JP2004315859A - 溶接性および耐食性の優れた鋼 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶接性を阻害しない耐食性及び加工性の優れた鋼、特に結露腐食環境を始め、高温湿潤腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の種々の腐食環境において耐食性に優れる鋼並びに耐食性及び加工性に優れる鋼を低コストで提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.02% 以下,Si:0.01〜3.0%,Mn:0.01〜3.0%, Cr:0.1〜9.9%, Al:0.1〜10%, Mg:0.0003〜0.1%,P:0.03%以下,S:0.01%以下,N:0.02%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を基材とし、更に該基材表面のうち、少なくとも使用環境に曝される表面に対して、水溶液環境における電位が前記基材よりも卑な金属の層を 0.005μm以上 0.5μm未満の厚さに形成することを特徴とする溶接性および耐食性の優れた鋼。
【選択図】 なし
【解決手段】質量%で、C:0.02% 以下,Si:0.01〜3.0%,Mn:0.01〜3.0%, Cr:0.1〜9.9%, Al:0.1〜10%, Mg:0.0003〜0.1%,P:0.03%以下,S:0.01%以下,N:0.02%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を基材とし、更に該基材表面のうち、少なくとも使用環境に曝される表面に対して、水溶液環境における電位が前記基材よりも卑な金属の層を 0.005μm以上 0.5μm未満の厚さに形成することを特徴とする溶接性および耐食性の優れた鋼。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接性および耐食性の優れた鋼、溶接性および耐食性に加えてさらに加工性の優れた鋼に関し、さらに詳しくは、溶接部について、例えば、自動車や船舶等の内燃機関排気系統、ボイラ排気系統、低温熱交換器、焼却炉床等の高温湿潤腐食環境や、橋梁、支柱、鉄塔、建築内外装材、屋根材、建具、厨房部材、各種手すり、ガードレール、各種フック、ルーフドレイン、鉄道車両等の大気腐食環境や、各種貯蔵タンク、支柱、杭、矢板等の土壌腐食環境や、缶容器、各種容器、低温熱交換器、浴室部材、自動車構造部材等の結露腐食環境(冷凍、湿潤、乾燥が複合する腐食環境を含む)や、貯水槽、給水管、給湯管、缶容器、各種容器、食器、調理機器、浴槽、プール、洗面化粧台等の水道水腐食環境や、缶容器、各種容器、食器、調理機器等の飲料水腐食環境や、各種鉄筋構造物、支柱等のコンクリート腐食環境や、船舶、橋梁、杭、矢板、海洋構造物等の海水腐食環境等の、種々の腐食環境に用いられる溶接部材用耐食鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、様々な環境での耐食性の向上を目的として表面処理を施した鋼が使用されてきた。使用環境に応じた金属を使用して表面処理を施すことで、処理後の鋼表面の耐食性が著しく向上する。
一方で、表面処理鋼板を用いて目的とする製品や部材となすに際しては、様々な溶接が行われることが一般的であるが、このような溶接によって表面処理層の消失や損傷等が引き起され、溶接部の耐食性は加工前の表面処理を施した部分と比較して著しく劣化することが一般的である。すなわち、溶接部の表面処理層の消失による溶接部の耐食性の劣化が、目的とする製品や部材の耐食寿命を著しく劣化させている。
【0003】
このような問題に対して、溶接部の表面処理層の補修対策や、表面処理工程の大幅な見直し等の対策が種々行われている。前記補修対策としては、溶接部への塗装によるタッチアップ等のめっき補修、あるいは溶射補修が行われることが多い。しかしながら、これらの方法では付加的な工程の増大によって経済性が大きく損われる。
【0004】
一方、前記表面処理工程の見直し策としては、表面処理を施す前に目的とする部材の溶接を行い、溶接完了後に表面処理を施すことが一般的に行われる。この方法では、溶接部を含む鋼材の表面処理により、比較的均一な耐食性の確保が可能であるが、溶接後の形状によっては本対策が適用できない場合があり、さらには前処理や表面処理工程が製品一品毎の非連続工程となるために、生産性や経済性が阻害される。また溶接後の表面処理によって、製品や部材の形状が損われる等の副次的問題を惹起することもある。
【0005】
例えば自動車の足廻り部材等の溶接構造部材の場合、亜鉛めっき鋼板を用いた溶接部では亜鉛の気泡による欠陥が残るため、亜鉛めっき鋼板の適用が困難である。また、溶接構造とした後の表面処理の実施は、生産性や経済性の観点から現実的ではなく、一部の少量生産の自動車でのみ実施されている。
【0006】
このような情況にあって、鋼自体の耐食性を改善する耐食鋼が、特許文献1に開示されている。しかしこの鋼板は、溶接性の改善には優れていると考えられるものの、めっき鋼板と比較してその耐食性は低いという課題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−141554号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こうした現状に鑑みて、優れた溶接性や溶接部信頼性を有すると共に、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の様々な腐食環境において耐食性の優れた溶接部材用耐食鋼を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成すべく、溶接性を有すると共に高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、さらには大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の様々な腐食環境において優れた耐食性を有する鋼を開発するべく、各種金属により表面処理を施した鋼の溶接部材について種々の観点から検討してきた。
【0010】
まず本発明者らは、表面処理層の被覆の厚さを0.005μm以上0.5μm未満とすることで、欠陥のない溶接施工が可能であることを見出した。
【0011】
さらに本発明者らは、表面処理鋼の溶接部材の腐食に最も厳しい環境条件は、従来、表面処理表面に対して最も厳しい腐食環境と考えられてきた塩害環境や大量の塩を含む海水飛沫などの環境ではなく、これらの環境に比較して極めて低濃度の塩を含む結露−乾燥が繰返される腐食環境であることを見出した。
そして本発明者らは、この理由としては、塩害環境等の大量の塩を含む環境では、溶接部と表面処理層の間で高い導電率を有する腐食環境が生成され、表面処理層の溶接部への電気化学的防食作用が生じ、溶接部が防食されるのに対して、極めて低濃度の塩を含む結露−乾燥繰返し腐食環境では、溶接部と表面処理層の間の導電率が極めて低いために、表面処理層の溶接部への電気化学的防食作用が生じにくく、溶接部が腐食することを明らかにした。
【0012】
本発明者らは、このような極めて低濃度の塩を含む結露−乾燥繰返し腐食環境での、溶接部の腐食抵抗を高めた表面処理鋼材を得る手段について検討した結果、Crを0.1〜9.9質量%含有し、Alを0.1質量%以上、Mgを0.0003質量%以上含有する鋼を基材として、その表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑なる金属の層を被覆形成し、かつ該被覆層の厚さが0.005μm以上0.5μm未満とした欠陥のない溶接施工が可能な表面被覆厚さとした場合に、鋼の溶接性を阻害することなく優れた耐食性が得られることを見出した。
【0013】
耐食性が著しく向上する理由については、現状では不明な点が多いが、本発明者らは、基材にAlとMgを添加することで、電位が基材よりも卑な金属被覆層において、極めて低濃度の塩を含む結露−乾燥繰返し腐食環境であっても、溶接部に対する電気化学的なものと考えられる保護作用が発現し、これが長期にわたって継続することにより、耐食性が向上することを確認している。
【0014】
本発明者らは、上述の知見に基づいて、基材よりも卑となる金属被覆層を有し、AlとMgを含有するCr含有金属基材に対して、耐食性をさらに向上するための手段について種々検討を重ねた結果、基材へのSi、Mn、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hf、Cu、Mo、Sb、Ni、Wの添加がより一層の耐食性向上に有効であることを見出した。
【0015】
さらに、本発明者らは検討を続けた結果、水溶液環境における電位が基材よりも卑なる被覆金属として、アルミニウム、アルミニウムを主体とする合金、亜鉛、亜鉛を主体とする合金、亜鉛にAlを0.1〜55質量%含有する合金、マンガン、マンガンを主体とする合金が本発明の目的に適していることを見出した。
【0016】
またさらに本発明者らは、これらの被覆金属について、溶接性および鋼基材との相互作用による耐食性向上の観点から種々の検討を重ねた結果、これらの被覆金属に、Mg、Si、Inのうちいずれか一種以上を0.05質量%以上15質量%以下含有させたものが溶接性を阻害することなく、より一層優れた耐食性を実現することを見出した。
【0017】
さらに本発明者らは、溶接性および耐食性に加え、加工性を向上すべく検討を続けた結果、Crを0.1〜9.9質量%、Alを0.1〜10質量%、Mgを0.0003〜0.1質量%含有する鋼に対して、CおよびNを低減した上で、さらに、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfを特定の条件を満足するように添加すると、溶接性および耐食性を損うことなく加工性の向上に効果があることを見出した。
【0018】
またさらに、脱酸および強化元素としては、SiおよびMnが適切であることを見出した。
【0019】
