JP2004331586A - 1,10−フェナントロリン誘導体、キレート配位子及び1,10−フェナントロリン誘導体の製造方法 - Google Patents

1,10−フェナントロリン誘導体、キレート配位子及び1,10−フェナントロリン誘導体の製造方法 Download PDF

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貴樹 神原
Ryuichi Yamamoto
▲隆▼一 山本
Hiroyuki Suzuki
裕之 鈴木
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Abstract

【課題】酸化還元特性や光学特性等の機能制御が十分に可能な1,10−フェナントロリン誘導体を得る。
【解決手段】次の式:
【化1】
Figure 2004331586

(式中、NY及びNY′は第三級アミノ基を示し、Nは1,10−フェナントロリンの第3位及び第8位に直接結合する窒素原子であり、NY及びNY′は同一か又は異なることができる。)
で表されることを特徴とする1,10−フェナントロリン誘導体及びかかる誘導体からなるキレート配位子を提供する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1,10−フェナントロリン誘導体、かかる誘導体からなるキレート配位子及びかかる誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
N,N’,N’’,N’’’−テトラメチル−p−フェニレンジアミンは臭素で処理すると、安定なカチオンラジカルを生じて青色の塩になることが知られており、かかる一連の化合物はウルスター色素と呼ばれている(例えば、非特許文献1参照)。そのため、N,N’,N’’,N’’’−四置換−p−フェニレンジアミン誘導体は、可逆な酸化還元特性を有し、電子写真や有機発光素子のキャリア(ホール)輸送材料用色素等として広く利用されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
また、1,10−フェナントロリンは、Fe2+と反応して517nmに吸収極大を持つ安定なキレート錯体を生成することから、微量の鉄の定量分析に利用されている(例えば、非特許文献3参照)。また、この1,10−フェナントロリンの鉄(II)錯体は、酸化還元によって濃赤色から淡青色に色調変化することから、酸化還元指示薬として利用されている(例えば、非特許文献4参照)。
【0004】
一方、パラジウム錯体触媒を用いるハロゲン化芳香族化合物とアミンとの反応では、種々の芳香族アミン類を効率よく得られることが知られており(例えば、非特許文献5参照)、その製造法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、銅錯体触媒を用いるハロゲン化芳香族化合物とアミンの反応によっても種々の芳香族アミン類を効率よく得られることが知られている(例えば、非特許文献6参照)。
【0005】
【非特許文献1】
Pure&Appl.Chem.,62巻,395頁(1990年)
【非特許文献2】
色素の化学と応用、119頁、大日本図書(1994年)
【非特許文献3】
分析化学実験、108頁、東京教学社(1979年)
【非特許文献4】
定量分析化学、247頁、培風館(1971年)
【非特許文献5】
有機合成化学協会誌、59巻、607頁(2001年)
【特許文献1】
特開平10−310561号公報
【非特許文献6】
Chem.Ber.,36,2382頁(1903年)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のウルスター色素(N,N’,N’’,N’’’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン及びその誘導体)はその酸化還元特性及び色調変化を置換基によって調整することは可能であるが、個々の誘導体はそれぞれ固有の酸化還元特性及び色調変化を持つに留まっている。
【0007】
なお、従来の1,10−フェナントロリンは、所定の遷移金属に対してキレート配位機能を有するが、ウルスター型の酸化還元活性系を提供しないか、又は酸化還元特性等の機能制御が不十分である。
【0008】
そのため、p−フェニレンジアミン構造を工夫することにより、外部環境・刺激によって酸化還元特性が自在に制御され、多彩な色調変化並びに発光特性を示す従来のウルスター色素にはない物性を備えた物質の開発が望まれている。
【0009】
本発明の課題は、酸化還元特性や光学特性等の機能制御が十分に可能な1,10−フェナントロリン誘導体を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次の式:
【化3】
Figure 2004331586
(式中、NY及びNY′は第三級アミノ基を示し、Nは1,10−フェナントロリンの第3位及び第8位に直接結合する窒素原子であり、NY及びNY′は同一か又は異なることができる。)
で表されることを特徴とする1,10−フェナントロリン誘導体及びかかる誘導体からなるキレート配位子に係るものである。
【0011】
また、本発明は、1,10−フェナントロリン誘導体を製造するにあたり、1,10−フェナントロリンの第3位及び第8位に第三級アミノ基を導入することを特徴とする1,10−フェナントロリン誘導体の製造方法に係るものである。
【0012】
本発明者は、従来のような状況の下、新しい分子構造を有するウルスター色素を探索すべく鋭意研究した。
【0013】
その結果、本発明者は、例えばp−フェニレンジアミン構造の芳香族部位を、1,10−フェナントロリン等のキレート構造を有する芳香族複素環式化合物に置き換えた場合、各種遷移金属との錯形成が可能となり、中心の芳香族構造の電子状態をコントロールできることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
