JP2004331749A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)1,4構造含有量が70%以上のポリブタジエン及び/又は1,4構造含有量が70%以上のポリイソプレン100重量部に対して、(b)シングルサイト触媒により重合され、密度が0.85〜0.91g/cm3であるエチレン系樹脂10〜80重量部、及び(c)硬化剤1〜10重量部を含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体であり、少ない量の硬化剤で高温領域における圧縮永久歪みを向上させた熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体に関し、特に高温領域における圧縮永久歪みに優れ、押出成形性、射出成形性に優れる熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴム弾性を有する軟質材料であって、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性及びリサイクルが可能な熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電部品、電線被覆材、医療用部品、履物、雑貨等の分野で多用されている。
【0003】
熱可塑性エラストマーの中でも、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)などのポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性を有し、かつ、これらより得られる熱可塑性エラストマー組成物は加工性に優れており、加硫ゴムの代替品として広く使用されている。
【0004】
また、これらのエラストマー中のスチレンと共役ジエンのブロック共重合体の分子内二重結合を水素添加したエラストマー組成物は、耐熱老化性(熱安定性)および耐候性を向上させたエラストマーとして、さらに広く多用されている。
しかしながら、これらの水素添加ブロック共重合体を用いた熱可塑性エラストマー組成物は、未だゴム的特性、例えば、耐油性、加熱加圧変形率(圧縮永久歪み)や高温時のゴム弾性に問題があり、この点を改良するものとして、上記ブロック共重合体の水素添加誘導体を含む組成物を架橋させて得られる架橋体が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
しかしながら、上記公報に開示されている水添ブロック共重合体の架橋組成物は、高温時、特に100℃以上における圧縮永久歪みが未だに不十分であり、機械強度が低下し易いという問題があり、従来加硫ゴム用途で要求されている性能レベルに到達していないのが現状である。また押出成形では高温時の溶融張力が低いために形状保持性が悪化し、射出成形では成形サイクル(成形時間)が長くなるなど、成形加工面の問題点も多い。
【0005】
また、オレフィン樹脂及びオレフィン共重合体ゴムを動的架橋して得られる熱可塑性エラストマー組成物も多数知られている。これらの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン共重合体樹脂とハロゲン化ブチルゴム等のゴム類を動的架橋したエラストマー組成物(例えば、特許文献6参照。)、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレンコポリマー樹脂の存在下に動的加硫されたEPDMゴムを含有するエラストマー組成物(例えば、特許文献7参照。)、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−ブテン共重合体の存在下に動的加硫されたハロゲン化ブチルゴム等を含有するエラストマー組成物(例えば、特許文献8参照。)、EPDM等のα−モノオレフィン共重合体ゴムと結晶性ポリプロピレン等の混合物を加硫処理して得られる熱可塑性エラストマーと低密度のエチレン−α−オレフィン共重合体を含有する組成物(例えば、特許文献9参照。)、加硫処理したEPDMと結晶性エチレン系ポリマーをブレンドした後、さらにフリーラジカル架橋処理した成形物品(例えば、特許文献10参照。)、EPDMと結晶性ポリプロピレンと混合物を加硫処理して得られる熱可塑性エラストマーと高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含有する組成物(例えば、特許文献11参照。)、ターポリマーゴム等の架橋性ゴム、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、高流動性の線状ポリオレフィン加工添加剤の混合物を硬化処理したエラストマー(例えば、特許文献12参照。)が開示されているが、この組成物も高温の圧縮永久歪みが悪く、実用上満足できるものではなかった。
また、引っ張り時の靭性を改善するため、ゴム、熱可塑性ランダムエチレンコポリマーに対して半結晶性ポリプロピレンを必須成分とした熱可塑性加硫ゴム組成物が開示されているが、半結晶性ポリプロピレンを多量に含んでいるため柔軟性と耐ブリード性、高温の圧縮永久歪みのバランスが悪いという問題が生じていた。(特許文献13参照。)
しかしながら、上記公報に開示されているオレフィン樹脂系熱可塑性エラストマー組成物においては、高温の圧縮永久歪みを良くするためには高ムーニー粘度のゴムを使用する必要があり、その際には押出・射出成形性が劣るという問題が生じていた。また、EPDMと密度が0.910g/cm3を超えたLLDPEやシングルサイト触媒以外(マルチサイト触媒)で合成されたエチレン系樹脂の動的架橋処理エラストマー組成物は、80℃程度の低温で混練製造することができず、樹脂混練に対して架橋反応が先行してしまい、容易に均一な熱可塑性組成物が得られず、樹脂温度が高いことによる樹脂や軟化剤の劣化からブリードやブルームの問題が生じていた。また、相容性が非常に悪いことから折り曲げ白化性や耐屈曲疲労性、耐オイルブリード性に劣り、高温時、特に100℃以上における圧縮永久歪みが未だに不十分であり、機械強度が低下し易いという問題があり、従来加硫ゴム用途で要求されている性能レベルに到達していないのが現状である。
