JP2004335214A - 機構デバイス及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価かつ容易に耐久性の優れた機構デバイスを短時間で製作できるようにする。
【解決手段】開示される機構デバイス1は、絶縁基板6の表面に形成された下部電極4と、その柱部10が絶縁基板6の表面に下部電極4と所定距離離れて形成されるとともに、その梁部11の先端が下部電極4と所定距離離れて対向する片持ち梁状の上部電極3と、下部電極4と柱部10との間の領域に対向した絶縁基板6の裏面の領域に形成された駆動電極5とを備えている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機構デバイス及びその製造方法に関し、特に、静電駆動型の片持ち梁を有する機構デバイス及びこの機構デバイスをマイクロマシーニング技術を用いて製造する機構デバイスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の静電駆動型の機能デバイスには、ガラスウェハ上に固定接点及び絶縁膜で被覆された固定電極が形成されてなるベースに、片持ち梁形状のアクチュエータを接合一体化したものがある。アクチュエータは、シリコンウェハからなる可動電極と、中間絶縁膜と、シリコンウェハからなる補助バネ層との3層構造で構成されている。可動電極の下面に絶縁膜を介して可動接点が設けられる一方、補助バネ層のうち、可動接点の上方に位置する部分に薄肉部が形成されている。また、中間絶縁膜のうち、可動接点の直上に位置する部分が除去され、空隙部が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。以下、この技術を第1の従来例と呼ぶ。
【0003】
また、従来の磁気駆動型の機構デバイスには、以下に示すようにして製作されるものがある。まず、銅箔が形成されたプリント基板上に半導体製造プロセス及びウェットエッチングを使用して銅箔からなる下部電極の下地をパターニングした後、接点材料とするためと下部電極の下地の酸化を防止するために、下部電極の下地を金メッキで覆い下部電極とする。次に、半導体製造プロセスを使用してパターニングした後、ニッケルメッキで犠牲層を形成する。ここで、犠牲層とは、下方に空隙を有する層(上層)を形成するために、一旦形成され、かつ、その上面に上層が形成された後、エッチング等により除去される層をいう。次に、半導体製造プロセスを使用してパターニングした後、片持ち梁の柱部と、この柱部にその一端が接続され、上部電極となる梁部の基部とを金メッキで形成する。次に、梁部の基部の上面に磁気駆動材料としてのニッケルをメッキした後、酸化を防止するために、金メッキで上記ニッケルを覆い梁部とする。そして、ウエットエッチングを使用して、上記犠牲層と、プリント基板上に残っている不要な銅箔とを除去する(例えば、非特許文献1参照。)。以下、この技術を第2の従来例と呼ぶ。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−185586号公報([0013]〜[0014],[0028]〜[0029]、図9)
【非特許文献1】
有馬尚邦、他2名,「マイクロマシーニングによるマイクロリードスイッチの開発」,信学技報,社団法人電子情報通信学会,Vol.102,No.26,2002年4月12日,p.17−20
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した第1の従来例では、ガラスウェハ上に固定接点及び絶縁膜で被覆された固定電極が形成されてなるベースに、片持ち梁形状のアクチュエータとなるシリコンウェハを接合一体化し、その後に、上記シリコンウェハを所定の厚さまでCMPやエッチング等によりシンニングしている。このため、製作工程の工程数が多くかつ複雑であるとともに、スパッタリング法や真空蒸着法を使用しているため、製作時間が長いという課題があった。また、上記した第1の従来例では、ガラスウェハやシリコンウェハを用いているため、機能デバイスの価格が高くなるという課題があった。
【0006】
