JP2004323377A - 遷移金属錯体、その製造方法、オレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体の製造方法 - Google Patents
遷移金属錯体、その製造方法、オレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】遷移金属錯体およびオレフィン重合用触媒を提供すること。
【解決手段】式(1)
(式中、Mは元素の周期律表の第6族の元素を示し、AおよびA’は同一または相異なり、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素原子数2〜10のアルケニレン基、置換されていてもよい炭素原子数6〜18のフェニレン基、置換されていてもよい炭素原子数10〜20のナフチレン基または置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリレン基であり、Jは元素の周期律表の第16族の元素を示し、Bはアルカリ金属を示す。)
で示される遷移金属錯体およびオレフィン重合用触媒。
【選択図】 なし
【解決手段】式(1)
(式中、Mは元素の周期律表の第6族の元素を示し、AおよびA’は同一または相異なり、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素原子数2〜10のアルケニレン基、置換されていてもよい炭素原子数6〜18のフェニレン基、置換されていてもよい炭素原子数10〜20のナフチレン基または置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリレン基であり、Jは元素の周期律表の第16族の元素を示し、Bはアルカリ金属を示す。)
で示される遷移金属錯体およびオレフィン重合用触媒。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は遷移金属錯体、オレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、少なくとも2個の水酸基を有する有機化合物と遷移金属との反応物を、オレフィン重合体の製造方法に用いる例として、例えば、2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)チタニウムジクロライド(例えば、特許文献1参照。)また、2,2’−(フェニルホスフィド)ビス(3−tert−ブチル−5−メチルフェノキシ)(テトラヒドロフラン)チタニウムジクロライド(例えば、特許文献2参照。)などが報告されている。しかし、これら触媒は、活性が充分ではなく、オレフィン重合体の分子量が低いという問題点があった。
【0003】
【特許文献1】
WO87/02370号公報
【特許文献2】
特開平10−218922号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点に鑑み、優れた活性を有し、高い分子量のオレフィン重合体を製造できる重合用触媒を開発することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために、遷移金属錯体およびオレフィン重合用触媒について鋭意研究を続けてきた。その結果、新規な遷移金属錯体を発見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、式(1)
(式中、Mは元素の周期律表の第6族の元素を示し、AおよびA’は同一または相異なり、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素原子数2〜10のアルケニレン基、置換されていてもよい炭素原子数6〜18のフェニレン基、置換されていてもよい炭素原子数10〜20のナフチレン基または置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリレン基であり、Jは元素の周期律表の第16族の元素を示し、Bはアルカリ金属を示す。)
で示される遷移金属錯体;該遷移金属錯体の製造方法;該遷移金属錯体と、下記化合物(A)を組合わせてなるオレフィン重合用触媒;およびさらに下記化合物(B)を組合わせてなるオレフィン重合用触媒ならびにオレフィン重合体の製造方法を提供するものである。
化合物(A): 下記化合物(A1)〜(A3)のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物
(A1): 式 (E1)a Al(Z)3−a で示される有機アルミニウム化合物、
(A2): 式 {−Al(E2 )−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン、
(A3): 式 (E3) {−Al(E3 )−O−}c Al(E3)2 で示される構造を有する線状のアルミノキサン
(式中、E1 〜E3 は同一または相異なり、炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、Zは同一または相異なり、水素原子またはハロゲン原子を表し、aは1、2または3を、bは2以上の整数を、cは1以上の整数を表す。)
化合物(B): 下記化合物(B1)〜(B3)のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物
(B1): 式 BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物、
(B2): 式 Z+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物、
(B3): 式(L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q4 は同一または相異なり、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素原子数1〜20の炭化水素置換シリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基または炭素原子数2〜20の炭化水素で2置換されたアミノ基を示す。)
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、例えば、
(n2は、1〜10の整数である。)
で示される基が挙げられる。
【0007】
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数2〜10のアルケニレン基としては、例えば、
(n3は、1〜5の整数である。)
で示される基が挙げられる。
【0008】
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数6〜18のフェニレン基としては、例えば、
(n4は、1〜3の整数であり、l1は0〜4の整数である。)
で示される基が挙げられる。
【0009】
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数10〜20のナフチレン基としては、例えば、
(n5は、1または2であり、l2は0〜6の整数である。)
で示される基が挙げられる。
【0010】
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素置換シリレン基としては、例えば、
(n6は、1または2である。)
で示される基が挙げられる。
【0011】
ここで、R9からR16は、同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、または炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基を示す。n2、n3、n4、n5およびn6は、好ましくはそれぞれ1または2である。l1は、好ましくは2であり、l2は、好ましくは2である。
【0012】
R9からR16におけるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0013】
R9からR16における置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基が例示され、さらにこれらの置換基がハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換された基が例示され、その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、トリクロロメチル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。これらのうち、メチル基、エチル基、イソプロピル基、 tert−ブチル基、アミル基等が好ましいものとして例示され、さらに好ましくはtert−ブチル基が挙げられる。
【0014】
R9からR16における置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基が例示される。これらはさらに置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示される。
置換されたアルコキシル基の具体例としては、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、フルオロエトキシ基、ジフルオロエトキシ基、トリフルオロエトキシ基、テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロプロポキシ基、パーフルオロブチルオキシ基、パーフルオロペンチルオキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、パーフルオロデシルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシメトキシ基、ジメチルアミノメトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが例示される。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、 tert−ブトキシ基等が例示される。
【0015】
R9からR16における置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基において、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基等が挙げられる。かかる炭素数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの1置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの2置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの3置換シリル基等が挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、 tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。これらの置換されたシリル基はいずれもその炭化水素基がハロゲン原子、例えば、フッ素原子で置換されたものも例示される。
【0016】
式(1)で示される遷移金属錯体のJは元素周期律表の第16族の元素を示し、具体的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子等が挙げられ、好ましくは硫黄原子だ挙げられる。
【0017】
式(1)で示される遷移金属錯体のBはアルカリ金属を示し、具体的にはリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、好ましくはナトリウム原子が挙げられる。
【0018】
式(1)で示される遷移金属錯体のMは元素周期律表の第6族の元素を示し、具体的にはクロム原子、モリブデン原子、タングステン原子等が挙げられ、好ましくはクロム原子が挙げられる。
【0019】
式(1)で示される遷移金属錯体のより好ましい構造としては、例えば以下に示す式(2)で示されるフェノキシ基を有する遷移金属錯体が挙げられる。
式(2)
(式中、Mは元素の周期律表の第6族の元素を示し、Jは元素の周期律表の第16族の元素を示し、Bはアルカリ金属を示し、R1からR8は、同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、または炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基を示す。)
【0020】
式(2)で示される遷移金属錯体のR1からR8におけるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0021】
式(2)で示される遷移金属錯体のR1からR8における置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基が例示され、さらにこれらの置換基がハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換された基が例示され、その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、トリクロロメチル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。これらのうち、メチル基、エチル基、イソプロピル基、 tert−ブチル基、アミル基等が好ましいものとして例示され、さらに好ましくはtert−ブチル基が挙げられる。
【0022】
式(2)で示される遷移金属錯体のR1からR8における置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基が例示される。これらはさらに置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示される。
置換されたアルコキシル基の具体例としては、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、フルオロエトキシ基、ジフルオロエトキシ基、トリフルオロエトキシ基、テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロプロポキシ基、パーフルオロブチルオキシ基、パーフルオロペンチルオキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、パーフルオロデシルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシメトキシ基、ジメチルアミノメトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが例示される。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、 tert−ブトキシ基等が例示される。
