JP2004315848A - 溶融金属脆化による溶接加工割れのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板 - Google Patents
溶融金属脆化による溶接加工割れのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板 Download PDFInfo
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Abstract
【目的】下地鋼の成分・組成と組織を調整することにより、溶接加工しても溶接熱影響部に溶融金属脆化に起因した加工割れが発生することのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を提供する。
【構成】C:0.03〜0.30質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:0.05〜2.0質量%,P:0.1質量%以下,S:0.03質量%以下,N:0.05質量%以下,sol.Al:0.1質量%以下を含み、さらに必要に応じてB:0.0001〜0.0080質量%を含み、残部が実質的にFeからなり、Ti,Nb,V,Zrの含有量を合計で0.02質量%以下に制限した組成を有し、溶接加工前の組織が面積分率で10〜70%のフェライトと残部がベイナイト,パーライトあるいはマルテンサイトの混合組織に調整された下地鋼板に、Zn−Al−Mg系の溶融めっきを施す。
Zn−Al−Mg系溶融めっき層としては、Al:4〜22質量%,Mg:0.05〜10質量%を含むものが好ましい。
【選択図】 なし
【構成】C:0.03〜0.30質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:0.05〜2.0質量%,P:0.1質量%以下,S:0.03質量%以下,N:0.05質量%以下,sol.Al:0.1質量%以下を含み、さらに必要に応じてB:0.0001〜0.0080質量%を含み、残部が実質的にFeからなり、Ti,Nb,V,Zrの含有量を合計で0.02質量%以下に制限した組成を有し、溶接加工前の組織が面積分率で10〜70%のフェライトと残部がベイナイト,パーライトあるいはマルテンサイトの混合組織に調整された下地鋼板に、Zn−Al−Mg系の溶融めっきを施す。
Zn−Al−Mg系溶融めっき層としては、Al:4〜22質量%,Mg:0.05〜10質量%を含むものが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
本発明は、溶接加工時に、溶融金属脆化に起因する加工割れが溶接熱影響部に発生することを防止したZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用はもとより、建築構造物等、腐食が問題となる箇所に使用される鋼材として、耐食性に優れる亜鉛めっき鋼が広く用いられている。
亜鉛めっき鋼の使用態様としては、過酷な成型加工が施された鋼材や溶接加工が施された構造材を亜鉛めっき浴に浸漬してめっきした後使用する態様と、亜鉛めっき鋼板を適宜形状に成形後溶接して所望構造体に構築する態様が挙げられる。いずれの場合でも、加工部分や溶接の熱影響部に割れが発生することがある。成型加工や溶接加工によって生じた残留応力(引張応力)あるいは溶接時の熱応力と溶融金属が同時に存在するとき、鋼材の結晶粒界に溶融した亜鉛が極めて容易に浸入し、割れを生じ、鋼材の破壊に至る現象であり、「溶融金属脆化割れ」として知られているものである。
【0003】
成型加工品や溶接構造物を溶融亜鉛浴に浸漬したときに発生する溶融金属脆化割れを防止する手段は、種々検討され、新日鉄技報348(1993)p.63や川崎製鉄技報25(1993)p.20等に報告されている。これらの報告によると、鋼材側の対策として、一般的には、(1)焼き入れ性を抑制し、溶接熱影響部のフェライト占有率を高くする、(2)粒内・粒界の硬度差をなくす(材料の軟質化)ことが有効とされ、具体的対策として、低合金成分化、P,S,Ti,Zrの添加およびBの排除、等が挙げられている。これらの先行技術で述べられている溶融金属脆化割れは、あくまでも残留効力が生じている構造物を溶融亜鉛浴に浸漬したときに生じるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、溶融めっき鋼板を適宜形状に成形した後溶接して構造物を構築する際、構造物の鋼材内部に残留している応力と違い、溶接加工による熱応力は一定ではなく、溶接部分の移動に伴って応力の絶対値や方向(引張あるいは圧縮)がさまざまに変化する。また溶接部分は急加熱,急冷却に曝され、鋼材の金属組織は初期の組織から変化する。
このように、溶接加工時に生じる溶融金属脆化割れは、溶融亜鉛浴に浸漬した場合に生じる溶融金属脆化割れと比べて、現象的には同じものであるが、発生環境的にはかなり異なっている。したがって、これまでの溶融金属脆化に対して有効であった対策も、溶接加工時に生じる溶融金属脆化に対しては必ずしも十分であったとはいえない。そして、溶融めっき鋼板を適宜形状に成形した後溶接して構造物を構築する際に、溶接時に熱影響部に発生しやすい溶融金属脆化割れを防止する技術についての先行例は少ない。
