JP2004330645A - インクジェット記録装置およびインクジェット記録システム - Google Patents
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Abstract
【課題】スカッフ発生の可能性を前もって判定し、その判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを自動的に調整することで、スカッフ不良の発生を低減することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムを提供する。
【解決手段】インクを吐出する印字ヘッドの高さの調整が可能なインクジェット記録装置において、ホスト装置11から受信したプリントデータ12の所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッド1の高さを調整するヘッド高さ調整手段14と、を備える。
【選択図】 図6
【解決手段】インクを吐出する印字ヘッドの高さの調整が可能なインクジェット記録装置において、ホスト装置11から受信したプリントデータ12の所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッド1の高さを調整するヘッド高さ調整手段14と、を備える。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク吐出動作を行う印字ヘッドの高さを調整することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムに係り、より詳しくは、プリントデータに基づいて印字ヘッドの高さを印字動作中に自動的に調整する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のインクジェットプリンタ装置は、通常、一つのプリントジョブに対して同じ高さに設定した印字ヘッドで印刷動作が行われる。従って、印刷ページ毎に異なるヘッド高さで印刷するのは、手動で高さの変更を行う場合を除いて極めて困難であった。また、もし、印刷ページ毎にヘッド高さを調整できたとしても、印刷ページ毎にユーザー自身が設定替えを行わなければならないため、その操作性には問題が残る。
【0003】
一方、一定面積に多量のインク吐出を要する印刷データでは、インク中に含まれている水分によって、印字動作中に、印刷用紙が膨潤して軟化し波打つことがある。そのために、通常のヘッド高さでは、印字ヘッドに印刷用紙が摺接して印刷面が擦られ、印字品位が著しく低下することがあった。
【0004】
そこで、このような難点を解消するために、例えば、印刷動作中に、常に、印字ヘッドと印刷用紙との間の距離を計測し、その距離を一定に保つために、アクチュエータを用いて印字ヘッドの高さを調整するようにしたインクジェット記録装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−291475号公報(図4,図5、段落「0030」〜「0033」)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特許文献1の場合、もともと反りやうねりを持つ被印刷面を対象としているため、印刷動作中に、インク中に含まれている水分によって発生する波打ちには対処することはできなかった。
【0007】
このような印刷動作中に発生する波打ちに対処しようとすると、高精度な距離計測センサーを高速で移動させ、更に、反転移動による強度な振動が与えられる該ヘッド上に搭載しなければならない。また、高速応答かつ高精度なアクチュエータを該ヘッド上に搭載する必要もあり、その品質維持も必要とされるため、コストアップは避けられなかった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、スカッフ発生の可能性を前もって判定し、その判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを自動的に調整することで、スカッフ不良の発生を低減することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。
【0010】
(1)インクを吐出する印字ヘッドの高さの調整が可能なインクジェット記録装置において、
ホスト装置から受信したプリントデータの所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成においては、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して軟化し波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損や磨耗を防ぐことができる。
【0012】
(2)前記プリントデータ評価手段は所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を前記所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定することを特徴とする。
【0013】
この構成においては、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する危険性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、より正確にスカッフの発生の可能性を判定できる。なお、インク吐出量に代えて吐出ドット数を算出してもよい。また、所定基準インク量に代えて所定基準ドット数と比較判定してもよい。
【0014】
(3)複数のプリントブロックデータ保持手段を備え、当該領域の印字に先立って調整する印字ヘッドの高さを決定することを特徴とする。
【0015】
この構成においては、スカッフが発生する可能性のある箇所へ、徐々にヘッド高さを調整できるので、ヘッド高さの変化による影響が目立たなくなる。
【0016】
(4)前記印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うことを特徴とする。
【0017】
この構成においては、1枚の用紙における印刷の途中では、ヘッド高さを調整しないので、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0018】
(5)印刷用紙の種類を選択指定する手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を備え、ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることを特徴とする。
【0019】
この構成においては、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正な印字ヘッドの高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0020】
(6)プリントデータによって前記印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定しておく手段を備えることを特徴とする。
【0021】
この構成においては、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて、適正なヘッド高さに調整することができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0022】
(7)連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、前記印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができる手段を備えることを特徴とする。
【0023】
この構成においては、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替えの発生を認めるか否かを事前に設定することができる。
【0024】
(8)前記印字ヘッドの高さ調整機能を有するインクジェット記録装置と印刷データを送信するホスト装置を通信可能に接続したインクジェット記録システムにおいて、
前記ホスト装置は、プリントデータの所定領域ごとのインク吐出状態を評価するプリントデータ評価手段と、前記プリントデータに評価結果を付加する評価結果付加手段と、を備え、前記インクジェット記録装置は、前記ホスト装置より受信したプリントデータから評価結果を抽出する評価結果抽出手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて前記印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
この構成においては、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損や磨耗を防ぐことができる。
【0026】
(9)前記プリントデータ評価手段は、所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を前記所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定することを特徴とする。
【0027】
この構成においては、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する可能性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、スカッフが発生する可能性をより精度よく判定できる。なお、インク吐出量に代えて吐出ドット数を算出してもよい。また、所定基準インク量に代えて所定基準ドット数と比較判定してもよい。
【0028】
(10)前記ホスト装置が、プレスキャン機能を有するスキャナであり、前記プリントデータ評価手段はプレスキャンの粗いデータに対して評価を行うことを特徴とする。
【0029】
この構成においては、コピー印刷におけるホスト側でのインク吐出量算出を行う手段として、その算出用の画像を前もって取得することにより、通常の画像読込みやデータ変換処理に負担をかけることを回避できる。つまり、処理速度の低下を回避することができる。
【0030】
(11)前記所定印字エリアを、プリントブロックデータとして記憶手段に記憶させることを特徴とする。
【0031】
この構成においては、吐出量の多い箇所のみヘッド高さを高くし、そうでないところは精細な印字に最も適した通常のヘッド高さに調整することができる。
【0032】
(12)前記ホスト装置は、前記印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うことを特徴とする。
【0033】
この構成においては、1枚の用紙における印刷の途中でヘッド高さを調整しないので、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0034】
(13)前記ホスト装置は、印刷用紙の種類を選択指定する手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を備え、
ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることを特徴とする。
【0035】
この構成においては、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正なヘッド高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0036】
(14)前記ホスト装置は、前記プリントデータによって、前記印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定するヘッド高さ設定手段を備えることを特徴とする。
