JP2004303546A - 薄膜エレクトロルミネッセンス装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光の取出効率・利用効率の高い薄膜エレクトロルミネッセンス装置を提供する
【解決手段】光入射面23及び面に対向する光出射面24を備えた透明基板2と、透明基板2の光入射面23上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子3とを備え、素子3からのエレクトロルミネッセンスを透明基板2の光出射面24から外部に取り出し、透明基板2の光入射面23及び光出射面24の少なくとも一方に一又は複数の溝2が形成され、溝2は、光出射面24に対して傾斜した面21aを備え、面21aの一部又は全部に光反射部22を設ける。
【選択図】 図2
【解決手段】光入射面23及び面に対向する光出射面24を備えた透明基板2と、透明基板2の光入射面23上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子3とを備え、素子3からのエレクトロルミネッセンスを透明基板2の光出射面24から外部に取り出し、透明基板2の光入射面23及び光出射面24の少なくとも一方に一又は複数の溝2が形成され、溝2は、光出射面24に対して傾斜した面21aを備え、面21aの一部又は全部に光反射部22を設ける。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機薄膜エレクトロルミネッセンス装置や無機薄膜エレクトロルミネッセンス装置などのボトムエミッション型の薄膜エレクトロルミネッセンス装置に関し、特に光源として好適に用いられる薄膜エレクトロルミネッセンス装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜エレクトロルミネッセンス装置(EL装置、電界発光装置)は、無機物質により構成された発光層を有する無機薄膜エレクトロルミネッセンス装置(無機EL装置)と有機物質により構成された発光層を有する有機薄膜エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置、有機電界発光装置)とに分類される。
【0003】
図16に示すように、無機EL装置は、一般に、ガラス等の透明基板5上に薄膜エレクトロルミネッセンス素子としての無機エレクトロルミネッセンス素子(無機EL素子)6が形成されている。無機EL素子6は、硫化亜鉛等の無機発光材料を含有する無機電界発光層611を酸化シリコン等の絶縁層610、612で挟んだ三層構造の発光層(無機発光層)61が、ITOなどで構成された透明な第一電極60と金属等で構成されて反射層としても機能する第二電極62とで挟まれ、第一電極が61透明基板5側になるように作製される。
そして、電極間に200V程度の高交流電圧が印加されると、電圧印加時に、無機電界発光層611と絶縁層610、612との界面から放出される電子が加速し、無機電界発光層611中のドーパントを励起するために光(エレクトロルミネッセンス)が生じる。
【0004】
図17に示すように、有機EL装置は、一般に、ガラス等の透明基板7上に薄膜エレクトロルミネッセンス素子としての有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)8が形成されている。有機EL素子8は、蛍光材料や燐光材料等の有機発光材料を含有する有機発光層81が、ITOなどで構成された透明な第一電極80と金属等で構成されて反射層としても機能する第二電極82とで挟まれ、第一電極80が透明基板7側になるように作製される。
そして、電極間に10V程度の直流電圧が印加されると、電極から注入された正孔及び電子を再結合させることにより有機発光材料が励起子(励起状態)となり、この励起子が基底状態に戻る際に光(エレクトロルミネッセンス)を発する。
【0005】
なお、以上のような無機EL装置や有機EL装置は、透明基板を用い、当該基板と発光層との間に設けられる電極(第一電極)を透明にしているため、無機発光層や有機発光層などの発光層からの光の取り出し側が基板側となる。このようなEL装置のことをボトムエミッション型の(下方光取り出し構成の/基板光取り出し構成の)EL装置と呼ぶ。
【0006】
このようなボトムエミッション型のEL装置は、光の取出効率が低いことが知られている。これは、EL装置を構成する層や基板の屈折率、装置外部雰囲気の屈折率がそれぞれ異なることに起因している。以下、図17に示す有機EL装置の一部を拡大した図18を用いて説明する。
有機発光層81で発生した光は等方的に広がる。したがって、点Bで発生した光は、矢印a、b、c、d方向にも矢印を付していない方向にも向かう。
しかし、有機発光層81と、当該層と隣接する層(図18では透明電極としての第一電極80)とでは屈折率に差があるため、すべての方向への光が第一電極80へ進入できるわけではない。つまり、有機発光層81と第一電極80との屈折率によって規定される界面での臨界角よりも小さな入射角で入射する矢印aで示す光や矢印bで示す光は第一電極80へ進入できるが、臨界角以上の入射角で界面へ入射する矢印cで示した光や矢印dで示した光は、界面で全反射されてしまうため第一電極80へ進入できない。すなわち、矢印cで示した光や矢印dで示した光は有機発光層81内に閉じこめられて最後には消失してしまったり、端部から外部へ出射してしまったりして利用することができない。
このように、ボトムエミッション型のEL装置では、透明基板の光出射面から装置外部へ取り出すことができない光が存在するため、光の取出効率、すなわち発光層で発生した光の内、光出射面から装置外部へ取り出して利用することのできる光の割合は低いものとなっていた。
【0007】
この問題点に対し、透明基板に凹凸を設け、凹凸が設けられた面上に無機発光層や電極を形成することで、凹凸に起因して生じる段差において発光光を(散乱)反射させて、従来取り出すことのできなかった光を取り出す従来技術が提案されている(例えば特許文献1を参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平1−186587号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一方、ボトムエミッション型のEL装置では、通常、透明基板と装置外部の雰囲気とにも屈折率の差があるため、発光層で発生して透明基板へ進入できた光すべてを、透明基板の光出射面から装置外部へ取り出せるわけではない。
図17に示す有機EL装置の一部を拡大した図19において、透明基板7の光出射面から外部(一般には空気)へ取り出すことのできる光は、透明基板7の屈折率と外部雰囲気の屈折率とで規定される、透明基板7と外部との界面の臨界角(光出射面71における臨界角)を超えない光である。つまり、矢印eで示した方向へ進む光や矢印fで示した方向へ進む光などの臨界角を超えていない光は、光出射面71から装置外部へ出ることができるが、矢印gや矢印hで示した方向に進む光などの臨界角を超えた光は界面で反射される。界面で反射された光は、透明基板7の端面から装置外部へ出射されたり、装置内部で反射を繰り返して消失したりするため、光出射面71から装置外部へ取り出して利用することができない。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ボトムエミッション型の薄膜エレクトロルミネッセンス装置において、略矩形の透明基板で構成された従来の薄膜エレクトロルミネッセンス装置では透明基板の光出射面から装置外部へ取り出せなかった光の一部又は全部を、光出射面に対する光の進行方向のなす角度を変えることで光出射面から装置外部へ取り出す、光の取出効率・利用効率の高い薄膜エレクトロルミネッセンス装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る第一の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝は、光出射面に対して傾斜した(斜めの)面を備え、面の一部又は全部に光反射部が設けられたことを特徴とする。
【0012】
また、第一の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光反射部が、入射された光を散乱反射するようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る第二の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝の一部又は全部に、入射された光を散乱反射する光反射部が設けられたことを特徴とする。
【0014】
