JP2004321927A - 保護層形成材の塗布装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ローラ機構部34は、ローラ48を回転自在に支持し、保護層形成材を供給する複数のノズル孔114が設けられたパイプ112と、前記ローラ48と前記パイプ112との間に介装される吸収保持部材124とを備える。この吸収保持部材124は保護層形成材を含んで一定時間保持しておくことが可能な材質より形成され、径方向に分割される分割部126a、126bを備えている。そして、ローラ48に供給される保護層形成材が、該ローラ48の内部で保持されるとともに、吸収保持部材124の内部においても同様に保持される。
【選択図】図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装が終了した車両の塗装部を主にする外表面に保護層形成材を塗布する保護層形成材の塗布装置に関し、特に、乾燥後に剥離性保護層として作用する液状の保護層形成材を塗布する保護層形成材の塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両は、製造後にユーザに手渡されるまでに屋外ストックヤードで保管されたり、トレーラ、船等で搬送されることが多い。この間、車両は粉塵、金属粉、塩分、油分、酸、直射日光等に曝されることから、長時間の保管および搬送の間には、車両の外表面における複数の塗装層のうち表面層の品質が侵されるおそれがある。このような事態を防ぐため、車両出荷前の段階において塗装部に剥離性保護層を形成させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
剥離性保護層は液状ラップ材である保護層形成材(ストリッパブルペイントとも呼ばれる)を塗布して乾燥させることにより形成され、塗装部を保護することができる。また、除去する際には容易に剥離させることができるとともに、通常の保管時には自然に剥離してしまうことがない。
【0004】
剥離性保護層が乾燥する前の保護層形成材を塗布する工程では、ローラに保護層形成材を付着させて、複数の作業者がローラを転がして保護層形成材の塗布を行っている。
【0005】
このような作業の自動化を図り、作業者の負担を軽減させるとともに塗布品質を均一化させるために、ボディ上に保護層形成材を抽出した後、エアを吹き付けることによって保護層形成材を広げる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法によれば保護層形成材の塗布工程における作業の多くが自動化され、作業者の負担を軽減するとともに、タクトタイムを向上させることができて好適である。
【0006】
また、車両を生産する工場では、組み立て作業においてボディを傷つけることがないようにスクラッチカバーと呼ばれる樹脂製のカバーを仮付けすることがある。スクラッチカバーは、例えば、ボディの前方横面に仮付けされ、出荷前に外される。スクラッチカバーは車種毎に違う形状のものを用意する必要があり、さらに搬送ラインにおける日々の生産台数に応じて多数用意する必要がある。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−89697号公報(段落[0022]〜[0027])
【特許文献2】
特開平8−173882号公報(図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えば、製造された自動車等の車両の中には、屋外ストックヤードで保管されることなく、製造後に即座にユーザに手渡されるものがある。その場合、前記車両に対して剥離性保護層である保護層形成材を塗布しないことがある。また、前記車両に対して保護層形成材を塗布するためのラインにおいては、上記のように保護層形成材を塗布する必要がない車両(以下、単に非塗布車両という)と保護層形成材の塗布が必要な車両(以下、単に塗布車両という)とが混在してラインに搬送されている。
【0009】
例えば、前記塗布車両に対してローラで保護層形成材を塗布した後に非塗布車両が搬送されてきた場合、前記ラインにおける保護層形成材の塗布装置は、前記ローラを一旦車両と干渉することがない上方へと待避させ、前記非塗布車両が塗布装置の位置を通過した後、再び塗布車両が搬送されてきた際にローラを待避位置より下方へと変位させて保護層形成材を車両へと塗布している。
【0010】
