JP2004323890A - 亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の薄目付け亜鉛めっき鋼板と同等の適正溶接電流範囲を有する厚目付の亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供する。
【解決手段】亜鉛めっき層の表面にリン酸塩皮膜を備え、前記皮膜のP(リン分)が、平均値で30〜400mg/mであるとともに、Pの付着量が25mg/m未満の領域を全面積の30%以上とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は亜鉛めっき鋼板に関し、特にスポット溶接時に、比較的低電流の条件でも溶接ナゲットを形成させることができる亜鉛めっき鋼板、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の鋼板は、塩害地域での防錆性を確保するために、亜鉛めっき鋼板が用いられている。亜鉛めっき鋼板には、電気亜鉛めっき鋼板、電気合金亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板などがある。この中で、合金亜鉛めっき鋼板は、めっき層が硬くプレス時の金型への凝着が抑えられるため、プレス生産性が良好で、かつ、めっき層の融点が高くスポット溶接時の電極への亜鉛めっきの融着が抑えられるため、連続打点性が良好である。これらの特長から、合金亜鉛めっき鋼板は従来から日本国内および海外での自動車の防錆鋼板として広く使用されている。代表的な合金めっき鋼板としては、例えばZn−12%Ni合金電気めっき鋼板(ZnNi)や合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)等がある。
【0003】
ところで、上記したように自動車用防錆鋼板の重要な性能の一つとして、スポット溶接性がある。これまで亜鉛めっき鋼板のスポット溶接性向上を目的として数多くの技術が開示されている。例えば特許文献1〜4には、スポット溶接時の連続打点性を改善するために、鋼板表面あるいは電極表面に酸化物処理などを行って、電極表面の金属と亜鉛との反応を抑制する手法が開示されている。
【0004】
また、特許文献5〜10には、亜鉛めっき鋼板表面に摺動性や潤滑性、さらには化成処理性、接着性などの性能を付与することを目的として、表面処理の技術が開示されている。
【0005】
近年、自動車の防錆目標のレベルアップが求められるようになり、その防錆性向上の要求から亜鉛めっきの厚目付化が進行している。例えば、欧州では12年防錆、すなわち、エンジンルーム内での12年間穴あき、および腐食無きことが目標とされている。この目標を達成するには、従来の合金亜鉛めっき鋼板の亜鉛付着量(通常45〜50g/m程度の場合が多い。)では防錆性が不足すると考えられる。この防錆力を上げるため、めっきを厚目付化することが考えられるが、合金亜鉛めっき鋼板は、めっき層が硬く脆いことがあり、厚目付とすると、プレス成形時にパウダリングが生じるためプレス生産性を劣化させる恐れがある。また、GAを除けば、合金元素を含むことでコストアップにもつながる。したがって、今後厚目付化の要求にともない合金元素をほとんど含まない亜鉛めっき鋼板、すなわち電気純亜鉛めっき(以下「EG」という。)やあるいは微量なAlを含む溶融亜鉛浴に鋼板を浸漬し引き上げることで作製される溶融亜鉛めっき鋼板(以下「GI」という。)の利用が広まるものと期待される。
【特許文献1】
特公平7−42590号公報
【特許文献2】
特開昭60−63394号公報
【特許文献3】
特開平2−85390号公報
【特許文献4】
特開平6−116746号公報
【特許文献5】
特開平3−183797号公報
【特許文献6】
特開平4−88196号公報
【特許文献7】
特開平8−120431号公報
【特許文献8】
特開平8−296017号公報
【特許文献9】
特開平9−95788号公報
【特許文献10】
特開2000−129487号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、厚目付のEG、GIは、通常の合金亜鉛めっき鋼板に比べ、スポット溶接性において、下記の問題点を抱えている。
▲1▼めっき層の抵抗値が低く、抵抗発熱が合金亜鉛めっきに比べて小さいため十分なナゲット形成させるためには必然的に高溶接電流を必要とする。
▲2▼厚目付とすることで亜鉛めっき層内での溶接電流の分流によりさらにナゲット形成電流が高くなる。
▲3▼めっき層の融点が合金めっきに比べて低いことから、溶接時の溶融した亜鉛が電極にダメージを与えるため、電極の傷みが早く、連続打点性が劣化する。
【0007】
