JP2004331462A - 鋼の連続鋳造ノズル用耐火物および鋼の連続鋳造用ノズル - Google Patents

鋼の連続鋳造ノズル用耐火物および鋼の連続鋳造用ノズル Download PDF

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Masanori Ogata
昌徳 小形
Chikasuke Inoue
慎祐 井上
Koji Nitta
浩二 新田
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Abstract

【課題】鋼中の微量成分や溶鋼中に巻き込まれた溶融スラグにより溶損され難い鋼の連続鋳造用ノズル用耐火物及び鋼の連続鋳造用ノズルを提供すること。
【解決手段】鋼の連続鋳造用ノズルとして使用される耐火物、特に、該ノズルの、溶融スラグと常時接触する部位(パウダーライン部又はスラグライン部)を除く、本体部及び/又は浸漬部に適用する耐火物であって、該耐火物を構成する化学組成が、少なくともAl:40〜80質量%、C:10〜40質量%、SiO:6〜40質量%、ZrO:0.1〜10質量%、残部がその他の耐火性物質および工業的不可避不純物からなる耐火物。このように適量のSiOとZrOを併用することで、SiOの適度なSiC化を促進させ、耐磨耗性,耐食性,耐酸化性,耐浸潤性などの特性を有する耐火物を提供することができ、特に、ノズルの本体部や浸漬部に適用されるアルミナ−シリカ−黒鉛系材質の耐食性を向上させることができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造ノズル用耐火物および鋼の連続鋳造用ノズルに関し、特に、鋼中の微量成分や溶鋼中に巻き込まれた溶融スラグにより溶損され難い新規な鋼の連続鋳造用ノズル用耐火物および鋼の連続鋳造用ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼の連続鋳造に用いられる浸漬ノズル,ロングノズル,セミノズルなどの構造としては、溶鋼に浸漬されない部位である「本体部」、溶融スラグと常時接触する「パウダーライン部(スラグライン部)」、溶鋼に常に浸漬される「浸漬部」から構成されているのが一般的である。
このうち、「パウダーライン部(スラグライン部)」に関しては、溶融スラグと常時接触するために、耐溶損性が重要視される。そのため、この部材としては、通常、ジルコニア−カーボン系の材質が適用されている。
【0003】
一方、「本体部」および「浸漬部」に重要な特性は、主に強度および耐スポーリング性であるため、通常、熱膨張率が低いアルミナ−シリカ−黒鉛材質が適用されている。しかし、本体部の内管稼動面および浸漬部は、溶鋼中に含まれるMn等の微量成分や介在物,酸素により溶損される場合がある。
更に、浸漬部に関しては、近年の高速鋳造化に比例して、溶鋼中へのスラグの巻き込みが増加し、これにより浸漬部の溶損が増大する傾向にある。
【0004】
近年は、例えば自動車の軽量化のためのMnを多く含む高張力鋼、あるいは、Siを多く含む電磁鋼板、酸素を多く含むホーロー鋼等、特殊な機能を付与するため、鋼中添加成分を増加させた鋼の生産量の増加により、ノズルの本体部や浸漬部の溶損が増大し、操業上大きな問題となっている。
【0005】
従来、前記した“本体部および浸漬部の溶損の問題”に対応するため、耐スポーリング性は若干不利となるけれども、鋼中の微量成分と反応しやすいシリカを減少させた「アルミナ−低シリカ−黒鉛質」や、完全にシリカを省いた「アルミナ−黒鉛質」を適用してきた。更に、耐溶損性が問われる場合には、「スピネル−黒鉛質」が適用されている。
しかしながら、上記の低シリカ化やスピネルの適用では、耐溶損性の改善は不充分であり、更に耐溶損性を向上させるため、アルミナ−黒鉛系材質に耐食性に優れるジルコニア成分を添加することも検討されている。
【0006】
