JP2004300956A - エンジンのアイドル制御装置 - Google Patents

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寛之 田中
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Abstract

【課題】本発明はエンジンのアイドル制御装置に関し、アイドル運転時に負荷の発生等により急激にエンジン回転数が変動することを抑制して、エンジン回転数の安定化を図る。
【解決手段】エンジン6のアイドル運転時にエンジン6の回転数の変動量を減じて安定化を図る制御手段をそなえたエンジンのアイドル制御装置において、エンジン6の出力軸に接続された電動機5と、電動機5の作動状態を制御する電動機制御手段2とを有し、電動機制御手段2は、エンジン回転変動量を減ずるように、エンジントルクをアシスト、もしくはエンジントルクを吸収するように電動機5を制御するように構成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのアイドル制御装置に関し、特にエンジンの駆動力を直接アシストしたり回生したりすることができるようなハイブリッドシステムに用いて好適の、エンジンのアイドル制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5はいわゆるISA(Integrated Starter Alternator)システムを採用したハイブリッド自動車の要部を模式的に示す図であって、エンジン110とトランスミッション111との間に電動機(モータ/ジェネレータまたはM/G、以下、単にモータという)112は直列に配設されている。また、エンジン110にはスタータ113が付設されている。
【0003】
また、モータ112の出力軸とエンジン110の出力軸とは機械的に接続されており、モータ112が電力供給を受けて力行することにより、変速機111を介して駆動輪へ動力を伝達したり、エンジン110に動力を付与したりして、エンジン110の駆動力をアシストするようになっている。また、モータ112を発電機として機能させることで、エンジン110の駆動力を吸収したりエンジンブレーキ相当の回生ブレーキを作用させたりすることができ、このときに電力が回生されるようになっている。
【0004】
ところで、このようなハイブリッド電気自動車では、エンジン110がアイドル運転を行なっている場合、モータ112は力行も回生も行なっておらず、したがって、アイドル運転時におけるエンジン回転数制御は、エンジン110のみを搭載した通常の自動車と同様の制御となる。
以下、エンジンのトルク制御について説明すると、エンジンの目標トルク(目標図示平均有効圧)Piを下式(1)により設定し、この目標トルクPiに応じてスロットル開度(吸入空気量)を制御する。
【0005】
Pi=Pe+Pf ・・・(1)
ここで、Peは目標正味平均有効圧であり、アクセル開度APSなどに応じて設定されるエンジン要求トルクに応じて設定される。また、Pfはエンジンのフリクションに相当する負荷トルクであって、下式(2)によって設定される。
Pf=Pf0+Pf′+PfFB ・・・(2)
上式(2)において、Pf0は、基本負荷トルクであり、エンジン回転数Neの上昇に応じて大きく設定される。Pf′は、補正負荷トルクであり、エンジン冷却水温度、エアコンなどの電気負荷やパワステなどの作動状態に応じて設定される。PfFBは、エンジンのアイドル運転時にエンジン回転数Neが目標アイドル回転数Neiとなるようにエンジン回転数をフィードバック制御するためのフィードバック負荷トルク(以下、FB負荷トルク)であり、エンジン回転数Neと目標アイドル回転数Neiとの偏差ΔNe(=Ne―Nei)に応じて設定される。
【0006】
なお、このアイドルフィードバック制御は、所定の開始条件が成立してエンジンがアイドル状態にあると判定されると開始され、所定の終了条件が成立してアイドル状態にないと判定されると終了する。
そして、エンジンがアイドル状態でない通常時には、FB負荷トルクPfFBは零(PfFB=0)に設定されるため、負荷トルクPfは、各種パラメータに応じて設定される基本負荷トルクPf0および補正負荷トルクPf′との加算値によって設定される。また、エンジンがアイドル状態であるときには、基本負荷トルクPf0および補正負荷トルクPf′はアイドル状態と判定される直前の値に固定され、この判定直前の基本負荷トルクPf0と補正負荷トルクPf′との加算値にエンジン回転数偏差ΔNeに応じて設定されるFB負荷トルクPfFBを更に加算して負荷トルクPfを設定している。
【0007】
