JP2004322156A - 粉末成形体の成形方法及び粉末成形金型装置 - Google Patents

粉末成形体の成形方法及び粉末成形金型装置 Download PDF

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Abstract

【課題】成形部に潤滑剤による潤滑層を均一に形成して、高密度の粉末成形体を安定して得ることができるようにする。
【解決手段】噴霧部6に帯電手段10を設け、貫通孔1に溶液Lの帯電手段10と逆の極性を帯電させる電極板13を備えた逆極性帯電手段14を設ける。上面2Aに溶液Lの帯電装置10と同じの極性を帯電させる電極板15を備えた同極性帯電手段16を設ける。溶液Lを帯電させて噴霧すると共に、電極板13を溶液Lの帯電の極性と逆の極性に帯電させて、溶液Lを電極板13に付着させる。上面2Aを溶液Lの極性と同じ極性に帯電させた状態で、上面2Aへの溶液Lの粒L´の付着を減少する。原料粉末が充填する成形部1Aの表面に溶液Lを均一に付着させて、晶出層を均一に形成することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末成形体の成形方法及び粉末成形金型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
焼結部品の製造に用いる圧粉末は、Fe系、Cu系等といった原料粉末を成形型内で加圧成形することにより形成され、この後焼結の工程を経て焼結体を作製する。そして、成形工程では、成形型を用いてプレスで加圧して成形体を成形する。このプレスのときには、成形体と成形型との間には摩擦が発生する。このため粉末混合時にステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム等の、水に不溶性の脂肪酸系潤滑剤を添加し、潤滑性を付与している。
【0003】
しかしながら、このような原料粉末に潤滑剤を混合する方法では成形体の密度を向上するには限界がある。そこで、高密度の成形体を得るために、原料粉末に添加する潤滑剤を減らし、形成型に、原料粉末に添加するものと同一の潤滑剤を塗付し、潤滑性の不足を補うことができる粉末成形体の成形方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、金属素材の表面および/または成形金具の成形面に高級脂肪酸系潤滑剤を付着させる付着工程と、該金属素材および/または該成形金具を加熱する加熱工程と、該成形金具により該金属素材を温間状態で加圧成形する成形工程と、からなることを特徴とする加圧成形方法に関して、高級脂肪酸系潤滑剤の分散した水溶液の塗布には、例えば、塗装用のスプレーガンや静電ガン等を用いるスプレー法により行えることが開示されている。(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
この従来の成形方法は、加熱された金型の内面に、水に分散されている高級脂肪酸系潤滑剤を塗布する塗布工程と、前記金型に金属粉末を充填し、前記高級脂肪酸系潤滑剤が該金属粉末と化学的に結合して金属石鹸の被膜を生成する圧力で該金属粉末を加圧成形する加圧成形工程とを含む粉末成形体の成形方法であって、加熱され、内面にステアリン酸リチウムのような高級脂肪酸系潤滑剤が塗布された金型を用いて、この金型に加熱された金属粉末を充填して、この金属粉末と高級脂肪酸系潤滑剤とが化学的に結合して金属石鹸の被膜が生成される圧力でこの金属粉末を加圧成形すると、金属石鹸の被膜が金型の内面表面に生じ、その結果金属粉末の成形体と金型との間の摩擦力が減少し、成形体を抜出する圧力が少なくて済むことができるというものである。
【0006】
【特許文献1】
特許第3309970号公報(段落0012,0013)
【特許文献2】
特開2003−80337公報(段落0035)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1等の従来技術においては、潤滑剤を水に分散した分散液を金型に付着させるものであるが、金型に潤滑剤を分散した分散液をスプレー状態で付着させる際に、分散液等の塊が表面に生じて潤滑層の厚みを均一に形成できない等という問題がある。
【0008】
一方、前記分散液を金型にスプレー状態で付着する際には、分散液が成形部のみならず金型の上面に付着してしまう。この金型の上面にはフィーダー等と称せられる原料粉末の原料供給体が摺動するので、上面に付着した分散液によって原料粉末が固まりやすくなる等の弊害が懸念される。
【0009】
さらに、潤滑剤を水に分散した分散液を金型に付着させるものであるが、この付着の際に表面張力により分散液は金型の表面よりはじかれてしまい、この結果金型における粉末を成形する成形部、すなわち貫通孔の表面に分散液が均一に付着せず、このため水が蒸発した後において、成形部(貫通孔)の表面に潤滑層を全面的に形成することができなくなるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、成形部に潤滑剤による潤滑層を均一に形成して、高密度の粉末成形体を安定して得ることができる粉末成形体の成形方法及び粉末成形金型装置を提供することを目的とする。