JP2004323595A - アゾ化合物およびそれを用いた光記録媒体 - Google Patents
アゾ化合物およびそれを用いた光記録媒体 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】新規アゾ化合物と、それを色素として用いることで高速記録および1倍速記録の両方に対応可能であり、かつ再生時の信号波形歪みが少ない光記録媒体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるアゾ化合物のキレート化合物を光記録媒体の記録層に使用する。
【化1】
ただし、式中、
Xは、置換または未置換のアルキルスルホニルアミノ基等を表し、
R1〜R8は、水素原子、置換または未置換のアルキル基等を表す。
本発明のアゾ化合物およびその金属キレート化合物の用途は光記録媒体用色素に限定されず、様々な用途に使用可能であり、特に、色素として、紙、プラスチック、各種繊維および光学フィルター等、あらゆる素材の着色に好ましく使用できる。
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(I)で表されるアゾ化合物のキレート化合物を光記録媒体の記録層に使用する。
【化1】
ただし、式中、
Xは、置換または未置換のアルキルスルホニルアミノ基等を表し、
R1〜R8は、水素原子、置換または未置換のアルキル基等を表す。
本発明のアゾ化合物およびその金属キレート化合物の用途は光記録媒体用色素に限定されず、様々な用途に使用可能であり、特に、色素として、紙、プラスチック、各種繊維および光学フィルター等、あらゆる素材の着色に好ましく使用できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アゾ化合物およびその金属キレート化合物、ならびにそれを用いた光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
追記型光記録媒体としては、例えば、いわゆるCD−RおよびDVD−R等が実用化されている。これらは、基板上に記録層を配した構造を有し、基板側からレーザー光を照射することにより情報記録を行なう。
【0003】
前記記録層には、一般に有機色素、例えば、アゾ化合物と金属との金属キレート化合物である含金属アゾ系色素や、シアニン系色素、フタロシアニン系色素等が使用されている。前記光記録媒体への情報記録は、照射されたレーザー光を前記色素が吸収して発熱、溶融、分解、蒸発等の熱的変化が生じ、さらに、その熱的変化により、前記色素の変質等の化学的変化や基板の変形等の物理的変化が起こることで行われる。そして、その記録情報の再生は、レーザー光により上記の変化の発生している部分と発生していない部分の反射率差を読み取ることにより行われる。
【0004】
前記色素の性質は光記録媒体に必要とされる諸特性に大きく影響を与えるため、それら諸特性を同時に充足できる色素の開発が活発に行われている(例えば、特許文献1〜4等参照)。
【0005】
特に、最近は、1倍速規格を満足し、高速記録にも対応できる追記型光記録媒体が必要とされており、そのための色素の開発が進められている。これは、CD−RやDVD−Rの高速化が進んでおり、かつ、DVD−Rメディアについてはすでに1倍速記録および4倍速記録が規格化されているためである。しかし、1倍速記録と高速記録を両立するためには様々な課題がある。具体的には以下の通りである。
【0006】
1倍速記録のDVD−R規格には、その記録方法として、信号の長さに合わせて、各信号での標準的な記録パルス幅が規定されている(以下、「記録ストラテジ」と称する)。したがって、1倍速規格を満足し、かつ高速記録に対応するためには、この標準的な記録ストラテジで諸特性を満たすことが必須となる。また、追記型光記録媒体が高速記録に対応するためには、記録パワーを下げることが必要であり、具体的には、より高感度な色素材料を記録層に用いることが重要である。しかしながら、高速記録のために、色素材料の熱分解温度の低下や光学特性の最適化を行い、記録パワーを減少させると、1倍速での最適な記録ストラテジが、規格化された標準的な記録ストラテジから変化してしまう課題がある。
【0007】
さらに、高感度にすると、記録時のレーザー光の照射による記録マークが広がりやすくなる。そのため、高速記録時の記録部は、例えば、記録開始時と記録終了時の光学特性が異なるといった、光学特性の過度の変化が生じやすくなる。このような、光学特性の過度の変化により、記録信号の再生時に信号波形が歪み、エラーレートが上昇するといった課題もある。
【0008】
【特許文献1】
特許第3219037号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−309722号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2001−348501号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平10−81069号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、例えば光記録媒体用色素等の用途に使用可能な新規アゾ化合物を提供することを目的とし、より具体的には、高速記録および1倍速記録の両方に対応可能であり、かつ高速記録時の記録部における再生時の信号波形歪みが小さい光記録媒体に使用できる新規アゾ化合物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明のアゾ化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【化3】
式(I)中、
Xは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、置換もしくは未置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換もしくは未置換のアルカノイルアミノ基、またはアミノ基を表し、
R1は、水素原子であるか、またはR2と共有結合により一体となって環を形成し、
R2は、R1およびR3のうち少なくとも一方と共有結合により一体となって環を形成するか、または、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、およびアルコキシアルキル基のうちいずれかを表し、