しかしながら、前記ローラを車両の上方へと待避させた際、前記ローラの内部に所定量含有された保護層形成材がその重力作用下に該ローラから下方へと滴下し、前記ローラの下方を搬送される非塗布車両に対して保護層形成材が付着してしまうことが懸念される。
【0011】
なお、その内部が中空状に形成されている構造を有するローラにおいては、中実状のローラと比較して中空状の空間により多くの保護層形成材が蓄えられるため、前記ローラの中空状の空間における保護層形成材が重力作用下により滴下しやすいこととなる。
【0012】
また、ローラに含有されている保護層形成材が滴下することにより無駄が生じるという問題がある。
【0013】
本発明は、前記の問題を考慮してなされたものであり、保護層形成材を塗布しない場合におけるローラからの保護層形成材の滴下を抑制するとともに、前記保護層形成材を効率的に使用することが可能な保護層形成材の塗布装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、車両の搬送ラインの近傍に設けられ、ティーチング動作可能なロボットと、
前記ロボットに接続され、回転自在であって、乾燥後に剥離性保護層として作用する液状の保護層形成材を吸収して蓄えることのできる材質からなるローラと、
前記保護層形成材を前記ローラに供給する供給機構部と、
前記ローラの内部に配設され、該ローラとは別個に前記保護層形成材を吸収して蓄えることのできる材質からなる保持部材と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、ローラの内部に該ローラとは別個に保護層形成材を吸収して蓄えておくことができる材質からなる保持部材を設けることにより、保護層形成材を前記保持部材の内部において好適に蓄えることができる。そのため、前記保護層形成材を、ローラと保持部材との両方に蓄えておくことができ、前記ローラに含まれた保護層形成材がその重力作用下に下方へ滴下することを抑制することができる。
【0016】
従って、保護層形成材の塗布作業を行わない場合においても、ローラの下方を搬送される車両に対して該ローラから滴下した保護層形成材が付着することを防止することができる。また、それに伴って、保護層形成材が下方に滴下することによって生じる該保護層形成材の浪費を防止することができる。
【0017】
さらに、保護層形成材の材料にアクリル系コポリマ剤を用いることにより、車両の塗装部をより確実に保護することができる。しかも、車両の塗装部から保護層形成材を除去する際には、簡単に剥がすことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る保護層形成材の塗布装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図1〜図11を参照しながら説明する。
【0019】
図1および図2に示されるように、本実施の形態に係る保護層形成材の塗布装置10は、自動車の搬送ライン12に設けられるものであり、塗装の終了した車両14に対して保護層形成材を塗布するものである。
【0020】
塗布装置10は、産業用ロボットである3台のロボット16a、16b、16cと、システム全体の制御を行う制御部18と、保護層形成材が収容されたタンク20と、該タンク20から各ロボット16a〜16cに連通する塗布材管路22と、水供給源24からロボット16a〜16cへ水を供給する水管路26とを有する。ロボット16a〜16cはそれぞれ制御部18に接続されたロボットコントローラ28a、28b、28cによって制御される。
【0021】
ロボット16aおよび16cは、搬送ライン12における車両14の進行方向左手側に設けられ、ロボット16bは、進行方向右手側に設けられている。また、ロボット16aは進行方向前方、ロボット16bは進行方向の中程、ロボット16cは進行方向後方に備えられている。ロボット16a〜16cは搬送ライン12と平行なスライドレール30上を移動可能である。
【0022】
塗布材管路22の途中にはポンプ32が設けられており、タンク20から保護層形成材を吸い上げてロボット16a〜16cへ供給する。また、タンク20および塗布材管路22は、図示しないヒータと温度計とによって温度制御されており、保護層形成材を適温に保っている。ロボット16a〜16cの先端部には、それぞれ塗布材管路22によって保護層形成材が供給されるローラ機構部34が設けられている。
【0023】
