JP2004315655A - 色材含有微粒子及び該微粒子を用いた水系インク - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は分散安定性、吐出安定性に優れ、耐光性に優れた色再現性の良いコア/シェル型の着色微粒子含有水性インクを提供することにある。
【解決手段】色材を含有した樹脂からなる着色微粒子を樹脂にて被覆した着色微粒子において、色材表面の被覆率が60%以上であることを特徴とする色材含有微粒子。色材含有微粒子を用いることを特徴とするポリマーエマルジョン型水系インク。該色材含有微粒子を用いることを特徴とするポリマーエマルジョン型水系インク。尚、前記色材含有微粒子の体積平均粒子径が10〜300nmであること、被覆した樹脂が着色微粒子を構成する総樹脂量の5〜95質量%であること、等は好ましい態様である。
【選択図】 なし
【解決手段】色材を含有した樹脂からなる着色微粒子を樹脂にて被覆した着色微粒子において、色材表面の被覆率が60%以上であることを特徴とする色材含有微粒子。色材含有微粒子を用いることを特徴とするポリマーエマルジョン型水系インク。該色材含有微粒子を用いることを特徴とするポリマーエマルジョン型水系インク。尚、前記色材含有微粒子の体積平均粒子径が10〜300nmであること、被覆した樹脂が着色微粒子を構成する総樹脂量の5〜95質量%であること、等は好ましい態様である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コア/シェルタイプの色材含有微粒子及び、これを用いたポリマーエマルジョン型水系インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プリンタ、印刷機、マーカー、筆記具等に用いられる記録材料、インキング材料にも、脱溶剤化、水性化が求められて来ている。特に、インクジェットに用いられる水性の記録材料としては、水溶性染料の水溶液を主体としたもの、顔料の微分散体を主体としたものが広く用いられている。
【0003】
水溶性染料を用いた記録材料としては、主として酸性染料、直接染料、一部の食品用染料等に分類される水溶性染料の水溶液に、保湿剤としてグリコール類、アルカノールアミン類;表面張力等の調整のための界面活性剤、アルコール類+バインダー成分としての樹脂成分等を添加したものが用いられている。これら水溶性染料を用いた記録材料は、筆先あるいは記録系での目詰まりに対する高い信頼性から、最も一般的に用いられている。しかしながら、係る水溶性染料を用いた記録材料は、染料の水溶液であるが故に記録紙上で滲み易い。更に、単に記録紙に浸透し、乾燥固着しているだけの水溶性染料は、「染着」しているとは言い難く、耐光堅牢度は非常に低い。
【0004】
そのため、近年では特開2000−281947のように、カチオン性ポリマーとの2液系で、染料とポリマーの相互作用を利用し、染着性を高め、滲みを防止し、堅牢性を高める手法など、幾つかの手法が試みられているが、水溶性染料の色再現性を保持したままで耐光堅牢性を改善するには至っていない。
【0005】
このような水溶性染料を用いた記録材料の問題点を解決する方策として、エマルジョン、ラテックス等の樹脂微粒子を添加することが古くから検討されている。特開昭55−18418号には、「ゴム、樹脂等の成分を乳化剤により微細粒子(粒径約0.01〜数μm)の形で水中に分散させた1種のコロイド溶液」であるラテックスを添加したインクジェット記録用の記録剤に関する提案がある。例示される合成ゴム系ラテックスの多くは分子内に不飽和二重結合を有し、耐光性、耐候性の面で問題がある。又、加硫を行い不飽和結合を減じた場合には粒子の記録紙上への定着が阻害され、記録品位に問題が生じる。更に過度に加硫を行うと、比重が1.1以上となり沈降の問題が生じる。更に、係る合成ゴム系のラテックスは、ガラス転移温度(Tg)が低いために室温で造膜し易く、インクジェットノズル先端部にて乾燥された場合、ノズルが目詰まりを起こし易く、しかも乾燥物が柔軟で、やや粘着性を持つため、その除去が非常に困難である。
【0006】
水溶性染料を用いた記録材料の欠点を改良するために、記録材としてカーボンブラックあるいは有機顔料を用いる提案が為されている。このような顔料分散体を用いた記録材料においては、インクの耐水性は大幅に改良される。しかし、これら顔料は比重が1.5〜2.0と高く、分散粒子の沈降に対する注意が必要である。係る高比重の顔料を安定的に分散させるためには、平均粒子径を0.1μm以下程度にまで微分散することが必要であり、分散コストが高く非常に高価なインクとなる。
【0007】
前記した水溶性染料を用いた水性インクの耐水性、耐光堅牢性が低い問題を解決するために、油溶性染料ないし疎水性染料により水分散性樹脂を着色する提案が、インクジェット記録用インクとして為されている。例えば特開昭55−139471号、同58−45272号、特開平3−250069号、同8−253720号、同8−92513号、同8−183920号、特開2001−11347等には、油溶性染料によって染色された乳化重合粒子又は分散した重合粒子を用いたインクが提案されている。更に、染料とアセタール基を有するポリマーを含む着色微粒子を水系媒体に分散する工程の後、重合性モノマーと重合開始剤を添加し、シェルを形成する工程を有する着色微粒子分散液を含有する水系インクの製造方法の開示もある(特許文献1参照)。
【0008】
このような着色微粒子を用いた水性インクにおいては、粒子表面や粒子外に染料が存在すると効果が減じられ、分散安定性、吐出安定性、耐光堅牢性等の諸性能を高めることは困難である。
【0009】
一方、顔料においても、分散安定性、吐出安定性、耐光性向上のために分散剤以外の被膜形成性樹脂により顔料表面を被覆する試みがなされている。例えば特開平8−269374号、同9−151342号、同10−88045号、同10−292143等には、顔料を樹脂で被覆した例が記載されている。しかしながら、微小粒子顔料を完全に被覆することは容易ではなく、従来の顔料分散体の性能を凌駕する被覆顔料は未だ登場していないのが現状である。
【0010】
以上述べて来たように、油溶性染料や顔料を用いた着色微粒子含有水性インクは、従来の水溶性染料、顔料分散体を用いた水性インクの問題点を克服し、高い記録品位を実現する可能性はあるが、各種の問題を残しており、更なる改良が求められている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−322399号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、コア/シェルタイプの色材含有微粒子を用いた、分散安定性、吐出安定性、耐光性に優れる着色微粒子含有水性インクを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
【0014】
1)色材を含有する樹脂から成る着色微粒子を、色材を含有しない樹脂にて被覆したコア/シェル型構造を有し、該シェルの被覆率が60%以上である色材含有微粒子。
【0015】
2)体積平均粒子径が10〜300nmである1)記載の色材含有微粒子。
3)被覆した樹脂が着色微粒子を構成する総樹脂量の5〜95質量%である1)記載の色材含有微粒子。
【0016】
4)色材を含有する樹脂と被覆した樹脂が異なるモノマー組成から成る1)記載の色材含有微粒子。
【0017】
5)1)〜4)の何れか1項記載の色材含有微粒子を用いるポリマーエマルジョン型水系インク。
【0018】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の着色微粒子含有水性インクは、分散安定性、吐出安定性、耐光性等の諸性能が着色微粒子内外の色材分布、表面を覆っている樹脂被膜の完全性に依存することの発見に基づくものであり、着色微粒子の被覆率が特定の数値内に入るように調整することにより優れた諸性能を達成したものである。
【0019】
樹脂(シェル)被覆率は、XPS(X−ray PhotoelectronSpectroscopy)のような電子分光分析装置で測定できる。XPSでは、個々の微粒子表面について各元素量を求めることができる。その中で、染料に含まれる窒素原子の総量から、シェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの窒素含有量を比較することから被覆率を求めることが出来る。XPSでは、表面から深さ方向に数nmの元素の分析ができるので、本発明のようなコア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0020】
本発明における諸特性を発現させるためには、シェル被覆率は60%以上が好ましく、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上である。
【0021】
ポリマーエマルジョン型水系インクに用いられる色材含有微粒子は、体積平均粒子径が10nm以下であると単位体積当たりの表面積が非常に大きくなるので、色材をコア/シェルポリマー中に封入する効果が小さくなる。一方、300nmを超えるほど大きな粒子では、ヘッドに詰まり易く、又、インク中での沈降が起き易く停滞安定性が劣化する。従って、粒子径は10〜250nmが好ましく、20〜200nmが更に好ましい。
【0022】
体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求める方法や、大塚電子社製:レーザー粒径解析システムや、マルバーン社製:ゼータサイザーを用いて求めることが出来る。
【0023】
本発明においては、被覆に用いられる樹脂量が総樹脂量の5〜95質量%である。5質量%より少ないと被覆の厚みが不十分で、色材を多く含有するコアの樹脂の一部が粒子表面に現れ易くなる。又、被覆樹脂が多すぎるとコアの色材保護能低下を起こし易い。更に好ましくは10〜90質量%である。
【0024】
本発明の着色微粒子は各種の方法で調整することができる。例えばモノマー中に油溶性染料を溶解させ、水中で乳化後、重合によりポリマー中に染料を封入する方法、ポリマーと色材を有機溶剤中に溶解し、水中で乳化後有機溶剤を除去する方法、染料溶液に多孔質のポリマー微粒子を添加し、染料を微粒子に吸着、含浸させる手法などがある。それにシェルを設ける手法としては、コアとなるポリマーの水系サスペンションに水溶性のポリマー分散剤を添加し吸着させる手法、モノマーを徐々に滴下し、重合と同時にコア表面に沈着させる方法などがある。あるいは、顔料をポリマーと混練し、その後、水系で分散し、ポリマー被覆顔料コアを作製し、更に上記の方法によりシェル化を行うことも可能である。
【0025】