【0005】
特に、最近では、溶融亜鉛めっき鋼板と比べてZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は格段に長期間の耐食性に優れるため、従来の溶融亜鉛めっき鋼板に代わって多方面に使用されるようになった。しかし溶接時にある複数の条件が重なると、熱影響部近傍に溶融金属割れが発生しやすい傾向にあることがわかった。
その対策として、本出願人は、特開2002−115793号公報で、溶接手法を改良することによって、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を素材とした電縫鋼管の溶接熱影響部に、溶融金属脆化割れが発生することを防止する技術に関する提案を、また、特開2003−3238号公報で、下地鋼の組成と溶融めっき層の組成を特定の組み合わせにすることにより、溶接時の溶融金属脆化割れを抑制する技術に関する提案をした。
【0006】
その後の発明者等の検討により、溶融金属脆化割れは、上述のような下地鋼の成分やめっき組成以外に、下地鋼の金属組織の影響も大きく受けることが明らかになった。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、下地鋼の成分・組成と組織を調整することにより、溶接加工しても溶接熱影響部に溶融金属脆化に起因した加工割れが発生することのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶融金属脆化による溶接加工割れのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、その目的を達成するため、C:0.03〜0.30質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:0.05〜2.0質量%,P:0.1質量%以下,S:0.03質量%以下,N:0.05質量%以下,sol.Al:0.1質量%以下を含み、残部が実質的にFeからなり、Ti,Nb,V,Zrの含有量を合計で0.02質量%以下に制限した組成を有し、溶接加工前の組織が面積分率で10〜70%のフェライトと残部がベイナイト,パーライトあるいはマルテンサイトの混合組織を有する下地鋼板の表面にZn−Al−Mg系溶融めっき層が形成されていることを特徴とする。
また、下地鋼板は、さらにB:0.0001〜0.0080質量%を含むこともできる。
さらに、Zn−Al−Mg系溶融めっき層は、Al:4〜22質量%,Mg:0.05〜10質量%を含み、さらに必要に応じてTi:0.002〜0.1質量%,B:0.001〜0.45質量%,Si:0.005〜2.0質量%の1種または2種以上を含むものが好ましい。
【0008】
【作用】
溶融金属脆化の現象を防ぐための鋼材側の対策としては、▲1▼焼入れ性を抑制し、旧γ粒界を残さない、▲2▼粒界の結合力を上昇させる、▲3▼粒内・粒界の硬度差をなくして材料を軟質化する、ことなどが知られている。
本発明者等は、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を素材として溶接加工したとき、熱影響部に発生する溶融金属脆化割れの挙動について詳細な検討を行った。
その結果、溶融金属脆化割れが生じる箇所が、溶接の熱影響によってAc1点まで加熱されない部分であることがしばしばある。このような溶融金属脆化割れは、フェライト結晶粒のほとんどがベイナイトやパーライトで分断されずに存在する金属組織の鋼材で生じやすく、ベイナイトやパーライトで分断されてフェライト粒が複雑に入り組んだ組織を有する鋼材で溶融金属脆化割れが生じ難い傾向にあるという現象を見出した。
【0009】
上記のような現象を基に考察した結果、結晶粒界が複雑に入り組んだ形状になることで、亜鉛融体の粒界への浸入に対する抵抗となり、溶融金属脆化割れを生じ難くさせることが可能であるとの新たな知見を得たものである。
さらに、溶接熱の影響を受けた状態での塑性流動応力(耐力)は低いほど、溶接加工時に比較的容易に(低応力で)塑性流動が生じ、溶接加工時の熱応力が緩和され、結果的に金属溶融体の浸入経路である結晶粒界に負荷される応力が大きくならず、すなわち粒界が開かず、溶融金属脆化による割れの発生が抑制される効果もあると推測される。したがって、フェライト相中に炭化物等を形成してその強度、特に高温強度を高めるような合金成分の含有量を少なくすることが有効であることがわかった。
【0010】
【実施の態様】
まず、本発明のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板の下地鋼の成分組成について説明する。
C:0.03〜0.30質量%
Cは、構造材としての強度を付与するのに必要な成分である。0.03%に満たないと構造材料として要求される強度を確保することができない。しかし、0.30%を超えると溶融金属脆化の感受性が高くなるとともに、溶接熱影響部が大きく硬化して室温での靭性が不十分になる。
Si:0.5質量%以下