本発明は、主に上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1) 質量%で、C:0.02%以下、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.01〜3.0%、Cr:0.1〜9.9%、Al:0.1〜10%、Mg:0.0003〜0.1%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.02%以下、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を基材とし、さらに、該基材表面のうち、少なくとも使用環境に曝される表面に対して、水溶液環境における電位が前記基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成することを特徴とする溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0020】
(2) 前記鋼が、さらに、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの中から選ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜1質量%含有することを特徴とする前記(1)に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0021】
(3) Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの中から選ばれる1種または2種以上の含有量が、さらに次式を満足することを特徴とする前記(2)に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179≧0.8X[C/12+N/14]
【0022】
(4) 前記鋼が、さらに質量%で、Cu:0.01〜5.0%、Mo:0.05〜10%、W:0.05〜3.0%、Sb:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜10%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜 (3)のいずれか1項に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0023】
(5) 前記鋼が、さらに質量%で、希土類元素:0.001〜0.1%、Ca:0.0001〜0.05%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0024】
(6) 前記水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属が、アルミニウム、アルミニウムを主体とする合金、亜鉛、亜鉛を主体とする合金、亜鉛にアルミニウムを0.1〜55質量%含有する合金、マンガン、マンガンを主体とする合金の1種または2種以上であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0025】
(7) 前記水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属が、さらに、Mg、Si、Inの1種または2種以上を0.05〜15質量%含有することを特徴とする前記(6)に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明において、基材の各成分の範囲を限定した理由を以下に述べる。なお、成分含有量は質量%を示す。
【0027】
Siは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上、Crを0.1%以上含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.01%未満では効果が認められず、3%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、含有量範囲を0.01%以上3%以下に限定する。さらにSiは、Crを0.1%以上含有する鋼にSiを添加することで、脱酸剤および強化元素としても有効に機能するが、含有量が0.01%未満ではその脱酸効果が充分ではなく、1.5%超含有するともはやその効果は飽和している上に加工性をやや低下させる。従って、0.01%以上1.5%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0028】
Mnは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上、Crを0.1%以上含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.01%未満では効果が認められず、3%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、含有量範囲を0.01%以上3%以下に限定する。さらにMnは、鋼の脱酸剤として有効であり、その効果を発揮するためには0.05%以上を含有させる必要があるが、1.2%を超えて含有させてもその効果はもはや飽和しているばかりか、過剰にMnを含有させると加工性が低下する。従って、0.05%以上1.2%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0029】
Crは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.1%未満では効果が十分ではなく、一方9.9%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、Crの含有量は0.1%以上9.9%以下に限定する。
【0030】
Alは、本発明において耐食性を確保するためにMgと共に最も重要な元素であって、Mgを0.0003%以上、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.1%未満では効果が十分ではなく、10%を超えて添加してもその効果が飽和するものであるから、Alの含有量は0.1%以上10%以下に限定する。
【0031】
Mgは、本発明において耐食性を確保するためにAlに次いで重要な元素であって、Alを0.1〜10%、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.0003%未満では効果が十分ではなく、0.1%を超えて添加してもその効果が飽和するものであるから、Mgの含有量は0.0003%以上0.1%以下に限定する。
【0032】
CおよびNは、鋼板の加工性を低下させる上に、CはCrと炭化物を生成して耐食性を低下させ、またNは靭性を低下させるので、CおよびNの含有量は少ない方が望ましく、上限含有量はいずれも0.02%とし、いずれも少ないほど好ましい。
【0033】
Pは、多量に存在すると靭性を低下させるので少ない方が望ましく、上限含有量は0.03%とする。
【0034】
Sも、多量に存在すると耐孔食性を低下させるので少ない方が望ましく、上限含有量は0.01%とする。
【0035】
以上が本発明が対象とする溶接性および耐食性に優れた鋼基材の基本的成分であるが、本発明においては、必要に応じてさらに以下の元素を添加して耐食性を一段と向上させた鋼基材や、さらに加工性を改善した鋼基材も対象としている。
Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上、Crを0.1%以上含有する鋼基材に1種以上を添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、各元素共に添加量の合計が0.01%未満では効果が認められず、一方、1.0%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの含有量は、0.01%以上1.0%以下に限定する。
【0036】
さらに、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfは、含Cr鋼中のCおよびNを炭化物および窒化物として固定することによって、鋼基材の耐食性の向上や加工性の改善に顕著な効果があり、各元素単独の添加あるいは2種以上を複合して添加することができるが、添加量の合計が0.05%未満では効果がなく、0.8%を超えて添加すると、いたずらにコストを上昇させるとともに圧延疵等の原因となる。従って、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfは、0.05%以上0.8%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0037】
上記に加えて、加工性を有効に改善するためには、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの添加量の合計が次式を満足することが必要である。
Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179≧0.8X[C/12+N/14]
【0038】
Cuは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.01%未満では効果が認められず、一方5%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.01%以上5%以下の範囲に限定する。
さらに、Cuは、0.1%以上添加すると、鋼基材単体での全面腐食に対する抵抗を向上させる効果があり、2.5%を超えて添加するとその効果は飽和する。従って、0.1%以上2.5%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0039】
Moは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.05%未満では効果が認められず、一方10%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.05%以上10%以下に限定する。
