JP2004329061A - ピーナッツの渋皮に含まれる抗酸化物質を発酵・抽出する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ピーナッツの渋皮溶液、特にピーナッツ加工工場から廃液として排出される渋皮溶液から有用成分を抽出する。
【解決手段】初期培養タンク1に対して注入される糖溶液2に対して、ピーナッツ加工工場12から廃液として排出される渋皮溶液14を混合して培養液2aとし、この培養液2aに菌C1乃至Cnを添加して初期培養を行い、所定期間経過後熟成タンク9に移し、熟成しかつ抗酸化物質を含む発酵液2bを得る。この際必要であれば滅菌処理11を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】初期培養タンク1に対して注入される糖溶液2に対して、ピーナッツ加工工場12から廃液として排出される渋皮溶液14を混合して培養液2aとし、この培養液2aに菌C1乃至Cnを添加して初期培養を行い、所定期間経過後熟成タンク9に移し、熟成しかつ抗酸化物質を含む発酵液2bを得る。この際必要であれば滅菌処理11を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は酵母を用いた有用な代謝物を得る方法に係り、特に1種類の酵母を培養することにより、或いは糖同化性の異なる複数の酵母を培養液中で共生培養させることによりピーナッツの渋皮等に含有される抗酸化物質を発酵・抽出すると共に、当該抗酸化物質の機能を向上させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、米国においてピーナッツが心臓病に効果があるとの研究発表があり(米国ハーバード大学の公衆衛生学の教授フランク・フー博士)、これを契機としてピーナッツの健康効果の研究が各所で行われるようになってきた。
【0003】
上記の発表において博士は、ピーナッツの成分の中で心臓病の改善・予防に最も効果があると思われるものは「レスベラトロール」という成分であり、ピーナッツはこのレスベラトロールを多量に含有しているため心臓病の改善・予防に効果があるとの見解を示している。
【0004】
レスベラトロールはポリフェノールの一種であり、その抗酸化性はアントシアニンを凌ぐと言われている。これに関連して1997年、米国科学誌SCIENCE誌において「レスベラトロールは赤ワインに含まれるポリフェノールの中でも特にガン予防に強力な効果を発揮する。」との研究結果を発表している(ペンシルバニア大学の研究チーム発表)。さらに、これらの発表に加えて、レスベラトロールはその強い抗酸化力により血液中の所謂悪玉コレテロールを分解し、血液粘度を低下させて所謂サラサラ血とし、これにより心筋梗塞等の上記心臓病発生の予防効果を発揮していること等が判ってきた。
【0005】
上記のようなレスベラトロールの効果をふまえて、レスベラトロールを含有するピーナッツの研究が各所で行われ、この結果レスベラトロールは我々が食するピーナッツの部分以上に、ピーナッツの周囲を覆う皮、即ち渋皮部分により多く含有されていることが判明した(2002年4月/米国農務省、サンダース氏の研究チーム発表)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の観点から、渋皮を付けたピーナッツをお湯に漬けてその抽出液を利用すればレスベラトロールを含有している抽出液が得られる。実際、中国においては貧血、止血、生活習慣病予防のために古来からピーナッツの抽出液が家庭薬として利用されているという。しかしながら、この抽出液はかなりの苦みがあり決して飲みやすいものではない。因みにこの苦みがレスベラトロールであると言われている。
【0007】
ここで、対象物であるピーナッツについて考えると、ピーナッツの加工工場では渋皮を剥く工程があり、この工程から大量の廃液が発生している。
即ち、工場に搬入されたピーナッツは先ず殻が剥がされ、湯漬にされて渋皮が剥がれやすい状態にされ、この湯漬工程を経て脱皮工程に入り、脱皮されたピーナッツは乾燥され、以後フライ工程に入ってバターピーナッツ等の製品として出荷される。この加工工程のうち湯漬工程において、ピーナッツを湯漬にした湯が廃液として、また剥いた渋皮が廃棄物として大量に発生する。このためピーナッツ加工工場はこの廃液や廃棄物たる渋皮を処理するための施設、及びこの施設を運用するための経費が必要となる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来廃液として排出されていた溶液(以下「渋皮溶液」とする)を主として有効利用することを可能とするものである。