鋼の連続鋳造ノズル用耐火物に係る従来の技術としては、例えば、特許文献1(特開昭62−153160号公報)には、「溶融シリカ0〜5重量%、ジルコニア0〜10重量%、アルミナ50〜80重量%、黒鉛10〜40重量%、残部がその他の耐火性物質からなる連続鋳造用耐火物」が提案されており、特許文献2(特開平11−246266号公報)には、「ジルコニア5〜70重量%と残部がアルミナ及び黒鉛とからなる耐火物」が提案されている。
また、特許文献3(特開昭61−83673号公報)には、「C:15〜30重量%、Al:50〜75重量%、ZrO,ZrSiO,SiC,粘土,溶融石英のうち少なくとも1種:20%以下からなる連続鋳造用浸漬ノズル」が提案されており、特許文献4(特開平11−10321号公報)には、「Alが94重量%以上で、且つFeが0.4重量%以下、NaOが0.4重量%以下である電融アルミナ原料50〜87重量%と、Alが40〜53重量%で、且つSiOが13〜20重量%、ZrOが32〜44重量%である電融ムライト−ジルコニア原料3〜25重量%と、黒鉛原料10〜35重量%とからなる原料配合物を、結合材と共に混練し、成形,焼成してなる鋳造用ノズル」が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開昭62−153160号公報
【特許文献2】
特開平11−246266号公報
【特許文献3】
特開昭61−83673号公報
【特許文献4】
特開平11−10321号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の技術のうち、アルミナ−黒鉛系材質にZrO成分を添加することにより耐食性の向上を狙っているものもあるが(例えば、前掲の特許文献2参照)、アルミナ−黒鉛系材質に単にZrO成分を添加するだけでは、コストが上昇するだけで、耐食性の向上は期待できない。
これは、アルミナ−黒鉛系材質にジルコニアを添加すると、骨材部分の耐食性は向上するものの、ジルコニアの特徴である黒鉛の酸化促進作用が発生するため、スラグがマトリックス部に浸入しやすくなるという、両因子の相殺現象によるものである。
【0009】
また、連続鋳造用ノズルの本体部および浸漬部に、耐食性に優れるパウダーライン材質、即ち「ジルコニア−カーボン材質」を適用するということも考えられるが、ジルコニアーカーボン系の材質は、耐溶損性には優れるものの、熱膨張率が大きいため、耐スポーリング性に劣るという欠点がある。なお、ジルコニアは高価であるため、コスト面で著しく不利であり、また、比重が大きいため、重くてハンドリングに不便であるという問題点も有している。
【0010】
本発明は、前記欠点,問題点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、鋼中の微量成分や溶鋼中に巻き込まれた溶融スラグにより溶損され難い新規な鋼の連続鋳造用ノズル用耐火物および鋼の連続鋳造用ノズルを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る鋼の連続鋳造用ノズル用耐火物は、上記目的を達成する技術的構成として、鋼の連続鋳造用ノズルとして使用される耐火物であって、該耐火物を構成する化学組成が、少なくとも「Al:40〜80質量%、C:10〜40質量%、SiO:6〜40質量%、ZrO:0.1〜10質量%、残部がその他の耐火性物質および工業的不可避不純物からなる」ことを要旨とする(請求項1)。このように適量のSiOとZrOを併用することで、SiOの適度なSiC化を促進させ、耐磨耗性,耐食性,耐酸化性,耐浸潤性などの特性を有する耐火物を提供することができ、特に、ノズルの本体部や浸漬部に適用されるアルミナ−シリカ−黒鉛系材質の耐食性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、前記“ZrO”としては、ZrO含有量が80%以上である原料を使用することが好ましい(請求項2)。この原料を用いることにより、SiOのSiC化をより一層促進することができ、前記特性に優れた耐火物を提供することができる。