このうち、▲3▼については、生産性はやや悪化するものの、電極のドレッシング頻度を上げることで対応することは可能である。しかし、▲1▼、及び▲2▼については、これまで抵抗の高いあるいは薄目付の合金亜鉛めっき鋼板を使用していた、例えば自動車メーカー等は、EG、GIの使用および亜鉛めっきの厚目付化に伴い、溶接機の高電流化を余儀なくされ、場合によっては溶接機の更新が必要となり、大幅な設備投資を必要とする事態になりかねない。
【0008】
このような新たな設備投資を避けつつ、防錆性能を向上させる厚目付EG、GIを用いるにあたっては、溶接電流を従来の薄目付け亜鉛めっき鋼板に近い低電流側にシフトさせることが求められている。また、その際、溶接電流の適正範囲(適正な径のナゲットが形成し始める電流から、チリが発生し始める電流まで)ができるだけ狭くならないようにすることも重要である。
【0009】
しかしながら、特許文献1〜10には、厚目付亜鉛めっき鋼板による防錆性の向上と薄目付け亜鉛めっき鋼板並みの低溶接電流でのナゲット形成能確保について、一切言及がない。
【0010】
そこで、本発明は従来の薄目付け亜鉛めっき鋼板と同等の適正溶接電流範囲を有する厚目付の亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、厚目付(亜鉛付着量として60g/m以上)のEG、GIの適正溶接電流範囲の低電流側へシフトさせるために、まず、亜鉛めっき鋼板表面に無機質の抵抗皮膜を設け鋼板−鋼板間での抵抗発熱を促すことで低溶接電流でも十分な径のナゲットを形成できると考えた。その結果、めっき表面にリン酸塩皮膜を形成させる際に、付着した状態によって、溶接電流の適正範囲が変化することを見出し、これに基づき、発明を完成するに至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0012】
本発明の第1の態様は、亜鉛めっき層の表面にリン酸塩皮膜を備え、前記皮膜のP(リン分)が、平均値で30〜400mg/mであるとともに、Pの付着量が25mg/m未満の領域が全面積の30%以下である亜鉛めっき鋼板である。
【0013】
ここでP(リン分)の付着量について説明する。付着量の「平均値」は、Pを含む表面処理層を形成させた亜鉛めっき鋼板表面の、5cm程度以上の測定面積での付着量の平均値として求めたものである。測定手段としては、重クロム酸溶液等により溶解された皮膜成分中のP量の測定、あるいは蛍光X線分析装置による測定等が挙げられる。
【0014】
次に「25mg/m未満の領域が全面積の30%以下」について説明する。本発明では、後述するように、均一なリン酸塩皮膜が形成されるほうが良い。しかしながら、溶融亜鉛めっきに後述する反応型処理を施す場合、必ずしも均一なリン酸亜鉛皮膜が得られることがある。このとき、皮膜表面を100〜300倍程度で観察すると、「スケ」(これについても後述する。)と呼ばれる付着量の少ない領域が認められる(例えば図3(写真2)参照)。この付着量の少ない領域について、付着量及び観察視野に占める面積割合を測定する。付着量は、例えば、電子線マイクロアナライザ(EPMA)や、エネルギー分散型(微小部)蛍光X線分析装置(EDX)などの微小領域の元素分析が可能な測定装置を用いて測定する。一方、前記面積割合については、前記倍率において目視で評価する。なお、付着量の測定は、肉眼で表面疵や刻印等が認められない平均的な個所で行うものとし、又、コイルの場合には、前後端それぞれ3000mmの部分を除いて測定点を取るものとする。
【0015】
上記第1の態様の亜鉛めっき鋼板において、前記リン酸塩皮膜はリン酸亜鉛を主成分とする皮膜であることが好ましい。
【0016】
ここに「リン酸亜鉛が主成分」とは、リン酸塩皮膜を構成する成分のうちリン酸亜鉛の占める割合が50質量%以上であることをいう。また、「リン酸亜鉛」とは、第2リン酸亜鉛(Zn(HPO))、及び第3リン酸亜鉛(Zn(PO)並びに、それらの水和物をさし、結晶質でも良いし非晶質でも良い。
【0017】
また、上記第1の態様の亜鉛めっき鋼板において、前記リン酸塩皮膜がNi、Mnの少なくとも一方を含むリン酸亜鉛を主成分とする皮膜であることが好ましい。
【0018】
また上記諸態様(変形例を含む。)の、鋼板の亜鉛めっきは、連続溶融めっき法で形成されることが好ましい。
【0019】
さらに、上記諸態様(変形例を含む。)の亜鉛メッキ鋼板は、片面あたり60g/m以上の亜鉛めっき層を有することが好ましい。
【0020】
本発明の第2の態様は、鋼板の亜鉛めっき層の表面に、リン酸塩を含む処理液に接触させた後乾燥させて、P(リン)分が平均値で30〜400mg/mであるとともに、Pの付着量が25mg/m未満の領域が全面積の30%以下であるリン酸塩皮膜を形成する、亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
【0021】
ここでの、リン酸塩皮膜のP(リン分)の測定方法、及び、「Pの付着量が25mg/m未満の領域が全面積の30%以下である」の意義は上記と同様である。
