JP2004322808A - ステア・バイ・ワイヤ式操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明では、操舵開始時における消費電力を低減することができるSBW式操舵装置の実現を課題とする。
【解決手段】ステア・バイ・ワイヤ式操舵装置Mは、ハンドル1と、ハンドル1とは機械的に切り離され、ハンドル1の操作量に応じてタイヤTiを転舵させる転舵機構4とを有している。そして、ハンドル1には操舵反力を与える反力アクチュエータとしてビスカスカップリング2と、このビスカスカップリング2を制駆動する反力モータ3とが設けられている。
【選択図】 図1
【解決手段】ステア・バイ・ワイヤ式操舵装置Mは、ハンドル1と、ハンドル1とは機械的に切り離され、ハンドル1の操作量に応じてタイヤTiを転舵させる転舵機構4とを有している。そして、ハンドル1には操舵反力を与える反力アクチュエータとしてビスカスカップリング2と、このビスカスカップリング2を制駆動する反力モータ3とが設けられている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアリングギヤボックス(転舵機構)と操作子とが直接連結されていないステア・バイ・ワイヤ式操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の転舵輪を転舵する運転操作装置として、従来から有るハンドルを操作子とするステアリングシステムが知られている。このステアリングシステムでは、ハンドルの回転運動がステアリングギヤボックスにおいてラック軸の直線運動に変換され、ラック軸に連結されたリンク機構を駆動させることで転舵輪を転舵するものである。
【0003】
このような従来の運転操作装置においては、ハンドルと転舵機構とが機械的に連結されていることから、車室内でのハンドルの配設位置が限定され、車室内部のレイアウトの自由度が制限されるという問題があり、また、機械的な連結を実現するために設ける連結部材が、車両の軽量化の実現を阻害するという問題があった。
【0004】
このような問題を解消するため、ハンドルを転舵機構と機械的に連結せずに、転舵機構に転舵用のアクチュエータを配し、このアクチュエータを、ハンドルの操作方向及び操舵角の検出結果に基づいて電気的に制御して、転舵機構にハンドルの操舵角に見合う転舵角を加えて、ハンドルの操作に応じた転舵を行わせる構成としたいわゆるステア・バイ・ワイヤ(Steer By Wire 、以後SBWで表す)方式が用いられるようになっている(特許文献1参照。)。
【0005】
以上のようなSBW方式の操舵装置は、前記した問題を解消し得るという利点に加えて、ハンドルの操舵角と転舵アクチュエータの動作量との対応関係が機械的な制約を受けずに設定できることから、車速の高低、旋回程度、加減速の有無等、自動車の走行状態に応じた操舵特性の変更に柔軟に対応でき、設計自由度が向上するという利点を有している。なお、転舵機構に転舵力を加える転舵アクチュエータとしては、走行状態に応じた転舵特性の変更制御の容易性を考慮して、一般的に、電動モータが用いられる。
【0006】
このようなSBW方式の操舵装置では、操作子であるハンドルは転舵機構に機械的に連結されていないため、機械的にハンドルと転舵機構とが連結された従来の構造と比べ、その操舵に違和感を与えるという問題があった。この問題を解決するため、従来では反力モータによりハンドルに反力を与えるようにしている(たとえば、特許文献2参照。)。そして、このように反力モータでハンドルに反力を与えることで、ハンドルと転舵機構とがあたかも機械的に連結されているかのような感覚で転舵操作を行うことが可能となっている。
【0007】
【特許文献1】
特開平1−233170号公報(第3〜5頁、第2図)
【特許文献2】
特開平10−194152号公報(第3〜8頁、第1図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のSBW方式の操舵装置では、反力モータでハンドル反力をすべて発生させていたため、ハンドルを操舵した瞬間から、操舵機構内の反力モータと、ステアリングギヤボックスに設置された操舵モータとが同時に電力を消費するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、操舵開始時における消費電力を低減することができるSBW式操舵装置の実現を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するため、本発明は、運転者に操作される車両の操作子と、前記操作子とは機械的に切り離され、前記操作子の操作量に応じて転舵輪を転舵させる転舵機構とを有するステア・バイ・ワイヤ式操舵装置において、前記操作子には操舵反力を与える反力アクチュエータが備えられ、この反力アクチュエータはビスカスカップリングと、前記ビスカスカップリングを制駆動する反力モータとを有することを特徴とする。
【0011】
ここで、「ビスカスカップリング」とは、液体(流体)の粘性を利用したトルク伝達機構であり、たとえば複数のプレートを有するインナーシャフトと前記複数のプレート間に配設される複数のプレートを有するアウターハウジングとの間に液体を封入させた機構などをいう。
【0012】
