JP2004324860A - 車両の制御装置および制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニュートラル制御時に車両の移動を防止する。
【解決手段】ベルト式無段変速装置300を備えた車両において、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ310を解放させるニュートラル制御を実行するECU1000は、ニュートラル制御の実行中に、ベルト式無段変速装置300を構成するプーリ500,600とベルト700とが接する圧力を強めるように、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220を制御する。
【選択図】 図1
【解決手段】ベルト式無段変速装置300を備えた車両において、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ310を解放させるニュートラル制御を実行するECU1000は、ニュートラル制御の実行中に、ベルト式無段変速装置300を構成するプーリ500,600とベルト700とが接する圧力を強めるように、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220を制御する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機を搭載した車両の制御に関し、特に、ニュートラル制御を実行する車両の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される自動変速機は、エンジンとトルクコンバータ等を介して繋がるとともに複数の動力伝達経路を有してなる変速機構を有して構成され、例えば、アクセル開度および車速に基づいて自動的に動力伝達経路の切換えを行なう、すなわち自動的に変速比(走行速度段)の切換えを行なうように構成される。一般的に、自動変速機を有した車両には運転者により操作されるシフトレバーが設けられ、シフトレバー操作に基づいて変速ポジション(例えば、後進走行ポジション、ニュートラルポジション、前進走行ポジション)が設定され、このように設定された変速ポジション内(通常は、前進走行ポジション内)において自動変速制御が行われる。
【0003】
このような自動変速機を有した車両において、前進走行ポジションが設定されて車両が停止している状態では、アイドリング回転するエンジンからの駆動力がトルクコンバータを介して変速機に伝達され、これが車輪に伝達されるため、いわゆるクリープ現象が発生する。クリープ現象は、登坂路での停車からの発進をスムーズに行わせることができるなど、所定条件下では非常に有用なのであるが、車両を停止保持したいときには不要な現象であり、車両のブレーキを作動させてクリープ力を抑えるようになっている。すなわち、エンジンからのクリープ力をブレーキにより抑えるようになっており、その分エンジンの燃費が低下するという問題がある。
【0004】
このようなことから、前進走行ポジションにおいて、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動されるとともにアクセルがほぼ全閉となって車両が停止している状態では、前進走行ポジションのまま変速機をニュートラルに近いニュートラル状態として、燃費の向上を図ることが提案されている。
【0005】
こうしたニュートラル制御を行う場合、トルクコンバータ内での流体を介した動力伝達によるクリープ力を期待できなくなるため、登坂路等で車両を停止させるための制動装置の制動力を低下させた場合に車両が後退する現象が生じることがある。そこで、これを防ぐために、ホイール駆動による変速装置の逆転を防ぎ、車両の後退を阻止する、いわゆるヒルホールド制御も行われる。この制御は、変速装置中の特定のブレーキを係合させたり、ワンウェイクラッチをロックさせたりすることで、変速装置の逆回転を阻止する状態を生じさせる制御である。制動装置の作動、アクセルペダルの解放、車速が実質的に0に実行されるニュートラル制御とあわせてヒルホールド制御が行なわれる。
【0006】
しかしながら、路面の勾配が急な登坂路において、車両が停止した場合にニュートラル制御とヒルホールド制御とが実行された場合、ヒルホールド用ブレーキの係合力が不足する場合があり、その場合には、ヒルホールド用ブレーキがスリップし、摩擦材が極めて短い周期で係合と解放を繰り返すジャダー(振動)を生じるという問題点が発生する。特開平9−14431号公報(特許文献1)は、このような問題点を解決する制御装置を開示する。
【0007】
この特許文献1に開示された制御装置は、エンジンの回転を自動変速機に伝達する流体伝動装置と、前進走行レンジが選択されたときに係合され、流体伝動装置と自動変速機とを連結する入力クラッチと、入力クラッチの係合によりロックし、自動変速機の前進の第1速を達成するワンウェイ入力クラッチと、係合によりワンウェイ入力クラッチをロックさせ、自動変速機の出力軸の逆方向の回転を阻止するブレーキと、油圧の供給により入力クラッチを係合させる第1の油圧サーボと、油圧の供給によりブレーキを係合させる第2の油圧サーボと、車速が実質上0であり、アクセルペダルが解放された状態であり、かつ、フットブレーキペダルが踏まれていることで車両の停車状態を検出する停車状態検出回路と、路面の勾配の度合いを検出する勾配検出回路と、停車状態検出回路と、勾配検出回路からの信号に基づき、第1および第2の油圧サーボに供給する油圧を制御する制御回路とを有する自動変速機を制御する。この制御回路は、勾配検出回路からの信号に基づき、路面の勾配が、ブレーキが係合した場合にブレーキにスリップが生じるような急な登坂であるか否かを判断する判断回路と、第1の油圧サーボへの供給油圧を減圧させて入力クラッチをほぼ解放状態にする減圧回路と、第2の油圧サーボへ油圧を供給し、ブレーキを係合させる供給回路と、停車状態検出回路により車両が停車状態であることが検出され、かつ判断回路により路面の勾配がブレーキにスリップが生じるような急な登坂でないと判断された場合にのみ、減圧回路による第1の油圧サーボへの供給油圧の減圧と、供給回路による第2の油圧サーボへの油圧の供給とを行わせる実行回路とを有する。
【0008】
特許文献1に開示された制御装置によると、登坂路の勾配がブレーキにスリップが生じないような勾配である場合にのみ、入力クラッチの解放とブレーキの係合を行なうことにより、ブレーキのスリップによるジャダーが生じない範囲内において、入力クラッチの解放にともなう車両の後退を防止し、ニュートラル制御による燃費向上の効果を最大限に得ることができる。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−14431号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示された制御装置では、トルクコンバータおよび遊星歯車式減速機構から構成される自動変速機において、減速機構を構成するブレーキを係合させることによりヒルホールド制御を実現する。また、一部の自動変速機においては、ワンウェイクラッチを用いて車両の後進側に進行しないようにして、登坂路におけるニュートラル制御中の車両のずり下がりを防止している。
【0011】
車両においては、トランスミッションの変速比を車両の走行状況に応じて調整する自動変速機として、変速比を無段階に調整するベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)が搭載されることがある。
【0012】
このCVTは、エンジン出力を効率的に引き出すことが可能であり、燃費および走行性能の向上に優れる。実用化されたCVTの1つとして、金属ベルトと一対のプーリとを用いて、油圧によってプーリの有効径を変化させることで連続的に無段階の変速を実現するものがある。無端金属ベルトが、入力軸に取付けられた入力側プーリ(プライマリプーリ)および出力軸に取付けられた出力側プーリ(セカンダリプーリ)に巻き掛けられて使用される。
【0013】
入力側プーリおよび出力側プーリは、溝幅を無段階に変えられる1対のシーブをそれぞれ備え、溝幅を変えることで、無端金属ベルトの入力側プーリおよび出力側プーリに対する巻付け半径が変わり、これにより入力軸と出力軸との間の回転数比、すなわち変速比を連続的に無段階に変化させることができる。
【0014】
さらに詳しく説明すると、まず、無段変速機を制御するECU(Electronic Control Unit)は、アクセル開度と車速とから、運転者が必要とする目標エンジン出力を決定して、目標エンジン出力をエンジンの最適燃費線上で実現できるようにプライマリプーリの目標回転数を決定する。ECUは、プライマリプーリ回転数センサで検知される実際のプライマリプーリの回転数が、目標回転数になるように、CVTの油圧回路を制御して無段階の変速を実行する。エンジンを制御するECUは、目標エンジン出力とエンジン回転数とにより、目標エンジントルクを決定しスロットル開度を制御してエンジンを制御する。このように、制御されるので、エンジン出力を効率的に引き出すことが可能であり、燃費および走行性能の向上に優れるという特徴を有する。
【0015】
しかしながら、このようなCVTにおいては、減速機構を構成するブレーキもワンウェイクラッチも有さない場合がある。このようなCVTにおいては、登坂路におけるニュートラル制御が禁止されたり、ニュートラル制御が許可される場合であっても、その登坂路の路面勾配が非常に小さい場合などに限定され、ニュートラル制御が実行される機会が少なく、ニュートラル制御による燃費向上効果が発現しにくい。
【0016】
一方、現状の構成を有するCVTに新たなニュートラル制御中のヒルホールド制御を実現するための機構を加えることは、車両のコストアップという弊害や、重量増加による燃費悪化という弊害につながる。
【0017】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、新たな機構を設けることなく、車両がニュートラル制御を実行する時における車両の移動を防止しつつ、燃費向上の効果を実現することができる車両の制御装置および制御方法を提供することである。さらに、別の目的は、車両が登坂路に停止した場合であっても、ニュートラル制御を実行する時における車両の後退を防止しつつ、燃費向上の効果の実現することができる車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る車両の制御装置は、ベルト式無段変速装置と、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御装置とを搭載した車両を制御する。この制御装置は、ニュートラル制御の実行を検知するための検知手段と、ニュートラル制御が実行されていると、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するための制御手段とを含む。
【0019】
第1の発明によると、燃費向上のために、車両が前進走行ポジションであって、かつ車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御が実行される。このような場合において、ベルト式無段変速装置のプーリとベルトとが接する圧力を強める。プ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、プ−リとベルトとが強く圧接することにより、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は移動しないことになる。その結果、新たな機構を設けることなく、車両がニュートラル制御を実行する時における車両の移動を防止しつつ、燃費向上の効果を実現することができる車両の制御装置を提供することができる。
