JP2004230653A - 静電式インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法 - Google Patents

静電式インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吐出電圧の低圧化を図ることができ、インクガイド材質の選択肢を拡大することができ、インクガイド先端構造の選択肢を拡大することができる静電式インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法を提供する。
【解決手段】ヘッド基板上に配置され、先端部分が記録媒体側に向いているインクガイドと、インクガイドにインクを供給するインク流路と、インクガイドの外周の少なくとも一部に所定間隔離間して配置され、インクガイドの先端部分に導かれたインクを静電力で吐出させるために用いる吐出電極とを有し、吐出電極が囲繞電極である時のその有効内径と、囲繞電極の表面からインクガイドの先端までの距離との比が、1:0.5〜1:2であるか、または吐出電極が並列電極である時のその有効間隔と、並列電極の表面からインクガイドの先端までの距離との比が、1:0.7〜1:2.8であることにより、上記課題を解決する。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電力により帯電した微粒子を含むインクの吐出を制御する静電式インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
静電式インクジェット記録方式は、帯電した微粒子成分を含むインクを用い、画像データに応じて、インクジェットヘッドの吐出電極に所定の電圧を印加することにより、静電力を利用してインクの吐出を制御し、画像データに対応した画像を記録媒体上に記録する方式である。この静電式インクジェット記録方式を採用する記録装置として、例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示のインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
図16は、上記特許文献1に開示のインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの概略構成の一例を模式的に表す概念図である。同図に示すインクジェットヘッド100は、上記特許文献1に開示のインクジェットヘッドを構成する1つの吐出手段となる個別電極のみを概念的に表したものであり、ヘッド基板102と、インクガイド104と、絶縁性基板106と、吐出電極108と、記録媒体Pを支持する対向電極110と、バイアス電圧源112と、信号電圧源114とを備えている。
【0004】
ここで、インクガイド104は、先端部分104aが突状の所定厚みを持つ樹脂製平板からなり、ヘッド基板102の上に配置されている。また、絶縁性基板106には、インクガイド104の配置に対応する位置に貫通孔116が開孔されている。インクガイド104は、絶縁性基板106に開孔された貫通孔116を通過し、その先端部分104aが絶縁性基板106の図中上側の表面、すなわち記録媒体P側の表面よりも上部に突出している。また、ヘッド基板102と絶縁性基板106とは、所定の間隔離間して配置されており、両者の間にはインクQの流路118が形成されている。
【0005】
また、吐出電極108は、絶縁性基板106に開孔された貫通孔116の周囲を囲むように、絶縁性基板106の図中上側の面の表面に、個別電極毎にリング状に設けられている。吐出電極108は、画像デ−タや印字データ等の吐出データ(吐出信号)に応じたパルス信号を発生する信号電圧源114に接続され、信号電圧源114は、バイアス電圧源112を介して接地されている。
また、対向電極110は、インクガイド104の先端部分104aに対向する位置に配置され、接地されている。また、記録媒体Pは、対向電極110の図中下側の表面、すなわちインクガイド104側の表面に配置されており、対向電極110は、記録媒体Pのプラテンとして機能する。
【0006】
このように構成されるインクジェットヘッド100は、記録時には、図示されていないインク循環機構によって、吐出電極108に印加される電圧と同極性に帯電した微粒子成分を含むインクが、所定方向、図示例ではインク流路118内を右側から左側へ向かって循環されるとともに、インク流路118内のインクQの一部は、毛細管現象などによって絶縁性基板106の貫通孔116を通って、インクガイド104の先端部分104aに供給される。
【0007】
ここで、吐出電極108には、バイアス電圧源112によって常時所定の高電圧、例えばDC1.5kVの電圧が印加されている。この状態では、インクガイド104の先端部分104a近傍の電界強度が低く、先端部分104aに供給されたインクQはインクガイド104の先端部分104aからは飛び出さないが、インク流路118内のインクQの一部、特に帯電した微粒子成分は、さらに、絶縁性基板106の貫通孔116を通って、絶縁性基板106の図中上側の表面よりも上方まで上昇し、インクガイド104の先端部分104aに凝集する。
【0008】
一方、バイアス電圧源112によって高電圧(DC1.5kV)にバイアスされている吐出電極108に、信号電圧源114からパルス電圧、例えば、DC500V(ON時;0V:OFF時)が印加されると、吐出電極108には両高電圧が重畳され、例えば2kVが印加されることになる。その結果、インクQ、特にインクQ中の帯電微粒子成分は、さらにインクガイド14に沿って上昇し、その先端部分104aに凝集する。こうして、インクガイド14の先端部分104aに凝集した帯電微粒子成分を含むインクQは、静電力によってその先端部分104aから飛び出し、接地されている対向電極110に引っ張られて記録媒体P上に付着し、帯電微粒子成分によってドッドが形成される。
【0009】
こうして、インクジェットヘッド100と対向電極110上に支持された記録媒体Pとを相対的に移動させながら帯電微粒子成分のドッドによって記録を行うことにより、記録媒体Pに、画像データに対応する画像が記録される。
【0010】
なお、特許文献2には、このようなインクジェットヘッド100において、記録中に、吐出電極108に向かって、さらには、インクガイド104の先端部分104aに向かって、インク流路118内のインクQ、特にインクQ中の帯電微粒子成分を泳動させ、非記録中には、インクガイド104に付着しているインクQや、インクQ中の帯電微粒子成分をインク流路118内の下方に泳動させる制御電極を、インク流路118の下方に設けたヘッドを持つ画像形成装置が開示されている。
また、特許文献3には、特許文献1および2に開示のリング状吐出電極(円形電極)の代りに、溝状のインク流路内に設けられた平行吐出電極(平行電極)を用いるインクジェットヘッドが開示されている。
【0011】
ところで、上述した特許文献1、2および3に開示のインクジェットヘッドを用いる場合であっても、高精細かつ高速性が要求される記録装置の場合、必然的に、1ライン分の画像を同時に記録可能なラインヘッドが必要となる。例えば、1200dpi(ドット/インチ)で60ppm(ページ/分)の記録装置の場合、幅10インチの記録媒体に画像を記録可能なラインヘッドには、1ライン分の画素数に相当する12000個という膨大な数の個別電極と、個々の個別電極を駆動する同数のパルス電圧源、すなわち駆動回路が必要となる。
【0012】
この場合、ラインヘッドは、ライン方向に対して、物理的に極めて高密度に個別電極およびパルス電圧源を実装する必要がある。パルス電圧源は、例えば約400〜600V程度の高電圧を使用するため、個別電極およびパルス電圧源を高密度に配置すると放電の危険性が高くなる。従って、高密度実装と高電圧を両立させることは極めて困難なことである。なお、パルス電圧源は、吐出電極にパルス電圧を印加するために、パルス電圧を生成する必要がある。ここで、吐出電極は小さな電極であるので、吐出そのものに消費される電流は小さいが、パルス電圧源で生成されるパルス電圧が高いと、消費される電流は大きくなる。さらに、パルス電圧源でパルス電圧を生成するためにも電流は消費されるため、パルス電圧が高いと、消費される電流は大きくなる。個別電極の数が少ない場合には、増加する消費電流もあまり問題にならないが、上述したように、個別電極の数が多いと問題となる。
【0013】
【特許文献1】
特開平10−138493号公報
【特許文献2】
特開平11−078026号公報
【特許文献3】
特開平09−254372号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、吐出電圧の低圧化を図ることができ、低誘電率材料の使用などインクガイド材質の選択肢を拡大することができ、インクガイド先端構造の選択肢を拡大することができる静電式インクジェットヘッドを提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記第1の目的を達成する静電式インクジェットヘッドを用いることにより、記録媒体に安定して画像を記録することができる安全、かつ、低コストで適用範囲の広い静電式インクジェット記録装置および記録方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、帯電した微粒子を含むインクを静電力を利用して吐出させて記録媒体に画像を記録する静電式インクジェットヘッドであって、その先端部分が前記記録媒体側に向いているインクガイドと、前記インクガイドにインクを供給するインク流路と、前記インクガイドの外周の少なくとも一部に所定間隔離間して配置され、前記インク流路から前記インクガイドの先端部分に導かれたインクを静電力で吐出させるために用いる吐出電極とを有し、前記吐出電極が前記インクガイドの外周を囲う囲繞電極である時の前記囲繞電極の有効内径と、前記囲繞電極の前記記録媒体側の表面から前記インクガイドの先端までの距離との比が、1:0.5〜1:2であることを特徴とする静電式インクジェットヘッドを提供するものである。
ここで、前記囲繞電極の有効内径と、前記囲繞電極の表面から前記インクガイドの先端までの距離との比が、1:0.7〜1:1.7であるのが好ましい。
また、前記囲繞電極は、略円形電極であり、有効内径は、平均内径であるのが好ましく、より好ましくは、前記囲繞電極は、円形電極であり、有効内径は、内径であるのがよい。
【0016】
上記第1の目的を達成するために、本発明の第2の態様は、帯電した微粒子を含むインクを静電力を利用して吐出させて記録媒体に画像を記録する静電式インクジェットヘッドであって、その先端部分が前記記録媒体側に向いているインクガイドと、前記インクガイドにインクを供給するインク流路と、前記インクガイドの外周の少なくとも一部に所定間隔離間して配置され、前記インク流路から前記インクガイドの先端部分に導かれたインクを静電力で吐出させるために用いる吐出電極とを有し、前記吐出電極が前記インクガイドの外周に対向して配置される並列電極である時の前記並列電極の有効間隔と、前記並列電極の前記記録媒体側の表面から前記インクガイドの先端までの距離と、の比が、1:0.7〜1:2.8であることを特徴とする静電式インクジェットヘッドを提供するものである。
ここで、前記並列電極の有効間隔と、前記並列電極の表面から前記インクガイドの先端までの距離との比が、1:1.0〜1:2.4であるのが好ましい。
また、前記並列電極は、略平行電極であり、有効間隔は、平均間隔であるのが好ましく、より好ましくは、前記並列電極は、平行電極であり、有効間隔は、間隔であるのがよい。
【0017】
上記各態様において、前記インクガイドは、ヘッド基板上に配置され、前記インク流路は、前記ヘッド基板と所定間隔離間して配置された絶縁性基板と前記ヘッド基板との間に形成され、前記絶縁性基板は、複数の貫通孔が開孔され、前記インクガイドは、前記絶縁性基板に開孔された貫通孔からその先端部分が前記記録媒体側に突出し、前記インク流路を流れるインクを前記インク流路から前記先端部分に導くものであるのが好ましい。
【0018】
また、前記インクガイドは、前記インク流路を横断するように、所定間隔離間して対向して配置された隔壁に支持され、前記並列電極は、所定間隔離間して対向して配置された絶縁性支持基板の表面に配置され、前記インク流路は、前記対向して配置された前記隔壁と、前記対向して配置された前記並列電極および前記絶縁性支持基板との間に形成され、前記インクガイドは、前記インク流路の開放端部からその先端部分が前記記録媒体側に突出し、前記インク流路を流れるインクを前記インク流路から前記先端部分に導くものであるのが好ましい。
【0019】
また、前記吐出電極は、前記絶縁性基板の表面に配置されるのが好ましい。
