JP2004324781A - ガスボンベ用ライナおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のものに比べて耐圧性が向上したガスボンベ用ライナを提供する。
【解決手段】両端が開口した胴2と、胴2の両端部に接合されかつ胴2の両端開口を閉鎖する鏡板3、4とにより形成する。胴2は、両端が開口した筒状胴本体5と、胴本体5内に、両端部が胴本体5の両端よりも外方に突出するように嵌め入れられた補強部材6とよりなる。補強部材6は、胴本体5の内周面に密接する筒状部7および筒状部7に固定状に設けられかつ筒状部7内を複数の空間に仕切る複数の仕切部8からなる。両鏡板3、4をそれぞれ補強部材6の外方突出部6aに嵌め被せ、胴本体5と鏡板3、4との当接部分において、胴本体5、補強部材6および鏡板3、4を接合する。
【選択図】 図1
【解決手段】両端が開口した胴2と、胴2の両端部に接合されかつ胴2の両端開口を閉鎖する鏡板3、4とにより形成する。胴2は、両端が開口した筒状胴本体5と、胴本体5内に、両端部が胴本体5の両端よりも外方に突出するように嵌め入れられた補強部材6とよりなる。補強部材6は、胴本体5の内周面に密接する筒状部7および筒状部7に固定状に設けられかつ筒状部7内を複数の空間に仕切る複数の仕切部8からなる。両鏡板3、4をそれぞれ補強部材6の外方突出部6aに嵌め被せ、胴本体5と鏡板3、4との当接部分において、胴本体5、補強部材6および鏡板3、4を接合する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば自動車、住宅、輸送機械等において、発電のための燃料となる水素や天然ガスを貯蔵するガスボンベ、あるいは酸素ガス供給システムにおいて酸素ガスを貯蔵するガスボンベに用いられるガスボンベ用ライナおよびその製造方法に関する。
【0002】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0003】
【従来の技術】
上述したガスボンベに入れられる高圧ガスの圧力は主として20〜35MPa程度であるが、将来的には70MPa程度になると考えられている。
【0004】
従来、この種のガスボンベ用ライナとして、アルミニウムからなるカップ状ブランクの胴部をフローフォーミングにより軸方向にしごき加工して、円筒状胴部の両端に鏡板部を一体に設け、少なくとも一方の鏡板部をクロージング成形により形成して、鏡板部を胴部よりも厚肉とし、その鏡板部の中心部に設けられた口栓部に口金取付用の穴を形成したものが知られている(たとえば特許文献1、請求項1参照)。
【0005】
また、押出成形されたアルミニウム製筒体の両端に鏡板が溶接により接合されたガスボンベ用ライナも知られている(たとえば特許文献1、段落0014参照)。
【0006】
さらに、アルミニウム製円筒状胴と、円筒状胴の両端開口を閉鎖する鏡板と、胴と鏡板との当接部分の内側に両者に跨るように配置された車輪状の支持構造部材とを備えており、胴、鏡板および支持構造部材が摩擦攪拌接合されたガスボンベ用ライナが記載されている(たとえば特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−104762号公報(請求項1、段落0014)
【0008】
【特許文献2】
特開平10−160097号公報(特許請求の範囲、図1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したいずれのガスボンベ用ライナにおいても、十分な耐圧性が得られないおそれがある。
【0010】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、従来のものに比べて耐圧性が向上したガスボンベ用ライナおよびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために以下の態様からなる。
【0012】
1)両端が開口した胴と、胴の両端部に接合されかつ胴の両端開口を閉鎖する鏡板とにより形成され、胴が、両端が開口した筒状胴本体と、胴本体内に、両端部が胴本体の両端よりも外方に突出するように嵌め入れられた補強部材とよりなり、補強部材が、胴本体の内周面に接する筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなり、両鏡板がそれぞれ補強部材の外方突出部に嵌め被せられ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板が接合されているガスボンベ用ライナ。
【0013】
2)両端が開口した胴と、胴の一端部に接合されて胴の一端開口を閉鎖する鏡板と、胴の他端部に一体に形成されて胴の他端開口を閉鎖する鏡板部とにより形成され、胴が、一端が開口するとともに他端が一体に形成された鏡板部により閉鎖された筒状胴本体と、胴本体内に、一端部が胴本体の一端よりも外方に突出するように嵌め入れられた補強部材とよりなり、補強部材が、胴本体の内周面に接する筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなり、鏡板が補強部材の外方突出部に嵌め被せられ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板が接合されているガスボンベ用ライナ。
【0014】
3)胴本体、補強部材および鏡板が摩擦攪拌接合されている上記1)または2)記載のガスボンベ用ライナ。
【0015】
4)補強部材の仕切部が、筒状部からその中心線に向かって伸び、かつ当該中心線上で一体化されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0016】
5)補強部材のすべての仕切部が等角度間隔で形成されている上記4)記載のガスボンベ用ライナ。
【0017】
6)補強部材が全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出形材からなり、胴本体が継ぎ目無し管からなる上記1)〜5)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0018】
ここで、継ぎ目無し管とは、カップ状ブランクまたは短筒状ブランクをフローフォーミングにより軸方向にしごき加工して形成された管や、マンドレル押出管などの全く継ぎ目の無い管をいう。
【0019】
7)補強部材が全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出形材からなり、胴本体が継ぎ目有り管からなり、補強部材の溶着部と胴本体の継ぎ目とがずれた位置にある上記1)〜5)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0020】
ここで、継ぎ目有り管とは、全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出管や、電縫管などの溶着継ぎ目や溶接継ぎ目を有する管をいう。
【0021】
8)補強部材が、胴本体内に冷やしばめされている上記1)〜7)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0022】
9)胴本体、補強部材および鏡板が、同一のアルミニウム材料からなる上記1)〜8)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0023】
10)胴本体、補強部材および鏡板のうちの少なくとも2つが、異なるアルミニウム材料からなる上記1)〜8)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0024】
11)燃料水素ガスボンベ、燃料電池、および燃料水素ガスボンベから燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素ガスボンベが上記1)〜10)のうちのいずれかに記載されたガスボンベ用ライナを有している燃料電池システム。
【0025】
12)上記11)記載の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車。
【0026】
13)上記11)記載の燃料電池システムを備えたコージェネレーションシステム。
【0027】
14)天然ガスボンベおよび天然ガスボンベから天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガスボンベが上記1)〜10)のうちのいずれかに記載されたガスボンベ用ライナを有している天然ガス供給システム。