【0013】
一方、本発明に係る鋼の連続鋳造用ノズルは、浸漬ノズル、ロングノズルまたはセミノズルである鋼の連続鋳造用ノズルであって、「該ノズルの少なくとも本体部および/または浸漬部、特に、溶融スラグと常時接触する部位(即ちパウダーライン部またはスラグライン部)を除く本体部および/または浸漬部が、前記請求項1,2の耐火物で構成される」ことを要旨とする(請求項3)。
これにより、本体部および/または浸漬部の耐食性(鋼中微量成分や巻き込まれた溶融スラグに対する耐食性)に優れた鋼の連続鋳造用ノズルを提供することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、それに先立って、本発明について、更に詳細に説明する。
【0015】
本発明者等は、ノズルの少なくとも本体部および/または浸漬部、特に、溶融スラグと常時接触する部位を除く「本体部および/または浸漬部」に着目し、該部分の耐スポーリング性の低下および著しいコストの上昇なく、耐溶損性を向上させるために、鋭意検討を行った結果、アルミナ−黒鉛系材質に適量のシリカとジルコニアを共に添加することが有効であることを見出した。
これは、アルミナ−黒鉛系材質に適量のシリカとジルコニアを共に添加することにより、SiOの適度なSiC化を促進するためである。適度なSiC化を起こすことにより、耐磨耗性,耐食性,耐酸化性,耐浸潤性などの特性が鋼の連続鋳造用耐火物に付与される。
【0016】
SiCは、従来から“酸化防止剤”として鋼の連続鋳造用耐火物に添加されている。しかし、原料としてSiCをアルミナ−(シリカ)−黒鉛系材質に添加すると、SiCは、骨材状に存在するため、耐溶損性の向上は極僅かしか認められない。また、SiCを添加した分、アルミナ,シリカ,黒鉛の少なくとも一種の配合量が減少することとなる。アルミナが減少した場合には、耐食性が低下し、シリカや黒鉛が減少した場合には、耐スポーリング性が低下することとなる。
【0017】
SiCは、鋳造開始時点までは特に必要のない原料である。熱スポーリングの危険が最大である鋳造開始時には、低熱膨張特性を有するSiOとして耐スポーリング特性を発揮させ、その後は、溶鋼の熱によりSiCを生成するのであれば、鋳造中の耐食性に寄与することができる。また、前述の如く、鋼中微量成分や巻き込んだスラグによる溶損を抑制するため、わざわざ低シリカやノンシリカのアルミナ−黒鉛材質が適用されているように、耐食性の観点からは鋳造中SiOが減少することが望ましい。つまり、当初は、SiOとして存在して耐スポーリング性に寄与し、その後は、SiCに変化することで耐溶損性に寄与できれば最良である。
【0018】
SiOから生成したSiCは、予め配合されたSiCが骨材として点状に存在するのと異なり、黒鉛の周りをコーティングするように生成するため、黒鉛の酸化防止効果が顕著である。さらに、マトリックスを充填する効果も発揮されるため、マトリックスへのスラグの浸潤を抑制することができる。
このようにSiCは、予めSiCとして配合されたものではなく、SiOから生成したものの方が優れた耐溶損特性を発揮する。このSiOからのSiC化を促進するためには、ジルコニアを適量添加することが有効であることを本発明者等は見出した。ジルコニアの適量添加で、なぜSiC化が促進されるのかの詳細な機構は不明であるが、ジルコニアが一種の触媒のような役割を果たしていると考えられる。
【0019】
従来の技術では、本発明のごとく「ノズルの少なくとも本体部および/または浸漬部、特に、溶融スラグと常時接触する部位を除く“本体部および/または浸漬部”のアルミナ−黒鉛系材質に、適量のSiOとジルコニアを共に添加することで、耐食性を向上させるという技術に関する知見は得られていない。
【0020】
