JP2004324560A - エンジンの排気ガス浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】NOx再生開始時にNOxトラップ触媒がトラップしているNOxの量を推定し、これをNOx再生のための制御に反映させる。NOxトラップ触媒の上流及び下流の各側に空燃比センサを設置し、排気ガスの空燃比をリッチに転じた後(S301a)、上流側のセンサの出力が所定値に達してから、下流側のセンサの出力が所定値に達するまでの時間を検出し(S303a)、これに応じてNOx再生時期の判断に関するしきい値又はNOx再生時における空燃比の減少代を変更する(S304a,S305a)。
【選択図】 図9
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの排気ガス浄化装置に関し、詳細には、NOxトラップ触媒がトラップしているNOxを放出させるNOx再生のための制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
排気ガス中の窒素酸化物(以下「NOx」という。)を除去する装置として、NOxトラップ触媒が知られている。NOxトラップ触媒は、排気ガスの空燃比がリーンであるときに排気ガス中のNOxをトラップする一方、これがリッチに転じると、トラップしているNOxを放出する。NOxは、放出に際して排気ガス中の還元剤成分により浄化される。NOxトラップ触媒によれば、エンジンの空燃比がリーンである通常時に排気ガスからNOxを除去し、NOxトラップ触媒がある程度のNOxをトラップしたときは、空燃比を一時的にリッチに転じることで、トラップしているNOxを放出させ、その機能回復を図ることができる。なお、トラップしているNOxを放出させてNOxトラップ触媒の機能を回復させることをNOx再生という。
【0003】
ここで、NOx再生を行う時期を決定する方法として、次のものが知られている。第1は、エンジン回転数を積算し、その値が所定値に達した時点をNOx再生を行う時期とする方法である(特許文献1)。第2は、自動車の累積走行距離を算出し、これが所定距離に達した時点をNOx再生を行う時期とする方法である(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】
特許第2600492号公報(第12欄第8〜24行)
【特許文献2】
特開2002−201985号公報(段落番号0042)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような単に回転数積算値や累積走行距離を所定値と比較することによる方法には、次のような問題がある。すなわち、エンジンから排出されるNOxの量は、同じ回転数や車速のもとでも高度や気温等のエンジンがおかれた環境に応じて異なる。従って、回転数積算値や累積走行距離がそれぞれのしきい値に達した時点でNOxトラップ触媒が実際にトラップしているNOxの量は、エンジンがおかれた環境に応じて異なる。NOxトラップ触媒が設定値よりも少ない量のNOxをトラップしている状態でNOx再生を行うときは、NOx再生が不要に繰り返され、燃費を過度に悪化させることとなる。一方、設定値よりも多い量のNOxをトラップしている状態でNOx再生を行うときは、NOx再生前に規定量を上回るNOxが大気中に放出されるおそれがある。NOxトラップ触媒によるNOx除去率は、NOxトラップ触媒がある程度のNOxをトラップすると、それ以降に減少するからである。
【0006】
そこで、本発明は、NOx再生開始時にNOxトラップ触媒がトラップしているNOxの量を推定し、これをNOx再生のための制御に反映させることで、NOx再生に伴うエミッションや燃費の悪化を抑制することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、排気通路に設置されたNOxトラップ触媒を含んで構成されるエンジンの排気ガス浄化装置を提供するものである。
【0008】
本発明に係るエンジンの排気ガス浄化装置は、排気ガスの空燃比がリーンとなる通常時において、排気ガス中のNOxをNOxトラップ触媒にトラップさせて除去する。一方、NOxトラップ触媒がトラップしているNOxを放出させるNOx再生時において、排気ガスの空燃比をリッチに転じる。そして、NOxトラップ触媒の上流における排気ガス中の酸素又は還元剤成分の濃度が変化して所定値に達した第1の時点を検出するとともに、NOxトラップ触媒の下流における排気ガス中の酸素又は還元剤成分の濃度が変化して所定値に達した第2の時点を検出し、第1の時点から第2の時点までの時間(以下「センサ出力変化時間差」という。)又はその間にNOxトラップ触媒に供給された還元剤成分の量を検出し、検出した時間若しくは供給された還元剤成分の量又はこれらを基にした演算値を記憶する。ここで、センサ出力変化時間差等は、NOx再生開始時にNOxトラップ触媒がトラップしているNOxの量(以下「開始時トラップ量」という。)に相関する。
