JP2004307402A - 2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、飼料添加剤などとして有用な2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩(以下、2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体ということもある。)の製造方法に関する。
更に詳しくは、本発明は、工業的に安価なアクリル酸誘導体、硫酸およびジメチルスルフィドを原料として前記2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を製造する経済的かつ効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体は腫瘍の治療薬として有効なことが報告されている(特開平4−54120)。また、中島らによって同化合物が貝類および魚類の飼料添加剤や育毛剤として有効であることが確かめられ、これらの用途、および該化合物の製造方法について特許出願がなされている(特公平6−45588、特公平6−45589、特開2001−172131、特公平7−2710)。
【0003】
従来、この種の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(この誘導体は、3−ジメチルスルホニオプロピオン酸誘導体ということもできる。)は、3−ハロゲン化プロピオン酸とジメチルスルフィドとを加熱条件下で反応させ、アルコール類を用いた再結晶で精製を行なうという方法で製造が行なわれている。
【0004】
しかしながら、前記した製造方法により3−ジメチルスルホニオプロピオン酸を合成しようとすると、原料の3−ハロゲン化プロピオン酸の価格が高く、反応時間も長いことから製造コストが高価になるという欠点がある。また、反応途中で生成物の結晶が析出することで攪拌が妨げられ、反応系が不均一化することが原因で反応転化率が低下し、目的とする生成物と原料との混合物が得られるため、目的生成物の精製には再結晶が必要であり、最終生成物の収率が低下するという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(3−ジメチルスルホニオプロピオン酸誘導体)の製造方法の欠点を解消し、かつ、より安価な出発原料を用いて経済的かつ高効率に2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を製造する新規な方法を提供しようとするものである。
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を加えた。
そして、本発明者は、工業的に高純度のものが安価に入手できるアクリル酸誘導体を利用し、該アクリル酸誘導体の二重結合への硫酸付加体を調製し、これにジメチルスルフィドを反応させることにより目的とする2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体が高効率に製造することができるという知見を得た。
【0007】
本発明は、前記知見をベースにして完成されたものである。
本発明により、工業的に安価に供給されるアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸誘導体を出発材料とし、目的とする医薬、飼料添加剤などとして有用な2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を経済的かつ効率的に製造することができる新規な2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の製造方法が提供される。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は、アクリル酸誘導体、硫酸およびジメチルスルフィドを原料として、有機系反応媒体中で反応させる、ことを特徴とする下記の一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法に関する。
一般式(1)
【化2】
〔ただし、Raは水素または低級アルキル基を示す。〕
【0009】
以下、本発明の技術的構成および実施態様について詳しく説明する。
なお、本発明の前記一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩において、前記化1では必ずしも明確に示されていないが、陽(+)イオンのスルホニウムイオンと陰(−)イオンの硫酸水素イオンは対イオンを形成していることに留意すべきである。また、本発明において、前記2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩を2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体ということがあるが、この「誘導体」という用語は、詳しくは後述するが、Raが種々のものを示すことに加えて、硫酸水素イオンを事後的に他のイオン種に変更することができるということを示すために用いられていることに留意すべきである。
更にまた、以下に説明する技術的事項などにおいて、種々の変形例が考慮されるべきであることはいうまでもないことである。
【0010】
本発明の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩(以下、単に2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体ということもある。)の新規な製造方法は、前記したように、工業的に高い純度のものが安価に入手できるアクリル酸誘導体の二重結合に硫酸を付加させ、ついで前記反応により得られる硫酸付加体(3−スルフェート置換プロピオン酸誘導体)とジメチルスルフィドとを溶媒中で接触反応させることにより目的とする2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体が得られるのではないか、という本発明者の仮説に立脚して完成されたものである。