本発明は、上記知見に基づき成されたものであって、その好ましい実施の形態としては、溶融スラグと常時接触する部位を除く「本体部および/または浸漬部」の少なくとも溶鋼と接する部位に、本発明に係る鋼の連続鋳造ノズル用耐火物(適量のシリカとジルコニアを共に添加した耐火物)を配設するものである。
これにより、鋼中微量成分や巻き込まれた溶融スラグに対する耐食性を向上させることができる。これは、前記したように、少量のジルコニアを添加することにより、SiOの適度なSiC化を促進するためである。そして、適度なSiC化を起こすことにより、耐磨耗性,耐食性,耐酸化性,耐浸潤性などの特性が鋼の連続鋳造用耐火物に付与されるものである。
【0021】
本発明に係る鋼の連続鋳造ノズル用耐火物(以下“本発明の耐火物”という)は、該耐火物を構成する化学組成が、少なくとも「Al:40〜80質量%、C:10〜40質量%、SiO:6〜40質量%、ZrO:0.1〜10質量%、残部がその他の耐火性物質および工業的不可避不純物からなる」ことを特徴とする。
以下に、本発明で必須成分とする「Al」「C(カーボン)」「SiO」「ZrO」について、その技術的意義を詳細に説明する。
【0022】
本発明の耐火物において、Al成分は40〜80質量%の範囲内である。Al成分が40質量%未満では、充分な耐食性が得られない。一方、80質量%を超えると、その分カーボンなどの他の成分量が減少するため、耐スポーリング性が低下する。また、溶鋼中の微量成分や介在物と反応しやすくなり、内部閉塞や剥離が生じやすくなる。なお、好ましくは、45〜75質量%、より好ましくは50〜70質量%である。Al原料としては、特に限定するものではないが、焼結アルミナ,電融アルミナ,スピネルなどが好ましい。
【0023】
本発明の耐火物において、カーボン成分は10〜40質量%の範囲内である。カーボン成分が10質量%未満では、耐スポーリング性が低下する。これは、カーボンが少ないため、カーボンを含有することによる高熱伝導率,低熱膨張性の効果が得られなくなるからである。また、カーボン成分が40質量%を超えると、今度は溶鋼に対しての耐食性,耐磨耗性に劣る。これは、カーボンが酸化されやすく、機械的な磨耗にも弱くなるためであり、別の見方をすれば、カーボン量が増えることにより、他の高耐食性を示す成分の割合が小さくなるからでもある。なお、好ましくは15〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%である。カーボン原料としては、特に限定するものではないが、天然黒鉛,人造黒鉛,カーボンブラック,ピッチ,コークスなどが好ましい。
【0024】
本発明の耐火物において、SiO成分は6〜40質量%の範囲内である。SiO成分が6質量%未満であると、耐スポーリング性に劣り、40質量%を超えると、耐食性が低下する。SiOと適量のジルコニアが存在することで、SiOのSiC化が促進されてSiCボンドを形成し、耐食性を上げる効果があるが、SiOのSiC化が促進されるという観点から、SiOが40質量%より多くなると、SiC化が過剰となり、逆に組織の脆化につながる。なお、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲である。さらに、SiO原料としては、SiC化が起き易い単体としてのシリカ原料、すなわち溶融シリカやクリストバライト等が好ましく、予熱条件が悪い等、耐スポーリング性が要求される場合には、低熱膨張特性を有する溶融シリカの適用が更に好ましい。
【0025】
本発明の耐火物において、ZrO成分は0.1〜10質量%の範囲である。ZrO成分が0.1質量%未満であると、効果が発現しない。10質量%を超えると、熱膨張が大きくなり、それをパウダーライン材質以外のノズル本体および/または浸漬部に用いると、耐スポーリング性が下がり、割れが発生する場合がある。
また、前述したようにZrOを添加することにより、SiOのSiC化が促進され、耐食性が向上するのであるが、ZrO量が増えすぎると、SiC化を過剰に促進し、脱炭して組織の脆化へとつながる。なお、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。
