JP2004301769A - 光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光電流センサ素子である2つのセンサファイバ100a,100bは、それぞれセンサ部101a,101bを構成しており、センサファイバ100a,100b間は、光伝送用のシングルモードファイバ120abにより接続されている。第1のセンサ部101aは、信号処理部301とともに、A端子光保護装置部401を構成しており、第2のセンサ部101bは、B端子保護装置部501を構成している。センサファイバ100a,100bは、捻りを加えた石英製の低複屈折シングルモードファイバから構成されており、第1の被測定導体601aを周回するように配置されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の光電流素子から構成されるサニャック干渉形の光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
変電所内の母線、線路および変電所間を結ぶ送電線には、異常が発生した際に、変電所に設置された電力機器ないしは電力設備を保護し、事故の拡大を防止するために、これらの動作を停止させるための電流計測器とそれを用いた電流差動保護システムが設置されている。一般に、電流差動保護システムとしては、電流計測器に巻線変流器を用いた電磁形のものが実用化されているが、電流計測器として光電流計測器を用い、外部磁界などの外乱を受けにくくサージ対策が簡略できるシステムも提案されている。
【0003】
図8は、従来のA、B端からなる1回線2端子系統におけるPCM電流差動保護システムの一例を示す構成図である(特許文献1参照)。この図8において、CB−A、CB−Bは遮断器、CT−A、CT−Bは巻線形変流器、87はPCM電流差動保護システム、をそれぞれ示しており、この構成により、PCM電流差動保護システムは、次のように動作する。
【0004】
すなわち、巻線形変流器CT−A、CT−Bの2次電流は、I/Vによりレベル変換され、帯域フィルタBPFを経てA/D変換により符号化された信号が、通信装置によりマイクロ回線等を通じて相手端へ伝送される。相手端からの符号化された受信信号と自端の伝送時間だけ遅延させた信号にてデジタル演算を行い、差動判定により出力を得て遮断器CB−A、CB−Bを引外す。
【0005】
この場合の差動判定式は、巻線形変流器CT−A、CT−Bで測定された電流値を各々、iA、iBとすると、|iA+iB|−k1(|iA|+|iB|)>k2、の比率差動である。平常時および外部事故(CT−A、CT−B間外の事故)時は、iA=−iBであるため出力を生じないが、内部事故(CT−A、CT−B間内の事故)時には判定式が成立し、出力を生じる。
【0006】
次に、図9は、従来の故障判定機能を備えた光電流計測器の一例を示す構成図である(特許文献2参照)。この図9に示すように、故障判定機能を備えた光電流計測器は、電力設備に流入、流出する電流を計測するための複数の光ファイバセンサ11〜1nと、光ファイバ伝送路2と、電子回路部3を有している。各部の構成の概略は次の通りである。
【0007】
まず、各光ファイバセンサ11〜1nは、導体41〜3nの電流値I1〜Inをそれぞれ測定するために設けられており、鉛ガラスファイバから構成されている。また、電子回路部3は、光源3a、光電変換器3b、信号処理部3c、および図示していない故障判定部等を備えている。
【0008】
一方、光ファイバ伝送路2は、光源3aと第1番目の光ファイバセンサ11との間、第2番目以降の光ファイバセンサ12〜1nにおける隣接する2つの光ファイバセンサ同士の間、および最後の光ファイバセンサ〜1nと光電変換器3bとの間、をそれぞれ直列接続するように設けられている。なお、この光ファイバ伝送路2は、石英製の偏波面保持(維持)ファイバPMFで構成されている。以下にはさらに、光源3aから光電変換器3bに至る光学系統の詳細な構成と、信号処理部3cの詳細について順次説明する。
【0009】
まず、各光ファイバセンサ11〜1nの入出力端には、偏波モード変換素子(具体的には、λ/4波長板)λ/4がそれぞれ設けられている。この偏波モード変換素子λ/4は、光ファイバセンサ11〜1n内を伝播させる光の偏波モードを円偏波に変更させるとともに、光ファイバ伝送路2内を伝播させる光の偏波モードを直線偏波に変更させるようになっている。
【0010】
また、第1番目の偏波モード変換素子λ/4に光を導く偏波面保持ファイバPMFと、最後部の偏波モード変換素子λ/4に光を導く偏波面保持ファイバPMFの前には、それぞれファラデー回転子4、5が設置されている。そしてまた、これらのファラデー回転子4、5の前には、偏光ビームスプリッタPBSが設置されるとともに、光源3aとビームスプリッタPBSとの間には、偏光子6が設置されている。さらに、ビームスプリッタPBSの出射端側には、偏波モード変換素子λ/4と検光子7が設けられている。
【0011】
一方、光電変換器3bは、一対のホトダイオードPD1、PD2から構成されている。また、信号処理器3cは、バンドパスフィルタBPF、ローパスフィルタLPF、除算器÷、減算器(A−B)、等を備えている。
【0012】
以上の構成を有する図9の光電流計測器において、第i番目の光ファイバセンサ1iに電流Iiが流れている場合には、時計回り(cw)の光と反時計回り(ccw)の光が、光ファイバセンサ1i中を円偏波で通過する際に、ファラデー効果によって位相が発生する。
【0013】
この場合に、発生する位相φiは、光ファイバセンサを円偏波が通過する際に発生するファラデー回転角をθi、ベルデ定数をVとすると、次のように表現できる。ここで、光ファイバセンサの巻き数は1としている。
【数1】
(φi)cw=θi
(φi)ccw=−θi
θi=VIi
【0014】
時計回り(cw)の光と反時計回り(ccw)の光がすべての光ファイバセンサを通過させ干渉させた結果として得られる出力Sは、電流を交流としてθ1+θ2+...+θnが小さいと仮定すると、次のように表現できる。
【数2】
S=4V(I1+I2+...+In)
【0015】
したがって、信号処理部3cでは、光電変換器3bの出力信号を得ることにより、その出力信号から、各光ファイバセンサ11〜1nに流れる電流I1〜Inの総和に等しい出力Sを求めることができる。
【0016】
さらに、図示されていない故障判定部では、信号処理部3cの出力信号を受けて、キルヒホッフの第1法則に基づき、電力設備に流入、流出する電流I1〜Inの総和が零以外になった場合に異常があると判断して外部にその旨の信号を送出し、この送出信号に基づいて電力設備を停止させる。
【0017】
【特許文献1】
特開平5−137236号公報
【特許文献2】
特開2000−59987号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図8、図9に示したような従来の電流差動保護システムや光電流計測器には、それぞれ、一長一短ともいえるような相反する利点と問題点がある。以下には、この点について順次説明する。
【0019】
まず、図8に示す従来のPCM電流差動保護システムは、マイクロ回線等により通信するため、距離が離れた端子間でもコストが過度に増大することはなく、経済的に保護システムを構成できるという利点がある一方で、次のようないくつかの問題点がある。すなわち、この従来のPCM電流差動保護システムにおいては、巻線形変流器の出力をデジタル変換する手段、端子間を通信する手段、差動判定する手段、等の複数の手段を、端子毎に専用に設けているため、システム中の電子部品数が増大し、その結果、システムが大型化するとともに高価となり、費用対効果を考慮しても適切ではないという問題点がある。
【0020】
この従来のPCM電流差動保護システムにはまた、鉄心入り巻線形変流器を使用した場合には、事故電流時に鉄心が飽和するために出力が歪むという問題点がある。さらに、空芯の巻線形変流器を使用した場合に、外部磁界などの外乱を受け易く、保護システムに対するサージ対策が難しいという問題点がある。
【0021】
これに対して、図9に示す故障判定機能を備えた光電流計測器においては、図8のPCM電流差動保護システムとは逆に、電子部品の数を減らすことができる、鉄心入り巻線形電流計測器でないため大電流計測時の鉄心の磁気飽和に起因する出力歪を生じない、外部磁界などの外乱を受けにくく、サージ対策が簡略できる、という利点がある。
【0022】
その一方で、この従来の光電流計測器においては、図8のPCM電流差動保護システムにおいて得られる利点、すなわち、距離が離れた端子間でも保護システムを構成できるという利点を得ることはできない。すなわち、図9に示す光電流計測器においては、光ファイバセンサ間を高価な偏波面保持ファイバを用いて接続しているため、費用対効果の観点から、距離の離れた端子間ではコストが過度に増大してしまい、経済的に保護システムを構成できないという問題点がある。この従来の光電流計測器には、他にも、次のようないくつかの問題点がある。
