JP2004314503A - 機能性建材 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期に渡り芳香性を保持できる機能性建材を提供する。
【解決手段】芳香剤を含有する基材の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有するシートが接着されている機能性建材とする。
【選択図】 図1
【解決手段】芳香剤を含有する基材の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有するシートが接着されている機能性建材とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、機能性建材に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、長期に渡り芳香性が持続する機能性建材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、内装材や建具には杉や檜等の天然材が多く使用され、それらより発散される香りは心地よい芳香として広く親しまれてきた。しかし、近年の建築物では、それら天然材に代わり合板や積層板、あるいはプリント紙が軽量で安価な建材として使用されており、天然材特有の芳香が失われている。
【0003】
また、最近、緊張緩和や疲労回復、精神安定などへの香りの効果が注目されており、アロマテラピーを日常生活に取り入れる人も増えている。
【0004】
そこで、芳香性を有する各種の機能性建材が検討され、市販されている。具体的には、芳香剤を基材に含浸させた木質化粧板(特許文献1)や、基材表面に芳香剤を含有する塗料を塗布した建材(特許文献2)、あるいは基材に芳香剤を含有する接着剤を用いて印刷紙を貼着したプリント化粧板(特許文献3)等が知られている。
【0005】
しかし、これら従来の機能性建材では、芳香剤の揮発性が高いために芳香が長期に渡り持続しないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−278007号公報
【特許文献2】
特開昭63−205232号公報
【特許文献3】
特開平5−004320号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来技術の問題点に対して、芳香剤をマイクロカプセルに内包し、徐放性を持たせることが検討された。しかし、実際には、使用開始から短期間で芳香が失われ、芳香の持続期間は十分とは言い難かったのが実情である。
【0008】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、長期に渡り芳香性を保持できる機能性建材を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、芳香剤を含有する基材の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有するシートが接着されていることを特徴とする機能性建材を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、第2には、長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、芳香剤を含有する基材の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜が形成されていることを特徴とする機能性建材を提供する。
【0011】
さらに、この出願の発明は、第3には、長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、基材の表面に芳香剤を含有する接着剤を塗布し、該接着剤により50〜500 g/m224hの透湿量を有するシートを接着してなることを特徴とする機能性建材を提供する。
【0012】
この出願の発明は、第4には、長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、基材の表面に芳香剤を含有する下塗り樹脂塗膜が形成され、該下塗り樹脂塗膜の表面に、さらに50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜が形成されていることを特徴とする機能性建材を提供する。
【0013】
さらに、この出願の発明は、第5には、芳香剤を、マイクロカプセルに内包されているものとする前記いずれかの機能性建材を、そして、第6には、機能性建材表面に孔径1 mm以下の細孔が形成されている前記いずれかの機能性建材をも提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の機能性建材(1)を図1〜図4に例示した。この出願の発明者らは、鋭意研究の結果、機能性建材の表面に50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)あるいは樹脂塗膜(42)を設けることにより、芳香剤(2)に適度な徐放性を付与できることを見出し、本願発明に至ったものである。すなわち、この出願の発明の機能性建材(1)は、表面に50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)あるいは樹脂塗膜(42)を有することを特徴とするものである。
【0015】
この出願の発明の機能性建材(1)において、透湿量は芳香剤(2)の発散速度に直接影響する数値として設定されている。なお、本明細書において、透湿量は、特に記載がない限りJIS K 7129(カップ法)により測定、算出された値を表す。この出願の発明者らの研究によれば、透湿量が50 g/m224hよりも少ない場合には、芳香剤(2)が発散しにくくなり、十分な芳香性が得られなくなるため、好ましくない。また、透湿量が500 g/m224hよりも多い場合には、芳香剤(2)の発散速度が速くなり、芳香が長期に渡り持続されなくなるため、好ましくない。
【0016】
このような機能性建材(1)としては、例えば、芳香剤(2)を含有する基材(3)の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)が接着されてなるもの(図1)や、芳香剤(2)を含有する基材(3)の表面に50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜(42)が形成されてなるもの(図2)が挙げられる。前者(図1)において、シート(41)は、接着剤(5)等により基材(3)に接着されていてもよいし(図1a)、熱融着等により接着されていてもよい(図1b)。