【0023】
式(2)で示される遷移金属錯体のR1からR8における置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基において、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基等が挙げられる。かかる炭素数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの1置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの2置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの3置換シリル基等が挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、 tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。これらの置換されたシリル基はいずれもその炭化水素基がハロゲン原子、例えば、フッ素原子で置換されたものも例示される。
【0024】
式(2)で示される遷移金属錯体のJは元素周期律表の第16族の元素を示し、具体的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子等が挙げられ、好ましくは硫黄原子が挙げられる。
【0025】
式(2)で示される遷移金属錯体のBはアルカリ金属を示し、具体的にはリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、好ましくはナトリウム原子が挙げられる。
【0026】
式(2)で示される遷移金属錯体のMは元素周期律表の第6族の元素を示し、具体的にはクロム原子、モリブデン原子、タングステン原子等が挙げられ、好ましくはクロム原子が挙げられる。
【0027】
かかる式(1)あるいは(2)で示される遷移金属錯体としては、例えば、ナトリウム ビス[チオビスメトキシ]クロメート、ナトリウム ビス[1,1’−チオビスエトキシ]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビスエトキシ]クロメート、ナトリウム ビス[1,1’−チオビスプロポキシ]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビスプロポキシ]クロメート、ナトリウム ビス[3,3’−チオビスプロポキシ]クロメート、ナトリウム ビス[3,3’−チオビスプロピルアルコキシ]クロメート
【0028】
ナトリウム ビス[2,2’−チオビスフェノキシ]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(4−メチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジメチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2―メチル−4−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(4−メトキシフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(3−ブロモフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2−トリメチルシリルフェノキシ)]クロメート
【0029】
カリウム ビス[チオビスメトキシ]クロメート、カリウム ビス[1,1’−チオビスエトキシ]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビスエトキシ]クロメート、カリウムビス[1,1’−チオビスプロポキシ]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビスプロポキシ]クロメート、カリウム ビス[3,3’−チオビスプロポキシ]クロメート、カリウム ビス[3,3’−チオビスプロピルアルコキシ]クロメート
【0030】
カリウム ビス[2,2’−チオビスフェノキシ]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(4−メチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジメチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2―メチル−4−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(4−メトキシフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(3−ブロモフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2−トリメチルシリルフェノキシ)]クロメート
【0031】
リチウム ビス[チオビスメトキシ]クロメート、リチウム ビス[1,1’−チオビスエトキシ]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビスエトキシ]クロメート、リチウム ビス[1,1’−チオビスプロポキシ]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビスプロポキシ]クロメート、リチウム ビス[3,3’−チオビスプロポキシ]クロメート、リチウム ビス[3,3’−チオビスプロピルアルコキシ]クロメート
【0032】
リチウム ビス[2,2’−チオビスフェノキシ]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(4−メチルフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジメチルフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(2―メチル−4−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート、リチウムビス[2,2’−チオビス(2、4−ジ−tertブチルフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(4−メトキシフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(3−ブロモフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(2−トリメチルシリルフェノキシ)]クロメート
などが挙げられ、さらに上記例示化合物において、クロム原子をモリブデン原子またはタングステン原子に変換した化合物、硫黄原子を酸素原子またはセレン原子に変換した化合物などが同様に挙げられる。
【0033】
式(1)で示される遷移金属錯体は、式(3)
(式中、A、A’およびJは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物と塩基とを反応させ、その後式(4)
(式中、Mは元素の周期律表の第6族の元素を示し、X1、X2およびX3は同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、または炭素原子数2〜20の炭化水素で2置換されたアミノ基を示し、Lはエーテル、スルフィド、アミン、ホスフィンまたはオレフィンなどの中性配位子を示し、l’、m’およびn’は独立に0〜2の整数を示す。)
で示される遷移金属化合物を反応させることにより製造される。
【0034】
式(3)で示される化合物におけるA、A’、Jは前記と同じ意味を表す。
【0035】
式(3)で示される化合物のより好ましい構造としては、例えば以下に示す式(5)で示されるフェノキシ基を有する化合物が挙げられる。
式(5)
(式中、Jは元素の周期律表の第16族の元素を示し、R1からR8は、同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、または炭素原子数1〜20の炭化水素置換シリル基を示す。)
【0036】
式(5)で示される化合物におけるR1からR8は、前記と同じ意味を表す。
【0037】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2およびX3で示される置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基が例示され、さらにこれらの置換基がハロゲン原子、アルコキシル基、アリールオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換シリル基で置換された置換基が例示され、その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、トリクロロメチル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。これらのうち、メチル基、エチル基、イソプロピル基、 tert−ブチル基、アミル基等が好ましいものとして例示され、さらに好ましくはtert−ブチル基が挙げられる。
【0038】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2およびX3で示される置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基、ジフェニルメチル基等が例示され、これらの置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、
(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、
(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−ドデシルフェニル)メチル基、(フルオロフェニル)メチル基、(ジフルオロフェニル)メチル基、(ペンタフルオロフェニル)メチル基、(クロロフェニル)メチル基、(メトキシフェニル)メチル基、(フェノキシフェニル)メチル基、(ジメチルアミノフェニル)メチル基、(トリメチルシリルフェニル)メチル基などが例示される。好ましいアラルキル基としてはベンジル基が例示される。
【0039】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
これらの置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、 n−ペンチルフェニル基、 ネオペンチルフェニル基、 n−ヘキシルフェニル基、 n−オクチルフェニル基、 n−デシルフェニル基、 n−ドデシルフェニル基、 n−テトラデシルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基などが例示される。好ましいアリール基としては、フェニル基が例示される。
【0040】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2、X3で示される炭素数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基において、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基等が挙げられる。かかる炭素数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの1置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの2置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの3置換シリル基等が挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、 tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。これらの置換シリル基はいずれもその炭化水素基がハロゲン原子、例えば、フッ素原子で置換されたものがも例示される。
【0041】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基が例示される。これらはさらに置換基で置換されていてもよい、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、フルオロエトキシ基、ジフルオロエトキシ基、トリフルオロエトキシ基、テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロプロポキシ基、パーフルオロブチルオキシ基、パーフルオロペンチルオキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、パーフルオロデシルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシメトキシ基、ジメチルアミノメトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが例示される。好ましい置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、 tert−ブトキシ基等が例示される。
【0042】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基、ジフェニルメトキシ基が例示され、
これらはさらに置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ペンチルフェニル)メトキシ基、(ネオペンチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、(n−ドデシルフェニル)メトキシ基、(フルオロフェニル)メチル基、(ジフルオロフェニル)メチル基、(ペンタフルオロフェニル)メチル基、(クロロフェニル)メチル基、(メトキシフェニル)メチル基、(フェノキシフェニル)メチル基、(ジメチルアミノフェニル)メチル基、(トリメチルシリルフェニル)メチル基などが例示される。好ましいアラルキルオキシ基としてはベンジルオキシ基が例示される。
【0043】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基が挙げられる。
これらはさらに置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換シリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、