この点、上記した第2の従来例を上記した第1の従来例に流用することが考えられる。すなわち、半導体製造プロセス及びウェットエッチングを使用して、プリント基板上に静電駆動型の片持ち梁を有する機能デバイスを製作するのである。しかし、この場合には、固定接点が下地の銅箔を含めて2層であるのに対し、固定電極は下地の銅箔とともに絶縁膜で被覆されて3層となる。この固定接点と固定電極との間の1層分の段差のために、これらの上層に形成される上部電極である梁部は、壊れやすく、製作が困難となるおそれがある。そこで、固定接点の厚さを3層の固定電極と同じ厚さにするために1層分だけ金メッキを行うことが考えられるが、今度はコストアップとなってしまう。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る機構デバイスは、基板の一方の面に形成された下部電極と、その柱部が基板の一方の面に下部電極と所定距離離れて形成されるとともに、その梁部の先端が下部電極と所定距離離れて対向する片持ち梁状の上部電極と、下部電極と柱部との間の領域に対向した基板の他方の面の側に形成された駆動電極とを備えている。
【0008】
また、本発明に係る機構デバイスの製造方法は、絶縁基板の両面に銅箔が形成されてなる基板の一方の面に、下部電極の下地を含む第1の部分及び片持ち梁状の上部電極の柱部の下地を含む第2の部分を形成するための第1のフォトレジストパターンを形成する第1の工程と、第1のフォトレジストパターンを用いて一方の面の第1及び第2の部分以外の銅箔をエッチングにより除去する第2の工程と、第1の部分の表面に導電層を形成するための第2のフォトレジストパターンを形成する第3の工程と、第2のフォトレジストパターンを用いてメッキ処理により導電層を形成する第4の工程と、第1の部分と第2の部分との間の領域に犠牲層を形成するための第3のフォトレジストパターンを形成する第5の工程と、第3のフォトレジストパターンを用いてメッキ処理により犠牲層を形成する第6の工程と、基板の一方の面に上部電極の柱部及び梁部を形成するための第4のフォトレジストパターンを形成するとともに、基板の他方の面に下部電極と柱部との間の領域に対向した領域に駆動電極を形成するための第5のフォトレジストパターンを形成する第7の工程と、第4及び第5のフォトレジストパターンを用いてメッキ処理により柱部及び梁部、駆動電極を形成する第8の工程と、犠牲層を含む部分をエッチングにより除去する第9の工程とを有している。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1である機構デバイス1の断面図、図2は、同機構デバイス1の斜視図である。
この実施の形態1の機構デバイス1は、プリント基板2と、上部電極3と、下部電極4と、駆動電極5とから構成されている。
【0010】
プリント基板2は、例えば、ガラスエポキシ樹脂からなる絶縁基板6と、その表面及び裏面の両方に銅箔を形成し、不要な銅箔を除去して得られた下地銅箔7〜9とから構成されている。プリント基板2のサイズは、例えば、横2cm、縦1.5cm、厚さ900μmである。下地銅箔7は上部電極3の下地、下地銅箔8は下部電極4の下地、下地銅箔9は駆動電極5の下地である。
【0011】
上部電極3は、上記下地銅箔7と、金からなり、下地銅箔7上に形成された略直方体状の柱部10と、金からなり、その一端が柱部10の上部端部の略中央に接続されるとともに、他端が略水平に柱部10と直交する方向に延びる略直方体状の梁部11とから構成されている。梁部11の先端部は、下部電極4の上方に臨んでいる。柱部10と梁部11とは一体に形成されており、上部電極3は、いわゆる片持ち梁状をしている。柱部10のサイズは、例えば、横1000μm、縦800μm、厚さ1μmであり、梁部11のサイズは、例えば、横900μm、縦100μm、厚さ1μmである。
【0012】
下部電極4は、下地銅箔7から所定距離離れて形成された下地銅箔8と、金からなり、下地銅箔8上に形成された略直方体状の導電層12とから構成されている。下部電極4のサイズは、例えば、横1300μm、縦900μm、厚さ10μmである。駆動電極5は、絶縁基板6表面の下地銅箔7と下地銅箔8との間の領域に対向した絶縁基板6裏面の領域に形成された下地銅箔9と、金からなり、下地銅箔9上に形成された略直方体状の導電層13とから構成されている。駆動電極5のサイズは、例えば、横300μm、縦300μm、厚さ10μmである。なお、図1並びに図2及び後述する各図面においては、各部の形状は、上記一例として示した各部のサイズからくる比率とは一致していない。
【0013】
