JP2004298700A - プラスチックシートの製造方法、その方法により製造されたプラスチックシート、及びそれを用いた表示用デバイス - Google Patents
プラスチックシートの製造方法、その方法により製造されたプラスチックシート、及びそれを用いた表示用デバイス Download PDFInfo
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Abstract
【課題】転写材を使用することなく、高度な平滑性を有するプラスチックシートの製造を可能な限り安価に可能とする製造方法に関するものであり、それにより製造されたプラスチックシートに関するものであり、さらにはそれを使用した表示素子に関するものである。
【解決手段】シート状の無機充填材を含有し、マトリクス樹脂として熱硬化性もしくは紫外線硬化性を使用したプラスチックシートで、最大表面粗さ200nm以下の高度な平滑性を有するものの製造方法;転写用基材をいっさい使用せず、かつ製造の途中でプラスチックシートの表面部もしくは全体が溶融かつ/または溶解した状態を経由することにより樹脂の自由表面を形成し、なおかつその状態で樹脂がゲル化する際に樹脂溶液のマランゴニ数が20以下であることを必須条件とする。更にその製造方法によって製造されたプラスチックシートおよび、そのプラスチックシートを利用して製造された表示素子。
【解決手段】シート状の無機充填材を含有し、マトリクス樹脂として熱硬化性もしくは紫外線硬化性を使用したプラスチックシートで、最大表面粗さ200nm以下の高度な平滑性を有するものの製造方法;転写用基材をいっさい使用せず、かつ製造の途中でプラスチックシートの表面部もしくは全体が溶融かつ/または溶解した状態を経由することにより樹脂の自由表面を形成し、なおかつその状態で樹脂がゲル化する際に樹脂溶液のマランゴニ数が20以下であることを必須条件とする。更にその製造方法によって製造されたプラスチックシートおよび、そのプラスチックシートを利用して製造された表示素子。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックシートの製造方法、プラスチックシート、及び表示素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント回路板については小型化、高機能化の要求が強くなる一方、表面が平滑なものを安価、高速で製造する必要がある。さらにその傾向が強い商品として、表示素子用のプラスチックシートがある。直接目に触れる表示素子、例えば近年使用実績の増えてきた液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等はもともとガラス板を素材としていたが、大面積化されても割れにくく、しかも軽い素材としてプラスチックシートが使用されはじめているためである。
しかしプリント基板にしても表示素子用のプラスチックシートにしても、高度な平滑性を発現するためには、例えばプレスで加圧するとか転写用基材の表面を転写して平滑面を作るとかの作業が必要であり、生産速度は遅くなおかつ製造コストが高いという欠点があった。また転写用基材のない製造システムの提案も有るが(例えば特許文献1及び特許文献2参照)、最終工程まで転写材を使用せず、なおかつ平滑性をも考慮に入れた提案というのはまだなされていない。
【0003】
【特許文献1】
特許3322134号公報
【特許文献2】
特開平09−316219号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような問題を鑑み、高度な平滑性を有するプラスチックシートの製造を可能な限り安価に可能とする製造方法に関するものであり、それにより製造されたプラスチックシートに関するものであり、さらにはそれを使用した表示素子に関するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(9)により達成される。
(1) シート状の無機充填材を含有し、マトリクス樹脂として熱硬化性もしくは紫外線硬化性を使用したプラスチックシートで、最大表面粗さ200nm以下の高度な平滑性を有するものの製造方法;転写用基材をいっさい使用せず、かつ製造の途中でプラスチックシートの表面部もしくは全体が溶融かつ/または溶解した状態を経由することにより樹脂の自由表面を形成し、なおかつその状態で樹脂がゲル化する際に樹脂溶液のマランゴニ数が20以下であることを必須条件とする。
(2) (1)において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、スプレーにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法。
(3) (1)において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、ロールコーターにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法。
(4) (1)において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、ナイフコーターにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法。
(5) (1)において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、ダイコーターにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法
(6) (1)〜(5)の製造方法により製造されたプラスチックシート。
(7) (6)において、製造されるものが透明であることを特徴とするプラスチックシート。
(8) (6),(7)のプラスチックシートにおいて、熱膨張係数が25ppm以下であることを特徴とするプラスチックシート。
(9) (6)〜(8)のプラスチックシートを使用した表示用デバイス。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のプラスチックシートの製造方法について説明する。
