JP3554456B2 - 酸洗性と耐食性に優れた鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸洗性と耐食性の優れた鋼に係り、さらに詳しくは、内燃機関排気系統、ボイラ排気系統、低温熱交換機、焼却炉床等の高温湿潤腐食環境、橋梁、支柱、建築内外装材、屋根材、建具、厨房部材、各種手すり、ルーフドレイン、鉄道車両等の大気腐食環境、各種貯蔵タンク、支柱、杭、矢板等の土壌腐食環境、缶容器、各種容器、低温熱交換機、浴室部材等の結露腐食環境(冷凍、湿潤、乾燥が複合する腐食環境を含む)、貯水槽、給水管、給湯管、缶容器、各種容器、食器、調理機器、浴槽、プール、洗面化粧台等の水道水腐食環境、缶容器、各種容器、食器、調理機器等の飲料水腐食環境、各種鉄筋構造物、支柱等のコンクリート腐食環境、船舶、橋梁、杭、矢板、海洋構造物等の海水腐食環境等の、腐食環境において優れた耐食性と良好な酸洗性を有する鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の腐食環境で使用される鋼は、何らかの防食対策を併用することが多い。近年、信頼性の向上、製造・施工工程の簡素化、メンテナンスフリー化、省資源、等の観点から、鋼素地の耐食性向上を目的とした、Cr含有鋼やステンレス鋼の使用が増大している。しかしながら、従来の技術では、耐食性の向上は素材コストの上昇を招来し、経済性の観点から、現実的な対策とならない場合が多い。また耐食性の向上は、素材の加工性を低下させるなどの、副次的な問題を引き起こす場合もある。
【0003】
たとえば、従来自動車を中心とする内燃機関の排気系統には、内面あるいは外面からの腐食を抑制するために普通鋼にアルミメッキや亜鉛メッキを施した鋼が使用されてきた。環境汚染を抑制するために排気ガス浄化の目的で触媒等が排気系統に具備されたためにこうしたメッキ鋼材では耐食性が充分ではなくなり、鋼素地の耐食性向上を目的として5〜10%のCrを含有させた鋼が、特開昭63−143240号公報や特開昭63−143241号公報で提案されている。また、近年の車両の使用期間および保証期間の延長に伴なって、さらにCrを18%程度まで含有させ、あるいはさらにMoを添加した高級ステンレス鋼が多く使用されるようになってきた。
【0004】
しかし、このような高級ステンレス鋼であっても孔食状の局部腐食が発生する場合があるなど、耐食性は必ずしも充分ではない。また、こうした高級ステンレス鋼はCrやMoを多量に含有するために加工性が悪く、排気系部材のような複雑な形状へ加工するためには、製造に非常な困難を伴い、製造工程が著しく複雑になるために加工コストも高くなるという難点がある。あるいは形状によっては適用できない場合がある。かつ、素材コストも高い。
【0005】
上記の例に見られるように、一般にCrをある程度含有する鋼では腐食環境が厳しくなると局部腐食が発生し易く、これに対する手段として腐食に対する抵抗を向上させるためには、さらにCrあるいはMoの含有量を増加させるのが極めて一般的な技術的手段であった。
【0006】
さらに、耐食鋼は、耐食性の向上と引き替えに、製造時に多大な負荷の増大を余儀なくされる場合が多々ある。すなわち、耐食性材料を得るために、従来一般的に用いられたCrやCu、Mo等の耐食性向上元素の添加は、酸洗性を大幅に低下させることは周知のことであり、耐食性材料においては酸洗性の向上が経済性の観点から重要な課題となることが多い。CrやCu、Moを添加した耐食性に優れた鋼板は、耐食性に優れると同時に、酸洗性に関しては従来の耐食材料と同様に、難酸洗性鋼として位置づけられるものである。従来、難酸洗性鋼の製造工程においては、酸洗液の強化・変更、通電電解の利用、ショットブラストや研削などの物理的デスケの利用、あるいはこれらの手段の複合等といったデスケ効率の向上対策がきわめて一般的であった。しかしながら、これらの酸洗性改善手段では、対策を講ずるに多大な設備投資や工程負荷の増大を伴い、鋼の製造コストを増大する結果を招来している。
【0007】
