JP2004299941A - 粗型およびこれを持ったパリソン成形装置 - Google Patents

粗型およびこれを持ったパリソン成形装置 Download PDF

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Abstract

【課題】パリソンと粗型との間の空気溜まりができるのを防止し、最終製品の肉厚の均一性を高められるようにする。
【解決手段】ゴブGを所定の側周形状のパリソンに成形する姿面2を有し、この姿面2の両側に所定幅Bの突合わせ面3を有した粗型1において、パリソンの成形時に姿面2の内側に空気溜まり8ができる空気溜まり形状部6に対応した、突合わせ面3の個所に、空気溜まり形状部6の内側から突合わせ面3の外側に通じる空気逃がし路9を形成したことにより、上記目的を達成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粗型およびこれを持ったパリソン成形装置に関し、詳しくは、ゴブを所定の側周形状のパリソンに成形する姿面を有し、この姿面の両側に所定幅の突合わせ面を有したほぼ半割りの粗型と、この粗型を持ちゴブを所定の底部形状のパリソンに成形する姿面を持ったバッフルと協働してパリソンを成形するパリソン成形装置とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5を参照して従来のプレス・ブロー成形ないしはナロー・ネック・プレス・ブロー成形による製びん工程につき、その概略を説明する。まず、(a)に示すように、口型aとプランジャbがセットされた粗型c内にゴブdが投入される。次いで、(b)に示すように粗型cがバッフルeにより閉じられ、プランジャbが上昇する。これにより、(b)の状態から(c)に示す所定の形状のパリソンfに成形する。
【0003】
パリソンfは口型aによって仕上げ成形されており、(d)に示す反転装置gは半割形状で対をなす粗型cが開いたタイミングで、口型aにより支持したパリソンfを水平軸hまわりに180°反転させて、仕上げ型j側にインバートする。インバート後、半割形状で対をなす仕上げ型jは底型lおよびパリソンfを抱き込んで閉じ、パリソンfの口部を挟み持つ。これによって、反転装置gは開いた口型aを伴い離し粗型cの位置に戻り、粗型cとともに次のパリソンfの成形まで待機する。
【0004】
これによって、口型aを持ち運ばれた(e)に示す仕上げ型jの上に(f)に示すようにブローヘッドmを装着してパリソンf内に空気を吹き込み仕上げ型jおよび底型lの姿面に沿うまで膨らませ、仕上げ成形する。仕上げ成形後、ブローヘッドmが退避すると、(g)に示すように仕上げ型jが開き、底型l上の仕上げ成形後のびんnを移載機構pによって口部を把持して他へ移し、次の仕上げ成形まで待機する。
【0005】
ここで、粗型cの既に知られた一般構造(例えば、特許文献1参照。)は、本発明の実施例を示す図1、図2の粗型1を参照して、ゴブGを所定の側周形状のパリソンに成形する姿面2を有し、この姿面2の両側に所定の幅Bの突合わせ面3を有したほぼ半割りの形状をしている。突合わせ面3の幅Bは姿面2との境界からほぼ一定に設定され、粗型1が本来必要とし、あるいは従来から与えられている肉厚Tに対して十分に小さく、その外側は一段低い段差面4aとなって接合された粗型1間に隙間4を形成している。このような段差面4aにより、粗型1どうしを実質的に突合せ接合する突合わせ面3の幅Bが徒に広幅になり、却って密着しにくかったり、密着のための加工が困難になったりするようなことを回避している。
【0006】
また、特許文献1には、バッフルに従来から形成している粗型の内部に連通した排気孔を利用して、粗型の内部に吸引力を作用させて強制排気することを開示している。従来のような自然排気の場合では排気孔が遊離した離型剤などによりときとして詰まり、粗型内のバッフル側にできる空気溜まりによって冷却むらが生じるといったことがあるが、前記のような強制排気によってそのような問題が解消する。
【0007】
【特許文献1】
特開2002―362929号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者等は、上記のような排気構造の採用にかかわらず、成形するびんの形状によっては、なお空気溜まりによると見られる成形不良が生じることを経験した。成形不良は例えば、最終製品ついていうと、びんの側周裾部および底部の肉厚が周方向に不均一になる。
【0009】
これにつき、本発明者が種々に実験をし、研究を重ねた。その結果、上記の成形不良は主として成形した図5(c)〜(e)に示すパリソンfには、既に、その側周裾部および底部の肉厚に周方向の不均一があり、このパリソンfの側周裾部および底部の肉厚不均一は、パリソンfの側周裾部に外側への膨らみ部f′があり、この膨らみ部f′に対応して粗型1の姿面2に図1に符号6を付して示すような窪み部のあることが関係していると思われた。そこで、粗型1のこのような窪み部に注目してさらに実験をし、検討を重ねたところ、この窪み部と、粗型1内に投入されプランジャ7の加圧を受け始める図1に仮想線で示すゴブGとの間には、既述した従来の自然排気などが損なわれていないにもかかわらず空気溜まり8ができることを知見した。
【0010】
このような空気溜まり8があると、ガラスと粗型1の姿面2との密着性が部分的に悪く、密着しない部分では、ガラスの表面の熱を粗型1によって奪いにくくなって周方向の温度むらが生じ、パリソン成形時の側周裾部および底部の周方向における伸びの不均一、厚さの不均一を招く。一方、粗型1と協働してパリソンを成形するバッフル11は全体が一体の鋳物でガラスの熱を奪いやすく、バッフル11のパリソンの底部を成形する姿面12に接しているゴブGおよびパリソン底部は早期に温度低下して流動性が悪くなり、パリソン底部の仕上げ成形への順応性を低下させる。これらによって、最終成形したびんnの側周裾部および底部の肉厚が不均一になるものと認められる。このような肉厚の不均一はびんの耐衝撃性などに影響する。近時、省資源、省エネルギなどの観点からその生産割合が増加しつつあるいわゆる超軽量びんでは、特に問題となる。前記肉厚の不均一は、例えば、容量500L、重量190gのびんの底コーナ部における周方向の肉厚のばらつきの場合、最大4.95mm、最小2.42mmであった。