Siは、フェライト相に固溶して高温強度を向上させ、溶融金属脆化の感受性を高める成分である。さらに過剰に添加すると、延性が低下したり、鋼材表面に濃化層を形成してめっき性を低下させる。したがってSi含有量は0.5質量%以下とする。
【0011】
Mn:0.05〜2.0質量%
Mnは、S起因の熱間加工時の熱間脆化を防止するとともに、室温強度向上に有効な成分である。この作用は0.05質量%以上の含有で発揮される。しかしながら、過剰に含有させても室温強度は飽和し、逆に高温強度が増して溶融金属脆化の感受性は高まる。したがって、Mn含有量の上限は2.0質量%とする。
P:0.1質量%以下
Pは、延性に悪影響を及ぼすので、高加工性が要求される用途では少なくする必要がある。ただし、固溶して強度を上昇させる作用を有しているので、加工性やめっき性に悪影響を及ぼさない範囲内で含有させても良い。その上限は0.1質量%である。
【0012】
S:0.03質量%以下
Sは、熱間脆化の原因となり、加工性,耐食性を低下させる有害成分である。製造コストが許す限り、その含有量は少なくすべきで、本発明では0.03質量%以下に規制する。
N:0.05質量%以下
Nは、強度を上昇させる作用を有しているが、過剰に含有させると加工性を低下させるので低い方が好ましい。また、Bと結合して、耐溶融金属脆化性にとって有効なBの有効量を減少させ、耐溶融金属脆化性を低下させることにもなるので低い方が好ましい。以上のことから、N含有量は0.05質量%以下に規制する。
sol. Al:0.1質量%以下
Alは、製鋼時に脱酸剤として有効である。しかしながら、過剰の添加は、鋼中に非金属介在物が増加し、加工性やめっき性を低下させることになる。したがって、その上限は、0.1質量%とする。
【0013】
Ti,Nb,V,Zr:合計で0.02質量%以下
Ti,Nb,V,Zrは、いずれも炭化物を形成して析出硬化をもたらす成分で、高強度を得るためには有効である。しかしながら、同時に高温の耐力を著しく高める。その結果、特にフェライト相による応力緩和能を低下させるため、溶接時に溶融金属脆化に起因した割れが生じやすくなる。このため、上記成分の合計含有量の上限を0.02質量%に制限した。
【0014】
B:0.0001〜0.0080質量%
Bは、フェライト粒界に偏析して結晶粒界の結合力を高め、溶融金属脆化の抑制に有効な合金成分である。その作用を発揮させるためには0.0001質量%以上の添加を必要とする。しかしながら、過剰の添加は、鉄の硼化物等を生成して加工性を低下させる原因になる。したがってBを添加する場合、その上限は0.0080質量%とする。
なお、Bは、鋼中のNと結合して有効B量が低減する。このため、下地鋼としては、N含有量を低減したり、微量のTiを併せて添加してNを固定することにより有効B量の低減を抑えることが好ましい。ただし、この際のTiは、炭化物を形成して高温耐力を高めないように0.02質量%以下に制限する必要がある。
【0015】
次に、本発明下地鋼の溶接加工前の組織について説明する。
溶接加工前の組織が面積分率で10〜70%のフェライトと残部がベイナイト,パーライトあるいはマルテンサイトの混合組織
亜鉛を主体とした金属溶融体の浸入経路を複雑化させるためには、組織をフェライト単相ではなく、フェライトとマルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトとの混合組織とし、フェライトとマルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトとの結晶粒界を互いに入り組んだ状態とする必要がある。そして後述するような予備的実験を繰り返すことにより、両者の面積分率をフェライト10〜70%、残部マルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトとすることにより、結晶粒界の複雑さの度合いが高くなり、亜鉛を主体とした金属溶融体の拡散浸入が抑制されることを確認した。
【0016】
マルテンサイトやベイナイト,パーライトの硬質相とフェライト相とが組織中に分散して存在させることが好ましい。硬質なマルテンサイトやベイナイト,パーライトの存在によって、材料の高強度化が図れるとともに、軟質なフェライト相の存在により、延性を確保することもできる。
なお、TiやNb等の析出強化元素が存在すると、炭化物を形成してフェライト中に析出し、フェライト相が強化されてその応力緩和能が低下するため、溶融金属脆化に起因する割れが発生しやすくなる。この意味でも前記のTiやNb等の含有量は制限する必要がある。
このような割合で結晶粒界が互いに入り組んだ組織状態は、たとえば、本発明の化学成分を有する鋼を熱間圧延するときの仕上げ温度や巻取り温度等、またその後の焼鈍条件を適宜調整することにより得られる。
【0017】
上記のように成分・組成並びに組織が調整された下地鋼板上に、常法に従った溶融めっき法でZn−Al−Mg系溶融めっき層が形成される。
Zn−Al−Mg系溶融めっき層としては、Al:4〜22質量%,Mg:0.05〜10質量%を含む組成に調整されたものが好ましい。その理由は次の通りである。
【0018】
Al:4〜22質量%
