JP2004317708A - 画像形成装置およびその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】定着温度の設定値に対応した昇温目標温度および定着許可温度を設定する。加熱ローラを初期温度T0から定着温度の設定値Tf1まで昇温させる時には、昇温目標温度をTp1に設定するとともに、加熱ローラ温度が定着許可温度Te1に達した時刻t1に定着動作の実行を許可する。一方、定着温度をより高い温度Tf2に設定したときには、昇温目標温度および定着許可温度もTp2、Te2に変更する。そのため、ユーザの待ち時間が長くなることもなく、定着特性も良好に保たれる。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、画像形成装置における定着技術、すなわち、トナー像を担持した記録媒体を加熱することによって、前記記録媒体上に前記トナー像を定着させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
複写機、プリンタおよびファクシミリ装置などの画像形成装置では、画像情報に対応して形成されたトナー像が紙や透明シートなどの記録媒体上に転写され、こうしてトナー像を転写された記録媒体に定着器からの熱を加えることで、トナー像が記録媒体上に定着される。この種の定着器の一般的な構成は、所定温度に加熱された加熱ローラと、記録媒体上のトナー像に押圧力を加えるための加圧ローラとを対向配置し、2つのローラが当接したニップ部に記録媒体を通過させるというものである。また、トナー像に適当な圧力を与えるため、これらのローラの表面はゴムなどの弾性材料により形成されていることが多い。
【0003】
記録媒体の加熱温度(定着温度)は一定の画像品質を得る上で重要な要素であり、その温度が安定していることが要求される。一方、画像品質上の要求や記録媒体の厚さ、材質等に応じて、ユーザが定着温度を変更したい場合がある。例えば、比較的厚く熱容量の大きな用紙に画像を良好に定着させるためには、用紙による吸熱を見込んで予め定着温度を高めに設定しておくのが好ましい。
【0004】
このような要請に応えるため、定着器の設定温度をユーザが自由に設定できるようにした装置が従来より提案されている。例えば、特許文献1に記載された定着器では、内部にヒータを設けた定着ローラ(加熱ローラ)表面の温度を検出し、その表面温度が所定の目標温度となるようにヒータへの通電を制御しており、しかも、その目標温度として予め設定されたもの以外に、ユーザが所望の温度をオペレーションパネルから設定入力することができるようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−161112号公報(第5頁、図3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この種の定着器では、定着ローラが有する熱容量のため、目標温度に対応した制御指令が与えられても、実際にその温度が目標温度になるまでに時間遅れが生じるのを避けられない。また、記録媒体が通過するタイミングや記録媒体の熱特性も必ずしも一定でなく、これらの現象が定着器の温度制御を難しくしている。
【0007】
これに加えて、上記のように定着温度を可変とした場合、その温度制御はさらに困難なものとなる。例えば、その設定値によっては、定着ローラが過熱されてその表面温度がオーバーシュートしたり、温度上昇に異常に時間がかかるなどの問題を生じることがある。しかしながら、これまで、このような問題については十分に検討されておらず、定着温度を可変とした画像形成装置における温度制御技術の確立が望まれる。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、定着温度を可変とした画像形成装置に好適な定着器の温度制御技術を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる画像形成装置またはその制御方法は、加熱手段と、前記加熱手段の温度を制御する制御手段とを備え、トナー像を担持した記録媒体に所定の定着温度に制御した前記加熱手段を当接させることによって、前記記録媒体上に前記トナー像を定着させる定着動作を実行する画像形成装置またはその制御方法において、上記目的を達成するため、前記定着温度を変更設定可能となっており、しかも、前記加熱手段を昇温させるときには、前記定着温度の設定値に対応して、前記設定値より低温の定着許可温度を設定するとともに、前記加熱手段の温度が前記定着許可温度以上であれば前記定着動作の実行を許可することを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、定着温度の設定値に応じた定着許可温度が設定される。そして、加熱手段の温度が次第に上昇してこの定着許可温度以上になれば、定着動作の実行が許可される。つまり、加熱手段の温度が、所定の定着温度ではなく、これ未満の値である定着許可温度に達した時点で定着動作の実行を許可している。これは、定着動作が許可されてから実際に記録媒体が加熱手段と当接して定着動作が開始されるまでの間にも、加熱手段の温度が上昇することを見越したものである。こうすることで、加熱手段の昇温開始から定着動作が開始されるまでの所要時間の短縮を図ることができる。この時間は、ユーザにとっては待ち時間となるから、待ち時間を短縮することで、よりユーザフレンドリーな装置となる。
【0011】
このとき、定着温度が可変であるにもかかわらず定着許可温度を一定としたのでは、次のような問題がある。すなわち、定着温度と定着許可温度との差が大きすぎたのでは、十分に温度が上昇しないうちに定着動作が始まってしまい、その結果、定着不良を起こすおそれがある。また、両温度の差が小さすぎたのでは、上気した待ち時間の短縮効果が薄れてしまう。つまり、良好な定着特性を得ながら、待ち時間の短縮を図るためには、定着温度に応じた定着許可温度を設定する必要がある。
【0012】
そこで、この発明では、定着温度の設定値に応じた定着許可温度が設定されるようにしているので、良好な定着特性と、待ち時間の短縮という2つの効果の両立を図ることが可能である。
【0013】
