JP2004314263A - 燃焼式動力工具 - Google Patents

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JP2004314263A JP2003114010A JP2003114010A JP2004314263A JP 2004314263 A JP2004314263 A JP 2004314263A JP 2003114010 A JP2003114010 A JP 2003114010A JP 2003114010 A JP2003114010 A JP 2003114010A JP 2004314263 A JP2004314263 A JP 2004314263A
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康雄 佐々木
Haruhisa Fujisawa
治久 藤澤
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Abstract

【課題】シール材やハウジングの損傷を未然に防止して工具寿命の向上を図り、作業効率と操作性の向上を図ることができ、小型化が可能な燃焼式動力工具の提供。
【解決手段】可燃性ガスと空気の混合気の燃焼にともなう燃焼室枠11やシリンダ20の温度上昇を樹脂製ハウジング2内に設けられた温度センサが検出する。検出された温度が設定温度を超えている間は、ファン14の回転が継続されて、強制冷却が行われ、燃焼室枠11をシールするためのシール材19、24や、ハウジング2の熱損傷が防止できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は燃焼式動力工具に関し、特に、ガスボンベに封入された液化ガスを燃焼室内に噴射させ、空気と混合し着火することにより、ピストンを駆動する動力を発生させ、釘等を打込む燃焼式打込み工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の燃焼式動力工具は、ハウジングと、ハンドルと、トリガスイッチと、ヘッドキャップと、燃焼室枠と、プッシュレバーと、シリンダと、ピストンと、ドライバブレードと、モータと、ファンと、ガスボンベと、点火プラグと、排気逆止弁と、マガジンと、テールカバーとを主に備えている。ヘッドキャップはハウジングの一端を塞いており、ハンドルはハウジングに固定されトリガスイッチが付設されると共に図示せぬ電池が内蔵される。燃焼室枠は、ハウジング内においてハウジングの長手方向に移動可能に設けられ、反ヘッドキャップ方向にバネ付勢されるが、バネの付勢力に抗して一端がヘッドキャップに当接可能に設けられる。
【0003】
プッシュレバーは、ハウジングの他端において移動可能に設けられ、燃焼室枠と連接されている。シリンダは燃焼室枠に連通可能に位置してハウジングに固定され、燃焼室枠の移動を案内すると共に排気穴が形成されている。ピストンはシリンダに対して往復摺動可能に設けられ、燃焼室枠の一端がヘッドキャップに当接したとき、ヘッドキャップ、燃焼室枠、シリンダのヘッドキャップ側端部と共に燃焼室を画成する。ドライバブレードは、ピストンの反燃焼室側からハウジングの他端部方向に延設されている。モータはヘッドキャップに支持され、ファンはモータに固定されて燃焼室内に位置する。ファンは、モータにより駆動されて燃焼室内で燃焼ガスと空気を混合して燃焼を促進させると共に、燃焼室枠がヘッドキャップから離間したときに、外気をハウジング内に導入して燃焼室枠内を掃気し、またシリンダの外周側を冷却する役割を果たす。ガスボンベはハウジング内に収容され、ヘッドキャップのガス通路を通じて燃焼室内に可燃性ガスとして噴射される液化ガスを内含する。点火プラグは燃焼室に臨み可燃性ガスと空気との混合気を着火する。排気逆止弁は排気穴を選択的に遮蔽する。
【0004】
マガジンは、ハウジングの他端部側に設けられて釘等の止具を収容する。テールカバーは、マガジンの止具をドライバブレードに対向する位置に給送するためにマガジンとプッシュレバーとの間に設けられている。
【0005】
燃焼室枠がヘッドキャップに当接したときに燃焼室を密閉するために、燃焼室枠の上部と密着するヘッドキャップの所定面と、燃焼室枠の下部と密着するシリンダのヘッドキャップ側端部とには、シール材(シールリング)がそれぞれ設けられている。