【0020】
第2の発明に係る車両の制御装置は、第1の発明の構成に加えて、車両のブレーキの作動状態を検知するためのブレーキ検知手段をさらに含む。制御手段は、検知されたブレーキの作動状態に基づいて、プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するための手段を含む。
【0021】
第2の発明によると、たとえば、車両の運転者がブレーキペダルを強く踏んでいないときには、ブレーキペダルを強く踏んでいるときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0022】
第3の発明に係る車両の制御装置は、第1の発明の構成に加えて、車両が停止した登坂路の勾配を検知するための勾配検知手段をさらに含む。制御手段は、ニュートラル制御が登坂路において実行されていると、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するための手段を含む。
【0023】
第3の発明によると、燃費向上のために実行されるニュートラル制御は、車両が登坂路に停止した場合には、クリープ力の減少による車両のずり下がりを防止するために禁止されることが多い。しかしながら、燃費向上の観点からは登坂路であってもニュートラル制御を実行する方が好ましい。このため、登坂路においてニュートラル制御を実行するときには、ベルト式無段変速装置のプーリとベルトとが接する圧力を強める。プ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、プ−リとベルトとが強く圧接することにより、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は後退しないことになる。さらに、プ−リとベルトとが強く圧接させるためには、ベルト式無段変速装置に作動油を供給するオイルポンプの負荷が高まり燃費が悪化する可能性がある。しかしながら、登坂路においてニュートラル制御を実行するときのみにプ−リとベルトとを強く圧接させるため、燃費の悪化を最小限に抑えることができる。その結果、車両が登坂路に停止した場合であっても、ニュートラル制御を実行する時における車両の後退を防止しつつ、燃費向上の効果の実現することができる車両の制御装置を提供することができる。
【0024】
第4の発明に係る車両の制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、制御手段は、ニュートラル制御が実行されていると、検知された登坂路の勾配に基づいて、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するための手段を含む。
【0025】
第4の発明によると、たとえば、車両が勾配が大きな登坂路で停止してニュートラル制御が実行されるときには、勾配が小さな登坂路で停止したときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0026】
第5の発明に係る車両の制御装置は、第3の発明の構成に加えて、車両のブレーキの作動状態を検知するためのブレーキ検知手段をさらに含む。制御手段は、検知された登坂路の勾配とブレーキの作動状態とに基づいて、プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するための手段を含む。
【0027】
第5の発明によると、たとえば、車両が勾配が大きな登坂路で停止してニュートラル制御が実行されたときに、車両の運転者がブレーキペダルを強く踏んでいないときには、勾配が小さな登坂路で停止したときやブレーキペダルを強く踏んでいるときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0028】
第6の発明に係る車両の制御方法は、ベルト式無段変速装置と、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御装置とを搭載した車両を制御する。この制御方法は、ニュートラル制御の実行を検知する検知ステップと、ニュートラル制御が実行されていると、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御する制御ステップとを含む。
【0029】
第6の発明によると、燃費向上のために、車両が前進走行ポジションであって、かつ車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御が実行される。このような場合において、ベルト式無段変速装置のプーリとベルトとが接する圧力を強める。プ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、プ−リとベルトとが強く圧接することにより、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は移動しないことになる。その結果、新たな機構を設けることなく、車両がニュートラル制御を実行する時における車両の移動を防止しつつ、燃費向上の効果を実現することができる車両の制御方法を提供することができる。
【0030】
第7の発明に係る車両の制御方法は、第6の発明の構成に加えて、車両のブレーキの作動状態を検知するブレーキ検知ステップをさらに含む。制御ステップは、検知されたブレーキの作動状態に基づいて、プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するステップを含む。
【0031】
第7の発明によると、たとえば、車両の運転者がブレーキペダルを強く踏んでいないときには、ブレーキペダルを強く踏んでいるときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0032】
第8の発明に係る車両の制御方法は、第6の発明の構成に加えて、車両が停止した登坂路の勾配を検知する勾配検知ステップをさらに含む。制御ステップは、ニュートラル制御が登坂路において実行されていると、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するステップを含む。
【0033】
第8の発明によると、燃費向上のために実行されるニュートラル制御は、車両が登坂路に停止した場合には、クリープ力の減少による車両のずり下がりを防止するために禁止されることが多い。しかしながら、燃費向上の観点からは登坂路であってもニュートラル制御を実行する方が好ましい。このため、登坂路においてニュートラル制御を実行するときには、ベルト式無段変速装置のプーリとベルトとが接する圧力を強める。プ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、プ−リとベルトとが強く圧接することにより、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は後退しないことになる。さらに、プ−リとベルトとが強く圧接させるためには、ベルト式無段変速装置に作動油を供給するオイルポンプの負荷が高まり燃費が悪化する可能性がある。しかしながら、登坂路においてニュートラル制御を実行するときのみにプ−リとベルトとを強く圧接させるため、燃費の悪化を最小限に抑えることができる。その結果、車両が登坂路に停止した場合であっても、ニュートラル制御を実行する時における車両の後退を防止しつつ、燃費向上の効果の実現することができる車両の制御方法を提供することができる。
【0034】
第9の発明に係る車両の制御方法においては、第8の発明の構成に加えて、制御ステップは、ニュートラル制御が実行されていると、検知された登坂路の勾配に基づいて、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するステップを含む。
【0035】
第9の発明によると、たとえば、車両が勾配が大きな登坂路で停止してニュートラル制御が実行されるときには、勾配が小さな登坂路で停止したときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0036】
第10の発明に係る車両の制御方法は、第8の発明の構成に加えて、車両のブレーキの作動状態を検知するブレーキ検知ステップをさらに含む。制御ステップは、検知された登坂路の勾配とブレーキの作動状態とに基づいて、プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するステップを含む。
【0037】
第10の発明によると、たとえば、車両が勾配が大きな登坂路で停止してニュートラル制御が実行されたときに、車両の運転者がブレーキペダルを強く踏んでいないときには、勾配が小さな登坂路で停止したときやブレーキペダルを強く踏んでいるときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0039】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECU1000により実現される。以下では、自動変速機をベルト式無段変速機として説明する。
【0040】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、トルクコンバータ200と、前後進切換え装置290と、ベルト式無段変速機(CVT) 300と、デファレンシャルギヤ800と、ECU1000と、油圧制御部1100とから構成される。
【0041】
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサにより検知されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0042】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200とCVT300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ400により検知される。
【0043】
CVT300は、前後進切換え装置290を介してトルクコンバータ200に接続される。CVT300は、入力側のプライマリプーリ500と、出力側のセカンダリプーリ600と、プライマリプーリ500とセカンダリプーリ600とに巻き掛けられた金属製のベルト700とから構成される。プライマリプーリ500は、プライマリシャフトに固定された固定シーブおよびプライマリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。セカンダリプーリ700は、セカンダリシャフトに固定されている固定シーブおよびセカンダリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。CVT300の、プライマリプーリの回転数NINは、プライマリプーリ回転数センサ410により、セカンダリプーリの回転数NOUTは、セカンダリプーリ回転数センサ420により、検知される。
【0044】
これら回転数センサは、プライマリプーリやセカンダリプーリの回転軸やこれに繋がるドライブシャフトに取り付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、CVT300の、入力軸であるプライマリプーリや出力軸であるセカンダリプーリの僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0045】
