW)のX座標、Y座標にその位置ずれ量を加算することによって、その検出対象のマークのステージ座標系(X,Y)での配列座標を求めることができる。
【0038】
また、レチクルRのアライメント時に、ウエハテーブル6上の別の基準マークの位置をアライメントセンサ12を介して検出することによって、レチクルRのパターン像の中心とアライメントセンサ12の検出中心との間隔であるベースライン量が求められて、主制御系4の記憶部に記憶される。これ以後は、アライメントセンサ12の検出結果を例えば特公平4−47968号公報で開示されているエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)方式で統計処理して得られるウエハW上の各ショット領域の配列座標を、そのベースライン量分だけずらすことによって、ウエハW上の各ショット領域に既に形成されている回路パターンと、レチクルRのパターン像とを高精度に重ね合わせて露光することができる。
【0039】
次に、本例のアライメントセンサ12の構成につき説明する。図1において、不図示の検出用光源から光ファイバー13を介して導かれた近赤外及び可視の広帯域の光(白色光)を含むアライメント用の検出光は、レンズ14、照明視野絞り15、レンズ16、ビームスプリッタ17、第1対物レンズ18、落射照明用のミラー19、レンズ20、及び指標マークが形成された指標板21を介してウエハW上の検出対象のマークとしてのウエハマークWMを照明する。ウエハマークWMでの反射、散乱、及び回折によって上方に向かう光(以下、「マーク光」と呼ぶ)は、指標板21、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17を経てミラー22に至る。また、指標板21の上面には指標マークが形成され、その下面には検出光のうち長波長領域の光(赤外光)のみを反射させるコーティングが施されており、ミラー19からレンズ20を介して指標板21に入射した検出光のうち、赤外成分の光が指標板21の下面で反射され、上面の指標マークを照明する。指標板21上面の指標マークで反射、散乱、及び回折された光は、再び下方に向かう。指標板21の下面で再反射された光(以下、「指標光」と呼ぶ)は、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17を経てミラー22に至る。
【0040】
ミラー22で上方に反射されたマーク光及び指標光は、第2対物レンズ23、レンズ24、開口絞り25、レンズ26、及びミラー27を経てビームスプリッタ28に至る。ビームスプリッタ28で反射されたマーク光は、CCD型の2次元撮像素子29の撮像面にウエハマークWMの拡大像を形成し、ビームスプリッタ28を透過してミラー30で反射された指標光は、CCD型の2次元撮像素子31の撮像面に指標マークの拡大像を形成する。撮像素子29及び31の撮像信号はアライメント信号処理系47に供給されている。この場合、指標板21、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17、ミラー22、第2対物レンズ23、レンズ24、開口絞り25、レンズ26、ミラー27、及びビームスプリッタ28よりアライメントセンサ12の検出用光学系が構成され、この検出用光学系は広帯域の検出光のもとでウエハW上のウエハマークWMの拡大像を撮像素子29上に形成する。また、検出用光学系は、指標マークを撮像素子31上に形成するためにも兼用されている。その検出用光学系のウエハW上での光軸を光軸BXと呼ぶ。
【0041】
また、不図示の光源から光ファイバー32を介して導かれた所定波長域のオートフォーカス用の検出光(以下、「AF光」と呼ぶ)は、レンズ33、ミラー34を介してスリット板35を照明し、スリット板35のスリットを通過したAF光は、レンズ36、ビームスプリッタ37、レンズ38を経て部分的に光束を反射する部分ミラー39で下方に反射される。反射されたAF光は、第2対物レンズ23、ミラー22、ビームスプリッタ17、第1対物レンズ18、ミラー19、レンズ20、及び指標板21を介してウエハW上の検出対象のウエハマークWMを含む領域にスリット像を形成する。ウエハWでの反射、散乱、及び回折によって上方に向かうAF光は、指標板21、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17を経てミラー22に至り、ミラー22で上方に反射されたAF光は、第2対物レンズ23、部分ミラー39を経てビームスプリッタ37に入射する。ビームスプリッタ37を透過したAF光は、レンズ40、開口絞り41、レンズ42、瞳分割用のミラー43、レンズ44、波長選択フィルタ45を介して例えばラインセンサよりなる撮像素子46上に、分割された2つのスリット像を形成する。撮像素子46の撮像信号もアライメント信号処理系47に供給され、アライメント信号処理系47はその撮像信号を処理して、ウエハW上の検出対象の領域のアライメントセンサ12の検出用光学系のベストフォーカス位置に対するZ方向へのずれ量(デフォーカス量)を求め、求めたデフォーカス量を主制御系4に供給する。なお、そのベストフォーカス位置は、本例では投影光学系PLの像面とほぼ一致している。このように、アライメントセンサ12には、光ファイバー32、スリット板35、ビームスプリッタ37、部分ミラー39、レンズ38,40,42,44、瞳分割ミラー43、及び撮像素子46を含むオートフォーカスセンサが組み込まれている。
【0042】
なお、アライメントセンサ12は図1の構成には限定されず、例えば特開平7−183186号公報に開示されているような種々の構成を取り得る。
次に、本例のウエハマークの一例につき図2を参照して説明する。
図2(A)は、図1のウエハWを示す拡大平面図であり、図2(A)において、ウエハWの表面はX方向、Y方向に所定ピッチで複数のショット領域SAに区分され、各ショット領域SAにそれぞれ凹凸パターンよりなる2次元のウエハマークWMが形成されている。ウエハマークWMは、図2(B)に示すように、X方向に所定ピッチで凹部と凸部とを格子状に形成したX軸のウエハマーク48Xと、このウエハマーク48XをY方向に挟むように、Y方向に所定ピッチで凹部と凸部とを格子状に形成した2つのY軸のウエハマーク48Yとを備えている。
【0043】
例えばEGA方式でアライメントを行う場合には、図1のアライメントセンサ12によって図2(A)のウエハWの周辺部にほぼ均等に配列されたショット領域A1〜A10に形成されたウエハマークWMのX方向、Y方向の位置がそれぞれ検出される。
本実施形態では、説明を容易にするためマークの凹凸部分の反射率が一定の、非常に単純な場合を想定している。一般的なウエハマークは、半導体プロセスの都合により様々な構造を持っている。例えば、凹部と凸部との反射率が異なっていたり、逆に反射率差が大きく凹凸は小さかったり、また、凹部凸部に相当するマークの断面構造が、様々な物質により複雑な層を形成している場合もある。また、一般的にはマーク上にはレジストが塗布されている。そのような一般的なウエハマークに対しても本実施形態の内容は同様に適用できる。
【0044】
図3(A)は、図1の撮像素子29の撮像面29aに形成されるウエハマークWMの拡大像(X軸のウエハマーク48Xの像48XI及びY軸の2つのウエハマーク48Yの像48YI)の一例を示し、図3(A)において図2(A)のウエハW上のX方向、Y方向に対応する方向をそれぞれx方向、y方向としてある。撮像素子29から得られた2次元画像を表す撮像信号は、アライメント信号処理系47にてアナログ/デジタル(A/D)変換された後、所定範囲のx軸に平行な複数の波形データに変換される。X軸のウエハマークの像48XIのx方向の位置を求めるためには、一例として前記x軸に平行な複数の波形データを加算(又は平均)することによって、図3(C)に示すようなX軸のウエハマーク48Xの波形データI(x)を得る。波形データI(x)は、撮像面上のx方向の位置(例えば画素の番号で表される)に対応させてアライメント信号処理系47内のメモリに格納される。ウエハW上のX方向の長さと撮像面29a上のx方向の長さとの比の値は、主制御系4及びアライメント信号処理系47内の処理部に記憶されている。
【0045】
図3(B)は、ウエハW上のX軸のウエハマーク48Xの断面形状の一例を示し、図3(C)の波形データI(x)は、図3(B)のウエハマーク48Xに対して或るフォーカス位置で検出される撮像信号をデジタル化したものである。この例の波形データI(x)は、ウエハマーク48Xの各段差部でそれぞれ値がパルス状に低下する信号となっている。この場合には、一例として所定のスライスレベルで波形データI(x)を2値の複数のパルスで表し、これら複数のパルスのx方向の位置を平均化することでウエハマークの像48Iのx方向の位置を求めることができる。
【0046】
次に、アライメントセンサ12の検出精度を向上するためには、アライメントセンサ12の検出結果からアライメントセンサ12自体に起因する誤差を補正することが望ましい。以下では、フーリエスペクトルを用いた解析によって、アライメントセンサ12の検出誤差を検出用光学系の収差等の装置に起因する誤差であるTIS(Tool Induced Shift)と、ウエハマークWMの断面の非対称構造等を含むウエハに起因する誤差であるWIS(Wafer Induced Shift)とに分ける方法につき説明する。
【0047】
先ず、本例の光学原理上の説明を行う。一般的なパーシャルコヒーレント結像光学系の理論として、参考文献1「鶴田匡夫著:応用物理工学選書1”応用光学1”pp.282−292(培風館,1990)」によると、使用波長、結像光学系の開口数、照明光学系の開口数、物体(本例ではウエハマークを含むウエハ)の情報(ウエハマークのピッチ、線幅、断面構造等)、波面収差等の光学的パラメータが与えられている場合には、結像光学系により形成されるその像は、像のフーリエスペクトルとして数値計算可能である。また、物体をデフォーカスさせたときの像についても、同様に数値計算することが可能である。
【0048】
また、前記光学原理は、物体が周期構造を持っている場合、数値計算(シミュレーション)の結果として、像はまず像のフーリエスペクトルつまり像のフーリエ級数の形で必ず得られることを示している。このような結像光学系の性質をアライメントマークとしてのウエハマークを計測するFIA(Fie1d Image A1ignment )に適用すると、以下のようになる。
例えば、図4(A)のようにウエハマーク48Xを周期(ピッチ)Pの周期的パターンと考えると、そのアライメントセンサ12による撮像信号から得られる波形データI(x)は、次数n(n=1〜m)で振幅anと位相ずれφnとを持つ余弦フーリエ級数として以下のように表される。以下の式において、a0はオフセットである。なお、余弦フーリエ級数の代わりに正弦フーリエ級数、又はこれらを混合したフーリエ級数を用いてもよい。
【0049】
【数1】
ここで、xは検出信号としての波形データ(像強度分布に対応している)の計測方向の位置、Pはウエハマークの周期、mは次式で規定される空間周波数の最大次数を表す数値である。なお、次式において、NAは図1のアライメントセンサ12の検出用光学系の開口数、λはアライメントセンサ12の検出光の平均波長であり、本例ではmは2以上の整数となるように開口数NA、周期P、波長λが設定されている。
【0050】
m<2・NA・P/λ …(12)
その検出用光学系を通した像のフーリエスペクトルは、空間周波数できまる次数mの周期の余弦関数(以下、「COS関数」と言う)までの成分しか持たないことになる。
具体的に波形データI(x)が図4(B)の場合には、そのフーリエ級数中の1次のCOS関数i1(x)、2次のCOS関数i2(x)、及び3次のCOS関数i3(x)はそれぞれ図4(C)、(D)、及び(E)のようになる。図4(C)には1次のCOS関数i1(x)の振幅a1及び位相ずれφ1が図示されている。
【0051】
なお、ウエハマークが非周期的孤立パターン(例えば、図4(A)に示すウエハマーク48Xに対して、凸又は凹のライン状のパターンが複数本ではなく1本しかないようなパターン)である場合には、ピッチPが物体構造からは決まらない。しかしながら、このような場合にも、孤立パターンに対して十分に大きな周期(ピッチP)を設定すれば、ウエハマーク像を前記同様の(11)式の形に表すことができる。例えば非周期パターンの線幅の5倍程度の周期にすれば、周期的パターンと同様に扱うことができる。