そして、上式(1)により目標トルクPiが設定されると、この目標トルクPiとエンジン回転数とをパラメータとして、図示しないマップからETV(電子制御スロットルバルブ、いわゆるドライブバイワイヤ式スロットルバルブ)の開度が算出されて、上記ETV開度となるようにETVアクチュエータに制御信号が出力される。これにより、吸入空気量が調整されてエンジントルクが調整されるとともに、実エンジン回転数が目標エンジン回転数に近づくように制御される。
【0008】
また、アイドル回転数制御としては、上述のようなフィードバック制御以外にも、急激な回転数の変動を抑制するために点火変調制御も行なわれる。
具体的には、図6(b)に示す点火時期補正量設定マップによって、エンジン回転数の変動に基づいた点火時期補正量が設定されるようになっている。なお、エンジン回転数変動の量はエンジン110の平均回転数(平均Ne)と瞬間回転数(瞬間Ne)との偏差によって規定される。
【0009】
ここで、この点火時期補正量設定マップは、エンジン回転数変動量>0であれば、その変動量の大きさに応じて点火時期を進角させ、一方、エンジン回転数変動量<0であれば、その大きさに応じて点火時期を遅角させるようになっている。
なお、上述のようなアイドル回転以外にも、例えば、特許文献1には、ハイブリッド自動車において、アイドル時にエンジン回転数を目標回転数に一致させるべく電動機の回生トルクを制御するとともに、回生トルクの制御にともなう電動機の発電量の変化を補うべく吸入空気量を調整する技術が開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−27671号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように、アイドル時にエンジン回転を安定させるべくエンジンの点火を進角させたり遅角させたりする場合、点火時期を過度に進角又は遅角させるとかえってアイドル回転が不安定になるため、図6(b)に示すように、点火時期補正量には−5〜+5degといった範囲の制限がある。このため、エンジン回転変動量が小さければ−5〜+5deg内の点火時期補正を行なうことで対応できるが、エンジン回転変動量がある程度大きくなってしまうと対応できないという課題がある。
【0012】
また、例えば、図7のタイムチャートに示すように、例えば、矢印Pの時点でオルタネータ負荷が発生してエンジン回転数が大きく低下した場合、これを補うべく点火時期が最大角度(ここでは+5deg)へ進角補正されるが(図中矢印Q参照)、その後、エンジン110の実エンジン回転数は目標のアイドル回転数(ここでは800rpm)をオーバシュートしてしまう(図中矢印R参照)。この場合、増大しすぎたエンジン回転数を抑制すべく、今度はスロットル開度が減少されるとともに、点火時期の遅角補正が行なわれる(図中矢印S参照)。このような動作を繰り返すことで、徐々にそのエンジン回転数が収束する。
【0013】
しかしながら、このような制御では、図7に示すように、負荷発生後の回転変動を十分に抑制することができず(図中矢印PおよびR参照)、また、エンジン回転数がある程度安定化した後も、エンジン回転数にバラツキがありなかなか収束させることができない(図中矢印T参照)という課題がある。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、アイドル運転時に負荷の発生などにより急激にエンジン回転数が変動した場合にも、実エンジン回転数を速やかに目標のアイドル回転数に収束させるようにするとともに、実エンジン回転数を目標とするアイドル回転数に高い精度で保持できるようにした、エンジンのアイドル制御装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明のエンジンのアイドル制御装置は、エンジンのアイドル運転時に該エンジンの回転数の変動量を減じて安定化を図る制御手段をそなえたエンジンのアイドル制御装置において、該エンジンの出力軸に接続された電動機と、該電動機の作動状態を制御する電動機制御手段とを有し、該電動機制御手段は、エンジン回転変動量を減ずるように、エンジントルクをアシスト、もしくはエンジントルクを吸収するように該電動機を制御することを特徴としている。
【0015】
これにより、電動機によってエンジントルクをアシスト、もしく電動機を発電機として用いることで電気回生してエンジントルクを吸収し、エンジン回転変動量を減じて、エンジンの回転数を安定させることができる。
また、請求項2記載の本発明のエンジンのアイドル制御装置は、上記請求項1記載の構成において、実エンジン回転数と目標エンジン回転数との偏差に基づきエンジン回転数をフィードバック制御するエンジン回転数フィードバック制御手段をさらに有し、該電動機制御手段と該エンジン回転数フィードバック制御手段とが協調して該エンジン回転数を制御することを特徴としている。
