JP2004304783A - 表面実装型チップアンテナ及びアンテナ装置、並びにこれらを搭載した通信機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 誘電体、磁性体、またはそれらの混合物でなる基体と、前記基体の実装面に設けられた少なくとも1つの端子部と、前記基体の実装面に前記端子部を除いて設けられた凹部と、この凹部に螺旋状に巻回された平角導電線を具備してなり、例えば、チップアンテナの基体は、高さ5mm以下、基体の長さ30mm以下、凹部は前記基体高さの1/2以下であり、平角導線は、幅2mm以下、厚さ0.01〜0.2mmである表面実装型チップアンテナとなす。また、この表面実装型チップアンテナと、スピーカ、バイブレータ、小型CCDカメラ等の金属機能部品を近接して配置するときは電源側端子にフィルタ回路を接続する。
【選択図】 図1
Description
また、表面実装型アンテナを搭載した基板にはスピーカやバイブレータ、最近では小型CCDカメラ等のように電磁波を発生する機器を金属ケースに収納して搭載することが多い。このとき、寸法の制約上、スピーカやバイブレータの近くにアンテナを配設せざるを得ないことも多く、スピーカやバイブレータや小型CCDカメラ等の金属機能部品とアンテナとの相互干渉を発生することがある。
また、上述したように小型低背化の要求から、回路基板上ではチップアンテナとスピーカやバイブレータ等の金属機能部品とが近接して配置されることが多い。このとき相互干渉を防止することが望まれる。
本発明によれば、凹部の存在によりチップアンテナと、それを実装する基板との間の接触面積が減少するため、実装安定性が良く、実装した後も基板との熱膨張係数の差異による歪みの影響を低減できる効果がある。ここで、実装安定性とは、チップアンテナを基板に半田付け等で固定する際の実装のし易さを言う。実装安定性が良いことから、基板への固定の不確実さが低い。従って、自動組立性が向上する。また、アンテナ特性については導電線の線間容量Cwsが低減されるため帯域幅が広がる効果もある。その理由は、図4を用いて後述する。更に、同じ比誘電率の基体であれば厚みを小さくでき、電磁波のエネルギーを集中できるので放射効率や利得も向上する効果がある。
本発明の表面実装型チップアンテナでは、その基体の高さは5mm以下、基体の長さは30mm以下、凹部の高さは基体高さの1/2以下であり、前記平角導線は、幅2mm以下、厚さ0.01〜0.2mmであることが望ましい。その理由は後述する。
また、前記導電線を複数備えており、前記端子部を少なくとも2つ有し、複数の周波数帯域に対応できるようにすることができる。これによると、フィルタを必要とせずに複数の周波数帯域、即ち2周波数以上に対応できるマルチバンドアンテナとすることができる。
本発明によれば、配置場所の制約を受けることなく、例えばGPS情報受信アンテナとスピーカやバイブレータなどの相互干渉をフィルタにより防止でき、且つ通話用アンテナの機能を妨害することもない。
また、上記チップアンテナにおいて、導電線が平角導電線であることは望ましい。
このチップアンテナは、その基体の高さは5mm以下、基体の長さは30mm以下、凹部の高さは基体高さの1/2以下であり、前記平角導線は、幅2mm以下、厚さ0.01〜0.2mmであることは望ましい。
また、導電線を複数備えており、端子部を少なくとも2つ有し、複数の周波数帯域に対応できるようにしたチップアンテナを用いることが出来る。
図1において、表面実装型チップアンテナ80(以下、単にアンテナと言う。)は、誘電体からなる基体10と、基体10の実装面(裏面)11の一方の端部に設けられた給電用端子21と、基体10の実装面11の他方の端部に設けられた基板固定用端子22と、基体10の実装面となる主面11に給電用端子21と固定用端子22を設けた部分を除いて設けられた凹部30と、基体10に螺旋状に巻回された導電線40とから構成されている。
実装面11に対向する一方の主面12には凹部を設けない。これは、基体10の巻線枠の断面積を有効利用して、限られたサイズの中で巻線の自己インダクタンスを最大とすることにより、アンテナのQ値を下げて広帯域化を図るためである。また、自己インダクタンスが大きくなるに従い、アンテナの共振周波数が低下することから、共振周波数が一定の条件ではチップアンテナの小型化を図ることが可能となる。
