JP2004335730A - 温度検知素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】非平面部にも適用できる柔軟性があり、抵抗調整が簡単にできる加工性があり、更に、熱劣化等が生じ難い優れた多種多様な機器に使用できる温度検知素子を提供すること。
【解決手段】本発明の温度検知素子は、少なくとも一対の電極と、共役導電性高分子及び酸化阻害成分を含む有機半導体層とからなり、上記酸化阻害成分は、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の成分からことを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の温度検知素子は、少なくとも一対の電極と、共役導電性高分子及び酸化阻害成分を含む有機半導体層とからなり、上記酸化阻害成分は、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の成分からことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機半導体の負の温度係数を利用した温度検知素子に関するものであり、より詳細には、素子に所定の形状加工性、柔軟性を持たせ、特に、非平面部にも対応或いは適用可能なことから、二次電池、燃料電池、移動体通信機器、ディスプレイ、冷蔵庫、エアコン、暖房器具、炊事器具等の多様な機器に好適に使用できる温度検知素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、温度検知素子として、無機酸化物半導体で構成されているサーミスタと呼ばれている素子がよく利用されている。
この種のサーミスタは、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属の酸化物を2種類以上選択し、所定の比率で配合した原料を高温焼成して得られた複合酸化物セラミックスで構成されていることが知られている(特許文献1を参照。)。
また、共役導電性高分子を用いるサーミスタ素子の試みも行われている。
電解重合法で重合した共役導電性高分子膜を基板に装着し、その膜に一対の電極を真空蒸着で形成してなる温度検知素子が知られている(特許文献2を参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平05−021209号公報
【特許文献2】
特開平03−211702号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような遷移金属の酸化物を含む複合酸化物セラミックスは、高価な材料を使用すると共に、高温焼成で作製され加工が難しく、高い生産性を得ることが困難である。また、酸素分圧、金属の還元等の影響を受けやすい欠点ある。
共役導電性高分子を用いる温度検知素子においては、有機半導体膜は電解質溶液中で電解重合法による製膜がなされるため、膜の成長と同時にドープされ、剛直な膜となる。また、電解質溶液中での重合であるため、膜に不純物が混入し易く、抵抗調整が難しくなる等の問題もある。更に、有機半導体膜が熱劣化し易いという問題もある。
【0005】
従って、本発明は上記課題、即ち、非平面部にも適用できる柔軟性があり、抵抗調整が簡単にできる加工性があり、更に、熱劣化等が生じ難い優れた、多種多様な機器に使用できる温度検知素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく研究した結果、半導体層を共役導電性高分子に加えて、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂の中で、特に酸化、或いはラジカル連鎖を阻害する成分として作用する酸化阻害成分を配合すると、抵抗調整などが簡単にでき、また柔軟性があって熱劣化等の生じない優れた温度検知素子ができることを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明に係る温度検知素子は、以下の構成或いは手段からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
【0007】
本発明に係る温度検知素子は、少なくとも一対の電極と、共役導電性高分子及び酸化阻害成分を含む有機半導体層とからなる。
また、上記酸化阻害成分は、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂から選択される酸化阻害成分とすることができる。中でも上記酸化防止剤は、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤から選ばれるものが好ましく、特に、ラジカル連鎖禁止剤は、フェノール系酸化防止剤、又はアミン系酸化防止剤とすることが好ましい。
【0008】
また上記無機微粒子にあっては、金属、無機酸化物、炭素化合物から選択される酸化阻害成分とすることができる。中でも上記無機微粒子における炭素化合物は、無定形炭素、フラーレン、カーボンナノチューブから選ばれることを特徴とすることができる。
【0009】
更に、上記酸化阻害性樹脂としては、ビニル基を有したベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環に1又は2以上の水酸基等が置換したポリビニル芳香族系アルコール樹脂及びフェノール系樹脂を挙げることができ、特に、ポリビニル−p−フェノール等のポリビニルフェノール系樹脂は、共役導電性高分子と混合分散又は相溶可能であることから好ましい。
また、このような酸化阻害性樹脂は、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂と相溶し、かかる有機樹脂成分中にあって酸化防止効果を示す。このため、混合使用することによって、接着性又は結着性を有した酸化阻害性有機樹脂成分として使用することができる。
【0010】
また、本発明に係る温度検知素子にあっては、その有機半導体層に有機樹脂成分を含むことが好ましい。有機樹脂成分は接着、結着作用を有することから層と電極との接合に好ましい。特に、有機樹脂成分の中でも上記酸化阻害成分と共に使用される樹脂成分が好ましく、例えば、フェノール系酸化防止剤、或いは上述したように相溶性がある、また酸化防止効果のあるポリビニルフェノール系樹脂を相溶してなる有機樹脂成分とすることが特に好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳しく説明する。尚、本発明に係る温度検知素子は以下の実施の形態、及び実施例に限定されるものではない。
図1(a)〜(g)は、本発明に係る温度検知素子の概略断面図である。
【0012】
本発明に係る温度検知素子は、少なくとも一対の電極と、共役導電性高分子及び酸化阻害成分を含む有機半導体層とからなる。
上記共役導電性高分子としては、主鎖が共役系で構成されている有機高分子を挙げることができる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類及びこれらの共重合体等を挙げることができる。これらの中でも、分散性、取扱性などの点を考慮すると、大気中に安定に存在しうるポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類及びこれらの共重合体等が好ましい。更に、後述する酸化防止剤、有機樹脂、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂等の酸化阻害成分を含めてこれらと分散又は相溶して使用する点からもポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類及びこれらの共重合体等が好ましい。
【0013】
また上記共役導電性高分子にはその溶媒への可溶性を確保するためには、アルキル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アルコキシル基、エステル基等の導入が好ましい。例えば、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−メトキシルピロール)、ポリ(3−カルボキシルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシルチオフェン)、ポリ(3−カルボキシルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等を挙げることができる。
【0014】
上記溶媒としては特に制限するものではない。上記共役導電性高分子を溶解または分散しうる溶媒であれば良い。
例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸類等を挙げることができる。必要に応じて、これらの溶媒は単独で、二種類以上の混合物、又は他の有機溶剤との混合物として用いられる。
【0015】
上記共役導電性高分子は重合可能なモノマから酸化剤又は重合触媒の存在下で酸化重合法によって得ることができる。モノマとしては、ピロール及びその誘導体、チオフェン及びその誘導体、アニリン及びその誘導体等を使用することができる。酸化剤としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が使用できる。
【0016】
