JP2004298369A - 刺繍データ処理装置、刺繍データ処理方法、刺繍データ処理プログラム及び刺繍データのデータ構造 - Google Patents
刺繍データ処理装置、刺繍データ処理方法、刺繍データ処理プログラム及び刺繍データのデータ構造 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】常に安定した圧縮率で刺繍データを圧縮して確実に刺繍データのデータサイズを減少させること。
【解決手段】刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データについて、制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成する。
【選択図】 図5
【解決手段】刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データについて、制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、刺繍データ処理装置、刺繍データ処理方法、刺繍データ処理プログラム及び刺繍データのデータ構造に関し、特に、刺繍データを圧縮する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、刺繍ミシンにおいては、予めパーソナルコンピュータ等の刺繍データ作成装置により作成された刺繍データに基づいて加工布に刺繍縫製を行うことが多い。この刺繍データは、一般的に、実施形態の図4に示すように、ステッチ、ジャンプ、色替え等の刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードと、縫針に対するX,Y方向への加工布の相対移動量等、前記複数種の制御コード等に夫々付随する制御データとを有する。
【0003】
ところで、今日では、加工布に施される刺繍模様は多種多様化しており、それに伴って、刺繍データ(特に、刺繍データの大部分を占めるステッチデータ)のデータサイズが大きくなりつつある。刺繍データのデータサイズが大きくなると、この刺繍データを読み取り可能に記録して、記録した刺繍データを刺繍ミシンの制御装置に読み込ませるための、容量の大きな記録媒体が必要となる。さらに、1又は複数の刺繍ミシンを、刺繍データを記憶したパーソナルコンピュータやサーバー等の刺繍データ処理装置と接続して、この刺繍データ処理装置と刺繍ミシンとの間で刺繍データを送受信するようなシステムを構築した場合には、刺繍データ処理装置の記録媒体の記憶容量を大きくする必要があるとともに、刺繍データを送受信する際の通信コストも大きくなるという問題がある。
【0004】
そのため、刺繍データのデータサイズを減少させることに関する種々の提案が既になされている。例えば、特許文献1に記載の刺繍データ作成装置は、刺繍縫製範囲を複数のブロックに分割し、各ステッチの針落ち点の位置を、その針落ち点を含むブロックの頂点の座標及びブロック内の糸密度により近似して表すことができるため、1針ごとの針落ち点のデータを作成する必要がなくなり、刺繍データのデータ数を減らすことができる。
【0005】
また、特許文献2に記載の刺繍データ圧縮方法においては、各ステッチの針落ち点のX,Y座標データを、所定の基準位置の座標データからの偏差で置き換えることにより、座標データの値自体を小さくすることで刺繍データを圧縮する。
【0006】
さらに、特許文献3に記載のデータ圧縮装置及びデータ圧縮方法においては、「1」、「0」の羅列したビットデータにおいて、連続したビットデータを8ビットで構成された1バイト単位で区切り、この8ビットのデータに対して、その中の「1」のデータ位置に対応する識別コードを付与するとともに、「0」のデータを除去して、バイナリデータの数を減少させた圧縮ビットデータを作成する。
【0007】
【特許文献1】特公平6−67423号公報(第2−5頁、第1−8図)
【特許文献2】特開平2−57290号公報(第2−5頁、第1−8図)
【特許文献3】特開平7−24167号公報(第4−6頁、図7、図8)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特許文献1に記載の刺繍データ作成装置においては、針落ち点の位置をブロックの頂点の座標とブロック内の糸密度により近似して表して刺繍データを作成するため、元の刺繍模様の針落ち点を正確に再現することができない場合もあり、その刺繍データにより実際に加工布に施された刺繍模様が意図した刺繍模様と少し異なってしまう虞がある。
【0009】
特許文献2に記載の刺繍データ圧縮方法においては、針落ち点の座標データの値自体を小さくできるものの、データの個数自体を減らすわけではないので、刺繍データによっては圧縮率が低くなる場合もあるなど、圧縮率が安定しない。さらに、特許文献3に記載のデータ圧縮装置及びデータ圧縮方法においても、元のデータサイズが同じでも、ビットデータの「1」、「0」の配列により圧縮率が大きく異なることに場合もあるため、想定していたデータサイズまで圧縮できず、刺繍データの記憶や転送等ができないこともありえる。
本発明の目的は、常に安定した圧縮率で刺繍データを圧縮して確実に刺繍データのデータサイズを減少させること、圧縮刺繍データを復元したときに針落ち点を正確に再現すること、刺繍データを圧縮する前に予め圧縮後のデータサイズを想定可能にすること、等である。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の刺繍データ処理装置は、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データを処理して圧縮する刺繍データ処理装置において、制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除した圧縮刺繍データを作成するデータ圧縮手段を有するものである。
【0011】
刺繍ミシンにより加工布に対して刺繍縫製を行う際には、ステッチ、ジャンプ、色替え、糸切り、一時停止等、刺繍縫製に関する種々の制御が実行される。そして、その刺繍縫製の為の刺繍データには、これら種々の制御を示す制御コードと、これら制御コードに夫々付随する制御データとが含まれている。例えば、ステッチやジャンプを示す制御コードに対しては、縫針に対して加工布をX,Y方向へ相対移動させる移動量データが付随する。そして、制御コードとその制御コードに付随する制御データとを組にして縫製指令データが構成され、この縫製指令データが複数組連続して前記種々の制御が連続して行われるように、刺繍データは構成されている。
【0012】
ここで、縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合には、その制御コードが示す制御が連続して行われることを示す。そして、その場合に、データ圧縮手段は、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成する。ここで、連続する複数組の縫製指令データのうち、先頭の縫製指令データの制御コードだけを残して、どの制御が連続して行われるのかを容易に判別できるようにしてもよいが、圧縮刺繍データから刺繍データを復元する際に、削除された制御コードを復元することができる場合には、全ての制御コードを削除してもよい。
【0013】
請求項2の刺繍データ処理装置は、請求項1の発明において、前記複数種の制御コードには、X,Y方向への加工布の移動を指示するステッチコードが含まれ、このステッチコードに付随する制御データが縫針に対して加工布を相対移動させる移動量データであるものである。刺繍縫製の際に行われる制御はステッチが大部分であるため、刺繍データを構成する複数組の縫製指令データに含まれる制御コードのほとんどがステッチコードである。そこで、データ圧縮手段は、このステッチコードを有し複数組連続する縫製指令データについて、少なくとも2番目以降のステッチコードを削除するとともに縫針に対して加工布を相対移動させる移動量データを連続させて、圧縮刺繍データを作成する。
【0014】
請求項3の刺繍データ処理装置は、請求項1又は2の発明において、前記データ圧縮手段は、複数組の縫製指令データにおける先頭の制御コードを残した状態の圧縮刺繍データを作成するものである。従って、縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、圧縮刺繍データから元の刺繍データを復元する際にどの制御が以下連続して行われるのかを判別できるように、先頭の制御コードを残した状態で2番目以降の制御データを削除する。
【0015】
請求項4の刺繍データ処理装置は、請求項3の発明において、前記データ圧縮手段は、前記複数組連続する縫製指令データの組数を求め、この組数のデータを前記先頭の制御コードの次に組み込んだ圧縮刺繍データを作成するものである。縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、先頭の制御コード以外の制御コードを削除するが、圧縮刺繍データから元の刺繍データを復元する際に、その制御コードで示される制御が何回繰り返し行われるのかを容易に検出できるように、データ圧縮手段は、それら連続する縫製指令データの組数を求めて、その組数のデータを制御コードの次に組み込む。
【0016】
請求項5の刺繍データ処理装置は、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードに制御データを対応付けてなる刺繍データのうちの、特定の制御コードとこの特定制御コードに付随させた複数組の連続する制御データとを処理する刺繍データ処理装置において、前記刺繍データを順々に読みだして特定制御コードを検出する特定制御コード検出手段と、前記特定制御コード検出手段により特定制御コードが検出された際に、その特定制御コードに付随する複数組の制御データを順々に読みだしながら、特定制御コードと制御データとを対にした複数対の連続するデータに書き換えるデータ変換手段とを備えたものである。
【0017】
刺繍データには、ステッチ、ジャンプ、色替え、糸切り、一時停止等、刺繍縫製に関する種々の制御の種類を示す制御コードと、これら制御コードに夫々付随する制御データとが含まれている。ここで、刺繍ミシンにより刺繍縫製を行う際には、制御コードとその制御コードに付随する制御データとを対にして、この1対のデータを、刺繍縫製の際に実行されるステッチ等の制御の回数分だけ複数対連続させて構成したデータ構造を有する刺繍データを使用する場合が多い。
【0018】
しかし、刺繍縫製においては、例えば、ステッチのような特定の制御は複数回連続して行われるのが通常である。そこで、刺繍データを作成したり、作成した刺繍データを記録媒体に記録させたり刺繍ミシンに転送したりする場合に、刺繍データを、ステッチ等の特定の制御を示す特定制御コードに複数組の連続する制御データを付随させたデータ構造で構成すれば、連続する特定の制御に対して特定制御コードが1つだけ付されることになり、刺繍データのデータサイズを減少させることができる。
【0019】
そして、この請求項5の刺繍データ処理装置は、このようにデータサイズを減少させた刺繍データを処理してその刺繍データを刺繍ミシンで使用可能なデータ構造を有するデータに変換するものである。即ち、特定制御コード検出手段により刺繍データを順々に読み出して特定制御コードが検出された際に、データ変換手段により、その特定制御コードに付随する複数組の制御データを順々に読み出して、特定制御コードと制御データとを対にした複数対の連続するデータに書き換える。
【0020】
請求項6の刺繍データ処理方法は、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データを処理して圧縮する刺繍データ処理方法において、制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除した圧縮刺繍データを作成するものである。
【0021】
この刺繍データ処理方法によれば、制御コードとその制御コードに付随する制御データを組にして構成された縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成する。
【0022】
請求項7の刺繍データ処理プログラムは、刺繍データ処理装置のコンピュータに実行させる刺繍データ処理プログラムであって、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データを処理して圧縮する刺繍データ処理プログラムにおいて、制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除した圧縮刺繍データを作成する圧縮処理ルーチンを備えたものである。
【0023】
この刺繍データ処理プログラムが刺繍データ処理装置のコンピュータで実行されると、圧縮処理ルーチンにおいて、制御コードとその制御コードに付随する制御データを組にして構成された縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードが削除されて圧縮刺繍データが作成される。
【0024】