コアとなるポリマーと色材を、重合後にシェルとなるモノマーに溶解又は分散し、水中で懸濁後重合する手法や、その液を活性剤ミセルを含有する水中に徐々に滴下しながら乳化重合していく手法などがある。
【0026】
必要な粒子径を得るには、処方の最適化と、適当な乳化法の選定が重要である。処方は、用いる色材、ポリマーによって異なるが、水中のサスペンションであるので、コアを構成するポリマーよりシェルを構成するポリマーの方が一般的に親水性が高いことが必要である。親水性、疎水性は、例えば溶解性パラメータ(SP)を用いて見積もることができる。溶解性パラメータは、その値や、測定、計算法が、「POLYMER HANDBOOK,第4版(JOHN WILEY & SONS,INC.)」675頁〜の記載が参考になる。
【0027】
又、コア/シェルで用いられるポリマーは、その数平均分子量が500〜100,000、特に1,000〜30,000であることが、印刷後の製膜性、その耐久性及びサスペンション形成性の点から好ましい。
【0028】
該ポリマーの硝子転移温度(Tg)は、各種のものを用いることが可能だが、使用するポリマーの内、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であることが好ましい。
【0029】
本発明においては、一般に知られている全てのポリマーを使用できるが、特に好ましいポリマーは、主な官能基としてアセタール基を含有するポリマー、炭酸エステル基を含有するポリマー、水酸基を含有するポリマー及びエステル基を有するポリマーである。上記のポリマーは置換基を有してもよく、その置換基は直鎖状、分岐あるいは環状構造を採ってもよい。又、上記の官能基を有するポリマーは、各種のものが市販されているが、常法によって合成することもできる。又、これらの共重合体は、例えば一つのポリマー分子中にエポキシ基を導入して置き、後に他のポリマーと縮重合させたり、光や放射線を用いてグラフト重合を行っても得られる。
【0030】
主な官能基としてアセタールを含有するポリマーとしては、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。例えば電気化学工業社製の#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#4000−2、#5000−A、#6000−C、#6000−EP、あるいは積水化学工業社製のBL−1、BL−1H、BL−2、BL−2H、BL−5、BL−10、BL−S、BL−SH、BX−10、BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BM−SH、BH−3、BH−6、BH−S、BX−1、BX−3、BX−5、KS−10、KS−1、KS−3、KS−5等がある。
【0031】
ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)の誘導体として得られるが、元のPVAの水酸基のアセタール化度は最大でも80モル%程度であり、通常は50〜80モル%程度である。尚、ポリビニルブチラールの場合には、アセタール基として1,1′−ブチレンジオキシ基が形成されるが、ここでアセタール化度と言う場合は、この様な狭義のアセタールを指すのではなく、より一般的なアセタール基を意味し、水酸基を有する化合物(この場合PVA)とアルデヒド基を有する化合物(この場合ブタナール)とから形成されるアセタール基を有する化合物全般を指す。水酸基については特に規定はないが、10〜40モル%含有されていることが好ましい。又、アセチル基の含有率も特に規定はないが、10モル%以下であることが好ましい。主な官能基としてアセタール基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも30モル%以上がアセタール基を形成していることを言う。主な官能基としてアセタール基を含有するポリマーとして、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユピタールシリーズ等も使用できる。
【0032】
主な官能基として炭酸エステルを含有するポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。例えば三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンシリーズ、ノバレックスシリーズがある。ユーピロンシリーズはビスフェノールAを原料として作られており、測定法によってその値は異なるが、各種の分子量のものを用いることができる。ノバレックスシリーズでは分子量が2,0000〜30,000、Tg150℃付近のものを用いることができるが、これらに限定されない。
【0033】
主な官能基として炭酸エステル基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも30モル%以上が炭酸エステル基の形成に寄与しているものを言う。
【0034】
主な官能基として水酸基を含有するポリマーとしては、例えばPVAが挙げられる。PVAの有機溶剤への溶解度は小さいものが多いが、鹸化価の小さいPVAであれば、有機溶剤への溶解度は上昇する。水溶性が高いPVAは水相中に添加して置き、有機溶剤除去後にポリマーのサスペンションに吸着させるようにして使用することもできる。
【0035】
PVAとしては市販のものを用いることができ、例えばクラレ社のポバールPVA−102、PVA−117、PVA−CSA、PVA−617、PVA−505等の他、特殊銘柄のサイズ剤用PVA、熱溶融成形用PVA、その他機能性ポリマーとして、KL−506、C−118、R−1130、M−205、MP−203、HL−12E、SK−5102等を用いることができる。鹸化度は50モル%以上のものが一般的であるが、LM−10HDのように40モル%程度であっても、用いることも可能である。このようなPVA以外でも、主な官能基として水酸基を有するものが使用可能であるが、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも20モル%以上が水酸基を形成しているものが使用できる。
【0036】
主な官能基としてエステル基を含有するポリマーとしては、例えばメタクリル樹脂が挙げられる。旭化成社製デルペットシリーズの560F、60N、80N、LP−1、SR8500、SR6500等を用いることができる。これらのポリマーを、それぞれ1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。又、これらのポリマーが質量比で50%以上含まれていれば、他のポリマーや無機物のフィラーが含有されてもよい。
【0037】
これらのポリマーの共重合体を用いることも好ましいが、例えば水酸基を含有するポリマーと各種のポリマーを共重合させる手法として、水酸基をグリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を有するモノマーと反応させ、その後、懸濁重合でメタクリル酸エステルモノマーと共重合させ、得ることができる。
【0038】
次に、上記ポリマーによって封入される色材について説明する。該色材としては、ポリマーによって封入され得る色材であれば特に制限無く用いることができ、例えば油性染料、分散染料、直接染料、酸性染料及び塩基性染料等を挙げることができるが、良好な封入性の観点から油性染料及び分散染料を用いることが好ましい。
【0039】
分散染料として特に好ましい具体例を以下に示すが、これのみに限定されるものではない。
【0040】
C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;
C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;
C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;
C.I.ディスパーズバイオレッド33;
C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;
C.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等。
【0041】
一方、油性染料としては、特に限定されるものではないが、以下に好ましい具体例を挙げる。
【0042】
C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29及び34;
C.I.ソルベント・イエロー14、16、19、29、56及び82;
C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73、132及び218;
C.I.ソルベント・バイオレット3;
C.I.ソルベント・ブルー2、11及び70;
C.I.ソルベント・グリーン3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ2等。
【0043】
色材として、又、以下に挙げられるような水溶性染料も使用可能である。本発明で用いることのできる水溶性染料としては、例えばアゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができる。その具体的化合物を以下に示す。
【0044】
〔C.I.アシッドイエロー〕1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246;
〔C.I.アシッドオレンジ〕3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168;
〔C.I.アシッドレッド〕1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415;
〔C.I.アシッドバイオレット〕17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126;
〔C.I.アシッドブルー〕1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350;
〔C.I.アシッドグリーン〕9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109;
〔C.I.アシッドブラウン〕2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413;
〔C.I.アシッドブラック〕1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222;
