JP2004322709A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本電動パワーステアリング装置の目標電流設定部に含まれるアシストマップ設定部は、種類入力部から与えられる操作信号に基づき、タイヤの種類を検出し(S10)、当該タイヤの種類がタイヤAであるか否かを判定する(S20)。この判定の結果、タイヤAである場合には、予め定められたタイヤA用のアシストマップを操舵補助のために用いるアシストマップとして設定し(S30)、タイヤAでない場合には、タイヤB用のアシストマップを同様に設定する(S40)。ここで、タイヤA用のアシストマップは、車両にタイヤAが装着されるときに最も操舵操作性が良好となるように設計されており、タイヤB用のアシストマップも同様であるため、タイヤの種類に応じて良好な操舵操作性が実現される。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータによって車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、運転者がハンドル(ステアリングホイール)に加える操舵トルクに応じて電動モータを駆動することによりステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が用いられている。この電動パワーステアリング装置では、操舵のための操作手段であるハンドルに加えられる操舵トルクを検出して当該操舵トルクを示すトルク検出信号を出力するトルクセンサが設けられており、そのトルクセンサからのトルク検出信号に基づき電動モータに流すべき電流の目標値が設定される。そして、比例積分制御器によりこの目標値と電動モータに実際に流れる電流の検出値との偏差に基づき、電動モータの駆動手段に与えるべき指令値が生成される。電動モータの駆動手段は、その指令値に応じたデューティ比のパルス幅変調信号(PWM信号)を生成するPWM信号生成回路と、そのPWM信号のデューティ比に応じてオン/オフするパワートランジスタを用いて構成されるモータ駆動回路とから成り、そのデューティ比に応じた電圧すなわち指令値に応じた電圧を電動モータに印加する。この電圧印加によって電動モータに流れる電流は電流検出回路によって検出され、上記目標値とこの検出値との差が上記指令値を生成するための偏差として使用される。
【0003】
以上のような従来の電動パワーステアリング装置には、タイヤにかかる荷重を検出し、検出された荷重に応じて上記電動モータに流すべき電流の目標値を決定するものがある(特許文献1を参照)。この従来例では、車両が積む負荷の大きさによらず、運転者は常に同じ感覚でステアリングホイールを操作することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−301209号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば運転者等によってタイヤが交換されることにより、同一の車であっても操舵フィーリングは変化する。この場合、タイヤにかかる荷重のみを検出する前述の従来例では、運転者が常に同じ感覚で操舵操作を行うことができない。
【0006】
また、電動モータに流すべき電流の目標値は、前述のように操舵トルクに基づき決定されるが、そのために一般的には、予め定められた、上記電流目標値と操舵トルクとの対応関係を示すテーブル(「アシストマップ」と呼ばれる)が参照される。このアシストマップは、当該電動パワーステアリング装置を搭載しようとする車両に当該車両の標準タイヤを装着した状態で設計が行われることが多い。したがって、設計時に装着された標準タイヤ以外のタイヤが装着される場合、設計時に実現しようとした操舵フィーリングが設計通りに実現されるとは限らないため、運転者は操舵操作において違和感を持つこともある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、タイヤの種類によらず良好な操舵操作性を実現する電動パワーステアリング装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明は、車両操舵のための操作手段によって加えられる操舵トルクに応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記車両に装着されるタイヤの種類を判別する判定手段と、
前記操舵トルクと、前記判定手段により判別されたタイヤの種類とに基づき、前記操舵補助力を与えるために前記電動モータに供給すべき電流の目標値を設定する目標値設定手段と、
前記目標値と前記電動モータに流れる電流値との偏差に基づき、前記電動モータに対してフィードバック制御を行う制御手段と
を備える。
【0009】