上記共役導電性高分子には酸化剤等の重合触媒が残存していないことが好ましい。これらの重合触媒及び残存イオンは重合後、水で十分洗浄することで除去される。通常、共役導電性高分子の重合時では、酸化剤等の重合触媒は共役導電性高分子に同時に化学酸化ドープされる。このドープ状態を適宜な還元剤を用いて脱ドープさせることによってドープされていない状態の導電性高分子を得ることができる。また、必要に応じてドーパントとなる他のイオン体を添加して重合することによってドーパント物質の選択ドープを行うことができる。
【0017】
上述したように添加される酸化阻害成分としては、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂から選ばれる少なくとも一種以上の成分を使用することができる。
酸化防止剤としては、本発明においてここで特に限定されるものではない。ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤等の酸化防止効果を有する限り使用することができる。
ラジカル連鎖禁止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミノ系酸化防止剤等を使用することができる。特に、フェノール系酸化防止剤は、溶媒への溶解性、樹脂成分及び共役導電性高分子への分散性又は相溶性が優れより好ましい。
【0018】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−t−ブチル−4−エチルフェノール等のモノフェノール系酸化防止剤、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール系酸化防止剤、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,2,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール類等の高分子型フェノール系酸化防止剤を挙げることができる。特に、高温領域で熱の影響の少ない高融点の高分子型フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0019】
アミン系酸化防止剤としては、サミリーザー9A(Sumilizer 9A:商品名、シプロ化成社製)、アンチゲン3C(Antigene 3C:商品名、シプロ化成社製)、アンチゲンP(Antigene P:商品名、シプロ化成社製)等を挙げることができる。
【0020】
過酸化物分解剤としては、イオン系酸化防止剤、燐系酸化防止剤等を使用することができる。例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤、トリフェニルホスファイト、トリフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト等の燐系酸化防止剤が挙げられる。
【0021】
上記無機微粒子としては、金属、炭素化合物、無機酸化物、無機燐酸塩、無機亜燐酸塩からなる群より選ばれた少なくとも一種の無機微粒子を使用することができる。
例えば、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、亜鉛等の金属微粒子、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、珪酸リチウム、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化バナジウム、酸化マンガン等の無機酸化物微粉末、無定形炭素、コークス、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素化合物が好ましい。更に、ラジカル吸収の点から無定形炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ等がより好ましい。
【0022】
本発明における無機微粒子は、平均粒径が5nm〜50μmであれば使用することができる。無機粒子の粒径が50μmより大きいと、分散状態が悪くなり、導電性のバラツキが大きくなるので好ましくない。また、無機微粒子の粒径が5nm未満の場合は、製造が難しくなり、二次凝集が起き易くなる点から好ましくない。共役導電性高分子への分散性、安定性、コスト等の点から特に好適な平均粒径は10nm〜10μmの範囲である。
【0023】
上記酸化阻害性樹脂としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環に1以上の水酸基等が置換したポリビニル芳香族系アルコール樹脂及びフェノール系樹脂が挙げられ、例えば、ポリビニルフェノール系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも共役導電性高分子と混合分散又は相溶可能なものを選択することができる。
また、このようなポリビニル芳香族系樹脂は、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂と相溶し、かかる有機樹脂成分中にあって酸化防止効果を示す。このため、上記樹脂等に混合使用することによって、接着性又は結着性を有した酸化阻害性有機樹脂成分として使用することができる。
【0024】
本発明における酸化阻害成分は、素子の酸化防止効果があると同時に、素子の抵抗調整にも寄与している。酸化阻害成分の含有量は、共役導電性高分子100質量部に対して0.01質量部未満の含有量では、酸化防止効果が乏しくなるので好ましくない。一方、酸化阻害成分の含有量が10000質量部を超えると、有機半導体層の電気特性が酸化阻害成分に支配されてくるのでこれも好ましくない。特に、好適な質量部比率としては、共役導電性高分子100質量部に対して1質量部〜500質量部の範囲が好ましい。
【0025】
また、本発明における酸化阻害成分は、共役導電性高分子への分散又は相溶、基材又は電極との接着等の点から上記酸化防止剤、上記無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂のいずれかと、相溶性のある有機樹脂成分で構成されていることが好ましい。特に、接着の点から上記有機樹脂成分は、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等がより好ましい。有機樹脂成分及び共役導電性高分子への分散又は相溶、酸化防止性の点から無機微粒子は、無定形炭素、コークス、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素化合物、ラジカル連鎖禁止剤はフェノール系酸化防止剤がより好ましい。
【0026】
具体的な有機樹脂成分としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニールアルコール、ポリビニールエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等を挙げることができる。特に、フェノール樹脂は、ラジカル連鎖禁止剤として作用するポリビニルフェノール系樹脂との相溶性が優れているのでより好ましい。
【0027】
上記有機樹脂成分と、酸化防止剤及び無機微粒子との質量比率は、本発明において特に限定する必要はないが、特に、共役導電性高分子への分散性又は相溶性などの点から有機樹脂成分の含有量が、酸化防止剤及び無機微粒子より多い方が好ましい。
【0028】
本発明に係る温度検知素子の有機半導体層は、溶媒に酸化阻害成分、共役導電性高分子を分散又は溶解した混合液より溶媒を蒸発させて得ることができる。
上記溶媒としては、特に制限するものではなく、上述した共役導電性高分子を溶解しうるものが好ましい。
有機半導体層の厚みは、特に限定しないが、有機半導体層の抵抗安定性の点から1μm以上であることが好ましい。加工性及び取扱性の点からより好ましいくは10〜1000μmの範囲である。
有機半導体層の比抵抗が10−1〜1013Ω・cmの半導体領域であれば使用することができる。比抵抗が10−1Ω・cm未満となると、共有電子が金属の自由電子的挙動を示し、温度係数が極端に小さくなり好ましくない。
一方、比抵抗が1013Ω・cmを超えると、素子に流れる電流が極端に小さくなり好ましくない。好適な比抵抗は100〜1010Ω・cmの範囲である。
【0029】
比抵抗を調整する方法としては、酸化阻害成分と共役導電性高分子との含有量の調整とドーパントによるドーピング手法を使用することができる。
ドーピング手法とは、共役導電性高分子中に、アクセプタ性又はドナー性ドーパント(抵抗調整剤)をドーピングすることにより、共役導電性高分子の共役電子の酸化還元電位を変化させ、導電性を得ることができる。
ドーパントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等を使用することができる。
ハロゲン化合物としては塩素、ヨウ素、臭素、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等を挙げることができる。
ルイス酸としては、PF5、AsF5、SbF5、BF3、BCl3、BBr3、SO3等を挙げることができる。
プロトン酸としては、塩酸、硫酸、燐酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸や有機カルボン酸、スルホン酸などの有機酸を挙げることができる。
【0030】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシル基が一又は二以上を含むものが使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフエニル酢酸等を挙げることができる。