保護層形成材の材料は、アクリル系コポリマ剤を主成分とするものであって、好ましくは、ガラス転移温度の異なる2種のアクリル系コポリマ部分を有するものであるとよい。具体的には、例えば、前記の特許文献1で示されている保護層形成材を用いるとよい。また、保護層形成材は、水との混合割合および温度の変化によって粘度を調整することができ、しかも、乾燥すると車両14に密着して粉塵、金属粉、塩分、油分、酸、直射日光等から車両14の塗装部を化学的および物理的に保護することができる。さらに、車両14をユーザに納品する際等で除去するときには、容易に剥離させることができる。
【0024】
図3に示されるように、ロボット16a〜16cは、例えば、産業用の多関節型ロボットであり、ベース部40と、該ベース部40を基準にして順に、第1アーム42、第2アーム44および第3アーム46とを有し、該第3アーム46の先端にローラ機構部34が設けられている。ローラ機構部34は、第3アーム46に対して着脱自在であり、所謂、エンドエフェクタとして作用する。
【0025】
第1アーム42は、ベース部40に対して水平および垂直に回動可能な軸J1、J2によって回動可能である。第2アーム44は、第1アーム42と軸J3で回動可能に連結されている。第2アーム44は、軸J4によって捻れ回転が可能になっている。第3アーム46は、第2アーム44と軸J5で回動可能に連結されている。第3アーム46は、軸J6によって捻れ回転が可能である。
【0026】
このような6軸構成のロボット16a〜16cの動作によって、先端部に接続されたローラ機構部34が車両14の近傍における任意の位置に移動可能であって、かつ、任意の向きに設定可能である。換言すれば、ローラ機構部34は6自由度の移動が可能である。ロボット16a〜16cは、回転動作以外にも伸縮動作、平行リンク動作等の動作部を有するものであってもよい。
【0027】
図4〜図6に示されるように、ローラ機構部34は、ロボット16a(16b、16c)の第3アーム46の先端部に取り付けられており、円筒形状で保護層形成材を吸収して蓄えることのできる材質からなるローラ48と、ロボット16aの第3アーム46に対する取付部であるスラスト回転機構69とを有する。ローラ48の両端はホルダ86により回転自在に保持されており、前記ローラ48の内部にはホルダ86の一端部を介して接続されたパイプ112(後述する)が挿通されている。前記パイプ112は、塗布材管路22および水管路26と接続されるチューブ22aに接続されている。なお、ローラ48はホルダ86に対して着脱自在である。
【0028】
また、スラスト回転機構69は、第3アーム46に対する取付部材70と、該取付部材70に対してベアリング72を介して回転自在に支持されているスラスト回転部材74と、該スラスト回転部材74の下に取り付けられたベース部76とを有する。
【0029】
また、ローラ機構部34は、ベース部76の両端部に設けられた空気圧シリンダ78および80と、ベース部76の略下端の揺動軸82に揺動自在に軸支された揺動部材84と、ローラ48を保持するホルダ86と揺動部材84とを接続するホルダ接続部88とを有する。ローラ48は揺動軸82を中心として、径方向に揺動自在である。揺動部材84は、上方に延在する2つの上方延在部84aを有し、該上方延在部84aの略上端には、揺動軸82と平行なピン90が設けられている。このピン90は揺動軸82より上方に設定されている。
【0030】
さらに、ローラ機構部34は、前記空気圧シリンダ78および80のロッド78aおよびロッド80aから力を受けて、前記揺動軸82を中心として回転する2つのピン押圧部材92および94を有する。ピン押圧部材92の押圧面92aは、ロッド78aが縮退するとき図6における前記ピン90の左面を押圧し、ピン押圧部材94の押圧面94aは、ロッド80aが縮退するとき図6における前記ピン90の右面を押圧する。
【0031】
2つの上方延在部84aの間には、ベース部76から下方に延在する2つの下方延在部76aが配置され、該2つの下方延在部76aの間に押圧面92aおよび94a(図6参照)が配置されている。
【0032】
スラスト回転部材74には回転規制部材96が設けられており、該回転規制部材96の上面の凹部96aには、取付部材70から下方に突出する小突起98が配置されている。小突起98の幅は凹部96aの幅よりやや小さく、この隙間の範囲においてスラスト回転部材74はスラスト方向に回転自在となっている。ここでいうスラスト方向とは、ローラ48自体の軸心と直交する方向であり、第3アーム46の軸心C(図6参照)を中心とした回転方向である。取付部材70を第3アーム46に取り付けるためのボルト100を小突起98に兼用してもよい。