【0052】
ここで、特徴として重要な点が2点挙げられる。先ず当然の事ながら、各次数のCOS関数そのものは歪みの無い周期関数であること。また、各次数n(n=1〜m)の位相ずれφnが、直接各次数のCOS成分の横ずれ量(x方向の位置ずれ量)を表していることである。光学系に収差等の像歪発生要因が残存している場合、各次数の位相ずれφnは各次数毎のTISに相当する量となる。また、物体形状が歪みを持つ場合には、各次数の位相ずれφnは各次数毎のWISに相当する量となる。更に、両方の成分を持つ場合も考えられる。
【0053】
従来のTIS・WISの計測手法においては、画像処理アルゴリズムにより撮像信号の波形データからマーク位置を求めているが、本例の手法による各COS成分の位相ずれ、つまり各COS成分の位置ずれ量は、原理的に像のフーリエ級数が持っている画像処理アルゴリズムに依らない絶対的な数値である。
これらの各次数のCOS成分を用いて、各次数毎にTISとWISとに相当する値を定義することができる。以下では、フーリエ級数中の次数n(n=1〜m)のCOS成分から求められるTIS及びWISをそれぞれTISn及びWISnとし、これらを図6のフローチャートの動作に従って計測する。
【0054】
先ず図6のステップ101において、図1の主制御系4の制御のもとで、XYステージ8を駆動して、ウエハW上の所定のウエハマークWMをアライメントセンサ12の検出領域に移動した後、Zチルトステージ7を駆動して、ウエハWの表面のZ方向の位置を初期位置(ここではベストフォーカス位置とされている位置から+Z方向に移動ストロークの1/2だけずれた位置)に設定する。この際のオートフォーカスセンサとしては、露光用のオートフォーカスセンサ(11A,11B)を用いてもよい。本例では、アライメントセンサ12の検出領域でのフォーカス位置を高精度に制御するために、アライメントセンサ12内の撮像素子46を含むオートフォーカスセンサを使用する。また、ここまでは、光学原理に基づき新しいウエハマーク像の表現方法を説明してきたが、以下では、その表現方法をFIAによる実際のウエハマーク計測に適用した例として説明する。
【0055】
次のステップ102において、アライメントセンサ12でそのウエハマークWMの像を撮像し、撮像信号をアライメント信号処理系47に供給する。次のステップ103において、アライメント信号処理系47では、供給された撮像信号から図3(A)のX軸のウエハマークの像48XIをx方向に走査した複数の撮像信号を取り出し、これらの撮像信号をy方向に加算(又は平均化)することによって計測方向の位置xに関する波形データI(x)を生成する。そして、この波形データI(x)を(11)式のようにフーリエ級数に展開し、各次数n(n=1〜m)のCOS成分の振幅an及び位相ずれφn0を求め、これらを主制御系4に供給する。なお、位相ずれφn0とは、ウエハWの回転角が0°での位相ずれφnを意味している。主制御系4では、供給された振幅an及び位相ずれφn0をメモリに格納する。
【0056】
次のステップ104において、主制御系4は、ウエハWのZ方向の位置(フォーカス位置)が移動ストロークの下の端点かどうかを判定し、下の端点に達していないときには、ステップ105に移動してZチルトステージ7を介してウエハWのフォーカス位置をδz(本例では1μm程度)だけ−Z方向に下げる。その後、ステップ102、103の動作を繰り返して、異なるフォーカス位置(これも「位置Z」で表す)でウエハマークの波形データI(x)をフーリエ級数に展開し、各次数n(n=1〜m)のCOS成分の振幅an及び位相ずれφn0を求めて、これらをメモリに格納する。このステップ102及び103の動作は、ウエハWのフォーカス位置を移動ストローク(例えば±10μm)内でδzだけ次第に変えながら複数回(例えば21回)実行される。
【0057】
そして、ステップ104でウエハWのフォーカス位置が移動ストローク内の下の端点に達しているときには、動作はステップ106に移行して、主制御系4は、図1のウエハローダ系50を駆動して、ウエハテーブル6上のウエハWをアライメントセンサ12の光軸BX(本例では投影光学系PLの光軸AXに平行である)に平行な軸の回りに180°回転させる。それに続くステップ107において、図1の主制御系4の制御のもとで、XYステージ8を駆動して、ウエハW上のステップ102で検出したウエハマークWMをアライメントセンサ12の検出領域に移動する。その後、Zチルトステージ7を駆動して、ウエハWの表面のZ方向の位置をステップ101と同じ初期位置に設定する。
【0058】
次のステップ108において、ステップ102と同様にアライメントセンサ12でそのウエハマークWMの像を撮像し、撮像信号をアライメント信号処理系47に供給する。次のステップ109において、ステップ103と同様にアライメント信号処理系47では、供給された撮像信号から図3(A)のX軸のウエハマークの像48XIに対応する波形データI(x)を生成する。そして、この波形データI(x)を(11)式のようにフーリエ級数に展開し、各次数n(n=1〜m)のCOS成分の振幅an及び位相ずれφn180を求め、これらを主制御系4に供給する。なお、位相ずれφn180とは、ウエハWの回転角が180°での位相ずれφnを意味している。主制御系4では、供給された振幅an及び位相ずれφn180をメモリに格納する。
【0059】
次のステップ110において、主制御系4は、ウエハWのZ方向の位置(フォーカス位置)が移動ストロークの下の端点かどうかを判定し、下の端点に達していないときには、ステップ111に移動してZチルトステージ7を介してウエハWのフォーカス位置をδz(ステップ105での変位と同じ値)だけ−Z方向に下げる。その後、ステップ108、109の動作を繰り返して、異なるフォーカス位置Zでウエハマークの波形データI(x)をフーリエ級数に展開し、各次数n(n=1〜m)のCOS成分の振幅an及び位相ずれφn180を求めて、これらをメモリに格納する。このステップ108及び109の動作も、ステップ103及び104の繰り返し回数と同じ回数だけ実行される。
【0060】
そして、ステップ110でウエハWのフォーカス位置が移動ストローク内の下の端点に達しているときには、動作はステップ112及び113に移行して、主制御系4は以下のようにして次数n(n=1〜m)のTISn及びWISn等を計算する。
即ち、従来の指標マーク及び計測マークを用いるTIS計測では、撮像信号の波形データ全体の位置を用いているため像全体が横にずれているのか、像歪みの影響で横にずれているのかが区別できないため、指標マークと計測マークとの相対関係でしかTISの値を定義することが出来なかった。しかしながら、本例の計測においてはTISn及びWISnとして各次数n毎に値を求めるため、基準次数としての1次成分の位置ずれと全ての高次成分(一般にその他の次数の成分)の位置ずれとが同じ場合は、単なる横ずれと判別することができる。
【0061】
ウエハWの回転角が0°での計測(0度計測)による波形データI(x)(像強度分布)の解析で得られた各次数の位相ずれφn0と、ウエハWの回転角が180°での計測(180度計測)による波形データI(x)(像強度分布)の解析で得られた各次数の位相ずれφn180とを用いて、或るフォーカス位置(例えばそれまでのベストフォーカス位置)での各次数nのTISn及びWISnはそれぞれ以下のように表すことができる。
【0062】
TISn=(φn0+φn180)/2−(φ10+φ1180)/2…(13)
WISn=(φn0−φn180)/2−(φ10−φ1180)/2…(14)
例えば図5(A1)及び(A2)に示すようなウエハマーク48X1及び48X2をアライメントセンサ12で検出する際に、それぞれ図5(B1)及び(B2)に示す波形データI1(x)及びI2(x)が得られるものとする。この際に、図5(B1)の波形データI1(x)は、アライメントセンサ12の検出用光学系の収差(装置起因の誤差TIS)によって波形が歪み、図5(B2)の波形データI2(x)は、ウエハマークの断面形状が非対称であること(ウエハ起因の誤差WIS)によって波形が歪んでいる。この場合、図5(A1)のウエハマーク48X1を180°回転して得られる図5(C1)のウエハマーク48X1の断面形状は同じであり、それに対応する図5(D1)の波形データI1(x)も同じ(位相ずれφn0とφn180とが同じ)である。従って、図5(B1),(D1)の波形データに対しては(14)式のWISnは0になり、(13)式のTISnは或る値になるため、装置に起因するn次の誤差TISnを求めることができる。
【0063】
一方、図5(A2)のウエハマーク48X2を180°回転して得られる図5(C2)のウエハマーク48X2の断面形状はX方向に反転し、それに対応する図5(D2)の波形データI2(x)も図5(B2)に対してx方向に反転する(位相ずれφn0とφn180とが逆符号になる)。従って、図5(B2),(D2)の波形データに対しては(13)式のTISnは0になり、(14)式のWISnは或る値になるため、ウエハに起因するn次の誤差WISnを求めることができる。
【0064】
上記のTISnやWISnは、一般的な半導体製造プロセスにおいて使用されるウエハマークに対しても同様に求めることができる。また、一般的にTISnやWISnはマーク構造によって異なる値を取る。よって、或るプロセスにおいて形成されたウエハマークにてTISn、WISnを求め、その大きさがアライメント精度に対して大きい場合、アライメント精度に影響が大きいマーク構造であることが分かる。そのような場合、例えばマークの線幅や構造を変えたマークを数種類用意しておけば、そのマークの中からTISnやWISnが小さくなるものを選択することによって、アライメント誤差の少ないマークを用いることができる。また、WISnに関しては、原因となるウエハマークの非対称成分を数値化する指標として利用し、ウエハマークの非対称が少なくなるような工程改善(各種装置の加工条件の最適化等)を行うことができる。また、ウエハ内の複数のウエハマークに対してWISnの発生傾向を調べ、よりWISnの少ないショットのウエハマークを用いてアライメントを行うことができる。また、事前にアライメント誤差が小さくなるようにマーク構造を最適化するに際しても、TISn、WISnの数値を利用することができる。
【0065】
また、本例ではウエハWのフォーカス位置Zを変えながら計測を行っているため、フォーカス位置Zにおいて0度計測による波形データI(x)の解析で得られた各次数の位相ずれφn0をφn0(Z)として、180度計測による波形データI(x)の解析で得られた各次数の位相ずれφn180をφn180(Z)とする。この場合、フォーカス位置Zにおける各次数n(n=1〜m)のTISn及びWISnをそれぞれTISn(Z)及びWISn(Z)とすると、これらはデフォーカス量が0(即ちZ=0)での1次成分の位相ずれφ10(0)及びφ1180(0)を基準にして以下のように表すことができる。
【0066】
TISn(Z)
=(φn0(Z)+φn180(Z))/2−(φ10(0)+φ1180(0))/2…(15)
WISn(Z)
=(φn0(Z)−φn180(Z))/2−(φ10(0)−φ1180(0))/2…(16)
また、本例では、フォーカス位置Zにおけるフーリエ級数の各次数の振幅anであるan(Z)も同時に得られている。そこで、ステップ113において、各次数の振幅an(Z)から例えばアライメントセンサ12に対するウエハマークのベストフォーカス位置を求めることもできる。即ち、一般的なプロセスマークに対し本計測を行えば、そのマークがFIA方式のアライメントセンサ12による計測に与える影響を各フォーカス位置毎に判断でき、またフォーカス位置最適化アルゴリズム(ベストフォーカス位置を決定するためのアルゴリズム)も選別できる。
【0067】