【0009】
このようにすれば、開始時トラップ量に相関するセンサ出力変化時間差等をNOx再生のための制御に反映させて、NOx再生を行う時期やNOx再生時に供給される還元剤成分の量を最適化し、NOx再生に伴うエミッションや燃費の悪化を抑制することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動車用ディーゼルエンジン(以下「エンジン」という。)1の構成図である。
【0011】
吸気通路11の導入部には、図示しないエアクリーナが取り付けられており、エアクリーナにより吸入空気中の粉塵が除去される。吸気通路11には、可変ノズルターボチャージャ12のコンプレッサ12aが介装されており、コンプレッサ12aにより吸入空気が圧縮されて送り出される。コンプレッサ12aの下流には、インタークーラ13が設置されており、インタークーラ13により圧縮された吸入空気が冷却される。インタークーラ13を通過した吸入空気は、サージタンク14に流入し、マニホールド部で各気筒に分配される。サージタンク14の上流には、吸気絞り弁15が設置されている。吸気絞り弁15は、後述する電子制御ユニット(以下「ECU」という。)41からの信号に応じて作動するアクチュエータ15aと接続されており、アクチュエータ15aにより開度が制御される。
【0012】
エンジン本体において、シリンダヘッドには、インジェクタ21が気筒毎に設置されている。インジェクタ21は、ECU41からの信号に応じて作動する。図示しない燃料ポンプにより送り出された燃料は、コモンレール22を介してインジェクタ21に供給され、インジェクタ21により燃焼室内に噴射される。インジェクタ21による噴射は、複数回に分けて行われる。インジェクタ21は、動力を発生させるためのメイン噴射と、メイン噴射後のポスト噴射とを行う。ポスト噴射の実施により排気ガス温度が上昇する。
【0013】
排気通路31には、マニホールド部の下流に可変ノズルターボチャージャ12のタービン12bが設置されている。排気ガスによりタービン12bが駆動されると、コンプレッサ12aが回転する。タービン12bの可動ベーン121は、アクチュエータ121aと接続されており、アクチュエータ121aにより角度が制御される。タービン12bの下流には、上流側から順に酸化触媒32、NOxトラップ触媒33及びディーゼルパティキュレートフィルタ34が設置されている。酸化触媒32は、排気ガス中の炭化水素(以下「HC」という。)及び一酸化炭素(以下「CO」という。)を浄化する。NOxトラップ触媒33は、排気ガスの空燃比に応じて性質を異にし、排気ガスの空燃比がリーンであるときに排気ガス中のNOxをトラップする一方、これがリッチであるときにトラップしているNOxを放出する。NOxは、放出される際に排気ガスに含まれるHC,CO等の還元剤成分により浄化される。NOxトラップ触媒33は、NOx以外に排気ガスに含まれる硫黄分もトラップする。ディーゼルパティキュレートフィルタ34は、セラミック等を素材とした多孔質のフィルタエレメントを含んで構成される。排気ガスがフィルタエレメントによりろ過され、排気ガス中のパティキュレートが除去される。排気通路31と吸気通路11とは、EGR管35により接続されており、EGR管35には、EGR弁36が設置されている。EGR弁36は、アクチュエータ36aに接続されており、アクチュエータ36aにより開度が制御される。
【0014】
排気通路31には、酸化触媒32の上流に第1の排気ガスセンサとしての上流側空燃比センサ51が、NOxトラップ触媒33とディーゼルパティキュレートフィルタ34との間に第2の排気ガスセンサとしての下流側空燃比センサ52、及び排気ガス圧力Texhを検出する圧力センサ53が、NOxトラップ触媒33には、触媒ベッド温度Tnoxを検出する温度センサ54が、ディーゼルパティキュレートフィルタ34には、フィルタベッド温度Tdpfを検出する温度センサ55が設置されている。また、クランク角センサ56及びアクセルセンサ57が設置されている。各センサの出力は、ECU41に入力される。ECU41は、クランク角センサ55の出力に基づいてエンジン回転数Neを演算し、アクセルセンサ56の出力に基づいてアクセル開度APOを演算する。