また、前記吐出電極は、前記インクの流路よりも前記絶縁性基板側に配置された第1駆動電極と、前記第1駆動電極よりも前記ヘッド基板側に配置される前記第2駆動電極とを備えるのが好ましく、また、前記第1駆動電極は、前記絶縁性基板側の前記記録媒体側の表面に配置され、前記第2駆動電極は、前記絶縁性基板側の前記ヘッド基板側の表面に配置されるのが好ましく、また、前記第2駆動電極は、複数の前記第1駆動電極に共通な共通電極であるのが好ましい。
また、前記インクガイド、前記貫通孔、前記第1駆動電極および前記第2駆動電極を含む個別電極は、第1の方向およびこの第1の方向と直交する第2の方向に沿って2次元的に複数配置され、前記複数の個別電極の前記第1駆動電極は、前記第1の方向に沿って互いに配線接続され、前記複数の個別電極の前記第2駆動電極は、前記第2の方向に沿って互いに配線接続されるのが好ましい。
【0020】
また、上記静電式インクジェットヘッドであって、
さらに、全ての前記吐出電極に対して共通に設けられ、前記インクの流路よりも前記ヘッド基板側に配置された浮遊導電板を備えるのが好ましく、さらに、隣接する前記吐出電極の間に設けられ、前記隣接する吐出電極の間の電界の干渉を抑制するガード電極を備えるのが好ましい。(さらに、全ての前記吐出電極に対して共通に設けられ、前記吐出電極よりも前記インクの流路側に配置されたシールド電極を備えても良い。)
【0021】
上記第2の目的を達成するために、本発明の第3の態様は、上記の各静電式インクジェットヘッドと、前記記録媒体を保持する手段と、前記インクジェットヘッドと前記記録媒体を相対的に移動させる手段と、前記吐出電極と前記記録媒体の間に所定のバイアス電圧を印加する手段と、前記記録媒体に記録すべき前記画像に応じて、前記吐出電極に所定の吐出電圧を印加する手段とを有することを特徴とする静電式インクジェット記録装置を提供するものである。
【0022】
上記第2の目的を達成するために、本発明の第4の態様は、上記の各静電式インクジェットヘッドの前記吐出電極と前記記録媒体の間に所定のバイアス電圧を印加しておき、前記インクジェットヘッドを前記記録媒体に対して相対的に移動させつつ、前記記録媒体に記録するべき前記画像に応じて前記吐出電極に所定の吐出電圧を印加して、前記インクジェットヘッドの前記インクガイドの先端部分に濃縮したインクを吐出させ、前記記録媒体に前記画像を記録することを特徴とする静電式インクジェット記録方法を提供するものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に係る静電式インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法を添付の図面に示す好適実施例に基づいて以下に詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1および第2の態様の静電式インクジェットヘッドの一実施例の概略構成を示す模式的断面図である。
同図に示す静電式インクジェットヘッド10は、帯電された顔料等の微粒子成分(例えば、トナー等)を含むインクQを静電力により吐出させて、画像データに応じて画像を記録媒体P上に記録するものであり、ヘッド基板12と、インクガイド14と、絶縁性基板16と、吐出電極18と、記録媒体Pを支持する対向電極20と、記録媒体Pの帯電ユニット22と、信号電圧源24と、浮遊導電板26とを備えている。
【0025】
なお、図1に示す例は、インクジェットヘッド10を構成する1つの吐出手段となる個別電極のみを概念的に表したものである。個別電極の個数は1個以上何個備えられていてもよいし、個別電極の物理的な配置等も何ら限定されない。例えば、複数の個別電極を1次元的または2次元的に配置してラインヘッドを構成することも可能である。また、本発明を適用するインクジェットヘッドは、モノクロおよびカラーのどちらにも対応可能である。
【0026】
図示例のインクジェットヘッド10においては、インクガイド14は、突状先端部分14aを持つ所定厚みの絶縁性樹脂製平板からなり、個別電極毎にヘッド基板12の上に配置されている。また、絶縁性基板16には、インクガイド14の配置に対応する位置に貫通孔28が開孔されている。インクガイド14は、絶縁性基板16に開孔された貫通孔28を通過し、その先端部分14aが絶縁性基板16の図中上側の表面、すなわち記録媒体P側の表面よりも上部に突出している。なお、インクガイド14の中央部分には、図中上下方向に毛細管現象によってインクQを先端部分14aに集めるインク案内溝となる切り欠きを形成しても良い。
【0027】
なお、インクガイド14の先端部分14aの側は、対向電極20側へ向かうに従って次第に細く略三角形(ないしは台形)に成形されている。なお、インクガイド14の、インクQが吐出される先端部分(最先端部)14aには、金属が蒸着されているのが好ましい。インクガイド14の先端部分14aの金属蒸着はされていなくても良いが、この金属蒸着により、インクガイド14の先端部分14aの誘電率が実質的に無限大となり、強電界を生じさせやすくできるという効果があるので、金属蒸着を行うのが好ましい。なお、インクガイド14の形状は、インクQ、特に、インクQ内の帯電微粒子成分を絶縁性基板16の貫通孔28を通って先端部分14aに濃縮させることができれば、特に、制限的ではなく、例えば、先端部分14aは、突状でなくても良いなど適宜変更してもよいし、上述した特許文献1などに開示された従来公知の形状とすることができる。
【0028】
ヘッド基板12と絶縁性基板16とは、所定間隔離間して配置されており、両者の間には、インクガイド14にインクQを供給するためのインクリザーバ(インク室)として機能するインク流路30が形成されている。なお、インク流路30内のインクQは、吐出電極18に印加される電圧と同極性に帯電した微粒子成分を含み、記録時には、図示されていないインク循環機構によって、所定方向、図示例ではインク流路30内を右側から左側へ向かって所定の速度(例えば、200mm/sのインク流)で循環される。以下、インク中の着色粒子が正帯電している場合を例にとって説明を行う。
【0029】
また、吐出電極18は、図2(a)に示すように、絶縁性基板16に開孔された貫通孔28の周囲を囲むように、絶縁性基板16の図中上側、すなわち記録媒体P側の表面に、個別電極毎にリング状に、すなわち円形電極18aとして配置されている。吐出電極18は、画像デ−タや印字データ等の吐出データ(吐出信号)に応じたパルス信号(所定のパルス電圧、例えば低電圧レベルの0V、高電圧レベルの400〜600V)を発生する信号電圧源24に接続されている。
なお、吐出電極18は、図2(a)に示すリング状の円形電極18aに限定されず、インクガイド14の外周を囲うように離間して配置される囲繞電極、またはインクガイド14の両側に離間して対向して配置される並列電極であれば、どのようなものでも良い。例えば、囲繞電極の場合には、吐出電極18は、略円形電極であるのが好ましいが、より好ましくは、図2(a)に示すような円形電極であるのが良い。また、並列電極の場合には、吐出電極18は、略平行電極であるのが好ましいが、より好ましくは、図3(a)に示すような平行電極18bであるのが良い。なお、並列電極として、後述する図3(c)および(d)に示すような平行電極や略平行電極を用いても良い。
以下では、 囲繞電極の代表例として、図2(a)に示すリング状の円形電極18a、並列電極の代表例として、図3(a)に示すような平行電極18bおよび図3(c)を用いて説明する。
【0030】
また、対向電極20は、インクガイド14の先端部分14aに対向する位置に配置され、電極基板20aと、電極基板20aの図中下側の表面、すなわちインクガイド14側の表面に配置される絶縁シート20bで構成され、電極基板20aは、接地される。また、記録媒体Pは、対向電極20の図中下側の表面、すなわちインクガイド14側の表面、すなわち絶縁シート20bの表面に支持され、例えば静電吸着されており、対向電極20(絶縁シート20b)は、記録媒体Pのプラテンとして機能する。
ここで、少なくとも記録時には、帯電ユニット22によって、対向電極20の絶縁シート20bの表面、すなわち記録媒体Pは、吐出電極18に印加される高電圧(パルス電圧)と逆極性の所定の負の高電圧、例えば、−1.5kVに帯電された状態に維持される。その結果、記録媒体Pは、帯電ユニット22により負帯電して、吐出電圧18に対して負の高電圧に常時バイアスされるとともに、対向電極20の絶縁シート20bに静電吸着される。
【0031】
ここで、帯電ユニット22は、記録媒体Pを負の高電圧に帯電させるためのスコロトロン帯電器22aと、スコロトロン帯電器22aに負の高電圧を供給するバイアス電圧源22bとを有している。なお、本発明に用いられる帯電ユニット22の帯電手段としては、スコロトロン帯電器22aに限定されず、コロトロン帯電器、固体チャージャ、放電針などの種々の放電手段を用いることができる。
なお、図示例においては、対向電極20を電極基板20aと絶縁シート20bとで構成し、記録媒体Pを、帯電ユニット22によって負の高電圧に帯電させることにより絶縁シート20bの表面に静電吸着させているが、本発明はこれに限定されず、対向電極20を電極基板20aのみで構成し、対向電極20(電極基板20a自体)を負の高電圧のバイアス電圧源に接続して、負の高電圧に常時バイアスしておき、対向電極20の表面に記録媒体Pを静電吸着させるようにしても良い。
また、記録媒体Pの対向電極20への静電吸着と、記録媒体Pへの負の高電圧への帯電または対向電極20への負のバイアス高電圧の印加とを別々の負の高電圧源によって行っても良いし、対向電極20による記録媒体Pの支持は、記録媒体Pの静電吸着に限られず、他の支持方法や支持手段を用いても良い。
【0032】
また、浮遊導電板26は、インク流路30の下方に配置され、電気的に絶縁状態(ハイインピーダンス状態)となっている。図示例では、ヘッド基板12の内部に配置されている。なお、本発明においては、浮遊導電板26は、インク流路30の下方であれば、どこに配置しても良く、例えば、ヘッド基板12の下方であっても良いし、個別電極の位置よりもインク流路30の上流側で、かつヘッド基板12の内部に配置するようにしても良い。
この浮遊導電板26は、画像の記録時に、個別電極に印加された電圧値に応じて、誘起された誘導電圧が発生し、インク流路30内のインクQにおいて、その微粒子成分を絶縁性基板16側へ泳動させて濃縮させるためのものである。従って、浮遊導電板26は、インク流路30よりもヘッド基板12側に配置される必要がある。また、浮遊導電板26は、個別電極の位置よりもインク流路30の上流側に配置される方が好ましい。この浮遊導電板26により、インク流路30内の上層の帯電微粒子成分の濃度を高めるため、絶縁性基板16の貫通孔28を通過するインクQ内の帯電微粒子成分の濃度を所定濃度に高めることができ、インクガイド14の先端部分14aに濃縮させて、インク液滴Rとして吐出させるインクQ内の帯電微粒子成分の濃度を所定濃度に安定させることができる。
また、浮遊導電板を配置することにより、稼動チャンネル数に応じて誘導電圧が変化するため、浮遊導電板への電圧を制御しなくても、吐出に必要な帯電粒子を供給するため、目詰まりを防止することができる。なお、浮遊導電板に電源を接続し、所定の電圧を印加するようにしても良い。
【0033】
次に、図3(c)および(d)に示す、平行電極で代表される並列電極を用いる静電式インクジェットヘッドの別の実施例について説明する。
図3(c)および(d)に示す静電式インクジェットヘッド32は、所定間隔離間して対向して配置される絶縁性支持基板33a,33bと、絶縁性支持基板33a,33bの内側表面にそれぞれ支持される平行電極34a,34bと、各絶縁性支持基板33a,33bの対向方向と直交する方向の両側に配置される隔壁35a,35bと、隔壁35a,35bに支持され、平行電極34a,34bの間に平行に配置されるインクガイド36と、絶縁性支持基板33a,33bの外側表面に所定間隔離間してそれぞれ配置される外壁板37a,37bと、隔壁35a,35bと平行電極34a,34bおよびその絶縁性支持基板33a,33bとの間に形成されるインク供給路38aおよび絶縁性支持基板33a,33bと外壁板37a,37bとの間に形成されるインク回収路38b,38cからなるインク流路38とを備える。
【0034】
絶縁性支持基板33a,33bの一方の端面(図中下側の端面)は、絶縁性支持基板33cで連結され、他方の端面(図中上側の端面)は、開放される。従って、インク供給路38aの一方の端面(図中下側の端面)は、絶縁性支持基板33cで閉塞され、この閉塞端近傍には外部のインク循環路に連通する供給口38dが配置される。また、外壁板37a,37bの一方の端面(図中下側の端面)は、外壁板37cで連結されて閉塞され、他方の端面(図中上側の端面)は、開放される。従って、インク回収路38bおよび38cは、絶縁性支持基板33cと外壁板37cの間に形成されるインク回収路38eによって連通され、インク回収路38eは、外部のインク循環路に連通する回収口38fに接続される。
【0035】