【0011】
なお、図5に示した例でのパリソンfはその口部の下部にも膨らみ部f″があって、粗型の姿面にはそれに対応した窪み部がある。しかし、この部分は図1に仮想線で示すゴブGがプランジャ7によるそれ以上に加圧されていくときに、粗型1の姿面2とプランジャ7との間に生じた隙間からの自然排気を伴い順次に埋めていく領域となるので、前記のような空気溜まり8は生じない。
【0012】
しかし、どのような事情によろうが粗型1の姿面2とゴブGや成形途中のパリソンとの間に前記のような周方向に連続した空気溜まり8ができるときは勿論、それが周方向に部分的にできるようなときも含め、上記の場合と同様に問題である。また、このような問題は主としてプレス・ブロー成形ないしはナロー・ネック・プレス・ブロー成形の場合に生じやすいが、ブロー・ブロー成形によって生じる場合でも同様に扱い対応する。
【0013】
本発明の目的は、以上のような新たな知見に基づき、ゴブや成形途中のパリソンとの間の空気溜まりができるのを防止し、最終製品の肉厚の均一性を高められる粗型とそれを用いたパリソン成形装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の粗型は、ゴブを所定の側周形状のパリソンに成形する姿面を有し、この姿面の両側に所定幅の突合わせ面を有したほぼ半割りの粗型において、前記パリソンの成形時に前記姿面の内側に空気溜まりができる空気溜まり形状部に対応した、前記突合わせ面の個所に、前記空気溜まり形状部内側から前記突合わせ面の外側に通じた空気逃がし路を形成したことを特徴としている。
【0015】
このような構成では、パリソンを所定の側周形状に成形する粗型の姿面が、ゴブや成形途中のパリソンとの間に空気溜まりができる空気溜まり形状部を有していて、パリソンの成形時に空気溜まり形状部内側に空気が溜まろうとしても、この空気はプランジャによるゴブないしは成形途中のパリソンの空気溜まり形状部への押し付けに従い、空気溜まり形状部から突合わせ面に形成した突合わせ面外側への空気逃がし路を通じて押し出し自然排出させる。これにより、ゴブないしは成形途中のパリソンの空気溜まり形状部への密着性を損なわずよく密着させることができ、ゴブないしは成形途中のパリソンの熱が粗型の姿面全域によってむらなく奪われるようになる。同時に、冷却の速い底部との温度差を抑えられる。従って、従来、前記空気溜まり形状部が原因してパリソンに生じていた周方向および軸線方向の温度むら、周方向の厚さむら、それらによる仕上げ成形後のびんの周方向の肉厚不均一を軽減することができる。また、空気逃がし路は部分的であるので、粗型の耐圧強度を特に低下させるような弊害はない。
【0016】
空気逃がし路が、突合わせ面の外側から内側所定位置まで、その高さを部分的に低くし、突合わせ面の姿面からの幅を部分的に狭くするように形成したアンダーカット部と、このアンダーカット部から姿面に至るように形成した、アンダーカット部の粗型軸線方向寸法よりも幅が狭い溝部とからなる、さらなる構成では、
空気逃がし路が、アンダーカット部と、その粗型軸線方向寸法よりも幅が狭い溝部と、の組み合わせであることによって、パリソンの側周形状を粗型の姿面により成形する際、パリソンの胴部に少なくとも仕上げ型による仕上げ成形時に矯正されないほどの異形部を形成させない程度に細い溝部として、しかも、アンダーカット部が突合わせ面の姿面との間の幅を狭めて溝部の長さを短くしている分だけ、細い溝部を通じた空気の逃がし作用を高めることができる。
【0017】
アンダーカット部が、前記空気溜まり形状部にほぼ見合う粗型軸線方向の領域に形成し、溝部は1つのアンダーカット部に対して複数ある、さらなる構成では、
アンダーカット部が空気溜まり形状部にほぼ見合う粗型軸線方向の領域にあって、粗型の突合わせ面側部分の肉厚を小さくして空気溜まり形状部全域に溜まろうとする空気を複数に分散した溝部によって、前記細さを確保した上で逃がしやすくすることができる。
【0018】
アンダーカット部による突合わせ面の幅が、ほぼ均一ないしは粗型軸線方向中央部から両側に漸増する、さらなる構成では、
アンダーカット部による突合わせ面の幅がほぼ均一であると、これによる空気溜まり形状部での排気の効果がその粗型軸線方向の領域において、ほぼ均等となりむらのない排気作用を発揮することができるし、突合わせ面の幅が粗型軸線方向中央部から両側に漸増していると、アンダーカット部により粗型の突合わせ面側部分の肉厚が小さくなっていても、この部分に内側から働く成形圧を受ける面剛性を高められるので、耐久性を高められる。
【0019】
アンダーカット部による突合わせ面の幅が1〜3mm程度である、さらなる構成では、
アンダーカット部による突合わせ面の幅の上限値を3mm程度以上として高い耐久性を図りながら、溝部の長さの下限値を1mm程度と短くすることにより空気溜まり形状部の排気を十分に促進して、空気溜まり形状部の内側に溜まろうとする空気を十分に逃がすことができる。
【0020】
溝部の深さが0.01〜0.2mm程度と小さいことにより、パリソン成形への影響を確実に防止しながら、前記排気を図ることができる。
【0021】
空気溜まり形状部が、パリソンの側周裾部に対応した位置の窪み部である、さらなる構成では、
