JP2004333865A - 光酸発生剤及びそれを含む光重合性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な光酸発生剤、この酸発生剤を含む光カチオン重合性樹脂組成物、並びに硬化物とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プリント配線基板などのパターニングには、スクリーン印刷法などの画像形成方法が用いられている。しかし、このスクリーン印刷法は、直接、基板などの上にパターンをレジストインキで印刷する方法であるため、この方法では、微細なパターンの形成が困難である。従って、現在では画像の微細化や高精度化の要求に対応するため、スクリーン印刷法に代わってフォトリソグラフィ法が主流になっている。
【0003】
フォトリソグラフィ法は、基板などの上にフォトレジストなどの感光性樹脂組成物を塗布し、その感光性樹脂組成物を、フォトマスクを介して低圧水銀ランプなどを光源として露光した後、現像液で現像することにより、基板などの上に所望のパターンを形成する方法である。このフォトリソグラフィ法で使用される感光性樹脂組成物は、画像の高解像度化を実現するために、高度な光感度、良好な現像性などの特性を有するとともに、その硬化物については、耐熱性、低収縮性、低吸水性、耐薬品性などの特性を有することが要求される。また、フォトリソグラフィ法における現像工程では、環境汚染などの理由から、有機溶媒を使用せずに、アルカリ水溶液で現像を行う感光性樹脂組成物が主流となっている。
【0004】
このようなアルカリ水溶液で現像可能な感光性樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性ポリマー及び光酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物(特開平10−97068号公報など)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及び光酸発生剤を含有すると共に、フェノール樹脂やエポキシ樹脂にカルボキシル基を導入した感光性樹脂組成物(特開2000−136230号公報など)などが開示されている。しかし、これらの感光性樹脂組成物でも、前記特性の点で充分とは言えず、微細で高精度なパターンを要求されるプリント配線基板などの用途には不適である。さらに、近年、盛んに開発されている光学薄膜(液晶ディスプレイなどに用いられる反射防止膜の高屈折率層や反射板など)などの用途に使用するための材料としては不適である。
【0005】
光学用途の材料は、可視光の透過性に優れ、高屈折率を有することが望まれる。また、反射防止膜の高屈折率層を最表面層として使用する場合は、表面防汚機能を持たせるため、前記材料は、撥水性が高いことが望ましい。このような光学用途に適した樹脂組成物として、特開2002−348357号公報には、フルオレン骨格を有するエポキシ系樹脂と、光酸発生剤と、ポリシランとを含む光重合性樹脂組成物が開示されている。しかし、この組成物は、光感度が低いため、小さな露光量でパターンを精度よく形成できず、パターンの形成速度が充分でない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、光に対して高感度な光酸発生剤を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、少ない露光量で硬化でき、かつ硬化物の耐熱性、寸法安定性及び耐湿性が高い光カチオン重合性樹脂組成物及びその組成物を用いて硬化物を製造する方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、硬化物の透明性、屈折率、撥水性の高い硬化物(又は硬化パターン)を形成可能な光重合性樹脂組成物及びその組成物を用いて硬化物を製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のチオキサントンオキシムエステルで構成された新規な光酸発生剤が、光(紫外光など)に対して高感度であることと、この光酸発生剤を用いることにより、少ない露光量で硬化でき、硬化物の耐熱性、寸法安定性、耐湿性なども高いことを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の光酸発生剤は、式(I)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なってアルキル基を表し、環Zは芳香族環を表し、R3は、同一又は異なってアルキル基又はハロゲン原子を表し、n1及びn2は、それぞれ同一又は異なって0〜4の整数を示し、n3は0〜5の整数を示す)
で表される。
【0013】
前記式(I)において、環Zがベンゼン環であり、R1及びR2がC1−6アルキル基であり、R3が同一又は異なってC1−6アルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、n1及びn2が同一又は異なって0〜2の整数、n3が0〜5の整数であってもよい。
【0014】
本発明には、前記光酸発生剤(A)及び光カチオン重合性樹脂(B)を含む光重合性樹脂組成物も含まれる。前記光カチオン重合性樹脂(B)はエポキシ樹脂であってもよく、例えば、下記式(II)で表されるフルオレン誘導体であってもよい。
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R4〜R11は同一又は異なって炭化水素基を表し、A1〜A4はC2−4アルキレン基を表し、m1〜m4は同一又は異なって0〜4の整数であり、p1〜p4は同一又は異なって0〜4の整数であり、q1〜q4は0又は1以上の整数であり、rは0又は1以上の整数である)
前記組成物は、さらに、ポリシラン(C)を含んでいてもよい。このポリシラン(C)が、芳香族炭化水素環を有していてもよい。
【0017】
本発明には、前記組成物に光照射して架橋させる硬化物の製造方法も含まれる。この方法において、光照射した後、加熱して架橋させてもよい。また、この方法は、前記組成物を基材に塗布し、パターン露光し、加熱して現像する方法であってもよい。照射する光としては、紫外線などが挙げられる。また、本発明には、前記組成物が少なくとも光照射により硬化した硬化物も含まれる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[光酸発生剤又はチオキサントンオキシムエステル(A)]
本発明の光酸発生剤(A)は、前記式(I)で表される新規な化合物(チオキサントンオキシムエステル)である。式(I)において、R1及びR2で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基などが例示できる。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、特にメチルやイソプロピルなどのC1−4アルキル基である。R1とR2とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、n1及びn2がそれぞれ2以上の整数である場合には、それらの置換基R1とR2は、n1及びn2により、同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基R1及びR2の個数n1及びn2は、特に制限されず、それぞれ、0〜4個の範囲から選択でき、好ましくは0〜3個、さらに好ましくは0〜2個程度である。n1+n2の値は、0〜4(例えば、1〜4)、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2程度である。なお、R1及びR2の置換位置は特に制限されず、例えば、チオキサントン環の1〜4位や5〜8位であってもよく、通常、2〜4位、5〜7位などである。
【0019】
環Zは、通常、芳香族炭化水素環であり、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などが例示できる。環Zは、通常、ベンゼン環又はナフタレン環(特にベンゼン環)である。
【0020】
R3で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル基などの直鎖状又は分鎖鎖状C1−6アルキル基が例示できる。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を含む。好ましいアルキル基は、メチル、エチル基などのC1−4アルキル基である。好ましいハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子である。n3が2以上の整数である場合には、これらの置換基R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基R3の個数n3は、特に制限されず、置換基の種類に応じて、0〜5(特に1〜5)の範囲から選択できる。例えば、置換基R3がアルキル基の場合は、1〜3、好ましくは1〜2程度であり、置換基R3がハロゲン原子(フッ素原子など)の場合は、1〜5(例えば、2〜5)、好ましくは3〜5程度であってもよい。なお、R3の置換位置は特に制限されず、対称位置又は非対称位置であってもよく、例えば、環Zがベンゼン環であるとき、o−、m−、p−位のいずれであってもよく、通常、m−位やp−位(特にp−位)である。
【0021】
このような光酸発生剤(A)は、下記反応式(III)で表されるように、例えば、アレーンスルホン酸ハライド類と、チオキサントンオキシム類(例えば、アルキルチオキサントンオキシムなど)とを反応させることにより得ることができる。
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、環Z、R1〜R3、及びn1〜n3は前記に同じ)
ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は塩素原子が含まれる。ハロゲン原子としては、通常、塩素原子が利用される。アレーンスルホン酸ハライド類としては、前記環Zを有するスルホン酸ハライド、例えば、ベンゼンスルホン酸クロリド、ナフタレンスルホン酸クロリドなどのアレーンスルホン酸ハライド、トルエンスルホン酸クロリドなどのアルキル置換アレーンスルホン酸ハライド、フルオロベンゼンスルホン酸クロリドなどのハロゲン置換アレーンスルホン酸ハライドなどが例示できる。チオキサントンオキシム類としては、前記チオキサントン骨格を有する化合物、例えば、チオキサントンオキシム、アルキル置換チオキサントンオキシムが含まれる。
【0024】
アレーンスルホン酸ハライド類と、チオキサントンオキシム類との使用割合(モル比)は、例えば、前者/後者=1.5/1〜1/1.5、好ましくは1.2/1〜1/1.2程度であり、通常、ほぼ等モルである。
【0025】
反応は溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒としては、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、鎖状又は環状エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、脂肪族エステル類(酢酸エチルなど)、脂肪族ケトン類(メチルエチルケトンなど)、塩基性窒素含有溶媒(ピリジンなどの複素環式アミン類、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、アニリン、N,N−ジアルキルアニリンなどの芳香族アミン類など)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、溶解性の点ではベンゼンなどの芳香族炭化水素が好ましく、反応性を向上させる点から、ピリジンなどの塩基性溶媒が好ましい。
【0026】
反応には、塩基性触媒を用いてもよい。塩基性触媒としては、例えば、脂肪族アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン類など)、脂環族アミン類(シクロヘキシルアミンなど)、芳香族アミン類(ジエチルアニリンなど)、複素環式アミン類(4−ジメチルアミノピリジン、モルホリン、ピペリジンなど)などが挙げられる。塩基性触媒の割合は、アレーンスルホン酸ハライド類1モルに対して、0.01〜2モル、好ましくは0.1〜1.5モル(例えば、0.1〜1モル)程度である。
【0027】
反応温度は、特に制限されず、例えば、−30〜40℃程度であってもよく、通常、−20〜30℃程度(例えば、氷温)である。反応終了後、慣用の分離精製方法、例えば、濃縮、乾固、析出(例えば、塩酸や硫酸などの酸性溶液を加えて酸性に調整し、析出させる方法)、再結晶(例えば脂肪族炭化水素系溶媒(ヘキサンなど)などによる再結晶)、カラムクロマトグラフィーなどの方法やこれらを組み合わせた方法で、反応生成物を分離精製してもよい。
【0028】