また、本発明は、成形部に潤滑剤による潤滑層を形成して、高密度の粉末成形体を安定して得る粉末成形金型装置において、成形部以外に潤滑剤を極力付着させないようにすることができる粉末成形体の成形方法及び粉末成形金型装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、成形部に潤滑剤による潤滑層を形成して、高密度の粉末成形体を安定して得る粉末成形金型装置において、金型の上面における潤滑剤の弊害をなくすことができる粉末成形金型装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、成形型本体に形成した成形部に、潤滑剤を水に溶解した溶液又は潤滑剤を水に分散した分散液を前記成形部に付着させ、前記溶液の水分又は分散液の水分を蒸発させて前記成形部に潤滑層を形成して、原料粉末を充填し、その後パンチを前記成形部に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形方法において、前記溶液又は分散液を帯電させて噴霧すると共に、前記成形部を前記溶液又は分散液の帯電の極性と逆の極性に帯電又はアースさせて、前記溶液又は分散液を前記成形部に付着させることを特徴とする粉末成形体の成形方法である。
【0012】
この請求項1の構成によれば、溶液又は分散液の粒が帯電して噴霧される共に、この粒は逆の極性に帯電又はアースした成形部に吸引されて付着する。
【0013】
請求項2の発明は、成形型本体に形成した成形部に、潤滑剤を水に溶解した溶液又は潤滑剤を水に分散した分散液を前記成形部に付着させ、前記分散液の水分又は溶液の水分を蒸発させて前記成形部に潤滑層を形成して、原料粉末を充填し、その後パンチを前記成形部に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形方法において、前記溶液又は分散液を帯電させて噴霧すると共に、前記成形部以外の前記成形型本体の表面を、前記溶液又は分散液の極性と同じ極性に帯電させた状態で、前記溶液又は分散液を前記成形部に付着させることを特徴とする粉末成形体の成形方法である。
【0014】
この請求項2の構成によれば、溶液又は分散液の粒が帯電して噴霧される共に、この粒は同じ極性に帯電した成形部以外の表面と反発して付着しにくくなる。
【0015】
請求項3の発明は、粉末成形体の側面を形成する貫通孔を上面に縦向きに有する成形型本体と、前記貫通孔に下方から嵌合する下パンチと、前記貫通孔に上方から嵌合する上パンチと、潤滑液を前記貫通孔に付着させる付着手段を備え、前記下パンチが嵌合した貫通孔に原料粉末を上方から充填する前に前記潤滑液を前記貫通孔に付着させ、前記原料粉末を充填後に、前記上パンチを前記貫通孔に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形金型装置であって、前記付着手段に帯電手段を設け、前記潤滑液の前記帯電手段と逆の極性を前記貫通孔に帯電させる逆極性帯電手段を設けることを特徴とする粉末成形金型装置である。
【0016】
この請求項3の構成によれば、溶液又は分散液の粒が帯電して付着される共に、この粒は逆極性帯電手段により帯電した貫通孔に吸引されて付着する。
【0017】
請求項4の発明は、粉末成形体の側面を形成する貫通孔を上面に縦向きに有する成形型本体と、前記貫通孔に下方から嵌合する下パンチと、前記貫通孔に上方から嵌合する上パンチと、潤滑液を前記貫通孔に付着させる付着手段を備え、前記下パンチが嵌合した貫通孔に原料粉末を上方から充填する前に前記潤滑液を前記貫通孔に付着させ、前記原料粉末を充填後に、前記上パンチを前記貫通孔に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形金型装置であって、前記付着手段に帯電手段を設け、前記潤滑液の前記帯電手段と同じの極性を前記上面に帯電させる同極性帯電手段を設けることを特徴とする粉末成形金型装置である。
【0018】
この請求項4の構成によれば、溶液又は分散液の粒が帯電して付着される共に、この粒は同じ極性に帯電した上面と反発して付着しにくくなる。
【0019】
請求項5の発明においては、前記潤滑液は、潤滑剤を溶媒に溶解した溶液又は潤滑剤を溶媒に分散した分散液であることを特徴とする請求項3又は4の粉末成形金型装置である。
【0020】
この請求項5の構成によれば、潤滑液を前記貫通孔に付着させ蒸発させて潤滑層を形成する。
【0021】
請求項6の発明においては、前記成形型本体自体による前記潤滑液との接触角度より小さくなる前記潤滑液との接触角度を有するように前記貫通孔の表面を形成したことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の粉末成形金型装置である。
【0022】
この請求項6の構成によれば、貫通孔に付着する潤滑液における接触角度を小さくできることで、貫通孔に対する潤滑液のぬれ性を向上することができる。
【0023】
請求項7の発明においては、前記成形型本体自体による前記潤滑液との接触角度より大きくなる前記潤滑液との接触角度を有するように前記上面の表面を形成したことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の粉末成形金型装置である。
【0024】
この請求項7の構成によれば、成形型本体の上面に付着する潤滑液における接触角度を大きくすることで、上面に対する潤滑液のぬれ性を低下することができる。
【0025】
【発明の実施形態】