【0022】
上記第2の態様の亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記リン酸塩を含む処理液に接触させる前に、洗浄及び/又は表面調整を行うことが好ましい。
【0023】
ここに、「洗浄」とは、酸洗浄、アルカリ洗浄、水洗、湯洗等をいい、「表面調整」とは、軽度の研磨、及び、チタンコロイド含有分散液、あるいは微小リン酸亜鉛分散液への浸漬、さらにはNi、Co、Cuなどの金属のフラッシュめっき(電解、無電解いずれも含む。)等をいう。
【0024】
また、上記第2の態様の亜鉛めっき鋼板の製造方法において(上記変形例を含む。)前記リン酸塩を含む処理液に接触させた後、乾燥の前に、水洗を行うことが好ましい。
【0025】
さらに、前記リン酸塩を含む処理液に接触させた後、水洗を行うことなく乾燥させても良い。
【0026】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のリン酸塩皮膜を備えた溶融亜鉛めっき鋼板製造設備の一例の概要を示す図である。この製造設備100は、図面左側から右側へと進行する連続製造ラインとして構成されている。ペイオフリール1から巻き出された母材鋼板は、前洗浄設備2において、前工程での冷間圧延の際に表面に付着した冷間圧延油や、防錆油の脱脂が行われる。次いで、鋼板は、縦型連続焼鈍炉3において、所定の温度に昇温保持されて、金属結晶組織に所定の調整が加えられる。焼鈍炉3を出た鋼板は、融点以上に昇温されて溶融状態にある金属亜鉛浴(亜鉛ポット4)に浸漬されて、その表裏両面に亜鉛めっき層が形成される。次いで空冷帯5において所定の温度まで降温される。なお、本発明では図示されているGA(ガルバニール)炉は、原則として使用しない。
【0028】
次工程のスキンパスミル6では、ダルロールを用いて所定の表面粗さに調質圧延が行われる。そして、テンションレベラー7により平坦度が調整され、その後リン酸亜鉛処理装置9により、亜鉛めっき層の表面にリン酸塩皮膜が形成される。リン酸亜鉛処理装置9の前後には、アルカリ洗浄装置8、水洗装置10などが設けられ、必要に応じて、それらによる洗浄が行われる。その後乾燥処理装置11による乾燥を受けた鋼板は、静電塗油された後、カローゼルリール10により巻き取られ、製造設備100による一連の製造工程が終了する。以下に上記工程の流れに従いつつ、本発明を詳細に説明する。
【0029】
(1)母材鋼板の種類
本発明において、母材鋼板の種類は特に限定されない。本発明の亜鉛メッキ鋼板は、特に自動車用、その他家電製品や建材用に有効と考えられる。そのため、それらの用途に利用されている極低炭素鋼、低炭素鋼、さらにはSi、Mn、P、Al、Cu等の各種合金元素を含有する炭素鋼を用いることができる。その機械特性(一般用、絞り加工用、高強度用など)や形態(冷間圧延鋼板、熱間圧延鋼板)も、本発明において特に限定されるものではない。
【0030】
(2)亜鉛めっき
めっき鋼板としては、付着量として、片面あたり60g/m以上の亜鉛めっき層を有する亜鉛めっき鋼板を使用するのが耐食性の観点で望ましい。とくに防錆性が必要とされる場合、好ましい亜鉛めっき付着量としては80g/m以上がよい。なお、めっき方法としては、上記のような厚目付の場合、溶融めっき法を用いる方がコスト的に有利である。
【0031】
なお、本発明のめっき鋼板では、めっき皮膜中にあえて合金元素を含有させたり、あるいは熱処理によって母材鋼との合金化処理を行ったりするものではない。しかしながら、防錆性やスポット溶接性に影響を及ぼさない程度に少量含んでいてもよい。例えば、溶融亜鉛めっき鋼板の場合、母材−めっき間の過合金化を抑制するためにめっき浴に少量のAlを含有させているため、めっき皮膜中にも通常Alが含まれる。この含有量は、通常加工性等の観点から最大でも1質量%以下程度であるが、この程度であれば問題ない。また、鋼板に起因するFeやステンレス鋼製浴中機器からNi、Cr等あるいはその他の元素も通常めっき皮膜中に含有されているが、これらについても性能に影響を及ぼさない限り問題とはならない。
【0032】
(3)調質圧延
本発明では、後述するように、リン酸塩処理前の表面の反応性が均一である方が好ましい。特に溶融亜鉛めっき鋼板を使用する場合は、めっき表面がAlを主体とする薄い酸化皮膜で覆われているため、均一な表面状態を得るという目的からは、調質圧延を施さないか、ブライトロールを用いて調質圧延する方が好ましいとも考えられる。しかし、実際には、プレス成形時の表面の保油性等の観点から、表面に適当な粗度を与えられるようなダルロールを使用して調質圧延する方が実用的である。いずれにしても、圧延条件については、目的とする機械特性、鋼板形状、表面形状(粗さ、うねり、ピーク数等)等が得られるように適宜設定する。たとえば、表面粗さが比較的大きい(Ra≧2.0μm程度)ワークロールを用いて、めっき表面粗さRaを0.7〜1.5μm程度とすることが、プレス成形性を確保する上で好ましい。なお、ワークロール表面の加工手段としては、主に放電加工、ショットダル加工等があるが、放電加工の方が前記のようにRaが比較的大きくてもうねり高さWcaを小さくすることができるため、塗装後の鮮映性を考慮する場合は有利である。
