JP2004335772A - 光増幅用フォトニッククリスタルファイバ - Google Patents

光増幅用フォトニッククリスタルファイバ Download PDF

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JP2004335772A
JP2004335772A JP2003130224A JP2003130224A JP2004335772A JP 2004335772 A JP2004335772 A JP 2004335772A JP 2003130224 A JP2003130224 A JP 2003130224A JP 2003130224 A JP2003130224 A JP 2003130224A JP 2004335772 A JP2004335772 A JP 2004335772A
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fiber
light
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optical amplification
photonic crystal
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Akihito Suzuki
聡人 鈴木
Shigeki Koyanagi
繁樹 小柳
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Mitsubishi Cable Industries Ltd
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Mitsubishi Cable Industries Ltd
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Abstract

【課題】PCFに他のファイバと接続した際の接続損失を低減する。
【解決手段】光伝搬領域14に希土類元素からなる添加物が添加されたコア部12を形成する。コア部12とコア部周囲の光伝搬領域14との比屈折率差をΔ(%)とし、多孔部16の細孔ピッチをΛ(μm)としたときに、細孔ピッチΛは9μm以下であり、且つ比屈折率差Δと細孔ピッチΛとは以下の2つの関係式
Δ≦0.265Λ−2.35Λ+5.20
Δ≦0.05Λ−0.46Λ+0.93
を満足している。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光増幅用フォトニッククリスタルファイバおよび光増幅器に関し、特に、他のファイバと接続した際の接続損失を低減する対策に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、ファイバ中心軸の周囲に該ファイバ中心軸方向に延びる多数の細孔を有する多孔部が形成され、この多孔部により囲まれるファイバ中心側(内側)を中実状に形成して該多孔部の内側に光を閉じ込めて伝搬させる、いわゆるフォトニッククリスタルファイバ(以下、PCFという)が公知となっている。このPCFでは、上記多孔部の内側の領域が光伝搬領域とされる。そして、上記文献に開示されたPCFでは、光増幅作用又は非線形光学効果を高めるべく、光伝搬領域の中央部に希土類元素をドープして、この希土類元素のドープ領域をコア部としており、このコア部を光が伝搬することにより、誘導放出を利用した光増幅作用を起こさせるようになっている。
【0003】
一方、例えば非特許文献1には、PCFにおいて、コア部の直径をd、空孔間隔をΛとしたときに、d/Λを調整することにより、光の波長によらず、光を単一モードで伝搬させることができることが示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−55239号公報
【非特許文献1】
Niels Asger Mortensen、Effective area of photonic crystal fibers、OPTICS EXPRESS、8 April 2002、Vol.10、No.7、pp.341−348
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のものでは、いずれも他の光ファイバと接続した場合についてまで考慮しているわけではなく、例えば他の光ファイバと融着接続した際には、従来のPCFでは、細孔が潰れてしまう等、接続損失が大きくなる虞があるという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、PCFに他のファイバと接続した際の接続損失を低減しようとすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、接続する相手方の光ファイバのモードフィールドと同じ大きさのモードフィールドを有するPCFとすると、接続損失を低減できることに着目してなされたもので、コア部と該コア部周囲の光伝搬領域との比屈折率差Δと、細孔ピッチΛとの関係を所定の関連性を持つように規定したものである。
