JP2004300481A - 耐へたり性及び耐割れ性に優れたばね用鋼線 - Google Patents

耐へたり性及び耐割れ性に優れたばね用鋼線 Download PDF

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Abstract

【課題】耐割れ性と耐へたり性の両方に優れたばね用鋼線を提供する。
【解決手段】焼戻しマルテンサイト組織を有するばね用鋼線(例えば、Si:1.2〜2.5%程度を含有する鋼線)において、Crを1.0%以上の範囲で含有させ、粒界酸化層深さを10μm以下にする。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はばね(例えば、機械の復元機構に使用するばね)を製造するのに有用な耐へたり性及び耐割れ性に優れたばね用鋼線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジンの弁ばね、サスペンションの懸架ばね、クラッチばね、ブレーキばねなどは、近年の自動車の軽量化や高出力化に伴い、高応力に耐えられるような設計が求められている。すなわちばねの負荷応力の増大に伴い、疲労特性及び耐へたり性に優れたばねが求められている。
【0003】
耐へたり性は、ばね素材を高強度化すれば向上することが知られている。例えば高Si化して高強度化すれば耐へたり性が向上するため、通常、0.8〜2.5%程度の範囲で使用されている(特許文献1,2参照)。ところがばね素材を高強度化すると、欠陥感受性(耐割れ性)が高くなり易く、疲労寿命が低下しやすくなったり、コイリング時の折損がおこりやすくなるため、耐へたり性と欠陥感受性の両方を向上させるのは困難である。
【0004】
【特許文献1】
特許第2898472号公報(請求項1,段落0015)
【特許文献2】
特開2000−169937号公報(請求項1,段落0018,段落0028)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐へたり性と、耐欠陥感受性(欠陥存在時の疲労寿命、コイリング時の耐折損性など)との両方を向上し得たばね用鋼線を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねる過程において、Crの意外な作用を見出した。すなわちCrは焼入性の向上及び焼戻し軟化抵抗の向上に有効な元素であるため、Siと同様に、ばねの高強度化及び耐へたり性向上に有効であることは知られているものの、Crを多く使用しても疲労寿命は向上せず、むしろ靭性及び延性を下げるため、Crの使用量は実質的には約1%程度に抑えられていた(上記特許文献1及び2の実施例参照)。ところが、本発明者らはCrには潜在的には欠陥感受性を下げると共に耐へたり性を向上させる効果があること、従って欠陥が存在するときの疲労寿命低下を防止でき、またコイリング時の折損を防止できる効果があることを新たに発見したのである。より詳細に説明すると、従来、ばね用鋼線(例えば、オイルテンパー線)は線材を伸線した後、焼入れ・焼戻しすることにより製造されており、得られたばね用鋼線は、ばね加工した後、ショットピーニングなどによって表面に圧縮残留応力を付与して疲労寿命を高めている。ここでCrを多く使用すると、前記焼戻しの際に粒界が酸化されてしまう。そしてこの粒界酸化層は、前記圧縮残留応力の付与量を少なくしてしまうため、結果として疲労寿命が向上していなかったのである。そこで本発明者らは、粒界酸化さえ抑制すれば、Crの高強度化作用及び耐へたり性向上作用を発揮させるのみならず、Crには欠陥感受性を低下させることなく、疲労強度及び耐へたり性を向上できることを見出し、ばねの耐へたり性と欠陥感受性の両方を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
上記目的を達成し得た本発明の耐へたり性及び耐割れ性に優れたばね用鋼線とは、焼戻しマルテンサイト組織を有するばね用鋼線であって、Crを1.0%以上(質量%の意。以下、同じ)の範囲で含有しており、かつ粒界酸化層深さが10μm以下である点に要旨を有するものである。前記ばね用鋼線は、通常、Si:1.2〜2.5%を含有するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のばね用鋼線は、焼戻しマルテンサイト組織を有するものであり、例えばオイルテンパー線などに分類されるものである。焼戻しマルテンサイト組織を要件としたのは、本発明が高強度のばね用鋼線を対象としているためである。本発明のばね用鋼線の強度は、例えば、1900MPa以上程度、好ましくは1960〜2200MPa程度、さらに好ましくは2000〜2100MPa程度である。