さらにまた、上記従来技術においては架橋剤の添加量は、EPDM等のゴム100重量部に対し10〜20重量部であり非常に多い添加量が開示されており、その際の短期および長期の高温における圧縮永久歪みは従来加硫ゴム用途で要求されている性能レベルに到達していないのが現状であった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭59−6236号公報
【特許文献2】
特開昭63−57662号公報
【特許文献3】
特公平3−49927号公報
【特許文献4】
特公平3−11291号公報
【特許文献5】
特公平6−13628号公報
【特許文献6】
特開昭61−26641号公報
【特許文献7】
特開平2−113046号公報
【特許文献8】
特開平3−17143号公報
【特許文献9】
特開平3−234744号公報
【特許文献10】
特開平1−132643号公報
【特許文献11】
特開平2−255733号公報
【特許文献12】
特開2002−220493号公報
【特許文献13】
特表2001−524563号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、特定のミクロ構造を持つポリブタジエン及び又はポリイソプレン、特定のエチレン系樹脂を用い、硬化剤を従来の使用量より少ない特定量の範囲で用いて、短期および長期の高温領域における圧縮永久歪みが向上し、相容性が良く、押出及び射出成形性に優れる熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、1,4構造含有量が70%以上のポリブタジエン及び/又は1,4構造含有量が70%以上のポリイソプレンをシングルサイト触媒で重合された特定のエチレン系樹脂と溶融混練し、特定量の硬化剤で架橋することにより、圧縮永久歪みが特異的に向上し、相容性が良く、成形加工性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(a)(a−1)1,4構造含有量が70%以上のポリブタジエン及び/又は(a−2)1,4構造含有量が70%以上のポリイソプレン100重量部に対して、
(b)シングルサイト触媒により重合され、密度が0.85〜0.91g/cm3であるエチレン系樹脂10〜80重量部、及び
(c)硬化剤1〜10重量部
を含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、(c)硬化剤がフェノール樹脂、臭化フェノール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つの硬化剤であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、(c)硬化剤がアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、さらに、(d)硬化促進剤を、成分(a)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、(d)硬化促進剤が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び二塩化スズからなる群から選ばれる少なくとも一つの硬化促進剤であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第4又は5の発明において、(d)硬化促進剤が、酸化亜鉛であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、さらに、(e)パラフィンオイル系軟化剤を、成分(a)100重量部に対して、5〜100重量部含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、さらに、(f)オレフィン系樹脂を、成分(a)100重量部に対して、10〜80重量部含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0017】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、さらに、(g)有機過酸化物を、成分(a)100重量部に対して、0.01〜1重量部含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明の熱可塑性エラストマー組成物をもちいて成形してなることを特徴とする成形体が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の構成成分、熱可塑性エラストマー組成物の製造、熱可塑性エラストマー組成物の用途について詳細に説明する。
【0020】
1.熱可塑性エラストマー組成物の構成成分
(a−1)1,4構造含有量70%以上のポリブタジエン(BR)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物で用いる(a−1)1,4構造含有量70%以上のポリブタジエン(BR)は、好ましくは1,4構造含有量が90%以上である。特にシス1,4構造含有量が70%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは94%以上である。1,4構造含有量が70%未満では柔軟性が失われるので好ましくない。
また、得られる本願の熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性(特に90A以下)を重視する場合はシス1,4構造含有量が70%以上であることが好ましい。
シス1,4構造含有量90%以上のポリブタジエンは、例えば、Ni、Co、Ti化合物等の遷移金属触媒と有機アルミニウム化合物を用いたチグラー型触媒による溶液重合で、シス1,4構造含有量が90%以上の高シスBRが得られる。
高シスBRは、ニトリルゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)に比べ、引張強さは劣るがガラス転移点(Tg)が低いゴムで耐摩耗性、低温特性、反発弾性に優れる。さらに、高シスBRは、耐摩耗性、低温特性、耐屈曲亀裂性、に優れ、なおかつ高反発弾性である。
【0021】