【0011】
本発明者により、工業的に安価に供給されるアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸誘導体を出発材料とし、その二重結合に硫酸を付加した後、β−位をジメチルスルフィドで置換反応を行なうことにより、従来法と比較して収率、反応時間などの点で優れた2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の新規な製造方法が提供される。
【0012】
本発明の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の製造方法を具体的に説明する。
まず、アクリル酸誘導体を有機系反応媒体に溶解させ、この系にアクリル酸誘導体と等モル量の硫酸を加え、アクリル酸誘導体の二重結合へ硫酸を付加し、付加体、即ち3−スルフェート置換プロピオン酸誘導体を生成させる。
前記付加反応において、硫酸を室温下で滴下により加えて攪拌することで3−スルフェート置換プロピオン酸誘導体を効率的に得ることができる。
【0013】
本発明において、前記アクリル酸誘導体としては、アクリル酸またはアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどの低級アルキルエステルを使用すればよい。即ち、本発明において、前記一般式(1)のRaは、水素または低級アルキルを示し、前記低級アルキルの炭素数としては所望のものでよく、例えばC1 〜C6 である。
【0014】
また、本発明において、前記反応媒体としての有機系反応媒体としては、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンからなる群から選ばれた、少なくとも1種のものを使用すればよい。
【0015】
前記した付加反応に引き続き、同じ反応容器内でアクリル酸誘導体と等モル量のジメチルスルフィドを加え、β−位のフルフェート基をジメチルスルホニル基で置換させることにより、目的とする2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(3−ジメチルスルホニオプロピオン酸誘導体)を高収率で製造することができる。
前記置換反応において、ジメチルスルフィドのアクリル酸誘導体に対する使用量は収率などの観点から所望に設定すればよい。また、前記置換反応においてジメチルスルフィドを室温下で滴下により加えて攪拌することで置換反応を効率的に行うことができる。
【0016】
前記一般式(1)で示される本発明の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法を化学反応式で示すと、下記の化3の通りである。
【0017】
【化3】
本発明の前記した2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法により、目的化合物を高収率で得ることができる。
【0018】
前記一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩は、より正確に命名すると硫酸水素イオン(HSO4 −1)を有していることから2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸水素塩ということができる。
本発明において、前記一般式(1)の硫酸水素イオン(HSO4 −1)の「H」(水素イオン)は、下記に説明する精製工程などにおいて、アルカリ金属イオン(一価イオン)、アルカリ土類金属イオン(二価イオン)、あるいはその他の多価金属イオンに置換されてもよいものである。本発明は、前記した置換体を前記一般式(1)で示される化合物に含ませる意味において、前記一般式(1)で示される化合物を2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体ともいっている。
【0019】
前記一般式(1)で示される化合物の「H」(水素イオン)を他の金属イオンに置換させるには、後述する実施例2などで示されるようにこれら金属の水酸化物等で処理すればよい。なお、H+ イオンを二価以上の金属イオンと置換したものの化学構造式は、前記一般式(1)において硫酸水素イオン(HSO4 −1)が硫酸イオン(SO4 −2)になったものが、二価以上の金属イオンのイオン価数に応じて金属イオンにイオン結合していると考えればよい。
【0020】
本発明において、前一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸水素塩の硫酸水素イオン(HSO4 −1)は、例えばその水溶液に臭化バリウムや塩化バリウムなどのハロゲン化合物を加えることにより、臭素イオン、塩素イオンなどに置換させることができる。本発明は、前記置換体(臭化物、塩化物などのハロゲン化物)を前記一般式(1)で示される化合物に含ませる意味において、前記一般式(1)で示される化合物を2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体といっている。
【0021】
次に、前記反応により得られる2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の精製方法について説明する。
【0022】
前記反応により合成される目的化合物である一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩は、結晶として反応媒体から析出しながら生成する。反応終了後、生成物をろ過及び乾燥することにより高純度の目的化合物の結晶が得られる。
【0023】