【0037】
この構成においては、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替え発生を認めるか否かを事前に設定できるようにする。
【0038】
(15)前記ホスト装置は、連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、前記印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができるヘッド高さ維持手段を備えることを特徴とする。
【0039】
この構成においては、連続した印刷ページにわたって印字ヘッドの高さを高く設定する必要があるデータにおいて、各ページ毎にヘッド高さ切替え動作を発生させなくとも目的を果たすことを可能にし、不要な動作を削減し、全体的な処理スピード向上を実現できる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムについて図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0041】
図1は、スカッフ不良発生の確率に影響を与えるプリントジョブデータの具体例を示す。耐水性の低い普通紙メディアの様な印刷物に対し、図1(a)の矢符(A)に示す文章主体のようなページあたりのインク吐出比率値が低い(インク吐出面積10%以下程度)プリントデータの場合は、スカッフの発生率は低い。
【0042】
一方、図1(b)の矢符(B)に示すような、ほぼ100%に近いインク吐出比率値であるようなプリントデータの場合、印刷物がインクの液体成分をその内に吸収してしまうと膨潤してしまうため、その変形により、印字動作中の印字ヘッドに接触して印刷面が擦られるというスカッフが発生する可能性が高くなる。スカッフが発生すると印字品位が著しく低下する。
【0043】
図2は、印刷処理動作中におけるスカッフ対策処理に関する基本的な流れを示す。図2(a)にて、s1の(開始)とは、ホスト側(本発明のホスト装置)からプリンタコントローラ13(本発明の制御部,図6〜図8参照)に印刷動作の要求が与えられ、該印刷動作処理が開始された場合でのスカッフ処理についての基本フローの入口を示している。なお、ヘッド高さ設定(印字ヘッド1の高さ,図3〜図5参照)における[Normal]設定とは、通常の最適なヘッド高さ位置にセットされている状態をいう。また、同[High]設定とは、ヘッド高さを通常より高くし、印字ヘッドを印刷物から若干距離を離す位置にセットすることにより、スカッフ不良発生を低減させるための設定をいう。また、プリントデータからのインク吐出量によって実施されるヘッド高さ自動調整を、スカッフ対策処理と記述する。
【0044】
この基本フローでは、まず、s2の(ユーザー設定の確認)により、該プリントジョブのデータに含まれるスカッフ対策に関するユーザー設定値を抽出/確認し、このとき[OFF]だった場合、スカッフ対策フローをスキップし、s3の(設定=ON)の条件分岐から直接にs7の(終了)に至る。これに対して、s3の(設定=ON)の条件分岐にて、[ON]の場合にスカッフ対策フローに移行する。
【0045】
その場合、s4の(プリントデータの確認)において、与えられたプリントデータをプリンタコントローラ自身が審査し、該プリントデータに付加されたインク吐出比率値が、前述の図1に示す様なスカッフが発生しそうなデータであるか確認し、s5の(スカッフ対策動作処理)に移行する。同処理が実行された後、s6の(終了)に至り、この基本フローを完了する。
【0046】
図2(b)に示すs7の(開始)は、s3において、ユーザーによるスカッフ対策実施に関する設定がONの場合に移行した場合に発生するスキャナ対策処理詳細フローの入口を示している。このスキャナ対策処理詳細フローでは、まず、前述するs4の(プリントデータの確認)と同様の処理がs8の(プリントデータの確認)で行われ、s9の(スカッフ対策判定)の条件分岐において、右上の表に示すような判定基準にて判定が実施される。
【0047】
スカッフ対策判定が[YES]となるのは、印刷物メディア設定が耐水性に低いメディア設定であり、かつ、インク吐出比率値が基準値以上の場合のみである。もし、スカッフ対策処理が必要として[YES]判定となった場合、s10の(現状のヘッド高さ設定)に移行する。このs10の(現状のヘッド高さ設定)において、現状のヘッド高さ設定が[Normal]だった場合、スカッフ対策として[High]設定への切替えが必要となるため、s11の(該ページプリント前一時停止)処理に移行する。
【0048】
s10の(現状のヘッド高さ設定)において、現状設定が[High]だった場合は、s11以降はスキップされ、直接s14の(次ページ有無)の条件分岐に移行する。前述のs11の(該ページプリント前一時停止)にて、該ページの印刷が開始する直前に、該動作を一旦停止し、s12の(印字ヘッド高さを[High]に切替え)にて、スカッフ対策としてヘッドの高さを[Normal]から[High]に切替える処理を行い、s13の(該ページプリント再開)にて、停止していたプリント動作を再開し、s14の(次ページ有無)の条件分岐に移行する。
【0049】
前述のs9の(スカッフ対策判定)の条件分岐において、スカッフ対策判定が[NO]と判断された場合、s16の(現状のヘッド高さ設定)の条件分岐に移行する。この条件分岐はs10の(現状のヘッド高さ設定)の条件分岐とは逆に、スカッフ対策が不要と判断されているにも関わらず、直前のページのプリントにおいてスカッフ対策処理が実施されたこと等により、ヘッド高さ設定が[High]であった場合に、該設定を[Normal]にリセット処理するために、s17の(該ページプリント前一時停止)の処理に移行する。
【0050】
s16の(現状のヘッド高さ設定)において、現状設定が[Normal]だった場合は、s17の(該ページプリント前一時停止)以降はスキップされ、直接s14の(次ページ有無)の条件分岐に移行する。前述のs17の(該ページプリント前一時停止)にて、該ページの印字が開始する直前に、該動作を一旦停止し、s18の(ヘッド高さ[Normal]切替え)にて、スカッフ対策としてヘッド高さを[High]から[Normal]に切替え処理を行い、s19の(該ページプリント再開)にて、停止していたプリント動作を再開し、s14の(次ページ有無)の条件分岐に移行する。
【0051】
s14の(次ページ有無)の条件分岐において、もしプリントを行うページが次に残されている場合、次ページ有りを[YES]とし、s8の(プリントページの確認)に戻り、以下、該次ページの処理として同様の処理を繰り返す。s14の(次ページ有無)において、次ページ有りを[NO]としたとき、s15の(終了)に以降し、そのまま前述するs6の(終了)に移行する。
【0052】
図3ないし図5において、スカッフ対策処理を、プリント部を正面と側面から見た印刷過程の模式図により具体的に説明する。
図3(a),(b)は、〔通常状態の印刷(ヘッド高さ=[Normal]設定)〕において、スカッフ対策を必要としないような通常状態での動作を示す。ヘッド(印字ヘッド)1は、印字ヘッド搬送ロッド2により支えられた形で左右に走査しながら、必要に応じたインク吐出を行うことで、その直下に搬送されてくる用紙(印刷物)3に印刷を行う。
【0053】
この通常状態では、スカッフ対策処理を行う必要が無く、印字品位を高めるために、ヘッドと印刷物の空間を極力少なくする必要がある。その場合、ヘッド高さ設定は[Normal]として、高さ切替え回転軸4は、ヘッド搬送ロッド2の中心軸に対して上側となっている。なお、高さ切替え回転軸4のプリンタシャシに対する位置は固定されている。
【0054】
図4(a),(b)は、〔スカッフ発生時の状態(ヘッド高さ=[Normal]設定)〕において、ページあたりのインク吐出量が多いために印刷物5が膨潤してしまい、スカッフ不良が発生する状況を示す。この場合、印刷物5が膨潤したことによって印刷中に変形してしまっており、ヘッド高さが[Normal]の設定である場合、ヘッド1が極力印刷物5に近接するため、結果として、走査中のヘッド1が印刷物5に擦れてしまい、印刷物5の破損や汚染、ヘッド1の不必要な消耗などの障害が発生してしまう。
【0055】
図5(a),(b)は、〔スカッフ対策時の状態(ヘッド高さ=[High]設定)〕において、上記のスカッフが発生する状況に際し、ヘッド1を印刷物5から若干距離を離すことにより、スカッフ対策を行った状態を示している。この場合、ヘッド搬送ロッド2を高さ切替え回転軸4に対して回転させることにより、ヘッド搬送ロッド5の中心軸に対して高さ切替え回転軸4が下側にくることにより、ヘッド1が印刷物5に対して相対的に高い配置となることにより、互いの距離が離れるため、スカッフの発生を抑制することが可能となる。
【0056】
図6ないし図8は、スカッフ対策処理を行うか否かの判定実施のための各プリントデータのインク吐出比率値がどのような方式でスカッフ対策判定に転送/反映されるかを概念的に示す制御系統ブロック図である。
【0057】
図6では、PC(パーソナルコンピュータ)11をホスト(本発明のホスト装置)とし、PC11からのプリント要求による印刷動作において、PC11側でプリントデータ生成を行う際に、インク吐出比率値も同時に生成し、プリンタ側に転送するプリントデータ12に付加する方式を示している。
【0058】
そのインク吐出比率値を付加されたプリントデータ12は、該データの展開処理が行われる際にプリンタコントローラ(本発明の制御部)13によりピックアップされ、その時点でスカッフ対策判定処理に利用され、その比較判定結果に基づいて、ヘッド高さ調整手段14によってヘッド(本発明の印字ヘッド)1の高さが調整される。
【0059】
図7では、画像読み取りユニット(スキャナ)15と組み合わせたコピー印刷処理を行う想定での、スキャナ15をホスト(本発明のホスト装置)とし、スキャナ15からの要求による印刷動作において、スキャナ側でプリントデータ生成を行う際に、インク吐出比率値を同時に生成し、プリンタ側に転送するプリントデータ12に付加する方式を示している。
【0060】
この場合、インク吐出比率値を付加されたプリントデータ12は、該データの展開処理が行われる際にプリンタコントローラ13によりピックアップされ、その時点でスカッフ対策判定処理に利用される。
【0061】
図8では、スカッフ対策を行うか否かの判定に関する全ての処理を、プリンタコントローラ13の内部処理にて行う方式を示している。この場合、PC11やスキャナ15などのプリントデータ12に対するホスト側の対応如何に関わらず、受信したプリントデータ12を、プリンタコントローラ13内部のデータ展開/ブロック化処理の段階で、そのとき生成されたプリントブロックデータに関するインク吐出比率値を同時に生成し、即時的にスカッフ対策判定処理を行う。
【0062】
図8の場合、図6と図7に示す方式との相違は、インク吐出比率値をプリンタコントローラ13の内部で生成すること、および、該インク吐出比率値は、同一プリントページ内に関し複数生成されるプリントブロックデータ毎に生成し、その時々にてスカッフ対策処理を行うかどうかの判定を行うことである。つまり、図6および図7は、1プリントページに関するスカッフ対策判定は1度行うのみであるのに対して、図8の場合は、最大回数として、生成されるプリントブロックデータ個数分の判定が行われることになる。
【0063】
ところで、上述のプリンタコントローラ13は、具体的には、例えば、以下のように構成することができる。すなわち、PC11から受信したプリントデータ12の所定領域ごとのインク吐出状態を評価するプリントデータ評価手段と、評価されたインク吐出状態を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいてヘッド1の高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備え、プリントデータ評価手段により、所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、比較判定手段により、算出されたインク吐出量を所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定するように構成することができる。
