JP2004329789A - 血管追従性と拡張性の優れたステント - Google Patents
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Abstract
【課題】管腔径の開存状態を保持する血管径保持力に優れ、管腔等への追従性に優れ(従って三次元的に蛇行した管腔を通過可能)、ショートニングの生じない、ステントに横穴を形成することが可能な、拡張性のよい柔軟なステントを提供する。
【解決手段】本発明のステントは、長手軸方向に配列された半径方向に拡張可能な複数の環状部材1と、隣り合う環状部材1、1同士を長手軸方向に連結する1つまたは複数の連結要素2を含み、環状部材1は、第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12が交互に円周方向に連続されてなる。展開された状態において、第1の環状部材要素11は、長手軸に関して同じ方向に傾斜する上中下3本の直線要素111、112、113を含み、第2の環状部材要素12は、長手軸方向に関して第1の環状部材要素11の直線要素と反対の方向に傾斜する上中下3本の直線要素121、122、123を含む。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明のステントは、長手軸方向に配列された半径方向に拡張可能な複数の環状部材1と、隣り合う環状部材1、1同士を長手軸方向に連結する1つまたは複数の連結要素2を含み、環状部材1は、第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12が交互に円周方向に連続されてなる。展開された状態において、第1の環状部材要素11は、長手軸に関して同じ方向に傾斜する上中下3本の直線要素111、112、113を含み、第2の環状部材要素12は、長手軸方向に関して第1の環状部材要素11の直線要素と反対の方向に傾斜する上中下3本の直線要素121、122、123を含む。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は血管等の体内管腔の管腔径維持を目的として生体内に埋め込まれる所謂ステントに関する。
【0002】
【従来の技術】
血管等の管腔径を広げ、得られた管腔のサイズを維持するために、従来、ステントが採用されている。ステントの拡張方法としては、バルーンによる拡張、形状記憶材料を用いた自己拡張、機械的拡張などがあるが、バルーンによる拡張が一般的である。バルーンによる拡張の場合、ステントはバルーンカテーテルと一緒に身体の所望の位置まで導入され、バルーンの膨張により拡張されて管腔径を広げる。ステントは、通常、血管等の管腔径を広げて保持する管腔径保持部と、それらを長手方向に繋ぐジョイント部からなり、拡張後の形状は維持される。
このような管腔径保持部とジョイント部からなるステントとしては、半径方向に独立に膨張可能な複数の円筒要素が、共通の軸線に略整列するように連結されたもの(特許文献1)や、相互に交差する複数の細長い部材によって形成された半径方向に伸張可能な管状部材からなるもの(特許文献2)、軸曲げ部にて一体的に接続された複数個の実質的に真っ直ぐで重なり合っていないセグメントを形成するように曲げられた少なくとも2つの単一のワイヤー状円形部材を備え、円形部材同士が軸曲げ部で堅固に接続されてなるもの(特許文献3)、第一及び第二方向に広がる軸を有する第一及び第二メアンダー模様をもつ模様形状の管よりなるもの(特許文献4)、斜め方向の相互連結素子で複数の円筒形セグメントを纏めてなり、末端が結合した支柱からなる開放構造型のもの(特許文献5)等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−181993号公報
【0004】
【特許文献2】
特開昭62−231657号公報
【0005】
【特許文献3】
特開平8−155035号公報
【0006】
【特許文献4】
特開表10−503676号公報
【0007】
【特許文献5】
特表平11−505441号公報
【0008】
しかしながら、これら従来のステントは、改良されているとはいえ、依然として、拡張したときにステントエッジ付近においてステントが血管等の管腔に負荷を与えるものであるため、管腔等の閉塞や狭窄が生じることがあった。また、十分な可撓性を有しているものとは言えないので、管腔等が三次元的に蛇行している場合、目的部位にステントを運ぶことが困難なこともあった。さらには、ステントを目的部位に運ぶ際に血管を傷つけてしまう場合もあった。