【0017】
さらに、この出願の発明の機能性建材(1)の例としては、基材(3)の表面に芳香剤(2)を含有する接着剤(5)を塗布し、該接着剤(5)により50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)を接着してなるもの(図3)や、基材(3)の表面に芳香剤(2)を含有する下塗り樹脂塗膜(6)を形成し、この下塗り樹脂塗膜(6)の表面に、さらに、50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜(42)を形成してなるもの(図4)が例示される。
【0018】
この出願の発明の機能性建材(1)において、50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)や樹脂塗膜(42)は、前記のとおり、芳香剤(2)の発散速度を適度に調節する作用を有するものである。一般に、気体や蒸気の膜への透過は、気体や蒸気の膜材料に対する溶解度と、気体や蒸気の膜材料中での拡散に依存することが知られている。したがって、この出願の発明の機能性建材(1)では、シート(41)や樹脂塗膜(42)の材質は、50〜500 g/m224hの透湿量を実現できるものであれば特に限定されない。
【0019】
具体的には、シート(41)としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリウレタン(PU)、フッ素樹脂(PFA、PCTFE)等の樹脂製シートや、これらの樹脂でコーティングされた紙、不織布などが例示される。シート(41)の材質については、透湿量だけでなく、所望の表面特性(防水性、防汚性、強度など)を考慮して適宜選択すればよい。また、このようなシート(41)は、前記の各種樹脂からなるフィルムのような緻密膜であってもよいし、紙、不織布、大きな側鎖を有する剛直な高分子からなるフィルム(例えばセロハン、ポリテトラフルオロエチレンテープ等)のような多孔膜であってもよい。このようなシート(41)は、接着剤(5)を介して基材(3)に接着されてもよいし(図1a、図3)、熱融着等により接着されてもよい(図1b)。
【0020】
さらに、これらのシート(41)の膜厚もとくに限定されない。一般に、気体や蒸気の膜への透過量は、膜厚に大きく影響されることから、この出願の発明の機能性建材(1)では、シート(41)の膜厚を変更することにより透湿量を50〜500
g/m224hに調整することができる。
【0021】
一方、樹脂塗膜(42)としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、フッ素系等の塗料を塗布して得られる各種の樹脂塗膜(42)が考慮される。このとき、塗料の塗装方法は特に限定されず、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピング等の一般的な手法が適用できる。また、シート(41)と同様に、樹脂塗膜(42)においてもその膜厚は透湿量に直接影響することから、塗料の塗布量は、樹脂塗膜(42)の透湿量を50〜500 g/m224hに調整するために適宜変更できる。
【0022】
一方で、一般に、建材には、その用途に応じて防水性、耐水性、防汚性、意匠性、強度等の特性が求められ、そのような特性を付与するために、しばしばシートやフィルムの貼付けや塗装が施される。そして、これらのシートやフィルムや塗装では、必要な特性を発揮するために、材質だけでなく、膜厚もある程度規定される場合がある。そのため、50〜500 g/m224hの透湿量を実現する上で、シート(41)や樹脂塗膜(42)の膜厚を十分に薄くできない場合がある。
【0023】
そこで、この出願の発明の機能性建材(1)では、機能性建材(1)の表面に配設されるシート(41)や樹脂塗膜(42)に、孔径が1 mm以下の細孔(7)を設け、その深さや数によって透湿量を50〜500 g/m224hに調整してもよい(図5)。このような細孔(7)の深さはとくに限定されないが、例えば、深さ1〜5 mm程度とすることができる。また、細孔(7)は、芳香剤(2)を含有する層まで到達するもの(図5a)であってもよいし、シート(41)や樹脂塗膜(42)を貫かずに膜厚のみを部分的に減少させるもの(図5b)であってもよい。さらに、細孔(7)の数についても、透湿量を50〜500 g/m224hに調整できればよく、特に限定されないが、好ましくは細孔(7)の総面積が10 cm2/m2基材以下となるようにする。細孔(7)の総面積が10 cm2/m2基材より大きい場合、意匠性、耐傷性、防汚性等の表面特性が低下する恐れがある。
【0024】
また、このような細孔(7)は、針やピン等を適当な深さまで刺すことにより形成できるが、長さと径を調整した針やピン等を複数設置したロールを用いることにより簡便に多数の細孔(7)を規則的に設けることもでき、好ましい。
【0025】
この出願の発明の機能性建材(1)において、基材(3)は、一般に天井、壁、床等の内装材、外壁、屋根等の外装材、キッチン、トイレ、洗面、浴室等の水回り、扉、障子、襖等の建具、窓、収納部材、およびそれらの周辺部材として用いられる各種のものから選択され、とくに限定されない。具体的には、木材、合板、MDF、パーティクルボード、インシュレーションボード等の木質基材、FRP、人工大理石、樹脂成型品等のプラスチック基材、石膏ボード、珪酸カルシウム板、ロックウールボード、各種セメント板、スレート等の無機質基材が挙げられる。
【0026】
また、この出願の発明の機能性建材(1)において、芳香剤(2)は、各種の天然芳香成分あるいは合成芳香成分から選択される1種以上の芳香成分を含有するものであればよく、とくに限定されない。具体的には、ヒノキ、ヒバ等の樹木系、レモン、ベルガモット等の柑橘系、ストロベリー、ラズベリー等の果実系、ジャスミン、ラベンダー、ローズ等の草花系、ペパーミント、スペアミント等のミント系、さらには、い草等の芳香を発散するものが例示される。このような芳香剤(2)は、植物の根、茎、枝、表皮、花びら、種子、果実等から水蒸気蒸留や圧搾法、冷浸法、パーコレーション法、溶剤抽出法等により抽出された精油であってもよく、また、精油から単離された、あるいは合成のモノテルペン炭化水素類、セスキテルペン炭化水素類、モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、酸化物類、含窒素化合物類等の芳香成分を調合したものであってもよい。もちろん、このような精油や芳香成分は、水やアルコール等の溶剤で希釈してもよい。