さらに、Moは、0.1%以上添加すると、鋼基材単体での孔食の発生と成長を抑制する効果があるが、3.0%を超えて添加してもその効果は飽和するばかりか加工性を低下させる。従って、0.1%以上3%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0040】
Wは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に0.05%以上添加すると、鋼基材表面に水溶液環境における電位が鋼基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.05%未満では効果が認められず、一方3%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.05%以上3%以下に限定する。
さらに、Wを添加することで、鋼基材単体での孔食の発生と成長を抑制する効果があるが、0.1%未満では効果は十分ではなく、一方2.0%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか加工性を低下させる。従って、0.1%以上2%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0041】
Sbは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に0.01%以上添加すると、鋼基材表面に水溶液環境における電位が鋼基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.01%未満では効果が認められず、一方0.5%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.01%以上0.5%以下に限定する。さらに、Sbを添加することで、鋼基材単体での孔食および全面腐食に対する抵抗を向上させる効果があるが、0.015%未満では効果は十分ではなく、一方、0.3%を超えて添加すると熱間加工性をやや低下させる。従って、0.015%以上0.3%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0042】
Niは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に0.01%以上添加すると、鋼基材表面に水溶液環境における電位が鋼基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、一方10%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.01%以上10%以下に限定する。さらに、Niを添加することで、鋼基材単体での孔食を抑制する効果があるが、0.1%未満では効果は十分ではなく、一方、6%を超えて添加しても効果が飽和する。従って、0.1%以上6%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0043】
希土類元素(REM)やCaは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらす。しかし、REMでは、添加量が0.001%未満では効果が認められず、一方、0.1%を超えて添加してもその効果が飽和する。そしてCaでは、添加量が0.0001%未満では効果が認められず、一方、0.05%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、REMの範囲は0.001%以上0.1%以下、Caの範囲は0.0001%以上0.05%以下にそれぞれ限定する。
【0044】
さらに、REMおよびCaは、熱間加工性の向上と鋼基材単体での耐孔食性の改善に効果のある元素であるが、添加量が、REMでは0.01%未満、Caでは0.005%未満ではその効果が充分ではなく、一方、REMでは0.05%を超えて、Caでは0.01%を超えて添加すると、それぞれ粗大な非金属介在物を生成して逆に熱間加工性や耐孔食性を劣化させる。従って、REMは0.01%以上0.05%以下の範囲で、Caは0.005%以上0.01%以下の範囲でそれぞれ添加することがより望ましい。
なお、本発明において希土類元素(REM)とは、原子番号が57〜71番および89〜103番の元素およびYを指す。
【0045】
本発明においては、本発明に係る鋼が使用される場合において、少なくとも腐食環境に曝される面を、鋼基材よりも電位が卑な金属で被覆するものである。その被覆層厚さが0.005μm未満では、基材にAlとMgを添加することによる、電位が鋼基材よりも卑な金属の被覆層の鋼基材加工部に対する保護作用が長期にわたって継続するといった効果の発現が充分ではなく、また、被覆金属の厚さを増大させることで耐食性は従来知見通り向上する一方で、0.5μm以上の厚さで被覆すると溶接性を低下させて溶接部に欠陥を生じることから、被覆層の厚さは0.005μm以上0.5μm未満とする。
【0046】
本発明における、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属を鋼基材に被覆する実施態様について、以下に説明する。
被覆に供される、水溶液環境における電位が基材よりも卑なる金属には、アルミニウム、亜鉛、マンガン、およびこれらを主体とする合金を使用することができる。被覆のプロセスは、被覆金属層が基材に固着されていればそのプロセスを限定するものではなく、用途やコスト等を考慮した上で選択すれば良く、溶融メッキ、電着メッキ、溶融塩電解メッキ、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、溶射、塗装等を使用することができ、これらを併用することも可能である。また、被覆処理の前後にいかなる処理を選択したとしても、それをもって本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0047】
本発明の鋼基材の被覆に用いる亜鉛を主体とする合金とは、合金成分のうち最大量を占める成分が、亜鉛である合金、すなわち亜鉛基合金であり、一般に亜鉛基合金に含有される0.01〜0.3%程度のアルミニウム等の合金成分および不純物成分を含んでよい。
【0048】
本発明の鋼基材の被覆に用いるアルミニウムを主体とする合金とは、合金成分のうち最大量を占める成分がアルミニウムである合金、すなわちアルミニウム基合金であり、一般にアルミニウム基合金に含有されるシリコン、亜鉛等の合金成分および不純物成分を含んでよい。
【0049】
本発明の鋼基材の被覆に用いるマンガンを主体とする合金とは、合金成分のうち最大量を占める成分がマンガンである合金、すなわちマンガン基合金であり、一般にマンガン基合金に含有されるアルミニウム等の合金成分および不純物成分を含んでよい。
【0050】
さらに、これらの被覆金属中にMg、Si、Inのいずれか一種以上を含有させることで、鋼基材の耐食性がさらに向上することを見出している。これらの元素の耐食性理由については不明点が多いが、添加量が0.05%未満では効果が顕著ではなく、一方、15%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、経済性、製造性を損なうことから、これらの元素の添加量は0.05%以上15%以下とする。
【0051】
また使用上の目的から、鋼管や板材等のように表裏面を有する材料の一方の面だけに被覆されていれば良い場合においては、片面のみが被覆された鋼を使用しても、本発明の目的および効果を何等逸脱するものではなく、かかる場合において、片面だけ被覆された鋼を使用するか、あるいは両面に被覆された鋼を使用するかは、コストや溶接性等の他の特性を考慮して選択すれば良い。
【0052】
上記被覆の実施様態としては、めっきや塗装などの手段を用いることが可能で、コイル、板、棒、ケーブル、穿孔鋼管等の鋼材の一般的な形状とした後に、本発明の被覆処理を行うことはもちろんのこと、被覆処理後の本発明鋼をプレスやロール成形等で所定の形状に成形し、さらに加工・溶接して製品として製造しても良いし、本発明の鋼を例えば電縫鋼管等としてまず鋼管の形状にした後に、2次加工および溶接等によって製品に使用しても良く、さらに、本発明の被覆処理を施す前に鋼材を上述したようなプロセスによって目的の形状とした後に本発明の表面被覆処理を施すことも可能であり、その他のプロセスも含めて本発明で限定する組成および処理条件の組み合わせを有する鋼は、いずれも本発明の対象とするところであって、コストや既存製造設備の制約等によって最適な製品製造工程を選択することができ、どの製造工程を選択したとしてもそれをもって本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0053】
以上の本発明において提案する鋼は、高温湿潤腐食環境、大気腐食環境、土壌腐食環境、結露腐食環境、水道水腐食環境、飲料水腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境等の種々の腐食環境に適用することができる。
【0054】
【実施例】
(実施例1)耐食性の評価
表1および表5に成分を示す鋼を溶製し、熱延、冷延等の通常の鋼板製造工程によって幅75mm、長さ150mmの鋼板とし、焼鈍、酸洗を施した後、鋼板の両面に、片面あたり0.01±0.005μmの厚さの条件で、表2〜4、表6〜8に示す被覆を電気めっきにて施し、試験片を作製した。表2〜4、表6〜8に示した被覆1はアルミニウム被覆、被覆2は亜鉛被覆(0.2質量%Al添加)、被覆3はZn−Al被覆(55質量%Al添加)、被覆4はマンガン被覆であり、さらに、被覆金属中に、Mg、Si、Inの一種以上を表2〜4、表6〜8に示す量を添加した。また、溶接に伴う表面処理層の消失を模擬するために、試験片表面の対角線に幅3.5mmで基材鋼に達するクロスカットを施し、以下の耐食性試験(高温腐食湿潤試験、塩害腐食試験、土壌腐食試験、コンクリート中腐食試験、水道水環境腐食試験、海水環境腐食試験、結露腐食試験、大気腐食試験、飲料水腐食試験)を行った。
【0055】