請求項8の刺繍データのデータ構造は、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードに制御データを対応付けた刺繍データであって刺繍データ処理装置のコンピュータで読み出し可能に記録した刺繍データのデータ構造において、特定の制御コードと、この特定制御コードに付随する複数組の連続する制御データとを備えたデータ構造部を設けたものである。特定の制御を複数回連続して実行するためのデータを有するデータ構造部は、その特定の制御を示す特定制御コードとこの特定制御コードに付随する複数組の連続する制御データを備えており、連続して実行される複数回の特定の制御に対して付される特定制御コードが1つだけであるため、刺繍データのデータ数が少なくなる。
【0025】
請求項9の刺繍データのデータ構造は、請求項8の発明において、前記データ構造部は、特定制御コードの次に、複数組の連続する制御データの組数を示す組数データを備えたものである。従って、刺繍データ処理装置のコンピュータにより特定制御コードが読み出された場合に、特定制御コードの次に連続する、複数組の制御データの組数を示す組数データも読み出されるので、その特定の制御が連続して繰り返される回数が検出される。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、刺繍ミシン及びこの刺繍ミシンで使用される刺繍データを処理する刺繍データ処理装置に本発明を適用した一例である。
図1に示すように、刺繍ミシン1に、パーソナルコンピュータ30(以下、PC30という)を主体とする刺繍データ処理装置2がデータ転送用ケーブル3を介して接続されている。
【0027】
まず、刺繍ミシン1について簡単に説明する。
図1、図2に示すように、刺繍ミシン1は、ミシン本体4と、刺繍枠15を左右方向(X軸方向)と前後方向(Y軸方向)に移動させる為の刺繍枠移動機構5と、刺繍ミシン1全体の制御を司る制御装置6とを備えている。ミシン本体4は、ベッド部7と、このベッド部7の右端部から立設された脚柱部8と、脚柱部8の上端からベッド部7に対向するように左方に延びるアーム部9とを有し、ミシン本体4はミシンテーブル10に組み込まれている。アーム部9の左端部のアーム頭部には、縫針11を装着した針棒12が設けられている。刺繍枠移動機構5は、X軸駆動モータ13とY軸駆動モータ14とを有し、これら2つの駆動モータ13,14により加工布を装着した刺繍枠15を左右方向及び前後方向に駆動する。
【0028】
図2に示すように、制御装置6には、CPU20とROM21とRAM22とこれらを接続するバス23とを含むマイクロコンピュータと、バス23に接続され書き換え可能なEEPROM24と、入出力インターフェース25等を有する。バス23にはフレキシブルドライブ26(FDD)も接続されている。入出力インターフェース25には、後述の刺繍データ処理装置2のPC30と、操作パネル26等が接続され、さらに、ミシンモータ27、X軸駆動モータ13、Y軸駆動モータ14等が接続されている。
【0029】
刺繍ミシン1には、刺繍データ処理装置2のPC30で作成された後述の圧縮刺繍データがデータ転送用ケーブル3を介して転送され、EEPROM24に記憶される。そして、ROM21には、この圧縮刺繍データを圧縮前の刺繍データに復元するデータ復元プログラムが格納されている。これら、圧縮刺繍データ及びデータ復元プログラムについては、後で詳述する。
【0030】
次に、刺繍データ処理装置2について説明する。
図1に示すように、刺繍データ処理装置2は、PC30と、このPC30に接続された、ディスプレイ31、キーボード32、マウス33等で構成されている。この刺繍データ処理装置2は、図4に示すような、刺繍ミシン1による刺繍縫製の為の刺繍データを作成したり、作成された刺繍データを圧縮して図5の圧縮刺繍データを作成したりする為のものである。
【0031】
図3に示すように、PC30は、刺繍データに関する種々の処理を制御する制御装置40を有する。この制御装置40は、CPU41とROM42とRAM43とこれらを接続するバス44とを含むマイクロコンピュータと、バス44に接続されハードディスク45(HD)を備えたハードディスクドライブ46(HDD)と、入出力インターフェース49等を有する。バス44には、フレキシブルディスクドライブ47(FDD)と、CD−ROMドライブ48も接続されている。入出力インターフェース49には、ディスプレイ31を駆動する為の表示駆動回路50、キーボード32、マウス33等も接続されている。
【0032】
ROM42には、PC30の電源ON時にPC30を起動する起動プログラム等、種々のプログラムが格納されている。
一方、HD45には、OS(オペレーティングシステム)や、ディスプレイ31、キーボード32、マウス33等を使用可能とする為の各種ドライバが組み込まれ、さらに、HD45には、刺繍データを新規に作成したり、作成された刺繍データを処理して圧縮する後述の刺繍データ処理プログラム等、種々のプログラムが格納されている。そして、これらのプログラムにより作成、あるいは、処理された刺繍データ等もHD45に記憶される。
【0033】
ここで、刺繍縫製に使用される刺繍データについて説明する。この刺繍データは、刺繍データ処理装置2により作成することもできるが、他の刺繍データ作成装置で作成した刺繍データをFDやCD−ROM等の記憶媒体を介してHD45に記憶させてもよいし、あるいは、他の複数の刺繍データ処理装置と接続されたサーバーに一元的に管理された刺繍データを、ネットワークを介してダウンロードしてHD45に記憶するようにしてもよい。
【0034】
図4に示すように、刺繍データは、ステッチ、ジャンプ、色替え、糸切り等、刺繍縫製に関連する種々の制御を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する。ここで、図4において、1つの枠のデータサイズは、8ビットからなる1バイトである。例えば、制御コードがステッチを示すステッチコードであれば、このステッチコードに、縫針11に対して刺繍枠15(つまり、加工布)を夫々相対移動させるX方向相対移動量データ(以下、X方向移動量データという)とY方向相対移動量データ(同じく、Y方向移動量データという)とが制御データとして付随している。ここで、移動量データは、符号に1ビット、数値に7ビット使用するため、これら移動量を0.1mm単位で記述すると、±12.8mmの値の範囲内でX方向、Y方向の移動量の値を設定できる。
【0035】
また、制御コードが色替えを示す色替えコードであれば、この色替えコードには、色番号データが制御データとして付随している。そして、刺繍データは、これら制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データDk(k=1,2,・・・)が複数組連続した状態で構成されている。
【0036】
ところで、前記の刺繍縫製に関連する制御の大部分はステッチである。従って、刺繍データの連続した複数組の縫製指令データDkの大部分は、制御データとしてステッチコードを有する。そして、通常、ステッチは複数針連続して行われることが多く、図4に示すように、n針連続してステッチを行う場合には、3バイト毎にステッチコードが連続する。そこで、後ほど説明する、刺繍データ処理プログラムを実行することにより、2番目以降の重複するステッチコード(図4の塗りつぶしたデータ部分)を削除して、図5に示す、圧縮刺繍データを作成することができるようになっている。
【0037】
この圧縮刺繍データにおいては、前述の刺繍縫製に関連する制御の種類を示すステッチコードや色替えコード等の複数種の制御コードに夫々制御データが対応付けられている。さらに、この圧縮刺繍データには、図4の刺繍データにおける、ステッチコードを有する複数組の縫製指令データDkが連続するステッチデータ部から2番目以降のステッチコードを削除して作成された、ステッチコード(特定制御コードに相当する)とこのステッチコードに付随する複数組の連続するX方向移動量データ及びY方向移動量データとを備えた圧縮ステッチデータ部(データ構造部に相当する)が設けられている。そして、この圧縮ステッチデータ部は、ステッチコードの次に、複数組の連続するX方向移動量データ及びY方向移動量データの組数を示す組数データ(つまり、連続ステッチ数nのデータ)を備えている。
【0038】
次に、刺繍データ処理プログラムについて説明する。この刺繍データ処理プログラムは、図4に示す刺繍データを作成するデータ作成ルーチンや、データ作成ルーチン等で作成された刺繍データを処理して圧縮するデータ圧縮ルーチン等を備えている。但し、データ作成ルーチンについては当業者により公知の種々の技術を適用できるため、その説明を省略し、ここでは、本願発明の特徴部分の1つであるデータ圧縮ルーチンについて、図6のフローチャートを参照して説明する。尚、以下の説明において、Si(Si=10,11,12・・・)はステップ数を示す。
【0039】
このデータ圧縮ルーチンが実行されると、PC2のHD45に記憶された刺繍データが読み出されて、その刺繍データを圧縮した圧縮刺繍データがHD45の別の領域に書き込まれる。そして、データ圧縮ルーチンによるデータ圧縮処理が終了すると、元の刺繍データは削除される。
【0040】
図6に示すように、データ圧縮ルーチンが実行されて、データ圧縮処理が開始されると、初期設定において、ステッチの連続ステッチ数n、入力側である刺繍データの読み出し位置を指示する読み出しポインタP1、出力側である圧縮刺繍データの書き込み位置を指示する書き込みポインタP2の初期値を0にしてから(S10)、図4の刺繍データを順に読み出していく。まず、ポインタP1が指示する制御コードを読み出してP1をインクリメントし(S11)、その制御コードがステッチコードであれば(S12:Yes)、ステッチフラグFsを1とし(S13)、連続ステッチ数nをインクリメントする(S14)。
【0041】
まず、連続ステッチ数nが1の場合には(S15:Yes)、ステッチコードをポインタP2が指示する位置に書き込んで、ポインタP2をインクリメントする(S16)。さらに、図5に示すように、後述のS21で最終的な連続ステッチ数nを求めてからステッチコードの次の位置にnの値を書き込むことができるように、連続ステッチ数nの書き込み用のポインタPsをP2として、nの書き込み位置を一旦記憶しておく(S17)。
【0042】
そして、図4の刺繍データにおいて、ポインタP1が指示するX方向移動量(この場合は、1針目のX方向移動量X1)を、図5の圧縮刺繍データのポインタP2の位置(連続ステッチ数nの書き込み位置Psの次の位置)に書き込んでポインタP1,P2をインクリメントする(S18)。さらに、次に続くY方向移動量(この場合は、1針目のY方向移動量Y1)も同様に圧縮刺繍データのポインタP2の位置に書き込んでポインタP1,P2をインクリメントして(S19)、S24へ移行し、P1が指示するデータが終了コードでなければ(S24:No)、S11へ戻って次の制御コードを読み出す。
【0043】
次の縫製指令データの制御コードもステッチコードであれば(S12:Yes)、連続ステッチ数nがインクリメントされるため(S14)、連続ステッチ数nは1でない(S15:No)。このときには、刺繍データから2番目の縫製指令データ以降の重複するステッチコードを削除して、X方向移動量XnとY方向移動量Ynだけを圧縮刺繍データに書き込む(S18、S19)。そして、連続するステッチが途切れるまでこれらの処理を繰り返す。
【0044】
次に、S12において、制御データがステッチ以外のジャンプや色替えの制御コードである場合に(S12:No)、ステッチフラグFsが1、つまり、直前までの縫製指令データの制御コードがステッチであれば(S20:Yes)、連続ステッチ数nの積算を終了して、S17で指定したステッチ数書き込み用のポインタPsの位置(図5におけるステッチコードの次の位置)にnの値を書き込む(S21)。そして、nとFsをクリアして(S22)、S23に移行する。一方、ステッチフラグFsが1でなければ(S20:No)、直前の縫製指令データの制御コードはステッチでないため、そのままS23に移行する。
【0045】
S23において、制御コードはステッチコード以外の色替えやジャンプを示すコードであるが、これら色替えやジャンプ等の制御が連続して行われることは少ないため、制御コードを削除することはせずに制御コードとその制御コードに対応する制御データ(例えば、色替えであれば色番号データ、ジャンプであればX,Y方向移動量データ)をそのまま圧縮刺繍データに書き込んで(S23)、S24へ移行する。そして、ポインタP1で指示するデータが終了コードでなければ(S24:No)、S11に戻って次の制御コードを読み出し、ポインタP1で指示するデータが終了コードであれば(S24:Yes)、データ圧縮処理を終了する。
【0046】
以上のように、図4の刺繍データにデータ圧縮処理を施すことで、3nバイトのサイズのステッチデータ部が、図5に示すように(2n+2)のサイズの圧縮ステッチデータ部に圧縮される。そして、前述したように、刺繍データの大部分がステッチデータ部であることを考慮すると、刺繍データのデータサイズが略2/3まで圧縮されることになる。
【0047】