【0027】
この出願の発明の機能性建材(1)において、芳香剤(2)は、前記のとおり、基材(3)、接着剤(5)または下塗り樹脂塗膜(6)に含有されているものである。例えば、芳香剤(2)を基材(3)に含有させるためには、基材(3)の原料中に予め芳香剤(2)を添加し、成形してもよいし、芳香剤(2)を水やアルコール等の適当な溶剤に溶解あるいは分散させ、それを基材(3)に含浸させてもよい。基材(3)への芳香剤(2)溶液または分散液の含浸は、塗布やディッピングにより行うことができる。また、このような芳香剤(2)溶液あるいは分散液には、芳香剤(2)以外に、アクリル系樹脂等のバインダー成分や酸化チタン等の顔料、骨材、分散剤、粘度調整剤、防カビ剤、抗菌剤、撥水剤等の適当な添加剤を含有していてもよい。
【0028】
一方、芳香剤(2)を接着剤(5)や下塗り樹脂塗膜(6)に含有させるためには、接着剤(5)や下塗り塗料に芳香剤(2)を添加、混合すればよい。この場合にも、芳香剤(2)は、水やアルコール等の適当な溶剤に溶解あるいは分散させてもよく、このような芳香剤(2)溶液または分散液には、前記のとおり、各種の添加剤が適宜添加されていてもよい。
【0029】
さらに、この出願の発明の機能性建材(1)では、基材(3)や接着剤(5)、あるいは下塗り塗料への芳香剤(2)の分散性を高めるために、芳香剤(2)をマイクロカプセルに内包させてもよい。このようなマイクロカプセルとしては、無機質の中空多孔質マイクロカプセルや、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の熱可塑性樹脂製の中空マイクロカプセルや多孔質マイクロビーズ、あるいは、不飽和ポリエステル、ポリエポキシド等の熱硬化性樹脂製の中空マイクロカプセルや多孔質マイクロビーズが例示される。
【0030】
また、芳香剤(2)をマイクロカプセルに内包させることにより、基材(3)や接着剤(5)、あるいは下塗り塗料への芳香剤(2)の分散性が高まるだけでなく、基材(3)や接着剤(5)、あるいは下塗り塗料に添加できる芳香剤(2)の量が増え、好ましい。基材(3)や接着剤(5)、あるいは下塗り塗料に添加される芳香剤(2)の量は限定されないものの、あまり少なければ芳香が得られないことから、なるべく多くすることが望ましい。しかし、実際には、あまり大量の芳香剤(2)を添加すれば機能性建材(1)の物性が低下してしまうため、添加できる芳香剤(2)の量は限られてしまう。そこで、芳香剤(2)をマイクロカプセルに内包させることにより、芳香剤(2)そのものを添加するよりも多くの芳香剤(2)が添加できるようになるのである。
【0031】
さらに、芳香剤(2)をマイクロカプセルに内包させることにより芳香剤(2)に徐放性も付与され、より長期に渡り芳香を持続できるようにもなる。
【0032】
芳香剤(2)を内包させるマイクロカプセルの粒径は、とくに限定されないが、芳香剤(2)を十分に内包でき、かつ、基材(3)、接着剤(5)および下塗り塗料への分散性を高めるためには、3〜30μmとすることが望ましい。
【0033】
さらに、このようなマイクロカプセルは、水や有機溶媒に分散させたものであってもよい。中でも乳化剤により水に分散させたマイクロカプセルエマルジョンとすることが望ましい。このようなエマルジョンを、前記のとおりに基材(3)に塗布したり、接着剤(5)や下塗り塗料に混合したりすることにより、芳香剤(2)を含有する基材(3)、接着剤(5)、下塗り樹脂塗膜(6)等が得られる。もちろん、エマルジョンには、前記同様に各種の添加剤を加えてもよい。
【0034】
このようなマイクロカプセルエマルジョンを芳香剤(2)として使用する場合には、基材(3)、接着剤(5)、下塗り樹脂塗膜(6)に対して、例えば、マイクロカプセル固形分量で5〜30 g/m2の範囲で含有させることができる。芳香剤(2)の含有量がマイクロカプセル固形分量で5 g/m2未満の場合には、機能性建材(1)の芳香性が不十分となり、持続性が期待できない。一方、芳香剤(2)の含有量がマイクロカプセル固形分量で30 g/m2より多い場合には、接着性や塗膜密着性が低下する恐れがある。
【0035】
この出願の発明の機能性建材(1)は、以上のようにして調製された芳香剤(2)を含有する基材(3)に、前記のとおりの50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)を接着することにより得られる。また、この出願の発明の機能性建材(1)は、基材(3)に、以上のようにして調製された芳香剤(2)を含有する接着剤(5)を塗布し、その上に50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)を接着しても得られる。これらの機能性建材(1)では、基材(3)またはシート(41)に、接着剤(5)を塗布してもよいし、予め接着剤付きのシート(41)を準備してもよい。また、接着剤(5)の成分はとくに限定されないが、例えば、透湿性の高いデンプン系接着剤やアクリル系あるいはアクリル変性系接着剤が好ましく例示される。
【0036】
さらに、この出願の発明の機能性建材(1)は、芳香剤(2)を含有する基材(3)の表面に、前記のとおりの50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜(42)を形成したり、基材(3)の表面に、芳香剤(2)を含有する下塗り樹脂塗膜(6)を形成し、さらに50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜(42)を形成したりしても得られる。
【0037】
この出願の発明の機能性建材(1)では、最表面に50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)または樹脂塗膜(42)を有することにより、基材(3)、接着剤(5)および下塗り樹脂塗膜(6)に含まれる芳香剤(2)の発散速度が制限され、長期に渡り芳香を発散し続けることが可能となる。
【0038】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0039】
【実施例】
<実施例1>
ロックウールボード(厚さ9 mm)を基材とし、これに芳香性マイクロカプセルエマルジョン(松本油脂製薬製;K−500;ヒノキチオール含有マイクロカプセル30 %含有)をマイクロカプセル固形分量で18 g/m2でロール塗布し、常温で乾燥して基材に含浸させた。
【0040】
次いで、アクリル樹脂変性エマルジョンを固形分20 g/m2で塗布し、表面コーティングされた紙(透湿量:210 g/m2・24h)を接着して機能性建材を得た。