【0064】
このような構成により、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して軟化し波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損や磨耗を防ぐことができる。
【0065】
また、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する危険性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、より正確にスカッフの発生の可能性を判定できる。
【0066】
さらに、プリンタコントローラ13に、複数のプリントブロックデータ保持手段を設けることにより、所定印字エリアの印字に先立って調整する印字ヘッド1の高さを決定することができ、これにより、スカッフが発生する可能性のある箇所へ、徐々にヘッド高さを調整できるので、ヘッド高さの変化による影響が目立たなくなる。
【0067】
また、印字ヘッド1の高さの調整をページ単位で行うことにより、1枚の用紙における印刷の途中では、ヘッド高さを調整しなくて済むため、ヘッド高さの切替えが容易になる。あるいは、印刷用紙の種類を選択指定する用紙選択手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、をプリンタコントローラ13に具備させ、ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることで、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正な印字ヘッドの高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0068】
さらに、プリントデータ12によって印字ヘッド1の高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定しておくヘッド高さ設定手段を設けることで、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて、適正なヘッド高さに調整することができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0069】
そして、連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合には、印字ヘッド1の高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができるヘッド高さ維持手段を設けることで、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替えの発生を認めるか否かを事前に設定することができる。
【0070】
また、上述のようなインクジェット記録装置と印刷データを送信するホスト装置を通信可能に接続したインクジェット記録システムにおいて、前記ホスト装置には、プリントデータの所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、前記プリントデータに評価結果を付加する評価結果付加手段と、前記ホスト装置より受信したプリントデータから評価結果を抽出する評価結果抽出手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッド1の高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を具備させることができる。
【0071】
このような構成によれば、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して波打つおそれがあるプリントデータ12を印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッド1と用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッド1の破損や磨耗を防ぐことができる。
【0072】
そして、上述のプリントデータ評価手段により、所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段により、算出されたインク吐出量を所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定すれば、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する可能性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、スカッフが発生する可能性をより精度よく判定できる。
【0073】
また、プレスキャン機能を有するスキャナをホスト装置として、プリントデータ評価手段により、プレスキャンの粗いデータに対して評価を行わせれば、コピー印刷におけるホスト側でのインク吐出量算出を行う手段として、その算出用の画像を前もって取得することにより、通常の画像読込みやデータ変換処理に負担をかけることを回避できる。つまり、処理速度の低下を回避することができる。
【0074】
そして、所定印字エリアを、プリントブロックデータとして記憶手段に記憶させることにより、吐出量の多い箇所のみヘッド高さを高くし、そうでないところは精細な印字に最も適した通常のヘッド高さに調整することができる。また、印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うことにより、1枚の用紙における印刷の途中でヘッド高さを調整しないので、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0075】
さらに、ホスト装置に、印刷用紙の種類を選択指定する手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を設け、ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることで、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正なヘッド高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0076】
また、ホスト装置に、プリントデータによって、印字ヘッド1の高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定するヘッド高さ設定手段を設ければ、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替え発生を認めるか否かを事前に設定できるようにする。
【0077】
そして、連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、前記印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができるヘッド高さ維持手段をホスト装置に設けることで、連続した印刷ページにわたって印字ヘッドの高さを高く設定する必要があるデータにおいて、各ページ毎にヘッド高さ切替え動作を発生させなくとも目的を果たすことを可能にし、不要な動作を削減し、全体的な処理スピード向上を実現できる。
【0078】
次いで、図9において、図2に示すスカッフ対策詳細に関するフロー内での、特にs8の(プリントページデータの確認)について、図6および図7に示すブロック図に基づいてより詳細に説明する。
【0079】
まず、〔図6,図7に関するプリントページデータの確認フロー〕において、PCや画像読み取りユニットなどのホスト側にてインク吐出比率値を作成する方式でのフローを説明する。ホスト側において、印刷を行うための画像データのプリントデータへの変換を行う際に、ページあたりのインク吐出比率値情報をs21の(プリントページ毎のインク吐出比率値の生成)にて生成し、該情報をs22の(転送するプリントデータへのインク吐出比率値の付加)において、プリントデータ12に付加する。
【0080】
そのようにして組み合わされたプリントデータ12をs23の(プリンタへのデータ転送)にてプリンタへ転送し、プリンタ側はs24の(プリントデータの受信)にて受信する。s25の(開始)は、図2でのs21とs27と同等に、プリンタコントローラ13での内部処理の開始を示しており、s25の(開始)以後は、図2のs24の(プリントページデータの確認)にて実施されるより詳細なフローを展開したものである。
【0081】
まず、s26の(プリントデータの解析)にて、ホスト側より受信したデータの形式を解析し、その解析結果より、s27の(データ展開/ブロック化)にて印字ヘッド1に出力できる形式に変換/再統合を行う。s27の段階で、ホスト側によって付加されていたインク吐出比率値がs28の(インク吐出比率値の分離)にて分離され、s29の(スカッフ対策判定処理への転送)とs30の(スカッフ対策判定)によって、該情報がスカッフ対策の必要なプリントデータか否かの判定が行われる。その判定結果により、(スカッフ対策:YES判定)もしくは(スカッフ対策:NO判定)によって、次工程で利用される判定情報を生成し、図2でのs9に示す(スカッフ対策処理)に移行する。
【0082】
次に、図10において、〔図8に関するプリントページデータの確認フロー〕において、インク吐出比率値をプリンタコントローラ内部にて生成する方式でのフローを説明する。ただし、説明の簡略化のため、前述の〔図6,図7に関するプリントページデータの確認フロー〕との相違点について述べる。
【0083】
まず、ホスト側の処理においては、インク吐出比率値生成および付加に関する処理は不要であるため、s33の(プリンタへのデータ転送)のみである。s34の(プリントデータの受信)において、該プリントデータを受信したプリンタは、以後、s37の(データ展開/ブロック化)までを同様に行うが、s38の(インク吐出比率値の測量/生成)において、スカッフ対策判定に必要となるインク吐出比率値を、プリンタブロックデータ毎に算出/生成し、s39の(スカッフ対策判定への転送)にて、該情報をs40の(スカッフ対策判定)へ引き渡す。なお、この方式の場合、プリントブロックデータ毎にインク吐出比率値を生成するため、s39への処理に移行するのとは別に、s37の(データの展開/ブロック化)からの処理が、同一プリントページ内の全てのデータ展開が完了するまで繰り返し行われることとなる。
【0084】
図11により、コピー印刷処理の場合におけるホスト側としての画像読み取りユニットによるプリントデータのインク吐出比率値生成フローについて説明する。まず、画像読み取りを行う画像(原稿)に対し、s51の(プレスキャン)にて、粗めの画像一時読み込み(プレスキャン)を行う。
【0085】
このとき、読み込まれたプレスキャン画像に基づいて、s52の(インク吐出比率値分析/情報化)にて、1ページあたりに占めるインク吐出比率値を概算生成する。s53の(本画像読み込み/プリントデータ形成)にて、プリントデータ12を生成し、s54の(インク吐出比率値のプリントデータへの付加)にて、前記プリントデータ12へ、既に生成されたインク吐出比率値を付加する。そして、s55の(プリントデータの転送)により、インク吐出比率値が付加されたプリントデータ12がプリンタコントローラ13へと転送される。
【0086】
図12により、プリントデータ12と各プリントブロックデータ1,2,3,…との関連、および、各プリントブロックデータ1,2,3,…でのインク吐出比率値により、どのようにスカッフ対策判定が行われるかを、例をあげて説明する。
