JP2004303813A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性高分子を固体電解質に用いた固体電解コンデンサのコンデンサ素子の大きさのばらつきを無くし、小形化を図る。
【解決手段】タンタル粉末の焼結体をコンデンサ素子とし、このコンデンサ素子を3,4−エチレンジオキシチオフェン溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬して酸化重合して固体電解質とした固体電解コンデンサの製造方法として、コンデンサ素子を酸化剤溶液に浸漬している間、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行い、導電性高分子層を形成する。また、重合は複数回行い、最後の重合工程では、コンデンサ素子の陽極導出線が導出された端面と反対側の端面よりコンデンサ素子を酸化剤溶液に所定深さまで浸漬した状態で重合を行う。
【選択図】 図2
【解決手段】タンタル粉末の焼結体をコンデンサ素子とし、このコンデンサ素子を3,4−エチレンジオキシチオフェン溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬して酸化重合して固体電解質とした固体電解コンデンサの製造方法として、コンデンサ素子を酸化剤溶液に浸漬している間、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行い、導電性高分子層を形成する。また、重合は複数回行い、最後の重合工程では、コンデンサ素子の陽極導出線が導出された端面と反対側の端面よりコンデンサ素子を酸化剤溶液に所定深さまで浸漬した状態で重合を行う。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は固体電解コンデンサの製造方法に関し、特に導電性高分子を固体電荷質に用いた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、高速化、高周波化に伴い、電解コンデンサにおいても小型化、高周波性能の向上が求められている。従来、固体電解コンデンサの固体電解質としては二酸化マンガン等の無機半導体が用いられていたが、これらの物質の電導度は必ずしも高いものではないため、高周波領域でのインピーダンスが大きく、このような固体電解コンデンサでは高周波対応の電子機器へ応用することが困難になりつつある。このため、より電導度の高い機能性高分子を固体電解質として用いた高周波数領域でのインピーダンス特性が改善された固体電解コンデンサが開発されている。
【0003】
導電性高分子を固体電解質に用いたコンデンサとしては従来より図1に示す構造のものが知られている。すなわち、符号1はコンデンサ素子であり、タンタル等の弁作用金属の微粉末を直方体状に成形し、焼結して形成したものである。コンデンサ素子1には陽極導出線8が植設されており、直方体状のコンデンサ素子1の一つの端面から導出されている。コンデンサ素子1の表面には誘電体参加皮膜が形成されており、さらにこの誘電体酸化皮膜の上に導電性高分子層2が形成される。導電性高分子層2の上には、カーボン層3、銀ペースト層4が順次形成され、銀ペースト層4には陰極リード線が取り付けられ、外部に引き出されている。一方、陽極導出線8には、陽極リード線5が溶接されて外部に引き出されている。さらにコンデンサ素子1は外装樹脂7によって樹脂外装を施し、陽極リード線5、陰極リード線6を外装樹脂7の外周に沿って折り曲げて、固体電解コンデンサが形成されている。
【0004】
導電性高分子層2の形成方法としては、化学酸化重合及び電解重合によって製作できるが、電解重合手段を講じた場合、一個に数点の重合用電極を取り付けることが必要であることと、導電性高分子が電極上にフィルム状に形成されるため大量に製造することに困難性が伴う問題を抱えているのに対して、化学酸化重合手段の場合は、そのような問題はなく、電解重合と比較して大量の導電性高分子層を容易に得ることができることは当業者の中では良く知られている。
【0005】
そして、化学酸化重合による導電性高分子層2の形成方法としては、例えば特開平11−238648号公報によって開示されたものがある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−238648号公報
【0007】
この製造方法を図3とともに説明すると、まず、図3(a)に示すように、コンデンサ素子1を所定の重合性モノマー溶液11に浸漬する。この際にはコンデンサ素子1の陽極導出線8を治具12で把持するようにして保持し、コンデンサ素子1の陽極導出線8が植設された端面の対向端面(以下、この明細書中では下部端面と表現する)より、重合性モノマー溶液11に浸漬するように降下させる(モノマー浸漬工程)。この際のコンデンサ素子1の浸漬深さは、陽極導出線8の導出端面と重合性モノマー溶液11の液面が同レベルとなる深さまで浸漬する。
【0008】
そして、図3(b)に示すように、コンデンサ素子1を重合性モノマー溶液11に所定時間浸漬した後、コンデンサ素子1を引き上げて放置する。このように大気中にコンデンサ素子1を放置することによって、重合性モノマー溶液を希釈している溶媒が揮発して、コンデンサ素子1に重合性モノマーが付着した状態となる。
【0009】
次に、図3(c)に示すように、コンデンサ素子1を酸化剤溶液12に浸漬する(酸化剤浸漬工程)。この酸化剤溶液12に浸漬することによって、重合性モノマーが化学酸化重合を開始し、高分子化する。この酸化剤含浸工程での浸漬深さも、モノマー含浸工程と同じように、陽極導出線8の導出端面と酸化剤溶液12の液面が同レベルとなる深さまで浸漬する。
【0010】
さらに、図3(d)に示すように、コンデンサ素子1を引き上げて、純水の流水によってコンデンサ素子を洗浄し、さらに乾燥させる(洗浄・乾燥工程)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、化学重合で得られる導電性高分子層は、電解重合法のように導電性高分子の形成を制御する作用は無いため、自然に任せた化学反応により微小な粒子の集合体となり、かつそれらの微小粒子を核として一方向に異常成長する場合がある。
【0012】
特に、固体電解コンデンサの静電容量の増加およびESR等の電気的特性の向上を図るためには、コンデンサ素子の内部に十分な量の導電性高分子層を形成する必要があるが、このためには、一般的に高濃度のモノマー溶液を含浸し、その後、高濃度酸化剤溶液中に浸漬し、長時間放置することにより化学酸化重合が行われることになる。しかし、このような方法の場合には、同時にコンデンサ素子表面部にも導電性ポリマーが形成され、かつ導電性高分子の微小粒子を核として導電性高分子が一方向に異常成長することが多い。
【0013】
