JP2004300515A - エッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】陰極に磁石を配置することにより電析磁性金属を、その磁着力で電析中の剥がれ落ちず、確実の回収できることを可能としたエッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置を提供する。
【解決手段】再生するエッチング液2が収納される電解槽1と、電気回路3によって正電位が与えられる陽極4と、負電位が与えられる陰極5を有すると共に、陰極4の析出面の裏面に磁石6を貼り合わせる。
【選択図】 図1
【解決手段】再生するエッチング液2が収納される電解槽1と、電気回路3によって正電位が与えられる陽極4と、負電位が与えられる陰極5を有すると共に、陰極4の析出面の裏面に磁石6を貼り合わせる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置に関する。詳しくは、鉄やニッケル、鉄ニッケル合金などの磁性金属が溶解したエッチング廃液から電気分解により磁性金属を析出・回収するエッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、カラーブラウン管の内部前面に設けられるシャドーマスクは、鉄や鉄ニッケル合金を主成分とする薄板にエッチング処理を施し、多数の電子ビーム孔が穿孔されている。
【0003】
このエッチング工程に使われるエッチング液は、塩化第二鉄溶液が主に使われており、塩化第二鉄が鉄や鉄ニッケル合金を溶かすことによって塩化第一鉄や塩化ニッケルに化学変化し、塩化第二鉄が減少して溶液の溶解能力が弱くなるために、定期的な溶液の更新または再生が必要となる。
【0004】
ここで、溶解能力が弱くなったエッチング廃液は、環境汚染の問題や、省資源や経済性の観点からエッチング溶液中の鉄や鉄ニッケル合金を回収すると共にエッチング液として再利用することが望ましい。
【0005】
そこでエッチング溶液中の鉄や鉄ニッケル合金を電解処理により回収する手段として図8に示す様な、循環する陽極液を流通させる陽極室101と、循環する陰極液を流通させる陰極室102と、処理すべき液を取り込むために陰極室に接続された流入部103と、陰極室で析出した金属を回収するための引出部104とを備え、複数個の陽極室が陰極室内に収容され、孔開き陰極板が各陽極室の間に配設され、陰極板表面に生成されるデンドライドを払い落とすためのスクレバー手段が設置されると共に、隔膜がPTFE多孔質体から構成された使用済みエッチング液処理用電解槽が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
上記した使用済みエッチング液処理用電解槽では、使用済みエッチング廃液に電解処理を施すことで陰極板に金属を析出させ、析出した鉄やニッケル合金をスクレバーと呼ばれる掻き取り板によって機械的に剥離して取出口から回収している。
【0007】
しかしながら電解処理を施すことによって析出する金属は、電解液中に掻き落とされると電解液に再溶解されるため金属としての回収はその分少なくなってしまう。また、回収金属はその圧縮残留応力が大きいために電析厚みが薄い状態でも割れ、かつ陰極板表面との密着力が小さいときには、更に湾曲し溶液撹拌流等の影響により陰極面から脱落し、析出した金属が液中で再溶解されて回収効率をさらに低下させるといった問題がある。
【0008】
このような問題を回避するために、陰極を電解液の外に取り出し電析金属を掻き落とすのであるが、陰極表面の物理的凹凸を調整し、見かけ上の密着力を最適にすることが行われたり、使用する陰極に穴明き鉄板等を用いて回収金属を強固に付着させ回収金属の付着した陰極板を交換する等の工夫をしている。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−263985号公報(要約、第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、密着力を強力にするために、陰極表面に物理的凹凸をつくりアンカー効果を持たせると、回収時には陰極表面に回収金属が残留しスクレバーでの回収率が低くなるという問題が起こる。また回収金属の付着した陰極板を交換すると、陰極板が多数必要となるばかりでなく回収金属と同じものを使用しないと回収金属の再利用がしにくくなる。
なお、析出した金属が電析時には充分に密着し、回収時には剥がれやすくするといった相反する条件を満足する表面状態を実現する陰極表面の物理的凹凸の調整自体が極めて困難である。
また、金属との密着力が強い陰極表面をスクレバーで強引に掻き落とす作業を続けた場合には、電極表面とスクレバーの状態が少しずつ変化し、良好な状態を保持することが困難となる。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、陰極に析出した磁性金属の剥がれ落ち再溶解することを低減すると共に、析出した磁性金属の回収率が高いエッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係るエッチング液の再生方法は、電気分解によって磁性金属を陰極表面に析出するエッチング液の再生方法において、前記磁性金属を前記陰極表面に磁着する工程を備える。