このような粗型の姿面におけるパリソンの側周裾部に対応した位置の窪み部は、既述したようにパリソン成形時空気溜まり形状部となりやすく、特に問題であるが、このような窪み部に前記した各場合の空気逃がし路があることによって、そこに溜まろうとする空気を十分に逃がしてゴブおよび成形途中のパリソンを姿面によく密着させ、粗型の姿面全域で熱がほぼ均等に奪われるようにするとともに、隣接した位置で速く冷却される底部との温度差を小さくすることができ、空気溜まり形状部が原因したパリソンの裾部での肉厚の不均一および隣接した底部との温度差を軽減して、仕上げ成形後のびんの裾部や底部の肉厚が不均一になるのを軽減することができる。
【0022】
本発明のパリソン成形装置は、上記した各場合の粗型一対か、上記した各場合の粗型と空気逃がし路を持たない粗型との対か、を備え、ゴブを所定の底部形状のパリソンに成形する姿面を持ったバッフルとの協働でゴブを所定の形状のパリソンに成形するパリソン成形装置において、バッフルの姿面部の肉厚を3〜9mmとしたことを1つの特徴としている。
【0023】
このような構成では、上記の組の粗型一対によって、これを構成する粗型の突合わせ面にて前記各場合の空気逃がし路による働きを得ながら、バッフルと協働して所定形状のパリソンを成形することができ、その際、バッフルにおける姿面部の肉厚の上限を9mm程度と抑えて、どのように大きな径のびんを成形する場合でも成形圧に対する面剛性を確保しながら、姿面部の肉厚の下限を3mm程度と小さくして熱容量を抑え、バッフルの姿面にゴブが接触したときに昇温しやすく、パリソンの底部が裾部側に比べて速く冷却されることによる流動性の低下を防止するのと同時に、パリソンの側周裾部および底部間の温度差を軽減するので、パリソンの裾部および底部における周方向、軸線方向の温度むら、周方向の厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの周方向の肉厚不均一をより一層軽減することができる。
【0024】
本発明のパリソン成形装置は、また、上記各場合の粗型一対か、上記各場合の粗型と空気逃がし路を持たない粗型との対か、を備え、ゴブを所定の底部形状のパリソンに成形する姿面を持ったバッフルとの協働でゴブを所定の形状のパリソンに成形するパリソン成形装置において、バッフルの姿面部の壁をそれ以外の部分よりも熱伝導率の低い別の材料にて形成したことを他の特徴としている。
【0025】
このような構成では、上記の組の粗型一対によって、これを構成する粗型の突合わせ面にて前記各場合の空気逃がし路による働きを得ながら、バッフルと協働して所定形状のパリソンを成形することができ、その際、バッフルにおける姿面部が熱伝導率の低い材料よりなる別部材であることにより、自由な厚さ設定によって成形圧に対する面剛性を確保しながら、設定した厚さの如何にかかわらず、熱伝導性が低いことによりバッフルの姿面にゴブが接触したとき熱を奪い難くして、パリソンの底部が裾部側に比べて速く冷却されて流動性が悪くなるのを防止するのと同時に、パリソンの側周裾部と低部間の温度差を軽減するので、パリソンの裾部および底部における周方向、軸線方向の温度むら、周方向の厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの肉厚不均一をより一層軽減することができる。
【0026】
前記別部材における姿面の輪郭と、別部材の姿面から軸線方向に外れた部分の横断面形状とがほぼ相似形である、さらなる構成では、
熱伝導性の低い材料からなる別部材が、それが形成している姿面にゴブが接しても熱を奪いにくくするのに、別部材の姿面から軸線方向に外れた各部の横断面形状が姿面の輪郭に相似形であることにより、姿面から別部材を通じバッフル全体に及ぶ熱伝導経路が周方向にほぼ均等となるので、姿面部が別部材であることによってパリソンの底部に周方向の温度むらが生じてパリソンおよび仕上げ成形後のびんの裾部および底部の肉厚が不均一になるのを防止することができる。
【0027】
姿面部の肉厚が、中央部から外周に向かって漸増する、さらなる構成では、 成形圧に対する面剛性が高められ、その分だけ肉厚を小さくして必要な耐久性を確保することができる。
【0028】
前記各場合のパリソン成形装置において、バッフルの姿面部の外側に空洞を設けた、さらなる構成では、
空洞はそこに空気を閉じ込めて断熱空間として作用し、バッフルの姿面部からバッフルの下部へと熱伝導して熱が逃げるのを抑えて、その分だけパリソンの底部が裾部側に比べて速く冷却されて流動性が悪くなるのを防止するのと同時に、パリソンの側周裾部および底部間の温度差を軽減するので、パリソンの裾部および底部における周方向、軸線方向の温度むら、周方向の厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの肉厚不均一をさらに回避しやすくすることができる。
【0029】
バッフルが、別部材とそれ以外の部分との嵌め合わせ境界部に姿面内側から空洞への排気を図る排気路を形成した、さらなる構成では、
バッフルにおける別部材とそれ以外の部分との嵌め合わせ境界部に設けた排気路が、ゴブとバッフルの姿面との間の空気の排気を促して姿面のゴブの接触による昇温を阻害しない上に、空気溜まり形状部の内側に溜まろうとする空気の排気にも役立ち、ゴブの空気溜まり形状部への接触を早められるので、パリソンの底部と側周裾部との温度差を低減することができる。
【0030】
空洞は外部への排気路を有している、さらなる構成では、
バッフルの姿面の内側から外側の空洞に排気する際、空洞が外部への排気路を有して排気が図れることにより、空洞内がバッフルの姿面内側からの排気が原因して昇圧し排気を邪魔したり、空洞側からバッフルの姿面内側に空気を逆流させるような不都合を防止することができる。しかも、空洞からのこのような排気は、余剰空気を自然流出させて逃がせばよいだけで、細く、小さな通路があれば足り、空洞内に篭る熱を積極的に持ち出し、姿面部が早期に冷却されるような原因にはならない。
【0031】