光酸発生剤又はチオキサントンオキシムエステル類(A)としては、例えば、ベンゼンスルホン酸チオキサントンオキシムエステル、ベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、ベンゼンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのベンゼンスルホン酸 C1−6アルキルチオキサントンオキシムエステルなど)、アルキルベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステル(例えば、トルエンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステル、エチルベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなどのC1−6アルキルベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステル、キシレンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなどのジC1−6アルキルベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなど)、アルキルベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、トルエンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのC1−6アルキルベンゼンスルホン酸 C1−6アルキルチオキサントンオキシムエステル)、ハロベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステル(例えば、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなどのモノ乃至ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなど)、ハロベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのモノ乃至ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 C1−6アルキルチオキサントンオキシムエステルなど)、これらの化合物に対応する化合物であって、ベンゼン環がナフタレン環である化合物などが挙げられる。これらの光酸発生剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
これらの光酸発生剤のうち、アルキルベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、p−トルエンスルホン酸 2−イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのC1−3アルキルベンゼンスルホン酸 C1−4アルキルチオキサントンオキシムエステル)や、ハロベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 2−イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのトリ乃至ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 C1−4アルキルチオキサントンオキシムエステル)が好ましい。
【0030】
光酸発生剤又はチオキサントンオキシムエステル類(A)は、感光性が高く、少ない露光量でも効率よく酸を生成する。そのため、光硬化性組成物や感光性組成物などの成分として有用である。例えば、光酸発生剤(A)は、化学増幅型フォトレジスト用樹脂と組み合わせて感光性樹脂組成物を構成してもよい。化学増幅型フォトレジスト用樹脂としては、ポジ型レジスト用樹脂、例えば、加水分解性保護基を有する種々の樹脂(ビニルフェノールの単独又は共重合体のヒドロキシル基が保護基で保護されたポリビニルフェノール系樹脂、カルボキシル基が保護基(t−ブトキシ基など)で保護された脂環族環(シクロヘキサン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、アダマンタン環など)を有する樹脂など)、ネガ型レジスト用樹脂、例えば、ヒドロキシル基含有樹脂(ポリビニルフェノール系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、アクリル系樹脂など)とアミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂など)とを組み合わせた樹脂が例示できる。本発明の光酸発生剤(A)は、カチオン重合性樹脂、例えば、光カチオン重合性樹脂と組み合わせて感光性樹脂組成物(光カチオン重合性樹脂組成物)を構成してもよい。
【0031】
[光重合性樹脂組成物]
本発明の光重合性樹脂組成物は、前記光酸発生剤(A)及び光カチオン重合性樹脂(B)で構成されている。この組成物は、さらにポリシラン(C)などを含んでいてもよい。
【0032】
(A)光酸発生剤
光酸発生剤(A)は、他の慣用の光酸発生剤、例えば、ブレンステッド酸のオニウム塩類(芳香族ジアゾニウム塩や芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ホスホニウム塩など)やメタロセン錯体などと組み合わせてもよい。これらの光酸発生剤としては、例えば、特開2002−348357号公報や、山岡亜夫編集『レジスト材料ハンドブック』リアライズ社(1996),第43頁に記載の光酸発生剤を参照できる。他の光酸発生剤の割合は、光酸発生剤(A)100重量部に対して、例えば、0〜100重量部程度の範囲から選択でき、好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜30重量部程度である。
【0033】
さらに、前記光酸発生剤の感光波長領域を拡げたり、後述するポリシランの光分解を促進するために、光重合性樹脂組成物は、光増感剤を含んでいてもよい。増感剤としては、例えば、クマリン類[3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3,3′−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)クマリン)など]、キノリン類[2−(2−(4−ジメチルアミノフェニル)エテニル)キノリン]、キノン類(アントラキノン、ベンゾキノンなど)、ピレン類(ピレン、1−ニトロピレンなど)、芳香族炭化水素類(アセナフテン、フルオレン、ビフェニルなど)、アミン類(アクリドンなど)などが挙げられる。
光増感剤について、詳しくは、例えば、高分子学会編集『感光性樹脂』共立出版(1988),第85頁などを参照できる。
【0034】
(B)光カチオン重合性樹脂
光カチオン重合性樹脂(B)としては、エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂など)を使用することができる。エポキシ樹脂としては、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)に記載のエポキシ樹脂などが例示でき、通常、芳香族エポキシ樹脂[ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂など)]や、脂環族型エポキシ化合物(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が使用できる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのエポキシ樹脂のうち、光学的な特性から、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂などの縮合炭化水素環を有するビスフェノール型エポキシ樹脂、特に、前記式(II)で表されるフルオレン誘導体(9,9−ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂)が好ましい。
【0035】
式(II)において、R4〜R11で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの直鎖又は分岐鎖状C1−6アルキル基など)、アルケニル基(ビニル基など直鎖又は分岐鎖状C2−6アルケニル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル、シクロヘキシル基などのC4−8シクロアルキル基)、C6−10アリール基(フェニル基、メチルフェニル基などのC1−4アルキルフェニル基、ジメチルフェニルなどのジC1−4アルキルフェニル基、トリメチルフェニル基などのトリC1−4アルキルフェニル基、ナフチル基など)などが挙げられる。これらの炭化水素基のうち、メチルやエチル基などのC1−6アルキル基(特に、メチル基などのC1−4アルキル基)、フェニル基などのC6−10アリール基が好ましい。係数m1〜m4、p1〜p4は、それぞれ、0〜3、好ましくは0〜2(特に0又は1)程度である。係数m1〜m4は、通常、0〜3(好ましくは0〜2、特に0又は1)であり、係数p1〜p4は、通常、0〜2(特に0又は1)である。
【0036】
A1〜A4は、エチレン、プロピレン、トリメチレン、ブチレンなどのC2−4アルキレン基である。好ましいアルキレン基は、エチレンやプロピレンなどのC2−3アルキレン基(特にエチレン基)である。q1〜q4は、オキシアルキレン基の繰り返し数(又はアルキレンオキサイドの付加モル数)に対応しており、0〜50の整数、好ましくは0〜30の整数、さらに好ましくは0〜10(例えば、0〜5)の整数であり、通常、0〜3(例えば、0又は1)である。
【0037】
係数rは、エピクロルヒドリンの付加モル数に対応しており、例えば、0〜500(例えば、0〜100)、好ましくは0〜50(例えば、0〜30)、さらに好ましくは0〜25(例えば、0〜10)程度であってもよく、通常、0〜5程度であってもよい。グリシジルエーテル鎖の置換位置は特に制限されず、ベンゼン環に対してo−,m−又はp−位のいずれであってもよいが、m−及び/又はp−位が好ましい。なお、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂は、式(II)において、1つのベンゼン環に対してグリシジルエーテル鎖が2個置換したビスカテコールフルオレン型エポキシ樹脂[例えば、9,9−ビス(3,4−ジグリシジルオキシフェニル)フルオレン(ビスカテコールフルオレンテトラグリシジルエーテル)など]であってもよい。
【0038】
フルオレン誘導体(II)は、少なくともビスフェノールフルオレン類とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。フルオレン誘導体(II)のうち、q1=q2=0、r=0である化合物としては、例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン(BPFG);9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCFG)、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−グリシジルオキシ−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−グリシジルオキシ−4−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルキルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシジアルキルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシシクロアルキルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アリールヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0039】
q1=q2=1、r=0である化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル)(BPEFG)、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン(BCEFG)、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−2,6−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−シクロアルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−アリールフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0040】
q1=q2=2以上の化合物は、9,9−ビスフェノールフルオレン類の各ヒドロキシル基に対して2モル以上の前記アルキレンオキサイドが付加したエポキシ樹脂に対応し、r=1以上の化合物は、9,9−ビスフェノールフルオレン類又はそのアルキレンオキサイド付加体の各ヒドロキシル基に対して2モル以上のエピクロルヒドリンが付加したエポキシ樹脂に対応する。