インクガイド36は、インク供給路38aを2分するとともに、絶縁性支持基板33a,33bの開放端、従って、平行電極34a,34bの開放端、換言すれば、インク供給路38aの開放端から突出する突状先端部分36aを持つ所定厚みの絶縁性樹脂製平板またはフィルムからなり、隔壁35a,35bによってその両側が支持されるものである。インクガイド36先端部分36aは、図3(a)に示すインクガイド14の先端部分14aと同様に、図示しない記録媒体側へ向かうに従って次第に細く略三角形(ないしは台形)に成形されている。
【0036】
外部のインク循環路から供給口38dを経てインク供給路38aに供給されたインクは、インクガイド36によって2分されたインク供給路38a内を、毛細管現象等によって、その開放端に向かって移動し、インクガイド36に沿って図中上方に上昇する。上昇したインクの一部は、インクガイド36の先端部分36aに集まり、インク内の帯電微粒子成分を濃縮させ、残りのインクは、絶縁性支持基板33a,33bから溢れて、それぞれインク回収路38b,38cに流れ込み、インク回収路38eで合流し、回収口38fから外部のインク循環路に回収される。
インクガイド36の先端部分36aに帯電微粒子成分が濃縮されたインクは、平行電極34a,34bに所定のパルス電圧を印加することによって、図示しない記録媒体に向かって、インク液滴となって飛翔する。
【0037】
ところで、本発明においては、吐出電極18が、図2(a)に示すようなリング状円形電極18aで代表される囲繞電極である時、 図2(b)に示すように、囲繞電極(円形電極)18aの内径Daと、吐出電極(囲繞電極)18から記録媒体P側に突出するインクガイド14の先端までの距離、すなわち円形電極18aの表面からインクガイド14の先端部分14aまでの距離Hとの比(Da:H)を1:0.5〜1:2に限定する必要があり、好ましくは、 1:0.7〜1:1.7に限定するのが良い。ここで、略円形電極などのように一定の内径でない囲繞電極の内径Daとしては、平均内径など実質的に内径と見なせる有効内径を用いれば良い。
【0038】
また、本発明においては、吐出電極18が、図3(a)に示すような平行電極18aまたは図3(c)および(d)に示すような平行電極34a,34bで代表される並列電極である時、 図3(b)または図3(c)に示すように、平行電極18aまたは34a,34b間の間隔Dsと吐出電極(並列電極)18から記録媒体P側に突出するインクガイド14の先端までの距離、すなわち、平行電極18bの表面または平行電極34a,34bの開放端面からインクガイド14の先端部分14aまでの距離Hとの比(Ds:H)を、同様に、 1:0.7〜1:2.8に限定する必要があり、好ましくは、 1:1.0〜1:2.4に限定するのが良い。ここで、略平行電極などのように一定の間隔でない並列電極の間隔Dsとしては、平均間隔など実質的に間隔と見なせる有効間隔を用いれば良い。
【0039】
ここで、本発明者は、本発明において、 図4に示すように、 浮遊導電板26上にインクガイド14を載置し、 インクガイド14を中心としてその周囲に吐出電極18を配置し、 さらに、インクガイド14の先端部分14aに対向するように対向電極20を配置した実モデルを用いて、 吐出電極18の表面からインクガイド14の先端部分14aまでの距離H、すなわちインクガイド14の先端部分14aの突出量(以下、突起量という)Hを変えた場合の吐出部、すなわちインクガイド14の先端部分14aの電界強度(V/m)を求めた。この時、浮遊導電板26と吐出電極18との間隔および吐出電極18と対向電極20との間隔は、共に500μmとし、浮遊導電板26は、絶縁状態(ハイインピーダンス状態)とされ、対向電極20には、−1500Vの負の高電圧がバイアス電圧として印加され、吐出電極18の吐出電圧を+400Vとした。また、吐出電極18の電極構造として、内径(Da)200μmの円形電極18aを用い、突起量Hを75μmから250μmまで変化させた。なお、対向電極20への−1500Vの負のバイアス高電圧の印加は、対向電極20に静電吸着された記録媒体Pの−1500Vの負の高電圧帯電と等価である。
【0040】
こうして得られた結果を図5に示す。
ここで、図示されていないが、インクガイド14は、先端角が45°で、厚さが75μmのセラミック(誘電率ε=20)で構成されており、図5の横軸は、図4に示す矢印cのように、インクガイド14の先端部分14aの中心から傾斜に沿った距離である。
図5から、インクガイド14の突起量Hが200μmの時、電界強度が2.5×10+7V/mを超え、最大となることがわかる。すなわち、図5から、円形電極18aの内径を一定にして突起量Hを変化させた場合、インクガイド14の最適突起量Hが存在することがわかる。これは、円形電極18aの場合には、突起量H/内径Daの比が約1の時、電界強度が最大となることを示している。
この結果は、図4に示すような円形電極18aの場合、インク吐出を確実かつ安定的に行うことができる電界強度が、図5に示す最大電界強度以下であれば、円形電極18aの印加電圧を低圧化できることを示す。
【0041】
そこで、本発明者は、図4に示す構成の吐出構造(個別電極構造)において、吐出電極18の電極構造として、内径150μmの円形電極18aを用い、突起量Hを50μmから330μmまで変化させた以外は、図5の場合と同様の条件とし、所定の突起量Hにおいて、円形電極18aに印加するパルス電圧(吐出電圧)を変化させて、インク吐出を確実かつ安定的に行うのに必要なパルス電圧(最も低い吐出電圧)を求めた。
【0042】
その結果を図6(a)に示す。
図6(a)から、吐出部までの距離(突起量)Hと円形吐出電極内径Daとの比(H/Da)が1.0において、インクガイド14の先端部分14aに金属膜などを形成しなくても、必要パルス電圧が最低の400Vとなり、この比が小さくなっても、大きくなっても、必要パルス電圧が高くなることがわかる。
ところで、本発明においては、吐出部までの距離Hと円形吐出電極内径Daとの比(H/Da)は、0.5〜2に限定している。その理由は、静電式インクジェットヘッドにおいて、各個別電極を駆動する駆動回路を構成するIC等の半導体素子や半導体デバイスの耐圧等から、さらには安全性、個別電極構造および消費電流などを考慮すると、吐出電圧18に印加できるパルス電圧の上限は、約600Vとなるので、図6(a)から、上記限定範囲を外れると、必要なパルス電圧が600Vを超えるからである。なお、この比(H/Da)は、0.7〜1.7とするのが好ましい。こうすることにより、吐出電圧18に印加できるパルス電圧をより低い500Vにすることができる。
【0043】
また、吐出電極18を円形電極18aから平行電極18bに変えた場合の結果を図6(b)に示す。
図6(b)から、吐出部までの距離(突起量)Hと平行吐出電極間隔Dsとの比(H/Ds)が1.4において、インクガイド14の先端部分14aに金属膜などを形成しなくても、必要パルス電圧が最低の450Vとなり、この比が小さくなっても、大きくなっても、必要パルス電圧が高くなることがわかる。
ところで、本発明においては、吐出部までの距離Hと平行吐出電極間隔Dsとの比(H/Ds)は、0.7〜2.8に限定している。その理由は、静電式インクジェットヘッドにおいて、各個別電極を駆動する駆動回路を構成するIC等の半導体素子や半導体デバイスの耐圧等から、さらには安全性、個別電極構造および消費電流などを考慮すると、吐出電圧18に印加できるパルス電圧の上限は、約600Vとなるので、図6(b)から、上記限定範囲を外れると、必要なパルス電圧が600Vを超えるからである。なお、この比(H/Ds)は、1.0〜2.4とするのが好ましい。こうすることにより、吐出電圧18に印加できるパルス電圧をより低い500Vにすることができる。
このように、本発明においては、吐出部までの距離と円形吐出電極内径または平行吐出電極間隔との比を上記適正範囲に限定しているので、吐出電圧の低圧化を図ることができ、低誘電率材料の使用などインクガイド材質の選択肢を拡大することができ、インクガイド先端構造の選択肢を拡大することができる。
【0044】
本発明に係る静電式インクジェットヘッドは、基本的に以上のように構成されるが、以下に、図1に示すインクジェットヘッド10の動作を代表例として、本発明の静電式インクジェットヘッドの作用を説明する。
図1に示すインクジェットヘッド10では、記録時に、図示しないポンプ等を含むインク循環機構により、吐出電極18に印加される電圧と同極性、例えば、正(+)に帯電した微粒子成分を含むインクQが、インク流路30の内部を図1中矢印a方向に、すなわち右側から左側へ向かって循環される。この時、対向電極20に静電吸着された記録媒体Pは、逆極性、すなわち負の高電圧、例えば−1500Vに帯電されている。また、浮遊導電板26は、絶縁状態(ハイインピーダンス状態)とされている。
【0045】
ここで、吐出電極18にパルス電圧が印加されていないか、または、印加されているパルス電圧が低電圧レベル(0V)である時、吐出電極18と対向電極20(記録媒体P)との間の電圧(電位差)は、例えばバイアス電圧分の1500Vで、インクガイド14の先端部分14a近傍の電界強度が低く、インクQは、インクガイド14の先端部分14aからは飛び出さず、すなわち、インク液滴Rとして吐出されない。しかし、この時、インク流路30内のインクQの一部、特にインクQ内に含まれる帯電微粒子成分は、泳動現象および毛細管現象などによって、絶縁性基板16の貫通孔28を通って、図1中矢印b方向に、すなわち絶縁性基板16の下側からその上側へ向かって上昇し、インクガイド14の先端部分14aに供給される。
【0046】
一方、吐出電極18に高電圧レベル(例えば、400〜600V)のパルス電圧が印加されると、吐出電極18と対向電極20(記録媒体P)との間の電圧(電位差)は、例えば、バイアス電圧分の1500Vにパルス電圧分の400〜600Vが重畳され、1900V〜2100Vとなって高くなるため、インクガイド14の先端部分14a近傍の電界強度が高くなる。この時、インクガイド14に沿って上昇し、絶縁性基板16の上方の先端部分14aに上昇したインクQ、特にインクQ内に濃縮した帯電微粒子成分は、静電力によってインクガイド14の先端部分14aから、帯電微粒子成分を含むインク液滴Rとして飛び出し、例えば−1500Vにバイアスされている対向電極20(記録媒体P)に引っ張られて、記録媒体P上に付着する。
【0047】
ここで、本発明においては、吐出電極18の内径Da(円形電極18a)または間隔Ds(平行電極18b)とインクガイド14の先端部分14aの突起量Hとの比(H/DaまたはH/Ds)が、それぞれ、H/Daが0.5〜2およびH/Dsが0.7〜2.8の適正な範囲に収められているので、吐出電極18に印加するパルス電圧を約600V以下にしても、確実かつ安定的なインク吐出を実現することができる。
以上のようにして、インクジェットヘッド10と対向電極20上に支持された記録媒体Pとを相対的に移動させながら、画像データに応じたインク吐出によって記録媒体Pにドットを形成して記録を行うことにより、記録媒体Pに画像データに対応する画像を記録することができる。
【0048】
なお、上述した静電式インクジェットヘッド10は、絶縁性基板16の図中上面に、円形電極18aまたは平行電極18bなどの1層電極構造の吐出電極18を配置するものであるが、本発明はこれに限定されず、吐出電極18を絶縁性基板16の上下面に配置する2層電極構造で構成しても良い。
図7(a)に、本発明の別の実施形態の2層電極構造の吐出電極を持つ静電式インクジェットヘッド40の概略を示す。
図7(a)に示すインクジェットヘッド40は、絶縁性基板16の図中下面に第2駆動電極42が設けられている点を除いて、図2(a)に示すインクジェットヘッド10と同様な構成を有するものであるので、同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明は省略し、主として、相違点について説明する。
【0049】
図7(a)に示すインクジェットヘッド40においては、吐出電極18を、絶縁性基板16を挟むように、図中上面に第1駆動電極として配置される円形電極(以下、第1駆動電極とする)18aと下面に配置される第2駆動電極42との2層電極構造としている。ここで、第1駆動電極18aは、絶縁性基板16に開孔された貫通孔28の周囲を囲むように、絶縁性基板16の上面に個別電極毎にリング状に設けられている。また、第2駆動電極42は、絶縁性基板16に開孔された貫通孔28の部分を除く、絶縁性基板16の下面に全個別電極の間で共通にシート状に設けられており、記録時には、常時高電圧にバイアスされる。
【0050】
例えば、図7(b)に示すように、インクジェットヘッド40が15個の個別電極を備える場合、個別電極を1行当り5個ずつ並べ、3行に配置して構成される。インクジェットヘッド40では、これら第1および第2駆動電極18aおよび42によって、インクの吐出/非吐出が制御される。なお、本実施形態のインクジェットヘッド40では、第1および第2駆動電極18aおよび42からなる2層電極構造としているが、これに限定されず、2層以上何層の駆動電極を使用してもよい。