【0008】
具体的に、請求項1の発明は、シングルモード光ファイバ(以下、SMFという)に接続するための光増幅用フォトニッククリスタルファイバを前提として、ファイバ中心軸の周囲に、該ファイバ中心軸方向に延びる多数の細孔を有する多孔部が形成され、上記多孔部のファイバ中心側は、光が伝搬する光伝搬領域とされ、上記光伝搬領域には、希土類元素からなる添加物が添加されたコア部が形成され、上記コア部と該コア部周囲の光伝搬領域との比屈折率差をΔ(%)とし、上記多孔部の細孔ピッチをΛ(μm)としたときに、細孔ピッチΛは9μm以下であり、且つ上記比屈折率差Δと細孔ピッチΛとは以下の関係式(1)
Δ≦0.265Λ−2.35Λ+5.20 ・・・(1)
を満足している。
【0009】
また、請求項2の発明は、分散シフト光ファイバ(以下、DSFという)に接続するための光増幅用フォトニッククリスタルファイバを前提として、ファイバ中心軸の周囲に、該ファイバ中心軸方向に延びる多数の細孔を有する多孔部が形成され、上記多孔部のファイバ中心側は、光が伝搬する光伝搬領域とされ、上記光伝搬領域には、希土類元素からなる添加物が添加されたコア部が形成され、上記コア部と該コア部周囲の光伝搬領域との比屈折率差をΔとし、上記多孔部の細孔ピッチをΛとしたときに、細孔ピッチが9μm以下であり、且つ上記比屈折率差Δと細孔ピッチΛとは以下の関係式(7)
Δ≦−0.119Λ+2.37Λ−6.99 ・・・(7)
を満足している。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、コア部と該コア部周囲の光伝搬領域との比屈折率差はゼロとされている。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1から3の何れか1項の発明において、細孔ピッチに対する細孔の直径の比は0.45未満とされている。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1から3の何れか1項の発明において、コア部は、光伝搬領域の中央部のみに形成されている。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1から3の何れか1項の発明において、入力されたポンプ光は、シングルモードで伝搬される。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1から6の何れか1項の光増幅用フォトニッククリスタルファイバを備え、上記光増幅用フォトニッククリスタルファイバは、信号光及びポンプ光が入力される一方、増幅された信号光が出力される光増幅器である。
【0015】
すなわち、請求項1の発明では、SMFに接続するための光増幅用PCFにおいて、多孔部の細孔ピッチを9μm以下としているので、曲げ損失が大きくなるのを防止することができる。つまり、光ファイバの曲げ損失は、該光ファイバを曲げたときに生ずる曲げ応力の影響を受ける。そして、PCFを同じ曲率半径に曲げた場合には、細孔ピッチが大きなものほど曲げ応力が大きくなるために、曲げ損失は細孔ピッチが大きいほど大きくなり、特に細孔ピッチが9μmを越えると顕著となる。したがって、細孔ピッチを9μm以下とすることにより、曲げ損失の低い光増幅用PCFとすることができる。
【0016】
また、上記細孔ピッチΛと、コア部及び光伝搬領域の比屈折率差Δとが、上記関係式(1)を満足するようにPCFを構成しているので、SMFと接続した際の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない程度に抑えることができるとともに、信号光の増幅を高効率で行うことができる。つまり、細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが上記関係式(1)を満足しているときには、上記接続損失が0.9dB以下の範囲内で比屈折率差Δを大きくすることができるために、増幅効率を高くすることができる。これにより、SMFと接続した際に、実用化する上で支障にならない程度の接続損失に抑えつつ、信号光の増幅を高効率で行うことができる。
【0017】
