JP2004331746A - ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents

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JP2004331746A
JP2004331746A JP2003127291A JP2003127291A JP2004331746A JP 2004331746 A JP2004331746 A JP 2004331746A JP 2003127291 A JP2003127291 A JP 2003127291A JP 2003127291 A JP2003127291 A JP 2003127291A JP 2004331746 A JP2004331746 A JP 2004331746A
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Masaya Okamoto
正哉 岡本
Junichi Sugiyama
順一 杉山
Mitsuru Ueda
充 上田
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Idemitsu Petrochemical Co Ltd
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
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Abstract

【課題】有害な塩素ガスやホスゲン、環境に悪影響を与えると見られるジクロロメタンやクロロホルムのようなハロゲン化有機溶媒を用いず、高分子量の高品質ポリカーボネートを環境に配慮しつつ効率良く製造する。
【解決手段】芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールと、一酸化炭素および酸素を反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造する第一工程と、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合してポリカーボネートを製造する第二工程を含み、かつ、前記第一工程において、(a)無機層状化合物に(b)パラジウムを担持させた化合物と(c)レドックス触媒能を有する化合物を含有するポリカーボネート製造用触媒、或いは(a)無機層状化合物に(b)パラジウム及び(d)レドックス触媒能を有する金属を担持させたポリカーボネート製造用触媒を用いる。
【選択図】 無

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネートの製造方法に関し、詳しくは電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野及び構造材料分野等における樹脂材料等として有用な高品質ポリカーボネートを環境に配慮しつつ効率良く製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネートの製造法としては、一般に、ビスフェノールAなどの芳香族二価ヒドロキシ化合物とホスゲンとを直接反応させる溶液法と、ジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルをカルボニル源とする溶融法が知られている。
しかし、溶液法は、有毒なホスゲンを用いなければならないこと、副生する塩化ナトリウムなどの含塩素化合物によって製造装置が腐蝕することなどの問題がある。一方、溶融法では、炭酸ジエステルの製造や溶融のための熱が必要であり、経済的な方法とは云えない。また、高温で製造するため、得られるポリカーボネートが着色するなどの問題がある。
【0003】
新しいポリカーボネートの製造法として、パラジウム/レドックス剤/ハロゲン化オニウム塩触媒を用いる酸化的カルボニル化反応による方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。しかし、この方法では、反応速度が不十分であり、重合度の低いポリカーボネートしか得られない
また、上記問題を解決するために、パラジウム化合物/無機レドックス触媒/ハロゲン化オニウム化合物/脱水剤の触媒系で酸化的カルボニル化反応を行なってポリカーボネートオリゴマーを製造し、その後エステル交換反応によりポリカーボネートを得る方法がある(例えば特許文献2を参照)。しかし、この方法では、パラジウム化合物を溶媒に溶解した均一触媒を用いるので、パラジウム(0)のクラスターを形成して失活する恐れがある。
【0004】
【特許文献1】
特開昭53−68744号公報
【特許文献2】
特開2000−297148号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の状況を鑑みなされたもので、有害な塩素ガスやホスゲン、環境に悪影響を与えると見られるジクロロメタンやクロロホルムのようなハロゲン化有機溶媒を用いず、高品質ポリカーボネートを環境に配慮しつつ効率良く製造することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の状況に鑑み、高品質ポリカーボネートを環境に配慮しつつ効率良く製造する方法を開発すべく鋭意研究を重ねの結果、無機層状化合物にパラジウムなどを担持させた触媒を用いて酸化的カルボニル化反応によりポリカーボネートプレポリマーを製造し、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合により高分子量化することにより、上記本発明の目的を達成できることを見出した。本発明はかかる知見に基いて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のポリカーボネートの製造方法を提供するものである。
1.芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールと、一酸化炭素および酸素を反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造する第一工程と、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合してポリカーボネートを製造する第二工程を含み、かつ、前記第一工程において、(a)無機層状化合物に(b)パラジウムを担持させた化合物と(c)レドックス触媒能を有する化合物を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