【0041】
得られた機能性建材を5 cm×5 cmに切断し、表面以外をアルミテープでシールした後、1 Lの容器内に設置し、発散される芳香成分の発散速度をガスカウンター(新コスモス電機製XP−308)で測定した。
【0042】
結果を表1および図6に示した。
<実施例2>
ロックウールボード(厚さ9 mm)を基材とし、これに芳香性マイクロカプセルエマルジョン(松本油脂製薬製;K−500;ヒノキチオール含有マイクロカプセル30 %含有)をマイクロカプセル固形分量で25 g/m2混合したアクリル樹脂変性エマルジョンを、固形分20 g/m2で塗布し、ポリプロピレン(PP)シート(透湿量:390 g/m2・24h)を接着して機能性建材を得た。
【0043】
また、実施例1と同様の方法により芳香成分の発散速度を測定した。
【0044】
結果を表1および図6に示した。
<実施例3>
ロックウールボード(厚さ9 mm)を基材とし、これに芳香性マイクロカプセルエマルジョン(松本油脂製薬製;K−500;ヒノキチオール含有マイクロカプセル30 %含有)をマイクロカプセル固形分量で36 g/m2でロール塗布し、常温で乾燥して基材に含浸させた。
【0045】
次いで、アクリルエマルジョン塗料を固形分50 g/m2で塗布し、乾燥して樹脂塗膜(透湿量:180 g/m2・24h)を得た。
【0046】
得られた機能性建材について、実施例1と同様の方法により芳香成分の発散速度を測定し、結果を表1および図6に示した。
<実施例4>
ロックウールボード(厚さ9 mm)を基材とし、これに芳香性マイクロカプセルエマルジョン(松本油脂製薬製;K−500;ヒノキチオール含有マイクロカプセル30 %含有)をマイクロカプセル固形分量で40 g/m2混合したアクリルエマルジョン塗料を固形分50 g/m2で塗布し、下塗り樹脂塗膜を得た。
【0047】
次いで、その上にアクリルエマルジョン塗料を固形分120 g/m2で塗布し、樹脂塗膜(透湿量:110 g/m2・24h)を得た。
【0048】
また、実施例1と同様の方法により芳香成分の発散速度を測定した。
【0049】
結果を表1および図6に示した。
<実施例5>
実施例3において、アクリルエマルジョン塗料の塗布量を固形分200 g/m2として樹脂塗膜を得た後、ピンロールにより塗膜を貫通するφ0.7 mmの細孔を約1200個/m2形成した(透湿量:60 g/m2・24h)以外は、同様の方法により機能性建材を得た。また、同様の方法により芳香成分の発散速度を測定し、結果を表1および図6に示した。
<比較例1>
実施例1において、表面コーティングされた紙に代わり、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(透湿量:20 g/m2・24h)を接着した以外は、同様の方法により機能性建材を得た。また、同様の方法により芳香成分の発散速度を測定した。
【0050】
結果を表1および図6に示した。
<実施例2>
実施例4において、アクリルエマルジョン塗料の塗布量を固形分250 g/m2とし、樹脂塗膜(透湿量:30 g/m2・24h)を得た以外は、同様の方法により、機能性建材を得た。
【0051】
また、実施例1と同様の方法により芳香成分の発散速度を測定した。
【0052】
結果を表1および図6に示した。
<比較例3>
実施例3において、アクリルエマルジョン塗料を塗布せずに機能性建材(透湿量:600 g/m2・24h)を得た。さらに、同様の方法により芳香成分の発散速度を測定し、結果を表1および図6に示した。
【0053】
【表1】
表1および図6より、表面に透湿量50〜500 g/m224hのシートや樹脂塗膜を有する機能性建材では、芳香剤を基板に含浸させた場合(実施例1、3、5)、芳香剤を接着剤に混合した場合(実施例2)、芳香剤を下塗り樹脂塗膜に含有させた場合(実施例4)のいずれにおいても、芳香剤の徐放性が確認された。また、芳香は居室等の空間において心地よいと感じられる程度の適度なものであった。
【0054】
さらに、表面に形成された樹脂塗膜が厚い場合(実施例5)であっても、細孔を設けることにより、透湿度を調整できることが確認された。これにより、厚い樹脂塗膜を必要とする機能性建材においても、適度な芳香発散速度を付与することができる。
【0055】
したがって、この出願の発明の機能性建材では、長期に渡り適度な芳香が持続して発散されることが示された。
【0056】
一方、シートや樹脂塗膜の透湿量が50 g/m224hよりも小さい場合(比較例1、2)には、芳香剤の含有部位に関わらず、ほとんど芳香が発散されないことが確認された。
【0057】
また、表面に透湿量50〜500 g/m224hのシートや樹脂塗膜を有さない従来の機能性建材(比較例3)では、芳香剤が徐放性を有さず、芳香の発散速度が速かった。したがって、芳香が短期間で失われることが示唆された。
【0058】
【発明の効果】
この出願の発明により、芳香性を有する機能性建材が提供される。この出願の発明の機能性建材においては、表面に透湿量50〜500 g/m224hのシートや樹脂塗膜を有することにより、芳香速度が適度に調整され、長期に渡り芳香を維持できることから、有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図2】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図3】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図4】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図5】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図6】この出願の発明の実施例において、機能性建材からの芳香剤の発散速度を示した図である。
【符号の説明】
1 機能性建材
2 芳香剤
3 基材
41 シート
42 樹脂塗膜
5 接着剤
6 下塗り樹脂塗膜
7 細孔
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、機能性建材に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、長期に渡り芳香性が持続する機能性建材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、内装材や建具には杉や檜等の天然材が多く使用され、それらより発散される香りは心地よい芳香として広く親しまれてきた。しかし、近年の建築物では、それら天然材に代わり合板や積層板、あるいはプリント紙が軽量で安価な建材として使用されており、天然材特有の芳香が失われている。