このため、コンデンサ素子の外周に導電性高分子が異常成長した場合には、図5に示すように、コンデンサ素子の外観の凹凸が大きなものとなり、コンデンサ素子寸法が大きく、またばらつく等の問題を抱える結果となっていた。コンデンサ素子をモールド成形する製品においては、このようなコンデンサ素子の表面の凹凸が大きい場合には、成形樹脂層を厚さにマージンをとることが必要となり、製品寸法を大きく設計せざるを得ない問題があった。今後、ますます部品の小型化が望まれる中で、このような欠点は大きな問題であった。
【0014】
また、導電性高分子層の重合工程においては、図4に示すように、陽極導出線1が植立された端面以外の5つの面の平坦部の他、コンデンサ素子1の各辺(稜線)とコンデンサ素子の下部端面の頂点の上にも形成される。
【0015】
しかしながら、上述の引き上げ工程でコンデンサ素子1の表面に付着したモノマー溶液は、表面張力によってコンデンサ素子1の平坦部の中央部に引き寄せられたまま乾燥し、酸化剤浸漬工程に移行する。このため、コンデンサ素子1の平坦部、特にその中央部には導電性高分子層2が厚く形成されるが、コンデンサ素子1の各辺(稜線)、コンデンサ素子の下部端面の頂点には導電性高分子層2が形成されにくく、形成されても導電性高分子層2の厚さが薄くなってしまう。特に、コンデンサ素子の下部端面の頂点においてはこの傾向が著しい。
【0016】
そして、このコンデンサ素子1を用いて図1に示された固体電解コンデンサとする際に、外装樹脂7によって樹脂外装を施すと、上述の導電性高分子層2が形成されていないか、または非常に薄い部分に外装樹脂7から応力が加わり、この下に形成された誘電体酸化皮膜を損傷し、漏れ電流が増大する場合がある。
【0017】
そこで、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に浸漬を繰り返し、コンデンサ素子1下部端面の頂点にも導電性高分子層2を十分な厚さになるまで重合を繰り返すことも考えられるが、重合を繰り返すと、コンデンサ素子1の平坦部の導電性高分子層2の厚さが厚くなってしまい、コンデンサ素子1全体の形状にばらつきを生じてしまう。コンデンサ素子1の大きさのばらつきが大きくなると、外装樹脂のマージンを大きく取らねばならず、固体電解コンデンサの小形化を阻害する要因となってしまう。
【0018】
上述の問題を解決するために特開平9−306787号公報においては、機能性高分子を固体電解質として用いた固体電解コンデンサを製造する際、陽極導出線を植設させたコンデンサ素子上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成するにおいて、モノマー溶液と酸化剤溶液からなる重合反応液に、前記コンデンサ素子を浸漬し、このコンデンサ素子を引き上げ、乾燥・重合する塗布形成工程のうち、乾燥・重合時に前記コンデンサ素子の辺または頂点が下端となるように固定して保持することによって解決できるとしている。
【0019】
しかしながら、上述の特開平9−306787号公報に示された方法によれば、下端となった辺または頂点においては、所望の厚さの導電性高分子層を形成することができるが、その他の辺や頂点には導電性高分子層を所望の厚さに形成することができない。例えば直方体形状のコンデンサ素子の底辺には4つの辺があるが、このそれぞれに所望の厚さの動電子高分子層を形成するのは、少なくとも4回の重合を行わなければならず、作業工程の煩雑化を招いてしまう。
【0020】
この発明は、上記問題を解決するもので、コンデンサ素子表面に均一な導電性高分子層を形成して寸法精度の高いコンデンサ素子を形成し、固体電解コンデンサの小型化とともに電気的特性の向上を図ることのできる固体電解コンデンサの製造方法を提供することを第1の目的する。
【0021】
また、この発明では、簡易な方法によって導電性高分子層をほぼ均一の厚さとすることで、ショート不良の発生を低減することができる固定電解コンデンサの製造方法を提供することを第2の目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、陽極導出線を植設し表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属からなるコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬することを繰り返すことによって誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ素子を酸化剤溶液中に浸漬している間、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行ったことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0023】
コンデンサ素子に形成さらた誘電体酸化皮膜層は絶縁体であるが、誘電体酸化皮膜層の欠陥部等より漏れ電流が流れることが知られている。そこで、コンデンサ素子を酸化剤溶液中に浸漬している間、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行うことにより、コンデンサ素子の誘電体酸化皮膜層の表面では、モノマーと酸化剤が接触することで化学重合による導電性高分子層が形成されるとともに、コンデンサ素子からの漏れ電流が流れることで、モノマーの電解重合が同時に進行する。このため、誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を所望の厚さにまで形成する時間を短くすることができる。
【0024】
請求項2に係る発明は、陽極導出線を植設し表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属からなるコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬することを繰り返すことによって誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらに酸化剤溶液に浸漬する工程を所定回数行った後、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらにコンデンサ素子の陽極導出線が導出された端面の反対端部からコンデンサ素子を酸化剤溶液に所定深さまで浸漬した状態で、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行い、導電性高分子層を形成したことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0025】
