JP2004302709A - 弁の保全管理方法及びその支援システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラントを構成する弁及びその内部を流れる流体の設計情報や弁の分解点検,補修,取替等の保全履歴情報を基に、配管系統別に弁の重要度を評価し、弁の材種,故障確率及び点検間隔からリスク指標を算出して、弁の保全箇所を特定すると共に、種々の保全計画を適用したときの各弁のリスク指標の違いを基に、配管系統全体でリスク指標を平準化するような各弁の保全方法及び保全実施時期を選択する。
本発明によれば、経済性に優れた弁の保全管理方法を提供できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラントを構成する弁の保全管理方法及びその支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
プラントを構成している弁は、形状や機能によって様々な種類があり、1プラント当たりに設置される数も膨大である。弁の開閉失敗あるいは機能未達を未然に防ぐ為には、劣化する箇所を特定し、高度な劣化進行予測を行うなどして、健全性を有している期間内に点検もしくは診断を実施し、劣化状況に応じて保全工事を実施する必要がある。
【0003】
弁の劣化は、主として摺動部分の摩耗による機械的損傷や内部を流れる流体の条件により発生するキャビテーション等が引き起こす減肉などである。これらによる弁の劣化を検知する為、一部の弁については各種のセンサを取付けたりしながらも、最終的には優先順位をつけて分解点検による目視で確認することが多かった。この理由として、弁の構造上、非破壊検査による劣化評価が難しいことや、保全対象となる弁が多種多様でかつ数が多く、個々の弁全てに対して経済的な保全方法を適用するのが困難な為と考えられる。従来の弁保全システムには、弁の使用条件,環境,弁の幾何情報から弁の危険度をランク付けし、保全対象となる弁を絞り込むものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一般に、プラント設備の保全管理は、保全対象となる機器及び部材に対して個々に材料劣化や腐食傾向を評価し、その評価結果に基づいて適切な箇所を適切な時期に保守しようとするものである。この一例としては、材料劣化及び腐食傾向に対する定量的評価と動機器の故障に対する定量的評価から保全箇所を特定し、影響度評価手法を用いて故障発生頻度と故障発生による影響度の積をリスクとして評価し、保全箇所及び保全方法を最適化するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−303564号公報(要約,特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開2002−123314号公報(要約,特許請求の範囲)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来は、保全箇所をいかに特定するかという問題に対して、弁の危険度に応じて絞り込んだり、故障発生頻度とその故障発生による影響度の積で表されるリスクなどで評価する方法が提案されているが、各弁が設置される配管系統の考慮が十分とは言えなかった。すなわち、弁は機器と機器を結ぶ配管の間に据え付けられる為、該弁及び隣接する配管が属する配管系統によって弁の種類や使用条件,劣化損傷に影響を及ぼす内部流体条件、さらには不具合発生時のプラントへの影響度などが異なり、配管系統を考慮することは重要な意味を持つ。また、実際に保全作業を実施する上でも、配管系統は工数の決定や系統隔離と呼ばれる工事準備等において必須のものである。加えて、配管系統を考慮して保全箇所を特定することは、異なる時期に実施する保全作業を平準化したり、工事期間や予算の要求条件を満たすような保全計画の立案に必要不可欠であり、経済的な保全計画の策定につながる。
【0007】
本発明の目的は、プラントを構成する弁に対して、実際に保全作業を実施する上で重要な配管系統を考慮して保全箇所を特定し、経済性に優れた保全管理方法を策定することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、プラントを構成する弁において、弁及びその内部を流れる流体に関する情報や弁の点検,補修及び取替の保全履歴情報を基に、配管系統別に弁の重要度を評価し、弁の材種,故障確率及び点検間隔からリスク指標を算出して、弁の保全箇所を特定すると共に、種々の保全計画を適用したときの各弁のリスク指標の違いを基に、配管系統全体でリスク指標を平準化するような各弁の保全方法及び保全実施時期を選択することで、経済性に優れた保全計画を立案する弁の保全管理方法にある。