給電用端子21と導電線40との間の接続は、半田付け、ロウ付け、カシメ、溶接、圧着などにより電気的に接続される。給電用端子21と固定用端子22は、予めAg、Ag−Pd、Cuなどの電極で形成されており、導電ペーストによる印刷法、メッキ、半田メッキなどで形成できる。
図1(b)は、給電用端子21、固定用端子22、導電線40の接続を分かり易くするために基体10を透視した模式図である。導電線40は固定用端子22と接続されず、開放部42を介して電気的に絶縁されている。従って、導電線40の一端は接続部41sで給電用端子21に接続されているが、導電線40の他端41eは開放端となり電磁波の送受信を行う。
図1(c)は、図1(a)で示したチップアンテナ80を反対側から見た斜視図である。即ち、開放端側側面14を見たものである。開放部43を介して導電線40の他端41eは開放端42となっていることを示している。
図2は、本発明のチップアンテナ80における凹部30の作用を説明するための図である。図2(A)は本発明の凹部30を具備する場合、図2(B)は具備しない場合を示す。(A)において、基板50に対向する実装面となる主面11における導電線40間の線間容量Cwsは、誘電率が1の空気を介して形成される。他方、(B)においては、実装面となる主面11は全面が基板50に接触するから、導電線40間の線間容量Cwsは基板の比誘電率4〜5程度の実装面となる主面11を介して形成される。従って、(B)における導電線40間の導電線40の線間容量Cwsは(A)の場合に比べてはるかに大きく、好ましくない。
次に、図3を用いて、上記した図2(A)と図2(B)との間のアンテナの帯域幅の大小について説明する。図3は図2のアンテナの等価回路図を示す。実際には図示しない導電線40などの抵抗Rが存在するが、ここでは抵抗分Rをゼロとした理想的な状態を示し、導電線40のインダクタンスLwに導電線40の線間容量Cwsが並列接続されている。図2(B)における導電線40間の線間容量Cwsは、図2(A)の場合に比べて誘電率の倍数以上は大きいから、アンテナの尖鋭度を示すQ値が大きくなり、Q値の逆数が関係する帯域幅は狭くなってしまう。それに比べて、図2(A)に示す本発明のチップアンテナ80ではQ値が小さく、帯域幅が広い。これについて説明すると、図3のアンテナ等価回路において、巻線間の静電容量をCws、巻線と基板上に設けられた接地との静電容量をCwgとすると、基体の比誘電率が真空の比誘電率(=1)よりも大きいためCws>>Cwgとなる。従って、Q∝√(Cws/Lws)、帯域幅BW∝1/Qの関係より、概略BW∝√(Lws/Cws)が導かれる。すなわち、Lを大きく、Cを小さくするほど帯域幅BWが広がる。この結果、チップアンテナの周波数ばらつきや、端末周囲の人体(顔や手など)が近接することによって共振周波数が変動しても、安定かつ信頼性の高い無線通信を実現できる。図2(A)のアンテナでは巻線周囲の誘電体が基体のみであり、図2(B)のアンテナに比べてCwsが小さいため、広帯域化を図れる。そして、さらなる広帯域化のためには、基体を磁性体、あるいは誘電体と磁性体を混合物で構成し、自己インダクタンスLwsを大きくすることが望ましい。
また、本発明においては、凹部30を実装面側のみに設けることにより、図23の従来例で述べたように基体両端の端子部の厚さが基体高さを決定するようなことがない。よって、同じ比誘電率の基体であれば上面に段差部を設けない分高さを減少することができる。また、実装面の凹部30があることによりチップアンテナ80と実装する基板50との間の接触面積が減少する。よって、実装する際の安定性が良く、実装した後も基板との熱膨張係数の差異による歪みの影響を低減できる。
図1に示す実施態様では、基体10の両端部を除いて、段差により凹部30が形成されている。基体10の両端部に形成された給電用端子21と固定用端子22を設けた部分を除いて凹部30が形成されている。ここで「給電用端子21と固定用端子22を除いて」とは、給電用端子21と固定用端子22以外の全てというのではなく、給電用端子21と固定用端子22、及びそれの形成に必要な部分、強度を保持するに必要な部分などを含んだ部分を除いてという意味である。図1に模式的に示したように、給電用端子21と固定用端子22の各々から少し内側に段差を形成する。この段差は直角である必要は無く、テーパや丸みを持たせるなど任意の形状とすることができる。
