JP2004299258A - インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法 - Google Patents

インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004299258A
JP2004299258A JP2003095215A JP2003095215A JP2004299258A JP 2004299258 A JP2004299258 A JP 2004299258A JP 2003095215 A JP2003095215 A JP 2003095215A JP 2003095215 A JP2003095215 A JP 2003095215A JP 2004299258 A JP2004299258 A JP 2004299258A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
ejection
electrode
discharge port
discharge
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2003095215A
Other languages
English (en)
Inventor
Koji Furukawa
弘司 古川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP2003095215A priority Critical patent/JP2004299258A/ja
Priority to US10/765,469 priority patent/US7275812B2/en
Priority to AT04001921T priority patent/ATE460284T1/de
Priority to CN200410003351.4A priority patent/CN1519113B/zh
Priority to DE602004025870T priority patent/DE602004025870D1/de
Priority to EP04001921A priority patent/EP1442886B1/en
Publication of JP2004299258A publication Critical patent/JP2004299258A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

【課題】吐出部へのインク供給および吐出に必要な吐出力を低下させると共に、吐出力を掛けてから正確なサイズのインク液滴を吐出するまでの遅れ時間を短縮し、かつ、インクメニスカスは安定的に保持して、安定したインク吐出により画像記録を正確に行うことのできるインクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法を提供する。
【解決手段】1以上のインク吐出口を有する吐出口プレートと、吐出口プレートと所定間隔離間して設けられ、吐出口プレートとの間にインク室を形成する基板と、インク吐出口中に存在する構造物と、インクを吐出させるインク吐出手段とを有し、構造物の、少なくとも吐出口中に存在する部分の表面の、インクに対する接触角が、吐出口内壁面の、インクに対する接触角よりも大きいことにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクをインク滴(インクジェット)として吐出するインクジェットヘッド、そのインクジェットヘッドを用いて記録媒体に画像を記録する記録装置および記録方法の技術分野に属し、詳しくは、インク吐出に要するエネルギが小さいインクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置は、色材を含むインクをインク滴として吐出口から吐出して飛翔させ、記録媒体に着弾させて画像を記録するものである。インクジェット記録装置としては、インク滴の吐出方法によって、静電式、バブル式、サーマル式、ピエゾ式等のものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、静電式のインクジェット記録装置として、吐出口プレート(絶縁性基板)に穿設された吐出口(貫通孔)内にインクガイドが配置されるとともに、吐出口周辺に吐出電極(制御電極)が配置され、吐出電極に電圧を印加することによる静電力によってインク液滴を吐出するインクジェット記録装置が開示されている。
このインクジェット記録装置によれば、吐出口内に設けられたインクガイドによってインクが案内されて、その先端部からインク滴が飛翔するので、インク滴の飛翔を安定化することができるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、吐出口(ノズル)の内部にインクガイドとなるピンを配置し、インク滴が飛翔する際にこのピンの端部(起伏)でインク滴尾部が破断するようにして、インク滴の飛翔およびインク滴破断時の吐出口のインクメニスカスを安定化させるインクジェットプリンター用ノズルが開示されている。
また、特許文献3には、吐出口内部に棒状のガイドを設け、さらにはこの棒状ガイドを親水処理することによって、インク(記録液)の液滴が吐出する際に、この棒状ガイドに沿って吐出するようにして、インク液滴の吐出方向を安定化させる液体噴射記録ヘッドが開示されている。
【0005】
しかしながら、上記のいずれの装置においても、吐出口の狭い空間に設けられたインクガイドとの隙間から、インクを引き抜く、あるいは押し出すので、インク吐出に要する力が大きい。すなわち、静電式のものであれば吐出電極へのパルス電圧、バブル式やサーマル式であれば加熱素子への電力、また、ピエゾ式であればピエゾ素子への電力を高くする必要があり、電気回路等の負担も大きく、動作安定性も悪いという問題があった。
また、装置の始動時(記録開始時)には、吐出口へのインクの供給に時間を要するため、吐出力を掛けてから吐出するまでの遅れ時間が長くなってしまい、その間、吐出力に対して設定された所定サイズのインク滴を飛翔させることができず、最初の数ドットはドット径が小さくなって、印字不良になるという問題があった。
さらに、特許文献3のように、インクのインクガイドへの接触性を高めるために、インクガイドを親インク性とした場合には、さらに大きな吐出力が必要になってしまうという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−138493号公報
【特許文献2】
特開2002−273893号公報
【特許文献3】
特許第2650944号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、吐出部へのインク供給および吐出に必要な吐出力を低下させて低エネルギ化を実現すると共に、吐出力を掛けてから正確なサイズのインク液滴を吐出するまでの遅れ時間を短縮し、かつ、インクメニスカスは安定的に保持して、安定したインク吐出により画像記録を正確に行うことのできるインクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、1以上のインク吐出口を有する吐出口プレートと、前記吐出口プレートと所定間隔離間して設けられ、前記吐出口プレートとの間にインク室を形成する基板と、前記インク吐出口中に存在する構造物と、前記インクを吐出させるインク吐出手段とを有し、前記構造物の、少なくとも前記吐出口中に存在する部分の表面の、前記インクに対する接触角が、前記吐出口内壁面の、前記インクに対する接触角よりも大きいことを特徴とするインクジェットヘッドを提供するものである。
【0009】
ここで、前記構造物の、少なくとも前記吐出口中に存在する部分の表面は、撥インク性であるのが好ましい。
また、前記構造物の、少なくとも前記吐出口中に存在する部分の表面の前記インクに対する接触角と、前記吐出口内壁面の前記インクに対する接触角との差が、10度以上であるのが好ましい。
また、前記構造物の、少なくとも前記吐出口中に存在する部分の表面の前記インクに対する接触角は、20度以上であるのが好ましい。
【0010】
また、前記構造物の少なくとも前記吐出口内に存在する部分が、撥インク性部材で構成されているか、あるいは、前記吐出口内に存在する部分の表面が、撥インク処理されているのが好ましい。
また、前記構造物の先端部分は、前記吐出口プレートから突出しているのが好ましく、また、前記構造物の先端部分は親インク性であるのが好ましい。
【0011】
前記インクは、帯電した微粒子を溶媒中に分散させたものであり、前記吐出手段は、前記インク室の前記吐出口プレート側に設けられた吐出電極であるのが好ましい。
【0012】