次に、前記の圧縮刺繍データを元の刺繍データに復元するデータ復元プログラムのデータ復元ルーチンについて説明する。データ復元プログラムは、前述したように刺繍ミシン1の制御装置6のROM21に格納されている。そして、前記のデータ圧縮処理により作成された圧縮刺繍データがPC30のHD45からEEPROM24に読み込まれた後にデータ復元ルーチンが実行されると、図5の圧縮刺繍データが順々に読みだされてステッチコードが検出された際に ステッチコードに付随する複数組のX,Y方向移動量データが順々に読みだされ、ステッチコードとX,Y方向移動量データとを対にした複数対の連続するデータに書き換えられて、図4に示す刺繍データに復元される。以下、図7のフローチャートを参照してこのデータ復元ルーチンについて説明する。
【0048】
データ復元ルーチンが実行されてデータ圧縮処理が開始されると、まず、初期設定において、入力側の圧縮刺繍データの読み出し位置を指示する読み出しポインタP2、出力側である刺繍データの書き込み位置を指示する書き込みポインタP1を0としてから(S40)、図5の圧縮刺繍データを順に読み出していく。そして、まず、ポインタP2が指示する制御コードを読み出してからP2をインクリメントし(S41)、この制御コードがステッチコードであれば(S42:Yes)、さらに、ポインタP2が指示する連続ステッチ数nを読み出してP2をインクリメントする(S43)。
【0049】
次に、カウンタiの初期値を1として(S44)、i=1〜nまでの間、以下の処理を繰り返す(S45〜S49)。まず、ステッチコードを圧縮刺繍データのP1が指示する位置に書き込んでP1をインクリメントする(S45)。そして、ポインタP2が指示するi針目のX方向移動量XiをポインタP1が指示する位置に書き込んでP2,P1をインクリメントする(S46)。同様に、i針目のY方向移動量YiもポインタP1が指示する位置に書き込んでP2,P1をインクリメントする(S47)。そして、カウンタiをインクリメントして(S48)、Xi,Yiを図4の刺繍データに順次書き込んでいき、i=nになると(S49:Yes)、一連の連続ステッチのデータの書き込みを終了してS51へ移行する。S51において、P2で指示するデータが終了コードでなければ(S51:No)、S41へ戻って次の制御コードを読み出す。
【0050】
一方、S42において、ポインタP2が指示する制御コードがステッチコードでない場合には(S42:No)、P2,P1をインクリメントしつつ圧縮刺繍データの制御コードとその制御コードに対応する制御データをそのまま刺繍データに書き込み(S50)、S51へ移行する。そして、S51において、ポインタP2で指示するデータが終了コードでなければ(S51:No)、S41に戻って次の制御コードを読み出し、ポインタP2で指示するデータが終了コードであれば(S51:Yes)、データ復元処理を終了する。
【0051】
尚、刺繍データ処理装置2が請求項1〜4の刺繍データ処理装置に相当し、PC30のマイクロコンピュータと図6のフローチャートが請求項1のデータ圧縮手段に相当する。一方、刺繍ミシン1の制御装置6が請求項5の刺繍データ処理装置に相当し、制御装置6のマイクロコンピュータと図7のS41及びS42が特定制御コード検出手段に相当し、さらに、制御装置のマイクロコンピュータと図8のS43〜S49がデータ変換手段に相当する。
【0052】
以上説明した刺繍ミシン1及び刺繍データ処理装置2によれば、以下のような効果が得られる。
1)刺繍データ処理装置2は、図6の刺繍データ処理プログラムのデータ圧縮ルーチンを実行することで、刺繍データのうち、縫製指令データDkがステッチコードを含む状態で複数組連続するステッチデータ部に対して、その連続する複数組の縫製指令データにおける先頭のステッチコードだけを残し2番目以降のステッチコードを削除して圧縮刺繍データを作成する。ここで、刺繍データ内の制御コードの大部分はステッチコードであり、それら大部分のステッチコードを削除して圧縮刺繍データが作成されるため、刺繍データのデータ数をほぼ一定割合で確実に減少させて、安定した圧縮率で刺繍データを圧縮することができる。
【0053】
2)図4の刺繍データにおいては、ステッチコードとこのステッチコードに付随するX方向移動量とY方向移動量の2つのデータにより、ステッチの縫製指令データDkが構成されているが、刺繍データを圧縮する際に、大部分のステッチコードを削除することで、刺繍データのデータサイズが略2/3に圧縮される。つまり、刺繍データが常に安定した圧縮率で圧縮されるため、事前に圧縮後の圧縮刺繍データのデータサイズを想定でき、圧縮刺繍データを記憶させたり転送させたりすることが可能かを確実に判断できるようになる。
【0054】
3)刺繍データ処理装置2で圧縮した圧縮刺繍データを刺繍ミシン1の制御装置6に転送した後、制御装置6においてデータ復元プログラムのデータ復元ルーチンを実行させることにより、図5の圧縮刺繍データを、刺繍ミシン1で刺繍縫製する際に使用可能な図4の刺繍データに復元できる。さらに、刺繍データを圧縮する際に各ステッチの移動量データは削除されないため、データ復元ルーチンにおいて、圧縮刺繍データから元の刺繍データを完全に復元することができる。
【0055】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。
1]前記実施形態では、データ圧縮処理において、制御コードがステッチコードであれば、連続ステッチ数nが1であっても(つまり、ステッチが連続していない場合でも)、ステッチコードの次に連続ステッチ数nを書き込むようにしているが、ステッチが連続している場合に限り、連続ステッチ数nを書き込むようにしてもよい。
【0056】
2]図6のデータ圧縮処理において、必ずしも、ステッチコードの次に連続ステッチ数nを書き込む必要はない。例えば、ステッチコード等の複数種の制御コードに対して夫々特定の値を割り当て、これら特定の値をX,Y方向移動量等の制御データでは使用できないようにしておけば、図5の圧縮刺繍データのうちの、ステッチコードから次の別の種類の制御コード(例えば、ジャンプ)を示す特定の値までの間のn組の制御データは全てX方向移動量とY方向移動量であるため、圧縮刺繍データを復元するデータ復元処理において、X方向移動量とY方向移動量とからなるデータ連続する組数nをカウントすることにより、容易に連続ステッチ数nを求めることができる。
【0057】
3]前述のように、複数種の制御コードとして、制御データで使用されない特定の値を用いれば、ステッチコードを全て削除した圧縮刺繍データを作成することも可能である。即ち、図4の刺繍データにおいて、複数種の制御コードに付随する制御データの数は予め決まっているので、刺繍データからステッチコードだけを全て削除しても圧縮刺繍データを作成したとしても、データ復元処理においてこの圧縮刺繍データを復元する際に、あるステッチコードでない制御コードを検出したときに、その制御コードの位置から制御コードに付随する制御データの数だけ進んだ位置に次の制御コードが格納されていることになる。そして、その次の制御コードが格納されているはずの位置に、制御コードを示す特定の値がなない場合には、制御コードが削除されたステッチコードであると判定して、以下連続するX方向移動量、Y方向移動量を読み出せばよい。
【0058】
4]刺繍データ処理装置2で刺繍データを圧縮して作成した圧縮刺繍データを、FDやCD−ROM、あるいは、メモリーカード等の種々の記録媒体に記録して、これら種々の記録媒体を介して圧縮刺繍データを刺繍ミシン1の制御装置6に読み込ませるようにしてもよい。また、無線を利用したRANを介して圧縮刺繍データを刺繍ミシン1へ転送してもよい。
【0059】
5]前記実施形態では、図4の刺繍データを予め作成してから、この刺繍データを刺繍データ処理装置2で圧縮して圧縮刺繍データを作成するようにしているが、刺繍データを作成する段階で、最初から図5のデータ構造を有するデータサイズの小さい刺繍データを作成し、この作成された刺繍データを刺繍ミシン1の制御装置6へ読み込ませてから、図7のデータ復元処理と同様の処理を刺繍データに施して、刺繍ミシン1で使用できる、図4の一般的なデータ構造の刺繍データに変換するようにしてもよい。
【0060】
次に、本発明の別実施形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成については同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
前記実施形態では、刺繍データの制御コードの大部分がステッチデータであることに着目して刺繍データを効果的に圧縮する技術について説明した。それに加えて、この別実施形態では、一般的に、複数の連続するステッチにおいて、あるステッチのX方向移動量及びY方向移動量の値と、そのステッチの2針前のX方向移動量及びY方向移動量の値とはあまり差がないことを利用して、さらに刺繍データの圧縮率を高める技術について説明する。
【0061】
一般的な刺繍縫製においては、図8(a)に示すタタミ縫いや、図8(b)に示すサテン縫いが行われることが多い。まず、タタミ縫いに関しては、各ステッチのX方向移動量及びY方向移動量は、その数針前後のステッチと比較して大きく変化することはあまりない。一方、サテン縫いに関しては、各ステッチのX方向移動量及びY方向移動量は、2針前後のステッチと比較した場合には、その変化量は小さいことが多い。即ち、図9(a)の1針目<1>と3針目<3>は似かよったステッチであり、2針目<2>と4針目<4>の関係も同様である。
【0062】
そこで、3針以上の複数のステッチが連続する場合において、3針目以降のステッチのX方向移動量及びY方向移動量を、2針前のステッチのX方向移動量及びY方向移動量からの差分で表すことにより、これら移動量データのデータサイズを小さくすることができる。
【0063】
以上のような観点に基づいて、図4の刺繍データを圧縮したときの、具体的な圧縮刺繍データのデータ構造について、図4、図9を参照して説明する。ここで、図4、図9で示される、1つの枠のデータサイズは8ビットからなる1バイトである。前述のように、ステッチは通常複数針連続して行われるため、図4の刺繍データにおいて、ステッチデータとこのステッチデータに付随する1組のX,Y方向移動量データを備えた縫製指令データDkが複数組連続してステッチデータ部が構成されている。
【0064】
そして、刺繍データ処理装置2において、後述の刺繍データ処理プログラムによるデータ圧縮処理が実行されると、連続する複数針のステッチに関し、3針目以降のステッチのX,Y方向の移動量データを、X方向移動量Xn及びY方向移動量Ynの代わりに、X方向移動量Xn及びY方向移動量Ynと2針前のステッチのX方向移動量X(n−2)及びY方向移動量Y(n−2)との差分dXn(dXn=Xn−X(n−2)),dYn(dXn=Xn−X(n−2))で表す。これらの差分dXn,dYnの値が、4ビットで記述できる範囲内(具体的には、移動量を0.1mm単位で記述し、符号に1ビット、数値に3ビットを夫々使用すると、±0.7mmの範囲内)の値であれば、これら連続する複数針のステッチが、移動量差分値の小さい小ステッチであると判定する。
【0065】
このように小ステッチと判定された複数針のステッチに対して、図9の圧縮刺繍データにおいては、前記実施形態と同様に、刺繍データから2番目以降のステッチコードを削除され、さらに、刺繍データ中のステッチコードの代わりに、小ステッチを示す制御コードである小ステッチコードが先頭に書き込まれる。そして、この小ステッチコードの次には、連続ステッチ数nと、1針目、2針目のX,Y方向移動量が格納され、さらに、3針目以降のステッチについては、1バイト中に、4ビットずつX方向移動量差分データとY方向移動量差分データが格納されている。従って、3針目以降のステッチに関しては、1バイトでX,Y方向両方の移動量データを格納することができるため、刺繍データ中の大部分のステッチが小ステッチである場合には、前記実施形態の圧縮刺繍データ(図5参照)と比べて、刺繍データはさらに半分のデータサイズに圧縮される。
【0066】
次に、図4の刺繍データを図9の圧縮刺繍データに圧縮する、刺繍データ処理プログラムのデータ圧縮ルーチンについて、図10〜図12のフローチャートを参照して説明する。
図10に示すように、データ圧縮ルーチンが実行されて、データ圧縮処理が開始されると、初期設定において、ステッチの連続ステッチ数n、入力側である刺繍データの読み出し位置を指示する読み出しポインタP1、出力側である圧縮刺繍データの書き込み位置を指示する書き込みポインタP3の初期値を0にしてから(S70)、図4の刺繍データを順に読み出していく。まず、ポインタP1が指示する制御コードを読み出してP1をインクリメントし(S71)、その制御コードがステッチコードであれば(S72:Yes)、連続ステッチ数nをインクリメントする(S73)。
【0067】
まず、n=1の場合には(S74:Yes)、P1をインクリメントしつつ1針目のX方向移動量X1とY方向移動量Y1を夫々読み出して(S75、S76)、S100へ移行する。n=2であれば(S74:No、S77:Yes)であれば、P1をインクリメントしつつ2針目のX方向移動量X2とY方向移動量Y2を夫々読み出して(S78、S79)、S100へ移行する。
【0068】
さらに、n≧3以上であれば(S77:No)、図11に示すように、P1をインクリメントしつつn針目のX方向移動量XnとY方向移動量Ynを夫々読み出す(S80、S81)。そして、2針前のX方向移動量X(n−2)とXnとの差分dXnと、2針前のY方向移動量Y( n−2 )とYnとの差分dYnが±0.7mmの範囲内にあれば(S82:Yes)、差分の値が小さい小ステッチであると判定して小ステッチフラグFsdを1とする(S83)。ここで、n=3の場合には(S84:Yes)、ポインタP3の位置に、まず、連続するステッチが小ステッチであることを示す小ステッチコードを書き込む(S85)。