【0028】
15)上記14)記載の天然ガス供給システムと、発電機と、発電機駆動装置を備えているコージェネレーションシステム。
【0029】
16)上記14)記載の天然ガス供給システムと、天然ガスを燃料とするエンジンとを備えている天然ガス自動車。
【0030】
17)酸素ガスボンベおよび酸素ガスボンベから酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素ガスボンベが上記1)〜10)のうちのいずれかに記載されたガスボンベ用ライナを有している酸素ガス供給システム。
【0031】
18)上記1)記載のガスボンベ用ライナを製造する方法であって、両端が開口した筒状胴本体と、胴本体の内周面に接しうる筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなる補強部材と、補強部材の端部に嵌め被せうる2つの鏡板とを用意し、補強部材を、両端部が胴本体の両端よりも外方に突出するように胴本体内に嵌め入れ、両鏡板をそれぞれ補強部材の外方突出部に嵌め被せ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板を外側から接合するガスボンベ用ライナの製造方法。
【0032】
19)上記2)記載のガスボンベ用ライナを製造する方法であって、一端が開口するとともに他端が一体に形成された鏡板部により閉鎖された筒状胴本体と、胴本体の内周面に接しうる筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなる補強部材と、補強部材の端部に嵌め被せうる1つの鏡板とを用意し、補強部材を、一端部が胴本体の開口端よりも外方に突出するように胴本体内に嵌め入れ、鏡板を補強部材の外方突出部に嵌め被せ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板を外側から接合するガスボンベ用ライナの製造方法。
【0033】
20)補強部材の仕切部が、筒状部からその中心線に向かって伸び、かつ当該中心線上で一体化されている上記18)または19)記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
【0034】
21)補強部材のすべての仕切部が等角度間隔で形成されている上記20)記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
【0035】
22)補強部材を胴本体内に冷やしばめする上記18)〜21)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
【0036】
23)胴本体と鏡板との当接部分に、両者に跨りかつ先端部が補強部材の筒状部に至るように摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した後、胴本体、補強部材および鏡板とプローブとを相対的に移動させることによって、プローブを上記当接部分の全周にわたって移動させ、胴本体、補強部材および鏡板を摩擦攪拌接合する上記18)〜22)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
【0037】
【発明の実施形態】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
実施形態1
この実施形態は図1〜図4に示すものである。
【0039】
図1および図2において、ガスボンベ用ライナ(1)は、両端が開口した円筒状胴(2)と、胴(2)の両端部に接合されかつ胴(2)の両端開口を閉鎖するアルミニウム製鏡板(3)(4)とよりなる。
【0040】
胴(2)は、両端が開口した横断面円形の筒状であるアルミニウム製胴本体(5)と、胴本体(5)内に、両端部が胴本体(5)の両端よりも外方に突出するように嵌め入れられたアルミニウムポートホール押出形材製補強部材(6)とよりなる。補強部材(6)における胴本体(5)からの外方突出部(6a)で示す。
【0041】
胴本体(5)は、短筒状ブランクをフローフォーミングにより軸方向にしごき加工して形成された管や、マンドレル押出管などの継ぎ目無し管からなることがある。また、胴本体(5)は、全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出管や、電縫管などの継ぎ目有り管からなることがある。胴本体(5)は、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成される。
【0042】
補強部材(6)は、胴本体(5)の内周面に密接する横断面円形の筒状部(7)および筒状部(7)と一体に形成されかつ筒状部(7)内を複数の空間に仕切る複数の仕切部(8)からなる。筒状部(7)は、全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されたものである。仕切部(8)は、筒状部(7)の構成部分に一体に設けられて筒状部(7)の中心線側に伸びており、かつ当該中心線上で溶着一体化されたものである。仕切部(8)は周方向に等角度間隔で設けられている。補強部材(6)は胴本体(5)内に冷やしばめされている。補強部材(6)は、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成される。
【0043】
ここで、胴本体(5)が継ぎ目有り管からなる場合、補強部材(6)の筒状部(7)の溶着部と胴本体(5)の継ぎ目とは、耐圧性を考慮して周方向にずらされている。
【0044】
両鏡板(3)(4)は、それぞれ切削加工または鍛造により形成されたものであり、一方の鏡板(4)には口金取付部(4a)が一体に形成されている。両鏡板(3)(4)は、それぞれ補強部材(6)の外方突出部(6a)に嵌め被せられて胴本体(5)に当接させられ、胴本体(5)と両鏡板(3)(4)との当接部分において、胴本体(5)、補強部材(6)および両鏡板(3)(4)が接合されている。両鏡板(3)(4)は、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成される。
【0045】
胴本体(5)、補強部材(6)および両鏡板(3)(4)は、すべてが同一のアルミニウム材料からなることがあり、また、胴本体(5)、補強部材(6)および両鏡板(3)(4)のうちの少なくとも2つが異なるアルミニウム材料からなることがある。
【0046】
図2に示すように、ガスボンベ用ライナ(1)は、口金取付部(4a)を除いて、周囲の全体が、たとえばカーボン繊維強化樹脂などからなる繊維強化樹脂層(9)で覆われ、高圧ガスボンベ(10)として用いられる。
【0047】
以下、図3および図4を参照して、ガスボンベ用ライナ(1)の製造方法について説明する。
【0048】
まず、両端が開口した筒状胴本体(5)と、胴本体(5)の内周面に密接しうる筒状部(7)および筒状部(7)と一体に形成されかつ筒状部(7)内を複数の空間に仕切る複数の仕切部(8)からなる胴本体(5)よりも長い補強部材(6)と、補強部材(6)の端部に嵌め被せうる2つの鏡板(3)(4)とを用意する。一方の鏡板(4)には口金取付部(4a)を形成しておく。また、摩擦攪拌接合用工具(11)を用意する。摩擦攪拌接合用工具(11)は、先端部にテーパ部を介して小径部(12a)が同軸上に一体に形成された円柱状回転子(12)と、回転子(12)の小径部(12a)の端面に小径部(12a)と同軸上に一体に形成されかつ小径部(12a)よりも小径であるピン状プローブ(13)とを備えている(図4参照)。回転子(12)およびプローブ(13)は、胴本体(5)、補強部材(6)および両鏡板(3)(4)よりも硬質でかつ接合時に発生する摩擦熱に耐えうる耐熱性を有する材料で形成されている。
【0049】
ついで、補強部材(6)を冷却して収縮させた状態で、その両端部が胴本体(5)の両端よりも外方に突出するように胴本体(5)内に嵌め入れ(図3参照)、両鏡板(3)(4)をそれぞれ補強部材(6)の外方突出部(6a)に嵌め被せて胴本体(5)の両端面に両鏡板(3)(4)の端面を当接させる。補強部材(6)の温度が上昇して元の状態に膨張すると、補強部材(6)と、胴本体(5)および両鏡板(3)(4)とが仮止めされる。
【0050】