バッフルが、その姿面部を天井壁として下方に延びる穴を有し、この穴の途中に隔壁を後付けして空洞を形成している、さらなる構成では、
前記のような働きをする空洞を、バッフルに形成した穴と、この穴の途中に後付けした隔壁とで容易に安価に形成することができ、隔壁の材質や厚みなどによって空洞による断熱性の設計自由度が高まる。
【0032】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ単独で、あるいは可能な限りにおいて種々な組合せで複合して採用することができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明に係る粗型およびそれを用いたパリソン成形装置の実施例について図1〜図4を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明および図示は、本発明の具体例であって、特許請求の範囲における記載の内容を限定するものではない。
【0034】
本実施例の既述した粗型1は、図1〜図3の例に示すように、ゴブGを所定の側周形状のパリソンに成形する姿面2を有し、この姿面2の両側に所定幅Bの突合わせ面3を有したほぼ半割りの形状、より具体的にはほぼ筒体の半割形状をしている。特に、このような粗型1での、パリソンの成形時に姿面2の内側に従来図1に示すような空気溜まり8ができる空気溜まり形状部6に対し、空気溜まり形状部6の内側から突合わせ面3の外側、具体的には既述した突合わせ面3の外側に2つの粗型1が対をなして作る既述した隙間4に通じる図1、図2、図3に示すような空気逃がし路9を、前記突合わせ面3における前記空気溜まり形状部6に対応した個所に形成している。
【0035】
これにより、パリソンを所定の側周形状に成形する粗型1の姿面2が、ゴブGや成形途中のパリソンとの間に空気溜まり8ができる空気溜まり形状部6を有していると、通常は、パリソンの成形時に空気溜まり形状部6の内側に空気が溜まろうとする。しかし、本実施例の場合この空気は、プランジャ7によるゴブGないしは成形途中のパリソンの空気溜まり形状部6への押し付けに伴い、この空気溜まり形状部6から突合わせ面3に形成した突合わせ面3の外側への空気逃がし路9を通じ押し出し、自然排出させる。従って、ゴブGないしは成形途中のパリソンの空気溜まり形状部6への密着性を損なわず、ゴブGないしは成形途中のパリソンの熱が粗型1の姿面2全域によってむらなく奪われるようにする。また、同時に、冷却の速い底部との温度差を抑えられる。これによって、従来生じていた前記空気溜まり形状部6によるパリソンの周方向、軸線方向における温度むら、周方向の厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの肉厚不均一を軽減することができる。また、空気逃がし路9は部分的であるので、粗型1の耐圧強度を特に低下させるような弊害はない。
【0036】
空気逃がし路9は、突合わせ面3の外側から内側所定位置まで、その高さを部分的に低くし、突合わせ面3の姿面2からの幅Bを幅B1と部分的に狭くするように形成したアンダーカット部9aと、このアンダーカット部9aから姿面2に至るように形成した、アンダーカット部9aの粗型軸線方向寸法よりも幅が狭い溝部9bとで形成している。このように、空気逃がし路9が、アンダーカット部9aと、その粗型軸線方向寸法よりも幅が狭い溝部9bとの組み合わせであることによって、パリソンの側周形状を粗型1の姿面2により成形する際、パリソンの胴部に少なくとも仕上げ型による仕上げ成形時に矯正されないほどの異形部を形成させない程度の細い溝部9bとして、しかも、アンダーカット部9aが突合わせ面3の姿面2との間の幅B1を狭めて溝部9bの長さをB1と短くしている分だけ、細い溝部9bを通じた空気の逃がし作用を高める。
【0037】
アンダーカット部9aは、また、前記空気溜まり形状部6にほぼ見合う粗型軸線方向の領域に形成し、溝部9bは1つのアンダーカット部9aに対して複数ある。図示例では2つある。このように、アンダーカット部9aが空気溜まり形状部6にほぼ見合う粗型軸線方向の領域にあって、それによる粗型1の突合わせ面部側の肉厚を小さくしているので、粗型1の空気溜まり形状部6全域の排気を促しやすいし、その全域に溜まろうとする空気を複数に分散した溝部9bによって、その細さを確保した上で逃がしやすくすることができる。
【0038】
アンダーカット部9aによる突合わせ面3の幅B1は、ほぼ均一か、図示するように粗型軸線方向中央部から両側に漸増する。アンダーカット部9aによる突合わせ面3の幅B1がほぼ均一であると、これによる空気溜まり形状部6での排気の効果がその粗型軸線方向の領域において、ほぼ均等となりむらのない排気作用を発揮することができる。また、突合わせ面3の幅B1が粗型軸線方向中央部から両側に漸増していると、アンダーカット部9aにより肉厚が小さくなっていても、この部分の突合わせ面部側に内側から働く成形圧を受ける面剛性を高めるので、耐久性を高められる。
【0039】
アンダーカット部9aによる突合わせ面3の幅B1が1〜3mm程度で、アンダーカット部9aによる突合わせ面3の幅の上限値を3mm程度以上として高い耐成形圧性、耐久性を図りながら、溝部9bの長さ(=幅B1)の下限値を1mm程度と短くすることにより空気溜まり形状部6の排気を十分に促進して、空気溜まり形状部6の内側に溜まろうとする空気を十分に逃がすことができる。また、溝部9bの深さは0.01〜0.2mm程度と小さくする。これにより、パリソン成形への影響を確実に防止しながら、前記排気を図ることができる。より好ましくは0.05〜0.1mm程度とする。また、溝部9bの幅はびんによって異なるが4〜6mm程度として前記幅設定での排気が十分となる。
【0040】
ここに、アンダーカット部9aの深さは、当然に溝部9bの深さよりも大きい。また、アンダーカット部9aの軸線方向の長さはびんによって異なるが15mm前後程度である。