本発明のプラスチックシートの製造方法において、その対象は、シート状の無機充填材を含有し、マトリクス樹脂として熱硬化性もしくは紫外線硬化性を使用したプラスチックシートで、最大表面粗さ200nm以下の高度な平滑性を有するものである。これはプリント回路板の一部や、各種表示素子用の透明/不透明のプラスチックシートにおける要求と合致しているものであり、本特許はそれらを主な対象とするが、それ以外の用途について適用しても問題はない。
【0007】
シート状の無機充填材とは、例えばガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維、鉱物繊維等々による織布、不織布、マット類等が挙げられ、これらの基材の原料繊維は単独又は混合して使用してもよい。最も好適に使用されるものとしてはガラスクロスが上げられる。
熱硬化性樹脂とは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂等、熱によって三次元架橋し硬化する樹脂一般を示す。これらは単独でも混合しても良い。また用いる樹脂が硬化剤及び硬化促進剤を必要とする場合はそれを併用することができる。熱硬化性樹脂として最も好適に使用されるものはエポキシ樹脂である。このとき硬化剤としてアミン系、特にジシアンジアミドと芳香族アミン、テトラメチレンヘキサミン及びフェノールノボラック系硬化剤や酸無水物系硬化剤が使用される。硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン等の有機燐系や、イミダゾール系の窒素系の硬化促進剤が好適に使用される。
紫外線硬化性樹脂とは、アクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の、紫外線により三次元架橋し硬化する樹脂一般を示す。これらは単独でも混合しても良い。このとき硬化促進剤として紫外線照射によりラジカルを発生させうる物質、例えばアリールアルキルケトンや、紫外線照射によってカチオンを発生させうる物質、例えばアリールジアゾニウム塩などを配合することが望ましい。
最大表面粗さとは、測定平面内における最大の凹凸の高低差を示す数値である。ただし表面粗さに関しては測定機によって示す数値が大きく異なることが良く知られている。それ故、今回規定する表面粗さの数値に関しては、光学的原理に基づく非接触表面粗さ測定による数値と規定する。
【0008】
平滑なプラスチックシートを製造するにおいて、以下の2つの手法があると思われる。▲1▼シート状の無機基材表面に溶融樹脂もしくは樹脂溶液を塗布するときに条件を制御して最大表面粗さが200nm以下の平滑面を得る方法、▲2▼比較的粗い表面を有するプラスチックシートをあらかじめ製造しておき、その後で平滑化コーティングすることにより最終的に最大表面粗さ200nm以下を達成する方法。本特許は、その両者を対象としている。
本特許の製造方法は、転写用基材をいっさい使用せず、かつ製造の途中でプラスチックシートの表面部もしくは全体が溶融かつ/または溶解した状態を経由することにより樹脂の自由表面を形成し、なおかつその状態で樹脂がゲル化する際に樹脂溶液のマランゴニ数が20以下であることを必須条件とする。以下で各項目について詳細に説明する。
本特許では、転写用基材をいっさい使用しないことを特徴としている。ここで転写用基材とは、高度な平滑面を有し、かつある一定の面積を保有する材質で、さらには被成型物たるプラスチックシートと直接接触しなおかつ接触面と直角方向に圧力が印加されることによりプラスチックシートの表面に該基材の高度な平滑面が転写される事を期待して使用される基材一般のことを指す。例えば銅箔等の金属箔、平滑化処理した鋼板や金属製のロール、ポリイミドフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムを例とする有機系平滑フィルム、ガラス板等の無機の板、等々である。通常の平滑面の作成のためには、これらの平滑な面を有する基材と未硬化の樹脂が接触し、加熱もしくは紫外線照射によって樹脂が硬化もしくはタックフリーになるまで反応を進めたのちに転写用基材を除去し、平滑化したプラスチックシートを得るという手法を取るが、転写用基材にかかるコストが膨大であることに加え生産速度が比較的遅いため、本特許の製造プロセスは転写用基材を一切使用しないことを最大の特徴としている。
【0009】
次に本特許では、製造の途中でプラスチックシートの表面部もしくは全体が溶剤に溶解した状態を経由することにより樹脂の自由表面を形成する事を特徴としている。樹脂が溶融もしくは溶解した状態を経て成形されるのはどのような成形においても同様のことである。しかし本特許は、転写用基材で樹脂表面を覆わず、溶融もしくは溶解した樹脂の自由表面の状態を保持したまま加熱もしくは紫外線照射により硬化させ、高度な平滑性を有したプラスチックシートを製造することを特徴としている。なお自由表面とは溶融樹脂もしくは溶解樹脂の表面に何も接触していない状態(真空)とか、空気、窒素ガス、その他の気体成分が接触しているか、あるいは水、各種有機溶剤、溶融金属等の液体成分と接触している状態を指し、すなわち表面張力によってのみ平滑面を形成している状態を指し示す。
さらに本発明では、自由表面における状態において、樹脂溶液のマランゴニ数が20以下であることを必須条件としている。マランゴニ数とはマランゴニ対流の生じ易さを示す無次元数である。そしてマランゴニ対流とは、液体における表面張力の場所による差がある場合、表面張力の低いところから表面張力の高いところに流体が流れる現象のことである。樹脂を成形する場合、溶剤を配合し希釈した状態で成形/コーティングする場合が非常に多い。使用している溶剤の揮発が不均一であると濃度の分布が生じ、その結果として樹脂溶液内部での表面張力の分布が生じ、そのためにマランゴニ対流が樹脂中に発生すると考えている。その結果得られるプラスチックシートの表面にはマランゴニ対流に起因した皺や凹凸が出やすくなる。例えばコーティングにおける不良としてよく見られるベナードセルはこのマランゴニ対流が原因とされている。本発明のように、樹脂を自由表面の状態で硬化させる必要がある場合、この要因は非常に重要であるが、意外にも今までの特許ではこの要因に注目した事例はなかった。本特許の骨子は、マランゴニ対流が生じない条件で自由表面状態で成形することが平滑面を作る必須条件であることを見出した故、特許とするものである。本特許におけるマランゴニ数とは、式(1)に示されるものであり、この数が大きいほど樹脂中での対流が生じやすくなるとされている。本研究者は鋭意検討の結果、マランゴニ数が20を越える条件で自由表面を形成した場合、樹脂溶液中にマランゴニ対流が生じ、その状態で樹脂を硬化させるとプラスチックシート表面に乱流起因の凹凸が生じ、結果として最大表面粗さ200nm以下の高度な平滑性を有するプラスチックシートを得ることはできない事が分かった。なおマランゴニ対流においてマランゴニ数が48を越えると乱流になる(臨界マランゴニ数)ことが判明しているが、本発明者の検討の結果、マランゴニ数は20以下が望ましい事が判明した。