前後進切換え装置290は、ダブルピニオンプラネタリギヤ、リバース(後進用)ブレーキB1および入力クラッチC1を有している。プラネタリギヤは、そのサンギヤが入力軸に連結されており、第1および第2のピニオンP1,P2を支持するキャリヤCRがプライマリ側固定シーブに連結されており、そしてリングギヤRが後進用摩擦係合要素となるリバースブレーキB1に連結されており、またキャリヤCRとリングギヤRとの間に入力クラッチC1が介在している。この入力クラッチ310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、パーキング(P)ポジション、Rポジション、Nポジション以外の車両が前進するときに必ず係合状態で使用される。
【0046】
Dポジションであって、車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ310を解放して所定のスリップ状態にして、ニュートラルに近い状態にする制御をニュートラル制御という。
【0047】
図2を参照して、これらのパワートレーンを制御するECU1000および油圧制御部1100について説明する。
【0048】
図2に示すように、ECT_ECU1010には、タービン回転数センサ400からタービン回転数NTを表わす信号が、プライマリプーリ回転数センサ410からプライマリプーリ回転数NINを表わす信号が、セカンダリプーリ回転数センサ420からセカンダリプーリ回転数NOUTを表わす信号が、それぞれ入力される。
【0049】
図2に示すように、油圧制御部1100は、変速速度制御部1110と、ベルト挟圧力制御部1120と、ロックアップ係合圧制御部1130と、クラッチ圧制御部1140と、マニュアルバルブ1150とを含む。ECU1000から、油圧制御部1100の変速制御用デューティソレノイド(1)1200と、変速制御用デューティソレノイド(2)1210と、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220と、ロックアップソレノイド1230と、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240に制御信号が出力される。この油圧回路の詳細は、特開2002−181175号公報に開示されているので、詳細な説明はここでは繰返さない。
【0050】
図2を参照して、これらのパワートレーンを制御するECU1000の構造をさらに詳しく説明する。図2に示すように、ECU1000は、エンジン100を制御するエンジンECU1010と、CVT300を制御するECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1020と、VSC(Vehicle Stability Control)_ECU1030とを含む。
【0051】
図1に示した入出力信号に加えて、ECT_ECU1020には、ストップランプスイッチから、運転者によりブレーキペダルが踏まれていることを表わす信号、Gセンサから、車両が登坂路などに停車したした際の登坂路の傾斜度を表わす信号が、それぞれ入力される。さらに、エンジンECU1010には、アクセル開度センサから、運転者により踏まれているアクセルの開度を表わす信号、スロットルポジションセンサから、電磁スロットルの開度を表わす信号、エンジン回転数センサから、エンジン100の回転数(NE)を表わす信号が、それぞれ入力される。エンジンECU1010とECT_ECU1020とは、相互に接続されている。
【0052】
さらに、ECT_ECU1020には、VSC_ECU1030から、ブレーキ油圧を表わすブレーキ圧信号とが入力される。
【0053】
油圧制御部1100においては、ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220に出力された制御信号に基づいて、ベルト挟圧力制御部1120がCVT300のベルト700の挟圧力を制御する。ベルト700の挟圧力とは、プーリとベルトとが接する圧力のことである。
【0054】
図3を参照して、ECT_ECU1020のメモリに記憶されるマップについて説明する。図3に、ブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を表わすマップを示す。図3に示すように、たとえば、ブレーキ油圧がB(1)であると一義的に目標挟圧力がF(1)に決定されるように記憶されている。ここで、ブレーキ油圧が低いほど(ブレーキ力が弱いほど)、挟圧力が大きくなるように設定されている。
【0055】
図4を参照して、ベルト挟圧力と、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流(デューティ比)との関係(ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220のリニア特性)を示す。図4に示すように、たとえば、出力電流のデューティ比が低いほど、ベルト挟圧力が高くなる特性を有する。このため、図3に示すように、目標挟圧力が決定されると、図4に示すリニア特性に基づいて、ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220への制御信号値が決定される。この制御信号値は、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流のデューティ比に対応している。
【0056】
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020において実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0057】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECT_ECU1020は、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御の実行条件が成立したか否かを判断する。この判断は、たとえば運転者によりアクセルペダルが踏まれていないこと、運転者によりブレーキが踏まれていること、前進走行(D)ポジションであること、車両が停止していることなどに基づいて行なわれる。さらに具体的には、この判断は、エンジンECU1010を介してECT_ECU1020に入力されるスロットル開度信号などに基づいて行なわれる。ニュートラル制御の実行条件が成立していると(S100にてYES)、処理はS110へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS120へ移される。
【0058】
S110にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御を実行する。この後、処理はS130へ移される。S120にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御を実行しないような処理(ニュートラル制御非実行処理)を行なう。この後、処理は終了する。
【0059】
S130にて、ECT_ECU1020は、VSC_ECU1030から入力されたブレーキ油圧信号を用いて、ブレーキ油圧を検知する。S140にて、ECT_ECU1020は、S130にて検知したブレーキ油圧と図3に示すマップとに基づいて、目標挟圧力を算出する。
【0060】
S150にて、ECT_ECU1020は、S140にて算出された目標挟圧力と、図4に示すベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220のリニア特性とに基づいて、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220に出力する制御信号値を変更する。変更された制御信号値が、ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220に出力される。ECT_ECU1020から出力された制御信号値に従うベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流(デューティ比)に基づいて、所望のベルト挟圧力になるように、セカンダリプーリ圧が制御されて、ベルト挟圧力が制御される。
【0061】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置により制御されるパワートレーンを搭載した車両の動作について説明する。
【0062】
運転者がアクセルペダルを戻して、ブレーキペダルを踏むと、車両が停止して、ニュートラル制御実行条件を満足すると(S100にてYES)、ニュートラル制御が実行される(S110)。このとき、ブレーキ油圧が検知され(S130)、ブレーキ油圧が低いほど(すなわち運転者がブレーキを強く踏んでいないほど)、目標挟圧力が高く算出される(S140)。運転者がブレーキを強く踏んでいないということは、車両が移動する可能性があると判断して、目標挟圧力を高く算出する。
【0063】
ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220への制御信号値に従って、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流(デューティ比)が変更されて、セカンダリプーリ圧が変更されてベルト挟圧力が所望の挟圧力まで高められる。このようにして、ベルト挟圧力が高めて、CVTのプ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、ベルトとプ−リが強く圧接し、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は移動しないことになる。このためニュートラル制御時において車両の移動を防止できる。
【0064】
以上のようにして、本実施の形態に係るECT_ECUによると、ニュートラル制御の実行時に、ブレーキ力が低いほど、CVTのプーリとベルトとが接する圧力がより大きくなるように、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイドが制御される。ベルト挟圧力制御用リニアソレノイドは、その電流デューティ比が低いほどベルト挟圧力が高くなるというような特性が予め既知であるので、たとえば電流デューティ比を制御することにより、所望のベルト挟圧力を実現できる。ベルト挟圧力が高まると、ニュートラル制御時に車両の移動を防止することができる。
【0065】
なお、本実施の形態においては、図3に示すマップを用いて、ブレーキ油圧に応じてベルト挟圧力を変更したが、本発明はこれに限定されない。ブレーキ油圧の大きさによらずベルト挟圧力を変更するようにしてもよい。
【0066】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、前述の第1の実施の形態と同様、図1に示すECU1000により実現される。本実施の形態におけるECU1000は、第1の実施の形態に係るECU1000に含まれるECT_ECU1020により実行されるプログラムとは、異なるプログラムを実行する。なお、それ以外のハードウェア構成は同じであるので、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0067】
図6〜8を参照して、ECT_ECU1020のメモリに記憶されるマップについて説明する。図6に、登坂路勾配と目標挟圧力との関係を表わすマップを、図7に、ブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を表わすマップを、図8に、登坂路勾配およびブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を記憶したマップをそれぞれ示す。
【0068】