次に、上記構成の機構デバイス1の製造方法について、図3〜図5を参照して説明する。まず、絶縁基板6の表面及び裏面に銅箔21及び22が形成されてなるプリント基板2の表面全面にフォトレジスト(図示略)を塗布するとともに、プリント基板2の裏面全面にもフォトレジスト23(図3(a)参照)を塗布する。次に、マスクアライナーでプリント基板2の表面全面に塗布されたフォトレジストを露光した後、現像液で現像するフォトリソグラフィ(photolithography)技術を使用して、図3(a)に示すように、銅箔21のうち、その一部を下地銅箔7とすべき部分、プリント基板21の裏面側に形成すべき駆動電極5に対応した部分、下地銅箔8とすべき部分をそれぞれ残すために、フォトレジストパターン24〜26を形成する。このフォトレジストパターン24〜26は、プリント基板2の表面に、例えば、8個の機構デバイス分だけ形成する。以下の製造過程におけるフォトレジストパターンの形成についても同様である。
【0014】
次に、ウエットエッチング技術を使用して、例えば、塩化第二鉄により銅箔21のうち不要な部分を除去し、図3(b)に示すように、下地銅箔27、28及び8を形成した後、図3(c)に示すように、フォトレジストパターン24〜26及びフォトレジスト23を除去する。次に、プリント基板2の表面全面にフォトレジスト(図示略)を塗布するとともに、プリント基板2の裏面全面にもフォトレジスト29(図3(d)参照)を塗布する。次に、上記したフォトリソグラフィ技術を使用して、図3(d)に示すように、図1に示す導電層12を形成するための開口部30aを有するフォトレジストパターン30を形成する。
【0015】
次に、上記したフォトレジストパターン30を用いて、図4(a)に示すように、後述するニッケルからなる犠牲層33((図4(d)参照))をエッチングで除去する際の耐エッチング層であり、接点材料となる金からなる導電層12を形成するために、電解メッキ装置により金メッキ処理を行った後、図4(b)に示すように、フォトレジストパターン30及びフォトレジスト29を除去する。
【0016】
次に、プリント基板2の表面全面にフォトレジスト(図示略)を塗布するとともに、プリント基板2の裏面全面にもフォトレジスト31(図4(c)参照)を塗布する。次に、上記したフォトリソグラフィ技術を使用して、図4(c)に示すように、図1に示す柱部10及び梁部11を形成するために必要なニッケルからなる犠牲層33((図4(d)参照))を形成するための開口部32aを有するフォトレジストパターン32を形成する。
【0017】
次に、上記したフォトレジストパターン32を用いて、図4(d)に示すように、ニッケルからなる犠牲層33を形成するために、電解メッキ装置によりニッケルメッキ処理を行った後、図5(a)に示すように、フォトレジストパターン32及びフォトレジスト31を除去する。犠牲層33のサイズは、例えば、横1500μm、縦250μm、厚さ3μmである。
【0018】
次に、プリント基板2の表面全面にフォトレジスト(図示略)を塗布するとともに、プリント基板2の裏面全面にもフォトレジスト(図示略)を塗布する。次に、上記したフォトリソグラフィ技術を使用して、図5(b)に示すように、プリント基板2の表面側に、図1に示す柱部10及び梁部11を形成するための開口部34aを有するフォトレジストパターン34を形成するとともに、プリント基板2の裏面側に、図1に示す導電層13を形成するための開口部35aを有するフォトレジストパターン35を形成する。
【0019】
次に、上記したフォトレジストパターン34及び35を用いて、図5(c)に示すように、柱部10及び梁部11と、ニッケルからなる犠牲層33をエッチングで除去する際の耐エッチング層である金からなる導電層13を形成するために、電解メッキ装置により金メッキ処理を行った後、図5(d)に示すように、フォトレジストパターン34及び35を除去する。次に、ウエットエッチング技術を使用して、例えば、塩化第二鉄及び塩酸により、犠牲層33と、下地銅箔28と、下地銅箔27及び銅箔22のうちの不要な部分とを除去することにより、下地銅箔7及び9を形成して、図1に示す機構デバイス1を製作する。
【0020】
次に、上記構成の機構デバイス1の動作について、図6を参照して説明する。上部電極3を構成する梁部11と駆動電極5との間に所定の電圧を印加して電位差を与えると、静電誘導が起こり、図6に示すように、梁部11の下面に例えば、正の電荷が蓄積される一方、絶縁基板6の駆動電極5の上面近傍に例えば、負の電荷が蓄積される。これにより、梁部11と駆動電極5との間にクーロン力が働くので、梁部11が駆動電極5に引き付けられ図中下方向に撓み、梁部11の先端が下部電極4を構成する導電層12の上面と接触し、機構デバイス1はオン状態となる。
【0021】
このようなオン状態において、梁部11と駆動電極5との間への所定の電圧の印加を中止すると、梁部11の下面に蓄積されていた例えば、正の電荷が減少する一方、絶縁基板6の駆動電極5の上面近傍に蓄積されていた例えば、負の電荷が減少する。これにより、梁部11と駆動電極5との間に働いていたクーロン力が弱まるので、梁部11はその弾性力により元の状態に戻ろうとしてその撓みを解消させるため、導電層12の上面と接触していた梁部11の先端が導電層12の上面から離れて持ち上がり、機構デバイス1はオフ状態となる。