凹部30は、完成された基体10から切削、研削などの加工手段で形成しても良いが、金型による粉体加圧成形により基体10と同時に一体形成することもできる。金型に凹部30に対応する突起部を設けておくことにより、誘電体の粉末を加圧焼結する際に塑性加工できる。この形状の場合その方が材料歩留まり、生産性が高いと考えられる。
アンテナ基体の長さは10〜30mmが良く、10mm未満だと導電線40の巻回が困難になり、30mmを超えると大型となり表面実装型のチップアンテナとして好ましくない。幅は2〜10mmが良く、2mm未満だと導電線40の巻回が困難になり、10mmを超えると大型となり表面実装型のチップアンテナとして好ましくない。高さは1〜5mmが良く、1mm未満だと導電線40の巻回が困難になり、5mmを超えると大型となり表面実装型のチップアンテナとして好ましくない。
また、凹部30の深さdgは、0.01mm以上で、基体10の高さの1/2程度以下が好ましい。0.01mm未満だと実装安定性と帯域幅の拡大効果が無く、基体10の高さの1/2程度を超えると基体10の断面積が減少して導電線40の巻枠の断面積が減少しアンテナ利得の低下を招く恐れがある。これについては以下に詳しく述べる。
アンテナの自己インダクタンスをL[H]とすると、Lは(1)式で表される。
L=n2×T×W×μ ・・・(1)
ここで、nは導電線の巻数[ターン]、μは透磁率(=μc×μ0)、μcは基体の比透磁率、μ0は真空の透磁率(1.257×10-6H/m)、H、T、Wは図1(a)参照。
導電線による静電容量C[F]は次式(2)で表される。
C=(n2/D)×(T+W)×2×P×ε ・・・(2)
ここで、εは基体の実効誘電率で次式(3)で表される。
ε=ε0×√(εc×T/H)2+(1−T/H)2 ・・・(3)
ここで、εcは基体の比誘電率、ε0は真空の誘電率(=8.855×10−12F/m)
また、アンテナの共振周波数をf0[Hz]とすると、
f0=2Π/√LC ・・・(4)
Q=√C/L ・・・(5)
これに(1)(2)式を代入すると、次式(6)となる。
Q=√((2×P)/D)×(1/W+1/T)×ε/μ ・・・(6)
次に、D=30mm、P=1mm、W=3mm、H=3mm、εc=30、μc=1とし、T/HについてQ値を求めると、図20のようになる。
また、帯域幅BWは次式(7)で得られる。
BW=(1/Q)×(f0/100) ・・・(7)
ここでf0=800[MHz]の場合、図21のようになる。
図20、図21より、T/Hの範囲は基体の高さの1/2程度以下が好ましいことが分かる。
本発明において、導電線40の断面形状は丸や平角、形態は板や箔など種々のものが使用可能であるが、平角の板状電線が好ましい。
図4を用いて、その理由を説明する。本発明に係る平角導電線においては、図4に示すように、Ww>Twの関係がある。ここで、Wwは導電線40の幅、Twは導電線40の厚みである。図4(A)は導電線40に平角導電線を用いた場合、図4(B)は丸電線を用いた場合を示す。(A)に示すように平角導電線は基体10に面接触するから、電気力線ELは基体10の内部を均一に分布する。他方、(B)に示すように丸電線は基体10に点接触するため、電気力線ELは集中する。従って、丸電線の場合には高周波電流が接触点付近に集中して流れるため損失が大きい。それに比べて、平角導電線を用いた場合には電流が全面に流れるために損失が低減され、アンテナ利得が向上する。また、丸電線の場合には点接触に過ぎないから、電線の変位、ずれを防止する為に溝などの固定手段が必要となるが、平角導電線を用いると溝などの固定手段が必ずしも必要でない。
導電線40の構成材料としては、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル及びその合金などの導電材料からなる導線が挙げられる。この銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル等の材料には、耐候性等を向上させるために所定の元素を添加してもよい。また、導電材料と非金属材料等の合金を用いてもよい。構成材料としてコスト面や耐食性の面及び作り易さの面から銅及びその合金がよく用いられる。