【0041】
これらのフルオレン誘導体(II)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのフルオレン誘導体(II)のうち、BPFGやBCFGなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−3アルキルフェニル)フルオレン、BPEFGなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−3アルコキシフェニル)フルオレン、BCEFGなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−3アルコキシ−C1−3アルキルフェニル)フルオレンなどが繁用される。
【0042】
フルオレン誘導体(II)の重量平均分子量Mwは、例えば、400〜30,000程度、好ましくは450〜10,000程度、さらに好ましくは500〜5,000程度であってもよい。エポキシ当量は、例えば、150〜5000g/eq、好ましくは200〜3000g/eq、さらに好ましくは250〜1000g/eq程度である。
【0043】
前記フルオレン誘導体(II)は、他のエポキシ樹脂(例えば、芳香族エポキシ樹脂や脂環族エポキシ樹脂など)と組み合わせてもよい。両者の割合(重量比)は、フルオレン誘導体(II)/他のエポキシ樹脂=100/0〜30/70、好ましくは100/0〜50/50、さらに好ましくは100/0〜70/30程度である。
【0044】
光酸発生剤(A)と光カチオン重合性樹脂(B)との割合は、光カチオン重合性樹脂(B)100重量部に対して、光酸発生剤(A)0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度である。
【0045】
[ポリシラン]
ポリシランは、特に限定されないが、通常、Si−Si結合を有する直鎖状、環状、分岐状又は網目状の化合物であり、下記式(1)〜(3)で表された構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有している。
【0046】
【化6】
【0047】
(式中、R12〜R14は、同一又は相異なって、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はシリル基を示し、x、y及びzはそれぞれ0以上の数を示し、x、y及びzの合計は5〜400である)
このようなポリシランとしては、例えば、式(1)で表される構造単位を有する直鎖状又は環状ポリシラン、前記式(2)又は(3)で表される構造単位を有する分岐鎖状又は網目状ポリシラン、前記式(1)〜(3)で表される構造単位を組み合わせて有するポリシランなどが挙げられる。これらのポリシランは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
前記式(1)及び(2)において、R12〜R14で表される置換基としては、通常、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基(芳香族炭化水素基)、アラルキル基などの炭化水素基である場合が多い。また、水素原子やヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基は、末端基に置換している場合が多い。
【0049】
前記式(1)及び(2)のR12〜R14において、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどのC1−14アルキル基(好ましくはC1−10アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基)が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル、アリルなどのC2−14アルケニル基(好ましくはC2−10アルケニル基、さらに好ましくはC2−6アルケニル基)が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのC5−14シクロアルキル基(好ましくはC5−10シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−8シクロアルキル基)が挙げられる。アリール基としては、フェニル、メチルフェニル(トリル)、ジメチルフェニル(キシリル)、ナフチルなどのC6−20アリール基(好ましくはC6−15アリール基、さらに好ましくはC6−12アリール基)が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなどのC6−20アリール−C1−4アルキル基(好ましくはC6−10アリール−C1−2アルキル基)が挙げられる。
【0050】
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどのC1−14アルコキシ基(好ましくはC1−10アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基)が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフチルオキシなどのC6−20アリールオキシ基(好ましくはC6−15アリールオキシ基、さらに好ましくはC6−12アリールオキシ基)が挙げられる。
【0051】
シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基などのSi1−10シラニル基(好ましくはSi1−6シラニル基)が挙げられる。
【0052】
また、R12〜R14が、前記有機置換基又はシリル基である場合には、その水素原子の少なくとも1つが、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基などの官能基により置換されていてもよい。このような官能基としては、前記と同様の基が挙げられる。
【0053】
これらの置換基のうち、硬化物の屈折率を向上させる点から、芳香族炭化水素環を有する基(アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基などの芳香環を含む基)、特にアリール基(例えば、フェニル基など)が好ましい。
【0054】
ポリシランが非環状構造(直鎖状、分岐鎖状、網目状)の場合、末端置換基は、通常、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、シリル基などである。
【0055】
好ましいポリシランとしては、R12及びR13の少なくとも一方がアリール基(特にC6−20アリール基)である構造単位(1)を含むポリシラン、R14がアリール基(特にC6−20アリール基)である構造単位(2)を含むポリシラン、前記両構造単位(1)(2)を含むポリシランが挙げられる。具体的には、ポリメチルフェニルシラン(R12がメチル基であり、R13がフェニル基である構造単位(1)で構成されたポリマー)、ポリジフェニルシラン(R12及びR13がフェニル基である構造単位(1)で構成されたポリマー)、ポリフェニルシリン(R14がフェニル基である構造単位(2)で構成されたポリマー)などのホモポリマーや、メチルフェニルシラン−フェニルシリン共重合体(前記構造単位(1)と構造単位(2)とが1.5/1〜0.5/1(モル比)、好ましくは1.2/1〜0.8/1(モル比)程度の割合で共重合したポリマー)などのコポリマーなどが好ましく使用できる。
【0056】
ポリシランは、さらに末端のケイ素原子に少なくとも1つのヒドロキシル基が直接結合したポリシラン、すなわち、末端に少なくとも1つのシラノール基を有するポリシランが好ましい。ケイ素原子に直接結合したヒドロキシル基は、フルオレン誘導体(II)のエポキシ基との良好な反応性を示し、光照射または加熱により、フルオレン誘導体(II)とポリシランとの間に高度な架橋構造を形成する。また、末端のケイ素原子に、フェノール基が結合したポリシランでもよい。
【0057】
このようなヒドロキシル基の含有割合としては、1つのケイ素原子当たり、平均0.005〜2.5個程度、好ましくは平均0.01〜2.3個程度、より好ましくは平均0.02〜2個程度である。
【0058】
ポリシランの重合度、すなわち構造単位(1)〜(3)におけるx、yおよびzの合計は、5〜400、好ましくは10〜350、さらに好ましくは20〜300程度である。
【0059】
ポリシランの分子量は、数平均分子量300〜100000、好ましくは400〜50000、さらに好ましくは500〜20000程度である。
【0060】
前記ポリシランは、慣用の方法で調製でき、ポリシランの製造方法としては、例えば、特定の構造単位を有するケイ素含有モノマーを原料として、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)など)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)など)、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報など)、金属触媒の存在下にヒドラジン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−334551号公報など)、ビフェニルなどで架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)など)、環状シラン類の開環重合による方法などの方法が挙げられる。
【0061】
ヒドロキシル基を有するポリシランも、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、上述したアルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(キッピング法)などにおいて、縮重合反応終了時に水を添加する方法により容易に製造することができる。
【0062】
光酸発生剤(A)とポリシラン(C)との割合は、ポリシラン(C)100重量部に対して、光酸発生剤(A)0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度である。光酸発生剤とポリシランとの組合せにより、硬化性と現像性とのバランスを向上できる。
【0063】
光カチオン重合性樹脂(B)とポリシラン(C)との割合は、ポリシラン(C)100重量部に対して、光カチオン重合性樹脂(B)0.5〜500重量部、好ましくは1〜300重量部、さらに好ましくは1〜100重量部程度である。
光カチオン重合性樹脂(B)とポリシラン(C)との組合せにより、架橋効率を高め硬化物の耐熱性を向上できるとともに、硬化物の屈折率や撥水性も高くなる。
【0064】
本発明では、光カチオン重合性樹脂、特に式(II)で表される光カチオン重合性樹脂と、ポリシランとを組み合わせることにより、その硬化物は、フルオレン骨格やポリシラン構造などに基づいて、耐熱性及び耐溶剤性に優れ、吸水性及び収縮性が低くなる。さらに、その硬化物は、可視光に対する透過性に優れるとともに、屈折率が高く、高い撥水性を有する。
【0065】
光重合性樹脂組成物には、エポキシ基に対する反応性基を有するポリマー(D)を含有させてもよい。エポキシ基に対する反応性基は、エポキシ基と直接反応する官能基であってもよく、光酸発生剤(A)から発生した酸や光照射によって、エポキシ基と反応できる官能基であってもよい。
【0066】
このようなポリマー(D)には、ポリフェノール系樹脂、アクリル系樹脂(ポリアルキル(メタ)アクリレートなど)などが含まれる。ポリフェノール系樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール系樹脂、ビスフェノール樹脂、ヒドロキシ芳香族ビニル(ビニルフェノールなど)のホモポリマー及びコポリマー、N−ヒドロキシフェニル−マレイミドのホモポリマー及びコポリマーなどが挙げられる。
【0067】
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸及びそのエステルの単独又は共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルなどのC1−12アルキル基、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル、アダマンチル、ノルボルニル、イソボルニルなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0068】
ポリマー(D)の割合は、光カチオン重合性樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは0.3〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部程度である。
【0069】