【0023】
まず、光ファイバセンサとして伝送損失の大きい鉛ガラスファイバで構成し、かつ異種材質である石英製の偏波面保持ファイバと接続して構成するため、接続点での光量損失が大きくなり、接続する光ファイバセンサの数に制限があり、広く差動保護システムに適用できないという問題点がある。
【0024】
また、時計回りと反時計回りの光を干渉させる構成であるが、時計回りの光はビームスプリッタPBSを2回透過し、反時計回りの光はビームスプリッタPBSで2回反射されることから、両光が通過する光路は完全に同一ではないため、ファラデー効果以外の効果が出力に現れるとともに、時計回りの光と反時計回りの光の光量を同一にすることが困難である。さらに、ビームスプリッタPBS等、バルクの光学素子を用いていることから、光を空間中で伝搬させる領域が存在するため、外部環境変化に伴う光電流計測器自体の安定性を向上させることも困難である。
【0025】
そしてまた、電力設備の故障判断においては、電流量の総和が零以外になった場合に異常があるとしているが、電力設備に流れる電流量によって誤差の度合いが異なるため、正しい判定ができないという問題がある。
【0026】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、端子間の距離が離れていても低コストで構成可能であり、大電流計測時の鉄心の磁気飽和に起因する出力歪を発生せず、サージ対策が簡略化可能で、さらに、システムの安定化、小型・軽量化に貢献でき、光量の損失問題を克服可能な光電流計測器を提供するとともに、そのような光電流計測器を用いた信頼性の高い電流差動保護システムを提供することである。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明の光電流計測器は、上記のような目的を達成するために、光電流センサ素子間をシングルモードファイバで接続することにより、端子間の距離が離れていても、長距離の光伝送路を低コストで構成することができるようにしたものである。
【0028】
請求項1の発明は、光源と、光源から出射される光を2分岐する第1の光分岐器と、第1の光分岐器から出射される光を偏光する第1の偏光フィルタと、第1の偏光フィルタから出射される光を2分岐する第2の光分岐器と、第2の光分岐器の一方の端部に接続する位相変調器と、第2の光分岐器および位相変調器を介して逆方向に周回する2方向の光を送り込まれる複数の光電流センサ素子とを備えたサニャック干渉形の光電流計測器において、前記複数の光電流センサ素子中における隣接する2つの光電流センサ素子間がシングルモードファイバで接続されたことを特徴としている。
【0029】
この発明によれば、光電流センサ素子間をシングルモードファイバで接続することにより、端子間の距離が離れていても、高価な偏波面保持ファイバで接続した場合に比べて、長距離の光伝送路を持つ光電流計測器を格段に低コストで実現できる。また、光電流計測器であるため、大電流計測時の鉄心の磁気飽和に起因する出力歪を発生せず、かつサージ対策が簡略化できる。
【0030】
請求項2の発明は、請求項1の光電流計測器において、前記複数の光電流センサ素子のうち、所定の近接条件を満たす位置関係にある光電流センサ素子間が偏波面保持ファイバで接続され、前記近接条件を満たす位置関係にない光電流センサ素子間がシングルモードファイバで接続されたことを特徴としている。この発明によれば、高価な偏波面保持ファイバを長く使用することもなく、光量損失を抑制可能な光電流計測器を実現できる。
【0031】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の光電流計測器において、前記隣接する2つの光電流センサ素子間が次のように構成されたことを特徴としている。すなわち、前記隣接する2つの光電流センサ素子において、各光電流センサ素子には、1/4波長板と偏光フィルタがこの順で接続され、隣接する偏光フィルタ間にデポラライザが挿入され、シングルモードファイバで接続される。
【0032】
この発明によれば、最初の光電流センサ素子内に円偏波の光もしくは楕円偏波の光を伝搬させ、最初の測定電流によりファラデー効果を受けた後、1/4波長板で直線偏波の光として偏光フィルタにより直線偏波の消光比を高めた後、無偏波な光にしてシングルモードファイバを伝搬させることができる。この際、シングルモードファイバを伝搬させた後、無偏波な光としても同様な作用があるため、デポラライザはシングルモードファイバの任意の位置に配置すればよい。無偏波の光は、次の偏光フィルタにより直線偏波の光にされた後、1/4波長板により円偏波の光もしくは楕円偏波の光にされ、次の光電流センサ素子内に円偏波の光もしくは楕円偏波の光を伝搬させ、次の測定電流によりファラデー効果を受けることができる。なお、光の伝搬方向が逆となった場合でも同様な作用が得られる。
【0033】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかの光電流計測器において、光増幅器が挿入されたことを特徴としている。この発明によれば、挿入された光増幅器により、光量損失を補うことができる。
【0034】
請求項5の発明は、請求項4の光電流計測器において、前記光増幅器がシングルモードファイバもしくはデポラライザ中に配置されたことを特徴としている。この発明によれば、光源から離れた位置で、かつ光電流センサ、1/4波長板および偏光フィルタでない場所に光増幅器を配置することにより、非干渉光を受光器に戻さないようにするとともに、精度よい電流測定を行いながら、光量損失を補うことができる。
【0035】
請求項6の発明は、請求項3の光電流装置において、前記デポラライザが偏波面保持ファイバにより構成され、デポラライザに生じた直交成分間の群遅延時間差が光コヒーレント時間より大となるように構成されたことを特徴としている。この発明によれば、時間差を利用した無偏光化が実現でき、複数の光電流センサ素子間をシングルモードファイバで接続して光レベルでの和もしくは差の電流演算が可能となる。
【0036】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかの光電流計測器において、前記光電流センサ素子が、被測定導体を周回するように配置されたセンサファイバであることを特徴としている。この発明によれば、省スペ−ス化を図りながら被測定導体の回りに光電流センサ素子を取り付けることができるため、外部磁界の影響を受けにくい精度のよい測定が可能となる
【0037】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかの光電流計測器において、前記光電流センサ素子が、被測定導体に電磁結合された巻線コイルの2次出力を検出するように配置されたセンサファイバであることを特徴としている。この発明によれば、既設の電力設備等に対しても、大きな変更なしに簡易に光電流計測器を取り付けることが可能になる。
【0038】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかの光電流計測器において、前記1/4波長板が、センサファイバの一部を曲げることによって製作されたファイバ素子であることを特徴としている。この発明によれば、接接続点をなくすことができるので接続損失を低減できる。
【0039】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかの光電流計測器において、前記1/4波長板が偏波面保持ファイバであることを特徴としている。この発明によれば、光電流計測器を全ファイバ化でき、外部環境変化に対して安定にすることができる。
【0040】
請求項11の発明は、保護対象設備の複数箇所の電流を計測する複数の電流計測器と、それらにより計測された電流の和もしくは差を算出する演算回路と、その演算結果に基づき保護対象設備の異常を判定する判定回路を備えた電流差動保護システムにおいて、前記複数の電流計測器が、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の光電流計測器であることを特徴としている。
【0041】
この発明によれば、請求項1乃至請求項10のいずれかの光電流計測器を使用することにより、端子間の距離が離れていても、光電流計測器を用いた電流差動保護システムを低コストで構成することができる。また、システムの安定化、小型化、軽量化、さらに光量の損失問題の解決が可能な光電流計測器を用いた信頼性の高い電流差動保護システムが実現できる。
【0042】
請求項12の発明は、請求項11の電流差動保護システムにおいて、前記保護対象設備に設けられた各端子の3相電流量を標本量とすることを特徴としている。この発明によれば、使用するシングルモードファイバケーブルの本数を削減することができる。