【0016】
これにより、エンジン回転数フィードバック制御手段によって実エンジン回転数を目標エンジン回転数へ補正するとともに、電動機制御手段によってエンジン回転変動量を減じて補正するので、素早くエンジンの回転数を安定させることができる。
また、請求項3記載の本発明のエンジンのアイドル制御装置は、上記請求項1記載の構成において、該エンジン回転変動量は、該エンジンの平均回転数と瞬間回転数との偏差によって規定されることを特徴としている。
【0017】
これにより、エンジンの平均回転数を算出するのにサンプルとして用いられる瞬間エンジン回転数の測定周期やそのサンプル個数を変化させることで、エンジン回転数変動量を的確且つ容易に規定することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態にかかるエンジンのアイドル制御装置について図1〜図4を用いて説明すると、図1はその構成を示す模式的な制御ブロック図、図2はそのエンジンのアイドル回転数を安定させるために用いられるモータ制御用のマップ、図3はその効果を示すタイムチャート、図4はその動作フローを示す図である。
【0019】
本発明の一実施形態にかかるエンジンのアイドル制御装置は、従来技術の欄で図5を用いて説明したようなISA(Integrated Starter Alternator)システムのハイブリッド自動車に適用されている。
また、このエンジンのアイドル制御装置は図1に示すように、主に、SMU(制御手段)1、MCU(電動機制御手段)2、ECU3、ETV制御部(吸入空気量制御手段)4とから構成されている。
【0020】
SMU1は、ハイブリッド電気自動車における駆動系全体を制御する制御装置であり、モータ(電動機)5を制御するMCU2と、エンジン6を制御するECU3とに対して、制御的に上位側に位置している。このSMU1は、具体的には、車両が走行する際に必要とする走行トルクのうち、モータ5によって発生させるモータトルクとエンジン6によって発生させるエンジントルクとの割合を随時算出し、この算出結果に基づいて、MCU2およびECU3をそれぞれ制御するものである。
【0021】
また、SMU1は、平均回転数算出部7、目標回転数設定部8、第1マップ9を内蔵し、エンジン6がアイドル運転している場合、実エンジン回転数と目標回転数との偏差をなくすとともに、エンジン回転数の変動量を減じて、エンジン運転の安定化を図るべく、エンジン6及びモータ5を制御する制御手段でもある。なお、エンジン回転数変動量は、エンジンの平均回転数(平均Ne)と瞬間回転数(瞬間Ne)との偏差によって規定される。
【0022】
平均回転数算出部7は、エンジン回転数センサ10から得られる瞬間的なエンジン回転数(瞬間Ne)に基づいて、実エンジン回転数としての平均回転数(平均Ne)を算出するものであって、例えば50ms当たりの平均回転数が算出されるようになっている。
ところで、本発明の装置では、従来のアイドル時における点火変調制御に代えて、モータ5を作動させるようになっており、このモータ5の作動制御によりエンジン回転数の安定化が図られるようになっている。以下、この点について具体的に説明する。
【0023】
第1マップ9は、アイドル運転中のエンジン6のエンジン回転数の安定化を図るべく、MCU2に制御信号を送出するものであって、上記平均回転数算出手段7で算出された平均Neとエンジン回転数センサ10で検出された瞬間Neとの偏差dNe1 (=平均Ne−瞬間Ne)に基づき、エンジン6に対してモータ5が駆動力をアシストするアシストトルクの大きさや、モータ5が発電機として機能してエンジントルクを吸収するための回生トルクの大きさを設定するようになっている。
【0024】
この第1マップ9は、図2に示すように、回転変動量(dNe)に応じてモータトルクを設定するマップになっており、回転数偏差dNe1 >0であれば回転数偏差dNe1の大きさに応じてモータが正のトルク(即ちアシストトルク)をエンジン6の出力軸に付与し、一方、dNe1 <0であれば回転数偏差dNe1 の大きさに応じてモータが負のトルク(即ち回生トルク)をエンジントルクに付与することでエンジントルクを吸収するようになっている。つまり、第1マップ9によって設定されるモータトルクは比例ゲインとして機能するものである。
【0025】
目標アイドル回転数設定部8は、アイドル運転時の目標アイドル回転数Neiを設定するものであって、主に水温センサ11で得られる冷却水温度と、エアコンスイッチ12で得られるエアコンのオンオフ(コンプレッサのオンオフ)情報などに基づいて目標アイドル回転数Neiを設定するようになっている。