【0087】
まず、1ページ分のプリントデータは、プリンタのヘッド走査方向に合わせ、いくつかのブロックに分割されたデータ(プリントブロックデータ)として、印字実行順に再構築される。
【0088】
もし、スカッフ対策判定基準を、インク吐出比率値60%以上となった場合にスカッフ対策処理が発動するとしたとき、まず、プリントブロックデータ1のインク吐出比率値は、基準に満たない(60%以下)ため、スカッフ対策は発動しない。
【0089】
次に、プリンタブロックデータ2についてのインク吐出比率値が追加されるが、プリンタブロックデータ2のみであれば基準を満たしているが、先のプリントブロックデータ1のものと累積した場合、60%には若干満たないため、スカッフ対策処理は発動しない。
【0090】
プリントブロックデータ3のインク吐出比率値が累積された場合、その時点でのインク吐出比率値が60%を超えている(約70%)ため、ここでスカッフ対策処理が発動する。
【0091】
同様に、プリントブロックデータ4およびプリントブロックデータ5のインク吐出比率値の累積が加わるが、それでも60%以上となっているため、スカッフ対策はそのまま継続する。
【0092】
プリントブロックデータ6のインク吐出比率値が累積された時点で、インク吐出比率値が60%以下となるため、この時点で、スカッフ対策処理をリセット(解除)する。
【0093】
以上説明したように、ホスト装置等により与えられたプリントデータによってスカッフ不良発生の可能性を判定し、その判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを自動的に調整することで、スカッフ不良の発生を低減することができる。
【0094】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、以下のような効果を奏する。
【0095】
(1)ホスト装置から受信したプリントデータの所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えるので、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して軟化し波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損/磨耗を防ぐことができる。
【0096】
(2)プリントデータ評価手段は所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定するので、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する危険性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、より正確にスカッフの発生の可能性を判定できる。
【0097】
(3)複数のプリントブロックデータ保持手段を備え、当該領域の印字に先立って調整する印字ヘッドの高さを決定するので、スカッフが発生する可能性のある箇所へ、徐々にヘッド高さを調整することができるため、ヘッド高さの変化による影響が目立たなくなる。
【0098】
(4)印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うので、1枚の用紙における印刷の途中では、ヘッド高さを調整しないので、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0099】
(5)ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いるので、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正な印字ヘッドの高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0100】
(6)プリントデータによって印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定しておく手段を備えるので、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて、適正なヘッド高さに調整することができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0101】
(7)連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができる手段を備えるので、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替えの発生を認めるか否かを事前に設定することができる。
【0102】
(8)印字ヘッドの高さ調整機能を有するインクジェット記録装置と印刷データを送信するホスト装置を通信可能に接続したインクジェット記録システムにおいて、ホスト装置は、プリントデータの所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、前記プリントデータに評価結果を付加する評価結果付加手段と、を備え、前記インクジェット記録装置は、前記ホスト装置より受信したプリントデータから評価結果を抽出する評価結果抽出手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えるので、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損/磨耗を防ぐことができる。
【0103】
(9)プリントデータ評価手段は所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定するので、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する可能性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、スカッフが発生する可能性をより精度よく判定できる。なお、インク吐出量に代えて吐出ドット数を算出してもよい。また、所定基準インク量に代えて所定基準ドット数と比較判定してもよい。
【0104】
(10)ホスト装置がプレスキャン機能を有するスキャナであり、プリントデータ評価手段はプレスキャンの粗いデータに対して評価を行うので、コピー印刷におけるホスト側でのインク吐出量算出を行う手段として、その算出用の画像を前もって取得することにより、通常の画像読込み/データ変換処理に負担をかけることを回避できる。つまり、処理速度の低下を回避することができる。
【0105】
(11)所定印字エリアはプリントブロックデータであるので、吐出量の多い箇所のみヘッド高さを高くし、そうでないところは精細な印字に最も適した通常のヘッド高さに調整することができる。
【0106】
(12)印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うので、1枚の用紙における印刷の途中でヘッド高さを調整することなく、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0107】
(13)印刷用紙の種類を選択指定する手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を備え、ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いるので、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正なヘッド高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0108】
(14)プリントデータによって、印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定しておく手段を備えるので、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替え発生を認めるか否かを事前に設定することができる。
【0109】
(15)連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができる手段を備えるので、連続した印刷ページにわたって印字ヘッドの高さを高く設定する必要があるデータにおいて、各ページ毎にヘッド高さ切替え動作を発生させなくとも目的を果たすことを可能にし、不要な動作を削減し、全体的な処理スピード向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なスカッフ不良の発生確率が低い場合と高い場合とを比較した説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムにおけるスカッフ対策処理のフローチャートである。
【図3】通常の印刷状態の説明図である。
【図4】スカッフ発生時の印刷状態の説明図である。
【図5】スカッフ対策時の印刷状態の説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムにおけるインク吐出比率値がスカッフ対策判定に転送/反映される経路を説明するための制御系統ブロック図である。
【図7】同別の制御系統ブロック図である。
【図8】同異なる制御系統ブロック図である。
【図9】同プリントデータの確認フローの一例を示すフローチャートである。
【図10】同別のフローチャートである。
【図11】同プリントデータのインク吐出比率値生成フローを示すフローチャートである。
【図12】同プリントデータと各プリントブロックデータとの関連を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
1−印字ヘッド
11,15−ホスト装置
12−プリントデータ
13−制御部
14−ヘッド高さ調整手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク吐出動作を行う印字ヘッドの高さを調整することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムに係り、より詳しくは、プリントデータに基づいて印字ヘッドの高さを印字動作中に自動的に調整する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のインクジェットプリンタ装置は、通常、一つのプリントジョブに対して同じ高さに設定した印字ヘッドで印刷動作が行われる。従って、印刷ページ毎に異なるヘッド高さで印刷するのは、手動で高さの変更を行う場合を除いて極めて困難であった。また、もし、印刷ページ毎にヘッド高さを調整できたとしても、印刷ページ毎にユーザー自身が設定替えを行わなければならないため、その操作性には問題が残る。
【0003】
一方、一定面積に多量のインク吐出を要する印刷データでは、インク中に含まれている水分によって、印字動作中に、印刷用紙が膨潤して軟化し波打つことがある。そのために、通常のヘッド高さでは、印字ヘッドに印刷用紙が摺接して印刷面が擦られ、印字品位が著しく低下することがあった。
【0004】
そこで、このような難点を解消するために、例えば、印刷動作中に、常に、印字ヘッドと印刷用紙との間の距離を計測し、その距離を一定に保つために、アクチュエータを用いて印字ヘッドの高さを調整するようにしたインクジェット記録装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−291475号公報(図4,図5、段落「0030」〜「0033」)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特許文献1の場合、もともと反りやうねりを持つ被印刷面を対象としているため、印刷動作中に、インク中に含まれている水分によって発生する波打ちには対処することはできなかった。