光重合性樹脂組成物には、必要に応じて、他の添加剤、例えば、着色剤(染顔料)、増粘剤、安定剤(老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤など)、消泡剤、レベリング剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、滑剤などの公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0070】
光重合性樹脂組成物は、塗布性を改良するために、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなど)、アルコール類(エタノール、プロパノールなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(エチルメチルケトン(2−ブタノン)、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ジオール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル(ジメトキシエタン)、プロピレングリコールメチルエーテルなど)、カルビトール類(カルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなど)、セロソルブアセテート類(プロピレングリコールメチルアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの溶媒のうち、エーテル類、ケトン類、セロソルブ類、カルビトール類、セロソルブアセテート類などが好ましい。前記光重合性樹脂組成物は、例えば、これらの溶媒中1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%程度の濃度で使用することができる。
【0071】
[硬化物の製造方法]
本発明の光重合樹脂組成物に、光を照射して架橋反応により硬化させることにより、硬化物(三次元的硬化物、硬化膜や硬化パターンなどに一次元又は二次元的硬化物、点又はドット状硬化物など)を得ることができる。硬化物(硬化膜、硬化パターンなど)は、前記光重合性樹脂組成物を基材上に塗布し、塗膜を形成した後、光照射又は露光することにより形成できる。本発明の光重合性樹脂組成物は、基材上での薄膜を製造するのに適している。
【0072】
塗布方法としては、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などを挙げることができる。
【0073】
塗膜の厚みは、硬化物の用途によって応じて、0.01μm〜10mm程度の範囲から選択でき、例えば、フォトレジストの場合、0.05μm〜10μm(特に0.1〜5μm)程度、プリント配線基板の場合、10μm〜5mm(特に100μm〜1mm)程度、光学薄膜の場合、0.1〜100μm(特に0.3〜50μm)程度である。
【0074】
露光する光は、例えば、ガンマー線、X線、紫外線、可視光線などであってもよいが、通常、紫外線である。光の波長は、例えば、150〜800nm、好ましくは150〜600nm、さらに好ましくは200〜400nm(特に300〜400nm)程度である。照射光量は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、2〜2000mJ/cm2、好ましくは5〜500mJ/cm2程度である。光源としては、露光する光線の種類に応じて選択でき、例えば、紫外線の場合は、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、レーザ光(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなど)などを用いることができる。
【0075】
被膜の光照射又は露光の後、加熱工程で加熱すると、架橋を促進でき光重合性樹脂組成物を高度に架橋できる。塗膜の加熱は、通常、光照射後、又は光照射とともに行われる。加熱温度は、例えば、60〜250℃、好ましくは100〜200℃程度である。加熱時間は、例えば、5秒〜2時間、好ましくは20秒〜30分程度である。
【0076】
さらに、パターンや画像を形成する場合(例えば、プリント配線基板などを製造する場合)、基材上に形成した塗膜をパターン露光してもよく、このパターン露光は、レーザ光の走査により行ってもよく、フォトマスクを介して光照射することにより行ってもよい。このようなパターン露光により生成した非照射領域(未露光部)を現像剤で現像(又は溶解)することによりパターン又は画像を形成できる。現像剤としては、水、アルカリ水溶液、親水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類など)や、これらの混合液などを用いることができる。
【0077】
露光後に被膜を加熱する場合、現像工程は、加熱工程の前に行ってもよく、加熱工程の後で行ってもよい。このような方法では、小さな露光量でも、基材上に、精細で高精度のパターンを形成できる。従って、本発明の樹脂組成物は、精密なパターンを必要とする用途、例えば、電子機器のプリント配線基板などの製造に適している。
【0078】
光学薄膜を形成する場合には、前記光重合性樹脂組成物を、基材上に複数層形成してもよい。また、基材上に他の機能層などを形成した後、その機能層の上に、前記光重合性樹脂組成物で形成された層を形成してもよい。本発明の樹脂組成物は、可視光の透過性に優れ、高い屈折率を有し、光学的特性にも優れるため、特に、液晶ディスプレイなどの反射防止膜の高屈折率層、反射板などの光学薄膜に適している。
【0079】
基材の材質は、用途に応じて選択され、例えば、プリント配線基板や光学薄膜の場合には、シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム、炭化シリコンなどの半導体、アルミニウム、銅などの金属、酸化ジルコニウム、酸化チタン、PZTなどのセラミック、透明無機材料(ガラス、石英、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなど)、透明樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレンなど)などが用いられる。
【0080】
本発明の光重合性樹脂組成物は、前記プリント配線基板や光学薄膜などの用途の他、塗料、電気機器の絶縁材、電線被覆材、電子機器の封止材、保護膜、フォトレジスト、印刷製版材、インキ、接着剤、粘着材などの広範な用途に用いることができる。
【0081】
【発明の効果】
本発明の新規な光酸発生剤は、特定のチオキサントンオキシムエステルで構成され、光に対して高感度であり、高い効率で酸を生成する。また、この光酸発生剤と光カチオン重合性樹脂とを組み合わせると、少ない露光量で硬化させることができる。得られた硬化物は、耐熱性及び耐溶剤性に優れるだけでなく、吸水性が低いため、湿度などの環境変化の影響を受けにくく、かつ収縮率が小さいため寸法安定性に優れている。さらに、この硬化物(又は硬化パターンなど)は、可視光の透過性を有し、屈折率及び撥水性が高い。
【0082】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0083】
合成例1
p−トルエンスルホニルクロリド0.463g(2.4ミリモル)、2−イソプロピルチオキサントンオキシム0.654g(2.4ミリモル)を冷却管付き三角フラスコに入れ、ベンゼン10mlを添加した。攪拌しながら、4−ジメチルアミノピリジン0.293g(2.4ミリモル)を徐々に添加すると、沈殿が生成した。10分後に反応溶液をシリカカラムで分離し(溶離液:クロロホルム)、濃縮後、ヘキサンで再結晶し、p−トルエンスルホン酸 2−イソプロピルチオキサントンオキシムエステル(ITXTS)0.689g(収率67%)が黄色結晶で得られた。得られた結晶の融点(m.p.)は165℃、熱分解開始温度(窒素雰囲気)(Td)は206℃であり、NMRデータは以下の通りであった。
【0084】
1HNMR(CDCl3、ppm):δ6.52−8.03(6H、m、aromatic)、2.84(1H、m、−CH−)、1.18(6H、d、−CH3)。
【0085】
合成例2
冷却管を付けた50mlフラスコにイソプロピルチオキサントンオキシム1.3gを入れ、ピリジン15mlを添加した。氷浴で溶液を5℃以下に保ちながら、p−トルエンスルホニルクロリド1.9gを添加した。4時間攪拌した後、氷冷した5重量%塩酸300mlに攪拌しながら投入した。溶液が酸性であることを確認してから結晶を吸引濾過し、ピリジンの臭いがなくなるまで水洗した。さらに、真空乾燥した後、ヘキサンで再結晶し、p−トルエンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステル(ITXTSm)0.17g(収率8.6%)が黄色結晶で得られた。得られた結晶の融点(m.p.)は154℃、熱分解開始温度(窒素雰囲気)(Td)は207℃であった。
【0086】
合成例3
ペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリド0.651g(2.3ミリモル)、2−イソプロピルチオキサントンオキシム0.634g(2.3ミリモル)を冷却管付き三角フラスコに入れ、ベンゼン10mlを添加する。攪拌しながら、4−ジメチルアミノピリジン0.293g(2.4ミリモル)を徐々に添加すると、沈殿が生成する。10分後に反応溶液をシリカカラムで分離し(溶離液:クロロホルム)、濃縮後、ヘキサンで再結晶し、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 2−イソプロピルチオキサントンオキシムエステル(ITXPS)0.391g(収率32%)が得られた。得られた結晶の融点(m.p.)は114℃、熱分解開始温度(窒素雰囲気)(Td)は206℃であり、NMRデータは以下の通りであった。
【0087】
1HNMR(CDCl3、ppm):δ6.49−8.24(6H、m、aromatic)、2.77(1H、m、−CH−)、1.28(6H、d、−CH3)。
【0088】
合成例4
冷却管を付けた50mlフラスコにイソプロピルチオキサントンオキシム1.3gを入れ、ピリジン10mlを添加した。氷浴で溶液を5℃以下に保ちながら、ペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリド3.5gを添加した。4時間攪拌した後、氷冷した5重量%塩酸300mlに攪拌しながら投入した。溶液が酸性であることを確認してから結晶を吸引濾過し、ピリジンの臭いがなくなるまで水洗した。さらに、真空乾燥した後、ヘキサンで再結晶し、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステル0.15g(収率6.8%)が得られた。得られた結晶の融点(m.p.)は107℃、熱分解開始温度(窒素雰囲気)(Td)は178℃であった。
【0089】
実施例1
合成例1で合成したITXTSをアセトニトリル中に濃度3.3×10−5モル/リットルで溶解し、低圧水銀灯により波長366nmの光を照射して、照射量と吸収ピーク(260nm)の消失度をプロットした傾きから光酸発生剤の光分解速度を求めた。その結果、ITXTSの光分解速度は、市販の9−フルオレニリデンイミノ−パラ−トルエンスルホネート(FITS)(東京化成(株)製)に対して5.5倍であった。
【0090】
実施例2
ITXTSの代わりに、合成例3で合成したITXPSを用いる以外は実施例1と同様の方法で光分解速度を求めた結果、光分解速度は、FITSの7倍であった。
【0091】
実施例3
ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(エポキシ当量293)45重量部、ポリメチルフェニルシラン(重量平均分子量11200、Mw/Mn=1.5)55重量部、合成例2で合成したITXTSm3重量部、及び溶媒(シクロヘキサノン)を含む溶液をシリコンウエハー上にスピンコータで塗布し、60℃で2分間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚約0.1μmの塗膜を作製した。次いで、低圧水銀ランプを用いて、波長366nmの光を200mJ/cm2の照射量で照射した。さらに、180℃で5分間加熱し、塗膜を硬化した後、現像液(テトラヒドロフラン)に10分間浸漬して前記塗膜を現像したところ、塗膜は不溶化していた。なお、紫外光を照射しなかった場合は、塗膜の不溶化は起こらなかった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な光酸発生剤、この酸発生剤を含む光カチオン重合性樹脂組成物、並びに硬化物とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プリント配線基板などのパターニングには、スクリーン印刷法などの画像形成方法が用いられている。しかし、このスクリーン印刷法は、直接、基板などの上にパターンをレジストインキで印刷する方法であるため、この方法では、微細なパターンの形成が困難である。従って、現在では画像の微細化や高精度化の要求に対応するため、スクリーン印刷法に代わってフォトリソグラフィ法が主流になっている。