R3は、R2およびR4のうち少なくとも一方と共有結合により一体となって環を形成するか、または、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、およびアルコキシアルキル基のうちいずれかを表し、
R4は、R3と共有結合により一体となって環を形成するか、または、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、シアノ基、シアノアルキル基、ニトロ基、およびハロゲン原子のうちいずれかを表し、
R5、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素環、置換もしくは未置換の複素環、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、シアノ基、シアノアルキル基、ニトロ基、またはハロゲン原子を表すか、または、R6とR7、およびR7とR8のうち少なくとも一方が共有結合により一体となって環を形成してもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(アゾ化合物)
まず、本発明のアゾ化合物について説明する。本発明のアゾ化合物は、光記録媒体用色素として使用することにより、高速記録および1倍速記録の両方に対応可能であり、かつ高速記録時の記録部における再生時の信号波形歪みが小さい光記録媒体光記録媒体を提供することができる。
【0016】
本発明のアゾ化合物は、下記一般式(II)で表されることが好ましい。
【化4】
式(II)中、
Yは置換または未置換のアルキル基を表し、
R1〜R8については前記式(I)と同じである。
【0017】
前記一般式(I)および(II)において、「炭素環」の場合、その環は4〜8員環が好ましく、5〜6員環がより好ましい。前記炭素環の具体例としては、例えば、ベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等がある。「複素環」の場合、5〜6員環が好ましい。前記複素環の具体例としては、例えば、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピペリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラン環、チオピラン環等がある。
【0018】
また、「置換または(もしくは)未置換の」という場合の置換基は、好ましくは、アルキル基(置換される原子団が炭素環または複素環である場合に限る)、アルコキシ基、シアノ基およびハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種類であり、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子および臭素原子のうち少なくとも一種類であり、特に好ましくはフッ素原子である。アルキルスルホニルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状でも分枝状でも良く、それぞれ炭素数が1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。アルコキシアルキル基およびシアノアルキル基は、直鎖状でも分枝状でも良く、それぞれ炭素数が2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。
【0019】
R1とR2、およびR3とR4のうち少なくとも一方が共有結合して環を形成する場合、その環は好ましくは5〜8員環、より好ましくは5〜6員環であり、飽和でも不飽和でも良く、任意の元素を含む。
【0020】
R2とR3が共有結合して環を形成する場合、その環は好ましくは5〜8員環、より好ましくは5員環であり、飽和でも不飽和でも良く、任意の元素を含む。
【0021】
R6とR7、およびR7とR8のうち少なくとも一方が共有結合により一体となって環を形成する場合、その環は好ましくは5〜6員環であり、飽和でも不飽和でも良く、任意の元素を含む。
【0022】
また、本発明のアゾ化合物のうち、下記式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物が特に好ましい。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0023】
本発明のアゾ化合物の合成方法は特に限定されないが、例えば、下記一般式(III)で示されるヒドラジノ化合物を公知の方法により酸化してジアゾニウム塩とし、さらに下記一般式(IV)で示される化合物とカップリング反応させることで得られる。このような合成方法は、例えば、前記特許文献3および4等に記載されている。これら酸化反応およびカップリング反応は、場合により、式(III)および(IV)の両方の化合物を混合し、ワンポットで行なうこともできる。なお、式(III)および(IV)中、XおよびR1〜R8は、前記式(I)および(II)で定義した通りである。
【化11】
【化12】
【0024】
また、本発明のキレート化合物は、本発明のアゾ化合物と金属とを含むキレート化合物である。本発明のアゾ化合物は、金属キレート化合物とすることにより、特に光記録媒体用材料として好ましく使用できる。前記金属は特に限定されないが、例えば、Ni、Zn、Cu、Co、およびPtからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0025】
本発明の金属キレート化合物の合成方法は、本発明のアゾ化合物を用いる以外は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。前記合成方法としては、例えば、本発明のアゾ化合物をメタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン等の有機溶媒に溶かし、そこに金属化合物のメタノール溶液や水溶液を加える方法がある。前記金属化合物としては、例えば、キレート化合物を形成する各種金属の塩を用いることができ、Ni、Zn、Cu、Co、およびPtからなる群から選択される少なくとも一つの金属の塩であることが好ましい。
【0026】
なお、本発明のアゾ化合物およびその金属キレート化合物の用途は光記録媒体用色素に限定されず、様々な用途に使用可能であり、特に、色素として、紙、プラスチック、各種繊維および光学フィルター等、あらゆる素材の着色に好ましく使用できる。
【0027】
(光記録媒体)
次に、本発明の光記録媒体について説明する。
【0028】