次に、図7(A),(B),(C),及び(D)は、それぞれ(15)式のTISn(Z)、TISn(Z)と(16)式のWISn(Z)との和、WISn(Z)、及び振幅an(Z)の計測例(次数n=1,2,3,4,5)を示し、図7(A)〜(D)の横軸のフォーカス位置Zはそれまでのベストフォーカス位置からのデフォーカス量(μm)を表している。また、図7(A)〜(C)の縦軸は位相ずれをウエハマークの周期Pを360°とした位置ずれ量(nm)で表し、図7(D)の縦軸は振幅を相対値で表したものである。この図7は、装置起因の誤差TISに比べてウエハ起因の誤差WISが比較的大きい例を表している。そして、例えば図7(D)の振幅an(Z)において、位置Zが−5μmで1次を除く各次数の振幅がほぼ最大となっているため、その−5μmの位置を新たなベストフォーカス位置とすることも考えられる。
【0068】
次に、図8(A),(B),(C),及び(D)は、それぞれTISn(Z)、TISn(Z)とWISn(Z)との和、WISn(Z)、及び振幅an(Z)の別の計測例(次数n=1,2,3,4,5,6)を示し、図8(A)〜(D)の横軸及び縦軸は図7(A)〜(D)の横軸及び縦軸と同じである。この図8は、装置起因の誤差TISに比べてウエハ起因の誤差WISが比較的小さい例を表している。そして、例えば図8(D)の振幅an(Z)において、位置Zが−5μmで各次数の振幅がほぼ最大となっているため、その−5μmの位置を新たなベストフォーカス位置とすることも考えられる。
【0069】
なお、上記の実施形態では、1次の成分を基準次数としているが、それ以外の2次、3次等の成分で例えば振幅がより大きい成分がある場合には、その成分を基準次数としてもよい。また、本例のフーリエ解析によってTISとWISとを求める手法は、例えばレチクルアライメント顕微鏡の誤差を解析する場合も同様に適用することができる。
【0070】
このようにして得られた、TISnやWISnは実プロセスマークに対する像歪み誤差として検査に利用できる。またTISn(Z)やWISn(Z)は、図7、図8に示すようにフォーカス位置Zに対する各次数の位置ずれ分布を示すため、Z変動に対する誤差要因が小さいZ位置の特定や、TISnやWISnが小さいZ位置の特定に使うことができる。
【0071】
また、フーリエ解析の際に同時に得られる各次数毎の振幅値は、各次数が最終的な像強度分に対してどのくらい寄与しているかを表す数値であり、像歪みの寄与を減らすために位置ずれの大きな成分を特定することができる。よって、本例のように像の空間周波数解析を行うことにより、空間周波数フィルタリングや特定空間周波数に対して位置ずれオフセットを持たせるといった、画像処理アルゴリズムの最適化を行うことも可能である。
【0072】
上記のTISn(Z)やWISn(Z)は、一般的な半導体製造プロセスにおいて使用されるウエハマークに対して、前記のTISn、WISnと同様に求めることができる。また、一般的にTISn(Z)やWISn(Z)はマーク構造によって異なる値を取る。よって、或るプロセスにおいて形成されたウエハマークにてTISn(Z)、WISn(Z)を求めれば、各次数のTIS(Z)及びWIS(Z)のばらつきが小さいZ位置が分かる。また、そのZ位置(Zaとする)でのTIS(Za)及びWIS(Za)の大きさが分かり、その大きさがアライメント精度に対して大きい場合には、Z位置を最適化してその位置Zaにて計測を行っても、アライメント精度に影響が大きなマーク構造であることが分かる。そのような場合、例えばマークの線幅や構造を変えたマークを数種類用意しておけば、そのマークの中からTISn(Za)やWISn(Za)が小さくなるものを選択することによって、アライメント誤差の少ないマークを用いることができる。また、WISn(Za)に関しては、原因となるウエハマークの非対称成分を数値化する指標として利用し、ウエハマークの非対称が少なくなるような工程改善(各種装置の加工条件の最適化等)を行うことができる。また、ウエハ内の複数のウエハマークに対し、WISn(Za)の発生傾向やショットによる位置Zaの差をを調べ、よりWISn(Za)の少ないショットのウエハマークを用いてアライメントを行ったり、ウエハ全体を考慮して位置Zaを設定することができる。また、事前にアライメント誤差が小さくなるようにマーク構造を最適化するに際しても、TISn(Z)、WISn(Z)の数値を利用することができる。
【0073】
一般に、ウエハ上には複数点の計測対象ショットがあるため、WISの寄与はそれぞれのショットで異なることが多い。よって、TISのみの寄付を計測したい場合には、多数のショットを計測し、WISの影響を平均化して減少させ、0度計測だけでほぼTISの寄与のみを計測できる可能性がある。また、プロセスウエハのWISが小さい場合は、0度データからTISのみを計測してもよい。この場合は、(15)式のTISn(Z)の式において、180度の計測値φn180(Z)に0度の計測値φn0(Z)を入れて扱えばよい。
【0074】
なお、上記の実施の形態の投影露光装置は、複数のレンズから構成される照明光学系、投影光学系を露光装置本体に組み込み光学調整をして、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより製造することができる。なお、その露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0075】
また、上記の実施の形態の投影露光装置を用いて半導体デバイスを製造する場合、この半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、このステップに基づいてレチクルを製造するステップ、シリコン材料からウエハを形成するステップ、上記の実施の形態の投影露光装置によりアライメントを行ってレチクルのパターンをウエハに露光するステップ、エッチング等の回路パターンを形成するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、及び検査ステップ等を経て製造される。
【0076】
なお、本発明は、走査露光型の露光装置のみならず、一括露光型の露光装置にも同様に適用することができる。また、本発明の露光装置の用途としては半導体デバイス製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0077】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、2つのマーク間の相対的な位置ずれを計測する必要がないため、マーク検出系の計測誤差の要因又は要因別の誤差を、容易にかつ迅速に求めることができる。
また、求められた計測誤差のうちで装置に起因する誤差を補正することによって、マーク検出系(マーク検出装置)の計測精度を高めることができ、そのマーク検出系を用いてアライメントを行うことによって、露光装置における重ね合わせ精度等を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例の投影露光装置を示す図である。
【図2】(A)は図1中のウエハWを示す拡大平面図、(B)は図2(A)のウエハマークWMを示す拡大平面図である。
【図3】(A)は図1中の撮像素子29の撮像面の画像の一例を示す図、(B)はウエハマークの断面形状の一例を示す図、(C)は図3(B)に対応する波形データを示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるフーリエ解析の原理説明図である。
【図5】装置起因の誤差TIS及びウエハ起因の誤差WISの説明に供する図である。
【図6】本発明の実施形態のフーリエ解析の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】その実施形態において計算されたTISn(Z)、WISn、及び振幅an(Z)の一例を示す図である。
【図8】その実施形態において計算されたTISn(Z)、WISn、及び振幅an(Z)の他の例を示す図である。
【図9】(A)は指標マークと計測マークとを用いて重ね合わせ精度を計測する場合の両マークの一例を示す図、(B)は図9(A)のマーク構造を示す断面図、(C)は図9(A)のマークから得られる撮像信号を示す図である。
【符号の説明】
1…照明光学系、R…レチクル、PL…投影光学系、W…ウエハ、WM…ウエハマーク、7…Zチルトステージ、12…FIA方式のアライメントセンサ、18,23…対物レンズ、29…撮像素子、47…アライメント信号処理系、48X…X軸のウエハマーク、50…ウエハローダ系、54…昇降ターンテーブル
【発明の属する技術分野】
本発明は、物体上に形成されたマークに関する情報を求めるマーク検出技術に関し、例えば半導体素子、液晶表示素子、又は薄膜磁気ヘッド等のデバイスを製造するためのリソグラフィ工程中で使用される露光装置に備えられたアライメントセンサの誤差要因を評価する場合に使用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、例えば半導体素子を製造するためのリソグラフィ工程においては、マスクとしてのレチクルのパターンをステッパー等の露光装置を用いて、基板としてのレジストが塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上に転写する露光工程、現像工程、及びエッチング等のパターン形成工程等を繰り返して行うことで、複雑な回路が多数のレイヤに亘って形成されていく。その露光工程において露光装置は、レジストが塗布されたウエハ上の所定の複数のショット領域に形成されたアライメントマーク(ウエハマーク)の位置をアライメントセンサによって計測し、この計測結果を統計処理してウエハ全体の位置と回転量を算出し、この算出結果に基づいてレチクルのパターンをウエハ上の各ショット領域に既に形成されている回路パターンに高精度に重ね合わせている。極めて細い線幅の回路パターンを露光するためには、この重ね合わせは数nm程度の精度で行われる必要がある。よって、アライメント精度にはそれ以下の精度が必要とされている。
【0003】
そのような露光装置用の高精度なアライメントセンサとして、従来より明視野型の顕微鏡を用いてウエハマークの像を形成し、その像を撮像して得られた撮像信号を画像処理してそのウエハマークの位置を検出する、FIA(Field Image Alignment)方式のセンサが用いられている(例えば特許文献1参照)。また、露光装置においては、デバイスを製造する際のスループット(単位時間当たりに露光できるウエハの枚数)を高めることも常に要求されている。そのため、FIA方式のアライメントセンサにおいても、高いアライメント精度を保つことに加え、高速にマーク計測できることが要求されている。
【0004】
一方、アライメント結果に基づく重ね合わせ精度が十分良好か否かを判断するために、重ね合わせ測定機が用いられる。具体的な測定方法としては、予め前工程において、ウエハマークと同時に重ね合わせ測定用の指標マークをウエハ上の各ショット領域内に焼き付けておく。そして、その指標マークの内側に転写される相対位置検出用の計測マークを含むレチクルパターンを用いて、かつFIA方式のアライメントセンサを用いてアライメントを行いながら、そのウエハの各ショット領域に重ね合わせ露光を行う。その後、ウエハの現像を行い、現像されたウエハの各ショット領域で指標マークに対する計測マークの相対的な位置ずれを重ね合わせ測定機で計測することによって、当該露光工程における重ね合わせ誤差を検出することができる。
【0005】
例えば図9(A)に示すように、指標マーク82として白抜きのボックス形状のパターンを形成しておき、重ね合わせ露光後の計測マーク81としては、斜線を施して示すボックス形状のパターンを形成する。9(B)には図9(A)の一点鎖線に沿った断面構造を示す。例えば、指標マーク部84は段差構造、計測マーク部83はレジストを残したパターンとなっている。このような断面構造のマークを撮像すると、図9(C)に示すような撮像信号が得られる。図9(C)の中心部の計測マークによる信号85と、周辺の指標マークによる信号86との相対位置を計測することによって、重ね合わせ誤差を計測することができる。この計測の結果、重ね合わせ誤差がある場合には、その誤差分をオフセットとして露光装置に認識させ、この露光装置でアライメントする際にそのオフセット分の補正を行うことで、より高い重ね合わせ精度で露光することが可能となる。このため、重ね合わせ測定機の相対位置計測には、露光装置のアライメント精度や重ね合わせ精度に比べて更に良好な計測精度が要求される。
【0006】