したがって、細孔ピッチΛを9μm以下にするとともに、この細孔ピッチΛと比屈折率差Δとの関係が上記関係式(1)を満足するように設定することにより、曲げ損失を抑えることができるとともに、SMFと接続した場合の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない範囲に抑えつつ安定した高効率の光増幅を行うことができる。
【0018】
また、請求項2の発明では、DSFに接続するための光増幅用PCFにおいて、多孔部の細孔ピッチΛを9μm以下としているので、曲げ損失が大きくなるのを防止することができる。つまり、光ファイバの曲げ損失は、該光ファイバを曲げたときに生ずる曲げ応力の影響を受ける。そして、同じ曲率半径にPCFを曲げた場合には、細孔ピッチΛが大きなものほど曲げ応力が大きくなるために、曲げ損失は細孔ピッチが大きいほど大きくなり、特に細孔ピッチが9μmを越えると顕著となる。したがって、細孔ピッチΛを9μm以下とすることにより、曲げ損失の低い光増幅用PCFとすることができる。
【0019】
また、上記細孔ピッチΛと、コア部及び光伝搬領域の比屈折率差Δとが、上記関係式(7)を満足するようにPCFを構成しているので、DSFと接続した際の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない程度に抑えることができるとともに、信号光の増幅を高効率で行うことができる。つまり、細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが上記関係式(7)を満足しているときには、上記接続損失が0.9dB以下の範囲内で比屈折率差Δを大きくすることができるために、増幅効率を高くすることができる。これにより、DSFと接続した際に、実用化する上で支障にならない程度の接続損失に抑えつつ、信号光の増幅を高効率で行うことができる。
【0020】
したがって、細孔ピッチΛを9μm以下にするとともに、この細孔ピッチΛと比屈折率差Δとの関係が上記関係式(7)を満足するように設定することにより、曲げ損失を抑えることができるとともに、DSFと接続した場合の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない範囲に抑えつつ、安定した高効率の光増幅を行うことができる。
【0021】
また、請求項3の発明では、コア部とその周囲の光伝搬領域との比屈折率差Δをゼロとしたので、比屈折率差Δによる光の閉じ込めが行われず、多孔部の細孔のみによる光の閉じ込めが行われる。したがって、コア部による光の増幅を行うことができるPCFを細孔の配列等のみで容易に設計することができる。
【0022】
また、請求項4の発明では、細孔ピッチに対する細孔の直径の比を0.45未満としているので、波長の短い信号光でもシングルモードで伝搬させることができる。このため、シングルモードで伝搬する信号光を増幅することで、より高効率な光増幅作用を行うことができる。
【0023】
また、請求項5の発明では、光伝搬領域の中央部のみにコア部を形成するようにしたので、光強度の強い中央部で信号光の増幅作用を起こさせることができる。この結果、信号光の増幅を効率よく行うことができる。
【0024】
また、請求項6の発明では、ポンプ光がシングルモードで伝搬するようにしたので、高効率な光増幅作用を起こさせることができる。
【0025】
また、請求項7の発明では、請求項1から6の何れか1項記載の増幅用PCFを備えた光増幅器に構成しているので、このPCFでの信号光の増幅を行うことにより、高効率な光増幅を実現できる光増幅器を得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る光増幅用PCF10はSMFに接続するためのPCFである。この光増幅用のPCF10は、多数の細孔16aが形成された多孔部16を備え、全体として石英からなる。
【0028】
上記多孔部16の各細孔16aは、ファイバ横断面内における中央部及び周縁部を除くこれらの中間部に形成されており、上記各細孔16aはファイバ中心軸方向に沿ってその全体に亘って連続して延びている。つまり、多孔部16は、ファイバ中心軸の周囲に形成されている。これら各細孔16aは、図2(a)にも示すように、ファイバ横断面内において一定間隔の細孔ピッチΛをおいて規則的に、具体的には、互いに隣接する各細孔16aが正三角形をなすように三角格子パターンに配列されている。このように細孔16aが三角格子パターンに配置されることでフォトニック結晶構造が形成されている。
【0029】
上記多孔部16では、細孔ピッチΛが9μm以下に設定されている。すなわち、細孔ピッチΛは、0<Λ≦9とされている。また、細孔ピッチΛに対する細孔16aの直径dの比d/Λが0.45よりも小さくなるように細孔ピッチΛ及び細孔16aの直径dが設定されている。例えば、d/Λ=0.4とすることができる。尚、この細孔ピッチΛとは、互いに隣接する細孔16aの中心間距離を表している。