本発明の光記録媒体用材料は、前記本発明のキレート化合物を含有する。そして、本発明の光記録媒体は、基板上に、レーザー光による情報の記録および再生のうち少なくとも一方が可能な記録層が形成されている光記録媒体であって、前記記録層が前記本発明の光記録媒体用材料を含有することを特徴とする。この構成を有することにより、本発明の光記録媒体は、高速記録および1倍速記録の両方に対応可能であり、かつ高速記録時の記録部における再生時の信号波形歪みが小さい。
【0029】
前記本発明の光記録媒体において、前記記録層の上に、さらに金属から形成された反射層が形成されていることが好ましい。この場合、前記記録層の上に前記反射層が直接形成されていても良いし、光の透過を阻害しない限り、前記記録層と前記反射層との間にその他の層が存在しても良い。前記反射層を形成する金属は、記録層を透過した光を効率よく反射するものであれば特に限定されないが、例えば、Au、Ag、Cu、Al等の高反射率金属またはそれらを含む合金が好ましい。前記金属は、Agであることが、コスト、反射率、耐久性の点からさらに好ましく、この場合、Ag以外の成分を含んでいても良いが、Agの含有質量が最も多いことが特に好ましい。
【0030】
このような本発明の光記録媒体の製造方法は、本発明の金属キレート化合物を含有する光記録媒体用材料を用いる以外は特に限定されず、公知の方法により製造することができるが、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0031】
すなわち、まず、基板を準備する。この基板は記録に用いるレーザー光に対して透明な材質であれば特に限定されないが、例えば、ガラスや、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂等のプラスチックを用いることができる。これらのうち、ポリカーボネート樹脂がコスト、対吸湿性、射出成形性が良く好ましい。
【0032】
次に、前記基板上に、本発明の金属キレート化合物を含む記録層を形成する。その形成方法は特に限定されないが、例えば、スピンコート法、浸漬法、真空蒸着法、スパッタリング法等を用いることができる。これらのうちスピンコート法が均一な混合状態を容易に作ることが可能であり好ましい。このとき必要に応じて、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリビニルブチラール等のバインダーを配合してもよい。また、求められる記録層の安定性確保のため、分散剤、他の種類の色素、一重項酸素クエンチャーとして他の種類の金属キレート化合物等を適宜混合してもよい。スピンコート法、浸漬法等により記録層を形成する際の溶剤は、特に限定されないが、エチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、シクロヘキサン、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロプロパノール等が比較的安価で適している。
【0033】
さらに、前記記録層の上に反射層を形成する。反射層の材質は特に限定されないが、好ましくは前記の通りである。形成方法も特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等を使用することができる。そして、その上に紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂等の層を形成し、さらにその上にポリカーボネート基板等を接着して本発明の光記録媒体を製造することができる。
【0034】
本発明の光記録媒体の使用方法も特に限定されず、公知の方法により使用することができる。本発明の光記録媒体への記録および再生に用いられるレーザー光は各種のものが使用できるが、記録層の吸光度から中心波長600〜700nmのものが好ましい。また、光源としては、軽量性、取扱いの容易さ、コンパクト性、コスト等の点から半導体レーザー光源が好ましい。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0036】
(測定条件等)
赤外線吸収スペクトル(IR)は、測定しようとする化合物の結晶を臭化カリウム粉末と混合し乳鉢で粉砕後、油圧ポンプで加圧してディスク状に固め、株式会社島津製作所製FTIR−8000PC(商品名)で測定した。
可視・紫外線吸収スペクトル(VIS)は、測定しようとする化合物をクロロホルムに溶解し、10−6〜10−5mol/Lの濃度まで希釈して、石英セルにより試料層の厚さ1cmにして株式会社島津製作所製UV−2500PC(商品名)で測定した。
質量分析(LC−MS)は、THFに溶解した試料をHPLC(株式会社島津製作所製LC−10(商品名)、移動相:THF/メタノール)を通し、MS分析装置(株式会社島津製作所製QP−8000(商品名)、大気圧イオン化法、ポジティブモード)で分析した。
【0037】
(実施例1)
まず、前記構造式(2)で表されるアゾ化合物のニッケルキレート化合物を合成した。すなわち、まず、下記構造式(7)で表される3−ヒドラジノ−6−メチルピリダジン1.2gと下記構造式(8)で示される1−メチル−7−(トリフルオロメタンスルホニルアミノ)−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン2.8gをメタノール15mlに溶解した。これに酢酸5mlおよびヨウ素0.04gを加え、さらに、攪拌しながら、30重量%過酸化水素水2.3gを1時間で滴下した。その後、室温で1時間攪拌し、析出した色素成分を濾取、乾燥した。これをメタノールで洗浄して、前記構造式(2)で表されるアゾ化合物1.2gを得た。
【化13】
【化14】
【0038】
次に、このアゾ化合物1.0gをメタノール10mlの中に仕込み、攪拌しながら酢酸ニッケル四水和物0.28gを加え、昇温して溶媒の還流温度で4時間攪拌した。加熱を止め放冷した後、析出した結晶を濾取し、メタノールで再結晶して、下記構造式(9)で表される目的のニッケルキレート化合物0.42gを得た(LC−MS実測値:885、理論値:885)。このキレート化合物のλmax(クロロホルム中)は583nm(ε=1.3×105)であった。図1にこのキレート化合物のクロロホルム溶液のVISスペクトルを示す。また、図2にこのキレート化合物のIRスペクトルを示す。
【化15】
【0039】
[光記録媒体の作製]