高精度な位置計測のために、計測対象のマークの撮像信号をデジタル化した波形データは歪みが無く計測誤差が生じないものが望ましい。しかしながら、撮像信号を得るために用いる顕微鏡の結像光学系に収差が残存していると、波形データが歪み、その結果として計測誤差が発生する。また、ウエハマークが形状誤差を持つと、それに起因して波形データが歪んで計測誤差が発生する。そこで、重ね合わせ測定機においては、指標マークと計測マークとの相対位置を、ウエハを普通に設置して計測した結果(回転角0°の計測結果)と、ウエハを180°回転させて計測した結果(回転角180°の計測結果)とを用いて、その計測誤差を補正している。
【0007】
即ち、結像光学系の収差に起因する波形データの歪みは、回転角0°の計測結果と回転角180°の計測結果とで変化しないが、ウエハマークの形状誤差に起因する波形データの歪みは、回転角0°の計測結果と回転角180°の計測結果とで反転する。そこで、回転角0°の計測結果をM0、回転角180°の計測結果をM180とすると、装置起因の誤差であるTIS(Tool Induced Shift)、及びウエハ起因の誤差であるWIS(Wafer Induced Shift)は、それぞれ次のように表すことができる。
【0008】
TIS=(M0+M180)/2 …(1)
WIS=(M0−M180)/2 …(2)
また、重ね合わせ測定機での重ね合わせ誤差の計測値をMとすると、計測値Mは以下のように回転角0°の計測結果M0からTISの影響を除いて表される。
M=M0−TIS …(3)
【0009】
【特許文献1】
特開平7−183186号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、FIA方式のアライメントセンサにおいても、重ね合わせ測定機と同様に非常に高いアライメント精度が要求されており、重ね合わせ測定機におけるTIS及びWISに相当する誤差成分を減らすことは同様に重要である。
しかしながら、FIA方式のアライメントセンサの場合は、指標マークと計測マークとを用いた相対位置計測ではなく、ウエハ上のウエハマークの位置(絶対位置)を高速に計測しなければならない。また、計測対象のウエハマークの形状も絶対位置計測用に最適化されている。このような条件の違いにより、FIA方式のアライメントセンサの計測誤差を重ね合わせ測定機の場合と同様の装置起因の誤差(TIS)とウエハ起因の誤差(WIS)とに分けて求めることは、従来は行われていなかった。
【0011】
また、例えばFIA方式のアライメントセンサの調整時やメンテナンス時において、マーク検出用の顕微鏡の収差を求める手法として、重ね合わせ測定機の場合と同様の2つのマーク(指標マーク及び計測マーク)を用いて重ね合わせ露光を行い、露光後の2つのマークの位置ずれ量を計測してその顕微鏡に起因するTISを求めるものとすると、その計測時間が長くなり、露光工程を停止する時間が長くなるという不都合がある。更に、それによって求められるTISは、アライメントセンサの実際の使用条件下での計測誤差とは異なる恐れもある。
【0012】
本発明は、斯かる点に鑑み、アライメントセンサのようなマーク検出系の計測誤差の要因又は要因別の誤差を、容易にかつ迅速に求めることができるマーク検出技術を提供することを第1の目的とする。
更に本発明は、そのマーク検出技術を用いて重ね合わせ精度等を高めることができる露光技術を提供することを第2の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1のマーク検出方法は、物体(W)上で所定方向の位置を示すマーク(48X)に関する情報を求めるマーク検出方法において、そのマークからの光束を検出用光学系(20,18,23,24,26)を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得る第1工程(ステップ102)と、その第1工程で得られた検出信号をその所定方向の位置に関して基準次数及びそれ以外の次数を含む複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開する第2工程(ステップ103)と、そのフーリエ級数のそのそれ以外の次数の成分とその基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、その検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める第3工程(ステップ112)とを有するものである。
【0014】
斯かる本発明によれば、そのマークの検出信号の基準次数のフーリエ成分を基準としたそれ以外の次数のフーリエ成分のずれ量から、そのマークに関する情報に作用する誤差要因(又は検出用光学系等に起因する誤差)を求めることができる。従って、2つのマークを比較する方法と比べて容易にかつ迅速に、その検出用光学系を含むマーク検出系の誤差要因を求めることができる。
【0015】
この場合、そのマーク又はその検出用光学系をこの検出用光学系の光軸(BX)に平行な軸の回りに180°回転する第4工程(ステップ106)と、その第4工程の後でそのマークからの光束をその検出用光学系を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得る第5工程(ステップ108)と、その第5工程で得られた検出信号をその所定方向の位置に関してその基準次数及びそのそれ以外の次数を含む複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開する第6工程(ステップ109)とを更に有し、その第3工程は、その第2工程及びその第6工程でそれぞれ得られたフーリエ級数のそのそれ以外の次数の成分とその基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、その検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める工程を含むことが望ましい。
【0016】
この際にその第4工程でそのマーク(その物体)を180°回転すると、その第5工程で得られる検出信号は、その第2工程で得られる検出信号に比べてその検出用光学系に起因する誤差は実質的に同じであるが、その物体に起因する誤差は位置に関して反転する。そこで、その検出用光学系に起因する誤差とその物体に起因する誤差とを容易にかつ正確に分離することができる。その後、その検出用光学系に起因する誤差を補正することによって、より高精度にマーク位置を検出することができる。
【0017】
また、その第3工程は、その第2工程及びその第6工程でそれぞれ得られたフーリエ級数のそのそれ以外の次数の成分のその基準次数の成分に対する位相ずれを求め、この位相ずれの和及び差に基づいて、それぞれその検出用光学系に起因する誤差及びその物体に起因する誤差を求める工程を有することが望ましい。これによれば、簡単な計算で検出用光学系に起因する誤差及びその物体に起因する誤差を分離して求めることができる。
【0018】
また、その第1工程及びその第2工程と、その第5工程及びその第6工程とを、そのマークのその検出用光学系に対するフォーカス位置を変えながら複数回実行し(ステップ105,111)、その第3工程は、その第2工程及びその第6工程でそれぞれ得られたフーリエ級数のそのそれ以外の次数の成分とその基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、その検出用光学系に対するそのマークのベストフォーカス位置に関する情報を求める工程を有することが望ましい。
【0019】
この際に、例えばフォーカス位置を変えたときに各次数のフーリエ成分の振幅が全体として最も大きくなるときのフォーカス位置をベストフォーカス位置とするなどによって、マーク検出系に対するベストフォーカス位置を容易に決定することができる。
また、その基準次数の成分は、1次の正弦波成分及び1次の余弦波成分の少なくとも一方であることが望ましい。1次の成分は最も周期(ピッチ)が長いと共に、通常は振幅が最も大きいため、基準次数として好適である。
【0020】
また、本発明による第2のマーク検出方法は、物体(W)上で所定方向の位置を示すマーク(48X)に関する情報を求めるマーク検出方法において、そのマークからの光束を検出用光学系(20,18,23,24,26)を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得る第1工程(ステップ102)と、その第1工程で得られた検出信号をその所定方向の位置に関して複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開し、このフーリエ級数のその複数次数の成分の振幅情報を求める第2工程(ステップ103)と、その第2工程で求められた振幅情報に基づいて、その検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める第3工程(ステップ113)とを有するものである。
【0021】
本発明によれば、そのマークの検出信号のフーリエ成分の振幅情報から、そのマークに関する情報に作用する誤差要因、例えばデフォーカスを求めることができる。従って、2つのマークを比較する方法と比べて容易にかつ迅速に、その検出用光学系を持つマーク検出系の誤差要因を求めることができる。
この場合、その第1工程及び第2工程を、そのマークのその検出用光学系に対するフォーカス位置を変えながら複数回実行し(ステップ105)、その第3工程は、その第2工程で求められた振幅情報に基づいて、その検出用光学系に対するそのマークのベストフォーカス位置に関する情報を求める工程を有することが望ましい。これによれば、振幅情報を比較するだけで、容易に例えばベストフォーカス位置を求めることができる。
【0022】
次に、本発明による第1のマーク検出装置は、物体(W)上で所定方向の位置を示すマーク(48X)に関する情報を求めるマーク検出装置において、そのマークからの光束を検出用光学系(20,18,23,24,26)を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得るマーク検出系(12)と、そのマーク検出系で得られた検出信号をその所定方向の位置に関して基準次数及びそれ以外の次数を含む複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開し、このフーリ級数のそのそれ以外の次数の成分とその基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、その検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める演算装置(47,4)とを有するものである。
【0023】
斯かる本発明によれば、本発明の第1のマーク検出方法を実施でき、2つのマークを比較する方法と比べて容易にかつ迅速に、そのマーク検出系の誤差要因を求めることができる。また、そのマーク検出系において求められた誤差要因に基づく誤差を補正することによって、マークの計測精度を高めることができる。
この場合、その基準次数の成分は、1次の正弦波成分及び1次の余弦波成分の少なくとも一方であり、その物体をその検出用光学系に対して180°回転するための回転機構(50)を更に備えることが望ましい。その回転機構でその物体を180°回転することによって、上記のマーク検出方法の第4工程〜第6工程を実行でき、その検出用光学系に起因する誤差とその物体に起因する誤差とを容易にかつ正確に分離することができる。
【0024】
また、本発明による第2のマーク検出装置は、物体(W)上で所定方向の位置を示すマーク(48X)に関する情報を求めるマーク検出装置において、そのマークからの光束を検出用光学系(20,18,23,24,26)を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得るマーク検出系(12)と、そのマーク検出系で得られた検出信号をその所定方向の位置に関して複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開し、このフーリエ級数のその複数次数の成分の振幅情報を求め、その振幅情報に基づいてその検出用光学系及びその物体の少なくとも一方に起因して、そのマークに関する情報に作用する誤差要因を求める演算装置(47,4)とを有するものである。