コンデンサ素子の下部端面のみを酸化剤溶液に浸漬することによって、酸化剤溶液と接触している部分のみで重合が進行する。また、コンデンサ素子からの漏れ電流は、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点に集中するため、この部分では電解重合が集中的に進行するようになる。このため、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点では電解重合がより進行し、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点にも十分な厚さの導電性高分子層が形成されるようになる。
【0026】
請求項3に係る発明は、陽極導出線を植設し表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属からなるコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬することを繰り返すことによって誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらに酸化剤溶液に浸漬した状態で陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行う工程を所定回数行った後、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらにコンデンサ素子の陽極導出線が導出された端面の反対端部からコンデンサ素子を酸化剤溶液に所定深さまで浸漬した陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行い、導電性高分子層を形成したことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0027】
コンデンサ素子を酸化剤溶液中に浸漬している間、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行うことにより、コンデンサ素子の誘電体酸化皮膜層の表面では、モノマーと酸化剤が接触することで化学重合による導電性高分子層が形成されるとともに、コンデンサ素子からの漏れ電流が流れることで、モノマーの電解重合が同時に進行する。このため、誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を所望の厚さにまで形成する時間を短くすることができる。このことにより、化学重合による導電性高分子の一方向への異常成長を抑制することができ、コンデンサ素子の導電性高分子層の均一化を図ることができる。また、コンデンサ素子の下部端面のみを酸化剤溶液に浸漬することによって、酸化剤溶液と接触している部分のみで重合が進行する。また、コンデンサ素子からの漏れ電流は、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点に集中するため、この部分では電解重合が集中的に進行するようになる。このため、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点では電解重合がより進行し、特にコンデンサ素子の下部端面の辺や頂点にも十分な厚さの導電性高分子層が形成されるようになる。
【0028】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項3に係る発明において、重合性モノマー溶液にアニオン性界面活性剤を添加したことを特徴とする。
【0029】
アニオン性界面活性剤を重合性モノマー溶液に添加しておくことにより、重合性モノマーをコンデンサ素子に含浸した際、重合性モノマーはアニオン性界面活性剤が配向し負に帯電する。その後のコンデンサ素子を酸化剤溶液に浸漬した際、コンデンサ素子を正極として直流電圧を印加すると、負に帯電した重合性モノマーはコンデンサ素子の内部あるいは近傍に留まり、酸化剤溶液側への拡散が抑制される。この状態で重合性モノマーが高分子化するため、コンデンサ素子の外部方向への導電性高分子の異常成長が起こりづらくなる。
【0030】
請求項5に係る発明は、前記重合性モノマーがチオフェン又はその誘導体からなるモノマーであることを特徴とする。
【0031】
チオフェンの誘導体としては次に掲げる構造のものを例示できる、チオフェン又はその誘導体は、ポリピロール又はポリアニリンと比較して、導電率が高いとともに熱安定性が特に優れているため、低ESRで耐熱特性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。また、弁作用金属の微粉末を焼結させた焼結体をコンデンサ素子として用いる固体電解コンデンサにおいては、導電性高分子が面状よりも粒子状に成長する酸化剤が好ましく、このような酸化剤としては過硫酸塩、またはスルホン酸塩の溶液が好適である。
【0032】
【化1】
XはOまたはS
XがOのとき、Aはアルキレン、又はポリオキシアルキレン
Xの少なくとも一方がSのとき、
Aはアルキレン、ポリオキシアルキレン、置換アルキレン、置換ポリオキシアルキレン:ここで、置換基はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基
【0033】
請求項6に係る発明は、請求項4に記載の固体電解コンデンサにおいて、前記チオフェンの誘導体が3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする。
【0034】
3,4−エチレンジオキシチオフェンは、酸化剤と接触することで、緩やかな重合反応によってポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を生成するため、3,4−エチレンジオキシチオフェンのモノマー溶液を微細な構造を有するコンデンサ素子の内部にまで浸透した状態で重合させることができる。この結果、コンデンサ素子の内部にまで導電性高分子層を形成することができるようになり、固体電解コンデンサの静電容量の増大を図ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の実施に形態について図1、図2とともに説明する。図1は固体電解コンデンサの断面図、図2はこの発明の固体電解コンデンサの製造方法の工程を説明する図面である。
【0036】
コンデンサ素子1はタンタル微粉末を直方体形状に成型し、焼結して形成されたものである。このコンデンサ素子1にはタンタルよりなる陽極導出線8が植設され、外部に導出されている。このコンデンサ素子1のタンタルの表面には、公知の方法により誘電体酸化皮膜が形成される。
【0037】
このようなコンデンサ素子1を形成するには、タンタルの他、アルミニウム、ニオブ、チタン等の弁作用金属の粉末を用いることができる。
【0038】