一方、MCU2は、SMU1からの命令(制御信号)に基づいて、モータ5を制御するものであって、その内部にはM/Gトルク設定手段19および電流値設定部13が設けられている。このM/Gトルク設定手段19は、SMU1のモータ要求トルク設定手段23によって設定されたモータ要求トルクと、第1マップ9で設定されたアイドル時のモータトルクとに応じて、モータ出力トルクを設定するものである。また、電流値設定部13は、M/Gトルク設定手段20で設定されたモータ出力トルクを電流値に変換し、この要求トルクを発生するようにモータ5を制御するものである。
【0026】
また、ECU3は、SMU1からの指令(制御信号)に基づいて、エンジン6を制御するものであって、その内部には、Pe設定部18、Pf設定部14、Pi算出部15、ETV(電子制御スロットルバルブ)開度設定部16が設けられている。そして、Pe設定手段18で設定された目標正味平均有効圧Peと、Pf設定手段14で設定された負荷トルクPfとに基づき、Pi算出部15で目標トルク(目標図示平均有効圧)Piが設定され、この目標トルクPiに応じてETV17の開度が、ETV開度設定手段によって制御されるようになっている。よって、エンジン6の出力トルクが車両の走行状態や運転状態などに応じて設定される目標トルクPiとなるように吸入空気量が調整されるようになっている。なお、上述のPf設定部14とPi算出部15とETV開度設定部16とがエンジン回転数フィードバック制御手段として機能するようになっている。
【0027】
Pe設定手段18は、SMU1内のエンジン要求トルク設定手段20で設定されるエンジン要求トルクに応じて、目標トルク(目標正味平均有効圧)Peを設定する。このエンジン要求トルクは、SMU1内の走行要求トルク設定手段21でアクセル開度センサ22からのアクセル開度APSに応じて設定される走行要求トルクに基づき設定される。
【0028】
また、Pf設定部14は、上述の従来技術でも述べたように、エンジン6のフリクションに相当する負荷トルクPfを設定するものであり、エンジン回転数Neに応じて基本負荷トルクPf0を設定し、冷却水温度、電気負荷、パワステなどの作動状態などに応じて設定される補正負荷トルクPf′およびエンジンのアイドル運転時にエンジン回転数Neが目標アイドル回転数Neiとなるようにエンジン回転数をフィードバック制御するためのFB負荷トルクPfFBを設定し、下式(2)に基づき負荷トルクPfを設定する。
【0029】
Pf=Pf0+Pf′+PfFB ・・・(2)
上式(2)のFB負荷トルクPfFBも、エンジン6がアイドル状態のときにエンジン回転数Neと目標アイドル回転数Neiとの偏差ΔNe2(=Ne−Nei)に応じて設定される。
よって、エンジン6がアイドル状態であるときには、エンジン回転数Neが設定される目標アイドル回転数Neiとなるようにフィードバック制御される。そして、このアイドルフィードバック制御時には、図6(a)に線cで示すように偏差dNe2に応じて設定される積分ゲインKFBに応じて算出されるFB負荷トルクPfFBに基づきフィードバック制御される。このフィードバック積分ゲインKFBは、偏差dNe2>0(つまり目標アイドル回転数Nei>平均回転数Ne)のときには正の値となるように、偏差dNe2<0(つまり目標回転数Nei<平均回転数Ne)の時には負の値になるように設定されている。
【0030】
このように、エンジン6のアイドル運転時には、回転数偏差dNe2に応じて設定される積分ゲインに基づき、FB負荷トルクPfFBが設定され、このFB負荷トルクPfFBを含んだ負荷トルクPfに応じてETV開度が制御される。
そして、実エンジン回転数(平均Ne)と目標Neとの回転数偏差dNe2に応じてETV開度補正(積分ゲイン)を用いたECU3の制御によってエンジン回転数が目標Neとなるようにフィードバック制御される。
【0031】
ETV制御部4では、上記ETV開度設定部16で設定された開度となるように図示しないETVアクチュエータを制御するようになっている。つまり、ETV制御部4は、ETV開度設定部16で設定されたETV開度と実際のETV17の開度との偏差に基づいて、これらの開度の偏差が0となるようにETVアクチュエータをフィードバック制御するようになっている。
【0032】
ここで、もう一度従来の技術における課題と対比させながら本実施形態に係る本願発明を簡単に説明すると、従来は、エンジン回転数を安定化させるため、エンジン回転数変動量(平均Neと瞬間Neとの偏差)に応じてエンジンの点火を進角させたり遅角させたりする制御によって対応していたが、点火時期を過度に進角又は遅角させるとかえってアイドル回転が不安定になるため、点火時期補正量は−5〜+5degといった範囲の制限があった。
