JP2004332989A - 固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸素富化空気を使用した固体状物質の燃焼装置におけるクリンカとダイオキシンの生成を防止する。
【解決手段】送風機11で通常の空気を供給し、酸素濃縮装置26にて酸素富化を行って、燃料4を燃焼させる装置において、電子制御ユニット20でバルブ13,14,25の開度を調節して燃焼装置1,2,3内の空気の速度ひいては温度の分布を燃料4の状態に応じて変えるようにする。これにより、炉内での局所的な高温部や低温部の生成が防止されて、クリンカ及びダイオキシンの生成が防止できる。また、炉内の空気の速度および温度の分布の時間的な変化を予測して供給空気量を制御することで、燃焼室の熱容量に伴う温度変化の行き過ぎを回避して、瞬間的な高温や低温の生成も回避する。
【選択図】 図1
【解決手段】送風機11で通常の空気を供給し、酸素濃縮装置26にて酸素富化を行って、燃料4を燃焼させる装置において、電子制御ユニット20でバルブ13,14,25の開度を調節して燃焼装置1,2,3内の空気の速度ひいては温度の分布を燃料4の状態に応じて変えるようにする。これにより、炉内での局所的な高温部や低温部の生成が防止されて、クリンカ及びダイオキシンの生成が防止できる。また、炉内の空気の速度および温度の分布の時間的な変化を予測して供給空気量を制御することで、燃焼室の熱容量に伴う温度変化の行き過ぎを回避して、瞬間的な高温や低温の生成も回避する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素富化空気を使用した固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法に関し、詳しくは燃焼状態を制御する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃焼促進に酸素富化空気を使用する手法が知られている(例えば非特許文献1参照)。また、その他の省エネルギー燃焼技術の一つとして、酸素富化によって火炎や燃焼ガスの温度を上昇させる、ということが論じられている(例えば非特許文献2参照)。さらに、酸素濃度を高めた空気を供給して灰を溶融する方式も開示されている(例えば非特許文献3参照)。
自動燃焼制御に関する最新技術の開示もなされており(例えば非特許文献4参照)、燃焼室ガス温度,一酸化炭素濃度,酸素濃度等を検知し、燃料量と燃焼に必要な空気量をコンピュータ制御するようになっている。それには、従来からのアナログ的な制御とシーケンス的な制御に加えて、ファジィ制御システムや,エキスパートシステム,多変量制御システム,燃焼解析としての画像処理技術など、最新技術が導入されている。
【0003】
【非特許文献1】
「燃焼工学ハンドブック」日本機械学会、1995年 7月25日、p.80
【非特許文献2】
水谷幸夫著「燃焼工学入門」森北出版株式会社、2003年 1月15日、p.58
【非特許文献3】
タクマ環境技術研究会編「ごみ焼却技術」オーム社、1998年 7月10日、p.16
【非特許文献4】
タクマ環境技術研究会編「ごみ焼却技術」オーム社、1998年 7月10日、p.222−223
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、酸素富化による局所的高温によるクリンカ(燃焼壁や火床上に焼却灰や未燃分が溶融付着固化したもの)の生成について配慮されておらず、温度分布の均一化も配慮されていない。
クリンカの生成にはそれによって燃焼性能が低下するという問題がある。また、温度分布の不均一には局所的低温によってダイオキシンが発生するという問題がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、酸素富化空気を使用した固体状物質の燃焼装置におけるクリンカとダイオキシンの生成を防止することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために創案された本発明の固体状物質の燃焼装置は、局所的な高温部および低温部が生じないように、炉部の燃焼室内における空気の速度および温度の分布を燃料の状態に応じて変えられるようにしたものである。また、本発明の固体状物質の燃焼方法は、炉部の燃焼室内における空気の速度および温度の分布に関する時間的な変化を予測して、炉への供給空気量を制御するようにしたものである。
燃焼装置の炉部の燃焼室における燃料の状態に応じて炉への供給空気量を制御することにより、燃焼室内における空気の速度および温度の分布が適正範囲に納められて、局所的な高温部や低温部の生成が防止される。また、状態の変化を予測して供給空気量を制御することによって、燃焼室の熱容量に伴う温度変化の行き過ぎを回避することが可能となり、その結果、瞬間的な高温や低温の生成を回避することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
このような解決手段で達成された本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法について、これを実施するための形態を幾つか説明する。
【0007】
[第1の実施の形態]
本発明の第1実施形態の固体状物質の燃焼装置は、燃料が投入されるとともに一次空気が供給される一次燃焼室と、これに連通していてそこから出たガスが流れ込むとともに二次空気が供給される二次燃焼室と、少なくとも前記二次空気の酸素濃度を高めうる酸素富化手段と、前記一次空気の量と前記二次空気の量とそれらに含まれる酸素の量とを独立に調節しうるバルブ等の調節手段と、前記二次燃焼室から排出される排ガスの温度と空燃比を検出する検出手段と、その検出に基づいて前記調節手段の可変制御を行うことにより前記二次燃焼室における燃焼ガスの速度と燃焼温度とを所定の目標値にする制御装置とを備えている。
これにより、炉部の燃焼室内における空気の速度および温度の分布が燃料の状態に応じて適切に変えられる。
【0008】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施形態は、上述した第1実施形態の固体状物質の燃焼装置であって、前記制御装置が、前記検出手段にて検出された前記排ガスの温度と、前記調節手段にて調節された前記一次空気および前記二次空気を合わせた空気量と、前記調節手段にて調節された前記酸素の量とに基づいて、随時、前記燃料の発熱量を推定演算するとともに前記一次燃焼室および前記二次燃焼室の中の熱量も前記二次燃焼室の燃焼温度も推定演算し、これらの演算値に基づいて前記二次燃焼室における燃焼ガスの速度変化と温度変化とを予測しながら前記二次燃焼室における燃焼ガスの速度と燃焼温度を変える制御を行うようになっている、というものである。
これにより、燃料の状態に応じて炉内の空気の速度および温度の分布を変えるに際して、それらの時間的な変化が予測されるので、燃焼室の熱容量に伴う温度変化の行き過ぎが未然に回避され、その結果、瞬間的な高温や低温の生成を的確に抑止することができる。
【0009】
【第1実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第1実施例について、先ず装置の具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、燃焼装置の構成図であり、炉部と給気配管を断面で模式的に図示し、計器類やバルブ等はブロックや記号などで図示している。なお、図示に際して、酸素富化していない空気の流路には、薄い散点模様を付し、酸素富化した空気の流路には、濃い散点模様を付している。
【0010】
この燃焼装置の炉部は、一次燃焼室1と二次燃焼室2と補助燃焼室3とから構成されている。供給空気の流路に関して給気側・上流側に一次燃焼室1が配置され排気側・下流側に二次燃焼室2が配置されている。一次燃焼室1には、燃料4(焼却物、固体状物質)を投入するための投入口5が設けられている。補助燃焼室3は、一次燃焼室1の芯部に配置されていて、一次燃焼室1と平行な状態で二次燃焼室2より上流に位置している。一次燃焼室1と補助燃焼室3の給気口(図では下方)は同心配置されているが分離されており、一次燃焼室1と補助燃焼室3の排気口(図では中央)は同心配置されていてほぼ同位置で共に二次燃焼室2の給気口と連通している。
【0011】
二次燃焼室2の下流には(図では上方)、セラミック製の微粒子トラップ6と触媒コンバータ7と煙突24とがその順に取り付けられている。触媒コンバータ7は、一酸化炭素,未燃炭化水素,窒素酸化物を同時に浄化する3元触媒、あるいは酸化触媒、あるいは微粒子トラップ機能を有する窒素酸化物還元触媒(例えば、「伊藤和浩ほか、ディーゼル車用新触媒システムの紹介、エンジンテクノロジー、Vol.2 、No.6、p.46−56 、1999」を参照)のうち何れか一つ又は複数を組み合わせて構成されている。
【0012】
補助燃焼室3には、灯油バーナ8が設けられている。バーナ8は、助燃料(灯油)供給のため、配管17を介して、助燃料タンク18に接続されている。配管17の途中には、助燃料の供給量を可変制御しうるよう、バルブ19と助燃料ポンプ22とが、介挿して配置されている。バーナ8は、また、給気のため、配管12を介して、送風機11にも接続されている。配管12の途中には、通気量制御のため開度調節可能なバルブ14が、介挿して配置されている。
【0013】
一次燃焼室1の下部には、火格子9が配置されている。火格子9の下室16には、灰取り出し口15が取り付けられ、下室16は、給気のため、配管10を介して、送風機11に接続されている。配管10の途中には、通気量制御のため開度調節可能なバルブ13と、予熱のための熱交換器23とが、介挿して配置されている。また、一次燃焼室1のうち補助燃焼室3周囲の環状部分は、もう一つの給気のため、送風機11に接続されている。配管27の途中には、通気量制御のため開度調節可能なバルブ25と、酸素富化のための酸素濃縮装置26(酸素富化手段)とが介挿して配置され、下室16経由の大気供給とは独立に一次燃焼室1へ酸素富化空気を供給できるようになっている。その酸素富化空気を補助燃焼室3にも供給できるよう、配管12と配管27は、バルブ53を介して接続されている。
【0014】
酸素濃縮装置26は、シリコン膜やポリイミド膜等の高分子膜を分離膜として構成されている。分離膜の両面に圧力差をつけると、大気側(相対的高圧側)の酸素が膜表面に溶解し、さらに膜内を拡散移動して、減圧側(相対的低圧側)で、膜表面から酸素が離脱する、という原理を利用したものである。標準的な装置の場合、吸引圧力27kPa(大気圧基準で−550mmHg)で、酸素濃度32%のガスを得ることができる。20kgの重さのユニットで、3.6Nm3 /hの流量が得られる。