【0051】
ここで、第1および第2駆動電極18aおよび42の配置について説明する。第1駆動電極18aは、インクの流路30よりも絶縁性基板16側に配置する必要がある。また、第2駆動電極42は、第1駆動電極18aよりもヘッド基板12側に配置する必要がある。例えば、第1駆動電極18aを絶縁性基板16の図中上面に配置する場合、第2駆動電極42を絶縁性基板16の下面に配置してもよいし、ヘッド基板12の内部に配置してもよい。第2駆動電極42をヘッド基板12の内部に配置する場合には、浮遊導電板26は、インク流路30の上流側のヘッド基板12の内部に配置するのが良い。
【0052】
このような2層電極構造の吐出電極18を持つ本実施形態のインクジェットヘッド40においては、例えば、第2駆動電極42を、常時、所定の正の電圧、例えば600Vにバイアスしておき、第1駆動電極18aを、画像データに応じて接地状態とハイインピーダンス状態とに切り換えることにより、それぞれ第2駆動電極42に印加される高電圧レベルと同極性に帯電した顔料等の微粒子成分を含むインクQ(インク液滴R)の吐出/非吐出を制御することができる。すなわち、インクジェットヘッド40では、第1駆動電極18aが接地状態では、インクガイド14の先端部分14a近傍の電界強度が低く、インクQはインクガイド14の先端部分14aからは飛び出さず、第1駆動電極18aがハイインピーダンス状態になると、インクガイド14の先端部分14a近傍の電界強度が高くなり、インクガイド14の先端部分14aに濃縮したインクQは静電力によって先端部分14aから飛び出す。このとき、条件を選ぶことによって、更に濃縮を行うこともできる。
【0053】
この場合にも、第1駆動電極18aの内径(Da)とインクガイド14の突起量(H)との比は、本発明の適正な限定範囲に収められているので、第2駆動電極42に印加するバイアス電圧を約600V以下にしても、確実かつ安定的なインク吐出を実現することができる。なお、第2駆動電極42の貫通孔の内径に対するインクガイド14の突起量(H)との比も、本発明の適正な限定範囲に収めるようにしても良い。
このような構成により、本実施形態によれば、画像の記録時に、高電圧をスイッチングしないので、スイッチングのために大電力を消費しないため、高精細かつ高速性が要求されるインクジェットヘッドにおいても消費電力を大幅に削減することができ、さらに、物理的に極めて高密度に個別電極および駆動回路を実装した場合であっても放電の危険性はほとんどなく、高密度実装と高電圧を安全に両立させることができるという利点がある。
【0054】
なお、上述の静電式インクジェットヘッド40は、全個別電極の間で共通なシート状の第2駆動電極42を用いるものであるが、本発明はこれに限定されず、第2駆動電極として各個別電極毎に円形電極を用いても良い。
さらに、第1駆動電極と第2駆動電極が各個別電極毎に円形電極を用いた場合の制御方法として、第1駆動電極に印加するパルス電圧を第2駆動電極へ共通に印加しても良い。この場合、 単層の駆動電極に比べ、 第1駆動電極からの電気力線と第2駆動電極からの電気力線とが加算され、インクガイドの先端部分の電界強度が高くなるため、 各々の駆動電極に印加するパルス電圧値を低圧化することができる。
【0055】
図8(a)に、本発明のさらに別の実施形態の2層電極構造の吐出電極を持つ静電式インクジェットヘッド41の概略を示す。
図8(a)に示すインクジェットヘッド41は、絶縁性基板16の図中下面に全個別電極の間で共通なシート状の第2駆動電極42の代りに、各個別電極毎に円形電極からなる第2駆動電極44を有している点を除いて、図7(a)に示すインクジェットヘッド40と同様な構成を有するものであるので、同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明は省略し、主として、相違点について説明する。
【0056】
図8(a)に示すインクジェットヘッド40においては、吐出電極18は、絶縁性基板16を挟むように、図中上面に配置される円形電極からなる第1駆動電極18aと下面に配置される円形電極からなる第2駆動電極44とを備える2層電極構造である。ここで、第1駆動電極18aは、絶縁性基板16の貫通孔28を囲むように、各個別電極毎にリング状に設けられている。そして、図8(b)に示すように、行方向(主走査方向)に配置された複数の第1駆動電極18aは相互に接続される。一方、第2駆動電極44は、絶縁性基板16の貫通孔28を囲むように、各個別電極毎にリング状に設けられている。そして、図8(b)に示すように、列方向(副走査方向)に配置された複数の第2駆動電極44は相互に接続される。
【0057】
記録時には、本実施形態の場合、1つの第1駆動電極18aのみが高電圧レベルまたはハイインピーダンス状態(オン状態)とされ、残りの全ての第1駆動電極18aは接地レベル(接地状態:オフ状態)に駆動される。また、全ての第2駆動電極44が、画像データに応じて、高電圧レベルまたは接地レベルに駆動される。なお、別の実施形態として、第1および第2駆動電極18aおよび44を逆の状態に駆動してもよい。
【0058】
上述したように、第1および第2駆動電極18aおよび44は、2層電極構造に構成され、マトリクス状に配置される。これらの第1および第2駆動電極18aおよび44によって、各々の個別電極におけるインクの吐出/非吐出が制御される。すなわち、第1駆動電極18aが高電圧レベルまたはフローティング状態で、かつ第2駆動電極44が高電圧レベルの場合にはインクが吐出し、第1駆動電極18aまたは第2駆動電極44の一方が接地レベルの場合にはインクは吐出しない。
【0059】
図8(b)は、第1および第2の駆動電極18aおよび44の配置を表す一実施例の概念図である。同図に示すように、例えばインクジェットヘッド41が15個の個別電極を備える場合、15個の個別電極は、主走査方向の1行当り5個(1,2,3,4,5)ずつ並べられ、かつ副走査方向に3行(A,B,C)に配置される。記録時には、同一行に配置された5個の第1駆動電極18aは同時かつ同一電圧レベルに駆動される。同様に、同一列に配置された3個の第2駆動電極44は同時かつ同一電圧レベルに駆動される。
【0060】
従って、本実施形態の静電式インクジェットヘッド41においては、複数の個別電極を行方向および列方向に対して2次元的に配置することができる。
例えば、図8(b)に示すインクジェットヘッドの場合、第1駆動電極18aのA行の5個の個別電極は、行方向に対して所定の間隔を離して配置される。B行およびC行についても同様である。また、B行の5個の個別電極は、A行に対して、列方向に所定の間隔を離して、かつ、行方向に対して、それぞれA行の5個の個別電極とC行の5個の個別電極との間に配置される。同様に、C行の5個の個別電極は、B行に対して、列方向に所定の間隔を離して、かつ、行方向に対して、それぞれB行の5個の駆動電極とA行の5個の駆動電極との間に配置される。
【0061】
このように、第1駆動電極18aの各行に含まれる個別電極をそれぞれ行方向にずらして配置することにより、記録媒体Pに記録される1行を、行方向に3分割している。
すなわち、記録媒体Pに記録される1行は、行方向に対して、第1駆動電極18aの行数に相当する複数のグループに分割され、時分割で順次記録される。例えば、図8(b)に示す例の場合、第1駆動電極18aのA,B,C行を順次記録することにより、記録媒体P上に1行分の画像が記録される。この場合、上記のように、記録媒体Pに記録される1行は行方向に3分割され、時分割により順次記録が行われる。
【0062】
従って、本実施形態で採用されるマトリクス駆動方式では、行方向に対して分割記録を行うので記録速度は第1駆動電極18aの行数に応じて低下するが、駆動回路のドライバ数を削減することができ、その実装面積を削減することができるという利点がある。また、本実施形態では、必要に応じて、記録速度とドライバ数を適宜決定することもできるため、システムに応じて、最適な記録速度と駆動回路の実装面積を得ることができるという利点もある。
なお、本実施形態のインクジェットヘッド41では、第1および第2駆動電極18aおよび44からなる2層電極構造としているが、これに限定されず、2層以上何層の駆動電極を使用してもよい。
【0063】
このような2層電極構造の吐出電極を持つ本実施形態のインクジェットヘッド41においては、例えば、第2駆動電極44に、常時、所定の電圧、例えば600Vを印加し、第1駆動電極18aを、画像データに応じて接地状態とハイインピーダンス状態とに切り換えることにより、それぞれ第2駆動電極42に印加される高電圧レベルと同極性に帯電した顔料等の微粒子成分を含むインクQ(インク液滴R)の吐出/非吐出を制御することができる。すなわち、インクジェットヘッド41では、第1駆動電極18aが接地レベルの状態では、インクガイド14の先端部分14a近傍の電界強度が低く、インクQはインクガイド14の先端部分14aからは飛び出さず、第1駆動電極18aがハイインピーダンス状態になると、インクガイド14の先端部分14a近傍の電界強度が高くなり、インクガイド14の先端部分14aに濃縮したインクQは静電力によって先端部分14aから飛び出す。
【0064】
なお、第1駆動電極18aを、画像データに応じて、接地レベルと高電圧レベルとの間でスイッチングさせる場合の動作もほとんど同じである。既に述べたように、本実施形態のインクジェットヘッド41では、第1駆動電極18aまたは第2駆動電極44の一方が接地レベルの場合にはインクが吐出せず、第1駆動電極18aがハイインピーダンス状態または高電圧レベルで、かつ第2駆動電極44が高電圧レベルの場合にだけインクが吐出する。
すなわち、本実施形態のインクジェットヘッド41では、インクの吐出時と非吐出時とにおいて、電界強度が明確に異なる2つの状態が得られるようにすることが重要な点である。従って、第1および第2駆動電極18aおよび44の配置(位置関係)、第1および第2駆動電極18aおよび44に印加する高電圧レベル、対向電極20のバイアス電圧(または記録媒体の帯電電圧)、絶縁性基板16の厚さ、インクガイド14の形状等の関連するパラメータを適宜決定すればよい。
【0065】
この場合にも、第1駆動電極18aの内径(Da)とインクガイド14の突起量(H)との比は、本発明の適正な限定範囲に収められているので、第2駆動電極44に印加するバイアス電圧を約600V以下にしても、確実かつ安定的なインク吐出を実現することができる。なお、第2駆動電極44の内径に対するインクガイド14の突起量(H)との比も、本発明の適正な限定範囲に収めるようにしても良い。
このような構成により、本実施形態によれば、第1駆動電極をハイインピーダンス状態と接地レベルとの間でスイッチングすることができるので、スイッチングのために大電力を消費しない。従って、本実施形態によれば、高精細かつ高速性が要求されるインクジェットヘッドにおいても、消費電力を大幅に削減することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、個別電極を2次元的に配置し、マトリクス駆動するため、行方向の複数の個別電極を駆動する行ドライバおよび列方向の複数の個別電極を駆動する列ドライバの個数を大幅に削減することができる。従って、本実施形態によれば、2次元配列される個別電極の駆動回路の実装面積および消費電力を大幅に削減することができる。また、本実施形態によれば、各個別電極間を比較的余裕をもって配置することができるため、各個別電極間での放電の危険性を極めて低減することができ、高密度実装と高電圧を安全に両立させることができる。
【0067】
なお、上述した静電式インクジェットヘッド40および41のように、第1および第2駆動電極18aおよび42または44からなる2層電極構造の吐出電極を用いるものでは、個別電極を高密度に配置すると、隣接する個別電極間に電界干渉が生じることがある。このため隣接するインクガイド14への電気力線を遮蔽するために、隣接する個別電極の第1駆動電極間に、ガード電極を設けるのが好ましい。ガード電極は、2層電極構造だけでなく、前述した単層構造に対しても有効である。
【0068】
図9、図10(a)および(b)に、本発明のさらに別の実施形態の、上述したガード電極を備えた2層電極構造の吐出電極を持つ静電式インクジェットヘッド50の概略構成を示す。図9は、本実施形態のインクジェットヘッドの一実施例の模式的斜視図であり、図10(a)は、図9に示すインクジェットヘッドの模式的断面図であり、図10(b)は、図10(a)のVII −VII 線矢視図である。
図9、図10(a)および(b)に示すインクジェットヘッド50は、絶縁性基板16の図中下面の第2駆動電極44の下方の絶縁層56aと、絶縁性基板16の図中上面の第1駆動電極18aの上方の絶縁層56b、ガード電極54および絶縁層56cとを備えている点を除いて、図8(a)に示すインクジェットヘッド41と同様な構成を有するものであるので、同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明は省略して、主として、相違点について説明する。