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は第1工程を示しており、同図において、1は後述する圧粉末たる粉末成形体Aの側面を成形する成形型本体たるダイ2の上面2Aに縦方向に形成した成形部たる貫通孔であり、該貫通孔1の下方より下パンチ3が嵌合され、一方貫通孔2の上方より上パンチ4が嵌合されるようになっている。さらに、ダイ2の上面に原料粉末Mを供給する原料供給体たるフィーダー5が摺動自在に設けられている。さらに、貫通孔2の上方に潤滑剤を溶媒たる水に溶解した溶液Lを噴霧してこの溶液Lを貫通孔1に付着する付着手段たる噴霧部6が設けられており、該噴霧部6は貫通孔1に臨むように設けられると共に、溶液Lのタンク(図示せず)に自動開閉弁(図示せず)を介して接続されている。尚、溶液Lにかえて特許文献1に記載されたような潤滑剤を溶媒たる水に分散した分散液を用いてもよい。また、貫通孔1と該貫通孔1に嵌合した下パンチ3とで画成される粉末成形体Aの成形部1Aの周囲にヒータ7と温度検出部8が設けられ、そして、これらヒータ7と温度検出部8は温度制御手段たる温度制御装置9に接続され、該温度制御装置9により貫通孔2の温度を溶液Lの蒸発温度より高く、かつ潤滑剤の溶融温度よりも低く制御するようになっている。
【0026】
さらに、前記噴霧部6には噴霧される溶液Lの帯電手段10を設けると共に、プラス又はマイナスのいずれかの電極を付与するための電極装置12を帯電手段10に接続する。また、前記貫通孔1の表面11に、耐摩耗性に優れ通電性を有する一方の電極板13を設けると共に、この一方の電極板13には前記帯電手段6と逆の極性が付与されるように電極装置12が接続されて逆極性帯電手段14が形成される。前記上面2Aにも、耐摩耗性に優れ通電性を有する他方の電極板15が設けられると共に、この他方の電極板15には前記帯電手段6と同極性が付与されるように電極装置12が接続されて、同極性帯電手段16が形成される。尚、一方の電極板13と表面11との間には図示しない絶縁材が設けられ、他方の電極板15と上面2Aとの間にも図示しない別の絶縁材が設けられる。
【0027】
さらに、貫通孔1における電極板13の表面には、前記溶液Lの前記表面へのぬれ性を向上するための親水性処理を施したり親水性材料を配置したりして表面処理層20を設ける。前記表面処理層20における前記溶液Lとの接触角度Xは、前記ダイ2自体の材質によって形成される表面における前記溶液Lとの接触角度Yより小さくなることによりぬれ性を向上することができるものである。また、フィーダー5が摺動自在に設けられるダイ2の上面2Aには、前記溶液Lの前記上面2Aへのぬれ性を低下、すなわち撥水(疎水)性を向上するための撥水処理を施したり撥水材料を配置したりして表面処理層21を設ける。前記表面処理層21における前記溶液Lとの接触角度Yは、前記ダイ2の材質自体によって形成される表面より大きくなることにより前記ぬれ性を低下することができるものである。前記表面処理層21としては、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂等のSi−HやC−H結合等にみられる物質や無極性物質等により形成される。尚、前記接触角度X,Yの測定は、説明のために示した図1の状態ではなくそれぞれ表面10、上面2Aを水平に保つするなど同一条件で測定されるものである。そして前記表面処理層20としては、表1にみられるような結合をもつ酸化物、フッ化物、窒化物、塩化物、硫化物、臭化物、ヨウ化物、炭化物、水酸化物等を溶射、PVD、CVD、ショットピーニング等で親水コーティングを施したもの、酸化チタン、酸化亜鉛等のコーティングに光照射による光触媒作用を施したもの、アルカリや熱水処理等による水酸化物生成、カリウムやナトリウムイオン等のスパッタリングによる表面処理、さらには溶射被膜や粉末冶金金型の利用等で表面に微細な空孔を形成することによる溶液Lの表面張力の変化の利用等として、表面処理層により貫通孔1の表面10における溶液の接触角度を小さくして該箇所でのぬれ性を向上するようにしたものである。
【0028】
【表1】
Figure 2004322156
【0029】
尚、表面10を酸や火炎処理、電解研磨等による油性有機物等の処理を行って接触角度Xが小さくなるように前記貫通孔1の表面を形成してもよい。また、強度等に問題がなければ、金型の素材に親水性物質で構成する事が好ましい。強度や硬度を向上させるため、鉄や超硬等の金属に表1に見られるような物質を分散させても良いし、Ti、V、Si、Al等の酸化しやすい金属と合金化させて金型の素材とする事も親水性向上に効果がある。コーティングする場合も、強度や硬度を向上させるために、鉄や超硬等の金属を親水性物質といっしょにコーティングする事も金型寿命と親水性とを両立させる上で好ましい。
【0030】
そして、第1工程においては、予め温度制御装置9により制御されたヒータ7の熱により貫通孔1の表面11は溶液Lの蒸発温度より高く、かつ潤滑剤の溶融温度よりも低く設定されている。貫通孔1の電極板13に下パンチ3が嵌合して成形部1Aが形成されている状態で、自動開閉弁を開いて噴霧部6より潤滑剤の溶液Lを、ヒータ7により加熱されたダイ2の成形部1Aに吹き付けて付着させる。この際、電極装置12によって例えばマイナスに帯電した溶液Lの粒L´は霧状態となって噴出する。また、一方の電極板13は電極装置12によりプラスに帯電され、さらに他方の電極板15は電極装置12によりマイナスに帯電される。このような状態で霧状の粒L´は一方の電極板13に電気的に吸引され、粒L´は他方の電極板15に電気的に反発することとなる。この結果、貫通孔1に設けた電極板13の表面には粒L´が均一に付着し、そしてこの粒L´の水分が蒸発することで、乾燥して結晶が全面的に成長して前記潤滑剤の潤滑層たる晶出層Bが均一に形成される。一方、他方の電極板15では粒L´の付着が少なくなる。