図6に、ECT_ECU1020のメモリに記憶される、登坂路勾配と目標挟圧力との関係を表わすマップを示す。図6に示すように、たとえば、登坂路勾配がA(1)であると一義的に目標挟圧力がF(1)に決定されるように記憶されている。ここで、登坂路勾配が大きいほど、挟圧力が大きくなるように設定されている。
【0069】
図7に示したマップは、前述の第1の実施の形態に係るブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を表わすマップ(図3)と同じであるので、ここでの詳細な説明は繰返さない。なお、図6の目標挟圧力F(1)と図7の目標挟圧力F(1)とは、必ずしも同じ値である必要はない。
【0070】
図8に、ECT_ECU1020のメモリに記憶される、登坂路勾配およびブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を記憶したマップを示す。図8に示すにように、このマップは、たとえば、登坂路勾配がA(3)であって、ブレーキ油圧がB(2)であると一義的に目標挟圧力F(32)に決定されるように記憶されている。ここで、登坂路の勾配が大きいほど、ブレーキ油圧が低いほど、目標挟圧力が大きくなるように設定されている。
【0071】
本実施の形態に係る制御装置であるECU1000は、図6〜8に示すいずれかのマップを用いて、目標挟圧力を決定する。
【0072】
図9を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020において実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、図9に示すフローチャートの中で、前述の図5に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0073】
S200にて、ECT_ECU1020は、Gセンサからに入力されたGセンサ信号に基づいて、登坂路勾配を検知する。S210にて、ECT_ECU1020は、登坂路勾配が予め定められたしきい値α以上であるか否かを判断する。登坂路勾配がα以上であると(S210にてYES)、処理はS130へ移される。もしそうでないと(S210にてNO)、この処理は終了する。
【0074】
S220にて、ECT_ECU1020は、目標挟圧力を算出する。このとき、ECT_ECU1020は、S200にて検知した登坂路勾配と図6に示すマップとに基づいて、目標挟圧力を算出する。または、ECT_ECU1020は、S130にて検知したブレーキ油圧と図7に示すマップとに基づいて、目標挟圧力を算出する。または、ECT_ECU1020は、S200にて検知した登坂路勾配およびS130にて検知したブレーキ油圧と、図8に示すマップとに基づいて、目標挟圧力を算出する。
【0075】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置により制御されるパワートレーンを搭載した車両の動作について説明する。
【0076】
登坂路の途中において、運転者がアクセルペダルを戻して、ブレーキペダルを踏むと、車両が停止して、ニュートラル制御実行条件を満足すると(S100にてYES)、ニュートラル制御が実行される(S110)。
【0077】
このとき、登坂路勾配が検知され(S200)、この勾配が予め定められた勾配α以上であるときのみ、ベルト挟圧力を高める制御が実行される(S210にてYES)。
【0078】
検知された登坂路勾配が大きいほど(すなわち車両が急勾配の登坂路で停止しているほど)、目標挟圧力が高く算出される(S220)。登坂路の勾配が大きいということは、車両が後退する可能性がより高いので、目標挟圧力を高く算出する。
【0079】
または、ブレーキ油圧が検知され(S130)、ブレーキ油圧が低いほど(すなわち運転者がブレーキを強く踏んでいないほど)、目標挟圧力が高く算出される(S220)。運転者がブレーキを強く踏んでいないということは、車両が移動する可能性があると判断して、目標挟圧力を高く算出する。
【0080】
または、検知された登坂路勾配が大きく(すなわち車両が急勾配の登坂路で停止しているほど)、ブレーキ油圧が低いほど(すなわち運転者がブレーキを強く踏んでいないほど)、目標挟圧力が高く算出される(S220)。登坂路の勾配が大きいということは車両が後退する可能性がより高いということであって、運転者がブレーキを強く踏んでいないということは車両が後退する可能性がより高いということであるので、目標挟圧力を高く算出する。
【0081】
ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220への制御信号値に従って、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流(デューティ比)が変更されて、セカンダリプーリ圧が変更されてベルト挟圧力が所望の挟圧力まで高められる。このようにして、ベルト挟圧力が高めて、CVTのプ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、ベルトとプ−リが強く圧接し、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにするところの摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は移動(特に後退)しないことになる。このためニュートラル制御時において車両の後退を防止できる。
【0082】
このとき、図10に示すように、登坂路におけるニュートラル制御中において、NOUTがマイナスになるような、車両のずり下がり(図10に点線で示す)をベルト挟圧力を高めることにより防止することができる。
【0083】
また、このようにしてベルト挟圧力を上昇させると、CVTに作動油を供給しているオイルポンプの負荷が高まる。ニュートラル制御が実行される毎にベルト挟圧力を上昇させるのではなく、登坂路においてニュートラル制御されている場合に限定して、ベルト挟圧力を上昇させるので、オイルポンプの負荷に増大に伴う燃費の悪化を最小限に抑えることができる。
【0084】
以上のようにして、本実施の形態に係るECT_ECUによると、ニュートラル制御の実行時に、車両が停止した登坂路の勾配、ブレーキ油圧およびそれらを組合せた状態に基づいて、CVTのプーリとベルトとが接する圧力がより大きくなるように、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイドが制御される。ベルト挟圧力を高めて、ニュートラル制御時に車両の後退を防止することができるとともに、オイルポンプの負荷増大に伴う燃費の悪化を最小限に抑えることができる。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動変速機の制御ブロック図である。
【図2】図1に示すECUの詳細図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るECUに記憶されるブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を示すマップである。
【図4】ベルト挟圧力制御用リニアソレノイドの制御特性を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るECUで実行されるプログラムの制御構造を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るECUに記憶される登坂路勾配と目標挟圧力との関係を示すマップである。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るECUに記憶されるブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を示すマップである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るECUに記憶される登坂路勾配およびブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を示すマップである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るECUで実行されるプログラムの制御構造を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るECUが搭載された車両の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
100 エンジン、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、290 前後進切換え装置、300 CVT、310入力クラッチ、400 タービン回転数センサ、410 プライマリプーリ回転数センサ、420 セカンダリプーリ回転数センサ、500 プライマリプーリ、600 セカンダリプーリ、700 ベルト、800 デファレンシャルギヤ、1000 ECU、1010 エンジンECU、1020 ECT_ECU、1100 油圧制御部、1110 変速速度制御部、1120 ベルト挟圧力制御部、1130 ロックアップ係合圧制御部、1140 クラッチ圧力制御部、1150 マニュアルバルブ、1200 変速制御用デューティソレノイド(1)、1210 変速制御用デューティソレノイド(2)、1220 ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド、1230 ロックアップソレノイド、1240 ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機を搭載した車両の制御に関し、特に、ニュートラル制御を実行する車両の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される自動変速機は、エンジンとトルクコンバータ等を介して繋がるとともに複数の動力伝達経路を有してなる変速機構を有して構成され、例えば、アクセル開度および車速に基づいて自動的に動力伝達経路の切換えを行なう、すなわち自動的に変速比(走行速度段)の切換えを行なうように構成される。一般的に、自動変速機を有した車両には運転者により操作されるシフトレバーが設けられ、シフトレバー操作に基づいて変速ポジション(例えば、後進走行ポジション、ニュートラルポジション、前進走行ポジション)が設定され、このように設定された変速ポジション内(通常は、前進走行ポジション内)において自動変速制御が行われる。
【0003】
このような自動変速機を有した車両において、前進走行ポジションが設定されて車両が停止している状態では、アイドリング回転するエンジンからの駆動力がトルクコンバータを介して変速機に伝達され、これが車輪に伝達されるため、いわゆるクリープ現象が発生する。クリープ現象は、登坂路での停車からの発進をスムーズに行わせることができるなど、所定条件下では非常に有用なのであるが、車両を停止保持したいときには不要な現象であり、車両のブレーキを作動させてクリープ力を抑えるようになっている。すなわち、エンジンからのクリープ力をブレーキにより抑えるようになっており、その分エンジンの燃費が低下するという問題がある。
【0004】
このようなことから、前進走行ポジションにおいて、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動されるとともにアクセルがほぼ全閉となって車両が停止している状態では、前進走行ポジションのまま変速機をニュートラルに近いニュートラル状態として、燃費の向上を図ることが提案されている。
【0005】