Alは、めっき層からほとんど溶出することなく、当初のめっき層であった部分にZn−Al系腐食生成物を形成する。Zn−Al系腐食生成物は、極めて固着性が強く、上層にあるMg含有Zn系腐食生成物が腐食過程で消失しても、環境遮断機能のあるバリアとなって下地めっき層の腐食を抑制する。Zn−Al系腐食生成物の一部は、環境中のSOxを取り込み、より強固な保護皮膜としても作用する。固着性が強く下地に対するバリアとして働くZn−Al系腐食生成物を形成するためには、4質量%のAl含有量が必要である。また、溶融めっき層形成時に鋼中Nと反応してAlNとなり、固溶Bにとって有害なNを提言する上でも有効である。しかし、22質量%を超える過剰量のAlが含まれると、Zn−Al系腐食生成物による効果が飽和するばかりでなく、めっき層の加工性も低下する。
【0019】
Mg:0.05〜10質量%
めっき層に含まれるMgは、めっき層最表層にMgを含むZn系腐食生成物を形成し、屋外等の一般腐食環境下でめっき層の腐食速度を抑える効果を奏する。このような作用は、0.05質量%以上のMg含有量でみられ、Mg:10質量%で飽和する。また、10質量%を超える過剰量のMg含有は、ドロスの多量発生等によって溶融めっき浴の安定性を低下させることにもなる。
【0020】
Zn−Al−Mg系溶融めっき層は、任意成分としてTi,B,Siを含むことができる。
Ti及びBを添加すると、表面外観に悪影響を及ぼすZn11Mg2相の生成が抑制され、めっき層中に晶出するZn−Mg系金属間化合物を実質的にZn2Mgのみにできる。具体的には、0.002質量%以上のTiを含ませると、Zn11Mg2相の生成が効果的に抑制される。しかし、0.1質量%を超える過剰量のTiが含まれると、めっき層中にTi−Al系析出物が成長してめっき層に凹凸が生じ、外観が劣化しやすい。Zn11Mg2相の生成は、0.001質量%以上のBを含ませることによっても抑制される。B含有の場合でも、0.045質量%を超える過剰量ではTi−B系,Al−B系析出物がめっき層中に析出し、同様に外観劣化の原因となる凹凸のあるめっき層が生じやすくなる。したがって、Ti,Bを含ませる場合は、Ti:0.002〜0.1質量%,B:0.001〜0.45質量%の範囲にすることが好ましい。また、TiやBを含む鋼板を下地鋼として使用すると、下地鋼から溶融めっき浴に溶出したTi,Bによっても同様な効果が奏せられる。
【0021】
Al含有量が多いZn−Al−Mg系溶融めっき層では、めっき層と下地鋼との界面に局部的にFe−Al系金属間化合物が生成しやすくなる。Siは前記Fe−Al系金属間化合物が厚く成長することを抑え、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板の加工性を向上させる作用を有している。溶融めっき層の黒変化を防止し、表面の光沢性を維持する上でも有効な成分である。Fe−Al系金属間化合物の生成抑制に及ぼすSiの作用は0.005質量%以上の含有量でもみられるが、2.0質量%を超える過剰量のSiが含まれると、ポットに収容している溶融めっき金属に発生するドロス量が多くなる。したがって、Siを含ませる場合は、Si:0.005〜2.0質量%の範囲にすることが好ましい。
Zn−Al−Mg系溶融めっき層は、その他の成分として、めっき層表面におけるMgの酸化を防止する作用を呈するCa,Sr,Na,ミッシュメタルの1種又は2種以上、耐黒変性に有効なNi,Co,Snの1種又は2種以上、塗装後耐食性に有効なTi,Cu,Cr,Mnの1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0022】
【実施例】
表1に示す化学成分をもった鋼を真空溶解にて溶製し、熱間圧延にて板厚2.5mmの鋼板とした。この鋼板を還元焼鈍した後、Zn−6.4%Al−3.1%Mg合金めっき浴に浸漬して、めっき付着量90g/m2の溶融めっき鋼板を得た。
上記めっき鋼板から試験片を切り出して、めっき層が十分溶融状態となる温度550℃まで急速加熱して引張試験を行なった。このときの応力−伸び曲線から、応力が急激に低下する寸前の伸びを臨界伸びとして求め、溶融金属脆化の感受性を評価した。
試験結果を表2に示す。
【0023】
【0024】
【0025】
この結果からもわかるように、フェライト面積分率を所定範囲にし、かつTiやNb,V,Zrの含有量を制限すると、20%以上の臨界伸びを示している。これに対して、比較鋼のようにフェライト分率が大きすぎるものや、Ti,Nb,V,Zr含有量が多すぎるものにあっては、臨界伸びは10%に満たない。本発明鋼では、亜鉛めっきした後、溶融金属脆化を起こしやすい環境にあっても割れが発生し難く、溶融金属脆化感受性が低いことがわかった。
【0026】
【発明の効果】
以上に説明したように、Zn−Al−Mg系溶融めっきを施す下地鋼板として、成分組成を特定し、さらに組織を面積分率で10〜70%のフェライトと残部がマルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトの混合組織としたものを用いると、フェライトとマルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトとは結晶粒界が互いに入り組んだ状態となっており、めっき後の溶接加工時にあっても、亜鉛を主体とする溶融金属体の拡散浸入経路が複雑になって溶融金属体が浸入し難くなり、また熱応力の緩和作用を有する軟質なフェライト相の存在と相まって、溶接加工時の溶融金属脆化割れを防止することができる。