なお、本発明および下記の発明にいう「加熱手段の昇温」は、例えば装置の電源投入直後やスリープ状態からの復帰時のように、加熱手段がある程度冷えた状態から定着動作可能な温度にまで上昇させるときの温度制御動作を意味しており、所定の目標温度に制御されている加熱手段の温度がその目標温度を下回ったときにそれを補償するために行う制御を指すものではない。
【0014】
また、この発明にかかる他の画像形成装置またはその制御方法は、加熱手段と、前記加熱手段の温度を制御する制御手段とを備え、トナー像を担持した記録媒体に所定の定着温度に制御した前記加熱手段を当接させることによって、前記記録媒体上に前記トナー像を定着させる定着動作を実行する画像形成装置またはその制御方法において、上記目的を達成するため、前記定着温度を変更設定可能となっており、しかも、前記加熱手段を昇温させるときには、前記定着温度の設定値に対応して、前記設定値より高温の昇温目標温度を設定するとともに、昇温開始から所定の期間、前記昇温目標温度に基づいて前記加熱手段の温度制御を行うことを特徴としている。
【0015】
このように構成された発明では、加熱手段を昇温させるときの昇温目標温度は、実際に定着動作を行うときの定着温度より高温に設定される。そのため、低温から定着温度に至るまでの温度上昇が速く、上記した発明と同様に、ユーザの待ち時間を短縮することができる。
【0016】
このとき、変更可能な定着温度に対して昇温時の昇温目標温度を一定としたのでは、次のような問題がある。すなわち、定着温度と昇温目標温度との差が大きすぎたのでは、加熱手段の温度が急激に上昇してオーバーシュートを生じてしまい、やはり定着不良や記録媒体の損傷を招くおそれがある。また、両温度の差が小さすぎたのでは、上気した待ち時間の短縮効果が薄れてしまう。つまり、良好な定着特性を得ながら、待ち時間の短縮を図るためには、定着温度に応じた昇温目標温度を設定する必要がある。
【0017】
そこで、この発明では、定着温度の設定値に応じた昇温目標温度が設定されるようにしているので、良好な定着特性と、待ち時間の短縮という2つの効果の両立を図ることが可能である。なお、本発明にいう「所定の期間」、すなわち上記昇温目標温度に基づいて温度制御を行う期間としては、予め定められた所定時間であってもよく、また加熱手段の温度が予め定められた所定温度に達するまでであってもよい。また、その所定時間または所定温度を、定着温度の設定値に応じて定めるようにしてもよい。
【0018】
また、これらの発明において、前記定着温度を互いに異なる値に設定して前記定着動作を実行する複数の定着動作モードを実行可能とするとともに、前記定着許可温度または前記昇温目標温度が、次に実行すべき定着動作モードが決定しているときはその定着動作モードにおける前記定着温度の設定値に対応した値に設定される一方、次に実行すべき定着動作モードが決定していないときは、前記複数の定着動作モードのそれぞれに対して設定された定着温度のうち最も高温の設定値に対応した値に設定されるようにしてもよい。
【0019】
すなわち、次にどの定着動作モードが実行されるかについては昇温中の時点で必ずしも決定しておらず、この場合、定着許可温度または昇温目標温度をどの動作モードでの定着温度に基づいて設定すればよいかを決めることができない。そこで、最も高温の定着温度に設定される動作モードに対応してこれらの値を仮設定し加熱手段の温度を上昇させておくことで、その後に決定される定着動作モードがいずれであっても、速やかに対応することができる。
【0020】
また、上記のように構成された画像形成装置において、前記加熱手段の温度を、前記定着温度の設定値に対応して該設定値より低温に設定された予熱温度に予め制御しておき、前記定着動作の開始に先立って、その制御温度を前記定着温度の設定値に変更するようにしてもよい。
【0021】
このように構成された発明では、定着動作を行わないときには、加熱手段の温度が定着時より低温の予熱温度に制御されている。そして、定着動作の開始に先立ち制御温度を定着温度に変更すると、加熱手段にはその温度を上昇させるためそれまでより多量の熱エネルギーが一時的に供給されることとなる。定着動作中には、記録媒体との当接により加熱手段の温度が低下することは避けられないが、こうして加熱手段に蓄えられた熱エネルギーが順次記録媒体に与えられることで、その温度低下を抑制することが可能となる。
【0022】
さらに、これらの画像形成装置においては、前記加熱手段は、前記制御手段により発熱量を制御される発熱体と、前記発熱体から発生する熱を前記記録媒体に伝達するための伝熱部材とを備えるようにすることができる。このように、発熱体と記録媒体との間に伝熱部材を介在させれば、その熱容量を利用して、加熱手段の温度変動を抑制することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置1は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)を重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置1では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像信号がメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じてエンジンコントローラ10がエンジン部EG各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、シートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0024】
このエンジン部EGでは、感光体22が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体22の周りにその回転方向D1に沿って、帯電ユニット23、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部25がそれぞれ配置されている。帯電ユニット23は所定の帯電バイアスを印加されており、感光体22の外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。クリーニング部25は一次転写後に感光体22の表面に残留付着したトナーを除去し、内部に設けられた廃トナータンクに回収する。これらの感光体22、帯電ユニット23およびクリーニング部25は一体的に感光体カートリッジ2を構成しており、この感光体カートリッジ2は一体として装置1本体に対し着脱自在となっている。