【0030】
上記多孔部16の周囲、即ちファイバ横断面における周縁部には、中実状に形成された被覆部18が設けられている。この被覆部18は、多孔部16を被覆保護する機能を果たす。
【0031】
上記多孔部16の内側、即ちファイバ横断面内における中央部は中実状に形成されており、この部位が光伝搬領域14として形成されている。つまり、上記光伝搬領域14は、上記多孔部16によって囲まれたファイバ中心軸上に形成されるものである。そして、上記多孔部16は、フォトニック結晶構造に形成されることで、その実効屈折率が純石英のそれよりも低いものとなっており、このことで、多孔部16によって囲まれた光伝搬領域14に光が閉じ込められるようになっている。
【0032】
上記光伝搬領域14の中央部には、ファイバ中心軸上に位置するようにコア部12が形成されおり、このコア部12は、光伝搬領域14のおよそ3分の1の面積を占める横断面形状が円形に形成されている。コア部12には、光増幅作用を起こさせるための添加物(第1の添加物)としてエルビウム(Er)等の希土類元素がドープされている。また、このコア部12には、屈折率を調整するための添加物(第2の添加物)として、ボロン等がドープされている。このように、第2の添加物をドープするのは、Er等の添加による比屈折率差Δの上昇を抑制するためである。特に、Er等をより多くドープすべくアルミニウム(Al)等をドープすることがあり、この場合にはAlのドープによってさらに比屈折率差Δが上昇してしまうので、第2の添加物のドープが必要となる。そして、図2(b)に示すように、本実施形態では、光伝搬領域14におけるコア部12の周囲に対するコア部12の比屈折率差Δは約0%とされている。尚、上記第1の添加物としては、ネオジウム(Nd)、イッテリビウム(Yb)等であってもよく、またこれらとErとを組み合わせたものであってもよい。
【0033】
上記比屈折率差Δ及び細孔ピッチΛは、比屈折率差Δが0%以上で且つ2%以内の範囲において以下の関係式、
Δ≦0.265Λ−2.35Λ+5.20 ・・・(1)
を満足するように設定されている。この関係式(1)は、図3に示す等高線図から導出されたものである。
【0034】
ここで、この図3の説明をする。この図は、本実施形態に係るPCF10にSMFを接続したときの接続損失を比屈折率差Δ及び細孔ピッチΛに対して示したものであり、図中の各境界線は接続損失の等高線を示している。この等高線図は、後述する接続損失を測定する実験により得られたデータを基に作成したものである。
【0035】
同図には、接続損失が0.1dB以下、0.2dB以下、…、0.9dB以下であることを示す境界線が等高線として描かれている。これら接続損失の等高線は、いずれも同図において右肩上がりの曲線となっている。すなわち、一定の細孔ピッチΛに対し、比屈折率差Δが大きくなるほど接続損失が大きくなるということを示している。これは、比屈折率差Δが高いほど光の閉じ込めが強いために、SMFのモードフィールドと差ができることで接続損失が大きくなるものと考えられる。一方、一定の比屈折率差Δに対しては、細孔ピッチΛが小さくなるほど接続損失が大きくなるということを示している。これは、細孔ピッチΛが小さいほど光の閉じ込めが強いために、SMFのモードフィールドとの差ができることで接続損失が大きくなるものと考えられる。
【0036】
そして、同図における左上側に現れている接続損失が0.1dB以下の領域では、SMFのモードフィールドと同じモードフィールドがPCF10に形成されているものと推測される。つまり、PCF10には、これに接続されたSMFのモードフィールドと同じモードフィールドが形成されることで、接続損失が低減されるものと考えられる。
【0037】
同図において、接続損失が0.9dB以下となる範囲を示す境界線A上の3点(Δ,Λ)=a(0,4.7)、a(1.0,6.4)、a(2.0,7.2)を通る2次曲線を導出したところ、この2次曲線はΔ=0.265Λ−2.35Λ+5.20であったので、比屈折率差Δ及び細孔ピッチΛが上記関係式(1)を満足しているときには、同図における境界線Aよりも左上側の領域に属することとなる。したがって、比屈折率差Δが0%以上で且つ2%以下の範囲で、細孔ピッチΛが9μm以下のときには、接続損失が0.9dB以下となることが分かる。
【0038】
また、上記比屈折率差Δ及び細孔ピッチΛは、比屈折率差Δが0%以上で且つ2%以内の範囲で、細孔ピッチΛが9μm以下のときにおいて以下の関係式
Δ≦0.05Λ−0.46Λ+0.93 ・・・(2)