2.芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールと、一酸化炭素および酸素を反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造する第一工程と、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合してポリカーボネートを製造する第二工程を含み、かつ、前記第一工程において(a)無機層状化合物に(b)パラジウム及び(d)レドックス触媒能を有する金属を担持させたポリカーボネート製造用触媒を用いることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
3.第一工程において、更に(e)有機レドックス剤を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる上記2のポリカーボネートの製造方法。
4.第一工程において、更に(f)オニウム塩を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる上記1〜3のいずれかのポリカーボネートの製造方法。
5.第一工程において、更に(g)脱水剤を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる上記1〜4のいずれかのポリカーボネートの製造方法。
6.(d)レドックス触媒能を有する金属がコバルトである上記2〜5のいずれかのポリカーボネートの製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のポリカーボネートの製造方法は、芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールと、一酸化炭素および酸素とを反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造する第一工程と、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合しポリカーボネートを製造する第二工程を含むものである。
本発明は、この第一工程において、(a)無機層状化合物に(b)パラジウムを担持させた化合物と(c)レドックス触媒能を有する化合物を含有するポリカーボネート製造用触媒、或いは(a)無機層状化合物に(b)パラジウムおよび(d)レドックス触媒能を有する金属を担持させたポリカーボネート製造用触媒を用いることを特徴とするものであり、後者のポリカーボネート製造用触媒には、さらに(e)有機レドックス剤を含有させることが好ましく、また、両ポリカーボネート製造用触媒には、さらに(f)オニウム塩、(g)脱水剤、を含有させることが好ましく、また更に(h)助触媒を添加することもできる。
以下に、ポリカーボネート製造用触媒の上記(a)〜(h)成分について説明する。
【0009】
(a)無機層状化合物
本発明において用いられる無機層状化合物としては特に制限は無く、パラジウムを担持できるものであれば使用できる。例えば、スメクタイト、カオリナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、バーミキュライト、ハイドロタルサイト、ハイドロアパタイト等が挙げられる。 これらは、天然物でも合成物でも構わない。なかでも、ハイドロタルサイトが好ましく、合成ハイドロタルサイトが特に好ましい。また、これらの無機層状化合物は、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0010】
(b)パラジウム
本発明において無機層状化合物に必須成分として担持されるパラジウムには種々の化合物を用いることができ、特に制限されないが、一般的な塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、塩化カルボニルパラジウム、酢酸パラジウム(II)等の他、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)等が用いられる。これらのパラジウム化合物は単独で用いても、二種以上を併用しても差し支えない。
無機層状化合物にパラジウムを担持する方法としては特に制限はなく、パラジウム塩が溶解する溶媒を用い、無機層状化合物とパラジウム塩を室温で攪拌することで行なわれる。例えば、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)のアセトン溶液で、合成スメクタイトや合成ハイドロタルサイトに担持することができる。
【0011】
(c)レドックス能を有する化合物
本発明において(a)無機層状化合物に(b)パラジウムを担持させた化合物と(c)レドックス触媒能を有する化合物を含有するポリカーボネート製造用触媒を製造する場合に用いられる(c)レドックス触媒能を有する化合物は、無機レドックス触媒および有機レドックス触媒のいずれを用いても良い。
無機レドックス触媒としては、ランタノイド化合物、第5〜7族遷移金属化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、銅化合物等が挙げられ、中でも、コバルト化合物、セリウム化合物およびマンガン化合物が好ましく、特にコバルト化合物が好ましい。例えば、コバルト化合物としては、酢酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−へプタンジオナト)コバルト(III)等が適している。なかでも酢酸コバルトが好ましい。セリウム化合物としては、酢酸セリウム(III) 、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−へプタンジオナト)セリウム(III) 、テトラキス(トロポロナト)セリウム(VI) 等が適している。マンガン化合物としては、酢酸マンガン(II)、トリス(アセチルアセトナト)マンガン(III) 、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−へプタンジオナト)マンガン(III) 等が適している。有機レドックス触媒としては、ハイドロキノン、ベンゾキノン、α−ナフトキノン、アントラキノン、カテコール、2,2’−ビフェニル、4,4’−ビフェニル等が挙げられる。これらレドックス触媒は単独で用いても2種以上併用しても差し支えない。使用量は(a)無機層状化合物に担持させた(b)パラジウム1モルに対して0.5〜100モル程度用いる。
【0012】
(d)レドックス触媒能を有する金属
本発明において(a)無機層状化合物に(b)パラジウムおよび(d)レドックス触媒能を有する金属を担持させたポリカーボネート製造用触媒を製造する場合に用いられる(d)レドックス触媒能を有する金属には、上記の無機レドックス触媒が用いられる。