本発明の複素環式化合物は、1,10−フェナントロリンユニットを備え、遷移金属に対してキレート配位能を有する。かかる1,10−フェナントロリンユニットは、3位及び8位を所定の第三級アミノ基で置換されている。
【0015】
このような複素環式化合物は、レドックス活性であり、その酸化状態や金属の配位の有無等により、酸化還元特性や光学特性等の諸機能の制御が可能な優れたキレート配位子となる。
【0016】
本発明では、1,10−フェナントロリンユニットの3位及び8位に、所定の第三級アミノ基が直接結合することによって、従来のウルスター色素と類似する酸化還元特性及び色調変化が達成できると共に、1,10−フェナントロリンユニットにおいて各種遷移金属とキレート錯体の形成が可能となる。
【0017】
本発明の1,10−フェナントロリン誘導体によれば、各種金属との錯形成によって、1,10−フェナントロリンユニットの電子密度を制御して酸化還元電位を任意に調整することができ、更に金属中心の酸化還元特性も併せ持つ多段階な酸化還元特性が達成される。また、本発明の1,10−フェナントロリン誘導体によれば、錯形成によって新たな電子遷移が形成され、多彩な色調変化及び発光特性の発現が見られる種々の化合物を提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施をする形態について説明する。
(1)1,10−フェナントロリン誘導体
前記[化3]で表す化合物1である。この化合物は、「3,8−ジアミノ−1,10−フェナントロリン誘導体」と総称することができる。
【0019】
(2)第三級アミノ基
前記化合物1において、NY及びNY′で示される。「NY」又は「NY′」中、「N」は、窒素原子を示し、1,10−フェナントロリンの第3位及び第8位に直接結合する。NY及びNY′は同一であるか又は異なることができる。
【0020】
例えば、第三級アミノ基は非環状基及び複素環式基からなる群より選ぶことができる。前記非環状基では、脂肪族基及び芳香族基からなる群より選ばれる2つの基がNに直接結合している。Nに直接結合する2つの基は、同一であるか又は異なることができる。
【0021】
脂肪族基は、アルキル基のような直線状の脂肪族基か又はシクロアルキル基のような環状の脂肪族基のいずれでもよい。脂肪族基は1〜6の炭素数を有することができる。芳香族基には、フェニル基、ナフタレン基のような基が含まれる。
【0022】
複素環式基には、芳香族複素環式基が包含される。脂肪族基、芳香族基、非環状基及び複素環式基は、いずれも置換基又は分枝を有することができる。
【0023】
非環状基は、アミノ基(−NH)の水素原子2個が、それぞれ、直線状の脂肪族基、環状の脂肪族基、及び芳香族基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基によって置換されているような基である。
【0024】
複素環式基は、アミノ基(−NH)の水素原子2個が、脂肪族基及び芳香族基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基によって置換され閉環しているような基である。
【0025】
具体的には、第三級アミノ基(NY及びNY′)は、モルホリニル基、カルバゾリル基、ジフェニルアミノ基、フェノキサジニル(フェノオキサジニル)基、フェノチアジニル基及び3−メチルインドリル基からなる群より選ぶことができる。
【0026】
前記化合物1は、1,10−フェナントロリンユニットの第3位及び第8位に第三級アミノ基を有しており、化学的酸化還元及び電気化学的酸化還元の少なくとも一方によって光吸収波長及び発光波長の少なくとも一方が変化し、ウルスター型の酸化還元活性系を提供することができる。光吸収波長及び発光波長の変化は可逆的に可能である。
【0027】
化学的酸化還元及び電気化学的酸化還元では、特に制限されることなく、種々の酸化剤、還元剤等を用いることができる。例えば、酸化剤としては、ニトロソニウムテトラフルオロボレート(NOBF)等を用い、還元剤としては、水等を用いることができる。
【0028】
(3)キレート配位子
前記化合物1からなる。被配位体に配位し、キレート化合物等のような錯体を形成する。被配位体としては、各種遷移金属原子及び遷移金属錯体等、種々の原子及び原子団等からなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0029】
かかるキレート配位子は、各種金属塩や錯体等との錯形成によって、酸化還元特性及び光学特性の少なくとも一方が変化し、かかる特性が制御された種々の化合物を形成する。
【0030】
遷移金属原子としては、特に制限されないが、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)等のような各種原子を挙げることができ、遷移金属錯体としては、特に制限されないが、シス−ジクロロビス(2,2−ビピリジン)ルテニウム等の各種錯体を挙げることができる。光学特性には、光吸収特性及び発光特性が含まれる。
【0031】
かかるキレート配位子は、酸化還元や錯形成によって、酸化還元特性及び色調等の光学特性を変化させ制御することができるので、各種の色素、染料や蛍光材料、重金属識別試薬や酸化還元指示薬等の各種試薬、光学センサーやイオン認識用又はイオン分離/抽出用センサー等のセンサー素材として有用である。
【0032】
(4)1,10−フェナントロリン誘導体の製造方法
前記化合物1は、1,10−フェナントロリンの第3位及び第8位に第三級アミノ基を導入することによって製造することができる。
【0033】
第三級アミノ基は、種々のものを選定することができ、第3位及び第8位の位置で同一か又は異なっていてもよい。第三級アミノ基としては、上述のものを選定することができる。
【0034】