【0006】
プッシュレバーを工作物に押しつけると、燃焼室が画成された状態でハウジングに装着されたガスボンベから燃焼室内に液化ガスが噴射され、ファンにより空気と可燃性ガスが攪拌混合され、この状態でトリガスイッチをオン操作すると、点火プラグによる点火によって混合気が爆発燃焼され、ピストンを駆動してドライバブレードを介して木材等の工作物に釘が打込まれる。爆発燃焼後、所定時間が経過するまでは、燃焼室枠はヘッドキャップに当接した状態が維持され、燃焼ガスの排気後の排気逆止弁の閉鎖によって燃焼室内が密閉されるとともに、温度低下による燃焼室内の圧力低下により、燃焼室側で熱真空が得られ、ピストン上下間の圧力差によりピストンを上昇させることができる。(例えば特許文献1乃至5参照。)。
【特許文献1】
特公昭64−9149号公報
【特許文献2】
特公平1−34753号公報
【特許文献3】
特公平3−25307号公報
【特許文献4】
特公平4−48589号公報
【特許文献5】
特開平8−216052号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の燃焼式打込み工具においては、燃焼室を構成するシリンダ、燃焼室枠、ヘッドキャップや燃焼室内に配置されるファンはアルミ材により構成され、シール材等はゴム製Oリングであり、ハウジングはプラスチックス材により構成されるのが一般的である。かかる場合に、比較的短い時間間隔で釘打ち作業を連続的に続けてゆくと、ファンの回転による掃気時のシリンダ外周への空冷能力を越えて、燃焼室枠とシリンダ壁での吸熱により燃焼室枠とシリンダが徐々に熱くなってゆき、ついにはオーバーヒート状態となる。そのため燃焼室内の残燃焼ガスの冷却効果が低下して十分な熱真空が得られなくなるので、打撃後のピストンの戻りが遅くなる。その結果一連の動作サイクル速度が低下して、作業効率が悪化することになる。
【0008】
この加熱状態のまま更に動作を継続すると、燃焼室を密閉するシール材がゴム材であるため、熱により損傷してシール性が低下し、燃焼室と外気が連通した状態になって燃焼ガスに着火しなくなり、不発となる動作不良が発生する。またハウジングもプラスチック製であるため、熱により変形、損傷するおそれがある。シール材やハウジングが損傷した場合には、全体を分解してこれらを交換しなければならない。更に温度上昇が進むと、燃焼室内の空気が膨張し、燃焼に必要な酸素量の低下を招き、打込みエネルギーが低下する。冷却効果を高めるために補助ファンを設けると、その分設置スペースが必要となり小形化に支障となる。
【0009】
そこで本発明は、シール材やハウジングの損傷を未然に防止して工具寿命の向上を図り、作業効率と操作性の向上を図ることができ、小型化が可能な燃焼式動力工具を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため本発明は、ハウジングと、ハウジングから延び、トリガスイッチが設けられたハンドルと、該ハウジングの一端を塞ぎ、可燃性ガス通路が形成されたヘッド部と、該ヘッド部に設けられたモータと、該ハウジングの下方に設けられ工作物への押圧時に移動可能なプッシュレバーと、該ハウジング内に固定して設けられ、排気穴が形成されたシリンダと、該シリンダの軸方向に該シリンダに対して往復摺動可能なピストンと、該ハウジング内において移動可能に案内され、該プッシュレバーの移動に連動して該ヘッド部に当接、離間し、該ヘッド部、該シリンダ、該ピストンと共に燃焼室を画成する燃焼室枠と、該ピストンから反燃焼室方向に延びるドライバブレードと、該燃焼室枠がヘッド部に当接したとき、該燃焼室枠と該ヘッド部間をシールし、また該燃焼室枠と該シリンダとの間をシールするシール部と、該燃焼室内に回転可能に設けられ該モータにより回転駆動されるファンと、該燃焼室内の可燃性ガスと空気との混合気を着火する該燃焼室に臨む点火プラグと、該排気穴を開閉するように設けられた排気逆止弁とを備え、該可燃性ガスが該可燃性ガス通路を介して該燃焼室に供給され、該点火プラグの点火動作により爆発燃焼して該ピストンを移動させる燃焼式動力工具において、該ハウジング内に設けられ、該シリンダ又は該燃焼室枠の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段によって検出された検出温度が設定値を超えると、該シリンダ又は該燃焼室枠の温度が設定値以下になるまで該モータを駆動して該ファンを回転制御する冷却制御手段とを有する燃焼式動力工具を提供している。