【0015】
バルブ13,14,19,25,53と助燃料ポンプ22と送風機11は、始動ボタン21等の操作部材の付いた電子制御ユニット20とケーブル等で接続され(図の長破線を参照)、遠隔制御されるようになっている。二次燃焼室2の出口に温度センサ28が取り付けられ、これも電子制御ユニット20に信号ケーブル等で接続されている。煙突24には、自動車エンジン等に取り付けられるのと同じ空燃比センサ30が取り付けられている。空燃比センサ30も、電子制御ユニット20に接続されている。電子制御ユニット20には、マイクロプロセッサーが内蔵されており、制御のためのプログラムで、各種制御が実行されるようになっている。電子制御ユニット20には後で述べるモデルベース制御のアルゴリズムが組み込まれている。
【0016】
このような燃焼装置の使用態様および動作等を説明するに先だって、固体状物質の燃焼メカニズムについて、概要を確認しておく。
バッチ処理の場合、火種がないと、燃料は着火できない。火種の熱によって燃料層が加熱されるが、そのときの加熱は、もっぱら酸化層の火種からの熱伝導と輻射によって行われる。このような火種や補助燃焼によって、燃料層が加熱される。これによって、燃料が乾留されて、水分や揮発分(乾留ガス)が放出される。温度が高いときは、放出された乾留ガスは直ぐに燃焼する。温度が低いときは、乾留ガスは、二次燃焼室2で燃焼する。
【0017】
揮発分の酸素消費率が低下すると、乾留された燃料(残炭)の表面燃焼が盛んになり、最終的に燃料は灰になる。図3に示すごとく、酸化層の熱によって、燃料層が乾留層に変わり、乾留層が酸化層に変わる。このようにして、火炎伝播によって燃焼が維持される。着火面の伝播速度は、0.2m/h前後である。空気の量が不足すると、酸化層の外側に還元層が形成される。ここで、燃料としてゴミとコークスを用い、酸素濃度を上げた空気を供給すると、灰を溶融することができるが、本発明ではコークスを使用しないので、灰が溶融するまでには至らない。
【0018】
次に、上述の燃焼装置を使用した固体状物質の燃焼方法とその際の装置動作等を、図面を引用して説明する。図2は、酸素富化空気の酸素濃度と燃焼温度の関係図であり、図3と図4と図5は、燃料の状態の変化を示した模式図であり、図6は、制御の流れを示すブロック図であり、図7は、制御の流れを示すニューラルネットワークである。
【0019】
固体状の燃料4を投入口5から一次燃焼室1へ投入し、一次燃焼室1に燃料4が溜まって燃料層が出来たら、燃焼開始のため投入口5を閉めて始動ボタン21を押す。そうすると、電子制御ユニット20で自動制御のプログラムが実行され、その制御に従って、バルブ19とバルブ14が開き、助燃料ポンプ22と送風機11が作動して、助燃料と空気がバーナ8に供給される。この助燃料は通常の着火源で着火され、補助燃焼室3内に火炎52が形成される。これによって、補助燃焼室3のガスの温度は1500K(1227℃)から2300K(2027℃)に高められる。この高温ガスからの輻射と熱伝導によって、一次燃焼室1内で補助燃焼室3の周囲の燃料4が加熱される。燃料4の塊は、これによって、乾燥・乾留される。
【0020】
燃料は、乾燥した後、熱分解を起こして、分解生成物すなわち揮発分を放出する。この揮発分は、二次燃焼室2で、火格子9の下部からの一次空気UGA(Under Grate Air)によって、完全に燃焼させられる。一次空気UGAは、熱交換器23にて排ガスの熱を回収して、温度が150℃〜250℃程度に高められている。触媒コンバータ7は、補助燃焼室3の高温ガスによって、予熱されているので、未燃成分を始動時から完全に浄化することができる。また、排ガス中のダストは、微粒子トラップ6で捕捉される。
【0021】
ここで、煤塵中の金属が触媒となって250℃から400℃の温度域で有機物からダイオキシン類が合成されるというデノボ合成によってダイオキシン等の有害成分が生成されるのを防止するには、燃焼したガスの高温にとどまる時間を短縮する必要があるが、これは、熱交換器23によって達成される。すなわち、送風機11から熱交換器23に送られる空気によって、二次燃焼室2から出る排ガスの熱を奪って、おおむね200℃以下に低下させている。これにより、デノボ合成が阻止される。
【0022】
また、ダイオキシンの発生の防止には、二次燃焼室2において、燃焼ガスを800℃以上の温度に2.5秒以上維持する、という条件を満たす必要もある。このためには、二次燃焼室2の長さが1mの場合、ガスの流速を、0.4m/s以下に抑える必要がある。二次燃焼室2の径が20cmの場合、断面積は0.03m2 であるので、流速が0.4m/sのときの流量は、0.0126m3 /s、45m3 /hとなる。これは800℃のときの条件であるので、20℃のときは、密度の比293/1073を考慮すると、12m3 /hとなる。ユニットの重さが約50kgの酸素濃縮装置26を使用すると、この流量を賄うことができる。酸素が21%から32%に濃縮されているので、1.5倍の燃料を処理することができる。
【0023】
一般に炭化水素の燃料の断熱火炎温度は、当量比が1の場合、2300K(2027℃)程度である。当量比が3になると、1300K(1027℃)程度になる。また、当量比が0.5と小さくなると、1500K(1227℃)程度になる。ガス燃料の燃焼速度は、酸素富化空気を用いることで大きくなる。酸素濃度が21%のとき30cm/sであるのに対し、酸素濃度が32%のときは、75cm/sと、2.5倍になる。酸素富化によって、燃焼温度も上昇する。図2に示すごとく、40%を外部に放熱する場合、酸素過剰率1.2において、空気燃焼では、1773K(1500℃)の燃焼温度しか得られないが、40%の酸素富化空気では、2173K(1900℃)の燃焼温度が得られる。
【0024】
酸素濃度を21%から32%に高めると、固体表面燃焼速度が1300K(1027℃)のとき、5g/m2 sから10g/m2 sに増加する。すなわち、酸素濃縮装置26を通って、酸素濃度32%の酸素富化空気が二次燃焼室2に供給されるので、発熱量の低い乾留ガスでも、ダイオキシンの生成を抑止する800℃以上で燃焼させることができる。具体的には、バルブ13,14,25,53の開度を加減することによって、二次燃焼室2に供給される空気および補助燃焼室3に供給される空気の酸素濃度を調節することができる。合わせた空気の酸素濃度は主にバルブ25で調節され、個別の酸素濃度は主に53で調節される。
【0025】
温度センサ28で検出される温度が2000K(1727℃)を超えると、排ガスの窒素酸化物の濃度が高くなるので、バルブ25を閉じて、酸素濃度を低下させる。また、温度が高くなると、燃焼灰や未燃分が溶融付着固化したクリンカが発生しやすいので、やはりバルブ25を閉じて酸素濃度を低下させる。
一方、空燃比(空気比)が大きくなりすぎると、燃焼温度が低下するので、空燃比センサ30で空燃比を測定し、空燃比が大きい場合は、バルブ13とバルブ14とバルブ25の開度を調節して、空燃比を適正なレベルに戻す。
このような制御が電子制御ユニット20によって自動でおこなわれる。
【0026】
燃料の物理的状態や化学的状態によって、始動からの乾留ガス(揮発分)の量や濃度は、時間の経過とともに変化する。そのため、温度センサ28と空燃比センサ30での検出に基づく閉ループ制御だけでは、これらの時間的変化に充分対応することはできない。したがって、適切なモデルを用いて時間的な変化を予測する制御手法が用いられている。物理的モデルの構築について述べる前に、その基礎となる固体状燃料の燃焼状態について詳述する。
【0027】
一次燃焼室1において補助燃焼室3の周りの燃料4が加熱され、燃料4から分解生成物(揮発分)が放出されると、燃料4は炭化された状態になる。ここで、空気の供給を止めると、燃料4は炭化された状態にとどまる。石炭の場合、10%から70%が分解燃焼で、酸素を供給し続けると、残りが表面燃焼を行う。都市ゴミの場合は、30%から50%が水分であり、可燃分中の10%程度が固形炭素である。したがって、一次燃焼室1で燃料4から水分がまず放出され、次に燃料4から分解生成物が放出され、二次燃焼室2でこれらのガスが燃焼する。残った固形炭素は、酸素があると1300K(1027℃)以上の温度で表面燃焼する。一次空気UGAの吹き上げによって、燃料4の発熱量が高い場合、補助燃焼室3のバーナ8への助燃料を遮断しても、燃料4の燃焼が維持される。表面燃焼で酸化された燃料4の残渣は灰となって火格子9から落下する。
【0028】
このとき、燃料4の状態を模式的に示すと図3のようになっている。最下部は、燃焼が完了した灰層であり、その上部に、順次、表面が炭化しながら内部の固定酸素が燃焼を続けているおき層、次に最も激しい燃焼を行っている酸化層、次に酸化層で発生した高温の燃焼ガスと燃料中の揮発分との反応によりCO,H2 ,CH4 等の還元ガスを発生する還元層、次に燃料が還元ガスの熱を受けて乾燥・乾留が行われる乾留層、最上段の燃料層が重なって、多層構造が構成されている。
【0029】
この例では、固定床燃焼と共に上込め燃焼が行われるが、固定床燃焼では、火格子9の上に燃料4の層を作り、配管10や下室16を介して下から一次燃焼室1に予熱済み一次空気UGAを通して燃焼させる。酸素濃縮装置26で酸素濃度を高めた一次空気UGAも配管27を介して下から一次燃焼室1に供給される。上込め燃焼では、燃料4の供給方法が、一次空気UGAの供給方法と逆のもので、上方の投入口5から供給された燃料塊は、酸化層からの燃焼ガスによって加熱され、乾留層で揮発分(乾留ガス)を放出する。また、燃料4が生ゴミの場合、水分が蒸発する。その後、コークス化した燃料4は、酸化層で発生した二酸化炭素を、還元層で一酸化炭素に還元する。
【0030】
揮発分と一酸化炭素は、火格子9の上方で、二次燃焼室2に供給される二次空気OFA(Over Fire Air)と混合して燃焼する。二次空気OFAは、一次燃焼室1を経ることなく配管12と補助燃焼室3を介して二次燃焼室2に供給される。また、二次空気OFAは、バルブ53を介して配管27から配管12へ酸素濃縮装置26からの酸素富化空気を送り込むことで、酸素濃度が調節される。酸化層においては、コークス化して赤熱した燃料塊の表面に充分な酸素が供給されて、表面燃焼が行われ、これによって二酸化炭素が発生する。これらの各層を通過した燃料4は、灰となって火格子9上にたまり、火格子9のすきまを通って、灰溜まりに落下する。この方式は、供給された直後の燃料層中を高温のガスが通り抜けるので、着火が確実で低発熱量の燃料の燃焼に適する。
【0031】