高温湿潤腐食試験は、硫酸イオン1000ppm、塩化物イオン1000ppm、重炭酸イオン5000ppmをアンモニウム塩の形で添加した水溶液50ccを入れた容器1個に対して、試験片1枚を半分まで浸漬し、各試験容器を130℃の雰囲気に保持して、試験溶液が完全に蒸発・揮散することを100回繰り返す試験とした。本試験は、自動車排気系の内面環境に相当する腐食試験であり、実車の約4年以上の走行に対応する厳しい試験方法である。
試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、切断加工部に腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、切断加工部の全面積に対して10%未満、△は10%以上20%未満、×は20%以上であったことをそれぞれ示す。
【0056】
塩害腐食試験は、0.5質量%NaClを含む塩水を50℃で1時間噴霧後、60℃で湿度96%の環境に5時間保持した後、さらに1時間の冷凍保持を行うことを100回繰り返す試験とした。塩害腐食試験は自動車の塩害腐食を想定した試験として行った。なお、本試験の試験片は、上述したクロスカットを施した後に、さらにリン酸塩処理を施した後、20μmの電着塗装を行い、カッターナイフを用いて試験片に対角線にクロスカットを施した。
試験結果は、試験後の試験片について最大腐食深さを測定し、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、最大腐食深さが、0.05mm未満のもの、○は0.05mm以上0.1mm未満、△は0.1mm以上0.3mm未満、×は0.3mm以上であったことをそれぞれ示す。
【0057】
土壌腐食試験は、含水率15%、比抵抗280Ω・cmに塩化ナトリウム水溶液で調整した砂中に試験片を埋め込み、55℃に保持して約1200日放置する試験とした。試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上10%未満、×は10%以上であったことをそれぞれ示す。
【0058】
コンクリート中腐食試験は、塩化物を含む海砂を用いて混練したポルトランドコンクリート中に試験片を埋め込みサンプルとなし、これを凝固させた後、純水中にサンプルを半分まで浸漬し、60℃の環境に約1000日放置し、試験期間終了後にサンプルを破壊して試験片を観察する試験とした。腐食試験は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上20%未満、×は20%以上であったことをそれぞれ示す。
【0059】
水道水環境腐食試験は、流動加温水道水中に試験片を浸漬し、55℃の雰囲気に24ケ月間保持する試験とした。腐食試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、10%未満、△は発錆面積率が10%以上20%未満、×は20%以上であったことをそれぞれ示す。
【0060】
海水環境腐食試験は、海岸の海水飛沫帯に試験片を30ケ月間暴露する試験とした。腐食試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上10%未満、×は10%以上であったことをそれぞれ示す。
【0061】
結露腐食試験は、−20℃の環境に2時間保持後、湿度98%、温度40℃の環境に4時間保持することを1800回繰り返す試験とした。腐食試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上20%未満、×は20%以上であったことをそれぞれ示す。
【0062】
大気腐食試験は、海岸から約1.5kmの位置に、試験片を約900日暴露する試験とした。腐食試験結果は◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上10%未満、×は10%以上であったことをそれぞれ示す。
【0063】
飲料水環境腐食試験は、水酸化ナトリウムを用いてpHを2.3に調整し、高純度窒素ガスを通気して脱気し、27℃に保持した4種類の溶液((a)0.5質量%リン酸溶液、(b)0.5質量%クエン酸溶液、(c)0.5質量%クエン酸・0.5質量%塩化ナトリウム溶液)850cc中に試験片を50日間浸漬し、溶液中に溶出した鉄イオン量を分析する試験とした。なお、本試験については、表4、8に示した被覆1のアルミニウム被覆、被覆4のマンガン被覆についてのみ実施した。
腐食試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、1%未満、△は1%以上5%未満、×は5%以上であったことをそれぞれ示す。
表2〜4、表6〜8に試験結果を示す。
【0064】
高温湿潤腐食試験結果は、表2、6から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は塩化物を含む高温湿潤という非常に厳しい腐食環境であっても良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0065】
塩害腐食試験結果は、表2、6から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は塩害腐食という非常に厳しい腐食環境であっても良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0066】
土壌腐食試験結果は、表2、6から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は土壌腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0067】
コンクリート中腐食試験結果は、表2、6から明らかなように、本発明鋼である1〜40、51〜90はコンクリート中腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0068】
水道水環境腐食試験結果は、表3、7から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は水道水腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0069】
海水環境腐食試験結果は、表3、7から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は海水腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0070】
結露腐食試験結果は、表3、7から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は結露腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0071】
大気腐食試験結果は、表3、7から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は大気腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0072】
飲料水環境腐食試験結果は、表4、8から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は飲料水腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0073】
すなわち、上記の各種耐食性試験の結果から、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の種々の腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0074】
(実施例2)加工性の評価
絞り比1.8の円筒絞り試験を行って割れの有無で判定した。加工性の評価は、○、×の2段階で評価し、○は円筒絞り試験結果が良好であったことを示し、×は円筒絞り試験で割れを生じたことを示している。表5に、試験結果を併せて示した。
尚、表5のX値とは、次式によって算出した値を記載し、本願発明の範囲はX値が0以上である。
X=Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179−0.8X[C/12+N/14]
【0075】
表5から明らかなように、本発明鋼である番号51〜90は良好な加工性を示し、さらに、上述のように、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の種々の腐食環境で良好な耐食性を示すのに対して、比較鋼である番号91〜100は耐食性と加工性が同時に達成できないことがわかる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は溶接性を阻害することなく、結露腐食環境をはじめとして、高温湿潤腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の種々の腐食環境において耐食性に優れる鋼並びに耐食性および加工性に優れる鋼を低コストで提供することを可能としたものであり、産業の発展に貢献するところ極めて大である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接性および耐食性の優れた鋼、溶接性および耐食性に加えてさらに加工性の優れた鋼に関し、さらに詳しくは、溶接部について、例えば、自動車や船舶等の内燃機関排気系統、ボイラ排気系統、低温熱交換器、焼却炉床等の高温湿潤腐食環境や、橋梁、支柱、鉄塔、建築内外装材、屋根材、建具、厨房部材、各種手すり、ガードレール、各種フック、ルーフドレイン、鉄道車両等の大気腐食環境や、各種貯蔵タンク、支柱、杭、矢板等の土壌腐食環境や、缶容器、各種容器、低温熱交換器、浴室部材、自動車構造部材等の結露腐食環境(冷凍、湿潤、乾燥が複合する腐食環境を含む)や、貯水槽、給水管、給湯管、缶容器、各種容器、食器、調理機器、浴槽、プール、洗面化粧台等の水道水腐食環境や、缶容器、各種容器、食器、調理機器等の飲料水腐食環境や、各種鉄筋構造物、支柱等のコンクリート腐食環境や、船舶、橋梁、杭、矢板、海洋構造物等の海水腐食環境等の、種々の腐食環境に用いられる溶接部材用耐食鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、様々な環境での耐食性の向上を目的として表面処理を施した鋼が使用されてきた。使用環境に応じた金属を使用して表面処理を施すことで、処理後の鋼表面の耐食性が著しく向上する。