また、前記反応で得られた2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の反応溶液から有機系反応溶媒を蒸留で除いた後にアルカリ金属水酸化物を用いて水溶液とし、有機系抽出溶剤を用いて不純物の抽出・分液操作を行うことで、不純物を含まない高純度の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(例えば硫酸ナトリウム塩)の水溶液を得ることができる。
本発明において、アクリル酸誘導体としてアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルを原料として用いる場合、3−ジメチルスルホニオプロピオン酸メチルエステルまたは3−ジメチルプロピオン酸エチルエステルを生成するが、いずれも容易に結晶化せずに粘ちょうな液体となる。このため、これらの原料と等モル量の水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、または他の多価金属の水酸化物を添加して水溶液としてから有機系抽出溶剤で不純物を抽出し、不純物を含まない例えば2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩の水溶液を得ることができる。
【0024】
前記有機系抽出溶剤を用いる精製法において、有機系抽出溶剤としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンからなる群から選ばれた、少なくとも1種のものを使用すればよい。
【0025】
従来の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(3−ジメチルスルホニオプロピオン酸誘導体)の製造法では、アルコール溶媒を用いた再結晶による精製が必要であったが、本発明による方法では再結晶を行なう必要がなく、純度の高い2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を結晶またはその水溶液として高収率で得ることができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
なお、本発明は、実施例のものに限定されないことはいうまでもないことである。
【0027】
(実施例1)
アクリル酸7.21g(100mmol)およびジオキサン40mlを滴下漏斗と冷却管を備えた500mlの4つ口フラスコに仕込み、攪拌を開始した。滴下漏斗を用いて濃硫酸9.80g(100mmol)を10分間かけて加え2時間攪拌した後、ジメチルスルフィド6.21g(100mmol)を滴下漏斗を用いて30分間かけて加えた。滴下中に2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の結晶が析出してきた。ジメチルスルフィドを滴下後2時間攪拌した後、ろ過して析出した結晶を分離した。
ヘキサンを用いて結晶に付着した残存原料であるアクリル酸、硫酸、ジメチルスルフィドなどの不純物を洗浄した。乾燥を行なうことで目的生成物の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸水素塩誘導体〔一般式(1)においてRaが水素である。〕の結晶が20.9g得られた(収率90%)。
【0028】
(実施例2)
アクリル酸7.21g(100mmol)およびジオキサン40mlを滴下漏斗と冷却管を備えた500mlの4つ口フラスコに仕込み、攪拌を開始した。そこへ濃硫酸9.80g(100mmol)を滴下漏斗を用いて10分かけて加え2時間攪拌した後、ジメチルスルフィド6.21g(100mmol)を30分かけて滴下しながら加えた。滴下中に2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の結晶が析出してきた。ジメチルスルフィドを滴下後、2時間攪拌した後に、エバポレータを用いた減圧蒸留でジオキサンおよび未反応原料であるアクリル酸やジメチルスルフィドを除き、2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlとヘキサン50mlを加えてよく攪拌後、分液操作を行なうことで水溶液から残存アクリル酸などの不純物の除去を行なった。水層から減圧下で残存ヘキサンを除くと2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩として20.1gを含有する水溶液が得られた(収率79%)。
なお、水溶液中の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩の含有量は得られた水溶液の一部を減圧下で濃縮し、残留物をD2O に溶液させジメチルスルホキシド(以下、DMSOという)を内部標準として計量して加え、 1HNMRを用いて2−カルボキシジメチルエチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩とDMSOのピーク面積比を測定するという方法で算出した。
【0029】
(実施例3)
アクリル酸メチル8.61g(100mmol)およびジオキサン40mlを滴下漏斗と冷却管を備えた500mlの4つ口フラスコに仕込み、攪拌を開始した。滴下漏斗を用いて濃硫酸9.80g(100mmol)を10分かけて加え2時間攪拌した後、ジメチルスルフィド6.21g(100mmol)を30分かけて滴下しながら加えた。ジメチルスルフィドを滴下後、2時間攪拌した後に、エバポレータを用いた減圧蒸留でジオキサンおよび未反応原料であるアクリル酸メチルやジメチルスルフィドを除き、2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlとヘキサン50mlを加えてよく攪拌後、分液操作を行なうことで水溶液から残存アクリル酸メチルなどの不純物の除去を行なった。水層から減圧下で残存ヘキサンを除くと2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩〔一般式(1)においてRaがメチル基である〕として20.5gを含有する水溶液が得られた(収率83%)。