【0025】
本発明によれば、本発明の第2のマーク検出方法を実施でき、2つのマークを比較する方法と比べて容易にかつ迅速に、そのマーク検出系の誤差要因を求めることができる。また、そのマーク検出系において求められた誤差要因に基づく誤差を補正することによって、マークの計測精度を高めることができる。
また、本発明による露光方法は、第1物体(R)を露光ビームで照明し、その露光ビームでその第1物体及び投影光学系(PL)を介して第2物体(W)を露光する露光方法において、本発明の何れかのマーク検出方法でその第2物体上に形成されたマーク(WM)に関する情報を求めるものである。本発明のマーク検出方法を適用して求めた誤差を補正することによって、重ね合わせ精度等を向上させることができる。
【0026】
また、本発明による露光装置は、第1物体(R)を露光ビームで照明し、その露光ビームでその第1物体及び投影光学系(PL)を介して第2物体(W)を露光する露光装置において、本発明の何れかのマーク検出装置を備えるものである。本発明のマーク検出装置で求めた誤差要因による誤差、例えばマーク検出装置に起因する誤差を補正することによって、重ね合わせ精度等を向上させることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例につき図面を参照して説明する。
図1は、本例で使用される走査露光型の投影露光装置を示し、この図1において露光時には、KrF(波長248nm)又はArF(波長193nm)よりなるエキシマレーザ光源等の露光光源(不図示)からの露光ビームとしての露光光ILは、照明光学系1を介してマスクとしてのレチクルRのパターン面の細長い照明領域を均一な照度分布で照明する。照明光学系1は、照度分布均一化用のオプティカル・インテグレータ、照明領域を規定する視野絞り(レチクルブラインド)、及びコンデンサレンズ系等から構成されている。
【0028】
そして、露光光ILのもとで、レチクルR上の回路パターンの一部の像が、両側テレセントリックな投影光学系PLを介して投影倍率β(βは1/5,1/4等)で、ウエハW上の一つのショット領域上の細長い露光領域に投影される。ウエハWは例えば半導体(シリコン等)又はSOI(silicon on insulator)等の直径が150〜300mm程度の円板状の基板であり、その表面にフォトレジストが塗布されている。レチクルR及びウエハWはそれぞれ第1物体及び第2物体(又は単に物体)ともみなすことができる。以下、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1の紙面に平行にX軸を取り、図1の紙面に垂直にY軸を取って説明する。本例の走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向はY方向である。
【0029】
このとき、レチクルRはレチクルステージ2上に吸着保持され、レチクルステージ2は、レチクルベース3上にエアーベアリングを介してY方向に一定速度で駆動され、かつX方向、Y方向、及びZ軸の回りの回転方向に微動できるように載置されている。レチクルステージ2のX方向、Y方向の位置、及び回転角はレチクルステージ駆動系5内のレーザ干渉計によって計測されている。この計測値及び装置全体の動作を制御するコンピュータよりなる主制御系4からの制御情報に基づいて、レチクルステージ駆動系5は、リニアモータ等の駆動機構(不図示)を介してレチクルステージ2の速度及び位置を制御する。
【0030】
一方、ウエハWは不図示のウエハホルダを介してウエハテーブル6上に真空吸着によって保持されており、このウエハテーブル6がZ方向の位置及びX軸、Y軸の回りの傾斜角を制御するためのZチルトステージ7上に固定され、Zチルトステージ7はXYステージ8上に固定されている。XYステージ8は、定盤よりなるウエハベース9上にエアーベアリングを介してY方向に一定速度で移動でき、かつX方向、Y方向にステップ移動できるように載置されている。また、投影光学系PLの下部側面に、ウエハWの表面に複数のスリット像を斜めに投影する投射光学系11Aと、ウエハWからの反射光を受光してそのスリット像を再結像して、この再結像された像のシフト量に応じた信号を出力する受光光学系11Bとからなる斜入射方式の多点のオートフォーカスセンサ(11A,11B)が配置されている。走査露光時には、このオートフォーカスセンサ(11A,11B)の計測値に基づいてウエハステージ駆動系10は、Zチルトステージ7を介してオートフォーカス方式でウエハWの表面を投影光学系PLの像面に合わせ込む。
【0031】
ウエハテーブル6、Zチルトステージ7、及びXYステージ8よりウエハステージが構成されている。ウエハテーブル6(ウエハW)のX方向、Y方向の位置及び回転角は、ウエハステージ駆動系10内のレーザ干渉計によって例えば1nm程度の位置分解能で計測されている。この計測値及び主制御系4からの制御情報に基づいて、ウエハステージ駆動系10は、リニアモータ等の駆動機構(不図示)を介してXYステージ8(ウエハステージ)の速度及び位置を制御する。
【0032】
また、ウエハベース9の+Y方向の近傍にウエハローダ系50が配置されている。ウエハローダ系50は、不図示のコラムによって支持されたX軸ガイド53と、X軸ガイド53に沿ってリニアモータ等によってX方向に駆動できるように配置されたY軸ガイド52と、Y軸ガイド52に沿ってリニアモータ等によってY方向に駆動できるように配置されたウエハアーム51と、後述の昇降ターンテーブル54とを含んでいる。一例としてウエハテーブル6の中央には、ウエハを昇降するための昇降ピン(不図示)が配置されている。そして、ウエハのロード時には、この昇降ピンを或る程度上昇させた状態でウエハアーム51を介してその昇降ピンの上方にウエハを移動させた後、その昇降ピンを更に上昇させて、ウエハアーム51を引き抜いてから、その昇降ピンを下降させることで、ウエハテーブル6上にウエハを受け渡すことができる。この逆の手順で、ウエハテーブル6からウエハアーム51上へのウエハWのアンロードも行うことができる。ウエハアーム51は更に不図示のウエハ搬送系(又はウエハカセット)との間でウエハの受け渡しを行う。
【0033】
また、X軸ガイド53の−X方向の端部に、Z方向への昇降及び光軸AXに平行な軸の回りに180°の回転ができる昇降ターンテーブル54が配置されている。この構成において、ウエハアーム51上の位置P1にウエハを移動した状態で、更にウエハアーム51を昇降ターンテーブル54上に移動した後、昇降ターンテーブル54を上昇させてウエハアーム51から昇降ターンテーブル54にウエハを受け渡す。続いて、昇降ターンテーブル54を180°回転した後、昇降ターンテーブル54を下降させてウエハアーム51上にウエハを受け渡すことで、ウエハアーム51上のウエハを光軸AXに平行な軸の回りに180°回転することができる。本例のウエハローダ系50が、第2物体としてのウエハの回転機構に対応している。
【0034】
そして、ウエハWに対する走査露光時には、レチクルステージ2及びXYステージ8を駆動して、露光光ILの照明領域及びこれに投影光学系PLに関して共役な露光領域に対してそれぞれレチクルRとウエハW上の一つのショット領域とをY方向に同期走査する動作と、XYステージ8を駆動してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作とが繰り返される。この動作によって、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の各ショット領域にレチクルRのパターン像が露光される。
【0035】
さて、この露光が重ね合わせ露光であるとすると、その露光前に予めレチクルRのアライメント及びウエハWのアライメントを行っておく必要がある。そのため、レチクルRの上方には、例えば特開平7−176468号公報等に開示されているレチクルアライメント顕微鏡(不図示)が配置されている。そして、このレチクルアライメント顕微鏡によってレチクルR上の所定のアライメントマーク(レチクルマーク)と、ウエハテーブル6上の所定の基準マーク(不図示)との位置ずれ量を検出し、この位置ずれ量に基づいてレチクルRの位置及び回転角が補正される。
【0036】
また、ウエハW上の各ショット領域にはそれぞれアライメントマークとしてのウエハマークが付設されており、そのウエハマークの位置を検出するために、投影光学系PLの側面にオフ・アクシス方式でFIA(Fie1d Image A1ignment )方式よりなる画像処理方式のアライメントセンサ12が配置されている。アライメントセンサ12は、白色光で被検マークを照明する照明系と、その被検マークの拡大像を形成する検出用光学系と、その像を撮像するCCD型の2次元撮像素子とを備えると共に、内部にオートフォーカスセンサを備えている(詳細後述)。
【0037】
アライメントセンサ12からの撮像信号より、アライメント信号処理系47は検出対象のマークの検出中心(指標マークの中心)からの位置ずれ量を求めて主制御系4に供給する。主制御系4は、ウエハステージ駆動系10内のレーザ干渉計を介して検出されるウエハテーブル6(ウエハW)のX座標、Y座標にその位置ずれ量を加算することによって、その検出対象のマークのステージ座標系(X,Y)での配列座標を求めることができる。
【0038】
また、レチクルRのアライメント時に、ウエハテーブル6上の別の基準マークの位置をアライメントセンサ12を介して検出することによって、レチクルRのパターン像の中心とアライメントセンサ12の検出中心との間隔であるベースライン量が求められて、主制御系4の記憶部に記憶される。これ以後は、アライメントセンサ12の検出結果を例えば特公平4−47968号公報で開示されているエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)方式で統計処理して得られるウエハW上の各ショット領域の配列座標を、そのベースライン量分だけずらすことによって、ウエハW上の各ショット領域に既に形成されている回路パターンと、レチクルRのパターン像とを高精度に重ね合わせて露光することができる。
【0039】
次に、本例のアライメントセンサ12の構成につき説明する。図1において、不図示の検出用光源から光ファイバー13を介して導かれた近赤外及び可視の広帯域の光(白色光)を含むアライメント用の検出光は、レンズ14、照明視野絞り15、レンズ16、ビームスプリッタ17、第1対物レンズ18、落射照明用のミラー19、レンズ20、及び指標マークが形成された指標板21を介してウエハW上の検出対象のマークとしてのウエハマークWMを照明する。ウエハマークWMでの反射、散乱、及び回折によって上方に向かう光(以下、「マーク光」と呼ぶ)は、指標板21、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17を経てミラー22に至る。また、指標板21の上面には指標マークが形成され、その下面には検出光のうち長波長領域の光(赤外光)のみを反射させるコーティングが施されており、ミラー19からレンズ20を介して指標板21に入射した検出光のうち、赤外成分の光が指標板21の下面で反射され、上面の指標マークを照明する。指標板21上面の指標マークで反射、散乱、及び回折された光は、再び下方に向かう。指標板21の下面で再反射された光(以下、「指標光」と呼ぶ)は、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17を経てミラー22に至る。
【0040】
ミラー22で上方に反射されたマーク光及び指標光は、第2対物レンズ23、レンズ24、開口絞り25、レンズ26、及びミラー27を経てビームスプリッタ28に至る。ビームスプリッタ28で反射されたマーク光は、CCD型の2次元撮像素子29の撮像面にウエハマークWMの拡大像を形成し、ビームスプリッタ28を透過してミラー30で反射された指標光は、CCD型の2次元撮像素子31の撮像面に指標マークの拡大像を形成する。撮像素子29及び31の撮像信号はアライメント信号処理系47に供給されている。この場合、指標板21、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17、ミラー22、第2対物レンズ23、レンズ24、開口絞り25、レンズ26、ミラー27、及びビームスプリッタ28よりアライメントセンサ12の検出用光学系が構成され、この検出用光学系は広帯域の検出光のもとでウエハW上のウエハマークWMの拡大像を撮像素子29上に形成する。また、検出用光学系は、指標マークを撮像素子31上に形成するためにも兼用されている。その検出用光学系のウエハW上での光軸を光軸BXと呼ぶ。