一方で、表面処理鋼板を用いて目的とする製品や部材となすに際しては、様々な溶接が行われることが一般的であるが、このような溶接によって表面処理層の消失や損傷等が引き起され、溶接部の耐食性は加工前の表面処理を施した部分と比較して著しく劣化することが一般的である。すなわち、溶接部の表面処理層の消失による溶接部の耐食性の劣化が、目的とする製品や部材の耐食寿命を著しく劣化させている。
【0003】
このような問題に対して、溶接部の表面処理層の補修対策や、表面処理工程の大幅な見直し等の対策が種々行われている。前記補修対策としては、溶接部への塗装によるタッチアップ等のめっき補修、あるいは溶射補修が行われることが多い。しかしながら、これらの方法では付加的な工程の増大によって経済性が大きく損われる。
【0004】
一方、前記表面処理工程の見直し策としては、表面処理を施す前に目的とする部材の溶接を行い、溶接完了後に表面処理を施すことが一般的に行われる。この方法では、溶接部を含む鋼材の表面処理により、比較的均一な耐食性の確保が可能であるが、溶接後の形状によっては本対策が適用できない場合があり、さらには前処理や表面処理工程が製品一品毎の非連続工程となるために、生産性や経済性が阻害される。また溶接後の表面処理によって、製品や部材の形状が損われる等の副次的問題を惹起することもある。
【0005】
例えば自動車の足廻り部材等の溶接構造部材の場合、亜鉛めっき鋼板を用いた溶接部では亜鉛の気泡による欠陥が残るため、亜鉛めっき鋼板の適用が困難である。また、溶接構造とした後の表面処理の実施は、生産性や経済性の観点から現実的ではなく、一部の少量生産の自動車でのみ実施されている。
【0006】
このような情況にあって、鋼自体の耐食性を改善する耐食鋼が、特許文献1に開示されている。しかしこの鋼板は、溶接性の改善には優れていると考えられるものの、めっき鋼板と比較してその耐食性は低いという課題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−141554号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こうした現状に鑑みて、優れた溶接性や溶接部信頼性を有すると共に、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の様々な腐食環境において耐食性の優れた溶接部材用耐食鋼を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成すべく、溶接性を有すると共に高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、さらには大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の様々な腐食環境において優れた耐食性を有する鋼を開発するべく、各種金属により表面処理を施した鋼の溶接部材について種々の観点から検討してきた。
【0010】
まず本発明者らは、表面処理層の被覆の厚さを0.005μm以上0.5μm未満とすることで、欠陥のない溶接施工が可能であることを見出した。
【0011】
さらに本発明者らは、表面処理鋼の溶接部材の腐食に最も厳しい環境条件は、従来、表面処理表面に対して最も厳しい腐食環境と考えられてきた塩害環境や大量の塩を含む海水飛沫などの環境ではなく、これらの環境に比較して極めて低濃度の塩を含む結露−乾燥が繰返される腐食環境であることを見出した。
そして本発明者らは、この理由としては、塩害環境等の大量の塩を含む環境では、溶接部と表面処理層の間で高い導電率を有する腐食環境が生成され、表面処理層の溶接部への電気化学的防食作用が生じ、溶接部が防食されるのに対して、極めて低濃度の塩を含む結露−乾燥繰返し腐食環境では、溶接部と表面処理層の間の導電率が極めて低いために、表面処理層の溶接部への電気化学的防食作用が生じにくく、溶接部が腐食することを明らかにした。
【0012】
本発明者らは、このような極めて低濃度の塩を含む結露−乾燥繰返し腐食環境での、溶接部の腐食抵抗を高めた表面処理鋼材を得る手段について検討した結果、Crを0.1〜9.9質量%含有し、Alを0.1質量%以上、Mgを0.0003質量%以上含有する鋼を基材として、その表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑なる金属の層を被覆形成し、かつ該被覆層の厚さが0.005μm以上0.5μm未満とした欠陥のない溶接施工が可能な表面被覆厚さとした場合に、鋼の溶接性を阻害することなく優れた耐食性が得られることを見出した。
【0013】
耐食性が著しく向上する理由については、現状では不明な点が多いが、本発明者らは、基材にAlとMgを添加することで、電位が基材よりも卑な金属被覆層において、極めて低濃度の塩を含む結露−乾燥繰返し腐食環境であっても、溶接部に対する電気化学的なものと考えられる保護作用が発現し、これが長期にわたって継続することにより、耐食性が向上することを確認している。
【0014】
本発明者らは、上述の知見に基づいて、基材よりも卑となる金属被覆層を有し、AlとMgを含有するCr含有金属基材に対して、耐食性をさらに向上するための手段について種々検討を重ねた結果、基材へのSi、Mn、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hf、Cu、Mo、Sb、Ni、Wの添加がより一層の耐食性向上に有効であることを見出した。
【0015】
さらに、本発明者らは検討を続けた結果、水溶液環境における電位が基材よりも卑なる被覆金属として、アルミニウム、アルミニウムを主体とする合金、亜鉛、亜鉛を主体とする合金、亜鉛にAlを0.1〜55質量%含有する合金、マンガン、マンガンを主体とする合金が本発明の目的に適していることを見出した。
【0016】
またさらに本発明者らは、これらの被覆金属について、溶接性および鋼基材との相互作用による耐食性向上の観点から種々の検討を重ねた結果、これらの被覆金属に、Mg、Si、Inのうちいずれか一種以上を0.05質量%以上15質量%以下含有させたものが溶接性を阻害することなく、より一層優れた耐食性を実現することを見出した。
【0017】
さらに本発明者らは、溶接性および耐食性に加え、加工性を向上すべく検討を続けた結果、Crを0.1〜9.9質量%、Alを0.1〜10質量%、Mgを0.0003〜0.1質量%含有する鋼に対して、CおよびNを低減した上で、さらに、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfを特定の条件を満足するように添加すると、溶接性および耐食性を損うことなく加工性の向上に効果があることを見出した。
【0018】
またさらに、脱酸および強化元素としては、SiおよびMnが適切であることを見出した。
【0019】
本発明は、主に上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1) 質量%で、C:0.02%以下、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.01〜3.0%、Cr:0.1〜9.9%、Al:0.1〜10%、Mg:0.0003〜0.1%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.02%以下、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を基材とし、さらに、該基材表面のうち、少なくとも使用環境に曝される表面に対して、水溶液環境における電位が前記基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成することを特徴とする溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0020】
(2) 前記鋼が、さらに、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの中から選ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜1質量%含有することを特徴とする前記(1)に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0021】
(3) Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの中から選ばれる1種または2種以上の含有量が、さらに次式を満足することを特徴とする前記(2)に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179≧0.8X[C/12+N/14]
【0022】
(4) 前記鋼が、さらに質量%で、Cu:0.01〜5.0%、Mo:0.05〜10%、W:0.05〜3.0%、Sb:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜10%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜 (3)のいずれか1項に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0023】
(5) 前記鋼が、さらに質量%で、希土類元素:0.001〜0.1%、Ca:0.0001〜0.05%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0024】
(6) 前記水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属が、アルミニウム、アルミニウムを主体とする合金、亜鉛、亜鉛を主体とする合金、亜鉛にアルミニウムを0.1〜55質量%含有する合金、マンガン、マンガンを主体とする合金の1種または2種以上であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0025】