【0009】
また、本発明は、弁の設計情報と弁内部の流体の情報と弁の点検,補修及び取替の保全履歴情報とを格納する装置と、前記格納装置に格納された情報を基に配管系統別の弁の重要度を評価する手段と、前記格納装置に格納された弁の材種,故障確率及び点検間隔を基にリスク指標を算出する手段を有し、種々の保全計画を適用したときの各弁のリスク指標の違いを基に、配管系統全体でリスク指標を平準化するような各弁の保全方法及び保全実施時期を選択する手段を有することを特徴とする弁保全管理支援システムにある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0011】
図1は、本発明における処理の概要を表すブロック図である。まず、弁管理データ11を基に、主系統とドレンの区分やABC複数系統の有無等により、保全対象となる配管系統を絞り込む(保全対象配管系統絞り込みブロック12)。次に、保全対象となった配管系統別に各弁の重要度を評価する(配管系統別弁重要度評価ブロック13)。
【0012】
図2に示すように、各弁の重要度を評価するには、該弁が含まれる配管系統及びその配管系統に含まれる配管ライン番号毎に、内部流体の材料劣化損傷環境及び故障発生時のプラントへの影響度を評価し、順位付けする。例えば、ドレン系で複数の配管ラインが存在する配管系統の弁で、内部流体が常時低速で流れる低温低圧の水単相流のような場合には、内部流体の材料劣化損傷環境と故障発生時のプラントへの影響度は共に小さいと評価できる為、重要度を低いものとして0.1 に設定し、重要度の増加とともに0.1 単位で増加するようにする。そして、主系統かつ大口径の配管系統にある弁で系外漏洩防止に関与し、内部流体が高温高圧で高流速の二相流であるような場合には、内部流体の材料劣化損傷環境は厳しく、故障発生時のプラントへの影響度も大きい為、最も重要度の高いものとして1.0 に設定する。
【0013】
さらに、より好ましくは、配管系統別に重要度を評価した結果を実際の保全履歴情報と比較し、重要度が実機の傾向と大きく異なる場合には、前記評価結果を見直す。これは、通常の配管系統別の重要度評価とは別に、ユーザが任意に指定する項目を設けるのでもよい。
【0014】
図1に戻り、重要度の評価に続いて、弁の材種,故障確率及び点検間隔を基に、各弁の現状のリスク指標を算出する(現状の弁リスク指標算出ブロック14)。
【0015】
図3に示すように、リスク指標の算出には、弁の材種などによって決まる故障発生ポテンシャルの大きさと、時間依存性の故障発生確率の増加を考慮して、それぞれ材種と点検間隔をパラメータとして持つ式を設定して用いる。また、故障発生ポテンシャルの大きさは、弁の形状や動作方法に起因する故障確率に影響されると考えられる為、リスク指標算出式にこれらの故障確率に関する項を盛り込む。例えば、弁の形状に基づく故障確率と弁の動作方法に基づく故障確率の和に材種毎に定義した関数を組み合わせ、点検間隔の関数を乗じて数式化する。本発明で求めるリスク指標は、絶対値と安全性の基準を必ずしも一致させる必要がなく、相対比較が可能であればよい。よって、故障確率は文献等の公知の値を用い、点検間隔は時間の単調増加関数で反映させて、材種毎に定義する関数で任意の数値範囲に設定することができる。このとき、一般的な弁の点検間隔が年の単位であることを考慮して、故障発生ポテンシャルに関する項の取りうる値が材種の変更により数十倍変化するように設定するとよい。
【0016】
図1に戻り、各弁の重要度と現状のリスク指標から保全実施箇所を特定し(保全実施箇所特定ブロック15)、保全計画としてそれぞれの箇所について保全方法及びその実施時期を検討する(保全実施時期検討ブロック16)。例えば、保全実施箇所の特定は、重要度の二乗と現状のリスク指標の積が大きい順にするといった方法でよい。また、保全方法及び実施時期については、点検間隔を短くして補修を重ねる方法にするか、高寿命の材種に取替えて点検間隔を長くするか、といった検討をする。
【0017】
次に、種々の保全計画を適用した場合の各弁のリスク指標を算出して、保全計画の違いによるリスク低減効果をシミュレーションする(リスク低減効果シミュレーションブロック17)。得られたリスク低減効果を基に、配管系統全体でリスクを平準化する保全計画であるか判定し(リスク指標平準化判定ブロック18)、合致すれば最適な保全計画として立案する(最適保全計画立案19)。もし、合致しなければ、保全実施箇所の特定からやり直す。