【0013】
ここで、磁性金属を陰極表面に磁着することによって、電析時の圧縮残留応力により剥がれ落ちることなく,安定したエッチング液からの磁性金属の回収が可能となる。
【0014】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係るエッチング液の再生装置は、電気分解によって磁性金属を陰極表面に析出させるエッチング液の再生装置において、陰極の析出面の裏面に磁石が配置されている。
【0015】
ここで、陰極の析出面の裏面に磁石が配置されたことにより、陰極表面に析出する磁性金属が磁石の磁力によって磁着され、あたかも磁性金属と陰極面との密着力が増加したようになり、電析時の圧縮残留応力により剥がれ落ちることなく安定したエッチング液からの磁性金属の回収が可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0017】
図1は本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例を説明するための概要図である。ここで示すエッチング液の再生装置は、再生するエッチング液2が収納される電解槽1と、電気回路3によって正電位が与えられる不溶性の白金板より形成された陽極4と、負電位が与えられる板厚0.5mmで析出面がアルミナ#240にてブラスト処理が施されたチタン板で構成される陰極5を有すると共に、図2で示すような直径8mm、厚さ6mm、表面磁束密度600ガウスであるフェライト磁石6が、図3で表す側面図及び図4で表す平面図で示すように、隣接するフェライト磁石がそれぞれ相反する磁極で陰極5の析出面の裏面に接するように貼り合わせられている。
【0018】
ここで、上記した本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例では、陰極5の析出面の裏面に複数個のフェライト磁石が貼り合わせられているが、陰極5の析出面の裏面に貼り合わせられるフェライト磁石は陰極5表面に析出する磁性金属を磁着することができれば充分であり、必ずしも複数個のフェライト磁石が貼り合わせられる必要は無く、単一のフェライト磁石が貼り合わせられても構わないが、磁束密度を高め、より一層強力に磁性金属を陰極表面に磁着すべく、複数個のフェライト磁石が貼り合わせられた方が好ましい。
【0019】
同様に、陰極5の析出面の裏面に貼り合わせられるフェライト磁石は陰極5表面に析出する磁性金属を磁着することができれば充分であり、必ずしも隣接するフェライト磁石がそれぞれ相反する磁極で陰極5の析出面と向かい合う面に接するように貼り合わせられる必要は無く、隣接するフェライト磁石が同一の磁極で陰極5の析出面の裏面に接するように貼り合わせられていても良いが、磁束密度を高め、より一層強力に磁性金属を陰極表面に磁着すべく、隣接するフェライト磁石がそれぞれ相反する磁極で陰極5の析出面に向かい合う面に接するように貼り合わせられた方が好ましい。
【0020】
次に、図1に示すエッチング液の再生装置を用いてのエッチング液の再生方法を詳述する。即ち、本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例について説明する。
なお、本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例では、再生するエッチング液として塩化第二鉄2.4モル/l、塩化第一鉄0.9モル/l、塩化ニッケル1.1モル/lを使用した。
【0021】
本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例では、先ず、電流密度は20A/dm2、液温50℃の条件で陽極4及び陰極5に1時間通電することにより陰極5表面に鉄ニッケル合金を析出させ、陽極4表面で第一鉄を第二鉄に酸化させることによってエッチング液の再生を行う。
【0022】
続いて、陰極5を電解槽1より取り出して、図5で示すように陰極5表面に析出した鉄ニッケル合金をスクレバー7によって掻き取ることによって電析した鉄ニッケル合金9(回収金属)の回収を行う。
なお、鉄ニッケル合金を陰極に磁着しているものの、磁着力は陰極面に対して垂直方向には強力であるものの、陰極面に対して平行方向、即ち、スクレバー7によって鉄ニッケル合金の掻き取りを行う方向にはあまり作用しないために、陰極面に貼り合わせたフェライト磁石がスクレバー7による掻き取り作業を妨げることは少ないと考えられる。
【0023】