また、留置位置に分岐した血管がある場合その留置されたステントに横穴を形成することが困難な場合が多かった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、如上の事情に鑑みてなされたもので、管腔径の開存状態を保持する血管径保持力に優れ、管腔等への追従性に優れ(従って三次元的に蛇行した管腔を通過可能)、ショートニングの生じない、ステントに横穴を形成することが可能な、拡張性のよい柔軟なステントを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために、鋭意検討の結果、円周方向に連続する複数の波状の要素からなる環状部材が、径方向への拡張性が良く、またステントの全長に亘って一様に拡張すること、および、M字状の模様の組み合わせからなる波状の要素において、模様の谷と谷(または山と山)の間隔を、谷の底(または山の頂)部分で最も狭くなるようにすれば、拡張性が大幅に向上すること、血管への挿入時の追従性は環状部材同士を連結する連結要素の数を適当に決めることにより任意に決められること、波状要素と連結要素の組み合わせが横穴形成に際して有利であることに想到し、本発明を完成した。すなわち本発明は、長手軸方向に配列された半径方向に拡張可能な複数の環状部材と、隣り合うこの環状部材同士を長手軸方向に連結する1つまたは複数の連結要素を含んでなり、前記環状部材は、第1の環状部材要素と第2の環状部材要素が交互に円周方向に連続されてなり、展開された状態において、この第1の環状部材要素は、長手軸に関して同じ方向に傾斜する上中下3本の直線要素を含み、中位直線要素は上位直線要素、下位直線要素より相対的に長く、上位直線要素と中位直線要素、中位直線要素と下位直線要素がそれぞれ左に凸の円弧状要素、右に凸の円弧状要素で接続されており、前記第2の環状部材要素は、長手軸方向に関して前記第1の環状部材要素の直線要素と反対の方向に傾斜する上中下3本の直線要素を含み、中位直線要素は上位直線要素、下位直線要素より相対的に長く、上位直線要素と中位直線要素、中位直線要素と下位直線要素がそれぞれ右に凸の円弧状要素、左に凸の円弧状要素で接続されており、前記第1の環状部材要素と第2の環状部材要素は、第2の環状部材要素とこの第2の環状部材要素の上に位置する第1の環状部材要素との間では、第1の環状部材要素の下位直線要素と第2の環状部材要素の上位直線要素が左に凸の円弧状要素で接続されており、第2の環状部材要素とこの第2の環状部材要素の下に位置する第1の環状部材要素との間では、第2の環状部材要素の下位直線要素と第1の環状部材要素の上位直線要素が右に凸の円弧状要素で接続されており、隣り合う環状部材同士は、対向する円弧状要素の部分で連結されてなる血管追従性と拡張性の優れたステントに関する。
【0011】
ここで、ステントのバランスを考慮した場合、第1の環状部材要素と第2の環状部材要素は、両者を接続する円弧状要素の中心を通る長手軸に関して対称にするのがよい。この場合、第1の環状部材要素の上中下3本の直線要素は互いに平行になるようにしてもよい。隣り合う環状部材同士は、展開された状態において、左側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素の右に凸の円弧状要素と、右側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素の左に凸の円弧状要素が連結されるようにしてもよく、また、左側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素を接続する左に凸の円弧状要素と、右側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素を接続する右に凸の円弧状要素が連結されるようにしてもよい。この場合、連結要素の形状は直線状であっても曲線状であってもよく、曲線状の連結要素の場合、曲線が1つの波の山を有してなるものであっても複数の波の山を有してなるものであっても構わない。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例に係るステントの平面図であり、図2は図1に示すステントの展開図、図3は図1に示すステントを拡張した状態を示す平面図、図4は図2に示す環状部材の一部拡大図、図5、図6はそれぞれ本発明の他の実施例に係るステントの展開図であり、図7〜図9はそれぞれ本発明のステントと従来のステントの柔軟性、ショートニングおよび血管径保持力を比較する図である。本発明のステントは、図1〜図4に示すように、長手軸方向に配列された半径方向に拡張可能な複数の環状部材1と、隣り合う環状部材1、1同士を長手軸方向に連結する1つまたは複数の連結要素2を含み、環状部材1は、第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12が交互に円周方向に連続されてなる。展開された状態において、第1の環状部材要素11は、長手軸に関して同じ方向に傾斜する(図4で右上がりの直線)上中下3本の直線要素111、112、113を含み、第2の環状部材要素12は、長手軸方向に関して第1の環状部材要素11の直線要素と反対の方向に傾斜する(図4で右下がりの直線)上中下3本の直線要素121、122、123を含む。
【0013】