このコンデンサ素子1に導電性高分子層2を形成するために、図2(a)に示すように、まずコンデンサ素子1を重合性モノマー溶液11に浸漬する。重合性モノマー溶液11は3,4−エチレンジオキシチオフェンをイソプロピルアルコールを所定の割合で希釈し、アニオン性界面活性剤を添加したものである。希釈することによって重合性モノマー溶液11の粘性が低くなり、コンデンサ素子1の内部にまで重合性モノマーが浸透しやすくなる。この重合性モノマー溶液11にはコンデンサ素子1を所定時間浸漬する。この際、コンデンサ素子1の浸漬深さは、図2(a)に示すように、コンデンサ素子1の陽極導出線8の導出端面と重合性モノマー溶液11の液面が同レベルとなる深さまで浸漬する。
【0039】
コンデンサ素子1を重合性モノマー溶液11に所定時間浸漬した後、コンデンサ素子1を重合性モノマー溶液より引き上げ(図2(b))、大気中で放置する。この大気中への放置によって重合性モノマー溶液のイソプロピルアルコールが揮発し、3,4−エチレンジオキシチオフェンがコンデンサ素子1に付着した状態となる。
【0040】
さらに、図2(c)に示すように、コンデンサ素子1を酸化剤溶液12に浸漬する。酸化剤溶液12は純水等の所定溶媒に、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩やスルホン酸塩を溶解した溶液を用いることができる。
【0041】
この酸化剤溶液12にコンデンサ素子1を浸漬する際のコンデンサ素子1の浸漬深さは、コンデンサ素子1の陽極導出線8が植設された端面と液面がほぼ同レベルとなる深さに浸漬する。そして、この状態で、コンデンサ素子側を正極、酸化剤溶液側を負極とする直流電圧を印加する。
【0042】
より具体的には、コンデンサ素子1の陽極導出線8にリード線14を接続するとともに、酸化剤溶液12に白金電極等の電極15を浸漬し、それぞれ直流電源16に接続して、定電圧を印加する。この際の印加電圧は、コンデンサ素子1の化成電圧を超えない範囲で適宜選択することができる。
【0043】
このコンデンサ素子の酸化剤溶液12への浸漬、および直流電圧の印加によって、重合性モノマーの重合が進行し、高分子化する。この結果、コンデンサ素子1の表面に導電性高分子層2が形成される。すなわち、酸化剤溶液への浸漬によって、化学重合により高分子化するとともに、電圧を印加することによって、コンデンサ素子からの漏れ電流によって、電解重合が起こり導電性高分子の重合が起こる。この二つの重合が同時に進行するため、導電性高分子層が所望の厚さになるまでの重合反応の時間が短いものとなる。
【0044】
重合を行った後、コンデンサ素子1を引き上げ(図2(d))、さらに純水による流水で洗浄する。その後コンデンサ素子を乾燥し、1回の重合を終える。
【0045】
以上のような、重合性モノマー溶液への浸漬から乾燥までの工程(図2(a)〜(d))を3回繰り返し、所望の厚さの導電性高分子層を得る。
【0046】
さらに、図2(e)に示すように、コンデンサ素子1を重合性モノマー溶液11への浸漬、放置、引き上げまでの工程を行い、その後、図2(f)に示すように、酸化剤溶液12への浸漬を行う。この際の酸化剤溶液12への浸漬深さは、コンデンサ素子1の下部端面のみを浸漬するようにする。
【0047】
この状態で、再びコンデンサ素子側に正極、酸化剤溶液側に負極の電圧を印加する。このようにコンデンサ素子1の下部端面のみを酸化剤溶液12に浸漬することによって、酸化剤溶液12と接触している部分のみで重合が進行する。また、コンデンサ素子からの漏れ電流は、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点に集中するため、この部分では電解重合が集中的に進行するようになる。このため、コンデンサ素子1の下部端面のみに導電性高分子層2が形成され、コンデンサ素子1の下部端面の辺や頂点にも十分な厚さの導電性高分子層2が形成されるようになる。
【0048】
さらに、純水洗浄、乾燥まで行った後、導電性高分子層2の上にカーボン層3、銀ペースト層4を形成する。さらに、陽極導出線8に陽極リード線5を溶接するとともに、銀ペースト層4上に、陰極リード線6を取り付ける。そして、外装樹脂7で樹脂被覆して、外装樹脂7に沿って陽極リード線5、陰極リード線6を折り曲げて、固体電解コンデンサを得る。
【0049】
【発明の効果】
この発明によると、コンデンサ素子表面に均一な導電性高分子層を形成して寸法精度の高いコンデンサ素子を形成し、固体電解コンデンサの小型化とともに電気的特性の向上を図ることができる。
【0050】
また、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点にも十分な厚さの導電性高分子層が形成されるようになる。このため、コンデンサ素子の樹脂外装時に、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点に過度なストレスが加わることがなく、この部分での誘電体酸化皮膜の損傷による漏れ電流の増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体電解コンデンサの内部構造を示す断面図である。
【図2】この発明の固体電解コンデンサの製造方法を示す図面で、(a)〜(f)は各工程を表す。
【図3】従来の固体電解コンデンサの製造方法を示す図面で、(a)〜(d)は各工程を表す。
【図4】従来の固体電解コンデンサの製造方法によって、作成されるコンデンサ素子の状態を示す図面である。
【図5】従来の固体電解コンデンサの製造方法によって、作成されるコンデンサ素子の状態を示す図面である。
【符号の説明】
1 コンデンサ素子
2 導電性高分子層
3 カーボン層
4 銀ペースト層
5 陽極リード線
6 陰極リード線
7 外装樹脂
8 陽極導出線
11 重合性モノマー溶液
12 酸化剤溶液
14 電極
15 白金電極
16 直流電源
【0001】
本発明は固体電解コンデンサの製造方法に関し、特に導電性高分子を固体電荷質に用いた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、高速化、高周波化に伴い、電解コンデンサにおいても小型化、高周波性能の向上が求められている。従来、固体電解コンデンサの固体電解質としては二酸化マンガン等の無機半導体が用いられていたが、これらの物質の電導度は必ずしも高いものではないため、高周波領域でのインピーダンスが大きく、このような固体電解コンデンサでは高周波対応の電子機器へ応用することが困難になりつつある。このため、より電導度の高い機能性高分子を固体電解質として用いた高周波数領域でのインピーダンス特性が改善された固体電解コンデンサが開発されている。
【0003】