本発明によれば、操作子の操舵開始時には、ビスカスカップリングの粘性によって操作子に所定の反力を与えることができるので、操舵開始から常に反力モータで反力を与える必要がなくなり、操作開始時における消費電力を低減することができる。さらに、ビスカスカップリングを用いたことによって、油圧によりハンドル反力を与えるような従来の油圧パワステの構造に比べ、液体をポンプで循環させる必要がないため、燃費性能の向上に大きく貢献する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態にかかるステア・バイ・ワイヤ(SBW)式操舵装置について添付図面を参照して詳細に説明する。参照する図面において、図1は本実施形態に係るSBW式操舵装置の概略構成図、図2はSBW式操舵装置の操作側機構を示す断面図である。また、図3は図2の操作側機構の一部を拡大して示す拡大断面図、図4はSBW式操舵装置のビスカスカップリングの詳細を示す拡大断面図である。さらに、図5はSBW式操舵装置のストッパー機構の詳細を示す拡大断面図、図6はSBW式操舵装置の制御を行うECUとこれに接続される周辺機器を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、SBW式操舵装置Mは、運転者が車両を操作するためのハンドル(操作子)1と、このハンドル1に操舵反力を与える反力アクチュエータであるビスカスカップリング2および反力モータ3と、ハンドル1とは機械的に切り離されて配設される転舵機構4とを主に有している。そして、このSBW式操舵装置Mでは、ハンドル1の操作量が電気信号として転舵機構4に送信されることで、この転舵機構4がハンドル1の操作量に応じてタイヤ(転舵輪)Ti,Tiを転舵させている。
【0015】
次に、SBW式操舵装置Mの操作側の機構について図2および図3を参照して詳細に説明する。
図2に示すように、操作側機構PMは、ハンドル1(図1参照)に連結される第一シャフトS1と、この第一シャフトS1に同軸に連結される第二シャフトS2と、第一シャフトS1の一部を覆うコラムハウジングH1と、三つの部材で構成されて第二シャフトS2を覆うハウジングH2とを主に有している。第一シャフトS1とコラムハウジングH1との間には、ハンドル1の微小操舵時の振動(ガタ感)を抑えるために、弾性部材であるフリクションラバーRが設けられている。
【0016】
図3に示すように、ハウジングH2内には、第一シャフトS1側から順にトルクセンサTs、ビスカスカップリング2、ストッパー機構5、およびハンドル回転角度センサHsが主に設けられている。ここで、トルクセンサTsは、ハンドル1の操舵に応じて第二シャフトS2に加わるトルクを検出するものであり、また、ハンドル回転角度センサHsは、ハンドル1の操舵に応じた回転角度を検出するものである。なお、ハンドル回転角度センサHsとしては、たとえばレゾルバやエンコーダなどが用いられるが、本発明はこれに限定されず、どのようなものを用いてもよい。
【0017】
ビスカスカップリング2は、図4に示すように、インプットシャフト21、内側プレート22、外側プレート23、およびアウトプットハウジング24を主に備えている。インプットシャフト21は、その内周面に形成されたキー溝21aが第二シャフトS2の外周面に形成されたキー(図示せず)に係合することにより、第二シャフトS2に回転不能な状態で取り付けられている。また、このインプットシャフト21の外周面には、略リング状に形成された内側プレート22が所定の間隔をおいて複数接合されている。
【0018】
アウトプットハウジング24は、ベアリングBeなどによってインプットシャフト21に回転可能な状態で取り付けられており、その内周面に略リング状に形成された外側プレート23が前記複数の内側プレート22の間に配置されるように接合されている。そして、アウトプットハウジング24とインプットシャフト21との間には、内側プレート22および外側プレート23を収納するための空間Aが形成されており、この空間Aには所定の粘性をもつオイルが封入されている。なお、このビスカスカップリング2の機械特性は、以下のようになっている。
T=C・Δω
(T:伝達トルク、C:粘性係数、Δω:インプットシャフト21とアウトプットハウジング24との回転角速度差)
そして、このような特性を利用することで、ハンドル1の操舵開始時にインプットシャフト21とアウトプットハウジング24との回転角速度差Δωが発生して、ハンドル1に反力として伝達トルクTが与えられることとなる。なお、粘性係数Cは、ハンドル1の操舵開始時などの通常操舵時における好ましい伝達トルクTを予め設定しておくとともに、そのときの回転角速度差Δωを実験により取得することなどによって、これらの値に基づいて適正な値に設定しておく。
【0019】
また、アウトプットハウジング24の一端面24aには、その外周面に歯W11を有するウォームホイールW1がボルトBoにより締結されている。そして、このウォームホイールW1には、図3に示すように、その回転方向とは異なる回転方向で回転するウォームギヤW2が噛合するとともに、このウォームギヤW2にはこれと同軸に配設される反力モータ3が連結されている。なお、ウォームホイールW1とウォームギヤW2とのギヤ比はウォームホイールW1側からは回転されず、反力モータ3からのみ回転可能なセルフロックギヤ比になっている。
【0020】
反力モータ3は、ウォームギヤW2およびウォームホイールW1を介してビスカスカップリング2の制駆動(制動または駆動)を行うものであり、後記するECU6により適宜制御されている。また、ウォームギヤW2の同軸上には、モータ回転位置センサMs(図6参照)が設けられている。なお、このモータ回転位置センサMsとしては、たとえばホールIC、レゾルバ、またはエンコーダなどが用いられるが、本発明はこれに限定されず、どのようなものを用いてもよい。
【0021】
そして、このようにビスカスカップリング2に反力モータ3を連結させることで、たとえばハンドル1(インプットシャフト21)の回転方向とは反対方向にアウトプットハウジング24を反力モータ3で回転させた場合にはトルク(ハンドル反力)が増大し、ハンドル1と同じ方向に回転させた場合にはトルクが減少することとなる。また、ハンドル1を所定の角度で停止(保舵)させる場合には、それまでのハンドルの回転方向とは反対方向に、反力モータ3で反力を調整しながらアウトプットハウジング24を回転させることによってトルク(保舵力)を発生させる。さらに、その後ハンドル1を戻す場合には、ハンドル1の中立位置までハンドル1を自動的に戻すセルフアライニングトルクに相当する戻しトルクが、反力モータ3からビスカスカップリング2やシャフトS1,S2を介してハンドル1に伝達されることとなる。
【0022】
