JP2004299492A - 自動車の電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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哲也 寺田
Tsutomu Iname
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Abstract

【課題】操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態の両方において理想的な操舵フィーリングを得ることができる自動車の電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】本発明は、自動車の電動パワーステアリング装置であって、実操舵力が小さくなるように電動モータの制御量を設定する第1制御部18と、予め設定された目標操舵力と実操舵力が一致するように電動モータの制御量を設定する第2制御部20と、これらの第1制御部及び第2制御部によるそれぞれの制御量を加算した制御量により電動モータを制御する電動モータ制御部22と、を有し、第2制御部は、操舵角を入力とした操舵力特性モデルから目標操舵力f(θ)を設定する目標操舵力演算手段36と、操舵過渡初期の場合、操舵力特性モデルが有するばね成分(Tp)を増加補正すると共に摩擦成分(Kf,Tf)を減少補正する特性パラメータ補正手段と、を有する。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の電動パワーステアリング装置に係わり、特に、電動モータによりハンドルの操舵をアシストする自動車の電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、例えば、特開平8−332964号公報等に示されているような、電動機の動力をステアリング系に作用させて操作力の低減を図るようにした電動パワーステアリング装置が使用されるようになってきている。この電動パワーステアリング装置は、操舵力検出手段を備え、この操舵力検出手段により運転者の操舵力(操舵トルク)を検出すると共に、同時に車速に基づき所定補正トルクを発生させるように電動機への駆動電流を制御し、運転者の操舵力の軽減を図っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような電動パワーステアリング装置を設計する場合、良好な操舵フィーリングと高い操安性能を得るためには、操舵角に対する操舵力の特性(以下「操舵力特性」という)を所望の操舵力特性(目標操舵力特性)となるように設定する必要がある。
従来は、電動パワーステアリングを構成するトーションバーやパワーアシストなどの構成部品の特性をチューニング(作り込み)することにより、所望の操舵力特性(目標操舵力特性)となるように設定していた。しかし、これら特性のチューニング(作り込み)には、高価なシステムや多くの工数が必要であった。
また、構成部品の特性ばらつきが原因で精度良く目標操舵力特性を設定することも難しいという状況がある。
【0004】
そこで、本出願人は、この課題を解決するために、特願2002‐95970号(2002年3月29日出願)を出願し、操舵力を操舵角の関数モデルとして表現した操舵力特性モデルを設定し制御することにより、簡便かつ精度良く目標操舵力特性を設定可能とし、操舵フィールと操安性能を向上させた自動車の電動パワーステアリング装置を提案した。
この操舵力特性モデルは、操舵角依存成分であるばね成分(Kp,Tp)、操舵角速度依存成分である粘性成分(Kd)及び摩擦成分(Kf,Tf)の各特性パラメータを有し、この特性パラメータの、実験的に算出されるようになっている。
この操舵力特性モデルは、後述する高車速且つほぼ直進状態であるセンターフィール感応域の全ての操舵状態に適用され、さらに、単一の関数モデルであり且つ各特性パラメータも固定値となっている。
【0005】
一方、センターフィール感応域において、ドライバがハンドルを直進保舵した状態から操舵する操舵過渡初期、その後ハンドルを操舵し続ける連続操舵状態、旋回中にハンドル保舵する旋回保舵状態が存在するが、操舵過渡初期と他の操舵状態では、理想的な操舵力特性が大きく異なっている。そのため、本発明者らは、操舵力特性モデルにおいて、操舵中(連続操舵状態及び旋回保舵状態)の操舵フィーリングを満足させようとして操舵力特性モデル(各特性パラメータ値)を設定すると、操舵過渡初期の操舵フィーリングが悪くなると新規な課題を見出したのである。
このように、センターフィール感応域内で、操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の両方において、理想的な操舵フィーリングを得ると言う課題を解決することが要望されている。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、高価なシステムを用いて構成部品の作り込みを行わなくても、制御系により、目標操舵力を安定して精度良く再現することができ、操舵フィールや操安性を向上させることができる自動車の電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