【0043】
請求項13の発明は、請求項11または請求項12の電流差動保護システムにおいて、抑制量として保護対象設備の片端の電流値、特に電流値のスカラ量を用いることを特徴としている。この発明によれば、保護対象設備に流れる電流量に係わらず信頼度の高い異常判定をすることができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下には、本発明を適用した光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムの実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0045】
[第1の実施形態]
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図である。図1において、光電流センサ素子である2つのセンサファイバ100a,100bは、それぞれセンサ部101a,101bを構成しており、センサファイバ100a,100b間は、光伝送用のシングルモードファイバ120abにより接続されている。また、第1のセンサ部101aは、信号処理部301とともに、A端子光保護装置部401を構成しており、第2のセンサ部101bは、B端子保護装置部501を構成している。以下には、各部の構成の詳細について順次説明する。
【0046】
A端子光保護装置部401側に設けられた信号処理部301は、まず、光信号を送出するために、光源8、入射光を2分岐する第1の光分岐器9、入射光を無偏光に変換する第1のデポラライザ10、入射する無偏光を直線偏光に変換する第1の偏光フィルタ11、入射光を2分岐する第2の光分岐器12、入射光を位相変調する位相変調器13、光伝送用のシングルモードファイバ14a,14b、等を備えている。
【0047】
信号処理部301の第2の光分岐器12から分岐した一方のシングルモードファイバ14aは、入射光を無偏光に変換する第2のデポラライザ15a、入射光を直線偏光に変換する第2の偏光フィルタ16a、を介して、第1のセンサ部101aに接続されている。
【0048】
第1のセンサ部101aは、光電流センサ素子である第1のセンサファイバ100aと、その両端に配置された第1、第2の1/4波長板17a,18aから構成されている。ここで、第1のセンサファイバ100aは、捻りを加えた石英製の低複屈折シングルモードファイバから構成されており、第1の被測定導体601aを周回するように配置されている。また、第1、第2の1/4波長板17a,18aは、接続による損失を抑えるためにセンサファイバの一部を曲げることにより製作されているか、もしくは、石英製の偏波面保持ファイバ(例えば、楕円コアファイバ)で構成されている。
【0049】
第1のセンサ部101aを挟んで第2の偏光フィルタ16aと対向する位置には、入射光を直線偏光に変換する第3の偏光フィルタ19aが配置されており、光伝送用のシングルモードファイバ120abに接続されている。A端子光保護装置部401は、このシングルモードファイバ120abを介して、B端子光保護装置部501に接続されている。
【0050】
ここで、光伝送用のシングルモードファイバ120abは、B端子光保護装置部501において、入射光を無偏光に変換する第3のデポラライザ15ab、入射光を直線偏光に変換する第4の偏光フィルタ16b、を介して、第2のセンサ部101bに接続されている。
【0051】
第2のセンサ部101bは、光電流センサ素子である第2のセンサファイバ100bと、その両端に配置された第3、第4の1/4波長板17b,18bから構成されており、第2のセンサファイバ100bは、第2の被測定導体601bを周回するように配置されている。ここで、第2のセンサ部101bは、本質的に、第1のセンサ部101aと同様の構成を有する。すなわち、第2のセンサファイバ100bは、第1のセンサファイバ100aと同様に構成されており、また、第3、第4の1/4波長板17b,18bは、第1、第2の1/4波長板17a,18aと同様に構成されている。
【0052】
第2のセンサ部101bを挟んで第4の偏光フィルタ16bと対向する位置には、入射光を直線偏光に変換する第5の偏光フィルタ19bが配置されており、入射光を無偏光に変換する第4のデポラライザ15baを介して、光伝送用のシングルモードファイバ120baに接続されている。すなわち、B端子光保護装置部501は、このシングルモードファイバ120baを介して、A端子光保護装置部401の位相変調器13側に接続されている。
【0053】
A端子光保護装置部401側に設けられた信号処理部301はまた、第1、第2のセンサ部101a,101bを通過して戻ってきた光を検出するための受光器24、検波回路25を備えるとともに、位相変調器13用の発振回路26を備えている。A端子光保護装置部401にはさらに、信号処理部301から出力された出力信号を判定する判定部27が設けられている。
【0054】
なお、A端子およびB端子の2端子からなる保護対象設備の場合、第1、第2のセンサ部101a,101bで測定対象とする第1、第2の被測定導体601a,601bは同一の被測定導体であり、符号「601a」はA端子側の位置、「601b」はB端子側の位置を示している。
【0055】
本実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムの構成は上記の通りであるが、さらに、本実施形態の構成をより明瞭に示す観点から、以下には、「デポラライザ」および「無偏光」について補足説明する。
【0056】
まず、「無偏光」とは、直交モード間の光量が等しく、直交モード間の光がインコヒーレントである条件を満足する光をいう。この条件を満足する光は、図2に示されるデポラライザを通過させることにより得られる。図2に示すように、デポラライザは、偏波面保持ファイバL1,L2を使用し、これらの偏波面保持ファイバL1,L2の端面同士を接合することにより構成される。
【0057】
具体的には、第1の偏波面保持ファイバL1の長さと第2の偏波面保持ファイバL2の長さの比を1:2に設定し、両偏波保持ファイバの固有軸x、yを45°捻った状態で両偏波保持ファイバL1,L2の端面を相互融着する。ここに構成されたデポラライザは、リオ型デポラライザと称され、このリオ型デポラライザの単位長さLSは、通常、偏波面保持ファイバの2本の固有軸x、yを光が伝播することにより生ずる直交成分間の群遅延時間差を光のコヒーレント時間以上に設定する長さとされる。
【0058】
通常、複数のデポラライザを用いるときには、偏波面保持ファイバの長さLs(=L1+L2)に比率を持たせ(例えば、4つのデポラライザを用いる場合は1:2:4:8の比率とする)、すべてのデポラライザにより生じた直交成分間の群遅延時間差が、光のコヒーレント時間より大きくなるようにして、偏光成分による零点ドリフトを抑制する。例えば、光源として、スーパールミネッセントダイオードを用いた場合には、比率1のリオ型デポラライザの単位長さを20cm程度とすれば、一般的に、コヒーレント時間以上の直交成分の群遅延時間差を得ることができる。
【0059】
次に、本実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムの作用について説明する。なお、図1中では、A端子光保護装置部401とB端子光保護装置部501におけるセンサ部101a,101bについて、それぞれの符号の末尾に、「a」、「b」を付しているが、これらの符号は、所属先の各光保護装置部401,501の別を示すために使用されているにすぎず、各センサ部101a,101bの構成は、本質的に同一である。また、センサ部101a,101bの両側の偏光フィルタ16a,19a,16b,19b、等の構成も、本質的に同一である。
【0060】
そのため、後述する第2の実施形態以降の各実施形態を含め、以下の説明中においては、簡略化の観点から、各センサ部101a,101b等の、同一の構成を有する要素について共通する内容を説明する場合には、これらの末尾の符号「a」、「b」を省略した共通の符号を適宜使用するものとする。例えば、「センサ部101」は、第1のセンサ部101aと第2のセンサ部101bを共通的に表現している。
【0061】
まず、A端子光保護装置部401側に設けられた信号処理部301において、光源8から出射された光は、第1の光分岐器9に導かれる。第1の光分岐器9において分岐した光は、第1のデポラライザ10に入射し、透過して直交モード間の光量が等しい無偏光の光に変換される。第1のデポラライザ10から出射された無偏光の光は、第1の偏光フィルタ11に入射して、この第1の偏光フィルタ11で、ある所定の偏光面内における直線偏光の光に変換される。第1の偏光フィルタ11で変換された直線偏光の光は、第2の光分岐器12に入射し、時計回りの光および反時計回りの光に2分岐される。