【0009】
焼戻しマルテンサイト組織の割合は、上記強度を達成可能な範囲から選択でき、例えば、90%以上(体積百分率)程度、好ましくは95%以上(体積百分率)程度(全面焼戻しマルテンサイトを含む)である。
【0010】
そして本発明のばね用鋼線では、Crを添加しながらも粒界酸化層を薄くしている。上述したようにCrは潜在的に欠陥感受性低下作用(欠陥存在時の疲労寿命低下防止作用)を有しているのであるが、従来はCrが高くなると粒界酸化層の生成が多大となって逆に疲労寿命が低下していたのである。本発明では粒界酸化層を薄くすることによって疲労寿命の低下を防止して、Crの欠陥感受性低下効果を有効に利用することに成功した。そしてCrは、高強度化作用及び耐へたり性向上作用をも有しているため、本発明によれば耐へたり性と、耐欠陥感受性(欠陥存在時の疲労寿命の向上など)の両方を向上させることができる。
【0011】
粒界酸化層の深さは、例えば、最大でも10μm以下、好ましくは最大8μm以下、さらに好ましくは最大6μm以下である。
【0012】
なお粒界酸化層は、鋼線の横断面を研磨し、顕微鏡観察にて測定する。
【0013】
Crは多い程望ましく、1.0%以上(質量%の意。以下、同じ)、好ましくは1.03%以上、さらに好ましくは1.2%以上、特に1.3%以上である。なおCrが過剰になると、伸線の際のパテンティング時間が長くなりすぎ、また靭性や延性も低下するため、これらの観点からその上限を設定してもよく、例えば、4%程度、好ましくは3%程度、さらに好ましくは2.6%程度とする。
【0014】
本発明のばね用鋼線において、上記Cr以外の元素は、ばね用鋼線として公知の高強度鋼線と同等の範囲で適宜添加することができるが、特にSiは耐へたり性を確保する点で重要な元素であるため下記の範囲で添加することが推奨される。
【0015】
Si:1.2〜2.5%
すなわちSiは製鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、軟化抵抗を高めて耐へたり性を向上させるのにも有用である。こうした効果を有効に発揮させるため、通常は1.2%程度以上、好ましくは1.4%程度以上、さらに好ましくは1.6%程度以上添加する。しかし多すぎると、靭延性が悪くなるばかりでなく疵が増加したり、熱処理の際に表面の脱炭が進行し易くなったり、また粒界酸化層が深くなり易く疲労寿命を短くし易くなる。Siは、通常は2.5%程度以下、好ましくは2.3%程度以下、さらに好ましくは2.2%程度以下とする。
【0016】
また上記Cr及びSi以外の元素は、例えば、以下のように設定することができる。
【0017】
C:0.5〜0.8%
Cは高応力が負荷されるばね鋼として十分な強度を確保するために添加される元素であり、通常は0.5%程度以上、好ましくは0.52%程度以上、さらに好ましくは0.54%以上、特に0.6%程度以上添加する。しかし多すぎると靭延性が悪くなり、表面疵や内部欠陥を発生し、ばね用鋼線をばねに加工する時や得られたばねの使用中に割れが発生し易くなるため、通常は0.8%程度以下、好ましくは0.75%程度以下、さらに好ましくは0.7%程度以下とする。
【0018】
Mn:0.5〜1.5%
Mnも製鋼時の脱酸に有効な元素であり、また焼入性を高めて強度向上に寄与する元素である。この効果を有効に発揮させるため、通常は0.5%程度以上、好ましくは0.6%程度以上、さらに好ましくは0.65%程度以上添加する。しかし、本発明の鋼線は、原料鋼の熱間圧延により得られる線材を必要に応じてパテンティング処理した後、伸線することにより得られるものであり、Mnが多すぎると、前記熱間圧延時やパテンティング処理時にベイナイト等の過冷組織が生成し易くなり、伸線性が低下し易くなるため、上限は通常は1.5%程度、好ましくは1.2%程度、さらに好ましくは1%程度とする。
【0019】
V:0〜0.5%
Vは添加しない場合(0%)もあるが、原料線材の伸線後の焼入れ・焼戻し等の熱処理時に結晶粒を微細化する作用があり、靭・延性を向上させるのに有用であり、また前記焼入れ・焼戻し処理の時や、コイリング(ばね成形)後の歪取り焼鈍時に2次析出硬化を起こして高強度化にも寄与するため、例えば0.01%程度以上、好ましくは0.05%程度以上、さらに好ましくは0.1%程度以上添加する場合もある。しかし、過剰に添加するとオイルテンパー処理するまでの段階でマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成してしまい、伸線加工性が低下し易くなるため、通常は0.5%程度以下、好ましくは0.4%程度以下、さらに好ましくは0.3%程度以下とする。