このような第1の発明によれば、タイヤの種類に基づき電動モータに供給すべき電流の目標値が設定されるため、装着されるタイヤが標準タイヤでない場合やタイヤが交換される場合であっても、運転者は操舵操作において違和感を持つことがなく、タイヤの種類によらず良好な操舵操作性を実現することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記目標値設定手段は、
前記操舵トルクと前記目標値との所定の対応関係に基づき、前記操舵トルクに応じた前記目標値を設定するアシスト設定手段と、
前記判定手段により判別されたタイヤの種類に基づき、前記所定の対応関係を設定する対応関係設定手段と
を含む。
【0011】
このような第2の発明によれば、タイヤの種類に基づき所定の対応関係(例えばアシストマップ)が設定されるため、タイヤの種類によらず当該所定の対応関係に基づく良好な操舵操作性を実現することができる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、
前記判定手段は、前記タイヤの幅および偏平率を含むタイヤサイズを判別し、
前記対応関係設定手段は、前記車両に装着可能なタイヤのタイヤサイズに応じて予め定められた複数の前記対応関係から、前記判定手段により判別されたタイヤサイズに応じた対応関係を前記所定の対応関係として設定する。
【0013】
このような第3の発明によれば、予めタイヤの種類に応じて定められた複数の対応関係(例えばアシストマップ)が用意されるため、当該電動パワーステアリング装置を搭載しようとする車両に各種のタイヤを装着した状態を想定して設計を行うことができる。したがって、設計時に実現しようとした操舵フィーリングが設計通りに実現されるため、運転者は操舵操作において違和感を持つことがなく、タイヤの種類によらず良好な操舵操作性を実現することができる。また、タイヤサイズに応じた対応関係(例えばアシストマップ)が設定されるため、車両に装着するタイヤが変更されることにより、操舵操作の操作性に比較的大きな影響を与えるタイヤサイズが変更された場合であっても、良好な操舵操作性を実現することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
<1.全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示した概略図である。この電動パワーステアリング装置は、操舵のための操作手段としてのハンドル(ステアリングホイール)100に一端が固着されるステアリングシャフト102と、そのステアリングシャフト102の他端に連結されたラックピニオン機構104と、装着されているタイヤの種類が運転者の入力操作により与えられる種類入力部2と、ハンドル100の操作によってステアリングシャフト102に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ3と、この電動パワーステアリング装置が搭載される車両の車速を検出する車速センサ4と、ハンドル操作(操舵操作)による運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生させる電動モータ6と、そのモータ6の発生する操舵補助力をステアリングシャフト102に伝達する減速ギヤ7と、車載バッテリ8からイグニションスイッチ9を介して電源の供給を受け、トルクセンサ3および車速センサ4からのセンサ信号に基づきモータ6の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)5とを備えている。
【0015】
ここで、ステアリングシャフト102において、ハンドル100側の部分と、減速ギヤ7を介して操舵補助トルクの加えられる部分との間にはトーションバーが介装されている。トルクセンサ3は、そのトーションバーのねじれを検出することにより操舵トルクを検出する。このようにして検出された操舵トルクの検出値Tは、操舵トルク検出信号としてトルクセンサ3から出力され、ECU5に入力される。また、車速センサ4は、車両の走行速度である車速の検出値Vを示す信号を車速信号として出力する。この車速信号もECU5に入力される。さらに、種類入力部2は、運転者の入力操作により与えられる装着されているタイヤの種類(典型的にはタイヤの幅や偏平率等を含むタイヤサイズ)を示す信号を操作信号Ssとして出力する。この操作信号SsもECU5に入力される。この種類入力部2には、例えば、タイヤの種類に対応して設けられる複数のボタンや、タイヤの種類をメニューとして表示する液晶パネルおよび当該メニューを選択可能なタッチペンなどを含む入力装置を使用することができる。
【0016】