第一又は第二の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、光を反射する光反射手段が設けられていてもよい。
また、薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を散乱反射する光反射手段(光散乱反射手段)が設けられていてもよい。
【0015】
本発明に係る第三の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝の一部又は全部に光反射部が設けられ、薄膜エレクトロルミネッセンス素子又は素子を基準として透明基板とは反対側に、光を散乱反射する光反射手段(光散乱反射手段)が設けられたことを特徴とする。
【0016】
なお、本明細書における「透明」とは、発光層で発生した光(エレクトロルミネッセンス)を透過する性質を有することを意味する。換言すると、本明細書における「透明な層」や「透明な部材」は、エレクトロルミネッセンスに対して透明又は半透明であることをいう。このような層や部材は、好ましくは外部に取り出す光の透過率が50%以上になるように設計される。
外部に取り出す光は、自由に設定可能であるが、一般には可視光(380nm〜800nm程度の波長の光)とされる。
また、本明細書における「反射」とは、エレクトロルミネッセンスを反射する性質を有することを意味し、好ましくは外部に取り出す光を反射する性質を有することを言う。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、第一の実施の形態に係る有機EL装置(第一の有機EL装置)について説明する。
【0018】
《第一の有機EL装置》
図1は、第一の有機EL装置の外観を示した図であり、図2は、図1におけるA−A’断面を模式化した断面図である。
図2に示すように、有機EL装置1は、透明基板2の一方の面(光入射面)23上に有機EL素子3が形成され、当該面23とは反対側の面(他面/光出射面)24に溝21が形成されている。
溝は21、図1に示すように、光出射面24側の外周部に設けられ、溝を構成する平面(光反射面)21aに光反射部22が設けられている。
有機EL素子3は、透明基板2の光入射面23上に透明な第一電極30が形成され、第一電極30上に有機発光層31が形成され、有機発光層31上に光反射層としての機能を備えた(光反射性能を有する)第二電極32が形成されている。
【0019】
〈透明基板2〉
透明基板2は、有機EL素子3を支える、主として板状の(略矩形の)部材であり、第一の有機EL装置においては、光入射面23及び光出射面24はフラットであり、光出射面24に溝21が設けられている。
【0020】
(溝21)
図2に示すように、溝21は、光出射面24側に設けられ、光出射面24に対して傾斜した面(斜めの面、垂直及び平行でない面)21aを有し、面21aに沿って(溝21の内側に)光反射部22が設けられている。つまり、溝21の一部又は全部が光反射面になっている。
次に、このような溝21及び光反射部材22によって、従来透明基板から取り出されることがなかった光を外部へ取り出す仕組み(メカニズム)を、図3〜図4を参照しながら説明する。
【0021】
[光取り出しメカニズム1]
図3は、図2の断面図に、光の進行方向を示した図である。図3において矢印j1と示す方向に進む光は、光出射面24に、臨界角よりも大きな角度θ1で入射する。したがって、光出射面24において従来と同様に反射角θ1で反射される。光出射面24で反射された光は、矢印j2と示す方向に進み、光反射面(溝21/光反射部22)21aによって反射され、矢印j3と示す方向に進み、光入射面23に入射角θ2で入射する。この光は、光入射面23によって反射角θ2で反射される。反射された光は、矢印j4で示す方向に進み、光出射面24に入射角θ2で入射する。
【0022】
ここで、光j4の光出射面24への入射角θ2と、光j1の光出射面24への入射角θ1との関係について検討する。
まず、光j3が光出射面24と平行な面とのなす角度ρ2に着目すると、光反射面21aが光出射面24とは垂直でもなく平行でもない(傾斜している)ため、光j2と光出射面24と平行な面とのなす角度ρ1とは異なったものになる。したがって、光j3の光入射面23への入射角θ2、光j1の光出射面24への入射角θ1とは異なったものになる。
つまり、光j1の光出射面24への入射角θ1と光j4の光出射面24への入射角θ2とは異なったものとなる。
そのため、θ1が光出射面24における臨界角よりも大きくても、θ2がその臨界角よりも小さくなれば、光j4は光出射面24から装置外部へ取り出される。
【0023】
[光取り出しメカニズム2]
また、図4に示すような光路により光出射面24から装置外部へ取り出される光もある。
図4に示すように、光反射面21aで反射された光k3は、光入射面23に入射する角度θ4が光反射面23における臨界角よりも小さいために有機EL素子へ進入する。そして、有機EL素子3内で(例えば光反射層としての第二電極32によって)反射されて透明基板2に出射角θ4で進入する(図中の矢印k4〜矢印k6)。光k4が有機EL素子を構成する各層を通過する順番と、光k5が各層を通過する順番とは逆順の関係だからである。
透明基板2内に出射角θ4で進入した光k6は、光出射面24に入射角θ4で入射する。
ここでθ3とθ4とは、光反射面21aが光出射面24に対して傾斜しているため、前記同様に異なった大きさになる。
したがって、θ3が光出射面24の臨界角よりも大きくても、θ4は光出射面24の臨界角よりも小さくなる場合がある。つまり、従来は光出射面24の臨界角を超えられずに光出射面24から装置外部へ取り出すことのできなかった光の一部又は全部を、光出射面24から装置外部へ取り出すことが可能になる。
【0024】
[光取り出しメカニズム3]
光出射面24における臨界角より小さな角度で入射することができる光は、従来同様に光出射面24から装置外部へ取り出される。
【0025】
このように、本実施の形態に係る有機EL装置1は、光反射面21aが光出射面24に対して傾斜しているため、光の進行方向(光路)と光出射面24とのなす角度を変える。したがって、略矩形の透明基板で構成された従来の有機EL装置では外部へ取り出せなかった光(光出射面24において臨界角より大きな角度で入射する光)の一部又は全部を、前記したように光出射面24における入射角を臨界角より小さくなるようにし、光出射面24から装置外部へ取り出すことができる。
【0026】
[溝21形成法]
溝21は、透明基板2を加工する従来公知の加工法によって形成したり、予め溝21が形成されている透明基板2を用いたりすることで設けることができる。
例えば、透明基板2の光出射面24上において、基板をサンドブラストをかけたり、切削したりするなどして機械的に溝21を設けてもよい。
また、溝21を形成しない部分にマスクをし、次いでドライエッチング法やウェットエッチング法によって透明基板2の一部を除去し、マスクを除去することで溝21を形成できる。この際、公知のエッチング形状制御技術を用い、光出射面に対して傾斜している面(光反射面21a)を設ける。
なお、溝21を形成するのは、透明基板2上に有機EL素子3を形成する前でも後でもよいが、サンドブラスト法やドライエッチング法を採用すれば、有機EL素子3を特別に保護することなく、有機EL素子3形成後に溝21を形成できる。
【0027】
溝21形成後、少なくとも光出射面に対して傾斜している面に沿って光反射部材を配置する。
例えば、光反射面21aに沿った形状の光反射部材を、光反射面21aに沿わせて配置し、溝21に接着剤などによって固定することでも光反射部22を形成できる。
また、溝21における光反射部材を設けない部分にマスクをし、次いで溝21に光反射部材を蒸着させて、蒸着後にマスクを取ることによっても光反射部22を形成できる。
なお、光反射面21a以外にも光反射部材を設けてもよい。したがって、溝21に光反射部材を埋め込んでもよく、溝21全面に光反射部材を蒸着させてもよい。
【0028】
光反射部22形成用の材料(光反射部材)は、入射された光を反射する性質を有していればよい。可視光を取り出す場合には、一般に、金や白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉛、クロム、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ等の金属や、これらの金属の合金やヨウ化銅の合金等が選択される。
【0029】
(透明基板2の材質)
透明基板2は、溝21を形成することができ、有機EL素子3を支持/形成可能であり、透明であればどのような材料で形成されていてもよく、一般には、ガラス基板やシリコン基板、石英基板などのセラミックス基板、プラスチック基板などが選択される。また、同種又は異種の基板を複数組み合わせた複合シートからなる基板を用いることもできる。