【0062】
第2の光分岐器12を介して分岐された反時計回りの光は、シングルモードファイバ14bを通って位相変調器13において位相変調される。位相変調された反時計回りの光は、A端子光保護装置部401から出射し、シングルモードファイバ120baを通ってB端子光保護装置部501に達する。B端子光保護装置部501に達した光は、第4のデポラライザ15baに入射して無偏光に変換され、次に、第5の偏光フィルタ19bに入射して、ある所定の偏光面内における直線偏光の光に変換された後、第2のセンサ部101bに入射する。
【0063】
第2のセンサ部101bに入射した直線偏光の光は、第4の1/4波長板18bを通過して円偏光の光もしくは楕円偏波の光に変換される。この円偏光の光もしくは楕円偏波の光は、捻りを加えた低複屈折シングルモードファイバよりなる第2のセンサファイバ100bに入射して、第2の被測定導体601bに流れる電流によって形成される磁界によりファラデー効果を受けた後、第3の1/4波長板17bを通過して第2のセンサ部101bから出射し、第4の偏光フィルタ16bを通過して、ある所定の偏光面内における直線偏光の光に変換される。
【0064】
第4の偏光フィルタ16bで変換された直線偏光の光は、第3のデポラライザ15abを通過して、直交モード間の光量が等しい無偏光の光に変換される。変換された無偏光の光は、B端子光保護装置部501から出射し、シングルモードファイバ120abを通ってA端子光保護装置部401に達する。A端子光保護装置部401に達した無偏光の光は、第3の偏光フィルタ19aに入射して、ある所定の偏光面内における直線偏光の光に変換された後、第1のセンサ部101aに入射する。
【0065】
第1のセンサ部101aに入射した直線偏光の光は、第2の1/4波長板18aを通過して円偏光の光もしくは楕円偏波の光に変換される。この円偏光の光もしくは楕円偏波の光は、捻りを加えた低複屈折シングルモードファイバよりなる第1のセンサファイバ100aに入射して、第1の被測定導体601aに流れる電流によって形成される磁界によりファラデー効果を受けた後、第1の1/4波長板17aを通過して第1のセンサ部101aから出射し、第2の偏光フィルタ16aを通過して、ある所定の偏光面内における直線偏光の光に変換される。
【0066】
第2の偏光フィルタ16aで変換された直線偏光の光は、第2のデポラライザ15aに入射して無偏光の光に変換され、信号処理部301の第2の光分岐器12に入射し、分岐する。第2の光分岐器12で分岐した光は、第1の偏光フィルタ11および第1のデポラライザ10をこの順に通過して無偏光の光に変換され、第1の光分岐器9において分岐して受光器24に到達し、受光される。
【0067】
一方、第2の光分岐器12を介して分岐された時計回りの光は、シングルモードファイバ14aを通過して信号処理部301から出射した後、第2のデポラライザ15aに入射して無偏光の光に変換され、次に、第2の偏光フィルタ16aに入射して、ある所定の偏光面内における直線偏光の光に変換された後、第1のセンサ部101aに入射する。
【0068】
第1のセンサ部101aに入射した直線偏光の光は、第1の1/4波長板17aを通過して円偏光の光もしくは楕円偏波の光に変換される。この円偏光の光もしくは楕円偏波の光は、捻りを加えた低複屈折シングルモードファイバよりなる第1のセンサファイバ100aに入射して、第1の被測定導体601aに流れる電流によって形成される磁界によりファラデー効果を受けた後、第2の1/4波長板18aを通過して第1のセンサ部101aから出射し、第3の偏光フィルタ19aを通過して、ある所定の偏光面内における直線偏光の光に変換される。
【0069】
第3の偏光フィルタ19aで変換された直線偏光の光は、A端子光保護装置部401から出射し、シングルモードファイバ120abを通ってB端子光保護装置部501に達する。B端子光保護装置部501に達した直線偏光の光は、第3のデポラライザ15abに入射して無偏光の光に変換され、次に、第4の偏光フィルタ16bに入射して、ある所定の偏光面内における直線偏光の光に変換された後、第2のセンサ部101bに入射する。
【0070】
第2のセンサ部101bに入射した直線偏光の光は、第3の1/4波長板17bを通過して円偏光の光もしくは楕円偏波の光に変換される。この円偏光の光もしくは楕円偏波の光は、捻りを加えた低複屈折シングルモードファイバよりなる第2のセンサファイバ100bに入射して、第2の被測定導体601bに流れる電流によって形成される磁界によりファラデー効果を受けた後、第4の1/4波長板18bを通過して第2のセンサ部101bから出射し、第5の偏光フィルタ19bを通過して、ある所定の偏光面内における直線偏光の光に変換される。
【0071】
第5の偏光フィルタ19bで変換された直線偏光の光は、第4のデポラライザ15baに入射して無偏光の光に変換された後、B端子光保護装置部501から出射し、シングルモードファイバ120baを通ってA端子光保護装置部401に達する。A端子光保護装置部401に達した光は、信号処理部301の位相変調器13に入射して位相変調される。この位相変調された時計回りの光は、第2の光分岐器12において分岐し、第1の偏光フィルタ11および第1のデポラライザ10をこの順に通過して無偏光の光に変換され、第1の光分岐器9を通過して受光器24に到達し、受光される。
【0072】
以上のようにして、第2の光分岐器12を介して分岐された時計回りの光と反時計回りの光は、第1、第2のセンサ部101a,101bの両方を通過して最終的に受光器24に到達する。この場合に、各センサ部101において被測定導体601の電流により発生した磁界がセンサファイバ100に印加されると、そのセンサファイバ100に入射される直前において、偏光フィルタ16と1/4波長板17(もしくは、偏光フィルタ19と1/4波長板18)により円偏光もしくは楕円偏光に変換された時計回りの光および反時計回りの光の間には、磁界に応じてファラデー効果による位相差が生じる。
【0073】
例えば、時計回りの光に対してファラデー効果がプラスに作用した場合、反時計回りの光にはファラデー効果はマイナスに作用する。この結果、ファラデー効果により、時計回りの光および反時計回りの光が干渉合成した場合、両光の間に位相差が生じる。すなわち、これら反時計回りの光および時計回りの両光を第2の光分岐器12および第1の光分岐器9において干渉させた結果、受光器24においては、光強度変化した位相変調光が受光されることになる。
【0074】
そして、受光器24に到達した位相変調光は、この受光器24において電気信号に光電変換されて電気信号となり、同期検波器25に入力される。同期検波器25においては、発振回路26から供給される信号を参照信号として、第1のセンサファイバ100aと第2のセンサファイバ100bの各々に印加される磁界に比例する位相差の合計位相差を検波出力として得る。
【0075】
ここで、センサファイバiのベルデ定数をVi、被測定導体周りのセンサファイバの巻数をNi、被測定導体に流れる電流をIiとした場合に、ファラデー回転角θiとファラデー効果により生ずる時計回りに伝播する光と反時計回りに伝播する光の位相差φiとの間には、次の式(1)、(2)で示されるような関係が存在する。
【数3】
θi=ViNiIi … (1)
φi=2θi … (2)
【0076】
したがって、これらの式(1)、(2)を用いて、光の位相差φiから被測定導体に流れる電流Iiを求めることができる。
【0077】
ここで、第1のセンサファイバ100aと第2のセンサファイバ100bが、ベルデ定数Vの石英ファイバで構成され、同じ巻数Nで、第1の被測定導体601aおよび第2の被測定導体601bの周りにそれぞれ巻かれていると仮定する。異常がない場合、第1の被測定導体601aおよび第2の被測定導体601bには同一電流IがA端子からB端子へ流れるものとすると、各々の電流値Ia,Ibは、Ia=I、かつ、Ib=Iとなる。
【0078】
そして、第1のセンサファイバ100aと第2のセンサファイバ100bにおいて、各センサファイバ100a,100bを各被測定導体601a,601bの周りに同一方向に同一巻数だけ周回した場合、第1のセンサファイバ100aのみでファラデー効果により生ずる時計回りの光と反時計回りの光の位相差φaと、第2のセンサファイバ100bのみで生ずる光の位相差φbは等しくなる。すなわち、φa=φ、かつ、φb=φ、となる。
【0079】
この場合、検波出力Sは、次の式(3)で表現できる。
【数4】
【0080】
一方、第1のセンサファイバ100aと第2のセンサファイバ100bにおいて、各センサファイバ100a,100bを各被測定導体601a,601bの周りに互いに逆方向(巻数Niの符号を“−”にする)に同一巻数だけ周回した場合、第1のセンサファイバ100aのみでファラデー効果により生ずる時計回りの光と反時計回りの光の位相差φaと、第2のセンサファイバ100bのみで生ずる光の位相差φbは大きさが等しく符号が逆となる。すなわち、φa=φ、かつ、φb=−φ、となる。