【0011】
ここで、該冷却制御手段は、検出温度が設定値を超えた時に、検出温度が設定値以下になるまで該ファンの回転を続行させるファン回転続行手段を備えている。このような冷却制御手段に代えて、又は、このような冷却制御手段は、検出温度が設定値以下の時には該ファンを第1の回転数で回転させ、検出温度が設定値を超えたときに検出温度が設定値以下になるまで該ファンを第1の回転数より高い第2の回転数で回転させるファン回転数制御手段が設けられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明による燃焼式動力工具を燃焼式打込み工具に適用した実施の形態について図面を参照して説明する。燃焼式打込み工具1は、外枠体を構成するハウジング2を有し、ハウジング2は主ハウジング部2Aと、主ハウジング部2Aの長手方向に沿って主ハウジング部2Aに並設されたボンベ室部2Bとを有する。主ハウジング部2Aの上部には図示せぬ吸気口が形成されると共に、下部には図示せぬ排気口が形成されている。
【0013】
主ハウジング2Aの上部には、ヘッドカバー4が取付けられており、ボンベ室部2B内には可燃焼ガスを内含するガスボンベ5が着脱自在に収容される。ボンベ室部2Bからはハンドル7が延設される。ハンドル7は、トリガスイッチ6を備えると共に、図示せぬ電池例えば7.2ボルト電池を内蔵する。また主ハウジング2Aとボンベ室部2Bの下方には、図示しない釘を装填したマガジン8と、マガジン8内の釘を給送案内し所定位置にセットするためのテールカバー9が設けられている。
【0014】
主ハウジング2Aの下端には、テールカバー9の釘セット位置に対応してプッシュレバー10が移動可能に支持され後述する燃焼室枠11に固定された連結部材12と連接されている。プッシュレバー10の先端が工作物Wに当接しハウジング2全体を工作物方向に押圧したとき、プッシュレバー10の上部が主ハウジング部2A内に後退可能である。
【0015】
主ハウジング2Aの上端にはその上端開口を塞ぐためのヘッド部たるヘッドキャップ13が固定され、ヘッドキャップ13にはファン14を回転軸で固定したモータ3がバネ3Aを介して支持されると共に、トリガスイッチ6により点火される点火プラグ15が収納把持される。また主ハウジング部2A内には工具本体が木材Wに押付けられて燃焼室枠11がストローク上端にあることを検出するためのヘッドスイッチ16(図2)が設けられている。プッシュレバー10が所定位置まで上昇したときに、ヘッドスイッチ16がオン動作して、モータ3の回転が開始されファン14の回転を開始するように構成される。なおファン14は、毎分約12,000回転するファンである。
【0016】
ヘッドキャップ13のボンベ室部2B側内には燃料通路たる噴射通路17が形成され、噴射通路17の一端はヘッドキャップ13の下端面に開口する噴射口18をなし、他端側はガスボンベ5と接続されるガスボンベ接続部をなす。またヘッドキャップ13には、後述する燃焼室枠11の上部がヘッドキャップ13に当接したときに、ヘッドキャップ13と燃焼室枠11間をシールするためのOリングで構成された第1シール材19が装着されている。
【0017】
主ハウジング2A内には、主ハウジング2Aの長手方向に移動可能で、上端がヘッドキャップ13の下端面に当接可能な燃焼室枠11が設けられる。上述したように、燃焼室枠11の下端部には上述した連結部材12が固定されてプッシュレバー10に連接されているので、プッシュレバー10の移動に伴って燃焼室枠11も移動する。そして燃焼室枠11の内周面に当接して燃焼室枠11の移動を案内するシリンダ20が、主ハウジング部2Aに固定され、シリンダ20の下端面と連結部材12との間には圧縮コイルスプリング22が介装されて燃焼室枠11を反ヘッドキャップ13方向に付勢している。シリンダ20の下部付近には上述した主ハウジング部2Aの排気口と連通可能な排気穴21が形成されている。また図示せぬ逆止弁が排気穴21を選択的に塞ぐように設けられる。更に、シリンダ20の底部にはバンパ23が設けられている。またシリンダ20の上部には、燃焼室枠11がヘッドキャップ13に当接したときに、燃焼室枠11の下部側内周面とシリンダ20上部外周面との間をシールするOリングよりなる第2シール材24が装着されている。また、シリンダ20の外周面には、その温度を検出するためにサーミスタ、熱電対、又はバイメタル等からなる温度センサ29が設置されている。