【0031】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホン酸基が一又は二以上を含むものが使用できる。例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−へプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等の分子内に一つのスルホン酸基を含むスルホン酸化合物と、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸等を挙げることができる。
【0032】
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等を挙げることができる。
尚、本発明の素子における共役導電性高分子、酸化阻害成分以外に、素子の電気的特性、機械的物性を損なわない程度に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、架橋剤、相溶化剤、難燃剤等を全構成物質の50質量部以下で添加してもよい。
【0033】
本発明における温度検知素子の構造は、特に限定しない。導電体で構成されている一対の電極と、一対の電極の間に、配置される酸化阻害成分及び共役導電性高分子を含む有機半導体層とで構成されている温度検知素子であればよい。
有機半導体層と電極との接合は図1(a)に示す電極2と有機半導体層1と直接接合してもよい。また、図1(a)に示す有機半導体層1と電極2との間に、導電性中間層3を介在してもよい(図1(g)参照)。
【0034】
本発明の「一対の電板の間」とは、有機半導体層を介在し、二つの電極の間に電子移動が可能である構造をいう。上記概念に適合した構造であれば本発明の範囲内とすることができる。例えば、図1(b)−(g)に示す実施形態の構造が挙げられる。本発明の温度検知素子の構造はこれに限定するものではない。
上記電極としては、上記有機半導体層より低い比抵抗を有する電気伝導体であればよく、金属箔、導電性ペースト、無機酸化物、炭素材、有機導電体等が好ましい。
【0035】
金属箔としては、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム等の金属の単一金属箔、複合箔、合金箔等を挙げることができる。導電性とコストの点から銅、アルミニウム、ニッケルの単一箔及びこれらの複合箔、合金箔が好ましい。
更に、酸化、汚れ等の点からこれらの箔材の表面にメッキ処理がされているものがより好ましい。また、有機半導体層との接合性を高めるために、金属箔表面処理または粗面化処理を施してもよい。
【0036】
導電性ペーストとしては、金、銀、銅、ニッケル、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、炭素材、有機導電体を導体とする導電性ペーストが挙げられる。有機半導体層と接触面積を大きくするために、導電性ペースト中の導電体量体積比で60%以上であることが好ましい。また、導電体の形状は導電性及び接触面積の点から2種類上で構成されていることがより好ましい。
【0037】
上記炭素材としては、無定形炭素、カーボンブラック、コークス、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素化合物が好ましい。導電性及び接触面積の点から2種類上で構成されていることがより好ましい。
有機導電体としては、ポリピロール、ポリチオフエン、ポリアニリン、ポリアセン等を用いることができる。
【0038】
上記導電性中間層としては、有機半導体層と電極に接着性を持つ導電材料であれば用いることができる。例えば、金属箔、導電性ペースト層、無機酸化物層、炭素材層、有機導電体等を挙げることができる。電極及び有機半導体層との接着の点から導電性ペースト層が好ましい。
導電性ペースト層としては、有機バインダー成分に、金、銀、銅、ニッケル、無機酸化物、炭素材、有機導電体等の微粒子を分散してなる導電性ペーストが好ましい。加工性及び接合性の点から有機バインダー成分は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂がより好ましい。
【0039】
以下、本発明に係る温度検知素子の作製方法について簡単に説明する。尚、本発明はこれに限定したものではない。
本発明における温度検知素子は、一対の電極の間に、酸化阻害成分、共役導電性高分子を含む有機半導体層を形成してなる。本発明における温度検知素子の作製の一方法としては、溶媒に酸化阻害成分、共役導電性高分子を分散または溶解した混合液から溶媒を蒸発させてフイルム状有機半導体層を形成してから電極を形成する方法がある。
このような上記温度検知素子の作製方法は、所定量の酸化阻害成分及び所定量の共役導電性高分子を含む、所定厚みのフイルム状有機半導体層を作製する。このフイルム状有機半導体層へ電極を形成させる方法または、フイルム状有機半導体層に電極を融合させることによって作製する温度検知素子である。
【0040】
フイルム状有機半導体層を形成する方法としては、成形法、印刷法、コーティング法、キャスティング法等を使用することができる。均質なフイルムを得る点から成形法、印刷法、コーティング法が好ましい。
その成形法としては、押出成形、遠心成形、注型法などを採用することが可能であるが、厚み精度、表面平滑性等に優れることから、遠心成形法を採用することが好ましい。より詳しくは、上記共役導電性高分子、酸化阻害成分を有機溶媒に、適宜な方法を用いて、溶解、分散させて成形用混合樹脂溶液を調整し、遠心成形法により均質なフイルム状有機半導体層を安定して作製できる。
印刷法としては、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法を採用することが可能である。廉価で基材形状の選択性の点からスクリーン印刷法が好ましい。
【0041】
本実施形態における温度検知素子にあっては、電極をフイルム状有機半導体層に形成する方法または、フィルム状有機半導体層と電極材料との融合による形成方法がある。
フイルム状有機半導体層に電極を形成する方法としては、印刷法、コーティング法、めっき法、金属酸化遷元法、キャスティング法、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、転写法等の方法を用いることができる。コスト及び生産性の点から印刷法が好ましい。例えば、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法を採用することが可能である。
【0042】
具体的には、フイルム状有機半導体層上に、凹版印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法を用いて金、銀、銅、ニッケル、無機酸化物、炭素材、有機導電体等の微粒子を導体とする導電性ペーストを一定の厚みに印刷し、それを硬化させて得られた導電体を電極として用いることができる。
【0043】
フイルム状有機半導体層と電極材料との融合による形成方法としては、予め形成されてある導電体層と、フイルム状有機半導体層とを圧力、熱、光、放射線等のエネルギーによって接触させる方法である。また、上記導電体層と上記フイルム状有機半導体層との間に導電性中間層を用いることもできる。コスト及び生産性の点から圧力、熱による融合方法が好ましい。
【0044】
以上のような方法で作製された有機半導体層と電極材料で構成された構造体を所定の形状にカットすることにより、所望の温度検知素子が得られる。
【0045】
本発明における温度検知素子の作製のもう一つの方法としては、予め片方または両方の電極が形成されてある基材上に、所定量の酸化阻害成分及び所定量の共役導電性高分子を含む所定厚みの有機半導体層を形成してなる温度検知素子の作製方法である。基材上に片方の電極のみ形成されている場合は、有機半導体層を形成してからもう一方の電極を形成してもよい。
【0046】
電極の形成方法としては、印刷法、コーティング法、めっき法、キャスティング法、真空蒸着法、スバッタ蒸着法、転写法、エッチング法等の方法を用いることができる。
有機半導体層の形成方法としては、成形法、印刷法、コーティング法、キャスティング法等を使用することができる。フイルムの均質性及びコストの点から印刷法、コーティング法が好ましい。更に、生産性の点から印刷法がより好ましい。
印刷法としては、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法を採用することが可能である。廉価で基材形状の選択性の点から凹版印刷法、スクリーン印刷法が好ましい。上記共役導電性高分子及び酸化阻害成分の所定量を有機溶媒に、適宜な方法を用いて、溶解または分散させて混合溶液を調整し、この混合溶液を印刷法により製膜し、溶媒を蒸発させることによって有機半導体層を作製できる。
【0047】
以上のような方法で作製された有機半導体層と電極材料とで構成された構造体を所定の形状に加工することにより、所望の温度検知素子が得られる。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
B定数:温度25℃における抵抗値R25と、温度85℃における抵抗値R85を測定し、下記式より算出した。
B=(LnR25−LnR85)/(1/298.15−1/358.15)
【0049】