即ち、廃液としての上記渋皮溶液は、目的とする成分の抽出量が十分であるか否かは別として見方を変えればピーナッツの抽出液であり、従ってレスベラトロール等の抗酸化成分の有効利用が可能なものである。
【0009】
本発明は上記観点に基づいて構成されたものであり、例えばピーナッツの加工工程から排出される渋皮溶液を糖類を含む溶液に加えて培養液とし、この培養液に1種類の真性菌を添加して培養させ、或いは糖同化性の異なる複数の真性菌を添加して共生培養させることより発酵を行わせて、より高い抗酸化性を有しかつ渋皮の持つ独特の渋みを無くした発酵液を得る方法であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の態様】
本発明は、発明者等が先に提案している発酵技術(特願2001−313532号)を基礎に、例えばピーナッツの加工工程で廃液として排出される渋皮溶液を有用かつ安全で広い分野に応用可能な物質に変えるものである。
即ち、糖培養液中で糖同化性の異なる複数の酵母(酵母群)を共生培養することにより、或いは特定酵母を単独培養又は単独培養に近い比率で培養し、この培養液中に渋皮溶液を添加することによりこの渋皮溶液中のレスベラトロール等の抗酸化性を有する成分を有用代謝物(発酵液)として得る方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず渋皮溶液の添加対象である糖培養液は、酵母を中心とする真菌類、好ましくは酵母、より好ましくは酵母サッカロマイセタシエ科、更に好ましくは酵母ジゴサッカロマイシス属を含む複数種を共生培養、或いは酵母ジゴサッカロマイシス属の一種を単独培養若しくはこの酵母ジゴサッカロマイシス属を中心とした酵母菌の共生培養を行うための培養液である。
【0012】
なお、共生培養は、例えば初期培養と熟成培養に分け、初期培養は例えば1日から7日程度、熟成培養は例えば3日から1年程度とする。熟成が完了した代謝物は濾過され、所定の目的に利用する原液とする。
【0013】
【実施例】
以下本発明の実施例を説明する。
先ず、図1においてピーナッツの加工工場12では原料ピーナッツ13を加工する工程において前述の如く渋皮溶液14が廃液として排出されており、本実施例はこの渋皮溶液14からレスベラトロール等の抗酸化物質を抽出することを前提とする。
【0014】
図1において、符号1は初期共生培養(以下単に「初期培養」とする)を行う初期培養タンクであって、この初期培養タンク1には糖類が添加された糖溶液2が注入される。糖溶液2の原料糖の種類としては多糖類、単糖類、オリゴ糖、その他蜂蜜など様々なものが使用可能である。なお、前記培養液2aの糖濃度は、約2%から約60%まで可能である
【0015】
この初期培養タンク1に対して前記渋皮溶液14が添加され、前記糖溶液2とこの糖溶液2に添加された渋皮溶液14との混合溶液が培養液2aとして初期培養タンク1内に充填される。
【0016】
初期培養タンク1内の培養液2aに添加する菌類としては、糖同化性の異なる複数の菌類を選択する。糖液を発酵させる酵母を中心とする真菌類、好ましくは酵母、より好ましくは酵母サッカロマイセタシエ科、更に好ましくは酵母ジゴサッカロマイシス属の菌を含む複数種を用い、これを前記培養液2aに添加(接種)して共生培養させる。
【0017】
また、共生培養させる菌類は、糖濃度が約2%から約40%の糖溶液において予備培養したものが好ましい。
図中、符号C1、C2、Cnは添加される菌の種類を、3a、3b、3nはこれらの菌を予備培養する予備培養タンクを各々示す。予備培養された菌類を有する予備培養液は培養液2aが充填されている初期培養タンク1に注入されることにより培養液2aに対して所定の菌が添加され、初期培養が行われる。
【0018】
この初期培養の間、温度調整4、湿度調整5、通気調整6、糖濃度調整7、pH測定8を行うことにより初期培養の条件に沿った環境を設定する。
【0019】
初期培養の条件は以下のとおりである。
(1)糖養液2自体の糖濃度は2%から55%までである。
(2)湿度調整5は30%から80%までである。
(3)培養液2aのpHは3から7までである。