【0030】
〈有機EL素子3〉
図2に示すように、有機EL素子3は、透明基板2上に、透明な第一電極30、有機発光層31及び光反射性能を有する(光反射層としても機能する)第二電極32が順次積層されてなる。
【0031】
第一電極30及び第二電極32は、一方が陽極とされ、他方が陰極とされる。有機発光層31は、公知の層構成で、公知の材料によって形成される。したがって、単層で構成されてもよく、複数の層で構成されてもよいが、蛍光材料や燐光材料などの有機発光材料を少なくとも含有する。
【0032】
陽極形成用の材料は、ITOやIZOなどの金属酸化物や金属窒化物、金やアルミニウムなどの金属や合金、ポリピロールなどの導電性高分子等、有機EL素子に用いられる公知の陽極形成用材料が選択される。
陰極形成用の材料は、リチウムやアルミニウムなどの、有機EL素子に用いられる公知の陰極形成用材料が選択される。
第一の有機EL装置においては、第二電極32とされる電極が光反射性能を備えるように形成され、第一電極30とされる電極は透明になるように形成される。
【0033】
第一の有機EL装置1は、以上の構成によって、従来は透明基板の光出射面から装置外部へ取り出すことのできなかった光を、その進行方向が光出射面となす角度を変え、光出射面の臨界角よりも小さくできる。そのため、透明基板に溝や光反射部材が設けられていない従来の有機EL装置と比べ、有機EL素子(有機発光層)で発せられた光を外部へ取り出す量が多くなる(発光光の取り出し効率・利用効率が高くなる)。
また、第一の有機EL装置1は以下のように変形することもできる。また、これらの変形例を適宜組み合わせることもできる。
【0034】
〈変形例1:溝形状〉
溝の深さや断面形状は、透明基板に強度的な影響がでない範囲で適宜設定できる。例えば図5に示すように断面形状をU字状にしたり、図6に示すように断面形状を多角形状にしたりしてもよい。このように、第一の有機EL装置における溝は、少なくとも光出射面に対して傾斜した面を備え、この面に光反射部が形成されていればよい。
【0035】
〈変形例2:溝を設ける位置〉
図1に示す有機EL装置では溝21(及び光反射部材22)が透明基板2の光出射面24の外周にほぼ沿って設けられているが、溝を設ける位置は光出射面における他の位置でもよい。例えば、図7に示すように光出射面242において溝212を格子状に設けてもよく、図8に示すように光出射面243において溝213を円状に設けてもよい。
【0036】
〈変形例3:第二電極を透明な電極とする〉
前記した構成では、第二電極に光反射手段としての機能を持たせたが、透明な電極としたり、半透明鏡機能(いわゆるハーフミラー機能)を備えた電極としたりしてもよい。この場合でも、各部材の界面において臨界角よりも大きな角度で入射した光は反射するので、第二電極が透明な電極や半透明鏡機能を備えた電極で、透明基板に上記した溝や光反射部材が形成されていない従来の有機EL装置よりも、発光光の取出効率は高くなる。
【0037】
〈変形例4:光反射層を設ける〉
図9に示すように、変形例3のように第二電極に光反射手段としての機能を持たせない場合には特に、第二電極324上(有機発光層314とは反対側/有機EL素子304を基準として透明基板204とは反対側)にさらに光反射手段としての光反射層334を設けるとよい。光反射層334は、装置外部に取り出す光を反射する金属やセラミックスなどの材料で形成されたシートや板としてもよく、これらの材料を第二電極上に蒸着などして膜状に形成してもよい。
【0038】
また、有機EL素子304内に、第二電極324以外の層に光反射手段としての機能を持たせてもよく、また、光反射手段として機能する層を第一電極310、有機EL層314及び第二電極324とは別個に設けてもよい。例えば、有機EL素子304内の任意の位置、好ましくは有機発光層314よりも第二電極324側に、入射された光を反射する機能を備えた層を設けてもよい。
【0039】
〈変形例5:第二電極や光反射層などに光散乱反射機能を持たせる〉
第二電極や光反射層など、入射された光を反射する(光反射手段としての機能を備えた)層に、さらに光散乱機能を持たせてもよい。
例えば、これらの層に公知の製法によって凹凸を設けることで入射された光を散乱反射させることができ、より具体的には、光反射層にマット処理やヘアライン加工などを施して散乱反射板とすることができる。
これにより、上記層に入射された光の、進行方向(光路)が光出射面となす角度を変えることが可能になり、結果として発光光の光出射面から装置外部への取出効率を高くすることも可能になる。また、入射された光を散乱反射することで、視野角を広くすること(鏡面反射を防止すること)も可能になる。
【0040】
〈変形例6:第一電極や発光層、透明基板などに光散乱機能を持たせる〉
第二電極は光反射層などの、入射された光を反射する層には光反射機能を持たせ、他の層に光散乱機能を持たせ、これらを合わせて(これらが協調して)光散乱反射手段を実現してもよい。この構成によっても変形例5と同等の効果が得られる。
例えば、入射された光を反射する層よりも光出射面側にある層(例えば透明基板など)に公知の光散乱部材を含有させてもよい。また、図10に示すように、これらの層に、ドット径10μm程度、高さが50nm程度の数ミクロンサイズの微小凹凸235を設けることで光散乱機能を実現することができる。微小凹凸235は、例えば、透明基板の光入射面上に凹凸形状を形成し、この凹凸形状に沿って有機EL素子を形成することで設けることができる。基板へ微小凹凸を形成する方法は、公知の方法を適宜採用でき、例えば以下のような方法を採用することもできる。
・サンドブラストやエッチングにより、透明基板表面に直接凹凸を作成する方法。
・感光性樹脂を用いたフォト加工により凹凸形状を作成する方法。
・凹凸形状が設けられた金型を用いて凹凸形状を備えた透明基板を作成する方法。
【0041】
なお、発光層に凹凸形状を設ければ、さらに、単位面積当たりの発光層の量を、平坦な発光層よりも多くできる。
【0042】
〈変形例7:光反射面に散乱反射機能を持たせる)
図11に示すように、光反射面216a又は光反射部226に、入射された光を散乱反射する機能を持たせてもよい。
光反射部材226は、光散乱を実現するための微小凹凸226aが形成され、入射された光を散乱反射する。この散乱反射機能によって、入射された光の、進行方向が光出射面246となす角度を変えることができ、発光光の取出効率をさらに高くすることも可能になる。また、特定の方向における輝度が高くなる(視野角が狭くなる)ということが少なくなる。
【0043】
微小凹凸226aは、公知の方法によって形成することができ、例えば変形例6における透明基板に微小凹凸を設ける方法によって光反射部材226に微小凹凸226aを設けてもよい。また、溝216に微小凹凸を設け、溝216に光反射部材226を蒸着させても微小凹凸226aを設けることができる。
【0044】
また、溝216(光反射面216a)に微小レンズを設けたり、散乱ドットを印刷したりするなど、公知の光散乱方法を採用することで光反射部226に光散乱機能を設けてもよい。
【0045】
なお、以上のように光反射面216aに散乱反射機能を持たせる場合には、光反射部226は、光出射面246と略平行な面や略垂直な面に設けられてもよい。つまり、光反射面216aは、光出射面246に対して傾斜していなくてもよい。したがって、溝216は、光出射面246に対して略平行な面及び略垂直な面により構成されていてもよい。この構成によっても、光出射面246へ入射する光の内、臨界角を超えた光の進行方向について光出射面246となす角度を変えることができるので、従来は光出射面246から装置外部へ取り出されることのなかった光の一部又は全部を取り出すことが可能になる。
【0046】
〈変形例8:光出射面側に溝を設ける〉
図12に示すように、透明基板207の光入射面237側に溝217を設け、溝217に光反射部材227を設けてもよい。
また、図13に示すように、透明基板208の両面(光出射面248側及び光入射面238側)に溝218、218”を設け、各溝218、218”に光反射部材228、228”を設けてもよい。
このような構成であっても前記同等の効果が得られる。
次に、第二の実施の形態に係る有機EL装置(第二の有機EL装置)について説明する。
【0047】
《第二の有機EL装置》
第二の有機EL装置は、図14に示すように、透明基板209に断面形状が略矩形の溝269が設けられ、溝を構成する面の一部又は全部(光反射面269a)に光反射部279が設けられ、透明基板209及び/又は有機EL素子309に、第一の有機EL装置における変形例5や変形例6と同等の光を散乱反射する光反射手段が設けられている点が第一の有機EL装置と異なり、他の点については第一の有機EL装置と同様に構成・変形できる。