【0018】
シリンダ20内には、シリンダ20に対して往復摺動可能なピストン25が設けられ、燃焼室枠11の上端がヘッドキャップ13に当接したとき、ヘッドキャップ13、燃焼室枠11、シリンダ20のヘッドキャップ部側端部、ピストン25、第1、第2シール材19,24とにより燃焼室26が画成される。そして燃焼室枠11がヘッドキャップ13から離間したときは、ヘッドキャップ13と燃焼室枠11の上端との間に外気と通じる第1流路S1が生じ、また燃焼室枠11の下端部とシリンダ20の上端部との間に第1流路S1に続く第2流路S2が生じる。この第2流路S2は、シリンダ20の外周面側に燃焼ガスや新たな空気を通過させ、主ハウジング部2Aの図示せぬ排出口から排出される。
【0019】
燃焼室枠11の燃焼室26を画成する部分には、複数のリブ27が燃焼室枠11の軸方向に延び、半径方向内方に突出して設けられている。このリブ27はファン14の回転と相まって、燃焼室26内での空気と可燃性ガスとの攪拌混合を促進させるためのものである。上述した図示せぬ吸気口は燃焼室26内に空気を供給するために形成され、排気穴21や排気口からは、燃焼室26の燃焼ガスを排出する。
【0020】
ドライバブレード28がピストン25の反燃焼室26側から主ハウジング部2Aの下端部方向に延びて設けられる。ドライバブレード28はテールカバー9内の釘に衝接可能な同軸位置にあり、ピストン25が下降したとき、ピストン25は上述したバンパ23に突き当たって停止する。
【0021】
ファン14、点火プラグ15、噴射口18は全て燃焼室26内に配置又は開口している。ファン14はその回転により、燃焼室枠11がヘッドキャップ13と当接位置にあるときに空気と可燃性ガスとを攪拌混合させ、点火後に乱流燃焼を生じせしめて燃焼を促進させ、燃焼室枠11がヘッドキャップ13から離間して、第1、第2流路S1、S2が生じたとき、燃焼室26内の燃焼ガスを掃気すると共にシリンダ20を冷却するという3つの機能を果たす。
【0022】
図2は、本実施の形態におけるファン14の駆動・非駆動、点火プラグ15の点火を実行する制御回路を示す。トリガスイッチ6とヘッドスイッチ16は、第1OR回路41に接続され、第1OR回路41の出力端は、第2OR回路42の一方の入力端に接続され、第2OR回路42はファン14と接続するファン駆動回路43に接続されている。よって、トリガスイッチ6又はヘッドスイッチ16の少なくとも一方のオン動作により、ファン駆動回路43が動作して、モータ3の回転を開始させてファン14の回転が開始される。
【0023】
ファンタイマー44が第1OR回路41の出力端と第2OR回路42の他方の入力端間に接続される。ファンタイマー44は、トリガスイッチ6とヘッドスイッチ16の両方がオフになったときに起動してHレベルとなり、起動後の所定時間経過後にLレベルとなってファン14の回転を停止させるためのものである。従って、ファンタイマー44がHレベル状態のときは第2OR回路42を介してファン駆動回路43が駆動され、ファン14の回転が維持される。また、ファン14の回転が開始した後に、トリガスイッチ6とヘッドスイッチ16が共にオフ状態とならない限りは、ファン14の回転は継続される。
【0024】
温度センサ29は、ファンタイマー44に接続され、シリンダ20の温度が設定温度以下の時はLレベル信号を、シリンダの温度が設定温度を超えたときHレベル信号をファンタイマー44に出力するように構成される。なお設定温度とは、例えばゴム製のシール材19、24の熱変形や損傷が生じない上限温度とする。
ここで、ファンタイマー44は、温度センサ29からHレベル信号が入力されている間は、常にHレベル状態が維持されて、ファン14の回転が継続するように構成されている。なお、温度センサ29はトリガスイッチ6又はヘッドスイッチ16の少なくとも一方のオン動作により温度検出動作を開始する。
【0025】
AND回路48の一方の入力端がトリガスイッチ6に接続され、他方の入力端がヘッドスイッチ16に接続される。そしてAND回路48の出力端が、点火プラグ15を駆動する点火回路50に接続している。従って、トリガスイッチ6とヘッドスイッチ16が共にオンであるときにのみ、AND回路48から点火回路50に動作信号が出力されて、点火プラグ15が点火する。