(7) 前記水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属が、さらに、Mg、Si、Inの1種または2種以上を0.05〜15質量%含有することを特徴とする前記(6)に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明において、基材の各成分の範囲を限定した理由を以下に述べる。なお、成分含有量は質量%を示す。
【0027】
Siは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上、Crを0.1%以上含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.01%未満では効果が認められず、3%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、含有量範囲を0.01%以上3%以下に限定する。さらにSiは、Crを0.1%以上含有する鋼にSiを添加することで、脱酸剤および強化元素としても有効に機能するが、含有量が0.01%未満ではその脱酸効果が充分ではなく、1.5%超含有するともはやその効果は飽和している上に加工性をやや低下させる。従って、0.01%以上1.5%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0028】
Mnは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上、Crを0.1%以上含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.01%未満では効果が認められず、3%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、含有量範囲を0.01%以上3%以下に限定する。さらにMnは、鋼の脱酸剤として有効であり、その効果を発揮するためには0.05%以上を含有させる必要があるが、1.2%を超えて含有させてもその効果はもはや飽和しているばかりか、過剰にMnを含有させると加工性が低下する。従って、0.05%以上1.2%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0029】
Crは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.1%未満では効果が十分ではなく、一方9.9%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、Crの含有量は0.1%以上9.9%以下に限定する。
【0030】
Alは、本発明において耐食性を確保するためにMgと共に最も重要な元素であって、Mgを0.0003%以上、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.1%未満では効果が十分ではなく、10%を超えて添加してもその効果が飽和するものであるから、Alの含有量は0.1%以上10%以下に限定する。
【0031】
Mgは、本発明において耐食性を確保するためにAlに次いで重要な元素であって、Alを0.1〜10%、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.0003%未満では効果が十分ではなく、0.1%を超えて添加してもその効果が飽和するものであるから、Mgの含有量は0.0003%以上0.1%以下に限定する。
【0032】
CおよびNは、鋼板の加工性を低下させる上に、CはCrと炭化物を生成して耐食性を低下させ、またNは靭性を低下させるので、CおよびNの含有量は少ない方が望ましく、上限含有量はいずれも0.02%とし、いずれも少ないほど好ましい。
【0033】
Pは、多量に存在すると靭性を低下させるので少ない方が望ましく、上限含有量は0.03%とする。
【0034】
Sも、多量に存在すると耐孔食性を低下させるので少ない方が望ましく、上限含有量は0.01%とする。
【0035】
以上が本発明が対象とする溶接性および耐食性に優れた鋼基材の基本的成分であるが、本発明においては、必要に応じてさらに以下の元素を添加して耐食性を一段と向上させた鋼基材や、さらに加工性を改善した鋼基材も対象としている。
Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上、Crを0.1%以上含有する鋼基材に1種以上を添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、各元素共に添加量の合計が0.01%未満では効果が認められず、一方、1.0%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの含有量は、0.01%以上1.0%以下に限定する。
【0036】
さらに、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfは、含Cr鋼中のCおよびNを炭化物および窒化物として固定することによって、鋼基材の耐食性の向上や加工性の改善に顕著な効果があり、各元素単独の添加あるいは2種以上を複合して添加することができるが、添加量の合計が0.05%未満では効果がなく、0.8%を超えて添加すると、いたずらにコストを上昇させるとともに圧延疵等の原因となる。従って、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfは、0.05%以上0.8%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0037】
上記に加えて、加工性を有効に改善するためには、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの添加量の合計が次式を満足することが必要である。
Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179≧0.8X[C/12+N/14]
【0038】
Cuは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.01%未満では効果が認められず、一方5%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.01%以上5%以下の範囲に限定する。
さらに、Cuは、0.1%以上添加すると、鋼基材単体での全面腐食に対する抵抗を向上させる効果があり、2.5%を超えて添加するとその効果は飽和する。従って、0.1%以上2.5%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0039】
Moは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.05%未満では効果が認められず、一方10%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.05%以上10%以下に限定する。
さらに、Moは、0.1%以上添加すると、鋼基材単体での孔食の発生と成長を抑制する効果があるが、3.0%を超えて添加してもその効果は飽和するばかりか加工性を低下させる。従って、0.1%以上3%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0040】
Wは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に0.05%以上添加すると、鋼基材表面に水溶液環境における電位が鋼基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.05%未満では効果が認められず、一方3%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.05%以上3%以下に限定する。
さらに、Wを添加することで、鋼基材単体での孔食の発生と成長を抑制する効果があるが、0.1%未満では効果は十分ではなく、一方2.0%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか加工性を低下させる。従って、0.1%以上2%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0041】
Sbは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に0.01%以上添加すると、鋼基材表面に水溶液環境における電位が鋼基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、添加量が0.01%未満では効果が認められず、一方0.5%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.01%以上0.5%以下に限定する。さらに、Sbを添加することで、鋼基材単体での孔食および全面腐食に対する抵抗を向上させる効果があるが、0.015%未満では効果は十分ではなく、一方、0.3%を超えて添加すると熱間加工性をやや低下させる。従って、0.015%以上0.3%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0042】
Niは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に0.01%以上添加すると、鋼基材表面に水溶液環境における電位が鋼基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらすが、一方10%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、その範囲を0.01%以上10%以下に限定する。さらに、Niを添加することで、鋼基材単体での孔食を抑制する効果があるが、0.1%未満では効果は十分ではなく、一方、6%を超えて添加しても効果が飽和する。従って、0.1%以上6%以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0043】