近年、特開平5−279791号公報、特開平6−179949号公報、特開平6−179950号公報、特開平6−179951号公報、特開平6−212256号公報、待開平6−212257号公報、特開平7−3388号公報において、耐食性の向上あるいは耐食性と加工性の向上を目的としたCrにAlを添加した鋼が提案されている。これらの鋼は、耐食性あるいは耐食性と加工性の向上にはある程度有効と認められるが、酸洗性に関しては従来の耐食材料と同様に、難酸洗性鋼として位置づけられるものであり、抜本的な解決とはなっていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こうした現状に鑑みて、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の腐食環境における腐食抵抗が大きくかつ酸洗性に優れた低コストの鋼を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の腐食環境において優れた耐食性を有する鋼を開発するべく、種々の観点から検討を行った。まず、優れた酸洗性と同時に上記の各腐食環境において耐食性を向上させる手段を種々検討した結果、Crを2〜9.9%含有する鋼に、Alを1〜10%、Ca+Mgを5〜500ppm 添加した鋼が優れた酸洗性を有すること、なおかつ、上述した多くの腐食環境で非常に優れた耐食性を示すこと、を見出した。CaとMgの同時添加による効果の機構については不明な点が多いが、両者が共存する条件においては、従来の知見を逸脱する優れた酸洗性と耐食性が同時に達成されることを見出している。
【0010】
さらに本発明者らは、より優れた鋼にせんとして検討を続けた結果、上記の鋼にCu、Mo、Sb、Ni、Wを単独あるいは組み合わせて添加すると、優れた酸洗性を損なうことなく、より優れた耐食性が得られること、CおよびNを低減すると優れた酸洗性を損なうことなく、耐食性と加工性の改善に効果があること、脱酸および強化元素としてはSiおよびMnが適切であること、CおよびNを低減した上でNb、V、Ti、Zr、Ta、Hfを特定の条件を満足するように添加すると、優れた酸洗性を損なうことなく、耐食性の改善と加工性の向上に効果があること、を見出した。
【0011】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、
重量%で、
C:0.02%以下、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
Cr:2〜9.9%、
Al:1〜10%、
Ca+Mg:5〜500ppm 、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
N:0.02%以下、
残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする酸洗性と耐食性に優れた鋼である。
【0012】
上記発明鋼において、さらに、重量%で、
Cu:0.05〜5.0%、
Mo:0.05〜3.0%、
Sb:0.01〜0.5%、
Ni:0.01〜6.0%、
W:0.05〜3.0%、
の1種または2種以上を含有させることによって、酸洗性を損なうことなく、耐食性のさらなる向上が得られる。
【0013】
また、上記発明鋼にさらに、重量%で、
希土類元素:0.001〜0.1%、
を含有させることによって、熱間加工性および耐食性を向上させ得る。
【0014】
さらには、上記の基本成分鋼ならびに付加元素を含有させた鋼において、加工性が求められるものについては、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの中から選ばれる1種あるいは2種以上の元素の含有量の合計で0.01〜0.5%を含有し、かつ次式を満足する範囲で含有させる。
Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179−0.8×(C/12+N/14)≧0
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明において各成分の範囲を限定した理由を述べる。
Si:Siは、Crを2%以上含有する鋼に脱酸剤および強化元素として添加することが有効であるが、含有量が0.01%未満ではその脱酸効果が充分ではなく、3.0%を超えて含有するとその効果は飽和している上に、かえって酸洗性や加工性を低下させるので、含有量の範囲を0.01%以上3.0%以下に限定する。
【0016】
Mn:Mnは、鋼の脱酸剤として0.1%以上を含有させる必要があるが、3.0%を超えて含有させてもその効果はもはや飽和しているばかりか、過剰にMnを含有させると加工性が低下するので上限の含有量は3.0%とする。
【0017】
Cr:Crは、耐食性を確保するために2%以上を含有させることが必要であるが、9.9%を超えて含有させてもコストを増すばかりか、加工性が低下するので上眼の含有量は9.9%とする。
【0018】