前記式(9)のキレート化合物を用いて光記録媒体を作製した。すなわち、まず、板厚0.6mmのポリカーボネート基板を準備した。次に、前記キレート化合物をテトラフルオルプロパノールに溶解し1重量%溶液とした。これを50℃下で30分間超音波分散した後、0.2μmのフィルターでろ過し、その液をスピンコート(回転数600rpm)により前記ポリカーボネート基板上に塗布して膜を形成し、記録層とした。この記録層上にスパッタリング法により膜厚100nmのAg膜を形成し、反射層とした。さらに、この反射層の上に紫外線硬化樹脂をスピンコートし、板厚0.6mmのポリカーボネート基板を接着して目的の光記録媒体を得た。なお、以下の実施例および比較例においては、用いたアゾ化合物(キレート化合物)が異なる以外は本実施例と同様にして光記録媒体を作製した。
【0040】
(実施例2)
まず、前記構造式(3)で表されるアゾ化合物のニッケルキレート錯体を合成した。すなわち、まず、上記構造式(7)で表される3−ヒドラジノ−6−メチルピリダジン6.8gと下記構造式(10)で示される3−ピロリジル−N−トリフルオロメタンスルホニルアニリン10.8gをメタノール100mlに溶解した。これに酢酸20mlおよびヨウ素0.3gを加え、さらに、攪拌しながら、30%過酸化水素水12gを2時間で滴下した。その後、室温で3時間攪拌し、析出した色素成分を濾取、乾燥した。これをメタノール、アセトンで順次洗浄して、前記構造式(3)で表されるアゾ化合物2.5gを得た。
【化16】
【0041】
次に、このアゾ化合物1.2gをメタノール10mlの中に仕込み、攪拌しながら酢酸ニッケル四水和物0.4gを加え、昇温して溶媒の還流温度で2時間攪拌した。加熱を止め放冷した後、反応液を濾過し、結晶をアセトンで洗浄して、下記構造式(11)で表される目的のニッケルキレート化合物0.4gを得た(LC−MS実測値:885、理論値:885)。このキレート化合物のλmax(クロロホルム中)は574nm(ε=1.3×105)であった。図3にこのキレート化合物のクロロホルム溶液のVISスペクトルを示す。また、図4にこのキレート化合物のIRスペクトルを示す。
【化17】
【0042】
さらに、このキレート化合物を用い前記実施例1と同様の方法により光記録媒体を作製した。
【0043】
(実施例3)
原料のスルホンアミドを1−(ジエチルアミノ)−3−(トリフルオロメタンスルホニルアミノ)ベンゼンに変更する以外は実施例1および2と同様の方法により、前記式(4)で表されるアゾ化合物を合成し、さらに下記構造式(12)で表されるキレート化合物を合成した。LC−MSを測定したところ、分子量は997(理論値:997)、であった。このキレート化合物のλmax(クロロホルム中)は、585nm(ε=1.4×105)、であった。図5に、このキレート化合物のクロロホルム溶液のVISスペクトルを示す。
【化18】
【0044】
また、このキレート化合物を用い、実施例1および2と同様の方法により光記録媒体を作製した。
【0045】
(実施例4)
アゾ化合物として前記構造式(11)で表される化合物および下記構造式(13)で示される既知の化合物を1:1の質量比で混合したものを用いる以外は実施例1〜3と同様の方法により、キレート化合物を合成し、さらに光記録媒体を作製した。
【化19】
【0046】
(比較例1〜3)
アゾ化合物として前記構造式(13)および下記構造式(14)、(15)で表される既知の化合物をそれぞれ用いる以外は前記各実施例と同様の方法により、キレート化合物を合成し、さらに光記録媒体を作製した。
【化20】
【化21】
【0047】
下記表1に、上記実施例1〜4および比較例1〜3のキレート化合物をクロロホルム溶液状態および光記録媒体上の塗布膜(記録層)としたときの光学特性をまとめて示す。
【表1】
【0048】
(光記録媒体の評価)
上記製造方法により作製した実施例1〜4および比較例1〜3の光記録媒体の評価をパルステック工業製評価機(商品名DDU−1000)を用いて行った。記録波長は658nm、再生波長は650nmとした。各光記録媒体は、1倍速と4倍速で記録し、記録パワー、ジッター、および信号波形の歪み率を確認した。表2に、それらの測定結果をまとめて示す。表2において、波形歪み率とは、波形歪みの大きさを示す目安となる数値であり、長信号の記録マーク部を再生したときの信号波形における信号波形の立ち上がり時の信号強度と立ち下がり時の信号強度との比で表している。波形歪み率が1に近いほど波形歪みが小さいと考えられる。
【表2】
【0049】
表2から分かるように、実施例の光記録媒体は1倍速でも4倍速でも実用に十分に耐える記録パワーおよびジッターを示し、かつ、4倍速記録時でも信号波形の歪みはほとんど発生しなかった。これに対し、比較例1、2の光記録媒体は、1倍速ではよいが、4倍速では信号波形の歪みが大きかった。また、比較例3の光記録媒体は1倍速ではよいが、4倍速では記録パワーが高く実用に耐えなかった。
【0050】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の新規アゾ化合物を色素として用いることで、高速記録および1倍速記録の両方に対応可能であり、かつ高速記録時の記録部における再生時の信号波形歪みが小さい光記録媒体を提供することができる。さらに、本発明のアゾ化合物およびその金属キレート化合物の用途は光記録媒体用色素に限定されず、様々な用途に使用可能であり、特に、色素として、紙、プラスチック、各種繊維および光学フィルター等、あらゆる素材の着色に好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のキレート化合物のVISスペクトルを示す図である。
【図2】実施例1のキレート化合物のIRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例2のキレート化合物のVISスペクトルを示す図である。
【図4】実施例2のキレート化合物のIRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例3のキレート化合物のVISスペクトルを示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アゾ化合物およびその金属キレート化合物、ならびにそれを用いた光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
追記型光記録媒体としては、例えば、いわゆるCD−RおよびDVD−R等が実用化されている。これらは、基板上に記録層を配した構造を有し、基板側からレーザー光を照射することにより情報記録を行なう。
【0003】