【0081】
この結果、検波出力Sは、次の式(4)で表現できる。
【数5】
【0082】
したがって、第1、第2のセンサファイバ100a,100bの巻数を同一にした場合、正常動作時の検波出力Sとして、上記の式(3)もしくは式(4)の結果が得られる。
【0083】
さらに、以上のようにして得られた検波出力を判定部27に入力して、A端子光保護装置部401とB端子光保護装置部501の間(より厳密には、第1のセンサファイバ100aと第2のセンサファイバ100bの間)の事故検出の判定を行う。すなわち、上記の式(3)もしくは式(4)と異なる出力が得られた場合、その逸脱量を判定部27で求めて、許容値を超えた場合には、判定部27で事故判定をする。なお、実際の構成において、A端子光保護装置部401とB端子光保護装置部501の間は、数kmから数十km程度離れている場合もある。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、信号処理部301を含むA端子光保護装置部401とB端子光保護装置部501の間を光ファイバで接続し、両者の間において電流情報を光伝送して端子間異常の差動判定を行うことにより、信号処理部301のないB端子光保護装置部501には電力供給が不要となり、保護システム全体の電子部品の数を少なくすることができる。
【0085】
特に、光電流センサ素子である第1、第2のセンサファイバ100a,100b間を安価なシングルモードファイバ120ab,201baで接続することにより、端子間の距離が離れていても、高価な偏波面保持ファイバで接続した場合に比べて、長距離の光伝送路を格段に低コストで構成することができる。また、光電流計測器を用いているため、従来技術について説明したように、大電流計測時の鉄心の磁気飽和に起因する出力歪を発生せず、かつサージ対策が簡略化できることは明らかである。
【0086】
したがって、端子間の距離が離れていても低コストで構成可能であり、大電流計測時の鉄心の磁気飽和に起因する出力歪を発生せず、サージ対策が簡略化可能な光電流計測器およびそれを用いた信頼性の高い電流差動保護システムを実現することができる。
【0087】
さらに、光電流センサ素子であるセンサファイバに石英ファイバを用いることにより、伝送損失を少なくすることができ、かつ、時計回りに伝播する光と反時計回りの光の光量を同一にすることができる。その上、全ファイバ構成としているために、外部環境変化に伴う光電流計測器自体の安定性を向上させることができる。
【0088】
したがって、システムの安定化、小型化、軽量化、さらに光量の損失問題の解決が可能な光電流計測器およびそれを用いた信頼性の高い電流差動保護システム(ケーブル区間保護リレーシステム、短距離線路保護リレーシステムや構内母線保護リレーシステムなど)を実現することができる。
【0089】
[第2の実施形態]
図3は、本発明を適用した第2の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、第1の実施形態と異なる点は、信号処理部301内部から第1のセンサ部101aに至るまでの光伝送路を、偏波面保持ファイバを用いて構成している点である。
【0090】
すなわち、本実施形態においては、第1の実施形態における光伝送用のシングルモードファイバ14a,14bに代えて、偏波面保持ファイバ141a、141bを使用すると共に、第1の光分岐器9a、第2の光分岐器12aを、偏波面保持ファイバにより構成しており、図中においては、偏波面保持ファイバを使用したそれらの部分を破線で表現している。
【0091】
また、位相変調器13とシングルモードファイバ120baとの間の、偏波面保持ファイバ141bからシングルモードファイバ120baに変わる部分には、偏光フィルタ160を配置している。なお、図3においては、信号処理部301と第1のセンサ部101aの間における偏波面保持ファイバの使用に伴い、図1でこの部分に用いている第1の偏光フィルタ16aを省略した場合を示しているが、第1の偏光フィルタ16aを配置してもよい。すなわち、本実施形態では、A端子光保護装置部401内部ではできる限り偏波面保持ファイバで光を伝送して、デポラライザを用いない構成としている。
【0092】
また、光源8より出射された光の直線偏光の方位に合せて偏波面保持ファイバを取り付けることにより、光の偏波面方向を一定として第1のセンサ部101aと偏光フィルタ160に入射するようになっている。ここで、光の偏波面は、第1の偏光フィルタ11の出力が最大となり、第1のセンサ部101aの第1の1/4波長板17aが1/4波長板として動作し、また、偏光フィルタ160の出力が最大となるように調整されている。なお、他の部分の構成は第1の実施形態と同様である。
【0093】
以上のような構成を有する本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様の効果が得られることに加えて、さらに、次のような効果が得られる。すなわち、本実施形態によれば、A端子光保護装置部401内部の光伝送路としてできる限り偏波面保持ファイバを用いることにより、光源8の光を損失なくセンサ部101aとシングルモードファイバ120baに伝送することができる。具体的には、第1の実施形態と比較して約4倍の光量とすることができる。したがって、本実施形態によれば、光量の損失を抑制し、これに伴い最低測定電流量(S/N比で決まる電流量)を増加させることができる。
【0094】
[第3の実施形態]
図4は、本発明を適用した第3の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、第1の実施形態と異なる点は、まず、3つ以上の光保護装置部、すなわち、A端子光保護装置部401、B端子光保護装置部501b、C端子光保護装置部501c、…、N端子光保護装置部501nから構成されている点である。これに伴い、隣接する各2つの光保護装置部間は、シングルモードファイバ120ab,201bc,201cd,…,201naでそれぞれ接続されている。
【0095】
本実施形態においてはまた、光源8と第1の光分岐器9の間、および各シングルモードファイバ120ab,201bc,201cd,…,201na中に、光増幅器30,30a,30b,30c,…,30nがそれぞれ配置されている。なお、このような光増幅器は、第1の実施形態に示すような2つの光保護装置部から構成される光電流計測器に配置してもよい。
【0096】
また、本実施形態において増設されたC端子光保護装置部501c、…、N端子光保護装置部501nは、B端子光保護装置部501bと同等に構成されている。すなわち、iがbからnを表すとすると、I端子光保護装置部501iは、デポラライザ15hi(hはI端子光保護装置部501iの1つ前の光保護装置部の各構成要素を表す記号である)、偏光フィルタ16i、被測定導体601i、センサ部101i、偏光フィルタ19i、光増幅器30i、より構成されている。ここで、センサ部101iは、1/4波長板17i、センサファイバ100i、1/4波長板18iより構成されている。
【0097】
なお、光増幅器30,30a,30b,30c,…,30nは、必ずしもすべて配置する必要はなく、1つ以上配置すればよい。また、光増幅器30,30a,30b,30c,…,30nは、シングルモードファイバ中でなく、デポラライザ中に配置してもよい。
【0098】
さらに、本実施形態において、光増幅器30,30a,30b,30c,…,30nの各々の小信号利得係数(%/cm)をg0,g0a,g0b,g0c,…,g0n、各々の利得長(cm)をL、La、Lb、Lc、…、Lnとすると、光電流計測器の光源からみた全体におけるレーザ発振を防ぐために、以下の条件式(5)を満足するようになっている。
【数6】
R1・R2・exp(g0・L+g0a・La+g0b・Lb+g0c・Lc+…+g0n・Ln−α )< 1 ... (5)
【0099】
なお、この条件式(5)において、R1,R2は、レーザ発振のもととなる共振器を構成する2つの部分(光電流計測器中に存在する)の反射率である。また、α(≧0)は、光源8から出射された光が第1の光分岐器9、第2の光分岐器を通り、時計回りもしくは反時計回りに各光保護装置部を通過して再び光源8に戻って来た時の光の全損失量(%)を表している。
【0100】
また、本実施形態の光電流計測器は、光電流計測器の光源から見た全体の発振を防ぐ条件ではなく、任意の区間でのレーザ発振を防ぐために、以下の条件式(6)を満足するようになっている。
【数7】
R3・R4・exp(Σ(g0i・Li−αi))< 1 ... (6)
【0101】
なお、この条件式(6)において、R3,R4は、共振器を構成する任意区間の各端における光の反射率を表しており、Σは、その区間内にあるすべての利得g0i・Liと損失αi(≧0)の差を示している。