【0022】
このように、この実施の形態1によれば、フォトリソグラフィ技術及びウエットエッチング技術を使用して、その表面及び裏面の両方に銅箔が形成されたガラスエポキシ樹脂からなるプリント基板2の表面に、下部電極4と、下部電極4と所定距離離れた領域に形成された柱部10と、その先端が下部電極4と所定距離離れて対向する梁部11とを有する片持ち梁状の上部電極3とを形成するとともに、下部電極4と柱部10との間の領域に対向したプリント基板2の裏面の領域に駆動電極5を形成することにより、機構デバイス1を製作している。これにより、製作工程の工程数が従来に比べて少なく、また特殊な加工装置を用いていないので、簡単に製作できるとともに、製作時間が長いスパッタリング法や真空蒸着法を使用しないために、製作時間を短縮することができる。また、ガラスウェハやシリコンウェハに比べて安価なプリント基板2を用いているため、機能デバイスの価格を低減することができる。
【0023】
なお、上記した機能デバイス1のサイズは、試作段階のため大きくなっているが、フォトリソグラフィ技術を使用していることから、機能デバイス1のサイズを数ミクロン単位まで小さくすることは容易であり、1個のプリント基板2上に複数個の機構デバイス1を製作することができる。これにより、機能デバイス1を大量生産することができ、機能デバイスの価格をより一層低減することができる。
【0024】
また、この実施の形態1によれば、プリント基板2の裏面に駆動電極5を形成しているので、機構デバイス1の構造が簡単になり、梁部11が壊れにくい。また、接点材料として金を使用しているため、上部電極3と下部電極4との間の接触抵抗が低くなるとともに、梁部11も金で製作されているため、梁部11に柔軟性があり、微小な印加電圧での動作が可能となる。また、導電層12とする金メッキの厚さは、接点材料及び耐エッチング層として機能するだけの厚さでよいので、機能デバイスを安価に構成することができる。なお、梁部11と駆動電極5との間には、誘電材料である空気及び絶縁基板6が介挿されているだけであるので、動作時に梁部11と駆動電極5との間の静電容量が従来に比べて低下することはない。
【0025】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2である機構デバイス41の断面図である。図7において、図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図7に示す機構デバイス41においては、図1に示すプリント基板2及び駆動電極5に換えて、プリント基板42及び駆動電極43が新たに設けられている。
【0026】
プリント基板42は、例えば、ガラスエポキシ樹脂からなる絶縁基板6と、その表面に銅箔を形成し、不要な銅箔を除去して得られた下地銅箔7及び8とから構成されている。プリント基板42のサイズは、例えば、横2cm、縦1.5cm、厚さ900μmである。また、絶縁基板6には、図1に示す駆動電極5に対応する位置に凹部6aが形成されており、この凹部6aには、金からなり、略直方体状の駆動電極43が形成されている。凹部6a及び駆動電極43のサイズは、例えば、横300μm、縦300μm、厚さ10μmである。
【0027】
上記構成の機構デバイス41の製造方法のうち、プリント基板42の表面側、すなわち、上部電極3及び下部電極4の製造方法については、図3〜図5を参照して説明した機構デバイス1の製造方法と同様である。一方、駆動電極43については、プリント基板42を製作する際に、電解メッキ装置により金メッキ処理を行って予め形成しておく。
【0028】
次に、上記構成の機構デバイス41の動作について、図8を参照して説明する。上部電極3を構成する梁部11と駆動電極43との間に所定の電圧を印加して電位差を与えると、静電誘導が起こり、図8に示すように、梁部11の下面に例えば、正の電荷が蓄積される一方、絶縁基板6の駆動電極5の上面近傍に例えば、負の電荷が蓄積される。この場合、図6と図8とを比較して分かるように、梁部11と駆動電極43との間の距離は、梁部11と駆動電極5との間の距離より短いので、梁部11と駆動電極43との間に印加する所定の電圧を梁部11と駆動電極5との間に印加する所定の電圧と同一の電圧とした場合、梁部11と駆動電極43との間に働くクーロン力は、梁部11と駆動電極5との間に働くクーロン力より大きい。したがって、梁部11は、駆動電極43により強く引き付けられ図中下方向に撓み、梁部11の先端が下部電極4を構成する導電層12の上面と接触し、機構デバイス41はオン状態となる。なお、機構デバイス41がオフ状態となる動作については、上記した機構デバイス1の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0029】