ついで、摩擦攪拌接合用工具(11)を回転させながら、胴本体(5)と一方の鏡板(3)との突き合わせ部における周方向の1個所に、プローブ(13)を、その先端部が補強部材(6)の筒状部(7)に至るまで埋入する。このとき、工具(11)における小径部(12a)とプローブ(13)との間の肩部を、胴本体(5)および鏡板(3)に押し付ける(図4参照)。この押し付けにより、接合開始時および接合途中に生じることのある軟化部の肉の飛散を防止して良好な接合状態を得ることができるとともに、胴本体(5)および鏡板(3)と上記肩部との摺動によって摩擦熱をさらに発生させてプローブ(13)と胴本体(5)および鏡板(3)との接触部およびその近傍の軟化を促進することができ、しかも接合部の表面へのバリ等の凹凸の発生を防止することができる。
【0051】
ついで、胴本体(5)、補強部材(6)および鏡板(3)と摩擦攪拌接合用工具(11)とを相対的に移動させることによって、プローブ(13)を上記突き合わせ部の周方向に移動させる。すると、プローブ(13)の回転により発生する摩擦熱と、胴本体(5)および鏡板(3)と上記肩部との摺動により発生する摩擦熱とによって、上記突き合わせ部の近傍(図4に鎖線Aで示す部分)において胴本体(5)、補強部材(6)の筒状部(7)および鏡板(3)は軟化するとともに、この軟化部がプローブ(13)の回転力を受けて攪拌混合され、さらにこの軟化部がプローブ(13)通過溝を埋めるように塑性流動した後、摩擦熱を急速に失って冷却固化するという現象が、プローブ(13)の移動に伴って繰り返されることにより、胴本体(5)と補強部材(6)の筒状部(7)と鏡板(3)とが接合されていく。そして、プローブ(13)が上記突き合わせ部の全周にわたって移動して埋入位置に戻ったときに胴本体(5)と補強部材(6)の筒状部(7)と鏡板(3)とが全周にわたって接合される。接合部のビードを(14)で示す(図1および図2参照)。
【0052】
ついで、プローブ(13)が埋入位置に戻った後、あるいは埋入位置を通過した後に、上記突き合わせ部に配置した当て部材までプローブ(13)を移動させ、ここでプローブ(13)を引き抜く。また、他方の鏡板(4)も、上記と同様にして胴本体(5)および補強部材(6)の筒状部(7)に接合する。こうして、ガスボンベ用ライナ(1)が製造される。
【0053】
上述した摩擦攪拌接合の際に、補強部材(6)の働きにより、胴本体(5)および両鏡板(3)(4)の内側への変形が防止される。
【0054】
ガスボンベ用ライナ(1)を用いての高圧水素ガスボンベ(10)の製造は、口金取付部(4a)を除いて、ガスボンベ用ライナ(1)の周囲の全体を繊維強化樹脂層(9)で覆うことによって行われる。
【0055】
実施形態2
この実施形態は図5および図6に示すものである。
【0056】
この実施形態のガスボンベ用ライナ(20)の場合、図5に示すように、両端が開口した円筒状胴(2)と、胴(2)の一端部に接合されかつ胴(2)の一端開口を閉鎖するアルミニウム製鏡板(4)と、胴(2)を構成する胴本体(21)の他端に一体に形成されかつ胴(2)の他端開口を閉鎖する鏡板部(22)とよりなる。鏡板部(22)内へは補強部材(6)は入り込んでいない。胴本体(21)は、カップ状ブランクにしごき加工を施すことにより形成されている。その他の構成は実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様である。胴本体(21)、補強部材(6)および鏡板(4)を形成する材料についても、実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様である。
【0057】
なお、図示は省略したが、ガスボンベ用ライナ(20)は、実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様に、口金取付部(4a)を除いて、周囲の全体が繊維強化樹脂層で覆われ、高圧ガスボンベとして用いられる。
【0058】
ガスボンベ用ライナ(20)は、以下に述べる方法で製造される。
【0059】
まず、カップ状ブランクにしごき加工を施すことにより、端部に鏡板部(22)が一体に形成された胴本体(21)をつくる。また、胴本体(21)の内周面に密接しうる筒状部(7)および筒状部(7)と一体に形成されかつ筒状部(7)内を複数の空間に仕切る複数の仕切部(8)からなる胴本体(21)よりも長いアルミニウムポートホール押出形材製補強部材(6)と、補強部材(6)の端部に嵌め被せうる1つの鏡板(4)とを用意する。
【0060】
ついで、補強部材(6)を冷却して収縮させた状態で、その一端部が胴本体(21)の開口端よりも外方に突出するように、鏡板部(22)が形成されていない側の開口から胴本体(21)内に嵌め入れ(図6参照)、鏡板(4)を補強部材(6)の外方突出部(6a)に嵌め被せて胴本体(21)の端面に鏡板(4)の端面を当接させる。補強部材(6)の温度が上昇して元の状態に膨張すると、補強部材(6)と、胴本体(21)および鏡板(4)とが仮止めされる。
【0061】
その後、実施形態1の場合と同様にして、胴本体(21)、補強部材(6)および鏡板(4)を摩擦攪拌接合する。こうして、ガスボンベ用ライナ(20)が製造される。
【0062】
上述した摩擦攪拌接合の際に、補強部材(6)の働きにより、胴本体(21)および鏡板(4)の内側への変形が防止される。
【0063】
ガスボンベ用ライナ(20)を用いての高圧水素ガスボンベの製造は、口金取付部(4a)を除いて、ガスボンベ用ライナ(20)の周囲の全体を繊維強化樹脂層で覆うことによって行われる。
【0064】
実施形態3
この実施形態は図7に示すものである。
【0065】
この実施形態のガスボンベ用ライナ(30)の場合、図7に示すように、胴(2)を構成する胴本体(31)の一端に口金取付部(32a)を有する鏡板部(32)が一体に形成され、これにより胴(2)の一端開口は閉鎖されている。鏡板部(32)内へは補強部材(6)は入り込んでいない。その他の構成は実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様である。胴本体(31)、補強部材(6)および鏡板(3)を形成する材料についても、実施形態1のガスボンベ用ライナ(30)と同様である。
【0066】
なお、図示は省略したが、ガスボンベ用ライナ(30)は、実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様に、口金取付部(32a)を除いて、周囲の全体が繊維強化樹脂層で覆われ、高圧ガスボンベとして用いられる。
【0067】
ガスボンベ用ライナ(30)は、以下に述べる方法で製造される。
【0068】
短筒状ブランクをフローフォーミングにより軸方向にしごき加工して形成された管や、マンドレル押出管などの継ぎ目無し管の一端部にスピニング加工、プレス加工、あるいは鍛造により口金取付部(32a)を有する鏡板部(32)を一体に形成することにより胴本体(31)をつくる。
【0069】
そして、鏡板部(32)が形成されていない側の開口から胴本体(31)内に補強部材(6)を嵌め入れることを除いては、実施形態2の場合と同様にしてガスボンベ用ライナ(30)が製造される。
【0070】
ガスボンベ用ライナ(30)を用いての高圧水素ガスボンベの製造は、口金取付部(32a)を除いて、ガスボンベ用ライナ(30)の周囲の全体を繊維強化樹脂層で覆うことによって行われる。
【0071】
図8〜図10は胴本体および補強部材の変形例を示す。
【0072】
図8において、補強部材(40)の筒状部(7)には、実施形態1〜3の隣り合う仕切部(8)どうしの間に、さらに仕切部(8)が設けられている。すべての仕切部(8)は等角度間隔となっている。
【0073】
図9において、胴本体(45)および補強部材(46)の筒状部(47)の横断面形状は楕円形である。したがって、筒状部(47)の長径上に位置する仕切部(8A)の長さは、短径上に位置する仕切部(8B)の長さよりも長くなっている。
【0074】
図10において、補強部材(50)の筒状部(47)には、図9の隣り合う仕切部(8A)(8B)どうしの間に、さらにこれらと長さの異なる仕切部(8C)が設けられている。すべての仕切部(8A)(8B)(8C)は等角度間隔となっている。
【0075】
図8〜図10に示す胴本体および補強部材は、実施形態1〜3のいずれにでも適用可能である。
【0076】
なお、胴本体および補強部材の形状は、さらに適宜変更可能である。
【0077】
上記すべての実施形態のガスボンベ用ライナ(1)(20)(30)を有する高圧ガスボンベは、燃料水素ガスボンベ、燃料電池、および燃料水素ガスボンベから燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えた燃料電池システムにおける燃料水素ガスボンベとして用いられる。燃料電池システムは、燃料電池自動車に搭載される。また、燃料電池システムはコージェネレーションシステムにも用いられる。