成分組成の調整と組織状態の調整により、溶融金属脆化感受性の低いZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を提供することができる。
本発明は、溶接加工時に、溶融金属脆化に起因する加工割れが溶接熱影響部に発生することを防止したZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用はもとより、建築構造物等、腐食が問題となる箇所に使用される鋼材として、耐食性に優れる亜鉛めっき鋼が広く用いられている。
亜鉛めっき鋼の使用態様としては、過酷な成型加工が施された鋼材や溶接加工が施された構造材を亜鉛めっき浴に浸漬してめっきした後使用する態様と、亜鉛めっき鋼板を適宜形状に成形後溶接して所望構造体に構築する態様が挙げられる。いずれの場合でも、加工部分や溶接の熱影響部に割れが発生することがある。成型加工や溶接加工によって生じた残留応力(引張応力)あるいは溶接時の熱応力と溶融金属が同時に存在するとき、鋼材の結晶粒界に溶融した亜鉛が極めて容易に浸入し、割れを生じ、鋼材の破壊に至る現象であり、「溶融金属脆化割れ」として知られているものである。
【0003】
成型加工品や溶接構造物を溶融亜鉛浴に浸漬したときに発生する溶融金属脆化割れを防止する手段は、種々検討され、新日鉄技報348(1993)p.63や川崎製鉄技報25(1993)p.20等に報告されている。これらの報告によると、鋼材側の対策として、一般的には、(1)焼き入れ性を抑制し、溶接熱影響部のフェライト占有率を高くする、(2)粒内・粒界の硬度差をなくす(材料の軟質化)ことが有効とされ、具体的対策として、低合金成分化、P,S,Ti,Zrの添加およびBの排除、等が挙げられている。これらの先行技術で述べられている溶融金属脆化割れは、あくまでも残留効力が生じている構造物を溶融亜鉛浴に浸漬したときに生じるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、溶融めっき鋼板を適宜形状に成形した後溶接して構造物を構築する際、構造物の鋼材内部に残留している応力と違い、溶接加工による熱応力は一定ではなく、溶接部分の移動に伴って応力の絶対値や方向(引張あるいは圧縮)がさまざまに変化する。また溶接部分は急加熱,急冷却に曝され、鋼材の金属組織は初期の組織から変化する。
このように、溶接加工時に生じる溶融金属脆化割れは、溶融亜鉛浴に浸漬した場合に生じる溶融金属脆化割れと比べて、現象的には同じものであるが、発生環境的にはかなり異なっている。したがって、これまでの溶融金属脆化に対して有効であった対策も、溶接加工時に生じる溶融金属脆化に対しては必ずしも十分であったとはいえない。そして、溶融めっき鋼板を適宜形状に成形した後溶接して構造物を構築する際に、溶接時に熱影響部に発生しやすい溶融金属脆化割れを防止する技術についての先行例は少ない。
【0005】
特に、最近では、溶融亜鉛めっき鋼板と比べてZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は格段に長期間の耐食性に優れるため、従来の溶融亜鉛めっき鋼板に代わって多方面に使用されるようになった。しかし溶接時にある複数の条件が重なると、熱影響部近傍に溶融金属割れが発生しやすい傾向にあることがわかった。
その対策として、本出願人は、特開2002−115793号公報で、溶接手法を改良することによって、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を素材とした電縫鋼管の溶接熱影響部に、溶融金属脆化割れが発生することを防止する技術に関する提案を、また、特開2003−3238号公報で、下地鋼の組成と溶融めっき層の組成を特定の組み合わせにすることにより、溶接時の溶融金属脆化割れを抑制する技術に関する提案をした。
【0006】
その後の発明者等の検討により、溶融金属脆化割れは、上述のような下地鋼の成分やめっき組成以外に、下地鋼の金属組織の影響も大きく受けることが明らかになった。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、下地鋼の成分・組成と組織を調整することにより、溶接加工しても溶接熱影響部に溶融金属脆化に起因した加工割れが発生することのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶融金属脆化による溶接加工割れのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、その目的を達成するため、C:0.03〜0.30質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:0.05〜2.0質量%,P:0.1質量%以下,S:0.03質量%以下,N:0.05質量%以下,sol.Al:0.1質量%以下を含み、残部が実質的にFeからなり、Ti,Nb,V,Zrの含有量を合計で0.02質量%以下に制限した組成を有し、溶接加工前の組織が面積分率で10〜70%のフェライトと残部がベイナイト,パーライトあるいはマルテンサイトの混合組織を有する下地鋼板の表面にZn−Al−Mg系溶融めっき層が形成されていることを特徴とする。