【0003】
また、最近、緊張緩和や疲労回復、精神安定などへの香りの効果が注目されており、アロマテラピーを日常生活に取り入れる人も増えている。
【0004】
そこで、芳香性を有する各種の機能性建材が検討され、市販されている。具体的には、芳香剤を基材に含浸させた木質化粧板(特許文献1)や、基材表面に芳香剤を含有する塗料を塗布した建材(特許文献2)、あるいは基材に芳香剤を含有する接着剤を用いて印刷紙を貼着したプリント化粧板(特許文献3)等が知られている。
【0005】
しかし、これら従来の機能性建材では、芳香剤の揮発性が高いために芳香が長期に渡り持続しないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−278007号公報
【特許文献2】
特開昭63−205232号公報
【特許文献3】
特開平5−004320号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来技術の問題点に対して、芳香剤をマイクロカプセルに内包し、徐放性を持たせることが検討された。しかし、実際には、使用開始から短期間で芳香が失われ、芳香の持続期間は十分とは言い難かったのが実情である。
【0008】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、長期に渡り芳香性を保持できる機能性建材を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、芳香剤を含有する基材の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有するシートが接着されていることを特徴とする機能性建材を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、第2には、長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、芳香剤を含有する基材の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜が形成されていることを特徴とする機能性建材を提供する。
【0011】
さらに、この出願の発明は、第3には、長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、基材の表面に芳香剤を含有する接着剤を塗布し、該接着剤により50〜500 g/m224hの透湿量を有するシートを接着してなることを特徴とする機能性建材を提供する。
【0012】
この出願の発明は、第4には、長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、基材の表面に芳香剤を含有する下塗り樹脂塗膜が形成され、該下塗り樹脂塗膜の表面に、さらに50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜が形成されていることを特徴とする機能性建材を提供する。
【0013】
さらに、この出願の発明は、第5には、芳香剤を、マイクロカプセルに内包されているものとする前記いずれかの機能性建材を、そして、第6には、機能性建材表面に孔径1 mm以下の細孔が形成されている前記いずれかの機能性建材をも提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の機能性建材(1)を図1〜図4に例示した。この出願の発明者らは、鋭意研究の結果、機能性建材の表面に50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)あるいは樹脂塗膜(42)を設けることにより、芳香剤(2)に適度な徐放性を付与できることを見出し、本願発明に至ったものである。すなわち、この出願の発明の機能性建材(1)は、表面に50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)あるいは樹脂塗膜(42)を有することを特徴とするものである。
【0015】
この出願の発明の機能性建材(1)において、透湿量は芳香剤(2)の発散速度に直接影響する数値として設定されている。なお、本明細書において、透湿量は、特に記載がない限りJIS K 7129(カップ法)により測定、算出された値を表す。この出願の発明者らの研究によれば、透湿量が50 g/m224hよりも少ない場合には、芳香剤(2)が発散しにくくなり、十分な芳香性が得られなくなるため、好ましくない。また、透湿量が500 g/m224hよりも多い場合には、芳香剤(2)の発散速度が速くなり、芳香が長期に渡り持続されなくなるため、好ましくない。
【0016】
このような機能性建材(1)としては、例えば、芳香剤(2)を含有する基材(3)の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)が接着されてなるもの(図1)や、芳香剤(2)を含有する基材(3)の表面に50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜(42)が形成されてなるもの(図2)が挙げられる。前者(図1)において、シート(41)は、接着剤(5)等により基材(3)に接着されていてもよいし(図1a)、熱融着等により接着されていてもよい(図1b)。
【0017】
さらに、この出願の発明の機能性建材(1)の例としては、基材(3)の表面に芳香剤(2)を含有する接着剤(5)を塗布し、該接着剤(5)により50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)を接着してなるもの(図3)や、基材(3)の表面に芳香剤(2)を含有する下塗り樹脂塗膜(6)を形成し、この下塗り樹脂塗膜(6)の表面に、さらに、50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜(42)を形成してなるもの(図4)が例示される。
【0018】
この出願の発明の機能性建材(1)において、50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)や樹脂塗膜(42)は、前記のとおり、芳香剤(2)の発散速度を適度に調節する作用を有するものである。一般に、気体や蒸気の膜への透過は、気体や蒸気の膜材料に対する溶解度と、気体や蒸気の膜材料中での拡散に依存することが知られている。したがって、この出願の発明の機能性建材(1)では、シート(41)や樹脂塗膜(42)の材質は、50〜500 g/m224hの透湿量を実現できるものであれば特に限定されない。