【0078】
また、高圧ガスボンベは、天然ガスボンベおよび天然ガスボンベから天然ガスを送り出す圧力配管を備えた天然ガス供給システムにおける天然ガスボンベとして用いられる。天然ガス供給システムは、発電機および発電機駆動装置とともにコージェネレーションシステムに用いられる。また、天然ガス供給システムは、天然ガスを燃料とするエンジンを備えている天然ガス自動車に用いられる。
【0079】
さらに、高圧ガスボンベは、酸素ガスボンベおよび酸素ガスボンベから酸素ガスを送り出す圧力配管を備えた酸素ガス供給システムにおける酸素ガスボンベとして用いられる。
【0080】
なお、上記3つの実施形態においては、胴本体(5)(21)(31)、補強部材(6)および鏡板(3)(4)は摩擦攪拌接合されているが、これに限定されるものではなく、その他の適宜な方法、たとえば溶融溶接などの一般的な溶接法により接合されていてもよい。
【0081】
【発明の効果】
上記1)および2)のガスボンベ用ライナによれば、胴は、胴本体および補強部材の筒状部との2重構造であり、しかも筒状部にその内部を複数の空間に仕切る複数の仕切部が一体に形成されているので、従来のガスボンベ用ライナに比べて耐圧性が向上する。また、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板が接合されているので、接合部の耐圧性も十分なものになる。さらに、鏡板が補強部材における胴本体から突出した外方突出部に嵌め被せられて、胴本体および補強部材に接合されているので、接合作業時の作業性が向上する。
【0082】
上記3)のガスボンベ用ライナによれば、胴本体、補強部材および鏡板とが摩擦攪拌接合されているので、比較的簡単かつ確実にこれらを外側から接合することができる。また、摩擦攪拌接合部は軟化することがないので、高圧ガスを封入した際にも接合部の破壊が防止される。また、接合部の組織が微細化されるので、たとえば水素ガスボンベに用いた場合にも水素脆化が抑制される。さらに、ガスボンベ用ライナの内面に溶融スパッタやヒュームが残留することはないので、自動車、住宅、輸送機械等において、水素ガスや天然ガスを燃料とする発電システムに損傷を与えることが防止される。さらに、接合作業時には、胴本体および鏡板が補強部材により内側から支持されるので、胴本体および鏡板の変形が防止される。
【0083】
上記4)および5)のガスボンベ用ライナによれば、耐圧性は一層向上する。
【0084】
上記6)および7)のガスボンベ用ライナによれば、補強部材の筒状部に存在する溶着部が、内圧により破壊することが防止される。
【0085】
上記8)のガスボンベ用ライナによれば、補強部材の位置決めを確実に行うことができるとともに、補強部材と胴本体との密着性を高めて耐圧性を向上させることができる。補強部材と胴本体との間に隙間があれば、補強部材は、内圧が高まった場合に膨らむとともに低くなった場合に収縮し、このような脈動を繰り返すことにより、疲労破壊を起こすおそれがある。
【0086】
上記18)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、上記1)のガスボンベ用ライナを比較的簡単に製造することができる。
【0087】
上記19)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、上記2)のガスボンベ用ライナを比較的簡単に製造することができる。
【0088】
上記20)および21)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、上記4)および5)のガスボンベ用ライナを比較的簡単に製造することができる。
【0089】
上記22)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、上記8)のガスボンベ用ライナと同様な効果を奏する。
【0090】
上記23)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、胴本体、補強部材および鏡板を、外側から比較的簡単かつ確実に接合することができる。また、摩擦攪拌接合部は軟化することがないので、高圧ガスを封入した際にも接合部の破壊が防止される。また、接合部の組織が微細化されるので、たとえば水素ガスボンベに用いた場合にも水素脆化が抑制される。さらに、ガスボンベ用ライナの内面に溶融スパッタやヒュームが残留することはないので、自動車、住宅、輸送機械等において、水素ガスや天然ガスを燃料とする発電システムに損傷を与えることが防止される。さらに、接合作業時には、胴本体および鏡板が補強部材により内側から支持されるので、胴本体および鏡板の変形が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態1のガスボンベ用ライナを示す斜視図である。
【図2】図1のガスボンベ用ライナを用いた高圧ガスボンベの縦断面図である。
【図3】図1のガスボンベ用ライナを製造する方法を示す斜視図である。
【図4】同じく図1のガスボンベ用ライナを製造する方法を示す部分拡大断面図である。
【図5】この発明の実施形態2のガスボンベ用ライナを示す斜視図である。
【図6】図1のガスボンベ用ライナを製造する方法を示す斜視図である。
【図7】この発明の実施形態3のガスボンベ用ライナを示す斜視図である。
【図8】胴本体および補強部材の変形例を示す横断面図である。
【図9】胴本体および補強部材の他の変形例を示す横断面図である。
【図10】胴本体および補強部材のさらに他の変形例を示す横断面図である。
【符号の説明】
(1)(20)(30):ガスボンベ用ライナ
(2):胴
(3)(4):鏡板
(4a):口金取付部
(5)(21)(31)(45):胴本体
(6)(40)(46)(50):補強部材
(6a):外方突出部
(7)(47):筒状部
(8)(8A)(8B)(8C):仕切部
(11):摩擦攪拌接合用工具
(13):プローブ
(22):鏡板部
(32):鏡板部
(32a):口金取付部
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば自動車、住宅、輸送機械等において、発電のための燃料となる水素や天然ガスを貯蔵するガスボンベ、あるいは酸素ガス供給システムにおいて酸素ガスを貯蔵するガスボンベに用いられるガスボンベ用ライナおよびその製造方法に関する。
【0002】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0003】
【従来の技術】
上述したガスボンベに入れられる高圧ガスの圧力は主として20〜35MPa程度であるが、将来的には70MPa程度になると考えられている。
【0004】
従来、この種のガスボンベ用ライナとして、アルミニウムからなるカップ状ブランクの胴部をフローフォーミングにより軸方向にしごき加工して、円筒状胴部の両端に鏡板部を一体に設け、少なくとも一方の鏡板部をクロージング成形により形成して、鏡板部を胴部よりも厚肉とし、その鏡板部の中心部に設けられた口栓部に口金取付用の穴を形成したものが知られている(たとえば特許文献1、請求項1参照)。
【0005】
また、押出成形されたアルミニウム製筒体の両端に鏡板が溶接により接合されたガスボンベ用ライナも知られている(たとえば特許文献1、段落0014参照)。
【0006】
さらに、アルミニウム製円筒状胴と、円筒状胴の両端開口を閉鎖する鏡板と、胴と鏡板との当接部分の内側に両者に跨るように配置された車輪状の支持構造部材とを備えており、胴、鏡板および支持構造部材が摩擦攪拌接合されたガスボンベ用ライナが記載されている(たとえば特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−104762号公報(請求項1、段落0014)
【0008】
【特許文献2】
特開平10−160097号公報(特許請求の範囲、図1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したいずれのガスボンベ用ライナにおいても、十分な耐圧性が得られないおそれがある。
【0010】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、従来のものに比べて耐圧性が向上したガスボンベ用ライナおよびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために以下の態様からなる。
【0012】