本発明において、(a)無機層状化合物に(b)パラジウム及び(d)レドックス能を有する金属を担持する方法としては特に制限はない。例えば、パラジウム塩及びレドックス能を有する金属塩が溶解する溶媒を用い、無機層状化合物とパラジウム塩及びレドックス能を有する金属塩を室温で攪拌することにより行われる。例えば、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)及び塩化コバルト(II)のアセトン溶液で、合成ハイドロタルサイトに担持することが可能である。レドックス能を有する金属の担持量はパラジウム1モルに対し、0.5〜100モル程度用いることが好ましい。
これらの担持型触媒は単独で用いても、2種以上併用しても差し支えない。また、パラジウム塩や無機レドックス剤を併用することができる。
【0013】
(e)有機レドックス剤
(a)無機層状化合物に(b)パラジウムおよび(d)レドックス触媒能を有する金属を担持させたポリカーボネート製造用触媒を製造する場合には、更に、(e)成分として有機レドックス剤を用いることが好ましい。この有機レドックス剤としては、上記の有機レドックス触媒が用いられる。これらの有機レドックス剤は単独で用いても2種以上併用してもよい。使用量としては、担持された(b)パラジウム1モルに対して0.1〜100モル程度の範囲で用いられる。
【0014】
(f)有機オニウム塩
また、本発明におけるポリカーボネート製造用触媒は、(e)成分として、後述するポリカーボネートの原料である芳香族ジヒドロキシ化合物を活性化させる有機オニウム塩が、必要に応じて用いられる。
有機オニウム塩としては、アンモニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられる。中でもアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。
具体的には、アンモニウム塩として、テトラ(n−ブチル)アンモニウムブロマイド、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロマイド等が用いられる。ホスホニウム塩として、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等が用いられる。
オニウム塩の使用量は、ヒドロキシ化合物に対し、0.1モル%程度以上あればよい。
【0015】
(g)脱水剤
本発明におけるポリカーボネート製造用触媒に必要に応じて添加される脱水剤としては、モレキュラシーブスやゼオライト等が用いられ、特に制限はない。中でも好ましいのは合成ゼオライトのモレキュラーシーブである。A−3、A−4が好ましく、より好ましくはA−3である。
【0016】
(h)助触媒
本発明におけるポリカーボネート製造用触媒には、触媒活性、目的とする生成物への選択率、収率、あるいは寿命の向上を目的として、助触媒を添加することができる。助触媒は反応に悪影響を及ぼさない限りいかなるものも使用できるが、ヘテロポリ酸やヘテロポリ酸のオニウム塩等が好適に用いられる。
ヘテロポリ酸としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸等が挙げられる。また、これらのオニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等も用いることが可能である。これらは単独でも、二種以上併用しても差し支えない。
【0017】
次に、本発明のポリカーボネートの製造方法の第一工程において、上記触媒を用い、芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールと、一酸化炭素及び酸素とを反応させることによりポリカーボネートプレポリマーが製造される。
本発明において、芳香族ジヒドロキシ化合物として、従来公知の種々のものが使用でき、所望のポリカーボネートの種類により適宜選定することができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、一般式(I)
【0018】
【化1】
Figure 2004331746
【0019】
[式中、R及びRは、それぞれハロゲン原子(例えば、塩素,臭素,フッ素,ヨウ素)あるいは炭素数1〜8のアルキル基であり、a及びbは、それぞれ0〜4の整数である。Rが複数の場合、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rが複数の場合、Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。そしてYは単結合,炭素数1〜8のアルキレン基,炭素数2〜8のアルキリデン基,炭素数5〜15のシクロアルキレン基,炭素数5〜15のシクロアルキリデン基,−S−,−SO−,−SO−,−O−,−CO−結合または構造式
【0020】
【化2】
Figure 2004331746
【0021】
で表される基を示す。]で表される炭素数12〜27の芳香族ジヒドロキシ化合物(二価フェノール)である。
【0022】
ここで、上記一般式(I)で表される二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が好ましい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシジフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等のビスフェノールA以外のビス(4−ヒドロキシフェニル)化合物または2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のハロゲン化ビスフェノール類等が挙げられる。これらのフェノール類が置換基としてアルキル基を有する場合には、該アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0023】
本発明のポリカーボネートの製造方法の第一工程においてプレポリマーを製造する際に用いられる一価フェノールとしては、フェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−メトキシフェノール、p−フェニルフェノール等が挙げられる。中でもフェノール、p−tert−ブチルフェノールが好ましい。また、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールは、単独でも、二種以上併用しても差し支えない。一価フェノールの使用量は芳香族ジヒドロキシ化合物に対して5〜70モル%の範囲で用いられる。