【0033】
しかし、本発明においては、このエンジン回転数の安定化制御をモータ5によるモータトルクを用いて行なっているので、点火時期補正のような補正量の制限がなく、制御範囲が広がり、確実にエンジン6の回転数を安定させることができる。
さらに、本発明においては、ETV制御部4によって、実エンジン回転数と目標エンジン回転数との偏差に基づき、エンジン6の吸入空気量をフィードバック制御し、上述のMCU2とETV制御部4とが協調してエンジン6の運転安定化を図るべくエンジン回転数をフィードバック制御するようになっている。
【0034】
つまり、ETV制御部4がエンジン6の実回転数が目標エンジン回転数となるようにエンジン6の吸入空気量を補正するとともに、上述のように、MCU2が、エンジン回転数変動量を減ずるようにモータ6の動作を補正制御するので、素早くエンジンの回転数を安定させることができる。
上述のエンジン6に対する安定化制御を、図3を使ってもう少し詳しく説明すると、図3は従来の点火時期補正によるエンジン回転数変動の安定化と本実施形態によるエンジン回転数変動の安定化とを比較したタイムチャートである。矢印Aで示す時点でエンジンに対して突発的に大きな負荷が生じた場合(例えば、オルタネータ負荷が発生した場合)、従来の場合も本実施形態の場合も共に、エンジン回転数が低下してエンジン回転数変動量が増大するが、本実施形態によればこのエンジン回転数変動量に応じて大きなモータアシストトルクがエンジンに付与されるので(矢印B参照)、従来に比してさほどエンジン回転数が落ちることはない(矢印C参照)。その後、エンジン回転数は上昇するが、この場合も、従来ほど大きくエンジン回転数が高くなってしまうこともない(矢印D参照)。そして、矢印Eで示すように、エンジン回転数がある程度安定化した後も、従来はエンジン回転数にバラツキがあり収束していない状態であるのに対し、本実施形態によれば、エンジン回転数は安定しており、収束性が高まっているといえる。
【0035】
このように、モータ5のモータトルクによるアイドル時のエンジン回転数の安定化制御が、点火時期補正によるエンジン回転数の安定化制御よりも応答性および正確性に優れていることが示されている。
また、上述のように、モータ5のモータトルクは、点火時期補正のような補正量の制限がないため、エンジン6の回転数のバラツキに応じて必要な大きさのトルクを必要なときにもエンジン6に付与することができるため、的確に且つ素早くエンジン回転数を安定化させることが可能となっている。
【0036】
さらに、ETV制御部4がエンジン6の実回転数が目標エンジン回転数となるようにエンジン6の吸入空気量を補正するとともに、MCU2がエンジン回転変動量を減ずるようにモータ6の動作を補正制御するので、素早くエンジンの回転数を安定させることができる。
次に、図4に示す動作フローを用いてその作用を説明すると、まず、ステップS1において瞬間エンジン回転数(瞬間Ne)がエンジン回転数センサ10によって検出され、その後ステップS2において瞬間Neに基づいて平均エンジン回転数(平均Ne)が平均回転数算出部7により算出される。そして、ステップS3において平均Neと瞬間Neとの偏差であるエンジン回転数変動量(dNe)が算出され、次に、ステップS4においてエンジン回転数変動量(dNe)に基づいたモータトルクの大きさや方向(アシストトルクまたは回生トルク)が図2に示される第1マップ9によって算出され、算出されたモータトルクをエンジントルクに付与(またはエンジントルクを吸収)することによってエンジン回転数変動を抑制し、リターンする。
【0037】
これにより、エンジンの回転数のバラツキに応じて必要な大きさのトルクを必要なときにエンジンに付与(または、エンジンから吸収)することができるため、的確に且つ素早くエンジン回転数を安定させることができる。
また、実エンジン回転数が目標エンジン回転数に対して異なっている場合には、ETV17の開度を補正することでエンジン回転数を目標回転数に近づけるとともに、エンジン6に対して突発的に大きな負荷が生じた場合(例えば、オルタネータ負荷が発生した場合)、短時間で大きなモータアシストトルクがエンジンに付与されるので、従来に比してエンジン回転数が大きく低下することはない。また、その後、エンジン回転数は上昇するが、この場合も、従来ほど大きくエンジン回転数が高くなってしまうこともない。
【0038】
そして、エンジン回転数がある程度安定化した後も、従来はエンジン回転数にバラツキがあり、なかなか収束していないのに対し、本発明によれば、エンジン回転数を素早く安定させることができ、収束性を高めることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【0039】