【0102】
図5に、光増幅器30,30a,30b,30c,…,30nの構成例を示す。光増幅器30,30a,30b,30c,…,30nは、増幅用光ファイバ(例えば、エルビウムドープ光ファイバ)31、励起用半導体レーザ(エルビウムドープ光ファイバを励起するには、波長0.98μmもしくは1.48μmの光を出力する)32と波長選択性(WDM)光ファイバカプラ33、光フィルタ34,35から構成されている。
【0103】
このような光増幅器において、光源8の光(この場合、波長1.55μm)は、図5中における右側もしくは左側から入力され、左側もしくは右側から出力される。波長選択性(WDM)光ファイバカプラ33は、光源8の光を分岐することなく通過させ、励起用半導体レーザ32の出力光を分岐するようになっている。
【0104】
すなわち、この光増幅器において、励起用半導体レーザ32から出力された光は、波長選択性(WDM)光ファイバ33を通ることにより増幅用光ファイバ31に導かれ、増幅用光ファイバ31を励起して、増幅用光ファイバ31を通過する光源8の光を増幅するようになっている。また、光フィルタ34,35は、出力から雑音要因となるASE雑音を取り除くための光バンドパスフィルタである。
【0105】
なお、光増幅器30,30a,30b,30c,…,30nのうち、光源8と第1の光分岐器9の間に配置される光増幅器30については、分光器9の方向のみへ光を通過させればよいため、光フィルタ34の代わりに一方向にしか光を透過しないアイソレータ(ファラデー回転子)を配置し、増幅用光ファイバ31と光フィルタ35の間にもアイソレータを配置して、戻り光の影響を抑える構成としてもよい。
【0106】
以上のような構成を有する本実施形態によれば、光増幅器をシングルモードファイバもしくはデポラライザ中に配置することにより、各々のデポラライザと偏光フィルタの組み合わせによる光量損失(光量が各々1/2に減少する光量損失)を補うことができる。また、光源の近くの光増幅器にはアイソレータを配置し、他の光増幅器については、光源から離れた位置で、かつセンサファイバ、1/4波長板および偏光フィルタでない場所に配置することにより、非干渉光を受光器に戻さないようにするとともに、精度よい電流測定を行いながら、光量損失を補うことができる。
【0107】
したがって、本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様の効果が得られることに加えて、さらに、2端子以上の多くの光保護装置部に適用でき、光量損失を光増幅器により補うことができる、という優れた効果が得られる。
【0108】
なお、本実施形態の変形例として、光増幅器は、シングルモードファイバ、デポラライザのどの位置に配置してもよいことは明らかである。また、光増幅器を、偏光フィルタ、1/4波長板、センサファイバ等の光学素子中に挿入したり、これらの光学素子そのものを増幅用光ファイバと兼用したりしても同様な効果が得られる。さらに、増幅用光ファイバとしてプラセオジウム(Pr)ドープ光ファイバ増幅器、ツリウム(Tm)ドープ光ファイバ増幅器を用いてもよい。また、シングルモードファイバ中に、誘導ラマン散乱を利用する光ファイバラマン増幅器を用いてもよい。
【0109】
[第4の実施形態]
図6は、本発明を適用した第4の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、第1の実施形態と異なる点は、まず、2つの光電流計測器701,702で電流差動保護システムが構成されている点である。これらの光電流計測器701,702においては、近接する(所定の近接条件を満たす位置関係にある)3つの各相(U相、V相、W相)に各相のセンサ部が配置され、隣接するセンサ部間が偏波面保持ファイバで接続されるとともに、近接しない(所定の近接条件を満たす位置関係にない)センサ部間がシングルモードファイバで接続されている。
【0110】
本実施形態においてはまた、保護対象設備に設けられたA端子およびB端子の3相電流量を標本量とするとともに、保護対象設備の片端の電流値、特に電流値のスカラ量の和を抑制量とする。さらに、零相の光電流計測器も構成している。以下には、2つの光電流計測器701,702の詳細な構成について順次説明する。
【0111】
図6において、まず、第1の光電流計測器701は、第1の実施形態の光電流計測器におけるA端子光保護装置部401とB端子保護装置部501の各センサ部101を、U相、V相、W相の3相の各センサ部101〜103と、その間を接続する偏波面保持ファイバ150,151からなる3相センサ部(101〜103,150,151)に置き換えたものであり、これ以外の構成は、基本的に第1の実施形態の光電流計測器と同様である。
【0112】
すなわち、A端子光保護装置部401の3相センサ部(101a〜103a,150a,151a)と、B端子光保護装置部501の3相センサ部(101b〜103b,150b,151b)の間は、光伝送用のシングルモードファイバ120ab,120baで接続されている。また、3相センサ部(101〜103,150,151)の片側に設けられたデポラライザ115と偏光フィルタ116、および反対側に設けられた偏光フィルタ119は、第1の実施形態における、デポラライザ15と偏光フィルタ16,19にそれぞれ対応する。さらに、信号処理部301もまた、第1の実施形態における信号処理部301と同一である。
【0113】
また、3相の各センサ部101〜103は、第1の実施形態における各センサ部101と同様に、1/4波長板、センサファイバ、1/4波長板より構成されている。ただし、第1の光電流計測器701の各センサ部101a,102a,103a,101b,102b,103bの光電流センサ素子であるセンサファイバの巻数の比は、1:2:3:−1:−2:−3(ここで、「−」は被測定導体の回りを逆向きに巻いた状態を示す)となっており、標本量(各相毎で光電流計測器を構成するのではなく、1つの光電流計測器で保護システムを構成できるようにしている)をとることで、保護対象設備の短絡専用の検出を行うようになっている。
【0114】
また、各センサ部101a,102a,103a,101b,102b,103bの巻数比は、2:−1:−1:−2:1:1等であってもよい。さらに、2:0:1:−2:0:−1とすれば、短絡・地絡共用の検出を行うことができる。
【0115】
一方、601aは第1のU相被測定導体、602aは第1のV相被測定導体、603aは第1のW相被測定導体であり、601bは第2のU相被測定導体、6012bは第2のV相被測定導体、603bは第2のW相被測定導体である。そして、各センサ部101a〜103a,101b〜103bのセンサファイバは、各々、被測定導体601a〜603a、601b〜603bを周回するように配置されている。
【0116】
第1の実施形態と同様に、A端子およびB端子の2端子からなる保護対象設備の場合、第1の被測定導体601a〜603aと第2の被測定導体601b〜603bは、いずれも、同一の被測定導体であり、601a〜603aはA端子側の位置、601b〜603bはB端子側の位置を示している。
【0117】
さらに、第1のU相被測定導体601a、第1のV相被測定導体602a、第1のW相被測定導体603aには、各相の巻線形変流器(巻線形CT)170u,170v,170wがそれぞれ取り付けられており、各巻線形変流器170u,170v,170wの出力は、各信号変換器40u,40v,40wにそれぞれ導かれている。そして、各信号変換器40u,40v,40wからの出力(電流値)は、判定部27に送られるようになっている。
【0118】
判定部27では、各信号変換器40u,40v,40wの出力、すなわち、第1のU相被測定導体601a、第1のV相被測定導体602a、第1のW相被測定導体603aの各電流値Iu,Iv,Iwのスカラ和であるΣ|I|=|Iu|+|Iv|+|Iw|を保護対象設備の保護のための抑制量として用いている(電流値に応じて光電流計測器の信号処理部301,302の出力が異常かどうかを判断する)。
【0119】
ここで、各巻線形変流器170u,170v,170wを光変流器(光電流センサ)としてもよいことはいうまでもない。また、各巻線形変流器(巻線形CT)170u,170v,170wの出力を、各信号変換器40u,40v,40wに直接導く代わりに、でなく、各巻線形変流器170u,170v,170wの出力の一部を、各信号変換器40u,40v,40wに導くように構成してもよい。
【0120】
次に、第2の光電流計測器702は、第1の光電流計測器701と基本的に同等の構成を有しており、A端子光保護装置部401とB端子保護装置部501には、U相、V相、W相の3相の各センサ部201〜203と、その間を接続する偏波面保持ファイバ250,251からなる3相センサ部(201〜203,250,251)を備えている。