【0069】
図9、図10(a)および(b)に示すインクジェットヘッド50において、絶縁性基板16を挟むように、図中上面に配置され、 絶縁性基板16に穿孔された貫通孔58を囲むように各個別電極毎にリング状に設けられた円形電極からなる第1駆動電極18aと下面に配置され、絶縁性基板16の貫通孔58を囲むように各個別電極毎にリング状に設けられた円形電極からなる第2駆動電極44とを備える2層電極構造の吐出電極18に加え、 さらに、第2駆動電極44の下方(下面)を覆う絶縁層56aと、第1駆動電極18aの上方に絶縁層56bを介して配置されるシート状のガード電極54と、ガード電極54の上面を覆う絶縁層56cとを備えている。ここで、行方向(主走査方向)に配置された複数の第1駆動電極18aは相互に接続され、列方向(副走査方向)に配置された複数の第2駆動電極44は相互に接続される。
【0070】
また、貫通孔58は、絶縁性基板16の下方の絶縁層56aならびに上方の56bおよび56cをも貫通して穿孔されている。すなわち、貫通孔58は、絶縁層56a、 絶縁性基板16ならびに絶縁層56bおよび56cの積層体を貫通する。この貫通孔58には、 絶縁層56a側からインクガイド14が挿入され、 インクガイド14の先端部分14aは、絶縁層56cから突出している。なお、図示例においては、 インクガイド14の先端部分14aは、インク案内溝が形成されていないが、 インクQおよびインクQ内の帯電微粒子成分の先端部分14aへの濃縮を促進するために、形成しても良い。
ここで、貫通孔58に臨む第1駆動電極18aの内径(Da)に対するインクガイド14の先端部分14aの第1駆動電極18aからの突出量(突起量)Hの比は、0.5〜2となっており、好ましくは、 0.7〜1.7とするのが良い。なお、第2駆動電極44の内径(Da)に対するインクガイド14の突起量Hの比も、上記条件を満足するものであるのが好ましい。
【0071】
本実施形態において、ガード電極54は、隣接する個別電極の第1駆動電極18aの間に配置され、隣接する個別電極の吐出部となるインクガイド14の間に生じる電界干渉を抑制するためのものである。図11(a)に示すように、ガード電極54は、金属板などの各個別電極に共通なシート状の電極であり、2次元的に配列されている各個別電極毎の貫通孔58の周囲に形成された第1駆動電極18aに相当する部分が穿孔されている(図10(a)および(b)参照)。なお、本実施形態において、ガード電極54を設ける理由は、個別電極を高密度に配置すると、隣接する個別電極の電界の状態によって自分自身の個別電極の発生する電界が影響を受け、ドットサイズおよびドットの描画位置が乱れ、記録品質に悪影響を及ぼす場合があるからである。
【0072】
ところで、ガード電極54の図中上側には、貫通孔58を除いて絶縁層56cによって覆われ、ガード電極54と第1駆動電極18aとの間には、絶縁層56bが介在し、両電極54と18aとを絶縁している。すなわち、ガード電極54は、絶縁層56cと絶縁層56bとの間に配置され、第1駆動電極18aは、絶縁層56bと絶縁性基板16との間に配置される。
すなわち、図11(b)に示すように、絶縁性基板16の上面には、従って、絶縁層56bと絶縁性基板16との間(図10参照)には、各個別電極毎の貫通孔58の周囲に形成された第1駆動電極18aが2次元的に配列されており、列方向の複数の第1駆動電極18aが相互に接続されている。
【0073】
また、図11(c)に示すように、絶縁層56aの上面には、従って、絶縁性基板16の下面には、すなわち、絶縁層56aと絶縁性基板16との間には(図10参照)、各個別電極毎の貫通孔58の周囲に形成された第2駆動電極44が2次元的に配列されており、行方向の複数の第2駆動電極44が相互に接続されている。
また、本実施形態において、各個別電極の吐出電極(駆動電極)18、例えば第1および第2駆動電極18aおよび44からのインク流路30方向への反発電界を遮蔽するために、第1および第2駆動電極18aおよび44の流路側にシールド電極を設置しても良い。
【0074】
記録時には、本実施形態の場合においても、図8に示す実施形態の場合と同様に、1つの第1駆動電極18aのみが高電圧レベルまたはハイインピーダンス状態(オン状態)とされ、残りの全ての第1駆動電極18aは接地レベル(接地状態:オフ状態)に駆動される。また、全ての第2駆動電極44が、画像データに応じて、高電圧レベルまたは接地レベルに駆動される。なお、別の実施形態として、第1および第2駆動電極18aおよび44を逆の状態に駆動してもよい。
【0075】
上述したように、第1および第2駆動電極18aおよび44は、2層電極構造に構成され、マトリクス状に配置される。これらの第1および第2駆動電極18aおよび44によって、各々の個別電極におけるインクの吐出/非吐出が制御される。すなわち、第1駆動電極18aが高電圧レベルまたはフローティング状態で、かつ第2駆動電極44が高電圧レベルの場合にはインクが吐出し、第1駆動電極18aまたは第2駆動電極44の一方が接地レベルの場合にはインクは吐出しない。
【0076】
なお、本実施形態では、画像信号に応じて、第1および第2駆動電極18aおよび44にパルス電圧を印加し、両電極ともに高電圧レベルとなった時に、インク吐出を行うようにしても良い。
例えば、図12に示すインクジェットヘッド50において、例えばインクQ中の微粒子成分の帯電は正極(+)である、すなわち正荷電粒子であるとした時、インクジェットヘッド50のインク流路30内にインクQを矢印a方向に循環させ、個別電極のインクガイド14の先端部分14aから吐出されたインクQ(インク液滴)中の正荷電粒子が記録媒体Pに引き付けられるような電界、すなわち飛翔電界を第1および第2駆動電極18aおよび44と、記録媒体Pとの間に形成する。例えば、インクガイド14の先端部分14aと記録媒体Pとの間の間隔(ギャップ)は、200〜1000μmとされるが、ギャップが500μmの時に、1kV〜2.5kVの電位差を設けることにより、飛翔電界を形成する。
さらに、浮遊導電板26には、第1または第2駆動電圧18aまたは44に印加された平均電圧により、この平均電圧より低い電圧の誘導電圧がほぼ定常的に生じるため、インクリザーバとして機能するインク流路30内のインクQ中の正電荷粒子が上方に引き付けられるような電界(以下、例えば、泳動電界とする)を形成し、インク流路30の上部にインクQ中の正電荷粒子を偏在させる。例えば、インク流路30の厚み数mmに対して数百V程度の電位差を設けて、泳動電界を形成する。
【0077】
例えば、図12に示すインクジェットヘッド50において、記録媒体Pを−1.5kVの負の高電圧に帯電させ(または、記録媒体Pを搬送する搬送部材52によって構成される対向電極を−1.5kVにバイアスし)、第1および第2駆動電極18aおよび44を共に0V(接地状態)として、飛翔電界を形成し、ガード電極54は0V(接地状態)とする。
この時、インクQは、電気泳動現象および毛細管現象によって、インク流路30から貫通孔58とインクガイド14の間を上昇し、先端部分14aに集まる。先端部分14aに集まったインクQは、先端部分14aで、またはインクQの表面張力等で押し留められ、インクQ中の正荷電粒子は、高濃度化する。
【0078】
次に、図13にように、画像信号に応じて、第1および第2駆動電極18aおよび44にパルス電圧、例えば、共に+400〜600Vを印加し、正荷電粒子濃度の高まったインク液滴Rがインクガイド14の先端部分14aから吐出される。例えば、初期粒子濃度が3〜15%の場合、吐出インク液滴Rの粒子濃度は30%以上であるのが好ましい。なお、パルス電圧のパルス幅は、特に制限的ではないが、例えば、数十μs〜数百μsとすることができる。また、記録媒体Pに記録されるドット径は、パルス電圧の大きさまたは印加時間に依存するので、これらを調整することにより、ドット径も調整することができる。
この時、本実施形態においても、第1駆動電極18aの内径に対するインクガイド14の先端部分14aの突起量の比は、適正な限定範囲内に収められているので、第1および第2駆動電極18aおよび44と記録媒体Pとの間の飛翔電界も適正に調整することができ、第1および第2駆動電極18aおよび44に適正なパルス電圧を印加した場合にのみ、インク吐出を確実かつ安定的に起こすことができる。また、図示例においては、第1および第2駆動電極18aおよび44のマトリックス駆動により、ドライバの数を減らすことができる。
すなわちインク滴吐出が起こらない状態では、記録媒体に向かう吸引電界が、1.5×10V/m以下、より好ましくは1.0×10V/m以下の範囲に収まるようにし、吐出が起こる状態では、記録媒体に向かう吸引電界が、2.0×10V/m以上、より好ましくは2.5×10V/m以上の範囲になるように設定する。
【0079】
なお、本実施形態のインクジェットヘッド50においては、第1駆動電極18aまたは第2駆動電極44のどちらで、または両方で、インク吐出/非吐出の制御を行うかは特に制限的ではないが、第1駆動電極18aまたは第2駆動電極44の一方が接地レベルの場合にはインクQが吐出せず、第1駆動電極18aがハイインピーダンス状態または高電圧レベルで、かつ第2駆動電極44が高電圧レベルの場合にだけインクQが吐出するようにするのが良い。
【0080】
ところで、本実施形態のインクジェットヘッド50においては、図示例のように、ガード電極54を隣接する第1駆動電極18aの間に設けているが、本発明はこれに限定されず、第1および第2駆動電極18aおよび44をマトリックス駆動する場合には、例えば、下層の第2駆動電極44を1列毎に順次駆動し、画像データに応じて、上層の第1駆動電極18aを駆動するようにする場合には、第1駆動電極18aの各行の間ににのみガード電極を設けるようにしても良い。このような場合にも、記録時にガード電極を所定のガード電位、例えば接地レベル等にバイアスすることにより、隣接する個別電極の影響を排除することができる。
【0081】
また、本実施形態において、図8(a)および(b)に示す実施形態と同様に個別電極の吐出電極18を駆動する時、上層の第1駆動電極18aの行を順次オンし、画像データに応じて、下層の第2駆動電極44をオン/オフした場合、すなわち、行列の並びを逆にした場合、第2駆動電極44が画像データに応じて駆動されるため、列方向のそれぞれの個別電極を中心として、その両側の個別電極は、高電圧レベルまたは接地レベルに頻繁に変化する。
しかし、行方向は、第1駆動電極18aの1行毎に駆動され、行方向のそれぞれの個別電極を中心として、その両側の個別電極の第1駆動電極18aは常に接地レベルになるため、この両側の個別電極の行がガード電極の役割を果す。このように、上層の第1駆動電極18aで各行を順次オンし、画像データに応じて下層の第2駆動電極44を駆動する場合には、ガード電極を設けなくとも、隣接する個別電極の影響を排除し、記録品質を向上させることができる。
もちろん、いずれの実施形態においても、ガード電極を設けることにより、隣接する個別電極による影響を排除することができることはいうまでもない。
【0082】
さらに、本実施形態のインクジェットヘッド50においては、インク流路30の底面を構成すると共に、第1駆動電極18aおよび第2吐出電極44に印加されたパルス状の吐出電圧によって定常的に生じる誘導電圧により、インク流路30内の正に帯電したインク粒子(荷電粒子、すなわち帯電微粒子成分)を上方へ向けて(すなわち記録媒体P側に向けて)泳動させる浮遊導電板26が設けられている。また、浮遊導電板26の表面には、電気絶縁性である被覆膜(図示せず)が形成されており、インクへの電荷注入等によりインクの物性や成分が不安定化することを防止する。絶縁性被覆膜の電気抵抗は、1012Ω・cm以上が望ましく、より望ましくは1013Ω・cm以上である。また、絶縁性被覆膜は、インクに対して耐腐食性であることが望ましく、これにより浮遊導電板26がインクに腐食されることが防止される。また、浮遊導電板26は、下方から絶縁部材で覆われており、このような構成により、浮遊導電板26は、完全に電気的絶縁浮遊にされている。
浮遊導電板26は、ヘッドの1ユニットにつき1個以上である(例えば、C、M、Y、Kの4つのヘッドがあった場合、浮遊導電板数は最低各1個づつ有し、CとMのヘッドユニット間で共通の浮遊導電板とすることはない)。
【0083】
なお、上述した2層電極構造の吐出電極を持つ静電式インクジェットヘッドの各実施例では、対向電極(記録媒体P)を例えば−1.6kVに帯電し、第1駆動電極および第2駆動電極の何れか一方または両方が負の高電圧(例えば−600V)の時にはインクが吐出せず、第1駆動電極および第2駆動電極の両方が接地レベル(0V)の場合にだけインクが吐出するようにしても良い。