【0041】
また、不図示の光源から光ファイバー32を介して導かれた所定波長域のオートフォーカス用の検出光(以下、「AF光」と呼ぶ)は、レンズ33、ミラー34を介してスリット板35を照明し、スリット板35のスリットを通過したAF光は、レンズ36、ビームスプリッタ37、レンズ38を経て部分的に光束を反射する部分ミラー39で下方に反射される。反射されたAF光は、第2対物レンズ23、ミラー22、ビームスプリッタ17、第1対物レンズ18、ミラー19、レンズ20、及び指標板21を介してウエハW上の検出対象のウエハマークWMを含む領域にスリット像を形成する。ウエハWでの反射、散乱、及び回折によって上方に向かうAF光は、指標板21、レンズ20、ミラー19、第1対物レンズ18、ビームスプリッタ17を経てミラー22に至り、ミラー22で上方に反射されたAF光は、第2対物レンズ23、部分ミラー39を経てビームスプリッタ37に入射する。ビームスプリッタ37を透過したAF光は、レンズ40、開口絞り41、レンズ42、瞳分割用のミラー43、レンズ44、波長選択フィルタ45を介して例えばラインセンサよりなる撮像素子46上に、分割された2つのスリット像を形成する。撮像素子46の撮像信号もアライメント信号処理系47に供給され、アライメント信号処理系47はその撮像信号を処理して、ウエハW上の検出対象の領域のアライメントセンサ12の検出用光学系のベストフォーカス位置に対するZ方向へのずれ量(デフォーカス量)を求め、求めたデフォーカス量を主制御系4に供給する。なお、そのベストフォーカス位置は、本例では投影光学系PLの像面とほぼ一致している。このように、アライメントセンサ12には、光ファイバー32、スリット板35、ビームスプリッタ37、部分ミラー39、レンズ38,40,42,44、瞳分割ミラー43、及び撮像素子46を含むオートフォーカスセンサが組み込まれている。
【0042】
なお、アライメントセンサ12は図1の構成には限定されず、例えば特開平7−183186号公報に開示されているような種々の構成を取り得る。
次に、本例のウエハマークの一例につき図2を参照して説明する。
図2(A)は、図1のウエハWを示す拡大平面図であり、図2(A)において、ウエハWの表面はX方向、Y方向に所定ピッチで複数のショット領域SAに区分され、各ショット領域SAにそれぞれ凹凸パターンよりなる2次元のウエハマークWMが形成されている。ウエハマークWMは、図2(B)に示すように、X方向に所定ピッチで凹部と凸部とを格子状に形成したX軸のウエハマーク48Xと、このウエハマーク48XをY方向に挟むように、Y方向に所定ピッチで凹部と凸部とを格子状に形成した2つのY軸のウエハマーク48Yとを備えている。
【0043】
例えばEGA方式でアライメントを行う場合には、図1のアライメントセンサ12によって図2(A)のウエハWの周辺部にほぼ均等に配列されたショット領域A1〜A10に形成されたウエハマークWMのX方向、Y方向の位置がそれぞれ検出される。
本実施形態では、説明を容易にするためマークの凹凸部分の反射率が一定の、非常に単純な場合を想定している。一般的なウエハマークは、半導体プロセスの都合により様々な構造を持っている。例えば、凹部と凸部との反射率が異なっていたり、逆に反射率差が大きく凹凸は小さかったり、また、凹部凸部に相当するマークの断面構造が、様々な物質により複雑な層を形成している場合もある。また、一般的にはマーク上にはレジストが塗布されている。そのような一般的なウエハマークに対しても本実施形態の内容は同様に適用できる。
【0044】
図3(A)は、図1の撮像素子29の撮像面29aに形成されるウエハマークWMの拡大像(X軸のウエハマーク48Xの像48XI及びY軸の2つのウエハマーク48Yの像48YI)の一例を示し、図3(A)において図2(A)のウエハW上のX方向、Y方向に対応する方向をそれぞれx方向、y方向としてある。撮像素子29から得られた2次元画像を表す撮像信号は、アライメント信号処理系47にてアナログ/デジタル(A/D)変換された後、所定範囲のx軸に平行な複数の波形データに変換される。X軸のウエハマークの像48XIのx方向の位置を求めるためには、一例として前記x軸に平行な複数の波形データを加算(又は平均)することによって、図3(C)に示すようなX軸のウエハマーク48Xの波形データI(x)を得る。波形データI(x)は、撮像面上のx方向の位置(例えば画素の番号で表される)に対応させてアライメント信号処理系47内のメモリに格納される。ウエハW上のX方向の長さと撮像面29a上のx方向の長さとの比の値は、主制御系4及びアライメント信号処理系47内の処理部に記憶されている。
【0045】
図3(B)は、ウエハW上のX軸のウエハマーク48Xの断面形状の一例を示し、図3(C)の波形データI(x)は、図3(B)のウエハマーク48Xに対して或るフォーカス位置で検出される撮像信号をデジタル化したものである。この例の波形データI(x)は、ウエハマーク48Xの各段差部でそれぞれ値がパルス状に低下する信号となっている。この場合には、一例として所定のスライスレベルで波形データI(x)を2値の複数のパルスで表し、これら複数のパルスのx方向の位置を平均化することでウエハマークの像48Iのx方向の位置を求めることができる。
【0046】
次に、アライメントセンサ12の検出精度を向上するためには、アライメントセンサ12の検出結果からアライメントセンサ12自体に起因する誤差を補正することが望ましい。以下では、フーリエスペクトルを用いた解析によって、アライメントセンサ12の検出誤差を検出用光学系の収差等の装置に起因する誤差であるTIS(Tool Induced Shift)と、ウエハマークWMの断面の非対称構造等を含むウエハに起因する誤差であるWIS(Wafer Induced Shift)とに分ける方法につき説明する。
【0047】
先ず、本例の光学原理上の説明を行う。一般的なパーシャルコヒーレント結像光学系の理論として、参考文献1「鶴田匡夫著:応用物理工学選書1”応用光学1”pp.282−292(培風館,1990)」によると、使用波長、結像光学系の開口数、照明光学系の開口数、物体(本例ではウエハマークを含むウエハ)の情報(ウエハマークのピッチ、線幅、断面構造等)、波面収差等の光学的パラメータが与えられている場合には、結像光学系により形成されるその像は、像のフーリエスペクトルとして数値計算可能である。また、物体をデフォーカスさせたときの像についても、同様に数値計算することが可能である。
【0048】
また、前記光学原理は、物体が周期構造を持っている場合、数値計算(シミュレーション)の結果として、像はまず像のフーリエスペクトルつまり像のフーリエ級数の形で必ず得られることを示している。このような結像光学系の性質をアライメントマークとしてのウエハマークを計測するFIA(Fie1d Image A1ignment )に適用すると、以下のようになる。
例えば、図4(A)のようにウエハマーク48Xを周期(ピッチ)Pの周期的パターンと考えると、そのアライメントセンサ12による撮像信号から得られる波形データI(x)は、次数n(n=1〜m)で振幅anと位相ずれφnとを持つ余弦フーリエ級数として以下のように表される。以下の式において、a0はオフセットである。なお、余弦フーリエ級数の代わりに正弦フーリエ級数、又はこれらを混合したフーリエ級数を用いてもよい。
【0049】
【数1】
ここで、xは検出信号としての波形データ(像強度分布に対応している)の計測方向の位置、Pはウエハマークの周期、mは次式で規定される空間周波数の最大次数を表す数値である。なお、次式において、NAは図1のアライメントセンサ12の検出用光学系の開口数、λはアライメントセンサ12の検出光の平均波長であり、本例ではmは2以上の整数となるように開口数NA、周期P、波長λが設定されている。
【0050】
m<2・NA・P/λ …(12)
その検出用光学系を通した像のフーリエスペクトルは、空間周波数できまる次数mの周期の余弦関数(以下、「COS関数」と言う)までの成分しか持たないことになる。
具体的に波形データI(x)が図4(B)の場合には、そのフーリエ級数中の1次のCOS関数i1(x)、2次のCOS関数i2(x)、及び3次のCOS関数i3(x)はそれぞれ図4(C)、(D)、及び(E)のようになる。図4(C)には1次のCOS関数i1(x)の振幅a1及び位相ずれφ1が図示されている。
【0051】
なお、ウエハマークが非周期的孤立パターン(例えば、図4(A)に示すウエハマーク48Xに対して、凸又は凹のライン状のパターンが複数本ではなく1本しかないようなパターン)である場合には、ピッチPが物体構造からは決まらない。しかしながら、このような場合にも、孤立パターンに対して十分に大きな周期(ピッチP)を設定すれば、ウエハマーク像を前記同様の(11)式の形に表すことができる。例えば非周期パターンの線幅の5倍程度の周期にすれば、周期的パターンと同様に扱うことができる。
【0052】
ここで、特徴として重要な点が2点挙げられる。先ず当然の事ながら、各次数のCOS関数そのものは歪みの無い周期関数であること。また、各次数n(n=1〜m)の位相ずれφnが、直接各次数のCOS成分の横ずれ量(x方向の位置ずれ量)を表していることである。光学系に収差等の像歪発生要因が残存している場合、各次数の位相ずれφnは各次数毎のTISに相当する量となる。また、物体形状が歪みを持つ場合には、各次数の位相ずれφnは各次数毎のWISに相当する量となる。更に、両方の成分を持つ場合も考えられる。
【0053】
従来のTIS・WISの計測手法においては、画像処理アルゴリズムにより撮像信号の波形データからマーク位置を求めているが、本例の手法による各COS成分の位相ずれ、つまり各COS成分の位置ずれ量は、原理的に像のフーリエ級数が持っている画像処理アルゴリズムに依らない絶対的な数値である。
これらの各次数のCOS成分を用いて、各次数毎にTISとWISとに相当する値を定義することができる。以下では、フーリエ級数中の次数n(n=1〜m)のCOS成分から求められるTIS及びWISをそれぞれTISn及びWISnとし、これらを図6のフローチャートの動作に従って計測する。
【0054】
先ず図6のステップ101において、図1の主制御系4の制御のもとで、XYステージ8を駆動して、ウエハW上の所定のウエハマークWMをアライメントセンサ12の検出領域に移動した後、Zチルトステージ7を駆動して、ウエハWの表面のZ方向の位置を初期位置(ここではベストフォーカス位置とされている位置から+Z方向に移動ストロークの1/2だけずれた位置)に設定する。この際のオートフォーカスセンサとしては、露光用のオートフォーカスセンサ(11A,11B)を用いてもよい。本例では、アライメントセンサ12の検出領域でのフォーカス位置を高精度に制御するために、アライメントセンサ12内の撮像素子46を含むオートフォーカスセンサを使用する。また、ここまでは、光学原理に基づき新しいウエハマーク像の表現方法を説明してきたが、以下では、その表現方法をFIAによる実際のウエハマーク計測に適用した例として説明する。
【0055】
次のステップ102において、アライメントセンサ12でそのウエハマークWMの像を撮像し、撮像信号をアライメント信号処理系47に供給する。次のステップ103において、アライメント信号処理系47では、供給された撮像信号から図3(A)のX軸のウエハマークの像48XIをx方向に走査した複数の撮像信号を取り出し、これらの撮像信号をy方向に加算(又は平均化)することによって計測方向の位置xに関する波形データI(x)を生成する。そして、この波形データI(x)を(11)式のようにフーリエ級数に展開し、各次数n(n=1〜m)のCOS成分の振幅an及び位相ずれφn0を求め、これらを主制御系4に供給する。なお、位相ずれφn0とは、ウエハWの回転角が0°での位相ずれφnを意味している。主制御系4では、供給された振幅an及び位相ずれφn0をメモリに格納する。