導電線40に銅またはその合金を用いる場合、導電線40の厚みTwは0.01〜0.2mmが好ましい。導電線40の厚みTwが0.01mm未満だと導体抵抗が増大して損失となり、導電線40の厚みTwが0.2mmを超えると曲げ強度が過大となり、導電線の作業性の悪化や基体10を損傷する恐れが高くなるからである。導電線40にアルミニウムや金などを用いる場合には、この数値範囲は、適宜見直される。他方、導電線40の幅Wwは導電線40の厚みTwの数倍から2mm程度の範囲で、適宜に選べばよい。
Cws∝Ww×Tw/(Pw−Ww)の関係式が成り立つ。
導電線の断面積をAwとすると、Aw=Ww×Tw(=一定)とすれば、Ww=Aw/Twとなり、これを前式に代入すると、
Cws∝Aw/(Pw−Aw/Tw)となる。
従って、理論的にはTwを大きくほどCwsは小さくなり、帯域幅は増加するが、実際のアンテナ製作ではWw<Twの巻線を行うことは困難であるため、巻線で使用されるTwをあらかじめ決めておき、必要な帯域幅からTwやPwを求めるのが妥当である。
本発明においては、導電線40は丸線、角線どちらでも良いが、上述したように平角線を用いることにより基体10への導電線作業が安定化する。丸線、角線の場合には導電線作業中に導電線40が基体10の長手方向にずれる恐れがあり、基体10に導電線嵌合用の溝を形成しなければならなくなることもあるが、平角線では自身の持つ剛性で、基体10にぴったりと巻回される効果を呈するからである。以上により、導電線用のボビンを不要とし、基体10に導電線が嵌るような溝を不要とするため、導電線40の寸法、すなわち導電線40の幅Ww、導電線40の厚みTw、導電線40のピッチPw、巻数(ターン数)など、の設計の自由度、巻線機並びに治具の汎用化が容易である。また、巻線の断面積が同じ条件では、基体を平角線に巻いた方が巻線の厚さを薄くできるため、アンテナの薄型・小型化を図ることにより、無線装置の小型化を実現できる。
基体10の形状は必要に応じて適宜選択できるが、角柱状とすることによって、実装安定性を向上させることができ、チップアンテナ80の転がり等を防止できる等の効果を有する。よって、実装安定性や、基板50上での位置決めを容易にする。
基体10の材質は誘電体、磁性体、またはそれらの混合物でも良い。
基体10の材質として誘電体を用いる場合には、波長短縮効果によりアンテナを小型化できる。例えば、アルミナが使える。アルミナの具体的な材料としては、Al2O3:92重量%以上,SiO2:6重量%以下,MgO:1.5重量%以下,Fe2O3:0.1%以下,Na2O:0.3重量%以下等が挙げられる。この他にもフォルステライト、チタン酸マグネシウム系やチタン酸カルシウム系、ジルコニア・スズ・チタン系、チタン酸バリウム系や鉛・カルシウム・チタン系、窒化珪素、炭化珪素などのセラミック材料を用いても良い。
基体10の材質として磁性体を用いる場合には、インダクタンスLwを大きくできるため、インピーダンスを大きくしてアンテナのQ値を低下し、広帯域化できる。
基体10の材質として誘電体と磁性体の混合物を用いる場合には、波長短縮効果によるチップアンテナの小型化と、アンテナのQ値を低下できることによる広帯域化が可能である。波長短縮効果は、誘電率ε、透磁率μの両方からチップアンテナの長さをLとするとL∝1/√(εμ)として作用するからである。アンテナのQ値は、μ/εがインピーダンスを支配して高めるからである。磁性材料として、高透磁率の材料が望ましいが、周波数が高くなるにしたがって損失も増えてくる。このため、携帯電話用アンテナなどでは磁性材料として、高周波でも低損失な材料が望ましく、例えばMn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、六方晶系フェライトなどが用いられる。また、ラジオ等に用いられる低周波アンテナ用磁性材料としては、パーマロイ、Fe基アモルファス、Co基アモルファス、Fe基超微結晶材料などの金属軟磁性材料を用いてもよい。