図3に示すように、ストッパー機構5は、第一ギヤ51、第二ギヤ52、ストッパーボルト53、右回転用ストッパープレート18、および左回転用ストッパープレート19(図5参照)を主に備えている。第一ギヤ51は、その内周面に形成されたキーが第二シャフトS2の外周面に形成されたキー溝に係合することにより第二シャフトS2に回転不能な状態で取り付けられている。また、この第一ギヤ51には、第二ギヤ52が噛み合っている。
【0023】
ストッパーボルト53は、第二ギヤ52の両面を貫通するように第二ギヤ52の適所に取り付けられている。また、図5に示すように、右回転用ストッパープレート18は、第二ギヤ52の一端面52a側に配置されるように、ハウジングH2に固定され、左回転用ストッパープレート19は、第二ギヤ52の他端面52b(図3参照)側に配置されるように、ハウジングH2に固定されている。そして、これらのストッパープレート18,19には、ストッパーボルト53が当接する箇所に弾性部材であるクッションラバーCRが設けられており、これによりストッパーボルト53の当接時の衝撃を吸収している。
【0024】
また、図6に示すように、ECU(電子制御装置)6は、操舵制御機構センサPs、転舵アクチュエータセンサ7、操舵力変更スイッチSn、およびヨーレートセンサYsから出力される信号を受信し、これらの信号を選択的に利用して反力モータ3や、転舵機構4内に設けられる転舵アシストモータ41または転舵モータ42を適宜制御するものである。ここで、操舵制御機構センサPsは操作側機構PM(図2参照)側のセンサ群であり、転舵アクチュエータセンサ7は転舵機構4(図1参照)側のセンサ群である。そして、操舵制御機構センサPsでは、トルクセンサTsにより検出される操舵トルク、ハンドル回転角度センサHsにより検出されるハンドル回転角、またはモータ回転位置センサMsにより検出される反力モータ3の回転方向における位置を示す信号をECU6に出力している。
【0025】
また、転舵アクチュエータセンサ7では、車速センサ71によって検出される車速、転舵アシストモータ41の電流値72、転舵アシストモータ41の電圧値73、トルクセンサ74で検出される路面からの反力に対応するセルフアライニングトルク、回転角度センサ75で検出される転舵モータ42の回転位置、ポテンショメータ76で検出されるタイヤTiの転舵角に対応するラック軸の変位を示す信号をECU6に出力している。
【0026】
ECU6は操舵側のトルクセンサTsとハンドル回転角度センサHsから運転者の操舵要求を検知し、転舵側の回転角度センサ75、ポテンショメータ76からタイヤTiの転舵の状況を検知し、さらに、車速、旋回の程度、加減速の程度、自動車の走行状態、路面の状態等に応じて転舵特性を柔軟に可変しながら反力モータ3、転舵モータ42、転舵アシストモータ41を制御する。ここで転舵モータ42は主としてハンドル1の回転角度にしたがってタイヤTiを転舵させ、転舵アシストモータ41は主としてハンドル1からの操舵トルクにしたがって転舵モータ42によるタイヤTiの転舵をアシストするものである。
【0027】
ECU6はまた、運転者が操舵を開始したと判断した場合には、反力モータ3を停止して、ビスカスカップリング2の粘性によって発生するトルクのみをハンドル反力とする。なお、運転者が操舵力変更スイッチSnを用いて反力モータ3を停止するように指示しても良い。
【0028】
次に、本実施形態のSBW式操舵装置Mを操作したときの作用について説明する。
図2に示すように運転者がハンドル1(図1参照)の操舵を開始すると、まず、操舵トルクが第一シャフトS1に伝達され、続いてトルクセンサTsに伝達され、さらには第二シャフトS2にも伝達される。このとき、第二シャフトS2の操舵角はハンドル回転角度センサHsで検出され、操舵トルクはトルクセンサTsで検出される。ハンドル回転角度センサHs、トルクセンサTsの検出値は、図6に示すECU6に出力され、ECU6はこれらの信号に基づいて転舵アシストモータ41または転舵モータ42や、反力モータ3を制御する。そして、この操舵開始時においては、ECU6から反力モータ3には、制御信号が出力されず、反力モータ3が停止した状態となっている。
【0029】
このように反力モータ3が停止した状態では、前記したセルフロックギヤ比で形成されたウォームホイールW1とウォームギヤW2が回転不能となるため、ビスカスカップリング2のアウトプットハウジング24も回転しない。これにより、ビスカスカップリング2中のオイルによる粘性抵抗がそのままハンドル1への反力となり、運転者が所定の反力を受けた状態でハンドル操作を行うこととなる。言い換えると、第二シャフトS2が受けたトルクは、ビスカスカップリング2とウォームホイールW1を介してウォームギヤW2に伝達されるが、このウォームギヤW2はウォームホイールW1側からは回転させることができないので、このトルクがそのままハンドル反力として運転者に与えられることとなる。
【0030】
なお、このときトルクセンサTsからの信号に基づいて、運転者へ与える反力が小さいとECU6が判断した場合には、このECU6により反力モータ3を駆動させ、アウトプットハウジング24をインプットシャフト21の回転方向とは逆方向に回転させる。このように反力モータ3を駆動させると、アウトプットハウジング24とインプットシャフト21との間の回転角速度差Δωが大きくなるため、前記の式より伝達トルクT、すなわちハンドル1に与えられる反力が大きくなる。
【0031】
このように、回転角速度差Δωを反力モータ3を用いて変化させ、伝達トルクTに当たるハンドル反力を変化させることにより、ハンドル1に加わる反力が調整されるとともに、運転者のハンドル操作がアシストされることとなる。すなわち、ハンドル1(インプットシャフト21)の回転方向とは反対方向にアウトプットハウジング24を反力モータ3で回転させた場合は、ハンドル反力が増大し、ハンドル1の回転方向と同じ方向にアウトプットハウジング24を反力モータ3で回転させた場合はハンドル反力が減少することとなる。
【0032】