1)両端が開口した胴と、胴の両端部に接合されかつ胴の両端開口を閉鎖する鏡板とにより形成され、胴が、両端が開口した筒状胴本体と、胴本体内に、両端部が胴本体の両端よりも外方に突出するように嵌め入れられた補強部材とよりなり、補強部材が、胴本体の内周面に接する筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなり、両鏡板がそれぞれ補強部材の外方突出部に嵌め被せられ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板が接合されているガスボンベ用ライナ。
【0013】
2)両端が開口した胴と、胴の一端部に接合されて胴の一端開口を閉鎖する鏡板と、胴の他端部に一体に形成されて胴の他端開口を閉鎖する鏡板部とにより形成され、胴が、一端が開口するとともに他端が一体に形成された鏡板部により閉鎖された筒状胴本体と、胴本体内に、一端部が胴本体の一端よりも外方に突出するように嵌め入れられた補強部材とよりなり、補強部材が、胴本体の内周面に接する筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなり、鏡板が補強部材の外方突出部に嵌め被せられ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板が接合されているガスボンベ用ライナ。
【0014】
3)胴本体、補強部材および鏡板が摩擦攪拌接合されている上記1)または2)記載のガスボンベ用ライナ。
【0015】
4)補強部材の仕切部が、筒状部からその中心線に向かって伸び、かつ当該中心線上で一体化されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0016】
5)補強部材のすべての仕切部が等角度間隔で形成されている上記4)記載のガスボンベ用ライナ。
【0017】
6)補強部材が全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出形材からなり、胴本体が継ぎ目無し管からなる上記1)〜5)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0018】
ここで、継ぎ目無し管とは、カップ状ブランクまたは短筒状ブランクをフローフォーミングにより軸方向にしごき加工して形成された管や、マンドレル押出管などの全く継ぎ目の無い管をいう。
【0019】
7)補強部材が全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出形材からなり、胴本体が継ぎ目有り管からなり、補強部材の溶着部と胴本体の継ぎ目とがずれた位置にある上記1)〜5)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0020】
ここで、継ぎ目有り管とは、全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出管や、電縫管などの溶着継ぎ目や溶接継ぎ目を有する管をいう。
【0021】
8)補強部材が、胴本体内に冷やしばめされている上記1)〜7)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0022】
9)胴本体、補強部材および鏡板が、同一のアルミニウム材料からなる上記1)〜8)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0023】
10)胴本体、補強部材および鏡板のうちの少なくとも2つが、異なるアルミニウム材料からなる上記1)〜8)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
【0024】
11)燃料水素ガスボンベ、燃料電池、および燃料水素ガスボンベから燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素ガスボンベが上記1)〜10)のうちのいずれかに記載されたガスボンベ用ライナを有している燃料電池システム。
【0025】
12)上記11)記載の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車。
【0026】
13)上記11)記載の燃料電池システムを備えたコージェネレーションシステム。
【0027】
14)天然ガスボンベおよび天然ガスボンベから天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガスボンベが上記1)〜10)のうちのいずれかに記載されたガスボンベ用ライナを有している天然ガス供給システム。
【0028】
15)上記14)記載の天然ガス供給システムと、発電機と、発電機駆動装置を備えているコージェネレーションシステム。
【0029】
16)上記14)記載の天然ガス供給システムと、天然ガスを燃料とするエンジンとを備えている天然ガス自動車。
【0030】
17)酸素ガスボンベおよび酸素ガスボンベから酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素ガスボンベが上記1)〜10)のうちのいずれかに記載されたガスボンベ用ライナを有している酸素ガス供給システム。
【0031】
18)上記1)記載のガスボンベ用ライナを製造する方法であって、両端が開口した筒状胴本体と、胴本体の内周面に接しうる筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなる補強部材と、補強部材の端部に嵌め被せうる2つの鏡板とを用意し、補強部材を、両端部が胴本体の両端よりも外方に突出するように胴本体内に嵌め入れ、両鏡板をそれぞれ補強部材の外方突出部に嵌め被せ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板を外側から接合するガスボンベ用ライナの製造方法。
【0032】
19)上記2)記載のガスボンベ用ライナを製造する方法であって、一端が開口するとともに他端が一体に形成された鏡板部により閉鎖された筒状胴本体と、胴本体の内周面に接しうる筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなる補強部材と、補強部材の端部に嵌め被せうる1つの鏡板とを用意し、補強部材を、一端部が胴本体の開口端よりも外方に突出するように胴本体内に嵌め入れ、鏡板を補強部材の外方突出部に嵌め被せ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板を外側から接合するガスボンベ用ライナの製造方法。
【0033】
20)補強部材の仕切部が、筒状部からその中心線に向かって伸び、かつ当該中心線上で一体化されている上記18)または19)記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
【0034】
21)補強部材のすべての仕切部が等角度間隔で形成されている上記20)記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
【0035】
22)補強部材を胴本体内に冷やしばめする上記18)〜21)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
【0036】
23)胴本体と鏡板との当接部分に、両者に跨りかつ先端部が補強部材の筒状部に至るように摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した後、胴本体、補強部材および鏡板とプローブとを相対的に移動させることによって、プローブを上記当接部分の全周にわたって移動させ、胴本体、補強部材および鏡板を摩擦攪拌接合する上記18)〜22)のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
【0037】
【発明の実施形態】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
実施形態1
この実施形態は図1〜図4に示すものである。
【0039】
図1および図2において、ガスボンベ用ライナ(1)は、両端が開口した円筒状胴(2)と、胴(2)の両端部に接合されかつ胴(2)の両端開口を閉鎖するアルミニウム製鏡板(3)(4)とよりなる。
【0040】
胴(2)は、両端が開口した横断面円形の筒状であるアルミニウム製胴本体(5)と、胴本体(5)内に、両端部が胴本体(5)の両端よりも外方に突出するように嵌め入れられたアルミニウムポートホール押出形材製補強部材(6)とよりなる。補強部材(6)における胴本体(5)からの外方突出部(6a)で示す。
【0041】