また、本発明は、上記いずれかに記載のインクジェットヘッドを用いて記録媒体上に画像記録を行うことを特徴とする記録装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、少なくとも1つのインク吐出口を有する吐出口プレートと、この吐出口プレートと所定間隔離間して設けられた基板との間に形成されたインク室内のインクを、前記インク吐出口を通して吐出させて記録媒体に画像を記録するに際し、前記インク吐出口中に存在し、少なくとも前記吐出口中に存在する部分に撥インク性表面を有する構造物によって、吐出させるための前記インクを案内することを特徴とする記録方法を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るインクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法を添付の図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明のインクジェット記録装置で用いられる本発明のインクジェットヘッドの一実施例の概略構成を示す模式的断面図である。
同図に示すインクジェットヘッド10は、色材成分を含むインクQを所定の吐出手段によってインク滴として吐出し、記録媒体に向かって飛翔させて、画像データに応じて画像を記録媒体上に記録するものである。インクジェットヘッド10は、吐出口プレート12、基板14、インクガイド16および吐出手段18を備えており、吐出手段18による記録方式に応じて隔壁20を有している。記録媒体は、インクガイド16の先端部分16aと対向する位置(図中上側)に配置される。先端部分16aから吐出されたインクQのインク滴は、記録媒体に向かって、図中上方向に飛翔し、記録媒体の所定位置に着弾して画像を形成する。
【0016】
なお、図1に示す例は、インクジェットヘッド10を構成する1つの吐出部を概念的に表したものであるが、本発明のインクジェットヘッド10において、吐出部の数は1つ以上いくつ備えられていても良いし、その物理的な配置等も何ら限定されない。例えば、複数の吐出部を1次元的または2次元的に配置してラインヘッドを構成することも可能である。また、本発明のインクジェットヘッド10を、使用するインク色数に応じた数だけ設けることによって、モノクロおよびカラーのどちらにも対応可能である。
【0017】
吐出口プレート12には、吐出口22となる所定形状の開口部が所定の間隔で複数形成されている。各吐出口22は、独立した1単位の吐出部であり、各吐出部ごとに吐出手段18が備えられている。
基板14は、吐出口プレート12から所定間隔離間して設けられており、吐出口プレート12と基板14との間にはインク室24が形成されている。インク室24は、図示しないインク供給口、および、必要に応じてインク回収口を有しており、図示しないインク供給系に接続されている。また、インク室24には、吐出手段18による記録方式に応じて、インクQの流路を確保しつつ各吐出部ごとにインク室24を隔離する隔壁20が設けられている。図示例では、隔壁20は、吐出口プレート12に設置され、基板14側は、各吐出部に連通するインク流路とされている。
【0018】
インクガイド16は、インク室24のインクQを吐出位置に案内するもので、各吐出口22に対応する位置において、基板14に設置されている。インクガイド16は、吐出口22の略中央を貫通するように配置され、その先端が吐出口プレート12の記録媒体P側の表面(図中上面)から突出している。図示例では、インクガイド16は基板14上に設置されているが、インクガイド16は、吐出口22の略中央に設けられていればどのように固定されていても良い。例えば、インクガイド16自体は基板14等に設置されず、インクガイド16の支持部材が基板14または吐出口プレート12または隔壁20に取り付けられ、インクガイド16を固定的に支持する形態としても良い。
【0019】
また、インクガイド16は、その吐出口22の内部に存在する部分、すなわち、吐出口22の内壁面22aで囲まれた部分に、撥インク部分16bを有している。撥インク部分16bは、その表面のインクQに対する接触角が、吐出口22の内壁面22aのインクQに対する接触角よりも大きくなっており、撥インク表面を有している。撥インク部分16bの、インクQに対する接触角の好ましい範囲については後述する。
【0020】
撥インク部分16bは、撥インク性材料から構成されるか、あるいは、インクガイド16の所定範囲に撥インク性材料をコートするなどの表面処理が施されることによって形成される。撥インク部分16bに用いられる撥インク性材料は、インクジェットヘッド10で使用されるインクQに応じて選択される。
また、インクガイド16の支持部材等が吐出口22内に存在する場合には、この支持部材等の吐出口22内に存在する部分も、撥インク部分16bと同様の接触角を有するように構成すれば良い。
【0021】
吐出手段18は、インクジェットヘッド10からインクQのインク滴を吐出させる公知の吐出手段であり、各吐出部ごとに設けられる。例えば、インクジェットヘッド10を静電式のインクジェット記録装置に用いる場合には、吐出手段18として、各吐出口22に対応して吐出電極等が設けられるし、サーマル式あるいはバブルジェット(登録商標)式のインクジェット記録装置であれば加熱素子等が、ピエゾ式のインクジェット記録装置であれば、ピエゾ素子等がそれぞれ各吐出部ごとに設けられる。吐出手段18は、図示しない制御手段によって、記録媒体に記録する画像に応じて制御される。
【0022】
なお、インクジェットヘッド10を備えた本発明のインクジェット記録装置は、さらに、インクジェットヘッド10に接続されるインク供給系を有しており、このインク供給系によって、インクQを所定速度でインク室24に供給する。インク供給系は、インクタンクと、インクタンクとインク室24の供給口とを結ぶ供給管と、ポンプや各種の計器等を有して構成されている。また、このインクジェット記録装置は、必要に応じて、インク室24からインクQを回収するインク回収系を有していてもよい。
インクジェットヘッド10およびそのインク供給系等は、これらが実装されるインクジェット記録装置の記録形態に応じて、必要なインク色数分だけ用意されている。
【0023】
このようなインクジェットヘッド10は、吐出口22内の構造物、すなわちインクガイド16およびインクガイド16の支持部材に、撥インク部分(16b)を有することで、先端部分16aへのインクQの供給および先端部分16aからの吐出に必要な吐出力を低下させるものである。
インクジェットヘッド10においては、吐出手段18によって、インク室24のインクQが所定量だけ先端部分16aへ供給されると共に、先端部分16aから所定サイズのインク滴が吐出される。ここで、吐出口22においては、内壁面22aとインクガイド16の間に、インク室24から先端部分16aへの狭いインク供給路が形成されている。この狭いインク供給路を構成するインクガイド16の部分に、撥インク部分16bを設けることによって、撥インク部分16bにおけるインクQの引き抜き抵抗が小さくなり、この狭いインク供給路からインクQを引き抜く、または押し出すのに要する力を低下させることができ、吐出力を低下させることができる。また、先端部分16aへの供給が速やかに行われるので、インクQの供給不足による描画不良や、吐出遅れを防止することができる。
【0024】
また、撥インク部分16bを設けることにより、撥インク部分16bにインクQが付着することがないので、吐出口22の目詰まりを防止できるという効果もある。
【0025】
また、撥インク部分16bにおいてインクQの引き抜き抵抗を十分小さくするために、撥インク部分16bのインクQに対する接触角は、20度以上であるのが好ましく、30度以上であるのがより好ましい。
ただし、撥インク部分16bの接触角を大きくし過ぎると、インクQが撥インク部分16bで弾かれてしまい、吐出口22内を通過できず、先端部分16aへ供給されなくなってしまう。従って、撥インク部分16bのインクQに対する接触角は、90度以下とするのが好ましい。
【0026】
一方、吐出口22の内壁面22aは、インクQを吐出部近傍に引き出した状態を安定的に保ち、吐出前後においても、インクメニスカスMの吐出口プレート12と接する端部を維持できるように、インクQに対する接触角を小さくしておくのが好ましい。
【0027】
このように、吐出口22においては、内壁面22aのインクQに対する接触角を低いままにして、インクQを吐出部に安定的に引き出して、インクメニスカスMの端部を内壁面22aの記録媒体P側の縁部に固定すると共に、撥インク部分16bのインクQに対する接触角を内壁面22aよりも高くすることによって、インクQの吐出部(先端部分16a)への吐出毎の供給を、低吐出力で速やかに行うことを可能としている。
このような撥インク部分16bのインクQに対する接触角は、内壁面22aのインクQに対する接触角よりも大きく、好ましくは10度以上大きくすることで上記の効果を得ることができる。
【0028】