また、本発明は、操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の両方において理想的な操舵フィーリングを得ることができる自動車の電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の第1発明は、電動モータによりハンドルの操舵をアシストする自動車の電動パワーステアリング装置であって、操舵トルクを検出して実操舵力を得るトルクセンサと、操舵角を検出する操舵角センサと、実操舵力が小さくなるように電動モータの制御量を設定する第1制御部と、予め設定された目標操舵力と実操舵力が一致するように上記電動モータの制御量を設定する第2制御部と、これらの第1制御部及び第2制御部によるそれぞれの制御量を加算した制御量により電動モータを制御する電動モータ制御部と、を有し、第2制御部は、操舵角を入力とした操舵力特性モデルから目標操舵力を設定する目標操舵力演算手段と、ドライバがハンドルを直進保舵した状態から操舵する操舵過渡初期であるか否かを判定する操舵過渡初期判定手段と、操舵過渡初期であると判定された場合、操舵力特性モデルが有する操舵角依存成分であるばね成分(Tp)を増加補正すると共に操舵角速度依存成分である摩擦成分(Kf,Tf)を減少補正する特性パラメータ補正手段と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明の第1発明によれば、第2制御部において、目標操舵力演算手段が操舵角を入力とした操舵力特性モデルから目標操舵力を設定し、操舵過渡初期判定手段がドライバがハンドルを直進保舵した状態から操舵する操舵過渡初期であると判定した場合には、特性パラメータ補正手段が操舵力特性モデルが有する操舵角依存成分であるばね成分(Tp)を増加補正すると共に操舵角速度依存成分である摩擦成分(Kf,Tf)を減少補正するようにしているので、高価なシステムを用いて構成部品の作り込みを行わなくても、制御系により、目標操舵力を安定して精度良く再現することができ、操舵フィールや操安性を向上させることができる。
さらに、本発明の第1発明によれば、操舵過渡初期以外の操舵状態においては、その理想的な操舵フィーリングに合うよう操舵力特性モデル(各特性パラメータ)が設定されている。一方、操舵過渡初期には、特性パラメータ補正手段が、操舵力特性モデルが有する操舵角依存成分であるばね成分(Tp)を増加補正すると共に操舵角速度依存成分である摩擦成分(Kf,Tf)を減少補正するようにしているので、操舵角に対する操舵力の立ち上がりが良くなるので、操舵過渡初期の理想的な操舵フィーリングを得ることができる。その結果、本発明の第1発明によれば、操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の両方において理想的な操舵フィーリングを得ることができる。
【0009】
次に、本発明の第2発明は、電動モータによりハンドルの操舵をアシストする自動車の電動パワーステアリング装置であって、操舵トルクを検出して実操舵力を得るトルクセンサと、操舵角を検出する操舵角センサと、実操舵力が小さくなるように電動モータの制御量を設定する第1制御部と、予め設定された目標操舵力と実操舵力が一致するように電動モータの制御量を設定する第2制御部と、これらの第1制御部及び第2制御部によるそれぞれの制御量を加算した制御量により電動モータを制御する電動モータ制御部と、を有し、第2制御部は、操舵角を入力とした操舵力特性モデルから目標操舵力を設定する目標操舵力演算手段と、ドライバがハンドルを直進保舵した状態から操舵する操舵過渡初期であるか否かを判定する操舵過渡初期判定手段と、操舵過渡初期であると判定された場合、操舵力特性モデルが有する特性パラメータの値を別の値に変更する特性パラメータ変更手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明の第2発明においては、第2制御部において、目標操舵力演算手段が操舵角を入力とした操舵力特性モデルから目標操舵力を設定し、操舵過渡初期判定手段がドライバがハンドルを直進保舵した状態から操舵する操舵過渡初期であるか否かを判定し、操舵過渡初期であると判定された場合、特性パラメータ変更手段が操舵力特性モデルが有する特性パラメータの値を操舵過渡初期以外の理想的な操舵フィーリングに適合する値から操舵過渡初期の理想的な操舵フィーリングに適合する値に変更するので、操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の両方において理想的な操舵フィーリングを得ることができる。
【0011】
本発明の第2発明において、好ましくは、操舵力特性モデルの特性パラメータの値及び別の値は、直進安定性及びライントレース性に関する各指標を重み付けすることにより事前に導出されており、この重み付けは、操舵過渡初期では直進安定性の指標が重視され、操舵過渡初期以外の操舵状態ではライントレース性が指標が重視される。
【0012】
本発明の第3発明は、電動モータによりハンドルの操舵をアシストする自動車の電動パワーステアリング装置であって、操舵トルクを検出して実操舵力を得るトルクセンサと、操舵角を検出する操舵角センサと、実操舵力が小さくなるように電動モータの制御量を設定する第1制御部と、予め設定された目標操舵力と実操舵力が一致するように電動モータの制御量を設定する第2制御部と、これらの第1制御部及び第2制御部によるそれぞれの制御量を加算した制御量により電動モータを制御する電動モータ制御部と、を有し、第2制御部は、操舵角を入力とした操舵力特性モデルから目標操舵力を設定する目標操舵力演算手段と、ドライバがハンドルを直進保舵した状態から操舵する操舵過渡初期であるか否かを判定する操舵過渡初期判定手段と、を有し、目標操舵力演算手段は、操舵力特性モデルとして操舵過渡初期に適用される第1操舵力特性モデル及び操舵過渡初期以外の操舵状態に適用される第2操舵特性モデルを有することを特徴としている。
【0013】
このように構成された本発明の第3発明においても、操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の両方において理想的な操舵フィーリングを得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明が適用される自動車の電動パワーステアリング装置の一例を示す斜視図である。この図1に示すように、自動車の電動パワーステアリング装置1は、ハンドル(ステアリングホィール)2を備え、このハンドル2は、ステアリングシャフト4の上端に連結されており、ハンドル2を操作する操舵力がスタアリングシャフト4に伝達されるようになっている。このステアリングシャフト4の下端部には自在継手を介して中間シャフト6の上端が連結され、この中間シャフト6の下端には、ステアリングギヤボックス8が設けられている。このステアリングギヤボックス8の両側にはタイロッド10が連結されており、これらの各タイロッド10にはタイヤ(車輪)12が取り付けられている。