【0031】
さらに、溶液Lを付着した際に貫通孔10における溶液Lのぬれ性を向上して、該溶液Lを表面処理層20、ひいては貫通孔1の全面に溶液を行き渡らせて、水を蒸発させることができる。一方、前記上面2Aに表面処理層21を形成したことにより、上面2Aにおける撥水性を向上して、上面2A(表面処理層21)に溶液Lをいっそうたまりにくくできる。
【0032】
次に図2の第2工程に示すように、フィーダー5が前進して原料粉末Mを成形部1Aに落下させて充填する。次に図3の第3工程にに示すように、ダイ2を下方に移動させると共に、貫通孔1の成形部1Aに上方から上パンチ4を挿入し、上パンチ4と下パンチ3とで挟むようにして原料粉末Mを圧縮する。この時、下パンチ3は、下端が固定されており動かないようになっている。そして、この第3工程において、原料粉末Mは、潤滑剤により形成されている晶出層Bに潤滑状態で圧縮される。
【0033】
このように加圧成形された粉末成形体Aは、ダイ2がさらに下方に下がり、図4の第4工程で示すように下パンチ3の上面がダイ2の上面と略同じ高さになったとき取出し可能となる。この取り出しの際においても、潤滑剤により形成されている晶出層Lに粉末成形体Aは潤滑状態で接触する。このようにして、粉末成形体Aが取出された後、再び第1工程に戻って再び成形部1Aに溶液Lが噴霧されて晶出層Lが形成された後に、原料粉末Mが成形部1Aに充填されるものである。
【0034】
以上のように、前記実施形態では、前記噴霧部6に帯電手段10を設け、前記貫通孔1に前記溶液Lの前記帯電手段10と逆の極性を帯電させる電極板13を備えた逆極性帯電手段14を設けて、前記溶液Lを帯電させて噴霧すると共に、前記電極板13を前記溶液Lの帯電の極性と逆の極性に帯電させて、前記溶液Lを前記電極板13に付着させることにより、原料粉末Mが充填する成形部1Aの表面に溶液Lを均一に付着させて、晶出層Bを均一に形成することができる。
【0035】
さらに、前記噴霧部6に帯電装置10を設け、前記上面2Aに前記溶液Lの前記帯電装置10と同じの極性を帯電させる電極板15を備えた同極性帯電手段16を設けて、前記溶液Lを帯電させて噴霧すると共に、前記上面2Aを前記溶液Lの極性と同じ極性に帯電させた状態で、前記溶液Lを前記貫通孔1に付着させることにより、上面2Aへの溶液Lの粒L´の付着を減少して上面2Aにおける溶液Lの溜まりなどを防止しながら、粒L´を成形部1A側に付着させることができる。
【0036】
また、前記原料粉末Mを充填する前に、潤滑剤を溶媒に均一な相となるように溶解した溶液Lを前記成形部1Aに付着させ、該溶液Lを蒸発させて前記成形部1Aに結晶を形成させて晶出層Bを形成することにより、成形部1Aの周面に緻密な潤滑用の層Bが形成され、粉末成形体Aの成形部1Aからの抜出圧力を低減できると共に、粉末成形体Aの密度も向上することができる。
【0037】
しかも、溶液Lを付着した際に貫通孔10における溶液Lのぬれ性を向上して、該溶液Lを表面処理層20、ひいては貫通孔1の全面に溶液を行き渡らせて、晶出層Bを全面的に形成することができ、この結果高密度の粉末成形体Aを安定して得ることができる。また、前記上面2Aに表面処理層21を形成して、フィーダー5に収容されている原料粉末Mに溶液Lが触れ難くして溶液Lにより原料粉末Mが固まる粉だまりを防止することができる。
【0038】
尚、前記第1実施形態の変形例として第2実施形態を図5、図6を参照して説明する。尚、前記第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。噴霧部6には噴霧される溶液Lの帯電手段10を設けると共に、マイナスの電極を付与するための電極装置12を帯電手段10に接続する。また、前記貫通孔1の表面11はアース側となるように、ダイ2にはアース手段たるアースコード2Bが接続されており、このアースにより逆極性となる。前記上面2Aには、耐摩耗性に優れ絶縁性を有する板状の絶縁体17が設けられる。この絶縁体17は、粒L´の帯電で自然に同極性の帯電状態となる。尚、図中12Aは電極装置12に接続したアースコードである。
【0039】
そして、第1工程においては、予め温度制御装置9により制御されたヒータ7の熱により貫通孔1の表面11は溶液Lの蒸発温度より高く、かつ潤滑剤の溶融温度よりも低く設定されている。貫通孔1の電極板13に下パンチ3が嵌合して成形部1Aが形成されている状態で、自動開閉弁を開いて噴霧部6より潤滑剤の溶液Lを、ヒータ7により加熱されたダイ2の成形部1Aに吹き付けて付着させる。この際、電極装置12によって例えばマイナスに帯電した溶液Lの粒L´は霧状態となって噴出する。このような状態で霧状の粒L´はアースされたダイ2の成形部1Aに電気的に吸引され、粒L´は絶縁体17には吸引されないこととなる。この結果、貫通孔1の表面には粒L´が均一に付着し、そしてこの粒L´の水分が蒸発することで、乾燥して結晶が全面的に成長して前記潤滑剤の潤滑層たる晶出層Bが均一に形成される。一方、上面2Aでは粒L´の付着が少なくなる。
【0040】
次に図2の第2工程に示すように、フィーダー5が前進して原料粉末Mを成形部1Aに落下させて充填し、さらに原料粉末Mを圧縮する。この時、原料粉末Mは、潤滑剤により形成されている晶出層Bに潤滑状態で圧縮されるものである。
【0041】
以上のように、第2実施形態では前記噴霧部6に帯電手段10を設け、前記貫通孔1側をアースして、前記溶液Lを帯電させて噴霧すると共に、前記溶液Lを成形部1A(貫通孔1)の表面に付着させることにより、原料粉末Mが充填する成形部1Aの表面に溶液Lを均一に付着させて、晶出層Bを均一に形成することができる。