【0084】
なお、本発明において、インク流路30に入れるインクQは、粒径0.1〜5μm程度の着色荷電粒子(着色帯電微粒子成分)をキャリア液中に分散したものを用いる。なお、インクQ中には、着色荷電粒子とともに、印刷後の画像の定着性を向上させるための分散樹脂粒子を、適宜含有させてもよい。キャリア液は、高い電気抵抗率(10Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であることが要求される。仮に、電気抵抗率の低いキャリア液を使用すると、吐出電極によって印加される電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けて帯電してしまうため、荷電粒子(帯電微粒子成分)の濃度が高められず、濃縮がおこらない。また、電気抵抗率の低いキャリア液は、隣接する記録電極間で電気的導通を生じさせる懸念もあるため、本形態には不向きである。
【0085】
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、誘電性液体中の荷電粒子に有効に電界が作用され、泳動が起こりやすくなる。
なお、このような誘電性液体の固有電気抵抗の上限値は1016Ωcm程度であるのが望ましく、比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。
誘電性液体の電気抵抗が上記範囲であるのが望ましい理由は、電気抵抗が低くなると、低電界下でのインクの吐出が悪くなるからであり、比誘電率が上記範囲であるのが望ましい理由は、誘電率が高くなると溶媒の分極により電界が緩和され、これにより形成されたドットの色が薄くなったり、滲みを生じたりするからである。
【0086】
本発明に用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0087】
上記の誘電性液体(非水溶媒)中に、分散される着色粒子は、色材自身を分散粒子として誘電性液体中に分散させてもよいし、定着性を向上させるための分散樹脂粒子中に含有させてもよい。含有させる場合、顔料などは分散樹脂粒子の樹脂材料で被覆して樹脂被覆粒子とする方法などが一般的であり、染料などは分散樹脂粒子を着色して着色粒子とする方法などが一般的である。色材としては、従来からインクジェットインク組成物、印刷用(油性)インキ組成物、あるいは静電写真用液体現像剤に用いられている顔料および染料であればどれでも使用可能である。
【0088】
インク中に分散されたインク粒子の含有量(着色粒子および/または樹脂粒子の合計含有量)は、インク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。含有量が少なくなると、印刷画像濃度が不足したり、インクと記録媒体表面との親和性が得られ難くなって強固な画像が得られなくなったりするなどの問題が生じ易くなり、一方、含有量が多くなると均−な分散液が得られにくくなったり、吐出ヘッドでのインクの目詰まりが生じやすく、安定なインク吐出が得られにくいなどの問題が生じるからである。
【0089】
色剤として用いる顔料としては、無機顔料、有機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ぺリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、等の従来公知の顔料を特に限定することなく用いることができる。
【0090】
色剤として用いる染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、アニリン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ペンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料、等の油溶性染料が好ましい。
【0091】
また、誘電性溶媒中に分散された着色粒子および/または樹脂粒子等のインク粒子の平均粒径は、0.1μm〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2μm〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4μm〜1.0μmの範囲である。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
【0092】
なお、インクQ中のインク粒子(分散樹脂粒子および/または着色粒子あるいは色材粒子)は、好ましくは正荷電または負荷電の検電性粒子である。
これらのインク粒子に検電性を付与するには、湿式静電写真用現像剤の技術を適宜利用することで達成可能である。具体的には、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の検電材料および他の添加剤を用いることで行われる。
【0093】
また、インク組成物として、粘度は0.5〜5mPa・secの範囲が好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、さらに好ましくは0.7〜2.0mPa・secの範囲である。着色粒子は荷電を有し、必要に応じて電子写真用液体現像剤に用いられている種々の荷電制御剤が使用でき、その荷電量は5〜200μC/gの範囲が望ましく、より好ましくは10〜150μC/g、さらに好ましくは15〜100μC/gの範囲である。また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化する事もあり、下記に定義する分配率Pが、50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、インク組成物の電気伝導度、σ2は、インク組成物を遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
以上のようなインク組成物とすることによって、荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
【0094】
一方、インク組成物の電気伝導度σ1は、100〜3000pS/cmの範囲が好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、さらに好ましくは200〜2000pS/cmの範囲である。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、吐出電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。また、インク組成物の表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/mさらに好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、吐出電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
【0095】
なお、本発明においては、従来のインクジェット方式のように、インク全体に力を作用させて、インクを記録媒体に向けて飛翔させるのではなく、主に、キャリア液体に分散させた固形成分である帯電微粒子成分(荷電トナー粒子)に力を作用させて、飛翔させるものである。その結果、普通紙を初めとして、非吸収性のフィルム、例えばPETフィルムなどの種々の記録媒体に画像を記録することができ、また、記録媒体上で、滲みや流動を生じることなく、種々の記録媒体に対して、高画質な画像を得ることができる。
【0096】
次に、本発明の第1および第2の態様の静電式インクジェットヘッドを用いる本発明の第3の態様の静電式インクジェット記録装置および本発明の第4の態様の静電式インクジェット記録方法について説明する。
図14は、本発明の第3の態様の静電式インクジェット記録装置の一実施例の概略全体構成を示す模式図である。
本発明の静電式インクジェット記録装置(以下、インクジェットプリンタという)および記録方法は、搬送手段によって搬送される記録媒体Pに対して、画像形成手段によって、入力された画像データに応じて4色のインク液滴を吐出してインク粒子像を形成し、記録媒体P上に形成されたインク粒子像を定着して、フルカラー画像を記録するものである。
【0097】
同図に示すインクジェットプリンタ60は、記録媒体Pに片面4色印刷を行う装置で、記録媒体Pの搬送手段として、フィードローラ対62、ガイド64、ローラ66a,66b,66c、搬送ベルト68、搬送ベルト位置検知手段69、静電吸着手段70、除電手段72、剥離手段74、定着・搬送手段76およびガイド78を有し、画像形成手段として、吐出ヘッド80、インク循環系82、ヘッドドライバ84、記録媒体位置検出手段86および記録位置制御手段88を有し、さらに、溶媒回収手段として、排出ファン90および溶媒回収装置92を有し、これらの構成要素を内包する筐体61を備える。
【0098】
まず、インクジェットプリンタ60における、記録媒体Pの搬送手段について説明する。
フィードローラ対62は、筐体61の側面に設けられた搬入口61aに隣接して設けられ、図示されないストッカから記録媒体Pを筐体61内に設けられた搬送ベルト68(ローラ66aに支持される部分)に送り込む1対のローラからなる。ガイド64は、フィードローラ対62と搬送ベルト68を支持するローラ66aとの間に設けられ、記録媒体Pを搬送ベルト68に案内する。
【0099】
フィードローラ対62の近傍には、図示しないが、記録媒体Pに付着した塵埃や紙粉等異物を除去する異物除去手段を設けるのが好ましい。異物除去手段としては、公知の吸引除去、吹き飛ばし除去、静電除去等の非接触法や、ブラシ、ローラー等による接触法によるものの1つあるいは複数を組み合わせて使用すればよい。また、フィードローラ対62を微粘着ローラで構成し、さらにフィードローラ対62のクリーナを設けて、フィードローラ対62による記録媒体Pのフィード時に塵埃・紙粉等の異物の除去を行っても良い。
【0100】
ローラ66a,66b,66cは、搬送ベルト68を張架して移動させるものであり、ローラ66a,66b,66cのうち少なくとも1つは、図示されない駆動源と連結されている。
搬送ベルト68は、吐出ヘッド80から吐出されるインクによって画像が形成される時に記録媒体Pを保持するプラテンとして機能し、記録媒体Pを移動するとともに、画像形成後、定着・搬送手段76まで搬送するためのものである。従って、搬送ベルト68としては、寸法安定性に優れ、耐久性を有する材料で形成される無端ベルトが用いられ、その材料としては、例えば、金属、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、その他の樹脂およびそれらの複合体が用いられる。
【0101】
図示の本実施例においては、記録媒体Pは、静電吸着によって搬送ベルト68上に保持されるので、搬送ベルト68は、記録媒体Pを保持する側(表面)が絶縁性、ローラ66a,66b,66cと接する側(裏面)が導電性を有する構成としている。具体的には、搬送ベルト68は、金属ベルトの表面側にフッ素樹脂コートを行ったものである。また、図示例においては、ローラ66aは導電性ローラとされ、搬送ベルト68の裏面(金属面)は、ローラ66aを介して接地されている。
すなわち、搬送ベルト68は、記録媒体Pを保持するとき、図14に示す導電性電極基板20aと絶縁シート20bからなる対向電極20として機能するもので、図6に示す対向電極20を構成する、記録媒体Pを搬送する搬送部材52の一例である。
【0102】
なお、搬送ベルト68としては、これ以外にも、金属ベルトに上記のいずれかの樹脂材料でコーティングする方法、接着材等で樹脂シートと金属ベルトを張り合わせる方法、上記の樹脂から成るベルトの裏面に金属蒸着する方法等、各種の方法により作製された、金属層を有するベルトが好適に使用される。
また、搬送ベルト68の記録媒体Pに接する表面は平滑であるのが好ましく、これにより、記録媒体Pの良好な吸着性が得られる。
【0103】
なお、搬送ベルト68は、公知の方法により蛇行が抑制されているのが好ましい。蛇行抑制の方法としては、例えば、ローラ66cをテンションローラとし、搬送ベルト位置検知手段69の出力、すなわち搬送ベルト68の幅方向の検知位置に応じて、ローラ66cの軸をローラ66aおよびローラ66bの軸に対して傾けることにより、搬送ベルトの幅方向の両端でテンションを変えて蛇行を抑制する方法等が用いられる。また、ローラ66a,66b,66cをテーパ形やクラウン形、あるいはその他の形状とすることで、蛇行を抑制してもよい。
ここで、搬送ベルト位置検知手段69は、上述のように、搬送ベルトの蛇行などを抑制するとともに、画像記録時の記録媒体Pの副走査方向の位置を所定位置に規制するために、搬送ベルト68の幅方向の位置を検知するもので、フォトセンサ等の公知の検知手段が用いられる。