【0007】
このような印刷動作中に発生する波打ちに対処しようとすると、高精度な距離計測センサーを高速で移動させ、更に、反転移動による強度な振動が与えられる該ヘッド上に搭載しなければならない。また、高速応答かつ高精度なアクチュエータを該ヘッド上に搭載する必要もあり、その品質維持も必要とされるため、コストアップは避けられなかった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、スカッフ発生の可能性を前もって判定し、その判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを自動的に調整することで、スカッフ不良の発生を低減することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。
【0010】
(1)インクを吐出する印字ヘッドの高さの調整が可能なインクジェット記録装置において、
ホスト装置から受信したプリントデータの所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成においては、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して軟化し波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損や磨耗を防ぐことができる。
【0012】
(2)前記プリントデータ評価手段は所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を前記所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定することを特徴とする。
【0013】
この構成においては、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する危険性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、より正確にスカッフの発生の可能性を判定できる。なお、インク吐出量に代えて吐出ドット数を算出してもよい。また、所定基準インク量に代えて所定基準ドット数と比較判定してもよい。
【0014】
(3)複数のプリントブロックデータ保持手段を備え、当該領域の印字に先立って調整する印字ヘッドの高さを決定することを特徴とする。
【0015】
この構成においては、スカッフが発生する可能性のある箇所へ、徐々にヘッド高さを調整できるので、ヘッド高さの変化による影響が目立たなくなる。
【0016】
(4)前記印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うことを特徴とする。
【0017】
この構成においては、1枚の用紙における印刷の途中では、ヘッド高さを調整しないので、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0018】
(5)印刷用紙の種類を選択指定する手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を備え、ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることを特徴とする。
【0019】
この構成においては、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正な印字ヘッドの高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0020】
(6)プリントデータによって前記印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定しておく手段を備えることを特徴とする。
【0021】
この構成においては、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて、適正なヘッド高さに調整することができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0022】
(7)連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、前記印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができる手段を備えることを特徴とする。
【0023】
この構成においては、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替えの発生を認めるか否かを事前に設定することができる。
【0024】
(8)前記印字ヘッドの高さ調整機能を有するインクジェット記録装置と印刷データを送信するホスト装置を通信可能に接続したインクジェット記録システムにおいて、
前記ホスト装置は、プリントデータの所定領域ごとのインク吐出状態を評価するプリントデータ評価手段と、前記プリントデータに評価結果を付加する評価結果付加手段と、を備え、前記インクジェット記録装置は、前記ホスト装置より受信したプリントデータから評価結果を抽出する評価結果抽出手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて前記印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
この構成においては、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損や磨耗を防ぐことができる。
【0026】
(9)前記プリントデータ評価手段は、所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を前記所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定することを特徴とする。
【0027】
この構成においては、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する可能性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、スカッフが発生する可能性をより精度よく判定できる。なお、インク吐出量に代えて吐出ドット数を算出してもよい。また、所定基準インク量に代えて所定基準ドット数と比較判定してもよい。
【0028】
(10)前記ホスト装置が、プレスキャン機能を有するスキャナであり、前記プリントデータ評価手段はプレスキャンの粗いデータに対して評価を行うことを特徴とする。
【0029】
この構成においては、コピー印刷におけるホスト側でのインク吐出量算出を行う手段として、その算出用の画像を前もって取得することにより、通常の画像読込みやデータ変換処理に負担をかけることを回避できる。つまり、処理速度の低下を回避することができる。
【0030】
(11)前記所定印字エリアを、プリントブロックデータとして記憶手段に記憶させることを特徴とする。
【0031】
この構成においては、吐出量の多い箇所のみヘッド高さを高くし、そうでないところは精細な印字に最も適した通常のヘッド高さに調整することができる。
【0032】
(12)前記ホスト装置は、前記印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うことを特徴とする。
【0033】
この構成においては、1枚の用紙における印刷の途中でヘッド高さを調整しないので、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0034】
(13)前記ホスト装置は、印刷用紙の種類を選択指定する手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を備え、
ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることを特徴とする。
【0035】
この構成においては、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正なヘッド高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0036】
(14)前記ホスト装置は、前記プリントデータによって、前記印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定するヘッド高さ設定手段を備えることを特徴とする。
【0037】
この構成においては、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替え発生を認めるか否かを事前に設定できるようにする。
【0038】
(15)前記ホスト装置は、連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、前記印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができるヘッド高さ維持手段を備えることを特徴とする。
【0039】
この構成においては、連続した印刷ページにわたって印字ヘッドの高さを高く設定する必要があるデータにおいて、各ページ毎にヘッド高さ切替え動作を発生させなくとも目的を果たすことを可能にし、不要な動作を削減し、全体的な処理スピード向上を実現できる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムについて図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0041】
図1は、スカッフ不良発生の確率に影響を与えるプリントジョブデータの具体例を示す。耐水性の低い普通紙メディアの様な印刷物に対し、図1(a)の矢符(A)に示す文章主体のようなページあたりのインク吐出比率値が低い(インク吐出面積10%以下程度)プリントデータの場合は、スカッフの発生率は低い。
【0042】
一方、図1(b)の矢符(B)に示すような、ほぼ100%に近いインク吐出比率値であるようなプリントデータの場合、印刷物がインクの液体成分をその内に吸収してしまうと膨潤してしまうため、その変形により、印字動作中の印字ヘッドに接触して印刷面が擦られるというスカッフが発生する可能性が高くなる。スカッフが発生すると印字品位が著しく低下する。
【0043】
図2は、印刷処理動作中におけるスカッフ対策処理に関する基本的な流れを示す。図2(a)にて、s1の(開始)とは、ホスト側(本発明のホスト装置)からプリンタコントローラ13(本発明の制御部,図6〜図8参照)に印刷動作の要求が与えられ、該印刷動作処理が開始された場合でのスカッフ処理についての基本フローの入口を示している。なお、ヘッド高さ設定(印字ヘッド1の高さ,図3〜図5参照)における[Normal]設定とは、通常の最適なヘッド高さ位置にセットされている状態をいう。また、同[High]設定とは、ヘッド高さを通常より高くし、印字ヘッドを印刷物から若干距離を離す位置にセットすることにより、スカッフ不良発生を低減させるための設定をいう。また、プリントデータからのインク吐出量によって実施されるヘッド高さ自動調整を、スカッフ対策処理と記述する。
【0044】
この基本フローでは、まず、s2の(ユーザー設定の確認)により、該プリントジョブのデータに含まれるスカッフ対策に関するユーザー設定値を抽出/確認し、このとき[OFF]だった場合、スカッフ対策フローをスキップし、s3の(設定=ON)の条件分岐から直接にs7の(終了)に至る。これに対して、s3の(設定=ON)の条件分岐にて、[ON]の場合にスカッフ対策フローに移行する。
【0045】
その場合、s4の(プリントデータの確認)において、与えられたプリントデータをプリンタコントローラ自身が審査し、該プリントデータに付加されたインク吐出比率値が、前述の図1に示す様なスカッフが発生しそうなデータであるか確認し、s5の(スカッフ対策動作処理)に移行する。同処理が実行された後、s6の(終了)に至り、この基本フローを完了する。