環状部材1は、生体管腔を開存状態に保つための半径方向に拡張可能な部材であり、第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12が交互に円周方向に連続されてなる。
第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12は、図2および図4に示すように、その展開された状態において上下方向に連続しており、第1の環状部材要素11は、長手軸に関して同じ方向(右上がり)に傾斜する上中下3本の直線要素111、112、113を含んでいる。中位直線要素112は上位直線要素111、下位直線要素113より相対的に長く、上位直線要素111と中位直線要素112、中位直線要素112と下位直線要素113がそれぞれ左に凸の円弧状要素114、右に凸の円弧状要素115で接続されている。一方、第2の環状部材要素12は、長手軸方向に関して第1の環状部材要素11の直線要素と反対の方向(右下がり)に傾斜する上中下3本の直線要素121、122、123を含んでおり、中位直線要素122は上位直線要素121、下位直線要素123より相対的に長く、上位直線要素121と中位直線要素122、中位直線要素122と下位直線要素123がそれぞれ右に凸の円弧状要素124、左に凸の円弧状要素125で接続されている。第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12は、第2の環状部材要素12とこの第2の環状部材要素12の上に位置する第1の環状部材要素11との間では、第1の環状部材要素11の下位直線要素113と第2の環状部材要素12の上位直線要素121が左に凸の円弧状要素3で接続されており、第2の環状部材要素12とこの第2の環状部材要素12の下に位置する第1の環状部材要素11との間では、第2の環状部材要素12の下位直線要素123と第1の環状部材要素11の上位直線要素111が右に凸の円弧状要素4で接続されている。
【0014】
ステントのバランスを考慮した場合、第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12は、両者を接続する円弧状要素3または4の中心を通る長手軸と平行な直線に関して対称にするのがよい。この場合、第1の環状部材要素11の上中下3本の直線要素111、112、113は互いに平行になっていなくてもよいが、バランスを考慮した場合、互いに平行になるようにするのがよい。
尚、隣り合う環状部材1、1の位相は、例えば図5や図6に示すように適当にずれていてもよい。
【0015】
隣り合う環状部材1、1同士は、対向する位置にある円弧状要素の部分で連結要素2により連結されている。すなわち、隣り合う環状部材1、1同士は、展開された状態において、図2に示すように、左側の環状部材1における右に凸の円弧状要素115、124と、これと対向する右側の環状部材1における左に凸の円弧状要素114、125が、それぞれ連結要素2により連結されていても(図6に示すように、位相をずらして115と125、124と114を連結してもよい)、図5に示すように、左側の環状部材1における左に凸の円弧状要素3と、これと対向する右側の環状部材1における右に凸の円弧状要素4が、連結要素2により連結されていてもよい。連結要素2の形状は直線状であっても曲線状であってもよく、連結要素2の形状が曲線状の場合、曲線が1つの波の山を有していても複数の波の山を有していても構わない。
尚、ステントの形成材料としては、ステンレス鋼、タングステン、タンタル、ニッケル−チタン合金などが採用可能である。
【0016】
〔柔軟性、ショートニングおよび血管径保持力試験〕 表1に示すような異なる展開図を有するステントについて応力解析を行い、ステントの柔軟性(屈曲性)、ショートニングおよび血管径保持力を比較したところ、図7〜図9のような結果が得られた。
図7から、本発明のステントが従来のステントと比較して優れた柔軟性を有していることが分かる。また、図8および図9から、従来のステントと比較してショートニングと血管径保持力についても同等の性能を有していることが分かる。
尚、屈曲性については、ステント片端を固定し、もう片端に1Nの荷重をかけた場合のステント変化量(mm)を解析した。グラフの値は解析値(mm)を個々のステント長さ(mm)で割った値を示している。
また、ショートニングについては、ステントを直径3.0mmに拡張した場合の長さの変化を解析した。グラフはステント長さの変化率を示している。
血管径保持力については、ステントを圧縮(圧力:100mmHg)した場合のステント直径の変化(mm)を示している。
【0017】
【表1】
【0018】
【発明の効果】
