JP2004299956A - 粉末状セメント分散剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は固結しにくい粉末状セメント分散剤の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】下記のA成分のセメント分散剤に無機物質を添加して湿式粉砕した後、乾燥・粉末化する粉末状セメント分散剤の製造方法を提供する。
A成分:下記のA1成分を40〜85モル%、A2成分を15〜60モル%及びA3成分0〜5モル%(合計100モル%)含み、かつ数平均分子量が2000〜50000の水溶性ビニル共重合体。
A1成分:オレフィンモノカルボン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上
A2成分:アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び(メタ)アリルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上
A3成分:(メタ)アクリル酸アルキル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上
【選択図】 なし
【解決手段】下記のA成分のセメント分散剤に無機物質を添加して湿式粉砕した後、乾燥・粉末化する粉末状セメント分散剤の製造方法を提供する。
A成分:下記のA1成分を40〜85モル%、A2成分を15〜60モル%及びA3成分0〜5モル%(合計100モル%)含み、かつ数平均分子量が2000〜50000の水溶性ビニル共重合体。
A1成分:オレフィンモノカルボン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上
A2成分:アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び(メタ)アリルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上
A3成分:(メタ)アクリル酸アルキル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固結し難い粉末状セメント分散剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、土木・建築分野では粉末状セメント分散剤がプレミックス製品に添加する分散剤として普及しつつある。当該粉末状セメント分散剤の種類は、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物又はポリカルボン酸塩等が知られている。この中でも、特に低水セメント比でも良好な流動性が得られるポリカルボン酸塩を主成分とする粉末セメント分散剤が多用されてきている。
【0003】
しかし、粉末状セメント分散剤は袋詰して保管した場合に、その保管条件、例えば周辺温度、積載荷重の影響により固結する場合がある。特に、粉末度が高く、また保管開始時における粉粒体の温度が高い程、固結の程度が著しくなる。その結果、使用に際して固結物の解砕又は粉砕等の作業が必要となり、作業効率の低下を招くという問題があった。一方、固結防止方法として、粉体の表面コーティング(特開昭48−96732号公報)やゼオライトを混合する方法(特開昭51−1648号公報)が提案されているが、これらの方法を粉末状セメント分散剤に適用した場合に、表面被覆による分散性能の低下やコスト高等の問題があって実用的ではない。
【0004】
【特許文献1】
特開昭48−96732号公報
【特許文献2】
特開昭51−1648号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は固結し難い粉末状セメント分散剤の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のセメント分散剤に無機物質を添加して後、湿式粉砕して得た粉末状セメント分散剤は固結し難いことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いるセメント分散剤は、以下のモノマー成分からなる共重合体である。
すなわち、A1成分であるオレフィンモノカルボン酸としては、アクリル酸、メタアクリル酸が好ましい。また、オレフィンモノカルボン酸の塩としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩の1種又は2種以上から選ばれる塩が好ましい。
【0008】
A2成分であるアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、モノメトキシポリエチレングリコール、モノエトキシポリエチレングリコール、モノ(イソ)プロポキシポリエチレングリコール等の炭素数1〜3のアルコキシを有するモノアルコキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられるが、中でもオキシエチレン基の繰り返し数が5〜100のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。繰り返し単位が5未満では分散性能が不十分となり、100を超えると高融点の固体となり、取り扱いが困難となる。また、A2成分の(メタ)アリルスルホン酸塩としては、(メタ)アリルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミン等が使用できる。本発明においてA2成分として前記のアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び前記の(メタ)アリルスルホン酸から選ばれる1種又は2種以上が好適である。
【0009】