2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−テトラデシルフェノキシ基2−フルオロフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、3,5−ジフルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−フェノキシフェノキシ基、4−ジメチルアミノフェノキシ基、4−トリメチルシリルフェノキシ基などが例示される。好ましい置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。
【0044】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される炭素原子数2〜20の炭化水素で2置換されたアミノ基とは、2つの炭化水素基で置換されたアミノ基であって、ここでの炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基等が挙げられる。かかる炭素数1〜20の炭化水素で置換されたアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジ−イソブチルアミノ基、 tert −ブチルイソプロピルアミノ基、 ジ−n−ヘキシルアミノ基、ジ−n−オクチルアミノ基、ジ−n−デシルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられ、好ましくはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が挙げられる。
【0045】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示されるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子が挙げられる。
【0046】
Lで示される中性配位子とは、エーテル、スルフィド、アミン、ホスフィン、オレフィンなどの中性官能基を有する分子を示し、分子内に複数箇所の配位官能基を有していてもよい。
【0047】
かかる中性配位子としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル tert−ブチルエーテル、フラン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシエタン、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチル tert−ブチルスルフィド、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、エチレンジチオール ジメチルスルフィド、エチレンジチオール ジエチルスルフィド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、トリシクロヘキシルアミン、ピリジン、2,2’−ビピリジン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス(ジフェニルホスフィノ)ビナフチル、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、オクテン、オクタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。
【0048】
かかる式(3)あるいは(5)で示される化合物としては、例えば、
ビス(ヒドロキシメチル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシエチル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシプロピル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシプロピル)スルフィド、ビス(3−ヒドロキシプロピル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシイソプロピル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシイソプロピル)スルフィド
【0049】
ビス(3−ヒドロキシプロペニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−1−ブテニル)スルフィド、ビス(3−ヒドロキシ−1−ブテニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−2−ブテニル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシ−2−ブテニル)スルフィド、
【0050】
ビス(2−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−ブチル−5−メチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−5−ブチル−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジブチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−メトキシフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−トリメチルシリルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルフィド、
【0051】
ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシ−2−ナフチル)スルフィド、
【0052】
ビス(ジメチルシラノール)スルフィド、ビス(メチルフェニルシラノール)スルフィド、ビス(ジフェニルシラノール)スルフィド、
【0053】
前記式(4)で示される遷移金属化合物としては、例えば、トリクロロクロミウム、トリクロロクロミウム 3テトラヒドロフラン錯体、トリス(ビス[トリメチルシリル]メチル)クロミウム、ジメシチルクロミウム テトラヒドロフラン錯体、ジメシチルクロミウム 3テトラヒドロフラン錯体、トリメシチルクロミウム テトラヒドロフラン錯体、クロミウム(II) アセチルアセトナート、ビス(トリフルオロアセトキシ)クロミウム、トリス(トリフルオロアセトキシ)クロミウム
【0054】
トリクロロモリブデナム、ペンタクロロモリブデナム、モリブデンアセテート、トリアリルクロロモリブデナム、メシチレントリカルボニルモリブデナム、テトラカルボニル[(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]モリブデナム
【0055】
四塩化タングステン、六塩化タングステン、メシチレンタングステントリカルボニル、テトラベンジルタングステン、テトラメチルタングステン、ペンタメチルタングステン、ベンジルテトラクロロタングステン、フェニルトリクロロタングステン、トリメチルクロロタングステン、トリス(ビス[トリメチルシリル]メチル)タングステンなどが挙げられる。
【0056】
式(3)で示される化合物、塩基と式(4)で示される遷移金属化合物とを反応させることにより、式(1)で示される遷移金属錯体が得られる。
式(3)で示される化合物と式(4)で示される遷移金属化合物のモル比は特に限定されないが、1:0.1から1:10の範囲が好ましく、さらに好ましくは1:0.5から1:2の範囲である。
【0057】
反応に際しては、塩基が用いられる。かかる塩基としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、リチウムトリメチルシリルアセチリド、リチウムアセチリド、トリメチルシリルメチルリチウム、ビニルリチウム、フェニルリチウム、アリルリチウムなどの有機リチウム化合物といった有機アルカリ金属化合物、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウムなどの無機アルカリ金属化合物などが挙げられ、その使用量は式(3)で示される化合物に対して通常0.5〜5モル倍の範囲である。
【0058】
上記反応は通常、反応に対して不活性な溶媒中で行われる。かかる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの極性溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒といった非プロトン性溶媒などが挙げられる。かかる溶媒はそれぞれ単独もしくは2種以上を混合して用いられ、その使用量は式(3)で示される化合物に対して通常1〜200重量倍、好ましくは3〜50重量倍の範囲である。
【0059】
上記反応は通常、溶媒に式(3)で示される化合物に塩基を加えたのち式(4)で示される遷移金属化合物を加えることによって行うことができる。反応温度は通常−100℃以上溶媒の沸点以下、好ましくは−80〜100℃程度の範囲である。
【0060】
得られた反応混合物から通常の方法、例えば生成した沈殿を濾別後、濾液を濃縮して固形物を析出させるなどの手法により、式(1)で示される遷移金属錯体を取得することができる。
【0061】
かくして製造される式(1)で示される遷移金属錯体は、化合物(A)、あるいはさらに化合物(B)を、重合時に任意の順序で仕込み使用することができるが、またそれらの任意の化合物の組合せを予め接触させて得られた反応物を用いることもできる。
【0062】
〔化合物(A)〕
本発明において用いられる化合物(A)としては、公知の有機アルミニウム化合物が使用できる。好ましくは、化合物(A)としては、公知の有機アルミニウム化合物が使用でき、好ましくは、前記化合物(A1)〜(A3)のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(A1): 式 E1 a Al(Z)3−a で示される有機アルミニウム化合物、
(A2): 式 {−Al(E2 )−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン、
(A3): 式 E3 {−Al(E3 )−O−}c Al(E3) 2 で示される構造を有する線状のアルミノキサン
(式中、E1 〜E3 は同一または相異なり、炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、Zは同一または相異なり、水素原子またはハロゲン原子を表し、aは1、2または3で、bは2以上の整数を、cは1以上の整数を表す。)
【0063】
式 E1 a AlZ3−a で示される有機アルミニウム化合物(A1)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジヘキシルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムクロライド;メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、ヘキシルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムジクロライド;ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジヘキシルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド等を例示することができる。好ましくは、トリアルキルアルミニウムであり、より好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが挙げられる。
【0064】
式 {−Al(E2 )−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン(A2)または、式 E3 {−Al(E3 )−O−}c Al(E3) 2 で示される構造を有する線状のアルミノキサン(A3)における、E2 、E3 の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ノルマルペンチル基、ネオペンチル基等のアルキル基を例示することができる。bは2以上の整数であり、cは1以上の整数である。好ましくは、E2またはE3 はメチル基、イソブチル基であり、bは2〜40、cは1〜40である。
【0065】
上記のアルミノキサンは各種の方法で造られる。その方法については特に制限はなく、公知の方法に準じて造ればよい。例えば、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウムなど)を適当な有機溶剤(ベンゼン、脂肪族炭化水素など)に溶かした溶液を水と接触させて造る。また、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウムなど)を結晶水を含んでいる金属塩(例えば、硫酸銅水和物など)に接触させて造る方法が例示できる。
【0066】
〔化合物B〕
本発明において化合物(B)としては、(B1):式BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物、(B2):式Z+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物、(B3):式(L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物を用いる。
【0067】
式 BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物(B1)において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q3 はハロゲン原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、炭素数1〜20個のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20個の炭化水素で置換されたシリル基、炭素数1〜20個のアルコキシ基または炭素数2〜20個の炭化水素で2置換されたアミノ基であり、それらは同じであっても異なっていてもよい。好ましいQ1 〜Q3 はハロゲン原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、炭素数1〜20個のハロゲン化炭化水素基である。
【0068】
(B1)の具体例としては、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等が挙げられるが、好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが挙げられる。
【0069】
式Z+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物(B2)において、Z+ は無機または有機のカチオンであり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q4 は上記の(B1)におけるQ1 〜Q3 と同様のものが挙げられる。
【0070】