【0041】
図示する場合空気溜まり形状部6は、姿面2のパリソンの底部形成側、つまりパリソンの側周裾部に位置した周方向の窪み部である。このような粗型1の姿面2におけるパリソンの側周裾部にある窪み部は、既述したようにパリソン成形時空気溜まり形状部6となりやすく、特に問題である。しかし、このような空気溜まり形状部6である窪み部に前記した各場合の空気逃がし路9があることによって、そこに溜まろうとする空気を十分に逃がしてゴブおよび成形途中のパリソンをよく密着させ、粗型1の姿面2全域で熱がほぼ均等に奪われるようにするとともに、隣接した位置で速く冷却される底部との温度差を小さくすることができ、空気溜まり形状部6が原因したパリソンの側周裾部での周方向での肉厚の不均一および隣接した底部との温度差を軽減して、仕上げ成形後のびんの裾部や底部の肉厚が不均一になるのを軽減することができる。
【0042】
本実施例の粗型1は、同じものどうし一対か、本実施例の粗型1と空気逃がし路9を持たない図示しない粗型との一対かが、ゴブを所定の底部形状のパリソンに成形する図1に示すような姿面12を持ったバッフル11との協働でゴブを所定の形状のパリソンに成形する図1に示すようなパリソン成形装置を構成する。このようなパリソン成形装置において、バッフル11の姿面12を形成している姿面部12aの肉厚Tを3〜9mmとしている。このように、少なくとも一方が空気逃がし路9を持った粗型1を含む粗型一対によって、それらの突合わせ面3にて前記各場合の空気逃がし路9による働きを得ながら、バッフル11と協働して所定形状のパリソンを成形することができる。その際、バッフル11における姿面部12aの肉厚Tbの上限を9mm程度と抑えて、どのように大きな径のびんを成形する場合でも成形圧に対する面剛性を確保しながら、姿面部12aの肉厚Tの下限を3mm程度と小さくして熱容量を抑え、バッフル11の姿面12にゴブが接触したときに昇温しやすく、パリソンの底部が側周の裾部側に比べて速く冷却されることによる双方間の温度差を軽減するので、そのような温度差に起因したパリソンの裾部および底部における周方向、軸線方向の温度むら、周方向の厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの肉厚不均一をより一層軽減することができる。
【0043】
また、図1に示すように姿面部12aの肉厚Tが、中央部から外周に向かって漸増するようにしてある。これにより、成形圧に対する面剛性が高められ、その分だけ肉厚Tを小さくして必要な耐久性を確保することができる。
【0044】
バッフル11における姿面部12aの厚みTの最小限界はその直径との関係で決まるが、500ml〜900mlの通常びんで、姿面部12aの直径はおよそ29mm〜40mm程度である。2000mlクラスのびんで姿面部12aの直径は51.5mmの実例があり、これが最大のものと思われる。これらに対応した姿面部12aの厚みが既述した3mm〜9mmであり、3mmを下回ると強度が弱く、9mmを上まわる程の強度は不要である。そこで、前記のような通常びんでは5〜7mm程度とするのが好適である。
【0045】
図4に示す例のパリソン成形装置は、バッフル11のみを示しているが、バッフル11の姿面部12aの壁をそれ以外の部分よりも熱伝導率の低い別の材料よりなる別部材13にて形成している。このように、バッフル11における姿面部12aが熱伝導率の低い材料よりなる別部材13であることにより、自由な厚さ設定によって成形圧に対する面剛性を確保しながら、設定した厚さTの如何にかかわらず、バッフル11の姿面にゴブが接触したときに熱を奪い難くして、パリソンの底部が裾部側に比べて速く冷却されるのを防止するので、パリソンの側周裾部および底部における周方向、軸線方向の温度むら、厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの肉厚不均一を回避することができる。図示する例では粗型1およびバッフル11が鋳鉄であるのに対し、姿面部12aはステンレス鋼製としてある。しかし、これに限られることはない。
【0046】
また、この別部材13における姿面12の輪郭と、別部材13の姿面12から軸線方向に外れた部分の横断面形状とがほぼ相似形であるようにしている。このような熱伝導性の低い材料からなる別部材13が、それが形成している姿面12にゴブが接しても熱を奪いにくくするのに、別部材13の姿面12から軸線方向に外れた各部の横断面形状が姿面12の輪郭に相似形であることにより、姿面12から別部材13を通じバッフル11全体に及ぶ熱伝導経路が周方向にほぼ均等となる。これにより、姿面部12aが別部材13であることによってパリソンの底部に周方向の温度むらが生じてパリソンおよび仕上げ成形後のびんの裾部および底部の肉厚が不均一になるのを防止することができる。
【0047】
なお、図示する例では、別部材13はバッフル11の姿面12の壁に形成した貫通孔18に嵌め合せて設けてあり、バッフル11の姿面12の外周部を形成していないが、その全体を形成するようにしてもよいのは勿論である。前記のように嵌め合わせた別部材13はバッフル11の外周側から打ち込んだロールピン19によって抜け止めするのに併せ、別部材13の下面とバッフル11の貫通孔18の内周面との間の境界における溶接部21によって一体に接合している。別部材13と貫通孔18との嵌め合わせは相互間に設けた段差部22によって軸線方向の位置合わせをするようにしてある。
【0048】
さらに、バッフル11にはその姿面部12aの外側に空洞14を設けてある。このような空洞14は、そこに空気を閉じ込めて断熱空間として作用し、バッフル11の姿面部12aからバッフル11の下部へと熱伝導して熱が逃げるのを抑えるので、その分だけパリソンの底部が裾部側に比べて速く冷却されるのを防止することができ、パリソンの裾部および底部における周方向、軸線方向の温度むら、周方向の厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの肉厚不均一をさらに回避しやすくすることができる。