また、下地鋼板は、さらにB:0.0001〜0.0080質量%を含むこともできる。
さらに、Zn−Al−Mg系溶融めっき層は、Al:4〜22質量%,Mg:0.05〜10質量%を含み、さらに必要に応じてTi:0.002〜0.1質量%,B:0.001〜0.45質量%,Si:0.005〜2.0質量%の1種または2種以上を含むものが好ましい。
【0008】
【作用】
溶融金属脆化の現象を防ぐための鋼材側の対策としては、▲1▼焼入れ性を抑制し、旧γ粒界を残さない、▲2▼粒界の結合力を上昇させる、▲3▼粒内・粒界の硬度差をなくして材料を軟質化する、ことなどが知られている。
本発明者等は、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を素材として溶接加工したとき、熱影響部に発生する溶融金属脆化割れの挙動について詳細な検討を行った。
その結果、溶融金属脆化割れが生じる箇所が、溶接の熱影響によってAc1点まで加熱されない部分であることがしばしばある。このような溶融金属脆化割れは、フェライト結晶粒のほとんどがベイナイトやパーライトで分断されずに存在する金属組織の鋼材で生じやすく、ベイナイトやパーライトで分断されてフェライト粒が複雑に入り組んだ組織を有する鋼材で溶融金属脆化割れが生じ難い傾向にあるという現象を見出した。
【0009】
上記のような現象を基に考察した結果、結晶粒界が複雑に入り組んだ形状になることで、亜鉛融体の粒界への浸入に対する抵抗となり、溶融金属脆化割れを生じ難くさせることが可能であるとの新たな知見を得たものである。
さらに、溶接熱の影響を受けた状態での塑性流動応力(耐力)は低いほど、溶接加工時に比較的容易に(低応力で)塑性流動が生じ、溶接加工時の熱応力が緩和され、結果的に金属溶融体の浸入経路である結晶粒界に負荷される応力が大きくならず、すなわち粒界が開かず、溶融金属脆化による割れの発生が抑制される効果もあると推測される。したがって、フェライト相中に炭化物等を形成してその強度、特に高温強度を高めるような合金成分の含有量を少なくすることが有効であることがわかった。
【0010】
【実施の態様】
まず、本発明のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板の下地鋼の成分組成について説明する。
C:0.03〜0.30質量%
Cは、構造材としての強度を付与するのに必要な成分である。0.03%に満たないと構造材料として要求される強度を確保することができない。しかし、0.30%を超えると溶融金属脆化の感受性が高くなるとともに、溶接熱影響部が大きく硬化して室温での靭性が不十分になる。
Si:0.5質量%以下
Siは、フェライト相に固溶して高温強度を向上させ、溶融金属脆化の感受性を高める成分である。さらに過剰に添加すると、延性が低下したり、鋼材表面に濃化層を形成してめっき性を低下させる。したがってSi含有量は0.5質量%以下とする。
【0011】
Mn:0.05〜2.0質量%
Mnは、S起因の熱間加工時の熱間脆化を防止するとともに、室温強度向上に有効な成分である。この作用は0.05質量%以上の含有で発揮される。しかしながら、過剰に含有させても室温強度は飽和し、逆に高温強度が増して溶融金属脆化の感受性は高まる。したがって、Mn含有量の上限は2.0質量%とする。
P:0.1質量%以下
Pは、延性に悪影響を及ぼすので、高加工性が要求される用途では少なくする必要がある。ただし、固溶して強度を上昇させる作用を有しているので、加工性やめっき性に悪影響を及ぼさない範囲内で含有させても良い。その上限は0.1質量%である。
【0012】
S:0.03質量%以下
Sは、熱間脆化の原因となり、加工性,耐食性を低下させる有害成分である。製造コストが許す限り、その含有量は少なくすべきで、本発明では0.03質量%以下に規制する。
N:0.05質量%以下
Nは、強度を上昇させる作用を有しているが、過剰に含有させると加工性を低下させるので低い方が好ましい。また、Bと結合して、耐溶融金属脆化性にとって有効なBの有効量を減少させ、耐溶融金属脆化性を低下させることにもなるので低い方が好ましい。以上のことから、N含有量は0.05質量%以下に規制する。
sol. Al:0.1質量%以下
Alは、製鋼時に脱酸剤として有効である。しかしながら、過剰の添加は、鋼中に非金属介在物が増加し、加工性やめっき性を低下させることになる。したがって、その上限は、0.1質量%とする。
【0013】
Ti,Nb,V,Zr:合計で0.02質量%以下
Ti,Nb,V,Zrは、いずれも炭化物を形成して析出硬化をもたらす成分で、高強度を得るためには有効である。しかしながら、同時に高温の耐力を著しく高める。その結果、特にフェライト相による応力緩和能を低下させるため、溶接時に溶融金属脆化に起因した割れが生じやすくなる。このため、上記成分の合計含有量の上限を0.02質量%に制限した。
【0014】
B:0.0001〜0.0080質量%