〔C.I.ダイレクトイエロー〕8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153;
〔C.I.ダイレクトオレンジ〕6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118;
〔C.I.ダイレクトレッド〕2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254;
〔C.I.ダイレクトバイオレット〕9、35、51、66、94、95
〔C.I.ダイレクトブルー〕1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291
〔C.I.ダイレクトグリーン〕26、28、59、80、85;
〔C.I.ダイレクトブラウン〕44、106、115、195、209、210、222、223;
〔C.I.ダイレクトブラック〕17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169;
〔C.I.ベイシックイエロー〕1、2、11、13、15、19、21、28、29、32、36、40、41、45、51、63、67、70、73、91;
〔C.I.ベイシックオレンジ〕2、21、22;
〔C.I.ベイシックレッド〕1、2、12、13、14、15、18、23、24、27、29、35、36、39、46、51、52、69、70、73、82、109;
〔C.I.ベイシックバイオレット〕1、3、7、10、11、15、16、21、27、39;
〔C.I.ベイシックブルー〕1、3、7、9、21、22、26、41、45、47、52、54、65、69、75、77、92、100、105、117、124、129、147、151;
〔C.I.ベイシックグリーン〕1、4;
〔C.I.ベイシックブラウン〕1;
〔C.I.リアクティブイエロー〕2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176;
〔C.I.リアクティブオレンジ〕1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107;
〔C.I.リアクティブレッド〕2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235;
〔C.I.リアクティブバイオレット〕1、2、4、5、6、22、23、33、36、38;
〔C.I.リアクティブブルー〕2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236;
〔C.I.リアクティブグリーン〕8、12、15、19、21;
〔C.I.リアクティブブラウン〕2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46;
〔C.I.リアクティブブラック〕5、8、13、14、31、34、39等。
【0045】
これら列挙した染料は、「染色ノート第21版」(出版;色染社)等に記載される。
【0046】
これら水溶性染料の中でもフタロシアニン染料が好ましい。フタロシアニン染料としては、無置換あるいは中心元素を有するものが挙げられ、中心元素としては金属、非金属のものが挙げられ、好ましくは銅であり、より好ましくはC.I.ダイレクトブルー199が挙げられる。
【0047】
又、水や各種有機溶剤に不溶な顔料を用いることも可能である。本発明に使用できる顔料としては、公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0048】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等。
【0049】
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等。
【0050】
グリーン又はシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等。
【0051】
本発明のインクに使用する顔料分散体の平均粒径は10〜200nmであることが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmが更に好ましい。顔料分散体の平均粒径が150nmを超えると光沢メディアに記録した画像では光沢感の劣化が起こり、透明メディアに記録した画像では著しい透明感の劣化が起こる。又、顔料分散体の平均粒径が10nm未満になると顔料分散体の安定性が悪くなり易く、インクの保存安定性が劣化し易くなる。
【0052】
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。又、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス社製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0053】
色材として、特開平9−277693号、同10−20559号、同10−30061号に示されるような金属錯体色素も使用可能である。好ましい構造としては下記一般式(1)で表されるものである。
【0054】
一般式(1) M(Dye)m(A)n
式中、Mは金属イオンを表し、Dyeは金属と配位結合可能な色素を表す。Aは色素以外の配位子を表し、mは1〜3の整数、nは0〜3の整数を表す。nが0のときmは2又は3を表し、その場合Dyeは同種でも異なってもよい。
【0055】
Mで表される金属イオンとしては、例えばAl、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Mo、Ni、Sn、Ti、Pt、Pd、Zr及びZnの各イオンが挙げられるが、色調、各種耐久性の点からNi、Cu、Cr、Co、Zn、Feの各イオンが特に好ましい。更に好ましくはNiイオンである。
【0056】
Dyeで表される金属と配位結合可能な色素としては種々の色素構造が考えられるが、共役メチン色素、アゾメチン色素、アゾ色素骨格に配位基を有するものが好ましい。
【0057】
以上述べて来た各種色材の中でも、分子構造内に窒素原子を有するものが特に好ましい。
【0058】
本発明のコア/シェル形態を有する色材含有ポリマー微粒子は、ポリマー量としてポリマーエマルジョン型水系インク中に0.5〜50質量%配合されることが好ましく、0.5〜30質量%配合されることが更に好ましい。ポリマーの配合量が0.5質量%に満たないと色材の保護能が十分でなく、50質量%を超えるとサスペンションのインクとしての保存安定性が低下したり、ノズル先端部でのインク蒸発に伴うインクの増粘やサスペンションの凝集によってプリンタヘッドの目詰りが起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0059】
一方、色材は、該インク中に1〜30質量%配合されることが好ましく、1.5〜25質量%配合されることが更に好ましい。色材の配合量が1質量%に満たないと印字濃度が不十分であり、又、30質量%を超えるとサスペンションの経時安定性が低下し、凝集等による粒径増大の傾向があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0060】
色材を含有するコアポリマーと、これを被覆したシェルポリマーのモノマー組成は異なるものがよい。これは、同じモノマー組成の樹脂を用いると、染料が外に滲み出し、被覆率の低下や粒径増大が起こり易くなる為である。
【0061】
本発明のインクは、水を媒体とし、上記色材を封入したポリマーのサスペンションから成り、該サスペンションには、従来公知の各種添加剤、例えば多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、シリコーン系の消泡剤、クロロメチルフェノール系の防黴剤及び/又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤や、亜硫酸塩等の酸素吸収剤等が含有されてもよい。
【0062】
上記湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルスルホキシドの1種又は2種以上を使用することができる。これら湿潤剤の配合量に特に制限はないが、上記インク中に好ましくは0.1〜50質量%配合することができ、更に好ましくは0.1〜30質量%配合することができる。
【0063】
又、上記分散剤としては、特に制限されるものではないが、そのHLB値が8〜18であることが、分散剤としての効果が発現し、サスペンションの粒子径の増大抑制効果がある点から好ましい。
【0064】
分散剤として市販品も使用することができる。そのような市販品としては、例えば花王社製の分散剤デモールSNB、MS、N、SSL、ST、P等が挙げられる。分散剤の配合量に特に制限はないが、インク中に0.01〜10質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.01質量%に満たないとサスペンションの小粒径化が困難であり、10質量%を超えるとサスペンションの粒径が増大したりサスペンション安定性が低下し、ゲル化する懼れがあるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0065】
又、上記消泡剤としては、特に制限なく市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば信越シリコーン社製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F等が挙げられる。これら化合物の配合量に特に制限はないが、本発明のポリマーエマルジョン型水系インク中に、0.001〜2質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、又、インク内での小泡の除去が難しい。一方、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際、インク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0066】
次に、本発明の水系インクの製造方法について説明する。本発明のインクは、各種の乳化法で製造することができる。乳化法としては、各種の方法を用いることができる。それらの例は、例えば「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開,シー エム シー」の86頁の記載に纏められている。本発明においては、特に、超音波、高速回転剪断、高圧による乳化分散装置の使用が好ましい。
【0067】