【0049】
空洞14はどのように設けられてもよい。しかし、図示する例では、バッフル11にその姿面部12aを天井壁として下方に延びる前記貫通孔18の延長としての穴16と、この穴16の途中に後付けした隔壁17とで形成している。このようにすると、バッフル11に形成した穴16と、この穴16の途中に後付けした隔壁17とで空洞14を容易に安価に形成することができ、隔壁17の材質や厚みなどによって空洞14による断熱性の設計自由度が高まる。また、隔壁17は穴16の途中に設けた上向きの段差部24に当てがって位置決めし、その上の溝25に弾性的に嵌め合わせたC型リング26によって抜け止めしてある。
【0050】
さらに、バッフル11には図4(a)、(b)に示すように、別部材13とそれ以外の部分、つまりバッフル本体31との嵌め合わせ境界部に姿面12の内側から空洞14への排気を図る排気路32を形成してある。このようなバッフル11における別部材13とそれ以外のバッフル本体31の部分との嵌め合わせ境界部に設けた排気路32は、ゴブGとバッフル11の姿面12との間の空気の排気を促して姿面12のゴブの接触による昇温を阻害しない上に、空気溜まり形状部6の内側に溜まろうとする空気の排気にも役立ち、ゴブGの空気溜まり形状部6への接触を早められ、パリソンの底部と側周裾部との温度差を低減することができる。
【0051】
また空洞14は図4(a)に示すように、外部への排気路33を有している。これにより、バッフル11の姿面12の内側から外側の空洞14に排気路32を通じて排気する際、空洞14が外部への排気路33を有して排気が図れることにより、空洞14内がバッフル11の姿面12内側からの排気が原因して昇圧し排気を邪魔したり、空洞14側からバッフル11の姿面12の内側に空気を逆流させるような不都合を防止することができる。しかも、空洞14からのこのような排気は、余剰空気を自然流出させて逃がせばよいだけで、細く、小さな通路があれば足り、空洞14内に篭る熱を積極的に持ち出し、姿面部12aが早期に冷却されるような原因にはならない。
【0052】
具体的には、別部材13とバッフル本体31との嵌め合わせ境界部は、バッフル本体31に有した前記貫通孔18の内周と別部材13の外周との境界であり、別部材13がロールピン19によって周方向の4箇所をバッフル本体31にピン止めされている箇所を避けた、別な4箇所に前記排気路32を形成している。これら各排気路32は、別部材13の前記貫通孔18と密嵌合する大径部13aの外周に背面側から形成した軸線方向に2段の大小切り欠き34と、前記大径部13aの姿面12側に連続してこの姿面12を持ち貫通孔18との間に僅かな隙間を形成する小径部13bとで、貫通孔18の内周との間に軸線方向に連続した通路として形成してある。ここで、前記溶接部21は排気路32を通じた排気を損なわない位置または範囲に設けたスポット溶接部としてある。
【0053】
また、空洞14の外部への排気路33は、図4(a)に示すように、前記隔壁17の中央部に設けるなどした単なる孔としてある。このような孔の数や位置は自由に設定することができる。また、排気路32、33はどのように形成されてもよい。
【0054】
本発明者の実験によれば、容量500L、重量190gのびんの底コーナ部における周方向の肉厚のばらつきは、最大3.61mm、最小2.30mmであり、肉厚の不均一が大きく改善された。また、粗型1とバッフル11との境界線がびんに残るいわゆるバッフルマークの歪みが小さく円形度が高まった。これに関連して、びんの底部に早期冷却に起因して従来生じていたいわゆる皺筋がほとんどなく、かつ、あっても極く短いものとなった。このような皺筋も太く長くなると不良品となるので問題であったのが解消した。
【0055】
【発明の効果】
本発明の粗型によれば、パリソンを所定の側周形状に成形する粗型の姿面が、ゴブや成形途中のパリソンとの間に空気溜まりができる空気溜まり形状部を有していて、パリソンの成形時に空気溜まり形状部内側に空気が溜まろうとしても、この空気はプランジャによるゴブないしは成形途中のパリソンの空気溜まり形状部への押し付けに従い、空気溜まり形状部から突合わせ面に形成した突合わせ面外側への空気逃がし路を通じて押し出し自然排出させる。これにより、ゴブないしは成形途中のパリソンの空気溜まり形状部への密着性を損なわずよく密着させることができ、ゴブないしは成形途中のパリソンの熱が粗型の姿面全域によってむらなく奪われるようになる。同時に、冷却の速い底部との温度差を抑えられる。従って、従来、前記空気溜まり形状部が原因してパリソンに生じていた周方向および軸線方向の温度むら、周方向の厚さむら、それらによる仕上げ成形後のびんの周方向の肉厚不均一を軽減することができる。また、空気逃がし路は部分的であるので、粗型の耐圧強度を特に低下させるような弊害はない。
【0056】
空気逃がし路が、突合わせ面の外側から内側所定位置まで、その高さを部分的に低くし、突合わせ面の姿面からの幅を部分的に狭くするように形成したアンダーカット部と、このアンダーカット部から姿面に至るように形成した、アンダーカット部の粗型軸線方向寸法よりも幅が狭い溝部とからなる、さらなる構成によれば、
空気逃がし路が、アンダーカット部と、その粗型軸線方向寸法よりも幅が狭い溝部と、の組み合わせであることによって、パリソンの側周形状を粗型の姿面により成形する際、パリソンの胴部に少なくとも仕上げ型による仕上げ成形時に矯正されないほどの異形部を形成させない程度に細い溝部として、しかも、アンダーカット部が突合わせ面の姿面との間の幅を狭めて溝部の長さを短くしている分だけ、細い溝部を通じた空気の逃がし作用を高めることができる。
【0057】
アンダーカット部が、前記空気溜まり形状部にほぼ見合う粗型軸線方向の領域に形成し、溝部は1つのアンダーカット部に対して複数ある、さらなる構成によれば、