【0024】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールと反応させる一酸化炭素は、単体であってもよいが、不活性ガスで希釈されていても、水素との混合ガスであってもよい。また、上記芳香族ヒドロキシ化合物および一価フェノールと反応させる酸素は、純酸素であっても、希釈されたもの、例えば空気等の酸素含有ガスであってもよい。
【0025】
本発明のポリカーボネート製造方法の第一工程における反応溶媒としては、特に制限はない。例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、アセトフェノン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、環境問題等から非ハロゲン溶媒が好ましい。非ハロゲン溶媒として有用な溶媒には、カ−ボネート結合を有する化合物がある。例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジアリルカーボネート、アリルメチルカーボネート、ビス(2−メトキシフェニル)カーボネート、ビニレンカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジ(o−メトキシフェニル)カーボネート、メチルエチルカーボネート等が挙げられる。中でも好ましいのはプロピレンカーボネートである。これらのカ−ボネート系溶媒は単独でも2種以上併用しても差し支えない。
【0026】
第一工程における反応温度は30〜180℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜120℃である。30℃未満だと反応が進行しない可能性がある。180℃を越えると副反応が生じたり、生成物の着色する可能性があり好ましくない。
また、反応圧力は、一酸化炭素や酸素等のガス状の原料を用いるため、加圧状態に設定することが一般的であり、一酸化炭素分圧は1×10−2〜20MPa、好ましくは1×10−2〜10MPaの範囲内で、酸素分圧は1×10−2〜10MPa、好ましくは1×10−2〜5MPaの範囲内であればよい。特に、酸素分圧は、反応系内のガス組成が爆発範囲を外れるように調節することが望ましく、反応圧力があまり低圧では反応速度が低下し、また高圧過ぎると反応装置が大型となり、設備費用が高く、経済的に不利である。不活性ガスや水素等を用いる際には、その分圧は特に規定されないが、適宜実用的な圧力範囲で用いればよい。
反応時間は、たとえば回分式の場合1〜48時間、好ましくは2〜36時間、より好ましくは3〜24時間である。1時間未満だと収率が低く、48時間を越えても収率の伸びが見られない。
反応方式は、回分式、原料と触媒等を連続的に反応器に投入する半連続式、原料と触媒等を連続的に反応器に投入し、反応性生物を連続的に抜き出す連続式の何れでも可能である。
【0027】
(第二工程)
本発明の方法における第二工程では、第一工程で製造されたポリカーボネートプレポリマーを固相重合しポリカーボネートを製造する。この際には触媒として四級ホスホニウム塩が好適に用いられる。
固相重合に使用する四級ホスホニウム塩としては、特に制限はなく、各種のものがあるが、例えば下記一般式(II)又は(III)
(PR (X・・・・・(II)
(PR (Y2− ・・・(III)
で表される化合物を用いることができる。
【0028】
上記一般式(II)および(III)において、Rは有機基を示す。この有機基としては、例えば置換基を有する若しくは有しない炭素1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基または置換基を有する若しくは有しない炭素数7〜20のアラルキル基を示す。
ここで炭素1〜20のアルキル基の例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n又はイソペンチル基、n又はイソヘキシル基、n又はイソオクチル基、n又はイソデシル基、n又はイソドデシル基、n又はイソテトラデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。また、これらのアルキル基の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基の例としては、フェニル基, ナフチル基, ビフェニル基などが挙げられる。また、これらのアリール基の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基の例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、1,1,1−トリフェニルメチル基などが挙げられる。また、これらのアラルキル基の置換基としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられる。
前記四つのRはたがいに同一でも異なっていてもよく、また二つのRが結合して環構造を形成していてもよい。
はハロゲン原子, 水酸基,アルキルオキシ基, アリールオキシ基,R’COO,HCO,(R’O)P(=O)O又はBR’’などの1価のアニオン形成が可能な基を示す。ここで、R’はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、二つのR’Oはたがいに同一でも異なっていてもよい。またR’’は水素原子又はアルキル基やアリール基などの炭化水素基を示し、四つのR’’はたがいに同一でも異なっていてもよい。YはCOなどの2価のアニオン形成が可能な基を示す。
前記Xの具体例としては、ヒドロキシド;ボロヒドリド;テトラフェニルボレート;アルキルトリフェニルボレート;ホルメート;アセテート;プロピオネート;ブチレート;フルオリド;クロリド;ヒドロカーボネートなどを挙げることができる。また、Yの具体例としては、カーボネートなどを挙げることができる。
【0029】