【0010】
【数1】
【0011】
マランゴニ数を20以下にするためには、塗布される樹脂溶液が以下の性質を有していることが条件であると考えられる。▲1▼高粘度であること、▲2▼溶液の拡散係数が大きいこと、▲3▼塗布された膜の上下の濃度差が小さいこと、▲4▼膜厚が小さいこと、▲5▼表面張力の濃度依存性が小さいこと。各種のコーティング方法において、その条件を満たすことが平滑化コーティングに有効である。
マランゴニ数を構成する要因として、塗布液の表面張力、塗布層の上下界面における濃度差、表面張力の濃度依存性、塗液の厚み、塗液の粘性係数、塗液における溶剤の拡散係数がある。それぞれについて測定方法を定義する。
塗布液の表面張力は、液滴法で測定されたものを利用する。表面張力の濃度依存性は、複数の濃度の溶液の表面張力を測定する事で求めた。塗液の厚みは、基板の横断面を切断し断面観察により塗液の厚みを計測するものとする。塗液の粘性係数は、ゲル化条件における溶融粘性係数を、各種粘度計で測定するものであり、特に粘度計に指定はないが、コーンプレートもしくはパラレルプレート型の粘度計が好適と考えられる。塗布層の上下界面における濃度差は、コーティング層が薄い場合はそれを測定することが困難であるため、表面は溶剤が完全に揮発し固形成分のみになっていると仮定し、さらに表面より最も遠い部分は全く溶剤が揮発していないと仮定して計算を行った。塗液中における溶剤の拡散係数は、一般的には同位体をトレーサーとしてその拡散速度を計測する事により求めるものであるが、測定はかなり困難であるため、以下の要領で近似的に求めることも問題ない。すなわち、塗液中の溶剤の拡散係数は、溶剤単品の拡散係数に等しいと仮定する。さらに液体の自己拡散係数は粘度と反比例するという現象を利用し、化学便覧等で純物質の粘度と拡散係数の相関を調べ、目的とする溶剤の粘度をその関係に外挿することで容易に拡散係数を計算する方法である。なお当然ながら拡散係数や粘度は温度に依存するので注意が必要である。拡散係数の求め方について改めて整理すると下記の要領となる。▲1▼粘度の温度依存性を化学便覧で調べ、η=Aexp(B/T)という関係式を作る。ここでηは粘度、Tは絶対温度、AとBは定数である。▲2▼得られた関係式を、目的とする温度に外挿し、粘度を求める。▲3▼粘度と拡散係数の相関を化学便覧で調べ、η・D=Xという関係式をつくる。ここでDは拡散係数であり、Xは定数である。▲4▼この関係式を利用して、得られた粘度を代入することにより、拡散係数を求める。
【0012】
本発明は、上記の条件を満たす製造方法の全てを対象とするものであるが、スプレー、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター等が平滑化コーティングのためには望ましいと考えられる。また樹脂の硬化条件に関しては、いかなる条件でも良いが、樹脂がゲル化する際にマランゴニ数を20以下に保ち続けることのできる条件が必要である。樹脂がゲル化する時点以外の場合にはマランゴニ数の制限は全くない。
なお各種製造設備における限定条件はマランゴニ数以外には無いのであるが、個別の装置について特に重視している項目を列挙すると、スプレー、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターの何れに関してもΔCすなわち塗液の上下界面における濃度差が比較的重要であり、その数値は5%未満がより望ましい。
【0013】
【実施例】
次に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。
〔実施例1〕
(1)ワニスAの調製
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業製EHPE3150)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製リカシッドMH−700)75重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)0.5重量部を、アセトン120重量部と混合してワニスとした。
(2)スプレーを利用したガラスクロスへの塗布
以下の要領で透明プラスチックシートを作成した。ワニスAを、スプレーを利用して、厚さ80μmのNEガラス系ガラスクロス(日東紡績製NEA2319E)に含侵させた。スプレーガンはノズル径1.5mmのエアスプレーガンを使用し、圧空量は4m3/min、基材とガンの距離を5cmとして両面より噴霧した。スプレー塗布後、転写材を用いずオーブン中につるした状態で140℃で3分処理し、更に200℃で2時間処理した。更にスプレー塗布と加熱処理を、最初と同条件で2回繰り返した。ただしワニスの噴霧量に関しては、最初のスプレーの時と残り二回の時とで異なる。最初のスプレー時では、樹脂によりガラスクロスが完全に含浸されなおかつ2〜3μmの樹脂厚が乗る状態になるように多量に塗布した。続く2回のスプレー時には、コーティング樹脂厚が10μmになるようにワニス噴霧量を制御した。
(3)マランゴニ数
このときのコーティング条件から、マランゴニ数を構成する各要因は下記の数値を示す。この場合の樹脂のゲル化は、200℃加熱条件に入った数分間と考えられる。最初の140℃処理の工程で乾燥及びBステージ化した時、溶剤であるアセトンはほとんど揮発しており、200℃の溶融/硬化工程の初期には測定によると0.3%程が残留しているのみである。よって塗液の上下界面における濃度差ΔCは0.3%。塗液の厚みHは10μ=1×10−5m。塗液の粘性係数ηは200℃で1.0Pa・s。塗液中の溶剤アセトンの拡散係数Dは、化学便覧のデータを利用して計算したところ、ゲル化条件の200℃においては1.5×10−8m2/s。計測により求めた表面張力の濃度依存性dγ/dCは3.1×10−4N/m2・wt%。以上の数値を利用して求めたマランゴニ数は0.06であった。