【0033】
(4)リン酸塩処理
4−1.リン酸塩皮膜の表面被覆状況
本発明では、めっき処理及び調質圧延後に、鋼板表面にリン酸亜鉛処理を施す。このとき、形成されるリン酸塩皮膜が亜鉛めっき鋼板の表面を被覆する状況が、溶接電流の適正範囲に影響する。図2〜4に示される図面代用写真1〜3は、GI(溶融亜鉛メッキ鋼板)の表面に反応型処理(後述)によりリン酸塩皮膜を形成したものの、表面SEM像である。
【0034】
写真1(図2)のように均一なリン酸塩皮膜が形成されていると、溶接電流が低下し、かつ、ある程度の適正範囲を有している。一方、写真2、3(図3、4)のように「スケ」(下地が透けているように見える部分)が相当の面積割合で認められるような不均一なリン酸塩皮膜が形成されると、溶接電流はさほど低下しない。一方でチリが発生しやすくなり、結果として溶接電流の適正範囲が狭くなる場合もある。ちなみに、写真2、3(図3、4)におけるリン酸塩付着量は、後述の実施例でも述べるが、平均付着量の概ね3割以下であり、例えば写真2(図3)では、P(リン分)として約20mg/m、写真3(図4)では5〜6mg/mである。溶接電流を低下させ、かつ、適正範囲に保つには、このような「スケ」のない均一な皮膜が形成されていることが重要である。
【0035】
なお、このような皮膜の均一性の観点からは、処理方法としては、反応型処理よりも塗布型処理(後述)の方が好ましい。GIの表面に塗布型処理によりリン酸塩皮膜を形成したものの表面SEM像を図5の図面代用写真4に示す。
【0036】
4−2.リン酸塩皮膜の平均付着量
リン酸塩皮膜の平均付着量も重要である。平均付着量が少なすぎる場合、被覆は均一であっても電流低下の効果は乏しくなる。本発明において、電流低下の効果を得るためには、リン酸塩皮膜の平均付着量の目安となるP(リン分)として、30mg/m以上付着させる必要があり、好ましくは50mg/m以上である。他方、平均付着量が多すぎる場合は連続打点性が悪化するため、リン酸塩皮膜の平均付着量はP(リン分)として、400mg/m以下とする必要がある。さらに、200mg/mを超えると、ナゲット形成電流は低下するがチリ発生電流も低下し適正溶接電流範囲が狭くなる。したがって平均付着量はP(リン分)として、50〜200mg/mの範囲が好ましく、さらに後工程で塗装時処理としてリン酸塩処理などが施される場合は、平均付着量はP(リン分)として50〜150mg/mが好ましい。
【0037】
4−3.リン酸塩処理方法
次に、本発明の好ましいリン酸塩処理方法について説明する。処理方法としては、本発明の所定のリン酸塩皮膜が形成されれば、特に限定しないが、主に次の(a)、および(b)の2通りの方法が適用可能である。
【0038】
(a)塗布型処理
リン酸塩を含む処理液をめっき表面に塗布し、そのまま乾燥させリン酸塩皮膜を形成させる方法である。処理液としては、Al、Mg、Ca、Znなどの第1リン酸塩の水溶液や、また第2リン酸塩、または第1リン酸塩を含むコロイド含有する水性液等が挙げられる。なお、処理液中には、フッ化物イオン等のエッチングに寄与する成分が含まれていても良い。逆に、後述する反応型処理とは異なり、例えば硝酸イオンのような、めっき表面との間で化成反応を進行させるような成分は実質的に含まれない。したがって、塗布型処理によって形成されるリン酸塩皮膜は、概ね処理液がそのまま、あるいは、めっき皮膜が溶出したZnを取り込んだ形で乾燥、縮合したものとなる。塗布方法としては、ロールコート法、スプレーコート法、処理液に浸漬後リンガーロールで絞る方法等がある。
【0039】
(b)反応型処理
リン酸塩を含む水溶液を用いて、めっき表面とのいわゆる化成反応によって、表面にリン酸塩皮膜を形成させる方法である。処理方法としては、前記水溶液に浸漬するか、またはめっき表面に前記水溶液をスプレーする等により、めっき表面と水溶液とを所定時間接触させて化成反応を進行させ、その後、通常水洗を経て乾燥する。この方法はめっき表面との反応を利用する方法であるため、めっき表面の反応性が全体的に均一でないと、写真2、3(図3、4)のような不均一なリン酸塩皮膜が形成されやすい。たとえば、GIを母材に用いる場合は、めっき表面に酸化皮膜が覆っていることから、反応性が不均一であることが多く、また、前述のようなダルロールを用いて調質圧延を施す場合、ロールマットが転写された部分とされていない部分とでは反応性が異なることが多い。そこで、反応型処理の前に、めっき表面の反応性を均一にするために、めっき表面を酸・アルカリ等により洗浄するのが好ましい。また、表面粗さ等が特に問題とならない場合は、若干量研磨してもよい。さらに、反応型処理に先立って、化成反応を促進するための表面調整(たとえばチタンコロイドを含有する水溶液に浸漬)を施すことが好ましい。