【0003】
フォトリソグラフィ法は、基板などの上にフォトレジストなどの感光性樹脂組成物を塗布し、その感光性樹脂組成物を、フォトマスクを介して低圧水銀ランプなどを光源として露光した後、現像液で現像することにより、基板などの上に所望のパターンを形成する方法である。このフォトリソグラフィ法で使用される感光性樹脂組成物は、画像の高解像度化を実現するために、高度な光感度、良好な現像性などの特性を有するとともに、その硬化物については、耐熱性、低収縮性、低吸水性、耐薬品性などの特性を有することが要求される。また、フォトリソグラフィ法における現像工程では、環境汚染などの理由から、有機溶媒を使用せずに、アルカリ水溶液で現像を行う感光性樹脂組成物が主流となっている。
【0004】
このようなアルカリ水溶液で現像可能な感光性樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性ポリマー及び光酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物(特開平10−97068号公報など)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及び光酸発生剤を含有すると共に、フェノール樹脂やエポキシ樹脂にカルボキシル基を導入した感光性樹脂組成物(特開2000−136230号公報など)などが開示されている。しかし、これらの感光性樹脂組成物でも、前記特性の点で充分とは言えず、微細で高精度なパターンを要求されるプリント配線基板などの用途には不適である。さらに、近年、盛んに開発されている光学薄膜(液晶ディスプレイなどに用いられる反射防止膜の高屈折率層や反射板など)などの用途に使用するための材料としては不適である。
【0005】
光学用途の材料は、可視光の透過性に優れ、高屈折率を有することが望まれる。また、反射防止膜の高屈折率層を最表面層として使用する場合は、表面防汚機能を持たせるため、前記材料は、撥水性が高いことが望ましい。このような光学用途に適した樹脂組成物として、特開2002−348357号公報には、フルオレン骨格を有するエポキシ系樹脂と、光酸発生剤と、ポリシランとを含む光重合性樹脂組成物が開示されている。しかし、この組成物は、光感度が低いため、小さな露光量でパターンを精度よく形成できず、パターンの形成速度が充分でない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、光に対して高感度な光酸発生剤を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、少ない露光量で硬化でき、かつ硬化物の耐熱性、寸法安定性及び耐湿性が高い光カチオン重合性樹脂組成物及びその組成物を用いて硬化物を製造する方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、硬化物の透明性、屈折率、撥水性の高い硬化物(又は硬化パターン)を形成可能な光重合性樹脂組成物及びその組成物を用いて硬化物を製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のチオキサントンオキシムエステルで構成された新規な光酸発生剤が、光(紫外光など)に対して高感度であることと、この光酸発生剤を用いることにより、少ない露光量で硬化でき、硬化物の耐熱性、寸法安定性、耐湿性なども高いことを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の光酸発生剤は、式(I)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なってアルキル基を表し、環Zは芳香族環を表し、R3は、同一又は異なってアルキル基又はハロゲン原子を表し、n1及びn2は、それぞれ同一又は異なって0〜4の整数を示し、n3は0〜5の整数を示す)
で表される。
【0013】
前記式(I)において、環Zがベンゼン環であり、R1及びR2がC1−6アルキル基であり、R3が同一又は異なってC1−6アルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、n1及びn2が同一又は異なって0〜2の整数、n3が0〜5の整数であってもよい。
【0014】
本発明には、前記光酸発生剤(A)及び光カチオン重合性樹脂(B)を含む光重合性樹脂組成物も含まれる。前記光カチオン重合性樹脂(B)はエポキシ樹脂であってもよく、例えば、下記式(II)で表されるフルオレン誘導体であってもよい。
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R4〜R11は同一又は異なって炭化水素基を表し、A1〜A4はC2−4アルキレン基を表し、m1〜m4は同一又は異なって0〜4の整数であり、p1〜p4は同一又は異なって0〜4の整数であり、q1〜q4は0又は1以上の整数であり、rは0又は1以上の整数である)
前記組成物は、さらに、ポリシラン(C)を含んでいてもよい。このポリシラン(C)が、芳香族炭化水素環を有していてもよい。
【0017】
本発明には、前記組成物に光照射して架橋させる硬化物の製造方法も含まれる。この方法において、光照射した後、加熱して架橋させてもよい。また、この方法は、前記組成物を基材に塗布し、パターン露光し、加熱して現像する方法であってもよい。照射する光としては、紫外線などが挙げられる。また、本発明には、前記組成物が少なくとも光照射により硬化した硬化物も含まれる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[光酸発生剤又はチオキサントンオキシムエステル(A)]
本発明の光酸発生剤(A)は、前記式(I)で表される新規な化合物(チオキサントンオキシムエステル)である。式(I)において、R1及びR2で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基などが例示できる。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、特にメチルやイソプロピルなどのC1−4アルキル基である。R1とR2とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、n1及びn2がそれぞれ2以上の整数である場合には、それらの置換基R1とR2は、n1及びn2により、同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基R1及びR2の個数n1及びn2は、特に制限されず、それぞれ、0〜4個の範囲から選択でき、好ましくは0〜3個、さらに好ましくは0〜2個程度である。n1+n2の値は、0〜4(例えば、1〜4)、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2程度である。なお、R1及びR2の置換位置は特に制限されず、例えば、チオキサントン環の1〜4位や5〜8位であってもよく、通常、2〜4位、5〜7位などである。
【0019】
環Zは、通常、芳香族炭化水素環であり、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などが例示できる。環Zは、通常、ベンゼン環又はナフタレン環(特にベンゼン環)である。
【0020】
R3で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル基などの直鎖状又は分鎖鎖状C1−6アルキル基が例示できる。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を含む。好ましいアルキル基は、メチル、エチル基などのC1−4アルキル基である。好ましいハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子である。n3が2以上の整数である場合には、これらの置換基R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基R3の個数n3は、特に制限されず、置換基の種類に応じて、0〜5(特に1〜5)の範囲から選択できる。例えば、置換基R3がアルキル基の場合は、1〜3、好ましくは1〜2程度であり、置換基R3がハロゲン原子(フッ素原子など)の場合は、1〜5(例えば、2〜5)、好ましくは3〜5程度であってもよい。なお、R3の置換位置は特に制限されず、対称位置又は非対称位置であってもよく、例えば、環Zがベンゼン環であるとき、o−、m−、p−位のいずれであってもよく、通常、m−位やp−位(特にp−位)である。
【0021】
このような光酸発生剤(A)は、下記反応式(III)で表されるように、例えば、アレーンスルホン酸ハライド類と、チオキサントンオキシム類(例えば、アルキルチオキサントンオキシムなど)とを反応させることにより得ることができる。
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、環Z、R1〜R3、及びn1〜n3は前記に同じ)
ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は塩素原子が含まれる。ハロゲン原子としては、通常、塩素原子が利用される。アレーンスルホン酸ハライド類としては、前記環Zを有するスルホン酸ハライド、例えば、ベンゼンスルホン酸クロリド、ナフタレンスルホン酸クロリドなどのアレーンスルホン酸ハライド、トルエンスルホン酸クロリドなどのアルキル置換アレーンスルホン酸ハライド、フルオロベンゼンスルホン酸クロリドなどのハロゲン置換アレーンスルホン酸ハライドなどが例示できる。チオキサントンオキシム類としては、前記チオキサントン骨格を有する化合物、例えば、チオキサントンオキシム、アルキル置換チオキサントンオキシムが含まれる。
【0024】
アレーンスルホン酸ハライド類と、チオキサントンオキシム類との使用割合(モル比)は、例えば、前者/後者=1.5/1〜1/1.5、好ましくは1.2/1〜1/1.2程度であり、通常、ほぼ等モルである。
【0025】
反応は溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒としては、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、鎖状又は環状エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、脂肪族エステル類(酢酸エチルなど)、脂肪族ケトン類(メチルエチルケトンなど)、塩基性窒素含有溶媒(ピリジンなどの複素環式アミン類、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、アニリン、N,N−ジアルキルアニリンなどの芳香族アミン類など)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、溶解性の点ではベンゼンなどの芳香族炭化水素が好ましく、反応性を向上させる点から、ピリジンなどの塩基性溶媒が好ましい。
【0026】
反応には、塩基性触媒を用いてもよい。塩基性触媒としては、例えば、脂肪族アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン類など)、脂環族アミン類(シクロヘキシルアミンなど)、芳香族アミン類(ジエチルアニリンなど)、複素環式アミン類(4−ジメチルアミノピリジン、モルホリン、ピペリジンなど)などが挙げられる。塩基性触媒の割合は、アレーンスルホン酸ハライド類1モルに対して、0.01〜2モル、好ましくは0.1〜1.5モル(例えば、0.1〜1モル)程度である。
【0027】
反応温度は、特に制限されず、例えば、−30〜40℃程度であってもよく、通常、−20〜30℃程度(例えば、氷温)である。反応終了後、慣用の分離精製方法、例えば、濃縮、乾固、析出(例えば、塩酸や硫酸などの酸性溶液を加えて酸性に調整し、析出させる方法)、再結晶(例えば脂肪族炭化水素系溶媒(ヘキサンなど)などによる再結晶)、カラムクロマトグラフィーなどの方法やこれらを組み合わせた方法で、反応生成物を分離精製してもよい。
【0028】