一次空気UGAの流量を大きくすると、燃焼量が増大するが、低発熱量燃料の場合、温度が低下し、失火が生じる。一次空気UGAの断面平均流速は、0.1〜1.0m/sである。酸素富化空気を供給すると、表面燃焼速度が高まり、失火が防止される。燃料層が薄いときは、上層部は、酸化層となり、分解しながら燃える。すなわち、始動時には、図4に示すごとく、一次燃焼室1において補助燃焼室3の周囲に乾留層が形成され、乾留ガスが二次燃焼室2で燃焼する。その後、図5に示すごとく、一次燃焼室1において補助燃焼室3の周りに酸化層が形成され、そこで表面燃焼が行われる。その酸化層の周りには還元層や乾留層が形成される。灰層の厚さは、一次空気UGAの通気性と、酸化層から火格子9への熱輻射の遮断性との兼ね合いによって決められる。
【0032】
一次空気UGAによって発生した還元性ガスは、二次空気OFAと混合させて燃焼を完結させる。ガスとの混合を良くするため、酸素富化空気の吹き込みは、分割して行われる。厚だきで、酸化層が高温燃焼となる場合は、還元層を出る可燃ガスは、空気比(空燃比)0.3程度の部分燃焼ガスに相当する場合があり、このときは、二次空気OFA量を一次空気UGA量の4倍から5倍にする必要がある。通常は、二次空気OFAは全空気供給量のおおよそ30%〜50%である。厚だきの場合は、60%〜70%になる。負荷が小さい薄だきの場合は、酸化層で燃焼が完了するので、二次空気OFAは省略できる。
【0033】
バッチ処理の場合は、時間経過によって、それぞれの層の状態が変化するので、一次燃焼室1に供給される一次空気UGAの空気量および酸素濃度と、二次燃焼室2に供給される二次空気OFAの空気量および酸素濃度が、層の状態に応じて適正に制御される。これらの制御は、電子制御ユニット20によるバルブ13,14,25,53の開度調節によって自動で遂行される。燃料4の燃焼が完了する際は、燃料層が薄くなり、一次燃焼室1における燃料4が酸化層のみになるので、二次空気OFAの供給は停止される。
【0034】
層の厚さが不均一の場合は、薄いところの一次空気UGAが増し、吹き抜けが生じる。図1の構成の装置においては、一次燃焼室1において補助燃焼室3の周りの燃料層が薄いので、ここを通って、一次空気UGAが吹き抜けて、二次空気OFAの代わりを果たしている。そのため、ここに集中して酸素濃縮装置26から酸素富化空気が供給される。窒素酸化物は、燃料中の窒素分から生じるときがある。このときは一次空気UGAを少なくする。その制御も、電子制御ユニット20のバルブ開度調節によって行われる。
【0035】
図3〜図5に示した燃料4中の各層の状態は、物理的モデル化され、これを用いて時間的パラメータ及び空間的パラメータの変化が予測される。単純には、燃料4のモデルは、次のようになる。1時間に火格子9の1m2 で燃焼する量Wは、例えば10kg/(m2 h)で与えられる。したがって、火格子9の面積をSとすると、毎時WSkgの燃料4が燃焼する。これに要する空気量(一次空気UGA+二次空気OFA)は、空気比(空燃比)をφとすると、φWSとなる。一方、燃焼量Wは、燃焼温度Tと空気比φの関数である。また、二次燃焼室2における燃焼温度Tは、図3に示した各層の状態と、燃料4や揮発分の熱量Qと、燃料4の密度ρと、燃料4の熱伝導率λの関数である。この場合、熱量Qには、燃料4の燃焼による発熱量だけでなく補助燃焼室3のバーナ8の発生熱量も影響する。これらの関係を図示すると、図6のようになる。
【0036】
酸素濃度は、燃焼温度Tと単位時間に燃焼する量WSに影響を及ばす。したがって、図6に示したような物理的なモデルを用いて、二次燃焼室2における燃焼温度Tを予測することにより、炉や燃料4の熱容量によって燃焼温度Tの変化に遅れが生じる場合でも、目標の燃焼温度を維持することができる。そのような予測に基づいて、最終的に、一次燃焼室1への一次空気UGA量と,二次燃焼室2への二次空気OFA量と,それら合計の全供給空気の酸素濃度と,助燃料量とが決定される。これらは、燃焼に影響する制御量であり、図1のバルブ13,14,25,53,19の開度調節によって制御される。
【0037】
また、これらのモデルは、ニューラルネットワークを用いて容易に、電子制御ユニット20に具現することができる。図7に例示するごとく、温度センサ28で検出した排ガス温度と、一次空気UGAと二次空気OFAとを合わせた全供給空気量である所要空気量φWSと、全供給空気の平均の酸素濃度との3個の物理量を、ニューラルネットワークに入力することによって、燃料4の発熱量を推定することができる。そのようなニューラルネットワークは、公知の学習則で具現化でき、この燃焼装置では、学習則として誤差逆伝搬法(例えば、吉富著、ニューラルネットワーク、p.27−49 、朝倉書店発行、2002年 7月10日)を用いている。また、同様な方法で、燃料4中の水分の量を推定することができる。都市ゴミなど、燃料4が低発熱量で、水分を含んでいる場合、これらのパラメータを推定して、空気量と酸素量を制御することによって、始動直後から、燃焼温度Tを適正に維持することができる。
【0038】
【第2実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第2実施例について、その具体的な構成および使用態様等を、図面を引用して説明する。図8は、燃焼装置の断面構造を模式的に示したものである。
【0039】
この第2実施例(図8参照)は、上述した第1実施例(図1参照)の変形であり、酸素濃縮装置26の酸素富化空気は、一次燃焼室1へは全く供給されず、二次燃焼室2にだけ直接供給されるようになっている。また、熱交換器23は省かれて、一次空気UGAは予熱されることなく一次燃焼室1と補助燃焼室3に送り込まれるようになっている。しかも、その際、一次燃焼室1への給気と補助燃焼室3への給気とが分離されることなく総量で制御されるようにもなっている。なお、図示したバーナ8の他、図示は割愛したが、微粒子トラップ6や,触媒コンバータ7,空燃比センサ30,温度センサ28,電子制御ユニット20等は、上述したのと同様に設けられている。
【0040】
この場合、バルブ29によって、二次燃焼室2に供給される空気量(酸素富化空気、二次空気OFA)が調節される。二次燃焼室2には、バーナ31が配置され、助燃料タンク18から助燃料ポンプ22とバルブ32を介して、バーナ31に助燃料が供給される。燃料4の発熱量が低い場合、バーナ31を着火させて、二次燃焼室2内のガスの温度を1000K(727℃)程度に高める。火格子9への空気である一次空気UGAの供給を停止すると、燃料4は、補助燃焼室3の熱によって、蒸し焼き状態になり、最終的には、固形炭素だけが残る。この状態で一次空気UGAを供給すると固形炭素は酸化燃焼するが、そのまま取り出して燃料として再利用することもできる。
【0041】
【第3実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第3実施例について、その具体的な構成および使用態様等を、図面を引用して説明する。図9は、燃焼装置の断面構造を模式的に示したものである。
【0042】
この第3実施例(図9参照)の燃焼装置は、上述した第2実施例(図8参照)の変形であり、一次燃焼室1と二次燃焼室2とが離れている。一次燃焼室1と二次燃焼室2は乾留ガス(燃焼ガス)の通路35を介在させて連通しており、酸素濃縮装置26の酸素富化空気は、連通路35の周囲に設けられたリング通路33に供給され、これを介して連通路35に送り込まれるようになっている。図示した煙突24の他、図示は割愛したが、空燃比センサ30や,温度センサ28,電子制御ユニット20等も、設けられている。これに対し、微粒子トラップ6と触媒コンバータ7は省略されている。
【0043】
この場合、一次燃焼室1から離れた二次燃焼室2で乾留ガスを燃焼させることに加えて、二次燃焼室2内に設置された除塵サイクロンの遠心力で灰を分離することにより、煙突24から飛灰が流出するのを防止している。二次燃焼室2の容積を大きくすることによって、燃焼を完結でき、触媒コンバータ7とセラミック製の微粒子トラップ6を省略することができる。また、連通路35の周囲には複数個の噴孔34が形成されており、これらの噴孔34を介して、酸素濃縮装置26からの酸素富化空気が、連通路35内へ均一に供給され、乾留ガスと均一に混合される。これによって、短時間で燃焼が完了する。
【0044】
さらに、一次燃焼室1での燃料4の塊具合の不均一による吹き抜けを防止するため、火格子9の下室は、下室36と下室37に分離されている。一次空気UGAは、下室36,37を経由して一次燃焼室1に送り込まれるが、下室36,37の通過量はそれぞれバルブ38とバルブ39によって制御されるようになっている。そこで、下室36の上方の燃料4の塊が少ない場合は、バルブ38を絞って、吹き抜けを防止し、下室37の上方の燃料4の塊が少ない場合は、バルブ39を絞って、吹き抜けを防止する。そのために、下室36の給気圧力を測定する圧力センサ40と、下室37の給気圧力を測定する圧力センサ41とを付設し、それらの出力信号に基づいて電子制御ユニット20が空気流動の抵抗差等を検知するようになっている。さらに、電子制御ユニット20は、燃料4の塊の不均一度を把握して、下室36経由の空気量と下室37経由の空気量とがそれぞれ下流(図では上方)での適正燃焼に必要な量になるようバルブ38とバルブ39を最適に制御する。
【0045】
【第4実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第4実施例について、その具体的な構成および使用態様等を、図面を引用して説明する。図10は、燃焼装置の断面構造を模式的に示したものであり、炭化炉に本発明を適用した場合の構成例を示している。
【0046】
この第4実施例(図10参照)の燃焼装置は、上述した第3実施例(図9参照)の変形であり、一次燃焼室1は炭化炉43となり、二次燃焼室2はガス処理室44となっている。炭化炉43には、火格子9が無く、下室36,37の付設も無い。ガス処理室44は、除塵サイクロンを兼用しない単純なものになっている。炭化炉43とガス処理室44とを繋ぐ連通路も、噴孔34等の無い単純なものになっており、酸素濃縮装置26からの酸素富化空気は、連通路でなく、ガス処理室44に、直接、送り込まれるようになっている。
【0047】
また、図示しない送風機11からの空気が、炭化炉43とガス処理室44とに分かれて、何れにも供給されるようになっている。炭化炉43への給気を担う配管には補助燃焼器42が付設されている。その配管のうち補助燃焼器42と炭化炉43との間には、ベンチュリ部47が形成されており、そのベンチュリ部47には、ガス処理室44の排気部から延びて来た配管46が連結されている。この配管46の途中にバルブ48が介挿されている。
【0048】