【0069】
さらに、後述するように最終的な小ステッチの連続ステッチ数nを求めた後に、この連続ステッチ数nを小ステッチコードの次の位置に書き込むことができるように、連続ステッチ数書き込み用のポインタPsをP3として、nの書き込み位置を一旦記憶しておく(S86)。次に、P3をインクリメントしつつ読み出し済みの1針目及び2針目のX,Y方向移動量X1,Y1,X2,Y2を順に書き込む(S87)。さらに、3針目のX,Y方向移動量差分dXn,dYnの両方をP3の位置に4ビットずつ1バイトで書き込み(S88)、S100へ移行する。
【0070】
また、連続するステッチが小ステッチであり、且つ、n>3である場合には(S84:No)、既にS85において小ステッチコードが書き込まれていることから、n針目のX,Y方向移動量差分dXn,dYnを、P3が指示する位置に4ビットずつ1バイトで書き込み(S88)、S100へ移行する。
【0071】
一方、S82において、移動量差分dXn,dYnが±0.7の範囲を外れている場合には(S82:No)、ステッチが小ステッチでなく小ステッチの連続が途切れたと判定し、S90へ移行する。
そして、図12に示すように、小ステッチフラグが0、つまり、1針目から3針目の3つの連続するステッチが小ステッチではない場合には(S90:Yes)、これら1針目から3針目までのステッチに関するデータはまだ書き込まれていないため、ステッチコードと1針目の移動量X1,Y1を圧縮刺繍データに順に書き込む(S91)。2針目、3針目についても同様に書き込む(S92、S93)。
【0072】
一方、小ステッチフラグが1、つまり、直前まで小ステッチが連続していた場合には(S90:No)、小ステッチと判定されなかったn針目に関してのみ、ステッチコードと移動量Xn,Ynだけ圧縮刺繍データに順に書き込み(S94)、n針目のステッチを連続ステッチ数にカウントしないために連続ステッチ数nを1減らす(S95)。さらに、連続ステッチ数nをS86で指定したポインタPsに書き込み(S96)、連続ステッチ数nと小ステッチフラグFsdをクリアして(S97)、S100へ移行する。
【0073】
尚、図10のS72において、S71で読み出された制御コードがステッチコードでない場合には(S72)、その制御コードと対応する制御データを書き込んでP3,P1をインクリメントする(S98)。さらに、小ステッチフラグFsdが1、つまり、直前まで小ステッチが連続していた場合には(S99)、S96へ移行し、連続ステッチ数nをポインタPsに書き込んで(S96)、連続ステッチ数nと小ステッチフラグをクリアしてから(S97)、S100へ移行する。小ステッチフラグFsdが0であれば、そのままS100へ移行する。
【0074】
そして、S100において、ポインタP1で指示するデータが終了コードでなければ(S100:No)、S71に戻って次の制御コードを読み出し、ポインタP1で指示するデータが終了コードであれば(S100:Yes)、データ圧縮処理を終了する。
【0075】
次に、図9の圧縮刺繍データを図4の元の刺繍データに復元するデータ復元プログラムのデータ復元ルーチンについて説明する。図13に示すように、このデータ復元ルーチンが実行されてデータ復元処理が開始されると、まず、初期設定において、入力側の圧縮刺繍データの読み出し位置を指示する読み出しポインタP3、出力側である刺繍データの書き込み位置を指示する書き込みポインタP1を0としてから(S110)、図9の圧縮刺繍データを順に読み出していく。そして、まず、ポインタP3が指示する制御コードを読み込み(S111)、この制御コードが小ステッチコードであれば(S112:Yes)、ポインタP3が指示する連続ステッチ数nを読み出し、P3をインクリメントする(S113)。
【0076】
さらに、カウンタiの初期値を1として(S114)、i=1〜nまでの間、以下の処理を繰り返す(S115〜S120)。即ち、まず、刺繍データのポインタP1の位置にステッチコードを書き込み、P1をインクリメントする(S115)。次に、i<3であれば(S116:Yes)、P3が指示する1針目または2針目のX方向移動量X1をP1が指示する位置に書き込み、P3,P1をインクリメントする(S117)。同様に、1針目または2針目のY方向移動量Y1についても同様に処理して(S118)、iをインクリメントする(S119)。i=nでなければ(S120:No)、S116へ戻る。
【0077】
次に、iが3以上の場合には(S116:No)、P3が指示する8ビットからなる1バイトに4ビットずつ格納されたX方向移動量差分dXiとY方向移動量差分dYiを読み出してP3をインクリメントし(S121)、これらdXi、dYiと(i−2)針目のX方向、Y方向移動量データX(i−2),Y(i−2)により、i針目のX方向移動量Xiと、Y方向移動量Yiを算出する(s122)。そして、P1が指示する位置にXi,Yiを書き込んで(S123)、iをインクリメントし(S119)、i=nとなるまで繰り返す。そして、i=nになると(S120:Yes)、一連の連続小ステッチのデータの書き込みを終了し、S125へ移行する。
【0078】
一方、S112において、P3が指示する制御コードが小ステッチコードでなければ(S112:No)、圧縮刺繍データの制御コードとその制御コードに対応する制御データを刺繍データに書き込み(S124)、S125へ移行する。そして、S125において、P3で指示するデータが終了コードでなければ(S125:No)、S111へ戻って次の制御コードを読み出し、終了コードであれば(S125:Yes)、データ復元処理を終了する。
【0079】
以上説明した刺繍データに関する技術によれば、サテン縫いあるいはタタミ縫いの何れの場合でも、2針前のステッチと比較するとX,Y方向移動量の差分は小さいことから、3針以上の複数のステッチが連続する場合において、3針目以降のステッチのX方向移動量及びY方向移動量を、2針前のステッチのX方向移動量及びY方向移動量からの差分で表すことにより、縫い方にかかわらず移動量データのデータサイズを小さくすることができる。
【0080】
さらに、この刺繍データ圧縮技術は、前記実施形態で説明した、重複したステッチコードを削除する刺繍データ圧縮技術と併用することができるため、刺繍データをさらに圧縮してデータサイズを小さくすることができる。
【0081】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成するので、例えば、刺繍縫製の際に最も多く実行される特定の制御コードを有する縫製指令データが複数組連続している場合に、少なくともその2番目以降の制御データを削除することができるので、刺繍データのデータ数をほぼ一定割合で確実に減少させることができる。
【0082】
請求項2の発明によれば、刺繍データを構成する複数組の縫製指令データの制御コードの大部分はステッチコードであり、このステッチコードを有し複数組連続する縫製指令データについて、データ圧縮手段が、少なくとも2番目以降のステッチコードを削除することができるので、刺繍データ中の大部分のステッチコードを削除でき、高い圧縮率で刺繍データを圧縮することができる。また、刺繍データが略安定した圧縮率で圧縮されるため、事前に圧縮後の圧縮刺繍データのデータサイズを想定でき、圧縮刺繍データを記憶させたり転送させたりすることが可能かを確実に判断できるようになる。さらに、刺繍データを圧縮する際に各ステッチの移動量データは削除されないため、圧縮刺繍データから元の刺繍データを完全に復元することができる。
【0083】
請求項3の発明によれば、縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、先頭の制御コードを残した状態で2番目以降の制御データを削除するので、圧縮刺繍データから元の刺繍データを復元する際に、どの制御が以下連続して行われるのかを検出することができる。
【0084】
請求項4の発明によれば、縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、先頭の制御コード以外の制御コードを削除するが、ここで、それら連続する縫製指令データの組数を求めて、その組数のデータを残された制御コードの次に組み込むので、その制御コードで示される制御が何回繰り返し行われるのかを検出することができる。
【0085】
請求項5の発明によれば、特定の制御コードに複数組の連続する制御データを付随させてデータサイズを減少させた刺繍データを、特定制御コード検出手段により順に読み出して特定制御コードを検出し、次に、データ変換手段により、特定制御コード検出手段で検出された特定制御コードに付随する複数組の制御データを順々に読みだしながら、特定制御コードと制御データとを対にした複数対の連続するデータに書き換えることにより、このような刺繍データを刺繍ミシンで使用可能なデータ構造に変換することができる。
【0086】
請求項6の発明によれば、制御コードとその制御コードに付随する制御データを組にして構成された縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成するため、請求項1と略同様の効果が得られる。
【0087】
請求項7の発明によれば、圧縮処理ルーチンにおいて、制御コードとその制御コードに付随する制御データを組にして構成された縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードが削除されて圧縮刺繍データが作成されるので、請求項1と略同様の効果が得られる。
【0088】
請求項8の発明によれば、特定の制御を複数回連続して実行するためのデータを有するデータ構造部は、その特定の制御を示す特定制御コードとこの特定制御コードに付随する複数組の連続する制御データを備えたので、連続して実行される複数回の特定の制御に対して付される特定制御コードが1つだけであり、刺繍データのデータ数が少ないデータ構造を実現できる。
【0089】
請求項9の発明によれば、刺繍データ処理装置のコンピュータにより特定制御コードが読み出された場合に、特定制御コードの次に連続する、複数組の制御データの組数を示す組数データも読み出されるので、その特定の制御が繰り返される回数を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る刺繍ミシン及び刺繍データ処理装置の斜視図である。
【図2】刺繍ミシンの制御系のブロック図である。
【図3】刺繍データ処理装置の制御系のブロック図である。
【図4】刺繍データのデータ構造を示す図である。
【図5】圧縮刺繍データのデータ構造を示す図である。
【図6】データ圧縮処理のフローチャートである。
【図7】データ復元処理のフローチャートである。
【図8】刺繍縫製における縫目を示す説明図であり、(a)はタタミ縫い、(b)はサテン縫いを示す。
【図9】別実施形態の圧縮刺繍データのデータ構造を示す図である。
【図10】別実施形態のデータ圧縮処理のフローチャート(1/3)である。
【図11】別実施形態のデータ圧縮処理のフローチャート(2/3)である。
【図12】別実施形態のデータ圧縮処理のフローチャート(3/3)である。
【図13】別実施形態のデータ復元処理のフローチャートである。
【符号の説明】
1 刺繍ミシン
2 刺繍データ処理装置
6 制御装置
20 CPU
21 ROM
22 RAM
40 制御装置
41 CPU
42 ROM
43 RAM
【発明の属する技術分野】本発明は、刺繍データ処理装置、刺繍データ処理方法、刺繍データ処理プログラム及び刺繍データのデータ構造に関し、特に、刺繍データを圧縮する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、刺繍ミシンにおいては、予めパーソナルコンピュータ等の刺繍データ作成装置により作成された刺繍データに基づいて加工布に刺繍縫製を行うことが多い。この刺繍データは、一般的に、実施形態の図4に示すように、ステッチ、ジャンプ、色替え等の刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードと、縫針に対するX,Y方向への加工布の相対移動量等、前記複数種の制御コード等に夫々付随する制御データとを有する。
【0003】
ところで、今日では、加工布に施される刺繍模様は多種多様化しており、それに伴って、刺繍データ(特に、刺繍データの大部分を占めるステッチデータ)のデータサイズが大きくなりつつある。刺繍データのデータサイズが大きくなると、この刺繍データを読み取り可能に記録して、記録した刺繍データを刺繍ミシンの制御装置に読み込ませるための、容量の大きな記録媒体が必要となる。さらに、1又は複数の刺繍ミシンを、刺繍データを記憶したパーソナルコンピュータやサーバー等の刺繍データ処理装置と接続して、この刺繍データ処理装置と刺繍ミシンとの間で刺繍データを送受信するようなシステムを構築した場合には、刺繍データ処理装置の記録媒体の記憶容量を大きくする必要があるとともに、刺繍データを送受信する際の通信コストも大きくなるという問題がある。
【0004】