【0020】
上記鋼線は、さらに種々の元素を添加してもよく、該添加元素の有無に拘わらず残部はFe及び不可避的不純物(P,S,Al,N,Oなど)であってもよい。好ましい添加元素は、Ni、Moなどである。
【0021】
Ni:0.05〜0.5%
Niは焼入性を高め、低温脆化を防止するのに有用な元素である。かかる効果を有効に発揮させる場合には、例えば、0.05%程度以上、好ましくは0.1%程度以上、さらに好ましくは0.15%程度以上添加する。しかし多すぎると、熱間圧延によって原料線材を製造する際に、ベイナイト組織又はマルテンサイト組織が生成し、靭性・延性が低下し易くなるため、通常は0.5%程度以下、好ましくは0.4%程度以下、さらに好ましくは0.3%程度以下とする。
【0022】
Mo:0.3%以下(0%を含まず)
Moは、軟化抵抗を向上させると共に、析出硬化を発揮するために低温焼鈍した後で耐力を上昇させる点でも有用である。Moの好ましい量は、0.05%程度以上である。しかし過剰に添加すると、オイルテンパー処理するまでの段階でマルテンサイト組織やベイナイト組織が生成し、伸線加工性が悪くなるため、通常は0.3%程度以下、好ましくは0.25%程度以下、特に0.2%程度以下とする。
【0023】
上記Ni及びMoは、単独で添加してもよく組み合わせて添加してもよい。
【0024】
なお不可避不純物であるAlは、少ないほど望ましい。Alは酸化物系介在物を形成し、破壊の起点となるためである。好ましいAl量は、例えば、0.05%以下(特に0.04%以下)程度である。
【0025】
本発明のばね用鋼線は、上記成分を有する鋼を溶製した後、常法に従って熱間圧延し、得られた線材を必要に応じて皮削り、パテンティング処理した後、伸線及び焼入れ・焼戻しすることによって得られる。ここで重要なのは、焼入れ時及び/又は焼戻し時の雰囲気である。本発明では、上述したようにCrを添加しているにも拘わらず、粒界酸化層を薄くしており、このようなことが可能となるのは焼入れ時及び/又は焼戻し時の炉雰囲気を制御して積極的に鋼線表面に酸化層を形成し、この酸化層によって鋼線内部(粒界)の酸化を抑制しているためである。
【0026】
炉の雰囲気としては、例えば、所定濃度以上の水蒸気(HO)を含むガスが使用できる。積極的に水蒸気(HO)を混入させることで、鋼線表面に通常よりも緻密な酸化被膜を形成することができ、粒界酸化層を薄くすることができる。ガス中の水蒸気濃度は、例えば、3%(V/V)程度以上、好ましくは5%(V/V)程度以上、さらに好ましくは10%(V/V)程度以上である。なお水蒸気濃度の上限は特に限定されないが、例えば、80%(V/V)程度以下、好ましくは60%(V/V)程度以下である。
【0027】
前記ガスとしては、不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス)、空気、燃料ガス、及びこれらの混合ガスなどが使用できる。空気と燃料ガスとの混合ガスを使用するのが鋼線を簡便に加熱できる点で有利である。
【0028】
上述のようにして得られる本発明のばね用鋼線は、ばね成形(コイリング)し、圧縮残留応力を付与することによってばねとする。圧縮残留応力を付与するのは、ばねの疲労寿命を向上させるためである。本発明では、上述したように、Crを添加しているにも拘わらず粒界酸化が抑制されているため、圧縮残留応力を十分に付与することができ、加えてCrの欠陥感受性低減効果をも利用しているため、疲労寿命を十分に高めることができる。
【0029】
圧縮残留応力付与手段としては、例えば、ショットピーニングが挙げられる。ショットピーニングは、一段よりも二段以上(例えば、二段)とするのが望ましい。二段階に分けてショットピーニングすることにより、表面圧縮残留応力を高くできるとともに、圧縮残留応力の付与深さを深くできる。
【0030】
上記のようにして得られたばねの表面の残留応力は、例えば、−700MPa以下、好ましくは−750MPa以下、さらに好ましくは−780MPa以下程度である(残留応力は、正の値が引張残留応力を示し、負の値が圧縮残留応力を示す)。圧縮残留応力の下限は特に限定されないが、例えば、−1200MPa程度(特に−1000MPa程度)である。
【0031】
本発明のばねは、必要に応じて、窒化処理されているのが望ましい。窒化処理することにより、ばねの耐へたり性をさらに高めることができる。窒化処理は、例えば、NH=70〜90体積%程度及びN=10〜30体積%程度の雰囲気中で、温度400〜450℃程度で2〜4時間程度加熱することによって行う。
【0032】