【0042】
次に第3実施形態を図7を参照して説明する。尚、前記第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
第3実施形態においては、前記表面11には、前記溶液Lのぬれ性を向上するための親水性処理を施したり親水性材料を配置したりして表面処理を施したダイ2の成形部1Aを設ける。前記ダイ2の成形部1Aにおける前記溶液Lとの接触角度Xは、前記ダイ2自体の材質によって形成される表面11又は材質が直接表れる上面2Aにおける前記溶液Lとの接触角度Yより小さくなる(X<Y)ことにより前記ぬれ性を向上することができるものである。尚、前記接触角度X,Yの測定は、それぞれ表面11、上面2Aを水平に保つなど同一条件で測定されるものである。そして前記ダイ2の成形部1Aの表面処理としては、酸化物、フッ化物、窒化物、塩化物、硫化物、臭化物、ヨウ化物、炭化物、水酸化物を溶射、PVD、CVD、ショットピーニング等で親水コーティングを施したもの、酸化チタン、酸化亜鉛等のコーティングに光照射による光触媒作用を施したもの、アルカリや熱水処理等による水酸化物生成、カリウムやナトリウムイオン等のスパッタリングによる表面処理、さらには溶射被膜や粉末冶金金型の利用等で表面に微細な空孔を形成することによる溶液Lの表面張力の変化の利用等として、表面処理により貫通孔1における溶液Lの接触角度Xを小さくして該箇所でのぬれ性を向上するようにしたものである。また親水コーティングはできるだけ導電性を付与させるとよい。尚、表面11を酸や火炎処理等による油性有機物処理を行って接触角度Xが小さくなるように前記貫通孔1の表面を形成してもよい。
【0044】
したがって、第3実施形態では、自動開閉弁を開いて噴霧部6より潤滑剤の溶液Lを、ヒータ7により加熱されたダイ2の成形部1Aに吹き付けて付着させる。この際、溶液Lの噴霧状態の粒L´は、電気的吸引によりダイ2の成形部1Aに均一に付着することができる。そして、前記ダイ2自体における前記溶液Lとの接触角度Yより小さくなる前記溶液Lとの接触角度Xを有するように前記貫通孔1の表面11に表面処理を有するダイ2の成形部1Aを設けたことにより、溶液Lを付着した際に貫通孔1における溶液Lのぬれ性を向上して、該溶液Lをダイ2の成形部1Aに行き渡らせて、水を蒸発させることにより晶出層を全面的に形成することができ、この結果高密度の粉末成形体を安定して得ることができる。
【0045】
また、フィーダー5が摺動自在に設けられるダイ2の上面2Aには、前記溶液Lの前記上面2Aへのぬれ性を低下、すなわち撥水(疎水)性を向上するための撥水処理を施したり撥水材料を配置したりして表面処理を施した絶縁体17を設ける。前記絶縁体17における前記溶液Lとの接触角度Yは、前記ダイ2の材質自体によって形成される表面、第3実施形態では貫通孔1の表面11における前記溶液Lとの接触角度Xより大きくなる(Y>X)ことにより前記ぬれ性を低下することができるものである。前記絶縁体17としては、固形油含浸絶縁体等非親水性材質により形成したり、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂の撥水コーティングなどにより施される。また、固形油を塗布する等の油層によって形成するようにしてもよい。又、撥水コーティング自体が絶縁性であればダイ2の上面2Aに直接コーティングしてもよい。
【0046】
したがって、自動開閉弁を開いて噴霧部6より潤滑剤の溶液Lを、ヒータ7により加熱されたダイ2の成形部1Aに吹き付けて付着させる。この際、溶液Lの噴霧状態の粒は、電気的に反発して上面に付着し難くなるが、その一部が上面2Aに付着してしまったとしても、この上面2Aおける接触角度Yは前記表面処理層21によりダイ2に直接触れた溶液Lの接触角度Xよりも大きくなり、この結果溶液Lがはじかれて上面2Aに溶液Lが溜まるようなことを抑止するようになる。
【0047】
以上のように、粒L´が上面2Aの絶縁体17より反発して付着しにくくなり、万一粒L´が絶縁体17に付着してもダイ2自体における溶液Lとの接触角度Xより大きくなる前記溶液Lとの接触角度Yを有するように絶縁体17を形成したことにより、溶液Lをたまりにくくしてフィーダー5に収容されている原料粉末に溶液Lが触れ難くして溶液Lにより原料粉末が固まる粉だまりを防止することができる。
【0048】
尚、以下に実施例及び比較例を表2〜4により説明する。表2〜4における実施例及び比較例は、いずれも原料粉末として鉄粉(平均粒径90μm)に、潤滑剤としてステアリン酸リチウム(平均粒径5μm)を0.2重量%添加したものを回転混合機で30分混合したものを用い、加圧面積1cmの円柱を成形する成形型に、前記混合した原料粉末を7g充填し、この後8t/cmの成形圧力で粉末成形体を連続で100個成形したものである。そして、実施例のものでは、水溶性潤滑剤を水に溶解した溶液を150°Cに加熱された成形型の成形部に付着させた後に、蒸発、乾燥させて晶出層を形成し、この後に、原料粉末を充填するようにしたものである。比較例1は、ステアリン酸リチウム(平均粒径5μm)をアセトンに分散させたものを150°Cに加熱された成形型の成形部に付着させた後に、乾燥させて被膜を形成し、この後に、原料粉末を充填するようにしたものである。比較例2は成形型には潤滑剤を用いない場合である。表中の密度のRは、連続100個成形した成形体密度の最大値と最小値の差である。
【0049】
【表2】
Figure 2004322156