【0026】
次に本実施の形態による燃焼式動力工具1の動作を図3のタイミングチャートと共に説明する。非作動の状態では、圧縮コイルスプリング22の付勢力により、プッシュレバー10は下方に付勢されてテールカバー9下端より突出している。このとき燃焼室枠11は連結部材12を介してプッシュレバー10に連接されているので、燃焼室枠11の上端はヘッドキャップ13と離間し、また燃焼室枠11の燃焼室26を画成する部分と、シリンダ20の上端部とも離間して、第1流路S1、第2流路S2が提供される。このときピストン25は、シリンダ20内の上死点位置に停止している。
【0027】
この状態でハンドル7を把持し、プッシュレバー10を木材等の工作物に押し付けると、プッシュレバー10が圧縮コイルスプリング22の付勢力に抗して、上昇し、同様にプッシュレバー10と連接した燃焼室枠11も上昇し、上述した流路S1、S2が閉じられて、シール材19、24により燃焼室26が密封される(t1)。
【0028】
またプッシュレバー10の移動に伴って、図示しないカムによりガスボンベ5全体をヘッドキャップ13方向に傾斜させ、ガスボンベ5の図示せぬ噴射ロッドがヘッドキャップ13のガスボンベ接続部に押しつけられて燃焼室26内にガスボンベ5の液化ガスが噴射口18より1回だけ噴射される。
【0029】
更に、プッシュレバー10の移動に伴って燃焼室枠11がストローク端まで上昇すると、ヘッドスイッチ16がオンとなり(t2)、その結果ファン14の回転が開始する。ファン14が密封空間となった燃焼室26内で回転することにより、燃焼室26内に突出したリブ27と相まって、噴射された可燃性ガスが燃焼室26内の空気と攪拌混合される。
【0030】
温度センサ29で検出された温度が設定温度以下のときには、かかる状態でハンドル7のトリガスイッチ6をオンすると、点火プラグ15がスパークし、混合ガスに着火する。このときファン14は回転を維持しているので、混合気の乱流燃焼が促進され、動力工具の出力向上が得られる。また燃焼・膨張したガスはピストン25を下方へ移動させ、ピストン25がバンパ23に衝接するまでテールカバー9内の釘はドライバブレード28を介して工作物Wに打ち込まれる。
【0031】
ピストン25がシリンダ20の排気穴21を通過すると、燃焼ガスの圧力により図示せぬ逆止弁が付勢されて排気穴21を開き、燃焼ガスはシリンダ20の外部へ放出され主ハウジング部2Aの排気口から外部に排出される。そして燃焼ガスがシリンダ20外部へ放出され、シリンダ20及び燃焼室26内部が大気圧になった時点で逆止弁は閉じられる。シリンダ20及び燃焼室26内部に残った燃焼ガスは、燃焼後であるため高温であり、その熱がシリンダ20の内壁、燃焼室枠11の内壁から吸収されることで、燃焼ガスが急冷されて、ピストン25上部の閉じられた空間の圧力が低下して大気圧以下になる(熱真空という)。よってドライバブレード28側のシリンダ20内の圧力(大気圧)と燃焼室26側の内圧の圧力差により、ピストン25は初期の上死点位置に引き戻される。
【0032】
トリガスイッチ6をオフにし(t4)、工具1全体を工作物Wから持ち上げ、プッシュレバー10を工作物Wから離すと、プッシュレバー10と燃焼室枠11が圧縮コイルスプリング22の付勢力により下方に戻る。燃焼室枠11の下降により、流路S1、S2が提供でき、燃焼室26内の残燃焼ガスが掃気されて新鮮な空気と入れ換えられ、次の釘が打込める初期状態に戻る。
【0033】
トリガスイッチ6のオフ操作と燃焼室枠11の下降に伴い、ヘッドスイッチ16がオフになると(t5)、ファンタイマー44が起動され、起動後の所定時間経過後(t6−t5)にファン14の回転が停止される。換言すれば、ファン14はトリガスイッチ6をオフにしても、ヘッドスイッチ16のオフ後の所定時間回転を継続しているので、上述した通路S1、S2を通じてハウジング2の吸気口から新たな空気が取り込まれ、ハウジング排気口から燃焼後の空気が吐き出されて、燃焼室26内の空気が掃気される。所定時間経過後ファン14が停止して(t6)初期の静止状態となる。
【0034】