(4)測定結果
a)最大表面粗さ
zygo社製干渉計を用いて透明複合シートの最大表面粗さを測定した。最大表面粗さは126nmであった。
b)熱膨張係数
セイコー電子(株)製TMA/SS120C型熱応力歪測定装置を用いて、窒素雰囲気下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から400℃まで上昇させて20分間保持し、30℃〜150℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った。熱膨張係数は2.0ppmであった。
【0014】
〔実施例2〕
(1)ワニスBの調製
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業製EHPE3150)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製リカシッドMH−700)75重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)0.5重量部を、1,4−ジオキサン20重量部と混合してワニスとした。
(2)ダイコーター、ロールコーターを利用したガラスクロスへの塗布
以下の要領で透明プラスチックシートを作成した。ワニスBを、ダイコーターを利用して、厚さ80μmのNEガラス系ガラスクロス(日東紡績製NEA2319E)に含侵させた。樹脂によりガラスクロスが完全に含浸されなおかつ2〜3μmの樹脂厚が乗る状態になるように両面から塗布した。含浸後、転写材を用いずオーブン中につるした状態で120℃で5分処理し、更に200℃で2時間処理した。更にロールコーターを利用し、コーティング樹脂厚が10μmになるように制御しながらワニスBを両面からコーティングした。コーティング後、転写材を用いずオーブン中につるした状態で120℃で5分処理し、更に200℃で2時間処理して完全硬化させた。
(3)マランゴニ数
この場合の樹脂のゲル化も、200℃加熱条件に入った数分間と考えられる。最初の120℃処理の工程で乾燥及びBステージ化した時、溶剤であるジオキソランはすべて揮発しており、200℃の溶融/硬化工程の初期には残留ジオキソランはゼロである。よって塗液の上下界面における濃度差ΔCは0.0%。よって以上の数値を利用して求めたマランゴニ数は0であった。
(4)測定
a)最大表面粗さ
実施例1と同様にして測定した。最大表面粗さは97nmであった。
b)熱膨張係数
実施例1と同様にして測定した。熱膨張係数は2.0ppmであった。
【0015】
〔実施例3〕
(1)ワニスの調製
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業製EHPE3150)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製リカシッドMH−700)75重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)0.5重量部を、酪酸エチル/1,4ジオキソラン=80/80重量部と混合してワニスとした。
(2)ダイコーター、ロールコーターを利用したガラスクロスへの塗布
実施例2と同様の工程を経て透明プラスチックシートを作成した。
(3)マランゴニ数
この場合の樹脂のゲル化も、200℃加熱条件に入った数分間と考えられる。最初の120℃処理の工程で乾燥及びBステージ化した後、溶剤である酪酸エチル/ジオキソランは3.0%残存していた。よって塗液の上下界面における濃度差ΔCは3.0%。塗液の厚みHは10μ=1.0×10−5m。200℃における塗液の粘性係数ηは0.08Pa・s。塗液中の溶剤は高沸点成分のみが残っていると仮定して、酪酸エチルの拡散係数Dは、化学便覧のデータを利用して計算すると200度において1.3×10−8m2/s。計測により求めた表面張力の濃度依存性dγ/dCは3.4×10−4N/m2・wt%。以上の数値を利用して求めたマランゴニ数は10であった。
(4)測定
a)最大表面粗さ
実施例1と同様にして測定した。最大表面粗さは120nmであった。
b)熱膨張係数
実施例1と同様にして測定した。熱膨張係数は2.1ppmであった。
【0016】
〔比較例1〕
(1)ワニスCの調製
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業製EHPE3150)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製リカシッドMH−700)75重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)0.5重量部を、酪酸エチル160重量部と混合してワニスとした。
(2)ダイコーター、ロールコーターを利用したガラスクロスへの塗布
実施例2と同様の工程を経て透明プラスチックシートを作成した。
(3)マランゴニ数
この場合の樹脂のゲル化も、200℃加熱条件に入った数分間と考えられる。最初の120℃処理の工程で乾燥及びBステージ化した後、溶剤である酪酸エチルは6.2%残存していた。よって塗液の上下界面における濃度差ΔCは6.2%。塗液の厚みHは10μ=1.0×10−5m。200℃における塗液の粘性係数ηは0.05Pa・s。塗液中の溶剤酪酸エチルの拡散係数Dは、化学便覧のデータを利用して計算すると200度において1.3×10−8m2/s。計測により求めた表面張力の濃度依存性dγ/dCは3.4×10−4N/m2・wt%。以上の数値を利用して求めたマランゴニ数は32であった。
(4)測定
a)最大表面粗さ
実施例1と同様にして測定した。最大表面粗さは1920nmであった。
b)熱膨張係数
実施例1と同様にして測定した。熱膨張係数は2.1ppmであった。
【0017】