【0015】
以下に、ECU41の動作をフローチャートにより説明する。
図2は、再生モードを選択するルーチンのフローチャートを示している。
S1では、運転状態としてエンジン回転数Ne及びアクセル開度APOを読み込む。S2では、NOxトラップ触媒33がトラップしているNOxの量(以下「NOxトラップ量」という。)NOXを演算する。NOxトラップ量NOXは、出荷時又は前回に行われたNOx再生が終了した時点からのエンジン回転数Neの積算値として推定する。NOxトラップ量NOXは、たとえばこのルーチンを前回に実行した際に算出したNOxトラップ量をNOXn−1とし、このルーチンの実行周期をΔtとして、下式(1)により算出することができる。NOxトラップ量NOXは、エンジン回転数Neに限らず、走行距離に基づいて推定することもできる。この場合は、自動車がある一定の距離を走行するたびにNOxトラップ量NOXに所定量を加算していけばよい。
【0016】
NOX=NOXn−1+Ne×Δt ・・・(1)
S3では、NOxトラップ触媒33がトラップしている硫黄分の量(以下「硫黄分トラップ量」という。)SOXを演算する。硫黄分トラップ量SOXは、NOxトラップ量NOXと同様に、エンジン回転数Neの積算値として推定することができる。NOxトラップ触媒33がトラップしている硫黄分は、定期的に放出させる必要があり、ECU41は、後述するようにそのための制御を行う。NOxトラップ触媒33がトラップしている硫黄分を放出させることを被毒解除という。硫黄分トラップ量SOXの演算において、エンジン回転数Neの積算の始点は、出荷時又は前回に行われた被毒解除が終了した時点である。
【0017】
S4では、ディーゼルパティキュレートフィルタ34に堆積しているパティキュレートの量(以下「パティキュレート堆積量」という。)PMを演算する。パティキュレート堆積量PMは、排気ガス圧力Pexhに基づいて、排気ガス圧力Pexhが高いときほどを大きな値として推定する。なお、エンジン1から排出されるパティキュレートの量は、そのときの運転状態と相関するため、パティキュレート堆積量PMは、エンジン回転数Neや走行距離に基づいて単位時間当たりの排出量を演算し、これを積算して推定することもできる。
【0018】
S5では、フラグFregによりDPF再生中であるか否かを判定する。ディーゼルパティキュレートフィルタ34に堆積しているパティキュレートを焼却することをDPF再生という。フラグFregが0であるときは、S6へ進み、0でないときは、図4に示すフローチャートのS101へ進み、DPF再生のための制御を行う。
【0019】
S6では、フラグFdesulにより被毒解除中であるか否かを判定する。フラグFdesulが0であるときは、S7へ進み、0でないときは、図8に示すフローチャートのS201へ進み、被毒解除のための制御を行う。
【0020】
S7では、フラグFspによりNOx再生中であるか否かを判定する。フラグFspが0であるときは、S8へ進み、0でないときは、図9に示すフローチャートのS301aへ進み、NOx再生のための制御を行う。
【0021】
S8では、フラグFrecにより故障回避中であるか否かを判定する。フラグFrecは、後述するDPF再生又は被毒解除を行うルーチンで0から1に変更される。フラグFrecが0であるときは、S9へ進み、0でないときは、図11のフローチャートのS401へ進み、故障回避のための制御を行う。
【0022】
S9では、パティキュレート堆積量PMが規定量PM1に達したか否かを判定する。PM1に達していないときは、S10へ進み、PM1に達したときは、図13に示すフローチャートのS501へ進む。パティキュレート堆積量PMが規定量PM1に達したか否かの判定は、排気ガス圧力Pexhと所定値Pexh1との比較により行う。エンジン回転数Ne及びメイン噴射による燃料噴射量Qmにより図3に示すマップを検索し、所定値Pexh1を設定する。排気ガス圧力Pexhが所定値Pexh1に達したときに、パティキュレート堆積量PMが規定量PM1に達したものとする。また、DPF再生が不要に繰り返されることを防止するため、前回に行われたDPF再生が終了してからの累積走行距離を演算し、これが所定値に達していることを前提としてもよい。
【0023】
S10では、硫黄分トラップ量SOXが規定量SOX1に達したか否かを判定する。SOX1に達していないときは、S11へ進み、SOX1に達したときは、図14に示すフローチャートのS601へ進む。