【0015】
ここで、ステアリングギヤボックス8の内部には、ラック・ピニオン機構(図示せず)が設けられており、このピニオンには、中間シャフト6の下端が連結されている。一方、ラックの両端部には上述したようにタイロッド10を介してタイヤ12が連結されている。
ステアリングギヤボックス8には、減速ギヤ(図示せず)を介してピニオン側に力を付与する電動モータ14が設けられ、さらに、減速ギヤと中間シャフト6の間にはトルクセンサ(図示せず)が配置されている。このトルクセンサは、中間シャフト6に作用している操舵トルク(実操舵力)を検出するためのものである。
これらの電動モータ14及びトルクセンサは、それぞれ制御ユニット16に接続されている。
この制御ユニット16は、後述する第1制御部(通常のアシスト制御部)、第2制御部(センターフィール補償制御部)、及び、モータ電流制御部から構成されており、トルクセンサの検出値(実操舵力)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に目標操舵力特性を実現するように、電動モータ14が制御されるようになっている。
【0016】
次に、図2及び図3を参照して、本発明の電動パワーステアリング装置に適用される操舵力特性モデルを説明する。
先ず、操舵力特性モデルは、高車速且つほぼ直進状態の走行時に適用可能である。ここで、高車速とは、約80km/h〜約130km/h程度の速度であり、ほぼ直進状態とは、ハンドルをゆっくりと操作する状態、具体的には、0.2Hzの正弦波でハンドルを操作し横向加速度(横G)が0.2G以下となるような操舵状態を想定している。
【0017】
このような高速直進時の操舵力特性を、ばね成分(操舵角を含む非線形の関数で表される)、粘性成分(操舵角速度に比例する)、摩擦成分(操舵角速度を含む非線形関数で表される)とに分解することにより、実際の操舵力特性を精度良く表現できる操舵力特性モデル(操舵力を操舵角の関数モデルとして表現したもの)を設定した。
【0018】
次に、図2及び図3により、操舵力特性モデルの内容を詳細に説明する。図2は、操舵力特性モデルを示す図であり、図3は、この操舵力特性モデルにおけるばね成分、粘性成分及び摩擦成分を示す図である。
操舵力特性モデルは、図2に示すように、ばね成分、粘性成分、及び、摩擦成分からなるモデルである。なお、本発明は、高速直進走行時の操舵力特性を対象したものであるため、ハンドルは、上述したようにゆっくりと操舵される(0.2Hzの正弦波)ため、慣性成分は含まないモデルとなっている。
【0019】
ばね成分は、以下の式(数1)に示す指数関数として設定する。この式(数1)において、θは操舵角であり、Kp及びTpは、ばね成分の特性パラメータである。ばね成分は、基本的には、操舵角にほぼ比例するが、所定の操舵角以上となると飽和状態となるため、特性パラメータKpはこの飽和状態に対応し、特性パラメータTpは、指数関数の時定数を示している。このように、ばね成分を示す式(数1)は、非線形関数となっている。
このように、ばね成分は、操舵角を含む非線形の関数で表されるものと定義される。
【数1】
Figure 2004299492
【0020】
粘性成分は、操舵角速度に比例した力であり、以下の式(数2)により示されている。この式(数2)において、Kdは、粘性成分の特性パタメータである。このように粘性成分は、操舵角速度に比例するものとして定義される。
【数2】
Figure 2004299492
【0021】
摩擦成分は、操舵角速度が小さいときは操舵角速度にほぼ比例した力であり、操舵角速度が大きくなると一定の大きさの摩擦力(飽和状態)となる。この摩擦成分は、以下の式(数3)に示す指数関数として設定する。この式(数3)において、Kf及びTfが摩擦成分の特性パラメータである。特性パラメータKfはこの飽和状態に対応し、特性パラメータTfは、指数関数の時定数を示している。このように、摩擦成分を示す式(数3)は、非線形関数となっている。
このように、摩擦成分は、操舵角速度を含む非線形関数として定義される。
【数3】
Figure 2004299492
【0022】
このようにして、操舵力特性モデルにおいて、ばね成分、粘性成分、摩擦成分が設定され、操舵力(操舵トルク)はこれらの各成分の合計値として設定される。即ち、操舵力特性モデルは、以下の式となる。
【数4】
Figure 2004299492
【0023】
次に、図4乃至図9を参照して、本発明の自動車の電動パワーステアリング装置の第1実施形態を説明する。図4は第1実施形態の制御ユニットを示すブロック図であり、図5は操舵に対する操舵過渡初期判定値δの変化を示す線図であり、図6は第1実施形態における操舵過渡初期判定値よる特性パラメータTp,Kf,Tfの補正を示す線図であり、図7は第1実施形態における制御ユニットの第1制御部及び第2制御部の制御ゲインK1,K3の補正マップであり、図8は第1実施形態による制御内容を示すフローチャートであり、図9は第1実施形態における操舵過渡初期の操舵力特性(A)及び過渡初期以外(連続操舵、旋回保舵)の操舵力特性(B)を示す線図である。
【0024】
先ず、図4により、制御ユニットの構成を説明する。制御ユニット16は、第1制御部18、第2制御部20、及び、モータ電流制御部22から構成されている。
また、本実施形態の電動パワーステアリング装置は、ステアリングシャフト又は中間シャフトに作用している実操舵力(操舵トルク)を検出するためのトルクセンサ24、横方向加速度(横G)を検出する横Gセンサ26、車速を検出する車速センサ28、操舵角を検出する操舵角センサ30を備えており、これらの各センサの出力値が制御ユニット16に入力されるようになっている。