なお、水溶液中の2−カルボキシルエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩の含有量は得られた水溶液の一部を減圧下で濃縮し、残留物をD2O に溶解させDMSOを内部標準として計量して加え、1H NMRを用いて2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩とDMSOのピーク面積比を測定するという方法で算出した。
【0030】
(実施例4)
アクリル酸エチル10.0g(100mmol)およびジオキサン40mlを滴下漏斗と冷却管を備えた500mlの4つ口フラスコに仕込み攪拌を開始した。滴下漏斗を用いて濃硫酸9.80g(100mmol)を10分かけて加え2時間攪拌した後、ジメチルスルフィド6.20g(100mmol)を30分かけて滴下しながら加えた。ジメチルスルフィドを滴下後、2時間攪拌した後に、エバポレータを用いた減圧蒸留でジオキサンおよび未反応原料であるアクリル酸エチルやジメチルスルフィドを除き、2N−水酸化ナトリウムの水溶液50mlとヘキサン50mlを加えてよく攪拌後、分液操作を行なうことで水溶液から残存アクリル酸エチルなどの不純物の除去を行なった。水層から減圧下で残存ヘキサンを除くと2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩〔一般式(1)においてRaがエチル基である。〕として17.3gを含有する水溶液が得られた(収率66%)。
なお、水溶液中の2−カルボキシルエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩の含有量は得られた水溶液の一部を減圧下で濃縮し、残留物をD2O に溶解させDMSOを内部標準として計量して加え、1H NMRを用いて2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩とDMSOのピーク面積比を測定するという方法で算出した。
また、前記した実施例で示した反応は、すべて次亜塩素酸ソーダ溶液を経由する排気装備を備えた反応容器中で反応を行なった。
【0031】
(比較例1〜3)
(1).硫酸の使用モル比(対アクリル酸)を0.5にする以外は実施例1に従って反応を試みたが、2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の 収率は50%を超えなかった(比較例1)。
(2).また、前記した等量数では、加熱を試みても収率の改善は見られず、逆に原料であるアクリル酸の重合が優先して起こり、収率の低下が見られた(比較例2)。
(3).硫酸の代わりに燐酸を使用する以外は実施例1に従って2−カルボキシエチルジメチル誘導体の合成を試みたが、ほとんど目的生成物を得ることが できなかった(比較例3)。
【0032】
前記した実施例1〜4及び比較例1〜3の実験結果を、下記の表1にまとめる。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
工業的に安価なアクリル酸誘導体、硫酸、ジメチルスルフィドを原料として、従来の方法よりも安価な方法でかつより簡単な工程で2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を合成することができる。
また、前記した反応を有機溶媒中で行なうことにより、従来問題であった反応容器内での生成物の固化を防止することができる。
【0035】
本発明において、2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体は、陽イオンのジメチルスルホニウムイオンと陰イオンの硫酸水素イオンが対イオンを形成した硫酸塩として得られるが、他の有用物質を製造するためにイオン交換により硫酸水素イオンを塩素イオンなどのハロゲンイオンなど他のイオン種に交換することが可能である。
【0036】
本発明により、従来から医薬品、飼料添加剤などとして有望とされている2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を効率良くかつ安価に製造することが可能であり、その工業的意義は大である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、飼料添加剤などとして有用な2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩(以下、2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体ということもある。)の製造方法に関する。
更に詳しくは、本発明は、工業的に安価なアクリル酸誘導体、硫酸およびジメチルスルフィドを原料として前記2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を製造する経済的かつ効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体は腫瘍の治療薬として有効なことが報告されている(特開平4−54120)。また、中島らによって同化合物が貝類および魚類の飼料添加剤や育毛剤として有効であることが確かめられ、これらの用途、および該化合物の製造方法について特許出願がなされている(特公平6−45588、特公平6−45589、特開2001−172131、特公平7−2710)。
【0003】