前記記録層には、一般に有機色素、例えば、アゾ化合物と金属との金属キレート化合物である含金属アゾ系色素や、シアニン系色素、フタロシアニン系色素等が使用されている。前記光記録媒体への情報記録は、照射されたレーザー光を前記色素が吸収して発熱、溶融、分解、蒸発等の熱的変化が生じ、さらに、その熱的変化により、前記色素の変質等の化学的変化や基板の変形等の物理的変化が起こることで行われる。そして、その記録情報の再生は、レーザー光により上記の変化の発生している部分と発生していない部分の反射率差を読み取ることにより行われる。
【0004】
前記色素の性質は光記録媒体に必要とされる諸特性に大きく影響を与えるため、それら諸特性を同時に充足できる色素の開発が活発に行われている(例えば、特許文献1〜4等参照)。
【0005】
特に、最近は、1倍速規格を満足し、高速記録にも対応できる追記型光記録媒体が必要とされており、そのための色素の開発が進められている。これは、CD−RやDVD−Rの高速化が進んでおり、かつ、DVD−Rメディアについてはすでに1倍速記録および4倍速記録が規格化されているためである。しかし、1倍速記録と高速記録を両立するためには様々な課題がある。具体的には以下の通りである。
【0006】
1倍速記録のDVD−R規格には、その記録方法として、信号の長さに合わせて、各信号での標準的な記録パルス幅が規定されている(以下、「記録ストラテジ」と称する)。したがって、1倍速規格を満足し、かつ高速記録に対応するためには、この標準的な記録ストラテジで諸特性を満たすことが必須となる。また、追記型光記録媒体が高速記録に対応するためには、記録パワーを下げることが必要であり、具体的には、より高感度な色素材料を記録層に用いることが重要である。しかしながら、高速記録のために、色素材料の熱分解温度の低下や光学特性の最適化を行い、記録パワーを減少させると、1倍速での最適な記録ストラテジが、規格化された標準的な記録ストラテジから変化してしまう課題がある。
【0007】
さらに、高感度にすると、記録時のレーザー光の照射による記録マークが広がりやすくなる。そのため、高速記録時の記録部は、例えば、記録開始時と記録終了時の光学特性が異なるといった、光学特性の過度の変化が生じやすくなる。このような、光学特性の過度の変化により、記録信号の再生時に信号波形が歪み、エラーレートが上昇するといった課題もある。
【0008】
【特許文献1】
特許第3219037号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−309722号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2001−348501号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平10−81069号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、例えば光記録媒体用色素等の用途に使用可能な新規アゾ化合物を提供することを目的とし、より具体的には、高速記録および1倍速記録の両方に対応可能であり、かつ高速記録時の記録部における再生時の信号波形歪みが小さい光記録媒体に使用できる新規アゾ化合物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明のアゾ化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【化3】
式(I)中、
Xは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、置換もしくは未置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換もしくは未置換のアルカノイルアミノ基、またはアミノ基を表し、
R1は、水素原子であるか、またはR2と共有結合により一体となって環を形成し、
R2は、R1およびR3のうち少なくとも一方と共有結合により一体となって環を形成するか、または、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、およびアルコキシアルキル基のうちいずれかを表し、
R3は、R2およびR4のうち少なくとも一方と共有結合により一体となって環を形成するか、または、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、およびアルコキシアルキル基のうちいずれかを表し、
R4は、R3と共有結合により一体となって環を形成するか、または、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、シアノ基、シアノアルキル基、ニトロ基、およびハロゲン原子のうちいずれかを表し、
R5、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素環、置換もしくは未置換の複素環、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、シアノ基、シアノアルキル基、ニトロ基、またはハロゲン原子を表すか、または、R6とR7、およびR7とR8のうち少なくとも一方が共有結合により一体となって環を形成してもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(アゾ化合物)
まず、本発明のアゾ化合物について説明する。本発明のアゾ化合物は、光記録媒体用色素として使用することにより、高速記録および1倍速記録の両方に対応可能であり、かつ高速記録時の記録部における再生時の信号波形歪みが小さい光記録媒体光記録媒体を提供することができる。
【0016】
本発明のアゾ化合物は、下記一般式(II)で表されることが好ましい。
【化4】
式(II)中、
Yは置換または未置換のアルキル基を表し、
R1〜R8については前記式(I)と同じである。
【0017】
前記一般式(I)および(II)において、「炭素環」の場合、その環は4〜8員環が好ましく、5〜6員環がより好ましい。前記炭素環の具体例としては、例えば、ベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等がある。「複素環」の場合、5〜6員環が好ましい。前記複素環の具体例としては、例えば、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピペリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラン環、チオピラン環等がある。