導電性高分子を固体電解質に用いたコンデンサとしては従来より図1に示す構造のものが知られている。すなわち、符号1はコンデンサ素子であり、タンタル等の弁作用金属の微粉末を直方体状に成形し、焼結して形成したものである。コンデンサ素子1には陽極導出線8が植設されており、直方体状のコンデンサ素子1の一つの端面から導出されている。コンデンサ素子1の表面には誘電体参加皮膜が形成されており、さらにこの誘電体酸化皮膜の上に導電性高分子層2が形成される。導電性高分子層2の上には、カーボン層3、銀ペースト層4が順次形成され、銀ペースト層4には陰極リード線が取り付けられ、外部に引き出されている。一方、陽極導出線8には、陽極リード線5が溶接されて外部に引き出されている。さらにコンデンサ素子1は外装樹脂7によって樹脂外装を施し、陽極リード線5、陰極リード線6を外装樹脂7の外周に沿って折り曲げて、固体電解コンデンサが形成されている。
【0004】
導電性高分子層2の形成方法としては、化学酸化重合及び電解重合によって製作できるが、電解重合手段を講じた場合、一個に数点の重合用電極を取り付けることが必要であることと、導電性高分子が電極上にフィルム状に形成されるため大量に製造することに困難性が伴う問題を抱えているのに対して、化学酸化重合手段の場合は、そのような問題はなく、電解重合と比較して大量の導電性高分子層を容易に得ることができることは当業者の中では良く知られている。
【0005】
そして、化学酸化重合による導電性高分子層2の形成方法としては、例えば特開平11−238648号公報によって開示されたものがある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−238648号公報
【0007】
この製造方法を図3とともに説明すると、まず、図3(a)に示すように、コンデンサ素子1を所定の重合性モノマー溶液11に浸漬する。この際にはコンデンサ素子1の陽極導出線8を治具12で把持するようにして保持し、コンデンサ素子1の陽極導出線8が植設された端面の対向端面(以下、この明細書中では下部端面と表現する)より、重合性モノマー溶液11に浸漬するように降下させる(モノマー浸漬工程)。この際のコンデンサ素子1の浸漬深さは、陽極導出線8の導出端面と重合性モノマー溶液11の液面が同レベルとなる深さまで浸漬する。
【0008】
そして、図3(b)に示すように、コンデンサ素子1を重合性モノマー溶液11に所定時間浸漬した後、コンデンサ素子1を引き上げて放置する。このように大気中にコンデンサ素子1を放置することによって、重合性モノマー溶液を希釈している溶媒が揮発して、コンデンサ素子1に重合性モノマーが付着した状態となる。
【0009】
次に、図3(c)に示すように、コンデンサ素子1を酸化剤溶液12に浸漬する(酸化剤浸漬工程)。この酸化剤溶液12に浸漬することによって、重合性モノマーが化学酸化重合を開始し、高分子化する。この酸化剤含浸工程での浸漬深さも、モノマー含浸工程と同じように、陽極導出線8の導出端面と酸化剤溶液12の液面が同レベルとなる深さまで浸漬する。
【0010】
さらに、図3(d)に示すように、コンデンサ素子1を引き上げて、純水の流水によってコンデンサ素子を洗浄し、さらに乾燥させる(洗浄・乾燥工程)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、化学重合で得られる導電性高分子層は、電解重合法のように導電性高分子の形成を制御する作用は無いため、自然に任せた化学反応により微小な粒子の集合体となり、かつそれらの微小粒子を核として一方向に異常成長する場合がある。
【0012】
特に、固体電解コンデンサの静電容量の増加およびESR等の電気的特性の向上を図るためには、コンデンサ素子の内部に十分な量の導電性高分子層を形成する必要があるが、このためには、一般的に高濃度のモノマー溶液を含浸し、その後、高濃度酸化剤溶液中に浸漬し、長時間放置することにより化学酸化重合が行われることになる。しかし、このような方法の場合には、同時にコンデンサ素子表面部にも導電性ポリマーが形成され、かつ導電性高分子の微小粒子を核として導電性高分子が一方向に異常成長することが多い。
【0013】
このため、コンデンサ素子の外周に導電性高分子が異常成長した場合には、図5に示すように、コンデンサ素子の外観の凹凸が大きなものとなり、コンデンサ素子寸法が大きく、またばらつく等の問題を抱える結果となっていた。コンデンサ素子をモールド成形する製品においては、このようなコンデンサ素子の表面の凹凸が大きい場合には、成形樹脂層を厚さにマージンをとることが必要となり、製品寸法を大きく設計せざるを得ない問題があった。今後、ますます部品の小型化が望まれる中で、このような欠点は大きな問題であった。
【0014】
また、導電性高分子層の重合工程においては、図4に示すように、陽極導出線1が植立された端面以外の5つの面の平坦部の他、コンデンサ素子1の各辺(稜線)とコンデンサ素子の下部端面の頂点の上にも形成される。
【0015】
しかしながら、上述の引き上げ工程でコンデンサ素子1の表面に付着したモノマー溶液は、表面張力によってコンデンサ素子1の平坦部の中央部に引き寄せられたまま乾燥し、酸化剤浸漬工程に移行する。このため、コンデンサ素子1の平坦部、特にその中央部には導電性高分子層2が厚く形成されるが、コンデンサ素子1の各辺(稜線)、コンデンサ素子の下部端面の頂点には導電性高分子層2が形成されにくく、形成されても導電性高分子層2の厚さが薄くなってしまう。特に、コンデンサ素子の下部端面の頂点においてはこの傾向が著しい。
【0016】
そして、このコンデンサ素子1を用いて図1に示された固体電解コンデンサとする際に、外装樹脂7によって樹脂外装を施すと、上述の導電性高分子層2が形成されていないか、または非常に薄い部分に外装樹脂7から応力が加わり、この下に形成された誘電体酸化皮膜を損傷し、漏れ電流が増大する場合がある。
【0017】
そこで、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に浸漬を繰り返し、コンデンサ素子1下部端面の頂点にも導電性高分子層2を十分な厚さになるまで重合を繰り返すことも考えられるが、重合を繰り返すと、コンデンサ素子1の平坦部の導電性高分子層2の厚さが厚くなってしまい、コンデンサ素子1全体の形状にばらつきを生じてしまう。コンデンサ素子1の大きさのばらつきが大きくなると、外装樹脂のマージンを大きく取らねばならず、固体電解コンデンサの小形化を阻害する要因となってしまう。
【0018】
上述の問題を解決するために特開平9−306787号公報においては、機能性高分子を固体電解質として用いた固体電解コンデンサを製造する際、陽極導出線を植設させたコンデンサ素子上に導電性高分子からなる固体電解質層を形成するにおいて、モノマー溶液と酸化剤溶液からなる重合反応液に、前記コンデンサ素子を浸漬し、このコンデンサ素子を引き上げ、乾燥・重合する塗布形成工程のうち、乾燥・重合時に前記コンデンサ素子の辺または頂点が下端となるように固定して保持することによって解決できるとしている。