例えば上記の実施形態においては、本発明をいわゆるISAタイプのハイブリッド自動車に適用した場合について説明したが、本発明はハイブリッド自動車のみに適用されるものではなく、少なくともモータとエンジンとの出力軸が接続されたエンジンに広く適用できる。なお、この場合モータの出力軸とエンジンの出力軸が直接接続されたもの以外にも、例えばギアやベルト等の出力伝達手段を介して接続されたものを含むのは言うまでもない。また、モータとエンジンとの間にクラッチ等の駆動力断接手段が設けられているようなシステムにも当然適用することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のエンジンのアイドル制御装置によれば、アイドル運転時にエンジンに対する負荷等の発生によりエンジン回転数が突発的に変動した場合にも、エンジントルクをアシスト、または、エンジントルクを吸収するように電動機を制御することにより、エンジン回転数の変動量を減少させて、該エンジンの回転数の安定化を促進できる(請求項1)。
【0041】
また、電動機制御手段とエンジン回転数フィードバック制御手段とが協調してエンジン回転数を制御するので、エンジン回転数フィードバック制御手段のみで制御していた場合に比べて制御の応答遅れを解消することができる。したがって、アイドル運転中のエンジンに対する負荷の変化によるエンジン回転数の変動を抑制することができるとともに、その後の応答遅れに起因するオーバシュートを解消でき、エンジン回転数をより安定させることができる利点がある(請求項2)。
【0042】
また、エンジン回転数変動量は、エンジンの平均回転数と瞬間回転数との偏差によって規定されるので、容易にエンジン回転数変動量を設定、検出することが可能となる(請求項3)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンのアイドル制御装置の構成を示す模式的な制御ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエンジンのアイドル制御装置の第1マップを模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るエンジンのアイドル制御装置の効果を示す模式的なタイムチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係るエンジンのアイドル制御装置の動作を示す模式的な動作フローチャートである。
【図5】ISAシステムを採用した、一般的なハイブリッド電気自動車の要部を模式的に示す図である。
【図6】従来の技術によるエンジンのアイドル制御に用いられるマップを模式的に示す図であって、(a)が積分ゲイン、(b)が比例ゲインである。
【図7】従来の技術によるエンジンのアイドル制御を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 SMU(制御手段)
2 MCU(電動機制御手段)
4 ETV制御部(吸入空気量制御手段)
5 モータ(電動機)
6 エンジン

Claims (3)

  1. エンジンのアイドル運転時に該エンジンの回転数の変動量を減じて安定化を図る制御手段をそなえたエンジンのアイドル制御装置において、
    該エンジンの出力軸に接続された電動機と、
    該電動機の作動状態を制御する電動機制御手段とを有し、
    該電動機制御手段は、エンジン回転変動量を減ずるように、エンジントルクをアシスト、もしくはエンジントルクを吸収するように該電動機を制御する
    ことを特徴とする、エンジンのアイドル制御装置。
  2. 実エンジン回転数と目標エンジン回転数との偏差に基づきエンジン回転数をフィードバック制御するエンジン回転数フィードバック制御手段をさらに有し、
    該電動機制御手段と該エンジン回転数フィードバック制御手段とが協調して該エンジン回転数を制御する
    ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンのアイドル制御装置。
  3. 該エンジン回転変動量は、該エンジンの平均回転数と瞬間回転数との偏差によって規定されることを特徴とする、請求項1記載のエンジンのアイドル制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012092753A (ja) * 2010-10-27 2012-05-17 Daihatsu Motor Co Ltd 内燃機関の制御装置

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