このように、この実施の形態2によれば、絶縁基板6の裏面に凹部6aを設け、その凹部6aに駆動電圧43を形成したので、梁部11と駆動電極43との間の距離は、梁部11と駆動電極5との間の距離より短い。したがって、梁部11と駆動電極43との間に所定の電圧を印加した場合、梁部11と駆動電極43との間に働くクーロン力をより有効に活用することができる。このため、梁部11の面積を図1に示す梁部11の面積より小さくしても同等のクーロン力が得られるので、機構デバイス41自体の形状を機構デバイス1よりも小型化することができる。逆にいえば、上記した実施の形態1における梁部11と駆動電極5との間に働くクーロン力と同じ大きさのクーロン力を梁部11と駆動電極43との間に働かせるための電圧は、上記した実施の形態1の場合に比べて低くすることができる。これにより、上記した実施の形態1の場合に比べてより消費電力を削減することができる。また、この実施の形態2によれば、駆動電極43は、プリント基板42を製作する際に、電解メッキ装置により金メッキ処理を行って予め形成しているので、新たな製造工程を必要とせず、安価に機構デバイス41を製作することができる。
【0030】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3である機構デバイス51の断面図、図10は、同機構デバイス51の上面図及び裏面図である。なお、図9は、図10(a)のA−A’断面図でもある。図9及び図10において、図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図9及び図10に示す機構デバイス51においては、図1に示す上部電極3に換えて、上部電極52が新たに設けられている。
【0031】
上部電極52は、下地銅箔7と、金からなり、下地銅箔7上に形成された略直方体状の柱部10と、金からなり、その一端が柱部10の上部端部の略中央に接続された梁部53とから構成されており、梁部53の先端部が下部電極4の上方に臨んでいる。梁部53は、図10(a)に示すように、駆動電極5に対向する部分が駆動電極5の形状と略等しい形状を有する拡張部53aを備えている。柱部10のサイズは、例えば、横1000μm、縦800μm、厚さ10μmである。梁部11のサイズは、例えば、全体の長さが900μm、拡張部53a以外の幅が100μm、厚さ1μmである。一方、拡張部53aのサイズは、例えば、横300μm、縦300μm、厚さ10μmである。
【0032】
上記構成の機構デバイス51の製造方法は、図5(b)に示す開口部34aを有するフォトレジストパターン34に換えて、図9及び図10(a)に示す形状を有する柱部10及び梁部53を形成するための開口部を有するフォトレジストパターンが形成される以外は、図3〜図5を参照して説明した機構デバイス1の製造方法と同様である。
【0033】
次に、上記構成の機構デバイス51の動作について説明する。上部電極52を構成する梁部53と駆動電極5との間に所定の電圧を印加して電位差を与えると、静電誘導が起こり、梁部53を構成する拡張部53aの下面に例えば、正の電荷が蓄積される一方、絶縁基板6の駆動電極5の上面近傍に例えば、負の電荷が蓄積される。この場合、図2と図10(a)とを比較して分かるように、正の電荷が蓄積される部分の表面積が梁部11より拡張部53aの方が広いので、蓄積される正の電荷も梁部11より拡張部53aの方が多い。梁部53と駆動電極5との間に印加する所定の電圧を梁部11と駆動電極5との間に印加する所定の電圧と同一の電圧とした場合、梁部53と駆動電極5との間に働くクーロン力は、梁部11と駆動電極5との間に働くクーロン力より大きい。したがって、梁部53は、駆動電極5により強く引き付けられ図9中下方向に撓み、梁部53の先端が下部電極4を構成する導電層12の上面と接触し、機構デバイス51はオン状態となる。なお、機構デバイス51がオフ状態となる動作については、上記した機構デバイス1の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0034】