具体的には、ECU6が大きなハンドル反力を運転者に与える必要があると判断した場合には、より早い速度で反力モータ3を回転させて、回転角速度差Δωを大きくすることにより、より大きなハンドル反力を発生させる。また、車庫入れなどの低速運転時にハンドル反力を小さくしたいとECU6が判断した場合には、アウトプットハウジング24をハンドル1の操舵方向と同じ方向に回転するように、反力モータ3に指令を出すことによってハンドル反力が小さくなる。さらに、運転者が意図的に操舵トルク(操舵力)を重くしたいと考えたときや、軽くしたいと考えた場合には、操舵力変更スイッチSn(図6参照)を切り替えることで、ECU6が判断して条件を変更することができる。
【0033】
また、ハンドル1を操作停止の保舵状態にした場合には、それまでのハンドル1の回転方向とは逆方向にアウトプットハウジング24を回転させることによって保舵力に当たるトルクを発生させる。具体的には、運転者が操舵を停止して保舵状態になったとECU6が判断した場合、転舵アクチュエータセンサ7の各センサ71〜76の情報、操舵制御機構センサPsの各センサTs,Hs,Msの情報、および車体のヨーレートセンサYs(設置されていない場合は除く)の情報から、最適なハンドル反力値を計算し、反力モータ3へ作動指令を送る。このとき反力モータ3は、いままでハンドル1が回転していた方向とは反対の方向に、ビスカスカップリング2のアウトプットハウジング24を回転させることにより、運転者の操作に対してハンドル反力を与える。なお、このハンドル1の保舵時においては、反力モータ3からのトルクはビスカスカップリング2内のオイルを介してインプットシャフト21に伝達されるので、反力モータ3は回転し続けた状態となっている。
【0034】
そして、その後、ハンドル1の戻し操作をした場合には、中立位置までハンドル1を戻すセルフアライニングトルクに相当する戻しトルクを反力モータ3がアウトプットハウジング24を介してインプットシャフト21に伝達する。すなわち、運転者がハンドル1を戻す操作を始めた場合には、転舵側のトルクセンサ74で検出したセルフアライニングトルクによる路面からの反力値を基準にしてハンドル1に与える反力をECU6が判断し、そのハンドル反力を反力モータ3に指示してハンドル1が中立位置に戻るまで回転させる。
【0035】
また、ハンドル1を所定の角度以上回転させようとした場合、第二シャフトS2に連動して回転していた第二ギヤ52の回転は、ストッパーボルト53と右回転用ストッパープレート18または左回転用ストッパープレート19とが当接することで止められる。これにより、ハンドル1の回転が規制されることとなる。
【0036】
以上によれば、本実施形態において、次のような効果を得ることができる。
ハンドル1の操舵開始時には、反力モータ3を停止させ、ビスカスカップリング2からの粘性抵抗のみを操舵反力として得るので、反力モータ3が常に働いている状況をなくして、電力の消費を抑えることができる。また、ハンドル1の保舵時において反力モータ3が回転し続けるので、従来において反力モータを回転させない状態でトルクを発生させるために大型化する必要があった反力モータを小型化(軽量化)することができる。さらに、反力モータ3が故障したような場合でも、ビスカスカップリング2によって操舵反力を与えることができる。また、ビスカスカップリングを用いたことによって、油圧によりハンドル反力を与えるような従来の油圧パワステの構造に比べ、液体をポンプで循環させる必要がないため、燃費性能の向上に大きく貢献する。
【0037】
以上、本発明を実施の形態にそって説明したが、本発明はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな対応を採り得ることは勿論である。
ストッパー機構5は、本実施形態のような構造に限らず、たとえば、図7に示すような構造であってもよい。すなわち、第二シャフトS2の径方向外側に向かってその一部81が突出するストッパー部材8を第二シャフトS2に回転不能な状態で取り付け、その一部81にストッパーボルト53を取り付け、このストッパーボルト53をハウジングH2の一部を突出させて形成したストッパー部H21に当接させるような構造にしてもよい。この構造によれば、ハンドル1の右回転および左回転がストッパー部H21の大きさに応じて180度以内で規制されることとなる。
【0038】
本実施形態では、ビスカスカップリング2と反力モータ3とがウォームホイールW1およびウォームギヤW2を介して連結されているが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、ビスカスカップリングに対して反力モータを同軸に、かつその外周を覆うように配設して、ビスカスカップリングのアウトプットハウジングを反力モータで回転させる構造であってもよい。ただし、この場合も、ビスカスカップリング2側から反力モータ3を回転させることがないようにする必要がある。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、ハンドルに操舵反力を与える反力アクチュエータを、ビスカスカップリングと反力モータで構成したので、通常の操舵時は反力をビスカスカップリングからの反力だけにすることができ、反力モータに常に電気を供給しておく必要がなくなるので電力消費を低減することができる。さらに、ビスカスカップリングを用いたことによって、油圧によりハンドル反力を与えるような従来の油圧パワステの構造に比べ、液体をポンプで循環させる必要がないため、燃費性能の向上に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係るSBW式操舵装置の操舵反力発生機構の概略構成図である。
【図2】SBW式操舵装置の操作側機構を示す断面図である。
【図3】図2の操作側機構の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】SBW式操舵装置のビスカスカップリングの詳細を示す拡大断面図である。
【図5】SBW式操舵装置のストッパー機構の詳細を示す拡大断面図である。
【図6】SBW式操舵装置の制御を行うECUとこれに接続される周辺機器を示すブロック図である。
【図7】ストッパー機構の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