抵抗環境変化率(%):温度25℃、湿度50%RHにおける抵抗値R25Bとし、測定した素子を温度85℃、湿度90%RHの環境下に500時間放置した後、該素子を温度25℃、湿度50%RHに戻し、抵抗値R25Aを測定し、下記式より算出した。
抵抗環境変化率(%)=100*(R25B−R25A)/R25B
【0050】
抵抗熱変化率(%):温度25℃における抵抗値R25Dとし、測定した素子を温度120℃の環境下に500時間放置した後、該素子を温度25℃に戻し、抵抗値R25Cを測定し、下記式より算出した。
抵抗熱変化率(%)=100*(R25D−R25C)/R25D
【0051】
抵抗サイクル変化率(%):温度25℃における抵抗値R25Fとし、測定した素子を温度−20℃、1時間から温度80℃、湿度50%RH、1時間を1サイクルとして100サイクルを行った後、該素子を温度25℃に戻し、抵抗値R25Eを測定し、下記式より算出した。
抵抗サイクル変化率(%)=100*(R25F−R25E)/R25F
【0052】
(実施例1)
200gのN,N’−ジメチルアセトアミドに20gのポリピロール(商品名:ポリピロールSSPY、日本曹達社製)と0.1gの1,3,5−トリス(3’,5‘−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,2,6−(1H,3H,5H)トリオンを加え、掻き混ぜて混合溶解させて褐色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが30μmの褐色有機半導体膜を得た。
そして、得られた褐色有機半導体膜の両面をニッケル箔で挟み、200℃の温度下で加圧して、有機半導体膜とニッケル箔と融合させて、有機半導体膜の両側にニッケル箔を融合させた構造体を得た。これを1×5mmのサイズにカットし、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0053】
(実施例2)
400gのN,N’−ジメチルアセトアミドに40gのポリピロール(商品名:ポリピロールSSPY、日本曹達社製)、と8gのカーボンブラック(デグサ社製)を加え、掻き混ぜて充分に混合分散させて黒色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが100μmの黒色有機半導体膜を得た。
そして、得られた黒色有機半導体膜の両面をニッケル箔で挟み、200℃の温度下で加圧して、有機半導体膜とニッケル箔とを融合させて、有機半導体膜の両側にニッケル箔を融合させた構造体を得た。これを1×5mmのサイズにカットし、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0054】
(実施例3)
400gのN,N’−ジメチルアセトアミドに40gのポリピロール(商品名:ポリピロールSSPY、日本曹達社製)、10gのポリビニルフェノール(商品名:マカリンカ−M、丸善石油化学社製)と5gのp−トルエンスルホン酸を加え、掻き混ぜて混合溶解させて褐色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが100μmの褐色有機半導体膜を得た。
そして、得られた褐色有機半導体膜の両面をニッケル箔で挟み、200℃の温度下で加圧して、有機半導体膜とニッケル箔と融合させて、有機半導体膜の両側にニッケル箔を融合させた構造体を得た。これを1×5mmのサイズにカットし、
電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0055】
(実施例4)
400gのN,N’−ジメチルアセトアミドに40gのポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)、10gのポリビニルフェノール(商品名:マカリンカーM、丸善石油化学社製)と10gのカーボンブラック(デグサ社製)を加え、掻き混ぜて充分に混合分散させて黒色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが100μmの黒色有機半導体膜を得た。
そして、得られた褐色有機半導体膜の両面に片面毎に銀ペースト(東洋紡績社製)を印刷し150℃、20分乾燥させて有機半導体膜に電極を形成した。これを1×5mmのサイズにカットし、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0056】
(実施例5)
100gのN,N’−ジメチルアセトアミドに20gのポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)と2gのヒドロキノンスルホン酸を加え、掻き混ぜて混合溶解させて褐色混合液を得た。得られた混合液を、予めポリイミドフイルム上に0.2mmピッチで設けられた銅箔(厚みが35μm)の延べ長さ100mmのバターン上にスクリーン印刷法によって印刷し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが25μmの褐色有機半導体膜を形成し、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0057】
(実施例6)
400gのN,N’−ジメチルアセトアミドに40gのポリ(3−カルボキシルチオフエン)、10gのポリビニルフェノール(商品名:マカリンカーM、丸善石油化学社製)と10gのヒドロキノンスルホン酸を加え、掻き混ぜて混合溶解させて褐色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが100μmの黒色有機半導体膜を得た。
そして、得られた褐色有機半導体膜の片面ごとにそれぞれ銀ペースト(東洋紡績社製)を印刷し、150℃、20分乾燥させて有機半導体膜に電極を形成した。これを1×5mmのサイズにカットし、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0058】
(比較例1)
まず、陽極として表面抵抗が10Ω/□のITO付ガラス、陰極として白金の電極を設けた電解槽に溶媒のアセトニトリルに溶解した0.1Mのピロール(濃度が0.1M)と0.075Mのテトラブチルアンモニウムパークロレート溶液を入れ、電極間電位3.0Vで10分間ポリピロールの電解重合を行い、陽極上にポリピロール膜を製膜した。このように重合したポリピロール膜に電極間電位−3.0V、1分間で脱ドープを行った。
このように得られたポリピロール膜の両側にAgを真空蒸着で形成して電極とし、これを1×5mmのサイズに加工し、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0059】
(比較例2)
比較例1の方法で得られたポリピロール膜上に真空蒸着で形成した0.2mmピッチ間隔で延べ長さ100mmのAgパターンを電極とし、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0060】
(比較例3)
比較例2の方法でポリピロール膜の脱ドープ時間は3分間で行い、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0061】
(比較例4)
実施例1の方法で、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−T−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,2,6−(1H,3H,5H)トリオンを含まない温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
以上の結果から、比較例1〜3においては環境変化率が大きく、実施例に比べて1オーダー以上大きくなることが判る。また、抵抗熱変化率においても実施例1と、酸化阻害成分を含まない比較例4と比べると、明らかに熱変化率が少ないことが判る。また、実施例2、実施例6等のように、カーボン或いはスルホン酸化合物、ポリビニルフェノールなどを添加した場合では、比抵抗が好適な値を示し、調整が十分にできることが判る。これに対して、比較例2、比較例3の結果に示すように、脱ドープ量によって比抵抗にかなりのバラツキが生じてくることが判る。尚、全体的に見て、有機導電性ポリマーを使用することにより、従来の無機酸化物の使用に比べて、素子自体に柔軟性があり、その形状の自由度を高めることができる。
【0064】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係る温度検知素子によれば、一対の電極と、共役導電性高分子および酸化阻害成分を含む有機半導体層とからなるので、特に、上記酸化阻害成分は、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂から選択される酸化阻害成分とするので、非平面部にも適用できる柔軟性があり、抵抗調整が簡単にできる加工性があり、更に、熱劣化等が生じ難い優れた、多種多様な機器に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)〜(g)は、本発明に係る温度検知素子の概略断面図である。
1 有機半導体層
2 電極(金属箔)
3 導電性中間層