【発明の効果】本発明により得られる製造プロセスは、高い平滑性と低いコストのプラスチックシートを製造することを可能とするものである。さらにそのプラスチックシートを利用することにより、高い表示性能と低いコストの表示素子を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックシートの製造方法、プラスチックシート、及び表示素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント回路板については小型化、高機能化の要求が強くなる一方、表面が平滑なものを安価、高速で製造する必要がある。さらにその傾向が強い商品として、表示素子用のプラスチックシートがある。直接目に触れる表示素子、例えば近年使用実績の増えてきた液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等はもともとガラス板を素材としていたが、大面積化されても割れにくく、しかも軽い素材としてプラスチックシートが使用されはじめているためである。
しかしプリント基板にしても表示素子用のプラスチックシートにしても、高度な平滑性を発現するためには、例えばプレスで加圧するとか転写用基材の表面を転写して平滑面を作るとかの作業が必要であり、生産速度は遅くなおかつ製造コストが高いという欠点があった。また転写用基材のない製造システムの提案も有るが(例えば特許文献1及び特許文献2参照)、最終工程まで転写材を使用せず、なおかつ平滑性をも考慮に入れた提案というのはまだなされていない。
【0003】
【特許文献1】
特許3322134号公報
【特許文献2】
特開平09−316219号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような問題を鑑み、高度な平滑性を有するプラスチックシートの製造を可能な限り安価に可能とする製造方法に関するものであり、それにより製造されたプラスチックシートに関するものであり、さらにはそれを使用した表示素子に関するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(9)により達成される。
(1) シート状の無機充填材を含有し、マトリクス樹脂として熱硬化性もしくは紫外線硬化性を使用したプラスチックシートで、最大表面粗さ200nm以下の高度な平滑性を有するものの製造方法;転写用基材をいっさい使用せず、かつ製造の途中でプラスチックシートの表面部もしくは全体が溶融かつ/または溶解した状態を経由することにより樹脂の自由表面を形成し、なおかつその状態で樹脂がゲル化する際に樹脂溶液のマランゴニ数が20以下であることを必須条件とする。
(2) (1)において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、スプレーにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法。
(3) (1)において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、ロールコーターにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法。
(4) (1)において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、ナイフコーターにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法。
(5) (1)において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、ダイコーターにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法
(6) (1)〜(5)の製造方法により製造されたプラスチックシート。
(7) (6)において、製造されるものが透明であることを特徴とするプラスチックシート。
(8) (6),(7)のプラスチックシートにおいて、熱膨張係数が25ppm以下であることを特徴とするプラスチックシート。
(9) (6)〜(8)のプラスチックシートを使用した表示用デバイス。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のプラスチックシートの製造方法について説明する。
本発明のプラスチックシートの製造方法において、その対象は、シート状の無機充填材を含有し、マトリクス樹脂として熱硬化性もしくは紫外線硬化性を使用したプラスチックシートで、最大表面粗さ200nm以下の高度な平滑性を有するものである。これはプリント回路板の一部や、各種表示素子用の透明/不透明のプラスチックシートにおける要求と合致しているものであり、本特許はそれらを主な対象とするが、それ以外の用途について適用しても問題はない。
【0007】
シート状の無機充填材とは、例えばガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維、鉱物繊維等々による織布、不織布、マット類等が挙げられ、これらの基材の原料繊維は単独又は混合して使用してもよい。最も好適に使用されるものとしてはガラスクロスが上げられる。
熱硬化性樹脂とは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂等、熱によって三次元架橋し硬化する樹脂一般を示す。これらは単独でも混合しても良い。また用いる樹脂が硬化剤及び硬化促進剤を必要とする場合はそれを併用することができる。熱硬化性樹脂として最も好適に使用されるものはエポキシ樹脂である。このとき硬化剤としてアミン系、特にジシアンジアミドと芳香族アミン、テトラメチレンヘキサミン及びフェノールノボラック系硬化剤や酸無水物系硬化剤が使用される。硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン等の有機燐系や、イミダゾール系の窒素系の硬化促進剤が好適に使用される。
紫外線硬化性樹脂とは、アクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の、紫外線により三次元架橋し硬化する樹脂一般を示す。これらは単独でも混合しても良い。このとき硬化促進剤として紫外線照射によりラジカルを発生させうる物質、例えばアリールアルキルケトンや、紫外線照射によってカチオンを発生させうる物質、例えばアリールジアゾニウム塩などを配合することが望ましい。
最大表面粗さとは、測定平面内における最大の凹凸の高低差を示す数値である。ただし表面粗さに関しては測定機によって示す数値が大きく異なることが良く知られている。それ故、今回規定する表面粗さの数値に関しては、光学的原理に基づく非接触表面粗さ測定による数値と規定する。