この場合、補助燃焼器42で助燃料を燃やして、炭化炉43に高温ガスを供給する。炭化炉43の中の燃料4は、酸化されず、炭化される。燃料4から発生した乾留ガスは、ガス処理室44で、送風機からの通常の空気と酸素濃縮装置26からの酸素富化空気とによって酸化される(燃焼する)。ガス処理室44内の酸素濃度が高くなると、ガス処理室44のガスの温度が高くなり、クリンカが生成されるので、そうならないよう、酸素濃縮装置26への給気用配管に介挿されたバルブ45の開度調節によって、ガス処理室44内の酸素濃度が適正に維持される。また、この装置では、排ガスの一部が、配管46を介して、ベンチュリ部47から、供給側に戻される。これによって、排ガスの熱が回収され、燃料4で消費する助燃料の量を削減することができる。
【0049】
【第5実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第5実施例について、その具体的な構成および使用態様等を、図面を引用して説明する。図11は、燃焼装置の断面構造を模式的に示したものである。
【0050】
この燃焼装置は、一次燃焼室1の一部にロータリキルン49を採用した場合の例である。ロータリキルン49は、投入された燃料4を溜め置けるよう横置きされており、軸回転して燃料4を攪拌混合するようになっている。その一端は開口して一次燃焼室下部50の上部に連通するよう横から連結されている。その連結部の上方には二次燃焼室2が形成されている。この二次燃焼室2へ直に酸素濃縮装置26からの酸素富化空気が供給されようになっている。
【0051】
また、熱交換器51が一次燃焼室下部50に付設され、この熱交換器51を利用して一次空気UGAが予熱されるようにもなっている。一次空気UGAは、一次燃焼室下部50に下から送り込まれ、一次燃焼室下部50内を上昇して、ロータリキルン49の一端開口を覗くと直ちに、二次燃焼室2に昇り入り、そこで二次空気OFAすなわち酸素濃縮装置26からの酸素富化空気と合流して、更に図示しない煙突24へと上昇するようになっている。なお、図示は割愛したが、バーナ8や、微粒子トラップ6,触媒コンバータ7,空燃比センサ30,温度センサ28,電子制御ユニット20等も、上述の例と同様に設けられている。
【0052】
この場合、ロータリキルン49は回転し、中の燃料4は、回転しながら混合される。ロータリキルン49や二次燃焼室2におけるガス燃焼部分のガスからの輻射熱によって、ロータリキルン49内の燃料4が加熱され、燃料4がガス化する。このガスは、酸素濃縮装置26の酸素富化空気である二次空気OFAによって、酸化され、無害化される。燃料4から揮発分が抜けると固形炭素が残るが、固形炭素は、ロータリキルン49から一次燃焼室下部50に落下し、そこで一次空気UGAによって酸化される。これにより、一次燃焼室下部50には、おき燃焼部分や炭化部分が溜まる。
【0053】
そこから吹き上がった一次空気UGAとロータリキルン49内の燃料4から発生した揮発分は、ロータリキルン49と一次燃焼室下部50との連通部で混合して、燃焼ガスとなり、二次燃焼室2で完全燃焼する。二次燃焼室2においては、酸素富化の二次空気OFAによって、ガス燃焼の温度が1000K(727℃)程度に維持されるので、燃料4をガス化するのに必要な輻射熱を充分に確保することができる。一次空気UGAは、熱交換器51によって熱を回収でき、助燃料を削減することができる。
【0054】
【各実施例の作用効果】
上述した固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法にあっては、燃料4の燃焼量に対して供給空気(一次空気UGA、二次空気OFA)の量が多いと燃焼温度が低下する一方、燃料4の燃焼量に対して空気量が少ないと未燃分が増大するので、適正に空気量を制御する必要があり、そのために、電子制御ユニット20によって予測制御が遂行され、それに従って各バルブの開度が調節され、空気量が適切に変えられる。また、このとき、図1に示したような熱交換器23を用いることにより、あるいは図10に示したように排ガスの一部を帰還させることにより、供給空気を予熱し、ひいては燃料4を加熱して、省エネルギー化を図ることができる。さらに、酸素富化空気の利用によって、火炎や燃焼ガスの温度が上昇するので、炉を小型化し、放熱や蓄熱損失を小さくすることができる。
【0055】
炉壁や火床上に焼却灰や未燃分が溶融固化したクリンカは局所的な高温部やゴミが薄く停溜した部分に発生しやすい。酸素富化によって、クリンカが生じやすいといわれている。これを防止するためには、局所的な高温部の生成を回避する必要がある。このためには、例えば図9に示したように、一次空気UGAや二次空気OFAを複数個に分割して供給するのが有効である。
【0056】
生ゴミ等の低発熱量の燃料を燃焼するとき、300℃程度の低温領域で、塩素化合物を含む有機物が不完全燃焼する際、灰の表面で塩化銅などを触媒として、ダイオキシンが生成される。特に、燃焼温度が低く、燃焼状態が変動しがちな小型燃焼室で、高濃度のダイオキシンが排出されることが多い。ダイオキシンは、排気とともに排出されるだけでなく、焼却灰や処分場土壌に含まれる。このようなダイオキシンの排出や残留が、本発明にあっては、酸素富化空気によって、燃焼温度が高温に維持されるので、抑止される。すなわち、安定した完全燃焼によって、ダイオキシン類やその前駆体が高温分解されるので、ダイオキシンの排出や残留が抑止される。そのためには、焼却炉内で、燃焼ガスの温度を900℃以上の高温に滞留時間2秒以上維持することと、それ以前にも燃焼ガスの高温滞留時間を充分に確保することと、燃焼ガスと未燃ガスと燃焼空気との混合攪拌を行うことが重要であり、上述した燃焼装置はそのようになっている。
【0057】
もう一つのダイオキシン発生原因であるデノボ合成の防止に対しては、燃焼ガスの急冷および低温化が有効である。デノボ合成は、300℃付近で最も発生しやすいといわれている。本発明では、排ガスが熱交換器23によって1000K(727℃)から200℃に急冷されるので、デノボ合成によるダイオキシンの生成も抑止される。
【0058】
これらのことを、上述した固体状物質の燃焼装置について、具体的に確認すると、先ず、二次燃焼室2においては、分解ガス(燃焼ガス)を900℃以上で2.5秒以上かけて完全燃焼させる。また、ガス量が少なくても燃焼ガスが完全燃焼するので、ガス量を少なくして具体的には一次空気UGAを少なくして、燃焼ガスが高温部に滞留する時間を長くすることができる。そのために、電子制御ユニット20が予測制御に基づいて各バルブの開度を調節することで、一次空気UGAと二次空気OFAと酸素の流量が変わるようになっており、それによって、炉内各部における空気の速度が適切な範囲に収まり特に二次燃焼室2における空気の速度が何時でも適切な範囲に収まるとともに、炉内各部の温度が何処も何時も適切な範囲に収まるようになっている。
【0059】
特に、第1実施例(図1参照)の燃焼装置については、一次燃焼室1で燃料4に酸素濃度の高い空気を供給することによって、二次燃焼室2ばかりか一次燃焼室1でも、燃焼温度が高く維持されるようになっている。しかも、酸素富化空気を火格子9に均一に供給すると高温によって一次燃焼室1の周囲の壁が焼損するので、火格子9のうち炉壁近くの部分には、濃縮されない通常の空気が供給されるようにもなっている。
【0060】
このような本発明の各実施例の燃焼装置にあっては、一次空気UGAが炉内に吹き込まれてから排ガスとなって炉外に出るまでの流路について、具体的には一次燃焼室1から二次燃焼室2を経て煙突24に至るまでの連通空間について、上流から下流までの何処の部位も、クリンカやダイオキシンの生成に繋がるような高温状態や低温状態にはならないように、自動制御が遂行される。こうして、流路に沿った温度分布が可変制御され、どの局所も適切な温度に維持される。
さらに、第3実施例(図9参照)の燃焼装置にあっては、流路に沿った温度分布ばかりか、流路の横断面における温度分布も、可変制御される。
【0061】
【その他】
なお、上記の各実施例では、酸素富化手段として、酸素富化膜を利用した酸素濃縮装置26を挙げたが、これに限られ訳でなく、酸素ボンベ等を利用して酸素濃度を高めても同じような効果をあげることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、燃焼装置内の局所的な高温部や低温部の生成が防止されるので、クリンカ及びダイオキシンの生成が防止でき、燃焼装置の性能を向上させることができる。そのため、従来の燃焼装置の半分の大きさで同じ量の燃料を処理することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第1実施例について、燃焼装置の構成図である。
【図2】酸素富化空気の酸素濃度と燃焼温度の関係図である。
【図3】燃料の状態の変化を示した模式図である。
【図4】燃料の状態の変化を示した模式図である。
【図5】燃料の状態の変化を示した模式図である。
【図6】制御の流れを示すブロック図である。
【図7】制御の流れを示すニューラルネットワークである。
【図8】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第2実施例について、燃焼装置の構成図である。
【図9】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第3実施例について、燃焼装置の構成図である。
【図10】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第4実施例について、燃焼装置の構成図である。
【図11】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第5実施例について、燃焼装置の構成図である。
【符号の説明】
1…一次燃焼室、2…二次燃焼室、3…補助燃焼室、4…燃料、
5…投入口、6…微粒子トラップ、7…触媒コンバータ、
8…バーナ、9…火格子、10…配管、11…送風機、12…配管、
13,14…バルブ、15…灰取り出し口、16…下室、17…配管、
18…助燃料タンク、19…バルブ、20…電子制御ユニット20、
21…始動ボタン、22…助燃料ポンプ、23…熱交換器23、
24…煙突、25…バルブ、26…酸素濃縮装置、27…配管、
28…温度センサ、29…バルブ、30…空燃比センサ、
31…バーナ、32…バルブ、33…リング通路、34…噴孔、
35…連通路、36,37…下室、38,39…バルブ、
40,41…圧力センサ、42…補助燃焼器、43…炭化炉、
44…ガス処理室、45…バルブ、46…配管、47…ベンチュリ部、
48…バルブ、49…ロータリキルン、50…一次燃焼室下部、