式 Z+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表される化合物の具体例としては、無機のカチオンであるZ+ には、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀陽イオンなどが、有機のカチオンであるZ+ には、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。(BQ1 Q2 Q3 Q4 )− としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4ートリフルオロフェニル)ボレート、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0071】
これらの具体的な組み合わせとしては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどを挙げることができるが、好ましくは、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0072】
また、式(L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物(B3)においては、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+ はブレンステッド酸であり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q4 は上記の(B1)におけるQ1 〜Q3 と同様のものが挙げられる。
【0073】
式(L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表される化合物の具体例としては、ブレンステッド酸である(L−H)+ には、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどが挙げられ、(BQ1 Q2 Q3 Q4 )− には、前記と同様のものが挙げられる。
【0074】
これらの具体的な組み合わせとしては、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができるが、好ましくは、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0075】
各触媒成分の使用量は、化合物(A)/遷移金属錯体(1)のモル比が0.1〜10000で、好ましくは5〜2000、化合物(B)/遷移金属錯体(1)のモル比が0.01〜100で、好ましくは0.5〜10の範囲にあるように、各成分を用いることが望ましい。
各触媒成分を溶液状態で使う場合の濃度については、遷移金属錯体(1)が、0.0001〜5ミリモル/リットルで、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットル、化合物(A)が、Al原子換算で、0.01〜500ミリモル/リットルで、好ましくは、0.1〜100ミリモル/リットル、化合物(B)は、B原子換算で0.0001〜5ミリモル/リットルで、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットルの範囲にあるように、各成分を用いることが望ましい。
【0076】
本発明において、重合に使用するモノマーは、炭素原子数2〜20個からなるオレフィン、ジオレフィン等のいずれをも用いることができ、同時に2種類以上のモノマーを用いることもできる。かかるモノマーを以下に例示するが、本発明は下記化合物に限定されるものではない。かかるオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ビニルシクロヘキセン等が例示される。ジオレフィン化合物としては、炭化水素化合物の共役ジエン、非共役ジエンが挙げられ、かかる化合物の具体例としては、非共役ジエン化合物の具体例として、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−シクロオクタジエン、5,8−エンドメチレンヘキサヒドロナフタレン等が例示され、共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等を例示することができる。
共重合体を構成するモノマーの具体例としては、エチレンとプロピレン、エチレンとブテン−1、エチレンとヘキセン−1、プロピレンとブテン−1等、およびそれらにさらに5−エチリデン−2−ノルボルネンを使用する組み合わせ等が例示されるが、本発明は、上記化合物に限定されるものではない。
【0077】
本発明では、モノマーとして芳香族ビニル化合物も用いることができる。芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0078】
重合方法も、特に限定されるべきものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、又はメチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素を溶媒として用いる溶媒重合、又はスラリー重合、ガス状のモノマー中での気相重合等が可能であり、また、連続重合、回分式重合のどちらでも可能である。
【0079】
重合温度は、−50℃〜200℃の範囲をとり得るが、特に、−20℃〜100℃程度の範囲が好ましく、重合圧力は、常圧〜6MPa(60kg/cm2 G)が好ましい。重合時間は、一般的に、目的とするポリマーの種類、反応装置により適宜選定されるが、1分間〜20時間の範囲をとることができる。また、本発明は共重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することもできる。
【0080】
【発明の効果】
本発明により得られる遷移金属錯体を、触媒成分として用いることにより、優れた触媒活性でポリオレフィンを製造することができる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメートの合成
NaH(0.40g、5.00mmol)のテトラヒドロフラン溶液(4.85mL)に、0℃でビス(2―ヒドロキシ−3−tertブチル−5−メチルフェニル)スルフィド(0.717g、2.00mmol)のテトラヒドロフラン溶液(6.46mL)を滴下し、室温で3時間攪拌した。過剰のNaHを濾過することで除去し、濾液にCrCl3(THF)3(0.37g、1.00mmol)のテトラヒドロフラン溶液(4.85mL)を0℃で滴下した。室温で10時間攪拌し溶媒を減圧留去後、トルエン(10.0mL)を加え、不溶物を濾別した濾液を減圧留去することにより、ナトリウムビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメートを黒色固体として686.5mg(86.9%)得た。
MSスペクトル(EI) 787(M+)、764、609、602、408、230、149、91、72
【0082】
《重合》
[実施例2]
オートクレーブに窒素下で、トルエン5.0mLを仕込み、40℃で安定させた後、エチレンを0.60MPaまで加圧し安定させた。ここに、メチルアルミノキサン(100μmol)、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート(0.10μmol)を加え、20分間重合した。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、6.00×105g製造した。
【0083】
[実施例3]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ペンタフルオロフェニルボラン(0.30μmol)を用いた以外は実施例2と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、6.60×106g製造した。
【0084】
[実施例4]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例2と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.30×106g製造した。
【0085】
[実施例5]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例2と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、8.00×105g製造した。
【0086】
[実施例6]
オートクレーブに窒素下で、トルエン5.0mL、1−ヘキセン(0.50μL)を仕込み、40℃で安定させた後、エチレンを0.60MPaまで加圧し安定させた。ここに、メチルアルミノキサン(100μmol)、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート(0.10μmol)を加え、20分間重合した。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、4.00×105g製造した。
【0087】
[実施例7]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ペンタフルオロフェニルボラン(0.30μmol)を用いた以外は実施例6と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=5.38×104、分子量分布(Mw/Mn)=1.7、融点(Tm)=129.7℃であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、8.10×106g製造した。
【0088】
[実施例8]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例6と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=4.93×105、分子量分布(Mw/Mn)=4.5、融点(Tm)=111.1℃、Me分岐が1000炭素あたり11であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.00×106g製造した。
【0089】
[実施例9]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例6と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=5.65×105、分子量分布(Mw/Mn)=2.5、融点(Tm)=118.9℃、Me分岐が1000炭素あたり4であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、9.00×105g製造した。
【0090】
[実施例10]
オートクレーブに窒素下で、トルエン5.0mL、1−ヘキセン(50μL)を仕込み、70℃で安定させた後、エチレンを0.60MPaまで加圧し安定させた。ここに、メチルアルミノキサン(100μmol)、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート(0.10μmol)を加え、20分間重合した。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、4.00×105g製造した。
【0091】
[実施例11]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ペンタフルオロフェニルボラン(0.30μmol)を用いた以外は実施例10と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=1.30×104、分子量分布(Mw/Mn)=1.6、融点(Tm)=129.2℃、Me分岐が1000炭素あたり8であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.40×106g製造した。
【0092】
[実施例12]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例10と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=1.80×104、分子量分布(Mw/Mn)=1.9、融点(Tm)=130.7℃、Me分岐が1000炭素あたり6であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、2.00×106g製造した。
【0093】
[実施例13]
オートクレーブに窒素下で、トルエン5.0mL、1−ヘキセン(50μL)を仕込み、130℃で安定させた後、エチレンを0.60MPaまで加圧し安定させた。ここに、メチルアルミノキサン(100μmol)、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート(0.10μmol)を加え、20分間重合した。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.00×105g製造した。
【0094】
[実施例14]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ペンタフルオロフェニルボラン(0.30μmol)を用いた以外は実施例13と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.00×105g製造した。
【0095】
[実施例15]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例13と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、2.00×105g製造した。
【発明の属する技術分野】
本発明は遷移金属錯体、オレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、少なくとも2個の水酸基を有する有機化合物と遷移金属との反応物を、オレフィン重合体の製造方法に用いる例として、例えば、2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)チタニウムジクロライド(例えば、特許文献1参照。)また、2,2’−(フェニルホスフィド)ビス(3−tert−ブチル−5−メチルフェノキシ)(テトラヒドロフラン)チタニウムジクロライド(例えば、特許文献2参照。)などが報告されている。しかし、これら触媒は、活性が充分ではなく、オレフィン重合体の分子量が低いという問題点があった。
【0003】
【特許文献1】
WO87/02370号公報
【特許文献2】
特開平10−218922号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点に鑑み、優れた活性を有し、高い分子量のオレフィン重合体を製造できる重合用触媒を開発することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために、遷移金属錯体およびオレフィン重合用触媒について鋭意研究を続けてきた。その結果、新規な遷移金属錯体を発見し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、式(1)