本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例では、電析時に陰極表面に析出した鉄ニッケル合金がその残留応力によって剥がれ落ちることを抑制することができる。なお、このことは、陰極5の析出面の裏面にフェライト磁石を貼り合わせない場合に鉄ニッケル合金が5.1gしか回収できなかったのに対して、本発明を適用したエッチング液の再生方法においては電析により15gの鉄ニッケル合金を回収することができた点からも明らかである。
【0024】
また、鉄ニッケル合金を陰極5の析出面に磁着することができるために、陰極表面の密着力を高めるための物理的な凹凸を調整する必要が無く、アルミナ#240にてブラストを施す程度で、陰極5表面の物理的凹凸を軽減することができるために、スクレバー7によって鉄ニッケル合金を容易に掻き取ることができる。よってスクレバーにかかる応力の低減を図ることができ、スクレバーを長期間安定して利用することができる。また、陰極表面への負荷も軽減できその表面状態も安定して利用できる。
【0025】
図6は本発明を適用したエッチング液の再生装置の他の一例を説明するための概要図である。ここで示すエッチング液の再生装置は、上記した本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例と同様に電解槽1と、陽極4と、陰極5を有すると共に、陰極5の析出面と向かい合う面に電磁石8が貼り合わせられている。
【0026】
次に、図6に示すエッチング液の再生装置を用いてのエッチング液の再生方法を詳述する。即ち、本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例について説明する。
なお、本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例では、上記した本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例と同様に、再生するエッチング液として塩化第二鉄2.4モル/l、塩化第一鉄0.9モル/l、塩化ニッケル1.1モル/lを使用した。
【0027】
本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例では、先ず、電磁石8に通電した状態で、電流密度は20A/dm2、液温50℃の条件で陽極4及び陰極5に1時間通電することにより陰極5表面に鉄ニッケル合金を析出させ、陰極4表面で第1鉄を第2鉄に酸化させることによってエッチング液の再生を行う。
【0028】
続いて、陰極5を電解槽1より取り出して、電磁石8の通電を停止した状態で、図7で示すように陰極5表面に析出した鉄ニッケル合金をスクレバー7によって掻き取ることによって電析した鉄ニッケル合金9(回収金属)の回収を行う。
【0029】
本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例では、上記した本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例と同様に、電析時に陰極表面に析出した鉄ニッケル合金がその残留応力によって剥がれ落ちることを抑制することができると共に、陰極5表面の物理的凹凸を軽減することができるために、スクレバーによる鉄ニッケル合金の回収率の向上を図ることができる。
【0030】
更に、電磁石8の通電を停止して電磁石の磁着力を解除した状態で、スクレバー7による鉄ニッケル合金の掻き取りを行うために剥離を容易に行うことができ、鉄ニッケル合金の回収率の向上を図ることができる。また、スクレバー7によって鉄ニッケル合金を容易に掻き取ることができるために、スクレバーと陰極にかかる応力の低減を図ることができ、スクレバーと陰極を長期間安定して利用することができる。
【0031】
なお、上記した本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例及び本発明を適用したエッチング液の再生装置の他の一例では、チタン板より形成された陰極を用いているが、陰極は必ずしもチタン板等の非磁性金属により形成される必要性は無く、原理的には磁性金属を陰極としても磁石を強力にすることにより磁着効果を得ることも可能であるが、回収金属と陰極との密着力を小さくし、小さな磁石や電磁石でも磁着力を高めことができるため、長期間使用しても安定した効果を得られるチタン板を使用する方が望ましい。
【0032】
また、上記した本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例及び本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例では、塩化第二鉄エッチング液の電解再生時の金属回収を詳述したが、必ずしも塩化第二鉄エッチング液である必要性は無く、鉄ニッケル合金以外の磁性金属が溶解したエッチング液であっても同様の効果をもたらすことは勿論のことである。さらに、エッチング液の再生に限定されず、磁性金属の電解製造、回収または精製にも同様の効果をもたらす。
【0033】
【発明の効果】