胴本体(5)は、短筒状ブランクをフローフォーミングにより軸方向にしごき加工して形成された管や、マンドレル押出管などの継ぎ目無し管からなることがある。また、胴本体(5)は、全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出管や、電縫管などの継ぎ目有り管からなることがある。胴本体(5)は、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成される。
【0042】
補強部材(6)は、胴本体(5)の内周面に密接する横断面円形の筒状部(7)および筒状部(7)と一体に形成されかつ筒状部(7)内を複数の空間に仕切る複数の仕切部(8)からなる。筒状部(7)は、全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されたものである。仕切部(8)は、筒状部(7)の構成部分に一体に設けられて筒状部(7)の中心線側に伸びており、かつ当該中心線上で溶着一体化されたものである。仕切部(8)は周方向に等角度間隔で設けられている。補強部材(6)は胴本体(5)内に冷やしばめされている。補強部材(6)は、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成される。
【0043】
ここで、胴本体(5)が継ぎ目有り管からなる場合、補強部材(6)の筒状部(7)の溶着部と胴本体(5)の継ぎ目とは、耐圧性を考慮して周方向にずらされている。
【0044】
両鏡板(3)(4)は、それぞれ切削加工または鍛造により形成されたものであり、一方の鏡板(4)には口金取付部(4a)が一体に形成されている。両鏡板(3)(4)は、それぞれ補強部材(6)の外方突出部(6a)に嵌め被せられて胴本体(5)に当接させられ、胴本体(5)と両鏡板(3)(4)との当接部分において、胴本体(5)、補強部材(6)および両鏡板(3)(4)が接合されている。両鏡板(3)(4)は、たとえばJIS A2000系合金、JIS A5000系合金、JIS A6000系合金およびJIS A7000系合金のうちのいずれかにより形成される。
【0045】
胴本体(5)、補強部材(6)および両鏡板(3)(4)は、すべてが同一のアルミニウム材料からなることがあり、また、胴本体(5)、補強部材(6)および両鏡板(3)(4)のうちの少なくとも2つが異なるアルミニウム材料からなることがある。
【0046】
図2に示すように、ガスボンベ用ライナ(1)は、口金取付部(4a)を除いて、周囲の全体が、たとえばカーボン繊維強化樹脂などからなる繊維強化樹脂層(9)で覆われ、高圧ガスボンベ(10)として用いられる。
【0047】
以下、図3および図4を参照して、ガスボンベ用ライナ(1)の製造方法について説明する。
【0048】
まず、両端が開口した筒状胴本体(5)と、胴本体(5)の内周面に密接しうる筒状部(7)および筒状部(7)と一体に形成されかつ筒状部(7)内を複数の空間に仕切る複数の仕切部(8)からなる胴本体(5)よりも長い補強部材(6)と、補強部材(6)の端部に嵌め被せうる2つの鏡板(3)(4)とを用意する。一方の鏡板(4)には口金取付部(4a)を形成しておく。また、摩擦攪拌接合用工具(11)を用意する。摩擦攪拌接合用工具(11)は、先端部にテーパ部を介して小径部(12a)が同軸上に一体に形成された円柱状回転子(12)と、回転子(12)の小径部(12a)の端面に小径部(12a)と同軸上に一体に形成されかつ小径部(12a)よりも小径であるピン状プローブ(13)とを備えている(図4参照)。回転子(12)およびプローブ(13)は、胴本体(5)、補強部材(6)および両鏡板(3)(4)よりも硬質でかつ接合時に発生する摩擦熱に耐えうる耐熱性を有する材料で形成されている。
【0049】
ついで、補強部材(6)を冷却して収縮させた状態で、その両端部が胴本体(5)の両端よりも外方に突出するように胴本体(5)内に嵌め入れ(図3参照)、両鏡板(3)(4)をそれぞれ補強部材(6)の外方突出部(6a)に嵌め被せて胴本体(5)の両端面に両鏡板(3)(4)の端面を当接させる。補強部材(6)の温度が上昇して元の状態に膨張すると、補強部材(6)と、胴本体(5)および両鏡板(3)(4)とが仮止めされる。
【0050】
ついで、摩擦攪拌接合用工具(11)を回転させながら、胴本体(5)と一方の鏡板(3)との突き合わせ部における周方向の1個所に、プローブ(13)を、その先端部が補強部材(6)の筒状部(7)に至るまで埋入する。このとき、工具(11)における小径部(12a)とプローブ(13)との間の肩部を、胴本体(5)および鏡板(3)に押し付ける(図4参照)。この押し付けにより、接合開始時および接合途中に生じることのある軟化部の肉の飛散を防止して良好な接合状態を得ることができるとともに、胴本体(5)および鏡板(3)と上記肩部との摺動によって摩擦熱をさらに発生させてプローブ(13)と胴本体(5)および鏡板(3)との接触部およびその近傍の軟化を促進することができ、しかも接合部の表面へのバリ等の凹凸の発生を防止することができる。
【0051】
ついで、胴本体(5)、補強部材(6)および鏡板(3)と摩擦攪拌接合用工具(11)とを相対的に移動させることによって、プローブ(13)を上記突き合わせ部の周方向に移動させる。すると、プローブ(13)の回転により発生する摩擦熱と、胴本体(5)および鏡板(3)と上記肩部との摺動により発生する摩擦熱とによって、上記突き合わせ部の近傍(図4に鎖線Aで示す部分)において胴本体(5)、補強部材(6)の筒状部(7)および鏡板(3)は軟化するとともに、この軟化部がプローブ(13)の回転力を受けて攪拌混合され、さらにこの軟化部がプローブ(13)通過溝を埋めるように塑性流動した後、摩擦熱を急速に失って冷却固化するという現象が、プローブ(13)の移動に伴って繰り返されることにより、胴本体(5)と補強部材(6)の筒状部(7)と鏡板(3)とが接合されていく。そして、プローブ(13)が上記突き合わせ部の全周にわたって移動して埋入位置に戻ったときに胴本体(5)と補強部材(6)の筒状部(7)と鏡板(3)とが全周にわたって接合される。接合部のビードを(14)で示す(図1および図2参照)。
【0052】
ついで、プローブ(13)が埋入位置に戻った後、あるいは埋入位置を通過した後に、上記突き合わせ部に配置した当て部材までプローブ(13)を移動させ、ここでプローブ(13)を引き抜く。また、他方の鏡板(4)も、上記と同様にして胴本体(5)および補強部材(6)の筒状部(7)に接合する。こうして、ガスボンベ用ライナ(1)が製造される。
【0053】
上述した摩擦攪拌接合の際に、補強部材(6)の働きにより、胴本体(5)および両鏡板(3)(4)の内側への変形が防止される。
【0054】
ガスボンベ用ライナ(1)を用いての高圧水素ガスボンベ(10)の製造は、口金取付部(4a)を除いて、ガスボンベ用ライナ(1)の周囲の全体を繊維強化樹脂層(9)で覆うことによって行われる。
【0055】
実施形態2
この実施形態は図5および図6に示すものである。
【0056】
この実施形態のガスボンベ用ライナ(20)の場合、図5に示すように、両端が開口した円筒状胴(2)と、胴(2)の一端部に接合されかつ胴(2)の一端開口を閉鎖するアルミニウム製鏡板(4)と、胴(2)を構成する胴本体(21)の他端に一体に形成されかつ胴(2)の他端開口を閉鎖する鏡板部(22)とよりなる。鏡板部(22)内へは補強部材(6)は入り込んでいない。胴本体(21)は、カップ状ブランクにしごき加工を施すことにより形成されている。その他の構成は実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様である。胴本体(21)、補強部材(6)および鏡板(4)を形成する材料についても、実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様である。
【0057】
なお、図示は省略したが、ガスボンベ用ライナ(20)は、実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様に、口金取付部(4a)を除いて、周囲の全体が繊維強化樹脂層で覆われ、高圧ガスボンベとして用いられる。
【0058】
ガスボンベ用ライナ(20)は、以下に述べる方法で製造される。
【0059】
まず、カップ状ブランクにしごき加工を施すことにより、端部に鏡板部(22)が一体に形成された胴本体(21)をつくる。また、胴本体(21)の内周面に密接しうる筒状部(7)および筒状部(7)と一体に形成されかつ筒状部(7)内を複数の空間に仕切る複数の仕切部(8)からなる胴本体(21)よりも長いアルミニウムポートホール押出形材製補強部材(6)と、補強部材(6)の端部に嵌め被せうる1つの鏡板(4)とを用意する。