【0033】
ホルダ接続部88には、上部と下部で対向する2つのクランパ102および104が設けられている。これらのクランパ102および104はアルミパイプ106を保持しており、該アルミパイプ106により揺動部材84とホルダ86が連結されている。アルミパイプ106の表面には環状溝106aが設けられている。
【0034】
ホルダ86は、図4および図5に示されるように、板状のホルダ本体86eを備える。ホルダ本体86eの一端には、固定ホルダ部86aがボルト86bによって固定される一方、前記ホルダ本体86eの他端には、可動ホルダ部86cが軸部材86dを介して旋回自在に装着される。固定ホルダ部86aには、ナット110aによって連結部材110bが固定され、この連結部材110bの一端側開口には、塗布材管路22等に接続されたチューブ22aが接続される。
【0035】
連結部材110bの他端側開口には、中空状のパイプ112の第1端部112aが接続される。パイプ112は、塗布材管路22から供給される保護層形成材をローラ48内に供給するとともに、前記ローラ48を回転自在に支持する。この第1端部112aには、複数(例えば、2箇所)の図示しない円錐状の溝が形成されており、この溝に連結部材110b側から図示しない埋め込みボルト等が係合することによって、パイプ112が連結部材110bに強固に装着されている。なお、前記パイプ112の第2端部112bは閉塞されている。
【0036】
パイプ112には、供給された保護層形成材をローラ48へと送給するための複数のノズル孔114が形成されている。パイプ112は、ステンレス鋼材により形成されると好適である。
【0037】
可動ホルダ部86cの先端側には、円形溝部86fが形成されている。この可動ホルダ部86cは、スプリング116の付勢作用下に旋回可能であり、該スプリング116の弾発力によって前記円形溝部86fに前記パイプ112の第2端部112bが係合される。そのため、パイプ112が確実に保持される。
【0038】
図5および図7に示されるように、ローラ48は、保護層形成材を吸収して蓄えることが可能な材質により形成されるとともに、車両14の表面に密着することで該保護層形成材を塗布する中空状の塗布部材(塗布部)48aと、この塗布部材48aの両端の開口部48bに、Oリング120を介して液密に装着される端部キャップ122とを備える。
【0039】
端部キャップ122の中心には、孔部122aが形成され、この孔部122aにパイプ112が直接挿通されることにより、前記端部キャップ122は、ローラ48と一体的に前記パイプ112に対して回転自在に支持される。パイプ112と孔部122aとは、塗布部材48aの内部に保護層形成材を保持可能な程度に嵌め合いが調整されている。
【0040】
図7および図8に示されるように、パイプ112とローラ48との間には、略円筒状の吸収保持部材(保持部材)124が介装される。吸収保持部材124は、保護層形成材を吸収して蓄えることのできる材質(例えば、スポンジ)から形成され、前記ローラ48と一体的に回転するように設けられている。なお、前記吸収保持部材124の材質は、保護層形成材を含有して一定時間蓄えておくことが可能な材質であれば特に限定されるものではない。詳細には、吸収保持部材124の材質は、ローラ48が形成されている材質と略同等の時間もしくは若干長い時間だけ保護層形成材を含有させて蓄えておくことができる材質であると好適である。
【0041】
また、前記吸収保持部材124は、径方向に分割される複数、例えば、2つの分割部126a、126bを備えてもよい。
【0042】
さらに、前記吸収保持部材124の内部に、径方向に放射線状に貫通する複数の孔部(図示せず)をそれぞれ所定間隔ずつ離間するように設けてもよい。これにより、前記パイプ112における前記ノズル孔114を介して供給される保護層形成材を、前記孔部を介してローラ48に均一かつ確実に供給することができる。
【0043】
図9に示されるように、ローラ48に保護層形成材を供給するための液圧および空圧の複合回路(供給機構部)150は、コンプレッサ152と、該コンプレッサ152の吐出部に接続されたエアタンク154と、空気圧の供給・遮断状態の切り換えを行う手動の空圧投入弁156と、制御部18から供給される電気信号によって2次側圧力を減少させるレギュレータ158と、該レギュレータ158の2次側圧力によってパイロット操作されて塗布材管路22の圧力を減少させるレギュレータ操作弁160とを有する。
【0044】