【0040】
上記の2つの方法を比較すると、塗布型処理の方が、めっき表面の反応性の影響が小さいため均一なリン酸塩皮膜を形成するという点では好ましく、さらに、第1リン酸塩の水溶液をロールコータやスプレーコータで均一に塗布し乾燥する方法が望ましい。
【0041】
一方において、本発明では、めっき鋼板の表面にリン酸塩皮膜が形成されることから、たとえば自動車の塗装前処理として施されるリン酸塩処理工程を省略することも考えられる。この場合、本発明で形成されるリン酸塩皮膜を、Ni、Mnから選ばれる1種あるいは2種以上の元素を含むリン酸亜鉛を主体とする皮膜とすることで、電着塗装の耐水二次密着性が向上する。また、後工程のリン酸塩処理を省略しない場合であっても、Ni、Mnなどを含むリン酸亜鉛皮膜とすることで、後工程のリン酸塩処理浴と類似の組成となるため、リン酸塩処理性の面だけではなくリン酸塩処理浴の耐汚染性の観点からも有利である。なお、いずれの場合にも、塗膜密着性の観点からは、本発明のリン酸塩処理の方法は、反応型処理の方が好ましいということになる。
【0042】
図6は、リン酸塩皮膜の付着状況と溶接電流の適正範囲との関係を示した模式図である。(a)は従来の薄目付け亜鉛めっき鋼板の溶接電流範囲を示すものである。溶接電流範囲最小値は、鋼板板厚をtとしたとき、適正な形のナゲットが形成され始める電流値(4t1/2)であり、最大値はちりが発生し始める電流値と一致する。(b)は亜鉛めっき層を厚目付けとした場合であり、適正電流範囲は高電流側にシフトする。
【0043】
(c)〜(g)は(b)の厚目付け亜鉛めっき鋼板の表面にリン酸塩皮膜を形成した場合に、適正溶接電流がどの様に変化するかを示す模式図である。(c)〜(e)は、反応型処理によりリン酸塩皮膜を形成した場合を示し、(f)、及び(g)は、塗布型処理によりリン酸塩皮膜を形成した場合を示している。反応型処理により場合、(c)に示されるような不均一なリン酸塩皮膜が形成されると、適正溶接電流範囲の低電流側へのシフトが十分に現れない。また(d)に示されるように、均一であっても形成されたリン酸皮膜が厚すぎる場合には、適正溶接電流範囲が低電流側にシフトしすぎて、連続打点性が極端に劣化する。反応型処理によっても、(e)に示されるように、均一でかつ適度な厚さのリン酸塩皮膜が形成されると、適正溶接電流範囲が満足すべき範囲におさまり、かつこの場合の連続打点性も適度なものである。
【0044】
塗布型処理の場合、形成されるリン酸皮膜を均一なものにするのは容易である。しかし、(f)に示されるように、形成された皮膜が厚すぎると適正溶接電流範囲の低電流側へのシフトが過剰となり、連続打点性が劣化する。(g)に示されるように、均一でかつ適度な厚さのリン酸塩皮膜が形成されると、適正溶接電流範囲が満足すべき範囲におさまり、かつこの場合の連続打点性も妥当な範囲におさまる。
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)−実機試験による評価−
(1)供試材の作製
連続溶融亜鉛めっきラインにて、冷延鋼板に溶融亜鉛めっき(付着量:片面あたり80g/m)を施し、引き続き、調質圧延(放電加工ロールを使用)、リン酸亜鉛処理を行った。冷延鋼板の板厚は、0.7mm、母材成分は以下に示す表1のとおりである。
【表1】
Figure 2004323890
【0046】
1−1<調質圧延>
調質圧延においては、ワークロール表面を放電加工でRaが3.5μmとなるように調整し、溶融亜鉛めっき鋼板を鋼板伸び率が0.6〜0.8%となるように圧延荷重1960kNで圧延した。圧延した溶融亜鉛めっき鋼板(リン酸亜鉛処理を施さない場合)の表面のRaは、1.1μmであり、Wcaは、0.43μmであった。
【0047】
1−2<リン酸亜鉛処理>
リン酸亜鉛処理は、以下に記載する反応型処理または塗布型処理を行った。
【0048】
<反応型処理>
pH=13.8のNaOH水溶液(液温50℃)でめっき表面をスプレー洗浄し、水洗し、表面調整液(日本パーカライジング製PLZ 2g/L)を5秒間スプレーして表面調整し、引き続いて直ちに下記のリン酸塩処理液を3秒間スプレーした。その後、リンガーロールで絞り取り、そのまま乾燥した。
Figure 2004323890
なお、比較のために、表面洗浄または表面調整を施さないサンプルも作成した(表2、試番1−0)。
【0049】
(注)
<F.A.> 処理浴を10ml採取し、指示薬として市販のブロムフェノールブルーのメタノール溶液を数滴入れた後0.1N NaOHにて滴定し、指示薬が黄色から青色に変化するまでの0.1N NaOH滴下量mlをFA(単位ポイント)とした。