【0018】
また、「置換または(もしくは)未置換の」という場合の置換基は、好ましくは、アルキル基(置換される原子団が炭素環または複素環である場合に限る)、アルコキシ基、シアノ基およびハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種類であり、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子および臭素原子のうち少なくとも一種類であり、特に好ましくはフッ素原子である。アルキルスルホニルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状でも分枝状でも良く、それぞれ炭素数が1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。アルコキシアルキル基およびシアノアルキル基は、直鎖状でも分枝状でも良く、それぞれ炭素数が2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。
【0019】
R1とR2、およびR3とR4のうち少なくとも一方が共有結合して環を形成する場合、その環は好ましくは5〜8員環、より好ましくは5〜6員環であり、飽和でも不飽和でも良く、任意の元素を含む。
【0020】
R2とR3が共有結合して環を形成する場合、その環は好ましくは5〜8員環、より好ましくは5員環であり、飽和でも不飽和でも良く、任意の元素を含む。
【0021】
R6とR7、およびR7とR8のうち少なくとも一方が共有結合により一体となって環を形成する場合、その環は好ましくは5〜6員環であり、飽和でも不飽和でも良く、任意の元素を含む。
【0022】
また、本発明のアゾ化合物のうち、下記式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物が特に好ましい。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0023】
本発明のアゾ化合物の合成方法は特に限定されないが、例えば、下記一般式(III)で示されるヒドラジノ化合物を公知の方法により酸化してジアゾニウム塩とし、さらに下記一般式(IV)で示される化合物とカップリング反応させることで得られる。このような合成方法は、例えば、前記特許文献3および4等に記載されている。これら酸化反応およびカップリング反応は、場合により、式(III)および(IV)の両方の化合物を混合し、ワンポットで行なうこともできる。なお、式(III)および(IV)中、XおよびR1〜R8は、前記式(I)および(II)で定義した通りである。
【化11】
【化12】
【0024】
また、本発明のキレート化合物は、本発明のアゾ化合物と金属とを含むキレート化合物である。本発明のアゾ化合物は、金属キレート化合物とすることにより、特に光記録媒体用材料として好ましく使用できる。前記金属は特に限定されないが、例えば、Ni、Zn、Cu、Co、およびPtからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0025】
本発明の金属キレート化合物の合成方法は、本発明のアゾ化合物を用いる以外は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。前記合成方法としては、例えば、本発明のアゾ化合物をメタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン等の有機溶媒に溶かし、そこに金属化合物のメタノール溶液や水溶液を加える方法がある。前記金属化合物としては、例えば、キレート化合物を形成する各種金属の塩を用いることができ、Ni、Zn、Cu、Co、およびPtからなる群から選択される少なくとも一つの金属の塩であることが好ましい。
【0026】
なお、本発明のアゾ化合物およびその金属キレート化合物の用途は光記録媒体用色素に限定されず、様々な用途に使用可能であり、特に、色素として、紙、プラスチック、各種繊維および光学フィルター等、あらゆる素材の着色に好ましく使用できる。
【0027】
(光記録媒体)
次に、本発明の光記録媒体について説明する。
【0028】
本発明の光記録媒体用材料は、前記本発明のキレート化合物を含有する。そして、本発明の光記録媒体は、基板上に、レーザー光による情報の記録および再生のうち少なくとも一方が可能な記録層が形成されている光記録媒体であって、前記記録層が前記本発明の光記録媒体用材料を含有することを特徴とする。この構成を有することにより、本発明の光記録媒体は、高速記録および1倍速記録の両方に対応可能であり、かつ高速記録時の記録部における再生時の信号波形歪みが小さい。
【0029】
前記本発明の光記録媒体において、前記記録層の上に、さらに金属から形成された反射層が形成されていることが好ましい。この場合、前記記録層の上に前記反射層が直接形成されていても良いし、光の透過を阻害しない限り、前記記録層と前記反射層との間にその他の層が存在しても良い。前記反射層を形成する金属は、記録層を透過した光を効率よく反射するものであれば特に限定されないが、例えば、Au、Ag、Cu、Al等の高反射率金属またはそれらを含む合金が好ましい。前記金属は、Agであることが、コスト、反射率、耐久性の点からさらに好ましく、この場合、Ag以外の成分を含んでいても良いが、Agの含有質量が最も多いことが特に好ましい。
【0030】
このような本発明の光記録媒体の製造方法は、本発明の金属キレート化合物を含有する光記録媒体用材料を用いる以外は特に限定されず、公知の方法により製造することができるが、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0031】
すなわち、まず、基板を準備する。この基板は記録に用いるレーザー光に対して透明な材質であれば特に限定されないが、例えば、ガラスや、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂等のプラスチックを用いることができる。これらのうち、ポリカーボネート樹脂がコスト、対吸湿性、射出成形性が良く好ましい。
【0032】