なお、撥インク部分16bは、少なくとも、インクガイド16の吐出口プレート12の吐出口22内部に存在する領域に設けられていれば良く、その一部領域にのみ設けられていても良いし、全領域に設けられていても良い。また、さらに基板14側あるいは先端部分16a側にまで広く設けられていても良いし、インクガイド16の全体が撥インク部分16bとなるように、インクガイド16が撥インク性物質で形成されていても良い。ただし、先端部分16aのインクQに対する接触角を大きくすると、インクQが先端部分16aから離れ易くなり、吐出手段18による吐出時に、所定量以上のインクQが吐出してしまったり、吐出時以外にもインクQが吐出してしまうという不都合が生じることもある。そのため、先端部分16aは撥インク部分16bとせず、インクQに対して所定の低い接触角(親インク性)を有するようにして、吐出させたインクQの尾部を切断して以後のインクQを留めるようにするのが好ましい。
【0029】
以上のようにして、インクメニスカスMを安定的に保ちつつ、吐出力を低下させることができるので、例えば、表面張力が小さいインクQを用いたり、内壁面22aとインクガイド16との間隙を大きくした場合のように、インクメニスカスMの維持が困難になって吐出安定性が得られ難くなることもない。
【0030】
次に、インクジェットヘッド10を備えたインクジェット記録装置における、インクジェットヘッド10の作用を説明する。
このインクジェット記録装置の装置電源がONにされると、インクジェットヘッド10のインク室22にはインクQの供給が開始される。インクQは、吐出口22の内壁面22aとインクガイド16(撥インク部分16b)の間の狭い空間を押し出され、あるいは引き出されて、インクガイド16の先端部分16aへ供給される。そして、先端部分16aにはインクメニスカスMが形成される。ここで、インクガイド16に撥インク部分16bが設けられているため、記録装置の始動時においても、速やかにインクQが先端部分16aに供給されて、記録開始時にも描画不良を生じることなく、当初から良好な記録を行うことが出来る。
【0031】
記録媒体に記録する画像に応じて吐出手段18が作動すると、所定量のインクQが、インク室24から吐出口22を経て先端部分16aへ供給されると共に、先端部分16aから所定量のインクQがインク滴として吐出され、記録媒体に向かって飛翔する。ここで、インクガイド16に撥インク部分16bが設けられているので、インクQが吐出口22の狭い空間を通過する際の抵抗力が小さい。従って、吐出手段18によるインク吐出力を小さくすることが出来る。
【0032】
所定量のインクQが飛翔した後は、新たに供給されたインクQによって、インクメニスカスMの形状が復帰する。内壁面22aは、インクQに対する接触角が小さく、インクQが滑りにくいので、インクQの吐出前後においても、先端部分16aの近傍に形成されたインクメニスカスMの端部を固定し、安定した記録を行うことが出来る。
【0033】
なお、本発明において、インク室24に入れるインクQは、溶媒中に顔料または染料を配合したものを用いる。溶媒としては、記録用インクに用いられる公知の溶媒を各種用いることができる。また、顔料および染料としては、従来公知の顔料および染料を特に限定することなく用いることができる。
【0034】
なお、上述の例では、インクガイド16の先端が吐出口プレート12の記録媒体P側の表面から突出している場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、インクガイド16の先端は吐出口プレート12の表面から引き込んだ位置、すなわち吐出口22の内部に位置していても良い。
また、吐出口22の内部におけるインクガイド16の位置は、略中央部に配置される形態には限定されず、吐出させるためのインクQを案内するように、所定の位置に配置すれば良い。
【0035】
次に、本発明のインクジェットヘッドを静電式インクジェットヘッドとして用いた例を、図2および図3を参照して詳細に説明し、その静電式インクジェットヘッドを用いた静電式インクジェット記録装置および記録方法について説明する。
静電式インクジェットヘッドは、画像データに応じて、インクジェットヘッドの吐出電極に所定の電圧を印加することにより、吐出電極との間で所定のバイアス電位に保持された記録媒体あるいは記録媒体の背面の対向電極に対して、静電力を利用してインクを吐出させ、画像データに対応した画像を記録媒体上に記録するためのものである。
図2は、本発明のインクジェット記録装置で用いられる本発明のインクジェットヘッドの他の実施例の概略構成を示す模式的断面図であり、図3は、図2のインクジェットヘッド30を記録媒体Pの位置から見た上面図である。
【0036】
同図に示す静電式インクジェットヘッド30は、帯電された顔料等の微粒子成分(例えば、トナー等)を含むインクQを静電力により吐出させて、画像データに応じて画像を記録媒体P上に記録するものであり、絶縁性基板32と、ヘッド基板34と、インクガイド36と、吐出電極38と、信号電圧源40と、浮遊導電板46とを備えている。また、インクジェットヘッド30の吐出部に対向する位置には、記録媒体Pを支持する対向電極48と、記録媒体Pの帯電ユニット50とを備えている。
【0037】
なお、図2に示す例は、複数の吐出部が2次元的に配置されたマルチチャンネル構造のインクジェットヘッド30を構成する1つの吐出手段となる吐出電極のみを概念的に表したものであり、インクジェットヘッド30において、吐出電極の個数や物理的な配置等は自由に選択することができるのは、上述の例と同様である。
【0038】
絶縁性基板32は、図1のインクジェットヘッド10の吐出口プレート12に相当するもので、ポリイミド等の樹脂やセラミクス等から形成されている。絶縁性基板32には、吐出口42が所定の間隔で複数開孔されており(図3参照)、各吐出口42ごとに、吐出手段である吐出電極38が設けられている。
また、ヘッド基板34は、絶縁性基板32から所定間隔離間して設けられている。絶縁性基板32およびヘッド基板34の間には吐出部へインクQを供給するためのインクリザーバ(インク室)として機能するインク流路44が形成されている。
【0039】
インク流路44内のインクQは、吐出電極38に印加される電圧と同極性に帯電した微粒子成分を含み、記録時には、図示されていないインク循環機構によって、所定方向、図示例ではインク流路44内を右側から左側へ向かって所定の速度(例えば、200mm/sのインク流)で循環される。以下、インク中の着色粒子が正帯電している場合を例にとって説明を行う。また、インクジェットヘッド30において用いられるインクQは、インク溶媒として、アイソパー(登録商標)Gを用いたものである。なお、インクQとしては、これ以外にも、後述する各種のインクを使用することができ、本発明は、そのいずれの場合にも効果を有するものである。
【0040】
このようなインクQに対し、ポリイミドから形成される絶縁性基板32に開孔された吐出口42の内壁面42aは、インクQに対する接触角が低くなっている。本実施例のように、インク溶媒としてアイソパー(登録商標)G等を用いた場合には、内壁面42aのインクQに対する接触角は、20度以下とするのが好ましい。
【0041】
インクガイド36は、ポリイミドからなる本体と、フッ素樹脂からなる撥インク部分36bから形成されている。インクガイド36は、突状先端部分36aを持つ所定厚みの平板状の部材であり、各吐出口42の位置において、ヘッド基板34の上に配置されている。このインクガイド36は、吐出口42の略中央を貫通し、その先端部分36aが絶縁性基板32の記録媒体P側の表面よりも上部に突出している。図示例では、撥インク部分36bは、インクガイド36の吐出口42の内部に存在する部分、すなわち吐出口42の内壁面42aに囲まれた部分の略全面に設けられている。
【0042】
撥インク部分36bを構成するフッ素樹脂としては、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、3フッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)等が好適に使用される。これらの何れかから形成された撥インク部分36bは、インクQに対する接触角が30〜60度と、大きくなっている。
【0043】
なお、インクガイド36の全体をポリイミドで形成し、所定領域に撥インク性材料をコートして撥インク部分36bを得ても良い。この場合には、コートする撥インク性材料としては、サイトップ(登録商標)、FTP、PFA等の含フッ素共重合体である撥インク剤が好適に使用される。これらを用いて形成された撥インク部分36bは、インクQに対する接触角が30〜60度と、大きくなっている。
【0044】
なお、インクガイド36の中央部分には、図中上下方向に毛細管現象によってインクQを先端部分36aに集めるインク案内溝となる切り欠きを形成しても良い。
なお、インクガイド36の先端部分36aの側は、対向電極48側へ向かうに従って次第に細く略三角形(ないしは台形)に成形されている。なお、インクガイド36の、インクQが吐出される先端部分(最先端部)36aには、金属が蒸着されているのが好ましい。インクガイド36の先端部分36aの金属蒸着はされていなくても良いが、この金属蒸着により、インクガイド36の先端部分36aの誘電率が実質的に無限大となり、強電界を生じさせやすくできるという効果があるので、金属蒸着を行うのが好ましい。なお、インクガイド36の形状は、インクQ、特に、インクQ内の帯電微粒子成分を絶縁性基板32の吐出口42を通って先端部分36aに濃縮させることができれば、特に、制限的ではなく、例えば、先端部分36aは、突状でなくても良いなど適宜変更してもよいし、従来公知の形状とすることができる。