以上の構成によっても、光出射面249における臨界角を超えた光n1は、光出射面249で反射する(光n1→光n2)。光出射面249で反射された光n2は、光反射部279(光反射面269a)で光入射面239側へ反射され(光n2→光n3)、光散乱反射手段によって、光出射面249に対する光の進行方向がなす角度が変えられて反射される(光n3→n4)。したがって、このような光の一部又は全部は、光出射面249に再入射する際、光出射面249における臨界角より小さくなり、光出射面249から装置外部へ取り出される。
【0048】
以上に示した構成(第一の有機EL装置、第二の有機EL装置)を無機EL装置に適用することも当然に可能である。つまり、以下の(1)〜(3)のいずれかの構成にする以外は、公知の無機EL装置形成用の材料によって公知のボトムエミッション型の無機EL装置の構成を採用し、公知の無機EL装置の製造方法を用いて製造すればよい。
【0049】
(1)光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝は、光出射面に対して傾斜した面を備え、面の一部又は全部に光反射部が設けられた構成。
第一の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光反射部が、入射された光を散乱反射するようにしてもよい。
また、薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を反射する光反射手段が設けられていてもよい。さらに、この光反射手段に光散乱反射機能を持たせてもよい。
【0050】
(2)光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝の一部又は全部に、入射された光を散乱反射する光反射部が設けられた構成。
薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を反射する光反射手段が設けられていてもよい。さらに、この光反射手段に光散乱反射機能を持たせてもよい。
【0051】
(3)光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝の一部又は全部に光反射部が設けられ、薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を散乱反射する光反射手段が設けられた構成。
【0052】
以上に説明したEL装置は、液晶表示装置の背後光源(バックライト)としても好適に用いられる。これは、本実施の形態に係るEL装置は、従来の装置に比べて発光光の取出効率が高いため、表示を良好に照射できるからである。以下、図1に示す第一の有機EL素子1をバックライトとして用いた液晶表示装置の一構成例を図15に示す。
図15に示す液晶表示装置は、透過型液晶表示パネル4と、当該パネルの非表示面側(47側)と透明基板2の光出射面24とが対向するように配置された有機EL装置1とで構成される。
【0053】
透過型液晶表示パネル4は、透明電極42及び配向膜43が設けられた基板41と、これと同構成の基板41’とが、透明電極42、42’が対向するように配置されている。両者の間には、ギャップを適当な値にするためのスペーサ材45が設けられ、透明電極42、42’が数ミクロン程度のギャップを保つようにされ、液晶組成物46が充填されている。基板41、41’の外周には、液晶組成物46を基板41、41’内にとどめ、内部に異物が混入しないようにするためのシール材44が設けられている。基板41、41’における透明電極42、42’が設けられていない面には、それぞれ偏光板47、47’が設けられている。
【0054】
透過型液晶表示パネル4は、公知の駆動回路により、透明電極42、42’に電圧をかけて液晶組成物46の配向状態を変化させ、非表示面(47側)から入射されて表示面(47’側)から出射される光(通過する光)の状態を制御し、その通過する光の量の差により表れるパターンを表示する。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、ボトムエミッション型のEL装置において、透明基板に光の進行方向を変えて、従来のEL装置では光出射面から装置外部へ取り出すことのできなかった光を取り出せる、従来よりも光取り出し効率の高いEL装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る第一の有機EL装置の概略構成を説明するための斜視図である。
【図2】図1の第一の有機EL装置におけるA−A’断面を模式的に示した要部断面図である。
【図3】第一の有機EL装置における光取り出しのメカニズムを説明するための第一の要部断面図である。
【図4】第一の有機EL装置における他の光取り出しのメカニズムを説明するための第二の要部断面図である。
【図5】第一の有機EL装置における溝の他の断面形状例を示した第一の要部断面図である。
【図6】第一の有機EL装置における溝の他の断面形状例を示した第二の要部断面図である。
【図7】第一の有機EL装置の他の溝形成例を模式的に示した斜視図である。
【図8】第一の有機EL装置のさらに別の溝形成例を模式的に示した要部斜視図である。
【図9】第一の有機EL装置において第二電極とは別に光反射手段としての光反射層を設けた有機EL装置の層構成を模式的に示した要部断面図である。
【図10】第一の有機EL装置において、光散乱手段として透明基板2(有機EL素子3)に光散乱用(光拡散用)の凹凸を設けた装置の層構成と、当該構成の装置における光取り出しのメカニズムを示した要部断面図である。
【図11】第一の有機EL装置において、光反射面(光反射部)に凹凸を設けて光散乱手段としての機能を持たせた装置の層構成を模式的に示した要部断面図である。
【図12】第一の有機EL装置において、溝を光入射面に設けた装置の層構成を示した要部断面図である。
【図13】第一の有機EL装置において、溝を光出射面及び光入射面に設けた装置の層構成を示した要部断面図である。
【図14】第二の有機EL装置の層構成と、光取り出しのメカニズムを示した要部断面図である。
【図15】本実施の形態に係るEL装置が背後光源として組み込まれた液晶表示装置の要部断面図である。
【図16】従来の無機EL装置の断面構成を模式的に示した要部断面図である。
【図17】従来の有機EL装置の断面構成を模式的に示した要部断面図である。
【図18】従来のEL装置における第一の問題を説明するための要部断面図である。
【図19】従来のEL装置における第二の問題を説明するための要部断面図である。
【符号の説明】
1:有機EL装置
2、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209:透明基板
21、210、211、212、213、214、215、216、217、218、218”、269:溝
21a、214a、215a、216a、217a、218a、218a”、269a:光反射面
22、220、221、224、225、226、227、228、228”279:光反射部
23、232、233、234、235、236、237、238、239:光入射面
24、242、243、244、245、246、247、248、249:光出射面
3、300、301、302、303、304、605、306、307、308、309:有機EL素子
30、310:第一電極
31、314:有機発光層
32、324:第二電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機薄膜エレクトロルミネッセンス装置や無機薄膜エレクトロルミネッセンス装置などのボトムエミッション型の薄膜エレクトロルミネッセンス装置に関し、特に光源として好適に用いられる薄膜エレクトロルミネッセンス装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜エレクトロルミネッセンス装置(EL装置、電界発光装置)は、無機物質により構成された発光層を有する無機薄膜エレクトロルミネッセンス装置(無機EL装置)と有機物質により構成された発光層を有する有機薄膜エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置、有機電界発光装置)とに分類される。
【0003】
図16に示すように、無機EL装置は、一般に、ガラス等の透明基板5上に薄膜エレクトロルミネッセンス素子としての無機エレクトロルミネッセンス素子(無機EL素子)6が形成されている。無機EL素子6は、硫化亜鉛等の無機発光材料を含有する無機電界発光層611を酸化シリコン等の絶縁層610、612で挟んだ三層構造の発光層(無機発光層)61が、ITOなどで構成された透明な第一電極60と金属等で構成されて反射層としても機能する第二電極62とで挟まれ、第一電極が61透明基板5側になるように作製される。