【0025】
そして、この帯電ユニット23によって帯電された感光体22の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームLを感光体22上に露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。
【0026】
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では、現像ユニット4は、図1紙面に直交する回転軸中心に回転自在に設けられた支持フレーム40、支持フレーム40に対して着脱自在のカートリッジとして構成されてそれぞれの色のトナーを内蔵するイエロー用の現像器4Y、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびブラック用の現像器4Kを備えている。この現像ユニット4は、エンジンコントローラ10により制御されている。そして、このエンジンコントローラ10からの制御指令に基づいて、現像ユニット4が回転駆動されるとともにこれらの現像器4Y、4C、4M、4Kが選択的に感光体22と当接してまたは所定のギャップを隔てて対向する所定の現像位置に位置決めされると、当該現像器に設けられて選択された色のトナーを担持する現像ローラ44から感光体22の表面にトナーを付与する。これによって、感光体22上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。
【0027】
上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラ72〜75に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラ73を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向D2に回転させる駆動部(図示省略)とを備えている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体22上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト71上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、カセット8から1枚ずつ取り出され搬送経路Fに沿って二次転写領域TR2まで搬送されてくる「記録媒体」であるシートS上にカラー画像を二次転写する。
【0028】
このとき、中間転写ベルト71上の画像をシートS上の所定位置に正しく転写するため、二次転写領域TR2にシートSを送り込むタイミングが管理されている。具体的には、搬送経路F上において二次転写領域TR2の手前側にゲートローラ81が設けられており、中間転写ベルト71の周回移動のタイミングに合わせてゲートローラ81が回転することにより、シートSが所定のタイミングで二次転写領域TR2に送り込まれる。
【0029】
また、こうしてカラー画像が形成されたシートSは定着ユニット(定着器)9、排出前ローラ82および排出ローラ83を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部89に搬送される。また、シートSの両面に画像を形成する場合には、上記のようにして片面に画像を形成されたシートSの後端部が排出前ローラ82後方の反転位置PRまで搬送されてきた時点で排出ローラ83の回転方向を反転し、これによりシートSは反転搬送経路FRに沿って矢印D3方向に搬送される。そして、ゲートローラ81の手前で再び搬送経路Fに乗せられるが、このとき、二次転写領域TR2において中間転写ベルト71と当接し画像を転写されるシートSの面は、先に画像が転写された面とは反対の面である。このようにして、シートSの両面に画像を形成することができる。
【0030】
また、この装置1では、図2に示すように、ユーザからの操作入力を受け付ける操作パネル13を備えている。そのため、ユーザは操作パネル13に設けられたボタンやタッチパネル等を用いて、装置の動作や画像品質等に関する各種設定入力を行うことができる。また、タッチパネルにはユーザに対する各種案内やメッセージを表示するようにしてもよい。また、この設定操作は、ホストコンピュータなどの外部装置からの指令により行うようにしてもよい。
【0031】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリであり、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0032】
図3はこの画像形成装置の定着ユニットを示す図である。より詳しくは、図3(a)は定着ユニット9の構造を示す拡大断面図であり、図3(b)は定着ユニット9の制御回路を示す図である。この定着ユニット9では、加熱ローラ91と加圧ローラ92とがニップ部Nにおいて当接するように配置されている。加熱ローラ91は、円筒状に形成されたスリーブ91bと、その内部に挿入されたヒータ91cとを備えている。スリーブ91bは、例えば、鉄、銅、アルミニウムやその合金など、熱伝導性の高い金属で形成されるのが好ましい。また、ヒータ91cとしては、例えばハロゲンヒータを用いることができる。
【0033】
スリーブ91bの表面には、トナーを均一に加熱して定着ムラの発生を抑制し、また加熱ローラ91へのトナーの融着を防止するための表面層91aが設けられている。この表面層91aは、耐熱性および弾性を有する材料で形成されるが、熱伝導率の高い材料を用いることがより好ましい。このような材料としては、例えばシリコーンゴムやフッ素樹脂などの樹脂材料を用いることができる。また、加熱ローラ91の表面温度を検出するサーミスタ93が、加熱ローラ91の表面層91aに当接して設けられている。また、加圧ローラ92も、加熱ローラ91と同様に、金属管または金属棒の表面にシリコーンゴム等の表面層を設けたものを用いることができるが、広いニップ幅を確保するため、表面層の厚さは加熱ローラ91のそれより大きくするのが好ましい。これらのローラ91、92は、後述する定着動作を実行するときには、図3(a)においてそれぞれの上方に示した矢印の方向に回転する一方、加熱ローラ91は所定温度に温度制御される。