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機半導体の負の温度係数を利用した温度検知素子に関するものであり、より詳細には、素子に所定の形状加工性、柔軟性を持たせ、特に、非平面部にも対応或いは適用可能なことから、二次電池、燃料電池、移動体通信機器、ディスプレイ、冷蔵庫、エアコン、暖房器具、炊事器具等の多様な機器に好適に使用できる温度検知素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、温度検知素子として、無機酸化物半導体で構成されているサーミスタと呼ばれている素子がよく利用されている。
この種のサーミスタは、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属の酸化物を2種類以上選択し、所定の比率で配合した原料を高温焼成して得られた複合酸化物セラミックスで構成されていることが知られている(特許文献1を参照。)。
また、共役導電性高分子を用いるサーミスタ素子の試みも行われている。
電解重合法で重合した共役導電性高分子膜を基板に装着し、その膜に一対の電極を真空蒸着で形成してなる温度検知素子が知られている(特許文献2を参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平05−021209号公報
【特許文献2】
特開平03−211702号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような遷移金属の酸化物を含む複合酸化物セラミックスは、高価な材料を使用すると共に、高温焼成で作製され加工が難しく、高い生産性を得ることが困難である。また、酸素分圧、金属の還元等の影響を受けやすい欠点ある。
共役導電性高分子を用いる温度検知素子においては、有機半導体膜は電解質溶液中で電解重合法による製膜がなされるため、膜の成長と同時にドープされ、剛直な膜となる。また、電解質溶液中での重合であるため、膜に不純物が混入し易く、抵抗調整が難しくなる等の問題もある。更に、有機半導体膜が熱劣化し易いという問題もある。
【0005】
従って、本発明は上記課題、即ち、非平面部にも適用できる柔軟性があり、抵抗調整が簡単にできる加工性があり、更に、熱劣化等が生じ難い優れた、多種多様な機器に使用できる温度検知素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく研究した結果、半導体層を共役導電性高分子に加えて、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂の中で、特に酸化、或いはラジカル連鎖を阻害する成分として作用する酸化阻害成分を配合すると、抵抗調整などが簡単にでき、また柔軟性があって熱劣化等の生じない優れた温度検知素子ができることを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明に係る温度検知素子は、以下の構成或いは手段からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
【0007】
本発明に係る温度検知素子は、少なくとも一対の電極と、共役導電性高分子及び酸化阻害成分を含む有機半導体層とからなる。
また、上記酸化阻害成分は、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂から選択される酸化阻害成分とすることができる。中でも上記酸化防止剤は、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤から選ばれるものが好ましく、特に、ラジカル連鎖禁止剤は、フェノール系酸化防止剤、又はアミン系酸化防止剤とすることが好ましい。
【0008】
また上記無機微粒子にあっては、金属、無機酸化物、炭素化合物から選択される酸化阻害成分とすることができる。中でも上記無機微粒子における炭素化合物は、無定形炭素、フラーレン、カーボンナノチューブから選ばれることを特徴とすることができる。
【0009】
更に、上記酸化阻害性樹脂としては、ビニル基を有したベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環に1又は2以上の水酸基等が置換したポリビニル芳香族系アルコール樹脂及びフェノール系樹脂を挙げることができ、特に、ポリビニル−p−フェノール等のポリビニルフェノール系樹脂は、共役導電性高分子と混合分散又は相溶可能であることから好ましい。
また、このような酸化阻害性樹脂は、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂と相溶し、かかる有機樹脂成分中にあって酸化防止効果を示す。このため、混合使用することによって、接着性又は結着性を有した酸化阻害性有機樹脂成分として使用することができる。
【0010】
また、本発明に係る温度検知素子にあっては、その有機半導体層に有機樹脂成分を含むことが好ましい。有機樹脂成分は接着、結着作用を有することから層と電極との接合に好ましい。特に、有機樹脂成分の中でも上記酸化阻害成分と共に使用される樹脂成分が好ましく、例えば、フェノール系酸化防止剤、或いは上述したように相溶性がある、また酸化防止効果のあるポリビニルフェノール系樹脂を相溶してなる有機樹脂成分とすることが特に好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳しく説明する。尚、本発明に係る温度検知素子は以下の実施の形態、及び実施例に限定されるものではない。
図1(a)〜(g)は、本発明に係る温度検知素子の概略断面図である。
【0012】
本発明に係る温度検知素子は、少なくとも一対の電極と、共役導電性高分子及び酸化阻害成分を含む有機半導体層とからなる。
上記共役導電性高分子としては、主鎖が共役系で構成されている有機高分子を挙げることができる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類及びこれらの共重合体等を挙げることができる。これらの中でも、分散性、取扱性などの点を考慮すると、大気中に安定に存在しうるポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類及びこれらの共重合体等が好ましい。更に、後述する酸化防止剤、有機樹脂、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂等の酸化阻害成分を含めてこれらと分散又は相溶して使用する点からもポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類及びこれらの共重合体等が好ましい。
【0013】
また上記共役導電性高分子にはその溶媒への可溶性を確保するためには、アルキル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アルコキシル基、エステル基等の導入が好ましい。例えば、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−メトキシルピロール)、ポリ(3−カルボキシルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシルチオフェン)、ポリ(3−カルボキシルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等を挙げることができる。
【0014】
上記溶媒としては特に制限するものではない。上記共役導電性高分子を溶解または分散しうる溶媒であれば良い。
例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸類等を挙げることができる。必要に応じて、これらの溶媒は単独で、二種類以上の混合物、又は他の有機溶剤との混合物として用いられる。
【0015】
上記共役導電性高分子は重合可能なモノマから酸化剤又は重合触媒の存在下で酸化重合法によって得ることができる。モノマとしては、ピロール及びその誘導体、チオフェン及びその誘導体、アニリン及びその誘導体等を使用することができる。酸化剤としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が使用できる。
【0016】
上記共役導電性高分子には酸化剤等の重合触媒が残存していないことが好ましい。これらの重合触媒及び残存イオンは重合後、水で十分洗浄することで除去される。通常、共役導電性高分子の重合時では、酸化剤等の重合触媒は共役導電性高分子に同時に化学酸化ドープされる。このドープ状態を適宜な還元剤を用いて脱ドープさせることによってドープされていない状態の導電性高分子を得ることができる。また、必要に応じてドーパントとなる他のイオン体を添加して重合することによってドーパント物質の選択ドープを行うことができる。
【0017】
上述したように添加される酸化阻害成分としては、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂から選ばれる少なくとも一種以上の成分を使用することができる。
酸化防止剤としては、本発明においてここで特に限定されるものではない。ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤等の酸化防止効果を有する限り使用することができる。
ラジカル連鎖禁止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミノ系酸化防止剤等を使用することができる。特に、フェノール系酸化防止剤は、溶媒への溶解性、樹脂成分及び共役導電性高分子への分散性又は相溶性が優れより好ましい。