次に、前記基板上に、本発明の金属キレート化合物を含む記録層を形成する。その形成方法は特に限定されないが、例えば、スピンコート法、浸漬法、真空蒸着法、スパッタリング法等を用いることができる。これらのうちスピンコート法が均一な混合状態を容易に作ることが可能であり好ましい。このとき必要に応じて、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリビニルブチラール等のバインダーを配合してもよい。また、求められる記録層の安定性確保のため、分散剤、他の種類の色素、一重項酸素クエンチャーとして他の種類の金属キレート化合物等を適宜混合してもよい。スピンコート法、浸漬法等により記録層を形成する際の溶剤は、特に限定されないが、エチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、シクロヘキサン、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロプロパノール等が比較的安価で適している。
【0033】
さらに、前記記録層の上に反射層を形成する。反射層の材質は特に限定されないが、好ましくは前記の通りである。形成方法も特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等を使用することができる。そして、その上に紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂等の層を形成し、さらにその上にポリカーボネート基板等を接着して本発明の光記録媒体を製造することができる。
【0034】
本発明の光記録媒体の使用方法も特に限定されず、公知の方法により使用することができる。本発明の光記録媒体への記録および再生に用いられるレーザー光は各種のものが使用できるが、記録層の吸光度から中心波長600〜700nmのものが好ましい。また、光源としては、軽量性、取扱いの容易さ、コンパクト性、コスト等の点から半導体レーザー光源が好ましい。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0036】
(測定条件等)
赤外線吸収スペクトル(IR)は、測定しようとする化合物の結晶を臭化カリウム粉末と混合し乳鉢で粉砕後、油圧ポンプで加圧してディスク状に固め、株式会社島津製作所製FTIR−8000PC(商品名)で測定した。
可視・紫外線吸収スペクトル(VIS)は、測定しようとする化合物をクロロホルムに溶解し、10−6〜10−5mol/Lの濃度まで希釈して、石英セルにより試料層の厚さ1cmにして株式会社島津製作所製UV−2500PC(商品名)で測定した。
質量分析(LC−MS)は、THFに溶解した試料をHPLC(株式会社島津製作所製LC−10(商品名)、移動相:THF/メタノール)を通し、MS分析装置(株式会社島津製作所製QP−8000(商品名)、大気圧イオン化法、ポジティブモード)で分析した。
【0037】
(実施例1)
まず、前記構造式(2)で表されるアゾ化合物のニッケルキレート化合物を合成した。すなわち、まず、下記構造式(7)で表される3−ヒドラジノ−6−メチルピリダジン1.2gと下記構造式(8)で示される1−メチル−7−(トリフルオロメタンスルホニルアミノ)−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン2.8gをメタノール15mlに溶解した。これに酢酸5mlおよびヨウ素0.04gを加え、さらに、攪拌しながら、30重量%過酸化水素水2.3gを1時間で滴下した。その後、室温で1時間攪拌し、析出した色素成分を濾取、乾燥した。これをメタノールで洗浄して、前記構造式(2)で表されるアゾ化合物1.2gを得た。
【化13】
【化14】
【0038】
次に、このアゾ化合物1.0gをメタノール10mlの中に仕込み、攪拌しながら酢酸ニッケル四水和物0.28gを加え、昇温して溶媒の還流温度で4時間攪拌した。加熱を止め放冷した後、析出した結晶を濾取し、メタノールで再結晶して、下記構造式(9)で表される目的のニッケルキレート化合物0.42gを得た(LC−MS実測値:885、理論値:885)。このキレート化合物のλmax(クロロホルム中)は583nm(ε=1.3×105)であった。図1にこのキレート化合物のクロロホルム溶液のVISスペクトルを示す。また、図2にこのキレート化合物のIRスペクトルを示す。
【化15】
【0039】
[光記録媒体の作製]
前記式(9)のキレート化合物を用いて光記録媒体を作製した。すなわち、まず、板厚0.6mmのポリカーボネート基板を準備した。次に、前記キレート化合物をテトラフルオルプロパノールに溶解し1重量%溶液とした。これを50℃下で30分間超音波分散した後、0.2μmのフィルターでろ過し、その液をスピンコート(回転数600rpm)により前記ポリカーボネート基板上に塗布して膜を形成し、記録層とした。この記録層上にスパッタリング法により膜厚100nmのAg膜を形成し、反射層とした。さらに、この反射層の上に紫外線硬化樹脂をスピンコートし、板厚0.6mmのポリカーボネート基板を接着して目的の光記録媒体を得た。なお、以下の実施例および比較例においては、用いたアゾ化合物(キレート化合物)が異なる以外は本実施例と同様にして光記録媒体を作製した。
【0040】
(実施例2)
まず、前記構造式(3)で表されるアゾ化合物のニッケルキレート錯体を合成した。すなわち、まず、上記構造式(7)で表される3−ヒドラジノ−6−メチルピリダジン6.8gと下記構造式(10)で示される3−ピロリジル−N−トリフルオロメタンスルホニルアニリン10.8gをメタノール100mlに溶解した。これに酢酸20mlおよびヨウ素0.3gを加え、さらに、攪拌しながら、30%過酸化水素水12gを2時間で滴下した。その後、室温で3時間攪拌し、析出した色素成分を濾取、乾燥した。これをメタノール、アセトンで順次洗浄して、前記構造式(3)で表されるアゾ化合物2.5gを得た。
【化16】
【0041】
次に、このアゾ化合物1.2gをメタノール10mlの中に仕込み、攪拌しながら酢酸ニッケル四水和物0.4gを加え、昇温して溶媒の還流温度で2時間攪拌した。加熱を止め放冷した後、反応液を濾過し、結晶をアセトンで洗浄して、下記構造式(11)で表される目的のニッケルキレート化合物0.4gを得た(LC−MS実測値:885、理論値:885)。このキレート化合物のλmax(クロロホルム中)は574nm(ε=1.3×105)であった。図3にこのキレート化合物のクロロホルム溶液のVISスペクトルを示す。また、図4にこのキレート化合物のIRスペクトルを示す。
【化17】
【0042】
さらに、このキレート化合物を用い前記実施例1と同様の方法により光記録媒体を作製した。
【0043】
(実施例3)