【0026】
本発明に使用するZrO原料としては、安定化ジルコニア,バデライトなどのZrO含有量が80%以上であるようなものが好ましい。これは、ムライト−ジルコニア原料,アルミナ−ジルコニア原料などの状態で添加するよりも、SiOのSiC化に有効であるからである。ムライト−ジルコニア原料,アルミナ−ジルコニア原料を用いると、その原料中でのZrOの状態としては、周囲にムライトやコランダムが存在しているため、SiOのSiC化が促進され難い。この詳細な反応は不明であるが、ジルコニウム元素が原料粒子表面に露出している原料、すなわち安定化ジルコニア,バデライトなどの原料を用いると、ジルコニアが一種の触媒のような働きをするため、SiOのSiC化を促進することができると考えられる。なお、安定化ジルコニアとは、マグネシア,カルシア,イットリアなどで安定化したジルコニアのことを示す。
【0027】
なお、残部としては、耐酸化性が更に必要な操業条件の場合には、BCなどの炭化物や、Siなどの金属類等を本発明の耐火物組成に添加することができる。また、本発明で規定した成分の他にMgO等の通常の耐火物原料を使用しても良く、さらに少量であれば、工業的不可避不純物が含まれていても良い。
【0028】
本発明の耐火物は、前記した化学組成を有する耐火原料配合物に、フェノール樹脂などの有機バインダーを加えて混練し、所定の形状に成形される。
【0029】
本発明の耐火物(ZrOとSiOを共に加えたアルミナ−カーボン系材質)は、鋳造用ノズルの全体に使用することができるが、鋳造時間が長い場合には、溶融スラグと常時接触する部位を除く「本体部および/または浸漬部」に適用することが好ましい。ここで、溶融スラグと常時接触する部位とは、浸漬ノズルやセミノズルの場合は、“パウダーライン部”のことであり(後記図1,4参照)、ロングノズルの場合は、“スラグライン部”のことである(後記図2,3参照)。
【0030】
以下に、本発明に係る鋼の連続鋳造ノズルの好ましい実施の形態について、図1〜4に基づいて説明する。
図1は、本発明の耐火物を、浸漬ノズル10のパウダーライン部12以外の本体部11および浸漬部13に用いた例である。図2は、本発明の耐火物を、ロングノズル20のスラグライン部22以外の本体部21および浸漬部23に用いた例であり、図3は、本発明の耐火物を、同じくロングノズル30のスラグライン部32以外の本体部31に用いた例である。図4は、本発明の耐火物を、セミノズル40のパウダーライン部42以外の本体部41に用いた例である。
【0031】
なお、本発明に係る鋳造用ノズルにおいても、従来と同様、パウダーライン部やノズル内管表面層に、異なった材質の耐火物を用いることができ、これも本発明に包含されるものである。例えば、本発明の耐火物をノズル本体部に適用し、溶融スラグやモールドパウダーに常時接する部位に、特に耐食性を重視したZrO−C系材質を用いることができ、また、ノズル内面部のアルミナ閉塞防止のために、アルミナ介在物との反応性を利用したCaO・ZrO材質や炭素を含まないノンカーボン材質を配設することもできる。さらに、本発明に係る鋳造用ノズルにおいて、内管側に段差や突起を配設した鋳造用ノズルにも適用することができる。
【0032】
ここで、前記した従来技術、特に、前掲の特許文献1〜4に開示されている鋳造ノズル用耐火物と対比して、本発明の特徴点を更に詳細に説明する。
【0033】
ZrOの添加を活用したアルミナ−シリカ−黒鉛系材質に関する従来技術としては、前掲の特許文献1(特開昭62−153160号公報)に「溶融シリカ0〜5重量%、ジルコニア0〜10重量%、アルミナ50〜80重量%、黒鉛10〜40重量%、残部がその他の耐火性物質からなる連続鋳造用耐火物」が開示されている。