従来、この種の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(この誘導体は、3−ジメチルスルホニオプロピオン酸誘導体ということもできる。)は、3−ハロゲン化プロピオン酸とジメチルスルフィドとを加熱条件下で反応させ、アルコール類を用いた再結晶で精製を行なうという方法で製造が行なわれている。
【0004】
しかしながら、前記した製造方法により3−ジメチルスルホニオプロピオン酸を合成しようとすると、原料の3−ハロゲン化プロピオン酸の価格が高く、反応時間も長いことから製造コストが高価になるという欠点がある。また、反応途中で生成物の結晶が析出することで攪拌が妨げられ、反応系が不均一化することが原因で反応転化率が低下し、目的とする生成物と原料との混合物が得られるため、目的生成物の精製には再結晶が必要であり、最終生成物の収率が低下するという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(3−ジメチルスルホニオプロピオン酸誘導体)の製造方法の欠点を解消し、かつ、より安価な出発原料を用いて経済的かつ高効率に2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を製造する新規な方法を提供しようとするものである。
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を加えた。
そして、本発明者は、工業的に高純度のものが安価に入手できるアクリル酸誘導体を利用し、該アクリル酸誘導体の二重結合への硫酸付加体を調製し、これにジメチルスルフィドを反応させることにより目的とする2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体が高効率に製造することができるという知見を得た。
【0007】
本発明は、前記知見をベースにして完成されたものである。
本発明により、工業的に安価に供給されるアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸誘導体を出発材料とし、目的とする医薬、飼料添加剤などとして有用な2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を経済的かつ効率的に製造することができる新規な2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の製造方法が提供される。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は、アクリル酸誘導体、硫酸およびジメチルスルフィドを原料として、有機系反応媒体中で反応させる、ことを特徴とする下記の一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法に関する。
一般式(1)
【化2】
〔ただし、Raは水素または低級アルキル基を示す。〕
【0009】
以下、本発明の技術的構成および実施態様について詳しく説明する。
なお、本発明の前記一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩において、前記化1では必ずしも明確に示されていないが、陽(+)イオンのスルホニウムイオンと陰(−)イオンの硫酸水素イオンは対イオンを形成していることに留意すべきである。また、本発明において、前記2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩を2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体ということがあるが、この「誘導体」という用語は、詳しくは後述するが、Raが種々のものを示すことに加えて、硫酸水素イオンを事後的に他のイオン種に変更することができるということを示すために用いられていることに留意すべきである。
更にまた、以下に説明する技術的事項などにおいて、種々の変形例が考慮されるべきであることはいうまでもないことである。
【0010】
本発明の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩(以下、単に2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体ということもある。)の新規な製造方法は、前記したように、工業的に高い純度のものが安価に入手できるアクリル酸誘導体の二重結合に硫酸を付加させ、ついで前記反応により得られる硫酸付加体(3−スルフェート置換プロピオン酸誘導体)とジメチルスルフィドとを溶媒中で接触反応させることにより目的とする2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体が得られるのではないか、という本発明者の仮説に立脚して完成されたものである。
【0011】
本発明者により、工業的に安価に供給されるアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸誘導体を出発材料とし、その二重結合に硫酸を付加した後、β−位をジメチルスルフィドで置換反応を行なうことにより、従来法と比較して収率、反応時間などの点で優れた2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の新規な製造方法が提供される。
【0012】
本発明の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の製造方法を具体的に説明する。
まず、アクリル酸誘導体を有機系反応媒体に溶解させ、この系にアクリル酸誘導体と等モル量の硫酸を加え、アクリル酸誘導体の二重結合へ硫酸を付加し、付加体、即ち3−スルフェート置換プロピオン酸誘導体を生成させる。
前記付加反応において、硫酸を室温下で滴下により加えて攪拌することで3−スルフェート置換プロピオン酸誘導体を効率的に得ることができる。
【0013】