A3成分である(メタ)アクリル酸アルキルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等が例示できる。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0010】
A成分中のA1成分は40〜85モル%、A2成分は15〜60モル%、A3成分は0〜5モル%が好ましい。これらの範囲外では分散性能が低下する傾向にある。
【0011】
特に分散性能及び回収率の観点から、A1成分としてメタクリル酸又はその塩を55〜75モル%及びA2成分としてメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを25〜45モル%(A1成分とA2成分の合計100モル%)含む水溶性ビニル共重合体が好ましく、なかでもA1成分としてメタクリル酸又はその塩を50〜72モル%、A2成分としてメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを25〜40モル%及び(メタ)アリルスルホン酸塩を0.1〜10モル%(A1成分とA2成分の合計100モル%)含む水溶性ビニル共重合体がより好ましい。
【0012】
また、水溶性ビニル共重合体の数平均分子量は2000〜50000が好ましい。この範囲外では分散性能が低下する傾向がある。なお、本発明において数平均分子量は、GPC法によるプルラン換算値である。
【0013】
本発明で用いる無機物質としては、炭酸カルシウム、石膏、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛又は炭酸マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なお、無機物質の形態は、塊状、粉状、結晶状等いずれも使用でき、特定の形態に限定されない。
【0014】
また、無機物質の添加量は、セメント分散剤(固形分換算)100重量部に対し0.1〜300重量部であり、1〜100重量部が好ましい。無機物質の添加量が0.1重量部未満では固結防止効果が十分でなく、300重量部を超えるとセメント分散剤の含有量が少なくなってセメント分散効果が低下する。また、本発明における湿式粉砕において好適な水量はセメント分散剤の固形分と無機物質の合計100重量部に対し10〜400重量部であり、100〜200重量部がより好ましい。当該水量が10重量部未満でも400重量部を超えても被粉砕性が低下する。
【0015】
本発明で使用できる湿式粉砕機は、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、アジテータミル等が挙げられるが、特にビーズミルが微粉砕性に優れ好適である。また、粉砕によって得られる無機物質の平均粒子径は1.5μm以下が好ましく、1μmがより好ましい。平均粒子径が1.5μmを超えると固結防止効果が低下する。
【0016】
次に、得られた湿式粉砕スラリーの乾燥・粉末化の方法としては、噴霧乾燥器を用いることができる。噴霧乾燥における乾燥条件としては熱風入口温度150〜250℃及び熱風出口温度80〜150℃の温度範囲が好ましい。熱風入口温度が150℃未満では粉末状セメント分散剤の生産効率が低下し、250℃を超えるとセメント分散剤が熱変性を受けてセメント分散性能が低下する。熱風出口温度が80℃未満では粉末の含水率が高くなってブロッキングが発生しやすく、150℃を超えるとセメント分散剤が熱変性を受けて分散性能が低下する。
【0017】
本発明により製造された粉末状分散剤が使用できるセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、高ビーライトポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュ含有セメント又はシリカフューム含有セメントを例示できる。
【0018】
【実施例】
合成例1(水溶性ビニル共重合体a1の合成)
200Lのガラスライニング製の反応容器に水200部を仕込み、攪拌しながら加温して、内温を80℃に保った。メタクリル酸60部とメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の繰り返し数n=23)メタクリレート334部、3−メルカプトプロピオン酸4.7部及び水390部との混合物と20%過硫酸ナトリウム水溶液25部を共に2時間かけて反応容器に滴下した。更に、20%過硫酸ナトリウム水溶液10部を30分かけて滴下し、同温度で1時間熟成させた。次に冷却しながら48%NaOH58部を滴下して反応液を中和した。この反応液は、メタクリル酸を70モル%、メトキシポリエチレングリコール(n=23)メタクリレートを30モル%(合計100モル%)の割合で共重合反応した、数平均分子量23000の水溶性ビニル共重合体を40質量%含有する水溶液であった。
【0019】
合成例2(水溶性ビニル共重合体a2〜a5の合成)
合成例1と同様にして、水溶性ビニル共重合体a2〜a5を合成した。モノマーの種類、反応比率、水溶性ビニル共重合体の数平均分子量、水溶性ビニル共重合体の濃度を表1にまとめた。
【0020】
【表1】
【0021】
湿式粉砕スラリーの調整例
(1)湿式粉砕スラリー S1
重質炭酸カルシウム(平均粒子径D50が25μm、丸尾カルシウム社製)に粉砕助剤として分散剤a1(重質炭酸カルシウムに対して、分散剤の固形分換算で0.08%)と水を添加して固形分濃度70%のスラリーを調整した後、実容積が20Lのビーズミルに粉砕媒体として直径1mmのガラスビーズを容積比で90%充填したビーズミル(ビーズミルLMZ、アシザワ社製)に、当該スラリーを5L/minの流量で導入して、ロータピンの周速度が10m/secで粉砕した。粉砕後、当該スラリーに水を添加して固形分濃度が40質量%の湿式粉砕スラリーS1を調製した。
【0022】
(2)湿式粉砕スラリー S2〜S7