図5は、上記チップアンテナ80を回路基板50に実装しアンテナ装置とした一例を示す。導電線40の一端は給電用電極パターン51を介して高周波電源に接続される。固定用パターン52は、チップアンテナ80を、固定用端子22を介して基板50に半田付けで固定するためのものである。固定用パターン52とグランドパターン53の間にはギャップを介して静電容量が形成される。この実施態様のチップアンテナ80では、図1(b)(c)を用いて説明したように、導電線40の開放端は、固定用端子22ひいては固定用パターン52と開放部42を介して離隔されているから、導電線40とグランドとの間の静電容量Cwgがより小さく、アンテナとしての帯域幅は広くなる。
図5(b)は図5(a)の基板50のチップアンテナ80を実装した側から見た平面図、図5(c)は基板50の裏面側から見た平面図を示す。図5(c)においてチップアンテナ80が実装された面に対応する部分は、グランドパターン53は無く、チップアンテナ80と基板50との間で静電容量を形成しないようにしている。それにより帯域幅を広くできる。なお、図5(b)において、給電用端子21の給電用パターン51の反対側51bはグランドパターン53に接続され接地されている。
図6は、表面実装型チップアンテナを実装したアンテナ装置を用いた携帯電話等の通信機器99の部分概略図である。本発明の第2の目的は、スピーカ等の金属機能部品の近くにチップアンテナが配設された場合の相互干渉を防止することであった。そこで、このアンテナ装置では、スピーカ60やバイブレータ70などの金属機能部品と、これに隣接してアンテナから放射される電磁波の4分の1波長(λ/4)以内の距離にチップアンテナ80、80’を配置するときには、金属機能部品の電源部63側の端子にフィルタ回路61、71を接続したものである。携帯電話の場合は経験的にはチップアンテナの周囲およそ30mm以内の範囲に実装される金属機能部品からの影響が大きいと言えるので30mm以内を目安にすれば良い。
尚、ここで用いるチップアンテナは、無論上記したチップアンテナ80を用いても良いが、これに限るものではない。従来周知の通常のチップアンテナ80’でもよい。即ち、この発明では、金属機能部品とチップアンテナとが隣接するアンテナ装置において、金属機能部品の電源側端子にフィルタ回路を接続することを要旨とするのでチップアンテナの種類は問わない。また、図6ではチップアンテナ80又は80’とフィルタ回路61、71とは別体に設けた例を示すが、一体に設けてモジュールにすることもできる。チップアンテナとフィルタを一体化したモジュールや、フィルタと金属機能部品を一体化したモジュールを構築することもできる。
以下、実施例により本発明のチップアンテナ80を具体的に説明する。幅3mm、長さ15mm,高さ2mmの誘電体の基体10に、導電線40の幅Ww=0.8mm、導電線40の厚みTw=0.13mmの銅線を3.5ターン巻回した。凹部30の深さdgは0.5mmとした。給電用端子21と固定用端子22は、予めパターン印刷したAg電極を用いた。
図8は、このようなチップアンテナ80を基板50に実装したものを組み込んだ通信機器99を示す。この通信機器99を電波暗室で、ネットワークアナライザを用いたアンテナの利得測定装置にかけて、アンテナの電力利得、指向性パターンを測定した。測定したのは図9に示すZX平面においてであり、垂直偏波と水平偏波の振動方向は、図9に示した方向成分である。
図10に垂直偏波(実線)と水平偏波(破線)の電力利得、指向性パターンを示す。このように実施例のアンテナは良好なアンテナ特性を有することが確認された。
また、平均利得の周波数特性を図11に示す。平均利得は、図10に示す垂直偏波の利得の平均値を示す。広い周波数範囲にわたって−4dBi以上の良好なアンテナ利得の得られることが分かる。すなわち広帯域であることが分かる。ここで、dBiは基準アンテナに対するアンテナが放射する出力の測定単位で、デシベルで表示される。
次に、図23に示す従来のチップアンテナを用いて同様の試験を行った。この場合の平均利得は−7dBiと低かった。また帯域幅も本発明のアンテナに比べ1/2程度であり狭かった。
図12は別の実施例を示す。図12(a)は、実施例1で固定用端子22をグランドパターン53に接続した例を示す。図12(b)は実装面を見た上面図、図12(c)はその裏側から見た平面図を示す。この場合には、図1に示した開放端42とグランドパターン53との距離が縮まって、形成される静電容量が大きくなる。また、本実施例では、チップアンテナの給電端子と基板側の接地導体を接続している。この構造により、アンテナ入力側インピーダンスを50Ωに整合した。このようにして帯域幅、アンテナ利得を調整できる。この場合も実施例1と同様、周波数850MHzにおいて帯域幅は120MHzあり、携帯電話の通信帯域には十分である。また、アンテナ利得は0dBであり、従来のホイップアンテナに比較しても同等以上の性能が得られた。