そして、電極間に200V程度の高交流電圧が印加されると、電圧印加時に、無機電界発光層611と絶縁層610、612との界面から放出される電子が加速し、無機電界発光層611中のドーパントを励起するために光(エレクトロルミネッセンス)が生じる。
【0004】
図17に示すように、有機EL装置は、一般に、ガラス等の透明基板7上に薄膜エレクトロルミネッセンス素子としての有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)8が形成されている。有機EL素子8は、蛍光材料や燐光材料等の有機発光材料を含有する有機発光層81が、ITOなどで構成された透明な第一電極80と金属等で構成されて反射層としても機能する第二電極82とで挟まれ、第一電極80が透明基板7側になるように作製される。
そして、電極間に10V程度の直流電圧が印加されると、電極から注入された正孔及び電子を再結合させることにより有機発光材料が励起子(励起状態)となり、この励起子が基底状態に戻る際に光(エレクトロルミネッセンス)を発する。
【0005】
なお、以上のような無機EL装置や有機EL装置は、透明基板を用い、当該基板と発光層との間に設けられる電極(第一電極)を透明にしているため、無機発光層や有機発光層などの発光層からの光の取り出し側が基板側となる。このようなEL装置のことをボトムエミッション型の(下方光取り出し構成の/基板光取り出し構成の)EL装置と呼ぶ。
【0006】
このようなボトムエミッション型のEL装置は、光の取出効率が低いことが知られている。これは、EL装置を構成する層や基板の屈折率、装置外部雰囲気の屈折率がそれぞれ異なることに起因している。以下、図17に示す有機EL装置の一部を拡大した図18を用いて説明する。
有機発光層81で発生した光は等方的に広がる。したがって、点Bで発生した光は、矢印a、b、c、d方向にも矢印を付していない方向にも向かう。
しかし、有機発光層81と、当該層と隣接する層(図18では透明電極としての第一電極80)とでは屈折率に差があるため、すべての方向への光が第一電極80へ進入できるわけではない。つまり、有機発光層81と第一電極80との屈折率によって規定される界面での臨界角よりも小さな入射角で入射する矢印aで示す光や矢印bで示す光は第一電極80へ進入できるが、臨界角以上の入射角で界面へ入射する矢印cで示した光や矢印dで示した光は、界面で全反射されてしまうため第一電極80へ進入できない。すなわち、矢印cで示した光や矢印dで示した光は有機発光層81内に閉じこめられて最後には消失してしまったり、端部から外部へ出射してしまったりして利用することができない。
このように、ボトムエミッション型のEL装置では、透明基板の光出射面から装置外部へ取り出すことができない光が存在するため、光の取出効率、すなわち発光層で発生した光の内、光出射面から装置外部へ取り出して利用することのできる光の割合は低いものとなっていた。
【0007】
この問題点に対し、透明基板に凹凸を設け、凹凸が設けられた面上に無機発光層や電極を形成することで、凹凸に起因して生じる段差において発光光を(散乱)反射させて、従来取り出すことのできなかった光を取り出す従来技術が提案されている(例えば特許文献1を参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平1−186587号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一方、ボトムエミッション型のEL装置では、通常、透明基板と装置外部の雰囲気とにも屈折率の差があるため、発光層で発生して透明基板へ進入できた光すべてを、透明基板の光出射面から装置外部へ取り出せるわけではない。
図17に示す有機EL装置の一部を拡大した図19において、透明基板7の光出射面から外部(一般には空気)へ取り出すことのできる光は、透明基板7の屈折率と外部雰囲気の屈折率とで規定される、透明基板7と外部との界面の臨界角(光出射面71における臨界角)を超えない光である。つまり、矢印eで示した方向へ進む光や矢印fで示した方向へ進む光などの臨界角を超えていない光は、光出射面71から装置外部へ出ることができるが、矢印gや矢印hで示した方向に進む光などの臨界角を超えた光は界面で反射される。界面で反射された光は、透明基板7の端面から装置外部へ出射されたり、装置内部で反射を繰り返して消失したりするため、光出射面71から装置外部へ取り出して利用することができない。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ボトムエミッション型の薄膜エレクトロルミネッセンス装置において、略矩形の透明基板で構成された従来の薄膜エレクトロルミネッセンス装置では透明基板の光出射面から装置外部へ取り出せなかった光の一部又は全部を、光出射面に対する光の進行方向のなす角度を変えることで光出射面から装置外部へ取り出す、光の取出効率・利用効率の高い薄膜エレクトロルミネッセンス装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る第一の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝は、光出射面に対して傾斜した(斜めの)面を備え、面の一部又は全部に光反射部が設けられたことを特徴とする。
【0012】
また、第一の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光反射部が、入射された光を散乱反射するようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る第二の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝の一部又は全部に、入射された光を散乱反射する光反射部が設けられたことを特徴とする。
【0014】
第一又は第二の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、光を反射する光反射手段が設けられていてもよい。
また、薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を散乱反射する光反射手段(光散乱反射手段)が設けられていてもよい。
【0015】
本発明に係る第三の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝の一部又は全部に光反射部が設けられ、薄膜エレクトロルミネッセンス素子又は素子を基準として透明基板とは反対側に、光を散乱反射する光反射手段(光散乱反射手段)が設けられたことを特徴とする。
【0016】
なお、本明細書における「透明」とは、発光層で発生した光(エレクトロルミネッセンス)を透過する性質を有することを意味する。換言すると、本明細書における「透明な層」や「透明な部材」は、エレクトロルミネッセンスに対して透明又は半透明であることをいう。このような層や部材は、好ましくは外部に取り出す光の透過率が50%以上になるように設計される。
外部に取り出す光は、自由に設定可能であるが、一般には可視光(380nm〜800nm程度の波長の光)とされる。
また、本明細書における「反射」とは、エレクトロルミネッセンスを反射する性質を有することを意味し、好ましくは外部に取り出す光を反射する性質を有することを言う。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、第一の実施の形態に係る有機EL装置(第一の有機EL装置)について説明する。
【0018】
《第一の有機EL装置》
図1は、第一の有機EL装置の外観を示した図であり、図2は、図1におけるA−A’断面を模式化した断面図である。
図2に示すように、有機EL装置1は、透明基板2の一方の面(光入射面)23上に有機EL素子3が形成され、当該面23とは反対側の面(他面/光出射面)24に溝21が形成されている。
溝は21、図1に示すように、光出射面24側の外周部に設けられ、溝を構成する平面(光反射面)21aに光反射部22が設けられている。
有機EL素子3は、透明基板2の光入射面23上に透明な第一電極30が形成され、第一電極30上に有機発光層31が形成され、有機発光層31上に光反射層としての機能を備えた(光反射性能を有する)第二電極32が形成されている。
【0019】
〈透明基板2〉