【0056】
次のステップ104において、主制御系4は、ウエハWのZ方向の位置(フォーカス位置)が移動ストロークの下の端点かどうかを判定し、下の端点に達していないときには、ステップ105に移動してZチルトステージ7を介してウエハWのフォーカス位置をδz(本例では1μm程度)だけ−Z方向に下げる。その後、ステップ102、103の動作を繰り返して、異なるフォーカス位置(これも「位置Z」で表す)でウエハマークの波形データI(x)をフーリエ級数に展開し、各次数n(n=1〜m)のCOS成分の振幅an及び位相ずれφn0を求めて、これらをメモリに格納する。このステップ102及び103の動作は、ウエハWのフォーカス位置を移動ストローク(例えば±10μm)内でδzだけ次第に変えながら複数回(例えば21回)実行される。
【0057】
そして、ステップ104でウエハWのフォーカス位置が移動ストローク内の下の端点に達しているときには、動作はステップ106に移行して、主制御系4は、図1のウエハローダ系50を駆動して、ウエハテーブル6上のウエハWをアライメントセンサ12の光軸BX(本例では投影光学系PLの光軸AXに平行である)に平行な軸の回りに180°回転させる。それに続くステップ107において、図1の主制御系4の制御のもとで、XYステージ8を駆動して、ウエハW上のステップ102で検出したウエハマークWMをアライメントセンサ12の検出領域に移動する。その後、Zチルトステージ7を駆動して、ウエハWの表面のZ方向の位置をステップ101と同じ初期位置に設定する。
【0058】
次のステップ108において、ステップ102と同様にアライメントセンサ12でそのウエハマークWMの像を撮像し、撮像信号をアライメント信号処理系47に供給する。次のステップ109において、ステップ103と同様にアライメント信号処理系47では、供給された撮像信号から図3(A)のX軸のウエハマークの像48XIに対応する波形データI(x)を生成する。そして、この波形データI(x)を(11)式のようにフーリエ級数に展開し、各次数n(n=1〜m)のCOS成分の振幅an及び位相ずれφn180を求め、これらを主制御系4に供給する。なお、位相ずれφn180とは、ウエハWの回転角が180°での位相ずれφnを意味している。主制御系4では、供給された振幅an及び位相ずれφn180をメモリに格納する。
【0059】
次のステップ110において、主制御系4は、ウエハWのZ方向の位置(フォーカス位置)が移動ストロークの下の端点かどうかを判定し、下の端点に達していないときには、ステップ111に移動してZチルトステージ7を介してウエハWのフォーカス位置をδz(ステップ105での変位と同じ値)だけ−Z方向に下げる。その後、ステップ108、109の動作を繰り返して、異なるフォーカス位置Zでウエハマークの波形データI(x)をフーリエ級数に展開し、各次数n(n=1〜m)のCOS成分の振幅an及び位相ずれφn180を求めて、これらをメモリに格納する。このステップ108及び109の動作も、ステップ103及び104の繰り返し回数と同じ回数だけ実行される。
【0060】
そして、ステップ110でウエハWのフォーカス位置が移動ストローク内の下の端点に達しているときには、動作はステップ112及び113に移行して、主制御系4は以下のようにして次数n(n=1〜m)のTISn及びWISn等を計算する。
即ち、従来の指標マーク及び計測マークを用いるTIS計測では、撮像信号の波形データ全体の位置を用いているため像全体が横にずれているのか、像歪みの影響で横にずれているのかが区別できないため、指標マークと計測マークとの相対関係でしかTISの値を定義することが出来なかった。しかしながら、本例の計測においてはTISn及びWISnとして各次数n毎に値を求めるため、基準次数としての1次成分の位置ずれと全ての高次成分(一般にその他の次数の成分)の位置ずれとが同じ場合は、単なる横ずれと判別することができる。
【0061】
ウエハWの回転角が0°での計測(0度計測)による波形データI(x)(像強度分布)の解析で得られた各次数の位相ずれφn0と、ウエハWの回転角が180°での計測(180度計測)による波形データI(x)(像強度分布)の解析で得られた各次数の位相ずれφn180とを用いて、或るフォーカス位置(例えばそれまでのベストフォーカス位置)での各次数nのTISn及びWISnはそれぞれ以下のように表すことができる。
【0062】
TISn=(φn0+φn180)/2−(φ10+φ1180)/2…(13)
WISn=(φn0−φn180)/2−(φ10−φ1180)/2…(14)
例えば図5(A1)及び(A2)に示すようなウエハマーク48X1及び48X2をアライメントセンサ12で検出する際に、それぞれ図5(B1)及び(B2)に示す波形データI1(x)及びI2(x)が得られるものとする。この際に、図5(B1)の波形データI1(x)は、アライメントセンサ12の検出用光学系の収差(装置起因の誤差TIS)によって波形が歪み、図5(B2)の波形データI2(x)は、ウエハマークの断面形状が非対称であること(ウエハ起因の誤差WIS)によって波形が歪んでいる。この場合、図5(A1)のウエハマーク48X1を180°回転して得られる図5(C1)のウエハマーク48X1の断面形状は同じであり、それに対応する図5(D1)の波形データI1(x)も同じ(位相ずれφn0とφn180とが同じ)である。従って、図5(B1),(D1)の波形データに対しては(14)式のWISnは0になり、(13)式のTISnは或る値になるため、装置に起因するn次の誤差TISnを求めることができる。
【0063】
一方、図5(A2)のウエハマーク48X2を180°回転して得られる図5(C2)のウエハマーク48X2の断面形状はX方向に反転し、それに対応する図5(D2)の波形データI2(x)も図5(B2)に対してx方向に反転する(位相ずれφn0とφn180とが逆符号になる)。従って、図5(B2),(D2)の波形データに対しては(13)式のTISnは0になり、(14)式のWISnは或る値になるため、ウエハに起因するn次の誤差WISnを求めることができる。
【0064】
上記のTISnやWISnは、一般的な半導体製造プロセスにおいて使用されるウエハマークに対しても同様に求めることができる。また、一般的にTISnやWISnはマーク構造によって異なる値を取る。よって、或るプロセスにおいて形成されたウエハマークにてTISn、WISnを求め、その大きさがアライメント精度に対して大きい場合、アライメント精度に影響が大きいマーク構造であることが分かる。そのような場合、例えばマークの線幅や構造を変えたマークを数種類用意しておけば、そのマークの中からTISnやWISnが小さくなるものを選択することによって、アライメント誤差の少ないマークを用いることができる。また、WISnに関しては、原因となるウエハマークの非対称成分を数値化する指標として利用し、ウエハマークの非対称が少なくなるような工程改善(各種装置の加工条件の最適化等)を行うことができる。また、ウエハ内の複数のウエハマークに対してWISnの発生傾向を調べ、よりWISnの少ないショットのウエハマークを用いてアライメントを行うことができる。また、事前にアライメント誤差が小さくなるようにマーク構造を最適化するに際しても、TISn、WISnの数値を利用することができる。
【0065】
また、本例ではウエハWのフォーカス位置Zを変えながら計測を行っているため、フォーカス位置Zにおいて0度計測による波形データI(x)の解析で得られた各次数の位相ずれφn0をφn0(Z)として、180度計測による波形データI(x)の解析で得られた各次数の位相ずれφn180をφn180(Z)とする。この場合、フォーカス位置Zにおける各次数n(n=1〜m)のTISn及びWISnをそれぞれTISn(Z)及びWISn(Z)とすると、これらはデフォーカス量が0(即ちZ=0)での1次成分の位相ずれφ10(0)及びφ1180(0)を基準にして以下のように表すことができる。
【0066】
TISn(Z)
=(φn0(Z)+φn180(Z))/2−(φ10(0)+φ1180(0))/2…(15)
WISn(Z)
=(φn0(Z)−φn180(Z))/2−(φ10(0)−φ1180(0))/2…(16)
また、本例では、フォーカス位置Zにおけるフーリエ級数の各次数の振幅anであるan(Z)も同時に得られている。そこで、ステップ113において、各次数の振幅an(Z)から例えばアライメントセンサ12に対するウエハマークのベストフォーカス位置を求めることもできる。即ち、一般的なプロセスマークに対し本計測を行えば、そのマークがFIA方式のアライメントセンサ12による計測に与える影響を各フォーカス位置毎に判断でき、またフォーカス位置最適化アルゴリズム(ベストフォーカス位置を決定するためのアルゴリズム)も選別できる。
【0067】
次に、図7(A),(B),(C),及び(D)は、それぞれ(15)式のTISn(Z)、TISn(Z)と(16)式のWISn(Z)との和、WISn(Z)、及び振幅an(Z)の計測例(次数n=1,2,3,4,5)を示し、図7(A)〜(D)の横軸のフォーカス位置Zはそれまでのベストフォーカス位置からのデフォーカス量(μm)を表している。また、図7(A)〜(C)の縦軸は位相ずれをウエハマークの周期Pを360°とした位置ずれ量(nm)で表し、図7(D)の縦軸は振幅を相対値で表したものである。この図7は、装置起因の誤差TISに比べてウエハ起因の誤差WISが比較的大きい例を表している。そして、例えば図7(D)の振幅an(Z)において、位置Zが−5μmで1次を除く各次数の振幅がほぼ最大となっているため、その−5μmの位置を新たなベストフォーカス位置とすることも考えられる。
【0068】
次に、図8(A),(B),(C),及び(D)は、それぞれTISn(Z)、TISn(Z)とWISn(Z)との和、WISn(Z)、及び振幅an(Z)の別の計測例(次数n=1,2,3,4,5,6)を示し、図8(A)〜(D)の横軸及び縦軸は図7(A)〜(D)の横軸及び縦軸と同じである。この図8は、装置起因の誤差TISに比べてウエハ起因の誤差WISが比較的小さい例を表している。そして、例えば図8(D)の振幅an(Z)において、位置Zが−5μmで各次数の振幅がほぼ最大となっているため、その−5μmの位置を新たなベストフォーカス位置とすることも考えられる。
【0069】
なお、上記の実施形態では、1次の成分を基準次数としているが、それ以外の2次、3次等の成分で例えば振幅がより大きい成分がある場合には、その成分を基準次数としてもよい。また、本例のフーリエ解析によってTISとWISとを求める手法は、例えばレチクルアライメント顕微鏡の誤差を解析する場合も同様に適用することができる。
【0070】
このようにして得られた、TISnやWISnは実プロセスマークに対する像歪み誤差として検査に利用できる。またTISn(Z)やWISn(Z)は、図7、図8に示すようにフォーカス位置Zに対する各次数の位置ずれ分布を示すため、Z変動に対する誤差要因が小さいZ位置の特定や、TISnやWISnが小さいZ位置の特定に使うことができる。
【0071】
また、フーリエ解析の際に同時に得られる各次数毎の振幅値は、各次数が最終的な像強度分に対してどのくらい寄与しているかを表す数値であり、像歪みの寄与を減らすために位置ずれの大きな成分を特定することができる。よって、本例のように像の空間周波数解析を行うことにより、空間周波数フィルタリングや特定空間周波数に対して位置ずれオフセットを持たせるといった、画像処理アルゴリズムの最適化を行うことも可能である。
【0072】