光酸発生剤又はチオキサントンオキシムエステル類(A)としては、例えば、ベンゼンスルホン酸チオキサントンオキシムエステル、ベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、ベンゼンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのベンゼンスルホン酸 C1−6アルキルチオキサントンオキシムエステルなど)、アルキルベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステル(例えば、トルエンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステル、エチルベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなどのC1−6アルキルベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステル、キシレンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなどのジC1−6アルキルベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなど)、アルキルベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、トルエンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのC1−6アルキルベンゼンスルホン酸 C1−6アルキルチオキサントンオキシムエステル)、ハロベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステル(例えば、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなどのモノ乃至ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 チオキサントンオキシムエステルなど)、ハロベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのモノ乃至ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 C1−6アルキルチオキサントンオキシムエステルなど)、これらの化合物に対応する化合物であって、ベンゼン環がナフタレン環である化合物などが挙げられる。これらの光酸発生剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
これらの光酸発生剤のうち、アルキルベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、p−トルエンスルホン酸 2−イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのC1−3アルキルベンゼンスルホン酸 C1−4アルキルチオキサントンオキシムエステル)や、ハロベンゼンスルホン酸 アルキルチオキサントンオキシムエステル(例えば、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 2−イソプロピルチオキサントンオキシムエステルなどのトリ乃至ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 C1−4アルキルチオキサントンオキシムエステル)が好ましい。
【0030】
光酸発生剤又はチオキサントンオキシムエステル類(A)は、感光性が高く、少ない露光量でも効率よく酸を生成する。そのため、光硬化性組成物や感光性組成物などの成分として有用である。例えば、光酸発生剤(A)は、化学増幅型フォトレジスト用樹脂と組み合わせて感光性樹脂組成物を構成してもよい。化学増幅型フォトレジスト用樹脂としては、ポジ型レジスト用樹脂、例えば、加水分解性保護基を有する種々の樹脂(ビニルフェノールの単独又は共重合体のヒドロキシル基が保護基で保護されたポリビニルフェノール系樹脂、カルボキシル基が保護基(t−ブトキシ基など)で保護された脂環族環(シクロヘキサン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、アダマンタン環など)を有する樹脂など)、ネガ型レジスト用樹脂、例えば、ヒドロキシル基含有樹脂(ポリビニルフェノール系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、アクリル系樹脂など)とアミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂など)とを組み合わせた樹脂が例示できる。本発明の光酸発生剤(A)は、カチオン重合性樹脂、例えば、光カチオン重合性樹脂と組み合わせて感光性樹脂組成物(光カチオン重合性樹脂組成物)を構成してもよい。
【0031】
[光重合性樹脂組成物]
本発明の光重合性樹脂組成物は、前記光酸発生剤(A)及び光カチオン重合性樹脂(B)で構成されている。この組成物は、さらにポリシラン(C)などを含んでいてもよい。
【0032】
(A)光酸発生剤
光酸発生剤(A)は、他の慣用の光酸発生剤、例えば、ブレンステッド酸のオニウム塩類(芳香族ジアゾニウム塩や芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ホスホニウム塩など)やメタロセン錯体などと組み合わせてもよい。これらの光酸発生剤としては、例えば、特開2002−348357号公報や、山岡亜夫編集『レジスト材料ハンドブック』リアライズ社(1996),第43頁に記載の光酸発生剤を参照できる。他の光酸発生剤の割合は、光酸発生剤(A)100重量部に対して、例えば、0〜100重量部程度の範囲から選択でき、好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜30重量部程度である。
【0033】
さらに、前記光酸発生剤の感光波長領域を拡げたり、後述するポリシランの光分解を促進するために、光重合性樹脂組成物は、光増感剤を含んでいてもよい。増感剤としては、例えば、クマリン類[3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3,3′−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)クマリン)など]、キノリン類[2−(2−(4−ジメチルアミノフェニル)エテニル)キノリン]、キノン類(アントラキノン、ベンゾキノンなど)、ピレン類(ピレン、1−ニトロピレンなど)、芳香族炭化水素類(アセナフテン、フルオレン、ビフェニルなど)、アミン類(アクリドンなど)などが挙げられる。
光増感剤について、詳しくは、例えば、高分子学会編集『感光性樹脂』共立出版(1988),第85頁などを参照できる。
【0034】
(B)光カチオン重合性樹脂
光カチオン重合性樹脂(B)としては、エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂など)を使用することができる。エポキシ樹脂としては、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)に記載のエポキシ樹脂などが例示でき、通常、芳香族エポキシ樹脂[ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂など)]や、脂環族型エポキシ化合物(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が使用できる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのエポキシ樹脂のうち、光学的な特性から、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂などの縮合炭化水素環を有するビスフェノール型エポキシ樹脂、特に、前記式(II)で表されるフルオレン誘導体(9,9−ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂)が好ましい。
【0035】
式(II)において、R4〜R11で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの直鎖又は分岐鎖状C1−6アルキル基など)、アルケニル基(ビニル基など直鎖又は分岐鎖状C2−6アルケニル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル、シクロヘキシル基などのC4−8シクロアルキル基)、C6−10アリール基(フェニル基、メチルフェニル基などのC1−4アルキルフェニル基、ジメチルフェニルなどのジC1−4アルキルフェニル基、トリメチルフェニル基などのトリC1−4アルキルフェニル基、ナフチル基など)などが挙げられる。これらの炭化水素基のうち、メチルやエチル基などのC1−6アルキル基(特に、メチル基などのC1−4アルキル基)、フェニル基などのC6−10アリール基が好ましい。係数m1〜m4、p1〜p4は、それぞれ、0〜3、好ましくは0〜2(特に0又は1)程度である。係数m1〜m4は、通常、0〜3(好ましくは0〜2、特に0又は1)であり、係数p1〜p4は、通常、0〜2(特に0又は1)である。
【0036】
A1〜A4は、エチレン、プロピレン、トリメチレン、ブチレンなどのC2−4アルキレン基である。好ましいアルキレン基は、エチレンやプロピレンなどのC2−3アルキレン基(特にエチレン基)である。q1〜q4は、オキシアルキレン基の繰り返し数(又はアルキレンオキサイドの付加モル数)に対応しており、0〜50の整数、好ましくは0〜30の整数、さらに好ましくは0〜10(例えば、0〜5)の整数であり、通常、0〜3(例えば、0又は1)である。
【0037】
係数rは、エピクロルヒドリンの付加モル数に対応しており、例えば、0〜500(例えば、0〜100)、好ましくは0〜50(例えば、0〜30)、さらに好ましくは0〜25(例えば、0〜10)程度であってもよく、通常、0〜5程度であってもよい。グリシジルエーテル鎖の置換位置は特に制限されず、ベンゼン環に対してo−,m−又はp−位のいずれであってもよいが、m−及び/又はp−位が好ましい。なお、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂は、式(II)において、1つのベンゼン環に対してグリシジルエーテル鎖が2個置換したビスカテコールフルオレン型エポキシ樹脂[例えば、9,9−ビス(3,4−ジグリシジルオキシフェニル)フルオレン(ビスカテコールフルオレンテトラグリシジルエーテル)など]であってもよい。
【0038】
フルオレン誘導体(II)は、少なくともビスフェノールフルオレン類とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。フルオレン誘導体(II)のうち、q1=q2=0、r=0である化合物としては、例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン(BPFG);9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCFG)、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−グリシジルオキシ−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−グリシジルオキシ−4−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルキルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシジアルキルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシシクロアルキルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アリールヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0039】
q1=q2=1、r=0である化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル)(BPEFG)、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン(BCEFG)、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−2,6−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−シクロアルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシ−アリールフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0040】
q1=q2=2以上の化合物は、9,9−ビスフェノールフルオレン類の各ヒドロキシル基に対して2モル以上の前記アルキレンオキサイドが付加したエポキシ樹脂に対応し、r=1以上の化合物は、9,9−ビスフェノールフルオレン類又はそのアルキレンオキサイド付加体の各ヒドロキシル基に対して2モル以上のエピクロルヒドリンが付加したエポキシ樹脂に対応する。
【0041】
これらのフルオレン誘導体(II)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのフルオレン誘導体(II)のうち、BPFGやBCFGなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−3アルキルフェニル)フルオレン、BPEFGなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−3アルコキシフェニル)フルオレン、BCEFGなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−3アルコキシ−C1−3アルキルフェニル)フルオレンなどが繁用される。