以上述べてきた如く、本発明のエッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置によれば、電極に析出した磁性金属の剥がれ落ち及び再溶解を低減することができ、析出した磁性金属の回収効率の向上を図ることができる。さらに陰極表面およびスクレバーの負荷を軽減でき安定した金属回収が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例を説明するための概要説明図である。
【図2】本発明を適用したエッチング液の再生装置の永久磁石の一例を示す説明図である。
【図3】永久磁石の陰極板に対する配置状態を示す側面説明図である。
【図4】永久磁石の陰極板に対する配置状態を示す平面説明図である。
【図5】本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例における鉄や鉄ニッケル合金の回収を説明するための模式的な図である。
【図6】本発明を適用したエッチング液の再生装置の他の一例を説明するための概要説明図である。
【図7】本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例における鉄や鉄ニッケル合金の回収を説明するための模式的な図である。
【図8】従来のエッチング液の再生装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 電解槽
2 エッチング液
3 電気回路
4 陽極
5 陰極
6 フェライト磁石
7 スクレバー
8 電磁石
9 鉄ニッケル合金(回収金属)
【発明の属する技術分野】
本発明はエッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置に関する。詳しくは、鉄やニッケル、鉄ニッケル合金などの磁性金属が溶解したエッチング廃液から電気分解により磁性金属を析出・回収するエッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、カラーブラウン管の内部前面に設けられるシャドーマスクは、鉄や鉄ニッケル合金を主成分とする薄板にエッチング処理を施し、多数の電子ビーム孔が穿孔されている。
【0003】
このエッチング工程に使われるエッチング液は、塩化第二鉄溶液が主に使われており、塩化第二鉄が鉄や鉄ニッケル合金を溶かすことによって塩化第一鉄や塩化ニッケルに化学変化し、塩化第二鉄が減少して溶液の溶解能力が弱くなるために、定期的な溶液の更新または再生が必要となる。
【0004】
ここで、溶解能力が弱くなったエッチング廃液は、環境汚染の問題や、省資源や経済性の観点からエッチング溶液中の鉄や鉄ニッケル合金を回収すると共にエッチング液として再利用することが望ましい。
【0005】
そこでエッチング溶液中の鉄や鉄ニッケル合金を電解処理により回収する手段として図8に示す様な、循環する陽極液を流通させる陽極室101と、循環する陰極液を流通させる陰極室102と、処理すべき液を取り込むために陰極室に接続された流入部103と、陰極室で析出した金属を回収するための引出部104とを備え、複数個の陽極室が陰極室内に収容され、孔開き陰極板が各陽極室の間に配設され、陰極板表面に生成されるデンドライドを払い落とすためのスクレバー手段が設置されると共に、隔膜がPTFE多孔質体から構成された使用済みエッチング液処理用電解槽が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
上記した使用済みエッチング液処理用電解槽では、使用済みエッチング廃液に電解処理を施すことで陰極板に金属を析出させ、析出した鉄やニッケル合金をスクレバーと呼ばれる掻き取り板によって機械的に剥離して取出口から回収している。
【0007】
しかしながら電解処理を施すことによって析出する金属は、電解液中に掻き落とされると電解液に再溶解されるため金属としての回収はその分少なくなってしまう。また、回収金属はその圧縮残留応力が大きいために電析厚みが薄い状態でも割れ、かつ陰極板表面との密着力が小さいときには、更に湾曲し溶液撹拌流等の影響により陰極面から脱落し、析出した金属が液中で再溶解されて回収効率をさらに低下させるといった問題がある。
【0008】
このような問題を回避するために、陰極を電解液の外に取り出し電析金属を掻き落とすのであるが、陰極表面の物理的凹凸を調整し、見かけ上の密着力を最適にすることが行われたり、使用する陰極に穴明き鉄板等を用いて回収金属を強固に付着させ回収金属の付着した陰極板を交換する等の工夫をしている。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−263985号公報(要約、第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、密着力を強力にするために、陰極表面に物理的凹凸をつくりアンカー効果を持たせると、回収時には陰極表面に回収金属が残留しスクレバーでの回収率が低くなるという問題が起こる。また回収金属の付着した陰極板を交換すると、陰極板が多数必要となるばかりでなく回収金属と同じものを使用しないと回収金属の再利用がしにくくなる。