を満足するように設定するのが好ましい。この関係式(2)は、同図において接続損失が0.2dB以下となる範囲を示す境界線B上の3点(Δ,Λ)=b(0,6.2)、b(0.52,8.2)、b(0.84,9.0)を通る2次曲線を導出したところ、その2次方程式はΔ=0.05Λ−0.46Λ+0.93であったので、比屈折率差Δ及び細孔ピッチΛが上記関係式(2)を満足しているときには、同図における境界線Bよりも左上側の領域に属することとなる。したがって、比屈折率差Δが0%以上で且つ2%以下の範囲で、細孔ピッチΛが9μm以下のときには、接続損失が0.2dB以下となることが分かる。
【0039】
また、比屈折率差Δ及び細孔ピッチΛは、以下の関係式
Δ<100×0.5×(2.4048×λp×C/(π×Λ×1.45))・・・(3)
を満足するように設定するのが好ましい。ここで、λpはポンプ光の波長(μm)であり、Cは、C=Λ/2bである。但し2bはコア部の直径である。この関係式(3)は、単一モードの条件式
【数1】
Figure 2004335772
から導かれるものである。ここで、υは正規化周波数のカットオフ値、nはコアの屈折率である。そして、上記条件式(4)にυとして2.4048、nとして石英の屈折率1.45を代入することにより、上記関係式(3)が得られる。したがって、比屈折率差Δ、細孔ピッチΛ及びコア部12の直径が上記関係式(3)を満足しているときには、入射した波長λpのポンプ光を単一モードで伝搬させることができる。
【0040】
以上説明したように本実施形態に係るPCF10によれば、多孔部16の細孔ピッチΛを9μm以下としているので、曲げ損失が大きくなるのを防止することができる。つまり、PCF10の曲げ損失は、該PCF10を曲げたときに生ずる曲げ応力の影響を受ける。そして、PCF10を同じ曲率半径に曲げた場合には、細孔ピッチΛが大きなものほど曲げ応力が大きくなるために、曲げ損失は細孔ピッチΛが大きいほど大きくなり、特に細孔ピッチが9μmを越えると顕著となる。したがって、細孔ピッチΛを9μm以下とすることにより、曲げ損失の低いPCFとすることができる。
【0041】
また、細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが、上記関係式(1)を満足するようにPCF10を構成しているので、SMFと接続した際の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない程度に抑えることができるとともに、信号光の増幅を高効率で行うことができる。つまり、細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが上記関係式(1)を満足しているときには、上記接続損失が0.9dB以下の範囲内で比屈折率差Δを大きくすることができるために、増幅効率を高くすることができる。
【0042】
したがって、細孔ピッチΛを9μm以下にするとともに、この細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが上記関係式(1)を満足するように設定することにより、曲げ損失を抑えることができるとともに、SMFと接続した場合の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない範囲に抑えつつ安定した高効率の光増幅を行うことができる。
【0043】
また、比屈折率差Δと細孔ピッチΛとが、さらに上記関係式(2)を満足するようにすると、SMFと接続した際の接続損失を0.2dB以下に抑えることができる。したがって、この場合には、SMFと同等の大きさのモードフィールドを有するPCF10とすることができ、この結果、SMFに接続した際の接続損失を、SMFに従来の増幅用SMFを接続した際の接続損失と同等以下に抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態では、コア部12とその周囲の光伝搬領域14との比屈折率差Δをゼロとしたので、比屈折率差Δによる光の閉じ込めが行われず、多孔部16の細孔16aのみによる光の閉じ込めが行われる。したがって、コア部12による光の増幅を行うことができるPCF10を細孔16aの配列等のみで容易に設計することができる。
【0045】
また、本実施形態では、細孔ピッチΛに対する細孔16aの直径dの比d/Λを0.45未満としているので、波長の短い信号光でもシングルモードで伝搬させることができる。このため、シングルモードで伝搬する信号光を増幅することで、より高効率な光増幅作用を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態では、光伝搬領域14の中央部のみにコア部12を形成するようにしたので、光強度の強い中央部で信号光の増幅作用を起こさせることができる。この結果、信号光の増幅を効率よく行うことができる。