<T.A.> 処理浴を10ml採取し、指示薬として市販のフェノールフタレインメタノール溶液を数滴入れた後0.1N NaOHにて滴定し、指示薬が透明から桃色かかったところまでに変化するまでの0.1N NaOH滴下量mlをTA(単位ポイント)とした。
【0050】
<塗布型処理>
洗浄液(日本パーカライジング製FCL4480、pH12.5、50℃)で表面をスプレー洗浄し、水洗、送風乾燥してから、下記のリン酸塩処理液をロールコート法で塗布した。その後、板温が60℃となるように10秒間で乾燥した。
Figure 2004323890
【0051】
(2)リン酸塩皮膜の形成状態の観察方法
2−1<平均付着量Pa>
供試材の30箇所について、φ50mmブランクに打抜き、事前に作成、化学分析を行ったP付着量既知の検量線用試料と共に蛍光X線法にてリン平均付着量Paを定量した。
【0052】
2−2<均一性の評価>
まず、SEM(倍率:×500)で試材表面を観察した。反応型処理を施したものについては、概ね全面均一に付着している場合は「均一」、写真2(図3)または3(図4)程度に「スケ」が認められる場合は「不均一」、写真1と写真2との中間程度で、「スケ」は認められるものの観察視野の7割以上で付着しているものについては「概ね均一」と評価した。塗布型処理を施したものについては、「均一」とした。さらに「均一」の場合は視野中の任意の数個所について「スケ」が認められる場合は「スケ」領域内の数個所について、それぞれSEM/EDX法で部分的な付着量を測定し、最小の値を最小付着量とした。なお、SEM/EDX法では、予めビーム照射径がφ1μm程度のEDXプローブを有するSEM/EDX装置にて、均一なP付着量を有する試料を用いて検量線を作成しておき、検量線作成条件と同様の励起電圧で、供試材の表面処理層の部分的な付着量を測定した。
【0053】
(3)性能評価方法
3−1<スポット溶接の適正電流範囲>
供試材を2枚重ねて、下記条件にてスポット溶接試験を行い、適正溶接電流範囲を求めた。
電極 :φ6mm Cu−Cr電極 CF型
加圧力 :2×10
溶接電流:6000Aから100A毎に15000Aまで溶接(途中溶着が発生した時点で中止)
通電サイクル:12サイクル
評価方法:溶接により生成したナゲット径を断面観察により調査し、ナゲット径が4t1/2(t:板厚(mm))mm=3.35mmとなる最小の溶接電流(以下4t1/2電流)と、チリが発生する最小の発生電流を求めた。
【0054】
3−2<連続打点性>
2枚の供試材を下記条件にて溶接試験を行い、連続打点性を評価した。
電極 :φ6mm Cu−Cr電極 CF型
加圧力 :2×10
溶接電流:適正溶接電流範囲で求めたチリ発生電流。
通電サイクル:12サイクル
評価方法:溶接100点毎に10点ナゲット径調査用の溶接試験を行い、ナゲット径を調査した。10点のうち1点でもナゲット径が4t1/2を下回った場合、その時点での打点数を連続打点数とした。
【0055】
このようにして得た供試材の評価結果を表2に示す。なお、表2の「均一性」の欄には「スケ」領域の面積率もあわせて記載した。
【表2】
Figure 2004323890
【0056】
(4)結論
試番1−2、及び1−3は、本発明の必須要件である「亜鉛めっき層表面のリン酸塩皮膜のP(リン分)が、平均値で30〜400mg/m」を満たすものの、リン酸皮膜の付着状態が不均一であるために4t1/2電流が低電流側にほとんどシフトしなかった。さらに前処理が行われなかった試番1−3は、適正電流範囲も狭いものであった。これに対して本発明例である試番1−1、及び1−4は、均一な皮膜が形成されており、4t1/2電流の低電流側へのシフトが認められ、適正電流範囲及び連続打点性も良好な結果を示した。
【0057】
(実施例2)−ラボ試験による評価−
(1)供試材の作成方法
1−1<めっき鋼板>
下記のめっき鋼板を供試材として使用した。
・板厚0.7mmの亜鉛めっき付着量が片面あたり70g/mで両面めっきの電気亜鉛めっき鋼板(以下EG70)
・板厚0.7mmの亜鉛めっき付着量が片面あたり50g/mで両面めっきの電気亜鉛めっき鋼板(以下EG50)
・板厚0.7mmの亜鉛めっき付着量が片面あたり30g/mで両面めっきの電気亜鉛めっき鋼板(以下EG30)
・板厚0.7mmの亜鉛めっき付着量が片面あたり10g/mで両面めっきの電気亜鉛めっき鋼板(以下EG10)
・板厚0.7mmで亜鉛めっき付着量が片面あたり70g/mでかつAlを0.38%含む両面めっきの溶融亜鉛めっき鋼板(以下GI70)。
・板厚0.7mmで亜鉛めっき付着量が片面あたり90g/mでかつAlを0.35%含む両面めっきの溶融亜鉛めっき鋼板(以下GI90)。
・板厚0.7mmで亜鉛めっき付着量が片面あたり120g/mでかつAlを0.30%含む両面めっきの溶融亜鉛めっき鋼板(以下GI120)。