M SBW式操舵装置
1 ハンドル(操作子)
2 ビスカスカップリング(反力アクチュエータ)
3 反力モータ(反力アクチュエータ)
4 転舵機構
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアリングギヤボックス(転舵機構)と操作子とが直接連結されていないステア・バイ・ワイヤ式操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の転舵輪を転舵する運転操作装置として、従来から有るハンドルを操作子とするステアリングシステムが知られている。このステアリングシステムでは、ハンドルの回転運動がステアリングギヤボックスにおいてラック軸の直線運動に変換され、ラック軸に連結されたリンク機構を駆動させることで転舵輪を転舵するものである。
【0003】
このような従来の運転操作装置においては、ハンドルと転舵機構とが機械的に連結されていることから、車室内でのハンドルの配設位置が限定され、車室内部のレイアウトの自由度が制限されるという問題があり、また、機械的な連結を実現するために設ける連結部材が、車両の軽量化の実現を阻害するという問題があった。
【0004】
このような問題を解消するため、ハンドルを転舵機構と機械的に連結せずに、転舵機構に転舵用のアクチュエータを配し、このアクチュエータを、ハンドルの操作方向及び操舵角の検出結果に基づいて電気的に制御して、転舵機構にハンドルの操舵角に見合う転舵角を加えて、ハンドルの操作に応じた転舵を行わせる構成としたいわゆるステア・バイ・ワイヤ(Steer By Wire 、以後SBWで表す)方式が用いられるようになっている(特許文献1参照。)。
【0005】
以上のようなSBW方式の操舵装置は、前記した問題を解消し得るという利点に加えて、ハンドルの操舵角と転舵アクチュエータの動作量との対応関係が機械的な制約を受けずに設定できることから、車速の高低、旋回程度、加減速の有無等、自動車の走行状態に応じた操舵特性の変更に柔軟に対応でき、設計自由度が向上するという利点を有している。なお、転舵機構に転舵力を加える転舵アクチュエータとしては、走行状態に応じた転舵特性の変更制御の容易性を考慮して、一般的に、電動モータが用いられる。
【0006】
このようなSBW方式の操舵装置では、操作子であるハンドルは転舵機構に機械的に連結されていないため、機械的にハンドルと転舵機構とが連結された従来の構造と比べ、その操舵に違和感を与えるという問題があった。この問題を解決するため、従来では反力モータによりハンドルに反力を与えるようにしている(たとえば、特許文献2参照。)。そして、このように反力モータでハンドルに反力を与えることで、ハンドルと転舵機構とがあたかも機械的に連結されているかのような感覚で転舵操作を行うことが可能となっている。
【0007】
【特許文献1】
特開平1−233170号公報(第3〜5頁、第2図)
【特許文献2】
特開平10−194152号公報(第3〜8頁、第1図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のSBW方式の操舵装置では、反力モータでハンドル反力をすべて発生させていたため、ハンドルを操舵した瞬間から、操舵機構内の反力モータと、ステアリングギヤボックスに設置された操舵モータとが同時に電力を消費するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、操舵開始時における消費電力を低減することができるSBW式操舵装置の実現を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するため、本発明は、運転者に操作される車両の操作子と、前記操作子とは機械的に切り離され、前記操作子の操作量に応じて転舵輪を転舵させる転舵機構とを有するステア・バイ・ワイヤ式操舵装置において、前記操作子には操舵反力を与える反力アクチュエータが備えられ、この反力アクチュエータはビスカスカップリングと、前記ビスカスカップリングを制駆動する反力モータとを有することを特徴とする。
【0011】
ここで、「ビスカスカップリング」とは、液体(流体)の粘性を利用したトルク伝達機構であり、たとえば複数のプレートを有するインナーシャフトと前記複数のプレート間に配設される複数のプレートを有するアウターハウジングとの間に液体を封入させた機構などをいう。
【0012】
本発明によれば、操作子の操舵開始時には、ビスカスカップリングの粘性によって操作子に所定の反力を与えることができるので、操舵開始から常に反力モータで反力を与える必要がなくなり、操作開始時における消費電力を低減することができる。さらに、ビスカスカップリングを用いたことによって、油圧によりハンドル反力を与えるような従来の油圧パワステの構造に比べ、液体をポンプで循環させる必要がないため、燃費性能の向上に大きく貢献する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態にかかるステア・バイ・ワイヤ(SBW)式操舵装置について添付図面を参照して詳細に説明する。参照する図面において、図1は本実施形態に係るSBW式操舵装置の概略構成図、図2はSBW式操舵装置の操作側機構を示す断面図である。また、図3は図2の操作側機構の一部を拡大して示す拡大断面図、図4はSBW式操舵装置のビスカスカップリングの詳細を示す拡大断面図である。さらに、図5はSBW式操舵装置のストッパー機構の詳細を示す拡大断面図、図6はSBW式操舵装置の制御を行うECUとこれに接続される周辺機器を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、SBW式操舵装置Mは、運転者が車両を操作するためのハンドル(操作子)1と、このハンドル1に操舵反力を与える反力アクチュエータであるビスカスカップリング2および反力モータ3と、ハンドル1とは機械的に切り離されて配設される転舵機構4とを主に有している。そして、このSBW式操舵装置Mでは、ハンドル1の操作量が電気信号として転舵機構4に送信されることで、この転舵機構4がハンドル1の操作量に応じてタイヤ(転舵輪)Ti,Tiを転舵させている。