こうしたニュートラル制御を行う場合、トルクコンバータ内での流体を介した動力伝達によるクリープ力を期待できなくなるため、登坂路等で車両を停止させるための制動装置の制動力を低下させた場合に車両が後退する現象が生じることがある。そこで、これを防ぐために、ホイール駆動による変速装置の逆転を防ぎ、車両の後退を阻止する、いわゆるヒルホールド制御も行われる。この制御は、変速装置中の特定のブレーキを係合させたり、ワンウェイクラッチをロックさせたりすることで、変速装置の逆回転を阻止する状態を生じさせる制御である。制動装置の作動、アクセルペダルの解放、車速が実質的に0に実行されるニュートラル制御とあわせてヒルホールド制御が行なわれる。
【0006】
しかしながら、路面の勾配が急な登坂路において、車両が停止した場合にニュートラル制御とヒルホールド制御とが実行された場合、ヒルホールド用ブレーキの係合力が不足する場合があり、その場合には、ヒルホールド用ブレーキがスリップし、摩擦材が極めて短い周期で係合と解放を繰り返すジャダー(振動)を生じるという問題点が発生する。特開平9−14431号公報(特許文献1)は、このような問題点を解決する制御装置を開示する。
【0007】
この特許文献1に開示された制御装置は、エンジンの回転を自動変速機に伝達する流体伝動装置と、前進走行レンジが選択されたときに係合され、流体伝動装置と自動変速機とを連結する入力クラッチと、入力クラッチの係合によりロックし、自動変速機の前進の第1速を達成するワンウェイ入力クラッチと、係合によりワンウェイ入力クラッチをロックさせ、自動変速機の出力軸の逆方向の回転を阻止するブレーキと、油圧の供給により入力クラッチを係合させる第1の油圧サーボと、油圧の供給によりブレーキを係合させる第2の油圧サーボと、車速が実質上0であり、アクセルペダルが解放された状態であり、かつ、フットブレーキペダルが踏まれていることで車両の停車状態を検出する停車状態検出回路と、路面の勾配の度合いを検出する勾配検出回路と、停車状態検出回路と、勾配検出回路からの信号に基づき、第1および第2の油圧サーボに供給する油圧を制御する制御回路とを有する自動変速機を制御する。この制御回路は、勾配検出回路からの信号に基づき、路面の勾配が、ブレーキが係合した場合にブレーキにスリップが生じるような急な登坂であるか否かを判断する判断回路と、第1の油圧サーボへの供給油圧を減圧させて入力クラッチをほぼ解放状態にする減圧回路と、第2の油圧サーボへ油圧を供給し、ブレーキを係合させる供給回路と、停車状態検出回路により車両が停車状態であることが検出され、かつ判断回路により路面の勾配がブレーキにスリップが生じるような急な登坂でないと判断された場合にのみ、減圧回路による第1の油圧サーボへの供給油圧の減圧と、供給回路による第2の油圧サーボへの油圧の供給とを行わせる実行回路とを有する。
【0008】
特許文献1に開示された制御装置によると、登坂路の勾配がブレーキにスリップが生じないような勾配である場合にのみ、入力クラッチの解放とブレーキの係合を行なうことにより、ブレーキのスリップによるジャダーが生じない範囲内において、入力クラッチの解放にともなう車両の後退を防止し、ニュートラル制御による燃費向上の効果を最大限に得ることができる。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−14431号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示された制御装置では、トルクコンバータおよび遊星歯車式減速機構から構成される自動変速機において、減速機構を構成するブレーキを係合させることによりヒルホールド制御を実現する。また、一部の自動変速機においては、ワンウェイクラッチを用いて車両の後進側に進行しないようにして、登坂路におけるニュートラル制御中の車両のずり下がりを防止している。
【0011】
車両においては、トランスミッションの変速比を車両の走行状況に応じて調整する自動変速機として、変速比を無段階に調整するベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)が搭載されることがある。
【0012】
このCVTは、エンジン出力を効率的に引き出すことが可能であり、燃費および走行性能の向上に優れる。実用化されたCVTの1つとして、金属ベルトと一対のプーリとを用いて、油圧によってプーリの有効径を変化させることで連続的に無段階の変速を実現するものがある。無端金属ベルトが、入力軸に取付けられた入力側プーリ(プライマリプーリ)および出力軸に取付けられた出力側プーリ(セカンダリプーリ)に巻き掛けられて使用される。
【0013】
入力側プーリおよび出力側プーリは、溝幅を無段階に変えられる1対のシーブをそれぞれ備え、溝幅を変えることで、無端金属ベルトの入力側プーリおよび出力側プーリに対する巻付け半径が変わり、これにより入力軸と出力軸との間の回転数比、すなわち変速比を連続的に無段階に変化させることができる。
【0014】
さらに詳しく説明すると、まず、無段変速機を制御するECU(Electronic Control Unit)は、アクセル開度と車速とから、運転者が必要とする目標エンジン出力を決定して、目標エンジン出力をエンジンの最適燃費線上で実現できるようにプライマリプーリの目標回転数を決定する。ECUは、プライマリプーリ回転数センサで検知される実際のプライマリプーリの回転数が、目標回転数になるように、CVTの油圧回路を制御して無段階の変速を実行する。エンジンを制御するECUは、目標エンジン出力とエンジン回転数とにより、目標エンジントルクを決定しスロットル開度を制御してエンジンを制御する。このように、制御されるので、エンジン出力を効率的に引き出すことが可能であり、燃費および走行性能の向上に優れるという特徴を有する。
【0015】
しかしながら、このようなCVTにおいては、減速機構を構成するブレーキもワンウェイクラッチも有さない場合がある。このようなCVTにおいては、登坂路におけるニュートラル制御が禁止されたり、ニュートラル制御が許可される場合であっても、その登坂路の路面勾配が非常に小さい場合などに限定され、ニュートラル制御が実行される機会が少なく、ニュートラル制御による燃費向上効果が発現しにくい。
【0016】
一方、現状の構成を有するCVTに新たなニュートラル制御中のヒルホールド制御を実現するための機構を加えることは、車両のコストアップという弊害や、重量増加による燃費悪化という弊害につながる。
【0017】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、新たな機構を設けることなく、車両がニュートラル制御を実行する時における車両の移動を防止しつつ、燃費向上の効果を実現することができる車両の制御装置および制御方法を提供することである。さらに、別の目的は、車両が登坂路に停止した場合であっても、ニュートラル制御を実行する時における車両の後退を防止しつつ、燃費向上の効果の実現することができる車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る車両の制御装置は、ベルト式無段変速装置と、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御装置とを搭載した車両を制御する。この制御装置は、ニュートラル制御の実行を検知するための検知手段と、ニュートラル制御が実行されていると、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するための制御手段とを含む。
【0019】
第1の発明によると、燃費向上のために、車両が前進走行ポジションであって、かつ車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御が実行される。このような場合において、ベルト式無段変速装置のプーリとベルトとが接する圧力を強める。プ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、プ−リとベルトとが強く圧接することにより、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は移動しないことになる。その結果、新たな機構を設けることなく、車両がニュートラル制御を実行する時における車両の移動を防止しつつ、燃費向上の効果を実現することができる車両の制御装置を提供することができる。
【0020】
第2の発明に係る車両の制御装置は、第1の発明の構成に加えて、車両のブレーキの作動状態を検知するためのブレーキ検知手段をさらに含む。制御手段は、検知されたブレーキの作動状態に基づいて、プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するための手段を含む。
【0021】
第2の発明によると、たとえば、車両の運転者がブレーキペダルを強く踏んでいないときには、ブレーキペダルを強く踏んでいるときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0022】
第3の発明に係る車両の制御装置は、第1の発明の構成に加えて、車両が停止した登坂路の勾配を検知するための勾配検知手段をさらに含む。制御手段は、ニュートラル制御が登坂路において実行されていると、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するための手段を含む。
【0023】
第3の発明によると、燃費向上のために実行されるニュートラル制御は、車両が登坂路に停止した場合には、クリープ力の減少による車両のずり下がりを防止するために禁止されることが多い。しかしながら、燃費向上の観点からは登坂路であってもニュートラル制御を実行する方が好ましい。このため、登坂路においてニュートラル制御を実行するときには、ベルト式無段変速装置のプーリとベルトとが接する圧力を強める。プ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、プ−リとベルトとが強く圧接することにより、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は後退しないことになる。さらに、プ−リとベルトとが強く圧接させるためには、ベルト式無段変速装置に作動油を供給するオイルポンプの負荷が高まり燃費が悪化する可能性がある。しかしながら、登坂路においてニュートラル制御を実行するときのみにプ−リとベルトとを強く圧接させるため、燃費の悪化を最小限に抑えることができる。その結果、車両が登坂路に停止した場合であっても、ニュートラル制御を実行する時における車両の後退を防止しつつ、燃費向上の効果の実現することができる車両の制御装置を提供することができる。
【0024】
第4の発明に係る車両の制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、制御手段は、ニュートラル制御が実行されていると、検知された登坂路の勾配に基づいて、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するための手段を含む。
【0025】
第4の発明によると、たとえば、車両が勾配が大きな登坂路で停止してニュートラル制御が実行されるときには、勾配が小さな登坂路で停止したときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0026】
第5の発明に係る車両の制御装置は、第3の発明の構成に加えて、車両のブレーキの作動状態を検知するためのブレーキ検知手段をさらに含む。制御手段は、検知された登坂路の勾配とブレーキの作動状態とに基づいて、プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するための手段を含む。
【0027】