【0058】
また、現在広く用いられている薄目付け亜鉛めっき鋼板として下記のめっき鋼板を比較用に使用した。
・板厚0.7mmの亜鉛めっき付着量が片面あたり30g/mで両面めっきのZn−12%合金電気めっき鋼板(以下ZnNi30)。
・板厚0.7mmの亜鉛めっき付着量が片面あたり45g/mで両面めっきのZn−10%Fe合金化溶融亜鉛めっき鋼板ニッケル合金めっき鋼板(以下GA45)。
なお、母材成分及び調質圧延条件は、実施例1と同様である。
【0059】
1−2<リン酸塩処理の前処理>
めっき鋼板をイオン交換水、またはアルカリ水溶液に浸漬した。アルカリ水溶液は、2mol/LのNaOH水溶液をイオン交換水で希釈、及び/又はHClやドライアイスで部分中和することで、pHを適宜調整した。また、処理液温度、浸漬時間も適宜変更した。処理液に浸漬後、水洗し、さらにリン酸塩皮膜処理を塗布型で施すものについては水洗後乾燥した。
【0060】
1−3<表面調整>
反応型処理を行う場合、前処理に引き続き、必要に応じ、速やかに表面調整液(日本パーカ製表面調整剤PLZ:1g/L)に10秒間浸漬した。このときの処理液温度は、35℃とした。
【0061】
1−4<リン酸塩処理>
表3に示す3通りの処理法で、リン酸塩処理を施した
【表3】
Figure 2004323890
【0062】
(2)リン酸塩皮膜の形成状態の観察方法
実施例1と同様に行った。
【0063】
(3)性能評価方法
3−1<スポット溶接の適正電流範囲>
実施例1と同様に行った。
【0064】
3−2<連続打点性>
実施例1と同様に行った。
【0065】
3−3<防錆性>
供試材に電着塗装(塗料:日本ペイント(株)製U−50、電圧:200V)を20μm施し、クロスカットを入れ下記のウエット率50%の複合腐食サイクル試験に供した。
【数1】
Figure 2004323890
120サイクル後、塗膜を剥離し除錆処理を行った後の腐食深さを測定し下記のように評価を行った。
◎:腐食深さが0〜0.2mm未満
○:腐食深さが0.2mm以上0.4mm未満
△:腐食深さが0.4mm以上0.6mm未満
×:腐食深さが0.6mm以上穴あき
以上の評価基準で評価を行い、評価が「◎」及び「○」であったものを合格とした。
【0066】
3−4<リン酸塩処理性>
供試材を70×150mmとして、下記条件にてリン酸塩処理性を調査した。
脱脂:日本パーカライジング社製 FCL4480 20g/l(45℃)に120秒間浸漬。
表面調整:日本パーカライジング社製 PLZ 1g/l(30℃)に30秒間浸漬。
リン酸塩処理:日本パーカライジング社製 PBL3080(45℃)に120秒間浸漬。
【0067】
得られた供試材の表面のSEM観察(×1500)を行い下記のように評価を行った。
◎:EG70、GI70(表5の試番49、48)と同等のリン酸塩処理状態(結晶粒度付着状況)
○:◎に比べて結晶が粗大化しているが、結晶が均一に付着し、付着していない箇所が無い。
△:結晶が付着していない箇所がまばらに見受けられる。
×:結晶が付着している箇所がまばらに見受けられる。
以上の評価基準で評価を行い、評価が「◎」及び「○」であったものを合格とした。
【0068】
3−5<電着塗装性>
供試材に電着塗装(塗料:日本ペイント(株)製U−50、電圧:200V)を20μm施しイオン交換水中で40℃×500H浸漬し、浸漬後1mmマスの碁盤目を100マス描いた後ニチバン製セロテープ(登録商標)にて剥離試験を行い下記のように評価を行った。
◎:塗膜剥離面積が0%以上−5%未満
○:塗膜剥離面積が5%以上−15%未満
△:塗膜剥離面積が15%以上−50%未満
×:塗膜剥離面積が50%超える。
以上の評価基準で評価を行い、評価が「◎」及び「○」であったものを合格とした。以上の実施例2の評価結果をまとめて表4、及び表5に示す。
【表4】
Figure 2004323890
【表5】
Figure 2004323890
【0069】
(4)結論
以上の性能評価より以下のとおり結論付けられる。
【0070】
試番1〜5は、リン酸塩皮膜が不均一に形成されており、「スケ」部分の付着量も小さいものである。これらは、亜鉛めっきのみ行い、リン酸処理等を施していない試番48のGI70と比較した場合、4t1/2電流の低電流側へのシフトが0〜0.2kA程度と小さかった。これらは、前処理が弱くめっき表面のAl酸化物層が均一にエッチングされないために、めっき表面の反応性が不均一であったためと考えられる。
【0071】
また、試番2、6は、本発明の必須要件である「皮膜のP(リン分)が、平均値で30〜400mg/m」を満たしておらず、リン酸塩皮膜の平均付着量が小さいものであるが、これらも4t1/2電流が低電流側にほとんどシフトしなかった。これは、表面調整を行わないことからリン酸亜鉛処理液との反応が不足したためと考えられる。
【0072】