【0018】
図4に示すように、配管系統全体でリスクを平準化する保全計画であるかの判定は、次のような手順でなされる。まず、各弁の重要度及び現状のリスク指標から特定した保全実施箇所全てに対し、実施しようとする保全計画でのリスク指標を算出して、現状と同等以下となることを確認する。次に、配管系統毎に工事準備を含めた工事期間及び予算を見積り、保全計画の各ステップで要求される工事期間及び予算条件を満足するように、各保全箇所の保全方法と保全実施時期が組み合わせられているかを検証する。最後に、配管系統全体で各弁のリスク指標が平準化された保全計画となっているかを判定する。このとき、複数の保全計画が候補になる場合には、リスク低減効果が最も大きくなるような保全計画を選択するとよい。
【0019】
図5は、本発明を実施する為のシステム構成例を示す。弁管理データ51は、弁の設計情報511と弁内部を流れる流体の情報512と弁の保全履歴情報513を含む。弁の設計情報511は、例えば形状,動作方式,材種,呼び径,流路形状,製造メーカなどである。弁内部を流れる流体の情報512は、例えば流体の種類,流速,温度,圧力,溶存酸素濃度などである。弁の保全履歴情報513は、例えば各弁の設置時期,点検間隔、既に保全作業を実施していた場合の分解点検時期やその評価結果と対応などである。
【0020】
この弁管理データを弁管理データ格納装置52に登録し、弁保全管理支援システム53で必要となるデータは全て一元管理される。また、弁保全管理支援システム53において評価した各弁の重要度評価結果及び現状リスク指標の算出結果などは弁管理データ格納装置52に保存し、他のデータ同様に必要に応じて読み込まれる。
【0021】
また、新しく弁の保全履歴情報を追加する場合のように、弁管理データを更新する際は、弁管理データ格納装置52から最新の弁管理データをエクスポートし、これに更新するデータを入力する。弁管理データを再登録すると、エクスポート時点のデータから変更されている部分を判別して弁管理データ格納装置52に格納される。このとき、エクスポートした弁管理データには、弁保全管理支援システム53で評価した配管系統別重要度やリスク指標算出値などの項目が含まれており、必要に応じてこれらのデータ,弁の保全管理情報514を抽出してプラント全体の保全管理等に利用することができる。
【0022】
なお、配管系統別重要度及び現状リスク指標の項目は新規の弁管理データを登録した時点ではデータが入っていないので、弁保全管理支援システム53の中に、これらの項目が空欄となっている弁番号が有るかを確認し、有る場合には該当する弁番号全てに対して配管系統別重要度の評価と現状リスク指標を算出して弁管理データ格納装置52に保存する手段を有することが望ましい。
【0023】
弁保全管理支援システム53を構成する重要度評価手段54,リスク指標算出手段55,配管系統全体でのリスク平準化判定手段56を用いて、実際に保全作業を実施する上で重要な配管系統を考慮して保全箇所を特定し、保全計画の各ステップでの工事期間や予算の要求条件を満たすような経済的な保全計画を策定する。
【0024】
図6は、保全計画の違いによるリスク低減効果のシミュレーション及び配管系統全体でのリスク平準化判定に用いる画面例を示す。保全対象となる配管系統毎に、配管ライン番号,弁番号,重要度,現状リスク指標,種々の保全計画におけるリスク指標の各項目が一覧表示され、このほかに材種や点検間隔などの項目が追加されていてもよい。
【0025】
図7は、本発明を実施するためのシステムの代表的な画面例である。任意の弁番号について、弁設計情報,弁内部の流体の情報及び保全履歴情報に加え、配管系統別重要度の評価結果と現状のリスク指標の算出結果を表示する。該弁の材種と点検間隔を変更した場合のリスク指標を算出できるほか、複数の保全計画の条件を入力して比較検討する為のリスク低減効果シミュレーションを実行することができる。その際、該弁の設置場所の確認、すなわち配管系統や設置位置等に関する情報を参照するとよい。
【0026】
さらに、本発明のより好ましい形態は、弁の保全作業を実施する為の系統隔離や足場設置等の工事準備が該配管系統にある配管や機器の保全作業にも適用できることを踏まえ、配管系統全体の保全計画として、配管や機器の保全計画と調整して弁の保全計画を立案することにある。この場合、弁保全管理データに加えて、弁及びその隣接する配管によって構成される、機器と機器を結ぶ配管系統に関する設計情報と保全履歴情報を基に、配管系統内にある弁,配管及び機器を同時期に保全実施するように保全計画を調整して、配管系統全体でリスク指標を平準化すればよい。
【0027】