【0015】
次に、SBW式操舵装置Mの操作側の機構について図2および図3を参照して詳細に説明する。
図2に示すように、操作側機構PMは、ハンドル1(図1参照)に連結される第一シャフトS1と、この第一シャフトS1に同軸に連結される第二シャフトS2と、第一シャフトS1の一部を覆うコラムハウジングH1と、三つの部材で構成されて第二シャフトS2を覆うハウジングH2とを主に有している。第一シャフトS1とコラムハウジングH1との間には、ハンドル1の微小操舵時の振動(ガタ感)を抑えるために、弾性部材であるフリクションラバーRが設けられている。
【0016】
図3に示すように、ハウジングH2内には、第一シャフトS1側から順にトルクセンサTs、ビスカスカップリング2、ストッパー機構5、およびハンドル回転角度センサHsが主に設けられている。ここで、トルクセンサTsは、ハンドル1の操舵に応じて第二シャフトS2に加わるトルクを検出するものであり、また、ハンドル回転角度センサHsは、ハンドル1の操舵に応じた回転角度を検出するものである。なお、ハンドル回転角度センサHsとしては、たとえばレゾルバやエンコーダなどが用いられるが、本発明はこれに限定されず、どのようなものを用いてもよい。
【0017】
ビスカスカップリング2は、図4に示すように、インプットシャフト21、内側プレート22、外側プレート23、およびアウトプットハウジング24を主に備えている。インプットシャフト21は、その内周面に形成されたキー溝21aが第二シャフトS2の外周面に形成されたキー(図示せず)に係合することにより、第二シャフトS2に回転不能な状態で取り付けられている。また、このインプットシャフト21の外周面には、略リング状に形成された内側プレート22が所定の間隔をおいて複数接合されている。
【0018】
アウトプットハウジング24は、ベアリングBeなどによってインプットシャフト21に回転可能な状態で取り付けられており、その内周面に略リング状に形成された外側プレート23が前記複数の内側プレート22の間に配置されるように接合されている。そして、アウトプットハウジング24とインプットシャフト21との間には、内側プレート22および外側プレート23を収納するための空間Aが形成されており、この空間Aには所定の粘性をもつオイルが封入されている。なお、このビスカスカップリング2の機械特性は、以下のようになっている。
T=C・Δω
(T:伝達トルク、C:粘性係数、Δω:インプットシャフト21とアウトプットハウジング24との回転角速度差)
そして、このような特性を利用することで、ハンドル1の操舵開始時にインプットシャフト21とアウトプットハウジング24との回転角速度差Δωが発生して、ハンドル1に反力として伝達トルクTが与えられることとなる。なお、粘性係数Cは、ハンドル1の操舵開始時などの通常操舵時における好ましい伝達トルクTを予め設定しておくとともに、そのときの回転角速度差Δωを実験により取得することなどによって、これらの値に基づいて適正な値に設定しておく。
【0019】
また、アウトプットハウジング24の一端面24aには、その外周面に歯W11を有するウォームホイールW1がボルトBoにより締結されている。そして、このウォームホイールW1には、図3に示すように、その回転方向とは異なる回転方向で回転するウォームギヤW2が噛合するとともに、このウォームギヤW2にはこれと同軸に配設される反力モータ3が連結されている。なお、ウォームホイールW1とウォームギヤW2とのギヤ比はウォームホイールW1側からは回転されず、反力モータ3からのみ回転可能なセルフロックギヤ比になっている。
【0020】
反力モータ3は、ウォームギヤW2およびウォームホイールW1を介してビスカスカップリング2の制駆動(制動または駆動)を行うものであり、後記するECU6により適宜制御されている。また、ウォームギヤW2の同軸上には、モータ回転位置センサMs(図6参照)が設けられている。なお、このモータ回転位置センサMsとしては、たとえばホールIC、レゾルバ、またはエンコーダなどが用いられるが、本発明はこれに限定されず、どのようなものを用いてもよい。
【0021】
そして、このようにビスカスカップリング2に反力モータ3を連結させることで、たとえばハンドル1(インプットシャフト21)の回転方向とは反対方向にアウトプットハウジング24を反力モータ3で回転させた場合にはトルク(ハンドル反力)が増大し、ハンドル1と同じ方向に回転させた場合にはトルクが減少することとなる。また、ハンドル1を所定の角度で停止(保舵)させる場合には、それまでのハンドルの回転方向とは反対方向に、反力モータ3で反力を調整しながらアウトプットハウジング24を回転させることによってトルク(保舵力)を発生させる。さらに、その後ハンドル1を戻す場合には、ハンドル1の中立位置までハンドル1を自動的に戻すセルフアライニングトルクに相当する戻しトルクが、反力モータ3からビスカスカップリング2やシャフトS1,S2を介してハンドル1に伝達されることとなる。
【0022】
図3に示すように、ストッパー機構5は、第一ギヤ51、第二ギヤ52、ストッパーボルト53、右回転用ストッパープレート18、および左回転用ストッパープレート19(図5参照)を主に備えている。第一ギヤ51は、その内周面に形成されたキーが第二シャフトS2の外周面に形成されたキー溝に係合することにより第二シャフトS2に回転不能な状態で取り付けられている。また、この第一ギヤ51には、第二ギヤ52が噛み合っている。
【0023】
ストッパーボルト53は、第二ギヤ52の両面を貫通するように第二ギヤ52の適所に取り付けられている。また、図5に示すように、右回転用ストッパープレート18は、第二ギヤ52の一端面52a側に配置されるように、ハウジングH2に固定され、左回転用ストッパープレート19は、第二ギヤ52の他端面52b(図3参照)側に配置されるように、ハウジングH2に固定されている。そして、これらのストッパープレート18,19には、ストッパーボルト53が当接する箇所に弾性部材であるクッションラバーCRが設けられており、これによりストッパーボルト53の当接時の衝撃を吸収している。