そのため、刺繍データのデータサイズを減少させることに関する種々の提案が既になされている。例えば、特許文献1に記載の刺繍データ作成装置は、刺繍縫製範囲を複数のブロックに分割し、各ステッチの針落ち点の位置を、その針落ち点を含むブロックの頂点の座標及びブロック内の糸密度により近似して表すことができるため、1針ごとの針落ち点のデータを作成する必要がなくなり、刺繍データのデータ数を減らすことができる。
【0005】
また、特許文献2に記載の刺繍データ圧縮方法においては、各ステッチの針落ち点のX,Y座標データを、所定の基準位置の座標データからの偏差で置き換えることにより、座標データの値自体を小さくすることで刺繍データを圧縮する。
【0006】
さらに、特許文献3に記載のデータ圧縮装置及びデータ圧縮方法においては、「1」、「0」の羅列したビットデータにおいて、連続したビットデータを8ビットで構成された1バイト単位で区切り、この8ビットのデータに対して、その中の「1」のデータ位置に対応する識別コードを付与するとともに、「0」のデータを除去して、バイナリデータの数を減少させた圧縮ビットデータを作成する。
【0007】
【特許文献1】特公平6−67423号公報(第2−5頁、第1−8図)
【特許文献2】特開平2−57290号公報(第2−5頁、第1−8図)
【特許文献3】特開平7−24167号公報(第4−6頁、図7、図8)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特許文献1に記載の刺繍データ作成装置においては、針落ち点の位置をブロックの頂点の座標とブロック内の糸密度により近似して表して刺繍データを作成するため、元の刺繍模様の針落ち点を正確に再現することができない場合もあり、その刺繍データにより実際に加工布に施された刺繍模様が意図した刺繍模様と少し異なってしまう虞がある。
【0009】
特許文献2に記載の刺繍データ圧縮方法においては、針落ち点の座標データの値自体を小さくできるものの、データの個数自体を減らすわけではないので、刺繍データによっては圧縮率が低くなる場合もあるなど、圧縮率が安定しない。さらに、特許文献3に記載のデータ圧縮装置及びデータ圧縮方法においても、元のデータサイズが同じでも、ビットデータの「1」、「0」の配列により圧縮率が大きく異なることに場合もあるため、想定していたデータサイズまで圧縮できず、刺繍データの記憶や転送等ができないこともありえる。
本発明の目的は、常に安定した圧縮率で刺繍データを圧縮して確実に刺繍データのデータサイズを減少させること、圧縮刺繍データを復元したときに針落ち点を正確に再現すること、刺繍データを圧縮する前に予め圧縮後のデータサイズを想定可能にすること、等である。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の刺繍データ処理装置は、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データを処理して圧縮する刺繍データ処理装置において、制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除した圧縮刺繍データを作成するデータ圧縮手段を有するものである。
【0011】
刺繍ミシンにより加工布に対して刺繍縫製を行う際には、ステッチ、ジャンプ、色替え、糸切り、一時停止等、刺繍縫製に関する種々の制御が実行される。そして、その刺繍縫製の為の刺繍データには、これら種々の制御を示す制御コードと、これら制御コードに夫々付随する制御データとが含まれている。例えば、ステッチやジャンプを示す制御コードに対しては、縫針に対して加工布をX,Y方向へ相対移動させる移動量データが付随する。そして、制御コードとその制御コードに付随する制御データとを組にして縫製指令データが構成され、この縫製指令データが複数組連続して前記種々の制御が連続して行われるように、刺繍データは構成されている。
【0012】
ここで、縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合には、その制御コードが示す制御が連続して行われることを示す。そして、その場合に、データ圧縮手段は、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成する。ここで、連続する複数組の縫製指令データのうち、先頭の縫製指令データの制御コードだけを残して、どの制御が連続して行われるのかを容易に判別できるようにしてもよいが、圧縮刺繍データから刺繍データを復元する際に、削除された制御コードを復元することができる場合には、全ての制御コードを削除してもよい。
【0013】
請求項2の刺繍データ処理装置は、請求項1の発明において、前記複数種の制御コードには、X,Y方向への加工布の移動を指示するステッチコードが含まれ、このステッチコードに付随する制御データが縫針に対して加工布を相対移動させる移動量データであるものである。刺繍縫製の際に行われる制御はステッチが大部分であるため、刺繍データを構成する複数組の縫製指令データに含まれる制御コードのほとんどがステッチコードである。そこで、データ圧縮手段は、このステッチコードを有し複数組連続する縫製指令データについて、少なくとも2番目以降のステッチコードを削除するとともに縫針に対して加工布を相対移動させる移動量データを連続させて、圧縮刺繍データを作成する。
【0014】
請求項3の刺繍データ処理装置は、請求項1又は2の発明において、前記データ圧縮手段は、複数組の縫製指令データにおける先頭の制御コードを残した状態の圧縮刺繍データを作成するものである。従って、縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、圧縮刺繍データから元の刺繍データを復元する際にどの制御が以下連続して行われるのかを判別できるように、先頭の制御コードを残した状態で2番目以降の制御データを削除する。
【0015】
請求項4の刺繍データ処理装置は、請求項3の発明において、前記データ圧縮手段は、前記複数組連続する縫製指令データの組数を求め、この組数のデータを前記先頭の制御コードの次に組み込んだ圧縮刺繍データを作成するものである。縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、先頭の制御コード以外の制御コードを削除するが、圧縮刺繍データから元の刺繍データを復元する際に、その制御コードで示される制御が何回繰り返し行われるのかを容易に検出できるように、データ圧縮手段は、それら連続する縫製指令データの組数を求めて、その組数のデータを制御コードの次に組み込む。
【0016】
請求項5の刺繍データ処理装置は、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードに制御データを対応付けてなる刺繍データのうちの、特定の制御コードとこの特定制御コードに付随させた複数組の連続する制御データとを処理する刺繍データ処理装置において、前記刺繍データを順々に読みだして特定制御コードを検出する特定制御コード検出手段と、前記特定制御コード検出手段により特定制御コードが検出された際に、その特定制御コードに付随する複数組の制御データを順々に読みだしながら、特定制御コードと制御データとを対にした複数対の連続するデータに書き換えるデータ変換手段とを備えたものである。
【0017】
刺繍データには、ステッチ、ジャンプ、色替え、糸切り、一時停止等、刺繍縫製に関する種々の制御の種類を示す制御コードと、これら制御コードに夫々付随する制御データとが含まれている。ここで、刺繍ミシンにより刺繍縫製を行う際には、制御コードとその制御コードに付随する制御データとを対にして、この1対のデータを、刺繍縫製の際に実行されるステッチ等の制御の回数分だけ複数対連続させて構成したデータ構造を有する刺繍データを使用する場合が多い。
【0018】
しかし、刺繍縫製においては、例えば、ステッチのような特定の制御は複数回連続して行われるのが通常である。そこで、刺繍データを作成したり、作成した刺繍データを記録媒体に記録させたり刺繍ミシンに転送したりする場合に、刺繍データを、ステッチ等の特定の制御を示す特定制御コードに複数組の連続する制御データを付随させたデータ構造で構成すれば、連続する特定の制御に対して特定制御コードが1つだけ付されることになり、刺繍データのデータサイズを減少させることができる。
【0019】
そして、この請求項5の刺繍データ処理装置は、このようにデータサイズを減少させた刺繍データを処理してその刺繍データを刺繍ミシンで使用可能なデータ構造を有するデータに変換するものである。即ち、特定制御コード検出手段により刺繍データを順々に読み出して特定制御コードが検出された際に、データ変換手段により、その特定制御コードに付随する複数組の制御データを順々に読み出して、特定制御コードと制御データとを対にした複数対の連続するデータに書き換える。
【0020】
請求項6の刺繍データ処理方法は、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データを処理して圧縮する刺繍データ処理方法において、制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除した圧縮刺繍データを作成するものである。
【0021】
この刺繍データ処理方法によれば、制御コードとその制御コードに付随する制御データを組にして構成された縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成する。
【0022】
請求項7の刺繍データ処理プログラムは、刺繍データ処理装置のコンピュータに実行させる刺繍データ処理プログラムであって、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データを処理して圧縮する刺繍データ処理プログラムにおいて、制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除した圧縮刺繍データを作成する圧縮処理ルーチンを備えたものである。
【0023】
この刺繍データ処理プログラムが刺繍データ処理装置のコンピュータで実行されると、圧縮処理ルーチンにおいて、制御コードとその制御コードに付随する制御データを組にして構成された縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードが削除されて圧縮刺繍データが作成される。
【0024】
請求項8の刺繍データのデータ構造は、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードに制御データを対応付けた刺繍データであって刺繍データ処理装置のコンピュータで読み出し可能に記録した刺繍データのデータ構造において、特定の制御コードと、この特定制御コードに付随する複数組の連続する制御データとを備えたデータ構造部を設けたものである。特定の制御を複数回連続して実行するためのデータを有するデータ構造部は、その特定の制御を示す特定制御コードとこの特定制御コードに付随する複数組の連続する制御データを備えており、連続して実行される複数回の特定の制御に対して付される特定制御コードが1つだけであるため、刺繍データのデータ数が少なくなる。
【0025】
請求項9の刺繍データのデータ構造は、請求項8の発明において、前記データ構造部は、特定制御コードの次に、複数組の連続する制御データの組数を示す組数データを備えたものである。従って、刺繍データ処理装置のコンピュータにより特定制御コードが読み出された場合に、特定制御コードの次に連続する、複数組の制御データの組数を示す組数データも読み出されるので、その特定の制御が連続して繰り返される回数が検出される。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、刺繍ミシン及びこの刺繍ミシンで使用される刺繍データを処理する刺繍データ処理装置に本発明を適用した一例である。
図1に示すように、刺繍ミシン1に、パーソナルコンピュータ30(以下、PC30という)を主体とする刺繍データ処理装置2がデータ転送用ケーブル3を介して接続されている。
【0027】
まず、刺繍ミシン1について簡単に説明する。
図1、図2に示すように、刺繍ミシン1は、ミシン本体4と、刺繍枠15を左右方向(X軸方向)と前後方向(Y軸方向)に移動させる為の刺繍枠移動機構5と、刺繍ミシン1全体の制御を司る制御装置6とを備えている。ミシン本体4は、ベッド部7と、このベッド部7の右端部から立設された脚柱部8と、脚柱部8の上端からベッド部7に対向するように左方に延びるアーム部9とを有し、ミシン本体4はミシンテーブル10に組み込まれている。アーム部9の左端部のアーム頭部には、縫針11を装着した針棒12が設けられている。刺繍枠移動機構5は、X軸駆動モータ13とY軸駆動モータ14とを有し、これら2つの駆動モータ13,14により加工布を装着した刺繍枠15を左右方向及び前後方向に駆動する。
【0028】
図2に示すように、制御装置6には、CPU20とROM21とRAM22とこれらを接続するバス23とを含むマイクロコンピュータと、バス23に接続され書き換え可能なEEPROM24と、入出力インターフェース25等を有する。バス23にはフレキシブルドライブ26(FDD)も接続されている。入出力インターフェース25には、後述の刺繍データ処理装置2のPC30と、操作パネル26等が接続され、さらに、ミシンモータ27、X軸駆動モータ13、Y軸駆動モータ14等が接続されている。
【0029】