図13は、導電線44、45を2つ巻回してデュアルバンドに対応させた例を示す。図13(b)は、図13(a)を反対側から見た図である。第1の導電線44は、給電用端子21Lから時計方向に基体10に巻回されて開放端43Lを形成し、第2の導電線45は、給電用端子21Rから反時計方向に基体10に巻回されて開放端43Rを形成する。図13(c)は、アンテナを基板50に実装したものを示す。表面実装型チップアンテナ80の両端の給電用端子21R、21Lは給電用パターン51R、51Lを介して高周波電源に接続される。この場合も実施例1と同様、良好な帯域幅とアンテナ利得が得られた。各々の巻線の巻数を変えることにより、それぞれの共振周波数が異なり、デュアルバンド動作が発生する。また、実施例3の場合には互いの巻線方向が反対方向について述べたが、巻線方向が同じ場合でも、デュアルバンドのアンテナ動作は発生する。
図14は、更に別の実施例を示す。第1の導電線44は、給電用端子21Lから時計方向に基体10に巻回されて開放端43Lを形成し、第2の導電線45は、基体10の中央部に形成された給電用端子21Mから同じく時計方向に巻回されて開放端43Mを形成する。図14(b)は、図14(a)を反対側から見た図である。この場合も実施例1と同様、良好な帯域幅とアンテナ利得が得られた。具体的には、周波数850MHzにおいて帯域幅は110MHz、アンテナ利得は0dBであり、従来のチップアンテナやホイップアンテナに比べても同等以上の性能が得られた。
図15は、本発明に係る表面実装型チップアンテナの切り替えを説明する模式図である。図15(A)は実施例1、実施例2に示すようにアンテナ素子が1個の場合、図15(B)はアンテナ素子が2個の場合を示す。後者の場合は、実施例3、実施例4に示したように単一の基体10に巻回された第1の導電線44、第2の導電線45から独立に信号を送受信することができ、そのための入出力端子を単一の基体から形成することができる。従って、アンテナ共用器や帯域通過フィルタ、スイッチが不要である。本発明に係る表面実装型チップアンテナが図11で示したように広い帯域幅を持つから、周波数の離れたF1、F2の異なる信号でも1個の表面実装型チップアンテナで対応できるためである。
図16、図17は、本発明の表面実装型チップアンテナ80を実装した通信機器99の別実施例を示す図である。表面実装型チップアンテナ80は、図8に示した実装位置のみならず種々の位置に配設することができる。本発明の表面実装型チップアンテナ80が、図10で示したように良好な指向性パターンを示すからである。また、いずれもチップアンテナと送受信回路を伝送線路で接続している。この線路は同軸ケーブル、フレキシブル・ケーブル、基板上に形成したマイクロ・ストリップ線路等で構成してもよい。さらに、図16のようにアンテナを携帯電話のキーボード側のマイク付近に配置した場合、携帯電話を使用したときアンテナから人体頭部が離れるため、アンテナから送信される電磁波の一部が人体(頭部)に吸収されるのを低減することにより、指向性の乱れを軽減し安定に通信できる効果がある。
本発明のもう一つの発明は、チップアンテナとスピーカ、バイブレータ、小型CCDカメラ等の金属機能部品を近接して配置した場合のアンテナ装置に関し、この金属機能部品の電源側端子にフィルタ回路を接続したことを要旨とするものである(図6、図7参照)図7に示した等価回路において1.575GHzを中心としたノッチフィルタ61および71のコンデンサCを0.5pF、インダクタLを18nHとした場合の周波数特性をネットワークアナライザで測定した結果を図18に示す。ノッチフィルタの挿入損失(=S21パラメータ測定値[dB]の絶対値)は周波数1575MHz付近で最大47dBとなった。また、挿入損失が大きくなるほど入力信号を遮断し易くなると共に、この遮断周波数fc[Hz]はノッチフィルタの回路素子(L、C)の組合せから次式により決定される。
fc=2π/√(L×C)