【0050】
【表3】
Figure 2004322156
【0051】
【表4】
Figure 2004322156
【0052】
表2〜4の比較結果として、実施例では、成形型より圧粉末を抜き出す抜出圧力は、比較例1の抜出圧力以下ですみ、また実施例では、比較例1より密度の向上を図ることができ、さらに、密度のRが非常に小さくなった。これにより、実施例においては連続成形でも高密度の成形を安定して行うことができる。
【0053】
尚、前記潤滑剤は、水溶性のりん酸系金属塩として、りん酸水素2カリウム、りん酸水素2ナトリウム、りん酸3カリウム、りん酸3ナトリウム、ポリりん酸カリウム、ポリりん酸ナトリウム、りん酸リボフラビンカリウム、りん酸リボフラビンナトリウム等の様に構造中にりん酸系の基を含むものが好適である事が表2〜4からわかる。
【0054】
水溶性の硫黄酸塩系金属塩として、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸カリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、食用青色1号(C3734Na)、食用黄色5号(C16lONa)、アスコルビン酸硫酸エステルカリウム、アスコルビン酸硫酸エステルナトリウム等の様に構造中に硫酸系の基を含むものが好適である事が表2〜4からわかる。
【0055】
水溶性のほう酸系金属塩として、四ほう酸カリウム、四ほう酸ナトリウム等の様に構造中にほう酸系の基を含むものが好適である事が表2〜4からわかる。
【0056】
水溶性のけい酸系金属塩として、けい酸カリウム、けい酸ナトリウム等の様に構造中にけい酸系の基を含むものが好適である事が表2〜4からわかる。
【0057】
水溶性のタングステン酸系金属塩として、タングステン酸カリウム、タングステン酸ナトリウムの様に構造中にタングステン酸系の基を含むものが好適である事が表2〜4からわかる。
【0058】
水溶性の有機酸系金属塩として、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の様に構造中に有機酸系の基を含むものが好適である事が表2〜4からわかる。
【0059】
水溶性の窒素酸系金属塩として、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等の様に構造中に窒素酸系の基を含むものが好適である事が表2〜4からわかる。
【0060】
水溶性の炭酸系金属塩として、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の様に構造中に炭酸系の基を含むものが好適である事が表2〜4からわかる。
【0061】
これらの挙げられた様な潤滑剤の1種又は2種以上を用いることができる。
【0062】
そして、水溶性潤滑剤の濃度は、前記晶出層Bの厚みが前記潤滑剤の1分子により形成される濃度以上で飽和濃度未満とする。具体的には1PPM〜飽和濃度とする。これは、1PPM未満では、成形型に付着する潤滑剤が多量でなければ安定して潤滑性が得られる晶出相の被膜が得難いためであり、飽和濃度以上では、潤滑剤が溶解しきれず固体となって沈殿し、噴霧部6による付着を行なう場合、噴務部6が詰まる等の不具合が発生するためである。
【0063】
また、溶解する水は、蒸留水やイオン交換水といった金属成分やハロゲン元素成分を取り除いた水が好ましい。潤滑剤の種類によっては、容易に水中の金属成分と置換して沈殿物を生成して不具合を起こす場合があり、また、ハロゲン成分が多量に含まれていた場合、圧粉体が錆びやすくなったり、焼結時にダイオキシン等の有害物質が生成したりする不具合を起こす場合があるためである。
【0064】
さらに、潤滑剤の種類によっては、微生物が繁殖して腐りやすいという問題があり、成分が変化したり悪臭が発生する場合があるが、防腐剤を添加することで微生物の発生を防止することができる。防腐剤には、安息香酸ナトリウム等の潤滑性を損なわず、人体に対する有害性が低く、ハロゲン元素成分を含まないものが好ましい。
【0065】
また、潤滑剤の種類によっては、泡が発生しやすいという問題があり、溶液Lを成形部1Aに付着させたときに、泡が発生して原料粉末が固まるおそれがあるが、アルコールやケトンといった水溶性の溶媒や消泡剤を添加することで泡の発生を防止することができる。アルコールやケトンには、エタノールやアセトン等の潤滑性を損なわず、人体に対する有害性が低く、ハロゲン元素成分を含まないものが好ましい。
【0066】
アルコールやケトンといった水溶性の溶媒には、水よりも沸点や蒸発潜熱の低いものを使用することで、蒸発、乾燥時間を短くしたり、成形型本体2を高温にする必要がなくなる場合もある。
【0067】
これらの潤滑剤及び添加物、溶解する水にはハロゲン元素が含まれていると、炭素成分の共存中で焼結するという鉄系の粉末冶金でよく使用される条件ではダイオキシン等の微量で毒性の高い成分の生成が懸念されるため、ハロゲン元素を含ませないことが好ましい。
【0068】