Al:Alは、本発明において耐食性を確保するためにCa+MgやCrと並んで重要な元素であって、Alの含有量は、耐食性および酸洗性を確保するために必要なCa+Mgの含有量を5ppm 以上安定して確保するために1%以上が必要であり、また、Alの含有量が1%未満では孔食の発生を抑制する効果が充分ではなく、一方、10%を超えて添加するとその効果は飽和するのに対して加工性、酸洗性を低下させることから、Alの含有量は1%以上10%以下に限定する。
【0019】
Ca+Mg:Ca、Mgは、Crを2%以上、Alを1%以上含有する鋼において、耐食性と同時に酸洗性を確保するためにAlと並び最も重要な元素である。現在のところその機構には不明点が多いが、両者の総和が5ppm 未満では良好な酸洗性が得られない。一方耐食性の観点からは、総和が10ppm 以上で耐食性が一層向上し、その総和の増大とともに、耐食性の向上が認められるが、500ppm を越えて添加すると耐食性向上効果が飽和するばかりではなく、酸洗性も低下することが明らかとなっており、Ca+Mgの含有量は5ppm 以上500ppm 以下に限定する。
【0020】
C、N:CおよびNは、鋼板の加工性を低下させる上に、CはCrと炭化物を生成して耐食性を低下させるので、またNは靭性を低下させるので、CおよびN量は少ない方が望ましく、上限の含有量は、いずれも0.02%とする。いずれも少ないほど好ましく、製鋼技術の可能な限り少なくすると良い。
【0021】
P:Pは、多量に存在すると靭性を低下させるので少ない方が望ましく、上限の含有量は0.03%とする。不可避的に混入する含有量をできる限り少なくするのがよい。
【0022】
S:Sも多量に存在すると耐孔食性を低下させるので少ない方が望ましく、上限の含有量は0.01%とする。SもPと同様に不可避的な混入量をできる限り少なくするのがよい。
【0023】
本発明鋼は、上記した成分組成を基本成分とするが、さらに耐食性を向上させるためには、さらにCu、Mo、Sb、Ni、Wの一種または二種以上を含有させる。
【0024】
Cu:Cuは、Crを2%以上含有し、Alを1%以上含有し、Ca+Mgを5ppm 〜500ppm 含有する鋼に0.05%以上添加すると優れた酸洗性を損なうことなく、全面腐食に対する抵抗を向上させる効果が認められるが、5.0%を超えて添加すると酸洗性を低下させるので、0.05〜5.0%とする。
【0025】
Mo:Moは、Crを2%以上含有し、Alを1%以上含有し、Ca+Mgを5ppm 〜500ppm 含有する鋼に0.05%以上添加すると、優れた酸洗性を損なうことなく、孔食の発生と成長を抑制する効果が認められるが、3.0%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか加工性を低下させるので、0.05〜3.0%とする。
【0026】
Sb:Sbも、Crを2%以上含有し、Alを1%以上含有し、Ca+Mgを5ppm 〜500ppm 含有する鋼に0.01%以上添加すると、優れた酸洗性を損なうことなく、孔食および全面腐食に対する抵抗を向上させる効果が認められるが、0.5%を超えて添加すると酸洗性、熱間加工性を低下させるので、0.01〜0.5%とする。
【0027】
Ni:Niは、Crを2%以上含有し、Alを1%以上含有し、Ca+Mgを5ppm 〜500ppm 含有する鋼に0.01%以上添加すると、優れた酸洗性を損なうことなく、孔食を抑制する効果が認められるが、6.0%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか熱間加工性を低下させるので、0.01〜6.0%とする。
【0028】
W:Wは、Crを2%以上含有し、Alを1%以上含有し、Ca+Mgを5ppm 〜500ppm 含有する鋼に複合して0.05%以上添加すると、優れた酸洗性を損なうことなく、孔食の発生と成長を抑制する効果が顕著に認められるが、3.0%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか酸洗性、加工性を低下させるので、0.05〜3.0%とする。
【0029】
本発明鋼においては、さらに耐食性を向上させる元素として希土類元素(REM)を選択的に含有させる。
希土類元素(REM):希土類元素は、Crを2%以上含有し、Alを1%以上含有し、Ca+Mgを5ppm 〜500ppm 含有する鋼に複合して添加すると、優れた酸洗性を損なうことなく、熱間加工性の向上と耐孔食性の改善に効果の認められる元素であるが、添加重が0.001%未満ではその効果が充分ではなく、0.1%を超えて添加すると、粗大な非金属介在物を生成して逆に熱間加工性や耐孔食性を劣化させるので、0.001〜0.1%とした。なお、本発明において希土類元素とは原子番号が57〜71番および89〜103番の元素およびYを指す。