以上述べたことから明らかなように、本発明によれば、以下のような効果が期待できる。すなわち、1)ステントの管壁を構成する環状部材が、略M字状の模様を変形した形状の繰り返しからなるので、ステント全体が曲げに対して柔軟であり、従って、管腔等への追従性に優れている。また、横穴の形成が容易である。2)環状部材を構成する略M字状の山(または谷)の変形模様において、谷と谷(または山と山)の間隔が、谷の底(または山の頂)の部分でもっとも狭くなっているので、拡張性が大幅に向上している。3)隣り合う環状部材同士が対向する円弧状要素同士で連結されているので、連結された波頭部分での拡張時の反りがなく、ステントを適用部位まで案内する際の血管の損傷を極力さけることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るステントの平面図である。
【図2】図1に示すステントの展開図である。
【図3】図1に示すステントを拡張した状態を示す平面図である。
【図4】図2に示す環状部材の一部拡大図である。
【図5】本発明の他の実施例に係るステントの展開図である。
【図6】本発明の他の実施例に係るステントの展開図である。
【図7】本発明のステントと従来のステントの柔軟性を比較する図である。
【図8】本発明のステントと従来のステントのショートニングを比較する図である。
【図9】本発明のステントと従来のステントの血管径保持力を比較する図である。
【図10】従来のステントの展開図である。
【図11】従来のステントの展開図である。
【図12】従来のステントの展開図である。
【符号の説明】
1 環状部材
11 第1の環状部材要素
111 上位直線要素
112 中位直線要素
113 下位直線要素
114 左に凸の円弧状要素
115 右に凸の円弧状要素
12 第2の環状部材要素
121 上位直線要素
122 中位直線要素
123 下位直線要素
124 右に凸の円弧状要素
125 左に凸の円弧状要素
2 波状連結要素
3 左に凸の円弧状要素
4 右に凸の円弧状要素
【発明の属する技術分野】
本発明は血管等の体内管腔の管腔径維持を目的として生体内に埋め込まれる所謂ステントに関する。
【0002】
【従来の技術】
血管等の管腔径を広げ、得られた管腔のサイズを維持するために、従来、ステントが採用されている。ステントの拡張方法としては、バルーンによる拡張、形状記憶材料を用いた自己拡張、機械的拡張などがあるが、バルーンによる拡張が一般的である。バルーンによる拡張の場合、ステントはバルーンカテーテルと一緒に身体の所望の位置まで導入され、バルーンの膨張により拡張されて管腔径を広げる。ステントは、通常、血管等の管腔径を広げて保持する管腔径保持部と、それらを長手方向に繋ぐジョイント部からなり、拡張後の形状は維持される。
このような管腔径保持部とジョイント部からなるステントとしては、半径方向に独立に膨張可能な複数の円筒要素が、共通の軸線に略整列するように連結されたもの(特許文献1)や、相互に交差する複数の細長い部材によって形成された半径方向に伸張可能な管状部材からなるもの(特許文献2)、軸曲げ部にて一体的に接続された複数個の実質的に真っ直ぐで重なり合っていないセグメントを形成するように曲げられた少なくとも2つの単一のワイヤー状円形部材を備え、円形部材同士が軸曲げ部で堅固に接続されてなるもの(特許文献3)、第一及び第二方向に広がる軸を有する第一及び第二メアンダー模様をもつ模様形状の管よりなるもの(特許文献4)、斜め方向の相互連結素子で複数の円筒形セグメントを纏めてなり、末端が結合した支柱からなる開放構造型のもの(特許文献5)等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−181993号公報
【0004】
【特許文献2】
特開昭62−231657号公報
【0005】
【特許文献3】
特開平8−155035号公報
【0006】
【特許文献4】
特開表10−503676号公報
【0007】
【特許文献5】
特表平11−505441号公報
【0008】
しかしながら、これら従来のステントは、改良されているとはいえ、依然として、拡張したときにステントエッジ付近においてステントが血管等の管腔に負荷を与えるものであるため、管腔等の閉塞や狭窄が生じることがあった。また、十分な可撓性を有しているものとは言えないので、管腔等が三次元的に蛇行している場合、目的部位にステントを運ぶことが困難なこともあった。さらには、ステントを目的部位に運ぶ際に血管を傷つけてしまう場合もあった。また、留置位置に分岐した血管がある場合その留置されたステントに横穴を形成することが困難な場合が多かった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、如上の事情に鑑みてなされたもので、管腔径の開存状態を保持する血管径保持力に優れ、管腔等への追従性に優れ(従って三次元的に蛇行した管腔を通過可能)、ショートニングの生じない、ステントに横穴を形成することが可能な、拡張性のよい柔軟なステントを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために、鋭意検討の結果、円周方向に連続する複数の波状の要素からなる環状部材が、径方向への拡張性が良く、またステントの全長に亘って一様に拡張すること、および、M字状の模様の組み合わせからなる波状の要素において、模様の谷と谷(または山と山)の間隔を、谷の底(または山の頂)部分で最も狭くなるようにすれば、拡張性が大幅に向上すること、血管への挿入時の追従性は環状部材同士を連結する連結要素の数を適当に決めることにより任意に決められること、波状要素と連結要素の組み合わせが横穴形成に際して有利であることに想到し、本発明を完成した。