なお、析出した金属が電析時には充分に密着し、回収時には剥がれやすくするといった相反する条件を満足する表面状態を実現する陰極表面の物理的凹凸の調整自体が極めて困難である。
また、金属との密着力が強い陰極表面をスクレバーで強引に掻き落とす作業を続けた場合には、電極表面とスクレバーの状態が少しずつ変化し、良好な状態を保持することが困難となる。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、陰極に析出した磁性金属の剥がれ落ち再溶解することを低減すると共に、析出した磁性金属の回収率が高いエッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係るエッチング液の再生方法は、電気分解によって磁性金属を陰極表面に析出するエッチング液の再生方法において、前記磁性金属を前記陰極表面に磁着する工程を備える。
【0013】
ここで、磁性金属を陰極表面に磁着することによって、電析時の圧縮残留応力により剥がれ落ちることなく,安定したエッチング液からの磁性金属の回収が可能となる。
【0014】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係るエッチング液の再生装置は、電気分解によって磁性金属を陰極表面に析出させるエッチング液の再生装置において、陰極の析出面の裏面に磁石が配置されている。
【0015】
ここで、陰極の析出面の裏面に磁石が配置されたことにより、陰極表面に析出する磁性金属が磁石の磁力によって磁着され、あたかも磁性金属と陰極面との密着力が増加したようになり、電析時の圧縮残留応力により剥がれ落ちることなく安定したエッチング液からの磁性金属の回収が可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0017】
図1は本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例を説明するための概要図である。ここで示すエッチング液の再生装置は、再生するエッチング液2が収納される電解槽1と、電気回路3によって正電位が与えられる不溶性の白金板より形成された陽極4と、負電位が与えられる板厚0.5mmで析出面がアルミナ#240にてブラスト処理が施されたチタン板で構成される陰極5を有すると共に、図2で示すような直径8mm、厚さ6mm、表面磁束密度600ガウスであるフェライト磁石6が、図3で表す側面図及び図4で表す平面図で示すように、隣接するフェライト磁石がそれぞれ相反する磁極で陰極5の析出面の裏面に接するように貼り合わせられている。
【0018】
ここで、上記した本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例では、陰極5の析出面の裏面に複数個のフェライト磁石が貼り合わせられているが、陰極5の析出面の裏面に貼り合わせられるフェライト磁石は陰極5表面に析出する磁性金属を磁着することができれば充分であり、必ずしも複数個のフェライト磁石が貼り合わせられる必要は無く、単一のフェライト磁石が貼り合わせられても構わないが、磁束密度を高め、より一層強力に磁性金属を陰極表面に磁着すべく、複数個のフェライト磁石が貼り合わせられた方が好ましい。
【0019】
同様に、陰極5の析出面の裏面に貼り合わせられるフェライト磁石は陰極5表面に析出する磁性金属を磁着することができれば充分であり、必ずしも隣接するフェライト磁石がそれぞれ相反する磁極で陰極5の析出面と向かい合う面に接するように貼り合わせられる必要は無く、隣接するフェライト磁石が同一の磁極で陰極5の析出面の裏面に接するように貼り合わせられていても良いが、磁束密度を高め、より一層強力に磁性金属を陰極表面に磁着すべく、隣接するフェライト磁石がそれぞれ相反する磁極で陰極5の析出面に向かい合う面に接するように貼り合わせられた方が好ましい。
【0020】
次に、図1に示すエッチング液の再生装置を用いてのエッチング液の再生方法を詳述する。即ち、本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例について説明する。
なお、本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例では、再生するエッチング液として塩化第二鉄2.4モル/l、塩化第一鉄0.9モル/l、塩化ニッケル1.1モル/lを使用した。
【0021】
本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例では、先ず、電流密度は20A/dm2、液温50℃の条件で陽極4及び陰極5に1時間通電することにより陰極5表面に鉄ニッケル合金を析出させ、陽極4表面で第一鉄を第二鉄に酸化させることによってエッチング液の再生を行う。
【0022】