【0024】
また、図6に示すように、ECU(電子制御装置)6は、操舵制御機構センサPs、転舵アクチュエータセンサ7、操舵力変更スイッチSn、およびヨーレートセンサYsから出力される信号を受信し、これらの信号を選択的に利用して反力モータ3や、転舵機構4内に設けられる転舵アシストモータ41または転舵モータ42を適宜制御するものである。ここで、操舵制御機構センサPsは操作側機構PM(図2参照)側のセンサ群であり、転舵アクチュエータセンサ7は転舵機構4(図1参照)側のセンサ群である。そして、操舵制御機構センサPsでは、トルクセンサTsにより検出される操舵トルク、ハンドル回転角度センサHsにより検出されるハンドル回転角、またはモータ回転位置センサMsにより検出される反力モータ3の回転方向における位置を示す信号をECU6に出力している。
【0025】
また、転舵アクチュエータセンサ7では、車速センサ71によって検出される車速、転舵アシストモータ41の電流値72、転舵アシストモータ41の電圧値73、トルクセンサ74で検出される路面からの反力に対応するセルフアライニングトルク、回転角度センサ75で検出される転舵モータ42の回転位置、ポテンショメータ76で検出されるタイヤTiの転舵角に対応するラック軸の変位を示す信号をECU6に出力している。
【0026】
ECU6は操舵側のトルクセンサTsとハンドル回転角度センサHsから運転者の操舵要求を検知し、転舵側の回転角度センサ75、ポテンショメータ76からタイヤTiの転舵の状況を検知し、さらに、車速、旋回の程度、加減速の程度、自動車の走行状態、路面の状態等に応じて転舵特性を柔軟に可変しながら反力モータ3、転舵モータ42、転舵アシストモータ41を制御する。ここで転舵モータ42は主としてハンドル1の回転角度にしたがってタイヤTiを転舵させ、転舵アシストモータ41は主としてハンドル1からの操舵トルクにしたがって転舵モータ42によるタイヤTiの転舵をアシストするものである。
【0027】
ECU6はまた、運転者が操舵を開始したと判断した場合には、反力モータ3を停止して、ビスカスカップリング2の粘性によって発生するトルクのみをハンドル反力とする。なお、運転者が操舵力変更スイッチSnを用いて反力モータ3を停止するように指示しても良い。
【0028】
次に、本実施形態のSBW式操舵装置Mを操作したときの作用について説明する。
図2に示すように運転者がハンドル1(図1参照)の操舵を開始すると、まず、操舵トルクが第一シャフトS1に伝達され、続いてトルクセンサTsに伝達され、さらには第二シャフトS2にも伝達される。このとき、第二シャフトS2の操舵角はハンドル回転角度センサHsで検出され、操舵トルクはトルクセンサTsで検出される。ハンドル回転角度センサHs、トルクセンサTsの検出値は、図6に示すECU6に出力され、ECU6はこれらの信号に基づいて転舵アシストモータ41または転舵モータ42や、反力モータ3を制御する。そして、この操舵開始時においては、ECU6から反力モータ3には、制御信号が出力されず、反力モータ3が停止した状態となっている。
【0029】
このように反力モータ3が停止した状態では、前記したセルフロックギヤ比で形成されたウォームホイールW1とウォームギヤW2が回転不能となるため、ビスカスカップリング2のアウトプットハウジング24も回転しない。これにより、ビスカスカップリング2中のオイルによる粘性抵抗がそのままハンドル1への反力となり、運転者が所定の反力を受けた状態でハンドル操作を行うこととなる。言い換えると、第二シャフトS2が受けたトルクは、ビスカスカップリング2とウォームホイールW1を介してウォームギヤW2に伝達されるが、このウォームギヤW2はウォームホイールW1側からは回転させることができないので、このトルクがそのままハンドル反力として運転者に与えられることとなる。
【0030】
なお、このときトルクセンサTsからの信号に基づいて、運転者へ与える反力が小さいとECU6が判断した場合には、このECU6により反力モータ3を駆動させ、アウトプットハウジング24をインプットシャフト21の回転方向とは逆方向に回転させる。このように反力モータ3を駆動させると、アウトプットハウジング24とインプットシャフト21との間の回転角速度差Δωが大きくなるため、前記の式より伝達トルクT、すなわちハンドル1に与えられる反力が大きくなる。
【0031】
このように、回転角速度差Δωを反力モータ3を用いて変化させ、伝達トルクTに当たるハンドル反力を変化させることにより、ハンドル1に加わる反力が調整されるとともに、運転者のハンドル操作がアシストされることとなる。すなわち、ハンドル1(インプットシャフト21)の回転方向とは反対方向にアウトプットハウジング24を反力モータ3で回転させた場合は、ハンドル反力が増大し、ハンドル1の回転方向と同じ方向にアウトプットハウジング24を反力モータ3で回転させた場合はハンドル反力が減少することとなる。
【0032】
具体的には、ECU6が大きなハンドル反力を運転者に与える必要があると判断した場合には、より早い速度で反力モータ3を回転させて、回転角速度差Δωを大きくすることにより、より大きなハンドル反力を発生させる。また、車庫入れなどの低速運転時にハンドル反力を小さくしたいとECU6が判断した場合には、アウトプットハウジング24をハンドル1の操舵方向と同じ方向に回転するように、反力モータ3に指令を出すことによってハンドル反力が小さくなる。さらに、運転者が意図的に操舵トルク(操舵力)を重くしたいと考えたときや、軽くしたいと考えた場合には、操舵力変更スイッチSn(図6参照)を切り替えることで、ECU6が判断して条件を変更することができる。
【0033】