【0104】
静電吸着手段70は、記録媒体Pを静電力により搬送ベルト68に吸着させて保持すると共に、画像形成のために吐出ヘッド80に対して所定のバイアスを印加するために、記録媒体Pを所定の電位に帯電させるものである。
本実施例においては、静電吸着手段70は、記録媒体Pを帯電させるスコロトロン帯電器70aと、スコロトロン帯電器70aに接続される負の高圧電源70bとを有する。記録媒体Pは、負の高圧電源70bに接続されたスコロトロン帯電器70aにより、負の高電圧に帯電され、搬送ベルト68の絶縁層に静電吸着される。
なお、静電吸着手段70は、図1に示す帯電ユニット22と略同様の構成を有し、記録媒体Pを所定の電位に帯電させる点では、同一の機能を有する。
【0105】
静電吸着手段としては、図示例のスコロトロン帯電器70aに限定されず、他にも、コロトロン帯電器、固体チャージャ、放電針等、種々の手段や方法が利用できる。また、後に詳述するように、静電吸着手段70を、ローラ66a,66b,66cの少なくとも1つを導電性ローラとし、あるいは、記録媒体Pへの記録位置において搬送ベルト68の裏面側(記録媒体Pと逆側)に導電性プラテンを配置し、この導電性ローラ、または導電性プラテンを負の高圧電源に接続する構成としても良いし、あるいは搬送ベルト68を絶縁性ベルトとし、導電性ローラは接地し、導電性プラテンを負の高圧電源に接続する構成としても良い。
【0106】
静電吸着手段70は、静電力によって記録媒体Pが浮き上がりの無い状態で搬送ベルト68に静電吸着した後、搬送ベルト68を駆動しながら、記録媒体P表面を均一帯電する。記録媒体Pを帯電する際の搬送ベルト68の搬送速度は、安定に帯電できる範囲であれば良く、画像記録時の搬送速度と同じでも良いし、異なっていても良い。また、記録媒体Pを複数回周回させることによって、同一の記録媒体Pに静電吸着手段を複数回作用させ、均一帯電を行っても良い。
なお、本実施例では、静電吸着手段70で記録媒体Pの静電吸着および帯電を行っているが、静電吸着手段と帯電手段とを別々に設けてもよい。
【0107】
静電吸着手段70によって帯電された記録媒体Pは、搬送ベルト68によって後述する吐出ヘッド80の位置まで搬送される。吐出ヘッド80による画像形成部では、記録媒体Pの帯電電位をバイアスとし、吐出ヘッド80に記録信号電圧が印加され、バイアス帯電電位に記録信号電圧が重畳されることにより、インクジェット(液滴)が吐出され、記録媒体Pに画像が形成される。この際、搬送ベルト68の加熱手段を設け、記録媒体温度を高めることで、吐出ヘッド80から吐出されたインク液滴の印刷媒体上での速やかな定着を促進することができ、滲みをより一層抑制して画質の向上を図ることができる。本発明の記録方法を実施するための吐出ヘッド80による画像記録方法は、後に詳述する。
【0108】
画像が形成された記録媒体Pは、除電手段72により除電され、剥離手段74により搬送ベルト68より剥離されて定着・搬送手段76へ搬送される。
本実施例において、除電手段72は、コロトロン除電器72aと、交流電源72bと、直流高圧電源72cとを有し、直流高圧電源72cの他方の端子は、接地されている。図示例の除電手段72は、コロトロン除電器72aおよび交流(AC)電源72bを用いる、いわゆるACコロトロン除電器を使用しているが、これ以外にも、例えばスコロトロン除電器、固体チャージャ、放電針等の種々の手段や方法などが利用でき、また、上述の静電吸着手段70のように、導電性ローラや導電性プラテンを用いる構成も好適に使用される。また、剥離手段74としては、剥離用ブレード、逆回転ローラ、エアナイフ等公知の技術が利用可能である。
【0109】
搬送ベルト68から剥離された記録媒体Pは、定着・搬送手段76に送られ、インクジェットによって形成された画像が定着される。本実施例においては、定着・搬送手段76としてヒートローラ76aおよび搬送ローラ76bからなるローラ対を用い、記録媒体Pを搬送すると共に、記録媒体Pに形成された画像を接触加熱して定着している。なお、本発明においては、定着手段を搬送ローラ対からなる搬送手段と別々に設け、他の定着手段や定着方法によって定着を行ってもよい。
【0110】
加熱定着としては、上述のヒートロール定着以外に、赤外線またはハロゲンランプやキセノンフラッシュランプによる照射、あるいはヒーターを利用した熱風定着等の一般的な加熱定着を挙げることができる。
なお、加熱定着の場合、記録媒体Pとして、コート紙やラミネート紙を用いた場合には、急激な温度上昇により紙内部の水分が急激に蒸発し紙表面に凹凸が発生する、ブリスターと呼ばれる現象が生じるため、これを防止するために、複数の定着器を配置し、紙が徐々に昇温するように、各定着器の電力供給および記録媒体Pまでの距離の一方または両方を変えるのが好ましい。
【0111】
なお、少なくとも吐出ヘッド80からのインクジェットによる画像形成から、定着・搬送手段76による定着までの行程では、記録媒体Pの画像形成面には何も接触しないように保たれることが望ましい。
定着・搬送手段76における定着の際の記録媒体Pの移動速度には、特に制限的では無く、画像形成時の搬送ベルト68による搬送速度と同じであっても良いし、異なっていても良い。画像形成時の搬送速度と異なる場合には、定着・搬送手段76の直前に記録媒体Pの速度バッファを設けるのも好ましい。
画像が定着された記録媒体Pは、ガイド78に案内されて図示されない排紙ストッカーに排紙される。
【0112】
次に、インクジェットプリンタ60における画像形成(描画)手段および画像記録方法について説明する。
上述したように、インクジェットプリンタ60の画像形成手段は、インクジェットを吐出する吐出ヘッド80、吐出ヘッド80にインクの供給および回収を行うインク循環系82、図示されないコンピュータ、RIP(Raster Image Processor)等の外部機器からの出力画像信号により吐出ヘッド80を駆動するヘッドドライバ84、記録媒体Pにおける画像形成(記録)位置を決定するために記録媒体Pを検出する記録媒体位置検出手段86、および吐出ヘッド80の位置を制御する記録位置制御手段88により構成される。
【0113】
図15は、吐出ヘッド80および記録位置制御手段88と、その周辺の記録媒体Pの搬送手段を模式的に示す斜視図である。
吐出ヘッド80は、フルカラー画像の記録を行うためのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色の吐出ヘッド80aを有し、ヘッドドライバ84からの信号に従って、インク循環系82によって供給されるインクをインク液滴として吐出して、搬送ベルト68によって所定速度で搬送されている記録媒体Pに画像を形成(記録)する。各色の吐出ヘッドは、搬送ベルト68の搬送方向に配列されている。吐出ヘッド80の各色の吐出ヘッド80aは、本発明の静電式インクジェットヘッド、例えば図1〜図13に示す種々のヘッド構造を持つ種々の静電式インクジェットヘッド、特に図9〜図13に示すヘッド構造を持つ静電式インクジェットヘッド50によって構成される。
【0114】
吐出ヘッド80としては、各色につき複数のノズル(各ノズルは、1つのインク滴を吐出する1単位の吐出ヘッドに対応する)が所定の間隔で記録媒体Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)に配列されたマルチチャンネルヘッド、あるいは各色のノズルが記録媒体Pの幅方向全域に配列されたフルラインヘッドが使用できる。
図示例のインクジェットプリンタ60は、吐出ヘッド80に対して、搬送ベルト68によって記録媒体Pを搬送することによって主走査を行う。図示例のインクジェットプリンタ60では、このような構成とすることで、市販のインクジェットプリンタのように、吐出ヘッドをシリアルスキャンする場合に比べて、高速での画像形成(描画)が可能となる。
【0115】
吐出ヘッド80として、マルチチャンネルヘッドを用いた場合には、搬送ベルト68に記録媒体Pを保持させた状態で、搬送ベルト68を回転させることにより、吐出ヘッド80に対して、記録媒体Pを搬送して主走査を行うとともに、吐出ヘッド80を搬送ベルト68の幅方向に連続的または回転毎に逐次的(間欠的)に移動させて副走査を行うことによって、記録媒体P上に画像が形成される。従って、記録媒体Pの全面に画像が形成されるためには、記録媒体Pを担持した状態で搬送ベルト68が複数回回転する、すなわち複数回主走査が行われる。なお、この場合の吐出ヘッド80の副走査方法は、吐出ヘッド80のノズル密度と描画解像力の関係、インターレースの方法等により選択されれば良い。
【0116】
また、吐出ヘッド80として、フルラインヘッドを用いた場合には、搬送ベルト68に記録媒体Pを保持させた状態で、吐出ヘッド80に対して記録媒体Pを搬送し、1回通過させる、すなわち1回の走査を行うのみで、記録媒体Pの全面に画像が形成される。
こうして、マルチチャンネルヘッドまたはフルラインヘッドを用いる吐出ヘッド80によって記録媒体Pの全面に形成された画像は、記録媒体Pが定着・搬送手段76によって挟持搬送されることにより、定着・搬送手段76によって定着される。
【0117】
なお、上述した実施例では、マルチチャンネルヘッドを用いる吐出ヘッド80に対して、搬送ベルト68によってその長手方向に記録媒体Pを搬送することによって主走査を行い、搬送ベルト68の幅方向、すなわち主走査方向と略直交する方向に吐出ヘッド80を移動させて副走査し、また、フルラインヘッドを用いる吐出ヘッド80に対して、搬送ベルト68によってその長手方向に記録媒体Pを搬送することによって走査して、記録媒体Pの全面を走査しているが、本発明はこれに限定されず、記録媒体Pと吐出ヘッド80とを相対的に移動させて、吐出ヘッド80によって記録媒体Pの全面を走査できれば、どのような走査方法を行っても良い。例えば、搬送ベルト68の幅方向に吐出ヘッド80を移動させて主走査を行い、搬送ベルト68によって記録媒体Pを搬送して副走査を行っても良い。または、吐出ヘッド80を固定したまま、搬送ベルト68をその長手方向に搬送するとともに搬送ベルト68自体をその幅方向に移動させて副走査を行っても良い。もしくは、記録媒体Pを、所定位置の保持手段上に保持し、例えば、所定位置に停止させた搬送ベルト68上に保持して静止させておき、吐出ヘッド80をフルラインヘッドでは1次元的に、マルチチャンネルヘッドでは2次元的に移動させて2次元的に走査を行い、記録媒体Pの全面を走査するようにしても良い。
【0118】
次に、インク循環系82は、吐出ヘッド80の各色の吐出ヘッド80aのインクジェットヘッド50のインク流路30(例えば、図13参照)にインク吐出に十分なインクを流すためのもので、4色(C、M、Y、K)の各色のインクタンク、ポンプおよび補給用インクタンク(図示せず)等を有するインク循環装置82aと、インク循環装置82aのインクタンクから吐出ヘッド80の各色の吐出ヘッドのインクジェットヘッド50のインク流路30(例えば、図13参照)にそれぞれ各色のインクを(図13中の右側から)供給する各色の配インク管系からなるインク供給路を含むインク供給系82bと、吐出ヘッド80の各色の吐出ヘッドのインクジェットヘッド50のインク流路30(図13中の左側)からインクをインク循環装置82aに回収する各色の配インク管系からなるインク回収路を含むインク回収系82cとを有する。
【0119】
インク循環系82は、インク循環装置82aによって、インクタンクからインク供給系80bを介して吐出ヘッド80に各色毎にインクを供給し、かつ、インク供給系80cを介して吐出ヘッド80から各色毎にインクをインクタンクに回収して循環させることができればどのようなものでも良い。インクタンクは、画像記録用のインクを貯留しており、このインクがポンプにより汲み出されて吐出ヘッド80へ送られる。吐出ヘッド80からインクが吐出されることにより、インク循環系82で循環しているインクの濃度が低下するので、インク循環系82では、インク濃度検出器によってインク濃度を検出し、検出したインク濃度に応じて補給用インクタンクから適宜インクを補充して、インク濃度を所定の範囲に保つのが望ましい。
【0120】
また、インクタンクには、インクの固形成分の沈殿・濃縮を抑制するための攪拌装置や、インクの温度変化を抑制するためのインク温度管理装置が備えられるのが好ましい。この理由は、温度管理をしないと、環境温度の変化等によりインク温度が変化して、インクの物性が変化することによりドット径が変化し、高画質な画像が安定して形成できなくなる可能性があるからである。
攪拌装置としては回転羽、超音波振動子、循環ポンプ等が使用できる。
インクの温度制御装置としては吐出ヘッド80、インクタンク、配インク管系等に、ヒータやペルチェ素子等の発熱素子または冷却素子を配し、温度センサ、例えばサーモスタットにより制御する方法等、公知の方法が使用できる。温度制御装置をインクタンク内に配置する場合には、温度分布を一定にするように攪拌装置と共に配するのがよい。また、タンク内の濃度分布を一定に保つための攪拌装置は、インクの固形成分の沈澱・濃縮の抑制するための攪拌装置と共用しても良い。