すなわち本発明は、長手軸方向に配列された半径方向に拡張可能な複数の環状部材と、隣り合うこの環状部材同士を長手軸方向に連結する1つまたは複数の連結要素を含んでなり、前記環状部材は、第1の環状部材要素と第2の環状部材要素が交互に円周方向に連続されてなり、展開された状態において、この第1の環状部材要素は、長手軸に関して同じ方向に傾斜する上中下3本の直線要素を含み、中位直線要素は上位直線要素、下位直線要素より相対的に長く、上位直線要素と中位直線要素、中位直線要素と下位直線要素がそれぞれ左に凸の円弧状要素、右に凸の円弧状要素で接続されており、前記第2の環状部材要素は、長手軸方向に関して前記第1の環状部材要素の直線要素と反対の方向に傾斜する上中下3本の直線要素を含み、中位直線要素は上位直線要素、下位直線要素より相対的に長く、上位直線要素と中位直線要素、中位直線要素と下位直線要素がそれぞれ右に凸の円弧状要素、左に凸の円弧状要素で接続されており、前記第1の環状部材要素と第2の環状部材要素は、第2の環状部材要素とこの第2の環状部材要素の上に位置する第1の環状部材要素との間では、第1の環状部材要素の下位直線要素と第2の環状部材要素の上位直線要素が左に凸の円弧状要素で接続されており、第2の環状部材要素とこの第2の環状部材要素の下に位置する第1の環状部材要素との間では、第2の環状部材要素の下位直線要素と第1の環状部材要素の上位直線要素が右に凸の円弧状要素で接続されており、隣り合う環状部材同士は、対向する円弧状要素の部分で連結されてなる血管追従性と拡張性の優れたステントに関する。
【0011】
ここで、ステントのバランスを考慮した場合、第1の環状部材要素と第2の環状部材要素は、両者を接続する円弧状要素の中心を通る長手軸に関して対称にするのがよい。この場合、第1の環状部材要素の上中下3本の直線要素は互いに平行になるようにしてもよい。隣り合う環状部材同士は、展開された状態において、左側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素の右に凸の円弧状要素と、右側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素の左に凸の円弧状要素が連結されるようにしてもよく、また、左側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素を接続する左に凸の円弧状要素と、右側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素を接続する右に凸の円弧状要素が連結されるようにしてもよい。この場合、連結要素の形状は直線状であっても曲線状であってもよく、曲線状の連結要素の場合、曲線が1つの波の山を有してなるものであっても複数の波の山を有してなるものであっても構わない。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施例に係るステントの平面図であり、図2は図1に示すステントの展開図、図3は図1に示すステントを拡張した状態を示す平面図、図4は図2に示す環状部材の一部拡大図、図5、図6はそれぞれ本発明の他の実施例に係るステントの展開図であり、図7〜図9はそれぞれ本発明のステントと従来のステントの柔軟性、ショートニングおよび血管径保持力を比較する図である。本発明のステントは、図1〜図4に示すように、長手軸方向に配列された半径方向に拡張可能な複数の環状部材1と、隣り合う環状部材1、1同士を長手軸方向に連結する1つまたは複数の連結要素2を含み、環状部材1は、第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12が交互に円周方向に連続されてなる。展開された状態において、第1の環状部材要素11は、長手軸に関して同じ方向に傾斜する(図4で右上がりの直線)上中下3本の直線要素111、112、113を含み、第2の環状部材要素12は、長手軸方向に関して第1の環状部材要素11の直線要素と反対の方向に傾斜する(図4で右下がりの直線)上中下3本の直線要素121、122、123を含む。
【0013】
環状部材1は、生体管腔を開存状態に保つための半径方向に拡張可能な部材であり、第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12が交互に円周方向に連続されてなる。