51…熱交換器、52…火炎、53…バルブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素富化空気を使用した固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法に関し、詳しくは燃焼状態を制御する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃焼促進に酸素富化空気を使用する手法が知られている(例えば非特許文献1参照)。また、その他の省エネルギー燃焼技術の一つとして、酸素富化によって火炎や燃焼ガスの温度を上昇させる、ということが論じられている(例えば非特許文献2参照)。さらに、酸素濃度を高めた空気を供給して灰を溶融する方式も開示されている(例えば非特許文献3参照)。
自動燃焼制御に関する最新技術の開示もなされており(例えば非特許文献4参照)、燃焼室ガス温度,一酸化炭素濃度,酸素濃度等を検知し、燃料量と燃焼に必要な空気量をコンピュータ制御するようになっている。それには、従来からのアナログ的な制御とシーケンス的な制御に加えて、ファジィ制御システムや,エキスパートシステム,多変量制御システム,燃焼解析としての画像処理技術など、最新技術が導入されている。
【0003】
【非特許文献1】
「燃焼工学ハンドブック」日本機械学会、1995年 7月25日、p.80
【非特許文献2】
水谷幸夫著「燃焼工学入門」森北出版株式会社、2003年 1月15日、p.58
【非特許文献3】
タクマ環境技術研究会編「ごみ焼却技術」オーム社、1998年 7月10日、p.16
【非特許文献4】
タクマ環境技術研究会編「ごみ焼却技術」オーム社、1998年 7月10日、p.222−223
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、酸素富化による局所的高温によるクリンカ(燃焼壁や火床上に焼却灰や未燃分が溶融付着固化したもの)の生成について配慮されておらず、温度分布の均一化も配慮されていない。
クリンカの生成にはそれによって燃焼性能が低下するという問題がある。また、温度分布の不均一には局所的低温によってダイオキシンが発生するという問題がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、酸素富化空気を使用した固体状物質の燃焼装置におけるクリンカとダイオキシンの生成を防止することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために創案された本発明の固体状物質の燃焼装置は、局所的な高温部および低温部が生じないように、炉部の燃焼室内における空気の速度および温度の分布を燃料の状態に応じて変えられるようにしたものである。また、本発明の固体状物質の燃焼方法は、炉部の燃焼室内における空気の速度および温度の分布に関する時間的な変化を予測して、炉への供給空気量を制御するようにしたものである。
燃焼装置の炉部の燃焼室における燃料の状態に応じて炉への供給空気量を制御することにより、燃焼室内における空気の速度および温度の分布が適正範囲に納められて、局所的な高温部や低温部の生成が防止される。また、状態の変化を予測して供給空気量を制御することによって、燃焼室の熱容量に伴う温度変化の行き過ぎを回避することが可能となり、その結果、瞬間的な高温や低温の生成を回避することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
このような解決手段で達成された本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法について、これを実施するための形態を幾つか説明する。
【0007】
[第1の実施の形態]
本発明の第1実施形態の固体状物質の燃焼装置は、燃料が投入されるとともに一次空気が供給される一次燃焼室と、これに連通していてそこから出たガスが流れ込むとともに二次空気が供給される二次燃焼室と、少なくとも前記二次空気の酸素濃度を高めうる酸素富化手段と、前記一次空気の量と前記二次空気の量とそれらに含まれる酸素の量とを独立に調節しうるバルブ等の調節手段と、前記二次燃焼室から排出される排ガスの温度と空燃比を検出する検出手段と、その検出に基づいて前記調節手段の可変制御を行うことにより前記二次燃焼室における燃焼ガスの速度と燃焼温度とを所定の目標値にする制御装置とを備えている。
これにより、炉部の燃焼室内における空気の速度および温度の分布が燃料の状態に応じて適切に変えられる。
【0008】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施形態は、上述した第1実施形態の固体状物質の燃焼装置であって、前記制御装置が、前記検出手段にて検出された前記排ガスの温度と、前記調節手段にて調節された前記一次空気および前記二次空気を合わせた空気量と、前記調節手段にて調節された前記酸素の量とに基づいて、随時、前記燃料の発熱量を推定演算するとともに前記一次燃焼室および前記二次燃焼室の中の熱量も前記二次燃焼室の燃焼温度も推定演算し、これらの演算値に基づいて前記二次燃焼室における燃焼ガスの速度変化と温度変化とを予測しながら前記二次燃焼室における燃焼ガスの速度と燃焼温度を変える制御を行うようになっている、というものである。
これにより、燃料の状態に応じて炉内の空気の速度および温度の分布を変えるに際して、それらの時間的な変化が予測されるので、燃焼室の熱容量に伴う温度変化の行き過ぎが未然に回避され、その結果、瞬間的な高温や低温の生成を的確に抑止することができる。
【0009】
【第1実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第1実施例について、先ず装置の具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、燃焼装置の構成図であり、炉部と給気配管を断面で模式的に図示し、計器類やバルブ等はブロックや記号などで図示している。なお、図示に際して、酸素富化していない空気の流路には、薄い散点模様を付し、酸素富化した空気の流路には、濃い散点模様を付している。
【0010】
この燃焼装置の炉部は、一次燃焼室1と二次燃焼室2と補助燃焼室3とから構成されている。供給空気の流路に関して給気側・上流側に一次燃焼室1が配置され排気側・下流側に二次燃焼室2が配置されている。一次燃焼室1には、燃料4(焼却物、固体状物質)を投入するための投入口5が設けられている。補助燃焼室3は、一次燃焼室1の芯部に配置されていて、一次燃焼室1と平行な状態で二次燃焼室2より上流に位置している。一次燃焼室1と補助燃焼室3の給気口(図では下方)は同心配置されているが分離されており、一次燃焼室1と補助燃焼室3の排気口(図では中央)は同心配置されていてほぼ同位置で共に二次燃焼室2の給気口と連通している。
【0011】
二次燃焼室2の下流には(図では上方)、セラミック製の微粒子トラップ6と触媒コンバータ7と煙突24とがその順に取り付けられている。触媒コンバータ7は、一酸化炭素,未燃炭化水素,窒素酸化物を同時に浄化する3元触媒、あるいは酸化触媒、あるいは微粒子トラップ機能を有する窒素酸化物還元触媒(例えば、「伊藤和浩ほか、ディーゼル車用新触媒システムの紹介、エンジンテクノロジー、Vol.2 、No.6、p.46−56 、1999」を参照)のうち何れか一つ又は複数を組み合わせて構成されている。
【0012】
補助燃焼室3には、灯油バーナ8が設けられている。バーナ8は、助燃料(灯油)供給のため、配管17を介して、助燃料タンク18に接続されている。配管17の途中には、助燃料の供給量を可変制御しうるよう、バルブ19と助燃料ポンプ22とが、介挿して配置されている。バーナ8は、また、給気のため、配管12を介して、送風機11にも接続されている。配管12の途中には、通気量制御のため開度調節可能なバルブ14が、介挿して配置されている。
【0013】
一次燃焼室1の下部には、火格子9が配置されている。火格子9の下室16には、灰取り出し口15が取り付けられ、下室16は、給気のため、配管10を介して、送風機11に接続されている。配管10の途中には、通気量制御のため開度調節可能なバルブ13と、予熱のための熱交換器23とが、介挿して配置されている。また、一次燃焼室1のうち補助燃焼室3周囲の環状部分は、もう一つの給気のため、送風機11に接続されている。配管27の途中には、通気量制御のため開度調節可能なバルブ25と、酸素富化のための酸素濃縮装置26(酸素富化手段)とが介挿して配置され、下室16経由の大気供給とは独立に一次燃焼室1へ酸素富化空気を供給できるようになっている。その酸素富化空気を補助燃焼室3にも供給できるよう、配管12と配管27は、バルブ53を介して接続されている。
【0014】
酸素濃縮装置26は、シリコン膜やポリイミド膜等の高分子膜を分離膜として構成されている。分離膜の両面に圧力差をつけると、大気側(相対的高圧側)の酸素が膜表面に溶解し、さらに膜内を拡散移動して、減圧側(相対的低圧側)で、膜表面から酸素が離脱する、という原理を利用したものである。標準的な装置の場合、吸引圧力27kPa(大気圧基準で−550mmHg)で、酸素濃度32%のガスを得ることができる。20kgの重さのユニットで、3.6Nm3 /hの流量が得られる。
【0015】
バルブ13,14,19,25,53と助燃料ポンプ22と送風機11は、始動ボタン21等の操作部材の付いた電子制御ユニット20とケーブル等で接続され(図の長破線を参照)、遠隔制御されるようになっている。二次燃焼室2の出口に温度センサ28が取り付けられ、これも電子制御ユニット20に信号ケーブル等で接続されている。煙突24には、自動車エンジン等に取り付けられるのと同じ空燃比センサ30が取り付けられている。空燃比センサ30も、電子制御ユニット20に接続されている。電子制御ユニット20には、マイクロプロセッサーが内蔵されており、制御のためのプログラムで、各種制御が実行されるようになっている。電子制御ユニット20には後で述べるモデルベース制御のアルゴリズムが組み込まれている。
【0016】
このような燃焼装置の使用態様および動作等を説明するに先だって、固体状物質の燃焼メカニズムについて、概要を確認しておく。
バッチ処理の場合、火種がないと、燃料は着火できない。火種の熱によって燃料層が加熱されるが、そのときの加熱は、もっぱら酸化層の火種からの熱伝導と輻射によって行われる。このような火種や補助燃焼によって、燃料層が加熱される。これによって、燃料が乾留されて、水分や揮発分(乾留ガス)が放出される。温度が高いときは、放出された乾留ガスは直ぐに燃焼する。温度が低いときは、乾留ガスは、二次燃焼室2で燃焼する。
【0017】
揮発分の酸素消費率が低下すると、乾留された燃料(残炭)の表面燃焼が盛んになり、最終的に燃料は灰になる。図3に示すごとく、酸化層の熱によって、燃料層が乾留層に変わり、乾留層が酸化層に変わる。このようにして、火炎伝播によって燃焼が維持される。着火面の伝播速度は、0.2m/h前後である。空気の量が不足すると、酸化層の外側に還元層が形成される。ここで、燃料としてゴミとコークスを用い、酸素濃度を上げた空気を供給すると、灰を溶融することができるが、本発明ではコークスを使用しないので、灰が溶融するまでには至らない。