【0121】
ヘッドドライバ84は、外部装置から画像データを受け取り、種々の処理を行うシステム制御部(図示せず)から画像データを受け取り、その画像データに基づいて吐出ヘッド80を駆動する。このシステム制御部は、コンピュータやRIP、画像スキャナ、磁気ディスク装置、画橡データ伝送装置等の外部装置から受け取った画像データを色分解すると共に、分解されたデータに対して適当な画素数、階調数に分割演算し、スクリーニング処理、網点面積率の演算を行って、ヘッドドライバ84が吐出ヘッド80(インクジェットヘッド50)を駆動するための、画像データに応じたヘッド駆動データである。
【0122】
また、システム制御部は、搬送ベルト68による記録媒体Pの搬送タイミングに合わせた吐出ヘッド80(記録位置制御手段88)の移動、および、吐出ヘッド80によるインクの吐出タイミングの制御を行う。吐出タイミングの制御は、記録媒体位置検出手段86の出力や、搬送ベルト68または搬送ベルト68の駆動手段へ配置したエンコーダやフォトインタプリッタからの出力信号を利用して行われる。
記録媒体位置検出手段66は、吐出ヘッド80によるインク液滴の吐出位置に搬送されてくる記録媒体Pを検出するためのもので、フォトセンサ等の公知の検出手段を用いることができる。
【0123】
記録位置制御手段88は、吐出ヘッド80を載置・固定して、搬送ベルト68の幅方向に移動させ、記録媒体Pへの幅方向の画像形成位置を調整するものである。すなわち、記録位置制御手段88は、記録媒体Pの所定の位置に画像を形成するための微調整、および、吐出ヘッド80としてマルチチャンネルヘッドを用いた場合の副走査のために、搬送ベルト位置検知手段69が検知した搬送ベルト68の位置と、ヘッドドライバ84からの画像信号とに応じて、吐出ヘッド80を移動させるものである。
【0124】
次に、インクジェットプリンタ60における溶媒回収手段について説明する。
インクジェットプリンタ60は、溶媒回収手段として、排出ファン90および溶媒回収装置92を有し、吐出ヘッド80から記録媒体P上に吐出された帯電微粒子成分およびこれを分散させる分散溶媒を含むインク液滴から蒸発する、特にインク液滴によって形成された画像を定着する際に記録媒体Pから蒸発する分散溶媒を回収する。
排出ファン90は、インクジェットプリンタ60の筐体11内部の空気を吸い込んで溶媒回収装置92へ送るためのものである。
溶媒回収装置92は、溶媒蒸気吸収材を備えており、排出ファン90によって吸い込まれた溶媒蒸気を含む気体の溶媒成分をこの溶媒蒸気吸収材に吸着し、溶媒が吸着回収された後の気体をインクジェットプリンタ60の筐体11外に排出する。溶媒蒸気吸収材としては、各種の活性炭などが好適に使用される。
【0125】
上記では、C、M、Y、Kの4色のインクを用いてカラー画像を記録する静電式インクジェット記録装置について説明したが、本発明はこれには制限されず、モノクロ用の記録装置であってもよいし、他の色、例えば淡色や特色のインクを任意の数だけ用いて記録するものであってもよい。その場合は、インク色数に対応する数の吐出ヘッド80およびインク循環系82が用いられる。
【0126】
また、上記の例ではいずれも、インク中の着色荷電粒子を正帯電させ、記録媒体あるいは記録媒体の背面の対向電極を負の高電圧にして、吐出したインクジェットによって画像記録を行うインクジェット式記録装置について説明したが、本発明はこれには限定されず、逆に、インク中の着色荷電粒子を負に帯電させ、記録媒体または対向電極を正の高電圧にして、インクジェットによる画像記録を行っても良い。このように、着色荷電粒子の極性を上記の例と逆にする場合には、静電吸着手段、対向電極、静電式インクジェットヘッドの駆動電極への印加電圧極性等を上記の例と逆にすれば良い。
【0127】
また、本発明の静電式インクジェットヘッドおよび記録装置は、帯電した色材成分を含むインクを吐出するものに限定されるものではなく、荷電粒子を含む液体を吐出させる液体吐出ヘッドであれば特に制限されず、例えば、上記静電式インクジェット記録装置の他に、帯電粒子を利用して液滴を吐出して対象物を塗布する塗布装置に適用することができる。
【0128】
以上、本発明に係る静電式インクジェットヘッド、それを用いた記録装置および記録方法について、種々の実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記種々の実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0129】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の第1および第2の態様によれば、吐出電圧の低圧化を図ることができ、低誘電率材料の使用等インクガイド材質の選択肢を拡大することができ、尖っていない形状の使用等インクガイド先端構造の選択肢を拡大することができる静電式インクジェットヘッドを提供することができる。
また、本発明の第3および第4の態様によれば、上述した効果を持つ静電式インクジェットヘッドを用いるので、記録媒体に安定して画像を記録することができる安全、かつ、低コストで、適用範囲の広い静電式インクジェット記録装置および記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る静電式インクジェットヘッドの一実施例の概略構成を示す模式的断面図である。
【図2】(a)は、本発明に係る静電式インクジェットヘッドの個別電極の一実施例の概略構成を示す模式的斜視図であり、(b)は、(a)の模式的断面図である。
【図3】(a)は、本発明に係る静電式インクジェットヘッドの個別電極の別の実施例の概略構成を示す模式的斜視図であり、(b)は、(a)の模式的断面図であり、(c)は、本発明に係る静電式インクジェットヘッドの個別電極のさらに別の実施例の概略構成を示す模式的横断面図であり、(d)は、(c)の模式的部分縦断面図である。
【図4】本発明に係る静電式インクジェットヘッドの個別電極の実モデルを示す概念図である。
【図5】図4に示す実モデルにおける電界強度とインクガイドの先端中心からの距離との関係を示すグラフである。
【図6】(a)は、図4に示す実モデルにおける必要パルス電圧と、円形吐出電極内径に対する吐出部までの距離の比との関係を示すグラフであり、(b)は、図4に示す実モデルにおける必要パルス電圧と、平行吐出電極間隔に対する吐出部までの距離の比との関係を示すグラフである。
【図7】(a)は、本発明に係る静電式インクジェットヘッドの個別電極の他の実施例の概略構成を示す模式的斜視図であり、(b)は、(a)に示す個別電極に用いられる第1および第2駆動電極の配置を表す一実施例の模式的斜視図である。
【図8】(a)は、本発明に係る静電式インクジェットヘッドの個別電極の他の実施例の概略構成を示す模式的斜視図であり、(b)は、(a)に示す個別電極に用いられる第1および第2駆動電極の配置を表す一実施例の模式的斜視図である。
【図9】本発明に係る静電式インクジェットヘッドの他の実施例の概略構成を示す模式的斜視図である。
【図10】(a)は、図9に示すインクジェットヘッドの概略構成を示す模式的断面図であり、(b)は、(a)のVII −VII 線切断面図である。
【図11】(a)、(b)および(c)は、それぞれ図10(b)のA−A線、B−B線およびC−C線矢視図である。
【図12】図9に示すインクジェットヘッドの作用を説明するための概念図である。
【図13】図9に示すインクジェットヘッドの記録動作を説明するための概念図である。
【図14】本発明のインクジェット式記録装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図15】吐出ヘッドとその周辺の記録媒体搬送手段を模式的に示す斜視図である。
【図16】従来の静電式インクジェットヘッドの一例の構成概念図である。
【符号の説明】
10,32,40,41,50 静電式インクジェットヘッド
12 ヘッド基板
14 インクガイド
14a 先端部分
16 絶縁性基板
18 吐出電極
18a 円形電極(第1駆動電極)
18b,36 平行電極
20 対向電極
20a 電極基板
20b 絶縁シート
22 帯電ユニット
22a スコロトロン帯電器
22b バイアス電圧源
24 信号電圧源
26 浮遊導電板
28,58 貫通孔
30 インク流路
42,44 第2駆動電極
52 搬送部材
54 ガード電極
56a,56b,56c 絶縁層
60 インクジェットプリンタ
62 フィードローラ
64 ガイド
66a,66b,66c ローラ
68 搬送ベルト
69 搬送ベルト位置検知手段
70 静電吸着手段
72 除電手段
74 剥離手段
76 定着・搬送手段
78 ガイド
80,80a 吐出ヘッド
82 インク循環系
84 ヘッドドライバ
86 記録媒体位置検出手段
88 記録位置制御手段
90 排出ファン
92 溶媒回収装置
P 記録媒体
Q インク
R インク液滴

Claims (7)

  1. 帯電した微粒子を含むインクを静電力を利用して吐出させて記録媒体に画像を記録する静電式インクジェットヘッドであって、
    その先端部分が前記記録媒体側に向いているインクガイドと、
    前記インクガイドにインクを供給するインク流路と、
    前記インクガイドの外周を囲うように離間して配置される囲繞電極からなり、前記インク流路から前記インクガイドの先端部分に導かれたインクを静電力で吐出させるための吐出電極とを有し、
    前記囲繞電極の有効内径と、前記囲繞電極から前記記録媒体側に突出する前記インクガイドの先端までの距離との比が、1:0.5〜1:2であることを特徴とする静電式インクジェットヘッド。
  2. 前記囲繞電極の有効内径と、前記囲繞電極から前記インクガイドの先端までの距離との比が、1:0.7〜1:1.7である請求項1に記載の静電式インクジェットヘッド。
  3. 帯電した微粒子を含むインクを静電力を利用して吐出させて記録媒体に画像を記録する静電式インクジェットヘッドであって、
    その先端部分が前記記録媒体側に向いているインクガイドと、
    前記インクガイドにインクを供給するインク流路と、
    前記インクガイドの両側に離間して対向して配置される並列電極からなり、前記インク流路から前記インクガイドの先端部分に導かれたインクを静電力で吐出させるための吐出電極とを有し、
    前記並列電極の有効間隔と、前記並列電極から前記記録媒体側に突出する前記インクガイドの先端までの距離との比が、1:0.7〜1:2.8であることを特徴とする静電式インクジェットヘッド。
  4. 前記並列電極の有効間隔と、前記並列電極から前記インクガイドの先端までの距離との比が、1:1.0〜1:2.4である請求項3に記載の静電式インクジェットヘッド。
  5. 前記インクガイドは、ヘッド基板上に配置され、
    前記インク流路は、前記ヘッド基板と所定間隔離間して配置された絶縁性基板と前記ヘッド基板との間に形成され、
    前記絶縁性基板は、複数の貫通孔が開孔され、
    前記インクガイドは、前記絶縁性基板に開孔された貫通孔からその先端部分が前記記録媒体側に突出し、前記インク流路を流れるインクを前記インク流路から前記先端部分に導くものである請求項1〜4のいずれかに記載の静電式インクジェットヘッド。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の静電式インクジェットヘッドと、
    前記記録媒体を保持する手段と、
    前記インクジェットヘッドと前記記録媒体を相対的に移動させる手段と、
    前記吐出電極と前記記録媒体の間に所定のバイアス電圧を印加する手段と、
    前記記録媒体に記録すべき前記画像に応じて、前記吐出電極に所定の吐出電圧を印加する手段とを有することを特徴とする静電式インクジェット記録装置。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の静電式インクジェットヘッドの前記吐出電極と前記記録媒体の間に所定のバイアス電圧を印加しておき、
    前記インクジェットヘッドを前記記録媒体に対して相対的に移動させつつ、
    前記記録媒体に記録するべき前記画像に応じて前記吐出電極に所定の吐出電圧を印加して、
    前記インクジェットヘッドの前記インクガイドの先端部分に濃縮したインクを吐出させ、
    前記記録媒体に前記画像を記録することを特徴とする静電式インクジェット記録方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006175657A (ja) * 2004-12-21 2006-07-06 Fuji Photo Film Co Ltd 液体吐出ヘッドおよびその製造方法
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