【0025】
第1制御部18は、通常のアシスト制御を行なう制御部であり、トルクセンサ24の出力値を小さくするように、即ち、操舵力を軽減する方向のアシスト力を発生させるように、電動モータ14を制御するための制御部である。この第1制御部18には、トルクセンサ24からのトルクセンサ値が入力され、フィルタ34によりノイズがカットされて(Ts1)となり、制御ゲインK1により基準目標電流I が演算されるようになっている。ここで、この制御ゲインK1は、後述するように、横Gセンサ26及び車速センサ28の値に基づいて設定される(図7参照)。
【0026】
第2制御部20は、センターフィール補償制御部であり、高車速(80km/h以上)且つほぼ直進状態(例えば、0.2Hzの正弦波で横Gが0.2G以下)の走行時(以下、「センターフィール感応域」と呼ぶ)に、予め設定した目標操舵力となるように電動モータ14を制御するための制御部である。
第2制御部20は、目標操舵力演算部36を有し、この目標操舵力演算部36には、操舵角センサ30から操舵角の値が入力される。目標操舵力演算部36は、この操舵角の値及び上述した式(数4)により表現された操舵力特性モデルを用いて、目標操舵力(f(θ))を算出するようになっている。
第2制御部20は、ローパスフィルタであるフィルタ38を有し、このフィルタ38により、センターフィール感応域に対応した帯域(例えば、0.2Hzを含む帯域)のトルクセンサ24のトルクセンサ値(Ts2)のみを入手できるようになっている。
【0027】
第2制御部20は、さらに、操舵過渡初期判定部40を備えている。この操舵過渡初期判定部40は、以下の判定機能を有する。即ち、ドライバがハンドルを操舵する場合、直進保舵から操舵した状態(直進保舵→操舵)である操舵過渡初期、その後ハンドルを操舵し続ける操舵状態(連続操舵)、旋回中に保舵する状態(旋回保舵)に移行する。この操舵過渡初期を判定するために、操舵過渡初期判定部40は、操舵過渡初期判定値δを使用し、この操舵過渡初期判定値δは、操舵情報(操舵角θ,操舵速度θ’,操舵加速度θ’’)を入力とした関数f(θ,θ’,θ’’)から算出される。
図5に示すように、操舵過渡初期判定値δは、操舵過渡初期が(+)の値、連続操舵が(−)の値、旋回保舵が(0)となる。
【0028】
第1実施形態において、操舵過渡初期判定部40が操舵過渡初期であると判定した場合、図6に示すように、上述した操舵力特性モデルの特性パラメータの内、操舵角依存成分であるばね成分(Tp)を増加補正すると共に操舵角速度依存成分である摩擦成分(Kf,Tf)を減少補正する。
また、図6において、αはばね成分(Tp)の補正係数、βは摩擦成分(Kf)の補正係数、γは摩擦成分(Tf)の補正係数である。
【0029】
このように、第1実施形態では、第2制御部20の操舵過渡初期判定部40により、センターフィール感応域において、操舵過渡初期判定値δを用いて操舵過渡初期か否かを判定し、操舵過渡初期と判定した場合、即ち、操舵過渡初期判定値δが(+)の値の場合には、図6に示すように、操舵力特性モデルの操舵角依存成分であるばね成分(Tp)を増加補正すると共に操舵角速度依存成分である摩擦成分(Kf,Tf)を減少補正するようにしているので、他の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)に比べて、図9の操舵力特性Aとして示すように、操舵角に対する操舵力の立ち上がりが良くなり、操舵過渡初期に合う理想的な操舵フィーリングを得ることができる。
また、操舵過渡初期以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)、即ち、操舵過渡初期判定値δが(−)の値の場合には、図6に示すように、操舵力特性モデルの各特性パラメータの値はそのままであり補正は行われない。この操舵過渡初期以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)では、図9の操舵力特性Bとして示すように、操舵角に対する操舵力の立ち上がりが多少抑えられ、操舵過渡初期以外に合う理想的な操舵フィーリングを得ることができる。
【0030】
次に、目標操舵力演算部36で算出された目標操舵力f(θ)とフィルタ処理されたトルクセンサ値である実操舵力(Ts2)との偏差が制御ゲインK3により物理量変換される。ここで、この制御ゲインK3は、後述するように、横Gセンサ26及び車速センサ28の値に基づいて設定される(図7参照)。
【0031】
次に、第1制御部20から出力された基準目標電流I と補償電流I とが加算され、目標電流Iが算出される。具体的には、符号を、操舵力(実操舵力)を減少させるためにアシスト力を増大する場合には(+)、操舵力(実操舵力)を増大させるためにアシスト力を減少させる場合には(−)としているため、基準目標電流I に対して補償電流I を減算する演算が行なわれる。
【0032】
モータ電流制御部22は、電動モータ14に供給される電流が目標電流Iとなるようにするためのフィードバック制御を行なうための制御部である。このため、モータ電流制御部22は、制御ゲインK2、比例積分制御を行なうPI制御部42、モータ特性補償部44を有している。
このようにして演算されて電動モータ14に供給される目標電流Iは、以下の式(数5)により表される。
【数5】
Figure 2004299492
ここで、式(数5)において、(I)は目標電流、(Ts1)はフィルタ34によりフィルタ処理された実操舵力であるトルクセンサ値、(K1)は第1制御部の制御ゲイン、(f(θ))は式(数4)により表現された操舵力特性モデル出力、(Ts2)はフィルタ38によりフィルタ処理された実操舵力であるトルクセンサ値、(K3)は第2制御部の制御ゲインである。