上記のような動作を連続的に繰返す釘打ち作業を続けていると、燃焼室枠11やシリンダ20等の温度は上昇してくる。そしてシリンダ20が設定温度を超えた場合には(t10)、ヘッドスイッチ16のオン、オフ、トリガスイッチ6のオン、オフ、燃焼室26の開閉については、t11乃至t15は、t1乃至t5とそれぞれ対応するが、温度センサ29はHレベル信号をファンタイマー44に出力し続け、ファンタイマー44のタイマ機能(t6―t5)が無効にされて、第2OR回路42及びファン駆動回路43を介してファン14は7.2ボルトの印加電圧で12,000rpmでの回転が継続される。このファン14の回転は、シリンダ20が十分冷却されて温度センサ29がLレベル信号を出力するまで(t17)継続される。温度センサ29が設定温度以下になったことを検出すると(t17)、ファンタイマー44の動作が停止され、通常の動作状態に戻る。
【0035】
上述した制御回路では、設定温度を超えたときにファンの回転を継続させ、設定温度以下になったときはファンの継続回転を停止させるので、ファンを回転し続けて設定温度を超えさせないようにする構成と比較して、電池の消耗を抑えることができる。
【0036】
図4は本発明の第2の実施の形態における燃焼式打込み工具のファン14、点火プラグ15の作動、非作動を実行するための制御回路図であり、図2に示される第1の実施の形態における制御回路と同一の素子は同一の番号を付して説明を省略する。第2の実施の形態では図示しない電池の電圧は9.6ボルトである。また制御回路では、電圧変換回路51が第2OR回路42の出力端とファン駆動回路43との間に接続されると共に、温度センサ29にも接続される。電圧変換回路51は、シリンダ20の壁面が設定温度以下にある時はファン14を通常の7.2ボルトの印加電圧で毎分12、000回転させ、シリンダ20の壁面が設定温度を超えた場合、設定温度以下になるまでファン14を9.6ボルトの印加電圧で、毎分約15、000回転以上に高速回転し続けて冷却を促進させるものである。温度センサ29とファンタイマー44の関係は第1の実施の形態と同じである。温度センサ29が設定温度以下になったことを検出すると、ファンタイマー44の動作が停止されると共に、電圧変換回路51はファン14を通常の7.2ボルトの印加電圧で毎分12、000回転させる動作状態に戻る。
【0037】
本発明による燃焼式動力工具は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上述した実施の形態では、温度センサ29はシリンダ20の外周面に設置されているが、燃焼室枠11の外周面に設置して、燃焼室枠11の温度を検出するようにしてもよいし、燃焼室26の温度を推定できる部位であればシリンダ20や燃焼室枠11に限定されない。
【0038】
また、上述した実施の形態では、温度センサ29が設定温度以上を検出しても引続き打込みが可能であるが、同一出願人による特願2003−75338号記載の発明のように、設定温度以下になるまでは打込みを停止させる制御を併用しても良い。更に、図2、図4において、トリガスイッチ6とヘッドスイッチ16とを互いに入れ替えてもよい。
【0039】
また、上述した実施の形態は、1回の釘打ち動作毎にトリガスイッチ6のオン、オフ動作が行われるが、本発明はトリガスイッチ6をオン状態に押圧したまま、プッシュレバー10を工作物に対して押圧、離反を繰返して工作物の異なる場所に釘打ち動作を連続的に行う連続式釘打ち機にも適用できる。かかる場合であっても、図2の制御回路図によれば、ヘッドスイッチかトリガスイッチのいずれか一方がオンすると、ファン14の回転を開始でき、両者がオフ状態になるとファンタイマー44の起動を開始できる。
【0040】
【発明の効果】
請求項1記載の燃焼式動力工具によればシリンダ又は燃焼室枠等の燃焼室温度を類推できる部位の温度を検出し、設定温度に達した時に、燃焼室を画成する部位が設定温度以下になるまでファンを回転させ続けるよう、冷却制御手段によってモータを回転制御してファンの回転制御がなされるので、異常な温度上昇によるシール材やハウジングの損傷を防止でき、打込み能力を落とすことなく作業効率・操作性の向上を図ることができる。また、冷却制御手段は、急冷が必要なときにのみファンの回転を制御するので、異常温度にならないように常時ファンを回転し続ける構成と比較して、電池の寿命を延ばすことができ、経済的である。
【0041】
請求項2記載の燃焼式動力工具によれば、冷却制御手段は、検出温度が設定値を超えた時に、検出温度が設定値以下になるまでファンの回転を続行させるのでシリンダや燃焼室枠を早期に冷却することができる。
【0042】