アンダーカット部が空気溜まり形状部にほぼ見合う粗型軸線方向の領域にあって、粗型の突合わせ面側部分の肉厚を小さくして空気溜まり形状部全域に溜まろうとする空気を複数に分散した溝部によって、前記細さを確保した上で逃がしやすくすることができる。
【0058】
アンダーカット部による突合わせ面の幅が、ほぼ均一ないしは粗型軸線方向中央部から両側に漸増する、さらなる構成によれば、
アンダーカット部による突合わせ面の幅がほぼ均一であると、これによる空気溜まり形状部での排気の効果がその粗型軸線方向の領域において、ほぼ均等となりむらのない排気作用を発揮することができるし、突合わせ面の幅が粗型軸線方向中央部から両側に漸増していると、アンダーカット部により粗型の突合わせ面側部分の肉厚が小さくなっていても、この部分に内側から働く成形圧を受ける面剛性を高められるので、耐久性を高められる。
【0059】
アンダーカット部による突合わせ面の幅が1〜3mm程度である、さらなる構成によれば、
アンダーカット部による突合わせ面の幅の上限値を3mm程度以上として高い耐久性を図りながら、溝部の長さの下限値を1mm程度と短くすることにより空気溜まり形状部の排気を十分に促進して、空気溜まり形状部の内側に溜まろうとする空気を十分に逃がすことができる。
【0060】
溝部の深さが0.01〜0.2mm程度と小さいことにより、パリソン成形への影響を確実に防止しながら、前記排気を図ることができる。
【0061】
空気溜まり形状部が、パリソンの側周裾部に対応した位置の窪み部である、さらなる構成によれば、
このような粗型の姿面におけるパリソンの側周裾部に対応した位置の窪み部は、既述したようにパリソン成形時空気溜まり形状部となりやすく、特に問題であるが、このような窪み部に前記した各場合の空気逃がし路があることによって、そこに溜まろうとする空気を十分に逃がしてゴブおよび成形途中のパリソンを姿面によく密着させ、粗型の姿面全域で熱がほぼ均等に奪われるようにするとともに、隣接した位置で速く冷却される底部との温度差を小さくすることができ、空気溜まり形状部が原因したパリソンの裾部での肉厚の不均一および隣接した底部との温度差を軽減して、仕上げ成形後のびんの裾部や底部の肉厚が不均一になるのを軽減することができる。
【0062】
本発明の1つの特徴のパリソン成形装置によれば、上記の組の粗型一対によって、これを構成する粗型の突合わせ面にて前記各場合の空気逃がし路による働きを得ながら、バッフルと協働して所定形状のパリソンを成形することができ、その際、バッフルにおける姿面部の肉厚の上限を9mm程度と抑えて、どのように大きな径のびんを成形する場合でも成形圧に対する面剛性を確保しながら、姿面部の肉厚の下限を3mm程度と小さくして熱容量を抑え、バッフルの姿面にゴブが接触したときに昇温しやすく、パリソンの底部が裾部側に比べて速く冷却されることによる流動性の低下を防止するのと同時に、パリソンの側周裾部および底部間の温度差を軽減するので、パリソンの裾部および底部における周方向、軸線方向の温度むら、周方向の厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの周方向の肉厚不均一をより一層軽減することができる。
【0063】
本発明の他の特徴のパリソン成形装置によれば、上記の組の粗型一対によって、これを構成する粗型の突合わせ面にて前記各場合の空気逃がし路による働きを得ながら、バッフルと協働して所定形状のパリソンを成形することができ、その際、バッフルにおける姿面部が熱伝導率の低い材料よりなる別部材であることにより、自由な厚さ設定によって成形圧に対する面剛性を確保しながら、設定した厚さの如何にかかわらず、熱伝導性が低いことによりバッフルの姿面にゴブが接触したとき熱を奪い難くして、パリソンの底部が裾部側に比べて速く冷却されて流動性が悪くなるのを防止するのと同時に、パリソンの側周裾部と低部間の温度差を軽減するので、パリソンの裾部および底部における周方向、軸線方向の温度むら、周方向の厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの肉厚不均一をより一層軽減することができる。
【0064】
前記別部材における姿面の輪郭と、別部材の姿面から軸線方向に外れた部分の横断面形状とがほぼ相似形である、さらなる構成によれば、
熱伝導性の低い材料からなる別部材が、それが形成している姿面にゴブが接しても熱を奪いにくくするのに、別部材の姿面から軸線方向に外れた各部の横断面形状が姿面の輪郭に相似形であることにより、姿面から別部材を通じバッフル全体に及ぶ熱伝導経路が周方向にほぼ均等となるので、姿面部が別部材であることによってパリソンの底部に周方向の温度むらが生じてパリソンおよび仕上げ成形後のびんの裾部および底部の肉厚が不均一になるのを防止することができる。
【0065】
姿面部の肉厚が、中央部から外周に向かって漸増する、さらなる構成によれば、
成形圧に対する面剛性が高められ、その分だけ肉厚を小さくして必要な耐久性を確保することができる。
【0066】
前記各場合のパリソン成形装置において、バッフルの姿面部の外側に空洞を設けた、さらなる構成によれば、
空洞はそこに空気を閉じ込めて断熱空間として作用し、バッフルの姿面部からバッフルの下部へと熱伝導して熱が逃げるのを抑えて、その分だけパリソンの底部が裾部側に比べて速く冷却されて流動性が悪くなるのを防止するのと同時に、パリソンの側周裾部および底部間の温度差を軽減するので、パリソンの裾部および底部における周方向、軸線方向の温度むら、周方向の厚さむらと、それらによる仕上げ成形後のびんの肉厚不均一をさらに回避しやすくすることができる。
【0067】
バッフルが、別部材とそれ以外の部分との嵌め合わせ境界部に姿面内側から空洞への排気を図る排気路を形成した、さらなる構成によれば、