【0018】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−t−ブチル−4−エチルフェノール等のモノフェノール系酸化防止剤、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール系酸化防止剤、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,2,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール類等の高分子型フェノール系酸化防止剤を挙げることができる。特に、高温領域で熱の影響の少ない高融点の高分子型フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0019】
アミン系酸化防止剤としては、サミリーザー9A(Sumilizer 9A:商品名、シプロ化成社製)、アンチゲン3C(Antigene 3C:商品名、シプロ化成社製)、アンチゲンP(Antigene P:商品名、シプロ化成社製)等を挙げることができる。
【0020】
過酸化物分解剤としては、イオン系酸化防止剤、燐系酸化防止剤等を使用することができる。例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤、トリフェニルホスファイト、トリフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト等の燐系酸化防止剤が挙げられる。
【0021】
上記無機微粒子としては、金属、炭素化合物、無機酸化物、無機燐酸塩、無機亜燐酸塩からなる群より選ばれた少なくとも一種の無機微粒子を使用することができる。
例えば、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、亜鉛等の金属微粒子、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、珪酸リチウム、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化バナジウム、酸化マンガン等の無機酸化物微粉末、無定形炭素、コークス、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素化合物が好ましい。更に、ラジカル吸収の点から無定形炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ等がより好ましい。
【0022】
本発明における無機微粒子は、平均粒径が5nm〜50μmであれば使用することができる。無機粒子の粒径が50μmより大きいと、分散状態が悪くなり、導電性のバラツキが大きくなるので好ましくない。また、無機微粒子の粒径が5nm未満の場合は、製造が難しくなり、二次凝集が起き易くなる点から好ましくない。共役導電性高分子への分散性、安定性、コスト等の点から特に好適な平均粒径は10nm〜10μmの範囲である。
【0023】
上記酸化阻害性樹脂としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環に1以上の水酸基等が置換したポリビニル芳香族系アルコール樹脂及びフェノール系樹脂が挙げられ、例えば、ポリビニルフェノール系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも共役導電性高分子と混合分散又は相溶可能なものを選択することができる。
また、このようなポリビニル芳香族系樹脂は、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂と相溶し、かかる有機樹脂成分中にあって酸化防止効果を示す。このため、上記樹脂等に混合使用することによって、接着性又は結着性を有した酸化阻害性有機樹脂成分として使用することができる。
【0024】
本発明における酸化阻害成分は、素子の酸化防止効果があると同時に、素子の抵抗調整にも寄与している。酸化阻害成分の含有量は、共役導電性高分子100質量部に対して0.01質量部未満の含有量では、酸化防止効果が乏しくなるので好ましくない。一方、酸化阻害成分の含有量が10000質量部を超えると、有機半導体層の電気特性が酸化阻害成分に支配されてくるのでこれも好ましくない。特に、好適な質量部比率としては、共役導電性高分子100質量部に対して1質量部〜500質量部の範囲が好ましい。
【0025】
また、本発明における酸化阻害成分は、共役導電性高分子への分散又は相溶、基材又は電極との接着等の点から上記酸化防止剤、上記無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂のいずれかと、相溶性のある有機樹脂成分で構成されていることが好ましい。特に、接着の点から上記有機樹脂成分は、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等がより好ましい。有機樹脂成分及び共役導電性高分子への分散又は相溶、酸化防止性の点から無機微粒子は、無定形炭素、コークス、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素化合物、ラジカル連鎖禁止剤はフェノール系酸化防止剤がより好ましい。
【0026】
具体的な有機樹脂成分としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニールアルコール、ポリビニールエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等を挙げることができる。特に、フェノール樹脂は、ラジカル連鎖禁止剤として作用するポリビニルフェノール系樹脂との相溶性が優れているのでより好ましい。
【0027】
上記有機樹脂成分と、酸化防止剤及び無機微粒子との質量比率は、本発明において特に限定する必要はないが、特に、共役導電性高分子への分散性又は相溶性などの点から有機樹脂成分の含有量が、酸化防止剤及び無機微粒子より多い方が好ましい。
【0028】
本発明に係る温度検知素子の有機半導体層は、溶媒に酸化阻害成分、共役導電性高分子を分散又は溶解した混合液より溶媒を蒸発させて得ることができる。
上記溶媒としては、特に制限するものではなく、上述した共役導電性高分子を溶解しうるものが好ましい。
有機半導体層の厚みは、特に限定しないが、有機半導体層の抵抗安定性の点から1μm以上であることが好ましい。加工性及び取扱性の点からより好ましいくは10〜1000μmの範囲である。
有機半導体層の比抵抗が10−1〜1013Ω・cmの半導体領域であれば使用することができる。比抵抗が10−1Ω・cm未満となると、共有電子が金属の自由電子的挙動を示し、温度係数が極端に小さくなり好ましくない。
一方、比抵抗が1013Ω・cmを超えると、素子に流れる電流が極端に小さくなり好ましくない。好適な比抵抗は100〜1010Ω・cmの範囲である。
【0029】
比抵抗を調整する方法としては、酸化阻害成分と共役導電性高分子との含有量の調整とドーパントによるドーピング手法を使用することができる。
ドーピング手法とは、共役導電性高分子中に、アクセプタ性又はドナー性ドーパント(抵抗調整剤)をドーピングすることにより、共役導電性高分子の共役電子の酸化還元電位を変化させ、導電性を得ることができる。
ドーパントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等を使用することができる。
ハロゲン化合物としては塩素、ヨウ素、臭素、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等を挙げることができる。
ルイス酸としては、PF5、AsF5、SbF5、BF3、BCl3、BBr3、SO3等を挙げることができる。
プロトン酸としては、塩酸、硫酸、燐酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸や有機カルボン酸、スルホン酸などの有機酸を挙げることができる。
【0030】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシル基が一又は二以上を含むものが使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフエニル酢酸等を挙げることができる。
【0031】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホン酸基が一又は二以上を含むものが使用できる。例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−へプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等の分子内に一つのスルホン酸基を含むスルホン酸化合物と、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸等を挙げることができる。
【0032】
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等を挙げることができる。
尚、本発明の素子における共役導電性高分子、酸化阻害成分以外に、素子の電気的特性、機械的物性を損なわない程度に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、架橋剤、相溶化剤、難燃剤等を全構成物質の50質量部以下で添加してもよい。
【0033】