【0047】
また、本実施形態に係るPCF10を備えた光増幅器とすることにより、このPCF10での信号光の増幅を行うことができて、高効率な光増幅を実現できる光増幅器を得ることができる。
【0048】
【実施例】
次に、具体的に行った実験及び解析について説明する。
【0049】
<実験1>
実験1に用いた光増幅用PCF10は、上記実施形態のものと同様の構成、即ちコア部12にEr及びボロンがドープされていて、比屈折率差Δがゼロに設定されている構成とした。また、細孔孔ピッチに対する細孔16aの直径d/Λを、d/Λ=0.4とした。そして、このPCF10に1.55μmの波長の光を伝送させた。
【0050】
このとき、出射端面において図4に示すようなニアフィールドパターンが観測された。この図4に示すニアフィールドパターンは基本モードのものである。これはシングルモード動作していることを意味しているので、上記実施形態に係るPCF10では、多孔部16の細孔16aによって光が閉じ込められ、且つシングルモード動作することがわかる。したがって、上記実施形態によれば、シングルモードで伝搬する信号光を増幅することができ、これにより高効率な光増幅作用を発揮させることができる。
【0051】
<実験2>
次に、上記実験1に用いたPCF10をSMFと接続し、このときの接続損失を測定する実験を行った。この実験では、まず図5(a)に示すように、長さ1mのPCF10を、波長1.55μmの光を出射する光源21と、この光のパワーを測定する光パワーメータ23とに接続し、この光のパワーを参照光のパワーとして測定した。このとき光パワーメータ23によって検出された参照光のパワーをP1とする。次に、図5(b)に示すように、上記PCF10とSMF25とを融着接続し、この融着接続された光ファイバ10,25を上記光源21と光パワーメータ23とに接続した。そして、上記同様に波長1.55μmの光を出射した。このとき、モニタ(図示省略)による側面観察により、図6に模式的に示すように、融着接続部において多孔部16の細孔16aが潰れているにもかかわらず、両光ファイバ10,25間でそのコア部を光が伝搬している様子を確認した。また、光パワーメータ23により光のパワーを検出し、このパワーをP2とした。そして、このパワーP2と参照光のパワーP1とから接続損失Lossを以下の関係式
Loss=P1−P2−SMF(1m)のロス ・・・(6)
を用いて導出した。
【0052】
そして、比屈折率差Δ、細孔ピッチΛの異なる多数のPCFについて同様に接続損失Lossを測定し、これら多数のデータを用いて図3に示す等高線図を作成した。なお、この等高線図は、d/Λ=0.4の条件下で測定された結果から得られたものである。
【0053】
<実験3>
次に、光増幅用PCF10をDSFに接続し、上記同様に接続損失を測定する実験を行い、この実験結果を基に等高線図を作成した。この作成した等高線図を図7に示す。なお、この等高線図は、d/Λ=0.4の条件下で測定された結果から得られたものである。
【0054】
上記等高線図では、接続損失が0.1dB以下、0.2dB以下、…、0.9dB以下であることを示す境界線が等高線として描かれている。これら接続損失の等高線は、いずれも同図において右肩上がりの曲線となっている。図中の中央上側に位置する領域は、接続損失が0.1dB以下の領域であり、この領域から左上側又は右下側に向かって次第に接続損失が増大している。上記接続損失が0.1dB以下の領域では、DSFのモードフィールドと同じモードフィールドがPCF10に形成されているものと推測される。
【0055】
同図において、接続損失が0.9dB以下となる範囲を示す境界線C上の3点(Δ,Λ)=c(0,3.6)、c(1.0,4.3)、c(2.0,5.1)を通る2次曲線を導出したところ、この2次曲線はΔ=−0.119Λ+2.37Λ−6.99であったので、比屈折率差Δ及び細孔ピッチΛが以下の関係式
Δ≦−0.119Λ+2.37Λ−6.99 ・・・(7)
を満足しているときには、同図における境界線Cよりも左上側の領域に属することとなる。したがって、比屈折率差Δが0%以上で且つ2%以下の範囲で、細孔ピッチΛが9μm以下のときには、接続損失が0.9dB以下となることが分かる。
【0056】
また、上記比屈折率差Δ及び細孔ピッチΛは、比屈折率差Δが0%以上で且つ2%以内の範囲で、細孔ピッチΛが9μm以下のときにおいて以下の関係式
Δ≦0.159Λ−1.22Λ+2.24 ・・・(8)
Δ≧−0.0606Λ+1.23Λ−5.79 ・・・(9)