【0030】
上述した鋼成分からなる酸洗性と耐食性に優れた鋼において、必要によって加工性の向上も求められる場合には、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfのうち一種または二種以上を含有させる。
【0031】
Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hf:Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfは、Crを2%以上含有し、Alを1%以上含有し、Ca+Mgを5ppm 〜500ppm 含有する基本成分鋼の優れた酸洗性を損なうことなく、高Cr鋼中のCおよびNを炭化物として固定することによって耐食性の向上や加工性の改善に顕著な効果が認められる。これらのうちの各元素単独の添加あるいは2種以上の元素を複合して添加することができるが、単独での添加量あるいは複合添加での添加量の合計が0.01%未満では効果がなく、0.5%を超えて添加するとコストを上昇させるとともに圧延疵等の原因ともなるので、合計量として0.01〜0.5%とする。かつ、加工性を有効に改善するためには、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの添加量の合計が次式を満足することが必要である。
Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179−0.8×(C/12+N/14)≧0
上記式を満たさない場合には、CおよびNの固定化が不十分となり、加工性の改善効果が得にくくなる。
【0032】
本発明鋼は、使用するに際して、例えば鋼塊として製造した後に、熱延、鍛造、冷延、伸線によって鋼板や棒線、型鋼、矢板などの任意の形状とし、それをプレス等で所定の形状に成形し、さらに加工・溶接して製品として製造しても良いし、鋼板を例えば電縫鋼管等としてまず鋼管の形状にした後に2次加工および溶接等によって製品に使用しても良く、その他のプロセスも含めてコストや既存製造設備の制約等によって最適な製品製造工程を選択することができ、どの製造工程を選択したとしても、本発明鋼が製造できればよい。
【0033】
本発明鋼は、適当な組成の合金の表面にAlあるいはさらに必要元素を含有するAl合金を、メッキ法やクラッド法等の方法で付着させ、熱処理などの適切な処理によって元素を拡散させ、本発明で規定した範囲内の化学組成の表面を有する鋼材としても良い。
【0034】
本発明鋼は、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等、これらの腐食環境が複合した様々な腐食環境に適用することができる。
【0035】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。
1)酸洗性の評価
表1、2に成分を示す鋼を溶製し、通常の鋼塊製造工程によって鋼塊とした後熱間圧延を行い、板厚2.5mmのサンプルとした。次に、これらの鋼板から幅50mm、長さ70mmの試験片を採取して、酸洗試験に供した。
【0036】
酸洗試験は、80℃に加熱した5%塩酸水溶液中に試験片を浸漬し、表面スケールを除去する試験とした。試験結果を表1、2に併せて示した。酸洗試験結果の◎は20秒以内に酸洗が完了したことを、○は40秒以内に酸洗が完了したことを、△は60秒以内に酸洗が完了したことを、×は120秒以上の処理時間でも酸洗が完了しなかったことをそれぞれ示す。
表1、2から明らかなように、本発明鋼は良好な酸洗性を示しているのに対して、比較鋼は酸洗性に劣ることがわかる。
【0037】
2)耐食性の評価
表1、2に成分を示す鋼を溶製し、熱延、冷延等の通常の鋼板製造工程によって肉厚1mmの鋼板とし、850℃にて焼鈍を施し、これらの鋼板から幅50mm、長さ70mmの試験片を採取して、以下に述べる各種の腐食試験に供した。
【0038】
高温湿潤腐食試験は、硫酸イオン100ppm 、塩化物イオン100ppm 、重炭酸イオン500ppm をアンモニウム塩の形で添加した水溶液50cm3 中に試験片を半分まで浸漬し、試験容器ごと130℃の雰囲気に保持して試験溶液が完全に蒸発・揮散することを50回繰り返す試験とした。試験結果を表1、2に併せて示した。腐食試験結果の◎は最大腐食深さが0.20mm未満、○は0.3mm未満、△は0.4mm未満、×は0.4mm以上であったことをそれぞれ示す。