(式中、Mは元素の周期律表の第6族の元素を示し、AおよびA’は同一または相異なり、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素原子数2〜10のアルケニレン基、置換されていてもよい炭素原子数6〜18のフェニレン基、置換されていてもよい炭素原子数10〜20のナフチレン基または置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリレン基であり、Jは元素の周期律表の第16族の元素を示し、Bはアルカリ金属を示す。)
で示される遷移金属錯体;該遷移金属錯体の製造方法;該遷移金属錯体と、下記化合物(A)を組合わせてなるオレフィン重合用触媒;およびさらに下記化合物(B)を組合わせてなるオレフィン重合用触媒ならびにオレフィン重合体の製造方法を提供するものである。
化合物(A): 下記化合物(A1)〜(A3)のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物
(A1): 式 (E1)a Al(Z)3−a で示される有機アルミニウム化合物、
(A2): 式 {−Al(E2 )−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン、
(A3): 式 (E3) {−Al(E3 )−O−}c Al(E3)2 で示される構造を有する線状のアルミノキサン
(式中、E1 〜E3 は同一または相異なり、炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、Zは同一または相異なり、水素原子またはハロゲン原子を表し、aは1、2または3を、bは2以上の整数を、cは1以上の整数を表す。)
化合物(B): 下記化合物(B1)〜(B3)のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物
(B1): 式 BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物、
(B2): 式 Z+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物、
(B3): 式(L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q4 は同一または相異なり、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素原子数1〜20の炭化水素置換シリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基または炭素原子数2〜20の炭化水素で2置換されたアミノ基を示す。)
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、例えば、
(n2は、1〜10の整数である。)
で示される基が挙げられる。
【0007】
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数2〜10のアルケニレン基としては、例えば、
(n3は、1〜5の整数である。)
で示される基が挙げられる。
【0008】
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数6〜18のフェニレン基としては、例えば、
(n4は、1〜3の整数であり、l1は0〜4の整数である。)
で示される基が挙げられる。
【0009】
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数10〜20のナフチレン基としては、例えば、
(n5は、1または2であり、l2は0〜6の整数である。)
で示される基が挙げられる。
【0010】
式(1)で示される遷移金属錯体のA、A’で示される置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素置換シリレン基としては、例えば、
(n6は、1または2である。)
で示される基が挙げられる。
【0011】
ここで、R9からR16は、同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、または炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基を示す。n2、n3、n4、n5およびn6は、好ましくはそれぞれ1または2である。l1は、好ましくは2であり、l2は、好ましくは2である。
【0012】
R9からR16におけるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0013】
R9からR16における置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基が例示され、さらにこれらの置換基がハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換された基が例示され、その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、トリクロロメチル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。これらのうち、メチル基、エチル基、イソプロピル基、 tert−ブチル基、アミル基等が好ましいものとして例示され、さらに好ましくはtert−ブチル基が挙げられる。
【0014】
R9からR16における置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基が例示される。これらはさらに置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示される。
置換されたアルコキシル基の具体例としては、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、フルオロエトキシ基、ジフルオロエトキシ基、トリフルオロエトキシ基、テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロプロポキシ基、パーフルオロブチルオキシ基、パーフルオロペンチルオキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、パーフルオロデシルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシメトキシ基、ジメチルアミノメトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが例示される。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、 tert−ブトキシ基等が例示される。
【0015】
R9からR16における置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基において、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基等が挙げられる。かかる炭素数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの1置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの2置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの3置換シリル基等が挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、 tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。これらの置換されたシリル基はいずれもその炭化水素基がハロゲン原子、例えば、フッ素原子で置換されたものも例示される。
【0016】
式(1)で示される遷移金属錯体のJは元素周期律表の第16族の元素を示し、具体的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子等が挙げられ、好ましくは硫黄原子だ挙げられる。
【0017】
式(1)で示される遷移金属錯体のBはアルカリ金属を示し、具体的にはリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、好ましくはナトリウム原子が挙げられる。
【0018】
式(1)で示される遷移金属錯体のMは元素周期律表の第6族の元素を示し、具体的にはクロム原子、モリブデン原子、タングステン原子等が挙げられ、好ましくはクロム原子が挙げられる。
【0019】
式(1)で示される遷移金属錯体のより好ましい構造としては、例えば以下に示す式(2)で示されるフェノキシ基を有する遷移金属錯体が挙げられる。
式(2)
(式中、Mは元素の周期律表の第6族の元素を示し、Jは元素の周期律表の第16族の元素を示し、Bはアルカリ金属を示し、R1からR8は、同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、または炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基を示す。)
【0020】
式(2)で示される遷移金属錯体のR1からR8におけるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0021】
式(2)で示される遷移金属錯体のR1からR8における置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基が例示され、さらにこれらの置換基がハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換された基が例示され、その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、トリクロロメチル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。これらのうち、メチル基、エチル基、イソプロピル基、 tert−ブチル基、アミル基等が好ましいものとして例示され、さらに好ましくはtert−ブチル基が挙げられる。
【0022】
式(2)で示される遷移金属錯体のR1からR8における置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基が例示される。これらはさらに置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示される。
置換されたアルコキシル基の具体例としては、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、フルオロエトキシ基、ジフルオロエトキシ基、トリフルオロエトキシ基、テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロプロポキシ基、パーフルオロブチルオキシ基、パーフルオロペンチルオキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、パーフルオロデシルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシメトキシ基、ジメチルアミノメトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが例示される。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、 tert−ブトキシ基等が例示される。
【0023】
式(2)で示される遷移金属錯体のR1からR8における置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基において、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基等が挙げられる。かかる炭素数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの1置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの2置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの3置換シリル基等が挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、 tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。これらの置換されたシリル基はいずれもその炭化水素基がハロゲン原子、例えば、フッ素原子で置換されたものも例示される。
【0024】
式(2)で示される遷移金属錯体のJは元素周期律表の第16族の元素を示し、具体的には酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子等が挙げられ、好ましくは硫黄原子が挙げられる。
【0025】
式(2)で示される遷移金属錯体のBはアルカリ金属を示し、具体的にはリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、好ましくはナトリウム原子が挙げられる。
【0026】
式(2)で示される遷移金属錯体のMは元素周期律表の第6族の元素を示し、具体的にはクロム原子、モリブデン原子、タングステン原子等が挙げられ、好ましくはクロム原子が挙げられる。
【0027】
かかる式(1)あるいは(2)で示される遷移金属錯体としては、例えば、ナトリウム ビス[チオビスメトキシ]クロメート、ナトリウム ビス[1,1’−チオビスエトキシ]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビスエトキシ]クロメート、ナトリウム ビス[1,1’−チオビスプロポキシ]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビスプロポキシ]クロメート、ナトリウム ビス[3,3’−チオビスプロポキシ]クロメート、ナトリウム ビス[3,3’−チオビスプロピルアルコキシ]クロメート
【0028】
ナトリウム ビス[2,2’−チオビスフェノキシ]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(4−メチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジメチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2―メチル−4−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(4−メトキシフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(3−ブロモフェノキシ)]クロメート、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(2−トリメチルシリルフェノキシ)]クロメート