【0042】
フルオレン誘導体(II)の重量平均分子量Mwは、例えば、400〜30,000程度、好ましくは450〜10,000程度、さらに好ましくは500〜5,000程度であってもよい。エポキシ当量は、例えば、150〜5000g/eq、好ましくは200〜3000g/eq、さらに好ましくは250〜1000g/eq程度である。
【0043】
前記フルオレン誘導体(II)は、他のエポキシ樹脂(例えば、芳香族エポキシ樹脂や脂環族エポキシ樹脂など)と組み合わせてもよい。両者の割合(重量比)は、フルオレン誘導体(II)/他のエポキシ樹脂=100/0〜30/70、好ましくは100/0〜50/50、さらに好ましくは100/0〜70/30程度である。
【0044】
光酸発生剤(A)と光カチオン重合性樹脂(B)との割合は、光カチオン重合性樹脂(B)100重量部に対して、光酸発生剤(A)0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度である。
【0045】
[ポリシラン]
ポリシランは、特に限定されないが、通常、Si−Si結合を有する直鎖状、環状、分岐状又は網目状の化合物であり、下記式(1)〜(3)で表された構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有している。
【0046】
【化6】
【0047】
(式中、R12〜R14は、同一又は相異なって、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はシリル基を示し、x、y及びzはそれぞれ0以上の数を示し、x、y及びzの合計は5〜400である)
このようなポリシランとしては、例えば、式(1)で表される構造単位を有する直鎖状又は環状ポリシラン、前記式(2)又は(3)で表される構造単位を有する分岐鎖状又は網目状ポリシラン、前記式(1)〜(3)で表される構造単位を組み合わせて有するポリシランなどが挙げられる。これらのポリシランは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
前記式(1)及び(2)において、R12〜R14で表される置換基としては、通常、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基(芳香族炭化水素基)、アラルキル基などの炭化水素基である場合が多い。また、水素原子やヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基は、末端基に置換している場合が多い。
【0049】
前記式(1)及び(2)のR12〜R14において、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどのC1−14アルキル基(好ましくはC1−10アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基)が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル、アリルなどのC2−14アルケニル基(好ましくはC2−10アルケニル基、さらに好ましくはC2−6アルケニル基)が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのC5−14シクロアルキル基(好ましくはC5−10シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−8シクロアルキル基)が挙げられる。アリール基としては、フェニル、メチルフェニル(トリル)、ジメチルフェニル(キシリル)、ナフチルなどのC6−20アリール基(好ましくはC6−15アリール基、さらに好ましくはC6−12アリール基)が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなどのC6−20アリール−C1−4アルキル基(好ましくはC6−10アリール−C1−2アルキル基)が挙げられる。
【0050】
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどのC1−14アルコキシ基(好ましくはC1−10アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基)が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフチルオキシなどのC6−20アリールオキシ基(好ましくはC6−15アリールオキシ基、さらに好ましくはC6−12アリールオキシ基)が挙げられる。
【0051】
シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基などのSi1−10シラニル基(好ましくはSi1−6シラニル基)が挙げられる。
【0052】
また、R12〜R14が、前記有機置換基又はシリル基である場合には、その水素原子の少なくとも1つが、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基などの官能基により置換されていてもよい。このような官能基としては、前記と同様の基が挙げられる。
【0053】
これらの置換基のうち、硬化物の屈折率を向上させる点から、芳香族炭化水素環を有する基(アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基などの芳香環を含む基)、特にアリール基(例えば、フェニル基など)が好ましい。
【0054】
ポリシランが非環状構造(直鎖状、分岐鎖状、網目状)の場合、末端置換基は、通常、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、シリル基などである。
【0055】
好ましいポリシランとしては、R12及びR13の少なくとも一方がアリール基(特にC6−20アリール基)である構造単位(1)を含むポリシラン、R14がアリール基(特にC6−20アリール基)である構造単位(2)を含むポリシラン、前記両構造単位(1)(2)を含むポリシランが挙げられる。具体的には、ポリメチルフェニルシラン(R12がメチル基であり、R13がフェニル基である構造単位(1)で構成されたポリマー)、ポリジフェニルシラン(R12及びR13がフェニル基である構造単位(1)で構成されたポリマー)、ポリフェニルシリン(R14がフェニル基である構造単位(2)で構成されたポリマー)などのホモポリマーや、メチルフェニルシラン−フェニルシリン共重合体(前記構造単位(1)と構造単位(2)とが1.5/1〜0.5/1(モル比)、好ましくは1.2/1〜0.8/1(モル比)程度の割合で共重合したポリマー)などのコポリマーなどが好ましく使用できる。
【0056】
ポリシランは、さらに末端のケイ素原子に少なくとも1つのヒドロキシル基が直接結合したポリシラン、すなわち、末端に少なくとも1つのシラノール基を有するポリシランが好ましい。ケイ素原子に直接結合したヒドロキシル基は、フルオレン誘導体(II)のエポキシ基との良好な反応性を示し、光照射または加熱により、フルオレン誘導体(II)とポリシランとの間に高度な架橋構造を形成する。また、末端のケイ素原子に、フェノール基が結合したポリシランでもよい。
【0057】
このようなヒドロキシル基の含有割合としては、1つのケイ素原子当たり、平均0.005〜2.5個程度、好ましくは平均0.01〜2.3個程度、より好ましくは平均0.02〜2個程度である。
【0058】
ポリシランの重合度、すなわち構造単位(1)〜(3)におけるx、yおよびzの合計は、5〜400、好ましくは10〜350、さらに好ましくは20〜300程度である。
【0059】
ポリシランの分子量は、数平均分子量300〜100000、好ましくは400〜50000、さらに好ましくは500〜20000程度である。
【0060】
前記ポリシランは、慣用の方法で調製でき、ポリシランの製造方法としては、例えば、特定の構造単位を有するケイ素含有モノマーを原料として、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)など)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)など)、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報など)、金属触媒の存在下にヒドラジン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−334551号公報など)、ビフェニルなどで架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)など)、環状シラン類の開環重合による方法などの方法が挙げられる。
【0061】
ヒドロキシル基を有するポリシランも、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、上述したアルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(キッピング法)などにおいて、縮重合反応終了時に水を添加する方法により容易に製造することができる。
【0062】
光酸発生剤(A)とポリシラン(C)との割合は、ポリシラン(C)100重量部に対して、光酸発生剤(A)0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度である。光酸発生剤とポリシランとの組合せにより、硬化性と現像性とのバランスを向上できる。
【0063】
光カチオン重合性樹脂(B)とポリシラン(C)との割合は、ポリシラン(C)100重量部に対して、光カチオン重合性樹脂(B)0.5〜500重量部、好ましくは1〜300重量部、さらに好ましくは1〜100重量部程度である。
光カチオン重合性樹脂(B)とポリシラン(C)との組合せにより、架橋効率を高め硬化物の耐熱性を向上できるとともに、硬化物の屈折率や撥水性も高くなる。
【0064】
本発明では、光カチオン重合性樹脂、特に式(II)で表される光カチオン重合性樹脂と、ポリシランとを組み合わせることにより、その硬化物は、フルオレン骨格やポリシラン構造などに基づいて、耐熱性及び耐溶剤性に優れ、吸水性及び収縮性が低くなる。さらに、その硬化物は、可視光に対する透過性に優れるとともに、屈折率が高く、高い撥水性を有する。
【0065】
光重合性樹脂組成物には、エポキシ基に対する反応性基を有するポリマー(D)を含有させてもよい。エポキシ基に対する反応性基は、エポキシ基と直接反応する官能基であってもよく、光酸発生剤(A)から発生した酸や光照射によって、エポキシ基と反応できる官能基であってもよい。
【0066】
このようなポリマー(D)には、ポリフェノール系樹脂、アクリル系樹脂(ポリアルキル(メタ)アクリレートなど)などが含まれる。ポリフェノール系樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール系樹脂、ビスフェノール樹脂、ヒドロキシ芳香族ビニル(ビニルフェノールなど)のホモポリマー及びコポリマー、N−ヒドロキシフェニル−マレイミドのホモポリマー及びコポリマーなどが挙げられる。
【0067】
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸及びそのエステルの単独又は共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチルなどのC1−12アルキル基、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル、アダマンチル、ノルボルニル、イソボルニルなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0068】
ポリマー(D)の割合は、光カチオン重合性樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは0.3〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部程度である。
【0069】
光重合性樹脂組成物には、必要に応じて、他の添加剤、例えば、着色剤(染顔料)、増粘剤、安定剤(老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤など)、消泡剤、レベリング剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、滑剤などの公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0070】