また、複合回路150は、レギュレータ操作弁160の2次側管路および水管路26が接続されたMCV(Material Control Valve、供給切換弁)162と、MCV162の2次側とローラ48との間に設けられたトリガー弁164とを有する。MCV162の内部には、塗布材管路22および水管路26の連通・遮断状態の切り換えを行う切換弁162a、162bが設けられており、該切換弁162a、162bの2次側は連通している。なお、図9の破線は空気圧管路を示す。
【0045】
MCV162、トリガー弁164およびレギュレータ操作弁160は、空気圧パイロット式に限らず電気ソレノイド等の駆動方式のものでもよい。
【0046】
複合回路150は、さらに、空圧投入弁156から供給される空気圧を切り換えることによって切換弁162a、162bをパイロット形式で操作するMCV切換電磁弁166と、トリガー弁164をパイロット操作するトリガー切換電磁弁168とを有する。
【0047】
MCV切換電磁弁166は制御部18から供給される電気信号によって、切換弁162a、162bのいずれか一方を連通させるとともに他方を遮断し、水と保護層形成材とを切り換えてトリガー弁164に供給する。トリガー切換電磁弁168は、制御部18から供給される電気信号によってトリガー弁164を連通・遮断状態に切り換えて、ローラ48に水または保護層形成材を供給する。
【0048】
塗布材管路22および水管路26の途中には、それぞれ手動の止め弁170、172が設けられている。通常、止め弁170および172は連通させておく。
【0049】
複合回路150において空気の排出口には、それぞれサイレンサ174が設けられており、排気音を低減させている。コンプレッサ152、ポンプ32および水供給源24には、過剰な圧力上昇を防止するリリーフ弁(図示せず)が設けられている。
【0050】
なお、複合回路150におけるコンプレッサ152、エアタンク154、水供給源24およびポンプ32は、各ロボット16a〜16cに共通であり、それ以外の機器は各ロボット16a〜16cに個別に備えられている。
【0051】
次に、このように構成される保護層形成材の塗布装置10を用いて、車両14に保護層形成材を塗布する方法について説明する。
【0052】
まず、予め、各ロボット16a〜16cに対して動作の教示を行う。ロボット16a〜16cに車両14のボンネット部14a(図1参照)、ルーフ中央部14bおよびルーフ後方部14cをそれぞれ分担させて、各担当部に保護層形成材を塗布させるように教示し、教示したティーチングデータは制御部18の所定の記録部に記録し、保持しておく。車両14がセダン型であるときには、ロボット16cはトランク部を分担する。なお、参照符号14dは、サンルーフ孔(図1参照)を示す。
【0053】
図10に示されるように、ロボット16aの第3アーム46(図3参照)と車両14の表面との距離を適当に保ち、具体的には、平坦な箇所Paにおいて揺動部材84の傾斜角度をマイナス方向に角度θとなるように教示し、平坦な箇所Paから第3アーム46を車両14の表面に平行に移動させる。また、平坦な箇所Paから連続する面における浅い凹部500の箇所Pbにおいても、そのまま平坦な箇所Paにおける面と平行に移動させてよい。
【0054】
さらに、平坦な箇所Paから連続する面における低い凸部502の箇所Pcにおいても、そのまま平坦な箇所Paにおける面と平行に移動させてよい。このように、凹部500および凸部502は無視し、揺動部材84の傾斜角度を多少変化させるようにしてもよい。このように浅い凹部500や比較的低い凸部502も無視することによりロボット16aの動作教示が容易になる。
【0055】
次に、ロボット16aを、図10中、右方向へ移動させながら、車両14に保護層形成材を塗布する際には、ロッド80aが縮退する方向に比較的弱い力Faを発生するように右側の空気圧シリンダ80に空気を供給する。また、ロッド78aが延出するように、左側の空気圧シリンダ78に空気を供給する。これにより、右側のピン押圧部材94の押圧面94aは、ピン90の右側面を比較的弱い力で押圧し、左側のピン押圧部材92の押圧面92aは、前記ピン90から離間する。従って、揺動部材84およびローラ48は、揺動軸82を中心として反時計方向の力を受けることになり、ローラ48が適当な押圧力で車両14の表面に押圧される。
【0056】
ローラ48の適用箇所や移動方法に応じて、力Faが適宜調整される。この調整は、前記レギュレータ176に相当する押圧力調整機能部を制御部18により操作し、または、所定のダイヤル等を操作することにより容易に行うことが可能である。