【0029】
カリウム ビス[チオビスメトキシ]クロメート、カリウム ビス[1,1’−チオビスエトキシ]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビスエトキシ]クロメート、カリウムビス[1,1’−チオビスプロポキシ]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビスプロポキシ]クロメート、カリウム ビス[3,3’−チオビスプロポキシ]クロメート、カリウム ビス[3,3’−チオビスプロピルアルコキシ]クロメート
【0030】
カリウム ビス[2,2’−チオビスフェノキシ]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(4−メチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジメチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2―メチル−4−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(4−メトキシフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(3−ブロモフェノキシ)]クロメート、カリウム ビス[2,2’−チオビス(2−トリメチルシリルフェノキシ)]クロメート
【0031】
リチウム ビス[チオビスメトキシ]クロメート、リチウム ビス[1,1’−チオビスエトキシ]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビスエトキシ]クロメート、リチウム ビス[1,1’−チオビスプロポキシ]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビスプロポキシ]クロメート、リチウム ビス[3,3’−チオビスプロポキシ]クロメート、リチウム ビス[3,3’−チオビスプロピルアルコキシ]クロメート
【0032】
リチウム ビス[2,2’−チオビスフェノキシ]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(4−メチルフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(2、4−ジメチルフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(2―メチル−4−tert−ブチルフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート、リチウムビス[2,2’−チオビス(2、4−ジ−tertブチルフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(4−メトキシフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(3−ブロモフェノキシ)]クロメート、リチウム ビス[2,2’−チオビス(2−トリメチルシリルフェノキシ)]クロメート
などが挙げられ、さらに上記例示化合物において、クロム原子をモリブデン原子またはタングステン原子に変換した化合物、硫黄原子を酸素原子またはセレン原子に変換した化合物などが同様に挙げられる。
【0033】
式(1)で示される遷移金属錯体は、式(3)
(式中、A、A’およびJは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物と塩基とを反応させ、その後式(4)
(式中、Mは元素の周期律表の第6族の元素を示し、X1、X2およびX3は同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、または炭素原子数2〜20の炭化水素で2置換されたアミノ基を示し、Lはエーテル、スルフィド、アミン、ホスフィンまたはオレフィンなどの中性配位子を示し、l’、m’およびn’は独立に0〜2の整数を示す。)
で示される遷移金属化合物を反応させることにより製造される。
【0034】
式(3)で示される化合物におけるA、A’、Jは前記と同じ意味を表す。
【0035】
式(3)で示される化合物のより好ましい構造としては、例えば以下に示す式(5)で示されるフェノキシ基を有する化合物が挙げられる。
式(5)
(式中、Jは元素の周期律表の第16族の元素を示し、R1からR8は、同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、または炭素原子数1〜20の炭化水素置換シリル基を示す。)
【0036】
式(5)で示される化合物におけるR1からR8は、前記と同じ意味を表す。
【0037】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2およびX3で示される置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基が例示され、さらにこれらの置換基がハロゲン原子、アルコキシル基、アリールオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換シリル基で置換された置換基が例示され、その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、トリクロロメチル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。これらのうち、メチル基、エチル基、イソプロピル基、 tert−ブチル基、アミル基等が好ましいものとして例示され、さらに好ましくはtert−ブチル基が挙げられる。
【0038】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2およびX3で示される置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基、ジフェニルメチル基等が例示され、これらの置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、
(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、
(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−ドデシルフェニル)メチル基、(フルオロフェニル)メチル基、(ジフルオロフェニル)メチル基、(ペンタフルオロフェニル)メチル基、(クロロフェニル)メチル基、(メトキシフェニル)メチル基、(フェノキシフェニル)メチル基、(ジメチルアミノフェニル)メチル基、(トリメチルシリルフェニル)メチル基などが例示される。好ましいアラルキル基としてはベンジル基が例示される。
【0039】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
これらの置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、 n−ペンチルフェニル基、 ネオペンチルフェニル基、 n−ヘキシルフェニル基、 n−オクチルフェニル基、 n−デシルフェニル基、 n−ドデシルフェニル基、 n−テトラデシルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基などが例示される。好ましいアリール基としては、フェニル基が例示される。
【0040】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2、X3で示される炭素数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基において、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基等が挙げられる。かかる炭素数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの1置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの2置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの3置換シリル基等が挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、 tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。これらの置換シリル基はいずれもその炭化水素基がハロゲン原子、例えば、フッ素原子で置換されたものがも例示される。
【0041】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基が例示される。これらはさらに置換基で置換されていてもよい、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、フルオロエトキシ基、ジフルオロエトキシ基、トリフルオロエトキシ基、テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロプロポキシ基、パーフルオロブチルオキシ基、パーフルオロペンチルオキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、パーフルオロデシルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシメトキシ基、ジメチルアミノメトキシ基、トリメチルシリルメトキシ基などが例示される。好ましい置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、 tert−ブトキシ基等が例示される。
【0042】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基、ジフェニルメトキシ基が例示され、
これらはさらに置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素で置換されたアミノ基、炭化水素で置換されたシリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ペンチルフェニル)メトキシ基、(ネオペンチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、(n−ドデシルフェニル)メトキシ基、(フルオロフェニル)メチル基、(ジフルオロフェニル)メチル基、(ペンタフルオロフェニル)メチル基、(クロロフェニル)メチル基、(メトキシフェニル)メチル基、(フェノキシフェニル)メチル基、(ジメチルアミノフェニル)メチル基、(トリメチルシリルフェニル)メチル基などが例示される。好ましいアラルキルオキシ基としてはベンジルオキシ基が例示される。
【0043】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基が挙げられる。
これらはさらに置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換シリル基で置換されたものが例示され、その具体例としては、
2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−テトラデシルフェノキシ基2−フルオロフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、3,5−ジフルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−フェノキシフェノキシ基、4−ジメチルアミノフェノキシ基、4−トリメチルシリルフェノキシ基などが例示される。好ましい置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。
【0044】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示される炭素原子数2〜20の炭化水素で2置換されたアミノ基とは、2つの炭化水素基で置換されたアミノ基であって、ここでの炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基 、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基等が挙げられる。かかる炭素数1〜20の炭化水素で置換されたアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジ−イソブチルアミノ基、 tert −ブチルイソプロピルアミノ基、 ジ−n−ヘキシルアミノ基、ジ−n−オクチルアミノ基、ジ−n−デシルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられ、好ましくはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が挙げられる。
【0045】
式(4)で示される遷移金属化合物におけるX1、X2またはX3で示されるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子が挙げられる。
【0046】
Lで示される中性配位子とは、エーテル、スルフィド、アミン、ホスフィン、オレフィンなどの中性官能基を有する分子を示し、分子内に複数箇所の配位官能基を有していてもよい。
【0047】
かかる中性配位子としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル tert−ブチルエーテル、フラン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシエタン、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチル tert−ブチルスルフィド、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、エチレンジチオール ジメチルスルフィド、エチレンジチオール ジエチルスルフィド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、トリシクロヘキシルアミン、ピリジン、2,2’−ビピリジン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス(ジフェニルホスフィノ)ビナフチル、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、オクテン、オクタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。