本発明で用いる1,4構造含有量70%以上のポリブタジエンのムーニー粘度ML1+4(100℃)は、90以下が好ましく、より好ましくは50以下であり、よりさらに好ましくは10〜40である。ムーニー粘度ML1+4(100℃)が90を超えると熱可塑性エラストマー組成物の成形加工性、圧縮永久歪みが低下する。
【0022】
(a−2)1,4構造含有量70%以上のポリイソプレン(IR)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物で用いる(a−2)1,4構造含有量70%以上のポリイソプレン(IR)は、好ましくは1,4構造含有量が90%以上である。特にシス1,4構造含有量が70%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは94%以上である。1,4構造含有量が70%未満では柔軟性が失われ好ましくない。また、得られる本願の熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性(特に90A以下)を重視する場合はシス1,4構造含有量が70%以上であることが好ましい。シス1,4構造含有量90%以上のポリイソプレン(IR)は、例えば、天然ゴムや遷移金属触媒等、例えばチーグラー型のTi系、Nd系触媒(例えば、TiCl4−AlR3−エーテル等)や有機リチウム開始剤のイソプレンの重合で製造され、シス1,4構造含有量が90%以上の高シス1,4結合のIRとしては、合成IRが好ましく用いられる。
高シスIRは、天然ゴムに比べ、ゴム強度、生ゴムのグリーン強度はやや劣るが、品質が均一で、ゲル分が少なく、発熱性、耐老化性、流動加工性に優れる。
天然ゴムは、もっとも古いゴムであり今なおゴム工業では揺るぎない地位を持続している。また、シス1,4構造含有量が100%のもの、ガタパーチャ(トランス−1,4構造が70%以上)のものがありコストの点でも優れている。天然ゴムは、ヘベア・ブラジリエンスの樹、グアユーレの樹などから採取されるがいずれの樹から採取された物であっても良い。天然ゴムの中でもシス−1,4構造が70%以上のものが好ましい。さらに好ましくは90%以上のものである。
【0023】
本発明で用いる1,4構造含有量90%以上のポリイソプレンのムーニー粘度ML1+4(100℃)は、90以下が好ましく、より好ましくは10〜90である。ムーニー粘度ML1+4(100℃)が90を超えると熱可塑性エラストマー組成物の成形加工性、圧縮永久歪みが低下する。
【0024】
成分(a)として、(a−1)1,4構造含有量が70%以上のポリブタジエンと(a−2)1,4構造含有量が70%以上のポリイソプレンとを併用する場合には、好ましくは(a−1)が5〜95重量%、(a−2)が95〜5重量%であり、より好ましくは(a−1)が20〜80重量%、(a−2)が80〜20重量%である。
【0025】
(b)シングルサイト触媒にて重合されたエチレン系樹脂
本発明の熱可塑性エラストマー組成物で用いるシングルサイト触媒にて重合されたエチレン系樹脂(b)は、低温で溶融するため成形性の向上、製造性の向上、均一な架橋構造の形成に寄与する成分である。また、熱可塑性エラストマー組成物の低温での混練を可能とし、そのうえ成分(a)との相容性が極めて良いため得られる組成物からなる成形体の折り曲げ白化性や耐屈曲疲労性を良好にすることができる。
シングルサイト触媒にて重合されたエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(エチレンと少量の好ましくは1〜10モル%のブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などのα−オレフィンとのコポリマー)などのポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマーが挙げられるが、特に好ましいのはエチレン・オクテン−1共重合体、エチレン・ヘキセン−1共重合体である。
【0026】
成分(b)の密度は、0.85〜0.915g/cm3であり、好ましくは0.89〜0.910g/cm3である。上限を超えると圧縮永久歪みの低下、柔軟性低下、相容性低下の問題を生じ、下限未満の場合は引張強度、耐熱性が低下し好ましくない。また、成分(b)の融点Tmは、60〜110℃が好ましく、さらに好ましくは60〜100℃である。ここで、Tmは、DSCを用いて−50℃〜200℃の範囲を昇温速度10℃/分で測定して求める値である。
【0027】
さらに、成分(b)のMFRは、20g/10分以上が好ましく、より好ましくは25〜50g/10分である。MFRが20g/10分未満であると製造性の低下・成形加工性の低下の問題があり好ましくない。
ここで、MFRは、JIS K 7210(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0028】
さらにまた、成分(b)の引張強度(ASTM D−638)は、5MPa以上が好ましく、より好ましくは10〜30MPaである。引張強度(ASTM D−638)が5MPa未満では最終的な生成物の機械強度が不足する。
【0029】
本発明で用いる(b)成分は、シングルサイト触媒で重合されている必要がある。シングルサイト触媒による重合は、例えば、特開昭61−296008号公報に記載された方法に従い、支持体及び周期律表の4b族、5b族並びに6b族の金属の少なくとも1つを含むメタロセンとアルモキサンとの反応生成物で構成され、当該反応生成物が支持体の存在のもとで形成されることを特徴とする重合体触媒によって重合された重合体が挙げられる。また、特開平3−163008号公報に記載された、元素の周期律表の3族(スカンジウム以外)、4〜10族又はランタナイド系列の金属、及び拘束誘起部分で置換された脱局在化π結合部分を含む金属配位錯体であって、該錯体が該金属原子のまわりに拘束幾何形状を持っていて該局在化置換π結合部分の中心と少なくとも1つの残存置換分の中心との間の金属角度が該拘束誘起置換分が水素によって置換されていることのみ異なる比較錯体中のこのような角度により小さく、そして更に1つ以上の脱局在化置換π結合部分を含むそのような錯体について錯体のそれぞれに金属原子ごとにその1つのみが環状の脱局在化置換π結合部分であることを特徴とする金属配位錯体より重合された重合体が挙げられる。