を満足するように設定するのが好ましい。上記関係式(8)は、同図における右下側において接続損失が0.2dB以下となる範囲を示す境界線D上の3点(Δ,Λ)=d(0,4.7)、d(1.0,6.5)、d(2.0,7.5)を通る2次曲線の方程式から得られるものであり、また、上記関係式(5)は、同図における左上側において接続損失が0.2dB以下となる範囲を示す境界線E上の3点(Δ,Λ)=e(0,7.4)、e(0.38,9.0)、e(0.46,10.0)を通る2次曲線の方程式から得られるものである。したがって、比屈折率差Δ及び細孔ピッチΛが上記関係式(8)又は(9)を満足しているときには、比屈折率差Δが0%以上で且つ2%以下の範囲であり、さらに細孔ピッチΛが9μm以下のときには、接続損失が0.2dB以下となることが分かる。
【0057】
そして、多孔部16の細孔ピッチΛを9μm以下とすることにより、曲げ損失が大きくなるのを防止することができる。つまり、PCF10を同じ曲率半径に曲げた場合には、細孔ピッチΛが大きくなものほど曲げ応力が大きくなるために、曲げ損失は細孔ピッチΛが大きいほど大きくなり、特に細孔ピッチが9μmを越えると顕著となる。したがって、細孔ピッチΛを9μm以下とすることにより、曲げ損失の低いPCFとすることができる。
【0058】
また、細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが、上記関係式(7)を満足するようにPCF10を構成すると、DSFと接続した際の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない程度に抑えることができるとともに、信号光の増幅を高効率で行うことができる。つまり、細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが上記関係式(7)を満足しているときには、上記接続損失が0.9dB以下の範囲内で比屈折率差Δを大きくすることができるために、増幅効率を高くすることができる。
【0059】
したがって、細孔ピッチΛを9μm以下にするとともに、この細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが上記関係式(7)を満足するように設定することにより、曲げ損失を抑えることができるとともに、DSFと接続した場合の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない範囲に抑えつつ安定した高効率の光増幅を行うことができる。
【0060】
また、比屈折率差Δと細孔ピッチΛとが、さらに上記関係式(8)及び(9)を満足するようにすると、DSFと接続した際の接続損失を0.2dB以下に抑えることができる。この場合には、DSFと同等の大きさのモードフィールドを有するPCF10にすることができ、この結果、DSFに接続した際の接続損失を、DSFに従来の増幅用DSFを接続した際の接続損失と同等以下に抑えることができる。
【0061】
その他の構成、作用及び効果は上記実施形態と同様とすることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような効果が得られる。すなわち、請求項1の発明のPCFでは、光伝搬領域に希土類元素からなる添加物が添加されたコア部を形成し、細孔ピッチΛを9μm以下にするとともに、この細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが関係式、Δ≦0.265Λ−2.35Λ+5.20を満足しているので、曲げ損失を抑えることができるとともに、SMFと接続した場合の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない範囲に抑えつつ安定した高効率の光増幅を行うことができる。
【0063】
また、請求項2の発明によれば、光伝搬領域に希土類元素からなる添加物が添加されたコア部を形成し、細孔ピッチΛを9μm以下にするとともに、この細孔ピッチΛと比屈折率差Δとが関係式、Δ≦−0.119Λ+2.37Λ−6.99を満足しているので、曲げ損失を抑えることができるとともに、DSFと接続した場合の接続損失を、PCFを実用化する上で支障にならない範囲に抑えつつ安定した高効率の光増幅を行うことができる。
【0064】
また、請求項3の発明によれば、コア部とその周囲の光伝搬領域との比屈折率差Δをゼロとしたので、比屈折率差Δによる光の閉じ込めが行われず、多孔部の細孔のみによる光の閉じ込めが行われる。したがって、コア部による光の増幅を行うPCFを細孔の配列等のみで容易に設計することができる。
【0065】