透明基板2は、有機EL素子3を支える、主として板状の(略矩形の)部材であり、第一の有機EL装置においては、光入射面23及び光出射面24はフラットであり、光出射面24に溝21が設けられている。
【0020】
(溝21)
図2に示すように、溝21は、光出射面24側に設けられ、光出射面24に対して傾斜した面(斜めの面、垂直及び平行でない面)21aを有し、面21aに沿って(溝21の内側に)光反射部22が設けられている。つまり、溝21の一部又は全部が光反射面になっている。
次に、このような溝21及び光反射部材22によって、従来透明基板から取り出されることがなかった光を外部へ取り出す仕組み(メカニズム)を、図3〜図4を参照しながら説明する。
【0021】
[光取り出しメカニズム1]
図3は、図2の断面図に、光の進行方向を示した図である。図3において矢印j1と示す方向に進む光は、光出射面24に、臨界角よりも大きな角度θ1で入射する。したがって、光出射面24において従来と同様に反射角θ1で反射される。光出射面24で反射された光は、矢印j2と示す方向に進み、光反射面(溝21/光反射部22)21aによって反射され、矢印j3と示す方向に進み、光入射面23に入射角θ2で入射する。この光は、光入射面23によって反射角θ2で反射される。反射された光は、矢印j4で示す方向に進み、光出射面24に入射角θ2で入射する。
【0022】
ここで、光j4の光出射面24への入射角θ2と、光j1の光出射面24への入射角θ1との関係について検討する。
まず、光j3が光出射面24と平行な面とのなす角度ρ2に着目すると、光反射面21aが光出射面24とは垂直でもなく平行でもない(傾斜している)ため、光j2と光出射面24と平行な面とのなす角度ρ1とは異なったものになる。したがって、光j3の光入射面23への入射角θ2、光j1の光出射面24への入射角θ1とは異なったものになる。
つまり、光j1の光出射面24への入射角θ1と光j4の光出射面24への入射角θ2とは異なったものとなる。
そのため、θ1が光出射面24における臨界角よりも大きくても、θ2がその臨界角よりも小さくなれば、光j4は光出射面24から装置外部へ取り出される。
【0023】
[光取り出しメカニズム2]
また、図4に示すような光路により光出射面24から装置外部へ取り出される光もある。
図4に示すように、光反射面21aで反射された光k3は、光入射面23に入射する角度θ4が光反射面23における臨界角よりも小さいために有機EL素子へ進入する。そして、有機EL素子3内で(例えば光反射層としての第二電極32によって)反射されて透明基板2に出射角θ4で進入する(図中の矢印k4〜矢印k6)。光k4が有機EL素子を構成する各層を通過する順番と、光k5が各層を通過する順番とは逆順の関係だからである。
透明基板2内に出射角θ4で進入した光k6は、光出射面24に入射角θ4で入射する。
ここでθ3とθ4とは、光反射面21aが光出射面24に対して傾斜しているため、前記同様に異なった大きさになる。
したがって、θ3が光出射面24の臨界角よりも大きくても、θ4は光出射面24の臨界角よりも小さくなる場合がある。つまり、従来は光出射面24の臨界角を超えられずに光出射面24から装置外部へ取り出すことのできなかった光の一部又は全部を、光出射面24から装置外部へ取り出すことが可能になる。
【0024】
[光取り出しメカニズム3]
光出射面24における臨界角より小さな角度で入射することができる光は、従来同様に光出射面24から装置外部へ取り出される。
【0025】
このように、本実施の形態に係る有機EL装置1は、光反射面21aが光出射面24に対して傾斜しているため、光の進行方向(光路)と光出射面24とのなす角度を変える。したがって、略矩形の透明基板で構成された従来の有機EL装置では外部へ取り出せなかった光(光出射面24において臨界角より大きな角度で入射する光)の一部又は全部を、前記したように光出射面24における入射角を臨界角より小さくなるようにし、光出射面24から装置外部へ取り出すことができる。
【0026】
[溝21形成法]
溝21は、透明基板2を加工する従来公知の加工法によって形成したり、予め溝21が形成されている透明基板2を用いたりすることで設けることができる。
例えば、透明基板2の光出射面24上において、基板をサンドブラストをかけたり、切削したりするなどして機械的に溝21を設けてもよい。
また、溝21を形成しない部分にマスクをし、次いでドライエッチング法やウェットエッチング法によって透明基板2の一部を除去し、マスクを除去することで溝21を形成できる。この際、公知のエッチング形状制御技術を用い、光出射面に対して傾斜している面(光反射面21a)を設ける。
なお、溝21を形成するのは、透明基板2上に有機EL素子3を形成する前でも後でもよいが、サンドブラスト法やドライエッチング法を採用すれば、有機EL素子3を特別に保護することなく、有機EL素子3形成後に溝21を形成できる。
【0027】
溝21形成後、少なくとも光出射面に対して傾斜している面に沿って光反射部材を配置する。
例えば、光反射面21aに沿った形状の光反射部材を、光反射面21aに沿わせて配置し、溝21に接着剤などによって固定することでも光反射部22を形成できる。
また、溝21における光反射部材を設けない部分にマスクをし、次いで溝21に光反射部材を蒸着させて、蒸着後にマスクを取ることによっても光反射部22を形成できる。
なお、光反射面21a以外にも光反射部材を設けてもよい。したがって、溝21に光反射部材を埋め込んでもよく、溝21全面に光反射部材を蒸着させてもよい。
【0028】
光反射部22形成用の材料(光反射部材)は、入射された光を反射する性質を有していればよい。可視光を取り出す場合には、一般に、金や白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉛、クロム、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ等の金属や、これらの金属の合金やヨウ化銅の合金等が選択される。
【0029】
(透明基板2の材質)
透明基板2は、溝21を形成することができ、有機EL素子3を支持/形成可能であり、透明であればどのような材料で形成されていてもよく、一般には、ガラス基板やシリコン基板、石英基板などのセラミックス基板、プラスチック基板などが選択される。また、同種又は異種の基板を複数組み合わせた複合シートからなる基板を用いることもできる。
【0030】
〈有機EL素子3〉
図2に示すように、有機EL素子3は、透明基板2上に、透明な第一電極30、有機発光層31及び光反射性能を有する(光反射層としても機能する)第二電極32が順次積層されてなる。
【0031】
第一電極30及び第二電極32は、一方が陽極とされ、他方が陰極とされる。有機発光層31は、公知の層構成で、公知の材料によって形成される。したがって、単層で構成されてもよく、複数の層で構成されてもよいが、蛍光材料や燐光材料などの有機発光材料を少なくとも含有する。
【0032】
陽極形成用の材料は、ITOやIZOなどの金属酸化物や金属窒化物、金やアルミニウムなどの金属や合金、ポリピロールなどの導電性高分子等、有機EL素子に用いられる公知の陽極形成用材料が選択される。
陰極形成用の材料は、リチウムやアルミニウムなどの、有機EL素子に用いられる公知の陰極形成用材料が選択される。
第一の有機EL装置においては、第二電極32とされる電極が光反射性能を備えるように形成され、第一電極30とされる電極は透明になるように形成される。
【0033】
第一の有機EL装置1は、以上の構成によって、従来は透明基板の光出射面から装置外部へ取り出すことのできなかった光を、その進行方向が光出射面となす角度を変え、光出射面の臨界角よりも小さくできる。そのため、透明基板に溝や光反射部材が設けられていない従来の有機EL装置と比べ、有機EL素子(有機発光層)で発せられた光を外部へ取り出す量が多くなる(発光光の取り出し効率・利用効率が高くなる)。
また、第一の有機EL装置1は以下のように変形することもできる。また、これらの変形例を適宜組み合わせることもできる。
【0034】
〈変形例1:溝形状〉
溝の深さや断面形状は、透明基板に強度的な影響がでない範囲で適宜設定できる。例えば図5に示すように断面形状をU字状にしたり、図6に示すように断面形状を多角形状にしたりしてもよい。このように、第一の有機EL装置における溝は、少なくとも光出射面に対して傾斜した面を備え、この面に光反射部が形成されていればよい。
【0035】
〈変形例2:溝を設ける位置〉
図1に示す有機EL装置では溝21(及び光反射部材22)が透明基板2の光出射面24の外周にほぼ沿って設けられているが、溝を設ける位置は光出射面における他の位置でもよい。例えば、図7に示すように光出射面242において溝212を格子状に設けてもよく、図8に示すように光出射面243において溝213を円状に設けてもよい。