【0030】
成分(b)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、10〜80重量部であり、好ましくは20〜60重量部である。成分(b)の配合量が80重量部を超えると得られるエラストマー組成物の圧縮永久歪みが悪化し、10重量部未満では得られるエラストマー組成物の圧縮永久歪み、成形性が著しく低下する。
【0031】
(c)硬化剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物で用いる硬化剤(c)は、1,4構造含有量が70%以上のポリブタジエン(a−1)及び/又は、1,4構造含有量が70%以上のポリイソプレン(a−2)を硬化するか又は架橋することができる硬化剤であれば、有機過酸化物、硫黄系硬化剤以外の硬化剤であれば、特に限定されず用いることができ、非硫黄系硬化剤としては、フェノール樹脂類、マレイミド類及び珪素含有硬化剤等が挙げられその中でもフェノール樹脂系硬化剤が好ましい。
本発明の組成物においては、従来の硬化剤の添加量よりも少量ですむことにより、成形性の向上、成形品のブツの低減、ゴム弾性の向上を達成することができた。上記硬化剤の中でも特にその効果はフェノール樹脂系硬化剤においてより顕著である。
【0032】
好ましいフェノール樹脂硬化剤は、レゾール樹脂と呼ばれ、アルキル置換フェノール又は非置換フェノールの、アルカリ媒体中のアルデヒドでの縮合、好ましくはホルムアルデヒドでの縮合、又は二官能性フェノールジアルコール類の縮合により製造される。アルキル置換されたフェノールのアルキル置換体は典型的に1乃至約10の炭素原子を有する。p−位において1乃至約10の炭素原子を有するアルキル基で置換されたジメチロールフェノール類又はフェノール樹脂が好ましい。それらのフェノール系硬化剤は、典型的には、熱硬化性樹脂であり、フェノール樹脂硬化剤またはフェノール樹脂と呼ばれる。それらのフェノール樹脂は、触媒系と組み合わせて理想的に用いられる。例えば、非ハロゲン化フェノール硬化樹脂は、好ましくは、ハロゲン供与体及び任意にハロゲン化水素掃去剤と組み合わせて用いられる。フェノール硬化樹脂がハロゲン化される場合、ハロゲン供与体は必要ないが、ZnOのようなハロゲン化水素掃去剤の使用は好ましい。熱可塑性加硫ゴムのフェノール樹脂による硬化の具体的な例としては、米国特許第4,311,628号、米国特許第2,972,600号及び3,287,440号に記載され、これらの技術も本発明で用いることができる。
【0033】
好ましいフェノール樹脂硬化剤の例は、一般式(I)、
【0034】
【化1】
(式中、Qは、−CH2−及び−CH2−O−CH2−から成る群から選ばれる二価基であり、mは0又は1乃至20の正の整数であり、R’は有機基である)により定義される。好ましくは、Qは、二価基−CH2−O−CH2−であり、mは0又は1乃至10の正の整数であり、R’は20未満の炭素原子を有する有機基である。なおより好ましくは、mは0又は1乃至5の正の整数であり、R’は4乃至12の炭素原子を有する有機基である。
【0035】
上記フェノール樹脂の中では、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂等が好ましく、環境面から臭素化していないものが望ましいが、末端の水酸基を臭素化したものであっても良く、特に、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0036】
上記フェノール系硬化剤の製品例としては、タッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250−I(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250−III(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、PR−4507(群栄化学工業社製)、Vulkaresat510E(Hoechst社製)、Vulkaresat532E(Hoechst社製)、Vulkaresen E(Hoechst社製)、Vulkaresen 105E(Hoechst社製)、Vulkaresen 130E(Hoechst社製)、Vulkaresol 315E(Hoechst社製)、Amberol ST 137X(Rohm&Haas社製)、スミライトレジンPR−22193(住友デュレズ社製)、Symphorm−C−100(Anchor Chem.社製)、Symphorm−C−1001(Anchor Chem.社製)、タマノル531(荒川化学社製)、Schenectady SP1059(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1045(SchenectadyChem.社製)、CRR−0803(U.C.C社製)、Schenectady SP1055(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1056(Schenectady Chem.社製)、CRM−0803(昭和ユニオン合成社製)、Vulkadur A(Bayer社製)が挙げられ、その中でもタッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂)を好ましく使用できる。
【0037】
上記珪素含有硬化剤としては、一般的に、少なくとも1つのSiH基を有する水素化珪素化合物が含まれる。それらの化合物は、ヒドロシリル化触媒の存在下で不飽和ポリマーの炭素炭素二重結合と反応する。本発明を実施するのに有用な水素化珪素化合物には、メチル水素ポリシロキサン類(methylhydrogen polysiloxanes)、メチル水素ジメチル−シロキサンコポリマー類(methylhydrogen dimethyl−siloxane copolymers)、アルキルメチルポリシロキサン類(alkyl methyl polysiloxanes)、ビス(ジメチルシリル)アルカン類、ビス(ジメチルシリル)ベンゼン及びそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0038】