続いて、陰極5を電解槽1より取り出して、図5で示すように陰極5表面に析出した鉄ニッケル合金をスクレバー7によって掻き取ることによって電析した鉄ニッケル合金9(回収金属)の回収を行う。
なお、鉄ニッケル合金を陰極に磁着しているものの、磁着力は陰極面に対して垂直方向には強力であるものの、陰極面に対して平行方向、即ち、スクレバー7によって鉄ニッケル合金の掻き取りを行う方向にはあまり作用しないために、陰極面に貼り合わせたフェライト磁石がスクレバー7による掻き取り作業を妨げることは少ないと考えられる。
【0023】
本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例では、電析時に陰極表面に析出した鉄ニッケル合金がその残留応力によって剥がれ落ちることを抑制することができる。なお、このことは、陰極5の析出面の裏面にフェライト磁石を貼り合わせない場合に鉄ニッケル合金が5.1gしか回収できなかったのに対して、本発明を適用したエッチング液の再生方法においては電析により15gの鉄ニッケル合金を回収することができた点からも明らかである。
【0024】
また、鉄ニッケル合金を陰極5の析出面に磁着することができるために、陰極表面の密着力を高めるための物理的な凹凸を調整する必要が無く、アルミナ#240にてブラストを施す程度で、陰極5表面の物理的凹凸を軽減することができるために、スクレバー7によって鉄ニッケル合金を容易に掻き取ることができる。よってスクレバーにかかる応力の低減を図ることができ、スクレバーを長期間安定して利用することができる。また、陰極表面への負荷も軽減できその表面状態も安定して利用できる。
【0025】
図6は本発明を適用したエッチング液の再生装置の他の一例を説明するための概要図である。ここで示すエッチング液の再生装置は、上記した本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例と同様に電解槽1と、陽極4と、陰極5を有すると共に、陰極5の析出面と向かい合う面に電磁石8が貼り合わせられている。
【0026】
次に、図6に示すエッチング液の再生装置を用いてのエッチング液の再生方法を詳述する。即ち、本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例について説明する。
なお、本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例では、上記した本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例と同様に、再生するエッチング液として塩化第二鉄2.4モル/l、塩化第一鉄0.9モル/l、塩化ニッケル1.1モル/lを使用した。
【0027】
本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例では、先ず、電磁石8に通電した状態で、電流密度は20A/dm2、液温50℃の条件で陽極4及び陰極5に1時間通電することにより陰極5表面に鉄ニッケル合金を析出させ、陰極4表面で第1鉄を第2鉄に酸化させることによってエッチング液の再生を行う。
【0028】
続いて、陰極5を電解槽1より取り出して、電磁石8の通電を停止した状態で、図7で示すように陰極5表面に析出した鉄ニッケル合金をスクレバー7によって掻き取ることによって電析した鉄ニッケル合金9(回収金属)の回収を行う。
【0029】
本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例では、上記した本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例と同様に、電析時に陰極表面に析出した鉄ニッケル合金がその残留応力によって剥がれ落ちることを抑制することができると共に、陰極5表面の物理的凹凸を軽減することができるために、スクレバーによる鉄ニッケル合金の回収率の向上を図ることができる。
【0030】
更に、電磁石8の通電を停止して電磁石の磁着力を解除した状態で、スクレバー7による鉄ニッケル合金の掻き取りを行うために剥離を容易に行うことができ、鉄ニッケル合金の回収率の向上を図ることができる。また、スクレバー7によって鉄ニッケル合金を容易に掻き取ることができるために、スクレバーと陰極にかかる応力の低減を図ることができ、スクレバーと陰極を長期間安定して利用することができる。
【0031】
なお、上記した本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例及び本発明を適用したエッチング液の再生装置の他の一例では、チタン板より形成された陰極を用いているが、陰極は必ずしもチタン板等の非磁性金属により形成される必要性は無く、原理的には磁性金属を陰極としても磁石を強力にすることにより磁着効果を得ることも可能であるが、回収金属と陰極との密着力を小さくし、小さな磁石や電磁石でも磁着力を高めことができるため、長期間使用しても安定した効果を得られるチタン板を使用する方が望ましい。
【0032】