【0039】
表1、2から明らかなように、本発明鋼である表1、2中の記号1〜72は塩化物を含む高温湿潤という非常に厳しい腐食環境であっても良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である表1、2中の記号A〜Zは耐食性に劣る、あるいはある程度の耐食性は得られても酸洗性に劣ることがわかる。
【0040】
水道水環境腐食試験は、水道水中に試験片を浸漬し、40℃の雰囲気に3ケ月間保持する試験とした。試験結果を表1、2に併せて示した。腐食試験結果の◎は腐食の発生が認められなかったもの、○は発錆面積率が5%未満、△は発錆面積率が10%未満、×は10%以上であったことをそれぞれ示す。
【0041】
表1、2から明らかなように、本発明鋼である表1、2中の記号1〜72は水道水腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である表1、2中の記号A〜Zは耐食性に劣る、あるいはある程度の耐食性は得られても酸洗性に劣ることがわかる。
【0042】
海水環境腐食試験は、海岸飛沫帯に試験片を12ケ月間暴露する試験とした。試験結果を表1、2に併せて示した。腐食試験結果の◎は腐食深さ0.05mm未満だったもの、○は0.1mm未満、△は0.3mm未満、×は0.3mm以上であったことをそれぞれ示す。
【0043】
表1、2から明らかなように、本発明鋼である表1、2中の記号1〜72は海水腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である表1、2中の記号A〜Zは耐食性に劣る、あるいはある程度の耐食性は得られても酸洗性に劣ることがわかる。
【0044】
結露腐食試験は、−20℃の環境に2時間保持後湿度90%、25℃の環境に4時間保持することを1000回繰り返す試験とした。試験結果を表1、2に併せて示した。腐食試験結果の◎は腐食の発生が認められなかったもの、○は発錆面積率が5%未満、△は発錆面積率が10%未満、×は10%以上であったことをそれそれ示す。
【0045】
表1、2から明らかなように、本発明鋼である表1、2中の記号1〜72は結露腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である表1、2中の記号A〜Zは耐食性に劣る、あるいはある程度の耐食性は得られても酸洗性に劣ることがわかる。
【0046】
大気腐食試験は、海岸から約500mの位置に試験片を約700日暴露する試験とした。試験結果を表1、2に併せて示した。腐食試験結果の◎は腐食が認められなかったもの、○は発錆面積率が5%未満、△は発錆面積率が10%未満、×は10%以上であったことをそれぞれ示す。
【0047】
表1、2から明らかなように、本発明鋼である表1、2中の記号1〜72は大気腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である表1、2中の記号A〜Zは耐食性に劣る、あるいはある程度の耐食性は得られても酸洗性に劣ることがわかる。
【0048】
土壌腐食試験は、含水率15%、比抵抗500Ω・cmに塩化ナトリウム含有量で調整した砂中に試験片を埋め込み、25℃に保持して約700日放置する試験とした。試験結果を表1、2に併せて示した。腐食試験結果の◎は最大腐食深さが0.05mm未満、○は0.1mm未満、△は0.5mm未満、×は0.5mm以上であったことをそれぞれ示す。
【0049】
表1、2から明らかなように、本発明鋼である表1、2中の記号1〜72は土壌腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である表1、2中の記号A〜Zは耐食性に劣る、あるいはある程度の耐食性は得られても酸洗性に劣ることがわかる。
【0050】
コンクリート中腐食試験は、塩化物を含む海砂を用いて混練したポルトランドセメント中に試験片を埋め込みサンプルとなし、凝固させた後、人工海水中にサンプルを半分まで浸漬し、40℃の環境に約700日放置する試験とした。試験結果を表1、2に併せて示した。腐食試験結果の◎は腐食の発生が認められなかったもの、○は発錆面積率が5%未満、△は発錆面積率が10%未満、×は10%以上であったことをそれぞれ示す。
【0051】
表1、2から明らかなように、本発明鋼である表1、2中の記号1〜72はコンクリート中腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である表1、2中の記号A〜Zは耐食性に劣る、あるいはある程度の耐食性は得られても酸洗性に劣ることがわかる。