好ましい水素化珪素化合物は、式、
【0039】
【化2】
(式中、各Rは、1乃至20の炭素原子を有するアルキル、4乃至12の炭素原子を有するシクロアルキル及びアリールから独立して選ばれ、mは1乃至約50の値を有する整数であり、nは1乃至約50の値を有する整数であり、pは、0乃至約6の値を有する整数である)により定義され得る。
【0040】
成分(c)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、1〜10重量部であり、好ましくは5〜10重量部である。成分(c)の配合量が前記上限値を超えると、熱可塑性エラストマー組成物の流動性が著しく減少し、製造・成形が困難となる。また、圧縮永久歪みも悪化する。一方、前記下限値未満では、熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪みが悪化する。
【0041】
(d)硬化促進剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、(d)硬化促進剤を含有させることができる。(d)硬化促進剤は、成分(c)の硬化剤の機能をより効果的に向上させるために用いる。成分(c)として、フェノール樹脂硬化剤を用いる場合は、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二塩化スズ等が挙げられる。なお、酸化亜鉛を架橋触媒として用いる際には、分散剤として、ステアリン酸金属塩等を併用することができる。上記促進剤の中でも酸化亜鉛が特に好ましい。
また、本発明の組成物においては従来技術で知られていた添加量よりもはるかに少量で上記効果を得ることが可能である。そのことにより、押出成形時のメヤニが低減するという利点がある。
【0042】
成分(d)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。成分(d)の配合量が前記上限値を超えると架橋が均一に起こらなくなり、また、得られる熱可塑性エラストマー組成物の流動性が低下し製造・成形が困難となり、圧縮永久歪みが悪化する。
また、成分(c)硬化剤と成分(d)硬化促進剤の比率は、好ましくは1000:1〜1:2であり、より好ましくは500:1〜2:1であり、さらに好ましくは200:1〜10:1、よりさらに好ましくは200:1〜30:1である。
【0043】
(e)パラフィンオイル系軟化剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、パラフィンオイル系軟化剤(e)を含有させることができる。成分(e)は、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性付与、成形加工性改良の目的で用いられる。
【0044】
パラフィンオイル系軟化剤としては、例えば、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられ、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、ヘプタコンタン等のn−パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン(分岐状飽和炭化水素)及び、これらの飽和炭化水素の誘導体等を挙げることができる。これらのパラフィンは、混合物で用いられ、室温で液状であるものが好ましい。
【0045】
室温で液状であるパラフィン系軟化剤の市販品としては、日本油脂株式会社製のNAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油)、出光興産株式会社製のPW−90(n−パラフィン系プロセスオイル)、出光石油化学株式会社製のIP−ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8wt%以上のイソパラフィン)、三光化学工業株式会社製のネオチオゾール(n−パラフィン系プロセスオイル)等が挙げられる。
【0046】
また、パラフィン系軟化剤には、少量の不飽和炭化水素及びこれらの誘導体が共存していても良い。不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のエチレン系炭化水素、アセチレン、メチルアセチレン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシン等のアセチレン系炭化水素を挙げることができる。
【0047】
成分(e)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、5〜100重量部が好ましく、より好ましくは8〜60重量部である。成分(e)の配合量が前記上限値を超えると得られる組成物からなる成形体表面にブリードが生じやすくなる。
【0048】
(f)オレフィン系樹脂
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、オレフィン系樹脂(f)を含有させることができる。成分(f)は、熱可塑性エラストマー組成物の硬度調節、成形性向上の目的で用いられる。
本発明で用いられる成分(f)は、結晶性のエチレンもしくはプロピレンの単独重合体またはこのエチレンもしくはプロピレンを主体とする結晶性の共重合体が挙げられる。例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・ブテン−1共重合体等の結晶性エチレン系重合体、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1三元共重合体等の結晶性プロピレン系重合体が挙げられる。そのなかでも、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
成分(f)のMFR(条件、230℃、荷重21.18N)は、0.5dg/分以上、1,000dg/分未満が好ましく、MFRが1,000dg/分以上のハイフローオレフィン系樹脂は、圧縮永久歪み、引張強度(ASTM D−638)等の物性発現の面で好ましくない。
【0049】