【0045】
また、吐出電極38は、絶縁性基板32に開孔された吐出口42の周囲を囲むように、絶縁性基板32の図中上側、すなわち記録媒体P側の面に、吐出電極毎にリング状の円形電極として配置されている。吐出電極38は、画像デ−タや印字データ等の吐出データ(吐出信号)に応じたパルス信号(所定のパルス電圧、例えば低電圧レベルの0V、高電圧レベルの800〜1000V)を発生する信号電圧源40に接続されている。この吐出電極38は、図3に示すように、2次元的に配置されている。
なお、吐出電極38は、リング状の円形電極に限定されず、インクガイド36の外周を囲うように離間して配置される囲繞電極であれば、どのようなものでも良い。
【0046】
また、浮遊導電板46は、インク流路44の下方に配置され、電気的に絶縁状態(ハイインピーダンス状態)となっている。図示例では、ヘッド基板34の内部に配置されている。なお、本発明においては、浮遊導電板46は、インク流路44の下方であれば、どこに配置しても良く、例えば、ヘッド基板34の下方であっても良いし、吐出電極の位置よりもインク流路44の上流側で、かつヘッド基板34の内部に配置するようにしても良い。
この浮遊導電板46は、画像の記録時に、吐出電極に印加された電圧値に応じて、誘起された誘導電圧が発生し、インク流路44内のインクQにおいて、その微粒子成分を絶縁性基板32側へ泳動させて濃縮させるためのものである。従って、浮遊導電板46は、インク流路44よりもヘッド基板34側に配置される必要がある。また、浮遊導電板46は、吐出電極の位置よりもインク流路44の上流側に配置される方が好ましい。この浮遊導電板46により、インク流路44内の上層の帯電微粒子成分の濃度を高めるため、絶縁性基板32の吐出口42を通過するインクQ内の帯電微粒子成分の濃度を所定濃度に高めることができ、インクガイド36の先端部分36aに濃縮させて、インク液滴Rとして吐出させるインクQ内の帯電微粒子成分の濃度を所定濃度に安定させることができる。
また、浮遊導電板を配置することにより、稼動チャンネル数に応じて誘導電圧が変化するため、浮遊導電板への電圧を制御しなくても、吐出に必要な帯電微粒子を供給するため、目詰まりを防止することができる。なお、浮遊導電板に電源を接続し、所定の電圧を印加するようにしても良い。
【0047】
また、対向電極48は、インクガイド36の先端部分36aに対向する位置に配置され、電極基板48aと、電極基板48aの図中下側の表面、すなわちインクガイド36側の表面に配置される絶縁シート48bで構成され、電極基板48aは、接地される。また、記録媒体Pは、対向電極48の図中下側の表面、すなわちインクガイド36側の表面、すなわち絶縁シート48bの表面に支持され、例えば静電吸着されており、対向電極48(絶縁シート48b)は、記録媒体Pのプラテンとして機能する。
ここで、少なくとも記録時には、帯電ユニット50によって、対向電極48の絶縁シート48bの表面、すなわち記録媒体Pは、吐出電極38に印加される高電圧(パルス電圧)と逆極性の所定の負の高電圧、例えば、−1.5kVに帯電された状態に維持される。その結果、記録媒体Pは、帯電ユニット50により負帯電して、吐出電圧18に対して負の高電圧に常時バイアスされるとともに、対向電極48の絶縁シート48bに静電吸着される。
【0048】
ここで、帯電ユニット50は、記録媒体Pを負の高電圧に帯電させるためのスコロトロン帯電器50aと、スコロトロン帯電器50aに負の高電圧を供給するバイアス電圧源50bとを有している。なお、本発明に用いられる帯電ユニット50の帯電手段としては、スコロトロン帯電器50aに限定されず、コロトロン帯電器、固体チャージャ、放電針などの種々の放電手段を用いることができる。なお、図示例においては、対向電極48を電極基板48aと絶縁シート48bとで構成し、記録媒体Pを、帯電ユニット50によって負の高電圧に帯電させることにより絶縁シート48bの表面に静電吸着させているが、本発明はこれに限定されず、対向電極48を電極基板48aのみで構成し、対向電極48(電極基板48a自体)を負の高電圧のバイアス電圧源に接続して、負の高電圧に常時バイアスしておき、対向電極48の表面に記録媒体Pを静電吸着させるようにしても良い。
また、記録媒体Pの対向電極48への静電吸着と、記録媒体Pへの負の高電圧への帯電または対向電極48への負のバイアス高電圧の印加とを別々の負の高電圧源によって行っても良いし、対向電極48による記録媒体Pの支持は、記録媒体Pの静電吸着に限られず、他の支持方法や支持手段を用いても良い。
【0049】
なお、インクジェットヘッド30は、図3に示すように、2次元的に配列されているため、隣接する吐出電極間で生じる電界干渉を抑制するためのガード電極を有していても良い。このガード電極は、各吐出部に必要な電界以外を遮蔽するように、隣接する吐出電極38の間において、吐出電極38と同一面またはその記録媒体P側に配置されれば良い。
【0050】
以上のように構成されるインクジェットヘッド30においては、先端部分36aの近傍と負帯電された記録媒体Pの間に生じている静電界によって、インクQが、インク流路44から吐出口42を通過して先端部分36aに供給され、先端部分36aにおいてインクメニスカスMを形成する。ここで、インクガイド36の吐出口42の内部の部分には撥インク部分36bが設けられているので、インクQは速やかに吐出口42を通過でき、先端部分36aに速やかに供給される。そして、先端部分36aの近傍には、静電力により、インクQ中の正帯電している着色微粒子が濃縮される。
【0051】
信号電圧源40によって、吐出電極38に、画像に応じて所定の正の電圧が印加されると、正帯電している微粒子が先端部分36aで濃縮されたインクQは、所定サイズのインク液滴Rとして吐出され、記録媒体Pに引き寄せられて飛翔し、記録媒体Pの所定位置に着弾して画像を形成する。ここで、撥インク部分36bが設けられていることにより、インクQをインク流路44から先端部分36aへ引き出すのに要する力が小さくて済み、従ってインク液滴Rの吐出力、すなわち吐出電極38に印加する電圧を小さくすることができる。また、吐出口42の内壁面42aは、吐出前後においてもインクメニスカスMの端部を維持するので、インク液滴RのサイズおよびインクメニスカスMの形状を安定して保つことができ、安定した記録を行うことができる。
【0052】
ここで、本発明者らは、本発明に係る、上述の静電式インクジェットヘッド30を用いた静電式インクジェット記録装置によって、実際に記録を行って、本発明のインクジェットヘッド30の記録性能を測定した。
図2の静電式インクジェットヘッド30において、吐出口42の直径を130μmとし、その略中央に、厚さ(図中奥行き)75μm、幅75μmのインクガイド36を、その先端が絶縁性基板32の表面から150μm突出するように配置した。吐出電極38は、内径150μm、外形250μmの円形電極とし、吐出口42と略同心となるように、絶縁性基板32の記録媒体P側の面に配置した。インクQとしては、溶媒であるアイソパー(登録商標)Gの中に、正帯電した微粒子成分を含んだインクを用い、インク流路44を流速約200mm/sで循環させた。また、対向電極48は、記録媒体Pがインクガイド36の先端から500μm離間するように配置した。記録媒体Pは、帯電ユニット50によって負に帯電し、吐出電極38に印加する電圧を800〜1000Vで変化させた。
また、絶縁性基板32は、ポリイミドで形成し、吐出口42の内壁面42aのインクQに対する接触角は5度とした。
また、インクガイド36は、ポリイミドで形成し、インクガイド36の内壁面42aで囲まれた部分の全部に撥インク部分36bを設けた。この撥インク部分36bは、サイトップ(登録商標)をコートすることによって形成し、その表面のインクQに対する接触角は、内壁面42aの接触角よりも35度大きい40度とした。
【0053】
このインクジェットヘッド30を備える記録装置において、インク吐出に必要なパルス電圧を測定した。その結果、撥インク部分36bを有さず、インクガイド36の全体の接触角が5度のインクガイド36を用いたインクジェットヘッドの場合には、インク液滴Rを吐出させるために、吐出電極38に1000Vのパルス電圧および−1.5kVのバイアス電圧を印加する必要があったが、撥インク部分36bを設けた本発明のインクジェットヘッド30では、吐出に要するパルス電圧は800Vに、かつ、バイアス電圧は−1.3kVに低下した。
【0054】
また、撥インク部分36bを有さないインクガイド36を用いたインクジェットヘッドの場合には、5kHzで描画した際に、記録開始時の最初の3ドット分のドット径が小径化していたが、撥インク部分36bを設けた本発明のインクジェットヘッド30では、最初の1ドットから所定のドット径で描画することが可能であった。
【0055】