【0018】
次に、上述の燃焼装置を使用した固体状物質の燃焼方法とその際の装置動作等を、図面を引用して説明する。図2は、酸素富化空気の酸素濃度と燃焼温度の関係図であり、図3と図4と図5は、燃料の状態の変化を示した模式図であり、図6は、制御の流れを示すブロック図であり、図7は、制御の流れを示すニューラルネットワークである。
【0019】
固体状の燃料4を投入口5から一次燃焼室1へ投入し、一次燃焼室1に燃料4が溜まって燃料層が出来たら、燃焼開始のため投入口5を閉めて始動ボタン21を押す。そうすると、電子制御ユニット20で自動制御のプログラムが実行され、その制御に従って、バルブ19とバルブ14が開き、助燃料ポンプ22と送風機11が作動して、助燃料と空気がバーナ8に供給される。この助燃料は通常の着火源で着火され、補助燃焼室3内に火炎52が形成される。これによって、補助燃焼室3のガスの温度は1500K(1227℃)から2300K(2027℃)に高められる。この高温ガスからの輻射と熱伝導によって、一次燃焼室1内で補助燃焼室3の周囲の燃料4が加熱される。燃料4の塊は、これによって、乾燥・乾留される。
【0020】
燃料は、乾燥した後、熱分解を起こして、分解生成物すなわち揮発分を放出する。この揮発分は、二次燃焼室2で、火格子9の下部からの一次空気UGA(Under Grate Air)によって、完全に燃焼させられる。一次空気UGAは、熱交換器23にて排ガスの熱を回収して、温度が150℃〜250℃程度に高められている。触媒コンバータ7は、補助燃焼室3の高温ガスによって、予熱されているので、未燃成分を始動時から完全に浄化することができる。また、排ガス中のダストは、微粒子トラップ6で捕捉される。
【0021】
ここで、煤塵中の金属が触媒となって250℃から400℃の温度域で有機物からダイオキシン類が合成されるというデノボ合成によってダイオキシン等の有害成分が生成されるのを防止するには、燃焼したガスの高温にとどまる時間を短縮する必要があるが、これは、熱交換器23によって達成される。すなわち、送風機11から熱交換器23に送られる空気によって、二次燃焼室2から出る排ガスの熱を奪って、おおむね200℃以下に低下させている。これにより、デノボ合成が阻止される。
【0022】
また、ダイオキシンの発生の防止には、二次燃焼室2において、燃焼ガスを800℃以上の温度に2.5秒以上維持する、という条件を満たす必要もある。このためには、二次燃焼室2の長さが1mの場合、ガスの流速を、0.4m/s以下に抑える必要がある。二次燃焼室2の径が20cmの場合、断面積は0.03m2 であるので、流速が0.4m/sのときの流量は、0.0126m3 /s、45m3 /hとなる。これは800℃のときの条件であるので、20℃のときは、密度の比293/1073を考慮すると、12m3 /hとなる。ユニットの重さが約50kgの酸素濃縮装置26を使用すると、この流量を賄うことができる。酸素が21%から32%に濃縮されているので、1.5倍の燃料を処理することができる。
【0023】
一般に炭化水素の燃料の断熱火炎温度は、当量比が1の場合、2300K(2027℃)程度である。当量比が3になると、1300K(1027℃)程度になる。また、当量比が0.5と小さくなると、1500K(1227℃)程度になる。ガス燃料の燃焼速度は、酸素富化空気を用いることで大きくなる。酸素濃度が21%のとき30cm/sであるのに対し、酸素濃度が32%のときは、75cm/sと、2.5倍になる。酸素富化によって、燃焼温度も上昇する。図2に示すごとく、40%を外部に放熱する場合、酸素過剰率1.2において、空気燃焼では、1773K(1500℃)の燃焼温度しか得られないが、40%の酸素富化空気では、2173K(1900℃)の燃焼温度が得られる。
【0024】
酸素濃度を21%から32%に高めると、固体表面燃焼速度が1300K(1027℃)のとき、5g/m2 sから10g/m2 sに増加する。すなわち、酸素濃縮装置26を通って、酸素濃度32%の酸素富化空気が二次燃焼室2に供給されるので、発熱量の低い乾留ガスでも、ダイオキシンの生成を抑止する800℃以上で燃焼させることができる。具体的には、バルブ13,14,25,53の開度を加減することによって、二次燃焼室2に供給される空気および補助燃焼室3に供給される空気の酸素濃度を調節することができる。合わせた空気の酸素濃度は主にバルブ25で調節され、個別の酸素濃度は主に53で調節される。
【0025】
温度センサ28で検出される温度が2000K(1727℃)を超えると、排ガスの窒素酸化物の濃度が高くなるので、バルブ25を閉じて、酸素濃度を低下させる。また、温度が高くなると、燃焼灰や未燃分が溶融付着固化したクリンカが発生しやすいので、やはりバルブ25を閉じて酸素濃度を低下させる。
一方、空燃比(空気比)が大きくなりすぎると、燃焼温度が低下するので、空燃比センサ30で空燃比を測定し、空燃比が大きい場合は、バルブ13とバルブ14とバルブ25の開度を調節して、空燃比を適正なレベルに戻す。
このような制御が電子制御ユニット20によって自動でおこなわれる。
【0026】
燃料の物理的状態や化学的状態によって、始動からの乾留ガス(揮発分)の量や濃度は、時間の経過とともに変化する。そのため、温度センサ28と空燃比センサ30での検出に基づく閉ループ制御だけでは、これらの時間的変化に充分対応することはできない。したがって、適切なモデルを用いて時間的な変化を予測する制御手法が用いられている。物理的モデルの構築について述べる前に、その基礎となる固体状燃料の燃焼状態について詳述する。
【0027】
一次燃焼室1において補助燃焼室3の周りの燃料4が加熱され、燃料4から分解生成物(揮発分)が放出されると、燃料4は炭化された状態になる。ここで、空気の供給を止めると、燃料4は炭化された状態にとどまる。石炭の場合、10%から70%が分解燃焼で、酸素を供給し続けると、残りが表面燃焼を行う。都市ゴミの場合は、30%から50%が水分であり、可燃分中の10%程度が固形炭素である。したがって、一次燃焼室1で燃料4から水分がまず放出され、次に燃料4から分解生成物が放出され、二次燃焼室2でこれらのガスが燃焼する。残った固形炭素は、酸素があると1300K(1027℃)以上の温度で表面燃焼する。一次空気UGAの吹き上げによって、燃料4の発熱量が高い場合、補助燃焼室3のバーナ8への助燃料を遮断しても、燃料4の燃焼が維持される。表面燃焼で酸化された燃料4の残渣は灰となって火格子9から落下する。
【0028】
このとき、燃料4の状態を模式的に示すと図3のようになっている。最下部は、燃焼が完了した灰層であり、その上部に、順次、表面が炭化しながら内部の固定酸素が燃焼を続けているおき層、次に最も激しい燃焼を行っている酸化層、次に酸化層で発生した高温の燃焼ガスと燃料中の揮発分との反応によりCO,H2 ,CH4 等の還元ガスを発生する還元層、次に燃料が還元ガスの熱を受けて乾燥・乾留が行われる乾留層、最上段の燃料層が重なって、多層構造が構成されている。
【0029】
この例では、固定床燃焼と共に上込め燃焼が行われるが、固定床燃焼では、火格子9の上に燃料4の層を作り、配管10や下室16を介して下から一次燃焼室1に予熱済み一次空気UGAを通して燃焼させる。酸素濃縮装置26で酸素濃度を高めた一次空気UGAも配管27を介して下から一次燃焼室1に供給される。上込め燃焼では、燃料4の供給方法が、一次空気UGAの供給方法と逆のもので、上方の投入口5から供給された燃料塊は、酸化層からの燃焼ガスによって加熱され、乾留層で揮発分(乾留ガス)を放出する。また、燃料4が生ゴミの場合、水分が蒸発する。その後、コークス化した燃料4は、酸化層で発生した二酸化炭素を、還元層で一酸化炭素に還元する。
【0030】
揮発分と一酸化炭素は、火格子9の上方で、二次燃焼室2に供給される二次空気OFA(Over Fire Air)と混合して燃焼する。二次空気OFAは、一次燃焼室1を経ることなく配管12と補助燃焼室3を介して二次燃焼室2に供給される。また、二次空気OFAは、バルブ53を介して配管27から配管12へ酸素濃縮装置26からの酸素富化空気を送り込むことで、酸素濃度が調節される。酸化層においては、コークス化して赤熱した燃料塊の表面に充分な酸素が供給されて、表面燃焼が行われ、これによって二酸化炭素が発生する。これらの各層を通過した燃料4は、灰となって火格子9上にたまり、火格子9のすきまを通って、灰溜まりに落下する。この方式は、供給された直後の燃料層中を高温のガスが通り抜けるので、着火が確実で低発熱量の燃料の燃焼に適する。
【0031】
一次空気UGAの流量を大きくすると、燃焼量が増大するが、低発熱量燃料の場合、温度が低下し、失火が生じる。一次空気UGAの断面平均流速は、0.1〜1.0m/sである。酸素富化空気を供給すると、表面燃焼速度が高まり、失火が防止される。燃料層が薄いときは、上層部は、酸化層となり、分解しながら燃える。すなわち、始動時には、図4に示すごとく、一次燃焼室1において補助燃焼室3の周囲に乾留層が形成され、乾留ガスが二次燃焼室2で燃焼する。その後、図5に示すごとく、一次燃焼室1において補助燃焼室3の周りに酸化層が形成され、そこで表面燃焼が行われる。その酸化層の周りには還元層や乾留層が形成される。灰層の厚さは、一次空気UGAの通気性と、酸化層から火格子9への熱輻射の遮断性との兼ね合いによって決められる。
【0032】
一次空気UGAによって発生した還元性ガスは、二次空気OFAと混合させて燃焼を完結させる。ガスとの混合を良くするため、酸素富化空気の吹き込みは、分割して行われる。厚だきで、酸化層が高温燃焼となる場合は、還元層を出る可燃ガスは、空気比(空燃比)0.3程度の部分燃焼ガスに相当する場合があり、このときは、二次空気OFA量を一次空気UGA量の4倍から5倍にする必要がある。通常は、二次空気OFAは全空気供給量のおおよそ30%〜50%である。厚だきの場合は、60%〜70%になる。負荷が小さい薄だきの場合は、酸化層で燃焼が完了するので、二次空気OFAは省略できる。
【0033】
バッチ処理の場合は、時間経過によって、それぞれの層の状態が変化するので、一次燃焼室1に供給される一次空気UGAの空気量および酸素濃度と、二次燃焼室2に供給される二次空気OFAの空気量および酸素濃度が、層の状態に応じて適正に制御される。これらの制御は、電子制御ユニット20によるバルブ13,14,25,53の開度調節によって自動で遂行される。燃料4の燃焼が完了する際は、燃料層が薄くなり、一次燃焼室1における燃料4が酸化層のみになるので、二次空気OFAの供給は停止される。
【0034】