【0024】
S11では、NOxトラップ量NOXが規定量NOX1に達したか否かを判定する。NOX1に達していないときは、このルーチンをリターンし、NOX1に達したときは、図15に示すフローチャートのS701へ進む。
【0025】
図4は、DPF再生のための制御を行うルーチンのフローチャートを示している。
DPF再生では、インジェクタ21によりポスト噴射を行い、排気ガス温度を上昇させる。これによりフィルタベッド温度Tdpfがパティキュレートを焼却することのできる温度に上昇する。
【0026】
S101では、フィルタベッド温度Tdpfを読み込む。S102では、排気ガスの空気過剰率λをパティキュレート堆積量PMに応じた目標空気過剰率tλregに制御する。空気過剰率λは、吸気絞り弁15を作動させて制御する。ECU41は、パティキュレート堆積量PMにより図5に示すテーブルを検索し、DPF再生時における目標空気過剰率tλregを設定する。目標空気過剰率tλregは、パティキュレート堆積量PMが多いときほど小さな値として設定される。空気過剰率λを制御する際に、ECU41は、エンジン回転数Ne及び燃料噴射量Qmにより図6に示すマップを検索し、ストイキに相当する空気過剰率を与える目標吸入空気量tQaを算出する。目標空気過剰率tλregとこの目標吸入空気量tQaとを積算し、DPF再生時における目標吸入空気量tQaregを設定する。
【0027】
S103では、フィルタベッド温度Tdpfが下限値Tdpf1以上であるか否かを判定する。Tdpf1以上であるときは、S105へ進み、Tdpf1未満であるときは、S104へ進む。S104では、ポスト噴射量を増大させ、排気ガス温度を上昇させる。ECU41は、エンジン回転数Ne及び燃料噴射量Qmにより図7に示すマップを検索し、ポスト噴射量補正値ΔPOSTを設定し、これをポスト噴射量に加算する。ポスト噴射量が変化すると、排気ガスの空気過剰率λが変化し、目標空気過剰率tλregから乖離する。ECU41は、吸気絞り弁15を作動させて空気過剰率λを調整し、フィルタベッド温度Tdpfの変化を抑制する。
【0028】
S105では、フィルタベッド温度Tdpfが上限値Tdpf2以下であるか否かを判定する。Tdpf2以下であるときは、S107へ進み、Tdpf2よりも高いときは、S106へ進む。S106では、前述同様にポスト噴射量補正値ΔPOSTを設定し、これをポスト噴射量から減算して、排気ガス温度を低下させる。
【0029】
S107では、S104又はS106により補正した噴射量によるポスト噴射を実施した後、所定時間tdpf1が経過したか否かを判定する。tdpf1が経過したときは、S108へ進み、tdpf1が経過していないときは、このルーチンをリターンする。ポスト噴射の実施から所定時間tdpf1が経過するまでの間にパティキュレートが焼却される。S108では、DPF再生が終了したものと判断し、ポスト噴射量を0に設定し、排気ガス温度を通常温度に復帰させる。S109では、フラグFregを0に設定する。S110では、フラグFrecを1に設定し、ディーゼルパティキュレートフィルタ34の故障を回避するのための制御を行う。パティキュレートに燃え残りが存在するときは、空気過剰率λを即時に通常値に復帰させたとすると、この燃え残りが急速に燃焼し、ディーゼルパティキュレートフィルタ34に過大な熱負荷をかけ、フィルタエレメントの割れ等を来すおそれがあるためである。
【0030】
図8は、被毒解除のための制御を行うルーチンのフローチャートを示している。
S201では、触媒ベッド温度Tnoxを読み込む。S202では、排気ガスの空気過剰率λをストイキに制御する。空気過剰率λは、吸気絞り弁15を作動させて制御する。ECU41は、図6に示すマップを検索して、ストイキに相当する空気過剰率を与える目標吸入空気量tQaを設定し、これが達成されるように吸気絞り弁15を制御する。
【0031】
S203では、触媒ベッド温度Tnoxが所定値Tnox1以上であるか否かを判定する。NOxトラップ触媒33の被毒解除を行うには、排気ガス中の還元剤成分を増加させ、ストイキ又はリッチな雰囲気を形成するだけでなく、NOxトラップ触媒33を加熱し、硫黄分の分解を促す必要がある。触媒成分として、たとえばBa系のものを用いたNOxトラップ触媒33では、600℃以上の温度に加熱する。触媒ベッド温度TnoxがTno1以上であるときは、S205ヘ進み、Tnox未満であるときは、S204ヘ進む。