なお、上述した静電式インクジェットヘッド30は、絶縁性基板32の図中上面に、円形電極などの1層電極構造の吐出電極38を配置するものであるが、本発明はこれに限定されず、吐出電極38を絶縁性基板32の上下面に配置する2層電極構造で構成しても良い。
図4(a)および(b)に、本発明の別の実施形態の2層電極構造の吐出電極を持つ静電式インクジェットヘッド60の概略を示す。なお、同図に示すインクジェットヘッド60は、絶縁性基板32の図中下面の第2駆動電極62と、第2駆動電極62の下方の絶縁層66aと、絶縁性基板32の図中上面の吐出電極(第1駆動電極)38の上方の絶縁層66b、ガード電極64および絶縁層66cとを備えている点を除いて、図2に示すインクジェットヘッド30と同様な構成を有するものであるので、同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明は省略し、主として、相違点について説明する。
【0056】
図4(a)に示すインクジェットヘッド60においては、吐出電極38を、絶縁性基板32を挟むように、図中上面に第1駆動電極として配置される吐出電極(以下、第1駆動電極とする)38と、 図中下面に配置される第2駆動電極62との2層電極構造としている。ここで、第1駆動電極38および第2駆動電極62は、それぞれ、絶縁性基板32を挟んで図中上面および下面に、絶縁性基板32に開孔された貫通孔68の周囲を囲むように、吐出部毎にリング状に設けられた円形電極である。また、インクジェットヘッド60は、さらに、 第2駆動電極62の下方(下面)を覆う絶縁層66aと、第1駆動電極38の上方に絶縁層66bを介して配置されるシート状のガード電極64と、ガード電極64の上面を覆う絶縁層66cとを備えている。そして、図4(b)に示すように、行方向(主走査方向)に配置された複数の第1駆動電極38は相互に接続され、列方向(副走査方向)に配置された複数の第2駆動電極62は相互に接続される。
【0057】
また、貫通孔68は、絶縁性基板32の下方の絶縁層66aならびに上方の絶縁層66bおよび66cをも貫通して穿孔されている。すなわち、貫通孔68は、絶縁層66a、絶縁性基板32ならびに絶縁層66bおよび66cの積層体を貫通する。この貫通孔68には、 絶縁層66a側からインクガイド36が挿入され、 インクガイド36の先端部分36aは、絶縁層66cから突出している。なお、図示例においては、 インクガイド36の先端部分36aは、インク案内溝が形成されていないが、 インクQおよびインクQ内の帯電微粒子成分の先端部分36aへの濃縮を促進するために、形成しても良い。また、インクガイド36の貫通孔68の内部に存在する部分には、撥インク部分36bが設けられている。
【0058】
ガード電極64は、隣接する吐出部の第1駆動電極38の間に配置され、隣接する吐出部のインクガイド36の間に生じる電界干渉を抑制するためのものである。ガード電極64は、各吐出部に必要な電界以外を遮蔽するように、隣接する吐出電極38の間の所定領域において、吐出電極38の記録媒体P側に配置されている。
【0059】
記録時には、本実施形態の場合、第1駆動電極38が1行ずつ順番に高電圧レベルまたはハイインピーダンス状態(オン状態)とされ、残りの全ての第1駆動電極38は接地レベル(接地状態:オフ状態)に駆動される。また、第2駆動電極62が、画像データに応じて列単位で高電圧レベルまたは接地レベルに駆動される。なお、別の実施形態として、第1および第2駆動電極38および62を逆の状態に駆動してもよい。
【0060】
図4に示すように、第1および第2駆動電極38および62は、2層電極構造に構成され、マトリクス状に配置される。これらの第1および第2駆動電極38および62によって、各々の吐出部におけるインクの吐出/非吐出が制御される。すなわち、第1駆動電極38が高電圧レベルまたはフローティング状態で、かつ第2駆動電極62が高電圧レベルの場合にはインクが吐出し、第1駆動電極38または第2駆動電極62の一方が接地レベルの場合にはインクは吐出しない。
【0061】
図4(b)は、第1および第2の駆動電極38および62の配置を表す一実施例の概念図である。同図に示すように、例えばインクジェットヘッド60が15個(15組)の吐出電極(個別電極)を備える場合、15個の個別電極は、主走査方向の1行当り5個(1,2,3,4,5)ずつ並べられ、かつ副走査方向に3行(A,B,C)に配置される。記録時には、同一行に配置された5個の第1駆動電極38は同時かつ同一電圧レベルに駆動される。同様に、同一列に配置された3個の第2駆動電極62は同時かつ同一電圧レベルに駆動される。
【0062】
従って、本実施形態の静電式インクジェットヘッド60においては、複数の個別電極を行方向および列方向に対して2次元的に配置することができる。
例えば、図4(b)に示すインクジェットヘッドの場合、第1駆動電極38のA行の5個の個別電極は、行方向に対して所定の間隔を離して配置される。B行およびC行についても同様である。また、B行の5個の個別電極は、A行に対して、列方向に所定の間隔を離して、かつ、行方向に対して、それぞれA行の5個の個別電極とC行の5個の個別電極との間に配置される。同様に、C行の5個の個別電極は、B行に対して、列方向に所定の間隔を離して、かつ、行方向に対して、それぞれB行の5個の個別電極とA行の5個の個別電極との間に配置される。
【0063】
このように、第1駆動電極38の各行に含まれる個別電極をそれぞれ行方向にずらして配置することにより、記録媒体Pに記録される1行を、行方向に3分割している。
すなわち、記録媒体Pに記録される1行は、行方向に対して、第1駆動電極38の行数に相当する複数のグループに分割され、時分割で順次記録される。例えば、図4(b)に示す例の場合、第1駆動電極38のA,B,C行を順次記録することにより、記録媒体P上に1行分の画像が記録される。この場合、上記のように、記録媒体Pに記録される1行は行方向に3分割され、時分割により順次記録が行われる。
【0064】
図5、図6(a)および(b)に、図4の静電式インクジェットヘッド60の概略構成をさらに具体化して示す。図5は、本実施形態のインクジェットヘッドの一実施例の模式的斜視図であり、図6(a)は、図5に示すインクジェットヘッドの模式的断面図であり、図6(b)は、図6(a)のVII −VII 線矢視図である。
【0065】
本実施形態において、ガード電極64は、金属板などの各吐出電極に共通なシート状の電極であり、2次元的に配列されている各吐出電極毎の貫通孔68の周囲に形成された第1駆動電極38に相当する部分が穿孔されている(図6(a)および(b)参照)。
【0066】
ところで、ガード電極64の図中上側は、貫通孔68を除いて絶縁層66cによって覆われ、ガード電極64と第1駆動電極38との間には、絶縁層66bが介在し、両電極64と38とを絶縁している。すなわち、ガード電極64は、絶縁層66cと絶縁層66bとの間に配置され、第1駆動電極38は、絶縁層66bと絶縁性基板32との間に配置される。
すなわち、図7(b)に示すように、絶縁性基板32の上面には、従って、絶縁層66bと絶縁性基板32との間(図6参照)には、各吐出部毎の貫通孔68の周囲に形成された第1駆動電極38が2次元的に配列されており、列方向の複数の第1駆動電極38が相互に接続されている。
【0067】
また、図7(c)に示すように、絶縁層66aの上面には、従って、絶縁性基板32の下面には、すなわち、絶縁層66aと絶縁性基板32との間には(図6参照)、各吐出電極毎の貫通孔68の周囲に形成された第2駆動電極62が2次元的に配列されており、行方向の複数の第2駆動電極62が相互に接続されている。
また、本実施形態において、各吐出電極の吐出電極(駆動電極)18、例えば第1および第2駆動電極38および62からのインク流路44方向への反発電界を遮蔽するために、第1および第2駆動電極38および62の流路側にシールド電極を設置しても良い。
【0068】
上述したように、第1および第2駆動電極38および62は、2層電極構造に構成され、マトリクス状に配置される。これらの第1および第2駆動電極38および62によって、各々の吐出部におけるインクの吐出/非吐出が制御される。すなわち、第1駆動電極38が1行ずつ駆動され、第2駆動電極62が画像データに応じて列単位で駆動され、吐出部において、第1駆動電極38が高電圧レベルまたはフローティング状態で、かつ第2駆動電極62が高電圧レベルの場合にはインクが吐出し、第1駆動電極38または第2駆動電極62の一方が接地レベルの場合にはインクは吐出しない。
【0069】
なお、本実施形態では、画像信号に応じて、第1および第2駆動電極38および62にパルス電圧を印加し、両電極ともに高電圧レベルとなった時に、インク吐出を行うようにしても良い。
例えば、図8に示すインクジェットヘッド60において、例えばインクQ中の微粒子成分の帯電は正極(+)である、すなわち正荷電粒子であるとした時、インクジェットヘッド60のインク流路44内にインクQを矢印a方向に循環させ、吐出部のインクガイド36の先端部分36aから吐出されたインクQ(インク液滴)中の正荷電粒子が記録媒体Pに引き付けられるような電界、すなわち飛翔電界を第1および第2駆動電極38および62と、記録媒体Pとの間に形成する。例えば、インクガイド36の先端部分36aと記録媒体Pとの間の間隔(ギャップ)は、200〜1000μmとされるが、ギャップが500μmの時に、1kV〜2.5kVの電位差を設けることにより、飛翔電界を形成する。