第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12は、図2および図4に示すように、その展開された状態において上下方向に連続しており、第1の環状部材要素11は、長手軸に関して同じ方向(右上がり)に傾斜する上中下3本の直線要素111、112、113を含んでいる。中位直線要素112は上位直線要素111、下位直線要素113より相対的に長く、上位直線要素111と中位直線要素112、中位直線要素112と下位直線要素113がそれぞれ左に凸の円弧状要素114、右に凸の円弧状要素115で接続されている。一方、第2の環状部材要素12は、長手軸方向に関して第1の環状部材要素11の直線要素と反対の方向(右下がり)に傾斜する上中下3本の直線要素121、122、123を含んでおり、中位直線要素122は上位直線要素121、下位直線要素123より相対的に長く、上位直線要素121と中位直線要素122、中位直線要素122と下位直線要素123がそれぞれ右に凸の円弧状要素124、左に凸の円弧状要素125で接続されている。第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12は、第2の環状部材要素12とこの第2の環状部材要素12の上に位置する第1の環状部材要素11との間では、第1の環状部材要素11の下位直線要素113と第2の環状部材要素12の上位直線要素121が左に凸の円弧状要素3で接続されており、第2の環状部材要素12とこの第2の環状部材要素12の下に位置する第1の環状部材要素11との間では、第2の環状部材要素12の下位直線要素123と第1の環状部材要素11の上位直線要素111が右に凸の円弧状要素4で接続されている。
【0014】
ステントのバランスを考慮した場合、第1の環状部材要素11と第2の環状部材要素12は、両者を接続する円弧状要素3または4の中心を通る長手軸と平行な直線に関して対称にするのがよい。この場合、第1の環状部材要素11の上中下3本の直線要素111、112、113は互いに平行になっていなくてもよいが、バランスを考慮した場合、互いに平行になるようにするのがよい。
尚、隣り合う環状部材1、1の位相は、例えば図5や図6に示すように適当にずれていてもよい。
【0015】
隣り合う環状部材1、1同士は、対向する位置にある円弧状要素の部分で連結要素2により連結されている。すなわち、隣り合う環状部材1、1同士は、展開された状態において、図2に示すように、左側の環状部材1における右に凸の円弧状要素115、124と、これと対向する右側の環状部材1における左に凸の円弧状要素114、125が、それぞれ連結要素2により連結されていても(図6に示すように、位相をずらして115と125、124と114を連結してもよい)、図5に示すように、左側の環状部材1における左に凸の円弧状要素3と、これと対向する右側の環状部材1における右に凸の円弧状要素4が、連結要素2により連結されていてもよい。連結要素2の形状は直線状であっても曲線状であってもよく、連結要素2の形状が曲線状の場合、曲線が1つの波の山を有していても複数の波の山を有していても構わない。
尚、ステントの形成材料としては、ステンレス鋼、タングステン、タンタル、ニッケル−チタン合金などが採用可能である。
【0016】
〔柔軟性、ショートニングおよび血管径保持力試験〕 表1に示すような異なる展開図を有するステントについて応力解析を行い、ステントの柔軟性(屈曲性)、ショートニングおよび血管径保持力を比較したところ、図7〜図9のような結果が得られた。
図7から、本発明のステントが従来のステントと比較して優れた柔軟性を有していることが分かる。また、図8および図9から、従来のステントと比較してショートニングと血管径保持力についても同等の性能を有していることが分かる。
尚、屈曲性については、ステント片端を固定し、もう片端に1Nの荷重をかけた場合のステント変化量(mm)を解析した。グラフの値は解析値(mm)を個々のステント長さ(mm)で割った値を示している。
また、ショートニングについては、ステントを直径3.0mmに拡張した場合の長さの変化を解析した。グラフはステント長さの変化率を示している。
血管径保持力については、ステントを圧縮(圧力:100mmHg)した場合のステント直径の変化(mm)を示している。
【0017】
【表1】
【0018】
【発明の効果】
以上述べたことから明らかなように、本発明によれば、以下のような効果が期待できる。すなわち、1)ステントの管壁を構成する環状部材が、略M字状の模様を変形した形状の繰り返しからなるので、ステント全体が曲げに対して柔軟であり、従って、管腔等への追従性に優れている。また、横穴の形成が容易である。2)環状部材を構成する略M字状の山(または谷)の変形模様において、谷と谷(または山と山)の間隔が、谷の底(または山の頂)の部分でもっとも狭くなっているので、拡張性が大幅に向上している。3)隣り合う環状部材同士が対向する円弧状要素同士で連結されているので、連結された波頭部分での拡張時の反りがなく、ステントを適用部位まで案内する際の血管の損傷を極力さけることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るステントの平面図である。