【0032】
S204では、インジェクタ21によりポスト噴射を行い、排気ガス温度を上昇させる。ポスト噴射の実施により空気過剰率λが変化するが、ECU41は、吸気絞り弁15を作動させ、吸入空気量を調節することによりこのズレを補償する。
【0033】
S205では、ポスト噴射を実施した後、所定時間tdesul1が経過したか否かを判定する。tdesul1が経過したときは、S206へ進み、tdesul1が経過していないときは、このルーチンをリターンする。ポスト噴射の実施から所定時間tdesul1が経過するまでの間に硫黄分が分解され、放出される。硫黄分は、放出される際に排気ガス中の還元剤成分により浄化される。S206では、被毒解除が終了したものと判断し、空気過剰率λを通常値に復帰させる。S207では、フラグFrecを1に設定する。被毒解除が終了した時点における高温下で空気過剰率λを即時に通常値に復帰させたとすると、ディーゼルパティキュレートフィルタ34に堆積しているパティキュレートが急速に燃焼し、ディーゼルパティキュレートフィルタ34に過大な熱負荷をかけるおそれがあるためである。S208では、フラグFdesul及びFspを0に設定する。S209では、硫黄分トラップ量SOX及びNOxトラップ量NOXを0に設定する。被毒解除を行うことにより空気過剰率λがストイキに制御されると、硫黄分とともにNOxも放出され、NOx再生が同時に行われるためである。
【0034】
図9は、NOx再生のための制御を行うルーチンのフローチャートを示している。
S301aでは、空気過剰率λをNOx再生のために予め設定された目標空気過剰率tλsp(たとえば、リッチを示すtλsp=0.9)に制御する。空気過剰率λの制御は、上流側空燃比センサ51からの出力(以下「上流側センサ出力」という。)LAMB1をフィードバックして行う。S302aでは、上流側センサ出力LAMB1及び下流側空燃比センサ52の出力(以下「下流側センサ出力」という。)LAMB2を読み込む。S303aでは、上流側センサ出力LAMB1が所定値LAMBslに達する第1の時点を検出するとともに、下流側センサ出力LAMB2が所定値LAMBslに達する第2の時点を検出する。第1及び第2の時点を検出したときは、両時点間の時間を演算し、これをセンサ出力変化時間差ΔTnとして記憶する。各センサ出力LAMB1,LAMB2は、センサ設置部における排気ガスの空気過剰率λが1となったときに所定値LAMBslに達する。S304aでは、前回にこのルーチンを実行した際に算出したセンサ出力変化時間差ΔTn−1を読み込み、これに基づいて空燃比をリッチに制御する期間(以下「リッチスパイク期間」という。)tspike1の補正値txを演算する。補正値txは、センサ出力変化時間差ΔTn−1により図10に示すマップを検索し、ΔTn−1が長いときほど大きな値として算出される。
S305aでは、リッチスパイク期間tspike1の基本値に補正値txを加算し、tspike1(=tspike1+tx)を設定する。S306aでは、NOx再生を開始した後、リッチスパイク期間tspike1が経過したか否かを判定する。tspike1が経過したときは、S307aへ進み、tspike1が経過していないときは、このルーチンをリターンする。リッチスパイク期間tspike1が経過するまでにトラップされているNOxが分解され、NOxトラップ触媒33から放出される。NOxは、放出される際に排気ガス中の還元剤成分により浄化される。S307aでは、NOx再生が終了したものと判断し、フラグFspを0に設定し、空気過剰率λを通常値に復帰させる。S308aでは、NOxトラップ量NOXを0に設定する。
【0035】
このように、センサ出力変化時間差ΔTnを演算し、これに基づいてリッチスパイク期間tspike1を変更することで、NOx再生時にNOxトラップ触媒33に供給される還元剤成分の量を最適化することができる。センサ出力変化時間差ΔTnは、NOx再生開始時にNOxトラップ触媒33がトラップしているNOxの量(以下「開始時トラップ量」という。)、すなわち、NOx再生時に還元すべきNOxの量に応じて変化するからである。センサ出力変化時間差ΔTnが長いときは、開始時トラップ量が多く、還元すべきNOxの量が多いので、リッチスパイク期間tspike1を延長することで、還元剤成分の量が不足することによる再生不良の発生を防止することができる。一方、センサ出力変化時間差ΔTnが短いときは、開始時トラップ量が少なく、還元すべきNOxの量が少ないので、リッチスパイク期間tspike1を短縮することで、過剰な量の還元剤成分が供給されることによるエミッション及び燃費の悪化を抑制することができる。