【0034】
このように構成された定着ユニット91では、次のようにして加熱ローラ91の表面温度が制御されている。すなわち、加熱ローラ91に当接しているサーミスタ93の電気抵抗は加熱ローラ91の表面温度によって変化する。サーミスタ93にはプルアップ抵抗94を介して直流電源電圧が印加されているので、その端子電圧Vthも温度により変化する。そのため、CPU101はサーミスタ93の端子電圧Vthから加熱ローラ91の表面温度を求めることができる。CPU101は、こうして求めた加熱ローラ91の実際の温度とその目標温度とに基づいてヒータ91cへの通電をオン・オフ制御することによって、加熱ローラ91の表面温度を所定温度に制御する。より具体的には、ヒータ91cと、該ヒータ91cに電力を供給する交流電源97との間にリレー96が介挿されており、CPU101がリレー96を制御して、ヒータ91cへの通電をオン・オフする。これによって加熱ローラ91の表面温度が上昇または下降する。すなわち、この実施形態では、CPU101が本発明の「制御手段」として機能している。
【0035】
CPU101による通電の制御方法としては、温度制御法として従来より公知の種々の制御方法を用いることができるが、例えば、加熱ローラ91を常温から所定温度まで素早く上昇させる必要があるウォームアップ時にはPD制御を、またその温度を所定の温度範囲に保つ必要がある定着動作時にはPI制御を用いるのが好ましい。また、交流電源97としては、商用交流電源をそのまま、あるいはトランスにより絶縁・電圧変換したものを用いることができる。
【0036】
この定着ユニット9による画像の定着動作について、図3(a)を参照しながら説明する。カセット8から二次転写領域TR2(図1)に搬送されたシートSには、中間転写ベルト71上に担持されていたトナー像Imが転写される。このとき、トナー像Imは静電気力によって単にシートS上に付着しているだけであり、擦過されると容易に剥落してしまう状態である。このシートSは、定着ユニット9の下方からニップ部Nに向けて搬送されてくる。そして、シートSがニップ部Nを通過する間に、トナー像Imを構成しているトナーが加熱ローラ91からの熱により融解するとともに加圧され、シートSに融着される。こうしてトナー像ImがシートS上に定着される。すなわち、この実施形態では、加熱ローラ91が本発明の「加熱手段」として機能している。また、ヒータ91cが本発明の「発熱体」として機能する一方、スリーブ91bおよび表面層91aが「伝熱部材」として機能している。
【0037】
図4は昇温動作時の加熱ローラの温度変化を示す模式図である。この画像形成装置では、装置の電源が投入されると、CPU101がエンジン部EG各部を画像形成動作が可能な状態に移行させるべくウォームアップ動作を開始する。定着ユニット9については、加熱ローラ91を定着温度Tf1まで昇温させる。この定着温度Tf1は、シートSに転写されたトナー像Imを定着させるためシートS上のトナーを融解するのに必要な温度に設定されているが、後述するように、シートSの種類やユーザの好みに応じて変更設定することが可能となっている。
【0038】
ここでは、時刻t=0で装置の電源が投入されたものとし、そのときの加熱ローラ91の表面温度をT0とする。電源が切られた状態では、加熱ローラ91の温度は低下しており、代表的には、その表面温度T0は室温である。この状態で装置の電源が投入されると、CPU101は、加熱ローラ91の表面温度を定着温度Tf1まで上昇させるべく、昇温動作を開始する。このとき、CPU101は、加熱ローラ91の制御目標温度を定着温度Tf1とするのではなく、定着温度Tf1に対応してこれより高温の昇温目標温度Tp1を設定し、この昇温目標温度Tp1を加熱ローラ91の目標温度として温度制御を行う。このように、昇温時の制御目標温度を本来の定着温度Tf1より高く設定して加熱ローラ91の温度制御を行うことによって、より急速に加熱ローラ91の温度を上昇させることができ、ウォームアップ動作に要する時間(ウォームアップ時間)を短縮することができる。その結果、ユーザにとっては、電源を投入してから最初の画像を得るまでの時間、すなわちファーストプリントタイムが短縮されて、待ち時間が短くなるというメリットが得られる。
【0039】
なお、この昇温動作は、加熱ローラ91および加圧ローラ92をそれぞれ所定の回転方向(図3(a)の矢印方向)に回転させながら行う。というのは、加熱ローラ91の熱はこれと当接する加圧ローラ92にも伝えられるが、こうすることで、加熱ローラ91および加圧ローラ92の表面温度を均一にすることができるからである。また、特に、ヒータを持たない加圧ローラ92の温度をより短時間で上昇させるために、ウォームアップ動作においては加熱ローラ91をいったん定着温度Tf1より高温、例えば昇温目標温度Tp1まで昇温させるようにしてもよい。こうすることで、加圧ローラ92の表面温度が定着温度近くまで上昇するので、より良好な定着特性を得ることができる。
【0040】
さらに、この実施形態では、CPU101は、サーミスタ93により検出した加熱ローラ91の表面温度が上記した定着温度Tf1に上昇するのを待たず、加熱ローラ91の表面温度が定着温度Tf1より低い定着許可温度Te1に達した時点で定着動作の実行を許可する。この定着許可温度Te1は次のような意味を有する。
【0041】
すなわち、定着動作の実行が許可されてから実際にシートSが定着ユニット9のニップ部Nに到達するまでには時間差があり、この間にも加熱ローラ91の昇温は可能である。したがって、この時間差と、その間の温度変化とが予測可能であれば、昇温中の加熱ローラ91の表面温度が定着温度Tf1に達するより先に定着動作の実行を許可してもよい。
【0042】
図4を用いて具体的に説明すると、時刻t=0において表面温度T0であった加熱ローラ91は、昇温動作によりその温度が次第に上昇し、時刻t2に定着温度Tf1に到達する。この時刻t2の時点で定着動作を許可したのでは、実際に定着動作が実行されてシートSに定着された画像が得られるのはこれよりさらに遅くなり、ユーザの待ち時間は長くなってしまう。
【0043】