(4)温度調整4は10℃から35℃までである。
(5)培養時間は1日から7日までである。
【0020】
初期培養を終了した培養液2aは熟成タンク9に対して培養液2bとして注入され、熟成培養が実行される。
熟成培養では、複数種の菌の共生培養が確実に進行し、この結果発酵によってレスベラトロール等のような抗酸化物質を中心とした有用成分が効率良くかつ安定して生成されるように、下記の条件で培養を行う。共生培養で特に重要な点は、培養液2bの上面に形成される泡の形状、培養液2bのpH、糖濃度等であり、これらの数値や状況を見ながら温度調整4、湿度調整5、通気調整6、糖濃度調整7を行う。
【0021】
熟成培養の条件は以下のとおりである。
(1)培養液2bの糖濃度調整7は20%から60%までである。
好適には50%から65%の、高浸透圧の糖濃度とする。
(2)湿度調整5は30%から80%までである。
(3)培養液2bのpHは4から7までである。
(4)温度調整4は20℃から35℃までである。
なお、菌種や原料により、設定温度に対してプラス/マイナス2℃で調整することが望ましい。
(5)培養時間は3日から1年までである。
なお、熟成日数は、目的に応じた共生菌の組み合わせと添加液である渋皮溶液の濃度及び添加量により変化する。
【0022】
以上の条件下で熟成培養が完了したならば、菌の除去又は滅菌11を行う。菌の除去又は滅菌の方法としてはフィルターによる濾過、遠心分離、加熱による方法等がある。熟成培養が完了した培養液2bは代謝物として取り出され、それぞれの目的に応じて利用される。
【0023】
〔試験1〕
本発明の代謝物である発酵液と、渋皮溶液の原液及びビタミンC溶液各1mlを用い、DPPH法によるフリーラジカル捕捉率を測定することにより、それぞれの抗酸化機能を測定した。なお、本発明の代謝物は約60%の糖液と、渋皮溶液40%から成る培養液から得たものである。
ここで代謝物の種類A乃至Cは以下のものを示す。
発酵液A:無調整発酵液(滅菌していないもの)
発酵液B:熱処理発酵液
発酵液C:遠心分離発酵液
【0024】
先ず渋皮溶液の原液と比較すると発酵液A乃至Cの何れもDPPH捕捉率は原液とほぼ同等であった。発酵液A乃至Cの元となっている培養液が、渋皮溶液の混合比率が約40%であることを考えると、本発明の発酵工程において渋皮溶液の抗酸化機能は約1.5倍に向上したことを意味し、渋皮溶液の抗酸化性を発酵工程で大幅に高まることが確認できた。また、発酵液A乃至Cそれぞれがほぼ同等のDPPH捕捉率となっていることから、発酵液の処理は活性に影響がないことも確認できた。
【0025】
また発酵液A乃至C及び渋皮溶液の原液共にビタミンC溶液とほぼ等しい抗酸化機能を有することも確認できた。合成のビタミンC(Lアスコルビン酸)については特に多量摂取に関する健康被害の有無が現在でも争われている現状において、天然由来の上記発酵液は合成ビタミンCと同等の効果を有し、かつより安全性の高い抗酸化物質として利用可能である。因みに、合成ビタミンCは酸化防止剤として多種類の食品に対して食品添加物として使用されている。従って知らずに多量の合成ビタミンCを摂取しているのが、多くの人の食生活の実情であると考えられる。また、これらの用途の外、最近ではインフルエンザの世界的な蔓延、或いは新種のウイルス病の発生等により薬品としての使用量が増加し合成ビタミンC自体が品薄、高価格化しているという現状がある。
【0026】
なお、前記発酵液A乃至Cについては何れも、渋皮溶液特有の渋みが無くなって味覚が非常にまろやかとなり、希釈して飲用すると美味であった。また渋皮溶液の原液に比較して液体のピンク色が鮮やかとなって、人目を引く商品価値の高い色彩となった。即ち上述した方法により、渋皮溶液の抗酸化力を大幅に高めることが可能となるのと同時に、渋皮溶液の問題点或いは弱点であった渋みがなくなり、例えば高い抗酸化作用を有しかつ安全な食品添加物として今後の利用が期待される。
【0027】
更に、培養液が糖のみの発酵液が持つ、抗酸化性、抗菌性、保水性等の特性は上記発酵液でも受け継がれていることが確認されているので、上記食品添加物としての利用の外、化粧品、化粧品に対する保存剤、医薬品、栄養補助食品(飲料)、飼料や肥料の添加物等、今後様々な用途において利用可能と考えられる。
【0028】