【0057】
一方、図11に示されるように、ロボット16aを左方向に移動させながら車両14に保護層形成材を塗布する際には、ロッド78aが縮退する方向に比較的弱い力Faを発生するように、左側の空気圧シリンダ78に空気を供給する。また、ロッド80aが延出するように右側の空気圧シリンダ80に空気を供給する。これにより、左側のピン押圧部材92の押圧面92aは、ピン90の左側面を比較的弱い力Faで押圧し、右側のピン押圧部材94の押圧面94aは、前記ピン90から離間する。従って、揺動部材84およびローラ48は、揺動軸82を中心として時計方向の力を受けることになり、ローラ48が適当な押圧力で車両14の表面に押圧される。
【0058】
このように、ロボット16aの進行方向に応じて空気圧シリンダ78および80に供給する空気の流れの方向と圧力とを制御することにより、ローラ48を車両14の表面に対して適度に押圧することができる。
【0059】
ロボット16a〜16cによって保護層形成材が塗布された車両14は、搬送ライン12によって次工程へ搬送される。そして、ロボット16a〜16cは、車両14と干渉することのない待機姿勢を保持し、次の車両14が搬入されるまで待機する。このとき、トリガー弁164を遮断させ保護層形成材の供給を停止させる。塗布された保護層形成材は、自然乾燥または送風しながら乾燥させて剥離性保護層を形成し、車両14の塗装部を保護する。
【0060】
この場合、図5および図7に示されるように、パイプ112の第1端部112aには、塗布材管路22等と接続されたチューブ22aが接続され、このチューブ22aから供給される保護層形成材は、前記パイプ112の複数のノズル孔114から吸収保持部材124内に吐出される。そして、前記保護層形成材が、吸収保持部材124の内部を介してローラ48内に送給され、前記ローラ48の軸方向全長にわたって前記保護層形成材が略均一に供給される。
【0061】
以上のような保護層形成材の塗布工程において、ローラ48の内部に該ローラ48とは別個に保護層形成材を含有した状態で所定時間だけ蓄えておく吸収保持部材124が設けられている。従って、保護層形成材を吸収保持部材124の内部に好適に蓄えておくことができ、このため、前記ローラ48によって保護層形成材の塗布作業を行っていない場合においても、前記ローラ48に含まれた保護層形成材がその重力作用下に下方へ滴下することはない。
【0062】
その結果、保護層形成材の塗布装置10におけるローラ48を車両の上方へと待避させた際、前記ローラ48の内部に所定量含有された保護層形成材がその重力作用下に該ローラ48から下方へ滴下することを抑制することができる。結局、前記ローラ48の下方に搬送される非塗布車両に対して保護層形成材が付着することを防止することができ、それに伴って、保護層形成材が下方に滴下することによって生じる該保護層形成材の浪費を回避することができる。
【0063】
また、ローラ48に保護層形成材を保持しておきたい時間に応じて、前記吸収保持部材124の材質、半径方向に沿った厚さ等を設定することにより、保護層形成材を一時的に蓄えておく時間を任意に調整することができる。
【0064】
さらに、前記吸収保持部材124の内部に、径方向に放射線状に貫通する複数の孔部をそれぞれ所定間隔ずつ離間するように設けてもよい。これにより、前記パイプ112における前記ノズル孔114を介して供給される保護層形成材を、前記孔部を介してローラ48に略均一かつ確実に供給することができる。
【0065】
さらに、保護層形成材により形成される剥離性保護層は、車両14の出荷後において塗装部を保護することができる一方、工場内においても塗装部を保護することができ、スクラッチカバーの代用となる。従って、車種毎に違う形状の多数のスクラッチカバーを省略することができる。
【0066】
車両14のバンパには着色されていて塗装が不要のものがあるが、保護層形成材はこのようなバンパ等の塗装部以外の箇所に塗布してもよい。
【0067】
本発明に係る保護層形成材の塗布装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0069】
すなわち、ローラの内部に保護層形成材を吸収して蓄えておくことができる材質からなる保持部材を設けることにより、保護層形成材を前記保持部材の内部において好適に蓄えておくことができ、前記ローラに含まれた保護層形成材がその重力作用下に滴下することを抑制することができる。また、それに伴って、保護層形成材が滴下することによって生じる該保護層形成材の浪費を回避することができる。