このような電動パワーステアリング装置を搭載した車両において運転者がハンドル100を操作すると、その操作による操舵トルクがトルクセンサ3によって検出され、その操舵トルクの検出値Tと車速センサ4によって検出された車速の検出値Vと操作信号Ssによって示される(装着されている)タイヤの種類に基づいてECU5によりモータ6が駆動される。これによりモータ6は操舵補助力を発生し、この操舵補助力が減速ギヤ7を介してステアリングシャフト102に加えられることにより、操舵操作による運転者の負荷が軽減される。すなわち、ハンドル操作によって加えられる操舵トルクと、モータ6の発生する操舵補助力によるトルクとの和が出力トルクとして、ステアリングシャフト102を介してラックピニオン機構104に与えられる。これによりピニオン軸が回転すると、その回転がラックピニオン機構104によってラック軸の往復運動に変換される。ラック軸の両端はタイロッドおよびナックルアームから成る連結部材106を介して車輪108に連結されており、ラック軸の往復運動に応じて車輪108の向きが変わる。
【0017】
<2.制御装置の構成および動作>
図2は、上記電動パワーステアリング装置における制御装置であるECU5の機能的構成を示すブロック図である。このECU5は、モータ制御部として機能するマイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略記する)10と、そのマイコン10から出力される指令値Dに応じたデューティ比のパルス幅変調信号(PWM信号)を生成するPWM信号生成回路18と、そのPWM信号のデューティ比に応じた電圧をモータ6に印加するモータ駆動回路20と、モータ6に流れる電流を検出する電流検出器19とから構成される。
【0018】
マイコン10は、その内部のメモリに格納された所定のプログラムを実行することにより、目標電流設定部12と減算器14とフィードバック制御演算部(以下「FB制御演算部」と略記する)16とからなるモータ制御部として機能する。このモータ制御部において、目標電流設定部12は、トルクセンサ3から出力される操舵トルクの検出値T(以下、単に「操舵トルクT」という)と、車速センサ4から出力される車速の検出値V(以下、単に「車速V」という)と、種類入力部2から出力される操作信号Ssにより得られるタイヤの種類とに基づき、モータ6に流すべき電流の目標値Itを決定する。この目標電流設定部12の詳細な構成および動作については後述する。減算器14は、この目標電流設定部12から出力される電流目標値Itと電流検出器19から出力されるモータ電流の検出値Isとの偏差It−Isを算出する。FB制御演算部16は、この偏差It−Isに基づく比例積分制御演算によって、PWM信号生成回路18に与えるべきフィードバック制御のための上記指令値Dを生成する。
【0019】
PWM信号生成回路18は、この指令値Dに応じたデューティ比のパルス信号、すなわち指令値Dに応じてパルス幅の変化するPWM信号を生成する。モータ駆動回路20は、典型的にはバッテリ8の電源ラインと接地ラインとの間に接続される4個の電力用の電界効果型トランジスタからなるブリッジ回路であって、PWM信号のパルス幅(デューティ比)に応じた電圧をモータ6に印加する。モータ6は、その電圧印加によって流れる電流に応じた大きさおよび方向のトルクを発生する。このように、電流目標値Itを受け取る減算器14、FB制御演算部16、PWM信号生成回路18、モータ駆動回路20、およびモータ電流の検出値Isを減算器14へ出力する電流検出器19は、モータ6に対するフィードバック制御を行う制御手段を構成する。
【0020】
なお、上記電動モータ6はブラシ付きの一般的な直流モータであるが、本発明における駆動源としての電動モータは、上記ブラシ付きモータに限定されるものではなく、例えば、より慣性の小さい電動モータであるブラシレスモータであってもよい。
【0021】
<3.目標電流設定部の詳細な構成および動作>
図3は、上記一実施形態における目標電流設定部12の構成を示すブロック図である。この目標電流設定部12は、電流目標値Itと操舵トルクTとの対応関係を示すアシストマップ122と、このアシストマップ122を参照することにより電流目標値Itを出力するアシスト電流設定部121と、操作信号Ssに基づいてタイヤの種類に応じたアシストマップ122を設定する対応関係設定手段としてのアシストマップ設定部123とを備える。
【0022】
なお、上記操舵トルクTは、所定のパラメータを有する位相進み等のフィルタからなる図示されない位相補償器を通すことにより位相補償が行われてもよい。また、上記電流目標値Itに対して慣性補償やダンピング制御などの各種補償が行われてもよい。これらの構成は公知であるため説明を省略する。以下、目標電流設定部12における各構成要素の動作について説明する。
【0023】