本発明における温度検知素子の構造は、特に限定しない。導電体で構成されている一対の電極と、一対の電極の間に、配置される酸化阻害成分及び共役導電性高分子を含む有機半導体層とで構成されている温度検知素子であればよい。
有機半導体層と電極との接合は図1(a)に示す電極2と有機半導体層1と直接接合してもよい。また、図1(a)に示す有機半導体層1と電極2との間に、導電性中間層3を介在してもよい(図1(g)参照)。
【0034】
本発明の「一対の電板の間」とは、有機半導体層を介在し、二つの電極の間に電子移動が可能である構造をいう。上記概念に適合した構造であれば本発明の範囲内とすることができる。例えば、図1(b)−(g)に示す実施形態の構造が挙げられる。本発明の温度検知素子の構造はこれに限定するものではない。
上記電極としては、上記有機半導体層より低い比抵抗を有する電気伝導体であればよく、金属箔、導電性ペースト、無機酸化物、炭素材、有機導電体等が好ましい。
【0035】
金属箔としては、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム等の金属の単一金属箔、複合箔、合金箔等を挙げることができる。導電性とコストの点から銅、アルミニウム、ニッケルの単一箔及びこれらの複合箔、合金箔が好ましい。
更に、酸化、汚れ等の点からこれらの箔材の表面にメッキ処理がされているものがより好ましい。また、有機半導体層との接合性を高めるために、金属箔表面処理または粗面化処理を施してもよい。
【0036】
導電性ペーストとしては、金、銀、銅、ニッケル、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、炭素材、有機導電体を導体とする導電性ペーストが挙げられる。有機半導体層と接触面積を大きくするために、導電性ペースト中の導電体量体積比で60%以上であることが好ましい。また、導電体の形状は導電性及び接触面積の点から2種類上で構成されていることがより好ましい。
【0037】
上記炭素材としては、無定形炭素、カーボンブラック、コークス、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素化合物が好ましい。導電性及び接触面積の点から2種類上で構成されていることがより好ましい。
有機導電体としては、ポリピロール、ポリチオフエン、ポリアニリン、ポリアセン等を用いることができる。
【0038】
上記導電性中間層としては、有機半導体層と電極に接着性を持つ導電材料であれば用いることができる。例えば、金属箔、導電性ペースト層、無機酸化物層、炭素材層、有機導電体等を挙げることができる。電極及び有機半導体層との接着の点から導電性ペースト層が好ましい。
導電性ペースト層としては、有機バインダー成分に、金、銀、銅、ニッケル、無機酸化物、炭素材、有機導電体等の微粒子を分散してなる導電性ペーストが好ましい。加工性及び接合性の点から有機バインダー成分は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂がより好ましい。
【0039】
以下、本発明に係る温度検知素子の作製方法について簡単に説明する。尚、本発明はこれに限定したものではない。
本発明における温度検知素子は、一対の電極の間に、酸化阻害成分、共役導電性高分子を含む有機半導体層を形成してなる。本発明における温度検知素子の作製の一方法としては、溶媒に酸化阻害成分、共役導電性高分子を分散または溶解した混合液から溶媒を蒸発させてフイルム状有機半導体層を形成してから電極を形成する方法がある。
このような上記温度検知素子の作製方法は、所定量の酸化阻害成分及び所定量の共役導電性高分子を含む、所定厚みのフイルム状有機半導体層を作製する。このフイルム状有機半導体層へ電極を形成させる方法または、フイルム状有機半導体層に電極を融合させることによって作製する温度検知素子である。
【0040】
フイルム状有機半導体層を形成する方法としては、成形法、印刷法、コーティング法、キャスティング法等を使用することができる。均質なフイルムを得る点から成形法、印刷法、コーティング法が好ましい。
その成形法としては、押出成形、遠心成形、注型法などを採用することが可能であるが、厚み精度、表面平滑性等に優れることから、遠心成形法を採用することが好ましい。より詳しくは、上記共役導電性高分子、酸化阻害成分を有機溶媒に、適宜な方法を用いて、溶解、分散させて成形用混合樹脂溶液を調整し、遠心成形法により均質なフイルム状有機半導体層を安定して作製できる。
印刷法としては、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法を採用することが可能である。廉価で基材形状の選択性の点からスクリーン印刷法が好ましい。
【0041】
本実施形態における温度検知素子にあっては、電極をフイルム状有機半導体層に形成する方法または、フィルム状有機半導体層と電極材料との融合による形成方法がある。
フイルム状有機半導体層に電極を形成する方法としては、印刷法、コーティング法、めっき法、金属酸化遷元法、キャスティング法、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、転写法等の方法を用いることができる。コスト及び生産性の点から印刷法が好ましい。例えば、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法を採用することが可能である。
【0042】
具体的には、フイルム状有機半導体層上に、凹版印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法を用いて金、銀、銅、ニッケル、無機酸化物、炭素材、有機導電体等の微粒子を導体とする導電性ペーストを一定の厚みに印刷し、それを硬化させて得られた導電体を電極として用いることができる。
【0043】
フイルム状有機半導体層と電極材料との融合による形成方法としては、予め形成されてある導電体層と、フイルム状有機半導体層とを圧力、熱、光、放射線等のエネルギーによって接触させる方法である。また、上記導電体層と上記フイルム状有機半導体層との間に導電性中間層を用いることもできる。コスト及び生産性の点から圧力、熱による融合方法が好ましい。
【0044】
以上のような方法で作製された有機半導体層と電極材料で構成された構造体を所定の形状にカットすることにより、所望の温度検知素子が得られる。
【0045】
本発明における温度検知素子の作製のもう一つの方法としては、予め片方または両方の電極が形成されてある基材上に、所定量の酸化阻害成分及び所定量の共役導電性高分子を含む所定厚みの有機半導体層を形成してなる温度検知素子の作製方法である。基材上に片方の電極のみ形成されている場合は、有機半導体層を形成してからもう一方の電極を形成してもよい。
【0046】
電極の形成方法としては、印刷法、コーティング法、めっき法、キャスティング法、真空蒸着法、スバッタ蒸着法、転写法、エッチング法等の方法を用いることができる。
有機半導体層の形成方法としては、成形法、印刷法、コーティング法、キャスティング法等を使用することができる。フイルムの均質性及びコストの点から印刷法、コーティング法が好ましい。更に、生産性の点から印刷法がより好ましい。
印刷法としては、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法を採用することが可能である。廉価で基材形状の選択性の点から凹版印刷法、スクリーン印刷法が好ましい。上記共役導電性高分子及び酸化阻害成分の所定量を有機溶媒に、適宜な方法を用いて、溶解または分散させて混合溶液を調整し、この混合溶液を印刷法により製膜し、溶媒を蒸発させることによって有機半導体層を作製できる。
【0047】
以上のような方法で作製された有機半導体層と電極材料とで構成された構造体を所定の形状に加工することにより、所望の温度検知素子が得られる。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
B定数:温度25℃における抵抗値R25と、温度85℃における抵抗値R85を測定し、下記式より算出した。
B=(LnR25−LnR85)/(1/298.15−1/358.15)
【0049】
抵抗環境変化率(%):温度25℃、湿度50%RHにおける抵抗値R25Bとし、測定した素子を温度85℃、湿度90%RHの環境下に500時間放置した後、該素子を温度25℃、湿度50%RHに戻し、抵抗値R25Aを測定し、下記式より算出した。
抵抗環境変化率(%)=100*(R25B−R25A)/R25B
【0050】
抵抗熱変化率(%):温度25℃における抵抗値R25Dとし、測定した素子を温度120℃の環境下に500時間放置した後、該素子を温度25℃に戻し、抵抗値R25Cを測定し、下記式より算出した。
抵抗熱変化率(%)=100*(R25D−R25C)/R25D
【0051】
抵抗サイクル変化率(%):温度25℃における抵抗値R25Fとし、測定した素子を温度−20℃、1時間から温度80℃、湿度50%RH、1時間を1サイクルとして100サイクルを行った後、該素子を温度25℃に戻し、抵抗値R25Eを測定し、下記式より算出した。
抵抗サイクル変化率(%)=100*(R25F−R25E)/R25F
【0052】
(実施例1)
200gのN,N’−ジメチルアセトアミドに20gのポリピロール(商品名:ポリピロールSSPY、日本曹達社製)と0.1gの1,3,5−トリス(3’,5‘−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,2,6−(1H,3H,5H)トリオンを加え、掻き混ぜて混合溶解させて褐色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが30μmの褐色有機半導体膜を得た。