請求項3記載の燃焼式動力工具によれば、冷却制御手段は、検出温度が設定値以下の時には該ファンを第1の回転数で回転させ、検出温度が設定値を超えたときに検出温度が設定値以下になるまでファンを第1の回転数より高い第2の回転数で回転させるファン回転数制御手段を備えるので、シリンダや燃焼室枠を早期に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃焼式動力工具を燃焼式打込み工具に適用した実施の形態を示す模式的断面図であって、該工具が工作物から離間した状態を示す。
【図2】本発明の第1の実施の形態における燃焼式打込み工具のファン、点火プラグの作動、非作動を実行するためのブロック回路図。
【図3】本発明の第1の実施の形態における燃焼式打込み工具のヘッドスイッチとトリガスイッチのオン・オフ操作に伴うファン、点火プラグ、ピストン、燃焼室、ファンタイマー、温度センサの状態を示すタイミングチャートであり、(a)は温度センサで検出された温度が設定温度以下の場合、(b)は設定温度を超えた場合を示す。
【図4】本発明の第2の実施の形態における燃焼式打込み工具のファン、点火プラグの作動、非作動を実行するためのブロック回路図。
【符号の説明】
1:燃焼式打込み工具、 2:ハウジング、 2A:主ハウジング部、 2B:ボンベ室部、 3:モータ、 6:トリガスイッチ、 9:テールカバー、 10:プッシュレバー、11:燃焼室枠、 12:連結部材、 13:ヘッドキャップ、 14:ファン、 15:点火プラグ、 16:ヘッドスイッチ、 19:第1シール材、 20:シリンダ、 24:第2シール材、 25:ピストン、 26:燃焼室、 28:ドライバブレード、 29:温度センサ、 43:ファン駆動回路、 44:ファンタイマー、 48:AND回路、 50:点火回路、 51:電圧変換回路

Claims (3)

  1. ハウジングと、
    ハウジングから延び、トリガスイッチが設けられたハンドルと、
    該ハウジングの一端を塞ぎ、可燃性ガス通路が形成されたヘッド部と、
    該ヘッド部に設けられたモータと、
    該ハウジングの下方に設けられ工作物への押圧時に移動可能なプッシュレバーと、
    該ハウジング内に固定して設けられ、排気穴が形成されたシリンダと、
    該シリンダの軸方向に該シリンダに対して往復摺動可能なピストンと、
    該ハウジング内において移動可能に案内され、該プッシュレバーの移動に連動して該ヘッド部に当接、離間し、該ヘッド部、該シリンダ、該ピストンと共に燃焼室を画成する燃焼室枠と、
    該ピストンから反燃焼室方向に延びるドライバブレードと、
    該燃焼室枠がヘッド部に当接したとき、該燃焼室枠と該ヘッド部間をシールし、また該燃焼室枠と該シリンダとの間をシールするシール部と、
    該燃焼室内に回転可能に設けられ該モータにより回転駆動されるファンと、
    該燃焼室内の可燃性ガスと空気との混合気を着火する該燃焼室に臨む点火プラグと、
    該排気穴を開閉するように設けられた排気逆止弁とを備え、該可燃性ガスが該可燃性ガス通路を介して該燃焼室に供給され、該点火プラグの点火動作により爆発燃焼して該ピストンを移動させる燃焼式動力工具において、
    該ハウジング内に設けられ、該シリンダ又は該燃焼室枠の温度を検出する温度検出手段と、
    該温度検出手段によって検出された検出温度が設定値を超えると、該シリンダ又は該燃焼室枠の温度が設定値以下になるまで該モータを駆動して該ファンを回転制御する冷却制御手段とを有することを特徴とする燃焼式動力工具。
  2. 該冷却制御手段は、検出温度が設定値を超えた時に、検出温度が設定値以下になるまで該ファンの回転を続行させるファン回転続行手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の燃焼式動力工具。
  3. 該冷却制御手段は、検出温度が設定値以下の時には該ファンを第1の回転数で回転させ、検出温度が設定値を超えたときに検出温度が設定値以下になるまで該ファンを第1の回転数より高い第2の回転数で回転させるファン回転数制御手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の燃焼式動力工具。
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