超音波による乳化分散では、所謂バッチ式と連続式の2通りが使用可能である。バッチ式は、比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、例えばUH−600SR(エスエムテー社製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は、分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計として求められる。超音波の照射時間は実際上は10,000秒以下である。又、10,000秒以上必要であると、工程の負荷が大きく、実際上は乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10,000秒以上は必要でない。更に好ましく、10〜2,000秒である。
【0068】
高速回転剪断による乳化分散装置としては、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開,シー エム シー」の255〜256頁に記載されるディスパーミキサーや、251頁に記載されるホモミキサー、256頁に記載されるウルトラミキサー等が使用できる。これらの型式は、乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。これらの高速回転剪断による乳化分散機では、攪拌翼の回転数が重要である。ステーターを有する装置の場合、攪拌翼とステーターとのクリアランスは通常0.5mm程度で、極端に狭くは出来ないので、剪断力は主として攪拌翼の周速に依存する。周速が5〜150m/Sであれば、本発明の乳化・分散に使用できる。周速が遅い場合、乳化時間を延ばしても小粒径化が達成できない場合が多く、150m/Sにするにはモーターの性能を極端に上げる必要があるからである。更に好ましくは20〜100m/sである。
【0069】
高圧による乳化分散では、LAB2000(エスエムテー社製)等が使用できるが、その乳化・分散能力は、試料に掛けられる圧力に依存する。圧力は104〜5×105kPaの範囲が好ましい。又、必要に応じて数回乳化・分散を行い、目的の粒径を得ることができる。圧力が低すぎる場合、何度乳化分散を行っても目的の粒径は達成できない場合が多く、又、圧力を5×105kPaにするためには、装置に大きな負荷がかかり実用的ではない。更に好ましくは5×104kPa〜2×105kPaの範囲である。
【0070】
これらの乳化・分散装置は単独で用いてもよいが、必要に応じて組み合わせて使用することが可能である。コロイドミルや、フロージェットミキサも単独では本発明の目的を達成できないが、本発明の装置との組合せにより、短時間で乳化・分散を可能にするなど本発明の効果を高めることが可能である。
【0071】
又、本発明のインクは、上記の装置を用いる他、いわゆる転相乳化によっても製造することができる。ここで、転相乳化は、ポリマーを染料と共にエステル、ケトン等の有機溶剤に溶解させ、必要に応じて中和剤を加えて該ポリマー中のカルボキシル基をイオン化し、次いで水相を加えた後、有機溶剤を溜去して水系に転相することから成る。転相が完了した後、系を減圧下に加熱することにより、上記エステル、ケトン系溶剤を除去すると共に、所定量の水を除去して、所望の濃度を有するインクジェット記録用水系インクが得られる。
【0072】
本発明のポリマーエマルジョン型水系インクは、インクジェット記録用のインク以外に、例えば、一般の万年筆、ボールペン、サインペン等の筆記具用のインクとしても使用できる。本発明のサスペンションを乾燥し、微粒の粉体を得ることもでき、得られた粉体は、電子写真のトナー等にも使用可能である。
【0073】
【実施例】
次に、実施例により本発明の色材含有微粒子及び着色微粒子含有水性インクを更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は係る実施例のみに限定されるものではない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を示す。
【0074】
〈ポリマーエマルジョンの作製〉
実施例1
20gのポリビニルブチラール(BL−S:積水化学社製,平均重合度350)、14gのC.I.ソルベント・ブルー70及び200gの酢酸エチルをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素ガスで置換後、攪拌して上記ポリマー及び染料を完全溶解させた。ここに、ラウリル硫酸ナトリウム4.2gを含む水溶液220gを滴下して撹拌した後、超音波分散機(UH−150型:エスエムテー社製)を用いて300秒間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、染料を含浸するコアとなる着色微粒子を得た。これに、スチレン8gと2−ヒドロキシエチルメタクリレート5gの混合液及び10%過硫酸カリウム水溶液8gを、60℃で滴下しながらシード重合を行いシェル化を行った。以上のようにしてコア/シェル構造を持つポリマーエマルジョンを得た。
【0075】
実施例2
実施例1において、C.I.ソルベント・ブルー70の代わりに下記染料Aを用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0076】
【化1】
【0077】
実施例3
実施例1において、C.I.ソルベント・ブルー70の代わりにValifast Yellow3150(オリエント化学社製)を用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0078】
実施例4
実施例1において、C.I.ソルベント・ブルー70の代わりに、Oil BlackBY(オリエント化学製)を用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0079】
実施例5
実施例1において、スチレン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を2倍にした以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0080】
実施例6
実施例1において、BL−Sの代わりにポリビニルアルコール樹脂(MP−203:クラレ社製)5gとBL−S10gの混合物を用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0081】
実施例7
実施例1において、スチレン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの代わりにメチルメタクリレート18gを用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0082】
比較例1
実施例1において、過硫酸カリウム、スチレン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートを添加しなかった以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0083】
比較例2
実施例1において、スチレン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの代わりにBL−S1を5g用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0084】
比較例3
実施例1において、スチレンの添加量を4gに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を2gに変更した以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0085】
比較例4
実施例1において、スチレンの添加量を2gに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を2gに変更した以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0086】
このようにして作製したポリマーエマルジョン中の色材含有微粒子について、体積平均粒径、シェル被覆率の測定を行った。
【0087】
《体積平均粒子径》
大塚電子製レーザー粒径解析システムを用いて測定した。
【0088】
《シェル被覆率》
Si−ウェーファー上に、上記ポリマーエマルジョンを塗布・乾燥し、VG製:ESCALab200Rを用い、その中で染料に含まれる窒素原子の総量から、シェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの窒素含有率を比較し、下記式より被覆率を求めた。
【0089】
被覆率(%)=100−{(シェル化した色材含有微粒子の窒素原子量)/(コアの窒素原子量)}×100
(XPS測定条件)
装置:VG製ESCALab200R
アノード:Mg(600W)
走査範囲:1100−0eV(5回)
PE:100eV
レンズモード:Large
TOA:10°
〈インクジェット用インクの作製〉
上記で得られた色材含有粒子のポリマーエマルジョン80gに、エチレングリコール12g、グリセリン7.8g及びKF69(信越シリコーン社製)0.2gを混合し、得られた分散液を5μmのフィルターで濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去してインクジェット用インクを得た。11種のインクの分散安定性を評価した。
【0090】
次に、各インクを用いて、市販のエプソン社製インクジェットプリンターPM−800によりコニカフォトジェットペーパー Photolike QP 光沢紙(コニカ社製)にベタ画像をプリントし、以下の評価を行った。
【0091】
《分散安定性》
インク100mlを密閉したサンプル瓶に入れ、それを50℃の恒温槽で1週間保存し、保存前後の粒径を測定(マルバーン社製ゼータサイザー使用)し、その粒径変動が5%未満のものを◎、5〜10%未満のものを○、10%以上のものを×とした。◯以上が許容レベルである。
【0092】
《吐出安定性》
プリンターで連続射出して10分以上ノズル欠が出ないものを○、5分以上ノズル欠が出ないものを△、5分未満のものを×とした。△以上が許容レベルである。
【0093】
《耐光性》
プリントを低温XeウェザーメータXL75(スガ試験機製)中に1週間経時させ、経時前後の濃度変化をX−Rite900(日本平板機材社製)を用いて測定した。試験後、元の濃度から80%以上残存しているものを◎、60〜80%未満残存しているものを○、60%未満を×とした。◯以上が許容レベルである。