【0036】
図11は、故障回避のための制御を行うルーチンのフローチャートを示している。
S401では、フィルタベッド温度Tdpfを読み込む。S402では、ディーゼルパティキュレートフィルタ34が高温であり、燃え残りのパティキュレートが急速に燃焼することを防止するため、排気ガスの空気過剰率λを故障回避時における目標空気過剰率tλrecに制御する。目標空気過剰率tλrecは、リッチを示し、かつ1.4以下の値に設定する。ECU41は、エンジン回転数Ne及び燃料噴射量Qmにより図12に示すマップを検索して、目標吸入空気量tQaを設定するとともに、上流側センサ出力LAMB1をフィードバックさせて、目標空気過剰率tλrecを達成する。
【0037】
S403では、フィルタベッド温度Tdpfが所定温度Tdpf3以下であるか否かを判定する。Tdpf3以下であるときは、S404へ進み、Tdpfよりも高いときは、このルーチンをリターンする。S404では、燃え残りのパティキュレートが急速に燃焼するおそれが解除されたものと判断し、空気過剰率λを通常値に復帰させる。S405では、フラグFrecを0に設定する。
【0038】
図13は、フラグFregを設定するルーチンのフローチャートである。S501では、パティキュレート堆積量PMが規定量PM1に達したので、DPF再生を行うため、フラグFregを1に設定する。
【0039】
図14は、フラグFdesulを設定するルーチンのフローチャートである。S601では、硫黄分トラップ量SOXが規定量SOX1に達したので、被毒解除を行うため、フラグFdesulを1に設定する。
【0040】
図15は、フラグFspを設定するルーチンのフローチャートである。S701では、NOxトラップ量NOXが規定量NOX1に達したので、NOx再生を行うため、フラグFspを1に設定する。
【0041】
本実施形態に関して、図2に示すフローチャートのS2,11が再生時期判定手段を構成する。また、図9に示すフローチャートのS301a〜306aが触媒再生手段を構成する。
【0042】
以下に、本発明の他の実施形態について説明する。
図16は、第2の実施形態に係るNOx再生のための制御を行うルーチンのフローチャートを示している。
【0043】
S301bでは、空気過剰率λをNOx再生のために予め設定された目標空気過剰率tλspに制御する。S302bでは、上流側センサ出力LAMB1及び下流側センサ出力LAMB2を読み込む。S303bでは、上流側センサ出力LAMB1及び下流側センサ出力LAMB2に基づいてセンサ出力変化時間差ΔTnを演算する。S304bでは、センサ出力変化時間差ΔTnにより図17に示すテーブルを検索し、NOx再生時期の判定に関する所定値NOX1(図2に示すフローチャートのS11)を演算する。所定値NOX1は、ΔTnが長いときほど小さな値として算出される。S305bでは、NOx再生を開始した後、リッチスパイク期間tspike1が経過したか否かを判定する。tspike1が経過したときは、S306bへ進み、tspike1が経過していないときは、このルーチンをリターンする。S306bでは、フラグFspを0に設定する。S307bでは、NOxトラップ量NOXを0に設定する。
【0044】
このように、センサ出力変化時間差ΔTnを演算し、これに基づいてNOx再生時期の判定に関する所定値NOX1を変更することで、NOx再生を最適な時期に開始することができる。センサ出力変化時間差ΔTnは、開始時トラップ量に応じて変化するところ、これが長いときは、NOx再生を開始するまでに多くの量のNOxをトラップしており、NOx再生前にNOxトラップ触媒33によるNOx除去率が低下している可能性がある。センサ出力変化時間差ΔTnが長いときは、所定値NOX1を小さな値に変更することで、次に行われるNOx再生を早期に、すなわち、NOx除去率が良好に保たれているうちに開始することができる。一方、センサ出力変化時間差ΔTnが短いときは、NOx再生前にトラップしたNOxの量が少ないので、所定値NOX1を大きな値に変更することで、NOx再生の不要な繰り返しによる燃費の悪化を防止することができる。
【0045】
本実施形態に関して、図2に示すフローチャートのS2,11及び図16に示すフローチャートのS304bが再生時期判定手段を構成する。また、同フローチャートのS301b〜303b及び305bが触媒再生手段を構成する。
【0046】