しかし、この特許文献1に開示されている耐火物のシリカの範囲は、本発明と相違する。更に、特許文献1には、溶融シリカおよび/またはジルコニアを添加しない場合が含まれている。本発明では、適量のシリカとジルコニアを共に添加することが重要な技術であり、これによって、SiOのSiC化を促進し、耐スポーリング性を落とすことなく、耐食性を向上させる点が特許文献1と異なるものである。なお、特許文献1では、材質が不連続に変化する境界部における溶損および熱応力の発生を軽減し、境界部におけるスポーリングによる割れの防止を最大の目的としている。
【0034】
前掲の特許文献2(特開平11−246266号公報)には、「ジルコニア5〜70重量%と残部がアルミナ及び黒鉛とからなる耐火物」が開示されている。
しかし、この特許文献2には、SiOが含まれておらず、この点が本発明と相違している。
【0035】
また、前掲の特許文献3(特開昭61−83673号公報)には、「C:15〜30重量%、Al:50〜75重量%、ZrO,ZrSiO,SiC,粘土,溶融石英のうち少なくとも1種:20%以下からなる連続鋳造用浸漬ノズル」が開示されている。
しかし、この特許文献3では、“ZrO,ZrSiO,SiC,粘土,溶融石英のうち少なくとも1種:20%以下からなる”とあるが、1種では、SiOとZrOとを共に含むことができるのは「ZrSiO」だけである。更に2種の場合でも、組み合わせによっては、SiOとZrOを共に含まない場合がある。このことから、ノズルの本体および/または浸漬部に“アルミナ−黒鉛系の材質”を適用する場合、本発明の技術思想に相当する「SiOとZrOとを適量配合すること(併用すること)が重要である」という知見は、得られていないと考えられる。
【0036】
前掲の特許文献4(特開平11−10321号公報)には、「Alが94重量%以上で、且つFeが0.4重量%以下、NaOが0.4重量%以下である電融アルミナ原料50〜87重量%と、Alが40〜53重量%で、且つSiOが13〜20重量%、ZrOが32〜44重量%である電融ムライト−ジルコニア原料3〜25重量%と、黒鉛原料10〜35重量%とからなる原料配合物を、結合材と共に混練し、成形,焼成してなる鋳造用ノズル」が開示されている。
しかし、この特許文献4に開示されているように、電融ムライト−ジルコニア原料を用いると、ZrO粒子の周囲をムライトが取り囲むような構造になってしまい、ZrOとSiOが直接接することができないため、SiOのSiC化を促進させることができない。本発明では、ZrOを少量添加することによるSiOの適度なSiC化により耐食性を向上させるため、当初はZrOとSiOがそれぞれ単体で存在していることが望ましい。
【0037】
従来の技術では、本発明のごとく、ノズルの少なくとも本体部および/または浸漬部、特に、溶融スラグと常時接触する部位を除く「本体部および/または浸漬部」のアルミナ−黒鉛系材質に、適量のSiOとジルコニアを共に添加することで、耐食性を向上させるという技術に関する知見は得られていない。
【0038】
【実施例】
次に、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明の耐火物について具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0039】
「実施例1〜16,比較例1〜10」
電融アルミナ,溶融シリカ,黒鉛,電融ジルコニアからなる耐火原料配合物に、バインダー(フェノール樹脂)を外掛けで5〜20質量%加え、浸漬ノズルの形状に成形した後、200℃で20時間乾燥し、続いて、還元雰囲気中1000℃で3時間焼成することにより、表1(本発明品:実施例1〜16)および表2(比較品:比較例1〜10)に示す化学組成からなる耐火物を作製した。
なお、表1,表2に記載する「残部」とは、ZrOの安定化材や工業的に不可避の不純物,微量の金属などのことである。また、表1,表2の化学組成とは、前記した「耐火原料配合物を成形し焼成した後の試料の化学組成(1000℃/3hの還元焼成後の化学組成)」を表し、それを“質量%”で示したものである。