希土類元素(REM)やCaは、Alを0.1%以上、Mgを0.0003%以上含有し、Crを0.1〜9.9%含有する鋼基材に添加し、さらにその表面に、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成させた場合に、鋼基材の耐食性を向上する効果をもたらす。しかし、REMでは、添加量が0.001%未満では効果が認められず、一方、0.1%を超えて添加してもその効果が飽和する。そしてCaでは、添加量が0.0001%未満では効果が認められず、一方、0.05%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、REMの範囲は0.001%以上0.1%以下、Caの範囲は0.0001%以上0.05%以下にそれぞれ限定する。
【0044】
さらに、REMおよびCaは、熱間加工性の向上と鋼基材単体での耐孔食性の改善に効果のある元素であるが、添加量が、REMでは0.01%未満、Caでは0.005%未満ではその効果が充分ではなく、一方、REMでは0.05%を超えて、Caでは0.01%を超えて添加すると、それぞれ粗大な非金属介在物を生成して逆に熱間加工性や耐孔食性を劣化させる。従って、REMは0.01%以上0.05%以下の範囲で、Caは0.005%以上0.01%以下の範囲でそれぞれ添加することがより望ましい。
なお、本発明において希土類元素(REM)とは、原子番号が57〜71番および89〜103番の元素およびYを指す。
【0045】
本発明においては、本発明に係る鋼が使用される場合において、少なくとも腐食環境に曝される面を、鋼基材よりも電位が卑な金属で被覆するものである。その被覆層厚さが0.005μm未満では、基材にAlとMgを添加することによる、電位が鋼基材よりも卑な金属の被覆層の鋼基材加工部に対する保護作用が長期にわたって継続するといった効果の発現が充分ではなく、また、被覆金属の厚さを増大させることで耐食性は従来知見通り向上する一方で、0.5μm以上の厚さで被覆すると溶接性を低下させて溶接部に欠陥を生じることから、被覆層の厚さは0.005μm以上0.5μm未満とする。
【0046】
本発明における、水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属を鋼基材に被覆する実施態様について、以下に説明する。
被覆に供される、水溶液環境における電位が基材よりも卑なる金属には、アルミニウム、亜鉛、マンガン、およびこれらを主体とする合金を使用することができる。被覆のプロセスは、被覆金属層が基材に固着されていればそのプロセスを限定するものではなく、用途やコスト等を考慮した上で選択すれば良く、溶融メッキ、電着メッキ、溶融塩電解メッキ、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、溶射、塗装等を使用することができ、これらを併用することも可能である。また、被覆処理の前後にいかなる処理を選択したとしても、それをもって本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0047】
本発明の鋼基材の被覆に用いる亜鉛を主体とする合金とは、合金成分のうち最大量を占める成分が、亜鉛である合金、すなわち亜鉛基合金であり、一般に亜鉛基合金に含有される0.01〜0.3%程度のアルミニウム等の合金成分および不純物成分を含んでよい。
【0048】
本発明の鋼基材の被覆に用いるアルミニウムを主体とする合金とは、合金成分のうち最大量を占める成分がアルミニウムである合金、すなわちアルミニウム基合金であり、一般にアルミニウム基合金に含有されるシリコン、亜鉛等の合金成分および不純物成分を含んでよい。
【0049】
本発明の鋼基材の被覆に用いるマンガンを主体とする合金とは、合金成分のうち最大量を占める成分がマンガンである合金、すなわちマンガン基合金であり、一般にマンガン基合金に含有されるアルミニウム等の合金成分および不純物成分を含んでよい。
【0050】
さらに、これらの被覆金属中にMg、Si、Inのいずれか一種以上を含有させることで、鋼基材の耐食性がさらに向上することを見出している。これらの元素の耐食性理由については不明点が多いが、添加量が0.05%未満では効果が顕著ではなく、一方、15%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、経済性、製造性を損なうことから、これらの元素の添加量は0.05%以上15%以下とする。
【0051】
また使用上の目的から、鋼管や板材等のように表裏面を有する材料の一方の面だけに被覆されていれば良い場合においては、片面のみが被覆された鋼を使用しても、本発明の目的および効果を何等逸脱するものではなく、かかる場合において、片面だけ被覆された鋼を使用するか、あるいは両面に被覆された鋼を使用するかは、コストや溶接性等の他の特性を考慮して選択すれば良い。
【0052】
上記被覆の実施様態としては、めっきや塗装などの手段を用いることが可能で、コイル、板、棒、ケーブル、穿孔鋼管等の鋼材の一般的な形状とした後に、本発明の被覆処理を行うことはもちろんのこと、被覆処理後の本発明鋼をプレスやロール成形等で所定の形状に成形し、さらに加工・溶接して製品として製造しても良いし、本発明の鋼を例えば電縫鋼管等としてまず鋼管の形状にした後に、2次加工および溶接等によって製品に使用しても良く、さらに、本発明の被覆処理を施す前に鋼材を上述したようなプロセスによって目的の形状とした後に本発明の表面被覆処理を施すことも可能であり、その他のプロセスも含めて本発明で限定する組成および処理条件の組み合わせを有する鋼は、いずれも本発明の対象とするところであって、コストや既存製造設備の制約等によって最適な製品製造工程を選択することができ、どの製造工程を選択したとしてもそれをもって本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0053】
以上の本発明において提案する鋼は、高温湿潤腐食環境、大気腐食環境、土壌腐食環境、結露腐食環境、水道水腐食環境、飲料水腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境等の種々の腐食環境に適用することができる。
【0054】
【実施例】
(実施例1)耐食性の評価
表1および表5に成分を示す鋼を溶製し、熱延、冷延等の通常の鋼板製造工程によって幅75mm、長さ150mmの鋼板とし、焼鈍、酸洗を施した後、鋼板の両面に、片面あたり0.01±0.005μmの厚さの条件で、表2〜4、表6〜8に示す被覆を電気めっきにて施し、試験片を作製した。表2〜4、表6〜8に示した被覆1はアルミニウム被覆、被覆2は亜鉛被覆(0.2質量%Al添加)、被覆3はZn−Al被覆(55質量%Al添加)、被覆4はマンガン被覆であり、さらに、被覆金属中に、Mg、Si、Inの一種以上を表2〜4、表6〜8に示す量を添加した。また、溶接に伴う表面処理層の消失を模擬するために、試験片表面の対角線に幅3.5mmで基材鋼に達するクロスカットを施し、以下の耐食性試験(高温腐食湿潤試験、塩害腐食試験、土壌腐食試験、コンクリート中腐食試験、水道水環境腐食試験、海水環境腐食試験、結露腐食試験、大気腐食試験、飲料水腐食試験)を行った。
【0055】
高温湿潤腐食試験は、硫酸イオン1000ppm、塩化物イオン1000ppm、重炭酸イオン5000ppmをアンモニウム塩の形で添加した水溶液50ccを入れた容器1個に対して、試験片1枚を半分まで浸漬し、各試験容器を130℃の雰囲気に保持して、試験溶液が完全に蒸発・揮散することを100回繰り返す試験とした。本試験は、自動車排気系の内面環境に相当する腐食試験であり、実車の約4年以上の走行に対応する厳しい試験方法である。
試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、切断加工部に腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、切断加工部の全面積に対して10%未満、△は10%以上20%未満、×は20%以上であったことをそれぞれ示す。
【0056】
塩害腐食試験は、0.5質量%NaClを含む塩水を50℃で1時間噴霧後、60℃で湿度96%の環境に5時間保持した後、さらに1時間の冷凍保持を行うことを100回繰り返す試験とした。塩害腐食試験は自動車の塩害腐食を想定した試験として行った。なお、本試験の試験片は、上述したクロスカットを施した後に、さらにリン酸塩処理を施した後、20μmの電着塗装を行い、カッターナイフを用いて試験片に対角線にクロスカットを施した。
試験結果は、試験後の試験片について最大腐食深さを測定し、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、最大腐食深さが、0.05mm未満のもの、○は0.05mm以上0.1mm未満、△は0.1mm以上0.3mm未満、×は0.3mm以上であったことをそれぞれ示す。
【0057】
土壌腐食試験は、含水率15%、比抵抗280Ω・cmに塩化ナトリウム水溶液で調整した砂中に試験片を埋め込み、55℃に保持して約1200日放置する試験とした。試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上10%未満、×は10%以上であったことをそれぞれ示す。
【0058】
コンクリート中腐食試験は、塩化物を含む海砂を用いて混練したポルトランドコンクリート中に試験片を埋め込みサンプルとなし、これを凝固させた後、純水中にサンプルを半分まで浸漬し、60℃の環境に約1000日放置し、試験期間終了後にサンプルを破壊して試験片を観察する試験とした。腐食試験は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上20%未満、×は20%以上であったことをそれぞれ示す。
【0059】