このように、この実施の形態3によれば、駆動電極5に対向する部分が駆動電極5の形状と略等しい形状を有する拡張部53aを備えた梁部53を設けたので、拡張部53aの下面には梁部11の下面よりも多くの正の電荷が蓄積される。したがって、梁部53と駆動電極5との間に所定の電圧を印加した場合、梁部53と駆動電極5との間に働くクーロン力をより有効に活用することができる。このため、梁部53の面積を図1に示す梁部11の面積より小さくしても同等のクーロン力が得られるので、機構デバイス51自体の形状を小型化することができる。逆にいえば、上記した実施の形態1における梁部11と駆動電極5との間に働くクーロン力と同じ大きさのクーロン力を梁部53と駆動電極5との間に働かせるための電圧は、上記した実施の形態1の場合に比べて低くすることができる。これにより、上記した実施の形態1の場合に比べてより消費電力を削減することができる。また、この実施の形態3によれば、梁部53と下部電極4との接点面積を上記した実施の形態1の場合に比べて広くなるので、接触抵抗を低下させることができる。
【0035】
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4である機構デバイス61の断面図である。図11において、図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図11に示す機構デバイス61においては、図1に示す上部電極3に換えて、上部電極62が新たに設けられている。
【0036】
上部電極62は、下地銅箔7と、金からなり、下地銅箔7上に形成された略直方体状の柱部10と、金からなり、その一端が柱部10の上部端部の略中央に接続された梁部11と、駆動電極5に対向する部分の下面に形成された誘電体である窒化シリコン(SiN)層63とから構成されており、梁部11の先端部が下部電極4の上方に臨んでいる。
【0037】
上記構成の機構デバイス61の製造方法については、概略的には、図3〜図5を参照して説明した機構デバイス1の製造方法と同様である。ただし、上記窒化シリコン層63の製造方法については、例えば、以下に示す工程で行う。すなわち、まず、図5(a)に示す製造工程の後に、犠牲層33のうち、上記窒化シリコン層63に対応する部分を除去するとともに上記窒化シリコン層63を形成するためのフォトレジストパターンを形成する。次に、上記したフォトレジストパターンを用いて、化学的蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)装置や物理的蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)装置を使用して、上記窒化シリコン層63を形成する。PVD装置としては、例えば、スパッタリング装置、真空蒸着装置、あるいはイオンプレーティング装置等がある。これ以降は、上記フォトレジストパターンを除去した後、柱部10及び梁部11等を形成する製造工程に移行する。
【0038】
次に、上記構成の機構デバイス61の動作について説明する。上部電極62を構成する梁部11と駆動電極5との間に所定の電圧を印加して電位差を与えると、静電誘導が起こり、窒化シリコン層63に例えば、正の電荷が蓄積される一方、絶縁基板6の駆動電極5の上面近傍に例えば、負の電荷が蓄積される。この場合、誘電体である窒化シリコン層63を形成したことにより、窒化シリコン層63に蓄積される正の電荷の量は、図1に示す梁部11下面の駆動電極5に対応した部分に蓄積される正の電荷の量より多い。図11に示す梁部11と駆動電極5との間に印加する所定の電圧を、図1に示す梁部11と駆動電極5との間に印加する所定の電圧と同一の電圧とした場合、図11に示す梁部11と駆動電極5との間に働くクーロン力は、図1に示す梁部11と駆動電極5との間に働くクーロン力より大きい。したがって、梁部11は、駆動電極5により強く引き付けられ図11中下方向に撓み、梁部11の先端が下部電極4を構成する導電層12の上面と接触し、機構デバイス61はオン状態となる。なお、機構デバイス61がオフ状態となる動作については、上記した機構デバイス1の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0039】