刺繍ミシン1には、刺繍データ処理装置2のPC30で作成された後述の圧縮刺繍データがデータ転送用ケーブル3を介して転送され、EEPROM24に記憶される。そして、ROM21には、この圧縮刺繍データを圧縮前の刺繍データに復元するデータ復元プログラムが格納されている。これら、圧縮刺繍データ及びデータ復元プログラムについては、後で詳述する。
【0030】
次に、刺繍データ処理装置2について説明する。
図1に示すように、刺繍データ処理装置2は、PC30と、このPC30に接続された、ディスプレイ31、キーボード32、マウス33等で構成されている。この刺繍データ処理装置2は、図4に示すような、刺繍ミシン1による刺繍縫製の為の刺繍データを作成したり、作成された刺繍データを圧縮して図5の圧縮刺繍データを作成したりする為のものである。
【0031】
図3に示すように、PC30は、刺繍データに関する種々の処理を制御する制御装置40を有する。この制御装置40は、CPU41とROM42とRAM43とこれらを接続するバス44とを含むマイクロコンピュータと、バス44に接続されハードディスク45(HD)を備えたハードディスクドライブ46(HDD)と、入出力インターフェース49等を有する。バス44には、フレキシブルディスクドライブ47(FDD)と、CD−ROMドライブ48も接続されている。入出力インターフェース49には、ディスプレイ31を駆動する為の表示駆動回路50、キーボード32、マウス33等も接続されている。
【0032】
ROM42には、PC30の電源ON時にPC30を起動する起動プログラム等、種々のプログラムが格納されている。
一方、HD45には、OS(オペレーティングシステム)や、ディスプレイ31、キーボード32、マウス33等を使用可能とする為の各種ドライバが組み込まれ、さらに、HD45には、刺繍データを新規に作成したり、作成された刺繍データを処理して圧縮する後述の刺繍データ処理プログラム等、種々のプログラムが格納されている。そして、これらのプログラムにより作成、あるいは、処理された刺繍データ等もHD45に記憶される。
【0033】
ここで、刺繍縫製に使用される刺繍データについて説明する。この刺繍データは、刺繍データ処理装置2により作成することもできるが、他の刺繍データ作成装置で作成した刺繍データをFDやCD−ROM等の記憶媒体を介してHD45に記憶させてもよいし、あるいは、他の複数の刺繍データ処理装置と接続されたサーバーに一元的に管理された刺繍データを、ネットワークを介してダウンロードしてHD45に記憶するようにしてもよい。
【0034】
図4に示すように、刺繍データは、ステッチ、ジャンプ、色替え、糸切り等、刺繍縫製に関連する種々の制御を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する。ここで、図4において、1つの枠のデータサイズは、8ビットからなる1バイトである。例えば、制御コードがステッチを示すステッチコードであれば、このステッチコードに、縫針11に対して刺繍枠15(つまり、加工布)を夫々相対移動させるX方向相対移動量データ(以下、X方向移動量データという)とY方向相対移動量データ(同じく、Y方向移動量データという)とが制御データとして付随している。ここで、移動量データは、符号に1ビット、数値に7ビット使用するため、これら移動量を0.1mm単位で記述すると、±12.8mmの値の範囲内でX方向、Y方向の移動量の値を設定できる。
【0035】
また、制御コードが色替えを示す色替えコードであれば、この色替えコードには、色番号データが制御データとして付随している。そして、刺繍データは、これら制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データDk(k=1,2,・・・)が複数組連続した状態で構成されている。
【0036】
ところで、前記の刺繍縫製に関連する制御の大部分はステッチである。従って、刺繍データの連続した複数組の縫製指令データDkの大部分は、制御データとしてステッチコードを有する。そして、通常、ステッチは複数針連続して行われることが多く、図4に示すように、n針連続してステッチを行う場合には、3バイト毎にステッチコードが連続する。そこで、後ほど説明する、刺繍データ処理プログラムを実行することにより、2番目以降の重複するステッチコード(図4の塗りつぶしたデータ部分)を削除して、図5に示す、圧縮刺繍データを作成することができるようになっている。
【0037】
この圧縮刺繍データにおいては、前述の刺繍縫製に関連する制御の種類を示すステッチコードや色替えコード等の複数種の制御コードに夫々制御データが対応付けられている。さらに、この圧縮刺繍データには、図4の刺繍データにおける、ステッチコードを有する複数組の縫製指令データDkが連続するステッチデータ部から2番目以降のステッチコードを削除して作成された、ステッチコード(特定制御コードに相当する)とこのステッチコードに付随する複数組の連続するX方向移動量データ及びY方向移動量データとを備えた圧縮ステッチデータ部(データ構造部に相当する)が設けられている。そして、この圧縮ステッチデータ部は、ステッチコードの次に、複数組の連続するX方向移動量データ及びY方向移動量データの組数を示す組数データ(つまり、連続ステッチ数nのデータ)を備えている。
【0038】
次に、刺繍データ処理プログラムについて説明する。この刺繍データ処理プログラムは、図4に示す刺繍データを作成するデータ作成ルーチンや、データ作成ルーチン等で作成された刺繍データを処理して圧縮するデータ圧縮ルーチン等を備えている。但し、データ作成ルーチンについては当業者により公知の種々の技術を適用できるため、その説明を省略し、ここでは、本願発明の特徴部分の1つであるデータ圧縮ルーチンについて、図6のフローチャートを参照して説明する。尚、以下の説明において、Si(Si=10,11,12・・・)はステップ数を示す。
【0039】
このデータ圧縮ルーチンが実行されると、PC2のHD45に記憶された刺繍データが読み出されて、その刺繍データを圧縮した圧縮刺繍データがHD45の別の領域に書き込まれる。そして、データ圧縮ルーチンによるデータ圧縮処理が終了すると、元の刺繍データは削除される。
【0040】
図6に示すように、データ圧縮ルーチンが実行されて、データ圧縮処理が開始されると、初期設定において、ステッチの連続ステッチ数n、入力側である刺繍データの読み出し位置を指示する読み出しポインタP1、出力側である圧縮刺繍データの書き込み位置を指示する書き込みポインタP2の初期値を0にしてから(S10)、図4の刺繍データを順に読み出していく。まず、ポインタP1が指示する制御コードを読み出してP1をインクリメントし(S11)、その制御コードがステッチコードであれば(S12:Yes)、ステッチフラグFsを1とし(S13)、連続ステッチ数nをインクリメントする(S14)。
【0041】
まず、連続ステッチ数nが1の場合には(S15:Yes)、ステッチコードをポインタP2が指示する位置に書き込んで、ポインタP2をインクリメントする(S16)。さらに、図5に示すように、後述のS21で最終的な連続ステッチ数nを求めてからステッチコードの次の位置にnの値を書き込むことができるように、連続ステッチ数nの書き込み用のポインタPsをP2として、nの書き込み位置を一旦記憶しておく(S17)。
【0042】
そして、図4の刺繍データにおいて、ポインタP1が指示するX方向移動量(この場合は、1針目のX方向移動量X1)を、図5の圧縮刺繍データのポインタP2の位置(連続ステッチ数nの書き込み位置Psの次の位置)に書き込んでポインタP1,P2をインクリメントする(S18)。さらに、次に続くY方向移動量(この場合は、1針目のY方向移動量Y1)も同様に圧縮刺繍データのポインタP2の位置に書き込んでポインタP1,P2をインクリメントして(S19)、S24へ移行し、P1が指示するデータが終了コードでなければ(S24:No)、S11へ戻って次の制御コードを読み出す。
【0043】
次の縫製指令データの制御コードもステッチコードであれば(S12:Yes)、連続ステッチ数nがインクリメントされるため(S14)、連続ステッチ数nは1でない(S15:No)。このときには、刺繍データから2番目の縫製指令データ以降の重複するステッチコードを削除して、X方向移動量XnとY方向移動量Ynだけを圧縮刺繍データに書き込む(S18、S19)。そして、連続するステッチが途切れるまでこれらの処理を繰り返す。
【0044】
次に、S12において、制御データがステッチ以外のジャンプや色替えの制御コードである場合に(S12:No)、ステッチフラグFsが1、つまり、直前までの縫製指令データの制御コードがステッチであれば(S20:Yes)、連続ステッチ数nの積算を終了して、S17で指定したステッチ数書き込み用のポインタPsの位置(図5におけるステッチコードの次の位置)にnの値を書き込む(S21)。そして、nとFsをクリアして(S22)、S23に移行する。一方、ステッチフラグFsが1でなければ(S20:No)、直前の縫製指令データの制御コードはステッチでないため、そのままS23に移行する。
【0045】
S23において、制御コードはステッチコード以外の色替えやジャンプを示すコードであるが、これら色替えやジャンプ等の制御が連続して行われることは少ないため、制御コードを削除することはせずに制御コードとその制御コードに対応する制御データ(例えば、色替えであれば色番号データ、ジャンプであればX,Y方向移動量データ)をそのまま圧縮刺繍データに書き込んで(S23)、S24へ移行する。そして、ポインタP1で指示するデータが終了コードでなければ(S24:No)、S11に戻って次の制御コードを読み出し、ポインタP1で指示するデータが終了コードであれば(S24:Yes)、データ圧縮処理を終了する。
【0046】
以上のように、図4の刺繍データにデータ圧縮処理を施すことで、3nバイトのサイズのステッチデータ部が、図5に示すように(2n+2)のサイズの圧縮ステッチデータ部に圧縮される。そして、前述したように、刺繍データの大部分がステッチデータ部であることを考慮すると、刺繍データのデータサイズが略2/3まで圧縮されることになる。
【0047】
次に、前記の圧縮刺繍データを元の刺繍データに復元するデータ復元プログラムのデータ復元ルーチンについて説明する。データ復元プログラムは、前述したように刺繍ミシン1の制御装置6のROM21に格納されている。そして、前記のデータ圧縮処理により作成された圧縮刺繍データがPC30のHD45からEEPROM24に読み込まれた後にデータ復元ルーチンが実行されると、図5の圧縮刺繍データが順々に読みだされてステッチコードが検出された際に ステッチコードに付随する複数組のX,Y方向移動量データが順々に読みだされ、ステッチコードとX,Y方向移動量データとを対にした複数対の連続するデータに書き換えられて、図4に示す刺繍データに復元される。以下、図7のフローチャートを参照してこのデータ復元ルーチンについて説明する。
【0048】
データ復元ルーチンが実行されてデータ圧縮処理が開始されると、まず、初期設定において、入力側の圧縮刺繍データの読み出し位置を指示する読み出しポインタP2、出力側である刺繍データの書き込み位置を指示する書き込みポインタP1を0としてから(S40)、図5の圧縮刺繍データを順に読み出していく。そして、まず、ポインタP2が指示する制御コードを読み出してからP2をインクリメントし(S41)、この制御コードがステッチコードであれば(S42:Yes)、さらに、ポインタP2が指示する連続ステッチ数nを読み出してP2をインクリメントする(S43)。
【0049】
次に、カウンタiの初期値を1として(S44)、i=1〜nまでの間、以下の処理を繰り返す(S45〜S49)。まず、ステッチコードを圧縮刺繍データのP1が指示する位置に書き込んでP1をインクリメントする(S45)。そして、ポインタP2が指示するi針目のX方向移動量XiをポインタP1が指示する位置に書き込んでP2,P1をインクリメントする(S46)。同様に、i針目のY方向移動量YiもポインタP1が指示する位置に書き込んでP2,P1をインクリメントする(S47)。そして、カウンタiをインクリメントして(S48)、Xi,Yiを図4の刺繍データに順次書き込んでいき、i=nになると(S49:Yes)、一連の連続ステッチのデータの書き込みを終了してS51へ移行する。S51において、P2で指示するデータが終了コードでなければ(S51:No)、S41へ戻って次の制御コードを読み出す。
【0050】
一方、S42において、ポインタP2が指示する制御コードがステッチコードでない場合には(S42:No)、P2,P1をインクリメントしつつ圧縮刺繍データの制御コードとその制御コードに対応する制御データをそのまま刺繍データに書き込み(S50)、S51へ移行する。そして、S51において、ポインタP2で指示するデータが終了コードでなければ(S51:No)、S41に戻って次の制御コードを読み出し、ポインタP2で指示するデータが終了コードであれば(S51:Yes)、データ復元処理を終了する。
【0051】
尚、刺繍データ処理装置2が請求項1〜4の刺繍データ処理装置に相当し、PC30のマイクロコンピュータと図6のフローチャートが請求項1のデータ圧縮手段に相当する。一方、刺繍ミシン1の制御装置6が請求項5の刺繍データ処理装置に相当し、制御装置6のマイクロコンピュータと図7のS41及びS42が特定制御コード検出手段に相当し、さらに、制御装置のマイクロコンピュータと図8のS43〜S49がデータ変換手段に相当する。