そして、得られた褐色有機半導体膜の両面をニッケル箔で挟み、200℃の温度下で加圧して、有機半導体膜とニッケル箔と融合させて、有機半導体膜の両側にニッケル箔を融合させた構造体を得た。これを1×5mmのサイズにカットし、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0053】
(実施例2)
400gのN,N’−ジメチルアセトアミドに40gのポリピロール(商品名:ポリピロールSSPY、日本曹達社製)、と8gのカーボンブラック(デグサ社製)を加え、掻き混ぜて充分に混合分散させて黒色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが100μmの黒色有機半導体膜を得た。
そして、得られた黒色有機半導体膜の両面をニッケル箔で挟み、200℃の温度下で加圧して、有機半導体膜とニッケル箔とを融合させて、有機半導体膜の両側にニッケル箔を融合させた構造体を得た。これを1×5mmのサイズにカットし、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0054】
(実施例3)
400gのN,N’−ジメチルアセトアミドに40gのポリピロール(商品名:ポリピロールSSPY、日本曹達社製)、10gのポリビニルフェノール(商品名:マカリンカ−M、丸善石油化学社製)と5gのp−トルエンスルホン酸を加え、掻き混ぜて混合溶解させて褐色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが100μmの褐色有機半導体膜を得た。
そして、得られた褐色有機半導体膜の両面をニッケル箔で挟み、200℃の温度下で加圧して、有機半導体膜とニッケル箔と融合させて、有機半導体膜の両側にニッケル箔を融合させた構造体を得た。これを1×5mmのサイズにカットし、
電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0055】
(実施例4)
400gのN,N’−ジメチルアセトアミドに40gのポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)、10gのポリビニルフェノール(商品名:マカリンカーM、丸善石油化学社製)と10gのカーボンブラック(デグサ社製)を加え、掻き混ぜて充分に混合分散させて黒色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが100μmの黒色有機半導体膜を得た。
そして、得られた褐色有機半導体膜の両面に片面毎に銀ペースト(東洋紡績社製)を印刷し150℃、20分乾燥させて有機半導体膜に電極を形成した。これを1×5mmのサイズにカットし、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0056】
(実施例5)
100gのN,N’−ジメチルアセトアミドに20gのポリピロールSSPY(商品名、日本曹達社製)と2gのヒドロキノンスルホン酸を加え、掻き混ぜて混合溶解させて褐色混合液を得た。得られた混合液を、予めポリイミドフイルム上に0.2mmピッチで設けられた銅箔(厚みが35μm)の延べ長さ100mmのバターン上にスクリーン印刷法によって印刷し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが25μmの褐色有機半導体膜を形成し、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0057】
(実施例6)
400gのN,N’−ジメチルアセトアミドに40gのポリ(3−カルボキシルチオフエン)、10gのポリビニルフェノール(商品名:マカリンカーM、丸善石油化学社製)と10gのヒドロキノンスルホン酸を加え、掻き混ぜて混合溶解させて褐色混合液を得た。得られた混合液を遠心成形法で成形し、150℃の雰囲気下で2時間乾燥し溶媒を除去した後、平均厚みが100μmの黒色有機半導体膜を得た。
そして、得られた褐色有機半導体膜の片面ごとにそれぞれ銀ペースト(東洋紡績社製)を印刷し、150℃、20分乾燥させて有機半導体膜に電極を形成した。これを1×5mmのサイズにカットし、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0058】
(比較例1)
まず、陽極として表面抵抗が10Ω/□のITO付ガラス、陰極として白金の電極を設けた電解槽に溶媒のアセトニトリルに溶解した0.1Mのピロール(濃度が0.1M)と0.075Mのテトラブチルアンモニウムパークロレート溶液を入れ、電極間電位3.0Vで10分間ポリピロールの電解重合を行い、陽極上にポリピロール膜を製膜した。このように重合したポリピロール膜に電極間電位−3.0V、1分間で脱ドープを行った。
このように得られたポリピロール膜の両側にAgを真空蒸着で形成して電極とし、これを1×5mmのサイズに加工し、電極引き出しリードを形成して、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0059】
(比較例2)
比較例1の方法で得られたポリピロール膜上に真空蒸着で形成した0.2mmピッチ間隔で延べ長さ100mmのAgパターンを電極とし、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0060】
(比較例3)
比較例2の方法でポリピロール膜の脱ドープ時間は3分間で行い、温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子の抵抗を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0061】
(比較例4)
実施例1の方法で、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−T−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,2,6−(1H,3H,5H)トリオンを含まない温度検知素子を作製した。
得られた温度検知素子を測定し、B定数、抵抗環境変化率(%)、抵抗熱変化率(%)、抵抗サイクル変化率(%)を求め、その結果を下記表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
以上の結果から、比較例1〜3においては環境変化率が大きく、実施例に比べて1オーダー以上大きくなることが判る。また、抵抗熱変化率においても実施例1と、酸化阻害成分を含まない比較例4と比べると、明らかに熱変化率が少ないことが判る。また、実施例2、実施例6等のように、カーボン或いはスルホン酸化合物、ポリビニルフェノールなどを添加した場合では、比抵抗が好適な値を示し、調整が十分にできることが判る。これに対して、比較例2、比較例3の結果に示すように、脱ドープ量によって比抵抗にかなりのバラツキが生じてくることが判る。尚、全体的に見て、有機導電性ポリマーを使用することにより、従来の無機酸化物の使用に比べて、素子自体に柔軟性があり、その形状の自由度を高めることができる。
【0064】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係る温度検知素子によれば、一対の電極と、共役導電性高分子および酸化阻害成分を含む有機半導体層とからなるので、特に、上記酸化阻害成分は、酸化防止剤、無機微粒子、及び酸化阻害性樹脂から選択される酸化阻害成分とするので、非平面部にも適用できる柔軟性があり、抵抗調整が簡単にできる加工性があり、更に、熱劣化等が生じ難い優れた、多種多様な機器に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)〜(g)は、本発明に係る温度検知素子の概略断面図である。
1 有機半導体層
2 電極(金属箔)
3 導電性中間層
Claims (7)
- 少なくとも一対の電極と、共役導電性高分子及び酸化阻害成分を含む有機半導体層とからなる温度検知素子。
- 上記酸化阻害成分は、酸化防止剤、無機微粒子、酸化阻害性樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の成分からなることを特徴とする請求項1記載の温度検知素子。
- 上記酸化防止剤は、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤から選ばれる少なくとも1種以上の成分からなることを特徴とする請求項2記載の温度検知素子。
- 上記ラジカル連鎖禁止剤は、フェノール系酸化防止剤、又はアミン系酸化防止剤からなることを特徴とする請求項3記載の温度検知素子。
- 上記無機微粒子は、無定形炭化水素、コークス、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種以上のものからなることを特徴とする請求項2記載の温度検知素子。
- 上記酸化阻害性樹脂がポリビニルフェノール系樹脂からなることを特徴とする請求項2記載の温度検知素子。
- 上記有機半導体層には有機樹脂成分が含まれることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の温度検知素子。
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