Bは、フェライト粒界に偏析して結晶粒界の結合力を高め、溶融金属脆化の抑制に有効な合金成分である。その作用を発揮させるためには0.0001質量%以上の添加を必要とする。しかしながら、過剰の添加は、鉄の硼化物等を生成して加工性を低下させる原因になる。したがってBを添加する場合、その上限は0.0080質量%とする。
なお、Bは、鋼中のNと結合して有効B量が低減する。このため、下地鋼としては、N含有量を低減したり、微量のTiを併せて添加してNを固定することにより有効B量の低減を抑えることが好ましい。ただし、この際のTiは、炭化物を形成して高温耐力を高めないように0.02質量%以下に制限する必要がある。
【0015】
次に、本発明下地鋼の溶接加工前の組織について説明する。
溶接加工前の組織が面積分率で10〜70%のフェライトと残部がベイナイト,パーライトあるいはマルテンサイトの混合組織
亜鉛を主体とした金属溶融体の浸入経路を複雑化させるためには、組織をフェライト単相ではなく、フェライトとマルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトとの混合組織とし、フェライトとマルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトとの結晶粒界を互いに入り組んだ状態とする必要がある。そして後述するような予備的実験を繰り返すことにより、両者の面積分率をフェライト10〜70%、残部マルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトとすることにより、結晶粒界の複雑さの度合いが高くなり、亜鉛を主体とした金属溶融体の拡散浸入が抑制されることを確認した。
【0016】
マルテンサイトやベイナイト,パーライトの硬質相とフェライト相とが組織中に分散して存在させることが好ましい。硬質なマルテンサイトやベイナイト,パーライトの存在によって、材料の高強度化が図れるとともに、軟質なフェライト相の存在により、延性を確保することもできる。
なお、TiやNb等の析出強化元素が存在すると、炭化物を形成してフェライト中に析出し、フェライト相が強化されてその応力緩和能が低下するため、溶融金属脆化に起因する割れが発生しやすくなる。この意味でも前記のTiやNb等の含有量は制限する必要がある。
このような割合で結晶粒界が互いに入り組んだ組織状態は、たとえば、本発明の化学成分を有する鋼を熱間圧延するときの仕上げ温度や巻取り温度等、またその後の焼鈍条件を適宜調整することにより得られる。
【0017】
上記のように成分・組成並びに組織が調整された下地鋼板上に、常法に従った溶融めっき法でZn−Al−Mg系溶融めっき層が形成される。
Zn−Al−Mg系溶融めっき層としては、Al:4〜22質量%,Mg:0.05〜10質量%を含む組成に調整されたものが好ましい。その理由は次の通りである。
【0018】
Al:4〜22質量%
Alは、めっき層からほとんど溶出することなく、当初のめっき層であった部分にZn−Al系腐食生成物を形成する。Zn−Al系腐食生成物は、極めて固着性が強く、上層にあるMg含有Zn系腐食生成物が腐食過程で消失しても、環境遮断機能のあるバリアとなって下地めっき層の腐食を抑制する。Zn−Al系腐食生成物の一部は、環境中のSOxを取り込み、より強固な保護皮膜としても作用する。固着性が強く下地に対するバリアとして働くZn−Al系腐食生成物を形成するためには、4質量%のAl含有量が必要である。また、溶融めっき層形成時に鋼中Nと反応してAlNとなり、固溶Bにとって有害なNを提言する上でも有効である。しかし、22質量%を超える過剰量のAlが含まれると、Zn−Al系腐食生成物による効果が飽和するばかりでなく、めっき層の加工性も低下する。
【0019】
Mg:0.05〜10質量%
めっき層に含まれるMgは、めっき層最表層にMgを含むZn系腐食生成物を形成し、屋外等の一般腐食環境下でめっき層の腐食速度を抑える効果を奏する。このような作用は、0.05質量%以上のMg含有量でみられ、Mg:10質量%で飽和する。また、10質量%を超える過剰量のMg含有は、ドロスの多量発生等によって溶融めっき浴の安定性を低下させることにもなる。
【0020】
Zn−Al−Mg系溶融めっき層は、任意成分としてTi,B,Siを含むことができる。
Ti及びBを添加すると、表面外観に悪影響を及ぼすZn11Mg2相の生成が抑制され、めっき層中に晶出するZn−Mg系金属間化合物を実質的にZn2Mgのみにできる。具体的には、0.002質量%以上のTiを含ませると、Zn11Mg2相の生成が効果的に抑制される。しかし、0.1質量%を超える過剰量のTiが含まれると、めっき層中にTi−Al系析出物が成長してめっき層に凹凸が生じ、外観が劣化しやすい。Zn11Mg2相の生成は、0.001質量%以上のBを含ませることによっても抑制される。B含有の場合でも、0.045質量%を超える過剰量ではTi−B系,Al−B系析出物がめっき層中に析出し、同様に外観劣化の原因となる凹凸のあるめっき層が生じやすくなる。したがって、Ti,Bを含ませる場合は、Ti:0.002〜0.1質量%,B:0.001〜0.45質量%の範囲にすることが好ましい。また、TiやBを含む鋼板を下地鋼として使用すると、下地鋼から溶融めっき浴に溶出したTi,Bによっても同様な効果が奏せられる。