【0070】
さらに、保護層形成材の材料としてアクリル系コポリマ剤を用いることによって、車両をより一層保護することができ、しかも除去するときには剥がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る保護層形成材の塗布装置の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る保護層形成材の塗布装置の正面図である。
【図3】前記塗布装置におけるロボットおよび該ロボットに設けられたローラ機構部の斜視図である。
【図4】ローラ機構部の拡大斜視図である。
【図5】ローラ機構部の一部断面拡大正面図である。
【図6】ローラ機構部の側面図である。
【図7】ローラ機構部の要部分解斜視図である。
【図8】ローラ機構部の要部縦断面図である。
【図9】液圧および空圧の複合回路を示す回路図である。
【図10】ローラ機構部を有するロボットを右方向へ動作させる過程において、ロボットと車両の表面との位置関係を示す説明図である。
【図11】ローラ機構部を有するロボットを左方向へ動作させる過程において、ロボットと車両の表面との位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10…塗布装置 12…搬送ライン
14…車両 16a〜16c…ロボット
18…制御部 20…タンク
22…塗布材管路 26…水管路
30…スライドレール 32…ポンプ
34…ローラ機構部 48…ローラ
78、80…空気圧シリンダ 78a、80a…ロッド
82…揺動軸 84…揺動部材
86…ホルダ 112…パイプ
112a、112b…端部 114…ノズル孔
124…吸収保持部材 126a、126b…分割部
Claims (2)
- 車両の搬送ラインの近傍に設けられ、ティーチング動作可能なロボットと、
前記ロボットに接続され、回転自在であって、乾燥後に剥離性保護層として作用する液状の保護層形成材を吸収して蓄えることのできる材質からなるローラと、
前記保護層形成材を前記ローラに供給する供給機構部と、
前記ローラの内部に配設され、該ローラとは別個に前記保護層形成材を吸収して蓄えることのできる材質からなる保持部材と、
を備えることを特徴とする保護層形成材の塗布装置。 - 請求項1記載の保護層形成材の塗布装置において、
前記保護層形成材の材料は、アクリル系コポリマ剤であることを特徴とする保護層形成材の塗布装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003119671A JP2004321927A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 保護層形成材の塗布装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003119671A JP2004321927A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 保護層形成材の塗布装置 |
Publications (2)
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JP2004321927A true JP2004321927A (ja) | 2004-11-18 |
JP2004321927A5 JP2004321927A5 (ja) | 2005-11-10 |
Family
ID=33498835
Family Applications (1)
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JP2003119671A Pending JP2004321927A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 保護層形成材の塗布装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2004321927A (ja) |
-
2003
- 2003-04-24 JP JP2003119671A patent/JP2004321927A/ja active Pending
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