成形型本体2の温度や混合した原料粉末Mは、高温にした方が乾燥時間の短縮や温間成形の効果等があるため好ましいが、不具合がなければ常温でもよい。高温にする場合は、原料粉末が固まったり潤滑剤が金型(成形部1A)の底へ流れ落ちるため安定して温間成形することが困難であるため設定温度で溶融しない潤滑剤の選定が好ましいが、不具合がなければ半溶融状態や高粘性状態、2種以上の潤滑剤配合の1種以上が溶融状態でもよい。従来使用されていたステアリン酸亜鉛は約120°C、ステアリン酸リチウムは約220°Cで溶融するためそれ以上の温度で安定して温間成形することが困難であったが、本発明の潤滑剤の中には220°C以上で溶融しないものは多数存在し、中には1000°Cを超えても溶融しないものも含まれているため、金型(成形部1A)の耐熱温度や原料粉末の酸化温度ぎりぎりまで高温にして容易に安定して温間成形することが可能である。但し、その場合は、原料粉末の流動性の問題等があるため、混合した原料粉末Mに添加する潤滑剤も高温で溶けないもの、例えば、本発明の潤滑剤を粉末状にしたものや固体潤滑剤である黒鉛や2硫化モリブデン等にしたり、潤滑剤を入れずに成形型潤滑だけで成形した方が好ましい。
【0069】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、第2実施形態と第3実施形態のものを組み合せるようにしてもよい。また、前記実施形態において潤滑剤を溶媒に溶解した溶液とは、潤滑剤を溶媒に一部でも溶解したものを含んでいるものでもよい。また、前記原料粉末を充填する前に、前記溶液を前記成形部に付着させ、該溶液を蒸発させて前記成形部に晶出層を形成した後にパンチを前記成形部に嵌合して粉末成形体を成形するものであるが、前記原料粉末を充填する前に必ず溶液を前記成形部に付着させ、該溶液を蒸発させて前記成形部に晶出層を形成する必要はなく、例えば始めの粉末成形体の成形後に、溶液を前記成形部に付着させずに始めの晶出層を利用してそのまま原料粉末を充填して次の成形を行い、次に3回目の原料粉末を充填する前に溶液を前記成形部に付着させ、該溶液を蒸発させて前記成形部に2回目の晶出層を形成するように断続的な連続により溶液を前記成形部に付着させるようにしてもよい。さらに、第1実施形態では、表面処理層20,21を電極板13の表面、上面2Aに全面的に設けるものを示したが、図8に示すように、表面処理層20,21を電極板13の表面、上面2Aに部分的に、すなわち点在するように設けてもよい。
【0070】
【発明の効果】
請求項1の発明は、成形型本体に形成した成形部に、潤滑剤を水に溶解した溶液又は潤滑剤を水に分散した分散液を前記成形部に付着させ、前記溶液の水分又は分散液の水分を蒸発させて前記成形部に潤滑層を形成して、原料粉末を充填し、その後パンチを前記成形部に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形方法において、前記溶液又は分散液を帯電させて噴霧すると共に、前記成形部を前記溶液又は分散液の帯電の極性と逆の極性に帯電又はアースさせて、前記溶液又は分散液を前記成形部に付着させることを特徴とする粉末成形体の成形方法であり、成形部における溶液又は分散液の付着を均一にして、潤滑層を均一に形成できる。
【0071】
請求項2の発明は、成形型本体に形成した成形部に、潤滑剤を水に溶解した溶液又は潤滑剤を水に分散した分散液を前記成形部に付着させ、前記分散液の水分又は溶液の水分を蒸発させて前記成形部に潤滑層を形成して、原料粉末を充填し、その後パンチを前記成形部に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形方法において、前記溶液又は分散液を帯電させて噴霧すると共に、前記成形部以外の前記成形型本体の表面を、前記溶液又は分散液の極性と同じ極性に帯電させた状態で、前記溶液又は分散液を前記成形部に付着させることを特徴とする粉末成形体の成形方法であり、成形部以外の表面における溶液又は分散液の付着を少なくして、成形部以外の表面に付着した溶液又は分散液の弊害をなくすことができる。
【0072】
請求項3の発明は、粉末成形体の側面を形成する貫通孔を上面に縦向きに有する成形型本体と、前記貫通孔に下方から嵌合する下パンチと、前記貫通孔に上方から嵌合する上パンチと、潤滑液を前記貫通孔に付着させる付着手段を備え、前記下パンチが嵌合した貫通孔に原料粉末を上方から充填する前に前記潤滑液を前記貫通孔に付着させ、前記原料粉末を充填後に、前記上パンチを前記貫通孔に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形金型装置であって、前記付着手段に帯電手段を設け、前記潤滑液の前記帯電手段と逆の極性を前記貫通孔に帯電させる逆極性帯電手段を設けることを特徴とする粉末成形金型装置であリ、貫通孔における溶液又は分散液の付着を均一にして、潤滑層を均一に形成できる。
【0073】
請求項4の発明は、粉末成形体の側面を形成する貫通孔を上面に縦向きに有する成形型本体と、前記貫通孔に下方から嵌合する下パンチと、前記貫通孔に上方から嵌合する上パンチと、潤滑液を前記貫通孔に付着させる付着手段を備え、前記下パンチが嵌合した貫通孔に原料粉末を上方から充填する前に前記潤滑液を前記貫通孔に付着させ、前記原料粉末を充填後に、前記上パンチを前記貫通孔に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形金型装置であって、前記付着手段に帯電手段を設け、前記潤滑液の前記帯電手段と同じの極性を前記上面に帯電させる同極性帯電手段を設けることを特徴とする粉末成形金型装置であり、上面における溶液又は分散液の付着を少なくして、上面に付着した溶液又は分散液の弊害をなくすことができる。
【0074】
請求項5の発明においては、前記潤滑液は、潤滑剤を溶媒に溶解した溶液又は潤滑剤を溶媒に分散した分散液であることを特徴とする請求項3又は4の粉末成形金型装置であり、貫通孔に均一な潤滑層が形成され、粉末成形体の密度等を向上することができる。
【0075】