アシストマップ122は、適切な操舵補助力を発生させるためにモータ6に供給すべき電流目標値Itと操舵トルクTとの関係を車速Vをパラメータとして示すテーブルであり、所定の記憶領域に予め保持されている。例えば、このアシストマップは、車速Vが小さいほど、また操舵トルクTが大きいほど電流目標値Itを大きくするように設定される。そうすれば、ハンドルが重いときほど操舵補助力が大きくなり、操舵操作が容易になる。
【0024】
アシストマップ設定部123は、タイヤの種類(典型的にはタイヤサイズ)に応じて設定される複数のアシストマップを所定の記憶領域に予め保持しており、これらのアシストマップの中から、操作信号Ssにより示されるタイヤの種類に対応するアシストマップを選択することにより、選択されたアシストマップをアシスト電流設定部121によって参照されるべきアシストマップ122として設定する。
【0025】
アシスト電流設定部121は、このアシストマップ設定部123により設定された、タイヤの種類に対応するアシストマップ122を参照することにより、トルクセンサ3からの操舵トルクTと車速Vとに基づき、タイヤの種類に応じた適切な電流目標値Itを出力する。以下、さらにアシストマップ設定部123によるアシストマップ122の設定動作につき詳説する。
【0026】
<4.アシストマップ設定部の動作>
図4は、アシストマップ設定部123によりアシストマップ122を設定する手順を示すフローチャートである。まず、アシストマップ設定部123は、種類入力部2から与えられる操作信号Ssに基づき、タイヤの種類を検出する(ステップS10)。なお、アシストマップ設定部123は、種類入力部2からの操作信号Ssを受け取ることにより処理を開始するため、運転者による入力操作がなされないときには、すでに設定されているアシストマップ122がそのまま参照される。また、ここでは説明の便宜のため、本車両に装着可能なタイヤの種類は、タイヤAおよびタイヤBの2種類のみとし、予め用意されるアシストマップもタイヤA用およびタイヤB用の2種類のみとする。
【0027】
次に、アシストマップ設定部123は、ステップS10において検出されたタイヤの種類がタイヤAであるか否かを判定する(ステップS20)。このように、アシストマップ設定部123は、種類入力部2とともにタイヤの種類を判別する判定手段として機能する。この判定の結果、タイヤAである場合には、予め定められたタイヤA用のアシストマップをアシストマップ122とし(ステップS30)、タイヤAでない場合には、予め定められたタイヤB用のアシストマップをアシストマップ122とする(ステップS40)。このように、アシストマップ設定部123は、アシストマップが示す対応関係を設定する手段として機能する。ステップS30,S40の処理が終了すると、アシストマップ設定部123は一旦処理を終了し、次に種類入力部2から操作信号Ssを受け取ると処理が開始される。
【0028】
ここで、タイヤA用のアシストマップは、本電動パワーステアリング装置が搭載される車両にタイヤAが装着されるときに最も操舵操作性が良好となるように設計されており、タイヤB用のアシストマップは、タイヤBが装着されるときに最も操舵操作性が良好となるように設計されている。したがって、上記動作により、タイヤの種類によらず良好な操舵操作性が実現される。なお、本電動パワーステアリング装置が搭載される車両に装着可能なタイヤの種類は、実際には2つを超えることがあるが、この場合には、タイヤの種類数に応じた数のアシストマップが用意される。また、タイヤの種類数よりも少ない数のアシストマップのみが用意される場合には、種類入力部2により入力されるタイヤの種類と同一または最も近い性質を有するタイヤ(典型的には最も近いサイズのタイヤ)に対応するアシストマップが選択される。
【0029】
なお、本実施形態では、マイコン10が所定のプログラムを実行することにより、目標電流設定部12における各種構成要素がソフトウェア的に実現されるように構成されているが、これらの構成要素の一部または全部は、専用の電子回路等によりハードウェア的に実現されてもよい。
【0030】
<5.変形例>
上記一実施形態において、種類入力部2は、典型的にはタイヤの幅や偏平率等を含むタイヤサイズを示す信号を操作信号Ssとして出力するが、タイヤの種類を示すものであれば、トレッドパターン、材質、雪道用のタイヤか否かなどの操舵操作の操作性に影響する特徴を示すものであってもよい。もっとも、タイヤサイズは操舵操作の操作性に比較的大きな影響を与えるため、種類入力部2は、このタイヤサイズを示す信号を操作信号Ssとして出力することが好ましい。したがって、アシストマップ設定部123に記憶される複数のアシストマップも、タイヤサイズに応じて用意されるのが好ましい。
【0031】