前記一般式(II),(III) で表される四級ホスホニウム塩の具体例としては、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド, テトラナフチルホスホニウムヒドロキシド, テトラ(クロロフェニル)ホスホニウムヒドロキシド, テトラ(ビフェニル) ホスホニウムヒドロキシド, テトラトリルホスホニウムヒドロキシド, テトラメチルホスホニウムヒドロキシド, テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトライソプロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラヘキシルホスホニウムヒドロキシド、テトラシクロヘキシルルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラ(アリール又はアルキル) ホスホニウムヒドロキシド類、メチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, エチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, プロピルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, イソプロピルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, ブチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, オクチルトリフエニルホスホニウムヒドロキシド,テトラデシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, シクロヘキシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, ベンジルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, エトキシベンジルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド,メトキシメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, アセトキシメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, フェナシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, クロロメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, ブロモメチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, ビフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, ナフチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, クロロフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, メトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, アセトキシフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド, ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムヒドロキシドなどのモノ(アリール又はアルキル) トリフェニルホスホニウムヒドロキシド類、フェニルトリメチルホスホニウムヒドロキシド, ビフェニルトリメチルホスホニウムヒドロキシド, フェニルトリヘキシルホスホニウムヒドロキシド, ビフェニルトリヘキシルホスホニウムヒドロキシドなどのモノ(アリール) トリアルキルホスホニウムヒドロキシド類、ジメチルジフェニルホスホニウムヒドロキシド, ジエチルジフェニルホスホニウムヒドロキシド, ジ(ビフェニル) ジフェニルホスホニウムヒドロキシドなどのジアリールジアルキルホスホニウムヒドロキシド類、さらにはイソプロピルトリメチルホスホニウムヒドロキシド;イソプロピルトリエチルホスホニウムヒドロキシド;イソプロピルトリブチルホスホニウムヒドロキシド;シクロヘキシルトリメチルホスホニウムヒドロキシド;シクロヘキシルトリエチルホスホニウムヒドロキシド;シクロヘキシルトリブチルホスホニウムヒドロキシド;1,1,1−トリフェニルメチルトリメチルホスホニウムヒドロキシド;1,1,1−トリフェニルメチルトリエチルホスホニウムヒドロキシド;1,1,1−トリフェニルメチルトリブチルホスホニウムヒドロキシドなどのモノ(アルキル又はアラルキル)トチアルキルホスホニウムヒドロキシド類などが挙げられる。
【0030】
さらに、テトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレート, テトラエチルホスホニウムテトラフェニルボレート, テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, テトラナフチルホスホニウムテトラフェニルボレート, テトラ(クロロフェニル) ホスホニウムテトラフェニルボレート, テトラ(ビフェニル) ホスホニウムテトラフェニルボレート, テトラトリルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのテトラ(アルキル又はアリール)ホスホニウムテトラフェニルボレート類、メチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, エチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, プロピルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, ブチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, オクチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, テトラデシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, シクロペンチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, シクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, エトキシベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, メトキシメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、アセトキシメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, フェナシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, クロロメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, ブロモメチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, ナフチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, クロロフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート,フェノキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, アセトキシフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, ナフチルフェニルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのモノ(アリール又はアルキル)トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート類、フェニルトリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート, ビフェニルトリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート, フェニルトリヘキシルホスホニウムテトラフェニルボレート,ビフェニルトリヘキシルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのモノアリールトリアルキルホスホニウムテトラフェニルボレート類、ジメチルジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ジエチルジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート, ジ(ビフェニル) ジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのジアリールジアルキルホスホニウムテトラフェニルボレート類が挙げられる。
【0031】
さらに、対アニオンとして、上記のヒドロキシドやテトラフェニルボレート類の代わりに、アルキルトリフェニルボレート、フェノキシドなどのアリールオキシ基,メトキシド, エトキシドなどのアルキルオキシ基、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレートなどのアルキルカルボニルオキシ基、ベンゾエートなどのアリールカルボニルオキシ基、クロリト, ブロミドなどのハロゲン原子を用いた上記四級ホスホニウム塩が挙げられる。
【0032】
また、上記一般式(II)で表される化合物以外に、一般式(III)で表される2価の対アニオンを有するもの、例えばビス(テトラフェニルホスホニウム) カーボネート, ビス(ビフェニルトリフェニルホスホニウム) カーボネートなどの四級ホスホニウム塩や、さらに、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル) プロパンのビス−テトラフェニルホスホニウム塩、エチレンビス(トリフェニルホスホニウム) ジブロミト、トリメチレンビス(トリフェニルホスホニウム) −ビス( テトラフェニルボレート) なども挙げることができる。
【0033】
これらの四級ホスホニウム塩の中で、触媒活性が高く、かつ熱分解が容易でポリマー中に残留しにくいなどの点から、アルキル基を有するホスホニウム塩、具体的には、テトラメチルホスホニウムメチルトリフェニルボレート, テトラエチルホスホニウムエチルトリフェニルボレート,テトラプロピルホスホニウムプロピルトリフェニルボレート, テトラブチルホスホニウムブチルトリフェニルボレート, テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート,テトラエチルホスホニウムテトラフェニルボレート, トリメチルエチルホスホニウムトリメチルフェニルボレート,トリメチルベンジルホスホニウムベンジルトリフェニルボレート等が好適である。
【0034】
また、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド, テトラエチルホスホニウムヒドロキシド, テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルホスホニウム塩は、分解温度が比較的低いので、容易に分解し、製品ポリカーボネートに不純物として残る恐れが小さい。また、炭素数が少ないので、ポリカーボネートの製造における原単位を低減でき、コスト的に有利であるという点で好ましい。
また、触媒効果と得られるポリカーボネートの品質とのバランスからテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートが好ましく用いられる。
さらにシクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートやシクロペンチルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートが触媒効果と得られるポリカーボネートの品質とのバランスに優れる点で好ましく使用することができる。
【0035】
この固相重合での反応触媒としては、好ましくは四級ホスホニウム塩及び必要に応じて他の触媒も用いられるが、プレポリマー生成工程で添加し、残存しているものをそのまま使用しても、又は前記触媒を再度粉末、液体又は気体状態で添加してもよい。この固相重合反応を実施する際の反応温度Tp(℃)及び反応時間は、結晶化プレポリマーの種類(化学構造,分子量等) や形状、結晶化プレポリマー中の触媒の有無, 種類又は量、必要に応じて追加される触媒の種類又は量、結晶化プレポリマーの結晶化の度合や溶融温度Tm’(℃)の違い、目的とする芳香族ポリカーボネートの必要重合度、他の反応条件などによって異なるが、好ましくは目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス転移湿度以上で、かつ固相重合中の結晶化プレポリマーが溶融しないで固相状態を保つ範囲の温度、より好ましくは下記式(IV)
Tm’−50≦Tp<Tm’ ・・・(IV)
で示される範囲の温度において、1 分〜100時間、好ましくは0.1〜50時間程度加熱することにより、固相重合反応を行う。
【0036】
このような温度範囲としては、例えばビスフェノールAのポリカーボネートを製造する場合には、約150〜260℃が好ましく、特に約180〜245℃が好ましい。また、重合工程では、重合中のポリマーにできるだけ均一に熱を与え、副生物の抜き出しを有利に進めるために、攪拌したり、反応器自身を回転させたり、又は加熱ガスによって流動させる方法などが好ましく用いられる。