前記S1と同様の方法で、湿式粉砕スラリーS2〜S7を調製した。S1〜S7に含まれるセメント分散剤、無機物質及び粉砕前後の無機物質の平均粒子径を表2に示す。なお、以下に示す全ての平均粒子径は、セイシン企業社製SKレーザーマイクロンサイザーLMS−300を用いて測定した。
【0023】
【表2】
【0024】
乾燥・粉末化
セメント分散剤a1〜a5と湿式粉砕スラリーS1〜S7を表3に従い重量比1:1で混合した混合スラリーを調整した。次に、噴霧乾燥装置として塔径3.2m、高さ7.9mのスプレードライヤを用い、噴霧装置としてディスクアトマイザーを使用して、熱風入口温度を200℃、熱風出口温度を100℃に維持しながら、ディスクアトマイザーの回転速度が24000rpmの条件で、当該混合スラリーを、90kg/hrの流量で噴霧し乾燥させた。S1〜S7を含む混合スラリーから得られた粉末状セメント分散剤をそれぞれP1〜P7として、これらの平均粒径を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
固結試験
粉末状セメント分散剤P1〜P7を恒温・恒湿槽に入れて含水率が2質量%になるよう調湿した。含水率はケット科学社製赤外線水分計FD−600を用いて、サンプル量5g、加熱温度110℃、加熱時間30分の条件で測定した。次に、製品の袋詰状態のモデルとして、チャック式のビニール袋(寸法:7cm×10cm)に粉末状セメント分散剤50gを一杯に充填してチャックを閉じて密封した状態で、恒温乾燥機に入れ70℃で5時間加温した。次に、当該乾燥機から粉末状セメント分散剤を充填させたビニール袋を取り出し、このビニール袋の上に直接金属製のおもり(荷重25g/cm2)を載置して20℃の恒温室内に24時間放置した。24時間経過後、ビニール袋から固結した粉末状セメント分散剤を金属製容器に取り出し、JIS A 1147−201「コンクリートの凝結時間試験方法」で使用される貫入抵抗試験装置を用いて、固結した粉末状セメント分散剤の上面全体に均等に荷重を加えた。そして固結した粉末状セメント分散剤が崩壊した時点の荷重を最大荷重とし、この最大荷重を荷重面積で除した値を固結度とした。この結果を表4に示す。なお、実用上、固結度は2N/cm2以下が好ましく、1N/cm2以下がより好ましい値である。
【0027】
【表4】
【0028】
表4から分かるように、本発明の粉末状セメント分散剤(実施例1〜5)は全て、ナフタレンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩又はメラミンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩を含む粉末状セメント分散剤(比較例1又は2)と比べ固結度が約1/3以下に低下して固結しにくくなっている。
【0029】
【発明の効果】
本発明の粉末状セメント分散剤の製造方法に係る粉末状セメント分散剤は、固結しにくい。
【発明の属する技術分野】
本発明は固結し難い粉末状セメント分散剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、土木・建築分野では粉末状セメント分散剤がプレミックス製品に添加する分散剤として普及しつつある。当該粉末状セメント分散剤の種類は、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物又はポリカルボン酸塩等が知られている。この中でも、特に低水セメント比でも良好な流動性が得られるポリカルボン酸塩を主成分とする粉末セメント分散剤が多用されてきている。
【0003】
しかし、粉末状セメント分散剤は袋詰して保管した場合に、その保管条件、例えば周辺温度、積載荷重の影響により固結する場合がある。特に、粉末度が高く、また保管開始時における粉粒体の温度が高い程、固結の程度が著しくなる。その結果、使用に際して固結物の解砕又は粉砕等の作業が必要となり、作業効率の低下を招くという問題があった。一方、固結防止方法として、粉体の表面コーティング(特開昭48−96732号公報)やゼオライトを混合する方法(特開昭51−1648号公報)が提案されているが、これらの方法を粉末状セメント分散剤に適用した場合に、表面被覆による分散性能の低下やコスト高等の問題があって実用的ではない。
【0004】
【特許文献1】
特開昭48−96732号公報
【特許文献2】
特開昭51−1648号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は固結し難い粉末状セメント分散剤の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のセメント分散剤に無機物質を添加して後、湿式粉砕して得た粉末状セメント分散剤は固結し難いことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いるセメント分散剤は、以下のモノマー成分からなる共重合体である。
すなわち、A1成分であるオレフィンモノカルボン酸としては、アクリル酸、メタアクリル酸が好ましい。また、オレフィンモノカルボン酸の塩としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩の1種又は2種以上から選ばれる塩が好ましい。
【0008】
A2成分であるアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、モノメトキシポリエチレングリコール、モノエトキシポリエチレングリコール、モノ(イソ)プロポキシポリエチレングリコール等の炭素数1〜3のアルコキシを有するモノアルコキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられるが、中でもオキシエチレン基の繰り返し数が5〜100のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。繰り返し単位が5未満では分散性能が不十分となり、100を超えると高融点の固体となり、取り扱いが困難となる。また、A2成分の(メタ)アリルスルホン酸塩としては、(メタ)アリルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミン等が使用できる。本発明においてA2成分として前記のアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び前記の(メタ)アリルスルホン酸から選ばれる1種又は2種以上が好適である。