【0052】
以上説明した刺繍ミシン1及び刺繍データ処理装置2によれば、以下のような効果が得られる。
1)刺繍データ処理装置2は、図6の刺繍データ処理プログラムのデータ圧縮ルーチンを実行することで、刺繍データのうち、縫製指令データDkがステッチコードを含む状態で複数組連続するステッチデータ部に対して、その連続する複数組の縫製指令データにおける先頭のステッチコードだけを残し2番目以降のステッチコードを削除して圧縮刺繍データを作成する。ここで、刺繍データ内の制御コードの大部分はステッチコードであり、それら大部分のステッチコードを削除して圧縮刺繍データが作成されるため、刺繍データのデータ数をほぼ一定割合で確実に減少させて、安定した圧縮率で刺繍データを圧縮することができる。
【0053】
2)図4の刺繍データにおいては、ステッチコードとこのステッチコードに付随するX方向移動量とY方向移動量の2つのデータにより、ステッチの縫製指令データDkが構成されているが、刺繍データを圧縮する際に、大部分のステッチコードを削除することで、刺繍データのデータサイズが略2/3に圧縮される。つまり、刺繍データが常に安定した圧縮率で圧縮されるため、事前に圧縮後の圧縮刺繍データのデータサイズを想定でき、圧縮刺繍データを記憶させたり転送させたりすることが可能かを確実に判断できるようになる。
【0054】
3)刺繍データ処理装置2で圧縮した圧縮刺繍データを刺繍ミシン1の制御装置6に転送した後、制御装置6においてデータ復元プログラムのデータ復元ルーチンを実行させることにより、図5の圧縮刺繍データを、刺繍ミシン1で刺繍縫製する際に使用可能な図4の刺繍データに復元できる。さらに、刺繍データを圧縮する際に各ステッチの移動量データは削除されないため、データ復元ルーチンにおいて、圧縮刺繍データから元の刺繍データを完全に復元することができる。
【0055】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。
1]前記実施形態では、データ圧縮処理において、制御コードがステッチコードであれば、連続ステッチ数nが1であっても(つまり、ステッチが連続していない場合でも)、ステッチコードの次に連続ステッチ数nを書き込むようにしているが、ステッチが連続している場合に限り、連続ステッチ数nを書き込むようにしてもよい。
【0056】
2]図6のデータ圧縮処理において、必ずしも、ステッチコードの次に連続ステッチ数nを書き込む必要はない。例えば、ステッチコード等の複数種の制御コードに対して夫々特定の値を割り当て、これら特定の値をX,Y方向移動量等の制御データでは使用できないようにしておけば、図5の圧縮刺繍データのうちの、ステッチコードから次の別の種類の制御コード(例えば、ジャンプ)を示す特定の値までの間のn組の制御データは全てX方向移動量とY方向移動量であるため、圧縮刺繍データを復元するデータ復元処理において、X方向移動量とY方向移動量とからなるデータ連続する組数nをカウントすることにより、容易に連続ステッチ数nを求めることができる。
【0057】
3]前述のように、複数種の制御コードとして、制御データで使用されない特定の値を用いれば、ステッチコードを全て削除した圧縮刺繍データを作成することも可能である。即ち、図4の刺繍データにおいて、複数種の制御コードに付随する制御データの数は予め決まっているので、刺繍データからステッチコードだけを全て削除しても圧縮刺繍データを作成したとしても、データ復元処理においてこの圧縮刺繍データを復元する際に、あるステッチコードでない制御コードを検出したときに、その制御コードの位置から制御コードに付随する制御データの数だけ進んだ位置に次の制御コードが格納されていることになる。そして、その次の制御コードが格納されているはずの位置に、制御コードを示す特定の値がなない場合には、制御コードが削除されたステッチコードであると判定して、以下連続するX方向移動量、Y方向移動量を読み出せばよい。
【0058】
4]刺繍データ処理装置2で刺繍データを圧縮して作成した圧縮刺繍データを、FDやCD−ROM、あるいは、メモリーカード等の種々の記録媒体に記録して、これら種々の記録媒体を介して圧縮刺繍データを刺繍ミシン1の制御装置6に読み込ませるようにしてもよい。また、無線を利用したRANを介して圧縮刺繍データを刺繍ミシン1へ転送してもよい。
【0059】
5]前記実施形態では、図4の刺繍データを予め作成してから、この刺繍データを刺繍データ処理装置2で圧縮して圧縮刺繍データを作成するようにしているが、刺繍データを作成する段階で、最初から図5のデータ構造を有するデータサイズの小さい刺繍データを作成し、この作成された刺繍データを刺繍ミシン1の制御装置6へ読み込ませてから、図7のデータ復元処理と同様の処理を刺繍データに施して、刺繍ミシン1で使用できる、図4の一般的なデータ構造の刺繍データに変換するようにしてもよい。
【0060】
次に、本発明の別実施形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成については同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
前記実施形態では、刺繍データの制御コードの大部分がステッチデータであることに着目して刺繍データを効果的に圧縮する技術について説明した。それに加えて、この別実施形態では、一般的に、複数の連続するステッチにおいて、あるステッチのX方向移動量及びY方向移動量の値と、そのステッチの2針前のX方向移動量及びY方向移動量の値とはあまり差がないことを利用して、さらに刺繍データの圧縮率を高める技術について説明する。
【0061】
一般的な刺繍縫製においては、図8(a)に示すタタミ縫いや、図8(b)に示すサテン縫いが行われることが多い。まず、タタミ縫いに関しては、各ステッチのX方向移動量及びY方向移動量は、その数針前後のステッチと比較して大きく変化することはあまりない。一方、サテン縫いに関しては、各ステッチのX方向移動量及びY方向移動量は、2針前後のステッチと比較した場合には、その変化量は小さいことが多い。即ち、図9(a)の1針目<1>と3針目<3>は似かよったステッチであり、2針目<2>と4針目<4>の関係も同様である。
【0062】
そこで、3針以上の複数のステッチが連続する場合において、3針目以降のステッチのX方向移動量及びY方向移動量を、2針前のステッチのX方向移動量及びY方向移動量からの差分で表すことにより、これら移動量データのデータサイズを小さくすることができる。
【0063】
以上のような観点に基づいて、図4の刺繍データを圧縮したときの、具体的な圧縮刺繍データのデータ構造について、図4、図9を参照して説明する。ここで、図4、図9で示される、1つの枠のデータサイズは8ビットからなる1バイトである。前述のように、ステッチは通常複数針連続して行われるため、図4の刺繍データにおいて、ステッチデータとこのステッチデータに付随する1組のX,Y方向移動量データを備えた縫製指令データDkが複数組連続してステッチデータ部が構成されている。
【0064】
そして、刺繍データ処理装置2において、後述の刺繍データ処理プログラムによるデータ圧縮処理が実行されると、連続する複数針のステッチに関し、3針目以降のステッチのX,Y方向の移動量データを、X方向移動量Xn及びY方向移動量Ynの代わりに、X方向移動量Xn及びY方向移動量Ynと2針前のステッチのX方向移動量X(n−2)及びY方向移動量Y(n−2)との差分dXn(dXn=Xn−X(n−2)),dYn(dXn=Xn−X(n−2))で表す。これらの差分dXn,dYnの値が、4ビットで記述できる範囲内(具体的には、移動量を0.1mm単位で記述し、符号に1ビット、数値に3ビットを夫々使用すると、±0.7mmの範囲内)の値であれば、これら連続する複数針のステッチが、移動量差分値の小さい小ステッチであると判定する。
【0065】
このように小ステッチと判定された複数針のステッチに対して、図9の圧縮刺繍データにおいては、前記実施形態と同様に、刺繍データから2番目以降のステッチコードを削除され、さらに、刺繍データ中のステッチコードの代わりに、小ステッチを示す制御コードである小ステッチコードが先頭に書き込まれる。そして、この小ステッチコードの次には、連続ステッチ数nと、1針目、2針目のX,Y方向移動量が格納され、さらに、3針目以降のステッチについては、1バイト中に、4ビットずつX方向移動量差分データとY方向移動量差分データが格納されている。従って、3針目以降のステッチに関しては、1バイトでX,Y方向両方の移動量データを格納することができるため、刺繍データ中の大部分のステッチが小ステッチである場合には、前記実施形態の圧縮刺繍データ(図5参照)と比べて、刺繍データはさらに半分のデータサイズに圧縮される。
【0066】
次に、図4の刺繍データを図9の圧縮刺繍データに圧縮する、刺繍データ処理プログラムのデータ圧縮ルーチンについて、図10〜図12のフローチャートを参照して説明する。
図10に示すように、データ圧縮ルーチンが実行されて、データ圧縮処理が開始されると、初期設定において、ステッチの連続ステッチ数n、入力側である刺繍データの読み出し位置を指示する読み出しポインタP1、出力側である圧縮刺繍データの書き込み位置を指示する書き込みポインタP3の初期値を0にしてから(S70)、図4の刺繍データを順に読み出していく。まず、ポインタP1が指示する制御コードを読み出してP1をインクリメントし(S71)、その制御コードがステッチコードであれば(S72:Yes)、連続ステッチ数nをインクリメントする(S73)。
【0067】
まず、n=1の場合には(S74:Yes)、P1をインクリメントしつつ1針目のX方向移動量X1とY方向移動量Y1を夫々読み出して(S75、S76)、S100へ移行する。n=2であれば(S74:No、S77:Yes)であれば、P1をインクリメントしつつ2針目のX方向移動量X2とY方向移動量Y2を夫々読み出して(S78、S79)、S100へ移行する。
【0068】
さらに、n≧3以上であれば(S77:No)、図11に示すように、P1をインクリメントしつつn針目のX方向移動量XnとY方向移動量Ynを夫々読み出す(S80、S81)。そして、2針前のX方向移動量X(n−2)とXnとの差分dXnと、2針前のY方向移動量Y( n−2 )とYnとの差分dYnが±0.7mmの範囲内にあれば(S82:Yes)、差分の値が小さい小ステッチであると判定して小ステッチフラグFsdを1とする(S83)。ここで、n=3の場合には(S84:Yes)、ポインタP3の位置に、まず、連続するステッチが小ステッチであることを示す小ステッチコードを書き込む(S85)。
【0069】
さらに、後述するように最終的な小ステッチの連続ステッチ数nを求めた後に、この連続ステッチ数nを小ステッチコードの次の位置に書き込むことができるように、連続ステッチ数書き込み用のポインタPsをP3として、nの書き込み位置を一旦記憶しておく(S86)。次に、P3をインクリメントしつつ読み出し済みの1針目及び2針目のX,Y方向移動量X1,Y1,X2,Y2を順に書き込む(S87)。さらに、3針目のX,Y方向移動量差分dXn,dYnの両方をP3の位置に4ビットずつ1バイトで書き込み(S88)、S100へ移行する。
【0070】
また、連続するステッチが小ステッチであり、且つ、n>3である場合には(S84:No)、既にS85において小ステッチコードが書き込まれていることから、n針目のX,Y方向移動量差分dXn,dYnを、P3が指示する位置に4ビットずつ1バイトで書き込み(S88)、S100へ移行する。
【0071】
一方、S82において、移動量差分dXn,dYnが±0.7の範囲を外れている場合には(S82:No)、ステッチが小ステッチでなく小ステッチの連続が途切れたと判定し、S90へ移行する。
そして、図12に示すように、小ステッチフラグが0、つまり、1針目から3針目の3つの連続するステッチが小ステッチではない場合には(S90:Yes)、これら1針目から3針目までのステッチに関するデータはまだ書き込まれていないため、ステッチコードと1針目の移動量X1,Y1を圧縮刺繍データに順に書き込む(S91)。2針目、3針目についても同様に書き込む(S92、S93)。
【0072】
一方、小ステッチフラグが1、つまり、直前まで小ステッチが連続していた場合には(S90:No)、小ステッチと判定されなかったn針目に関してのみ、ステッチコードと移動量Xn,Ynだけ圧縮刺繍データに順に書き込み(S94)、n針目のステッチを連続ステッチ数にカウントしないために連続ステッチ数nを1減らす(S95)。さらに、連続ステッチ数nをS86で指定したポインタPsに書き込み(S96)、連続ステッチ数nと小ステッチフラグFsdをクリアして(S97)、S100へ移行する。
【0073】
尚、図10のS72において、S71で読み出された制御コードがステッチコードでない場合には(S72)、その制御コードと対応する制御データを書き込んでP3,P1をインクリメントする(S98)。さらに、小ステッチフラグFsdが1、つまり、直前まで小ステッチが連続していた場合には(S99)、S96へ移行し、連続ステッチ数nをポインタPsに書き込んで(S96)、連続ステッチ数nと小ステッチフラグをクリアしてから(S97)、S100へ移行する。小ステッチフラグFsdが0であれば、そのままS100へ移行する。