第5の発明によると、たとえば、車両が勾配が大きな登坂路で停止してニュートラル制御が実行されたときに、車両の運転者がブレーキペダルを強く踏んでいないときには、勾配が小さな登坂路で停止したときやブレーキペダルを強く踏んでいるときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0028】
第6の発明に係る車両の制御方法は、ベルト式無段変速装置と、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御装置とを搭載した車両を制御する。この制御方法は、ニュートラル制御の実行を検知する検知ステップと、ニュートラル制御が実行されていると、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御する制御ステップとを含む。
【0029】
第6の発明によると、燃費向上のために、車両が前進走行ポジションであって、かつ車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御が実行される。このような場合において、ベルト式無段変速装置のプーリとベルトとが接する圧力を強める。プ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、プ−リとベルトとが強く圧接することにより、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は移動しないことになる。その結果、新たな機構を設けることなく、車両がニュートラル制御を実行する時における車両の移動を防止しつつ、燃費向上の効果を実現することができる車両の制御方法を提供することができる。
【0030】
第7の発明に係る車両の制御方法は、第6の発明の構成に加えて、車両のブレーキの作動状態を検知するブレーキ検知ステップをさらに含む。制御ステップは、検知されたブレーキの作動状態に基づいて、プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するステップを含む。
【0031】
第7の発明によると、たとえば、車両の運転者がブレーキペダルを強く踏んでいないときには、ブレーキペダルを強く踏んでいるときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0032】
第8の発明に係る車両の制御方法は、第6の発明の構成に加えて、車両が停止した登坂路の勾配を検知する勾配検知ステップをさらに含む。制御ステップは、ニュートラル制御が登坂路において実行されていると、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するステップを含む。
【0033】
第8の発明によると、燃費向上のために実行されるニュートラル制御は、車両が登坂路に停止した場合には、クリープ力の減少による車両のずり下がりを防止するために禁止されることが多い。しかしながら、燃費向上の観点からは登坂路であってもニュートラル制御を実行する方が好ましい。このため、登坂路においてニュートラル制御を実行するときには、ベルト式無段変速装置のプーリとベルトとが接する圧力を強める。プ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、プ−リとベルトとが強く圧接することにより、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は後退しないことになる。さらに、プ−リとベルトとが強く圧接させるためには、ベルト式無段変速装置に作動油を供給するオイルポンプの負荷が高まり燃費が悪化する可能性がある。しかしながら、登坂路においてニュートラル制御を実行するときのみにプ−リとベルトとを強く圧接させるため、燃費の悪化を最小限に抑えることができる。その結果、車両が登坂路に停止した場合であっても、ニュートラル制御を実行する時における車両の後退を防止しつつ、燃費向上の効果の実現することができる車両の制御方法を提供することができる。
【0034】
第9の発明に係る車両の制御方法においては、第8の発明の構成に加えて、制御ステップは、ニュートラル制御が実行されていると、検知された登坂路の勾配に基づいて、ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、ベルト式無段変速装置を制御するステップを含む。
【0035】
第9の発明によると、たとえば、車両が勾配が大きな登坂路で停止してニュートラル制御が実行されるときには、勾配が小さな登坂路で停止したときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0036】
第10の発明に係る車両の制御方法は、第8の発明の構成に加えて、車両のブレーキの作動状態を検知するブレーキ検知ステップをさらに含む。制御ステップは、検知された登坂路の勾配とブレーキの作動状態とに基づいて、プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するステップを含む。
【0037】
第10の発明によると、たとえば、車両が勾配が大きな登坂路で停止してニュートラル制御が実行されたときに、車両の運転者がブレーキペダルを強く踏んでいないときには、勾配が小さな登坂路で停止したときやブレーキペダルを強く踏んでいるときに比べて、プーリとベルトとが接する圧力をより強める。このようにすると、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力をより強く発生させることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0039】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECU1000により実現される。以下では、自動変速機をベルト式無段変速機として説明する。
【0040】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、トルクコンバータ200と、前後進切換え装置290と、ベルト式無段変速機(CVT) 300と、デファレンシャルギヤ800と、ECU1000と、油圧制御部1100とから構成される。
【0041】
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサにより検知されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0042】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200とCVT300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ400により検知される。
【0043】
CVT300は、前後進切換え装置290を介してトルクコンバータ200に接続される。CVT300は、入力側のプライマリプーリ500と、出力側のセカンダリプーリ600と、プライマリプーリ500とセカンダリプーリ600とに巻き掛けられた金属製のベルト700とから構成される。プライマリプーリ500は、プライマリシャフトに固定された固定シーブおよびプライマリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。セカンダリプーリ700は、セカンダリシャフトに固定されている固定シーブおよびセカンダリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。CVT300の、プライマリプーリの回転数NINは、プライマリプーリ回転数センサ410により、セカンダリプーリの回転数NOUTは、セカンダリプーリ回転数センサ420により、検知される。
【0044】
これら回転数センサは、プライマリプーリやセカンダリプーリの回転軸やこれに繋がるドライブシャフトに取り付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、CVT300の、入力軸であるプライマリプーリや出力軸であるセカンダリプーリの僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0045】
前後進切換え装置290は、ダブルピニオンプラネタリギヤ、リバース(後進用)ブレーキB1および入力クラッチC1を有している。プラネタリギヤは、そのサンギヤが入力軸に連結されており、第1および第2のピニオンP1,P2を支持するキャリヤCRがプライマリ側固定シーブに連結されており、そしてリングギヤRが後進用摩擦係合要素となるリバースブレーキB1に連結されており、またキャリヤCRとリングギヤRとの間に入力クラッチC1が介在している。この入力クラッチ310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、パーキング(P)ポジション、Rポジション、Nポジション以外の車両が前進するときに必ず係合状態で使用される。
【0046】
Dポジションであって、車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ310を解放して所定のスリップ状態にして、ニュートラルに近い状態にする制御をニュートラル制御という。
【0047】
図2を参照して、これらのパワートレーンを制御するECU1000および油圧制御部1100について説明する。
【0048】
図2に示すように、ECT_ECU1010には、タービン回転数センサ400からタービン回転数NTを表わす信号が、プライマリプーリ回転数センサ410からプライマリプーリ回転数NINを表わす信号が、セカンダリプーリ回転数センサ420からセカンダリプーリ回転数NOUTを表わす信号が、それぞれ入力される。
【0049】
図2に示すように、油圧制御部1100は、変速速度制御部1110と、ベルト挟圧力制御部1120と、ロックアップ係合圧制御部1130と、クラッチ圧制御部1140と、マニュアルバルブ1150とを含む。ECU1000から、油圧制御部1100の変速制御用デューティソレノイド(1)1200と、変速制御用デューティソレノイド(2)1210と、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220と、ロックアップソレノイド1230と、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240に制御信号が出力される。この油圧回路の詳細は、特開2002−181175号公報に開示されているので、詳細な説明はここでは繰返さない。
【0050】
図2を参照して、これらのパワートレーンを制御するECU1000の構造をさらに詳しく説明する。図2に示すように、ECU1000は、エンジン100を制御するエンジンECU1010と、CVT300を制御するECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1020と、VSC(Vehicle Stability Control)_ECU1030とを含む。
【0051】
図1に示した入出力信号に加えて、ECT_ECU1020には、ストップランプスイッチから、運転者によりブレーキペダルが踏まれていることを表わす信号、Gセンサから、車両が登坂路などに停車したした際の登坂路の傾斜度を表わす信号が、それぞれ入力される。さらに、エンジンECU1010には、アクセル開度センサから、運転者により踏まれているアクセルの開度を表わす信号、スロットルポジションセンサから、電磁スロットルの開度を表わす信号、エンジン回転数センサから、エンジン100の回転数(NE)を表わす信号が、それぞれ入力される。エンジンECU1010とECT_ECU1020とは、相互に接続されている。
【0052】