成分(f)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、10〜80重量部が好ましく、より好ましくは20〜60重量部である。成分(f)の配合量が前記上限値を超えると硬くなりすぎ、圧縮永久歪みが低下する。
【0050】
(g)有機過酸化物
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、有機過酸化物(g)を含有させることができる。特に機械強度を重視する場合には機械強度向上効果を持つ成分(g)を使用することができる。
【0051】
成分(g)としては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、m−メチルベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、琥珀酸パーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル及びベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。
【0052】
これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(1分半減期温度147℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン(1分半減期温度179℃)および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3(1分半減期温度194℃)等が好ましい。本発明の組成物の場合は、1分半減期温度が165℃以下の低温分解型の有機過酸化物を使用しても良い。
【0053】
成分(g)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、0.01〜1重量部であり、好ましくは0.05〜0.5重量部である。配合量が1重量部を超えると有機過酸化物による分解反応が優先され、圧縮永久歪みが低下する。
【0054】
(h)その他の成分
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、ステアリン酸、シリコーンオイル等の離型剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤(アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウォラストナイト、クレー)、発泡剤(有機系、無機系)、難燃剤(水和金属化合物、赤燐、ポリりん酸アンモニウム、アンチモン、シリコーン)などを配合することができる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−p−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうちフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
【0055】
2.熱可塑性エラストマー組成物の製造
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(a)〜(c)、又は必要に応じて、その他の成分を加えて、各成分を同時にあるいは任意の順に加えて混合することにより製造することができる。
【0056】
溶融混練の方法は、特に制限はなく、通常公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等を使用し得る。例えば、適度なL/Dの二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いることにより、上記操作を連続して行うこともできる。ここで、溶融混練の温度は、好ましくは160〜200℃であり、架橋を十分に進行させるためには混練時間を5〜30分とることが好ましい。さらに好ましくは10〜20分である。
【0057】
3.用途
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、高温領域における圧縮永久歪みに優れ、押出成形性、射出成形性に優れるので、ブロー成形法、押出成形法、射出成形法、熱成形法、弾性溶接(elasto−welding)法、圧縮成形法等により成形される次のような用途に用いることができる。
【0058】
具体的な用途としては、例えば、自動車部品として、ライティングガスケット、3Dエクスチェンジブロークリーンエアダクト、フーロシールヒンジカバー、ベリーパン(ロボテックエクストゥルージョンガスケット)、カップホルダー、サイドブレーキグリップ、シフトノブカバー、シート調整ツマミ、IPスキン、フラッパードアシール、ワイヤーハーネスグロメット、ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションカバーブーツ(ストラットカバーブーツ)、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、ルーフガイド、トランクリッドシール、モールデッドクォーターウィンドガスケット、コーナーモールディング 、グラスエンキャプシュレーション(ロボテックエクストゥルージョン)、フードシール、グラスエンキャプシュレーション(射出成形)、グラスランチャンネル、セカンダリーシール等が挙げられる。また、工業部品としては、高層ビルのカーテンウォールガスケット、窓枠シール、金属類/補強繊維類への接着、パーキングデッキシール、エキスパンションジョイント、地震対策用エキスパンションジョイント、住宅窓ドアシール(例えば共押出等)、住宅ドアシール、手すり表皮、歩行用マット(シート)、足ゴム、洗濯機排水ホース(PPとの二色成形等)、洗濯機フタのシール、エアコンモーターマウント、排水管シール(PPとの二色成形等)、ライザーチューブ、(PVC等)パイプ継手パッキン、キャスターホイール、プリンタロール、ダクトホース、ワイヤー&ケーブル、注射器シュリンジガスケット等が挙げられる。さらに、日用品・部品として、スピーカーサラウンド、ヘアブラシグリップ、かみそりグリップ、化粧品グリップ・フット、歯ブラシグリップ、日用品ブラシグリップ、ほうきの毛先、台所用品グリップ、計量スプーングリップ、枝切りバサミグリップ、ガラス耐熱容器フタ、園芸用品グリップ、ハサミグリップ、ステープラーグリップ、ペングリップ、コンピュータマウス、ゴルフバッグ部品、壁塗りコテグリップ、チェーンソーグリップ、スクリュードライバーグリップ、ハンマーグリップ、電気ドリルグリップ、研磨機グリップ、目覚まし時計等に好ましく使用できる。