【0094】
【表1】
【0095】
本発明の色材含有微粒子を用いたインクジェット用水系インクは、何れの評価においても満足できるものであった。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、分散安定性、吐出安定性、耐光性に優れた着色微粒子含有水性インクを得ることができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、コア/シェルタイプの色材含有微粒子及び、これを用いたポリマーエマルジョン型水系インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プリンタ、印刷機、マーカー、筆記具等に用いられる記録材料、インキング材料にも、脱溶剤化、水性化が求められて来ている。特に、インクジェットに用いられる水性の記録材料としては、水溶性染料の水溶液を主体としたもの、顔料の微分散体を主体としたものが広く用いられている。
【0003】
水溶性染料を用いた記録材料としては、主として酸性染料、直接染料、一部の食品用染料等に分類される水溶性染料の水溶液に、保湿剤としてグリコール類、アルカノールアミン類;表面張力等の調整のための界面活性剤、アルコール類+バインダー成分としての樹脂成分等を添加したものが用いられている。これら水溶性染料を用いた記録材料は、筆先あるいは記録系での目詰まりに対する高い信頼性から、最も一般的に用いられている。しかしながら、係る水溶性染料を用いた記録材料は、染料の水溶液であるが故に記録紙上で滲み易い。更に、単に記録紙に浸透し、乾燥固着しているだけの水溶性染料は、「染着」しているとは言い難く、耐光堅牢度は非常に低い。
【0004】
そのため、近年では特開2000−281947のように、カチオン性ポリマーとの2液系で、染料とポリマーの相互作用を利用し、染着性を高め、滲みを防止し、堅牢性を高める手法など、幾つかの手法が試みられているが、水溶性染料の色再現性を保持したままで耐光堅牢性を改善するには至っていない。
【0005】
このような水溶性染料を用いた記録材料の問題点を解決する方策として、エマルジョン、ラテックス等の樹脂微粒子を添加することが古くから検討されている。特開昭55−18418号には、「ゴム、樹脂等の成分を乳化剤により微細粒子(粒径約0.01〜数μm)の形で水中に分散させた1種のコロイド溶液」であるラテックスを添加したインクジェット記録用の記録剤に関する提案がある。例示される合成ゴム系ラテックスの多くは分子内に不飽和二重結合を有し、耐光性、耐候性の面で問題がある。又、加硫を行い不飽和結合を減じた場合には粒子の記録紙上への定着が阻害され、記録品位に問題が生じる。更に過度に加硫を行うと、比重が1.1以上となり沈降の問題が生じる。更に、係る合成ゴム系のラテックスは、ガラス転移温度(Tg)が低いために室温で造膜し易く、インクジェットノズル先端部にて乾燥された場合、ノズルが目詰まりを起こし易く、しかも乾燥物が柔軟で、やや粘着性を持つため、その除去が非常に困難である。
【0006】
水溶性染料を用いた記録材料の欠点を改良するために、記録材としてカーボンブラックあるいは有機顔料を用いる提案が為されている。このような顔料分散体を用いた記録材料においては、インクの耐水性は大幅に改良される。しかし、これら顔料は比重が1.5〜2.0と高く、分散粒子の沈降に対する注意が必要である。係る高比重の顔料を安定的に分散させるためには、平均粒子径を0.1μm以下程度にまで微分散することが必要であり、分散コストが高く非常に高価なインクとなる。
【0007】
前記した水溶性染料を用いた水性インクの耐水性、耐光堅牢性が低い問題を解決するために、油溶性染料ないし疎水性染料により水分散性樹脂を着色する提案が、インクジェット記録用インクとして為されている。例えば特開昭55−139471号、同58−45272号、特開平3−250069号、同8−253720号、同8−92513号、同8−183920号、特開2001−11347等には、油溶性染料によって染色された乳化重合粒子又は分散した重合粒子を用いたインクが提案されている。更に、染料とアセタール基を有するポリマーを含む着色微粒子を水系媒体に分散する工程の後、重合性モノマーと重合開始剤を添加し、シェルを形成する工程を有する着色微粒子分散液を含有する水系インクの製造方法の開示もある(特許文献1参照)。
【0008】
このような着色微粒子を用いた水性インクにおいては、粒子表面や粒子外に染料が存在すると効果が減じられ、分散安定性、吐出安定性、耐光堅牢性等の諸性能を高めることは困難である。
【0009】
一方、顔料においても、分散安定性、吐出安定性、耐光性向上のために分散剤以外の被膜形成性樹脂により顔料表面を被覆する試みがなされている。例えば特開平8−269374号、同9−151342号、同10−88045号、同10−292143等には、顔料を樹脂で被覆した例が記載されている。しかしながら、微小粒子顔料を完全に被覆することは容易ではなく、従来の顔料分散体の性能を凌駕する被覆顔料は未だ登場していないのが現状である。
【0010】
以上述べて来たように、油溶性染料や顔料を用いた着色微粒子含有水性インクは、従来の水溶性染料、顔料分散体を用いた水性インクの問題点を克服し、高い記録品位を実現する可能性はあるが、各種の問題を残しており、更なる改良が求められている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−322399号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、コア/シェルタイプの色材含有微粒子を用いた、分散安定性、吐出安定性、耐光性に優れる着色微粒子含有水性インクを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
【0014】
1)色材を含有する樹脂から成る着色微粒子を、色材を含有しない樹脂にて被覆したコア/シェル型構造を有し、該シェルの被覆率が60%以上である色材含有微粒子。
【0015】
2)体積平均粒子径が10〜300nmである1)記載の色材含有微粒子。
3)被覆した樹脂が着色微粒子を構成する総樹脂量の5〜95質量%である1)記載の色材含有微粒子。
【0016】
4)色材を含有する樹脂と被覆した樹脂が異なるモノマー組成から成る1)記載の色材含有微粒子。
【0017】
5)1)〜4)の何れか1項記載の色材含有微粒子を用いるポリマーエマルジョン型水系インク。
【0018】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の着色微粒子含有水性インクは、分散安定性、吐出安定性、耐光性等の諸性能が着色微粒子内外の色材分布、表面を覆っている樹脂被膜の完全性に依存することの発見に基づくものであり、着色微粒子の被覆率が特定の数値内に入るように調整することにより優れた諸性能を達成したものである。
【0019】
樹脂(シェル)被覆率は、XPS(X−ray PhotoelectronSpectroscopy)のような電子分光分析装置で測定できる。XPSでは、個々の微粒子表面について各元素量を求めることができる。その中で、染料に含まれる窒素原子の総量から、シェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの窒素含有量を比較することから被覆率を求めることが出来る。XPSでは、表面から深さ方向に数nmの元素の分析ができるので、本発明のようなコア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0020】
本発明における諸特性を発現させるためには、シェル被覆率は60%以上が好ましく、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上である。
【0021】
ポリマーエマルジョン型水系インクに用いられる色材含有微粒子は、体積平均粒子径が10nm以下であると単位体積当たりの表面積が非常に大きくなるので、色材をコア/シェルポリマー中に封入する効果が小さくなる。一方、300nmを超えるほど大きな粒子では、ヘッドに詰まり易く、又、インク中での沈降が起き易く停滞安定性が劣化する。従って、粒子径は10〜250nmが好ましく、20〜200nmが更に好ましい。
【0022】
体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求める方法や、大塚電子社製:レーザー粒径解析システムや、マルバーン社製:ゼータサイザーを用いて求めることが出来る。
【0023】
本発明においては、被覆に用いられる樹脂量が総樹脂量の5〜95質量%である。5質量%より少ないと被覆の厚みが不十分で、色材を多く含有するコアの樹脂の一部が粒子表面に現れ易くなる。又、被覆樹脂が多すぎるとコアの色材保護能低下を起こし易い。更に好ましくは10〜90質量%である。
【0024】
本発明の着色微粒子は各種の方法で調整することができる。例えばモノマー中に油溶性染料を溶解させ、水中で乳化後、重合によりポリマー中に染料を封入する方法、ポリマーと色材を有機溶剤中に溶解し、水中で乳化後有機溶剤を除去する方法、染料溶液に多孔質のポリマー微粒子を添加し、染料を微粒子に吸着、含浸させる手法などがある。それにシェルを設ける手法としては、コアとなるポリマーの水系サスペンションに水溶性のポリマー分散剤を添加し吸着させる手法、モノマーを徐々に滴下し、重合と同時にコア表面に沈着させる方法などがある。あるいは、顔料をポリマーと混練し、その後、水系で分散し、ポリマー被覆顔料コアを作製し、更に上記の方法によりシェル化を行うことも可能である。
【0025】
コアとなるポリマーと色材を、重合後にシェルとなるモノマーに溶解又は分散し、水中で懸濁後重合する手法や、その液を活性剤ミセルを含有する水中に徐々に滴下しながら乳化重合していく手法などがある。
【0026】
必要な粒子径を得るには、処方の最適化と、適当な乳化法の選定が重要である。処方は、用いる色材、ポリマーによって異なるが、水中のサスペンションであるので、コアを構成するポリマーよりシェルを構成するポリマーの方が一般的に親水性が高いことが必要である。親水性、疎水性は、例えば溶解性パラメータ(SP)を用いて見積もることができる。溶解性パラメータは、その値や、測定、計算法が、「POLYMER HANDBOOK,第4版(JOHN WILEY & SONS,INC.)」675頁〜の記載が参考になる。
【0027】
又、コア/シェルで用いられるポリマーは、その数平均分子量が500〜100,000、特に1,000〜30,000であることが、印刷後の製膜性、その耐久性及びサスペンション形成性の点から好ましい。
【0028】