層の厚さが不均一の場合は、薄いところの一次空気UGAが増し、吹き抜けが生じる。図1の構成の装置においては、一次燃焼室1において補助燃焼室3の周りの燃料層が薄いので、ここを通って、一次空気UGAが吹き抜けて、二次空気OFAの代わりを果たしている。そのため、ここに集中して酸素濃縮装置26から酸素富化空気が供給される。窒素酸化物は、燃料中の窒素分から生じるときがある。このときは一次空気UGAを少なくする。その制御も、電子制御ユニット20のバルブ開度調節によって行われる。
【0035】
図3〜図5に示した燃料4中の各層の状態は、物理的モデル化され、これを用いて時間的パラメータ及び空間的パラメータの変化が予測される。単純には、燃料4のモデルは、次のようになる。1時間に火格子9の1m2 で燃焼する量Wは、例えば10kg/(m2 h)で与えられる。したがって、火格子9の面積をSとすると、毎時WSkgの燃料4が燃焼する。これに要する空気量(一次空気UGA+二次空気OFA)は、空気比(空燃比)をφとすると、φWSとなる。一方、燃焼量Wは、燃焼温度Tと空気比φの関数である。また、二次燃焼室2における燃焼温度Tは、図3に示した各層の状態と、燃料4や揮発分の熱量Qと、燃料4の密度ρと、燃料4の熱伝導率λの関数である。この場合、熱量Qには、燃料4の燃焼による発熱量だけでなく補助燃焼室3のバーナ8の発生熱量も影響する。これらの関係を図示すると、図6のようになる。
【0036】
酸素濃度は、燃焼温度Tと単位時間に燃焼する量WSに影響を及ばす。したがって、図6に示したような物理的なモデルを用いて、二次燃焼室2における燃焼温度Tを予測することにより、炉や燃料4の熱容量によって燃焼温度Tの変化に遅れが生じる場合でも、目標の燃焼温度を維持することができる。そのような予測に基づいて、最終的に、一次燃焼室1への一次空気UGA量と,二次燃焼室2への二次空気OFA量と,それら合計の全供給空気の酸素濃度と,助燃料量とが決定される。これらは、燃焼に影響する制御量であり、図1のバルブ13,14,25,53,19の開度調節によって制御される。
【0037】
また、これらのモデルは、ニューラルネットワークを用いて容易に、電子制御ユニット20に具現することができる。図7に例示するごとく、温度センサ28で検出した排ガス温度と、一次空気UGAと二次空気OFAとを合わせた全供給空気量である所要空気量φWSと、全供給空気の平均の酸素濃度との3個の物理量を、ニューラルネットワークに入力することによって、燃料4の発熱量を推定することができる。そのようなニューラルネットワークは、公知の学習則で具現化でき、この燃焼装置では、学習則として誤差逆伝搬法(例えば、吉富著、ニューラルネットワーク、p.27−49 、朝倉書店発行、2002年 7月10日)を用いている。また、同様な方法で、燃料4中の水分の量を推定することができる。都市ゴミなど、燃料4が低発熱量で、水分を含んでいる場合、これらのパラメータを推定して、空気量と酸素量を制御することによって、始動直後から、燃焼温度Tを適正に維持することができる。
【0038】
【第2実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第2実施例について、その具体的な構成および使用態様等を、図面を引用して説明する。図8は、燃焼装置の断面構造を模式的に示したものである。
【0039】
この第2実施例(図8参照)は、上述した第1実施例(図1参照)の変形であり、酸素濃縮装置26の酸素富化空気は、一次燃焼室1へは全く供給されず、二次燃焼室2にだけ直接供給されるようになっている。また、熱交換器23は省かれて、一次空気UGAは予熱されることなく一次燃焼室1と補助燃焼室3に送り込まれるようになっている。しかも、その際、一次燃焼室1への給気と補助燃焼室3への給気とが分離されることなく総量で制御されるようにもなっている。なお、図示したバーナ8の他、図示は割愛したが、微粒子トラップ6や,触媒コンバータ7,空燃比センサ30,温度センサ28,電子制御ユニット20等は、上述したのと同様に設けられている。
【0040】
この場合、バルブ29によって、二次燃焼室2に供給される空気量(酸素富化空気、二次空気OFA)が調節される。二次燃焼室2には、バーナ31が配置され、助燃料タンク18から助燃料ポンプ22とバルブ32を介して、バーナ31に助燃料が供給される。燃料4の発熱量が低い場合、バーナ31を着火させて、二次燃焼室2内のガスの温度を1000K(727℃)程度に高める。火格子9への空気である一次空気UGAの供給を停止すると、燃料4は、補助燃焼室3の熱によって、蒸し焼き状態になり、最終的には、固形炭素だけが残る。この状態で一次空気UGAを供給すると固形炭素は酸化燃焼するが、そのまま取り出して燃料として再利用することもできる。
【0041】
【第3実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第3実施例について、その具体的な構成および使用態様等を、図面を引用して説明する。図9は、燃焼装置の断面構造を模式的に示したものである。
【0042】
この第3実施例(図9参照)の燃焼装置は、上述した第2実施例(図8参照)の変形であり、一次燃焼室1と二次燃焼室2とが離れている。一次燃焼室1と二次燃焼室2は乾留ガス(燃焼ガス)の通路35を介在させて連通しており、酸素濃縮装置26の酸素富化空気は、連通路35の周囲に設けられたリング通路33に供給され、これを介して連通路35に送り込まれるようになっている。図示した煙突24の他、図示は割愛したが、空燃比センサ30や,温度センサ28,電子制御ユニット20等も、設けられている。これに対し、微粒子トラップ6と触媒コンバータ7は省略されている。
【0043】
この場合、一次燃焼室1から離れた二次燃焼室2で乾留ガスを燃焼させることに加えて、二次燃焼室2内に設置された除塵サイクロンの遠心力で灰を分離することにより、煙突24から飛灰が流出するのを防止している。二次燃焼室2の容積を大きくすることによって、燃焼を完結でき、触媒コンバータ7とセラミック製の微粒子トラップ6を省略することができる。また、連通路35の周囲には複数個の噴孔34が形成されており、これらの噴孔34を介して、酸素濃縮装置26からの酸素富化空気が、連通路35内へ均一に供給され、乾留ガスと均一に混合される。これによって、短時間で燃焼が完了する。
【0044】
さらに、一次燃焼室1での燃料4の塊具合の不均一による吹き抜けを防止するため、火格子9の下室は、下室36と下室37に分離されている。一次空気UGAは、下室36,37を経由して一次燃焼室1に送り込まれるが、下室36,37の通過量はそれぞれバルブ38とバルブ39によって制御されるようになっている。そこで、下室36の上方の燃料4の塊が少ない場合は、バルブ38を絞って、吹き抜けを防止し、下室37の上方の燃料4の塊が少ない場合は、バルブ39を絞って、吹き抜けを防止する。そのために、下室36の給気圧力を測定する圧力センサ40と、下室37の給気圧力を測定する圧力センサ41とを付設し、それらの出力信号に基づいて電子制御ユニット20が空気流動の抵抗差等を検知するようになっている。さらに、電子制御ユニット20は、燃料4の塊の不均一度を把握して、下室36経由の空気量と下室37経由の空気量とがそれぞれ下流(図では上方)での適正燃焼に必要な量になるようバルブ38とバルブ39を最適に制御する。
【0045】
【第4実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第4実施例について、その具体的な構成および使用態様等を、図面を引用して説明する。図10は、燃焼装置の断面構造を模式的に示したものであり、炭化炉に本発明を適用した場合の構成例を示している。
【0046】
この第4実施例(図10参照)の燃焼装置は、上述した第3実施例(図9参照)の変形であり、一次燃焼室1は炭化炉43となり、二次燃焼室2はガス処理室44となっている。炭化炉43には、火格子9が無く、下室36,37の付設も無い。ガス処理室44は、除塵サイクロンを兼用しない単純なものになっている。炭化炉43とガス処理室44とを繋ぐ連通路も、噴孔34等の無い単純なものになっており、酸素濃縮装置26からの酸素富化空気は、連通路でなく、ガス処理室44に、直接、送り込まれるようになっている。
【0047】
また、図示しない送風機11からの空気が、炭化炉43とガス処理室44とに分かれて、何れにも供給されるようになっている。炭化炉43への給気を担う配管には補助燃焼器42が付設されている。その配管のうち補助燃焼器42と炭化炉43との間には、ベンチュリ部47が形成されており、そのベンチュリ部47には、ガス処理室44の排気部から延びて来た配管46が連結されている。この配管46の途中にバルブ48が介挿されている。
【0048】
この場合、補助燃焼器42で助燃料を燃やして、炭化炉43に高温ガスを供給する。炭化炉43の中の燃料4は、酸化されず、炭化される。燃料4から発生した乾留ガスは、ガス処理室44で、送風機からの通常の空気と酸素濃縮装置26からの酸素富化空気とによって酸化される(燃焼する)。ガス処理室44内の酸素濃度が高くなると、ガス処理室44のガスの温度が高くなり、クリンカが生成されるので、そうならないよう、酸素濃縮装置26への給気用配管に介挿されたバルブ45の開度調節によって、ガス処理室44内の酸素濃度が適正に維持される。また、この装置では、排ガスの一部が、配管46を介して、ベンチュリ部47から、供給側に戻される。これによって、排ガスの熱が回収され、燃料4で消費する助燃料の量を削減することができる。
【0049】
【第5実施例】
本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第5実施例について、その具体的な構成および使用態様等を、図面を引用して説明する。図11は、燃焼装置の断面構造を模式的に示したものである。
【0050】
この燃焼装置は、一次燃焼室1の一部にロータリキルン49を採用した場合の例である。ロータリキルン49は、投入された燃料4を溜め置けるよう横置きされており、軸回転して燃料4を攪拌混合するようになっている。その一端は開口して一次燃焼室下部50の上部に連通するよう横から連結されている。その連結部の上方には二次燃焼室2が形成されている。この二次燃焼室2へ直に酸素濃縮装置26からの酸素富化空気が供給されようになっている。
【0051】
また、熱交換器51が一次燃焼室下部50に付設され、この熱交換器51を利用して一次空気UGAが予熱されるようにもなっている。一次空気UGAは、一次燃焼室下部50に下から送り込まれ、一次燃焼室下部50内を上昇して、ロータリキルン49の一端開口を覗くと直ちに、二次燃焼室2に昇り入り、そこで二次空気OFAすなわち酸素濃縮装置26からの酸素富化空気と合流して、更に図示しない煙突24へと上昇するようになっている。なお、図示は割愛したが、バーナ8や、微粒子トラップ6,触媒コンバータ7,空燃比センサ30,温度センサ28,電子制御ユニット20等も、上述の例と同様に設けられている。