【0036】
〈変形例3:第二電極を透明な電極とする〉
前記した構成では、第二電極に光反射手段としての機能を持たせたが、透明な電極としたり、半透明鏡機能(いわゆるハーフミラー機能)を備えた電極としたりしてもよい。この場合でも、各部材の界面において臨界角よりも大きな角度で入射した光は反射するので、第二電極が透明な電極や半透明鏡機能を備えた電極で、透明基板に上記した溝や光反射部材が形成されていない従来の有機EL装置よりも、発光光の取出効率は高くなる。
【0037】
〈変形例4:光反射層を設ける〉
図9に示すように、変形例3のように第二電極に光反射手段としての機能を持たせない場合には特に、第二電極324上(有機発光層314とは反対側/有機EL素子304を基準として透明基板204とは反対側)にさらに光反射手段としての光反射層334を設けるとよい。光反射層334は、装置外部に取り出す光を反射する金属やセラミックスなどの材料で形成されたシートや板としてもよく、これらの材料を第二電極上に蒸着などして膜状に形成してもよい。
【0038】
また、有機EL素子304内に、第二電極324以外の層に光反射手段としての機能を持たせてもよく、また、光反射手段として機能する層を第一電極310、有機EL層314及び第二電極324とは別個に設けてもよい。例えば、有機EL素子304内の任意の位置、好ましくは有機発光層314よりも第二電極324側に、入射された光を反射する機能を備えた層を設けてもよい。
【0039】
〈変形例5:第二電極や光反射層などに光散乱反射機能を持たせる〉
第二電極や光反射層など、入射された光を反射する(光反射手段としての機能を備えた)層に、さらに光散乱機能を持たせてもよい。
例えば、これらの層に公知の製法によって凹凸を設けることで入射された光を散乱反射させることができ、より具体的には、光反射層にマット処理やヘアライン加工などを施して散乱反射板とすることができる。
これにより、上記層に入射された光の、進行方向(光路)が光出射面となす角度を変えることが可能になり、結果として発光光の光出射面から装置外部への取出効率を高くすることも可能になる。また、入射された光を散乱反射することで、視野角を広くすること(鏡面反射を防止すること)も可能になる。
【0040】
〈変形例6:第一電極や発光層、透明基板などに光散乱機能を持たせる〉
第二電極は光反射層などの、入射された光を反射する層には光反射機能を持たせ、他の層に光散乱機能を持たせ、これらを合わせて(これらが協調して)光散乱反射手段を実現してもよい。この構成によっても変形例5と同等の効果が得られる。
例えば、入射された光を反射する層よりも光出射面側にある層(例えば透明基板など)に公知の光散乱部材を含有させてもよい。また、図10に示すように、これらの層に、ドット径10μm程度、高さが50nm程度の数ミクロンサイズの微小凹凸235を設けることで光散乱機能を実現することができる。微小凹凸235は、例えば、透明基板の光入射面上に凹凸形状を形成し、この凹凸形状に沿って有機EL素子を形成することで設けることができる。基板へ微小凹凸を形成する方法は、公知の方法を適宜採用でき、例えば以下のような方法を採用することもできる。
・サンドブラストやエッチングにより、透明基板表面に直接凹凸を作成する方法。
・感光性樹脂を用いたフォト加工により凹凸形状を作成する方法。
・凹凸形状が設けられた金型を用いて凹凸形状を備えた透明基板を作成する方法。
【0041】
なお、発光層に凹凸形状を設ければ、さらに、単位面積当たりの発光層の量を、平坦な発光層よりも多くできる。
【0042】
〈変形例7:光反射面に散乱反射機能を持たせる)
図11に示すように、光反射面216a又は光反射部226に、入射された光を散乱反射する機能を持たせてもよい。
光反射部材226は、光散乱を実現するための微小凹凸226aが形成され、入射された光を散乱反射する。この散乱反射機能によって、入射された光の、進行方向が光出射面246となす角度を変えることができ、発光光の取出効率をさらに高くすることも可能になる。また、特定の方向における輝度が高くなる(視野角が狭くなる)ということが少なくなる。
【0043】
微小凹凸226aは、公知の方法によって形成することができ、例えば変形例6における透明基板に微小凹凸を設ける方法によって光反射部材226に微小凹凸226aを設けてもよい。また、溝216に微小凹凸を設け、溝216に光反射部材226を蒸着させても微小凹凸226aを設けることができる。
【0044】
また、溝216(光反射面216a)に微小レンズを設けたり、散乱ドットを印刷したりするなど、公知の光散乱方法を採用することで光反射部226に光散乱機能を設けてもよい。
【0045】
なお、以上のように光反射面216aに散乱反射機能を持たせる場合には、光反射部226は、光出射面246と略平行な面や略垂直な面に設けられてもよい。つまり、光反射面216aは、光出射面246に対して傾斜していなくてもよい。したがって、溝216は、光出射面246に対して略平行な面及び略垂直な面により構成されていてもよい。この構成によっても、光出射面246へ入射する光の内、臨界角を超えた光の進行方向について光出射面246となす角度を変えることができるので、従来は光出射面246から装置外部へ取り出されることのなかった光の一部又は全部を取り出すことが可能になる。
【0046】
〈変形例8:光出射面側に溝を設ける〉
図12に示すように、透明基板207の光入射面237側に溝217を設け、溝217に光反射部材227を設けてもよい。
また、図13に示すように、透明基板208の両面(光出射面248側及び光入射面238側)に溝218、218”を設け、各溝218、218”に光反射部材228、228”を設けてもよい。
このような構成であっても前記同等の効果が得られる。
次に、第二の実施の形態に係る有機EL装置(第二の有機EL装置)について説明する。
【0047】
《第二の有機EL装置》
第二の有機EL装置は、図14に示すように、透明基板209に断面形状が略矩形の溝269が設けられ、溝を構成する面の一部又は全部(光反射面269a)に光反射部279が設けられ、透明基板209及び/又は有機EL素子309に、第一の有機EL装置における変形例5や変形例6と同等の光を散乱反射する光反射手段が設けられている点が第一の有機EL装置と異なり、他の点については第一の有機EL装置と同様に構成・変形できる。
以上の構成によっても、光出射面249における臨界角を超えた光n1は、光出射面249で反射する(光n1→光n2)。光出射面249で反射された光n2は、光反射部279(光反射面269a)で光入射面239側へ反射され(光n2→光n3)、光散乱反射手段によって、光出射面249に対する光の進行方向がなす角度が変えられて反射される(光n3→n4)。したがって、このような光の一部又は全部は、光出射面249に再入射する際、光出射面249における臨界角より小さくなり、光出射面249から装置外部へ取り出される。
【0048】
以上に示した構成(第一の有機EL装置、第二の有機EL装置)を無機EL装置に適用することも当然に可能である。つまり、以下の(1)〜(3)のいずれかの構成にする以外は、公知の無機EL装置形成用の材料によって公知のボトムエミッション型の無機EL装置の構成を採用し、公知の無機EL装置の製造方法を用いて製造すればよい。
【0049】
(1)光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝は、光出射面に対して傾斜した面を備え、面の一部又は全部に光反射部が設けられた構成。
第一の薄膜エレクトロルミネッセンス装置は、光反射部が、入射された光を散乱反射するようにしてもよい。
また、薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を反射する光反射手段が設けられていてもよい。さらに、この光反射手段に光散乱反射機能を持たせてもよい。
【0050】
(2)光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝の一部又は全部に、入射された光を散乱反射する光反射部が設けられた構成。
薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を反射する光反射手段が設けられていてもよい。さらに、この光反射手段に光散乱反射機能を持たせてもよい。
【0051】
(3)光入射面及び面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出し、透明基板の光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、溝の一部又は全部に光反射部が設けられ、薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を散乱反射する光反射手段が設けられた構成。