【0121】
そして、A端子光保護装置部401の3相センサ部(201a〜203a,250a,251a)と、B端子光保護装置部501の3相センサ部(201b〜203b,250b,251b)の間は、光伝送用のシングルモードファイバ220ab,220baで接続されている。また、3相センサ部(201〜203,250,251)の片側に設けられたデポラライザ215と偏光フィルタ216、および反対側に設けられた偏光フィルタ219は、第1の光電流計測器701における、デポラライザ115と偏光フィルタ116,119にそれぞれ対応する。さらに、信号処理部302もまた、第1の光電流計測器702の信号処理部301と同等の構成を有する。
【0122】
また、3相の各センサ部201〜203が、1/4波長板、センサファイバ、1/4波長板より構成されている点も第1の光電流計測器701と同様である。ただし、第2の光電流計測器702において、各センサ部201a,202a,203a,201b,202b,203bの光電流センサ素子であるセンサファイバの巻数の比は、1:1:1:−1:−1:−1(ここで、「−」は被測定導体の回りを逆向きの巻いた状態を示す)となっており、零相の電流を検出することで、保護対象設備の地絡の検出を行うようになっている。
【0123】
そして、各センサ部201a〜203a,201b〜203bのセンサファイバは、各々、被測定導体601a〜603a、601b〜603bを周回するように配置されている。また、各センサ部201a〜203a,201b〜203bは、それぞれ、第1の光電流計測器701の各センサ部101a〜103a,101b〜103bの近傍に設置されている。
【0124】
この場合、第1の実施形態と同様に、第1の被測定導体601a〜603aと第2の被測定導体601b〜603bは、いずれも、同一の被測定導体であり、601a〜603aはA端子側の位置、601b〜603bはB端子側の位置を示している点については、前述した通りである。
【0125】
なお、零相の電流検出において、3相(U相、V相、W相)の被測定導体の周囲を1つのセンサファイバで取り囲むことにより電流検出する場合は、第2の光電流計測器702の構成を、第1の実施形態に係る光電流計測器の構成と同様にすることができる。ただし、この場合、3相の被測定導体601〜603は、単一のセンサ部101のセンサファイバで周回されるのではなく、各相のセンサ部101〜103のセンサファイバでそれぞれ周回されるようにする。
【0126】
また、第2の光電流計測702においても、第1の光電流計測器701と同様に、巻線形変流器もしくは光変流器等により各相の電流値を測定して、その電流値、特に各相の電流値のスカラ和を抑制量として用いてもよい。
【0127】
以上のような構成を有する本実施形態によれば、第1の光電流計測器701による信号処理部301の出力、もしくは第2の光電流計測器702による信号処理器302の出力と、信号変換器40u,40v,40wの出力とを、判定部27に導くことにより、電流差動保護システムを構成することができ、保護対象設備の異常判断を行うことができる。この際、信号変換器40u,40v,40wの出力を判定部27に導かない構成をとることもできる。
【0128】
また、第1の光電流計測器701のように保護対象設備に設けられた各端子の3相の電流量を標本量とすることにより、システムで使用する光伝送用のシングルモードファイバケーブルの本数を削減できる。そして、各相のセンサファイバの巻数に応じて短絡専用もしくは短絡・地絡共用の異常検出を行うことができる。
【0129】
また、保護対象設備の片端の電流値、特に電流値のスカラ量を抑制量とすることにより、保護対象設備に流れる電流量に関わらず信頼度が高い異常判定をすることができる。さらに、第2の光電流計測器702のように零相検出の電流差動保護システムを構成することにより、地絡専用の異常検出を行うことができる。
【0130】
したがって、本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様の効果が得られることに加えて、さらに、光伝送用のシングルモードファイバの本数を削減できるとともに、保護対象設備に流れる電流量に関わらず信頼度が高い異常判定が可能となる、という効果が得られる。
【0131】
なお、本実施形態の保護対象設備に対する適用リレーの種類としては、第1の実施形態と同様に、ケーブル区間保護リレーシステム、短距離線路保護リレーシステムや構内母線保護リレーシステムなどがある。
【0132】
[第5の実施形態]
図7は、本発明を適用した第5の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図である。本実施形態は、第4の実施形態の変形例であり、第4の実施形態と異なる点は、被測定導体の周りにセンサファイバを周回するのではなく、巻線形変流器(被測定導体に電磁結合された巻線コイル)の2次出力をセンサファイバに周回することにより、2つの光電流計測器801,802を構成した点である。
【0133】
図7に示すように、A端、B端を結ぶ3相(U相、V相、W相)の電力ケーブル(もしくは線路、もしくは母線)が敷設されている。U相、V相、W相は、各々被測定導体601a〜603aと表されている(2端子であるため、A端、B端とも同一の被測定導体である)。A端には巻線形変流器170ua,170va,170waが、B端には巻線形変流器170ub,170vb,170wbが、それぞれ、被測定導体601a〜603aに取り付けられている。
【0134】
このうち、A端の巻線形変流器170ua,170va,170waは、第1の光電流計測器801の要素となるコイル111a〜113aに接続され、さらに、第2の光電流計測器802の要素となるコイル211a〜213aに接続された後、各信号変換器40ua,40va,40waに接続されている。そして、各信号変換器40ua,40va,40waの出力は、電流差動保護システムの判定部を有するリレー270に導かれるようになっている。
【0135】
同様に、B端の巻線形変流器170ub,170vb,170wbは、第1の光電流計測器801の要素となるコイル111b〜113bに接続され、さらに第2の光電流計測器802の要素となるコイル211b〜213bに接続された後、各信号変換器40ub,40vb,40wbに接続されている。そして、各信号変換器40ub,40vb,40wbの出力は、電流差動保護システムの判定部を持たないリレー280に導かれるようになっている。
【0136】
また、第1の光電流計測器801は、第4の実施形態における第1の光電流計測器701におけるセンサ部の構成を変更したものである。すなわち、第1の光電流計測器801は、第4の実施形態の光電流計測器701における各センサ部101〜103と、その間を接続する偏波面保持ファイバ150,151からなる3相センサ部の構成に代えて、コイル111〜113を取り付けたセンサファイバ100を使用したものである。
【0137】
すなわち、第1の光電流計測器801のセンサファイバ100aにはコイル111a〜113aが、センサファイバ100bにはコイル111b〜113bが、それぞれ周回するように取り付けられている。ここで、各コイル111a,112a,113a,111b,112b,113bの巻数の比は、1:2:3:−1:−2:−3(ここで、「−」はセンサファイバ100aもしくは100bの回りを逆向きに巻いた状態を示す)となっており、標本量(各相毎で光電流計測器を構成するのではなく、1つの光電流計測器で保護システムを構成できるようにしている)をとることで、保護対象設備の短絡専用の検出を行うようになっている。
【0138】
また、各コイル111a,112a,113a,111b,112b,113bの巻数比は、2:−1:−1:−2:1:1等であってもよい。さらに、2:0:1:−2:0:−1とすれば、短絡・地絡共用の検出を行うことができる。
【0139】
一方、電流差動保護システムの判定部を有するリレー270では、信号変換器40ua,40va,40waの出力、すなわち、被測定導体601a〜603aの各電流値Iu,Iv,Iwのスカラ和であるΣ|I|=|Iu|+|Iv|+|Iw|を保護対象設備の保護のための抑制量として用いている(電流値に応じて光電流計測器の信号処理器301,302の出力が異常かどうかを判断する)。
【0140】
一方、第2の光電流計測器802は、第1の光電流計測器801と基本的に同等の構成を有している。すなわち、第2の光電流計測器802のセンサファイバ200aにはコイル211a〜213aが、センサファイバ200bにはコイル211b〜213bが、それぞれ周回するように取り付けられている。ここで、各コイル211a,212a,213a,211b,212b,213bの巻数の比は、1:1:1:−1:−1:−1(ここで−はセンサファイバ29aもしくは29bの回りを逆向きの巻いた状態を示す)となっており、零相の電流検出を行うことで、保護対象設備の地絡の検出を行うようになっている。