【0060】
ついで、補強部材(6)を冷却して収縮させた状態で、その一端部が胴本体(21)の開口端よりも外方に突出するように、鏡板部(22)が形成されていない側の開口から胴本体(21)内に嵌め入れ(図6参照)、鏡板(4)を補強部材(6)の外方突出部(6a)に嵌め被せて胴本体(21)の端面に鏡板(4)の端面を当接させる。補強部材(6)の温度が上昇して元の状態に膨張すると、補強部材(6)と、胴本体(21)および鏡板(4)とが仮止めされる。
【0061】
その後、実施形態1の場合と同様にして、胴本体(21)、補強部材(6)および鏡板(4)を摩擦攪拌接合する。こうして、ガスボンベ用ライナ(20)が製造される。
【0062】
上述した摩擦攪拌接合の際に、補強部材(6)の働きにより、胴本体(21)および鏡板(4)の内側への変形が防止される。
【0063】
ガスボンベ用ライナ(20)を用いての高圧水素ガスボンベの製造は、口金取付部(4a)を除いて、ガスボンベ用ライナ(20)の周囲の全体を繊維強化樹脂層で覆うことによって行われる。
【0064】
実施形態3
この実施形態は図7に示すものである。
【0065】
この実施形態のガスボンベ用ライナ(30)の場合、図7に示すように、胴(2)を構成する胴本体(31)の一端に口金取付部(32a)を有する鏡板部(32)が一体に形成され、これにより胴(2)の一端開口は閉鎖されている。鏡板部(32)内へは補強部材(6)は入り込んでいない。その他の構成は実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様である。胴本体(31)、補強部材(6)および鏡板(3)を形成する材料についても、実施形態1のガスボンベ用ライナ(30)と同様である。
【0066】
なお、図示は省略したが、ガスボンベ用ライナ(30)は、実施形態1のガスボンベ用ライナ(1)と同様に、口金取付部(32a)を除いて、周囲の全体が繊維強化樹脂層で覆われ、高圧ガスボンベとして用いられる。
【0067】
ガスボンベ用ライナ(30)は、以下に述べる方法で製造される。
【0068】
短筒状ブランクをフローフォーミングにより軸方向にしごき加工して形成された管や、マンドレル押出管などの継ぎ目無し管の一端部にスピニング加工、プレス加工、あるいは鍛造により口金取付部(32a)を有する鏡板部(32)を一体に形成することにより胴本体(31)をつくる。
【0069】
そして、鏡板部(32)が形成されていない側の開口から胴本体(31)内に補強部材(6)を嵌め入れることを除いては、実施形態2の場合と同様にしてガスボンベ用ライナ(30)が製造される。
【0070】
ガスボンベ用ライナ(30)を用いての高圧水素ガスボンベの製造は、口金取付部(32a)を除いて、ガスボンベ用ライナ(30)の周囲の全体を繊維強化樹脂層で覆うことによって行われる。
【0071】
図8〜図10は胴本体および補強部材の変形例を示す。
【0072】
図8において、補強部材(40)の筒状部(7)には、実施形態1〜3の隣り合う仕切部(8)どうしの間に、さらに仕切部(8)が設けられている。すべての仕切部(8)は等角度間隔となっている。
【0073】
図9において、胴本体(45)および補強部材(46)の筒状部(47)の横断面形状は楕円形である。したがって、筒状部(47)の長径上に位置する仕切部(8A)の長さは、短径上に位置する仕切部(8B)の長さよりも長くなっている。
【0074】
図10において、補強部材(50)の筒状部(47)には、図9の隣り合う仕切部(8A)(8B)どうしの間に、さらにこれらと長さの異なる仕切部(8C)が設けられている。すべての仕切部(8A)(8B)(8C)は等角度間隔となっている。
【0075】
図8〜図10に示す胴本体および補強部材は、実施形態1〜3のいずれにでも適用可能である。
【0076】
なお、胴本体および補強部材の形状は、さらに適宜変更可能である。
【0077】
上記すべての実施形態のガスボンベ用ライナ(1)(20)(30)を有する高圧ガスボンベは、燃料水素ガスボンベ、燃料電池、および燃料水素ガスボンベから燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えた燃料電池システムにおける燃料水素ガスボンベとして用いられる。燃料電池システムは、燃料電池自動車に搭載される。また、燃料電池システムはコージェネレーションシステムにも用いられる。
【0078】
また、高圧ガスボンベは、天然ガスボンベおよび天然ガスボンベから天然ガスを送り出す圧力配管を備えた天然ガス供給システムにおける天然ガスボンベとして用いられる。天然ガス供給システムは、発電機および発電機駆動装置とともにコージェネレーションシステムに用いられる。また、天然ガス供給システムは、天然ガスを燃料とするエンジンを備えている天然ガス自動車に用いられる。
【0079】
さらに、高圧ガスボンベは、酸素ガスボンベおよび酸素ガスボンベから酸素ガスを送り出す圧力配管を備えた酸素ガス供給システムにおける酸素ガスボンベとして用いられる。
【0080】
なお、上記3つの実施形態においては、胴本体(5)(21)(31)、補強部材(6)および鏡板(3)(4)は摩擦攪拌接合されているが、これに限定されるものではなく、その他の適宜な方法、たとえば溶融溶接などの一般的な溶接法により接合されていてもよい。
【0081】
【発明の効果】
上記1)および2)のガスボンベ用ライナによれば、胴は、胴本体および補強部材の筒状部との2重構造であり、しかも筒状部にその内部を複数の空間に仕切る複数の仕切部が一体に形成されているので、従来のガスボンベ用ライナに比べて耐圧性が向上する。また、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板が接合されているので、接合部の耐圧性も十分なものになる。さらに、鏡板が補強部材における胴本体から突出した外方突出部に嵌め被せられて、胴本体および補強部材に接合されているので、接合作業時の作業性が向上する。
【0082】
上記3)のガスボンベ用ライナによれば、胴本体、補強部材および鏡板とが摩擦攪拌接合されているので、比較的簡単かつ確実にこれらを外側から接合することができる。また、摩擦攪拌接合部は軟化することがないので、高圧ガスを封入した際にも接合部の破壊が防止される。また、接合部の組織が微細化されるので、たとえば水素ガスボンベに用いた場合にも水素脆化が抑制される。さらに、ガスボンベ用ライナの内面に溶融スパッタやヒュームが残留することはないので、自動車、住宅、輸送機械等において、水素ガスや天然ガスを燃料とする発電システムに損傷を与えることが防止される。さらに、接合作業時には、胴本体および鏡板が補強部材により内側から支持されるので、胴本体および鏡板の変形が防止される。
【0083】
上記4)および5)のガスボンベ用ライナによれば、耐圧性は一層向上する。
【0084】
上記6)および7)のガスボンベ用ライナによれば、補強部材の筒状部に存在する溶着部が、内圧により破壊することが防止される。
【0085】
上記8)のガスボンベ用ライナによれば、補強部材の位置決めを確実に行うことができるとともに、補強部材と胴本体との密着性を高めて耐圧性を向上させることができる。補強部材と胴本体との間に隙間があれば、補強部材は、内圧が高まった場合に膨らむとともに低くなった場合に収縮し、このような脈動を繰り返すことにより、疲労破壊を起こすおそれがある。
【0086】
上記18)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、上記1)のガスボンベ用ライナを比較的簡単に製造することができる。
【0087】
上記19)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、上記2)のガスボンベ用ライナを比較的簡単に製造することができる。
【0088】
上記20)および21)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、上記4)および5)のガスボンベ用ライナを比較的簡単に製造することができる。
【0089】
上記22)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、上記8)のガスボンベ用ライナと同様な効果を奏する。
【0090】