ここで、定着動作が許可されてからシートSがニップ部Nに到達するまでの最短の時間差Δtが予めわかっていれば、加熱ローラ91の温度が定着温度Tf1に達する時刻t2より時間Δtだけ先に定着動作の実行を許可することができる。また、定着温度Tf1に近い温度での加熱ローラ91の温度変化が予測可能であれば、加熱ローラ91がある温度から定着温度Tf1まで上昇するのに要する時間を推定することが可能である。加熱ローラ91が昇温中であり、しかも定着温度Tf1に近い温度にまで達した状態では装置の周囲温度の影響も少なく、このような予測は可能である。
【0044】
したがって、加熱ローラ91が、時間Δt後に定着温度Tf1に達すると推定される温度、つまり図4に示す温度Te1に達した時刻t1(t1=t2−Δt)で定着動作の実行を許可するようにすれば、シートSがニップ部Nに到達する時には加熱ローラ91が定着温度Tf1となっているので良好な定着特性が得られ、しかも、加熱ローラ91が所定の定着温度Tf1に達すると直ちに定着動作が行われるので、ユーザの待ち時間が短縮される。このように、実際に定着動作が開始されるまでの温度上昇を見越して定着動作の実行を許可するための閾値となる温度が、定着許可温度Te1である。
【0045】
なお、加熱ローラ91の表面温度が同じであっても、その内部の温度分布は必ずしも同じとは限らない。そして、その温度分布の違いに起因して、加熱ローラ91の温度が定着許可温度Te1から定着温度Tf1まで変化するのに要する時間も一定ではない。したがって上記予測は常に成り立つものではないが、少なくとも、加熱ローラ91の温度が十分に低下した状態からの昇温動作においては、ヒータ91cの発熱量と加熱ローラ91および加圧ローラ92の熱容量とから、予測は可能である。このように予測が可能となるのは、上記した電源投入直後のほか、スリープ状態(消費電力低減のためヒータ91cへの通電をオフに保った状態)から画像形成が可能な状態に復帰させる時がある。より一般的には、加熱ローラ91の表面温度が所定の下限温度(図4に示す温度Tmin)以下の状態から定着動作が可能な状態にまで昇温させるときに、上記のような制御方法を適用することが可能である。
【0046】
また、定着温度Tf1および定着動作が許可されてからシートSがニップ部Nに到達するまでの時間Δtは、使用するトナーや装置の構造、動作シーケンスなどによって決まる値である。したがって、上記した各値、すなわち昇温目標温度Tp1、定着許可温度Te1、下限温度Tminも、装置構成に応じて適宜定められるべきものである。
【0047】
また、加熱ローラ91の制御目標とする温度は、当初の昇温目標温度Te1から最終的には定着温度Tf1に切り換えるとともに、その制御方法もウォームアップ動作時のPD制御からPI制御に切り換える必要があるが、これらの切り換えをどの時点で行うかについても、装置構成、特にヒータ91cの発熱量や加熱ローラ91および加圧ローラ92の熱特性に合わせて適宜定めればよい。例えば、加熱ローラ91の温度が定着許可温度Te1または他の基準温度に達した時点でこれらの切り換えを行うことができる。こうすることで、定着許可温度Te1までは加熱ローラ91の温度を急速に上昇させることができ、しかも、その後、速やかにその温度を定着温度Tf1に収束させることができる。
【0048】
また、例えば、加熱ローラ91が定着許可温度Te1または定着温度Tf1に達した時点で外部装置からの画像信号入力がなく、直ちに定着動作を行う必要がないときには、前記したように、いったん定着温度を超えて昇温目標温度Tp1付近まで加熱ローラ91の温度を上昇させ、その後、制御目標温度を定着温度に変更するようにしてもよい。少なくとも、加熱ローラ91が定着温度Tf1に近い温度になるまでは、その制御目標温度を昇温目標温度Tp1に保持するのが好ましい。
【0049】
ところで、この種の画像形成装置では、一般に定着温度を高くすると定着後のトナー像の光沢が増すことが知られている。そこで、その光沢の程度を好みに応じて加減すべく、所定の画像品質が得られる範囲で定着温度を変更してもよい。また、トナーや装置の特性に起因する画像品質のばらつきを抑えるため、定着温度を加減したい場合もある。これに鑑み、この装置では、ユーザまたはオペレータが操作パネル13を操作することによって、定着温度を所定の範囲で変更設定可能としている。さらに、この装置では、シートSの違い、すなわちシートSが普通紙か厚紙かによって2つの定着動作モード、すなわち普通紙モードおよび厚紙モードを切り換えており、そのモード毎に個別に定着温度を設定することができるようにしている。具体的には、厚紙ではその熱容量が大きいため、普通紙の場合より定着温度を高く設定するようにしている。
【0050】
図5は定着温度を高くしたときの加熱ローラの温度変化を示す模式図である。ここでは、定着温度をその標準値Tf1からこれより高いTf2に変更するものとする。なお、同図に示す一点鎖線は、定着温度、定着許可温度および昇温目標温度をそれぞれTf1、Te1およびTp1に設定した場合の温度変化を示している。このとき、定着温度の変更に合わせて定着許可温度または昇温目標温度を変更するか否かによって、装置の動作が異なる。
【0051】
(1)定着温度のみを変更
このとき、昇温目標温度はTp1であるので、定着温度をTf1に設定した場合と同様に、加熱ローラ91の温度は図5の一点鎖線に示す傾きで上昇する。そして、その温度が定着許可温度Te1に到達した時点(時刻t1)で、定着動作の実行が許可される。この場合、定着動作の実行が許可されてから時間Δt後の加熱ローラ91の温度はTf1に留まり、本来の設定値Tf2には達しない。したがって、定着動作が許可されてすぐ定着動作が開始された場合には、定着温度の設定変更が実際の定着温度に反映されず、定着不良が発生したり、所望の画像品質が得られないことがある。また、良好な定着特性を得るためには、ユーザは定着温度Tf2に達するまで、より長時間待たなければならない。
【0052】
(2)定着温度に合わせて、昇温目標温度のみを変更