【0046】
図2(b)に示すs7の(開始)は、s3において、ユーザーによるスカッフ対策実施に関する設定がONの場合に移行した場合に発生するスキャナ対策処理詳細フローの入口を示している。このスキャナ対策処理詳細フローでは、まず、前述するs4の(プリントデータの確認)と同様の処理がs8の(プリントデータの確認)で行われ、s9の(スカッフ対策判定)の条件分岐において、右上の表に示すような判定基準にて判定が実施される。
【0047】
スカッフ対策判定が[YES]となるのは、印刷物メディア設定が耐水性に低いメディア設定であり、かつ、インク吐出比率値が基準値以上の場合のみである。もし、スカッフ対策処理が必要として[YES]判定となった場合、s10の(現状のヘッド高さ設定)に移行する。このs10の(現状のヘッド高さ設定)において、現状のヘッド高さ設定が[Normal]だった場合、スカッフ対策として[High]設定への切替えが必要となるため、s11の(該ページプリント前一時停止)処理に移行する。
【0048】
s10の(現状のヘッド高さ設定)において、現状設定が[High]だった場合は、s11以降はスキップされ、直接s14の(次ページ有無)の条件分岐に移行する。前述のs11の(該ページプリント前一時停止)にて、該ページの印刷が開始する直前に、該動作を一旦停止し、s12の(印字ヘッド高さを[High]に切替え)にて、スカッフ対策としてヘッドの高さを[Normal]から[High]に切替える処理を行い、s13の(該ページプリント再開)にて、停止していたプリント動作を再開し、s14の(次ページ有無)の条件分岐に移行する。
【0049】
前述のs9の(スカッフ対策判定)の条件分岐において、スカッフ対策判定が[NO]と判断された場合、s16の(現状のヘッド高さ設定)の条件分岐に移行する。この条件分岐はs10の(現状のヘッド高さ設定)の条件分岐とは逆に、スカッフ対策が不要と判断されているにも関わらず、直前のページのプリントにおいてスカッフ対策処理が実施されたこと等により、ヘッド高さ設定が[High]であった場合に、該設定を[Normal]にリセット処理するために、s17の(該ページプリント前一時停止)の処理に移行する。
【0050】
s16の(現状のヘッド高さ設定)において、現状設定が[Normal]だった場合は、s17の(該ページプリント前一時停止)以降はスキップされ、直接s14の(次ページ有無)の条件分岐に移行する。前述のs17の(該ページプリント前一時停止)にて、該ページの印字が開始する直前に、該動作を一旦停止し、s18の(ヘッド高さ[Normal]切替え)にて、スカッフ対策としてヘッド高さを[High]から[Normal]に切替え処理を行い、s19の(該ページプリント再開)にて、停止していたプリント動作を再開し、s14の(次ページ有無)の条件分岐に移行する。
【0051】
s14の(次ページ有無)の条件分岐において、もしプリントを行うページが次に残されている場合、次ページ有りを[YES]とし、s8の(プリントページの確認)に戻り、以下、該次ページの処理として同様の処理を繰り返す。s14の(次ページ有無)において、次ページ有りを[NO]としたとき、s15の(終了)に以降し、そのまま前述するs6の(終了)に移行する。
【0052】
図3ないし図5において、スカッフ対策処理を、プリント部を正面と側面から見た印刷過程の模式図により具体的に説明する。
図3(a),(b)は、〔通常状態の印刷(ヘッド高さ=[Normal]設定)〕において、スカッフ対策を必要としないような通常状態での動作を示す。ヘッド(印字ヘッド)1は、印字ヘッド搬送ロッド2により支えられた形で左右に走査しながら、必要に応じたインク吐出を行うことで、その直下に搬送されてくる用紙(印刷物)3に印刷を行う。
【0053】
この通常状態では、スカッフ対策処理を行う必要が無く、印字品位を高めるために、ヘッドと印刷物の空間を極力少なくする必要がある。その場合、ヘッド高さ設定は[Normal]として、高さ切替え回転軸4は、ヘッド搬送ロッド2の中心軸に対して上側となっている。なお、高さ切替え回転軸4のプリンタシャシに対する位置は固定されている。
【0054】
図4(a),(b)は、〔スカッフ発生時の状態(ヘッド高さ=[Normal]設定)〕において、ページあたりのインク吐出量が多いために印刷物5が膨潤してしまい、スカッフ不良が発生する状況を示す。この場合、印刷物5が膨潤したことによって印刷中に変形してしまっており、ヘッド高さが[Normal]の設定である場合、ヘッド1が極力印刷物5に近接するため、結果として、走査中のヘッド1が印刷物5に擦れてしまい、印刷物5の破損や汚染、ヘッド1の不必要な消耗などの障害が発生してしまう。
【0055】
図5(a),(b)は、〔スカッフ対策時の状態(ヘッド高さ=[High]設定)〕において、上記のスカッフが発生する状況に際し、ヘッド1を印刷物5から若干距離を離すことにより、スカッフ対策を行った状態を示している。この場合、ヘッド搬送ロッド2を高さ切替え回転軸4に対して回転させることにより、ヘッド搬送ロッド5の中心軸に対して高さ切替え回転軸4が下側にくることにより、ヘッド1が印刷物5に対して相対的に高い配置となることにより、互いの距離が離れるため、スカッフの発生を抑制することが可能となる。
【0056】
図6ないし図8は、スカッフ対策処理を行うか否かの判定実施のための各プリントデータのインク吐出比率値がどのような方式でスカッフ対策判定に転送/反映されるかを概念的に示す制御系統ブロック図である。
【0057】
図6では、PC(パーソナルコンピュータ)11をホスト(本発明のホスト装置)とし、PC11からのプリント要求による印刷動作において、PC11側でプリントデータ生成を行う際に、インク吐出比率値も同時に生成し、プリンタ側に転送するプリントデータ12に付加する方式を示している。
【0058】
そのインク吐出比率値を付加されたプリントデータ12は、該データの展開処理が行われる際にプリンタコントローラ(本発明の制御部)13によりピックアップされ、その時点でスカッフ対策判定処理に利用され、その比較判定結果に基づいて、ヘッド高さ調整手段14によってヘッド(本発明の印字ヘッド)1の高さが調整される。
【0059】
図7では、画像読み取りユニット(スキャナ)15と組み合わせたコピー印刷処理を行う想定での、スキャナ15をホスト(本発明のホスト装置)とし、スキャナ15からの要求による印刷動作において、スキャナ側でプリントデータ生成を行う際に、インク吐出比率値を同時に生成し、プリンタ側に転送するプリントデータ12に付加する方式を示している。
【0060】
この場合、インク吐出比率値を付加されたプリントデータ12は、該データの展開処理が行われる際にプリンタコントローラ13によりピックアップされ、その時点でスカッフ対策判定処理に利用される。
【0061】
図8では、スカッフ対策を行うか否かの判定に関する全ての処理を、プリンタコントローラ13の内部処理にて行う方式を示している。この場合、PC11やスキャナ15などのプリントデータ12に対するホスト側の対応如何に関わらず、受信したプリントデータ12を、プリンタコントローラ13内部のデータ展開/ブロック化処理の段階で、そのとき生成されたプリントブロックデータに関するインク吐出比率値を同時に生成し、即時的にスカッフ対策判定処理を行う。
【0062】
図8の場合、図6と図7に示す方式との相違は、インク吐出比率値をプリンタコントローラ13の内部で生成すること、および、該インク吐出比率値は、同一プリントページ内に関し複数生成されるプリントブロックデータ毎に生成し、その時々にてスカッフ対策処理を行うかどうかの判定を行うことである。つまり、図6および図7は、1プリントページに関するスカッフ対策判定は1度行うのみであるのに対して、図8の場合は、最大回数として、生成されるプリントブロックデータ個数分の判定が行われることになる。
【0063】
ところで、上述のプリンタコントローラ13は、具体的には、例えば、以下のように構成することができる。すなわち、PC11から受信したプリントデータ12の所定領域ごとのインク吐出状態を評価するプリントデータ評価手段と、評価されたインク吐出状態を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいてヘッド1の高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備え、プリントデータ評価手段により、所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、比較判定手段により、算出されたインク吐出量を所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定するように構成することができる。
【0064】
このような構成により、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して軟化し波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損や磨耗を防ぐことができる。
【0065】
また、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する危険性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、より正確にスカッフの発生の可能性を判定できる。
【0066】
さらに、プリンタコントローラ13に、複数のプリントブロックデータ保持手段を設けることにより、所定印字エリアの印字に先立って調整する印字ヘッド1の高さを決定することができ、これにより、スカッフが発生する可能性のある箇所へ、徐々にヘッド高さを調整できるので、ヘッド高さの変化による影響が目立たなくなる。
【0067】
また、印字ヘッド1の高さの調整をページ単位で行うことにより、1枚の用紙における印刷の途中では、ヘッド高さを調整しなくて済むため、ヘッド高さの切替えが容易になる。あるいは、印刷用紙の種類を選択指定する用紙選択手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、をプリンタコントローラ13に具備させ、ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることで、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正な印字ヘッドの高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0068】
さらに、プリントデータ12によって印字ヘッド1の高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定しておくヘッド高さ設定手段を設けることで、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて、適正なヘッド高さに調整することができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0069】
そして、連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合には、印字ヘッド1の高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができるヘッド高さ維持手段を設けることで、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替えの発生を認めるか否かを事前に設定することができる。
【0070】