上記23)のガスボンベ用ライナの製造方法によれば、胴本体、補強部材および鏡板を、外側から比較的簡単かつ確実に接合することができる。また、摩擦攪拌接合部は軟化することがないので、高圧ガスを封入した際にも接合部の破壊が防止される。また、接合部の組織が微細化されるので、たとえば水素ガスボンベに用いた場合にも水素脆化が抑制される。さらに、ガスボンベ用ライナの内面に溶融スパッタやヒュームが残留することはないので、自動車、住宅、輸送機械等において、水素ガスや天然ガスを燃料とする発電システムに損傷を与えることが防止される。さらに、接合作業時には、胴本体および鏡板が補強部材により内側から支持されるので、胴本体および鏡板の変形が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態1のガスボンベ用ライナを示す斜視図である。
【図2】図1のガスボンベ用ライナを用いた高圧ガスボンベの縦断面図である。
【図3】図1のガスボンベ用ライナを製造する方法を示す斜視図である。
【図4】同じく図1のガスボンベ用ライナを製造する方法を示す部分拡大断面図である。
【図5】この発明の実施形態2のガスボンベ用ライナを示す斜視図である。
【図6】図1のガスボンベ用ライナを製造する方法を示す斜視図である。
【図7】この発明の実施形態3のガスボンベ用ライナを示す斜視図である。
【図8】胴本体および補強部材の変形例を示す横断面図である。
【図9】胴本体および補強部材の他の変形例を示す横断面図である。
【図10】胴本体および補強部材のさらに他の変形例を示す横断面図である。
【符号の説明】
(1)(20)(30):ガスボンベ用ライナ
(2):胴
(3)(4):鏡板
(4a):口金取付部
(5)(21)(31)(45):胴本体
(6)(40)(46)(50):補強部材
(6a):外方突出部
(7)(47):筒状部
(8)(8A)(8B)(8C):仕切部
(11):摩擦攪拌接合用工具
(13):プローブ
(22):鏡板部
(32):鏡板部
(32a):口金取付部
Claims (23)
- 両端が開口した胴と、胴の両端部に接合されかつ胴の両端開口を閉鎖する鏡板とにより形成され、胴が、両端が開口した筒状胴本体と、胴本体内に、両端部が胴本体の両端よりも外方に突出するように嵌め入れられた補強部材とよりなり、補強部材が、胴本体の内周面に接する筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなり、両鏡板がそれぞれ補強部材の外方突出部に嵌め被せられ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板が接合されているガスボンベ用ライナ。
- 両端が開口した胴と、胴の一端部に接合されて胴の一端開口を閉鎖する鏡板と、胴の他端部に一体に形成されて胴の他端開口を閉鎖する鏡板部とにより形成され、胴が、一端が開口するとともに他端が一体に形成された鏡板部により閉鎖された筒状胴本体と、胴本体内に、一端部が胴本体の一端よりも外方に突出するように嵌め入れられた補強部材とよりなり、補強部材が、胴本体の内周面に接する筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなり、鏡板が補強部材の外方突出部に嵌め被せられ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板が接合されているガスボンベ用ライナ。
- 胴本体、補強部材および鏡板が摩擦攪拌接合されている請求項1または2記載のガスボンベ用ライナ。
- 補強部材の仕切部が、筒状部からその中心線に向かって伸び、かつ当該中心線上で一体化されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
- 補強部材のすべての仕切部が等角度間隔で形成されている請求項4記載のガスボンベ用ライナ。
- 補強部材が全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出形材からなり、胴本体が継ぎ目無し管からなる請求項1〜5のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
- 補強部材が全長にわたる複数の溶着部により複数の構成部分が互いに溶着されているポートホール押出形材からなり、胴本体が継ぎ目有り管からなり、補強部材の溶着部と胴本体の継ぎ目とがずれた位置にある請求項1〜5のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
- 補強部材が、胴本体内に冷やしばめされている請求項1〜7のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
- 胴本体、補強部材および鏡板が、同一のアルミニウム材料からなる請求項1〜8のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
- 胴本体、補強部材および鏡板のうちの少なくとも2つが、異なるアルミニウム材料からなる請求項1〜8のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナ。
- 燃料水素ガスボンベ、燃料電池、および燃料水素ガスボンベから燃料電池に燃料水素ガスを送る圧力配管を備えており、燃料水素ガスボンベが請求項1〜10のうちのいずれかに記載されたガスボンベ用ライナを有している燃料電池システム。
- 請求項11記載の燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車。
- 請求項11記載の燃料電池システムを備えたコージェネレーションシステム。
- 天然ガスボンベおよび天然ガスボンベから天然ガスを送り出す圧力配管を備えており、天然ガスボンベが請求項1〜10のうちのいずれかに記載されたガスボンベ用ライナを有している天然ガス供給システム。
- 請求項14記載の天然ガス供給システムと、発電機と、発電機駆動装置を備えているコージェネレーションシステム。
- 請求項14記載の天然ガス供給システムと、天然ガスを燃料とするエンジンとを備えている天然ガス自動車。
- 酸素ガスボンベおよび酸素ガスボンベから酸素ガスを送り出す圧力配管を備えており、酸素ガスボンベが請求項1〜10のうちのいずれかに記載されたガスボンベ用ライナを有している酸素ガス供給システム。
- 請求項1記載のガスボンベ用ライナを製造する方法であって、
両端が開口した筒状胴本体と、胴本体の内周面に接しうる筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなる補強部材と、補強部材の端部に嵌め被せうる2つの鏡板とを用意し、補強部材を、両端部が胴本体の両端よりも外方に突出するように胴本体内に嵌め入れ、両鏡板をそれぞれ補強部材の外方突出部に嵌め被せ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板を外側から接合するガスボンベ用ライナの製造方法。 - 請求項2記載のガスボンベ用ライナを製造する方法であって、
一端が開口するとともに他端が一体に形成された鏡板部により閉鎖された筒状胴本体と、胴本体の内周面に接しうる筒状部および筒状部に固定状に設けられかつ筒状部内を複数の空間に仕切る複数の仕切部からなる補強部材と、補強部材の端部に嵌め被せうる1つの鏡板とを用意し、補強部材を、一端部が胴本体の開口端よりも外方に突出するように胴本体内に嵌め入れ、鏡板を補強部材の外方突出部に嵌め被せ、胴本体と鏡板との当接部分において、胴本体、補強部材および鏡板を外側から接合するガスボンベ用ライナの製造方法。 - 補強部材の仕切部が、筒状部からその中心線に向かって伸び、かつ当該中心線上で一体化されている請求項18または19記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
- 補強部材のすべての仕切部が等角度間隔で形成されている請求項20記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
- 補強部材を胴本体内に冷やしばめする請求項18〜21のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
- 胴本体と鏡板との当接部分に、両者に跨りかつ先端部が補強部材の筒状部に至るように摩擦攪拌接合用工具のプローブを埋入した後、胴本体、補強部材および鏡板とプローブとを相対的に移動させることによって、プローブを上記当接部分の全周にわたって移動させ、胴本体、補強部材および鏡板を摩擦攪拌接合する請求項18〜22のうちのいずれかに記載のガスボンベ用ライナの製造方法。
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