【0019】
しかしながら、上述の特開平9−306787号公報に示された方法によれば、下端となった辺または頂点においては、所望の厚さの導電性高分子層を形成することができるが、その他の辺や頂点には導電性高分子層を所望の厚さに形成することができない。例えば直方体形状のコンデンサ素子の底辺には4つの辺があるが、このそれぞれに所望の厚さの動電子高分子層を形成するのは、少なくとも4回の重合を行わなければならず、作業工程の煩雑化を招いてしまう。
【0020】
この発明は、上記問題を解決するもので、コンデンサ素子表面に均一な導電性高分子層を形成して寸法精度の高いコンデンサ素子を形成し、固体電解コンデンサの小型化とともに電気的特性の向上を図ることのできる固体電解コンデンサの製造方法を提供することを第1の目的する。
【0021】
また、この発明では、簡易な方法によって導電性高分子層をほぼ均一の厚さとすることで、ショート不良の発生を低減することができる固定電解コンデンサの製造方法を提供することを第2の目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、陽極導出線を植設し表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属からなるコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬することを繰り返すことによって誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ素子を酸化剤溶液中に浸漬している間、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行ったことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0023】
コンデンサ素子に形成さらた誘電体酸化皮膜層は絶縁体であるが、誘電体酸化皮膜層の欠陥部等より漏れ電流が流れることが知られている。そこで、コンデンサ素子を酸化剤溶液中に浸漬している間、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行うことにより、コンデンサ素子の誘電体酸化皮膜層の表面では、モノマーと酸化剤が接触することで化学重合による導電性高分子層が形成されるとともに、コンデンサ素子からの漏れ電流が流れることで、モノマーの電解重合が同時に進行する。このため、誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を所望の厚さにまで形成する時間を短くすることができる。
【0024】
請求項2に係る発明は、陽極導出線を植設し表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属からなるコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬することを繰り返すことによって誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらに酸化剤溶液に浸漬する工程を所定回数行った後、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらにコンデンサ素子の陽極導出線が導出された端面の反対端部からコンデンサ素子を酸化剤溶液に所定深さまで浸漬した状態で、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行い、導電性高分子層を形成したことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0025】
コンデンサ素子の下部端面のみを酸化剤溶液に浸漬することによって、酸化剤溶液と接触している部分のみで重合が進行する。また、コンデンサ素子からの漏れ電流は、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点に集中するため、この部分では電解重合が集中的に進行するようになる。このため、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点では電解重合がより進行し、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点にも十分な厚さの導電性高分子層が形成されるようになる。
【0026】
請求項3に係る発明は、陽極導出線を植設し表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属からなるコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬することを繰り返すことによって誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらに酸化剤溶液に浸漬した状態で陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行う工程を所定回数行った後、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらにコンデンサ素子の陽極導出線が導出された端面の反対端部からコンデンサ素子を酸化剤溶液に所定深さまで浸漬した陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行い、導電性高分子層を形成したことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0027】
コンデンサ素子を酸化剤溶液中に浸漬している間、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行うことにより、コンデンサ素子の誘電体酸化皮膜層の表面では、モノマーと酸化剤が接触することで化学重合による導電性高分子層が形成されるとともに、コンデンサ素子からの漏れ電流が流れることで、モノマーの電解重合が同時に進行する。このため、誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を所望の厚さにまで形成する時間を短くすることができる。このことにより、化学重合による導電性高分子の一方向への異常成長を抑制することができ、コンデンサ素子の導電性高分子層の均一化を図ることができる。また、コンデンサ素子の下部端面のみを酸化剤溶液に浸漬することによって、酸化剤溶液と接触している部分のみで重合が進行する。また、コンデンサ素子からの漏れ電流は、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点に集中するため、この部分では電解重合が集中的に進行するようになる。このため、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点では電解重合がより進行し、特にコンデンサ素子の下部端面の辺や頂点にも十分な厚さの導電性高分子層が形成されるようになる。