該ポリマーの硝子転移温度(Tg)は、各種のものを用いることが可能だが、使用するポリマーの内、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であることが好ましい。
【0029】
本発明においては、一般に知られている全てのポリマーを使用できるが、特に好ましいポリマーは、主な官能基としてアセタール基を含有するポリマー、炭酸エステル基を含有するポリマー、水酸基を含有するポリマー及びエステル基を有するポリマーである。上記のポリマーは置換基を有してもよく、その置換基は直鎖状、分岐あるいは環状構造を採ってもよい。又、上記の官能基を有するポリマーは、各種のものが市販されているが、常法によって合成することもできる。又、これらの共重合体は、例えば一つのポリマー分子中にエポキシ基を導入して置き、後に他のポリマーと縮重合させたり、光や放射線を用いてグラフト重合を行っても得られる。
【0030】
主な官能基としてアセタールを含有するポリマーとしては、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。例えば電気化学工業社製の#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#4000−2、#5000−A、#6000−C、#6000−EP、あるいは積水化学工業社製のBL−1、BL−1H、BL−2、BL−2H、BL−5、BL−10、BL−S、BL−SH、BX−10、BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BM−SH、BH−3、BH−6、BH−S、BX−1、BX−3、BX−5、KS−10、KS−1、KS−3、KS−5等がある。
【0031】
ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)の誘導体として得られるが、元のPVAの水酸基のアセタール化度は最大でも80モル%程度であり、通常は50〜80モル%程度である。尚、ポリビニルブチラールの場合には、アセタール基として1,1′−ブチレンジオキシ基が形成されるが、ここでアセタール化度と言う場合は、この様な狭義のアセタールを指すのではなく、より一般的なアセタール基を意味し、水酸基を有する化合物(この場合PVA)とアルデヒド基を有する化合物(この場合ブタナール)とから形成されるアセタール基を有する化合物全般を指す。水酸基については特に規定はないが、10〜40モル%含有されていることが好ましい。又、アセチル基の含有率も特に規定はないが、10モル%以下であることが好ましい。主な官能基としてアセタール基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも30モル%以上がアセタール基を形成していることを言う。主な官能基としてアセタール基を含有するポリマーとして、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユピタールシリーズ等も使用できる。
【0032】
主な官能基として炭酸エステルを含有するポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。例えば三菱エンジニアリングプラスチックス社製のユーピロンシリーズ、ノバレックスシリーズがある。ユーピロンシリーズはビスフェノールAを原料として作られており、測定法によってその値は異なるが、各種の分子量のものを用いることができる。ノバレックスシリーズでは分子量が2,0000〜30,000、Tg150℃付近のものを用いることができるが、これらに限定されない。
【0033】
主な官能基として炭酸エステル基を含有するポリマーとは、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも30モル%以上が炭酸エステル基の形成に寄与しているものを言う。
【0034】
主な官能基として水酸基を含有するポリマーとしては、例えばPVAが挙げられる。PVAの有機溶剤への溶解度は小さいものが多いが、鹸化価の小さいPVAであれば、有機溶剤への溶解度は上昇する。水溶性が高いPVAは水相中に添加して置き、有機溶剤除去後にポリマーのサスペンションに吸着させるようにして使用することもできる。
【0035】
PVAとしては市販のものを用いることができ、例えばクラレ社のポバールPVA−102、PVA−117、PVA−CSA、PVA−617、PVA−505等の他、特殊銘柄のサイズ剤用PVA、熱溶融成形用PVA、その他機能性ポリマーとして、KL−506、C−118、R−1130、M−205、MP−203、HL−12E、SK−5102等を用いることができる。鹸化度は50モル%以上のものが一般的であるが、LM−10HDのように40モル%程度であっても、用いることも可能である。このようなPVA以外でも、主な官能基として水酸基を有するものが使用可能であるが、ポリマー中に含まれる酸素原子の内、少なくとも20モル%以上が水酸基を形成しているものが使用できる。
【0036】
主な官能基としてエステル基を含有するポリマーとしては、例えばメタクリル樹脂が挙げられる。旭化成社製デルペットシリーズの560F、60N、80N、LP−1、SR8500、SR6500等を用いることができる。これらのポリマーを、それぞれ1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。又、これらのポリマーが質量比で50%以上含まれていれば、他のポリマーや無機物のフィラーが含有されてもよい。
【0037】
これらのポリマーの共重合体を用いることも好ましいが、例えば水酸基を含有するポリマーと各種のポリマーを共重合させる手法として、水酸基をグリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を有するモノマーと反応させ、その後、懸濁重合でメタクリル酸エステルモノマーと共重合させ、得ることができる。
【0038】
次に、上記ポリマーによって封入される色材について説明する。該色材としては、ポリマーによって封入され得る色材であれば特に制限無く用いることができ、例えば油性染料、分散染料、直接染料、酸性染料及び塩基性染料等を挙げることができるが、良好な封入性の観点から油性染料及び分散染料を用いることが好ましい。
【0039】
分散染料として特に好ましい具体例を以下に示すが、これのみに限定されるものではない。
【0040】
C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;
C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;
C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;
C.I.ディスパーズバイオレッド33;
C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;
C.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等。
【0041】
一方、油性染料としては、特に限定されるものではないが、以下に好ましい具体例を挙げる。
【0042】
C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29及び34;
C.I.ソルベント・イエロー14、16、19、29、56及び82;
C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73、132及び218;
C.I.ソルベント・バイオレット3;
C.I.ソルベント・ブルー2、11及び70;
C.I.ソルベント・グリーン3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ2等。
【0043】
色材として、又、以下に挙げられるような水溶性染料も使用可能である。本発明で用いることのできる水溶性染料としては、例えばアゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができる。その具体的化合物を以下に示す。
【0044】
〔C.I.アシッドイエロー〕1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246;
〔C.I.アシッドオレンジ〕3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168;
〔C.I.アシッドレッド〕1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415;
〔C.I.アシッドバイオレット〕17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126;
〔C.I.アシッドブルー〕1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350;
〔C.I.アシッドグリーン〕9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109;
〔C.I.アシッドブラウン〕2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413;
〔C.I.アシッドブラック〕1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222;
〔C.I.ダイレクトイエロー〕8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153;
〔C.I.ダイレクトオレンジ〕6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118;
〔C.I.ダイレクトレッド〕2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254;
〔C.I.ダイレクトバイオレット〕9、35、51、66、94、95
〔C.I.ダイレクトブルー〕1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291
〔C.I.ダイレクトグリーン〕26、28、59、80、85;
〔C.I.ダイレクトブラウン〕44、106、115、195、209、210、222、223;
〔C.I.ダイレクトブラック〕17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169;
〔C.I.ベイシックイエロー〕1、2、11、13、15、19、21、28、29、32、36、40、41、45、51、63、67、70、73、91;