【0059】
さらに詳しい具体的な用途としては、例えば、ウェザーシールのような乗り物部品、カップ、カップリングディスク及びダイヤフラムカップのようなブレーキ部品、恒速度継手及びラック伝達継手のようなブーツ、チューブ、シーリングガスケット、油圧又は空気圧作動式装置の部品、Oリング、ピストン、弁、弁座、バルブガイド及び他の弾性ポリマー系部品、又は金属/プラスチック組み合わせ物質のような他の物質と組み合わされた弾性ポリマー、Vベルト、布表面仕上げVを有する切頭されたリブを有する(with truncated ribscontaining fabric faced V’s)歯付きベルト、研削短繊維強化V又は短繊維フロック加工されたVを有する成形ゴムを含む伝動ベルト等が挙げられる。
【0060】
【実施例】
以下実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた評価方法及び原料は以下の通りである。
【0061】
1.評価方法
(1)比重:JIS K 7112に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを用いて測定を行なった。
(2)硬度:JIS K 7215に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを用い、デュロメータ硬さ・タイプA(ショアA)にて測定した。
(3)引張強さ、100%モジュラス、伸び:JIS K 6301に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、3号ダンベル型に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
(4)圧縮永久歪み:JIS K 6262に準拠し、試験片は6.3mm厚さプレスシートを使用した。25%変形の条件にて、70℃×22時間で測定した。
(5)製造性:容量3Lの加圧ニーダー型ミキサーにて製造し(設定温度は180℃で10〜30分混練)、次の基準で評価した。
○:熱可塑性の混練物が排出された。
×:排出されたものは熱可塑性ではない。
(6)押出成形性:40mm押出機で17mm径の丸棒を、130〜140℃で押出成形し、ドローダウン性、表面外観や形状を観察し、次の基準で評価した。
○:良い
△:表面外観や形状は良好だが僅かにドローダウンがある
×:悪い
(7)射出成形性:120t射出成形機で130mm×130mm×2mmのシートを130〜150℃で射出成形し、その外観を目視により観察し、フローマーク、ヒケ発生の有無を次の基準で評価した。
○:良い
△:ヒケも外観は良好だが僅かにフローマークがある
×:悪い
(8)折り曲げ白化性:2mm厚プレスシートを180度折り曲げクリップで固定し、1時間放置し、クリップをはずした際の状態を次の基準で評価した。
○:折り目に割れ、白化、しわがない
×:折り目に割れ、白化、しわがある
(9)耐屈曲疲労性:JIS K 6260に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、幅25mm、長さ150mmに打抜いて使用した。往復運動におけるつかみ具間の最大距離は75mmで、最少距離は18mmとした。この往復運動を毎分300回の速さで1,000,000回行った後、試験片をはずした際の状態を目視で確認し、次の基準で評価した。
○:亀裂なし
×:亀裂あり
(10)耐オイルブリード性:180℃、予熱2分/加圧2分、圧力50kg/cm2の熱プレスで得られた130×160×2mm厚のシートをクラフト紙に挟んで、直径70mm円盤状の500gの重りをのせ、室温(23℃)で168時間放置後のクラフト紙の状態を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:クラフト紙にオイルブリードの痕跡が認められない
△:クラフト紙にかすかにオイルブリードの痕跡が認められる
×:クラフト紙にオイルブリードの痕跡が認められる
【0062】
2.使用原料
(a−1)高シス1,4−ブタジエンゴム(高シス1,4−BR):BR 51(JSR(株)製)、密度:0.91g/cm3、硬さ:94(ShoreA)、ムーニー粘度ML1+4(100℃):28(ASTM D−1646)、シス1,4構造含有量94%、重量平均分子量:100,000
(a−2)高シス1,4−ポリイソプレン:IR2200(JSR(株)製)、密度:0.92g/cm3、ムーニー粘度ML1+4(100℃):82(ASTM D−1646)、シス1,4構造含有量:98%
(a−3)低シス1,4−ブタジエンゴム(低シス1,4−BR):BR71(JSR(株)製)、ムーニー粘度ML1+4(100℃):51(ASTM D−1646)、シス1,4構造含有量35%
(a’−1)アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR):PNC−38(JSR(株)製)、アクリロニトリル含量38重量%(比較成分)
(a’−2)ブチルゴム(IIR):BUTYL365(JSR(株)製)、密度:0.92g/cm3、ムーニー粘度ML1+8(100℃):47(ASTM D−1646)、不飽和度:2.0%(比較成分)
(b)シングルサイト触媒で重合されたポリエチレン(s−PE−1):Engage EG8402(Dupont Dow Elastomers社製) 密度:0.902g/cm3、硬さ:94(ShoreA)、MFR(190℃、21.18N荷重):30g/10分、重量平均分子量:100,000、Tm:98℃、Tc:77℃ 、引張強度(ASTM D−638)14.1MPa
(b’−1)密度が上限を超えたシングルサイト触媒で重合されたポリエチレン(s−PE−2):製品名NOVATEC HJ490(日本ポリケム社製) 密度:0.958g/cm3、硬さ:70(ShoreD)、MFR(190℃、21.18N荷重):20dg/分、Tm:133℃、引張強度(ASTM D−638)30MPa、(比較成分)