【0048】
かかる式(3)あるいは(5)で示される化合物としては、例えば、
ビス(ヒドロキシメチル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシエチル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシプロピル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシプロピル)スルフィド、ビス(3−ヒドロキシプロピル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシイソプロピル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシイソプロピル)スルフィド
【0049】
ビス(3−ヒドロキシプロペニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−1−ブテニル)スルフィド、ビス(3−ヒドロキシ−1−ブテニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−2−ブテニル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシ−2−ブテニル)スルフィド、
【0050】
ビス(2−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−ブチル−5−メチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−5−ブチル−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジブチルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−メトキシフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3−トリメチルシリルフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)スルフィド、
【0051】
ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)スルフィド、ビス(1−ヒドロキシ−2−ナフチル)スルフィド、
【0052】
ビス(ジメチルシラノール)スルフィド、ビス(メチルフェニルシラノール)スルフィド、ビス(ジフェニルシラノール)スルフィド、
【0053】
前記式(4)で示される遷移金属化合物としては、例えば、トリクロロクロミウム、トリクロロクロミウム 3テトラヒドロフラン錯体、トリス(ビス[トリメチルシリル]メチル)クロミウム、ジメシチルクロミウム テトラヒドロフラン錯体、ジメシチルクロミウム 3テトラヒドロフラン錯体、トリメシチルクロミウム テトラヒドロフラン錯体、クロミウム(II) アセチルアセトナート、ビス(トリフルオロアセトキシ)クロミウム、トリス(トリフルオロアセトキシ)クロミウム
【0054】
トリクロロモリブデナム、ペンタクロロモリブデナム、モリブデンアセテート、トリアリルクロロモリブデナム、メシチレントリカルボニルモリブデナム、テトラカルボニル[(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]モリブデナム
【0055】
四塩化タングステン、六塩化タングステン、メシチレンタングステントリカルボニル、テトラベンジルタングステン、テトラメチルタングステン、ペンタメチルタングステン、ベンジルテトラクロロタングステン、フェニルトリクロロタングステン、トリメチルクロロタングステン、トリス(ビス[トリメチルシリル]メチル)タングステンなどが挙げられる。
【0056】
式(3)で示される化合物、塩基と式(4)で示される遷移金属化合物とを反応させることにより、式(1)で示される遷移金属錯体が得られる。
式(3)で示される化合物と式(4)で示される遷移金属化合物のモル比は特に限定されないが、1:0.1から1:10の範囲が好ましく、さらに好ましくは1:0.5から1:2の範囲である。
【0057】
反応に際しては、塩基が用いられる。かかる塩基としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、リチウムトリメチルシリルアセチリド、リチウムアセチリド、トリメチルシリルメチルリチウム、ビニルリチウム、フェニルリチウム、アリルリチウムなどの有機リチウム化合物といった有機アルカリ金属化合物、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウムなどの無機アルカリ金属化合物などが挙げられ、その使用量は式(3)で示される化合物に対して通常0.5〜5モル倍の範囲である。
【0058】
上記反応は通常、反応に対して不活性な溶媒中で行われる。かかる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの極性溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒といった非プロトン性溶媒などが挙げられる。かかる溶媒はそれぞれ単独もしくは2種以上を混合して用いられ、その使用量は式(3)で示される化合物に対して通常1〜200重量倍、好ましくは3〜50重量倍の範囲である。
【0059】
上記反応は通常、溶媒に式(3)で示される化合物に塩基を加えたのち式(4)で示される遷移金属化合物を加えることによって行うことができる。反応温度は通常−100℃以上溶媒の沸点以下、好ましくは−80〜100℃程度の範囲である。
【0060】
得られた反応混合物から通常の方法、例えば生成した沈殿を濾別後、濾液を濃縮して固形物を析出させるなどの手法により、式(1)で示される遷移金属錯体を取得することができる。
【0061】
かくして製造される式(1)で示される遷移金属錯体は、化合物(A)、あるいはさらに化合物(B)を、重合時に任意の順序で仕込み使用することができるが、またそれらの任意の化合物の組合せを予め接触させて得られた反応物を用いることもできる。
【0062】
〔化合物(A)〕
本発明において用いられる化合物(A)としては、公知の有機アルミニウム化合物が使用できる。好ましくは、化合物(A)としては、公知の有機アルミニウム化合物が使用でき、好ましくは、前記化合物(A1)〜(A3)のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(A1): 式 E1 a Al(Z)3−a で示される有機アルミニウム化合物、
(A2): 式 {−Al(E2 )−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン、
(A3): 式 E3 {−Al(E3 )−O−}c Al(E3) 2 で示される構造を有する線状のアルミノキサン
(式中、E1 〜E3 は同一または相異なり、炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、Zは同一または相異なり、水素原子またはハロゲン原子を表し、aは1、2または3で、bは2以上の整数を、cは1以上の整数を表す。)
【0063】
式 E1 a AlZ3−a で示される有機アルミニウム化合物(A1)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジヘキシルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムクロライド;メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、ヘキシルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムジクロライド;ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジヘキシルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド等を例示することができる。好ましくは、トリアルキルアルミニウムであり、より好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが挙げられる。
【0064】
式 {−Al(E2 )−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン(A2)または、式 E3 {−Al(E3 )−O−}c Al(E3) 2 で示される構造を有する線状のアルミノキサン(A3)における、E2 、E3 の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ノルマルペンチル基、ネオペンチル基等のアルキル基を例示することができる。bは2以上の整数であり、cは1以上の整数である。好ましくは、E2またはE3 はメチル基、イソブチル基であり、bは2〜40、cは1〜40である。
【0065】
上記のアルミノキサンは各種の方法で造られる。その方法については特に制限はなく、公知の方法に準じて造ればよい。例えば、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウムなど)を適当な有機溶剤(ベンゼン、脂肪族炭化水素など)に溶かした溶液を水と接触させて造る。また、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウムなど)を結晶水を含んでいる金属塩(例えば、硫酸銅水和物など)に接触させて造る方法が例示できる。
【0066】
〔化合物B〕
本発明において化合物(B)としては、(B1):式BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物、(B2):式Z+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物、(B3):式(L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物を用いる。
【0067】
式 BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物(B1)において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q3 はハロゲン原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、炭素数1〜20個のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20個の炭化水素で置換されたシリル基、炭素数1〜20個のアルコキシ基または炭素数2〜20個の炭化水素で2置換されたアミノ基であり、それらは同じであっても異なっていてもよい。好ましいQ1 〜Q3 はハロゲン原子、炭素数1〜20個の炭化水素基、炭素数1〜20個のハロゲン化炭化水素基である。
【0068】
(B1)の具体例としては、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等が挙げられるが、好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが挙げられる。
【0069】
式Z+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物(B2)において、Z+ は無機または有機のカチオンであり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q4 は上記の(B1)におけるQ1 〜Q3 と同様のものが挙げられる。
【0070】
式 Z+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表される化合物の具体例としては、無機のカチオンであるZ+ には、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀陽イオンなどが、有機のカチオンであるZ+ には、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。(BQ1 Q2 Q3 Q4 )− としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4ートリフルオロフェニル)ボレート、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0071】
これらの具体的な組み合わせとしては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどを挙げることができるが、好ましくは、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0072】
また、式(L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物(B3)においては、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+ はブレンステッド酸であり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q4 は上記の(B1)におけるQ1 〜Q3 と同様のものが挙げられる。
【0073】
式(L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表される化合物の具体例としては、ブレンステッド酸である(L−H)+ には、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどが挙げられ、(BQ1 Q2 Q3 Q4 )− には、前記と同様のものが挙げられる。
【0074】
これらの具体的な組み合わせとしては、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができるが、好ましくは、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0075】
各触媒成分の使用量は、化合物(A)/遷移金属錯体(1)のモル比が0.1〜10000で、好ましくは5〜2000、化合物(B)/遷移金属錯体(1)のモル比が0.01〜100で、好ましくは0.5〜10の範囲にあるように、各成分を用いることが望ましい。
各触媒成分を溶液状態で使う場合の濃度については、遷移金属錯体(1)が、0.0001〜5ミリモル/リットルで、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットル、化合物(A)が、Al原子換算で、0.01〜500ミリモル/リットルで、好ましくは、0.1〜100ミリモル/リットル、化合物(B)は、B原子換算で0.0001〜5ミリモル/リットルで、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットルの範囲にあるように、各成分を用いることが望ましい。