【0052】
飲料水環境腐食試験は、水酸化ナトリウムを用いてpHを2.8に調整し、高純度窒素ガスを通気して脱気し、27℃に保持した、(a)0.5%リン酸溶液、(b)0.5%クエン酸溶液、(C)0.5%クエン酸−0.5%塩化ナトリウム溶液等の溶液850cc中に試験片を20日間浸漬し、溶液中に溶出した鉄イオン量を分析する試験とした。試験結果を表1、2に併せて示した。腐食試験結果の◎は溶液中への鉄イオンの溶出量が1ppm 以下、△は3ppm 未満、○は5ppm 未満、×は5ppm 以上であったことをそれぞれ示す。
【0053】
表1、2から明らかなように、本発明鋼である表1、2中の記号1〜72は飲料水腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である表1、2中の記号A〜Zは耐食性に劣る、あるいはある程度の耐食性は得られても酸洗性に劣ることがわかる。
【0054】
以上の如く本発明鋼である表1、2中の記号1〜72は、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、梅本腐食環境、飲料水腐食環境等の種々の腐食環境で良好な耐食性を示しているのに対して、比較鋼である表1、2中の記号A〜Zは耐食性に劣る、あるいはある程度の耐食性は得られても酸洗性に劣ることがわかる。
【0055】
3)加工性の評価
絞り比1.8の円筒絞り試験を行なって割れの有無で判定した。試験結果を表2に併せて示した。表2の加工性において○は円筒絞り試験結果が良好であったことを示し、×は円筒絞り試験で割れを生じたことを示している。
【0056】
表2から明らかなように、本発明鋼である表2中の記号37〜72は良好な酸洗性を示し、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の種々の腐食環境で良好な耐食性を示し、かつ加工性も優れているのに対して、比較鋼である表2中の記号N〜Zは酸洗性と耐食性と加工性が同時に達成できないことがわかる。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【発明の効果】
本発明に係る鋼は、Cr、Al、およびCa+Mgを含有するので、優れた酸洗性および耐食性を有しており、低コストで提供することをを可能としたものであり、さらに詳しくは、優れた酸洗性を有し、高温湿潤腐食環境、結露腐食環境、大気腐食環境、水道水腐食環境、土壌腐食環境、コンクリート腐食環境、海水腐食環境、飲料水腐食環境等の腐食環境での使用に供する事が可能である。
Claims (4)
- 重量%で、
C:0.02%以下、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
Cr:2〜9.9%、
Al:1〜10%、
Ca+Mg:5〜500ppm 、
Pを0.03%以下、
Sを0.01%以下、
Nを0.02%以下、
残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする酸洗性と耐食性に優れた鋼。 - さらに、重量%で、
Cu:0.05〜5.0%、
Mo:0.05〜3.0%、
Sb:0.01〜0.5%、
Ni:0.01〜6.0%、
W:0.05〜3.0%、
の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の酸洗性と耐食性に優れた鋼。 - さらに、重量%で、
希土類元素:0.001〜0.1%、
を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の酸洗性と耐食性に優れた鋼。 - さらに、重量%で、Nb、V、Ti、Zr、Ta、Hfの中から選ばれる1種あるいは2種以上の元素を含有量の合計で0.01〜1%を含有し、かつ次式を満足することを特徴とする請求項1,2または3に記載の酸洗性と耐食性の優れた鋼。
Nb/93+V/51+Ti/48+Zr/91+Ta/181+Hf/179−0.8×(C/12+N/14)≧0
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP00126797A JP3554456B2 (ja) | 1997-01-08 | 1997-01-08 | 酸洗性と耐食性に優れた鋼 |
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