請求項6の発明においては、前記成形型本体自体による前記潤滑液との接触角度より小さくなる前記潤滑液との接触角度を有するように前記貫通孔の表面を形成したことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の粉末成形金型装置であり、貫通孔に潤滑液を全面的に配置することにより、粉末成形体の成形にあって潤滑性能を向上することができる。
【0076】
請求項7の発明においては、前記成形型本体自体による前記潤滑液との接触角度より大きくなる前記潤滑液との接触角度を有するように前記上面の表面を形成したことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の粉末成形金型装置であり、前記上面より潤滑液を排除することにより、充填される原料粉末の品質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す第1工程の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示す第2工程の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示す第3工程の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示す第4工程の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す第1工程の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す第2工程の断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 貫通孔
1A 成形部
2 ダイ(成形型本体)
3 下パンチ
4 上パンチ
6 噴霧部(付着手段)
10 帯電装置
14 逆極性帯電手段
16 同極性帯電手段
17 絶縁体
20 21 表面処理層
B 潤滑層
L 溶液
M 原料粉末

Claims (7)

  1. 成形型本体に形成した成形部に、潤滑剤を水に溶解した溶液又は潤滑剤を水に分散した分散液を前記成形部に付着させ、前記溶液の水分又は分散液の水分を蒸発させて前記成形部に潤滑層を形成して、原料粉末を充填し、その後パンチを前記成形部に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形方法において、前記溶液又は分散液を帯電させて噴霧すると共に、前記成形部を前記溶液又は分散液の帯電の極性と逆の極性に帯電又はアースさせて、前記溶液又は分散液を前記成形部に付着させることを特徴とする粉末成形体の成形方法。
  2. 成形型本体に形成した成形部に、潤滑剤を水に溶解した溶液又は潤滑剤を水に分散した分散液を前記成形部に付着させ、前記分散液の水分又は溶液の水分を蒸発させて前記成形部に潤滑層を形成して、原料粉末を充填し、その後パンチを前記成形部に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形方法において、前記溶液又は分散液を帯電させて噴霧すると共に、前記成形部以外の前記成形型本体の表面を、前記溶液又は分散液の極性と同じ極性に帯電させた状態で、前記溶液又は分散液を前記成形部に付着させることを特徴とする粉末成形体の成形方法。
  3. 粉末成形体の側面を形成する貫通孔を上面に縦向きに有する成形型本体と、前記貫通孔に下方から嵌合する下パンチと、前記貫通孔に上方から嵌合する上パンチと、潤滑液を前記貫通孔に付着させる付着手段を備え、前記下パンチが嵌合した貫通孔に原料粉末を上方から充填する前に前記潤滑液を前記貫通孔に付着させ、前記原料粉末を充填後に、前記上パンチを前記貫通孔に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形金型装置であって、前記付着手段に帯電手段を設け、前記潤滑液の前記帯電手段と逆の極性を前記貫通孔に帯電させる逆極性帯電手段を設けることを特徴とする粉末成形金型装置。
  4. 粉末成形体の側面を形成する貫通孔を上面に縦向きに有する成形型本体と、前記貫通孔に下方から嵌合する下パンチと、前記貫通孔に上方から嵌合する上パンチと、潤滑液を前記貫通孔に付着させる付着手段を備え、前記下パンチが嵌合した貫通孔に原料粉末を上方から充填する前に前記潤滑液を前記貫通孔に付着させ、前記原料粉末を充填後に、前記上パンチを前記貫通孔に嵌合して粉末成形体を成形する粉末成形体の成形金型装置であって、前記付着手段に帯電手段を設け、前記潤滑液の前記帯電手段と同じの極性を前記上面に帯電させる同極性帯電手段を設けることを特徴とする粉末成形金型装置。
  5. 前記潤滑液は、潤滑剤を溶媒に溶解した溶液又は潤滑剤を溶媒に分散した分散液であることを特徴とする請求項3または4に記載の粉末成形金型装置。
  6. 前記成形型本体自体による前記潤滑液との接触角度より小さくなる前記潤滑液との接触角度を有するように前記貫通孔の表面を形成したことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の粉末成形金型装置。
  7. 前記成形型本体自体による前記潤滑液との接触角度より大きくなる前記潤滑液との接触角度を有するように前記上面の表面を形成したことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の粉末成形金型装置。
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