【0019】
具体的には、シート(41)としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリウレタン(PU)、フッ素樹脂(PFA、PCTFE)等の樹脂製シートや、これらの樹脂でコーティングされた紙、不織布などが例示される。シート(41)の材質については、透湿量だけでなく、所望の表面特性(防水性、防汚性、強度など)を考慮して適宜選択すればよい。また、このようなシート(41)は、前記の各種樹脂からなるフィルムのような緻密膜であってもよいし、紙、不織布、大きな側鎖を有する剛直な高分子からなるフィルム(例えばセロハン、ポリテトラフルオロエチレンテープ等)のような多孔膜であってもよい。このようなシート(41)は、接着剤(5)を介して基材(3)に接着されてもよいし(図1a、図3)、熱融着等により接着されてもよい(図1b)。
【0020】
さらに、これらのシート(41)の膜厚もとくに限定されない。一般に、気体や蒸気の膜への透過量は、膜厚に大きく影響されることから、この出願の発明の機能性建材(1)では、シート(41)の膜厚を変更することにより透湿量を50〜500
g/m224hに調整することができる。
【0021】
一方、樹脂塗膜(42)としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、フッ素系等の塗料を塗布して得られる各種の樹脂塗膜(42)が考慮される。このとき、塗料の塗装方法は特に限定されず、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピング等の一般的な手法が適用できる。また、シート(41)と同様に、樹脂塗膜(42)においてもその膜厚は透湿量に直接影響することから、塗料の塗布量は、樹脂塗膜(42)の透湿量を50〜500 g/m224hに調整するために適宜変更できる。
【0022】
一方で、一般に、建材には、その用途に応じて防水性、耐水性、防汚性、意匠性、強度等の特性が求められ、そのような特性を付与するために、しばしばシートやフィルムの貼付けや塗装が施される。そして、これらのシートやフィルムや塗装では、必要な特性を発揮するために、材質だけでなく、膜厚もある程度規定される場合がある。そのため、50〜500 g/m224hの透湿量を実現する上で、シート(41)や樹脂塗膜(42)の膜厚を十分に薄くできない場合がある。
【0023】
そこで、この出願の発明の機能性建材(1)では、機能性建材(1)の表面に配設されるシート(41)や樹脂塗膜(42)に、孔径が1 mm以下の細孔(7)を設け、その深さや数によって透湿量を50〜500 g/m224hに調整してもよい(図5)。このような細孔(7)の深さはとくに限定されないが、例えば、深さ1〜5 mm程度とすることができる。また、細孔(7)は、芳香剤(2)を含有する層まで到達するもの(図5a)であってもよいし、シート(41)や樹脂塗膜(42)を貫かずに膜厚のみを部分的に減少させるもの(図5b)であってもよい。さらに、細孔(7)の数についても、透湿量を50〜500 g/m224hに調整できればよく、特に限定されないが、好ましくは細孔(7)の総面積が10 cm2/m2基材以下となるようにする。細孔(7)の総面積が10 cm2/m2基材より大きい場合、意匠性、耐傷性、防汚性等の表面特性が低下する恐れがある。
【0024】
また、このような細孔(7)は、針やピン等を適当な深さまで刺すことにより形成できるが、長さと径を調整した針やピン等を複数設置したロールを用いることにより簡便に多数の細孔(7)を規則的に設けることもでき、好ましい。
【0025】
この出願の発明の機能性建材(1)において、基材(3)は、一般に天井、壁、床等の内装材、外壁、屋根等の外装材、キッチン、トイレ、洗面、浴室等の水回り、扉、障子、襖等の建具、窓、収納部材、およびそれらの周辺部材として用いられる各種のものから選択され、とくに限定されない。具体的には、木材、合板、MDF、パーティクルボード、インシュレーションボード等の木質基材、FRP、人工大理石、樹脂成型品等のプラスチック基材、石膏ボード、珪酸カルシウム板、ロックウールボード、各種セメント板、スレート等の無機質基材が挙げられる。
【0026】
また、この出願の発明の機能性建材(1)において、芳香剤(2)は、各種の天然芳香成分あるいは合成芳香成分から選択される1種以上の芳香成分を含有するものであればよく、とくに限定されない。具体的には、ヒノキ、ヒバ等の樹木系、レモン、ベルガモット等の柑橘系、ストロベリー、ラズベリー等の果実系、ジャスミン、ラベンダー、ローズ等の草花系、ペパーミント、スペアミント等のミント系、さらには、い草等の芳香を発散するものが例示される。このような芳香剤(2)は、植物の根、茎、枝、表皮、花びら、種子、果実等から水蒸気蒸留や圧搾法、冷浸法、パーコレーション法、溶剤抽出法等により抽出された精油であってもよく、また、精油から単離された、あるいは合成のモノテルペン炭化水素類、セスキテルペン炭化水素類、モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、酸化物類、含窒素化合物類等の芳香成分を調合したものであってもよい。もちろん、このような精油や芳香成分は、水やアルコール等の溶剤で希釈してもよい。
【0027】
この出願の発明の機能性建材(1)において、芳香剤(2)は、前記のとおり、基材(3)、接着剤(5)または下塗り樹脂塗膜(6)に含有されているものである。例えば、芳香剤(2)を基材(3)に含有させるためには、基材(3)の原料中に予め芳香剤(2)を添加し、成形してもよいし、芳香剤(2)を水やアルコール等の適当な溶剤に溶解あるいは分散させ、それを基材(3)に含浸させてもよい。基材(3)への芳香剤(2)溶液または分散液の含浸は、塗布やディッピングにより行うことができる。また、このような芳香剤(2)溶液あるいは分散液には、芳香剤(2)以外に、アクリル系樹脂等のバインダー成分や酸化チタン等の顔料、骨材、分散剤、粘度調整剤、防カビ剤、抗菌剤、撥水剤等の適当な添加剤を含有していてもよい。
【0028】
一方、芳香剤(2)を接着剤(5)や下塗り樹脂塗膜(6)に含有させるためには、接着剤(5)や下塗り塗料に芳香剤(2)を添加、混合すればよい。この場合にも、芳香剤(2)は、水やアルコール等の適当な溶剤に溶解あるいは分散させてもよく、このような芳香剤(2)溶液または分散液には、前記のとおり、各種の添加剤が適宜添加されていてもよい。
【0029】