【0009】
A3成分である(メタ)アクリル酸アルキルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等が例示できる。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0010】
A成分中のA1成分は40〜85モル%、A2成分は15〜60モル%、A3成分は0〜5モル%が好ましい。これらの範囲外では分散性能が低下する傾向にある。
【0011】
特に分散性能及び回収率の観点から、A1成分としてメタクリル酸又はその塩を55〜75モル%及びA2成分としてメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを25〜45モル%(A1成分とA2成分の合計100モル%)含む水溶性ビニル共重合体が好ましく、なかでもA1成分としてメタクリル酸又はその塩を50〜72モル%、A2成分としてメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを25〜40モル%及び(メタ)アリルスルホン酸塩を0.1〜10モル%(A1成分とA2成分の合計100モル%)含む水溶性ビニル共重合体がより好ましい。
【0012】
また、水溶性ビニル共重合体の数平均分子量は2000〜50000が好ましい。この範囲外では分散性能が低下する傾向がある。なお、本発明において数平均分子量は、GPC法によるプルラン換算値である。
【0013】
本発明で用いる無機物質としては、炭酸カルシウム、石膏、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛又は炭酸マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なお、無機物質の形態は、塊状、粉状、結晶状等いずれも使用でき、特定の形態に限定されない。
【0014】
また、無機物質の添加量は、セメント分散剤(固形分換算)100重量部に対し0.1〜300重量部であり、1〜100重量部が好ましい。無機物質の添加量が0.1重量部未満では固結防止効果が十分でなく、300重量部を超えるとセメント分散剤の含有量が少なくなってセメント分散効果が低下する。また、本発明における湿式粉砕において好適な水量はセメント分散剤の固形分と無機物質の合計100重量部に対し10〜400重量部であり、100〜200重量部がより好ましい。当該水量が10重量部未満でも400重量部を超えても被粉砕性が低下する。
【0015】
本発明で使用できる湿式粉砕機は、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、アジテータミル等が挙げられるが、特にビーズミルが微粉砕性に優れ好適である。また、粉砕によって得られる無機物質の平均粒子径は1.5μm以下が好ましく、1μmがより好ましい。平均粒子径が1.5μmを超えると固結防止効果が低下する。
【0016】
次に、得られた湿式粉砕スラリーの乾燥・粉末化の方法としては、噴霧乾燥器を用いることができる。噴霧乾燥における乾燥条件としては熱風入口温度150〜250℃及び熱風出口温度80〜150℃の温度範囲が好ましい。熱風入口温度が150℃未満では粉末状セメント分散剤の生産効率が低下し、250℃を超えるとセメント分散剤が熱変性を受けてセメント分散性能が低下する。熱風出口温度が80℃未満では粉末の含水率が高くなってブロッキングが発生しやすく、150℃を超えるとセメント分散剤が熱変性を受けて分散性能が低下する。
【0017】
本発明により製造された粉末状分散剤が使用できるセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、高ビーライトポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュ含有セメント又はシリカフューム含有セメントを例示できる。
【0018】
【実施例】
合成例1(水溶性ビニル共重合体a1の合成)
200Lのガラスライニング製の反応容器に水200部を仕込み、攪拌しながら加温して、内温を80℃に保った。メタクリル酸60部とメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の繰り返し数n=23)メタクリレート334部、3−メルカプトプロピオン酸4.7部及び水390部との混合物と20%過硫酸ナトリウム水溶液25部を共に2時間かけて反応容器に滴下した。更に、20%過硫酸ナトリウム水溶液10部を30分かけて滴下し、同温度で1時間熟成させた。次に冷却しながら48%NaOH58部を滴下して反応液を中和した。この反応液は、メタクリル酸を70モル%、メトキシポリエチレングリコール(n=23)メタクリレートを30モル%(合計100モル%)の割合で共重合反応した、数平均分子量23000の水溶性ビニル共重合体を40質量%含有する水溶液であった。
【0019】
合成例2(水溶性ビニル共重合体a2〜a5の合成)
合成例1と同様にして、水溶性ビニル共重合体a2〜a5を合成した。モノマーの種類、反応比率、水溶性ビニル共重合体の数平均分子量、水溶性ビニル共重合体の濃度を表1にまとめた。
【0020】
【表1】
【0021】
湿式粉砕スラリーの調整例
(1)湿式粉砕スラリー S1