定着温度の設定値Tf2に応じて、昇温目標温度をTp2に変更することにより、図5の実線に示すように、加熱ローラ91の温度はより急速に上昇する。したがって、より速く定着温度Tf2に達するので、上記(1)の場合に比べ、ユーザの待ち時間が短縮される。ただし、加熱ローラ91の温度が定着許可温度Te1に達した時刻ta(ta<t1)において定着動作が許可されることとなるため、定着動作が許可されてから実際に加熱ローラ91が定着温度Tf2に到達するまでに要する時間はΔtより長くなる。その結果、場合によっては(1)の場合と同様に、やはり定着不良を生じるおそれがある。
【0053】
(3)定着温度に合わせて、定着許可温度のみを変更
昇温目標温度をTp1としたまま、定着温度の設定値Tf2に応じて定着許可温度をTe2に変更すると、加熱ローラ91の温度がこの定着許可温度Te2に達した時刻tb(tb>t1)において定着動作が許可される。そのため、一定時間後には加熱ローラ91が定着温度Tf2に到達するので、定着不良等の不具合は発生せず、良好な定着特性を得ることができる。ただし、ユーザの待ち時間については(1)の場合と同等である。
【0054】
(4)昇温目標温度、定着許可温度をともに変更
定着温度の設定値Tf2に応じて、昇温目標温度をTp2に変更するとともに、定着許可温度をTe2に変更する。こうすれば、加熱ローラ91の温度上昇は図5の実線に示すとおりとなり、時刻t2においてその温度は定着温度Tf2に到達する。また、その温度が定着許可温度Te2に達する時刻t1において定着動作の実行が許可される。その結果、ユーザの待ち時間が短縮されるという上記(2)の効果と、良好な定着特性を得られるという上記(3)の効果とをともに得ることができる。
【0055】
図6は定着温度を低くしたときの加熱ローラの温度変化を示す模式図である。ここでは、定着温度をその標準値Tf1からこれより低いTf3に変更するものとする。このとき、定着温度を高くしたときと同様に、定着温度の変更に合わせて定着許可温度または昇温目標温度を変更するか否かによって、装置の動作が異なる。
【0056】
(5)定着温度のみを変更
このとき、加熱ローラ91の温度は、定着温度を標準値Tf1に設定したときと同様の傾きで上昇する。そして、その温度が定着許可温度Te1に達すると定着動作が許可される。したがって、定着温度Tf1の場合と比較して、ユーザの待ち時間には変化はない。しかし、定着温度の設定値Tf3に対して温度上昇が急激であるためオーバーシュートを生じ、図6の点線で示すように、本来の定着温度Tf3を大きく超えてしまうことがある。その結果、所望の画像品質を得られないことがある。
【0057】
(6)定着温度に合わせて、昇温目標温度のみを変更
昇温目標温度をTp3に変更すると、温度上昇は緩やかになるので、オーバーシュートの問題は解消される。また、定着温度の設定値が低くなっているので、温度上昇が緩やかになっても、それによってユーザの待ち時間が長くなることはない。ただし、定着動作の実行が許可されるのは、加熱ローラ91の温度が定着許可温度Te1に到達した時刻td(td>t1)であるから、実際に定着動作が行われるのは早くてもこの時刻tdより時間Δtだけ後であるから、ユーザが実際に画像を得るまでの時間は若干長くなることがある。
【0058】
(7)定着温度に合わせて、定着許可温度のみを変更
昇温目標温度をTp1としたまま、定着許可温度をTe3に変更すると、加熱ローラ91の温度がこの温度Te3に達する時刻tc(tc<t1)に定着動作の実行が許可される。そのため、待ち時間を短縮することができる。また、温度上昇が早いため定着動作時の温度不足も生じにくい。ただし、上記(5)の場合に示したオーバーシュートの問題は残る。
【0059】
(8)昇温目標温度、定着許可温度をともに変更
定着温度の設定値Tf3に応じて、昇温目標温度をTp3に変更するとともに、定着許可温度をTe3に変更する。こうすれば、加熱ローラ91の温度上昇は図6の実線に示すとおりとなり、時刻t2においてその温度は定着温度Tf3に到達する。また、その温度が定着許可温度Te3に達する時刻t1において定着動作の実行が許可される。その結果、オーバーシュートを生じないという上記(6)の効果と、待ち時間を短縮するという上記(7)の効果とをともに得ることができる。
【0060】
このように、定着温度が変更されたときには、その設定値に応じて昇温目標温度および定着許可温度の少なくとも一方を変更することが望ましい。さらに望ましくは、その双方を、定着温度の設定値に応じて変更するのがよい。
【0061】
この実施形態では、シートSの種類やユーザの好みなどに応じて定着温度が変更されると、これに対応して、CPU101が、昇温目標温度および定着許可温度を変更設定し、こうして設定された定着温度、昇温目標温度および定着許可温度に基づいて、加熱ローラ91の温度制御を行う。このとき、昇温開始から加熱ローラ91の温度が定着許可温度に達するまでの時間t1と、その温度が定着温度に達するまでの時間t2が定着温度によらずほぼ一定となるように、昇温目標温度および定着許可温度を設定する。そのため、定着温度の設定値によるユーザの待ち時間の変化はなく、また定着温度不足やオーバーシュートによる定着不良を生じることもない。
【0062】
なお、加熱ローラ91の昇温時には、次に実行するべき画像形成動作における定着温度の設定値が決まっていない場合がある。例えば、装置電源の投入直後における昇温動作では、一般に、次に画像を形成するシートSの種類は決まっていない。このように、昇温動作中において、定着温度の異なる複数の定着動作モードのうち次に実行すべき動作モードが決定していないときは、これらの動作モードのうち定着温度の最も高い動作モードでの設定値に応じて昇温目標温度および定着許可温度を設定するとよい。こうすることで、加熱ローラ91および加圧ローラ92の温度が十分に上昇しているため、次にどの動作モードが選択されても、加熱ローラ91をその動作モードに応じた温度に速やかに移行させることができる。
【0063】
この実施形態では、加熱ローラ91を低温から昇温させるときには上記のようにして温度制御を行う。一方、こうして加熱ローラ91の温度が定着温度まで上昇した後は、次のような温度制御を行っている。この実施形態では、加熱ローラ91の温度を常時定着温度に保つのではなく、シートSがニップ部Nを通過する時にはその温度を定着温度に制御する一方、それ以外の時は定着温度より低い予熱温度に制御するようにしている。以下、定着温度の設定値をTf1としたときの制御を例にとり、図7を参照しながら説明する。
【0064】