また、請求項4の発明によれば、細孔ピッチに対する細孔の直径の比を0.45未満としているので、波長の短い信号光でもシングルモードで伝搬させることができる。このため、シングルモードで伝搬する信号光を増幅することで、より高効率な光増幅作用を行うことができる。
【0066】
また、請求項5の発明によれば、光伝搬領域の中央部のみにコア部を形成するようにしたので、光強度の強い中央部で信号光の増幅作用を起こさせることができる。この結果、信号光の増幅を効率よく行うことができる。
【0067】
また、請求項6の発明によれば、ポンプ光がシングルモードで伝搬するようにしたので、高効率な光増幅作用を起こさせることができる。
【0068】
また、請求項7の発明によれば、請求項1から6の何れか1項記載の増幅用PCFを備えた光増幅器に構成しているので、このPCFでの信号光の増幅を行うことにより、高効率な光増幅を実現できる光増幅器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るPCFの構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係るPCFの端面の要部を拡大して示す図であり、(b)は、(a)のII−II線断面における屈折率分布を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るPCFにSMFを接続したときの接続損失を示す等高線図である。
【図4】実験1で観測されたニアフィールドパターンを示す図である。
【図5】接続損失を測定する実験装置を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るPCFとSMFとを融着接続した状態で観察された導波状況を示す概念図である。
【図7】PCFにDSFを接続した場合における図3相当図である。
【符号の説明】
12 コア部
14 光伝搬領域
16 多孔部
16a 細孔

Claims (7)

  1. シングルモード光ファイバに接続するための光増幅用フォトニッククリスタルファイバであって、
    ファイバ中心軸の周囲に、該ファイバ中心軸方向に延びる多数の細孔を有する多孔部が形成され、
    上記多孔部のファイバ中心側は、光が伝搬する光伝搬領域とされ、
    上記光伝搬領域には、希土類元素からなる添加物が添加されたコア部が形成され、
    上記コア部と該コア部周囲の光伝搬領域との比屈折率差をΔ(%)とし、上記多孔部の細孔ピッチをΛ(μm)としたときに、細孔ピッチΛは9μm以下であり、且つ上記比屈折率差Δと細孔ピッチΛとは以下の関係式
    Δ≦0.265Λ−2.35Λ+5.20
    を満足している
    ことを特徴とする光増幅用フォトニッククリスタルファイバ。
  2. 分散シフト光ファイバに接続するための光増幅用フォトニッククリスタルファイバであって、
    ファイバ中心軸の周囲に、該ファイバ中心軸方向に延びる多数の細孔を有する多孔部が形成され、
    上記多孔部のファイバ中心側は、光が伝搬する光伝搬領域とされ、
    上記光伝搬領域には、希土類元素からなる添加物が添加されたコア部が形成され、
    上記コア部と該コア部周囲の光伝搬領域との比屈折率差をΔとし、上記多孔部の細孔ピッチをΛとしたときに、細孔ピッチが9μm以下であり、且つ上記比屈折率差Δと細孔ピッチΛとは以下の関係式
    Δ≦−0.119Λ+2.37Λ−6.99
    を満足している
    ことを特徴とする光増幅用フォトニッククリスタルファイバ。
  3. 請求項1又は2において、
    コア部と該コア部周囲の光伝搬領域との比屈折率差はゼロとされている
    ことを特徴とする光増幅用フォトニッククリスタルファイバ。
  4. 請求項1から3の何れか1項において、
    細孔ピッチに対する細孔の直径の比は0.45未満とされている
    ことを特徴とする光増幅用フォトニッククリスタルファイバ。
  5. 請求項1から3の何れか1項において、
    コア部は、光伝搬領域の中央部のみに形成されている
    ことを特徴とする光増幅用フォトニッククリスタルファイバ。
  6. 請求項1から3の何れか1項において、
    入力されたポンプ光は、シングルモードで伝搬される
    ことを特徴とする光増幅用フォトニッククリスタルファイバ。
  7. 請求項1から6の何れか1項の光増幅用フォトニッククリスタルファイバを備え、
    上記光増幅用フォトニッククリスタルファイバは、信号光及びポンプ光が入力される一方、増幅された信号光が出力される
    ことを特徴とする光増幅器。
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