さらに、浮遊導電板46には、第1または第2駆動電圧38または62に印加された平均電圧により、この平均電圧より低い電圧の誘導電圧がほぼ定常的に生じるため、インクリザーバとして機能するインク流路44内のインクQ中の正電荷粒子が上方に引き付けられるような電界(以下、例えば、泳動電界とする)を形成し、インク流路44の上部にインクQ中の正電荷粒子を偏在させる。例えば、インク流路44の厚み数mmに対して数百V程度の電位差を設けて、泳動電界を形成する。
【0070】
例えば、図8に示すインクジェットヘッド60において、記録媒体Pを所定の負の高電圧に帯電させ(または、対向電極48を所定の高電圧にバイアスし)、第1および第2駆動電極38および62を共に0V(接地状態)として、飛翔電界を形成し、ガード電極64は0V(接地状態)とする。
この時、インクQは、電気泳動現象および毛細管現象によって、インク流路44から貫通孔68とインクガイド36の間を上昇し、先端部分36aに集まる。先端部分36aに集まったインクQは、先端部分36aで、またはインクQの表面張力等で押し留められ、インクQ中の正荷電粒子は、高濃度化する。
【0071】
次に、図9に示すように、画像信号に応じて、第1および第2駆動電極38および62にパルス電圧を印加し、正荷電粒子濃度の高まったインク液滴Rがインクガイド36の先端部分36aから吐出される。例えば、初期粒子濃度が3〜15%の場合、吐出インク液滴Rの粒子濃度は30%以上であるのが好ましい。なお、パルス電圧のパルス幅は、特に制限的ではないが、例えば、数十μs〜数百μsとすることができる。また、記録媒体Pに記録されるドット径は、パルス電圧の大きさまたは印加時間に依存するので、これらを調整することにより、ドット径も調整することができる。
【0072】
ここで、インク液滴Rを好適に吐出するための条件としては、本発明のインクジェットヘッド60においては、インクガイド36に撥インク部分36bが設けられているので、撥インク部分36bを有さないインクガイドを用いた場合に比べ、記録媒体Pの帯電電圧値(または、対向電極48のバイアス電圧値)を低くすることができる。例えば、撥インク部分36bを有さないインクガイドを用いた場合には、バイアス電圧を−1.5kVとする必要があったものが、撥インク部分36bを設けることによりバイアス電圧を−1.3kVに低下させることができた。
また、撥インク部分36bが設けられていることにより、第1および第2駆動電極38および62に印加するパルス電圧を低くすることができる。例えば、撥インク部分36bが無い場合には、第1および第2駆動電極38および62にそれぞれ500Vのパルス電圧を印加する必要があったが、撥インク部分36bを設けることにより、それぞれのパルス電圧を400Vに低下させても、インク吐出を好適に行うことができた。
【0073】
なお、本実施形態のインクジェットヘッド60においては、第1駆動電極38または第2駆動電極62のどちらで、または両方で、インク吐出/非吐出の制御を行うかは特に制限的ではないが、第1駆動電極38または第2駆動電極62の一方が接地レベルの場合にはインクQが吐出せず、第1駆動電極38がハイインピーダンス状態または高電圧レベルで、かつ第2駆動電極62が高電圧レベルの場合にだけインクQが吐出するようにするのが良い。
【0074】
ところで、本実施形態のインクジェットヘッド60においては、図示例のように、ガード電極64を隣接する第1駆動電極38の間に設けているが、本発明はこれに限定されず、第1および第2駆動電極38および62をマトリックス駆動する場合には、例えば、下層の第2駆動電極62を1列毎に順次駆動し、画像データに応じて、上層の第1駆動電極38を駆動するようにする場合には、第1駆動電極38の各行の間ににのみガード電極を設けるようにしても良い。このような場合にも、記録時にガード電極64を所定のガード電位、例えば接地レベル等にバイアスすることにより、隣接する吐出部の電界の影響を排除することができる。
【0075】
また、吐出電極38を駆動する時、上層の第1駆動電極38の行を順次オンし、画像データに応じて、下層の第2駆動電極62をオン/オフした場合、すなわち、行列の並びを逆にした場合、第2駆動電極62が画像データに応じて駆動されるため、列方向のそれぞれの吐出電極を中心として、その両側の吐出電極は、高電圧レベルまたは接地レベルに頻繁に変化する。
しかし、行方向は、第1駆動電極38の1行毎に駆動され、行方向のそれぞれの吐出電極を中心として、その両側の吐出電極の第1駆動電極38は常に接地レベルになるため、この両側の吐出電極の行がガード電極の役割を果す。このように、上層の第1駆動電極38で各行を順次オンし、画像データに応じて下層の第2駆動電極62を駆動する場合には、ガード電極を設けなくとも、隣接する吐出電極の影響を排除し、記録品質を向上させることができる。
【0076】
さらに、本実施形態のインクジェットヘッド60においては、インク流路44の底面を構成すると共に、第1駆動電極38および第2吐出電極44に印加されたパルス状の吐出電圧によって定常的に生じる誘導電圧により、インク流路44内の正に帯電したインク粒子(荷電粒子、すなわち帯電微粒子成分)を上方へ向けて(すなわち記録媒体P側に向けて)泳動させる浮遊導電板46が設けられている。また、浮遊導電板46の表面には、電気絶縁性である被覆膜(図示せず)が形成されており、インクへの電荷注入等によりインクの物性や成分が不安定化することを防止する。絶縁性被覆膜の電気抵抗は、1012Ω・cm以上が望ましく、より望ましくは1013Ω・cm以上である。また、絶縁性被覆膜は、インクに対して耐腐食性であることが望ましく、これにより浮遊導電板46がインクに腐食されることが防止される。また、浮遊導電板46は、下方から絶縁部材で覆われており、このような構成により、浮遊導電板46は、完全に電気的絶縁浮遊にされている。
浮遊導電板46は、ヘッドの1ユニットにつき1個以上である(例えば、C、M、Y、Kの4つのヘッドがあった場合、浮遊導電板数は最低各1個づつ有し、CとMのヘッドユニット間で共通の浮遊導電板とすることはない)。
【0077】
なお、上述した2層電極構造の吐出電極を持つ静電式インクジェットヘッドの各実施例では、対向電極(記録媒体P)を例えば−2.1kVに帯電し、第1駆動電極および第2駆動電極の何れか一方または両方が負の高電圧(例えば−400V)の時にはインクが吐出せず、第1駆動電極および第2駆動電極の両方が接地レベル(0V)の場合にだけインクが吐出するようにしても良い。
【0078】
なお、上記の各実施例において、吐出電極38(第1駆動電極38、第2駆動電極62)の電極形状は、円形電極に限定されず、略円形であっても、分割円形電極であっても、平行電極または略平行電極であっても良い。
【0079】
なお、本発明の一態様である静電式インクジェットヘッドにおいて、インク流路44に入れるインクQは、上述したもの以外にも、次のようなものが使用可能である。すなわち、インクQとしては、粒径0.1〜5μm程度の着色荷電粒子(着色帯電微粒子成分)をキャリア液中に分散したものを用いる。なお、インクQ中には、着色荷電粒子とともに、印刷後の画像の定着性を向上させるための分散樹脂粒子を、適宜含有させてもよい。キャリア液は、高い電気抵抗率(10Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上、また、好ましくは1016Ω・cm以下)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であることが好ましい。電気抵抗率の高いキャリア液を使用すると、吐出電極によって印加される電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けることを少なくでき、荷電粒子(帯電微粒子成分)の濃度を高めることができ、荷電粒子を濃縮することができる。また、電気抵抗率の高いキャリア液は、隣接する記録電極間での電気的導通の防止にも寄与しうる。また、このような程度の電気低効率の液体からなるインクを用いると、低電界下でも、インクの吐出を良好に行うことができる。
【0080】
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。このような比誘電率の範囲とすることによって、誘電性液体中の荷電粒子に有効に電界が作用され、泳動が起こりやすくなる。それにより、溶媒の分極を抑え、電界が緩和されることを抑えることができ、滲みの少ない良好な画像濃度のドットを形成することができる。
【0081】
本発明の一態様である静電式インクジェットヘッドに用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0082】