【0037】
一般に工業的に有用な芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量は、6000〜20万程度であり、上記固相重合工程を実施することによって、このような重合度のポリカーボネートが容易に得られる。結晶化プレポリマーの固相重合によって得られた芳香族ポリカーボネートの結晶化度は、重合前のプレポリマーの結晶化度より増大していることから、本発明の方法では、結晶性芳香族ポリカーボネート粉体が得られる。結晶性芳香族ポリカーボネート粉体は、冷却せず直接押出機に導入してペレット化することもでき、冷却せずに直接成形機に導入して成形することもできる。重合に寄与する予備重合と固相重合との割合は、必要に応じて適宜変えてもよい。
【0038】
膨潤固相状態での重合方法は、上記方法で結晶化したプレポリマーを、後述する膨潤ガスにより膨潤させた状態での固相重合によって、さらに重合を行わせる方法である。この方法は、エステル交換反応によりポリカーボネートを製造する方法において、副生するフェノールのような低分子化合物を脱気又は抽出除去する場合、膨潤ガスにより膨潤状態にある高分子(オリゴカーボネート) から、低分子化合物を脱気又は抽出除去する方が、高粘度溶融高分子や結晶化した固体からの脱気又は抽出除去よりも物質移動速度が速くなり、高効率で反応できることを利用したものである。
【0039】
ここで使用する膨潤溶媒は、ポリカーボネートを以下に示す反応条件で膨潤可能な単一膨潤溶媒、それらの単一膨潤溶媒の混合物、又は単一膨潤溶媒もしくはそれらの混合物にポリカーボネートの貧溶媒を単一あるいは数種類混合したものを示す。
本工程における膨潤状態とは、以下に示した反応条件の範囲において、反応原料であるプレポリマーフレークを熱膨潤値以上に体積的又は重量的に増加した状態をいい、膨潤溶媒とは、下記反応条件の範囲において完全に気化する沸点を有するか、又は通常6.7kPa以上の蒸気圧を有する単一化合物又はそれらの混合物であり、同時に上記の膨潤状態を形成させることができるものをいう。
【0040】
このような膨潤溶媒は、上記の膨潤条件を満たしていれば、特に制限はない。例えば、溶解度パラメーターが4〜20(cal/cm1/2 の範囲、好ましくは7〜14(cal/cm1/2 の範囲にある芳香族化合物や含酸素化合物が該当する。膨潤溶媒としては、例えばベンゼン,トルエン, キシレン, エチルベンゼン,ジエチルベンゼン, プロピルベンゼン, ジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエ一テル類;メチルエチルケトン, メチルイソブチルケトン等のケトン類などが挙げられる。これらの中でも、炭素数6〜20の芳香族炭化水素の単一化合物又は混合物が好ましい。
【0041】
また、膨潤溶媒と混合される貧溶媒の条件としては、下記の反応条件で溶媒へのポリカーボネート溶解度が0.1重量%以下であり、反応に関与する可能性が少ない直鎖又は分岐鎖を有する炭素数4〜18の飽和炭化水素化合物、又は炭素数4〜18でかつ低度の不飽和炭化水素化合物が好ましい。膨潤溶媒及び貧溶媒の沸点が、共に250℃を越えると残留溶剤の除去が困難となり、品質が低下する可能性があり好ましくない。
【0042】
このような貧溶媒と膨潤溶媒とを混合して用いる場合には、その混合溶媒中に膨潤溶媒が1重量%以上合有されていれば良く、好ましくは5重量%以上の膨潤溶媒を混合溶媒中に存在させる。この膨潤固相重合工程では、反応温度が好ましくは100〜240℃であり、反応時の圧力が好ましくは1330Pa〜05MPa・G、特に好ましくは大気圧下で実施する。反応温度が上記範囲より低いとエステル交換反応が進行せず、反応温度がプレポリマーの融点を超える高温条件では、固相状態を維持できず、粒子間で融着等の現象が生じ、運転操作性が著しく低下する。従って、反応温度は融点以下にする必要がある。
【0043】
膨潤溶媒ガスの供給は、液体状態で反応器に供給し反応器内で気化させても、予め熱交換器などにより気化させた後、反応器に供給してもよい。ガス供給量としてはプレポリマー1g当たり0.5リットル(標準状態) /hr以上のガスを反応器に供給することが好ましい。膨潤溶媒ガスの流通量は反応速度と密接に関係し、フェノール除去効果と同時に熱媒体としての作用をもしているため、ガスの流通量の増加に伴い反応速度が向上する。このような膨潤固相重合に用いられる反応器に特に制限はない。
【0044】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例により、更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、以下の例で使用した触媒、試薬は、市販の製品又は文献記載の方法に従い調製したものである。
なお、以下の実施例および比較例において、数平均分子量(Mn)および重量数平均分子量(Mw)はGPC装置を用いて測定した。
遊離液:クロロホルム
カラム:Shodex K−804L
検量線:ポリスチレン標準分子量:1050、5870、17100、98900、355000の5サンプルで作成した。
検出器:紫外線(UV)検出器
【0045】
製造例1(担持型触媒Aの製造)
無機層状化合物:スメクタイト(コープケミカル(株)製:ルーセンタイトSWN)4.0gをアセトン40mlに懸濁させ、これにジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)のアセトン溶液(ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II):0.5モル、アセトン:40ml)をゆっくり加え、室温で24時間攪拌した。その後、沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄し、100℃で24時間真空乾燥し、担持型触媒Aを製造した。
【0046】
製造例2(担持型触媒Bの製造)
製造例1において、無機層状化合物:スメクタイト(ルーセンタイトSWN)4.0gの代わりに、ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製:キョウワード1000)500mgを用い、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)を1.0ミリモル他は、製造例1と同様に行ない、担持型触媒Bを製造した。
【0047】
製造例3(担持型触媒Cの製造)