光重合性樹脂組成物は、塗布性を改良するために、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなど)、アルコール類(エタノール、プロパノールなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(エチルメチルケトン(2−ブタノン)、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ジオール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル(ジメトキシエタン)、プロピレングリコールメチルエーテルなど)、カルビトール類(カルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなど)、セロソルブアセテート類(プロピレングリコールメチルアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの溶媒のうち、エーテル類、ケトン類、セロソルブ類、カルビトール類、セロソルブアセテート類などが好ましい。前記光重合性樹脂組成物は、例えば、これらの溶媒中1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%程度の濃度で使用することができる。
【0071】
[硬化物の製造方法]
本発明の光重合樹脂組成物に、光を照射して架橋反応により硬化させることにより、硬化物(三次元的硬化物、硬化膜や硬化パターンなどに一次元又は二次元的硬化物、点又はドット状硬化物など)を得ることができる。硬化物(硬化膜、硬化パターンなど)は、前記光重合性樹脂組成物を基材上に塗布し、塗膜を形成した後、光照射又は露光することにより形成できる。本発明の光重合性樹脂組成物は、基材上での薄膜を製造するのに適している。
【0072】
塗布方法としては、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などを挙げることができる。
【0073】
塗膜の厚みは、硬化物の用途によって応じて、0.01μm〜10mm程度の範囲から選択でき、例えば、フォトレジストの場合、0.05μm〜10μm(特に0.1〜5μm)程度、プリント配線基板の場合、10μm〜5mm(特に100μm〜1mm)程度、光学薄膜の場合、0.1〜100μm(特に0.3〜50μm)程度である。
【0074】
露光する光は、例えば、ガンマー線、X線、紫外線、可視光線などであってもよいが、通常、紫外線である。光の波長は、例えば、150〜800nm、好ましくは150〜600nm、さらに好ましくは200〜400nm(特に300〜400nm)程度である。照射光量は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、2〜2000mJ/cm2、好ましくは5〜500mJ/cm2程度である。光源としては、露光する光線の種類に応じて選択でき、例えば、紫外線の場合は、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、レーザ光(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなど)などを用いることができる。
【0075】
被膜の光照射又は露光の後、加熱工程で加熱すると、架橋を促進でき光重合性樹脂組成物を高度に架橋できる。塗膜の加熱は、通常、光照射後、又は光照射とともに行われる。加熱温度は、例えば、60〜250℃、好ましくは100〜200℃程度である。加熱時間は、例えば、5秒〜2時間、好ましくは20秒〜30分程度である。
【0076】
さらに、パターンや画像を形成する場合(例えば、プリント配線基板などを製造する場合)、基材上に形成した塗膜をパターン露光してもよく、このパターン露光は、レーザ光の走査により行ってもよく、フォトマスクを介して光照射することにより行ってもよい。このようなパターン露光により生成した非照射領域(未露光部)を現像剤で現像(又は溶解)することによりパターン又は画像を形成できる。現像剤としては、水、アルカリ水溶液、親水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類など)や、これらの混合液などを用いることができる。
【0077】
露光後に被膜を加熱する場合、現像工程は、加熱工程の前に行ってもよく、加熱工程の後で行ってもよい。このような方法では、小さな露光量でも、基材上に、精細で高精度のパターンを形成できる。従って、本発明の樹脂組成物は、精密なパターンを必要とする用途、例えば、電子機器のプリント配線基板などの製造に適している。
【0078】
光学薄膜を形成する場合には、前記光重合性樹脂組成物を、基材上に複数層形成してもよい。また、基材上に他の機能層などを形成した後、その機能層の上に、前記光重合性樹脂組成物で形成された層を形成してもよい。本発明の樹脂組成物は、可視光の透過性に優れ、高い屈折率を有し、光学的特性にも優れるため、特に、液晶ディスプレイなどの反射防止膜の高屈折率層、反射板などの光学薄膜に適している。
【0079】
基材の材質は、用途に応じて選択され、例えば、プリント配線基板や光学薄膜の場合には、シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム、炭化シリコンなどの半導体、アルミニウム、銅などの金属、酸化ジルコニウム、酸化チタン、PZTなどのセラミック、透明無機材料(ガラス、石英、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなど)、透明樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレンなど)などが用いられる。
【0080】
本発明の光重合性樹脂組成物は、前記プリント配線基板や光学薄膜などの用途の他、塗料、電気機器の絶縁材、電線被覆材、電子機器の封止材、保護膜、フォトレジスト、印刷製版材、インキ、接着剤、粘着材などの広範な用途に用いることができる。
【0081】
【発明の効果】
本発明の新規な光酸発生剤は、特定のチオキサントンオキシムエステルで構成され、光に対して高感度であり、高い効率で酸を生成する。また、この光酸発生剤と光カチオン重合性樹脂とを組み合わせると、少ない露光量で硬化させることができる。得られた硬化物は、耐熱性及び耐溶剤性に優れるだけでなく、吸水性が低いため、湿度などの環境変化の影響を受けにくく、かつ収縮率が小さいため寸法安定性に優れている。さらに、この硬化物(又は硬化パターンなど)は、可視光の透過性を有し、屈折率及び撥水性が高い。
【0082】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0083】
合成例1
p−トルエンスルホニルクロリド0.463g(2.4ミリモル)、2−イソプロピルチオキサントンオキシム0.654g(2.4ミリモル)を冷却管付き三角フラスコに入れ、ベンゼン10mlを添加した。攪拌しながら、4−ジメチルアミノピリジン0.293g(2.4ミリモル)を徐々に添加すると、沈殿が生成した。10分後に反応溶液をシリカカラムで分離し(溶離液:クロロホルム)、濃縮後、ヘキサンで再結晶し、p−トルエンスルホン酸 2−イソプロピルチオキサントンオキシムエステル(ITXTS)0.689g(収率67%)が黄色結晶で得られた。得られた結晶の融点(m.p.)は165℃、熱分解開始温度(窒素雰囲気)(Td)は206℃であり、NMRデータは以下の通りであった。
【0084】
1HNMR(CDCl3、ppm):δ6.52−8.03(6H、m、aromatic)、2.84(1H、m、−CH−)、1.18(6H、d、−CH3)。
【0085】
合成例2
冷却管を付けた50mlフラスコにイソプロピルチオキサントンオキシム1.3gを入れ、ピリジン15mlを添加した。氷浴で溶液を5℃以下に保ちながら、p−トルエンスルホニルクロリド1.9gを添加した。4時間攪拌した後、氷冷した5重量%塩酸300mlに攪拌しながら投入した。溶液が酸性であることを確認してから結晶を吸引濾過し、ピリジンの臭いがなくなるまで水洗した。さらに、真空乾燥した後、ヘキサンで再結晶し、p−トルエンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステル(ITXTSm)0.17g(収率8.6%)が黄色結晶で得られた。得られた結晶の融点(m.p.)は154℃、熱分解開始温度(窒素雰囲気)(Td)は207℃であった。
【0086】
合成例3
ペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリド0.651g(2.3ミリモル)、2−イソプロピルチオキサントンオキシム0.634g(2.3ミリモル)を冷却管付き三角フラスコに入れ、ベンゼン10mlを添加する。攪拌しながら、4−ジメチルアミノピリジン0.293g(2.4ミリモル)を徐々に添加すると、沈殿が生成する。10分後に反応溶液をシリカカラムで分離し(溶離液:クロロホルム)、濃縮後、ヘキサンで再結晶し、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 2−イソプロピルチオキサントンオキシムエステル(ITXPS)0.391g(収率32%)が得られた。得られた結晶の融点(m.p.)は114℃、熱分解開始温度(窒素雰囲気)(Td)は206℃であり、NMRデータは以下の通りであった。
【0087】
1HNMR(CDCl3、ppm):δ6.49−8.24(6H、m、aromatic)、2.77(1H、m、−CH−)、1.28(6H、d、−CH3)。
【0088】
合成例4
冷却管を付けた50mlフラスコにイソプロピルチオキサントンオキシム1.3gを入れ、ピリジン10mlを添加した。氷浴で溶液を5℃以下に保ちながら、ペンタフルオロベンゼンスルホニルクロリド3.5gを添加した。4時間攪拌した後、氷冷した5重量%塩酸300mlに攪拌しながら投入した。溶液が酸性であることを確認してから結晶を吸引濾過し、ピリジンの臭いがなくなるまで水洗した。さらに、真空乾燥した後、ヘキサンで再結晶し、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸 イソプロピルチオキサントンオキシムエステル0.15g(収率6.8%)が得られた。得られた結晶の融点(m.p.)は107℃、熱分解開始温度(窒素雰囲気)(Td)は178℃であった。
【0089】
実施例1
合成例1で合成したITXTSをアセトニトリル中に濃度3.3×10−5モル/リットルで溶解し、低圧水銀灯により波長366nmの光を照射して、照射量と吸収ピーク(260nm)の消失度をプロットした傾きから光酸発生剤の光分解速度を求めた。その結果、ITXTSの光分解速度は、市販の9−フルオレニリデンイミノ−パラ−トルエンスルホネート(FITS)(東京化成(株)製)に対して5.5倍であった。
【0090】
実施例2
ITXTSの代わりに、合成例3で合成したITXPSを用いる以外は実施例1と同様の方法で光分解速度を求めた結果、光分解速度は、FITSの7倍であった。
【0091】
実施例3
ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル(エポキシ当量293)45重量部、ポリメチルフェニルシラン(重量平均分子量11200、Mw/Mn=1.5)55重量部、合成例2で合成したITXTSm3重量部、及び溶媒(シクロヘキサノン)を含む溶液をシリコンウエハー上にスピンコータで塗布し、60℃で2分間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚約0.1μmの塗膜を作製した。次いで、低圧水銀ランプを用いて、波長366nmの光を200mJ/cm2の照射量で照射した。さらに、180℃で5分間加熱し、塗膜を硬化した後、現像液(テトラヒドロフラン)に10分間浸漬して前記塗膜を現像したところ、塗膜は不溶化していた。なお、紫外光を照射しなかった場合は、塗膜の不溶化は起こらなかった。
Claims (12)
- 式(I)において、環Zがベンゼン環であり、R1及びR2がC1−6アルキル基であり、R3が同一又は異なってC1−6アルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、n1及びn2が同一又は異なって0〜2の整数、n3が0〜5の整数である請求項1記載の光酸発生剤。
- 請求項1記載の光酸発生剤(A)及び光カチオン重合性樹脂(B)を含む光重合性樹脂組成物。
- 光カチオン重合性樹脂(B)がエポキシ樹脂である請求項3記載の組成物。
- さらに、ポリシラン(C)を含む請求項3記載の組成物。
- ポリシラン(C)が、芳香族炭化水素環を有している請求項6記載の組成物。
- 請求項3記載の組成物に光照射して架橋させる硬化物の製造方法。
- 光照射した後、加熱して架橋させる請求項8記載の方法。
- 請求項3記載の組成物を基材に塗布し、パターン露光し、加熱して現像する請求項8記載の方法。
- 紫外線を照射する請求項8記載の方法。
- 請求項3記載の組成物が少なくとも光照射により硬化した硬化物。
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