また、ハンドル1を操作停止の保舵状態にした場合には、それまでのハンドル1の回転方向とは逆方向にアウトプットハウジング24を回転させることによって保舵力に当たるトルクを発生させる。具体的には、運転者が操舵を停止して保舵状態になったとECU6が判断した場合、転舵アクチュエータセンサ7の各センサ71〜76の情報、操舵制御機構センサPsの各センサTs,Hs,Msの情報、および車体のヨーレートセンサYs(設置されていない場合は除く)の情報から、最適なハンドル反力値を計算し、反力モータ3へ作動指令を送る。このとき反力モータ3は、いままでハンドル1が回転していた方向とは反対の方向に、ビスカスカップリング2のアウトプットハウジング24を回転させることにより、運転者の操作に対してハンドル反力を与える。なお、このハンドル1の保舵時においては、反力モータ3からのトルクはビスカスカップリング2内のオイルを介してインプットシャフト21に伝達されるので、反力モータ3は回転し続けた状態となっている。
【0034】
そして、その後、ハンドル1の戻し操作をした場合には、中立位置までハンドル1を戻すセルフアライニングトルクに相当する戻しトルクを反力モータ3がアウトプットハウジング24を介してインプットシャフト21に伝達する。すなわち、運転者がハンドル1を戻す操作を始めた場合には、転舵側のトルクセンサ74で検出したセルフアライニングトルクによる路面からの反力値を基準にしてハンドル1に与える反力をECU6が判断し、そのハンドル反力を反力モータ3に指示してハンドル1が中立位置に戻るまで回転させる。
【0035】
また、ハンドル1を所定の角度以上回転させようとした場合、第二シャフトS2に連動して回転していた第二ギヤ52の回転は、ストッパーボルト53と右回転用ストッパープレート18または左回転用ストッパープレート19とが当接することで止められる。これにより、ハンドル1の回転が規制されることとなる。
【0036】
以上によれば、本実施形態において、次のような効果を得ることができる。
ハンドル1の操舵開始時には、反力モータ3を停止させ、ビスカスカップリング2からの粘性抵抗のみを操舵反力として得るので、反力モータ3が常に働いている状況をなくして、電力の消費を抑えることができる。また、ハンドル1の保舵時において反力モータ3が回転し続けるので、従来において反力モータを回転させない状態でトルクを発生させるために大型化する必要があった反力モータを小型化(軽量化)することができる。さらに、反力モータ3が故障したような場合でも、ビスカスカップリング2によって操舵反力を与えることができる。また、ビスカスカップリングを用いたことによって、油圧によりハンドル反力を与えるような従来の油圧パワステの構造に比べ、液体をポンプで循環させる必要がないため、燃費性能の向上に大きく貢献する。
【0037】
以上、本発明を実施の形態にそって説明したが、本発明はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな対応を採り得ることは勿論である。
ストッパー機構5は、本実施形態のような構造に限らず、たとえば、図7に示すような構造であってもよい。すなわち、第二シャフトS2の径方向外側に向かってその一部81が突出するストッパー部材8を第二シャフトS2に回転不能な状態で取り付け、その一部81にストッパーボルト53を取り付け、このストッパーボルト53をハウジングH2の一部を突出させて形成したストッパー部H21に当接させるような構造にしてもよい。この構造によれば、ハンドル1の右回転および左回転がストッパー部H21の大きさに応じて180度以内で規制されることとなる。
【0038】
本実施形態では、ビスカスカップリング2と反力モータ3とがウォームホイールW1およびウォームギヤW2を介して連結されているが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、ビスカスカップリングに対して反力モータを同軸に、かつその外周を覆うように配設して、ビスカスカップリングのアウトプットハウジングを反力モータで回転させる構造であってもよい。ただし、この場合も、ビスカスカップリング2側から反力モータ3を回転させることがないようにする必要がある。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、ハンドルに操舵反力を与える反力アクチュエータを、ビスカスカップリングと反力モータで構成したので、通常の操舵時は反力をビスカスカップリングからの反力だけにすることができ、反力モータに常に電気を供給しておく必要がなくなるので電力消費を低減することができる。さらに、ビスカスカップリングを用いたことによって、油圧によりハンドル反力を与えるような従来の油圧パワステの構造に比べ、液体をポンプで循環させる必要がないため、燃費性能の向上に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係るSBW式操舵装置の操舵反力発生機構の概略構成図である。
【図2】SBW式操舵装置の操作側機構を示す断面図である。
【図3】図2の操作側機構の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】SBW式操舵装置のビスカスカップリングの詳細を示す拡大断面図である。
【図5】SBW式操舵装置のストッパー機構の詳細を示す拡大断面図である。
【図6】SBW式操舵装置の制御を行うECUとこれに接続される周辺機器を示すブロック図である。
【図7】ストッパー機構の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
M SBW式操舵装置
1 ハンドル(操作子)
2 ビスカスカップリング(反力アクチュエータ)
3 反力モータ(反力アクチュエータ)
4 転舵機構
Claims (1)
- 運転者に操作される車両の操作子と、前記操作子とは機械的に切り離され、前記操作子の操作量に応じて転舵輪を転舵させる転舵機構とを有するステア・バイ・ワイヤ式操舵装置において、
前記操作子には操舵反力を与える反力アクチュエータが備えられ、この反力アクチュエータはビスカスカップリングと、前記ビスカスカップリングを制駆動する反力モータとを有することを特徴とするステア・バイ・ワイヤ式操舵装置。
Priority Applications (1)
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