【0074】
そして、S100において、ポインタP1で指示するデータが終了コードでなければ(S100:No)、S71に戻って次の制御コードを読み出し、ポインタP1で指示するデータが終了コードであれば(S100:Yes)、データ圧縮処理を終了する。
【0075】
次に、図9の圧縮刺繍データを図4の元の刺繍データに復元するデータ復元プログラムのデータ復元ルーチンについて説明する。図13に示すように、このデータ復元ルーチンが実行されてデータ復元処理が開始されると、まず、初期設定において、入力側の圧縮刺繍データの読み出し位置を指示する読み出しポインタP3、出力側である刺繍データの書き込み位置を指示する書き込みポインタP1を0としてから(S110)、図9の圧縮刺繍データを順に読み出していく。そして、まず、ポインタP3が指示する制御コードを読み込み(S111)、この制御コードが小ステッチコードであれば(S112:Yes)、ポインタP3が指示する連続ステッチ数nを読み出し、P3をインクリメントする(S113)。
【0076】
さらに、カウンタiの初期値を1として(S114)、i=1〜nまでの間、以下の処理を繰り返す(S115〜S120)。即ち、まず、刺繍データのポインタP1の位置にステッチコードを書き込み、P1をインクリメントする(S115)。次に、i<3であれば(S116:Yes)、P3が指示する1針目または2針目のX方向移動量X1をP1が指示する位置に書き込み、P3,P1をインクリメントする(S117)。同様に、1針目または2針目のY方向移動量Y1についても同様に処理して(S118)、iをインクリメントする(S119)。i=nでなければ(S120:No)、S116へ戻る。
【0077】
次に、iが3以上の場合には(S116:No)、P3が指示する8ビットからなる1バイトに4ビットずつ格納されたX方向移動量差分dXiとY方向移動量差分dYiを読み出してP3をインクリメントし(S121)、これらdXi、dYiと(i−2)針目のX方向、Y方向移動量データX(i−2),Y(i−2)により、i針目のX方向移動量Xiと、Y方向移動量Yiを算出する(s122)。そして、P1が指示する位置にXi,Yiを書き込んで(S123)、iをインクリメントし(S119)、i=nとなるまで繰り返す。そして、i=nになると(S120:Yes)、一連の連続小ステッチのデータの書き込みを終了し、S125へ移行する。
【0078】
一方、S112において、P3が指示する制御コードが小ステッチコードでなければ(S112:No)、圧縮刺繍データの制御コードとその制御コードに対応する制御データを刺繍データに書き込み(S124)、S125へ移行する。そして、S125において、P3で指示するデータが終了コードでなければ(S125:No)、S111へ戻って次の制御コードを読み出し、終了コードであれば(S125:Yes)、データ復元処理を終了する。
【0079】
以上説明した刺繍データに関する技術によれば、サテン縫いあるいはタタミ縫いの何れの場合でも、2針前のステッチと比較するとX,Y方向移動量の差分は小さいことから、3針以上の複数のステッチが連続する場合において、3針目以降のステッチのX方向移動量及びY方向移動量を、2針前のステッチのX方向移動量及びY方向移動量からの差分で表すことにより、縫い方にかかわらず移動量データのデータサイズを小さくすることができる。
【0080】
さらに、この刺繍データ圧縮技術は、前記実施形態で説明した、重複したステッチコードを削除する刺繍データ圧縮技術と併用することができるため、刺繍データをさらに圧縮してデータサイズを小さくすることができる。
【0081】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成するので、例えば、刺繍縫製の際に最も多く実行される特定の制御コードを有する縫製指令データが複数組連続している場合に、少なくともその2番目以降の制御データを削除することができるので、刺繍データのデータ数をほぼ一定割合で確実に減少させることができる。
【0082】
請求項2の発明によれば、刺繍データを構成する複数組の縫製指令データの制御コードの大部分はステッチコードであり、このステッチコードを有し複数組連続する縫製指令データについて、データ圧縮手段が、少なくとも2番目以降のステッチコードを削除することができるので、刺繍データ中の大部分のステッチコードを削除でき、高い圧縮率で刺繍データを圧縮することができる。また、刺繍データが略安定した圧縮率で圧縮されるため、事前に圧縮後の圧縮刺繍データのデータサイズを想定でき、圧縮刺繍データを記憶させたり転送させたりすることが可能かを確実に判断できるようになる。さらに、刺繍データを圧縮する際に各ステッチの移動量データは削除されないため、圧縮刺繍データから元の刺繍データを完全に復元することができる。
【0083】
請求項3の発明によれば、縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、先頭の制御コードを残した状態で2番目以降の制御データを削除するので、圧縮刺繍データから元の刺繍データを復元する際に、どの制御が以下連続して行われるのかを検出することができる。
【0084】
請求項4の発明によれば、縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、データ圧縮手段は、先頭の制御コード以外の制御コードを削除するが、ここで、それら連続する縫製指令データの組数を求めて、その組数のデータを残された制御コードの次に組み込むので、その制御コードで示される制御が何回繰り返し行われるのかを検出することができる。
【0085】
請求項5の発明によれば、特定の制御コードに複数組の連続する制御データを付随させてデータサイズを減少させた刺繍データを、特定制御コード検出手段により順に読み出して特定制御コードを検出し、次に、データ変換手段により、特定制御コード検出手段で検出された特定制御コードに付随する複数組の制御データを順々に読みだしながら、特定制御コードと制御データとを対にした複数対の連続するデータに書き換えることにより、このような刺繍データを刺繍ミシンで使用可能なデータ構造に変換することができる。
【0086】
請求項6の発明によれば、制御コードとその制御コードに付随する制御データを組にして構成された縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除して圧縮刺繍データを作成するため、請求項1と略同様の効果が得られる。
【0087】
請求項7の発明によれば、圧縮処理ルーチンにおいて、制御コードとその制御コードに付随する制御データを組にして構成された縫製指令データが同種の制御コードだけ含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードが削除されて圧縮刺繍データが作成されるので、請求項1と略同様の効果が得られる。
【0088】
請求項8の発明によれば、特定の制御を複数回連続して実行するためのデータを有するデータ構造部は、その特定の制御を示す特定制御コードとこの特定制御コードに付随する複数組の連続する制御データを備えたので、連続して実行される複数回の特定の制御に対して付される特定制御コードが1つだけであり、刺繍データのデータ数が少ないデータ構造を実現できる。
【0089】
請求項9の発明によれば、刺繍データ処理装置のコンピュータにより特定制御コードが読み出された場合に、特定制御コードの次に連続する、複数組の制御データの組数を示す組数データも読み出されるので、その特定の制御が繰り返される回数を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る刺繍ミシン及び刺繍データ処理装置の斜視図である。
【図2】刺繍ミシンの制御系のブロック図である。
【図3】刺繍データ処理装置の制御系のブロック図である。
【図4】刺繍データのデータ構造を示す図である。
【図5】圧縮刺繍データのデータ構造を示す図である。
【図6】データ圧縮処理のフローチャートである。
【図7】データ復元処理のフローチャートである。
【図8】刺繍縫製における縫目を示す説明図であり、(a)はタタミ縫い、(b)はサテン縫いを示す。
【図9】別実施形態の圧縮刺繍データのデータ構造を示す図である。
【図10】別実施形態のデータ圧縮処理のフローチャート(1/3)である。
【図11】別実施形態のデータ圧縮処理のフローチャート(2/3)である。
【図12】別実施形態のデータ圧縮処理のフローチャート(3/3)である。
【図13】別実施形態のデータ復元処理のフローチャートである。
【符号の説明】
1 刺繍ミシン
2 刺繍データ処理装置
6 制御装置
20 CPU
21 ROM
22 RAM
40 制御装置
41 CPU
42 ROM
43 RAM
Claims (9)
- 刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データを処理して圧縮する刺繍データ処理装置において、
制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除した圧縮刺繍データを作成するデータ圧縮手段を有することを特徴とする刺繍データ処理装置。 - 前記複数種の制御コードには、X,Y方向への加工布の移動を指示するステッチコードが含まれ、このステッチコードに付随する制御データが縫針に対して加工布を相対移動させる移動量データであることを特徴とする請求項1に記載の刺繍データ処理装置。
- 前記データ圧縮手段は、複数組の縫製指令データにおける先頭の制御コードを残した状態の圧縮刺繍データを作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の刺繍データ処理装置。
- 前記データ圧縮手段は、前記複数組連続する縫製指令データの組数を求め、この組数のデータを前記先頭の制御コードの次に組み込んだ圧縮刺繍データを作成することを特徴とする請求項3に記載の刺繍データ処理装置。
- 刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードに制御データを対応付けてなる刺繍データのうちの、特定の制御コードとこの特定制御コードに付随させた複数組の連続する制御データとを処理する刺繍データ処理装置において、
前記刺繍データを順々に読みだして特定制御コードを検出する特定制御コード検出手段と、
前記特定制御コード検出手段により特定制御コードが検出された際に、その特定制御コードに付随する複数組の制御データを順々に読みだしながら、特定制御コードと制御データとを対にした複数対の連続するデータに書き換えるデータ変換手段と、
を備えたことを特徴とする刺繍データ処理装置。 - 刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データを処理して圧縮する刺繍データ処理方法において、
制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除した圧縮刺繍データを作成することを特徴とする刺繍データ処理方法。 - 刺繍データ処理装置のコンピュータに実行させる刺繍データ処理プログラムであって、刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードとこれら制御コードに夫々付随する制御データとを有する刺繍データを処理して圧縮する刺繍データ処理プログラムにおいて、
制御コードとそれに付随する制御データとを組にした縫製指令データが同種の制御コードだけを含む状態で複数組連続する場合に、その連続する複数組の縫製指令データから少なくとも2番目以降の制御コードを削除した圧縮刺繍データを作成する圧縮処理ルーチンを備えたことを特徴とする刺繍データ処理プログラム。 - 刺繍縫製に関連する制御の種類を示す複数種の制御コードに制御データを対応付けた刺繍データであって刺繍データ処理装置のコンピュータで読み出し可能に記録した刺繍データのデータ構造において、
特定の制御コードと、この特定制御コードに付随する複数組の連続する制御データとを備えたデータ構造部を設けたことを特徴とする刺繍データのデータ構造。 - 前記データ構造部は、特定制御コードの次に、複数組の連続する制御データの組数を示す組数データを備えたことを特徴とする請求項8に記載の刺繍データのデータ構造。
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JP2003094428A JP2004298369A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 刺繍データ処理装置、刺繍データ処理方法、刺繍データ処理プログラム及び刺繍データのデータ構造 |
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JP2015198279A (ja) * | 2014-03-31 | 2015-11-09 | ヤマハ株式会社 | データ復元装置、およびデータ生成方法 |
JP2016002358A (ja) * | 2014-06-18 | 2016-01-12 | 蛇の目ミシン工業株式会社 | ジグザグミシンおよびジグザグミシンの自動一時停止制御方法 |
-
2003
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