本発明において、前記アクリル酸誘導体としては、アクリル酸またはアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどの低級アルキルエステルを使用すればよい。即ち、本発明において、前記一般式(1)のRaは、水素または低級アルキルを示し、前記低級アルキルの炭素数としては所望のものでよく、例えばC1 〜C6 である。
【0014】
また、本発明において、前記反応媒体としての有機系反応媒体としては、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンからなる群から選ばれた、少なくとも1種のものを使用すればよい。
【0015】
前記した付加反応に引き続き、同じ反応容器内でアクリル酸誘導体と等モル量のジメチルスルフィドを加え、β−位のフルフェート基をジメチルスルホニル基で置換させることにより、目的とする2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(3−ジメチルスルホニオプロピオン酸誘導体)を高収率で製造することができる。
前記置換反応において、ジメチルスルフィドのアクリル酸誘導体に対する使用量は収率などの観点から所望に設定すればよい。また、前記置換反応においてジメチルスルフィドを室温下で滴下により加えて攪拌することで置換反応を効率的に行うことができる。
【0016】
前記一般式(1)で示される本発明の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法を化学反応式で示すと、下記の化3の通りである。
【0017】
【化3】
本発明の前記した2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法により、目的化合物を高収率で得ることができる。
【0018】
前記一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩は、より正確に命名すると硫酸水素イオン(HSO4 −1)を有していることから2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸水素塩ということができる。
本発明において、前記一般式(1)の硫酸水素イオン(HSO4 −1)の「H」(水素イオン)は、下記に説明する精製工程などにおいて、アルカリ金属イオン(一価イオン)、アルカリ土類金属イオン(二価イオン)、あるいはその他の多価金属イオンに置換されてもよいものである。本発明は、前記した置換体を前記一般式(1)で示される化合物に含ませる意味において、前記一般式(1)で示される化合物を2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体ともいっている。
【0019】
前記一般式(1)で示される化合物の「H」(水素イオン)を他の金属イオンに置換させるには、後述する実施例2などで示されるようにこれら金属の水酸化物等で処理すればよい。なお、H+ イオンを二価以上の金属イオンと置換したものの化学構造式は、前記一般式(1)において硫酸水素イオン(HSO4 −1)が硫酸イオン(SO4 −2)になったものが、二価以上の金属イオンのイオン価数に応じて金属イオンにイオン結合していると考えればよい。
【0020】
本発明において、前一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸水素塩の硫酸水素イオン(HSO4 −1)は、例えばその水溶液に臭化バリウムや塩化バリウムなどのハロゲン化合物を加えることにより、臭素イオン、塩素イオンなどに置換させることができる。本発明は、前記置換体(臭化物、塩化物などのハロゲン化物)を前記一般式(1)で示される化合物に含ませる意味において、前記一般式(1)で示される化合物を2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体といっている。
【0021】
次に、前記反応により得られる2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の精製方法について説明する。
【0022】
前記反応により合成される目的化合物である一般式(1)で示される2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩は、結晶として反応媒体から析出しながら生成する。反応終了後、生成物をろ過及び乾燥することにより高純度の目的化合物の結晶が得られる。
【0023】
また、前記反応で得られた2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の反応溶液から有機系反応溶媒を蒸留で除いた後にアルカリ金属水酸化物を用いて水溶液とし、有機系抽出溶剤を用いて不純物の抽出・分液操作を行うことで、不純物を含まない高純度の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(例えば硫酸ナトリウム塩)の水溶液を得ることができる。
本発明において、アクリル酸誘導体としてアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルを原料として用いる場合、3−ジメチルスルホニオプロピオン酸メチルエステルまたは3−ジメチルプロピオン酸エチルエステルを生成するが、いずれも容易に結晶化せずに粘ちょうな液体となる。このため、これらの原料と等モル量の水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、または他の多価金属の水酸化物を添加して水溶液としてから有機系抽出溶剤で不純物を抽出し、不純物を含まない例えば2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩の水溶液を得ることができる。
【0024】