さらに、この出願の発明の機能性建材(1)では、基材(3)や接着剤(5)、あるいは下塗り塗料への芳香剤(2)の分散性を高めるために、芳香剤(2)をマイクロカプセルに内包させてもよい。このようなマイクロカプセルとしては、無機質の中空多孔質マイクロカプセルや、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の熱可塑性樹脂製の中空マイクロカプセルや多孔質マイクロビーズ、あるいは、不飽和ポリエステル、ポリエポキシド等の熱硬化性樹脂製の中空マイクロカプセルや多孔質マイクロビーズが例示される。
【0030】
また、芳香剤(2)をマイクロカプセルに内包させることにより、基材(3)や接着剤(5)、あるいは下塗り塗料への芳香剤(2)の分散性が高まるだけでなく、基材(3)や接着剤(5)、あるいは下塗り塗料に添加できる芳香剤(2)の量が増え、好ましい。基材(3)や接着剤(5)、あるいは下塗り塗料に添加される芳香剤(2)の量は限定されないものの、あまり少なければ芳香が得られないことから、なるべく多くすることが望ましい。しかし、実際には、あまり大量の芳香剤(2)を添加すれば機能性建材(1)の物性が低下してしまうため、添加できる芳香剤(2)の量は限られてしまう。そこで、芳香剤(2)をマイクロカプセルに内包させることにより、芳香剤(2)そのものを添加するよりも多くの芳香剤(2)が添加できるようになるのである。
【0031】
さらに、芳香剤(2)をマイクロカプセルに内包させることにより芳香剤(2)に徐放性も付与され、より長期に渡り芳香を持続できるようにもなる。
【0032】
芳香剤(2)を内包させるマイクロカプセルの粒径は、とくに限定されないが、芳香剤(2)を十分に内包でき、かつ、基材(3)、接着剤(5)および下塗り塗料への分散性を高めるためには、3〜30μmとすることが望ましい。
【0033】
さらに、このようなマイクロカプセルは、水や有機溶媒に分散させたものであってもよい。中でも乳化剤により水に分散させたマイクロカプセルエマルジョンとすることが望ましい。このようなエマルジョンを、前記のとおりに基材(3)に塗布したり、接着剤(5)や下塗り塗料に混合したりすることにより、芳香剤(2)を含有する基材(3)、接着剤(5)、下塗り樹脂塗膜(6)等が得られる。もちろん、エマルジョンには、前記同様に各種の添加剤を加えてもよい。
【0034】
このようなマイクロカプセルエマルジョンを芳香剤(2)として使用する場合には、基材(3)、接着剤(5)、下塗り樹脂塗膜(6)に対して、例えば、マイクロカプセル固形分量で5〜30 g/m2の範囲で含有させることができる。芳香剤(2)の含有量がマイクロカプセル固形分量で5 g/m2未満の場合には、機能性建材(1)の芳香性が不十分となり、持続性が期待できない。一方、芳香剤(2)の含有量がマイクロカプセル固形分量で30 g/m2より多い場合には、接着性や塗膜密着性が低下する恐れがある。
【0035】
この出願の発明の機能性建材(1)は、以上のようにして調製された芳香剤(2)を含有する基材(3)に、前記のとおりの50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)を接着することにより得られる。また、この出願の発明の機能性建材(1)は、基材(3)に、以上のようにして調製された芳香剤(2)を含有する接着剤(5)を塗布し、その上に50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)を接着しても得られる。これらの機能性建材(1)では、基材(3)またはシート(41)に、接着剤(5)を塗布してもよいし、予め接着剤付きのシート(41)を準備してもよい。また、接着剤(5)の成分はとくに限定されないが、例えば、透湿性の高いデンプン系接着剤やアクリル系あるいはアクリル変性系接着剤が好ましく例示される。
【0036】
さらに、この出願の発明の機能性建材(1)は、芳香剤(2)を含有する基材(3)の表面に、前記のとおりの50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜(42)を形成したり、基材(3)の表面に、芳香剤(2)を含有する下塗り樹脂塗膜(6)を形成し、さらに50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜(42)を形成したりしても得られる。
【0037】
この出願の発明の機能性建材(1)では、最表面に50〜500 g/m224hの透湿量を有するシート(41)または樹脂塗膜(42)を有することにより、基材(3)、接着剤(5)および下塗り樹脂塗膜(6)に含まれる芳香剤(2)の発散速度が制限され、長期に渡り芳香を発散し続けることが可能となる。
【0038】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0039】
【実施例】
<実施例1>
ロックウールボード(厚さ9 mm)を基材とし、これに芳香性マイクロカプセルエマルジョン(松本油脂製薬製;K−500;ヒノキチオール含有マイクロカプセル30 %含有)をマイクロカプセル固形分量で18 g/m2でロール塗布し、常温で乾燥して基材に含浸させた。
【0040】
次いで、アクリル樹脂変性エマルジョンを固形分20 g/m2で塗布し、表面コーティングされた紙(透湿量:210 g/m2・24h)を接着して機能性建材を得た。
【0041】
得られた機能性建材を5 cm×5 cmに切断し、表面以外をアルミテープでシールした後、1 Lの容器内に設置し、発散される芳香成分の発散速度をガスカウンター(新コスモス電機製XP−308)で測定した。
【0042】
結果を表1および図6に示した。
<実施例2>
ロックウールボード(厚さ9 mm)を基材とし、これに芳香性マイクロカプセルエマルジョン(松本油脂製薬製;K−500;ヒノキチオール含有マイクロカプセル30 %含有)をマイクロカプセル固形分量で25 g/m2混合したアクリル樹脂変性エマルジョンを、固形分20 g/m2で塗布し、ポリプロピレン(PP)シート(透湿量:390 g/m2・24h)を接着して機能性建材を得た。
【0043】
また、実施例1と同様の方法により芳香成分の発散速度を測定した。
【0044】
結果を表1および図6に示した。
<実施例3>
ロックウールボード(厚さ9 mm)を基材とし、これに芳香性マイクロカプセルエマルジョン(松本油脂製薬製;K−500;ヒノキチオール含有マイクロカプセル30 %含有)をマイクロカプセル固形分量で36 g/m2でロール塗布し、常温で乾燥して基材に含浸させた。
【0045】