【0028】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項3に係る発明において、重合性モノマー溶液にアニオン性界面活性剤を添加したことを特徴とする。
【0029】
アニオン性界面活性剤を重合性モノマー溶液に添加しておくことにより、重合性モノマーをコンデンサ素子に含浸した際、重合性モノマーはアニオン性界面活性剤が配向し負に帯電する。その後のコンデンサ素子を酸化剤溶液に浸漬した際、コンデンサ素子を正極として直流電圧を印加すると、負に帯電した重合性モノマーはコンデンサ素子の内部あるいは近傍に留まり、酸化剤溶液側への拡散が抑制される。この状態で重合性モノマーが高分子化するため、コンデンサ素子の外部方向への導電性高分子の異常成長が起こりづらくなる。
【0030】
請求項5に係る発明は、前記重合性モノマーがチオフェン又はその誘導体からなるモノマーであることを特徴とする。
【0031】
チオフェンの誘導体としては次に掲げる構造のものを例示できる、チオフェン又はその誘導体は、ポリピロール又はポリアニリンと比較して、導電率が高いとともに熱安定性が特に優れているため、低ESRで耐熱特性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。また、弁作用金属の微粉末を焼結させた焼結体をコンデンサ素子として用いる固体電解コンデンサにおいては、導電性高分子が面状よりも粒子状に成長する酸化剤が好ましく、このような酸化剤としては過硫酸塩、またはスルホン酸塩の溶液が好適である。
【0032】
【化1】
XはOまたはS
XがOのとき、Aはアルキレン、又はポリオキシアルキレン
Xの少なくとも一方がSのとき、
Aはアルキレン、ポリオキシアルキレン、置換アルキレン、置換ポリオキシアルキレン:ここで、置換基はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基
【0033】
請求項6に係る発明は、請求項4に記載の固体電解コンデンサにおいて、前記チオフェンの誘導体が3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする。
【0034】
3,4−エチレンジオキシチオフェンは、酸化剤と接触することで、緩やかな重合反応によってポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を生成するため、3,4−エチレンジオキシチオフェンのモノマー溶液を微細な構造を有するコンデンサ素子の内部にまで浸透した状態で重合させることができる。この結果、コンデンサ素子の内部にまで導電性高分子層を形成することができるようになり、固体電解コンデンサの静電容量の増大を図ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の実施に形態について図1、図2とともに説明する。図1は固体電解コンデンサの断面図、図2はこの発明の固体電解コンデンサの製造方法の工程を説明する図面である。
【0036】
コンデンサ素子1はタンタル微粉末を直方体形状に成型し、焼結して形成されたものである。このコンデンサ素子1にはタンタルよりなる陽極導出線8が植設され、外部に導出されている。このコンデンサ素子1のタンタルの表面には、公知の方法により誘電体酸化皮膜が形成される。
【0037】
このようなコンデンサ素子1を形成するには、タンタルの他、アルミニウム、ニオブ、チタン等の弁作用金属の粉末を用いることができる。
【0038】
このコンデンサ素子1に導電性高分子層2を形成するために、図2(a)に示すように、まずコンデンサ素子1を重合性モノマー溶液11に浸漬する。重合性モノマー溶液11は3,4−エチレンジオキシチオフェンをイソプロピルアルコールを所定の割合で希釈し、アニオン性界面活性剤を添加したものである。希釈することによって重合性モノマー溶液11の粘性が低くなり、コンデンサ素子1の内部にまで重合性モノマーが浸透しやすくなる。この重合性モノマー溶液11にはコンデンサ素子1を所定時間浸漬する。この際、コンデンサ素子1の浸漬深さは、図2(a)に示すように、コンデンサ素子1の陽極導出線8の導出端面と重合性モノマー溶液11の液面が同レベルとなる深さまで浸漬する。
【0039】
コンデンサ素子1を重合性モノマー溶液11に所定時間浸漬した後、コンデンサ素子1を重合性モノマー溶液より引き上げ(図2(b))、大気中で放置する。この大気中への放置によって重合性モノマー溶液のイソプロピルアルコールが揮発し、3,4−エチレンジオキシチオフェンがコンデンサ素子1に付着した状態となる。
【0040】
さらに、図2(c)に示すように、コンデンサ素子1を酸化剤溶液12に浸漬する。酸化剤溶液12は純水等の所定溶媒に、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩やスルホン酸塩を溶解した溶液を用いることができる。
【0041】
この酸化剤溶液12にコンデンサ素子1を浸漬する際のコンデンサ素子1の浸漬深さは、コンデンサ素子1の陽極導出線8が植設された端面と液面がほぼ同レベルとなる深さに浸漬する。そして、この状態で、コンデンサ素子側を正極、酸化剤溶液側を負極とする直流電圧を印加する。
【0042】
より具体的には、コンデンサ素子1の陽極導出線8にリード線14を接続するとともに、酸化剤溶液12に白金電極等の電極15を浸漬し、それぞれ直流電源16に接続して、定電圧を印加する。この際の印加電圧は、コンデンサ素子1の化成電圧を超えない範囲で適宜選択することができる。
【0043】
このコンデンサ素子の酸化剤溶液12への浸漬、および直流電圧の印加によって、重合性モノマーの重合が進行し、高分子化する。この結果、コンデンサ素子1の表面に導電性高分子層2が形成される。すなわち、酸化剤溶液への浸漬によって、化学重合により高分子化するとともに、電圧を印加することによって、コンデンサ素子からの漏れ電流によって、電解重合が起こり導電性高分子の重合が起こる。この二つの重合が同時に進行するため、導電性高分子層が所望の厚さになるまでの重合反応の時間が短いものとなる。
【0044】
重合を行った後、コンデンサ素子1を引き上げ(図2(d))、さらに純水による流水で洗浄する。その後コンデンサ素子を乾燥し、1回の重合を終える。
【0045】
以上のような、重合性モノマー溶液への浸漬から乾燥までの工程(図2(a)〜(d))を3回繰り返し、所望の厚さの導電性高分子層を得る。
【0046】