【0040】
【表1】
Figure 2004331462
【0041】
【表2】
Figure 2004331462
【0042】
(本発明品,比較品に対する評価試験)
得られた本発明品(実施例1〜16)および比較品(比較例1〜10)に対して、次に説明する「耐食性」,「耐組織脆化」,「割れの有無」および「総合評価」について評価し、その結果を表1,表2に併記した。
【0043】
「耐食性」は、高周波誘導炉での溶鋼中への浸漬実験により評価したものであり、「耐組織脆化」は、浸漬実験で浸漬後のサンプルを分析し、強度測定することにより評価したものである。これらの各測定項目について、非常に優れているものを「◎」、優れているものを「○」、実用レベルに達しないものを「×」として評価した。一方、「割れの有無」は、耐スポーリング性を同じく高周波誘導炉への浸漬実験により評価したものであり、割れが認められたものを「有」、認められなかったものを「無」として評価した。
また、「総合評価」については、割れが無く、耐食性・耐組織脆化が共に非常に優れているものを「◎」、優れているものを「○」、いずれかが実用レベルを満足しないために実機に適用できないものを「×」として評価した。
【0044】
表1の評価結果から明らかなように、本発明で特定する範囲内の耐火物からなる本発明品(実施例1〜16)は、いずれも、割れが無く、耐食性・耐組織脆化が共に優れているものであった。これに対して、表2の評価結果から、本発明で特定する範囲外の耐火物からなる比較品(比較例1〜10)では、総合評価として全て「×」であり、実機に適用できないものであった。
【0045】
「実施例17〜19,比較例11〜12」
この実施例17〜19,比較例11〜12は、「SiOのSiC化反応確認試験」および「浸漬ノズル形状に対する浸漬実験」をするための例である。
【0046】
(試料の作製,SiOのSiC化反応確認試験)
電融アルミナ,溶融シリカ,黒鉛,電融ジルコニアからなる耐火原料配合物に、バインダー(フェノール樹脂)を外掛けで5〜20質量%加え、角柱形状に成形した後、200℃で20時間乾燥し、続いて、還元雰囲気中1000℃で3時間焼成することにより、表3に示す「加熱前」の化学組成からなる試料(実施例17〜19,比較例11〜12)を作製した。
なお、表3に記載する「残部」とは、前記表1,表2と同様、ZrOの安定化材や工業的に不可避の不純物,微量の金属などのことである。また、表3の「加熱前」の化学組成とは、前記した「耐火原料配合物を成形し焼成した後の試料の化学組成(1000℃/3hの還元焼成後の化学組成)」を表し、それを“質量%”で示したものである。
【0047】
得られた試料(実施例17〜19,比較例11〜12)を、さらに、窒素雰囲気中1550℃で3時間の加熱を行い、この加熱後の化合物の組成を分析し、この分析結果を“質量%”で、表3に「加熱後」として示した。また、加熱後の試料について、曲げ強度(MPa)および弾性率(GPa)を測定し、同じく表3に示した。
【0048】
【表3】
Figure 2004331462
【0049】
表3の“加熱後の分析値”からみて、適量のZrOを存在させることにより、SiOのSiC化反応を促進させることを確認した。また、表3のZrOの添加量による“加熱後の曲げ強度,弾性率”の変化(実施例17〜19と比較例11の対比)からみて、SiOがSiC化することにより、強度および弾性率が向上することが確認できた。
【0050】
(サンプルの作製,浸漬ノズル形状に対する浸漬実験)
前記「SiOのSiC化反応確認試験」で用いた試料(実施例17〜19,比較例11〜12)の“角柱形状”に成形したものに代えて、“浸漬ノズル形状”に成形し、還元雰囲気中1000℃で3時間焼成後に、表3に示す「加熱前」の化学組成となるように調整した浸漬ノズル形状のサンプル(実施例17〜19,比較例11〜12)を作製した。
【0051】