以上、本発明をピーナッツ加工工場から排出され渋皮溶液を原料とする場合を例に説明したが、ピーナッツ加工工場におけるピーナッツの湯漬は、あくまでも渋皮を剥くための工程であり、皮剥きが可能な段階でピーナッツは取り出され皮剥き工程に廻されるため、渋皮溶液と同様に廃棄物として排出されるピーナッツの渋皮そのものにも相当量のレスベラトロール等の抗酸化物質が残留していると考えられる。このため、渋皮を回収し、この渋皮を再度湯に浸漬して渋皮溶液を得て、これを前記発酵工程に廻すよう構成することも可能である。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、レスベラトロール等の抗酸化物質を多量に含有する渋皮溶液を発酵工程を経て発酵液として得ることにより、渋皮溶液としての抗酸化機能を大幅に高めることが可能となる。
【0030】
また渋皮溶液の発酵液は、渋皮溶液で最も問題であった渋みを無くし、かつその色彩も鮮やかにするため、従来では使用不能であった、食品添加物、化粧品、化粧品の保湿剤、薬品等幅広い用途に利用可能である。
【0031】
また、原料となる渋皮溶液はピーナッツ加工工場から従来は廃液として排出されていたものが利用可能であり、これを原料として健康に役立つ有用品に変えることによって、廃棄物としての処理費用が不要となり、しかもこの廃棄物の有効利用が可能となる。
【0032】
さらにまた、本発明で得られた発酵液は原料が全て天然由来のものであるため、合成ビタミンCのように大量摂取による健康被害の有無が未だに争われているものと比較してより安全である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有用代謝物(発酵液)を得る工程の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
1 初期培養タンク
2、2a、2b 培養液
3a、3b、3n 予備培養タンク
4 温度調整
5 湿度調整
6 通気調整
7 糖濃度調整
8 pH調整
9 熟成培養タンク
11 菌の除去または滅菌
12 ピーナッツ加工工場
13 原料ピーナッツ
14 渋皮溶液
C1、C2、Cn 共生培養される菌
【発明の属する技術分野】
本発明は酵母を用いた有用な代謝物を得る方法に係り、特に1種類の酵母を培養することにより、或いは糖同化性の異なる複数の酵母を培養液中で共生培養させることによりピーナッツの渋皮等に含有される抗酸化物質を発酵・抽出すると共に、当該抗酸化物質の機能を向上させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、米国においてピーナッツが心臓病に効果があるとの研究発表があり(米国ハーバード大学の公衆衛生学の教授フランク・フー博士)、これを契機としてピーナッツの健康効果の研究が各所で行われるようになってきた。
【0003】
上記の発表において博士は、ピーナッツの成分の中で心臓病の改善・予防に最も効果があると思われるものは「レスベラトロール」という成分であり、ピーナッツはこのレスベラトロールを多量に含有しているため心臓病の改善・予防に効果があるとの見解を示している。
【0004】
レスベラトロールはポリフェノールの一種であり、その抗酸化性はアントシアニンを凌ぐと言われている。これに関連して1997年、米国科学誌SCIENCE誌において「レスベラトロールは赤ワインに含まれるポリフェノールの中でも特にガン予防に強力な効果を発揮する。」との研究結果を発表している(ペンシルバニア大学の研究チーム発表)。さらに、これらの発表に加えて、レスベラトロールはその強い抗酸化力により血液中の所謂悪玉コレテロールを分解し、血液粘度を低下させて所謂サラサラ血とし、これにより心筋梗塞等の上記心臓病発生の予防効果を発揮していること等が判ってきた。
【0005】
上記のようなレスベラトロールの効果をふまえて、レスベラトロールを含有するピーナッツの研究が各所で行われ、この結果レスベラトロールは我々が食するピーナッツの部分以上に、ピーナッツの周囲を覆う皮、即ち渋皮部分により多く含有されていることが判明した(2002年4月/米国農務省、サンダース氏の研究チーム発表)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の観点から、渋皮を付けたピーナッツをお湯に漬けてその抽出液を利用すればレスベラトロールを含有している抽出液が得られる。実際、中国においては貧血、止血、生活習慣病予防のために古来からピーナッツの抽出液が家庭薬として利用されているという。しかしながら、この抽出液はかなりの苦みがあり決して飲みやすいものではない。因みにこの苦みがレスベラトロールであると言われている。