第三級アミノ基の導入には、触媒を用いたC−Nクロスカップリングを用いることができる。Pd媒体等を用いたC−Nクロスカップリング反応は、有機ELや医薬中間体等の有益な物質の合成手法として盛んに研究され、現在では、多種多様なアミン化合物が合成できるようになっている。
【0035】
前記化合物1は、次の式:
【化4】
Figure 2004331586
(式中、X及びX′はハロゲノ基を示し、X及びX′は同一か又は異なることができる。)
で表される3,8−ジハロゲン化−1,10−フェナントロリンを、適切な触媒の存在下に、第二級アミンと縮合反応させて製造することができる。
【0036】
前記第二級アミンは、特に制限されることなく種々のものを用いることができる。例えば、第二級アミンは、モルホリン、カルバゾール、ジフェニルアミン、フェノキサジン(フェノアキサジン)、フェノチアジン、及び3−メチルインドールからなる群より選ばれる。
【0037】
前記触媒は種々のものを用いることができる。例えば、パラジウム錯体又は銅の触媒を用いる。
【0038】
パラジウム錯体触媒には、反応直前に反応系で合成したものをそのまま用いることも、また、予め合成単離したものを用いることもできる。
【0039】
かかるパラジウム錯体触媒は、中性配位子存在下での、還元反応又は配位子交換反応なる方法によって生成されるパラジウム錯体を用いることができる。
【0040】
中性配位子としては、9,9−ジメチル−4,5−ビス[ビス(2−メチルフェニル)ホスフィノ]キサンセン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等を例示することができる。
【0041】
銅触媒には、銅塩をそのまま用いることも、また、金属銅又は銅酸化物の粉末をそのまま用いることもできる。
【0042】
前記ハロゲノ基(X)は種々の基を選ぶことができる。例えば、クロロ、ブロモ及びヨードからなる群より選ぶことができる。
【0043】
具体的には、化合物1の合成反応は、次の:
【化5】
Figure 2004331586
(式中、NYは第三級アミノ基を示し、HNYは第二級アミンを示し、Xはハロゲノ基を示し、[Pd]はパラジウム錯体触媒を示す。)
【化6】
Figure 2004331586
(式中、NYは第三級アミノ基を示し、HNYは第二級アミンを示し、Xはハロゲノ基を示し、[Cu]は銅触媒を示す。)
で示される反応によって進行する。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的かつ詳細に、実施例について説明する。
(A)1,10−フェナントロリン誘導体の調製
(実施例1)
(3,8−ジモルホリニル−1,10−フェナントロリン)
表題の化合物を、1,10−フェナントロリンとモルホリン(第二級アミン)とのC−Nクロスカップリング反応(Pd触媒)によって製造する。
【0045】
窒素又はアルゴン雰囲気下で、ナトリウム−tert−ブトキシド2.5ミリモル、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム5×10−5モル、9,9−ジメチル−4,5−ビス[ビス(2−メチルフェニル)ホスフィノ]キサンセン(Xantphos)0.15ミリモル、3,8−ジブロモ−1,10−フェナントロリン1ミリモル及びモルホリン2.3ミリモルを、トルエン15ml中で懸濁させる。この懸濁液を100℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、この溶液をEDTA溶液で洗浄し、クロロホルムで抽出した後、水層を棄却し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水させ、濾過を行う。溶媒を蒸発させ、再びクロロホルムに溶解させた後、溶液をカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカゲル、溶出液:クロロホルム)によって精製し、更に再結晶(クロロホルムと酢酸エチルの混合液)を行い、次の式:
【化7】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体(化合物3)を黄色粉末結晶として得る。本例での化合物3の収率は52%である。化合物3は440nmにおける発光特性を有する。
【0046】
上記化合物3の質量分析(FAB−MS)を行い、m/z=350にMのピークを観測する。また、上記化合物3のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ8.94(d、2H)、7.64(s、2H)、7.44(d、2H)、3.96(t、8H)、3.36(t、8H)
【0047】
さらに、化合物3をクロロホルム−酢酸エチル混合溶媒から再結晶することにより単結晶を作製し、X線結晶構造解析を行い、上記の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体(化合物3)の分子構造と一致することを確認する。
【0048】
(実施例2)
(3,8−ジカルバゾリル−1,10−フェナントロリン)
表題の化合物を、1,10−フェナントロリンとカルバゾール(第二級アミン)とのC−Nクロスカップリング反応(Pd触媒)によって製造する。
【0049】
窒素又はアルゴン雰囲気下で、ナトリウム−tert−ブトキシド2.5ミリモル、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.1ミリモル、9,9−ジメチル−4,5−ビス[ビス(2−メチルフェニル)ホスフィノ]キサンセン(Xantphos)0.30ミリモル、3,8−ジブロモ−1,10−フェナントロリン1ミリモル及びカルバゾール2.2ミリモルを、トルエン15ml中で懸濁させる。この懸濁液を100℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、この溶液をEDTA溶液で洗浄し、クロロホルムで抽出した後、水層を棄却し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水させ、濾過を行う。溶媒を蒸発させ、再びクロロホルムに溶解させた後、溶液をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:クロロホルム、ヘキサンの1:1混合溶液)によって精製し、更に再結晶(クロロホルムとトルエンの混合液)を行い、次の式:
【化8】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体(化合物4)を黄色粉末結晶として得る。本例での化合物4の収率は30%である。化合物4は所定の波長における発光特性を有する。
【0050】
上記化合物4のFAB−MSを行い、m/z=510にMのピークを観測する。また、上記化合物4のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ9.53(d、2H)、8.55(d、2H)、8.22(d、4H)、8.02(s、2H)、7.56(d、4H)、7.49(t、4H)、7.39(t、4H)
【0051】
(実施例3)
(3,8−ジジフェニルアミノ−1,10−フェナントロリン)
表題の化合物を、1,10−フェナントロリンとジフェニルアミン(第二級アミン)とのC−Nクロスカップリング反応(Pd触媒)によって製造する。
【0052】
窒素又はアルゴン雰囲気下で、ナトリウム−tert−ブトキシド0.75ミリモル、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム3×10−5モル、9,9−ジメチル−4,5−ビス[ビス(2−メチルフェニル)ホスフィノ]キサンセン(Xantphos)9×10−5モル、3,8−ジブロモ−1,10−フェナントロリン0.3ミリモル及びジフェニルアミン0.66ミリモルを、トルエン10ml中で懸濁させる。この懸濁液を100℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、この溶液をEDTA溶液で洗浄し、クロロホルムで抽出した後、水層を棄却し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水させ、濾過を行う。溶媒を蒸発させ、再びクロロホルムに溶解させた後、溶液をカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカゲル、▲1▼溶出液:THF(テトラヒドロフラン)、ヘキサンの1:15混合溶液、▲2▼溶出液:THF、ヘキサンの1:1混合溶液)によって精製し、更に再結晶(クロロホルムとメタノールの混合液)を行い、次の式:
【化9】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体(化合物5)を黄色粉末結晶として得る。本例での化合物5の収率は55%である。化合物5は所定の波長における発光特性を有する。
【0053】
上記化合物5のFAB−MSを行い、m/z=515に[M+H]のピークを観測する。また、上記化合物5のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、d−アセトン):δ8.76(d、2H)、7.79(d、2H)、7.69(s、2H)、7.39(t、8H)、7.20(d、8H)、7.16(t、4H)
【0054】
(実施例4)
(3,8−ジフェノキサジニル−1,10−フェナントロリン)
表題の化合物を、1,10−フェナントロリンとフェノキサジン(第二級アミン)とのC−Nクロスカップリング反応(Pd触媒)によって製造する。
【0055】
窒素又はアルゴン雰囲気下で、ナトリウム−tert−ブトキシド0.75ミリモル、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム3×10−5モル、9,9−ジメチル−4,5−ビス[ビス(2−メチルフェニル)ホスフィノ]キサンセン(Xantphos)9×10−5モル、3,8−ジブロモ−1,10−フェナントロリン0.3ミリモル及びフェノオキサジン0.66ミリモルを、トルエン10ml中で懸濁させる。この懸濁液を100℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、この溶液をEDTA(エチレンジアミン四酢酸)溶液で洗浄し、クロロホルムで抽出した後、水層を棄却し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水させ、濾過を行う。溶媒を蒸発させ、再びクロロホルムに溶解させた後、溶液をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、▲1▼溶出液:クロロホルム、ヘキサンの1:1混合溶液、▲2▼溶出液:クロロホルム)によって精製し、更に再結晶(クロロホルムとメタノールの混合液)を行い、次の式:
【化10】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体(化合物6)を黄色粉末結晶として得る。本例での化合物6の収率は78%である。化合物6は所定の波長における発光特性を有する。
【0056】
上記化合物6のFAB−MSを行い、m/z=543に[M+H]のピークを観測する。また、上記化合物6のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ9.23(d、2H)、8.40(d、2H)、7.94(s、2H)、6.80(d、4H)、6.74(t、4H)、6.63(t、4H)、5.99(d、4H)
【0057】
(実施例5)
(3,8−ジフェノチアジニル−1,10−フェナントロリン)