上記一実施形態において、種類入力部2は、例えば、複数のボタンや液晶パネルおよびタッチペンなど、運転者により操作される手動の入力装置であるが、この入力装置に代えて、タイヤの種類を自動的に検知するセンサ入力装置が設けられてもよい。例えば、種類入力部2は、タイヤ表面に付されたタイヤサイズ等のタイヤの種類を示すバーコードを読みとるための、タイヤハウス近傍に備えられるバーコードリーダであってもよいし、タイヤに付されたタグ(例えばRF−ID(Radio Frequency−Identification))を読みとるためのリーダであってもよい。これらのセンサ装置は、タイヤ交換時に自動的に起動され、交換されたタイヤの種類を読みとる。
【0032】
上記一実施形態における(目標電流設定部12に含まれる)アシストマップ設定部123は、予め用意された複数のアシストマップの中からアシスト電流設定部121により参照されるべきアシストマップ122を選択するが、例えば、基本となるアシストマップのみが記憶されており、タイヤの種類に応じてこのアシストマップを変形することによりアシストマップ122が設定されてもよい。また、これらのアシストマップに代えて、所定の条件式や関数式などが参照されてもよい。
【0033】
<6.効果>
以上のように、上記一実施形態によれば、タイヤの種類に応じたアシストマップが設定されるため、装着されるタイヤが標準タイヤでない場合やタイヤが交換される場合であっても、運転者は操舵操作において違和感を持つことがなく、タイヤの種類によらず良好な操舵操作性を実現することができる。特に、上記一実施形態によれば、典型的にはタイヤサイズに応じたアシストマップが設定されるため、車両に装着するタイヤが変更されることにより、操舵操作の操作性に比較的大きな影響を与えるタイヤサイズが変更された場合であっても、良好な操舵操作性を実現することができる。
【0034】
また、上記一実施形態によれば、予めタイヤの種類に応じた複数のアシストマップが用意されるため、当該電動パワーステアリング装置を搭載しようとする車両に各種のタイヤを装着した状態を想定して設計を行うことができる。したがって、設計時に実現しようとした操舵フィーリングが設計通りに実現されるため、運転者は操舵操作において違和感を持つことがなく、タイヤの種類によらず良好な操舵操作性を実現することができる。
【0035】
<7.応用例>
以上のように、タイヤの種類に応じて予め用意されたアシストマップから適切なアシストマップを選択するという考え方は、タイヤの種類が変更される場合とは異なる場合にも応用することができる。以下、この応用例について説明する。
【0036】
同一車両における操舵フィーリングの変化は、当該車両に装着されるタイヤの種類が変化することにより生じるだけではなく、当該車両に乗車する人数の変化により生じることがある。この変化の原因の1つとしては、乗車人数の違いによる車両の前軸荷重の変化が考えられる。通常の電動パワーステアリング装置では、前述のように操舵操作によるハンドルの回転運動がラックピニオン機構によってラック軸の往復運動に変換され、このラック軸の往復運動に応じて前輪の向きが変わる。したがって、前輪の方向を変更するとき、前軸荷重が変化すれば操舵トルクが変化するため、結果的に操舵フィーリングが変化することになる。ここで、本電動パワーステアリング装置を搭載しようとする車両に、例えば1人が乗車するものとしてアシストマップが設計されるとすると、1人が乗車する場合に最も操舵フィーリングが良くなる反面、乗車人数が増えるにつれて前軸荷重が増加するため、操舵フィーリングが悪化する(具体的にはハンドルが重くなる)場合がある。
【0037】
そこで、上記一実施形態の考え方を応用することにより、乗車人数に応じて設計された複数のアシストマップが予め用意され、乗車人数に応じたアシストマップが選択されるという構成が考えられる。すなわち、種類入力部2に代えて乗車人数を自動的に検知する人数検知部が設けられ、アシストマップ設定部123は、この人数検知部からの人数を示す信号を受け取り、その人数に応じたアシストマップをアシストマップ122として設定する。以下、このアシストマップ設定部123の設定動作につき詳説する。なお、人数検知部には、車両に標準的に装着されることが多い(前部座席の)シートベルト着脱センサや、各シートに設置される感圧センサなどを使用することができる。
【0038】
図5は、上記場合におけるアシストマップ設定部123によりアシストマップ122を設定する手順を示すフローチャートである。まず、車両のイグニッションスイッチがONされたか否かが判定される(ステップS90)。この判定の結果、ONされた場合にはステップS92の処理へ進み、ONされない場合には操舵補助の必要がないので、処理を終了する。なお、ここでは説明の便宜のため、車両に乗車可能な人数は2人までとし、予め用意されるアシストマップも1人用および2人用の2種類のみとする。
【0039】