【0008】
平滑なプラスチックシートを製造するにおいて、以下の2つの手法があると思われる。▲1▼シート状の無機基材表面に溶融樹脂もしくは樹脂溶液を塗布するときに条件を制御して最大表面粗さが200nm以下の平滑面を得る方法、▲2▼比較的粗い表面を有するプラスチックシートをあらかじめ製造しておき、その後で平滑化コーティングすることにより最終的に最大表面粗さ200nm以下を達成する方法。本特許は、その両者を対象としている。
本特許の製造方法は、転写用基材をいっさい使用せず、かつ製造の途中でプラスチックシートの表面部もしくは全体が溶融かつ/または溶解した状態を経由することにより樹脂の自由表面を形成し、なおかつその状態で樹脂がゲル化する際に樹脂溶液のマランゴニ数が20以下であることを必須条件とする。以下で各項目について詳細に説明する。
本特許では、転写用基材をいっさい使用しないことを特徴としている。ここで転写用基材とは、高度な平滑面を有し、かつある一定の面積を保有する材質で、さらには被成型物たるプラスチックシートと直接接触しなおかつ接触面と直角方向に圧力が印加されることによりプラスチックシートの表面に該基材の高度な平滑面が転写される事を期待して使用される基材一般のことを指す。例えば銅箔等の金属箔、平滑化処理した鋼板や金属製のロール、ポリイミドフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムを例とする有機系平滑フィルム、ガラス板等の無機の板、等々である。通常の平滑面の作成のためには、これらの平滑な面を有する基材と未硬化の樹脂が接触し、加熱もしくは紫外線照射によって樹脂が硬化もしくはタックフリーになるまで反応を進めたのちに転写用基材を除去し、平滑化したプラスチックシートを得るという手法を取るが、転写用基材にかかるコストが膨大であることに加え生産速度が比較的遅いため、本特許の製造プロセスは転写用基材を一切使用しないことを最大の特徴としている。
【0009】
次に本特許では、製造の途中でプラスチックシートの表面部もしくは全体が溶剤に溶解した状態を経由することにより樹脂の自由表面を形成する事を特徴としている。樹脂が溶融もしくは溶解した状態を経て成形されるのはどのような成形においても同様のことである。しかし本特許は、転写用基材で樹脂表面を覆わず、溶融もしくは溶解した樹脂の自由表面の状態を保持したまま加熱もしくは紫外線照射により硬化させ、高度な平滑性を有したプラスチックシートを製造することを特徴としている。なお自由表面とは溶融樹脂もしくは溶解樹脂の表面に何も接触していない状態(真空)とか、空気、窒素ガス、その他の気体成分が接触しているか、あるいは水、各種有機溶剤、溶融金属等の液体成分と接触している状態を指し、すなわち表面張力によってのみ平滑面を形成している状態を指し示す。
さらに本発明では、自由表面における状態において、樹脂溶液のマランゴニ数が20以下であることを必須条件としている。マランゴニ数とはマランゴニ対流の生じ易さを示す無次元数である。そしてマランゴニ対流とは、液体における表面張力の場所による差がある場合、表面張力の低いところから表面張力の高いところに流体が流れる現象のことである。樹脂を成形する場合、溶剤を配合し希釈した状態で成形/コーティングする場合が非常に多い。使用している溶剤の揮発が不均一であると濃度の分布が生じ、その結果として樹脂溶液内部での表面張力の分布が生じ、そのためにマランゴニ対流が樹脂中に発生すると考えている。その結果得られるプラスチックシートの表面にはマランゴニ対流に起因した皺や凹凸が出やすくなる。例えばコーティングにおける不良としてよく見られるベナードセルはこのマランゴニ対流が原因とされている。本発明のように、樹脂を自由表面の状態で硬化させる必要がある場合、この要因は非常に重要であるが、意外にも今までの特許ではこの要因に注目した事例はなかった。本特許の骨子は、マランゴニ対流が生じない条件で自由表面状態で成形することが平滑面を作る必須条件であることを見出した故、特許とするものである。本特許におけるマランゴニ数とは、式(1)に示されるものであり、この数が大きいほど樹脂中での対流が生じやすくなるとされている。本研究者は鋭意検討の結果、マランゴニ数が20を越える条件で自由表面を形成した場合、樹脂溶液中にマランゴニ対流が生じ、その状態で樹脂を硬化させるとプラスチックシート表面に乱流起因の凹凸が生じ、結果として最大表面粗さ200nm以下の高度な平滑性を有するプラスチックシートを得ることはできない事が分かった。なおマランゴニ対流においてマランゴニ数が48を越えると乱流になる(臨界マランゴニ数)ことが判明しているが、本発明者の検討の結果、マランゴニ数は20以下が望ましい事が判明した。
【0010】
【数1】
【0011】
マランゴニ数を20以下にするためには、塗布される樹脂溶液が以下の性質を有していることが条件であると考えられる。▲1▼高粘度であること、▲2▼溶液の拡散係数が大きいこと、▲3▼塗布された膜の上下の濃度差が小さいこと、▲4▼膜厚が小さいこと、▲5▼表面張力の濃度依存性が小さいこと。各種のコーティング方法において、その条件を満たすことが平滑化コーティングに有効である。
マランゴニ数を構成する要因として、塗布液の表面張力、塗布層の上下界面における濃度差、表面張力の濃度依存性、塗液の厚み、塗液の粘性係数、塗液における溶剤の拡散係数がある。それぞれについて測定方法を定義する。
塗布液の表面張力は、液滴法で測定されたものを利用する。表面張力の濃度依存性は、複数の濃度の溶液の表面張力を測定する事で求めた。塗液の厚みは、基板の横断面を切断し断面観察により塗液の厚みを計測するものとする。塗液の粘性係数は、ゲル化条件における溶融粘性係数を、各種粘度計で測定するものであり、特に粘度計に指定はないが、コーンプレートもしくはパラレルプレート型の粘度計が好適と考えられる。塗布層の上下界面における濃度差は、コーティング層が薄い場合はそれを測定することが困難であるため、表面は溶剤が完全に揮発し固形成分のみになっていると仮定し、さらに表面より最も遠い部分は全く溶剤が揮発していないと仮定して計算を行った。塗液中における溶剤の拡散係数は、一般的には同位体をトレーサーとしてその拡散速度を計測する事により求めるものであるが、測定はかなり困難であるため、以下の要領で近似的に求めることも問題ない。すなわち、塗液中の溶剤の拡散係数は、溶剤単品の拡散係数に等しいと仮定する。さらに液体の自己拡散係数は粘度と反比例するという現象を利用し、化学便覧等で純物質の粘度と拡散係数の相関を調べ、目的とする溶剤の粘度をその関係に外挿することで容易に拡散係数を計算する方法である。なお当然ながら拡散係数や粘度は温度に依存するので注意が必要である。拡散係数の求め方について改めて整理すると下記の要領となる。▲1▼粘度の温度依存性を化学便覧で調べ、η=Aexp(B/T)という関係式を作る。ここでηは粘度、Tは絶対温度、AとBは定数である。▲2▼得られた関係式を、目的とする温度に外挿し、粘度を求める。▲3▼粘度と拡散係数の相関を化学便覧で調べ、η・D=Xという関係式をつくる。ここでDは拡散係数であり、Xは定数である。▲4▼この関係式を利用して、得られた粘度を代入することにより、拡散係数を求める。