表題の化合物を、1,10−フェナントロリンとフェノチアジン(第二級アミン)とのC−Nクロスカップリング反応(Pd触媒)によって製造する。
【0058】
窒素又はアルゴン雰囲気下で、ナトリウム−tert−ブトキシド0.75ミリモル、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム3×10−5モル、9,9−ジメチル−4,5−ビス[ビス(2−メチルフェニル)ホスフィノ]キサンセン(Xantphos)9×10−5モル、3,8−ジブロモ−1,10−フェナントロリン0.3ミリモル及びフェノチアジン0.66ミリモルを、トルエン10ml中で懸濁させる。この懸濁液を100℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、この溶液をEDTA溶液で洗浄し、クロロホルムで抽出した後、水層を棄却し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水させ、濾過を行う。溶媒を蒸発させ、再びクロロホルムに溶解させた後、溶液をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:クロロホルム)によって精製し、更に再結晶(クロロホルムとメタノールの混合液)を行い、次の式:
【化11】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体(化合物7)を黄色粉末結晶として得る。本例での化合物7の収率は85%である。化合物7は所定の波長における発光特性を有する。
【0059】
上記化合物7のFAB−MSを行い、m/z=575に[M+H]のピークを観測する。また、上記化合物7のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ9.21(d、2H)、8.22(d、2H)、7.83(s、2H)、7.24(d、4H)、7.00(m、8H)、6.59(d、4H)
【0060】
(実施例6)
(3,8−ジ−3−メチルインドリル−1,10−フェナントロリン)
表題の化合物を、1,10−フェナントロリンと3−メチルインドール(第二級アミン)とのC−Nクロスカップリング反応(Pd触媒)によって製造する。
【0061】
窒素又はアルゴン雰囲気下で、ナトリウム−tert−ブトキシド0.75ミリモル、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム3×10−5モル、9,9−ジメチル−4,5−ビス[ビス(2−メチルフェニル)ホスフィノ]キサンセン(Xantphos)9×10−5モル、3,8−ジブロモ−1,10−フェナントロリン0.3ミリモル及び3−メチルインドール0.66ミリモルを、トルエン10ml中で懸濁させる。この懸濁液を100℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、この溶液をEDTA溶液で洗浄し、クロロホルムで抽出した後、水層を棄却し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水させ、濾過を行う。溶媒を蒸発させ、再びクロロホルムに溶解させた後、溶液をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:クロロホルム)によって精製し、更に再結晶(クロロホルムとメタノールの混合液)を行い、次の式:
【化12】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体(化合物8)を黄色粉末結晶として得る。本例での化合物8の収率は38%である。化合物8は所定の波長における発光特性を有する。
【0062】
上記化合物8のFAB−MSを行い、m/z=439に[M+H]のピークを観測する。また、上記化合物8のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、d−アセトン):δ9.83(d、2H)、8.64(d、2H)、8.15(s、2H)、7.81(d、2H)、7.67(d、2H)、7.63(s、2H)、7.26(m、4H)、2.44(s、6H)
【0063】
(実施例7)
(3,8−ジカルバゾリル−1,10−フェナントロリン)
表題の化合物を、1,10−フェナントロリンとカルバゾール(第二級アミン)とのC−Nクロスカップリング反応(銅触媒)によって製造する。
【0064】
窒素又はアルゴン雰囲気下で、カルバゾール0.9ミリモル、3,8−ジブロモ−1,10−フェナントロリン0.3ミリモル、炭酸カリウム0.9ミリモル、ヨウ化銅(I)0.06ミリモルをニトロベンゼン25ml中で懸濁させる。この懸濁液を24時間還流させる。反応終了後、溶媒を減圧下で濃縮し、EDTA水溶液で洗浄し、クロロホルムで抽出する。水層は棄却し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水させ、濾過を行う。溶媒を蒸発させ、再びクロロホルムに溶解させた後、溶液をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶出液:クロロホルム)によって精製し、再結晶(クロロホルムとトルエンの混合液)を行い、前記[化8]の化合物4を黄色粉末結晶として得る。本例での化合物4の収率は73%である。実施例2と同様に、化合物4は所定の波長における発光特性を有する。
【0065】
この例の化合物4のFAB−MSを行い、m/z=510にMのピークを観測する。実施例2の結果と一致する。また、この例の化合物4のH−NMRスペクトルが実施例2の結果と一致することを確認する。
【0066】
(B)キレート配位子としての使用
(実施例8)
化合物3の0.1ミリモルをTHFに溶解させる。このTHF溶液を、塩化亜鉛0.1ミリモルを溶解させたTHF溶液に滴下し、室温で一昼夜攪拌する。沈殿物を濾過した後、THFで洗浄を行い、次の式:
【化13】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体の亜鉛錯体(化合物9)を黄色粉末結晶として得る。本例における化合物9の収率は77%である。
【0067】
上記化合物9のFAB−MSを行い、m/z=449に[M−Cl]のピークを観測する。また、上記化合物9のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ8.80(d、2H)、7.74(s、2H)、7.65(d、2H)、3.95(t、8H)、3.44(t、8H)
【0068】
このような現象は、化合物3が亜鉛に対して配位可能なキレート配位子として使用可能なことを示す。また、化合物3は、無配位の状態では440nmで発光するのに対し、化合物9のような[Zn(I)]Clの状態になると、471nmにレッドシフトする。
【0069】
(実施例9)
化合物4の0.1ミリモルをTHFに溶解させる。このTHF溶液を、塩化亜鉛0.1ミリモルを溶解させたTHF溶液に滴下し、室温で一昼夜攪拌する。沈殿物を濾過した後、THFで洗浄を行い、次の式:
【化14】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体の亜鉛錯体(化合物10)を黄色粉末結晶として得る。本例における化合物10の収率は78%である。
【0070】
上記化合物10のFAB−MSを行い、m/z=609に[M−Cl]のピークを観測する。また、上記化合物10のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ9.59(d、2H)、8.89(d、2H)、8.22(s、2H)、8.21(d、4H)、7.56(m、8H)、7.45(t、4H)
【0071】
このような現象は、化合物4が亜鉛に対して配位可能なキレート配位子として使用可能なことを示す。
【0072】
(実施例10)
化合物7の0.1ミリモルをTHFに溶解させる。このTHF溶液を、塩化亜鉛0.1ミリモルを溶解させたTHF溶液に滴下し、室温で一昼夜攪拌する。沈殿物を濾過した後、THFで洗浄を行い、次の式:
【化15】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体の亜鉛錯体(化合物11)を黄色粉末結晶として得る。本例での化合物11の収率は68%である。
【0073】
上記化合物11のFAB−MSを行い、m/z=675に[M−Cl]のピークを観測する。また、上記化合物11のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ8.79(d、2H)、7.77(d、2H)、7.57(s、2H)、7.53(d、4H)、7.49(d、4H)、7.43(t、4H)、7.31(t、4H)
【0074】
このような現象は、化合物7が亜鉛に対して配位可能なキレート配位子として使用可能なことを示す。
【0075】
(実施例11)
化合物3の0.1ミリモルを2−メトキシエタノールに溶解させる。この溶液を、窒素又はアルゴン雰囲気下で、シス−ジクロロビス(2,2−ビピリジン)ルテニウム水和物0.1ミリモルを溶解させた2−メトキシエタノール溶液に滴下し、110℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、溶媒を濃縮した後、少量の水を加え、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム0.25ミリモルを溶解させた水溶液を滴下し、室温で一昼夜攪拌する。沈殿物を濾過した後、再結晶(アセトンと水の混合液)を行い、次の式:
【化16】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体のルテニウム錯体(化合物12)を赤色粉末結晶として得る。本例での化合物12の収率は73%である。
【0076】
上記化合物12のFAB−MSを行い、m/z=909に[M−PFのピークを観測する。また、上記化合物12のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、アセトン−d):δ8.84(d、2H)、8.79(d、2H)、8.24(t、2H)、8.19(d、2H)、8.15(t、2H)、8.05(d、2H)、8.01(s、2H)、7.98(d、2H)、7.78(d、2H)、7.62(t、2H)、7.45(t、2H)、3.66(t、8H)、3.14(t、8H)
【0077】
さらに、化合物12をアセトン−水混合溶媒から再結晶することにより単結晶を作製し、X線結晶構造解析を行い、上記の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体のルテニウム錯体(化合物12)の分子構造と一致することを確認する。また、化合物12のような[Ru(I)(bpy)2PFのX線結晶構造解析の結果、配位子としての化合物3は、ほぼ平面構造をしていることが分かる。これは、立体的要因とアミノ部位からフェナントロリン部位へ電子が供与されているからだと考えられる。
【0078】
このような現象は、化合物3がルテニウムに対して配位可能なキレート配位子として使用可能なことを示す。
【0079】
(実施例12)
化合物4の0.1ミリモルを2−メトキシエタノールに溶解させる。この溶液を、窒素又はアルゴン雰囲気下で、シス−ジクロロビス(2,2−ビピリジン)ルテニウム水和物0.1ミリモルを溶解させた2−メトキシエタノール溶液に滴下し、110℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、溶媒を濃縮した後、少量の水を加え、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム0.25ミリモルを溶解させた水溶液を滴下し、室温で一昼夜攪拌する。沈殿物を濾過した後、再結晶(アセトンと水の混合液)を行い、次の式:
【化17】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体のルテニウム錯体(化合物13)を赤色粉末結晶として得る。本例での化合物13の収率は91%である。
【0080】
上記化合物13のFAB−MSを行い、m/z=1069に[M−PFのピークを観測する。また、上記化合物13のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、アセトン−d):δ9.24(d、2H)、8.97(d、2H)、8.90(d、2H)、8.66(s、2H)、8.40(d、2H)、8.26(m、8H)、8.10(t、2H)、7.50(m、8H)、7.39(m、8H)
【0081】
このような現象は、化合物4がルテニウムに対して配位可能なキレート配位子として使用可能なことを示す。
【0082】
(実施例13)
化合物5の0.1ミリモルを2−メトキシエタノールに溶解させる。この溶液を、窒素又はアルゴン雰囲気下で、シス−ジクロロビス(2,2−ビピリジン)ルテニウム水和物0.1ミリモルを溶解させた2−メトキシエタノール溶液に滴下し、110℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、溶媒を濃縮した後、少量の水を加え、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム0.25ミリモルを溶解させた水溶液を滴下し、室温で一昼夜攪拌する。沈殿物を濾過した後、再結晶(アセトンと水の混合液)を行い、次の式:
【化18】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体のルテニウム錯体(化合物14)を赤色粉末結晶として得る。本例での化合物14の収率は82%である。
【0083】
上記化合物14のFAB−MSを行い、m/z=1073に[M−PFのピークを観測する。また、上記化合物14のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、アセトン−d):δ8.83(d、2H)、8.62(d、2H)、8.25(t、2H)、8.20(d、2H)、7.99(m、8H)、7.53(t、2H)、7.46(d、2H)、7.39(t、10H)、7.25(t、4H)、7.08(d、8H)
【0084】
このような現象は、化合物5がルテニウムに対して配位可能なキレート配位子として使用可能なことを示す。
【0085】
(実施例14)
化合物6の0.1ミリモルを2−メトキシエタノールに溶解させる。この溶液を、窒素又はアルゴン雰囲気下でシス−ジクロロビス(2,2−ビピリジン)ルテニウム水和物0.1ミリモルを溶解させた2−メトキシエタノール溶液に滴下し、110℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、溶媒を濃縮した後、少量の水を加え、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム0.25ミリモルを溶解させた水溶液を滴下し、室温で一昼夜攪拌する。沈殿物を濾過した後、再結晶(アセトンと水の混合液)を行い、次の式:
【化19】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体のルテニウム錯体(化合物15)を赤色粉末結晶として得る。本例での化合物15の収率は87%である。
【0086】
上記化合物15のFAB−MSを行い、m/z=1101に[M−PFのピークを観測する。また、上記化合物15のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、アセトン−d):δ9.02(d、2H)、8.83(d、2H)、8.71(d、2H)、8.59(d、2H)、8.50(s、2H)、8.25(t、4H)、8.13(m、4H)、7.46(m、4H)、6.80(m、8H)、6.65(m、2H)、6.03(d、4H)
【0087】
このような現象は、化合物6がルテニウムに対して配位可能なキレート配位子として使用可能なことを示す。
【0088】
(実施例15)
化合物7の0.1ミリモルを2−メトキシエタノールに溶解させる。この溶液を、窒素又はアルゴン雰囲気下で、シス−ジクロロビス(2,2−ビピリジン)ルテニウム水和物0.1ミリモルを溶解させた2−メトキシエタノール溶液に滴下し、110℃の油浴中で24時間還流させる。反応後、溶媒を濃縮した後、少量の水を加え、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム0.25ミリモルを溶解させた水溶液を滴下し、室温で一昼夜攪拌する。沈殿物を濾過した後、再結晶(アセトンと水の混合液)を行い、次の式:
【化20】
Figure 2004331586
の構造から成る1,10−フェナントロリン誘導体のルテニウム錯体(化合物16)を茶色粉末結晶として得る。本例での化合物16の収率は82%である。
【0089】
上記化合物16のFAB−MSを行い、m/z=1133に[M−PFのピークを観測する。また、上記化合物16のH−NMRスペクトルのシグナルを次に示す。
H−NMR(400MHz、アセトン−d):δ8.75(d、2H)、8.72(d、2H)、8.22(t、2H)、8.18(d、2H)、8.16(t、2H)、8.04(s、2H)、8.01(d、2H)、7.97(d、2H)、7.69(d、2H)、7.50(m、6H)、7.42(t、2H)、7.32(m、12H)
【0090】
このような現象は、化合物7がルテニウムに対して配位可能なキレート配位子として使用可能なことを示す。
【0091】
(C)酸化還元特性
(実施例16)