このような1575MHzを中心とした周波数特性のフィルタを用いることにより、アンテナの共振周波数1575MHzの共振電流が金属機能部品に流れるのを防止できる。図6に示すノッチフィルタ61および71がない場合、チップアンテナを流れる共振電流の電磁結合により、アンテナ周囲の金属部分が接地導体にアンテナ電流を妨げる向きに電流が流れる。この結果、アンテナから空間への電磁波の放射が阻害されることにより、放射効率や利得が低下してしまう。図6のように、金属部品と基板上の接地導体との間に電磁波と同じ周波数帯域のノッチフィルタを設けることにより、金属部分を流れる電流を阻害し、アンテナから効率よく電磁波を放射できる。アンテナの共振電流によって金属部分に電流が誘起される距離は、電磁波の4分の1波長(λ/4)以下で起こりやすい。この距離は、
λ/4=300×1000/4f0
によって求められる。本実施例においてチップアンテナと金属機能部品は、λ/4(約48mm)以内の距離に配置されていたので、アンテナの高効率化や高利得化に効果があった。因みに、無線LANやブルートゥースで用いられる2400MHz帯では約30mm以内、5GHz帯の無線LANでは約15mm以内となる。しかし、800MHz帯の携帯電話システムでは現実的な範囲としてλ/10程度の37mm以内、経験的には30mm以内が目安となるであろう。
図19から、比較例の曲線Cに比べて、フィルタを入れた曲線Bは平均利得で1dB以上の改善が見られる。これはフィルタ61、71を設けた効果である。
11:実装面となる主面
12:実装面に対向する主面
13:給電側側面
14:開放端側側面
15、16:端面
21:給電用端子
21a,21b:給電用端子
22:固定用端子
23:グランド端子
30:凹部
40:導電線
41:接続部
42:開放部
43:開放端
44:第1の導電線
45:第2の導電線
50:基板
51:給電用パターン
52:固定用パターン
53:グランドパターン
60:スピーカ
61,71:フィルタ
63:電源部
62、72:リード線
70:バイブレータ
73:通信・制御部
80、80’:チップアンテナ
99:通信機器
Cwg:導電線とグランドとの間の静電容量
Cws:導電線の線間容量
dg:凹部の深さ
Lw:導電線のインダクタンス
Pw:導電線のピッチ
Ww:導電線の幅
Tw:導電線の厚み
EL:電気力線
Claims (10)
- 誘電体、磁性体、またはそれらの混合物でなる基体と、前記基体の実装面に設けられた少なくとも1つの端子部と、前記基体の実装面に前記端子部を除いて設けられた凹部と、前記基体に巻回された少なくとも1つの導電線を具備してなることを特徴とする表面実装型チップアンテナ。
- 前記導電線が平角導電線であって、前記凹部に螺旋状に巻回したことを特徴とする請求項1記載の表面実装型チップアンテナ。
- 前記チップアンテナの基体は、高さ5mm以下、基体の長さ30mm以下、凹部は前記基体高さの1/2以下であり、前記平角導線は、幅2mm以下、厚さ0.01〜0.2mmであることを特徴とする請求項2記載の表面実装型チップアンテナ。
- 前記導電線を複数備え、前記端子部が少なくとも2つである、複数の周波数帯域に対応できることを特徴とする請求項1または2記載の表面実装型チップアンテナ。
- 金属機能部品の近くに配設される表面実装型チップアンテナと、前記金属機能部品の電源側端子に接続したフィルタ回路とでなることを特徴とする表面実装型アンテナ装置。
- 前記金属機能部品が、スピーカ、バイブレータ、小型CCDカメラの少なくとも1つであることを特徴とする請求項5記載の表面実装型アンテナ装置。
- 前記表面実装型チップアンテナと金属機能部品との最も近接した距離が当該チップアンテナから放射、またはアンテナに受信される電磁波の波長λの4分の1(λ/4)以内であることを特徴とする請求項5または6記載の表面実装型アンテナ装置。
- 請求項1〜4の何れかに記載のチップアンテナを用いたことを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の表面実装型アンテナ装置。
- 請求項1〜4の何れかに記載の表面実装型チップアンテナを搭載したことを特徴とする通信機器。
- 請求項5〜8の何れかに記載の表面実装型アンテナ装置を搭載したことを特徴とする通信機器。
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