この浸漬ノズル形状のサンプル(実施例17〜19,比較例11〜12)を用いて、“高周波誘導炉での溶鋼中への浸漬実験”を行い、前記した実施例1〜16,比較例1〜10と同様に、「耐食性」,「耐組織脆化」,「割れの有無」,「総合評価」で評価し、その結果を、次の評価基準に基づいて評価して、表3に示した。
「耐食性」および「耐組織脆化」の評価は、比較例11と比較して、非常に優れているものを「◎」、同程度以上のものを「○」、劣るものを「×」として評価した。また、それに基づいて総合評価した。
【0052】
表3に示す「耐食性」,「耐組織脆化」,「割れの有無」,「総合評価」の評価からみて、Al−SiO−C系材質へのZrOの添加は、本発明で特定する範囲内の量であれば、SiOのSiC化により組織の改善が図られ、耐食性の改善が見込めるが(実施例17〜19参照)、ZrOの添加量が過剰となると、逆に組織の脆化につながるため(比較例12参照)、好ましくないことがわかる。
【0053】
【発明の効果】
以上詳記したとおり、本発明に係る鋼の連続鋳造ノズル用耐火物は、該耐火物を構成する化学組成が、少なくとも「Al:40〜80質量%、C:10〜40質量%、SiO:6〜40質量%、ZrO:0.1〜10質量%、残部がその他の耐火性物質および工業的不可避不純物からなる」ことを特徴とする。このように適量のSiOとZrOを併用することで、SiOの適度なSiC化を促進させ、耐磨耗性,耐食性,耐酸化性,耐浸潤性などの特性を有する耐火物を提供することができる。
【0054】
また、本発明に係る鋼の連続鋳造ノズルは、該ノズルの少なくとも本体部および/または浸漬部、特に、溶融スラグと常時接触する部位(即ちパウダーライン部またはスラグライン部)を除く本体部および/または浸漬部が、前記耐火物で構成される」ことを特徴とし、これにより、本体部および/または浸漬部の耐食性(鋼中微量成分や巻き込まれた溶融スラグに対する耐食性)に優れた鋼の連続鋳造用ノズルを提供することができ、特に、ノズルの本体部や浸漬部に適用されるアルミナ−シリカ−黒鉛系材質の耐食性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】浸漬ノズルの縦断面図であって、本発明の耐火物を、浸漬ノズルのパウダーライン部以外の本体部および浸漬部に用いた例を示す図である。
【図2】ロングノズルの縦断面図であって、本発明の耐火物を、ロングノズルのスラグライン部以外の本体部および浸漬部に用いた例を示す図である。
【図3】ロングノズルの縦断面図であって、本発明の耐火物を、ロングノズルのスラグライン部以外の本体部に用いた例を示す図である。
【図4】セミノズルの縦断面図であって、本発明の耐火物を、セミノズルのパウダーライン部以外の本体部に用いた例を示す図である。
【符号の説明】
10 浸漬ノズル
20,30 ロングノズル
40 セミノズル
11,21,31,41 本体部
12,42 パウダーライン部
22,32 スラグライン部
13,23 浸漬部

Claims (3)

  1. 鋼の連続鋳造用ノズルとして使用される耐火物であって、該耐火物を構成する化学組成が、少なくともAl:40〜80質量%、C:10〜40質量%、SiO:6〜40質量%、ZrO:0.1〜10質量%、残部がその他の耐火性物質および工業的不可避不純物からなることを特徴とする鋼の連続鋳造用ノズル用耐火物。
  2. 前記ZrOは、ZrO含有量が80%以上である原料を使用することを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造用耐火物。
  3. 浸漬ノズル,ロングノズルまたはセミノズルである鋼の連続鋳造用ノズルであって、該ノズルの少なくとも本体部および/または浸漬部が、請求項1または請求項2に記載の耐火物で構成されることを特徴とする鋼の連続鋳造用ノズル。
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