【0012】
本発明は、上記の条件を満たす製造方法の全てを対象とするものであるが、スプレー、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター等が平滑化コーティングのためには望ましいと考えられる。また樹脂の硬化条件に関しては、いかなる条件でも良いが、樹脂がゲル化する際にマランゴニ数を20以下に保ち続けることのできる条件が必要である。樹脂がゲル化する時点以外の場合にはマランゴニ数の制限は全くない。
なお各種製造設備における限定条件はマランゴニ数以外には無いのであるが、個別の装置について特に重視している項目を列挙すると、スプレー、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターの何れに関してもΔCすなわち塗液の上下界面における濃度差が比較的重要であり、その数値は5%未満がより望ましい。
【0013】
【実施例】
次に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。
〔実施例1〕
(1)ワニスAの調製
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業製EHPE3150)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製リカシッドMH−700)75重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)0.5重量部を、アセトン120重量部と混合してワニスとした。
(2)スプレーを利用したガラスクロスへの塗布
以下の要領で透明プラスチックシートを作成した。ワニスAを、スプレーを利用して、厚さ80μmのNEガラス系ガラスクロス(日東紡績製NEA2319E)に含侵させた。スプレーガンはノズル径1.5mmのエアスプレーガンを使用し、圧空量は4m3/min、基材とガンの距離を5cmとして両面より噴霧した。スプレー塗布後、転写材を用いずオーブン中につるした状態で140℃で3分処理し、更に200℃で2時間処理した。更にスプレー塗布と加熱処理を、最初と同条件で2回繰り返した。ただしワニスの噴霧量に関しては、最初のスプレーの時と残り二回の時とで異なる。最初のスプレー時では、樹脂によりガラスクロスが完全に含浸されなおかつ2〜3μmの樹脂厚が乗る状態になるように多量に塗布した。続く2回のスプレー時には、コーティング樹脂厚が10μmになるようにワニス噴霧量を制御した。
(3)マランゴニ数
このときのコーティング条件から、マランゴニ数を構成する各要因は下記の数値を示す。この場合の樹脂のゲル化は、200℃加熱条件に入った数分間と考えられる。最初の140℃処理の工程で乾燥及びBステージ化した時、溶剤であるアセトンはほとんど揮発しており、200℃の溶融/硬化工程の初期には測定によると0.3%程が残留しているのみである。よって塗液の上下界面における濃度差ΔCは0.3%。塗液の厚みHは10μ=1×10−5m。塗液の粘性係数ηは200℃で1.0Pa・s。塗液中の溶剤アセトンの拡散係数Dは、化学便覧のデータを利用して計算したところ、ゲル化条件の200℃においては1.5×10−8m2/s。計測により求めた表面張力の濃度依存性dγ/dCは3.1×10−4N/m2・wt%。以上の数値を利用して求めたマランゴニ数は0.06であった。
(4)測定結果
a)最大表面粗さ
zygo社製干渉計を用いて透明複合シートの最大表面粗さを測定した。最大表面粗さは126nmであった。
b)熱膨張係数
セイコー電子(株)製TMA/SS120C型熱応力歪測定装置を用いて、窒素雰囲気下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から400℃まで上昇させて20分間保持し、30℃〜150℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った。熱膨張係数は2.0ppmであった。
【0014】
〔実施例2〕
(1)ワニスBの調製
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業製EHPE3150)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製リカシッドMH−700)75重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)0.5重量部を、1,4−ジオキサン20重量部と混合してワニスとした。
(2)ダイコーター、ロールコーターを利用したガラスクロスへの塗布
以下の要領で透明プラスチックシートを作成した。ワニスBを、ダイコーターを利用して、厚さ80μmのNEガラス系ガラスクロス(日東紡績製NEA2319E)に含侵させた。樹脂によりガラスクロスが完全に含浸されなおかつ2〜3μmの樹脂厚が乗る状態になるように両面から塗布した。含浸後、転写材を用いずオーブン中につるした状態で120℃で5分処理し、更に200℃で2時間処理した。更にロールコーターを利用し、コーティング樹脂厚が10μmになるように制御しながらワニスBを両面からコーティングした。コーティング後、転写材を用いずオーブン中につるした状態で120℃で5分処理し、更に200℃で2時間処理して完全硬化させた。
(3)マランゴニ数
この場合の樹脂のゲル化も、200℃加熱条件に入った数分間と考えられる。最初の120℃処理の工程で乾燥及びBステージ化した時、溶剤であるジオキソランはすべて揮発しており、200℃の溶融/硬化工程の初期には残留ジオキソランはゼロである。よって塗液の上下界面における濃度差ΔCは0.0%。よって以上の数値を利用して求めたマランゴニ数は0であった。