図7は昇温後の温度制御を示す図である。より詳しくは、図7(a)は加熱ローラ91の制御目標温度の設定値と加熱ローラ91の温度変化を示し、図7(b)はそのときの加熱ローラ91の内部の温度分布を模式的に示す図である。図7(b)において、座標軸rは加熱ローラ91の中心からの距離を示すものであり、加熱ローラ91の半径をr0とする。したがって、r=0なる位置は加熱ローラ91の中心を表す一方、r=r0なる位置は加熱ローラ91の表面を表す。
【0065】
この制御においては、図7(a)に示すように、定着動作が行われていないとき(例えば、時刻t=t10)は、加熱ローラ91の制御目標温度は予熱温度Ts1に設定されている。したがって、このときの加熱ローラ91の表面温度はほぼこの予熱温度Ts1となっている。このとき、加熱ローラ91の温度分布は、図7(b)に示すように、その表面でほぼ予熱温度ts1であるが、中心に近い部分ではこれより若干高くなっている。これは、定常状態であっても、加熱ローラ91の表面からは外気に向けて熱が放散されており、これを補うための電力がヒータ91cに与えられているからである。なお、加熱ローラ91は、前述のとおり、異なる材料が同心円状に配置された断面構造を有しており、各材料の熱伝導率が異なるため、その径方向の温度分布は図7(b)に示すほど単純ではないが、中心ほど温度が高く、表面に近いほど温度が低くなるという傾向についてはこれと同様である。
【0066】
そして、定着動作が実行されシートSがニップ部Nに到達する時刻t12より一定時間前、すなわち時刻t11に、制御目標温度を予熱温度Ts1から定着温度Tf1に変更する。これにより、ヒータ91cへの電力供給量が増加し、加熱ローラ91の表面温度は定着温度Tf1に向けて次第に上昇する。このとき、加熱ローラ91では、ヒータ91cまずその中心部の温度が上昇し、その熱が次第に周辺部に拡散することによって表面温度が上昇する。例えば、制御目標温度を予熱温度Ts1から定着温度tf1に変更した直後の時刻teでは、加熱ローラ91の中心付近の温度は短時間で上昇するが、表面温度は予熱温度Ts1からほとんど変化しない。しかし、その後次第に表面温度が上昇し、シートSがニップ部Nに到達する時刻t12では、その表面温度はほぼ定着温度tf1に達する。より正確には、この時刻t12において加熱ローラ91の表面温度が定着温度tf1となるように、制御目標温度を変更する時刻t11を定めている。
【0067】
このとき、加熱ローラ91の内部は定着温度Tf1より高温となっており、加熱ローラ91は比較的大きな温度勾配を有している。したがって、ニップ部Nを通過するシートSにより加熱ローラ91の熱が奪われても、内部に蓄積された熱が表面に向けて供給され続けるのでその表面温度の低下は少なくて済み(例えば、時刻t=tf)、定着ムラのない均質な画像を得ることができる。
【0068】
これに対し、初めから加熱ローラ91の温度を定着温度Tf1に保っていたのでは、加熱ローラ91の中心部と表面との温度差が小さくなっているので、シートSに熱を奪われたことによる温度低下を直ちに回復することができない。その結果、1枚のシートSがニップ部Nを通過する間に定着温度が大きく変動して定着ムラを生じてしまう。
【0069】
このように、この実施形態では、加熱ローラ91の制御目標温度を定着温度Tf1より低い予熱温度Ts1に設定しておき、定着動作の開始に先立って、その目標温度を定着温度Tf1に変更する。こうすることで、定着動作が開始されてシートSがニップ部Nに到達するときの温度をほぼ定着温度Tf1とすることができるとともに、加熱ローラ91に温度勾配を持たせることによって、定着動作中の温度低下を少なくすることができる。そして、シートSがニップ部Nを通過し終えると、制御目標温度を再び予熱温度Ts1に変更する。
【0070】
なお、定着温度が変更された際には、上記した昇温目標温度や定着許可温度と同様に、この予熱温度についても、定着温度の設定値に対応した値に再設定することが望ましい。
【0071】
そして、定着動作を終了してから連続して一定時間、例えば5分が経過して新たな画像信号入力がないときには、装置はヒータ91cへの通電をオフにしてスリープ状態に移行する(時刻t=t13)。このとき、外部からの操作や信号を受け付けるための最低限の機能ブロックを除いた装置各部の電源を切ることで、待機時の消費電力を低減することができる。これにより、加熱ローラ91の温度は低下してしまうが、外部から新たな画像信号が入力されたときには、装置各部のウォームアップとともに、前述した昇温動作を実行することにより、定着ユニット9を速やかに定着動作が可能な状態に移行させることができる。
【0072】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、加熱ローラ91の表面温度が定着許可温度、定着温度のそれぞれに達する時刻t1、t2が定着温度の設定値によらず一定となるように、昇温目標温度および定着許可温度を設定しているが、必ずしもこのようにする必要はない。要は、定着温度の設定値が変更されたときに、これに対応して、昇温目標温度および定着許可温度のうち少なくとも一方を変化させるようにすれば、本発明の効果を得ることが可能である。
【0073】
また、上記した実施形態では、定着温度が互いに異なる複数の定着動作モードとして、普通紙モードと厚紙モードとを備えているが、本発明にいう「定着動作モード」には、これ以外にも、例えば、カラーモードとモノクロモード、高画質モードと簡易画質モードなど、それぞれの定着温度が異なる様々なものが該当する。
【0074】
また、上記した実施形態における定着ユニット9は、ハロゲンヒータ91c、金属スリーブ91bおよびゴム表面層91aからなる加熱ローラ91を備えているが、加熱ローラ91の構成はこれに限定されるものではなく、例えば表面層を備えないものであってもよい。また、ハロゲンヒータ以外の発熱体を備えるものであってもよい。
【0075】
また、上記した実施形態は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つのトナーによりフルカラー画像を形成可能な画像形成装置であるが、トナーの色数およびその種類はこれに限定されるものでなく任意であり、例えばブラック色の現像器のみを備えてモノクロ画像を形成する装置に対しても、本発明を適用することが可能である。また、本実施形態のようにシート両面に画像を形成することのできる装置に限らず、シートの片面のみに画像を形成する装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】この画像形成装置の定着ユニットを示す図である。