【0052】
この場合、ロータリキルン49は回転し、中の燃料4は、回転しながら混合される。ロータリキルン49や二次燃焼室2におけるガス燃焼部分のガスからの輻射熱によって、ロータリキルン49内の燃料4が加熱され、燃料4がガス化する。このガスは、酸素濃縮装置26の酸素富化空気である二次空気OFAによって、酸化され、無害化される。燃料4から揮発分が抜けると固形炭素が残るが、固形炭素は、ロータリキルン49から一次燃焼室下部50に落下し、そこで一次空気UGAによって酸化される。これにより、一次燃焼室下部50には、おき燃焼部分や炭化部分が溜まる。
【0053】
そこから吹き上がった一次空気UGAとロータリキルン49内の燃料4から発生した揮発分は、ロータリキルン49と一次燃焼室下部50との連通部で混合して、燃焼ガスとなり、二次燃焼室2で完全燃焼する。二次燃焼室2においては、酸素富化の二次空気OFAによって、ガス燃焼の温度が1000K(727℃)程度に維持されるので、燃料4をガス化するのに必要な輻射熱を充分に確保することができる。一次空気UGAは、熱交換器51によって熱を回収でき、助燃料を削減することができる。
【0054】
【各実施例の作用効果】
上述した固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法にあっては、燃料4の燃焼量に対して供給空気(一次空気UGA、二次空気OFA)の量が多いと燃焼温度が低下する一方、燃料4の燃焼量に対して空気量が少ないと未燃分が増大するので、適正に空気量を制御する必要があり、そのために、電子制御ユニット20によって予測制御が遂行され、それに従って各バルブの開度が調節され、空気量が適切に変えられる。また、このとき、図1に示したような熱交換器23を用いることにより、あるいは図10に示したように排ガスの一部を帰還させることにより、供給空気を予熱し、ひいては燃料4を加熱して、省エネルギー化を図ることができる。さらに、酸素富化空気の利用によって、火炎や燃焼ガスの温度が上昇するので、炉を小型化し、放熱や蓄熱損失を小さくすることができる。
【0055】
炉壁や火床上に焼却灰や未燃分が溶融固化したクリンカは局所的な高温部やゴミが薄く停溜した部分に発生しやすい。酸素富化によって、クリンカが生じやすいといわれている。これを防止するためには、局所的な高温部の生成を回避する必要がある。このためには、例えば図9に示したように、一次空気UGAや二次空気OFAを複数個に分割して供給するのが有効である。
【0056】
生ゴミ等の低発熱量の燃料を燃焼するとき、300℃程度の低温領域で、塩素化合物を含む有機物が不完全燃焼する際、灰の表面で塩化銅などを触媒として、ダイオキシンが生成される。特に、燃焼温度が低く、燃焼状態が変動しがちな小型燃焼室で、高濃度のダイオキシンが排出されることが多い。ダイオキシンは、排気とともに排出されるだけでなく、焼却灰や処分場土壌に含まれる。このようなダイオキシンの排出や残留が、本発明にあっては、酸素富化空気によって、燃焼温度が高温に維持されるので、抑止される。すなわち、安定した完全燃焼によって、ダイオキシン類やその前駆体が高温分解されるので、ダイオキシンの排出や残留が抑止される。そのためには、焼却炉内で、燃焼ガスの温度を900℃以上の高温に滞留時間2秒以上維持することと、それ以前にも燃焼ガスの高温滞留時間を充分に確保することと、燃焼ガスと未燃ガスと燃焼空気との混合攪拌を行うことが重要であり、上述した燃焼装置はそのようになっている。
【0057】
もう一つのダイオキシン発生原因であるデノボ合成の防止に対しては、燃焼ガスの急冷および低温化が有効である。デノボ合成は、300℃付近で最も発生しやすいといわれている。本発明では、排ガスが熱交換器23によって1000K(727℃)から200℃に急冷されるので、デノボ合成によるダイオキシンの生成も抑止される。
【0058】
これらのことを、上述した固体状物質の燃焼装置について、具体的に確認すると、先ず、二次燃焼室2においては、分解ガス(燃焼ガス)を900℃以上で2.5秒以上かけて完全燃焼させる。また、ガス量が少なくても燃焼ガスが完全燃焼するので、ガス量を少なくして具体的には一次空気UGAを少なくして、燃焼ガスが高温部に滞留する時間を長くすることができる。そのために、電子制御ユニット20が予測制御に基づいて各バルブの開度を調節することで、一次空気UGAと二次空気OFAと酸素の流量が変わるようになっており、それによって、炉内各部における空気の速度が適切な範囲に収まり特に二次燃焼室2における空気の速度が何時でも適切な範囲に収まるとともに、炉内各部の温度が何処も何時も適切な範囲に収まるようになっている。
【0059】
特に、第1実施例(図1参照)の燃焼装置については、一次燃焼室1で燃料4に酸素濃度の高い空気を供給することによって、二次燃焼室2ばかりか一次燃焼室1でも、燃焼温度が高く維持されるようになっている。しかも、酸素富化空気を火格子9に均一に供給すると高温によって一次燃焼室1の周囲の壁が焼損するので、火格子9のうち炉壁近くの部分には、濃縮されない通常の空気が供給されるようにもなっている。
【0060】
このような本発明の各実施例の燃焼装置にあっては、一次空気UGAが炉内に吹き込まれてから排ガスとなって炉外に出るまでの流路について、具体的には一次燃焼室1から二次燃焼室2を経て煙突24に至るまでの連通空間について、上流から下流までの何処の部位も、クリンカやダイオキシンの生成に繋がるような高温状態や低温状態にはならないように、自動制御が遂行される。こうして、流路に沿った温度分布が可変制御され、どの局所も適切な温度に維持される。
さらに、第3実施例(図9参照)の燃焼装置にあっては、流路に沿った温度分布ばかりか、流路の横断面における温度分布も、可変制御される。
【0061】
【その他】
なお、上記の各実施例では、酸素富化手段として、酸素富化膜を利用した酸素濃縮装置26を挙げたが、これに限られ訳でなく、酸素ボンベ等を利用して酸素濃度を高めても同じような効果をあげることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、燃焼装置内の局所的な高温部や低温部の生成が防止されるので、クリンカ及びダイオキシンの生成が防止でき、燃焼装置の性能を向上させることができる。そのため、従来の燃焼装置の半分の大きさで同じ量の燃料を処理することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第1実施例について、燃焼装置の構成図である。
【図2】酸素富化空気の酸素濃度と燃焼温度の関係図である。
【図3】燃料の状態の変化を示した模式図である。
【図4】燃料の状態の変化を示した模式図である。
【図5】燃料の状態の変化を示した模式図である。
【図6】制御の流れを示すブロック図である。
【図7】制御の流れを示すニューラルネットワークである。
【図8】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第2実施例について、燃焼装置の構成図である。
【図9】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第3実施例について、燃焼装置の構成図である。
【図10】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第4実施例について、燃焼装置の構成図である。
【図11】本発明の固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法の第5実施例について、燃焼装置の構成図である。
【符号の説明】
1…一次燃焼室、2…二次燃焼室、3…補助燃焼室、4…燃料、
5…投入口、6…微粒子トラップ、7…触媒コンバータ、
8…バーナ、9…火格子、10…配管、11…送風機、12…配管、
13,14…バルブ、15…灰取り出し口、16…下室、17…配管、
18…助燃料タンク、19…バルブ、20…電子制御ユニット20、
21…始動ボタン、22…助燃料ポンプ、23…熱交換器23、
24…煙突、25…バルブ、26…酸素濃縮装置、27…配管、
28…温度センサ、29…バルブ、30…空燃比センサ、
31…バーナ、32…バルブ、33…リング通路、34…噴孔、
35…連通路、36,37…下室、38,39…バルブ、
40,41…圧力センサ、42…補助燃焼器、43…炭化炉、
44…ガス処理室、45…バルブ、46…配管、47…ベンチュリ部、
48…バルブ、49…ロータリキルン、50…一次燃焼室下部、
51…熱交換器、52…火炎、53…バルブ
Claims (2)
- 酸素富化空気を使用した固体状物質の燃焼装置において、燃料の状態に応じて供給空気量を制御して炉部の燃焼室内における空気の速度および温度の分布を変える手段を具備したことを特徴とする固体状物質の燃焼装置。
- 酸素富化空気を使用した固体状物質の燃焼方法において、空気の速度および温度の分布の時間的な変化を予測して、供給空気量を制御することを特徴とする固体状物質の燃焼方法。
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JP2003127710A JP2004332989A (ja) | 2003-05-06 | 2003-05-06 | 固体状物質の燃焼装置及び燃焼方法 |
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Publications (1)
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2008029560A1 (fr) * | 2006-09-04 | 2008-03-13 | Takeshi Kawahara | Appareil de traitement de déchets |
KR20170004374A (ko) * | 2015-07-02 | 2017-01-11 | 한국생산기술연구원 | 산소부화 연소장치, 그가 적용된 화력발전 시스템 및 그의 제어방법 |
KR101896812B1 (ko) * | 2016-12-22 | 2018-10-24 | 이향호 | 다중필터를 가지는 연기 배출 장치 |
CN113405106A (zh) * | 2020-12-09 | 2021-09-17 | 北京大学深圳研究生院 | 一种垃圾焚烧过程的人工智能控制方法 |
-
2003
- 2003-05-06 JP JP2003127710A patent/JP2004332989A/ja active Pending
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