実施例1〜3で得られた1,10−フェナントロリン誘導体(化合物3〜5)のジクロロメタン溶液に、ニトロソニウムテトラフルオロボレート(NOBF)を添加する。そして、NOBF添加前後の可視−紫外吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定を行う。各溶液の主な吸収極大波長(λmax)と発光極大波長(λem)及び量子収率(φ)を次の表に示す。
【表1】
Figure 2004331586
【0092】
酸化剤を添加することにより、1,10−フェナントロリン誘導体の吸収スペクトルが変化し、長波長側可視領域に新たにブロードな吸収極大ピークが確認される。また、発光スペクトルにおいては、酸化剤の添加によって発光極大波長が長波長シフトし、発光強度の減少が確認される。この現象は、本発明の1,10−フェナントロリン誘導体が酸化され、異なる電子エネルギー準位を形成することを示す。
【0093】
さらに、酸化剤を添加した後の溶液に少量の水を添加し、有機層の吸収スペクトルを測定すると、酸化剤を添加する前とほぼ同一の吸収スペクトルが得られる。これらの現象は、本発明の1,10−フェナントロリン誘導体が化学的酸化還元によって光吸収及び発光を可逆的に変化できることを示す。
【0094】
(実施例17)
実施例1及び2で得られた1,10−フェナントロリン誘導体(化合物3及び4)の実施例11及び12で得られたルテニウム錯体(化合物12及び13)のアセトニトリル溶液の可視−紫外吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定を行う。各溶液の主な吸収極大波長(λmax)と発光極大波長(λem)及び量子収率(φ)を次の表に示す。
【表2】
Figure 2004331586
【0095】
実施例1及び2で得られた1,10−フェナントロリン誘導体(化合物3及び4)を用いてルテニウム錯体を調製することによって、長波長側可視領域に新たにブロードな吸収極大ピークが確認される。また、発光スペクトルにおいて低エネルギー領域に赤色の発光が確認される。
【0096】
この現象は、本発明の1,10−フェナントロリン誘導体がルテニウム等に配位することによって、異なる電子エネルギー準位を形成し、電荷移動遷移による吸収バンドが生じることを示す。
【0097】
(実施例18)
実施例11及び14で得られた1,10−フェナントロリン誘導体のルテニウム錯体(化合物12及び15)のアセトニトリル溶液を用いてサイクリックボルタモグラムを測定する。酸化還元電位を次の表に示す。
【表3】
Figure 2004331586
【0098】
実施例11及び14で得られる1,10−フェナントロリン誘導体のルテニウム錯体(化合物12及び15)は電気化学的に可逆な多段階の酸化還元特性が確認される。
【0099】
これは、本発明の1,10−フェナントロリン誘導体が、N,N’,N’’,N’’’−四置換−p−フェニレンジアミン誘導体と同様な可逆的な酸化還元特性を有すると共に、中心金属の酸化及び1,10−フェナントロリン誘導体と2,2’−ビピリジン配位子の可逆的な還元に基づく酸化還元特性を有することを示す。これらの現象は、各種金属との錯形成によって1,10−フェナントロリン誘導体の酸化還元特性を制御し、金属錯体の多段階な酸化還元特性を併せ持つ化合物を提供できることを示す。
【0100】
【発明の効果】
本発明の1,10−フェナントロリン誘導体によれば、第3位及び第8位に所定の第三級アミノ基が直接結合しているので、従来のウルスター色素と類似する酸化還元特性及び光学特性が達成できると共に、各種遷移金属等との錯形成によって、酸化還元特性や光学特性等の機能が制御された新たな化合物の提供が可能となる。

Claims (6)

  1. 次の式:
    Figure 2004331586
    (式中、NY及びNY′は第三級アミノ基を示し、Nは1,10−フェナントロリンの第3位及び第8位に直接結合する窒素原子であり、NY及びNY′は同一か又は異なることができる。)
    で表されることを特徴とする1,10−フェナントロリン誘導体。
  2. 前記NY及びNY′が非環状基及び複素環式基からなる群より選ばれており、前記非環状基中、脂肪族基及び芳香族基からなる群より選ばれる2つの基がNに直接結合している請求項1記載の1,10−フェナントロリン誘導体。
  3. 前記NY及びNY′が、モルホリニル基、カルバゾリル基、ジフェニルアミノ基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、及び3−メチルインドリル基からなる群より選ばれている請求項1又は2記載の1,10−フェナントロリン誘導体。
  4. 化学的酸化還元及び電気化学的酸化還元の少なくとも一方によって、光吸収波長及び発光波長の少なくとも一方が変化する請求項1〜3のいずれか一項記載の1,10−フェナントロリン誘導体。
  5. キレート配位子であって、
    前記[化1]で表される1,10−フェナントロリン誘導体からなり、遷移金属原子及び遷移金属錯体からなる群より選ばれる少なくとも1種の被配位体に配位することによって、酸化還元特性及び光学特性の少なくとも一方が変化することを特徴とするキレート配位子。
  6. 1,10−フェナントロリン誘導体を製造するにあたり、
    1,10−フェナントロリンの第3位及び第8位に第三級アミノ基を導入するために、次の式:
    Figure 2004331586
    (式中、X及びX′はハロゲノ基を示し、X及びX′は同一か又は異なることができる。)
    で表される3,8−ジハロゲン化−1,10−フェナントロリンを、パラジウム錯体か又は銅の触媒の存在下に、第二級アミンと縮合反応させることを特徴とする1,10−フェナントロリン誘導体の製造方法。
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