配管系統内にある弁,配管及び機器を同時期に保全実施するように保全計画を調整する方法は、図8に示すような手段で行われる。保全対象となる配管系統別に配管及び機器の保全方法と保全実施時期を検討し、その検討結果を踏まえて該配管系統の弁の保全方法及び実施時期について検討する。得られた弁の保全計画によって、前記配管及び機器の保全計画を変更する必要が生じた場合は、配管及び機器の保全方法と保全実施時期を再検討し、改めて弁の保全方法及び保全実施時期について検討する。このようにして、配管系統内にある弁,配管及び機器の保全作業を同時期に調整することが可能になり、より経済的な保全管理方法となる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、実際に保全作業を実施することを考慮して弁の保全管理方法を策定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における処理の概要を表すブロック図である。
【図2】配管系統別の弁の重要度を評価するフロー図である。
【図3】リスク指標を算出するフロー図である。
【図4】配管系統全体でリスク指標を平準化する保全計画であるかを判定するフロー図である。
【図5】本発明を実施するためのシステム構成図である。
【図6】リスク低減シミュレーション及び配管系統全体でのリスク平準化判定に用いる画面例を示す図である。
【図7】本発明を実施するためのシステムの画面例を示す図である。
【図8】図1のブロック図に配管及び機器の保全計画との調整を加えたブロック図である。
【符号の説明】
11,51…弁管理データ、12…保全対象配管系統絞り込みブロック、13…配管系統別弁重要度評価ブロック、14…現状の弁リスク指標算出ブロック、15…保全実施箇所特定ブロック、16…保全実施時期検討ブロック、17…リスク低減効果シミュレーションブロック、18…リスク指標平準化判定ブロック、19…最適保全計画立案、52…弁管理データ格納装置、53…弁保全管理支援システム、54…重要度評価手段、55…リスク指標算出手段、56…配管系統全体でのリスク平準化判定手段、511…弁の設計情報、512…弁内部を流れる流体の情報、513…弁の保全履歴情報、514…弁の保全管理情報。
Claims (4)
- プラントを構成する弁の設計情報と、弁内部を流れる流体の情報と、弁の点検,補修及び取替の保全履歴情報を基に、配管系統別の弁の重要度を評価し、
弁の材種と故障確率及び点検間隔を基にリスク指標を算出し、
弁の重要度とリスク指標から弁の保全箇所を特定し、
種々の保全計画を適用したときの各弁のリスク指標の違いを基に、配管系統全体でリスク指標を平準化するような各弁の保全方法及び保全実施時期を選択することを特徴とする弁の保全管理方法。 - プラントを構成する弁の設計情報と、弁内部を流れる流体の情報と、弁の点検,補修及び取替の保全履歴情報を基に、配管系統別の弁の重要度を評価し、弁の材種と故障確率及び点検間隔を基にリスク指標を算出して、弁の保全箇所を特定すると共に、該弁が属する配管系統内の配管及び機器と同時期に保全を実施するように保全計画を調整して、配管系統全体でリスク指標を平準化するような各弁の保全方法及び保全実施時期を選択することを特徴とする弁の保全管理方法。
- プラントを構成する弁の設計情報と、弁内部を流れる流体の情報と、弁の点検と補修及び取替の保全履歴情報とを格納する格納装置と、前記格納装置に格納された情報を基に配管系統別の弁の重要度を評価する手段と、前記格納装置に格納された弁の材種,故障確率及び点検間隔を基にリスク指標を算出する手段を有し、種々の保全計画を適用したときの各弁のリスク指標の違いを基に、配管系統全体でリスク指標を平準化するような各弁の保全方法及び保全実施時期を選択する手段を有することを特徴とする弁保全管理支援システム。
- プラントを構成する弁の設計情報と弁内部の流体の情報と弁の点検,補修及び取替の保全履歴情報とを格納する格納装置と、前記格納装置に格納された情報を基に配管系統別の弁の重要度を評価する手段と、前記格納装置に格納された弁の材種,故障確率及び点検間隔を基にリスク指標を算出する手段に加え、弁及びその隣接する配管によって構成される、機器と機器を結ぶ配管系統に関する設計情報と保全履歴情報とを格納する装置を有し、配管系統内にある弁,配管及び機器を同時期に保全実施するように保全計画を調整する手段から、配管系統全体でリスク指標を平準化するような各弁の保全方法及び保全実施時期を選択することを特徴とする弁保全管理支援システム。
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