【0052】
以上に説明したEL装置は、液晶表示装置の背後光源(バックライト)としても好適に用いられる。これは、本実施の形態に係るEL装置は、従来の装置に比べて発光光の取出効率が高いため、表示を良好に照射できるからである。以下、図1に示す第一の有機EL素子1をバックライトとして用いた液晶表示装置の一構成例を図15に示す。
図15に示す液晶表示装置は、透過型液晶表示パネル4と、当該パネルの非表示面側(47側)と透明基板2の光出射面24とが対向するように配置された有機EL装置1とで構成される。
【0053】
透過型液晶表示パネル4は、透明電極42及び配向膜43が設けられた基板41と、これと同構成の基板41’とが、透明電極42、42’が対向するように配置されている。両者の間には、ギャップを適当な値にするためのスペーサ材45が設けられ、透明電極42、42’が数ミクロン程度のギャップを保つようにされ、液晶組成物46が充填されている。基板41、41’の外周には、液晶組成物46を基板41、41’内にとどめ、内部に異物が混入しないようにするためのシール材44が設けられている。基板41、41’における透明電極42、42’が設けられていない面には、それぞれ偏光板47、47’が設けられている。
【0054】
透過型液晶表示パネル4は、公知の駆動回路により、透明電極42、42’に電圧をかけて液晶組成物46の配向状態を変化させ、非表示面(47側)から入射されて表示面(47’側)から出射される光(通過する光)の状態を制御し、その通過する光の量の差により表れるパターンを表示する。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、ボトムエミッション型のEL装置において、透明基板に光の進行方向を変えて、従来のEL装置では光出射面から装置外部へ取り出すことのできなかった光を取り出せる、従来よりも光取り出し効率の高いEL装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る第一の有機EL装置の概略構成を説明するための斜視図である。
【図2】図1の第一の有機EL装置におけるA−A’断面を模式的に示した要部断面図である。
【図3】第一の有機EL装置における光取り出しのメカニズムを説明するための第一の要部断面図である。
【図4】第一の有機EL装置における他の光取り出しのメカニズムを説明するための第二の要部断面図である。
【図5】第一の有機EL装置における溝の他の断面形状例を示した第一の要部断面図である。
【図6】第一の有機EL装置における溝の他の断面形状例を示した第二の要部断面図である。
【図7】第一の有機EL装置の他の溝形成例を模式的に示した斜視図である。
【図8】第一の有機EL装置のさらに別の溝形成例を模式的に示した要部斜視図である。
【図9】第一の有機EL装置において第二電極とは別に光反射手段としての光反射層を設けた有機EL装置の層構成を模式的に示した要部断面図である。
【図10】第一の有機EL装置において、光散乱手段として透明基板2(有機EL素子3)に光散乱用(光拡散用)の凹凸を設けた装置の層構成と、当該構成の装置における光取り出しのメカニズムを示した要部断面図である。
【図11】第一の有機EL装置において、光反射面(光反射部)に凹凸を設けて光散乱手段としての機能を持たせた装置の層構成を模式的に示した要部断面図である。
【図12】第一の有機EL装置において、溝を光入射面に設けた装置の層構成を示した要部断面図である。
【図13】第一の有機EL装置において、溝を光出射面及び光入射面に設けた装置の層構成を示した要部断面図である。
【図14】第二の有機EL装置の層構成と、光取り出しのメカニズムを示した要部断面図である。
【図15】本実施の形態に係るEL装置が背後光源として組み込まれた液晶表示装置の要部断面図である。
【図16】従来の無機EL装置の断面構成を模式的に示した要部断面図である。
【図17】従来の有機EL装置の断面構成を模式的に示した要部断面図である。
【図18】従来のEL装置における第一の問題を説明するための要部断面図である。
【図19】従来のEL装置における第二の問題を説明するための要部断面図である。
【符号の説明】
1:有機EL装置
2、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209:透明基板
21、210、211、212、213、214、215、216、217、218、218”、269:溝
21a、214a、215a、216a、217a、218a、218a”、269a:光反射面
22、220、221、224、225、226、227、228、228”279:光反射部
23、232、233、234、235、236、237、238、239:光入射面
24、242、243、244、245、246、247、248、249:光出射面
3、300、301、302、303、304、605、306、307、308、309:有機EL素子
30、310:第一電極
31、314:有機発光層
32、324:第二電極
Claims (6)
- 光入射面及び当該面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、当該素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出す薄膜エレクトロルミネッセンス装置であって、
透明基板は、光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、当該溝は、光出射面に対して傾斜した面を備え、当該面の一部又は全部に光反射部が設けられたことを特徴とする薄膜エレクトロルミネッセンス装置。 - 請求項1に記載の薄膜エレクトロルミネッセンス装置であって、
前記光反射部は、入射された光を散乱反射することを特徴とする薄膜エレクトロルミネッセンス装置。 - 光入射面及び当該面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、当該素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出す薄膜エレクトロルミネッセンス装置であって、
透明基板は、光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、当該溝の一部又は全部に、入射された光を散乱反射する光反射部が設けられたことを特徴とする薄膜エレクトロルミネッセンス装置。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の薄膜エレクトロルミネッセンス装置であって、
薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は当該素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を反射する光反射手段が設けられたことを特徴とする薄膜エレクトロルミネッセンス装置。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の薄膜エレクトロルミネッセンス装置であって、
薄膜エレクトロルミネッセンス素子内に、又は当該素子を基準として透明基板とは反対側に、入射された光を散乱反射する光反射手段が設けられたことを特徴とする薄膜エレクトロルミネッセンス装置。 - 光入射面及び当該面に対向する光出射面を備えた透明基板と、透明基板の光入射面上に形成された薄膜エレクトロルミネッセンス素子とを備え、当該素子からのエレクトロルミネッセンスを透明基板の光出射面から外部に取り出す薄膜エレクトロルミネッセンス装置であって、
透明基板は、光入射面及び光出射面の少なくとも一方に一又は複数の溝が形成され、当該溝の一部又は全部に光反射部が設けられ、
薄膜エレクトロルミネッセンス素子又は当該素子を基準として透明基板とは反対側に、光を散乱反射する光反射手段が設けられたことを特徴とする薄膜エレクトロルミネッセンス装置。
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JP2009211886A (ja) * | 2008-03-03 | 2009-09-17 | Rohm Co Ltd | 有機el装置 |
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- 2003-03-31 JP JP2003094218A patent/JP2004303546A/ja active Pending
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