【0007】
ここで、対象物であるピーナッツについて考えると、ピーナッツの加工工場では渋皮を剥く工程があり、この工程から大量の廃液が発生している。
即ち、工場に搬入されたピーナッツは先ず殻が剥がされ、湯漬にされて渋皮が剥がれやすい状態にされ、この湯漬工程を経て脱皮工程に入り、脱皮されたピーナッツは乾燥され、以後フライ工程に入ってバターピーナッツ等の製品として出荷される。この加工工程のうち湯漬工程において、ピーナッツを湯漬にした湯が廃液として、また剥いた渋皮が廃棄物として大量に発生する。このためピーナッツ加工工場はこの廃液や廃棄物たる渋皮を処理するための施設、及びこの施設を運用するための経費が必要となる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来廃液として排出されていた溶液(以下「渋皮溶液」とする)を主として有効利用することを可能とするものである。
即ち、廃液としての上記渋皮溶液は、目的とする成分の抽出量が十分であるか否かは別として見方を変えればピーナッツの抽出液であり、従ってレスベラトロール等の抗酸化成分の有効利用が可能なものである。
【0009】
本発明は上記観点に基づいて構成されたものであり、例えばピーナッツの加工工程から排出される渋皮溶液を糖類を含む溶液に加えて培養液とし、この培養液に1種類の真性菌を添加して培養させ、或いは糖同化性の異なる複数の真性菌を添加して共生培養させることより発酵を行わせて、より高い抗酸化性を有しかつ渋皮の持つ独特の渋みを無くした発酵液を得る方法であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の態様】
本発明は、発明者等が先に提案している発酵技術(特願2001−313532号)を基礎に、例えばピーナッツの加工工程で廃液として排出される渋皮溶液を有用かつ安全で広い分野に応用可能な物質に変えるものである。
即ち、糖培養液中で糖同化性の異なる複数の酵母(酵母群)を共生培養することにより、或いは特定酵母を単独培養又は単独培養に近い比率で培養し、この培養液中に渋皮溶液を添加することによりこの渋皮溶液中のレスベラトロール等の抗酸化性を有する成分を有用代謝物(発酵液)として得る方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず渋皮溶液の添加対象である糖培養液は、酵母を中心とする真菌類、好ましくは酵母、より好ましくは酵母サッカロマイセタシエ科、更に好ましくは酵母ジゴサッカロマイシス属を含む複数種を共生培養、或いは酵母ジゴサッカロマイシス属の一種を単独培養若しくはこの酵母ジゴサッカロマイシス属を中心とした酵母菌の共生培養を行うための培養液である。
【0012】
なお、共生培養は、例えば初期培養と熟成培養に分け、初期培養は例えば1日から7日程度、熟成培養は例えば3日から1年程度とする。熟成が完了した代謝物は濾過され、所定の目的に利用する原液とする。
【0013】
【実施例】
以下本発明の実施例を説明する。
先ず、図1においてピーナッツの加工工場12では原料ピーナッツ13を加工する工程において前述の如く渋皮溶液14が廃液として排出されており、本実施例はこの渋皮溶液14からレスベラトロール等の抗酸化物質を抽出することを前提とする。
【0014】
図1において、符号1は初期共生培養(以下単に「初期培養」とする)を行う初期培養タンクであって、この初期培養タンク1には糖類が添加された糖溶液2が注入される。糖溶液2の原料糖の種類としては多糖類、単糖類、オリゴ糖、その他蜂蜜など様々なものが使用可能である。なお、前記培養液2aの糖濃度は、約2%から約60%まで可能である
【0015】
この初期培養タンク1に対して前記渋皮溶液14が添加され、前記糖溶液2とこの糖溶液2に添加された渋皮溶液14との混合溶液が培養液2aとして初期培養タンク1内に充填される。
【0016】
初期培養タンク1内の培養液2aに添加する菌類としては、糖同化性の異なる複数の菌類を選択する。糖液を発酵させる酵母を中心とする真菌類、好ましくは酵母、より好ましくは酵母サッカロマイセタシエ科、更に好ましくは酵母ジゴサッカロマイシス属の菌を含む複数種を用い、これを前記培養液2aに添加(接種)して共生培養させる。