次に、アシストマップ設定部123は、人数検知部から与えられる人数を示す信号に基づき、乗車人数を検出する(ステップS92)。続いて、アシストマップ設定部123は、ステップS92において検出された人数が1人であるか否かを判定する(ステップS94)。この判定の結果、1人である場合には、予め定められた1人用のアシストマップをアシストマップ122とし(ステップS96)、1人でない場合には、予め定められた2人用のアシストマップをアシストマップ122とする(ステップS98)。ステップS96,S98の処理が終了すると、アシストマップ設定部123は一旦処理を終了し、次にイグニッションがONされると上記ステップS92以下の処理が再開される。
【0040】
ここで、上記1人用のアシストマップは、本電動パワーステアリング装置が搭載される車両に1人が乗車するときに最も操舵操作性が良好となるように設計されており、2人用のアシストマップは、2人が乗車するときに最も操舵操作性が良好となるように設計されている。したがって、上記動作により、乗車人数によらず良好な操舵操作性が実現される。
【0041】
なお、車両に乗車可能な人数が2人を超える場合には、乗車可能な当該人数に応じた数のアシストマップが用意される。また、上記人数検知部は、乗車人数のほかに乗車位置を検知し、アシストマップは乗車位置に関連して複数が予め用意されてもよい。さらに、人数検知部には、例えば、複数のボタンや液晶パネルおよびタッチペンなど、運転者により操作される手動の入力装置が使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成をそれに関連する車両構成と共に示す概略図である。
【図2】上記一実施形態に係る電動パワーステアリング装置における制御装置であるECUの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】上記一実施形態における目標電流設定部の構成を示すブロック図である。
【図4】上記一実施形態におけるアシストマップ設定部によりアシストマップを設定する手順を示すフローチャートである。
【図5】上記一実施形態の応用例におけるアシストマップ設定部によりアシストマップを設定する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2 …種類入力部
3 …トルクセンサ
4 …車速センサ
5 …電子制御ユニット(ECU)
6 …モータ
10 …マイクロコンピュータ(モータ制御部)
12 …目標電流設定部(目標値設定手段)
14 …減算器
16 …フィードバック制御演算部(FB制御演算部)
18 …PWM信号生成回路
19 …電流検出器
20 …モータ駆動回路
121 …アシスト電流設定部(アシスト設定手段)
122 …アシストマップ
123 …アシストマップ設定部(対応関係設定手段)
It …電流目標値
Is …電流検出値
V …車速
T …操舵トルク
Ss …操作信号
Claims (3)
- 車両操舵のための操作手段によって加えられる操舵トルクに応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記車両に装着されるタイヤの種類を判別する判定手段と、
前記操舵トルクと、前記判定手段により判別されたタイヤの種類とに基づき、前記操舵補助力を与えるために前記電動モータに供給すべき電流の目標値を設定する目標値設定手段と、
前記目標値と前記電動モータに流れる電流値との偏差に基づき、前記電動モータに対してフィードバック制御を行う制御手段と
を備えることを特徴とする、電動パワーステアリング装置。 - 前記目標値設定手段は、
前記操舵トルクと前記目標値との所定の対応関係に基づき、前記操舵トルクに応じた前記目標値を設定するアシスト設定手段と、
前記判定手段により判別されたタイヤの種類に基づき、前記所定の対応関係を設定する対応関係設定手段と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記判定手段は、前記タイヤの幅および偏平率を含むタイヤサイズを判別し、
前記対応関係設定手段は、前記車両に装着可能なタイヤのタイヤサイズに応じて予め定められた複数の前記対応関係から、前記判定手段により判別されたタイヤサイズに応じた対応関係を前記所定の対応関係として設定することを特徴とする、請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
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JP2014177199A (ja) * | 2013-03-14 | 2014-09-25 | Showa Corp | 電動パワーステアリング装置、ナビゲーション装置、電動パワーステアリングシステムおよびプログラム |
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