このように、この実施の形態4によれば、梁部11の駆動電極5に対向する部分下面に誘電体である窒化シリコン層63を形成したので、窒化シリコン層63には梁部11の下面よりも多くの正の電荷が蓄積される。したがって、梁部11と駆動電極5との間に所定の電圧を印加した場合、梁部11と駆動電極5との間に働くクーロン力をより有効に活用することができる。このため、梁部11の面積を図1に示す梁部11の面積より小さくしても同等のクーロン力が得られるので、機構デバイス61自体の形状を小型化することができる。逆にいえば、上記した実施の形態1における梁部11と駆動電極5との間に働くクーロン力と同じ大きさのクーロン力を梁部11と駆動電極5との間に働かせるための電圧は、上記した実施の形態1の場合に比べて低くすることができる。これにより、上記した実施の形態1の場合に比べてより消費電力を削減することができる。また、この実施の形態4によれば、窒化シリコン層63は一般的な半導体製造プロセスを使用して形成することができるので、上記した実施の形態1乃至3の場合と比べて製作時間が長くなることはない。
【0040】
以上、この実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、上述の実施の形態3においては、拡張部53aの形状を駆動電極5の形状と略等しい形状とする例を示したが、これに限定されず、拡張部53aの形状は、駆動電極5に対向する部分がそれ以外の部分よりも表面積が広い形状であればどのようなものでも良い。
【0041】
また、上述の実施の形態4においては、梁部11の駆動電極5に対向する部分下面に誘電体である窒化シリコン層63を形成する例を示したが、これに限定されず、梁部11の駆動電極5に対向する部分下面の誘電率を増加させる物質であればどのような層を形成しても良い。また、窒化シリコン層63等の誘電体層は、梁部11の駆動電極5に対向する部分下面に限らず、絶縁基板6の駆動電極5に対向する部分上面に形成しても良い。例えば、図4(c)に示す製造工程までに下地銅箔28を形成する換わりに窒化シリコン層63等の誘電体層を形成しても良い。
また、上述の各実施の形態においては、絶縁基板6の表面に上部電極及び下部電極を形成するとともに、絶縁基板6の裏面に駆動電極を形成する例を示したが、これに限定されず、絶縁基板6の裏面に上部電極及び下部電極を形成するとともに、絶縁基板6の表面に駆動電極を形成しても良い。
【0042】
また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。例えば、図7に示す駆動電極43を図9又は図11に示す駆動電極5に換えて設けても良い。また、図11に示す窒化シリコン層63を図7に示す梁部11の下部や図9に示す拡張部53aの下部に形成しても良い。このように構成すれば、より一層小型化したり、より一層消費電力を削減したりすることができる。
【0043】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように、基板の一方の面に形成された下部電極と、その柱部が基板の一方の面に下部電極と所定距離離れて形成されるとともに、その梁部の先端が下部電極と所定距離離れて対向する片持ち梁状の上部電極と、基板の一方の面の下部電極と柱部との間の領域に対向した基板の他方の面の領域に形成された駆動電極とを備えている。したがって、安価かつ容易に耐久性の優れた機構デバイスを短時間で製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1である機構デバイスの断面図である。
【図2】同機構デバイスの斜視図である。
【図3】同機構デバイスの製造工程を示す図(その1)である。
【図4】同機構デバイスの製造工程を示す図(その2)である。
【図5】同機構デバイスの製造工程を示す図(その3)である。
【図6】同機構デバイスの動作説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2である機構デバイスの断面図である。
【図8】同機構デバイスの動作説明図である。
【図9】本発明の実施の形態3である機構デバイスの断面図である。
【図10】同機構デバイスの上面図及び裏面図である。
【図11】本発明の実施の形態4である機構デバイスの断面図である。
【符号の説明】
1,41,51,61 機構デバイス、2,42 プリント基板(基板)、3,52,62 上部電極、4 下部電極、5,43 駆動電極、6 絶縁基板、6a 凹部、7〜9,27,28 下地銅箔、10 柱部、11,53 梁部、12,13 導電層、21,22 銅箔、23,29,31 フォトレジスト、24〜26,30,32,34,35 フォトレジストパターン、30a,32a,34a,35a 開口部、33 犠牲層、53a 拡張部、63 窒化シリコン層。

Claims (14)

  1. 基板の一方の面に形成された下部電極と、
    その柱部が前記基板の前記一方の面に前記下部電極と所定距離離れて形成されるとともに、その梁部の先端が前記下部電極と所定距離離れて対向する片持ち梁状の上部電極と、