【0033】
次に図7により、第1制御部及び第2制御部の比例ゲインの補正マップである。図7に示された補正マップは、センターフィール感応域、遷移領域I、遷移領域II、非センターフィール感応域の4つの領域を有し、それぞれの領域において、制御ゲインK1(K1=K1*β),K3(K3=K3*α)の値が補正されるようになっている。ここで、α及びβは補正係数であり、0〜1の範囲で変化する。
先ず、センタフィール感応域においては、補正係数は、α=1、β=0と設定される。このため、第1制御部の制御ゲインK1は0となり、第1制御部による電動モータの電流制御は禁止される。一方、第2制御部の制御ゲインK3はそのまま使用されるので、第2制御部20により、上述した操舵力特性モデルに基づいて予め設定された目標操舵力が発生するように、補償電流I が設定される。この結果、センターフィール感応域においては、所望の操舵力特性が得られ、操安性能が向上する。また、第1制御部18と第2制御部20が同時に作動することにより発生する制御ハンチング(制御干渉)も防止できる。
【0034】
次に、非センターフィール感応域においては、補正係数は、α=0、β=1と設定される。このため、第2制御部の制御ゲインK3は0となり、第2制御部による電動モータの電流制御は禁止される。一方、第1制御部の制御ゲインK1はそのまま使用されるので、第1制御部18により、トルクセンサ値が小さくなるように基準目標電流I が設定される。この結果、非センターフィール感応域においては、通常のアシスト制御が行なわれ、ステアリングの取り回し性能が向上する。また、第1制御部18と第2制御部20が同時に作動することにより発生する制御ハンチング(制御干渉)も防止できる。
【0035】
次に、遷移領域Iは、自動車の走行状態が非センターフィール領域からセンターフィール感応域に変化する際に適用される領域である。この遷移領域Iにおいて、補正係数αは、0→1に変化し、補正係数βは、1→0に変化する。
また、遷移領域IIは、自動車の走行状態がセンターフィール領域から非センターフィール感応域に変化する際に適用される領域である。この遷移領域IIにおいて、補正係数αは、1→0に変化し、補正係数βは、0→1に変化する。
これらの遷移領域I,II においては、第1制御部において補正された制御ゲインK1に基づき基準目標電流I が設定され、第2制御部において補正された制御ゲインK3に基づき補償電流I が設定され、これらの電流が加算され、目標電流Iが算出される。この結果、これらの遷移領域I,II においては、通常のアシスト制御を行なうと共に併せて目標操舵力を得ることができ、これにより、操安性能が向上する。また、自動車の走行状態が、非センターフィール領域とセンターフィール感応域との間を移行する場合には、その移行方向により、異なる遷移領域を適用するようにしているので、第1制御部18と第2制御部20が同時に作動することにより発生する制御ハンチング(制御干渉)も防止できる。
【0036】
次に、図8により、本実施形態による制御フローを説明する。ここで、図8においては、センターフィール感応域は、図7に示された「センターフィール感応域」、「遷移領域I」及び「遷移領域II」の3つの領域を含む広義の意味で用いられている。なお、図8における「S」は、各ステップを示している。
この制御フローにおいては、先ず、S1において、各センサ値を入力する。具体的には、トルクセンサ24、横Gセンサ26、車速センサ28、操舵角センサ30からの各出力値である。次に、S2において、操舵過渡初期判定値δを算出する。さらに、S3において、自動車の走行状態が、図7に示された車速及び横Gの値に基づき、センターフィール感応域か否かを判定する。
【0037】
センターフィール感応域でなければ、図7に示す非センターフィール感応域であるため、この場合には、S4に進み、補償電流をI =0と設定し、これにより第2制御部による電動モータの電流制御を禁止する。
センターフィール感応域の場合には、S5に進み、操舵過渡初期判定値δの値に応じて、上述した操舵力特性モデルの特性パラメータTp,Kf,Tfを補正する。具体的には、操舵過渡初期判定値δが(+)の値の場合には、操舵力特性モデルの操舵角依存成分であるばね成分(Tp)を増加補正すると共に操舵角速度依存成分である摩擦成分(Kf,Tf)を減少補正する。
【0038】
次に、S6に進み、第2制御部で目標操舵力f(θ)を演算し、S7で、補償電流If(=(f(θ)‐Ts2)*K3)を演算し、さらに、S8で、第1制御部の制御ゲインK1を図7(図7の遷移領域I、遷移領域II、センターフィール感応域の3つの領域が適用される)に基づいて減少補正する。さらに、S9に進み、第1制御部における基準目標電流がI =Ts1*K1と設定する。ここで、(Ts1)はフィルタ34によりフィルタ処理された実操舵力であるトルクセンサ値、(K1)は第1制御部の制御ゲインである。
次に、S10に進み、目標電流をI=I −I と設定する。さらに、S11に進み、この目標電流Iを電動モータに提供し、電動モータの電流制御を実行する。
【0039】
以上説明したように、第1実施形態においては、第2制御部20の操舵過渡初期判定部40により、センターフィール感応域において、操舵過渡初期判定値δを用いて操舵過渡初期か否かを判定し、操舵過渡初期の場合には、操舵力特性モデルの操舵角依存成分であるばね成分(Tp)を増加補正すると共に操舵角速度依存成分である摩擦成分(Kf,Tf)を減少補正しているので、操舵過渡初期の操舵フィーリングは、図9の操舵力特性Aとして示すように、操舵角に対する操舵力の立ち上がりが良くなり、操舵過渡初期に合う理想的な操舵フィーリングとなる。
また、操舵過渡初期でない場合(連続操舵及び旋回保舵)には、操舵力特性モデルの各特性パラメータの補正は行わないので、操舵フィーリングは、図9の操舵力特性Bとして示すように、操舵角に対する操舵力の立ち上がりが多少抑えられ、操舵過渡初期以外に合う理想的な操舵フィーリングとなる。