上記の誘電性液体(非水溶媒)中に、分散される着色粒子は、色材自身を分散粒子として誘電性液体中に分散させてもよいし、定着性を向上させるための分散樹脂粒子中に含有させてもよい。含有させる場合、顔料などは分散樹脂粒子の樹脂材料で被覆して樹脂被覆粒子とする方法などが一般的であり、染料などは分散樹脂粒子を着色して着色粒子とする方法などが一般的である。色材としては、従来からインクジェットインク組成物、印刷用(油性)インキ組成物、あるいは静電写真用液体現像剤に用いられている顔料および染料であればどれでも使用可能である。
【0083】
インク中に分散されたインク粒子、すなわち、着色粒子(微粒子)は、樹脂(粒子)と色材(粒子)とを含むものであるのが好ましい。
ここで、インク中に分散されたインク粒子の含有量(着色粒子および/または樹脂粒子の合計含有量)は、印刷画像濃度、均一な分散液の形成、吐出ヘッドでのインクの目詰まりの抑制という観点から、インク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。
【0084】
色材として用いる顔料としては、無機顔料、有機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ぺリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、等の従来公知の顔料を特に限定することなく用いることができる。
【0085】
色材として用いる染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、アニリン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ペンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料、等の油溶性染料が好ましい。
【0086】
また、誘電性溶媒中に分散された着色粒子および/または樹脂粒子等のインク粒子の平均粒径は、0.1μm〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2μm〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4μm〜1.0μmの範囲である。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
【0087】
なお、インクQ中のインク粒子(分散樹脂粒子および/または着色粒子あるいは色材粒子)は、好ましくは正荷電または負荷電の検電性粒子である。
これらのインク粒子に検電性を付与するには、湿式静電写真用現像剤の技術を適宜利用することで達成可能である。具体的には、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の検電材料および他の添加剤を用いることで行われる。
【0088】
また、インク組成物として、粘度は0.5〜5mPa・secの範囲が好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、さらに好ましくは0.7〜2.0mPa・secの範囲である。着色粒子は荷電を有し、必要に応じて電子写真用液体現像剤に用いられている種々の荷電制御剤が使用でき、その荷電量は5〜200μC/gの範囲が望ましく、より好ましくは10〜150μC/g、さらに好ましくは15〜100μC/gの範囲である。また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化する事もあり、下記に定義する分配率Pが、50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、インク組成物の電気伝導度、σ2は、インク組成物を遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
以上のようなインク組成物とすることによって、荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
【0089】
一方、インク組成物の電気伝導度σ1は、100〜3000pS/cmの範囲が好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、さらに好ましくは200〜2000pS/cmの範囲である。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、吐出電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。また、インク組成物の表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/mさらに好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、吐出電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
【0090】
なお、本発明の一態様である静電式インクジェットヘッドにおいては、従来のインクジェット方式のように、インク全体に力を作用させて、インクを記録媒体に向けて飛翔させるのではなく、主に、キャリア液体に分散させた固形成分である帯電微粒子成分(荷電トナー粒子)に力を作用させて、飛翔させるものである。その結果、普通紙を初めとして、非吸収性のフィルム、例えばPETフィルムなどの種々の記録媒体に画像を記録することができ、また、記録媒体上で、滲みや流動を生じることなく、種々の記録媒体に対して、高画質な画像を得ることができる。
【0091】
また、上記の例では、インク中の着色荷電粒子を正帯電させ、記録媒体あるいは記録媒体の背面の対向電極を負の高電圧にして、吐出したインクジェットによって画像記録を行うインクジェット式記録装置について説明したが、本発明はこれには限定されず、逆に、インク中の着色荷電粒子を負に帯電させ、記録媒体または対向電極を正の高電圧にして、インクジェットによる画像記録を行っても良い。このように、着色荷電粒子の極性を上記の例と逆にする場合には、静電吸着手段、対向電極、静電式インクジェットヘッドの駆動電極への印加電圧極性等を上記の例と逆にすれば良い。
【0092】
また、本発明の一態様である静電式インクジェットヘッドおよび記録装置は、帯電した色材成分を含むインクを吐出するものに限定されるものではなく、荷電粒子を含む液体を吐出させる液体吐出ヘッドであれば特に制限されず、例えば、上記静電式インクジェット記録装置の他に、帯電粒子を利用して液滴を吐出して対象物を塗布する塗布装置に適用することができる。
【0093】
以上、本発明に係るインクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法について、種々の実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記種々の実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0094】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、吐出部へのインク供給および吐出に必要な吐出力を低下させて低エネルギ化を実現すると共に、吐出力を掛けてから正確なサイズのインク液滴を吐出するまでの遅れ時間を短縮し、かつ、インクメニスカスは安定的に保持して、安定したインク吐出により画像記録を正確に行うことのできるインクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェットヘッドの一実施例の概略構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明に係るインクジェットヘッドの他の実施例の概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】図2のインクジェットヘッドの上面図である。
【図4】(a)は、本発明に係る静電式インクジェットヘッドの吐出電極の他の実施例の概略構成を示す模式的斜視図であり、(b)は、(a)に示す個別電極に用いられる第1および第2駆動電極の配置を表す一実施例の模式的斜視図である。
【図5】本発明に係る静電式インクジェットヘッドの他の実施例の概略構成を示す模式的斜視図である。
【図6】(a)は、図5に示すインクジェットヘッドの概略構成を示す模式的断面図であり、(b)は、(a)のVII −VII 線切断面図である。
【図7】(a)、(b)および(c)は、それぞれ図6(b)のA−A線、B−B線およびC−C線矢視図である。
【図8】図5に示すインクジェットヘッドの作用を説明するための概念図である。
【図9】図5に示すインクジェットヘッドの記録動作を説明するための概念図である。
【符号の説明】
10、30、60 インクジェットヘッド
12 吐出口プレート
14 基板
16、36 インクガイド
16a、36a 先端部分
16b、36b 撥インク部分
18 吐出手段
20 隔壁
22、42 吐出口
22a、42a 内壁面
24 インク室
32 絶縁性基板
34 ヘッド基板
38 吐出電極
40 信号電圧源
44 インク流路