図18は、第3の実施形態に係るNOx再生のための制御を行うルーチンのフローチャートを示している。
S301cでは、前回にこのルーチンを実行した際に演算したセンサ出力変化時間差ΔTn−1により図19に示すテーブルを検索し、NOx再生時における目標空気過剰率tλspを設定する。目標空気過剰率tλspは、リッチを示す値として、ΔTn−1が長いときほど小さな値に設定される。S302cでは、上流側センサ出力LAMB1をフィードバックさせて、空気過剰率λを目標空気過剰率tλspに制御する。S303cでは、上流側センサ出力LAMB1及び下流側センサ出力LAMB2を読み込む。S304cでは、読み込んだLAMB1,LAMB2に基づいてセンサ出力変化時間差ΔTnを演算し、記憶する。S305cでは、NOx再生を開始した後、リッチスパイク期間tspike1が経過したか否かを判定する。tspike1が経過したときは、S306cへ進み、tspike1が経過していないときは、このルーチンをリターンする。S306cでは、フラグFspを0に設定する。S307cでは、NOxトラップ量NOXを0に設定する。
【0047】
このように、センサ出力変化時間差ΔTnを演算し、これに基づいてNOx再生時における目標空気過剰率tλspを変更することで、NOx再生時にNOxトラップ触媒33に供給される還元剤成分の量を最適化することができる。センサ出力変化時間差ΔTnは、開始時トラップ量に応じて変化するところ、これが長いときは、開始時トラップ量が多く、NOx再生時に還元すべきNOxの量が多い。センサ出力変化時間差ΔTnが長いときは、目標空気過剰率tλspを小さな値に設定することで、還元剤成分の量が不足することを防止することができる。一方、センサ出力変化時間差ΔTnが短いときは、開始時トラップ量が少なく、還元すべきNOxの量が少ないので、目標空気過剰率tλspを大きな値に設定することで、過剰な量の還元剤成分が供給されることを防止することができる。
【0048】
本実施形態に関して、図2に示すフローチャートのS2,11が再生時期判定手段を構成する。また、図18に示すフローチャートのS301c〜305cが触媒再生手段を構成する。
【0049】
なお、以上では、センサ出力変化時間差ΔTnと、NOx再生開始時におけるNOxトラップ量とが比例するとの仮定のもとに、センサ出力変化時間差ΔTnをNOx再生のための制御に反映させる場合を例に説明した。本発明は、これに限らず、センサ出力変化時間差ΔTnと開始時トラップ量とが比例しない場合に適用することもできる。NOxトラップ触媒33に供給される還元剤成分の量が時間に応じて変化する場合は、上流側センサ出力LAMB1が所定値LAMBslに達してから、下流側センサ出力LAMB2が所定値LAMBslに達するまでの間にNOxトラップ触媒33に供給された還元剤成分の量を反映させる。供給された還元剤成分の量は、NOx再生時における目標当量比1/tλsp又はその基準値に対する差の積算値として算出することができる。
【0050】
また、第1及び第2の排気ガスセンサには、空燃比センサのほか、一般的な酸素センサや空気過剰率センサを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジンの構成
【図2】再生モード判定ルーチンのフローチャート
【図3】DPF再生時期判定値設定マップ
【図4】DPF再生ルーチンのフローチャート
【図5】DPF再生時目標空気過剰率設定テーブル
【図6】ストイキ相当目標吸入空気量設定マップ
【図7】ポスト噴射量補正値設定マップ
【図8】被毒解除ルーチンのフローチャート
【図9】NOx再生ルーチンのフローチャート
【図10】リッチスパイク期間補正値設定テーブル
【図11】故障回避ルーチンのフローチャート
【図12】故障回避時目標吸入空気量設定マップ
【図13】DPF再生フラグ設定ルーチンのフローチャート
【図14】被毒解除フラグ設定ルーチンのフローチャート
【図15】NOx再生フラグ設定ルーチンのフローチャート
【図16】他の実施形態に係るNOx再生ルーチンのフローチャート
【図17】NOx再生時期判定値設定テーブル
【図18】他の実施形態に係るNOx再生ルーチンのフローチャート
【図19】NOx再生時目標空気過剰率設定テーブル
【符号の説明】
1…ディーゼルエンジン、11…吸気通路、12…可変ノズルターボチャージャ、13…インタークーラ、14…サージタンク、15…吸気絞り弁、21…インジェクタ、31…排気通路、32…酸化触媒、33…NOxトラップ触媒、34…ディーゼルパティキュレートフィルタ、35…EGR管、36…EGR弁、41…電子制御ユニット、51…上流側空燃比センサ、52…下流側空燃比センサ、53…排気ガス圧力センサ、54…触媒ベッド温度センサ、55…フィルタベッド温度センサ。