【図2】図1に示すステントの展開図である。
【図3】図1に示すステントを拡張した状態を示す平面図である。
【図4】図2に示す環状部材の一部拡大図である。
【図5】本発明の他の実施例に係るステントの展開図である。
【図6】本発明の他の実施例に係るステントの展開図である。
【図7】本発明のステントと従来のステントの柔軟性を比較する図である。
【図8】本発明のステントと従来のステントのショートニングを比較する図である。
【図9】本発明のステントと従来のステントの血管径保持力を比較する図である。
【図10】従来のステントの展開図である。
【図11】従来のステントの展開図である。
【図12】従来のステントの展開図である。
【符号の説明】
1 環状部材
11 第1の環状部材要素
111 上位直線要素
112 中位直線要素
113 下位直線要素
114 左に凸の円弧状要素
115 右に凸の円弧状要素
12 第2の環状部材要素
121 上位直線要素
122 中位直線要素
123 下位直線要素
124 右に凸の円弧状要素
125 左に凸の円弧状要素
2 波状連結要素
3 左に凸の円弧状要素
4 右に凸の円弧状要素
Claims (8)
- 長手軸方向に配列された半径方向に拡張可能な複数の環状部材と、隣り合う該環状部材同士を長手軸方向に連結する1つまたは複数の連結要素を含んでなり、前記環状部材は、第1の環状部材要素と第2の環状部材要素が交互に円周方向に連続されてなり、展開された状態において、該第1の環状部材要素は、長手軸に関して同じ方向に傾斜する上中下3本の直線要素を含み、中位直線要素は上位直線要素、下位直線要素より相対的に長く、上位直線要素と中位直線要素、中位直線要素と下位直線要素がそれぞれ左に凸の円弧状要素、右に凸の円弧状要素で接続されており、前記第2の環状部材要素は、長手軸方向に関して前記第1の環状部材要素の直線要素と反対の方向に傾斜する上中下3本の直線要素を含み、中位直線要素は上位直線要素、下位直線要素より相対的に長く、上位直線要素と中位直線要素、中位直線要素と下位直線要素がそれぞれ右に凸の円弧状要素、左に凸の円弧状要素で接続されており、前記第1の環状部材要素と第2の環状部材要素は、第2の環状部材要素と該第2の環状部材要素の上に位置する第1の環状部材要素との間では、第1の環状部材要素の下位直線要素と第2の環状部材要素の上位直線要素が左に凸の円弧状要素で接続されており、第2の環状部材要素と該第2の環状部材要素の下に位置する第1の環状部材要素との間では、第2の環状部材要素の下位直線要素と第1の環状部材要素の上位直線要素が右に凸の円弧状要素で接続されており、隣り合う環状部材同士は、対向する円弧状要素の部分で連結されてなる血管追従性と拡張性の優れたステント。
- 第1の環状部材要素と第2の環状部材要素は、両者を接続する円弧状要素の中心を通る長手軸と平行な直線に関して対称である請求項1に記載のステント。
- 第1の環状部材要素の上中下3本の直線要素が互いに平行である請求項2に記載のステント。
- 隣り合う環状部材同士は、展開された状態において、左側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素の右に凸の円弧状要素と、右側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素の左に凸の円弧状要素とが連結されてなる請求項1〜3のいずれかに記載のステント。
- 隣り合う環状部材同士は、展開された状態において、左側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素を接続する左に凸の円弧状要素と、右側の環状部材における第1の環状部材要素と第2の環状部材要素を接続する右に凸の円弧状要素とが連結されてなる請求項1〜3のいずれかに記載のステント。
- 連結要素の形状が直線状である請求項1〜5のいずれかに記載のステント。
- 連結要素の形状が曲線状である請求項1〜5のいずれかに記載のステント。
- 曲線が1つの波の山を有してなる請求項7に記載のステント。
【請求校9】曲線が複数の波の山を有してなる請求項7に記載のステント。
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- 2003-05-12 JP JP2003133598A patent/JP2004329789A/ja active Pending
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JP2007117548A (ja) * | 2005-10-31 | 2007-05-17 | Japan Stent Technology Co Ltd | ステント |
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