試番16はリン酸塩皮膜量がP(リン分)として、400mg/mを超えており、皮膜量が多すぎるため連続打点性が極端に劣化している。なお4t1/2電流のシフトだけでなく、適正電流範囲が広いことも必要であり、これらについて特に好ましい態様として、試番7〜12、試番18〜26、試番28の実施例を挙げることができる。
【0073】
また、試番33〜35についてはめっき付着量が片面当り10〜50g/mと少ないため、防錆性が不足している。逆に試番36、37はめっき付着量が片面当り90〜120g/mと多く、かつ適正溶接電流範囲も低く好ましい態様である。試番39、41、43、45については、リン酸塩処理として、「塗布型B」を適用しており、リン酸亜鉛皮膜中にNi、Mnを含むため、電着塗装性が良好となる。試番47は、P(リン分)として520mg/m含むリン酸塩皮膜量が多すぎるため、連続打点性が極端に劣化する。また、試番44〜46の実施例は、試番31〜43の実施例に比べて皮膜付着量が多いため適正溶接電流の低下は大きいが適正溶接電流範囲自身も狭くなる。
【0074】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う亜鉛めっき鋼板およびその製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【0075】
【発明の効果】
以上のように本発明の鋼板およびその製造方法によれば、これまで薄目付け亜鉛めっき鋼板を溶接していた溶接機の大規模な更新等を行うことなく、低溶接電流でも十分な径のナゲットを形成することができ経済的に有用でありかつこれまで以上に十分な防錆性を有する亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リン酸皮膜を備えた亜鉛めっき鋼板連続製造設備を示す図である。
【図2】写真1:リン酸塩皮膜の表面SEM像の1つである図面代用写真である。
【図3】写真2:リン酸塩皮膜の表面SEM像の1つである図面代用写真である。
【図4】写真3:リン酸塩皮膜の表面SEM像の1つである図面代用写真である。
【図5】写真4:リン酸塩皮膜の表面SEM像の1つである図面代用写真である。
【図6】リン酸塩皮膜の付着状況と溶接電流との関係を示した模式図である
【符号の説明】
1 ペイオフリール
2 洗浄装置
3 連続焼鈍炉
4 溶融亜鉛浴
5 空冷帯
6 スキンパスミル
7 テンションレベラー
8 リン酸亜鉛処理設備
9 乾燥炉
10 カローゼルリール
100 連続めっき鋼板製造設備

Claims (9)

  1. 亜鉛めっき層の表面にリン酸塩皮膜を備え、前記皮膜のP(リン分)が、平均値で30〜400mg/mであるとともに、Pの付着量が25mg/m未満の領域が全面積の30%以下である亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記リン酸塩皮膜がリン酸亜鉛を主成分とする皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記リン酸塩皮膜がNi、Mnの少なくとも一方を含むリン酸亜鉛を主成分とする皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
  4. 前記鋼板の亜鉛めっき層は、連続溶融めっき法で形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された亜鉛めっき鋼板。
  5. 片面あたり60g/m以上の亜鉛めっき層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の亜鉛めっき鋼板。
  6. 鋼板の亜鉛めっき層の表面に、リン酸塩を含む処理液に接触させた後乾燥させて、P(リン)分が平均値で30〜400mg/mであるとともに、Pの付着量が25mg/m未満の領域が全面積の30%以下であるリン酸塩皮膜を形成する、亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  7. 前記リン酸塩を含む処理液に接触させる前に、洗浄及び/又は表面調整を行う請求項6に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  8. 前記リン酸塩を含む処理液に接触させた後、乾燥の前に、水洗を行うことを特徴とする、請求項6又は7に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  9. 前記リン酸塩を含む処理液に接触させた後、水洗を行うことなく乾燥させることを特徴とする、請求項6又は7に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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