無機層状化合物:ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製:キョウワード1000)750mgをアセトン40mlに懸濁させ、これにジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)のアセトン溶液(ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II):1.0ミリモル、アセトン:30ml)をゆっくり加え、室温で1時間攪拌した。その後、塩化コバルト(II)のアセトン溶液(塩化コバルト(II):2.0ミリモル、アセトン:30ml)をゆっくり加え、室温で24時間攪拌した。その後、沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄し、100℃で24時間真空乾燥し、担持型触媒Cを製造した。
【0048】
実施例1
(第一工程)内容積100mlのオートクレーブに、ビスフェノールA:12.48ミリモル、p−tert− ブチルフェノール:6.72ミリモル、製造例1で得られた担持型触媒A:613mg、酢酸コバルト(II)四水和物:0.15ミリモル、テトラブチルアンモニウムブロマイド:1.875ミリモル、ベンゾキノン:0.375ミリモル、合成ゼオライトA−3粉末(和光純薬(株)製:粒径75μm未満):3.0g、プロピレンカーボネート:30mlを入れ、一酸化炭素:6.0MPa、酸素:0.3MPaを25℃で充填した。封入した後に容器を密閉構造とし、100℃で24時間加熱した。反応終了後、合成ゼオライトおよび担持型触媒を除去し、メタノール再沈殿によりポリカーボネートプレポリマーを得た。得られたポリカーボネートプレポリマーを100℃で24時間真空乾燥した。
(第二工程)第一工程で得られたポリカーボネートプレポリマー:500mgに、シクロヘキシルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートを300ppm添加し、内径1.3cmのSUS管に入れ、窒素ガスを100ml/分の速度で導入し、190℃で2時間、210℃で2時間、230℃で4時間、計8時間の固相重合を実施し、目的のポリカーボネートを製造した。
第一工程で得られたポリカーボネートプレポリマーと第二工程で得られたポリカーボネートの数平均分子量(Mn)および重量数平均分子量(Mw)を第1表に示す。
【0049】
実施例2
実施例1において、担持型触媒A:613mgの代わりに製造例2で得られた担持型触媒B:51mgを用いた他は実施例1と同様に実施した。
第一工程で得られたポリカーボネートプレポリマーと第二工程で得られたポリカーボネートの数平均分子量(Mn)および重量数平均分子量(Mw)を第1表に示す。
【0050】
実施例3
実施例1において、担持型触媒A:613mgの代わりに製造例3で得られた担持型触媒C:87mgを用い、酢酸コバルト(II)四水和物を使用しなかった他は実施例1と同様に実施した。
第一工程で得られたポリカーボネートプレポリマーと第二工程で得られたポリカーボネートの数平均分子量(Mn)および重量数平均分子量(Mw)を第1表に示す。
【0051】
実施例4
実施例3において、p−tert− ブチルフェノールの使用量を6.72ミリモルから5.34ミリモルに変更した他は実施例1と同様に実施した。
第一工程で得られたポリカーボネートプレポリマーと第二工程で得られたポリカーボネートの数平均分子量(Mn)および重量数平均分子量(Mw)を第1表に示す。
【0052】
比較例1
実施例3において、p−tert− ブチルフェノールを用いなかった他は実施例1と同様に実施した。
第一工程で得られたポリカーボネートプレポリマーと第二工程で得られたポリカーボネートの数平均分子量(Mn)および重量数平均分子量(Mw)を第1表に示す。
【0053】
Figure 2004331746
【0054】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネートの製造方法では、有害な塩素ガスやホスゲン、環境に悪影響を与えると見られるジクロロメタンやクロロホルムのようなハロゲン化有機溶媒を用いず、高分子量の高品質ポリカーボネートを環境に配慮しつつ効率良く製造することができる。
更に、本発明のポリカーボネートの製造方法では、担持型触媒を用いるので、得られるポリカーボネートプレポリマーと触媒の分離が容易であり、触媒を再生使用することができる。また、得られるポリカーボネート中の残存パラジウム量を少なくすることができる。

Claims (6)

  1. 芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールと、一酸化炭素および酸素を反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造する第一工程と、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合してポリカーボネートを製造する第二工程を含み、かつ、前記第一工程において、(a)無機層状化合物に(b)パラジウムを担持させた化合物と(c)レドックス触媒能を有する化合物を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
  2. 芳香族ジヒドロキシ化合物および一価フェノールと、一酸化炭素および酸素を反応させてポリカーボネートプレポリマーを製造する第一工程と、該ポリカーボネートプレポリマーを固相重合してポリカーボネートを製造する第二工程を含み、かつ、前記第一工程において、(a)無機層状化合物に(b)パラジウム及び(d)レドックス触媒能を有する金属を担持させたポリカーボネート製造用触媒を用いることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
  3. 第一工程において、更に(e)有機レドックス剤を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる請求項2に記載のポリカーボネートの製造方法。
  4. 第一工程において、更に(f)オニウム塩を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
  5. 第一工程において、更に(g)脱水剤を含有するポリカーボネート製造用触媒を用いる請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
  6. (d)レドックス触媒能を有する金属がコバルトである請求項2〜5のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
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