(b’−2)マルチサイト触媒で重合されたポリエチレン(m−PE):ナックフレックスDFDA−1137(日本ユニカー(株)製) 密度:0.907g/cm3(比較成分)
(c−1)フェノール樹脂:Tackirol 201(田岡化学(株)製)
(c−2)Br化フェノール樹脂(末端の水酸基を臭素置換):Tackirol 250−I(田岡化学(株)製)
(d)酸化亜鉛(ZnO):亜鉛華2種(堺化学(株)製)
(e)パラフィンオイル(Oil):PW−380(出光興産(株)製) 平均分子量746
(f−1)オレフィン系樹脂(PP−1):Novatec BC08AHA(日本ポリケム(株)製) 密度:0.902g/cm3、硬さ:94(ShoreA)、MFR(230℃、21.18N荷重):80dg/分、重量平均分子量:100,000
(f−2)オレフィン系樹脂(PP−2):MFR(230℃、21.18N荷重)1000dg/分を超えるポリプロピレンであり、次のように処理して作成した。
MFR60dg/分のPP100重量部に有機過酸化物(パーヘキサ25B)を0.5重量部添加し、L/D=35の2軸押出機でスクリュー回転数300rpmにて混練を行った。混練温度は200℃である。
得られたPPを高温GPCで測定したところ重量平均分子量は35,000であり、MFRは、1,500dg/分である。
(g)有機過酸化物:パーヘキサ25B(2,5−ジメチル2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、日本油脂株式会社製)、1分半減期温度179℃
【0063】
実施例1〜8、比較例1〜8
表1及び表2に示す成分比で各成分を、容量3Lの加圧ニーダータイプのミキサーに投入して、混練温度180℃、混練時間10〜30分で溶融混練をして、ペレット化した。次に、得られたペレットを射出成形、及びプレス成形して試験片を作成し、夫々の試験に供した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1及び2より明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は良好な特性を有していた(実施例1〜8)。また、1,000dg/分を超える高MFRのポリプロピレンを配合した組成物は、圧縮永久歪みや機械強度が若干劣るが、それ以外は良好な特性を有していた。
一方、比較例1及び2は、成分(b)の配合量を本発明の範囲外にしたものである。成分(b)が下限未満の場合、圧縮永久歪みが悪化し、同時に製造性・成形性が低下する。成分(b)が上限を超えると、圧縮永久歪みが低下する。
比較例3及び4は、成分(c)の配合量を本発明の範囲外にしたものである。成分(c)が下限未満の場合、圧縮永久歪みが低下する。成分(c)が上限を超えると、圧縮永久歪みが悪化し、同時に製造性・成形性も悪化する。
比較例5と6は、それぞれ成分(a)の代わりにNBRとブチルゴムを用いたものである。いずれも圧縮永久歪みが劣った。特にNBRでは、引張強さが劣った。
比較例7と8は、それぞれ成分(b)の代わりに、シングルサイト触媒で重合された高い密度のポリエチレンとマルチサイト系触媒で重合されたポリエチレンを用いたものである。いずれも圧縮永久歪み、伸び、特に折り曲げ白化、屈曲疲労特性が劣った。
【0067】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、少ない量の硬化剤で高温領域における圧縮永久歪みを向上させることができ、押出及び射出成形性に優れる熱可塑性エラストマー組成物であるので、自動車部品を中心としたブレーキ部品、油圧又は空気圧作動式装置の部品、弾性ポリマー系部品等の材料として好適に用いることができる。
Claims (10)
- (a)(a−1)1,4構造含有量が70%以上のポリブタジエン及び/又は(a−2)1,4構造含有量が70%以上のポリイソプレン100重量部に対して、
(b)シングルサイト触媒により重合され、密度が0.85〜0.91g/cm3であるエチレン系樹脂10〜80重量部、及び
(c)硬化剤1〜10重量部
を含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。 - (c)硬化剤がフェノール樹脂、臭化フェノール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つの硬化剤であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- (c)硬化剤がアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- さらに、(d)硬化促進剤を、成分(a)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- (d)硬化促進剤が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び二塩化スズからなる群から選ばれる少なくとも一つの硬化促進剤であることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- (d)硬化促進剤が、酸化亜鉛であることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- さらに、(e)パラフィンオイル系軟化剤を、成分(a)100重量部に対して、5〜100重量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- さらに、(f)オレフィン系樹脂を、成分(a)100重量部に対して、10〜80重量部含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- さらに、(g)有機過酸化物を、成分(a)100重量部に対して、0.01〜1重量部含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物をもちいて成形してなることを特徴とする成形体。
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