原料のスルホンアミドを1−(ジエチルアミノ)−3−(トリフルオロメタンスルホニルアミノ)ベンゼンに変更する以外は実施例1および2と同様の方法により、前記式(4)で表されるアゾ化合物を合成し、さらに下記構造式(12)で表されるキレート化合物を合成した。LC−MSを測定したところ、分子量は997(理論値:997)、であった。このキレート化合物のλmax(クロロホルム中)は、585nm(ε=1.4×105)、であった。図5に、このキレート化合物のクロロホルム溶液のVISスペクトルを示す。
【化18】
【0044】
また、このキレート化合物を用い、実施例1および2と同様の方法により光記録媒体を作製した。
【0045】
(実施例4)
アゾ化合物として前記構造式(11)で表される化合物および下記構造式(13)で示される既知の化合物を1:1の質量比で混合したものを用いる以外は実施例1〜3と同様の方法により、キレート化合物を合成し、さらに光記録媒体を作製した。
【化19】
【0046】
(比較例1〜3)
アゾ化合物として前記構造式(13)および下記構造式(14)、(15)で表される既知の化合物をそれぞれ用いる以外は前記各実施例と同様の方法により、キレート化合物を合成し、さらに光記録媒体を作製した。
【化20】
【化21】
【0047】
下記表1に、上記実施例1〜4および比較例1〜3のキレート化合物をクロロホルム溶液状態および光記録媒体上の塗布膜(記録層)としたときの光学特性をまとめて示す。
【表1】
【0048】
(光記録媒体の評価)
上記製造方法により作製した実施例1〜4および比較例1〜3の光記録媒体の評価をパルステック工業製評価機(商品名DDU−1000)を用いて行った。記録波長は658nm、再生波長は650nmとした。各光記録媒体は、1倍速と4倍速で記録し、記録パワー、ジッター、および信号波形の歪み率を確認した。表2に、それらの測定結果をまとめて示す。表2において、波形歪み率とは、波形歪みの大きさを示す目安となる数値であり、長信号の記録マーク部を再生したときの信号波形における信号波形の立ち上がり時の信号強度と立ち下がり時の信号強度との比で表している。波形歪み率が1に近いほど波形歪みが小さいと考えられる。
【表2】
【0049】
表2から分かるように、実施例の光記録媒体は1倍速でも4倍速でも実用に十分に耐える記録パワーおよびジッターを示し、かつ、4倍速記録時でも信号波形の歪みはほとんど発生しなかった。これに対し、比較例1、2の光記録媒体は、1倍速ではよいが、4倍速では信号波形の歪みが大きかった。また、比較例3の光記録媒体は1倍速ではよいが、4倍速では記録パワーが高く実用に耐えなかった。
【0050】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の新規アゾ化合物を色素として用いることで、高速記録および1倍速記録の両方に対応可能であり、かつ高速記録時の記録部における再生時の信号波形歪みが小さい光記録媒体を提供することができる。さらに、本発明のアゾ化合物およびその金属キレート化合物の用途は光記録媒体用色素に限定されず、様々な用途に使用可能であり、特に、色素として、紙、プラスチック、各種繊維および光学フィルター等、あらゆる素材の着色に好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のキレート化合物のVISスペクトルを示す図である。
【図2】実施例1のキレート化合物のIRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例2のキレート化合物のVISスペクトルを示す図である。
【図4】実施例2のキレート化合物のIRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例3のキレート化合物のVISスペクトルを示す図である。
Claims (9)
- 下記一般式(I)で表されるアゾ化合物。
Xは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、置換もしくは未置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換もしくは未置換のアルカノイルアミノ基、またはアミノ基を表し、
R1は、水素原子であるか、またはR2と共有結合により一体となって環を形成し、
R2は、R1およびR3のうち少なくとも一方と共有結合により一体となって環を形成するか、または、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、およびアルコキシアルキル基のうちいずれかを表し、
R3は、R2およびR4のうち少なくとも一方と共有結合により一体となって環を形成するか、または、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、およびアルコキシアルキル基のうちいずれかを表し、
R4は、R3と共有結合により一体となって環を形成するか、または、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、シアノ基、シアノアルキル基、ニトロ基、およびハロゲン原子のうちいずれかを表し、
R5、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素環、置換もしくは未置換の複素環、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、シアノ基、シアノアルキル基、ニトロ基、またはハロゲン原子を表すか、または、R6とR7、およびR7とR8のうち少なくとも一方が共有結合により一体となって環を形成してもよい。 - 請求項1または2記載のアゾ化合物と金属とを含むキレート化合物。
- 前記金属が、Ni、Zn、Cu、Co、およびPtからなる群から選択される少なくとも1種である請求項3記載のキレート化合物。
- 請求項3または4記載のキレート化合物を含む光記録媒体用材料。
- 基板上に、レーザー光による情報の記録および再生のうち少なくとも一方が可能な記録層が形成されている光記録媒体であって、前記記録層が請求項5記載の光記録媒体用材料を含有することを特徴とする光記録媒体。
- 前記記録層の上に、さらに金属から形成された反射層が形成されている請求項6記載の光記録媒体。
- 前記反射層を形成する金属がAgである請求項7記載の光記録媒体。
- 記録および再生のうち少なくとも一方を中心波長600〜700nmのレーザー光で行なう請求項6〜8のいずれかに記載の光記録媒体。
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