また、上記した本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例及び本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例では、塩化第二鉄エッチング液の電解再生時の金属回収を詳述したが、必ずしも塩化第二鉄エッチング液である必要性は無く、鉄ニッケル合金以外の磁性金属が溶解したエッチング液であっても同様の効果をもたらすことは勿論のことである。さらに、エッチング液の再生に限定されず、磁性金属の電解製造、回収または精製にも同様の効果をもたらす。
【0033】
【発明の効果】
以上述べてきた如く、本発明のエッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置によれば、電極に析出した磁性金属の剥がれ落ち及び再溶解を低減することができ、析出した磁性金属の回収効率の向上を図ることができる。さらに陰極表面およびスクレバーの負荷を軽減でき安定した金属回収が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したエッチング液の再生装置の一例を説明するための概要説明図である。
【図2】本発明を適用したエッチング液の再生装置の永久磁石の一例を示す説明図である。
【図3】永久磁石の陰極板に対する配置状態を示す側面説明図である。
【図4】永久磁石の陰極板に対する配置状態を示す平面説明図である。
【図5】本発明を適用したエッチング液の再生方法の一例における鉄や鉄ニッケル合金の回収を説明するための模式的な図である。
【図6】本発明を適用したエッチング液の再生装置の他の一例を説明するための概要説明図である。
【図7】本発明を適用したエッチング液の再生方法の他の一例における鉄や鉄ニッケル合金の回収を説明するための模式的な図である。
【図8】従来のエッチング液の再生装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 電解槽
2 エッチング液
3 電気回路
4 陽極
5 陰極
6 フェライト磁石
7 スクレバー
8 電磁石
9 鉄ニッケル合金(回収金属)
Claims (3)
- 電気分解によって磁性金属を電極表面に析出するエッチング液の再生方法において、
前記磁性金属を前記電極表面に磁着する工程を備える
ことを特徴とするエッチング液の再生方法。 - 前記磁性金属を前記電極の析出面の裏面に配置される永久磁石または電磁石によって磁着する
ことを特徴とする請求項1に記載のエッチング液の再生方法。 - 電気分解によって磁性金属を電極表面に析出させるエッチング液の再生装置において、
前記電極の析出面の裏面に永久磁石または電磁石が配置された
ことを特徴とするエッチング液の再生装置。
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---|---|---|---|
JP2003094619A JP2004300515A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | エッチング液の再生方法及びエッチング液の再生装置 |
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Publications (1)
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---|---|
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ID=33407139
Family Applications (1)
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Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004300515A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013197360A (ja) * | 2012-03-21 | 2013-09-30 | Shibaura Mechatronics Corp | 基板処理方法及び基板処理システム |
JP2016042598A (ja) * | 2015-12-14 | 2016-03-31 | 芝浦メカトロニクス株式会社 | 基板処理方法及び基板処理システム |
JP2017076820A (ja) * | 2017-01-23 | 2017-04-20 | 芝浦メカトロニクス株式会社 | 基板処理方法及び基板処理システム |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003094619A patent/JP2004300515A/ja active Pending
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