このように、第1実施形態によれば、操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の両方において理想的な操舵フィーリングを得ることができる。
【0040】
次に、図10乃至図12を参照して、本発明の自動車の電動パワーステアリング装置の第2実施形態を説明する。図10は第2実施形態による操舵過渡初期判定値に応じた操舵力特性モデルの特性パラメータの値の変更を示す線図であり、図11は第2実施形態による特性パラメータの値を導出するためのアルゴリズムを示すブロック図であり、図12は第2実施形態による制御内容を示すフローチャートである。以下、第2実施形態の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0041】
第2実施形態の制御ユニットは、図4に示す第1実施形態のものと同じである。ただし、第2実施実施形態では、第2制御部20の操舵過渡初期判定部40が、操舵過渡初期か否かを判定し、操舵過渡初期と判定した場合には、上述した操舵力特性特性モデルの特性パラメータ(Kp,Tp,Kd,Kf,Tf)の値を別の値に変更するようにしている。
即ち、第2実施形態では、操舵過渡初期の理想的な操舵フィーリングに合う特性パラメータKp1,Tp1,Kd1,Kf1,Tf1と、それ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の理想的な操舵フィーリングに合う特性パラメータKp2,Tp2,Kd2,Kf2,Tf2を事前に設定しておき、操舵過渡初期と判定された場合には特性パラメータKp1,Tp1,Kd1,Kf1,Tf1を使用し、それ以外の操舵状態ではKp2,Tp2,Kd2,Kf2,Tf2を使用するようにしている。
こららの特性パラメータの値は、図10に示すように、操舵過渡初期判定値δの値により、変更されるようになっている。
【0042】
次に、図11により、操舵力特性モデルにおける2種類の特性パラメータの値の導出方法を説明する。操舵力特性モデルの特性パラメータ値は、操舵フィーリングを客観的に表す指標から導出することができる。操舵フィーリングは、「直進安定性」と「ライントレース性」に分けられ、さらに、これらの「直進安定性」と「ライントレース性」の各々は、操舵力のフィールに関する指標と、車両応答のフィールに関する指標を有する。ここで、「直進安定性」の操舵力のフィールに関する指標をg1(θ,F)、車両応答のフィールに関する指標をh1(θ,φ)、「ライントレース性」の操舵力のフィールに関する指標をg2(θ,F)、車両応答のフィールに関する指標をh2(θ,φ)とする。ここで、θは操舵角、Fは操舵力、φはヨーレートである。
これらの指標g1及びh1は、具体的には、以下の式(数6)及び式(数7)により表される。
【数6】
Figure 2004299492
【数7】
Figure 2004299492
ここで、式(数6)及び式(数7)において、f は操舵力特性モデル(数4)の逆関数であり、F ,φ ,a,b,cは、任意の定数である。
【0043】
次に、図11において、操舵力特性モデルは上述した式(数4)に示す関数モデルであり、車両モデルは自動車の車種毎に設定される物理的または数学的モデルであり、その車種固有の車両応答特性を有する。この操舵力特性と車両応答特性を、固有のものから理想的な特性とするために必要な操舵力特性モデルの特性パラメータを、上述した指標を用いて導出する。先ず、操舵力特性モデルおよび車両モデルに基準となる操舵角入力パターン(操舵過渡初期とそれ以外)を入力し、各モデルから各々予想される操舵力およびヨーレートが出力される。次に、その入出力から、操舵力および車両応答のフィールに関する指標の予測値(g1pre,g2pre,h1pre,h2pre)を算出する。
【0044】
次に、各指標の理想値(g1tgt,g2tgt,h1tgte,h2tgt)と上述した各指標の予想値との誤差総和を算出する。ここで、「直進安定性」の各指標には重み付け係数w1が掛けられ、「ライントレース性」の各指標には重み付け係数w2が掛けられている。なお、これらの理想指標値には、図9で示した操舵力特性A,Bと同様なものが得られるような値が設定されている。
【0045】
ここで、操舵過渡初期では、「直進安定性」を重視する必要があり、一方、それ以外の操舵状態(連続操舵,旋回保舵)では、「ライントレース性」を重視する必要がある。
このため、操舵過渡初期用の特性パラメータ値を算出する場合には、操舵過渡初期の理想指標値と予測指標値との誤差総和を演算するとき、重み付け係数をw1>w2と設定し、それ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)用の特性パラメータの値を算出する場合には、重み付け係数をw1<w2と設定する。
このようにして演算した誤差総和が許容値より大きい場合には、NGとして、再度、特性パラメータ値を調整して、各指標の新たな予測値を算出し、同様な演算を繰り返して行う。
誤差総和が許容値より小さくなった場合には、そのときの予測指標値を算出するために入力した特性パラメータ値を、求める特性パラメータ値として採用する。
このようにして、操舵過渡初期用の特性パラメータKp1,Tp1,Kd1,Kf1,Tf1と、それ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)用の特性パラメータKp2,Tp2,Kd2,Kf2,Tf2を導出する。
【0046】
次に、第2実施形態における制御内容は、図12に示すように、ステップS25において、操舵初期過渡判定値δに応じて操舵力特性モデルの特性パラメータ(Kp,Tp,Kd,Kf,Tf)の値を変更する。具体的には、上述したように、操舵過渡初期の場合には、特性パラメータKp1,Tp1,Kd1,Kf1,Tf1を使用し、それ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の場合には、特性パラメータKp2,Tp2,Kd2,Kf2,Tf2を使用する。図12における他のステップは、図8に示す第1実施形態の制御内容と同じである。