前記有機系抽出溶剤を用いる精製法において、有機系抽出溶剤としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンからなる群から選ばれた、少なくとも1種のものを使用すればよい。
【0025】
従来の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体(3−ジメチルスルホニオプロピオン酸誘導体)の製造法では、アルコール溶媒を用いた再結晶による精製が必要であったが、本発明による方法では再結晶を行なう必要がなく、純度の高い2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を結晶またはその水溶液として高収率で得ることができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
なお、本発明は、実施例のものに限定されないことはいうまでもないことである。
【0027】
(実施例1)
アクリル酸7.21g(100mmol)およびジオキサン40mlを滴下漏斗と冷却管を備えた500mlの4つ口フラスコに仕込み、攪拌を開始した。滴下漏斗を用いて濃硫酸9.80g(100mmol)を10分間かけて加え2時間攪拌した後、ジメチルスルフィド6.21g(100mmol)を滴下漏斗を用いて30分間かけて加えた。滴下中に2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の結晶が析出してきた。ジメチルスルフィドを滴下後2時間攪拌した後、ろ過して析出した結晶を分離した。
ヘキサンを用いて結晶に付着した残存原料であるアクリル酸、硫酸、ジメチルスルフィドなどの不純物を洗浄した。乾燥を行なうことで目的生成物の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸水素塩誘導体〔一般式(1)においてRaが水素である。〕の結晶が20.9g得られた(収率90%)。
【0028】
(実施例2)
アクリル酸7.21g(100mmol)およびジオキサン40mlを滴下漏斗と冷却管を備えた500mlの4つ口フラスコに仕込み、攪拌を開始した。そこへ濃硫酸9.80g(100mmol)を滴下漏斗を用いて10分かけて加え2時間攪拌した後、ジメチルスルフィド6.21g(100mmol)を30分かけて滴下しながら加えた。滴下中に2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の結晶が析出してきた。ジメチルスルフィドを滴下後、2時間攪拌した後に、エバポレータを用いた減圧蒸留でジオキサンおよび未反応原料であるアクリル酸やジメチルスルフィドを除き、2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlとヘキサン50mlを加えてよく攪拌後、分液操作を行なうことで水溶液から残存アクリル酸などの不純物の除去を行なった。水層から減圧下で残存ヘキサンを除くと2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩として20.1gを含有する水溶液が得られた(収率79%)。
なお、水溶液中の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩の含有量は得られた水溶液の一部を減圧下で濃縮し、残留物をD2O に溶液させジメチルスルホキシド(以下、DMSOという)を内部標準として計量して加え、 1HNMRを用いて2−カルボキシジメチルエチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩とDMSOのピーク面積比を測定するという方法で算出した。
【0029】
(実施例3)
アクリル酸メチル8.61g(100mmol)およびジオキサン40mlを滴下漏斗と冷却管を備えた500mlの4つ口フラスコに仕込み、攪拌を開始した。滴下漏斗を用いて濃硫酸9.80g(100mmol)を10分かけて加え2時間攪拌した後、ジメチルスルフィド6.21g(100mmol)を30分かけて滴下しながら加えた。ジメチルスルフィドを滴下後、2時間攪拌した後に、エバポレータを用いた減圧蒸留でジオキサンおよび未反応原料であるアクリル酸メチルやジメチルスルフィドを除き、2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlとヘキサン50mlを加えてよく攪拌後、分液操作を行なうことで水溶液から残存アクリル酸メチルなどの不純物の除去を行なった。水層から減圧下で残存ヘキサンを除くと2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩〔一般式(1)においてRaがメチル基である〕として20.5gを含有する水溶液が得られた(収率83%)。
なお、水溶液中の2−カルボキシルエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩の含有量は得られた水溶液の一部を減圧下で濃縮し、残留物をD2O に溶解させDMSOを内部標準として計量して加え、1H NMRを用いて2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩とDMSOのピーク面積比を測定するという方法で算出した。
【0030】
(実施例4)
アクリル酸エチル10.0g(100mmol)およびジオキサン40mlを滴下漏斗と冷却管を備えた500mlの4つ口フラスコに仕込み攪拌を開始した。滴下漏斗を用いて濃硫酸9.80g(100mmol)を10分かけて加え2時間攪拌した後、ジメチルスルフィド6.20g(100mmol)を30分かけて滴下しながら加えた。ジメチルスルフィドを滴下後、2時間攪拌した後に、エバポレータを用いた減圧蒸留でジオキサンおよび未反応原料であるアクリル酸エチルやジメチルスルフィドを除き、2N−水酸化ナトリウムの水溶液50mlとヘキサン50mlを加えてよく攪拌後、分液操作を行なうことで水溶液から残存アクリル酸エチルなどの不純物の除去を行なった。水層から減圧下で残存ヘキサンを除くと2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩〔一般式(1)においてRaがエチル基である。〕として17.3gを含有する水溶液が得られた(収率66%)。