重質炭酸カルシウム(平均粒子径D50が25μm、丸尾カルシウム社製)に粉砕助剤として分散剤a1(重質炭酸カルシウムに対して、分散剤の固形分換算で0.08%)と水を添加して固形分濃度70%のスラリーを調整した後、実容積が20Lのビーズミルに粉砕媒体として直径1mmのガラスビーズを容積比で90%充填したビーズミル(ビーズミルLMZ、アシザワ社製)に、当該スラリーを5L/minの流量で導入して、ロータピンの周速度が10m/secで粉砕した。粉砕後、当該スラリーに水を添加して固形分濃度が40質量%の湿式粉砕スラリーS1を調製した。
【0022】
(2)湿式粉砕スラリー S2〜S7
前記S1と同様の方法で、湿式粉砕スラリーS2〜S7を調製した。S1〜S7に含まれるセメント分散剤、無機物質及び粉砕前後の無機物質の平均粒子径を表2に示す。なお、以下に示す全ての平均粒子径は、セイシン企業社製SKレーザーマイクロンサイザーLMS−300を用いて測定した。
【0023】
【表2】
【0024】
乾燥・粉末化
セメント分散剤a1〜a5と湿式粉砕スラリーS1〜S7を表3に従い重量比1:1で混合した混合スラリーを調整した。次に、噴霧乾燥装置として塔径3.2m、高さ7.9mのスプレードライヤを用い、噴霧装置としてディスクアトマイザーを使用して、熱風入口温度を200℃、熱風出口温度を100℃に維持しながら、ディスクアトマイザーの回転速度が24000rpmの条件で、当該混合スラリーを、90kg/hrの流量で噴霧し乾燥させた。S1〜S7を含む混合スラリーから得られた粉末状セメント分散剤をそれぞれP1〜P7として、これらの平均粒径を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
固結試験
粉末状セメント分散剤P1〜P7を恒温・恒湿槽に入れて含水率が2質量%になるよう調湿した。含水率はケット科学社製赤外線水分計FD−600を用いて、サンプル量5g、加熱温度110℃、加熱時間30分の条件で測定した。次に、製品の袋詰状態のモデルとして、チャック式のビニール袋(寸法:7cm×10cm)に粉末状セメント分散剤50gを一杯に充填してチャックを閉じて密封した状態で、恒温乾燥機に入れ70℃で5時間加温した。次に、当該乾燥機から粉末状セメント分散剤を充填させたビニール袋を取り出し、このビニール袋の上に直接金属製のおもり(荷重25g/cm2)を載置して20℃の恒温室内に24時間放置した。24時間経過後、ビニール袋から固結した粉末状セメント分散剤を金属製容器に取り出し、JIS A 1147−201「コンクリートの凝結時間試験方法」で使用される貫入抵抗試験装置を用いて、固結した粉末状セメント分散剤の上面全体に均等に荷重を加えた。そして固結した粉末状セメント分散剤が崩壊した時点の荷重を最大荷重とし、この最大荷重を荷重面積で除した値を固結度とした。この結果を表4に示す。なお、実用上、固結度は2N/cm2以下が好ましく、1N/cm2以下がより好ましい値である。
【0027】
【表4】
【0028】
表4から分かるように、本発明の粉末状セメント分散剤(実施例1〜5)は全て、ナフタレンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩又はメラミンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩を含む粉末状セメント分散剤(比較例1又は2)と比べ固結度が約1/3以下に低下して固結しにくくなっている。
【0029】
【発明の効果】
本発明の粉末状セメント分散剤の製造方法に係る粉末状セメント分散剤は、固結しにくい。
Claims (2)
- 下記のA成分に無機物質を添加し湿式粉砕した後、乾燥・粉末化することを特徴とする粉末状セメント分散剤の製造方法。
A成分:下記のA1成分を40〜85モル%、A2成分を15〜60モル%及びA3成分0〜5モル%(合計100モル%)含み、かつ数平均分子量が2000〜50000の水溶性ビニル共重合体。
A1成分:オレフィンモノカルボン酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上
A2成分:アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及び(メタ)アリルスルホン酸塩から選ばれる1種又は2種以上
A3成分:(メタ)アクリル酸アルキル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上 - 前記無機物質が炭酸カルシウム、石膏、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛又は炭酸マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の粉末状セメント分散剤の製造方法。
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JP2003093745A JP2004299956A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 粉末状セメント分散剤の製造方法 |
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JP2014141354A (ja) * | 2013-01-22 | 2014-08-07 | Nof Corp | プレミックスセメント用粉体状減水剤及びその製造方法 |
JP2016519041A (ja) * | 2013-03-26 | 2016-06-30 | ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se | 素早く懸濁可能な粉末状組成物 |
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2003
- 2003-03-31 JP JP2003093745A patent/JP2004299956A/ja active Pending
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