【0017】
また、共生培養させる菌類は、糖濃度が約2%から約40%の糖溶液において予備培養したものが好ましい。
図中、符号C1、C2、Cnは添加される菌の種類を、3a、3b、3nはこれらの菌を予備培養する予備培養タンクを各々示す。予備培養された菌類を有する予備培養液は培養液2aが充填されている初期培養タンク1に注入されることにより培養液2aに対して所定の菌が添加され、初期培養が行われる。
【0018】
この初期培養の間、温度調整4、湿度調整5、通気調整6、糖濃度調整7、pH測定8を行うことにより初期培養の条件に沿った環境を設定する。
【0019】
初期培養の条件は以下のとおりである。
(1)糖養液2自体の糖濃度は2%から55%までである。
(2)湿度調整5は30%から80%までである。
(3)培養液2aのpHは3から7までである。
(4)温度調整4は10℃から35℃までである。
(5)培養時間は1日から7日までである。
【0020】
初期培養を終了した培養液2aは熟成タンク9に対して培養液2bとして注入され、熟成培養が実行される。
熟成培養では、複数種の菌の共生培養が確実に進行し、この結果発酵によってレスベラトロール等のような抗酸化物質を中心とした有用成分が効率良くかつ安定して生成されるように、下記の条件で培養を行う。共生培養で特に重要な点は、培養液2bの上面に形成される泡の形状、培養液2bのpH、糖濃度等であり、これらの数値や状況を見ながら温度調整4、湿度調整5、通気調整6、糖濃度調整7を行う。
【0021】
熟成培養の条件は以下のとおりである。
(1)培養液2bの糖濃度調整7は20%から60%までである。
好適には50%から65%の、高浸透圧の糖濃度とする。
(2)湿度調整5は30%から80%までである。
(3)培養液2bのpHは4から7までである。
(4)温度調整4は20℃から35℃までである。
なお、菌種や原料により、設定温度に対してプラス/マイナス2℃で調整することが望ましい。
(5)培養時間は3日から1年までである。
なお、熟成日数は、目的に応じた共生菌の組み合わせと添加液である渋皮溶液の濃度及び添加量により変化する。
【0022】
以上の条件下で熟成培養が完了したならば、菌の除去又は滅菌11を行う。菌の除去又は滅菌の方法としてはフィルターによる濾過、遠心分離、加熱による方法等がある。熟成培養が完了した培養液2bは代謝物として取り出され、それぞれの目的に応じて利用される。
【0023】
〔試験1〕
本発明の代謝物である発酵液と、渋皮溶液の原液及びビタミンC溶液各1mlを用い、DPPH法によるフリーラジカル捕捉率を測定することにより、それぞれの抗酸化機能を測定した。なお、本発明の代謝物は約60%の糖液と、渋皮溶液40%から成る培養液から得たものである。
ここで代謝物の種類A乃至Cは以下のものを示す。
発酵液A:無調整発酵液(滅菌していないもの)
発酵液B:熱処理発酵液
発酵液C:遠心分離発酵液
【0024】
先ず渋皮溶液の原液と比較すると発酵液A乃至Cの何れもDPPH捕捉率は原液とほぼ同等であった。発酵液A乃至Cの元となっている培養液が、渋皮溶液の混合比率が約40%であることを考えると、本発明の発酵工程において渋皮溶液の抗酸化機能は約1.5倍に向上したことを意味し、渋皮溶液の抗酸化性を発酵工程で大幅に高まることが確認できた。また、発酵液A乃至Cそれぞれがほぼ同等のDPPH捕捉率となっていることから、発酵液の処理は活性に影響がないことも確認できた。
【0025】
また発酵液A乃至C及び渋皮溶液の原液共にビタミンC溶液とほぼ等しい抗酸化機能を有することも確認できた。合成のビタミンC(Lアスコルビン酸)については特に多量摂取に関する健康被害の有無が現在でも争われている現状において、天然由来の上記発酵液は合成ビタミンCと同等の効果を有し、かつより安全性の高い抗酸化物質として利用可能である。因みに、合成ビタミンCは酸化防止剤として多種類の食品に対して食品添加物として使用されている。従って知らずに多量の合成ビタミンCを摂取しているのが、多くの人の食生活の実情であると考えられる。また、これらの用途の外、最近ではインフルエンザの世界的な蔓延、或いは新種のウイルス病の発生等により薬品としての使用量が増加し合成ビタミンC自体が品薄、高価格化しているという現状がある。
【0026】