なお、水溶液中の2−カルボキシルエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩の含有量は得られた水溶液の一部を減圧下で濃縮し、残留物をD2O に溶解させDMSOを内部標準として計量して加え、1H NMRを用いて2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸ナトリウム塩とDMSOのピーク面積比を測定するという方法で算出した。
また、前記した実施例で示した反応は、すべて次亜塩素酸ソーダ溶液を経由する排気装備を備えた反応容器中で反応を行なった。
【0031】
(比較例1〜3)
(1).硫酸の使用モル比(対アクリル酸)を0.5にする以外は実施例1に従って反応を試みたが、2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体の 収率は50%を超えなかった(比較例1)。
(2).また、前記した等量数では、加熱を試みても収率の改善は見られず、逆に原料であるアクリル酸の重合が優先して起こり、収率の低下が見られた(比較例2)。
(3).硫酸の代わりに燐酸を使用する以外は実施例1に従って2−カルボキシエチルジメチル誘導体の合成を試みたが、ほとんど目的生成物を得ることが できなかった(比較例3)。
【0032】
前記した実施例1〜4及び比較例1〜3の実験結果を、下記の表1にまとめる。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
工業的に安価なアクリル酸誘導体、硫酸、ジメチルスルフィドを原料として、従来の方法よりも安価な方法でかつより簡単な工程で2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を合成することができる。
また、前記した反応を有機溶媒中で行なうことにより、従来問題であった反応容器内での生成物の固化を防止することができる。
【0035】
本発明において、2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体は、陽イオンのジメチルスルホニウムイオンと陰イオンの硫酸水素イオンが対イオンを形成した硫酸塩として得られるが、他の有用物質を製造するためにイオン交換により硫酸水素イオンを塩素イオンなどのハロゲンイオンなど他のイオン種に交換することが可能である。
【0036】
本発明により、従来から医薬品、飼料添加剤などとして有望とされている2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム誘導体を効率良くかつ安価に製造することが可能であり、その工業的意義は大である。
Claims (6)
- アクリル酸誘導体が、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルからなる群から選ばれた、少なくとも1種のものである請求項1記載の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法。
- 有機系反応溶媒が、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンからなる群から選ばれた、少なくとも1種のものである請求項1記載の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法。
- 請求項1記載の方法により得られた2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩を、反応溶液から結晶として析出、ろ過することを特徴とする高純度の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法。
- 請求項1記載の方法により得られた2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩を水溶液とし、不純物を有機系抽出溶剤で抽出した後、残存有機溶剤を水溶液から減圧蒸留で除去することを特徴とする高純度の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法。
- 有機系抽出溶剤が、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンからなる群から選ばれた、少なくとも1種のものである請求項5記載の2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法。
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JP2003103612A JP2004307402A (ja) | 2003-04-08 | 2003-04-08 | 2−カルボキシエチルジメチルスルホニウム硫酸塩の製造方法 |
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CN1305844C (zh) * | 2005-10-18 | 2007-03-21 | 北京格林富诚科技有限公司 | 二烷基-β-丙酸噻亭氢卤酸盐及羧酸盐的制备方法 |
-
2003
- 2003-04-08 JP JP2003103612A patent/JP2004307402A/ja not_active Withdrawn
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