また、上述のようなインクジェット記録装置と印刷データを送信するホスト装置を通信可能に接続したインクジェット記録システムにおいて、前記ホスト装置には、プリントデータの所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、前記プリントデータに評価結果を付加する評価結果付加手段と、前記ホスト装置より受信したプリントデータから評価結果を抽出する評価結果抽出手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッド1の高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を具備させることができる。
【0071】
このような構成によれば、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して波打つおそれがあるプリントデータ12を印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッド1と用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッド1の破損や磨耗を防ぐことができる。
【0072】
そして、上述のプリントデータ評価手段により、所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段により、算出されたインク吐出量を所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定すれば、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する可能性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、スカッフが発生する可能性をより精度よく判定できる。
【0073】
また、プレスキャン機能を有するスキャナをホスト装置として、プリントデータ評価手段により、プレスキャンの粗いデータに対して評価を行わせれば、コピー印刷におけるホスト側でのインク吐出量算出を行う手段として、その算出用の画像を前もって取得することにより、通常の画像読込みやデータ変換処理に負担をかけることを回避できる。つまり、処理速度の低下を回避することができる。
【0074】
そして、所定印字エリアを、プリントブロックデータとして記憶手段に記憶させることにより、吐出量の多い箇所のみヘッド高さを高くし、そうでないところは精細な印字に最も適した通常のヘッド高さに調整することができる。また、印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うことにより、1枚の用紙における印刷の途中でヘッド高さを調整しないので、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0075】
さらに、ホスト装置に、印刷用紙の種類を選択指定する手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を設け、ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることで、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正なヘッド高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0076】
また、ホスト装置に、プリントデータによって、印字ヘッド1の高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定するヘッド高さ設定手段を設ければ、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替え発生を認めるか否かを事前に設定できるようにする。
【0077】
そして、連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、前記印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができるヘッド高さ維持手段をホスト装置に設けることで、連続した印刷ページにわたって印字ヘッドの高さを高く設定する必要があるデータにおいて、各ページ毎にヘッド高さ切替え動作を発生させなくとも目的を果たすことを可能にし、不要な動作を削減し、全体的な処理スピード向上を実現できる。
【0078】
次いで、図9において、図2に示すスカッフ対策詳細に関するフロー内での、特にs8の(プリントページデータの確認)について、図6および図7に示すブロック図に基づいてより詳細に説明する。
【0079】
まず、〔図6,図7に関するプリントページデータの確認フロー〕において、PCや画像読み取りユニットなどのホスト側にてインク吐出比率値を作成する方式でのフローを説明する。ホスト側において、印刷を行うための画像データのプリントデータへの変換を行う際に、ページあたりのインク吐出比率値情報をs21の(プリントページ毎のインク吐出比率値の生成)にて生成し、該情報をs22の(転送するプリントデータへのインク吐出比率値の付加)において、プリントデータ12に付加する。
【0080】
そのようにして組み合わされたプリントデータ12をs23の(プリンタへのデータ転送)にてプリンタへ転送し、プリンタ側はs24の(プリントデータの受信)にて受信する。s25の(開始)は、図2でのs21とs27と同等に、プリンタコントローラ13での内部処理の開始を示しており、s25の(開始)以後は、図2のs24の(プリントページデータの確認)にて実施されるより詳細なフローを展開したものである。
【0081】
まず、s26の(プリントデータの解析)にて、ホスト側より受信したデータの形式を解析し、その解析結果より、s27の(データ展開/ブロック化)にて印字ヘッド1に出力できる形式に変換/再統合を行う。s27の段階で、ホスト側によって付加されていたインク吐出比率値がs28の(インク吐出比率値の分離)にて分離され、s29の(スカッフ対策判定処理への転送)とs30の(スカッフ対策判定)によって、該情報がスカッフ対策の必要なプリントデータか否かの判定が行われる。その判定結果により、(スカッフ対策:YES判定)もしくは(スカッフ対策:NO判定)によって、次工程で利用される判定情報を生成し、図2でのs9に示す(スカッフ対策処理)に移行する。
【0082】
次に、図10において、〔図8に関するプリントページデータの確認フロー〕において、インク吐出比率値をプリンタコントローラ内部にて生成する方式でのフローを説明する。ただし、説明の簡略化のため、前述の〔図6,図7に関するプリントページデータの確認フロー〕との相違点について述べる。
【0083】
まず、ホスト側の処理においては、インク吐出比率値生成および付加に関する処理は不要であるため、s33の(プリンタへのデータ転送)のみである。s34の(プリントデータの受信)において、該プリントデータを受信したプリンタは、以後、s37の(データ展開/ブロック化)までを同様に行うが、s38の(インク吐出比率値の測量/生成)において、スカッフ対策判定に必要となるインク吐出比率値を、プリンタブロックデータ毎に算出/生成し、s39の(スカッフ対策判定への転送)にて、該情報をs40の(スカッフ対策判定)へ引き渡す。なお、この方式の場合、プリントブロックデータ毎にインク吐出比率値を生成するため、s39への処理に移行するのとは別に、s37の(データの展開/ブロック化)からの処理が、同一プリントページ内の全てのデータ展開が完了するまで繰り返し行われることとなる。
【0084】
図11により、コピー印刷処理の場合におけるホスト側としての画像読み取りユニットによるプリントデータのインク吐出比率値生成フローについて説明する。まず、画像読み取りを行う画像(原稿)に対し、s51の(プレスキャン)にて、粗めの画像一時読み込み(プレスキャン)を行う。
【0085】
このとき、読み込まれたプレスキャン画像に基づいて、s52の(インク吐出比率値分析/情報化)にて、1ページあたりに占めるインク吐出比率値を概算生成する。s53の(本画像読み込み/プリントデータ形成)にて、プリントデータ12を生成し、s54の(インク吐出比率値のプリントデータへの付加)にて、前記プリントデータ12へ、既に生成されたインク吐出比率値を付加する。そして、s55の(プリントデータの転送)により、インク吐出比率値が付加されたプリントデータ12がプリンタコントローラ13へと転送される。
【0086】
図12により、プリントデータ12と各プリントブロックデータ1,2,3,…との関連、および、各プリントブロックデータ1,2,3,…でのインク吐出比率値により、どのようにスカッフ対策判定が行われるかを、例をあげて説明する。
【0087】
まず、1ページ分のプリントデータは、プリンタのヘッド走査方向に合わせ、いくつかのブロックに分割されたデータ(プリントブロックデータ)として、印字実行順に再構築される。
【0088】
もし、スカッフ対策判定基準を、インク吐出比率値60%以上となった場合にスカッフ対策処理が発動するとしたとき、まず、プリントブロックデータ1のインク吐出比率値は、基準に満たない(60%以下)ため、スカッフ対策は発動しない。
【0089】
次に、プリンタブロックデータ2についてのインク吐出比率値が追加されるが、プリンタブロックデータ2のみであれば基準を満たしているが、先のプリントブロックデータ1のものと累積した場合、60%には若干満たないため、スカッフ対策処理は発動しない。
【0090】
プリントブロックデータ3のインク吐出比率値が累積された場合、その時点でのインク吐出比率値が60%を超えている(約70%)ため、ここでスカッフ対策処理が発動する。
【0091】
同様に、プリントブロックデータ4およびプリントブロックデータ5のインク吐出比率値の累積が加わるが、それでも60%以上となっているため、スカッフ対策はそのまま継続する。
【0092】
プリントブロックデータ6のインク吐出比率値が累積された時点で、インク吐出比率値が60%以下となるため、この時点で、スカッフ対策処理をリセット(解除)する。
【0093】
以上説明したように、ホスト装置等により与えられたプリントデータによってスカッフ不良発生の可能性を判定し、その判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを自動的に調整することで、スカッフ不良の発生を低減することができる。
【0094】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、以下のような効果を奏する。
【0095】
(1)ホスト装置から受信したプリントデータの所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えるので、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して軟化し波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損/磨耗を防ぐことができる。
【0096】
(2)プリントデータ評価手段は所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定するので、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する危険性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、より正確にスカッフの発生の可能性を判定できる。
【0097】
(3)複数のプリントブロックデータ保持手段を備え、当該領域の印字に先立って調整する印字ヘッドの高さを決定するので、スカッフが発生する可能性のある箇所へ、徐々にヘッド高さを調整することができるため、ヘッド高さの変化による影響が目立たなくなる。
【0098】