【0047】
以上説明したように、第2実施形態によれば、操舵過渡初期か否かを判定し、操舵過渡初期と判定した場合には、操舵力特性特性モデルの特性パラメータ(Kp,Tp,Kd,Kf,Tf)の値を操舵過渡初期以外の理想的な操舵フィーリングに適合する値から操舵過渡初期の理想的な操舵フィーリングに適合する値に変更するので、操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の両方において理想的な操舵フィーリングを得ることができる。
【0048】
次に、図13乃至図16により、本発明の第3実施形態を説明する。図13は第3実施形態の制御ユニットを示すブロック図であり、図14は操舵過渡初期に適用される操舵力特性モデルを示す図であり、図15は第3実施形態における操舵過渡初期判定値に応じた制御ゲインK4,K5の補正を示す線図であり、図16は第3実施形態による制御内容を示すフローチャートである。以下、第3実施形態の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0049】
図13に示すように、第2制御部20は、操舵過渡初期に適用される目標操舵力を演算する第1目標操舵力演算部35と、操舵過渡初期以外(連続操舵、旋回保舵)に適用される目標操舵力を演算する第2目標操舵力演算部36を備えている。第1目標操舵力演算部35は、図14に示すばね成分のみからなる操舵力特性モデルを使用し、この操舵力特性モデルは、以下の式(数8)に示す関数モデルである。
【数8】
Figure 2004299492
式(数8)において、θは操舵角、トルク(Torque)は操舵力、Kpp,Tppは操舵角依存のばね成分の特性パラメータである。
【0050】
また、第2目標操舵力演算部36は、上述した第1実施形態と同様な式(数4)で示されたばね成分、粘性成分、摩擦成分からなる操舵力特性モデルを使用する。
何れの操舵力特性モデル(数8又は数4)を使用をした場合でも、これらの数式に、操舵角センサ値を入力し、目標操舵力を演算し、これに制御ゲインK4又はK5をかけて加算し、この加算値とフィルタ処理されたトルクセンサ値(Ts2)の偏差を付与すべき操舵反力としている。
次に操舵反力を制御ゲインK3により物理量変換して補償電流値Ifとし、基準目標電流I から減算して、電動モータ14の目標電流値Iとしている。
【0051】
ここで、第3実施形態では、図15に示すように、操舵過渡初期判定値δにより、制御ゲインK4,K5が変更されるようになっている。即ち、操舵過渡初期(δはプラス)では、制御ゲインK4=1及び制御ゲインK5=0と設定され、その結果、第1目標操舵力演算部35により式(数8)に示す操舵力特性モデルから演算された目標操舵力が使用され、一方、操舵過渡期以外(δはマイナス及びゼロ)では、制御ゲインK5=1及び制御ゲインK4=0と設定され、その結果、第2目標操舵力演算部36により式(数4)に示す操舵力特性モデルから演算された目標操舵力が使用される。
【0052】
第3実施形態において、上述した操舵過渡初期用の操舵力特性モデル(数8参照)及び操舵過渡初期以外の操舵状態用の操舵力特性モデル(数4参照)は、それぞれ、第1実施形態における図9に示した操舵フィールA,Bと同様な操舵力特性を得られるように設定されている。
【0053】
次に、図16に示すように、第3実施形態における制御内容は、ステップS45において、操舵初期過渡判定値δに応じて制御ゲインK4とK5の値を変更する。具体的には、上述したように、操舵過渡初期(δはプラス)では、制御ゲインK4=1及び制御ゲインK5=0と設定し、一方、操舵過渡期以外(δはマイナス及びゼロ)では、制御ゲインK5=1及び制御ゲインK4=0と設定する。
その後、S46において、操舵過渡初期では、第1目標操舵力演算部35により式(数8)に示す操舵力特性モデルから目標操舵力f(θ)を演算し、一方、操舵過渡期以外では、第2目標操舵力演算部36により式(数4)に示す操舵力特性モデルから目標操舵力f(θ)を演算する。
図16における他のステップは、図8に示す第1実施形態の制御内容と同じである。
【0054】
以上説明したように、第3実施形態によれば、操舵過渡初期に適用される操舵力特性モデルと、操舵過渡初期以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)に適用される操舵力特性モデルという2種類のモデルを準備し、操舵過渡初期か否かを判定し、操舵過渡初期と判定した場合には、操舵過渡初期用の操舵力特性モデルにより目標操舵力を算出し、操舵過渡初期以外ではそれ用の操舵力特性モデルにより目標操舵力を算出しているので、操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の両方において理想的な操舵フィーリングを得ることができる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の自動車の電動パワーステアリング装置によれば、高価なシステムを用いて構成部品の作り込みを行わなくても、制御系により、目標操舵力を安定して精度良く再現することができ、操舵フィールや操安性を向上させることができる。さらに、本発明によれば、操舵過渡初期及びそれ以外の操舵状態(連続操舵、旋回保舵)の両方において理想的な操舵フィーリングを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される電動パワーステアリング装置の一例を示す斜視図である。
【図2】操舵力特性モデルを示す図である。
【図3】操舵力特性モデルにおけるばね成分、粘性成分及び摩擦成分を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態による制御ユニットを示すブロック図である。