【0076】
本発明において、重合に使用するモノマーは、炭素原子数2〜20個からなるオレフィン、ジオレフィン等のいずれをも用いることができ、同時に2種類以上のモノマーを用いることもできる。かかるモノマーを以下に例示するが、本発明は下記化合物に限定されるものではない。かかるオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ビニルシクロヘキセン等が例示される。ジオレフィン化合物としては、炭化水素化合物の共役ジエン、非共役ジエンが挙げられ、かかる化合物の具体例としては、非共役ジエン化合物の具体例として、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−シクロオクタジエン、5,8−エンドメチレンヘキサヒドロナフタレン等が例示され、共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等を例示することができる。
共重合体を構成するモノマーの具体例としては、エチレンとプロピレン、エチレンとブテン−1、エチレンとヘキセン−1、プロピレンとブテン−1等、およびそれらにさらに5−エチリデン−2−ノルボルネンを使用する組み合わせ等が例示されるが、本発明は、上記化合物に限定されるものではない。
【0077】
本発明では、モノマーとして芳香族ビニル化合物も用いることができる。芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0078】
重合方法も、特に限定されるべきものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、又はメチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素を溶媒として用いる溶媒重合、又はスラリー重合、ガス状のモノマー中での気相重合等が可能であり、また、連続重合、回分式重合のどちらでも可能である。
【0079】
重合温度は、−50℃〜200℃の範囲をとり得るが、特に、−20℃〜100℃程度の範囲が好ましく、重合圧力は、常圧〜6MPa(60kg/cm2 G)が好ましい。重合時間は、一般的に、目的とするポリマーの種類、反応装置により適宜選定されるが、1分間〜20時間の範囲をとることができる。また、本発明は共重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することもできる。
【0080】
【発明の効果】
本発明により得られる遷移金属錯体を、触媒成分として用いることにより、優れた触媒活性でポリオレフィンを製造することができる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメートの合成
NaH(0.40g、5.00mmol)のテトラヒドロフラン溶液(4.85mL)に、0℃でビス(2―ヒドロキシ−3−tertブチル−5−メチルフェニル)スルフィド(0.717g、2.00mmol)のテトラヒドロフラン溶液(6.46mL)を滴下し、室温で3時間攪拌した。過剰のNaHを濾過することで除去し、濾液にCrCl3(THF)3(0.37g、1.00mmol)のテトラヒドロフラン溶液(4.85mL)を0℃で滴下した。室温で10時間攪拌し溶媒を減圧留去後、トルエン(10.0mL)を加え、不溶物を濾別した濾液を減圧留去することにより、ナトリウムビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメートを黒色固体として686.5mg(86.9%)得た。
MSスペクトル(EI) 787(M+)、764、609、602、408、230、149、91、72
【0082】
《重合》
[実施例2]
オートクレーブに窒素下で、トルエン5.0mLを仕込み、40℃で安定させた後、エチレンを0.60MPaまで加圧し安定させた。ここに、メチルアルミノキサン(100μmol)、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート(0.10μmol)を加え、20分間重合した。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、6.00×105g製造した。
【0083】
[実施例3]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ペンタフルオロフェニルボラン(0.30μmol)を用いた以外は実施例2と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、6.60×106g製造した。
【0084】
[実施例4]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例2と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.30×106g製造した。
【0085】
[実施例5]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例2と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、8.00×105g製造した。
【0086】
[実施例6]
オートクレーブに窒素下で、トルエン5.0mL、1−ヘキセン(0.50μL)を仕込み、40℃で安定させた後、エチレンを0.60MPaまで加圧し安定させた。ここに、メチルアルミノキサン(100μmol)、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート(0.10μmol)を加え、20分間重合した。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、4.00×105g製造した。
【0087】
[実施例7]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ペンタフルオロフェニルボラン(0.30μmol)を用いた以外は実施例6と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=5.38×104、分子量分布(Mw/Mn)=1.7、融点(Tm)=129.7℃であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、8.10×106g製造した。
【0088】
[実施例8]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例6と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=4.93×105、分子量分布(Mw/Mn)=4.5、融点(Tm)=111.1℃、Me分岐が1000炭素あたり11であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.00×106g製造した。
【0089】
[実施例9]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例6と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=5.65×105、分子量分布(Mw/Mn)=2.5、融点(Tm)=118.9℃、Me分岐が1000炭素あたり4であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、9.00×105g製造した。
【0090】
[実施例10]
オートクレーブに窒素下で、トルエン5.0mL、1−ヘキセン(50μL)を仕込み、70℃で安定させた後、エチレンを0.60MPaまで加圧し安定させた。ここに、メチルアルミノキサン(100μmol)、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート(0.10μmol)を加え、20分間重合した。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、4.00×105g製造した。
【0091】
[実施例11]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ペンタフルオロフェニルボラン(0.30μmol)を用いた以外は実施例10と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=1.30×104、分子量分布(Mw/Mn)=1.6、融点(Tm)=129.2℃、Me分岐が1000炭素あたり8であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.40×106g製造した。
【0092】
[実施例12]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例10と同様に重合を行った。重合の結果、分子量(Mw)=1.80×104、分子量分布(Mw/Mn)=1.9、融点(Tm)=130.7℃、Me分岐が1000炭素あたり6であるポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、2.00×106g製造した。
【0093】
[実施例13]
オートクレーブに窒素下で、トルエン5.0mL、1−ヘキセン(50μL)を仕込み、130℃で安定させた後、エチレンを0.60MPaまで加圧し安定させた。ここに、メチルアルミノキサン(100μmol)、ナトリウム ビス[2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)]クロメート(0.10μmol)を加え、20分間重合した。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.00×105g製造した。
【0094】
[実施例14]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、ペンタフルオロフェニルボラン(0.30μmol)を用いた以外は実施例13と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、1.00×105g製造した。
【0095】
[実施例15]
メチルアルミノキサンの代わりに、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(40μL、1.0M、関東化学)、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(0.30μmol)を用いた以外は実施例13と同様に重合を行った。重合の結果、ポリマーをクロミウム1mol当たり、1時間当たり、2.00×105g製造した。
Claims (13)
- Jが、酸素、硫黄、セレンもしくはテルル原子である請求項1または2に記載の遷移金属錯体。
- Jが、硫黄原子である請求項1から3のいずれかに記載の遷移金属錯体。
- Mがクロム原子である請求項1から4のいずれかに記載の遷移金属錯体。
- Bがリチウム、ナトリウムまたはカリウム原子である請求項1から5のいずれかに記載の遷移金属錯体。
- Bがナトリウム原子である請求項1から6のいずれかに記載の遷移金属錯体。
- 式(3)
(式中、A、A’およびJは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物と塩基とを反応させ、その後式(4)
(式中、Mは元素の周期律表の第6族の元素を示し、X1、X2およびX3は同一または相異なり、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルコキシル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、または炭素原子数2〜20の炭化水素で2置換されたアミノ基を示し、Lは中性配位子を示し、l’、m’およびn’は独立に0〜2の整数を示す。)
で示される遷移金属化合物を反応させることを特徴とする請求項1に記載の遷移金属錯体の製造方法。 - 式(3)で示される化合物と式(4)で示される遷移金属化合物とのモル比が、1:0.1から1:10である請求項8または9に記載の製造方法。
- 請求項1から7のいずれかに記載の遷移金属錯体および下記化合物(A)を組合わせてなることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
化合物(A): 下記化合物(A1)〜(A3)のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物
(A1): 式 (E1)a Al(Z)3−a で示される有機アルミニウム化合物、
(A2): 式 {−Al(E2 )−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン、
(A3): 式 (E3) {−Al(E3 )−O−}c Al(E3)2 で示される構造を有する線状のアルミノキサン
(式中、E1 〜E3 は同一または相異なり、炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、Zは同一または相異なり、水素原子またはハロゲン原子を表し、aは1、2または3を、bは2以上の整数を、cは1以上の整数を表す。) - 請求項1から7のいずれかに記載の遷移金属錯体と上記化合物(A)および下記化合物(B)を組合わせてなることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
化合物(B): 下記化合物(B1)〜(B3)のいずれか、あるいはそれらの2種以上の混合物
(B1): 式 BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物、
(B2): 式 Z+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物、
(B3): 式(L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )− で表されるホウ素化合物(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q4 は同一または相異なり、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基または炭素原子数2〜20の炭化水素で2置換されたアミノ基を示す。) - 請求項11および12のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒を用いることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
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