前記ばねは、疲労特性、及び耐へたり性に優れているため、これら特性が求められる用途、例えば、自動車エンジンの弁ばね、サスペンションの懸架ばね、クラッチばね、ブレーキばねなどのような機械の復元機構に使用するばねなどに特に有用である。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0034】
なお以下の実験例において、粒界酸化層深さ、表面残留応力、疲労寿命、耐へたり性(残留せん断歪み)は次のようにして測定した。
【0035】
[粒界酸化層深さ]
オイルテンパー線の横断面を検鏡面まで研磨し、光学顕微鏡にて倍率400倍で円周上すべてを観察し、粒界酸化層の最大深さを測定した。
【0036】
[表面残留応力]
表面残留応力はX線回折によって求めた。
【0037】
[疲労寿命(耐割れ性)]
実験例で得られたばねに対して、735±662MPaの負荷応力下で疲労試験を行い、ばねが破断するまでの繰り返し数を測定した。なおばねが破断しない場合、繰り返し5×10回で試験を中止した。
【0038】
[残留せん断歪(耐へたり性)]
実験例で得られたばねの一部を窒化処理(窒化条件:NH=80体積%+N=20体積%、430℃×3Hr)した。窒化処理したばね及び窒化処理しなかったばねの両方の残留せん断歪みを以下のようにして測定した。すなわち温度120℃下、48時間に亘ってばねに応力1372MPaを作用させ続けた後、応力を除去し、試験前後のへたり量を測定し、残留せん断歪みを算出した。
【0039】
実験例1
下記表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜S)を溶製し、熱間圧延することにより直径8.0mmの鋼線材を作製した。次いで、軟化焼鈍、皮削り、鉛パテンティング処理(加熱温度:950℃、鉛炉温度:620℃)、伸線処理を行った後、オイルテンパー処理(加熱温度:960℃、焼入油温度:70℃、焼戻温度:450℃;焼戻し後の冷却:空冷)を行い、焼戻しマルテンサイト組織を有する直径4.0mmのオイルテンパー線を製造した。なおオイルテンパー処理に際しては、焼入前のオーステナイト化時の加熱を下記表2に示す種々の雰囲気中で行った。
【0040】
得られたオイルテンパー線は、ばね成形(コイルの平均径:28.0mm、巻数:6.5、有効巻数:4.5)、歪取焼鈍(400℃×20分)、座研磨、ダブルショットピーニング、低温焼鈍(230℃×20分)、冷間セッチングを行い、ばね(ばね定数:2.6kgf/mm)とした。
【0041】
前記オイルテンパー線の粒界酸化層深さ、並びにばねの表面残留応力、疲労寿命、及び残留せん断歪みを測定した。またJIS G0551に準拠してオーステナイト粒の結晶粒度番号も調べた。結果を表2に示す。
【0042】
【表1】
Figure 2004300481
【0043】
【表2】
Figure 2004300481
【0044】
表1及び表2より明らかなように、No.15〜21では、表面の圧縮残留応力が約−800MPaと大きいにも拘わらず、Cr量が少ないため、疲労寿命が短く耐割れ性に劣ると共に、残留せん断歪みが大きく耐へたり性も悪い。
【0045】
No.6では、Cr量が多くなったため、耐へたり性が向上している。またCrは疲労寿命の向上にも寄与している筈であるが、Crは粒界酸化層を厚くしてしまうため、表面の圧縮残留応力が小さくなり、トータルでみると疲労寿命の向上は認められない。
【0046】
No.1〜5及びNo.7〜14では、Cr量を多くするだけでなく、オイルテンパー雰囲気を適切にして粒界酸化層を薄くしているため、Crの欠陥感受性低減効果を有効に引き出すことができている。すなわちこれらNo.1〜5及びNo.7〜14と、上記No.15〜21とを対比すると、表面の圧縮残留応力が同程度であるにも拘わらず、Cr量が多いNo.1〜5及びNo.7〜14の方が疲労寿命が向上している。またこれらNo.1〜5及びNo.7〜14は、耐へたり性にも優れている。特に窒化処理すると、耐へたり性がさらに向上した。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、粒界酸化層を低減してCrの潜在的効果を顕在化させているため、耐欠陥感受性(欠陥存在時の疲労寿命など)と耐へたり性の両方を向上することができる。

Claims (2)

  1. 焼戻しマルテンサイト組織を有するばね用鋼線において、Crを1.0%以上(質量%の意。以下、同じ)の範囲で含有しており、かつ粒界酸化層深さが10μm以下であることを特徴とする耐へたり性及び耐割れ性に優れたばね用鋼線。
  2. Si:1.2〜2.5%を含有する請求項1に記載のばね用鋼線。
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