【図4】昇温動作時の加熱ローラの温度変化を示す模式図である。
【図5】定着温度を高くしたときの加熱ローラの温度変化を示す模式図である。
【図6】定着温度を低くしたときの加熱ローラの温度変化を示す模式図である。
【図7】昇温後の温度制御を示す図である。
【符号の説明】
9…定着ユニット、 91…加熱ローラ(加熱手段)、 91a…表面層(伝熱部材)、 91b…スリーブ(伝熱部材)、 91c…ヒータ(発熱体)、 92…加圧ローラ、 101…CPU(制御手段)、 N…ニップ部、 S…シート(記録媒体)、 Te1,Te2,Te3…定着許可温度、 Tf1,Tf2,Tf3…定着温度、 Tp1,Tp2,Tp3…昇温目標温度、 Ts1…予熱温度
Claims (8)
- 加熱手段と、前記加熱手段の温度を制御する制御手段とを備え、トナー像を担持した記録媒体に所定の定着温度に制御した前記加熱手段を当接させることによって、前記記録媒体上に前記トナー像を定着させる定着動作を実行する画像形成装置において、
前記定着温度を変更設定可能となっており、しかも、前記加熱手段を昇温させるときには、
前記制御手段は、前記定着温度の設定値に対応して、前記設定値より低温の定着許可温度を設定するとともに、前記加熱手段の温度が前記定着許可温度以上であれば前記定着動作の実行を許可する
ことを特徴とする画像形成装置。 - 前記定着温度を互いに異なる値に設定して前記定着動作を実行する複数の定着動作モードを実行可能となっており、
次に実行すべき定着動作モードが決定しているときは、前記定着許可温度が、その定着動作モードにおける前記定着温度の設定値に対応した値に設定される一方、
次に実行すべき定着動作モードが決定していないときは、前記定着許可温度が、前記複数の定着動作モードのそれぞれに対して設定された定着温度のうち最も高温の設定値に対応した値に設定される請求項1に記載の画像形成装置。 - 加熱手段と、前記加熱手段の温度を制御する制御手段とを備え、トナー像を担持した記録媒体に所定の定着温度に制御した前記加熱手段を当接させることによって、前記記録媒体上に前記トナー像を定着させる定着動作を実行する画像形成装置において、
前記定着温度を変更設定可能となっており、しかも、前記加熱手段を昇温させるときには、
前記制御手段は、前記定着温度の設定値に対応して、前記設定値より高温の昇温目標温度を設定するとともに、昇温開始から所定の期間、前記昇温目標温度に基づいて前記加熱手段の温度制御を行うことを特徴とする画像形成装置。 - 前記定着温度を互いに異なる値に設定して前記定着動作を実行する複数の定着動作モードを実行可能となっており、
次に実行すべき定着動作モードが決定しているときは、前記昇温目標温度が、その定着動作モードにおける前記定着温度の設定値に対応した値に設定される一方、
次に実行すべき定着動作モードが決定していないときは、前記昇温目標温度が、前記複数の定着動作モードのそれぞれに対して設定された定着温度のうち最も高温の設定値に対応した値に設定される請求項3に記載の画像形成装置。 - 前記制御手段による前記加熱手段の温度を、前記定着温度の設定値に対応して該設定値より低温に設定された予熱温度に予め制御しておき、
前記定着動作の開始に先立って、前記制御手段による制御温度を前記定着温度の設定値に変更する請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。 - 前記加熱手段は、前記制御手段により発熱量を制御される発熱体と、前記発熱体から発生する熱を前記記録媒体に伝達するための伝熱部材とを備える請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
- トナー像を担持した記録媒体に、予め設定されたまたはユーザにより設定された定着温度に制御した加熱手段を当接させることによって、前記記録媒体上に前記トナー像を定着させる定着動作を実行する画像形成装置の制御方法において、
前記加熱手段を昇温させるときには、
前記定着温度の設定値に対応して前記設定値より低温の定着許可温度を設定し、前記加熱手段の温度が前記定着許可温度以上のとき前記定着動作の実行を許可することを特徴とする画像形成装置の制御方法。 - トナー像を担持した記録媒体に、予め設定されたまたはユーザにより設定された定着温度に制御した加熱手段を当接させることによって、前記記録媒体上に前記トナー像を定着させる定着動作を実行する画像形成装置の制御方法において、
前記加熱手段を昇温させるときには、
前記定着温度の設定値に対応して前記設定値より高温の昇温目標温度を設定し、昇温開始から所定の期間、前記昇温目標温度に基づいて前記加熱手段の温度制御を行うことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
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JP2003110006A JP2004317708A (ja) | 2003-04-15 | 2003-04-15 | 画像形成装置およびその制御方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009047889A (ja) * | 2007-08-20 | 2009-03-05 | Ricoh Co Ltd | 画像形成装置 |
JP2011133693A (ja) * | 2009-12-24 | 2011-07-07 | Canon Finetech Inc | 画像形成装置 |
JP2013186571A (ja) * | 2012-03-06 | 2013-09-19 | Sharp Corp | 電気機器 |
-
2003
- 2003-04-15 JP JP2003110006A patent/JP2004317708A/ja active Pending
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