(4)測定
a)最大表面粗さ
実施例1と同様にして測定した。最大表面粗さは97nmであった。
b)熱膨張係数
実施例1と同様にして測定した。熱膨張係数は2.0ppmであった。
【0015】
〔実施例3〕
(1)ワニスの調製
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業製EHPE3150)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製リカシッドMH−700)75重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)0.5重量部を、酪酸エチル/1,4ジオキソラン=80/80重量部と混合してワニスとした。
(2)ダイコーター、ロールコーターを利用したガラスクロスへの塗布
実施例2と同様の工程を経て透明プラスチックシートを作成した。
(3)マランゴニ数
この場合の樹脂のゲル化も、200℃加熱条件に入った数分間と考えられる。最初の120℃処理の工程で乾燥及びBステージ化した後、溶剤である酪酸エチル/ジオキソランは3.0%残存していた。よって塗液の上下界面における濃度差ΔCは3.0%。塗液の厚みHは10μ=1.0×10−5m。200℃における塗液の粘性係数ηは0.08Pa・s。塗液中の溶剤は高沸点成分のみが残っていると仮定して、酪酸エチルの拡散係数Dは、化学便覧のデータを利用して計算すると200度において1.3×10−8m2/s。計測により求めた表面張力の濃度依存性dγ/dCは3.4×10−4N/m2・wt%。以上の数値を利用して求めたマランゴニ数は10であった。
(4)測定
a)最大表面粗さ
実施例1と同様にして測定した。最大表面粗さは120nmであった。
b)熱膨張係数
実施例1と同様にして測定した。熱膨張係数は2.1ppmであった。
【0016】
〔比較例1〕
(1)ワニスCの調製
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業製EHPE3150)100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化製リカシッドMH−700)75重量部、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業製TPP−PB)0.5重量部を、酪酸エチル160重量部と混合してワニスとした。
(2)ダイコーター、ロールコーターを利用したガラスクロスへの塗布
実施例2と同様の工程を経て透明プラスチックシートを作成した。
(3)マランゴニ数
この場合の樹脂のゲル化も、200℃加熱条件に入った数分間と考えられる。最初の120℃処理の工程で乾燥及びBステージ化した後、溶剤である酪酸エチルは6.2%残存していた。よって塗液の上下界面における濃度差ΔCは6.2%。塗液の厚みHは10μ=1.0×10−5m。200℃における塗液の粘性係数ηは0.05Pa・s。塗液中の溶剤酪酸エチルの拡散係数Dは、化学便覧のデータを利用して計算すると200度において1.3×10−8m2/s。計測により求めた表面張力の濃度依存性dγ/dCは3.4×10−4N/m2・wt%。以上の数値を利用して求めたマランゴニ数は32であった。
(4)測定
a)最大表面粗さ
実施例1と同様にして測定した。最大表面粗さは1920nmであった。
b)熱膨張係数
実施例1と同様にして測定した。熱膨張係数は2.1ppmであった。
【0017】
【発明の効果】本発明により得られる製造プロセスは、高い平滑性と低いコストのプラスチックシートを製造することを可能とするものである。さらにそのプラスチックシートを利用することにより、高い表示性能と低いコストの表示素子を得ることができる。
Claims (9)
- シート状の無機充填材を含有し、マトリクス樹脂として熱硬化性もしくは紫外線硬化性を使用したプラスチックシートで、最大表面粗さ200nm以下の高度な平滑性を有するものの製造方法;転写用基材をいっさい使用せず、かつ製造の途中でプラスチックシートの表面部もしくは全体が溶融かつ/または溶解した状態を経由することにより樹脂の自由表面を形成し、なおかつその状態で樹脂がゲル化する際に樹脂溶液のマランゴニ数が20以下であることを必須条件とする。
- 請求項1において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、スプレーにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法。
- 請求項1において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、ロールコーターにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法。
- 請求項1において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、ナイフコーターにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法。
- 請求項1において、溶融かつ/または溶解した樹脂の自由表面を形成する手段として、前記マトリクス樹脂を溶融または溶剤に溶解した状態で、ダイコーターにより基材表面に単層もしくは多層にコーティングすることにより製造する製造方法
- 請求項1〜5いずれかの製造方法により製造されたプラスチックシート。
- 請求項6において、製造されるものが透明であることを特徴とするプラスチックシート。
- 請求項6または7のプラスチックシートにおいて、熱膨張係数が25ppm以下であることを特徴とするプラスチックシート。
- 請求項6〜8いずれかのプラスチックシートを使用した表示用デバイス。
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- 2003-03-31 JP JP2003092974A patent/JP2004298700A/ja active Pending
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