さらに、ECT_ECU1020には、VSC_ECU1030から、ブレーキ油圧を表わすブレーキ圧信号とが入力される。
【0053】
油圧制御部1100においては、ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220に出力された制御信号に基づいて、ベルト挟圧力制御部1120がCVT300のベルト700の挟圧力を制御する。ベルト700の挟圧力とは、プーリとベルトとが接する圧力のことである。
【0054】
図3を参照して、ECT_ECU1020のメモリに記憶されるマップについて説明する。図3に、ブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を表わすマップを示す。図3に示すように、たとえば、ブレーキ油圧がB(1)であると一義的に目標挟圧力がF(1)に決定されるように記憶されている。ここで、ブレーキ油圧が低いほど(ブレーキ力が弱いほど)、挟圧力が大きくなるように設定されている。
【0055】
図4を参照して、ベルト挟圧力と、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流(デューティ比)との関係(ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220のリニア特性)を示す。図4に示すように、たとえば、出力電流のデューティ比が低いほど、ベルト挟圧力が高くなる特性を有する。このため、図3に示すように、目標挟圧力が決定されると、図4に示すリニア特性に基づいて、ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220への制御信号値が決定される。この制御信号値は、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流のデューティ比に対応している。
【0056】
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020において実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0057】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECT_ECU1020は、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御の実行条件が成立したか否かを判断する。この判断は、たとえば運転者によりアクセルペダルが踏まれていないこと、運転者によりブレーキが踏まれていること、前進走行(D)ポジションであること、車両が停止していることなどに基づいて行なわれる。さらに具体的には、この判断は、エンジンECU1010を介してECT_ECU1020に入力されるスロットル開度信号などに基づいて行なわれる。ニュートラル制御の実行条件が成立していると(S100にてYES)、処理はS110へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS120へ移される。
【0058】
S110にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御を実行する。この後、処理はS130へ移される。S120にて、ECT_ECU1020は、ニュートラル制御を実行しないような処理(ニュートラル制御非実行処理)を行なう。この後、処理は終了する。
【0059】
S130にて、ECT_ECU1020は、VSC_ECU1030から入力されたブレーキ油圧信号を用いて、ブレーキ油圧を検知する。S140にて、ECT_ECU1020は、S130にて検知したブレーキ油圧と図3に示すマップとに基づいて、目標挟圧力を算出する。
【0060】
S150にて、ECT_ECU1020は、S140にて算出された目標挟圧力と、図4に示すベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220のリニア特性とに基づいて、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220に出力する制御信号値を変更する。変更された制御信号値が、ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220に出力される。ECT_ECU1020から出力された制御信号値に従うベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流(デューティ比)に基づいて、所望のベルト挟圧力になるように、セカンダリプーリ圧が制御されて、ベルト挟圧力が制御される。
【0061】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置により制御されるパワートレーンを搭載した車両の動作について説明する。
【0062】
運転者がアクセルペダルを戻して、ブレーキペダルを踏むと、車両が停止して、ニュートラル制御実行条件を満足すると(S100にてYES)、ニュートラル制御が実行される(S110)。このとき、ブレーキ油圧が検知され(S130)、ブレーキ油圧が低いほど(すなわち運転者がブレーキを強く踏んでいないほど)、目標挟圧力が高く算出される(S140)。運転者がブレーキを強く踏んでいないということは、車両が移動する可能性があると判断して、目標挟圧力を高く算出する。
【0063】
ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220への制御信号値に従って、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流(デューティ比)が変更されて、セカンダリプーリ圧が変更されてベルト挟圧力が所望の挟圧力まで高められる。このようにして、ベルト挟圧力が高めて、CVTのプ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、ベルトとプ−リが強く圧接し、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにすることに起因する摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は移動しないことになる。このためニュートラル制御時において車両の移動を防止できる。
【0064】
以上のようにして、本実施の形態に係るECT_ECUによると、ニュートラル制御の実行時に、ブレーキ力が低いほど、CVTのプーリとベルトとが接する圧力がより大きくなるように、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイドが制御される。ベルト挟圧力制御用リニアソレノイドは、その電流デューティ比が低いほどベルト挟圧力が高くなるというような特性が予め既知であるので、たとえば電流デューティ比を制御することにより、所望のベルト挟圧力を実現できる。ベルト挟圧力が高まると、ニュートラル制御時に車両の移動を防止することができる。
【0065】
なお、本実施の形態においては、図3に示すマップを用いて、ブレーキ油圧に応じてベルト挟圧力を変更したが、本発明はこれに限定されない。ブレーキ油圧の大きさによらずベルト挟圧力を変更するようにしてもよい。
【0066】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、前述の第1の実施の形態と同様、図1に示すECU1000により実現される。本実施の形態におけるECU1000は、第1の実施の形態に係るECU1000に含まれるECT_ECU1020により実行されるプログラムとは、異なるプログラムを実行する。なお、それ以外のハードウェア構成は同じであるので、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0067】
図6〜8を参照して、ECT_ECU1020のメモリに記憶されるマップについて説明する。図6に、登坂路勾配と目標挟圧力との関係を表わすマップを、図7に、ブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を表わすマップを、図8に、登坂路勾配およびブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を記憶したマップをそれぞれ示す。
【0068】
図6に、ECT_ECU1020のメモリに記憶される、登坂路勾配と目標挟圧力との関係を表わすマップを示す。図6に示すように、たとえば、登坂路勾配がA(1)であると一義的に目標挟圧力がF(1)に決定されるように記憶されている。ここで、登坂路勾配が大きいほど、挟圧力が大きくなるように設定されている。
【0069】
図7に示したマップは、前述の第1の実施の形態に係るブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を表わすマップ(図3)と同じであるので、ここでの詳細な説明は繰返さない。なお、図6の目標挟圧力F(1)と図7の目標挟圧力F(1)とは、必ずしも同じ値である必要はない。
【0070】
図8に、ECT_ECU1020のメモリに記憶される、登坂路勾配およびブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を記憶したマップを示す。図8に示すにように、このマップは、たとえば、登坂路勾配がA(3)であって、ブレーキ油圧がB(2)であると一義的に目標挟圧力F(32)に決定されるように記憶されている。ここで、登坂路の勾配が大きいほど、ブレーキ油圧が低いほど、目標挟圧力が大きくなるように設定されている。
【0071】
本実施の形態に係る制御装置であるECU1000は、図6〜8に示すいずれかのマップを用いて、目標挟圧力を決定する。
【0072】
図9を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020において実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、図9に示すフローチャートの中で、前述の図5に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0073】
S200にて、ECT_ECU1020は、Gセンサからに入力されたGセンサ信号に基づいて、登坂路勾配を検知する。S210にて、ECT_ECU1020は、登坂路勾配が予め定められたしきい値α以上であるか否かを判断する。登坂路勾配がα以上であると(S210にてYES)、処理はS130へ移される。もしそうでないと(S210にてNO)、この処理は終了する。
【0074】
S220にて、ECT_ECU1020は、目標挟圧力を算出する。このとき、ECT_ECU1020は、S200にて検知した登坂路勾配と図6に示すマップとに基づいて、目標挟圧力を算出する。または、ECT_ECU1020は、S130にて検知したブレーキ油圧と図7に示すマップとに基づいて、目標挟圧力を算出する。または、ECT_ECU1020は、S200にて検知した登坂路勾配およびS130にて検知したブレーキ油圧と、図8に示すマップとに基づいて、目標挟圧力を算出する。
【0075】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置により制御されるパワートレーンを搭載した車両の動作について説明する。
【0076】
登坂路の途中において、運転者がアクセルペダルを戻して、ブレーキペダルを踏むと、車両が停止して、ニュートラル制御実行条件を満足すると(S100にてYES)、ニュートラル制御が実行される(S110)。
【0077】