Claims (11)
- エンジンの排気通路に設置され、流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときに排気ガス中のNOxをトラップする一方、流入する排気ガスの空燃比がリッチであるときにトラップしているNOxを還元して放出するNOxトラップ触媒と、
NOxトラップ触媒の上流に設置され、排気ガス中の酸素又は還元剤成分の濃度に応じた信号を出力する第1の排気ガスセンサと、
NOxトラップ触媒の下流に設置され、排気ガス中の酸素又は還元剤成分の濃度に応じた信号を出力する第2の排気ガスセンサと、
トラップしているNOxを放出させてNOxトラップ触媒を再生させるNOx再生を行う時期に至ったか否かを判定する再生時期判定手段と、
排気ガス中の還元剤成分の量を増加させてNOx再生を行う触媒再生手段と、を含んで構成され、
触媒再生手段は、排気ガス中の還元剤成分の量を増加させた後、第1の排気ガスセンサの出力が変化して所定値に達する第1の時点を検出するとともに、第2の排気ガスセンサの出力が変化して所定値に達する第2の時点を検出し、
第1の時点から第2の時点までの時間であるセンサ出力変化時間差又はその間に増加させた還元剤成分の量を検出し、
検出したセンサ出力変化時間差又は増加させた還元剤成分の量に基づいてNOx再生開始時にNOxトラップ触媒がトラップしているNOxの量を開始時トラップ量として推定するエンジンの排気ガス浄化装置。 - 再生時期判定手段は、推定された開始時トラップ量に応じて次にNOx再生が行われるまでにNOxトラップ触媒がトラップするNOxの量を変化させる請求項1に記載のエンジンの排気ガス浄化装置。
- 再生時期判定手段は、エンジンの運転状態に基づいてNOxトラップ触媒がトラップしているNOxの量を推定し、これが所定値に達したときにNOx再生を行う時期に至ったと判定する場合に、推定された開始時トラップ量に応じて前記所定値を変更する請求項2に記載のエンジンの排気ガス浄化装置。
- 再生時期判定手段は、推定された開始時トラップ量が多いときほど前記所定値を小さな値に変更する請求項3に記載のエンジンの排気ガス浄化装置。
- 触媒再生手段は、検出したセンサ出力変化時間差が長いか、あるいは増加させた還元剤成分の量が多いときほど開始時トラップ量を大きな値として推定する請求項1〜4のいずれかに記載のエンジンの排気ガス浄化装置。
- 触媒再生手段は、推定した開始時トラップ量に応じて増加させる還元剤成分の量を変更する請求項1〜5のいずれかに記載のエンジンの排気ガス浄化装置。
- 触媒再生手段は、エンジンの空燃比をリッチに制御して排気ガス中の還元剤成分の量を増加させる場合に、推定した開始時トラップ量に応じて空燃比をリッチに制御するリッチスパイク期間又はその間における空燃比の減少代を変更する請求項6に記載のエンジンの排気ガス浄化装置。
- 触媒再生手段は、推定した開始時トラップ量が多いときほどリッチスパイク期間を延長し又は空燃比の減少代を拡大する請求項7に記載のエンジンの排気ガス浄化装置。
- 第1及び第2の排気ガスセンサは、酸素センサ、空気過剰率センサ又は空燃比センサである請求項1〜8のいずれかに記載のエンジンの排気ガス浄化装置。
- 第1及び第2の排気ガスセンサの出力は、排気ガスの空燃比がストイキであるときに前記所定値に達する請求項1〜9のいずれかに記載のエンジンの排気ガス浄化装置。
- 排気通路に設置されたNOxトラップ触媒を含んで構成され、
排気ガスの空燃比がリーンとなる通常時において、排気ガス中のNOxをNOxトラップ触媒にトラップさせて除去する一方、
NOxトラップ触媒がトラップしているNOxを放出させるNOx再生時において、
排気ガスの空燃比をリッチに転じ、
NOxトラップ触媒の上流における排気ガス中の酸素又は還元剤成分の濃度が変化して所定値に達する第1の時点を検出するとともに、NOxトラップ触媒の下流における排気ガス中の酸素又は還元剤成分の濃度が変化して所定値に達する第2の時点を検出し、
第1の時点から第2の時点までの時間又はその間にNOxトラップ触媒に供給された還元剤成分の量を検出し、
検出した時間若しくは供給された還元剤成分の量又はこれらを基にした演算値を記憶するエンジンの排気ガス浄化装置。
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