【図5】操舵に対する操舵過渡初期判定値δの変化を示す線図である。
【図6】本発明の第1実施形態における操舵過渡初期判定値よる特性パラメータTp,Kf,Tfの補正を示す線図である。
【図7】本発明の第1実施形態における制御ユニットの第1制御部及び第2制御部の制御ゲインK1,K3の補正マップである。
【図8】本発明の第1実施形態による制御内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態による操舵力特性における操舵過渡初期の操舵フィーリング(A)及び過渡初期以外(連続操舵、旋回保舵)の操舵フィーリング(B)を示す線図である。
【図10】本発明の第2実施形態による操舵過渡初期判定値に応じた操舵力特性モデルの特性パラメータの値の変更を示す線図である。
【図11】本発明の第2実施形態による特性パラメータの値を導出するためのアルゴリズムを示すブロック図である。
【図12】本発明の第2実施形態による制御内容を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3実施形態の制御ユニットを示すブロック図である。
【図14】本発明の第3実施形態の操舵過渡初期に適用される操舵力特性モデルを示す図である。
【図15】本発明の第3実施形態における操舵過渡初期判定値に応じた制御ゲインK4,K5の補正を示す線図である。
【図16】本発明の第3実施形態による制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 電動パワーステアリング装置
2 ハンドル
4 ステアリングシャフト
6 中間シャフト
12 タイヤ
14 電動モータ
16 制御ユニット
18 第1制御部
20 第2制御部
22 モータ電流制御部
24 トルクセンサ
26 横Gセンサ
28 車速センサ
30 操舵角センサ
34,38 フィルタ
35 第1目標操舵力演算部
36 目標操舵力演算部(第2目標操舵力演算部)
40 操舵過渡初期判定部
42 PI制御部
44 モータ特性補償部

Claims (4)

  1. 電動モータによりハンドルの操舵をアシストする自動車の電動パワーステアリング装置であって、
    操舵トルクを検出して実操舵力を得るトルクセンサと、
    操舵角を検出する操舵角センサと、
    実操舵力が小さくなるように上記電動モータの制御量を設定する第1制御部と、
    予め設定された目標操舵力と実操舵力が一致するように上記電動モータの制御量を設定する第2制御部と、
    これらの第1制御部及び第2制御部によるそれぞれの制御量を加算した制御量により上記電動モータを制御する電動モータ制御部と、を有し、
    上記第2制御部は、操舵角を入力とした操舵力特性モデルから上記目標操舵力を設定する目標操舵力演算手段と、ドライバがハンドルを直進保舵した状態から操舵する操舵過渡初期であるか否かを判定する操舵過渡初期判定手段と、操舵過渡初期であると判定された場合、上記操舵力特性モデルが有する操舵角依存成分であるばね成分(Tp)を増加補正すると共に操舵角速度依存成分である摩擦成分(Kf,Tf)を減少補正する特性パラメータ補正手段と、を有することを特徴とする自動車の電動パワーステアリング装置。
  2. 電動モータによりハンドルの操舵をアシストする自動車の電動パワーステアリング装置であって、
    操舵トルクを検出して実操舵力を得るトルクセンサと、
    操舵角を検出する操舵角センサと、
    実操舵力が小さくなるように上記電動モータの制御量を設定する第1制御部と、
    予め設定された目標操舵力と実操舵力が一致するように上記電動モータの制御量を設定する第2制御部と、
    これらの第1制御部及び第2制御部によるそれぞれの制御量を加算した制御量により上記電動モータを制御する電動モータ制御部と、を有し、
    上記第2制御部は、操舵角を入力とした操舵力特性モデルから上記目標操舵力を設定する目標操舵力演算手段と、ドライバがハンドルを直進保舵した状態から操舵する操舵過渡初期であるか否かを判定する操舵過渡初期判定手段と、操舵過渡初期であると判定された場合、上記操舵力特性モデルが有する特性パラメータの値を別の値に変更する特性パラメータ変更手段と、を有することを特徴とする自動車の電動パワーステアリング装置。
  3. 上記操舵力特性モデルの特性パラメータの値及び別の値は、直進安定性及びライントレース性に関する各指標を重み付けすることにより事前に導出されており、この重み付けは、操舵過渡初期では直進安定性の指標が重視され、操舵過渡初期以外の操舵状態ではライントレース性が指標が重視される請求項2記載の自動車の電動パワーステアリング装置。
  4. 電動モータによりハンドルの操舵をアシストする自動車の電動パワーステアリング装置であって、
    操舵トルクを検出して実操舵力を得るトルクセンサと、
    操舵角を検出する操舵角センサと、
    実操舵力が小さくなるように上記電動モータの制御量を設定する第1制御部と、
    予め設定された目標操舵力と実操舵力が一致するように上記電動モータの制御量を設定する第2制御部と、
    これらの第1制御部及び第2制御部によるそれぞれの制御量を加算した制御量により上記電動モータを制御する電動モータ制御部と、を有し、
    上記第2制御部は、操舵角を入力とした操舵力特性モデルから上記目標操舵力を設定する目標操舵力演算手段と、ドライバがハンドルを直進保舵した状態から操舵する操舵過渡初期であるか否かを判定する操舵過渡初期判定手段と、を有し、
    上記目標操舵力演算手段は、操舵力特性モデルとして操舵過渡初期に適用される第1操舵力特性モデル及び操舵過渡初期以外の操舵状態に適用される第2操舵特性モデルを有することを特徴とする自動車の電動パワーステアリング装置。
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