(4)印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うので、1枚の用紙における印刷の途中では、ヘッド高さを調整しないので、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0099】
(5)ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いるので、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正な印字ヘッドの高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0100】
(6)プリントデータによって印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定しておく手段を備えるので、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて、適正なヘッド高さに調整することができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0101】
(7)連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができる手段を備えるので、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替えの発生を認めるか否かを事前に設定することができる。
【0102】
(8)印字ヘッドの高さ調整機能を有するインクジェット記録装置と印刷データを送信するホスト装置を通信可能に接続したインクジェット記録システムにおいて、ホスト装置は、プリントデータの所定領域ごとのインク吐出を評価するプリントデータ評価手段と、前記プリントデータに評価結果を付加する評価結果付加手段と、を備え、前記インクジェット記録装置は、前記ホスト装置より受信したプリントデータから評価結果を抽出する評価結果抽出手段と、評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、比較判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えるので、インク吐出量が多くて用紙が膨潤して波打つおそれがあるプリントデータを印刷する際に、ユーザーが手動で調整(切替え)をしなくても、自動的にヘッド高さを高くして、ヘッドと用紙が擦れるスカッフの発生を回避できる。これにより、用紙が汚れたり破損したり、あるいはヘッドの破損/磨耗を防ぐことができる。
【0103】
(9)プリントデータ評価手段は所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定するので、写真画像の有無や大きさ、含まれるフォントの種類と大きさなどで評価して、スカッフが発生する可能性を判定することもできるが、インク吐出量を算出することで、スカッフが発生する可能性をより精度よく判定できる。なお、インク吐出量に代えて吐出ドット数を算出してもよい。また、所定基準インク量に代えて所定基準ドット数と比較判定してもよい。
【0104】
(10)ホスト装置がプレスキャン機能を有するスキャナであり、プリントデータ評価手段はプレスキャンの粗いデータに対して評価を行うので、コピー印刷におけるホスト側でのインク吐出量算出を行う手段として、その算出用の画像を前もって取得することにより、通常の画像読込み/データ変換処理に負担をかけることを回避できる。つまり、処理速度の低下を回避することができる。
【0105】
(11)所定印字エリアはプリントブロックデータであるので、吐出量の多い箇所のみヘッド高さを高くし、そうでないところは精細な印字に最も適した通常のヘッド高さに調整することができる。
【0106】
(12)印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うので、1枚の用紙における印刷の途中でヘッド高さを調整することなく、ヘッド高さの切替えが容易になる。
【0107】
(13)印刷用紙の種類を選択指定する手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を備え、ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いるので、印刷用紙の耐水性(インク吐出による膨潤しやすさ)に応じて適正なヘッド高さの調整ができる。また、印刷用紙の耐水性に応じてヘッド高さの調整を行うか否かを切替えることもできる。
【0108】
(14)プリントデータによって、印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定しておく手段を備えるので、実際に用いる被印刷対象物の耐久性が高いことが事前に認識できているときなど、インク吐出量算出値に関わらずヘッド調整が不要の場合、ヘッド高さの自動切替え発生を認めるか否かを事前に設定することができる。
【0109】
(15)連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができる手段を備えるので、連続した印刷ページにわたって印字ヘッドの高さを高く設定する必要があるデータにおいて、各ページ毎にヘッド高さ切替え動作を発生させなくとも目的を果たすことを可能にし、不要な動作を削減し、全体的な処理スピード向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なスカッフ不良の発生確率が低い場合と高い場合とを比較した説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムにおけるスカッフ対策処理のフローチャートである。
【図3】通常の印刷状態の説明図である。
【図4】スカッフ発生時の印刷状態の説明図である。
【図5】スカッフ対策時の印刷状態の説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置およびインクジェット記録システムにおけるインク吐出比率値がスカッフ対策判定に転送/反映される経路を説明するための制御系統ブロック図である。
【図7】同別の制御系統ブロック図である。
【図8】同異なる制御系統ブロック図である。
【図9】同プリントデータの確認フローの一例を示すフローチャートである。
【図10】同別のフローチャートである。
【図11】同プリントデータのインク吐出比率値生成フローを示すフローチャートである。
【図12】同プリントデータと各プリントブロックデータとの関連を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
1−印字ヘッド
11,15−ホスト装置
12−プリントデータ
13−制御部
14−ヘッド高さ調整手段
Claims (15)
- インクを吐出する印字ヘッドの高さを調整するための制御部を備えたインクジェット記録装置において、
前記制御部は、
前記インクジェット記録装置に接続されたホスト装置から受信したプリントデータの所定領域ごとのインク吐出状態を評価するプリントデータ評価手段と、
評価されたインク吐出状態を所定基準と比較判定する比較判定手段と、
比較判定結果に基づいて印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記プリントデータ評価手段は、所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、
前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。 - 前記制御部は、複数のプリントブロックデータ保持手段を備え、前記所定印字エリアの印字に先立って調整する前記印字ヘッドの高さを決定することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
- 前記制御部は、前記印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記制御部は、印刷用紙の種類を選択指定する用紙選択手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を備え、ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記制御部は、前記プリントデータによって前記印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定しておくヘッド高さ設定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記制御部は、連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、前記印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができるヘッド高さ維持手段を備えることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
- 前記印字ヘッドの高さ調整機能を有するインクジェット記録装置と印刷データを送信するホスト装置を通信可能に接続したインクジェット記録システムにおいて、
前記ホスト装置は、
プリントデータの所定領域ごとのインク吐出状態を評価するプリントデータ評価手段と、
前記プリントデータに評価結果を付加する評価結果付加手段と、を備え、
前記インクジェット記録装置は、
前記ホスト装置より受信したプリントデータから評価結果を抽出する評価結果抽出手段と、
評価されたインク吐出を所定基準と比較判定する比較判定手段と、
比較判定結果に基づいて前記印字ヘッドの高さを調整するヘッド高さ調整手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録システム。 - 前記プリントデータ評価手段は、所定印字エリアごとにインク吐出量を算出し、
前記比較判定手段は、算出されたインク吐出量を前記所定印字エリアに対する所定基準インク量と比較判定することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録システム。 - 前記ホスト装置が、プレスキャン機能を有するスキャナであり、前記プリントデータ評価手段は、プレスキャンの粗いデータに対して評価を行うことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録システム。
- 前記所定印字エリアを、プリントブロックデータとして記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録システム。
- 前記ホスト装置は、前記印字ヘッドの高さの調整をページ単位で行うことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録システム。
- 前記ホスト装置は、印刷用紙の種類を選択指定する手段と、予め印刷用紙の種類ごとの比較判定情報を記憶する比較判定情報記憶手段と、を備え、
ユーザーの選択指定した印刷用紙の種類に応じた比較判定基準を用いることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録システム。 - 前記ホスト装置は、前記プリントデータによって、前記印字ヘッドの高さの調整を行うか否かを、ユーザーによって任意に設定するヘッド高さ設定手段を備えることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録システム。
- 前記ホスト装置は、連続した印刷ページにわたってインク吐出量が比較判定手段により十分高いと判定された場合、前記印字ヘッドの高さを引き続き高いまま維持して印刷を行うことができるヘッド高さ維持手段を備えることを特徴とする請求項14に記載のインクジェット記録システム。
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