バッフルにおける別部材とそれ以外の部分との嵌め合わせ境界部に設けた排気路が、ゴブとバッフルの姿面との間の空気の排気を促して姿面のゴブの接触による昇温を阻害しない上に、空気溜まり形状部の内側に溜まろうとする空気の排気にも役立ち、ゴブの空気溜まり形状部への接触を早められるので、パリソンの底部と側周裾部との温度差を低減することができる。
【0068】
空洞は外部への排気路を有している、さらなる構成によれば、
バッフルの姿面の内側から外側の空洞に排気する際、空洞が外部への排気路を有して排気が図れることにより、空洞内がバッフルの姿面内側からの排気が原因して昇圧し排気を邪魔したり、空洞側からバッフルの姿面内側に空気を逆流させるような不都合を防止することができる。しかも、空洞からのこのような排気は、余剰空気を自然流出させて逃がせばよいだけで、細く、小さな通路があれば足り、空洞内に篭る熱を積極的に持ち出し、姿面部が早期に冷却されるような原因にはならない。
【0069】
バッフルが、その姿面部を天井壁として下方に延びる穴を有し、この穴の途中に隔壁を後付けして空洞を形成している、さらなる構成によれば、
前記のような働きをする空洞を、バッフルに形成した穴と、この穴の途中に後付けした隔壁とで容易に安価に形成することができ、隔壁の材質や厚みなどによって空洞による断熱性の設計自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る粗型およびこれを持ったパリソン成形装置の1つの実施例を示す一部の断面図である。
【図2】図1の装置の平面図である。
【図3】図1に示す粗型の主要部の断面図である。
【図4】本発明の別のパリソン成形装置におけるバッフルを示し、その(a)は全体の断面図、その(b)は別部材による姿面部の斜視図である。
【図5】従来の製びん工程を(a)〜(g)に分けて示す説明図である。
【符号の説明】
G ゴブ
1 粗型
2、12 姿面
3 突合わせ面
4 隙間
4a 段差面
6 空気溜まり形状部
7 プランジャ
8 空気溜まり
9 空気逃がし路
9a アンダーカット部
9b 溝部
11 バッフル
12a 姿面部
13 別部材
14 空洞
16 穴
17 隔壁
32、33 排気路

Claims (15)

  1. ゴブを所定の側周形状のパリソンに成形する姿面を有し、この姿面の両側に所定幅の突合わせ面を有したほぼ半割りの粗型において、
    前記パリソンの成形時に前記姿面の内側に空気溜まりができる空気溜まり形状部に対応した、前記突合わせ面の個所に、前記空気溜まり形状部内側から前記突合わせ面の外側に通じる空気逃がし路を形成したことを特徴とする粗型。
  2. 空気逃がし路は、突合わせ面の外側から内側所定位置まで、その高さを部分的に低くし、突合わせ面の姿面からの幅を部分的に狭くするように形成したアンダーカット部と、このアンダーカット部から姿面に至るように形成した、アンダーカット部の粗型軸線方向寸法よりも幅が狭い溝部とからなる請求項1に記載の粗型。
  3. アンダーカット部は、前記空気溜まり形状部にほぼ見合う粗型軸線方向の領域に形成し、溝部は1つのアンダーカット部に対して複数ある請求項2に記載の粗型。
  4. アンダーカット部による突合わせ面の幅は、ほぼ均等ないしは粗型軸線方向中央部から両側に漸増する請求項1〜3のいずれか1項に記載の粗型。
  5. アンダーカット部による突合わせ面の幅は1〜3mm程度である請求項4に記載の粗型。
  6. 溝部の深さは0.01〜0.2mm程度である請求項2〜5のいずれか1項に記載の粗型。
  7. 空気溜まり形状部は、パリソンの側周裾部に対応した位置の窪み部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の粗型。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の粗型一対か、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粗型と空気逃がし路を持たない粗型との対か、を備え、ゴブを所定の底部形状のパリソンに成形する姿面を持ったバッフルとの協働でゴブを所定の形状のパリソンに成形するパリソン成形装置において、バッフルの姿面部の肉厚を3〜9mmとしたことを特徴とするパリソン成形装置。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の粗型一対か、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粗型と空気逃がし路を持たない粗型との対か、を備え、ゴブを所定の底部形状のパリソンに成形する姿面を持ったバッフルとの協働でゴブを所定の形状のパリソンに成形するパリソン成形装置において、バッフルの姿面部の壁をそれ以外の部分よりも熱伝導率の低い別の材料にて形成したことを特徴とするパリソン成形装置。
  10. 別部材の姿面の輪郭と、別部材の姿面から軸線方向に外れた各部分の横断面形状とはほぼ相似形である請求項9に記載のパリソン成形装置。
  11. 姿面部の肉厚は、中央部から外周に向かって漸増する請求項8、9のいずれか1項に記載のパリソン成形装置。
  12. バッフルの姿面部の外側に空洞を設けた請求項8〜11のいずれか1項に記載のパリソン成形装置。
  13. バッフルは、別部材とそれ以外の部分との嵌め合わせ境界部に姿面内側から空洞への排気を図る排気路を形成した請求項12に記載のパリソン成形装置。
  14. 空洞は外部への排気路を有している請求項13に記載のパリソン成形装置。
  15. バッフルは、その姿面部を天井壁として下方に延びる穴を有し、この穴の途中に隔壁を後付けして空洞を形成している請求項12〜14のいずれか1項に記載のパリソン成形装置。
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