このとき、登坂路勾配が検知され(S200)、この勾配が予め定められた勾配α以上であるときのみ、ベルト挟圧力を高める制御が実行される(S210にてYES)。
【0078】
検知された登坂路勾配が大きいほど(すなわち車両が急勾配の登坂路で停止しているほど)、目標挟圧力が高く算出される(S220)。登坂路の勾配が大きいということは、車両が後退する可能性がより高いので、目標挟圧力を高く算出する。
【0079】
または、ブレーキ油圧が検知され(S130)、ブレーキ油圧が低いほど(すなわち運転者がブレーキを強く踏んでいないほど)、目標挟圧力が高く算出される(S220)。運転者がブレーキを強く踏んでいないということは、車両が移動する可能性があると判断して、目標挟圧力を高く算出する。
【0080】
または、検知された登坂路勾配が大きく(すなわち車両が急勾配の登坂路で停止しているほど)、ブレーキ油圧が低いほど(すなわち運転者がブレーキを強く踏んでいないほど)、目標挟圧力が高く算出される(S220)。登坂路の勾配が大きいということは車両が後退する可能性がより高いということであって、運転者がブレーキを強く踏んでいないということは車両が後退する可能性がより高いということであるので、目標挟圧力を高く算出する。
【0081】
ECT_ECU1020からベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220への制御信号値に従って、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220の出力電流(デューティ比)が変更されて、セカンダリプーリ圧が変更されてベルト挟圧力が所望の挟圧力まで高められる。このようにして、ベルト挟圧力が高めて、CVTのプ−リとベルトとが接する圧力を充分に増大させると、ベルトとプ−リが強く圧接し、プ−リがベルトを拘束して相対的に動くことができないようにするところの摩擦ブレ−キ力が発生する。したがって、これが走行抵抗となり、車両は移動(特に後退)しないことになる。このためニュートラル制御時において車両の後退を防止できる。
【0082】
このとき、図10に示すように、登坂路におけるニュートラル制御中において、NOUTがマイナスになるような、車両のずり下がり(図10に点線で示す)をベルト挟圧力を高めることにより防止することができる。
【0083】
また、このようにしてベルト挟圧力を上昇させると、CVTに作動油を供給しているオイルポンプの負荷が高まる。ニュートラル制御が実行される毎にベルト挟圧力を上昇させるのではなく、登坂路においてニュートラル制御されている場合に限定して、ベルト挟圧力を上昇させるので、オイルポンプの負荷に増大に伴う燃費の悪化を最小限に抑えることができる。
【0084】
以上のようにして、本実施の形態に係るECT_ECUによると、ニュートラル制御の実行時に、車両が停止した登坂路の勾配、ブレーキ油圧およびそれらを組合せた状態に基づいて、CVTのプーリとベルトとが接する圧力がより大きくなるように、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイドが制御される。ベルト挟圧力を高めて、ニュートラル制御時に車両の後退を防止することができるとともに、オイルポンプの負荷増大に伴う燃費の悪化を最小限に抑えることができる。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動変速機の制御ブロック図である。
【図2】図1に示すECUの詳細図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るECUに記憶されるブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を示すマップである。
【図4】ベルト挟圧力制御用リニアソレノイドの制御特性を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るECUで実行されるプログラムの制御構造を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るECUに記憶される登坂路勾配と目標挟圧力との関係を示すマップである。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るECUに記憶されるブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を示すマップである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るECUに記憶される登坂路勾配およびブレーキ油圧と目標挟圧力との関係を示すマップである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るECUで実行されるプログラムの制御構造を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るECUが搭載された車両の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
100 エンジン、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、290 前後進切換え装置、300 CVT、310入力クラッチ、400 タービン回転数センサ、410 プライマリプーリ回転数センサ、420 セカンダリプーリ回転数センサ、500 プライマリプーリ、600 セカンダリプーリ、700 ベルト、800 デファレンシャルギヤ、1000 ECU、1010 エンジンECU、1020 ECT_ECU、1100 油圧制御部、1110 変速速度制御部、1120 ベルト挟圧力制御部、1130 ロックアップ係合圧制御部、1140 クラッチ圧力制御部、1150 マニュアルバルブ、1200 変速制御用デューティソレノイド(1)、1210 変速制御用デューティソレノイド(2)、1220 ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド、1230 ロックアップソレノイド、1240 ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド。
Claims (10)
- ベルト式無段変速装置と、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御装置とを搭載した車両の制御装置であって、
前記ニュートラル制御の実行を検知するための検知手段と、
前記ニュートラル制御が実行されていると、前記ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、前記ベルト式無段変速装置を制御するための制御手段とを含む、車両の制御装置。 - 前記制御装置は、前記車両のブレーキの作動状態を検知するためのブレーキ検知手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記検知されたブレーキの作動状態に基づいて、前記プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するための手段を含む、請求項1に記載の車両の制御装置。 - 前記制御装置は、前記車両が停止した登坂路の勾配を検知するための勾配検知手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記ニュートラル制御が登坂路において実行されていると、前記ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、前記ベルト式無段変速装置を制御するための手段を含む、請求項1に記載の車両の制御装置。 - 前記制御手段は、前記ニュートラル制御が実行されていると、前記検知された登坂路の勾配に基づいて、前記ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、前記ベルト式無段変速装置を制御するための手段を含む、請求項3に記載の車両の制御装置。
- 前記制御装置は、前記車両のブレーキの作動状態を検知するためのブレーキ検知手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記検知された登坂路の勾配とブレーキの作動状態とに基づいて、前記プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するための手段を含む、請求項3に記載の車両の制御装置。 - ベルト式無段変速装置と、前進走行ポジションで車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチを解放させるニュートラル制御装置とを搭載した車両の制御方法であって、
前記ニュートラル制御の実行を検知する検知ステップと、
前記ニュートラル制御が実行されていると、前記ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、前記ベルト式無段変速装置を制御する制御ステップとを含む、車両の制御方法。 - 前記制御方法は、前記車両のブレーキの作動状態を検知するブレーキ検知ステップをさらに含み、
前記制御ステップは、前記検知されたブレーキの作動状態に基づいて、前記プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するステップを含む、請求項6に記載の車両の制御方法。 - 前記制御方法は、前記車両が停止した登坂路の勾配を検知する勾配検知ステップをさらに含み、
前記制御ステップは、前記ニュートラル制御が登坂路において実行されていると、前記ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、前記ベルト式無段変速装置を制御するステップを含む、請求項6に記載の車両の制御方法。 - 前記制御ステップは、前記ニュートラル制御が実行されていると、前記検知された登坂路の勾配に基づいて、前記ベルト式無段変速装置を構成するプーリとベルトとが接する圧力を強めるように、前記ベルト式無段変速装置を制御するステップを含む、請求項8に記載の車両の制御方法。
- 前記制御方法は、前記車両のブレーキの作動状態を検知するブレーキ検知ステップをさらに含み、
前記制御ステップは、前記検知された登坂路の勾配とブレーキの作動状態とに基づいて、前記プーリとベルトとが接する圧力を強めるように制御するステップを含む、請求項8に記載の車両の制御方法。
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JP2003124178A JP2004324860A (ja) | 2003-04-28 | 2003-04-28 | 車両の制御装置および制御方法 |
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WO2013128753A1 (ja) * | 2012-03-01 | 2013-09-06 | 本田技研工業株式会社 | 車両用動力伝達制御装置 |
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2003
- 2003-04-28 JP JP2003124178A patent/JP2004324860A/ja not_active Withdrawn
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JPWO2013128753A1 (ja) * | 2012-03-01 | 2015-07-30 | 本田技研工業株式会社 | 車両用動力伝達制御装置 |
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