〔C.I.ベイシックオレンジ〕2、21、22;
〔C.I.ベイシックレッド〕1、2、12、13、14、15、18、23、24、27、29、35、36、39、46、51、52、69、70、73、82、109;
〔C.I.ベイシックバイオレット〕1、3、7、10、11、15、16、21、27、39;
〔C.I.ベイシックブルー〕1、3、7、9、21、22、26、41、45、47、52、54、65、69、75、77、92、100、105、117、124、129、147、151;
〔C.I.ベイシックグリーン〕1、4;
〔C.I.ベイシックブラウン〕1;
〔C.I.リアクティブイエロー〕2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176;
〔C.I.リアクティブオレンジ〕1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107;
〔C.I.リアクティブレッド〕2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235;
〔C.I.リアクティブバイオレット〕1、2、4、5、6、22、23、33、36、38;
〔C.I.リアクティブブルー〕2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236;
〔C.I.リアクティブグリーン〕8、12、15、19、21;
〔C.I.リアクティブブラウン〕2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46;
〔C.I.リアクティブブラック〕5、8、13、14、31、34、39等。
【0045】
これら列挙した染料は、「染色ノート第21版」(出版;色染社)等に記載される。
【0046】
これら水溶性染料の中でもフタロシアニン染料が好ましい。フタロシアニン染料としては、無置換あるいは中心元素を有するものが挙げられ、中心元素としては金属、非金属のものが挙げられ、好ましくは銅であり、より好ましくはC.I.ダイレクトブルー199が挙げられる。
【0047】
又、水や各種有機溶剤に不溶な顔料を用いることも可能である。本発明に使用できる顔料としては、公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0048】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等。
【0049】
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等。
【0050】
グリーン又はシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等。
【0051】
本発明のインクに使用する顔料分散体の平均粒径は10〜200nmであることが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmが更に好ましい。顔料分散体の平均粒径が150nmを超えると光沢メディアに記録した画像では光沢感の劣化が起こり、透明メディアに記録した画像では著しい透明感の劣化が起こる。又、顔料分散体の平均粒径が10nm未満になると顔料分散体の安定性が悪くなり易く、インクの保存安定性が劣化し易くなる。
【0052】
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。又、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス社製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0053】
色材として、特開平9−277693号、同10−20559号、同10−30061号に示されるような金属錯体色素も使用可能である。好ましい構造としては下記一般式(1)で表されるものである。
【0054】
一般式(1) M(Dye)m(A)n
式中、Mは金属イオンを表し、Dyeは金属と配位結合可能な色素を表す。Aは色素以外の配位子を表し、mは1〜3の整数、nは0〜3の整数を表す。nが0のときmは2又は3を表し、その場合Dyeは同種でも異なってもよい。
【0055】
Mで表される金属イオンとしては、例えばAl、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Mo、Ni、Sn、Ti、Pt、Pd、Zr及びZnの各イオンが挙げられるが、色調、各種耐久性の点からNi、Cu、Cr、Co、Zn、Feの各イオンが特に好ましい。更に好ましくはNiイオンである。
【0056】
Dyeで表される金属と配位結合可能な色素としては種々の色素構造が考えられるが、共役メチン色素、アゾメチン色素、アゾ色素骨格に配位基を有するものが好ましい。
【0057】
以上述べて来た各種色材の中でも、分子構造内に窒素原子を有するものが特に好ましい。
【0058】
本発明のコア/シェル形態を有する色材含有ポリマー微粒子は、ポリマー量としてポリマーエマルジョン型水系インク中に0.5〜50質量%配合されることが好ましく、0.5〜30質量%配合されることが更に好ましい。ポリマーの配合量が0.5質量%に満たないと色材の保護能が十分でなく、50質量%を超えるとサスペンションのインクとしての保存安定性が低下したり、ノズル先端部でのインク蒸発に伴うインクの増粘やサスペンションの凝集によってプリンタヘッドの目詰りが起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0059】
一方、色材は、該インク中に1〜30質量%配合されることが好ましく、1.5〜25質量%配合されることが更に好ましい。色材の配合量が1質量%に満たないと印字濃度が不十分であり、又、30質量%を超えるとサスペンションの経時安定性が低下し、凝集等による粒径増大の傾向があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0060】
色材を含有するコアポリマーと、これを被覆したシェルポリマーのモノマー組成は異なるものがよい。これは、同じモノマー組成の樹脂を用いると、染料が外に滲み出し、被覆率の低下や粒径増大が起こり易くなる為である。
【0061】
本発明のインクは、水を媒体とし、上記色材を封入したポリマーのサスペンションから成り、該サスペンションには、従来公知の各種添加剤、例えば多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、シリコーン系の消泡剤、クロロメチルフェノール系の防黴剤及び/又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤や、亜硫酸塩等の酸素吸収剤等が含有されてもよい。
【0062】
上記湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルスルホキシドの1種又は2種以上を使用することができる。これら湿潤剤の配合量に特に制限はないが、上記インク中に好ましくは0.1〜50質量%配合することができ、更に好ましくは0.1〜30質量%配合することができる。
【0063】
又、上記分散剤としては、特に制限されるものではないが、そのHLB値が8〜18であることが、分散剤としての効果が発現し、サスペンションの粒子径の増大抑制効果がある点から好ましい。
【0064】
分散剤として市販品も使用することができる。そのような市販品としては、例えば花王社製の分散剤デモールSNB、MS、N、SSL、ST、P等が挙げられる。分散剤の配合量に特に制限はないが、インク中に0.01〜10質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.01質量%に満たないとサスペンションの小粒径化が困難であり、10質量%を超えるとサスペンションの粒径が増大したりサスペンション安定性が低下し、ゲル化する懼れがあるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0065】
又、上記消泡剤としては、特に制限なく市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば信越シリコーン社製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F等が挙げられる。これら化合物の配合量に特に制限はないが、本発明のポリマーエマルジョン型水系インク中に、0.001〜2質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、又、インク内での小泡の除去が難しい。一方、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際、インク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0066】
次に、本発明の水系インクの製造方法について説明する。本発明のインクは、各種の乳化法で製造することができる。乳化法としては、各種の方法を用いることができる。それらの例は、例えば「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開,シー エム シー」の86頁の記載に纏められている。本発明においては、特に、超音波、高速回転剪断、高圧による乳化分散装置の使用が好ましい。
【0067】
超音波による乳化分散では、所謂バッチ式と連続式の2通りが使用可能である。バッチ式は、比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、例えばUH−600SR(エスエムテー社製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は、分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計として求められる。超音波の照射時間は実際上は10,000秒以下である。又、10,000秒以上必要であると、工程の負荷が大きく、実際上は乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10,000秒以上は必要でない。更に好ましく、10〜2,000秒である。
【0068】