【0021】
Al含有量が多いZn−Al−Mg系溶融めっき層では、めっき層と下地鋼との界面に局部的にFe−Al系金属間化合物が生成しやすくなる。Siは前記Fe−Al系金属間化合物が厚く成長することを抑え、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板の加工性を向上させる作用を有している。溶融めっき層の黒変化を防止し、表面の光沢性を維持する上でも有効な成分である。Fe−Al系金属間化合物の生成抑制に及ぼすSiの作用は0.005質量%以上の含有量でもみられるが、2.0質量%を超える過剰量のSiが含まれると、ポットに収容している溶融めっき金属に発生するドロス量が多くなる。したがって、Siを含ませる場合は、Si:0.005〜2.0質量%の範囲にすることが好ましい。
Zn−Al−Mg系溶融めっき層は、その他の成分として、めっき層表面におけるMgの酸化を防止する作用を呈するCa,Sr,Na,ミッシュメタルの1種又は2種以上、耐黒変性に有効なNi,Co,Snの1種又は2種以上、塗装後耐食性に有効なTi,Cu,Cr,Mnの1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0022】
【実施例】
表1に示す化学成分をもった鋼を真空溶解にて溶製し、熱間圧延にて板厚2.5mmの鋼板とした。この鋼板を還元焼鈍した後、Zn−6.4%Al−3.1%Mg合金めっき浴に浸漬して、めっき付着量90g/m2の溶融めっき鋼板を得た。
上記めっき鋼板から試験片を切り出して、めっき層が十分溶融状態となる温度550℃まで急速加熱して引張試験を行なった。このときの応力−伸び曲線から、応力が急激に低下する寸前の伸びを臨界伸びとして求め、溶融金属脆化の感受性を評価した。
試験結果を表2に示す。
【0023】
【0024】
【0025】
この結果からもわかるように、フェライト面積分率を所定範囲にし、かつTiやNb,V,Zrの含有量を制限すると、20%以上の臨界伸びを示している。これに対して、比較鋼のようにフェライト分率が大きすぎるものや、Ti,Nb,V,Zr含有量が多すぎるものにあっては、臨界伸びは10%に満たない。本発明鋼では、亜鉛めっきした後、溶融金属脆化を起こしやすい環境にあっても割れが発生し難く、溶融金属脆化感受性が低いことがわかった。
【0026】
【発明の効果】
以上に説明したように、Zn−Al−Mg系溶融めっきを施す下地鋼板として、成分組成を特定し、さらに組織を面積分率で10〜70%のフェライトと残部がマルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトの混合組織としたものを用いると、フェライトとマルテンサイトもしくはベイナイト,パーライトとは結晶粒界が互いに入り組んだ状態となっており、めっき後の溶接加工時にあっても、亜鉛を主体とする溶融金属体の拡散浸入経路が複雑になって溶融金属体が浸入し難くなり、また熱応力の緩和作用を有する軟質なフェライト相の存在と相まって、溶接加工時の溶融金属脆化割れを防止することができる。
成分組成の調整と組織状態の調整により、溶融金属脆化感受性の低いZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を提供することができる。
Claims (4)
- C:0.03〜0.30質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:0.05〜2.0質量%,P:0.1質量%以下,S:0.03質量%以下,N:0.05質量%以下,sol.Al:0.1質量%以下を含み、残部が実質的にFeからなり、Ti,Nb,V,Zrの含有量を合計で0.02質量%以下に制限した組成を有し、溶接加工前の組織が面積分率で10〜70%のフェライトと残部がベイナイト,パーライトあるいはマルテンサイトの混合組織を有する下地鋼板の表面にZn−Al−Mg系溶融めっき層が形成されていることを特徴とする溶融金属脆化による溶接加工割れのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
- 下地鋼板が、さらにB:0.0001〜0.0080質量%の1種または2種を含むものである請求項1に記載の溶融金属脆化による溶接加工割れのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
- Zn−Al−Mg系溶融めっき層が、Al:4〜22質量%,Mg:0.05〜10質量%を含むものである請求項1または2に記載の溶融金属脆化による溶接加工割れのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
- Zn−Al−Mg系溶融めっき層が、さらにTi:0.002〜0.1質量%,B:0.001〜0.45質量%,Si:0.005〜2.0質量%の1種または2種以上を含むものである請求項3に記載の溶融金属脆化による溶接加工割れのないZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板。
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