上記のTISn(Z)やWISn(Z)は、一般的な半導体製造プロセスにおいて使用されるウエハマークに対して、前記のTISn、WISnと同様に求めることができる。また、一般的にTISn(Z)やWISn(Z)はマーク構造によって異なる値を取る。よって、或るプロセスにおいて形成されたウエハマークにてTISn(Z)、WISn(Z)を求めれば、各次数のTIS(Z)及びWIS(Z)のばらつきが小さいZ位置が分かる。また、そのZ位置(Zaとする)でのTIS(Za)及びWIS(Za)の大きさが分かり、その大きさがアライメント精度に対して大きい場合には、Z位置を最適化してその位置Zaにて計測を行っても、アライメント精度に影響が大きなマーク構造であることが分かる。そのような場合、例えばマークの線幅や構造を変えたマークを数種類用意しておけば、そのマークの中からTISn(Za)やWISn(Za)が小さくなるものを選択することによって、アライメント誤差の少ないマークを用いることができる。また、WISn(Za)に関しては、原因となるウエハマークの非対称成分を数値化する指標として利用し、ウエハマークの非対称が少なくなるような工程改善(各種装置の加工条件の最適化等)を行うことができる。また、ウエハ内の複数のウエハマークに対し、WISn(Za)の発生傾向やショットによる位置Zaの差をを調べ、よりWISn(Za)の少ないショットのウエハマークを用いてアライメントを行ったり、ウエハ全体を考慮して位置Zaを設定することができる。また、事前にアライメント誤差が小さくなるようにマーク構造を最適化するに際しても、TISn(Z)、WISn(Z)の数値を利用することができる。
【0073】
一般に、ウエハ上には複数点の計測対象ショットがあるため、WISの寄与はそれぞれのショットで異なることが多い。よって、TISのみの寄付を計測したい場合には、多数のショットを計測し、WISの影響を平均化して減少させ、0度計測だけでほぼTISの寄与のみを計測できる可能性がある。また、プロセスウエハのWISが小さい場合は、0度データからTISのみを計測してもよい。この場合は、(15)式のTISn(Z)の式において、180度の計測値φn180(Z)に0度の計測値φn0(Z)を入れて扱えばよい。
【0074】
なお、上記の実施の形態の投影露光装置は、複数のレンズから構成される照明光学系、投影光学系を露光装置本体に組み込み光学調整をして、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより製造することができる。なお、その露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0075】
また、上記の実施の形態の投影露光装置を用いて半導体デバイスを製造する場合、この半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、このステップに基づいてレチクルを製造するステップ、シリコン材料からウエハを形成するステップ、上記の実施の形態の投影露光装置によりアライメントを行ってレチクルのパターンをウエハに露光するステップ、エッチング等の回路パターンを形成するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、及び検査ステップ等を経て製造される。
【0076】
なお、本発明は、走査露光型の露光装置のみならず、一括露光型の露光装置にも同様に適用することができる。また、本発明の露光装置の用途としては半導体デバイス製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0077】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、2つのマーク間の相対的な位置ずれを計測する必要がないため、マーク検出系の計測誤差の要因又は要因別の誤差を、容易にかつ迅速に求めることができる。
また、求められた計測誤差のうちで装置に起因する誤差を補正することによって、マーク検出系(マーク検出装置)の計測精度を高めることができ、そのマーク検出系を用いてアライメントを行うことによって、露光装置における重ね合わせ精度等を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例の投影露光装置を示す図である。
【図2】(A)は図1中のウエハWを示す拡大平面図、(B)は図2(A)のウエハマークWMを示す拡大平面図である。
【図3】(A)は図1中の撮像素子29の撮像面の画像の一例を示す図、(B)はウエハマークの断面形状の一例を示す図、(C)は図3(B)に対応する波形データを示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるフーリエ解析の原理説明図である。
【図5】装置起因の誤差TIS及びウエハ起因の誤差WISの説明に供する図である。
【図6】本発明の実施形態のフーリエ解析の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】その実施形態において計算されたTISn(Z)、WISn、及び振幅an(Z)の一例を示す図である。
【図8】その実施形態において計算されたTISn(Z)、WISn、及び振幅an(Z)の他の例を示す図である。
【図9】(A)は指標マークと計測マークとを用いて重ね合わせ精度を計測する場合の両マークの一例を示す図、(B)は図9(A)のマーク構造を示す断面図、(C)は図9(A)のマークから得られる撮像信号を示す図である。
【符号の説明】
1…照明光学系、R…レチクル、PL…投影光学系、W…ウエハ、WM…ウエハマーク、7…Zチルトステージ、12…FIA方式のアライメントセンサ、18,23…対物レンズ、29…撮像素子、47…アライメント信号処理系、48X…X軸のウエハマーク、50…ウエハローダ系、54…昇降ターンテーブル
Claims (12)
- 物体上で所定方向の位置を示すマークに関する情報を求めるマーク検出方法において、
前記マークからの光束を検出用光学系を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得る第1工程と、
前記第1工程で得られた検出信号を前記所定方向の位置に関して基準次数及びそれ以外の次数を含む複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開する第2工程と、
前記フーリエ級数の前記それ以外の次数の成分と前記基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、前記検出用光学系及び前記物体の少なくとも一方に起因して、前記マークに関する情報に作用する誤差要因を求める第3工程とを有することを特徴とするマーク検出方法。 - 前記マーク又は前記検出用光学系を該検出用光学系の光軸に平行な軸の回りに180°回転する第4工程と、
前記第4工程の後で前記マークからの光束を前記検出用光学系を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得る第5工程と、
前記第5工程で得られた検出信号を前記所定方向の位置に関して前記基準次数及び前記それ以外の次数を含む複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開する第6工程とを更に有し、
前記第3工程は、前記第2工程及び前記第6工程でそれぞれ得られたフーリエ級数の前記それ以外の次数の成分と前記基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、前記検出用光学系及び前記物体の少なくとも一方に起因して、前記マークに関する情報に作用する誤差要因を求める工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のマーク検出方法。 - 前記第3工程は、前記第2工程及び前記第6工程でそれぞれ得られたフーリエ級数の前記それ以外の次数の成分の前記基準次数の成分に対する位相ずれを求め、この位相ずれの和及び差に基づいて、それぞれ前記検出用光学系に起因する誤差及び前記物体に起因する誤差を求める工程を有することを特徴とする請求項2に記載のマーク検出方法。
- 前記第1工程及び前記第2工程と、前記第5工程及び前記第6工程とを、前記マークの前記検出用光学系に対するフォーカス位置を変えながら複数回実行し、
前記第3工程は、前記第2工程及び前記第6工程でそれぞれ得られたフーリエ級数の前記それ以外の次数の成分と前記基準次数の成分とを比較し、この比較結果に基づいて、前記検出用光学系に対する前記マークのベストフォーカス位置に関する情報を求める工程を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のマーク検出方法。 - 前記基準次数の成分は、1次の正弦波成分及び1次の余弦波成分の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のマーク検出方法。
- 物体上で所定方向の位置を示すマークに関する情報を求めるマーク検出方法において、
前記マークからの光束を検出用光学系を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得る第1工程と、
前記第1工程で得られた検出信号を前記所定方向の位置に関して複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開し、該フーリエ級数の前記複数次数の成分の振幅情報を求める第2工程と、
前記第2工程で求められた振幅情報に基づいて、前記検出用光学系及び前記物体の少なくとも一方に起因して、前記マークに関する情報に作用する誤差要因を求める第3工程とを有することを特徴とするマーク検出方法。 - 前記第1工程及び第2工程を、前記マークの前記検出用光学系に対するフォーカス位置を変えながら複数回実行し、
前記第3工程は、前記第2工程で求められた振幅情報に基づいて、前記検出用光学系に対する前記マークのベストフォーカス位置に関する情報を求める工程を有することを特徴とする請求項6に記載のマーク検出方法。 - 物体上で所定方向の位置を示すマークに関する情報を求めるマーク検出装置において、
前記マークからの光束を検出用光学系を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得るマーク検出系と、
前記マーク検出系で得られた検出信号を前記所定方向の位置に関して基準次数及びそれ以外の次数を含む複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開し、該フーリ級数の前記それ以外の次数の成分と前記基準次数の成分とを比較し、該比較結果に基づいて、前記検出用光学系及び前記物体の少なくとも一方に起因して、
前記マークに関する情報に作用する誤差要因を求める演算装置とを有することを特徴とするマーク検出装置。 - 前記基準次数の成分は、1次の正弦波成分及び1次の余弦波成分の少なくとも一方であり、
前記物体を前記検出用光学系に対して180°回転するための回転機構を更に備えることを特徴とする請求項8に記載のマーク検出装置。 - 物体上で所定方向の位置を示すマークに関する情報を求めるマーク検出装置において、
前記マークからの光束を検出用光学系を介して受光し、この受光された光を光電変換して検出信号を得るマーク検出系と、
前記マーク検出系で得られた検出信号を前記所定方向の位置に関して複数次数の成分よりなるフーリエ級数に展開し、該フーリエ級数の前記複数次数の成分の振幅情報を求め、前記振幅情報に基づいて前記検出用光学系及び前記物体の少なくとも一方に起因して、前記マークに関する情報に作用する誤差要因を求める演算装置とを有することを特徴とするマーク検出装置。 - 第1物体を露光ビームで照明し、前記露光ビームで前記第1物体及び投影光学系を介して第2物体を露光する露光方法において、
請求項1〜7の何れか一項に記載のマーク検出方法で前記第2物体上に形成されたマークに関する情報を求めることを特徴とする露光方法。 - 第1物体を露光ビームで照明し、前記露光ビームで前記第1物体及び投影光学系を介して第2物体を露光する露光装置において、
請求項8〜10の何れか一項に記載のマーク検出装置を備えることを特徴とする露光装置。
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JP2003133415A JP2004335971A (ja) | 2003-05-12 | 2003-05-12 | マーク検出方法及び装置、並びに露光方法及び装置 |
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- 2003-05-12 JP JP2003133415A patent/JP2004335971A/ja not_active Withdrawn
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