46 浮遊導電板
48 対向電極
50 帯電ユニット
62 第2駆動電極
64 ガード電極
66a、66b、66c 絶縁層
68 貫通孔

Claims (7)

  1. 1以上のインク吐出口を有する吐出口プレートと、
    前記吐出口プレートと所定間隔離間して設けられ、前記吐出口プレートとの間にインク室を形成する基板と、
    前記インク吐出口中に存在する構造物と、
    前記インクを吐出させるインク吐出手段とを有し、
    前記構造物の、少なくとも前記吐出口中に存在する部分の表面の、前記インクに対する接触角が、前記吐出口内壁面の、前記インクに対する接触角よりも大きいことを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記構造物の、少なくとも前記吐出口中に存在する部分の表面は、撥インク性であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記構造物の、少なくとも前記吐出口中に存在する部分の表面の前記インクに対する接触角と、前記吐出口内壁面の前記インクに対する接触角との差が、10度以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記構造物の、少なくとも前記吐出口中に存在する部分の表面の前記インクに対する接触角は、20度以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記インクは、帯電した微粒子を溶媒中に分散させたものであり、
    前記吐出手段は、前記インク室の前記吐出口プレート側に設けられた吐出電極である請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェットヘッドを用いて記録媒体上に画像記録を行うことを特徴とする記録装置。
  7. 少なくとも1つのインク吐出口を有する吐出口プレートと、この吐出口プレートと所定間隔離間して設けられた基板との間に形成されたインク室内のインクを、前記インク吐出口を通して吐出させて記録媒体に画像を記録するに際し、
    前記インク吐出口中に存在し、少なくとも前記吐出口中に存在する部分に撥インク性表面を有する構造物によって、吐出させるための前記インクを案内することを特徴とする記録方法。
JP2003095215A 2003-01-29 2003-03-31 インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法 Withdrawn JP2004299258A (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003095215A JP2004299258A (ja) 2003-03-31 2003-03-31 インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法
US10/765,469 US7275812B2 (en) 2003-01-29 2004-01-28 Ink jet head and recording apparatus using the same
AT04001921T ATE460284T1 (de) 2003-01-29 2004-01-29 Elektrostatischer tintenstrahlkopf und damit ausgestattetes aufzeichnungsgerät
CN200410003351.4A CN1519113B (zh) 2003-01-29 2004-01-29 喷墨头和使用该喷墨头的记录装置
DE602004025870T DE602004025870D1 (de) 2003-01-29 2004-01-29 Elektrostatischer Tintenstrahlkopf und damit ausgestattetes Aufzeichnungsgerät
EP04001921A EP1442886B1 (en) 2003-01-29 2004-01-29 Electrostatic ink jet head and recording apparatus using the same

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003095215A JP2004299258A (ja) 2003-03-31 2003-03-31 インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004299258A true JP2004299258A (ja) 2004-10-28

Family

ID=33407593

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003095215A Withdrawn JP2004299258A (ja) 2003-01-29 2003-03-31 インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004299258A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2006150925A (ja) インクジェット記録装置
JP4354786B2 (ja) インク濃度検出方法およびインクジェット記録装置
US7275812B2 (en) Ink jet head and recording apparatus using the same
JP4371783B2 (ja) インク濃度検出方法、インク濃度検出装置、およびこれを用いるインクジェット記録装置
JP4362057B2 (ja) インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置
JP2005305962A (ja) インクジェット記録方法
JP4330986B2 (ja) インクジェット記録装置
US7419248B2 (en) Ink jet head and ink jet recording apparatus
JP2004299257A (ja) インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法
JP2004299258A (ja) インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法
US7559625B2 (en) Ink jet head and ink jet recording apparatus
JP2004291578A (ja) 静電式インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法
US7118196B2 (en) Ink jet recording method
JP2005028708A (ja) インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置
JP2005096210A (ja) インクジェット記録装置およびその制御方法
JP2004291322A (ja) インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法
JP2005074754A (ja) インクジェットヘッドおよびそれを用いる記録装置
JP2006103230A (ja) インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法
JP2005028709A (ja) インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置
JP2005028727A (ja) インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置
JP2005297295A (ja) インクジェット記録方法
JP2005041026A (ja) インクジェットヘッド、インクジェット記録装置およびインクジェットヘッド制御方法
JP2004230653A (ja) 静電式インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法
JP2004181673A (ja) インクジェットヘッド及び画像記録装置
JP2006110977A (ja) インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Effective date: 20050317

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20061130

A761 Written withdrawal of application

Effective date: 20061130

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761