高速回転剪断による乳化分散装置としては、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開,シー エム シー」の255〜256頁に記載されるディスパーミキサーや、251頁に記載されるホモミキサー、256頁に記載されるウルトラミキサー等が使用できる。これらの型式は、乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。これらの高速回転剪断による乳化分散機では、攪拌翼の回転数が重要である。ステーターを有する装置の場合、攪拌翼とステーターとのクリアランスは通常0.5mm程度で、極端に狭くは出来ないので、剪断力は主として攪拌翼の周速に依存する。周速が5〜150m/Sであれば、本発明の乳化・分散に使用できる。周速が遅い場合、乳化時間を延ばしても小粒径化が達成できない場合が多く、150m/Sにするにはモーターの性能を極端に上げる必要があるからである。更に好ましくは20〜100m/sである。
【0069】
高圧による乳化分散では、LAB2000(エスエムテー社製)等が使用できるが、その乳化・分散能力は、試料に掛けられる圧力に依存する。圧力は104〜5×105kPaの範囲が好ましい。又、必要に応じて数回乳化・分散を行い、目的の粒径を得ることができる。圧力が低すぎる場合、何度乳化分散を行っても目的の粒径は達成できない場合が多く、又、圧力を5×105kPaにするためには、装置に大きな負荷がかかり実用的ではない。更に好ましくは5×104kPa〜2×105kPaの範囲である。
【0070】
これらの乳化・分散装置は単独で用いてもよいが、必要に応じて組み合わせて使用することが可能である。コロイドミルや、フロージェットミキサも単独では本発明の目的を達成できないが、本発明の装置との組合せにより、短時間で乳化・分散を可能にするなど本発明の効果を高めることが可能である。
【0071】
又、本発明のインクは、上記の装置を用いる他、いわゆる転相乳化によっても製造することができる。ここで、転相乳化は、ポリマーを染料と共にエステル、ケトン等の有機溶剤に溶解させ、必要に応じて中和剤を加えて該ポリマー中のカルボキシル基をイオン化し、次いで水相を加えた後、有機溶剤を溜去して水系に転相することから成る。転相が完了した後、系を減圧下に加熱することにより、上記エステル、ケトン系溶剤を除去すると共に、所定量の水を除去して、所望の濃度を有するインクジェット記録用水系インクが得られる。
【0072】
本発明のポリマーエマルジョン型水系インクは、インクジェット記録用のインク以外に、例えば、一般の万年筆、ボールペン、サインペン等の筆記具用のインクとしても使用できる。本発明のサスペンションを乾燥し、微粒の粉体を得ることもでき、得られた粉体は、電子写真のトナー等にも使用可能である。
【0073】
【実施例】
次に、実施例により本発明の色材含有微粒子及び着色微粒子含有水性インクを更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は係る実施例のみに限定されるものではない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を示す。
【0074】
〈ポリマーエマルジョンの作製〉
実施例1
20gのポリビニルブチラール(BL−S:積水化学社製,平均重合度350)、14gのC.I.ソルベント・ブルー70及び200gの酢酸エチルをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素ガスで置換後、攪拌して上記ポリマー及び染料を完全溶解させた。ここに、ラウリル硫酸ナトリウム4.2gを含む水溶液220gを滴下して撹拌した後、超音波分散機(UH−150型:エスエムテー社製)を用いて300秒間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、染料を含浸するコアとなる着色微粒子を得た。これに、スチレン8gと2−ヒドロキシエチルメタクリレート5gの混合液及び10%過硫酸カリウム水溶液8gを、60℃で滴下しながらシード重合を行いシェル化を行った。以上のようにしてコア/シェル構造を持つポリマーエマルジョンを得た。
【0075】
実施例2
実施例1において、C.I.ソルベント・ブルー70の代わりに下記染料Aを用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0076】
【化1】
【0077】
実施例3
実施例1において、C.I.ソルベント・ブルー70の代わりにValifast Yellow3150(オリエント化学社製)を用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0078】
実施例4
実施例1において、C.I.ソルベント・ブルー70の代わりに、Oil BlackBY(オリエント化学製)を用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0079】
実施例5
実施例1において、スチレン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を2倍にした以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0080】
実施例6
実施例1において、BL−Sの代わりにポリビニルアルコール樹脂(MP−203:クラレ社製)5gとBL−S10gの混合物を用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0081】
実施例7
実施例1において、スチレン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの代わりにメチルメタクリレート18gを用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0082】
比較例1
実施例1において、過硫酸カリウム、スチレン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートを添加しなかった以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0083】
比較例2
実施例1において、スチレン及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの代わりにBL−S1を5g用いた以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0084】
比較例3
実施例1において、スチレンの添加量を4gに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を2gに変更した以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0085】
比較例4
実施例1において、スチレンの添加量を2gに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの添加量を2gに変更した以外は同様の操作によりポリマーエマルジョンを得た。
【0086】
このようにして作製したポリマーエマルジョン中の色材含有微粒子について、体積平均粒径、シェル被覆率の測定を行った。
【0087】
《体積平均粒子径》
大塚電子製レーザー粒径解析システムを用いて測定した。
【0088】
《シェル被覆率》
Si−ウェーファー上に、上記ポリマーエマルジョンを塗布・乾燥し、VG製:ESCALab200Rを用い、その中で染料に含まれる窒素原子の総量から、シェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの窒素含有率を比較し、下記式より被覆率を求めた。
【0089】
被覆率(%)=100−{(シェル化した色材含有微粒子の窒素原子量)/(コアの窒素原子量)}×100
(XPS測定条件)
装置:VG製ESCALab200R
アノード:Mg(600W)
走査範囲:1100−0eV(5回)
PE:100eV
レンズモード:Large
TOA:10°
〈インクジェット用インクの作製〉
上記で得られた色材含有粒子のポリマーエマルジョン80gに、エチレングリコール12g、グリセリン7.8g及びKF69(信越シリコーン社製)0.2gを混合し、得られた分散液を5μmのフィルターで濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去してインクジェット用インクを得た。11種のインクの分散安定性を評価した。
【0090】
次に、各インクを用いて、市販のエプソン社製インクジェットプリンターPM−800によりコニカフォトジェットペーパー Photolike QP 光沢紙(コニカ社製)にベタ画像をプリントし、以下の評価を行った。
【0091】
《分散安定性》
インク100mlを密閉したサンプル瓶に入れ、それを50℃の恒温槽で1週間保存し、保存前後の粒径を測定(マルバーン社製ゼータサイザー使用)し、その粒径変動が5%未満のものを◎、5〜10%未満のものを○、10%以上のものを×とした。◯以上が許容レベルである。
【0092】
《吐出安定性》
プリンターで連続射出して10分以上ノズル欠が出ないものを○、5分以上ノズル欠が出ないものを△、5分未満のものを×とした。△以上が許容レベルである。
【0093】
《耐光性》
プリントを低温XeウェザーメータXL75(スガ試験機製)中に1週間経時させ、経時前後の濃度変化をX−Rite900(日本平板機材社製)を用いて測定した。試験後、元の濃度から80%以上残存しているものを◎、60〜80%未満残存しているものを○、60%未満を×とした。◯以上が許容レベルである。
【0094】
【表1】
【0095】
本発明の色材含有微粒子を用いたインクジェット用水系インクは、何れの評価においても満足できるものであった。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、分散安定性、吐出安定性、耐光性に優れた着色微粒子含有水性インクを得ることができた。
Claims (5)
- 色材を含有する樹脂から成る着色微粒子を、色材を含有しない樹脂にて被覆したコア/シェル型構造を有し、該シェルの被覆率が60%以上であることを特徴とする色材含有微粒子。
- 体積平均粒子径が10〜300nmであることを特徴とする請求項1記載の色材含有微粒子。
- 被覆した樹脂が着色微粒子を構成する総樹脂量の5〜95質量%であることを特徴とする請求項1記載の色材含有微粒子。
- 色材を含有する樹脂と被覆した樹脂が異なるモノマー組成から成ることを特徴とする請求項1記載の色材含有微粒子。
- 請求項1〜4の何れか1項記載の色材含有微粒子を用いることを特徴とするポリマーエマルジョン型水系インク。
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