水道水環境腐食試験は、流動加温水道水中に試験片を浸漬し、55℃の雰囲気に24ケ月間保持する試験とした。腐食試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、10%未満、△は発錆面積率が10%以上20%未満、×は20%以上であったことをそれぞれ示す。
【0060】
海水環境腐食試験は、海岸の海水飛沫帯に試験片を30ケ月間暴露する試験とした。腐食試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上10%未満、×は10%以上であったことをそれぞれ示す。
【0061】
結露腐食試験は、−20℃の環境に2時間保持後、湿度98%、温度40℃の環境に4時間保持することを1800回繰り返す試験とした。腐食試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上20%未満、×は20%以上であったことをそれぞれ示す。
【0062】
大気腐食試験は、海岸から約1.5kmの位置に、試験片を約900日暴露する試験とした。腐食試験結果は◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、5%未満、△は5%以上10%未満、×は10%以上であったことをそれぞれ示す。
【0063】
飲料水環境腐食試験は、水酸化ナトリウムを用いてpHを2.3に調整し、高純度窒素ガスを通気して脱気し、27℃に保持した4種類の溶液((a)0.5質量%リン酸溶液、(b)0.5質量%クエン酸溶液、(c)0.5質量%クエン酸・0.5質量%塩化ナトリウム溶液)850cc中に試験片を50日間浸漬し、溶液中に溶出した鉄イオン量を分析する試験とした。なお、本試験については、表4、8に示した被覆1のアルミニウム被覆、被覆4のマンガン被覆についてのみ実施した。
腐食試験結果は、◎、○、△、×の4段階で評価した。◎は、腐食の発生が認められなかったものを示す。○は、発錆面積率が、1%未満、△は1%以上5%未満、×は5%以上であったことをそれぞれ示す。
表2〜4、表6〜8に試験結果を示す。
【0064】
高温湿潤腐食試験結果は、表2、6から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は塩化物を含む高温湿潤という非常に厳しい腐食環境であっても良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0065】
塩害腐食試験結果は、表2、6から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は塩害腐食という非常に厳しい腐食環境であっても良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0066】
土壌腐食試験結果は、表2、6から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は土壌腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0067】
コンクリート中腐食試験結果は、表2、6から明らかなように、本発明鋼である1〜40、51〜90はコンクリート中腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0068】
水道水環境腐食試験結果は、表3、7から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は水道水腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0069】
海水環境腐食試験結果は、表3、7から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は海水腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0070】
結露腐食試験結果は、表3、7から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は結露腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0071】
大気腐食試験結果は、表3、7から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は大気腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0072】
飲料水環境腐食試験結果は、表4、8から明らかなように、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は飲料水腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0073】
すなわち、上記の各種耐食性試験の結果から、本発明鋼である番号1〜40、51〜90は、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の種々の腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である番号41〜50、91〜100は耐食性に劣ることがわかる。
【0074】
(実施例2)加工性の評価
絞り比1.8の円筒絞り試験を行って割れの有無で判定した。加工性の評価は、○、×の2段階で評価し、○は円筒絞り試験結果が良好であったことを示し、×は円筒絞り試験で割れを生じたことを示している。表5に、試験結果を併せて示した。
尚、表5のX値とは、次式によって算出した値を記載し、本願発明の範囲はX値が0以上である。
X=Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179−0.8X[C/12+N/14]
【0075】
表5から明らかなように、本発明鋼である番号51〜90は良好な加工性を示し、さらに、上述のように、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の種々の腐食環境で良好な耐食性を示すのに対して、比較鋼である番号91〜100は耐食性と加工性が同時に達成できないことがわかる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は溶接性を阻害することなく、結露腐食環境をはじめとして、高温湿潤腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の種々の腐食環境において耐食性に優れる鋼並びに耐食性および加工性に優れる鋼を低コストで提供することを可能としたものであり、産業の発展に貢献するところ極めて大である。
Claims (7)
- 質量%で、
C :0.02%以下、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:0.01〜3.0%、
Cr:0.1〜9.9%、
Al:0.1〜10%、
Mg:0.0003〜0.1%、
P :0.03%以下、
S :0.01%以下、
N :0.02%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を基材とし、さらに、該基材表面のうち、少なくとも使用環境に曝される表面に対して、水溶液環境における電位が前記基材よりも卑な金属の層を0.005μm以上0.5μm未満の厚さに形成することを特徴とする溶接性および耐食性の優れた鋼。 - 前記鋼が、さらに、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの中から選ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜1質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
- Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの中から選ばれる1種または2種以上の含有量が、さらに次式を満足することを特徴とする請求項2に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179≧0.8X[C/12+N/14] - 前記鋼が、さらに質量%で、
Cu:0.01〜5.0%、
Mo:0.05〜10%、
W :0.05〜3.0%、
Sb:0.01〜0.5%、
Ni:0.01〜10%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。 - 前記鋼が、さらに質量%で、
希土類元素:0.001〜0.1%、
Ca:0.0001〜0.05%、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。 - 前記水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属が、アルミニウム、アルミニウムを主体とする合金、亜鉛、亜鉛を主体とする合金、亜鉛にアルミニウムを0.1〜55質量%含有する合金、マンガン、マンガンを主体とする合金の1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
- 前記水溶液環境における電位が基材よりも卑な金属が、さらに、Mg、Si、Inの1種または2種以上を0.05〜15質量%含有することを特徴とする請求項6に記載の溶接性および耐食性の優れた鋼。
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Legal Events
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Effective date: 20050914 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
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A02 | Decision of refusal |
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