次いで、アクリルエマルジョン塗料を固形分50 g/m2で塗布し、乾燥して樹脂塗膜(透湿量:180 g/m2・24h)を得た。
【0046】
得られた機能性建材について、実施例1と同様の方法により芳香成分の発散速度を測定し、結果を表1および図6に示した。
<実施例4>
ロックウールボード(厚さ9 mm)を基材とし、これに芳香性マイクロカプセルエマルジョン(松本油脂製薬製;K−500;ヒノキチオール含有マイクロカプセル30 %含有)をマイクロカプセル固形分量で40 g/m2混合したアクリルエマルジョン塗料を固形分50 g/m2で塗布し、下塗り樹脂塗膜を得た。
【0047】
次いで、その上にアクリルエマルジョン塗料を固形分120 g/m2で塗布し、樹脂塗膜(透湿量:110 g/m2・24h)を得た。
【0048】
また、実施例1と同様の方法により芳香成分の発散速度を測定した。
【0049】
結果を表1および図6に示した。
<実施例5>
実施例3において、アクリルエマルジョン塗料の塗布量を固形分200 g/m2として樹脂塗膜を得た後、ピンロールにより塗膜を貫通するφ0.7 mmの細孔を約1200個/m2形成した(透湿量:60 g/m2・24h)以外は、同様の方法により機能性建材を得た。また、同様の方法により芳香成分の発散速度を測定し、結果を表1および図6に示した。
<比較例1>
実施例1において、表面コーティングされた紙に代わり、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(透湿量:20 g/m2・24h)を接着した以外は、同様の方法により機能性建材を得た。また、同様の方法により芳香成分の発散速度を測定した。
【0050】
結果を表1および図6に示した。
<実施例2>
実施例4において、アクリルエマルジョン塗料の塗布量を固形分250 g/m2とし、樹脂塗膜(透湿量:30 g/m2・24h)を得た以外は、同様の方法により、機能性建材を得た。
【0051】
また、実施例1と同様の方法により芳香成分の発散速度を測定した。
【0052】
結果を表1および図6に示した。
<比較例3>
実施例3において、アクリルエマルジョン塗料を塗布せずに機能性建材(透湿量:600 g/m2・24h)を得た。さらに、同様の方法により芳香成分の発散速度を測定し、結果を表1および図6に示した。
【0053】
【表1】
表1および図6より、表面に透湿量50〜500 g/m224hのシートや樹脂塗膜を有する機能性建材では、芳香剤を基板に含浸させた場合(実施例1、3、5)、芳香剤を接着剤に混合した場合(実施例2)、芳香剤を下塗り樹脂塗膜に含有させた場合(実施例4)のいずれにおいても、芳香剤の徐放性が確認された。また、芳香は居室等の空間において心地よいと感じられる程度の適度なものであった。
【0054】
さらに、表面に形成された樹脂塗膜が厚い場合(実施例5)であっても、細孔を設けることにより、透湿度を調整できることが確認された。これにより、厚い樹脂塗膜を必要とする機能性建材においても、適度な芳香発散速度を付与することができる。
【0055】
したがって、この出願の発明の機能性建材では、長期に渡り適度な芳香が持続して発散されることが示された。
【0056】
一方、シートや樹脂塗膜の透湿量が50 g/m224hよりも小さい場合(比較例1、2)には、芳香剤の含有部位に関わらず、ほとんど芳香が発散されないことが確認された。
【0057】
また、表面に透湿量50〜500 g/m224hのシートや樹脂塗膜を有さない従来の機能性建材(比較例3)では、芳香剤が徐放性を有さず、芳香の発散速度が速かった。したがって、芳香が短期間で失われることが示唆された。
【0058】
【発明の効果】
この出願の発明により、芳香性を有する機能性建材が提供される。この出願の発明の機能性建材においては、表面に透湿量50〜500 g/m224hのシートや樹脂塗膜を有することにより、芳香速度が適度に調整され、長期に渡り芳香を維持できることから、有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図2】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図3】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図4】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図5】この出願の発明の機能性建材の一例を示した概略模式図である。
【図6】この出願の発明の実施例において、機能性建材からの芳香剤の発散速度を示した図である。
【符号の説明】
1 機能性建材
2 芳香剤
3 基材
41 シート
42 樹脂塗膜
5 接着剤
6 下塗り樹脂塗膜
7 細孔
Claims (6)
- 長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、芳香剤を含有する基材の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有するシートが接着されていることを特徴とする機能性建材。
- 長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、芳香剤を含有する基材の表面に、50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜が形成されていることを特徴とする機能性建材。
- 長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、基材の表面に芳香剤を含有する接着剤を塗布し、該接着剤により50〜500 g/m224hの透湿量を有するシートを接着してなることを特徴とする機能性建材。
- 長期に渡り芳香性を持続できる機能性建材であって、基材の表面に芳香剤を含有する下塗り樹脂塗膜が形成され、該下塗り樹脂塗膜の表面に、さらに50〜500 g/m224hの透湿量を有する樹脂塗膜が形成されていることを特徴とする機能性建材。
- 芳香剤は、マイクロカプセルに内包されている請求項1ないし4のいずれかの機能性建材。
- 機能性建材表面に孔径1 mm以下の細孔が形成されている請求項1ないし5のいずれかの機能性建材。
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-
2003
- 2003-04-17 JP JP2003113306A patent/JP2004314503A/ja active Pending
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