【0141】
以上のような構成を有する本実施形態によれば、第1の光電流計測器801による信号処理部301の出力、もしくは第2の光電流計測器802による信号処理器302の出力と、信号変換器40ua,40va,40waの出力とを、判定部を有するリレー270に導くことにより、電流差動システムを構成することができ、保護対象設備の異常判断を行うことができる。
【0142】
この際、信号変換器40ua,40va,40waの出力を判定の条件に使わないようにしてもよい。ただし、信号変換器40ub,40vb,40wbの出力は、判定部を持たないリレー280に導かれており、ここでは電流差動システムを構成していない。
【0143】
また、第1の光電流計測器801のように保護対象設備に設けられた各端子の3相の電流量を標本量とすることにより、システムで使用する光伝送用のシングルモードファイバケーブルの本数を削減できる。そして、各相のセンサファイバの巻数に応じて短絡専用もしくは短絡・地絡共用の異常検出を行うことができる。
【0144】
また、保護対象設備の片端の電流値、特に電流値のスカラ量を抑制量とすることにより、保護対象設備に流れる電流量に関わらず信頼度が高い異常判定をすることができる。さらに、第2の光電流計測器のように零相検出の電流差動保護システムを構成することにより地絡専用の異常検出を行うことができる。
【0145】
したがって、本実施形態によれば、前述した第4の実施形態と同様に、光伝送用のシングルモードファイバの本数を削減できるとともに、保護対象設備に流れる電流量に関わらず信頼度が高い異常判定が可能となる、という効果が得られる。これに加えて、本実施形態によれば、巻線形変流器の2次出力を使って光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを構成することにより、新規の保護対象設備のみならず既設の保護対象設備にも適用可能となる。
【0146】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な形態が実施可能である。例えば、前記の第1〜第5の実施形態に係る構成を適宜組み合わせて用いた場合には、その組み合わせに応じて、同等もしくは組み合わせによる相乗的な効果が得られることは言うまでもない。
【0147】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、端子間の距離が離れていても低コストで構成可能であり、大電流計測時の鉄心の磁気飽和に起因する出力歪を発生せず、サージ対策が簡略化可能で、さらに、システムの安定化、小型・軽量化に貢献でき、光量の損失問題を克服可能な光電流計測器を提供するとともに、そのような光電流計測器を用いた信頼性の高い電流差動保護システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図。
【図2】図1に示す光電流計測器に使用するデポラライザを示す構成図。
【図3】本発明を適用した第2の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図。
【図4】本発明を適用した第3の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図。
【図5】図4に示す光電流計測器に使用する光増幅器を示す構成図。
【図6】本発明を適用した第4の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図。
【図7】本発明を適用した第5の実施形態に係る光電流計測器およびそれを用いた電流差動保護システムを示す構成図。
【図8】従来のPCM電流差動保護システムを示す構成図。
【図9】従来の故障判定機能を備えた光電流計測器を示す構成図。
【符号の説明】
8…光源
9…第1の光分岐器
10…第1のデポラライザ
11…第1の偏光フィルタ
12…第2の光分光器
13…位相変調器
14a,14b…シングルモードファイバ
15a…第2のデポラライザ
15ab…第3のデポラライザ
15ba…第4のデポラライザ
16a…第2の偏光フィルタ
16b…第4の偏光フィルタ
17a…第1の1/4波長板
17b…第3の1/4波長板
18a…第2の1/4波長板
18b…第4の1/4波長板
19a…第3の偏光フィルタ
19b…第5の偏光フィルタ
24…受光器
25…検波回路
26…発振回路
27…判定部
30,30a〜30n…光増幅器
40u,40v,40w…信号変換器
100a,100b…ファイバセンサ(光電流センサ素子)
101a,101b…センサ部
111a〜113a,111b〜113b…コイル
120ab,120ba…シングルモードファイバ
141a,141b…偏波面保持ファイバ
170u,170v,170w…巻線形変流器
211a〜213a,211b〜213b…コイル
301,302…信号処理部
401…A端子光保護装置部
501…B端子光保護装置部
601a…第1の被測定導体
601b…第2の被測定導体
701,801…第1の光電流計測器
702,802…第2の光電流計測器
Claims (13)
- 光源と、光源から出射される光を2分岐する第1の光分岐器と、第1の光分岐器から出射される光を偏光する第1の偏光フィルタと、第1の偏光フィルタから出射される光を2分岐する第2の光分岐器と、第2の光分岐器の一方の端部に接続する位相変調器と、第2の光分岐器および位相変調器を介して逆方向に周回する2方向の光を送り込まれる複数の光電流センサ素子とを備えたサニャック干渉形の光電流計測器において、
前記複数の光電流センサ素子中における隣接する2つの光電流センサ素子間がシングルモードファイバで接続された、
ことを特徴とする光電流計測器。 - 前記複数の光電流センサ素子のうち、所定の近接条件を満たす位置関係にある光電流センサ素子間が偏波面保持ファイバで接続され、前記近接条件を満たす位置関係にない光電流センサ素子間がシングルモードファイバで接続された、
ことを特徴とする請求項1に記載の光電流計測器。 - 前記隣接する2つの光電流センサ素子において、各光電流センサ素子には、1/4波長板と偏光フィルタがこの順で接続され、隣接する偏光フィルタ間にデポラライザが挿入され、シングルモードファイバで接続された、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電流計測器。
- 光増幅器が挿入されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光電流計測器。
- 前記光増幅器がシングルモードファイバもしくはデポラライザ中に配置された、
ことを特徴とする請求項4に記載の光電流計測器。 - 前記デポラライザが偏波面保持ファイバにより構成され、デポラライザに生じた直交成分間の群遅延時間差が光コヒーレント時間より大となるように構成された、
ことを特徴とする請求項3に記載の光電流装置。 - 前記光電流センサ素子が、被測定導体を周回するように配置されたセンサファイバである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光電流計測器。 - 前記光電流センサ素子が、被測定導体に電磁結合された巻線コイルの2次出力を検出するように配置されたセンサファイバである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光電流計測器。 - 前記1/4波長板が、センサファイバの一部を曲げることによって製作されたファイバ素子である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光電流計測器。 - 前記1/4波長板が偏波面保持ファイバであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光電流計測器。
- 保護対象設備の複数箇所の電流を計測する複数の電流計測器と、それらにより計測された電流の和もしくは差を算出する演算回路と、その演算結果に基づき保護対象設備の異常を判定する判定回路を備えた電流差動保護システムにおいて、
前記複数の電流計測器が、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の光電流計測器である、
ことを特徴とする電流差動保護システム。 - 前記保護対象設備に設けられた各端子の3相電流量を標本量とすることを特徴とする請求項11に記載の電流差動保護システム。
- 抑制量として保護対象設備の片端の電流値、特に電流値のスカラ量を用いることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の電流差動保護システム。
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