なお、前記発酵液A乃至Cについては何れも、渋皮溶液特有の渋みが無くなって味覚が非常にまろやかとなり、希釈して飲用すると美味であった。また渋皮溶液の原液に比較して液体のピンク色が鮮やかとなって、人目を引く商品価値の高い色彩となった。即ち上述した方法により、渋皮溶液の抗酸化力を大幅に高めることが可能となるのと同時に、渋皮溶液の問題点或いは弱点であった渋みがなくなり、例えば高い抗酸化作用を有しかつ安全な食品添加物として今後の利用が期待される。
【0027】
更に、培養液が糖のみの発酵液が持つ、抗酸化性、抗菌性、保水性等の特性は上記発酵液でも受け継がれていることが確認されているので、上記食品添加物としての利用の外、化粧品、化粧品に対する保存剤、医薬品、栄養補助食品(飲料)、飼料や肥料の添加物等、今後様々な用途において利用可能と考えられる。
【0028】
以上、本発明をピーナッツ加工工場から排出され渋皮溶液を原料とする場合を例に説明したが、ピーナッツ加工工場におけるピーナッツの湯漬は、あくまでも渋皮を剥くための工程であり、皮剥きが可能な段階でピーナッツは取り出され皮剥き工程に廻されるため、渋皮溶液と同様に廃棄物として排出されるピーナッツの渋皮そのものにも相当量のレスベラトロール等の抗酸化物質が残留していると考えられる。このため、渋皮を回収し、この渋皮を再度湯に浸漬して渋皮溶液を得て、これを前記発酵工程に廻すよう構成することも可能である。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、レスベラトロール等の抗酸化物質を多量に含有する渋皮溶液を発酵工程を経て発酵液として得ることにより、渋皮溶液としての抗酸化機能を大幅に高めることが可能となる。
【0030】
また渋皮溶液の発酵液は、渋皮溶液で最も問題であった渋みを無くし、かつその色彩も鮮やかにするため、従来では使用不能であった、食品添加物、化粧品、化粧品の保湿剤、薬品等幅広い用途に利用可能である。
【0031】
また、原料となる渋皮溶液はピーナッツ加工工場から従来は廃液として排出されていたものが利用可能であり、これを原料として健康に役立つ有用品に変えることによって、廃棄物としての処理費用が不要となり、しかもこの廃棄物の有効利用が可能となる。
【0032】
さらにまた、本発明で得られた発酵液は原料が全て天然由来のものであるため、合成ビタミンCのように大量摂取による健康被害の有無が未だに争われているものと比較してより安全である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有用代謝物(発酵液)を得る工程の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
1 初期培養タンク
2、2a、2b 培養液
3a、3b、3n 予備培養タンク
4 温度調整
5 湿度調整
6 通気調整
7 糖濃度調整
8 pH調整
9 熟成培養タンク
11 菌の除去または滅菌
12 ピーナッツ加工工場
13 原料ピーナッツ
14 渋皮溶液
C1、C2、Cn 共生培養される菌
Claims (4)
- ピーナッツの渋皮に含まれる成分が溶出した渋皮溶液を糖類を含む溶液に対して添加することにより培養液とし、この培養液によって1種類の真性菌を培養し、或いは糖同化性の異なる複数の真性菌を共生培養することにより、抗酸化物質を含む発酵液を得ること特徴とするピーナッツの渋皮に含まれる抗酸化物質を発酵・抽出する方法。
- ピーナッツの渋皮溶液は、渋皮付きピーナッツを原料として熱湯処理した溶液であることを特徴とする請求項1記載のピーナッツの渋皮に含まれる抗酸化物質を発酵・抽出する方法。
- ピーナッツの渋皮溶液は、ピーナッツの加工工場において熱湯を利用した皮剥き工程から廃液として排出される溶液であることを特徴とする請求項1記載のピーナッツの渋皮に含まれる抗酸化物質を発酵・抽出する方法。
- 前記ピーナッツの渋皮溶液は、ピーナッツの加工工場おいて皮剥き工程から廃棄物として排出される渋皮の成分を溶出した溶液であることを特徴とする請求項1記載のピーナッツの渋皮に含まれる抗酸化物質を発酵・抽出する方法。
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- 2003-05-02 JP JP2003126954A patent/JP2004329061A/ja active Pending
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