さらに、図2(e)に示すように、コンデンサ素子1を重合性モノマー溶液11への浸漬、放置、引き上げまでの工程を行い、その後、図2(f)に示すように、酸化剤溶液12への浸漬を行う。この際の酸化剤溶液12への浸漬深さは、コンデンサ素子1の下部端面のみを浸漬するようにする。
【0047】
この状態で、再びコンデンサ素子側に正極、酸化剤溶液側に負極の電圧を印加する。このようにコンデンサ素子1の下部端面のみを酸化剤溶液12に浸漬することによって、酸化剤溶液12と接触している部分のみで重合が進行する。また、コンデンサ素子からの漏れ電流は、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点に集中するため、この部分では電解重合が集中的に進行するようになる。このため、コンデンサ素子1の下部端面のみに導電性高分子層2が形成され、コンデンサ素子1の下部端面の辺や頂点にも十分な厚さの導電性高分子層2が形成されるようになる。
【0048】
さらに、純水洗浄、乾燥まで行った後、導電性高分子層2の上にカーボン層3、銀ペースト層4を形成する。さらに、陽極導出線8に陽極リード線5を溶接するとともに、銀ペースト層4上に、陰極リード線6を取り付ける。そして、外装樹脂7で樹脂被覆して、外装樹脂7に沿って陽極リード線5、陰極リード線6を折り曲げて、固体電解コンデンサを得る。
【0049】
【発明の効果】
この発明によると、コンデンサ素子表面に均一な導電性高分子層を形成して寸法精度の高いコンデンサ素子を形成し、固体電解コンデンサの小型化とともに電気的特性の向上を図ることができる。
【0050】
また、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点にも十分な厚さの導電性高分子層が形成されるようになる。このため、コンデンサ素子の樹脂外装時に、コンデンサ素子の下部端面の辺や頂点に過度なストレスが加わることがなく、この部分での誘電体酸化皮膜の損傷による漏れ電流の増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体電解コンデンサの内部構造を示す断面図である。
【図2】この発明の固体電解コンデンサの製造方法を示す図面で、(a)〜(f)は各工程を表す。
【図3】従来の固体電解コンデンサの製造方法を示す図面で、(a)〜(d)は各工程を表す。
【図4】従来の固体電解コンデンサの製造方法によって、作成されるコンデンサ素子の状態を示す図面である。
【図5】従来の固体電解コンデンサの製造方法によって、作成されるコンデンサ素子の状態を示す図面である。
【符号の説明】
1 コンデンサ素子
2 導電性高分子層
3 カーボン層
4 銀ペースト層
5 陽極リード線
6 陰極リード線
7 外装樹脂
8 陽極導出線
11 重合性モノマー溶液
12 酸化剤溶液
14 電極
15 白金電極
16 直流電源
Claims (6)
- 陽極導出線を植設し表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属からなるコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬することを繰り返すことによって誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法において、
コンデンサ素子を酸化剤溶液中に浸漬している間、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行い、導電性高分子層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 陽極導出線を植設し表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属からなるコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬することを繰り返すことによって誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法において、
コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらに酸化剤溶液に浸漬する工程を所定回数行った後、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらにコンデンサ素子の陽極導出線が導出された端面の反対端部からコンデンサ素子を酸化剤溶液に所定深さまで浸漬した状態で、陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行い、導電性高分子層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 陽極導出線を植設し表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属からなるコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に交互に浸漬することを繰り返すことによって誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程を有する固体電解コンデンサの製造方法において、
コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらに酸化剤溶液に浸漬した状態で陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行う工程を所定回数行った後、コンデンサ素子を重合性モノマー溶液に浸漬し、さらにコンデンサ素子の陽極導出線が導出された端面の反対端部からコンデンサ素子を酸化剤溶液に所定深さまで浸漬した陽極導出線を正極、酸化剤溶液を負極として電圧を印加しながら重合を行い、導電性高分子層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記重合性モノマー溶液にはアニオン性界面活性剤が添加されていることを特徴とする請求項1または請求項3のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記重合性モノマーがチオフェン又はその誘導体からなるモノマーであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記チオフェンの誘導体が3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項5に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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