    前記下部電極と前記柱部との間の領域に対向した前記基板の他方の面の側に形成された駆動電極と
    を備えていることを特徴とする機構デバイス。
  2. 前記駆動電極は、前記基板の前記他方の面に形成された凹部に形成されていることを特徴とする請求項1記載の機構デバイス。
  3. 前記梁部は、前記駆動電極に対向する部分の面積が他の部分の面積より広いことを特徴とする請求項1又は2記載の機構デバイス。
  4. 前記梁部は、前記駆動電極に対向する部分に誘電体層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の機構デバイス。
  5. 前記基板の一方の面の前記駆動電極に対向する部分に誘電体層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の機構デバイス。
  6. 前記基板は、ガラスエポキシ樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の機構デバイス。
  7. 前記下部電極の一部及び前記梁部は、金からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の機構デバイス。
  8. 絶縁基板の両面に銅箔が形成されてなる基板の一方の面に、下部電極の下地を含む第1の部分及び片持ち梁状の上部電極の柱部の下地を含む第2の部分を形成するための第1のフォトレジストパターンを形成する第1の工程と、
    前記第1のフォトレジストパターンを用いて前記一方の面の前記第1及び第2の部分以外の前記銅箔をエッチングにより除去する第2の工程と、
    前記第1の部分の表面に導電層を形成するための第2のフォトレジストパターンを形成する第3の工程と、
    前記第2のフォトレジストパターンを用いてメッキ処理により前記導電層を形成する第4の工程と、
    前記第1の部分と前記第2の部分との間の領域に犠牲層を形成するための第3のフォトレジストパターンを形成する第5の工程と、
    前記第3のフォトレジストパターンを用いてメッキ処理により前記犠牲層を形成する第6の工程と、
    前記基板の一方の面に前記上部電極の前記柱部及び梁部を形成するための第4のフォトレジストパターンを形成するとともに、前記基板の他方の面に前記下部電極と前記柱部との間の領域に対向した領域に駆動電極を形成するための第5のフォトレジストパターンを形成する第7の工程と、
    前記第4及び第5のフォトレジストパターンを用いてメッキ処理により前記柱部及び前記梁部、前記駆動電極を形成する第8の工程と、
    前記犠牲層を含む部分をエッチングにより除去する第9の工程と
    を有することを特徴とする機構デバイスの製造方法。
  9. 前記駆動電極は、前記基板の前記他方の面に形成された凹部に予め形成されており、前記第7の工程では、前記第4のフォトレジストパターンを形成し、前記第8の工程では、前記第4のフォトレジストパターンを用いてメッキ処理により前記柱部及び前記梁部を形成することを特徴とする請求項8記載の機構デバイスの製造方法。
  10. 前記第7の工程では、前記梁部の前記駆動電極に対向する部分の面積が他の部分の面積より広くなるように前記第4のフォトレジストパターンを形成することを特徴とする請求項8又は9記載の機構デバイスの製造方法。
  11. 前記梁部の前記駆動電極に対向する部分に誘電体層を形成する第10の工程を有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1に記載の機構デバイスの製造方法。
  12. 前記基板の一方の面の前記駆動電極に対向する部分に誘電体層を形成する第11の工程を有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1に記載の機構デバイスの製造方法。
  13. 前記基板は、ガラスエポキシ樹脂からなることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1に記載の機構デバイスの製造方法。
  14. 前記第4の工程では、金メッキ処理により前記導電層を形成し、前記第8の工程では、金メッキ処理により少なくとも前記梁部を形成することを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1に記載の機構デバイスの製造方法。
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