JP2004298019A - 液状添加剤およびそれを用いた乳酸菌飲料または酸性乳飲料 - Google Patents
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Abstract
【課題】未溶解物の混入を低減させ、かつ乳蛋白安定性能を向上させるための液状添加剤およびそれを用いた乳酸菌飲料または酸性乳飲料を提供する。
【解決手段】カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を0.5〜10重量%含有し、かつ200メッシュのスクリーンを用いて自然ろ過した際、スクリーン上に残存した残渣物が100mg/L以下であることを特徴とする液状添加剤。特に、グルコース残基当たりのカルボキシメチル置換度が0.70〜1.10であり、かつ溶液粘度が100〜5000mPa・sである液状添加剤を深層ろ過タイプのフィルターにてろ過したものが好ましい。
【解決手段】カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を0.5〜10重量%含有し、かつ200メッシュのスクリーンを用いて自然ろ過した際、スクリーン上に残存した残渣物が100mg/L以下であることを特徴とする液状添加剤。特に、グルコース残基当たりのカルボキシメチル置換度が0.70〜1.10であり、かつ溶液粘度が100〜5000mPa・sである液状添加剤を深層ろ過タイプのフィルターにてろ過したものが好ましい。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた安定性を付与し、かつ増粘安定化剤からの異物混入を低減させた未溶解物が少ない液状添加剤およびそれを用いた乳酸菌飲料または酸性乳飲料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
乳酸菌飲料または酸性乳飲料には、カゼインを主体とする乳蛋白が含まれているが、これは酸性領域において凝集し、分離沈殿を生じる。乳酸菌飲料または酸性乳飲料中で前記凝集や分離が生じれば、乳酸菌飲料または酸性乳飲料の外観を損なうことにより、商品価値が低下しクレーム発生の要因になる。カゼインは単一タンパク質ではなく、分子量75000〜375000(超遠心分離法にて測定)の分子の混合物でありかつ両性電解質であるため、中性pH領域においてはこれ以上の集合が起こらず乳蛋白の沈殿は生じない。しかし、乳蛋白のpHがカゼインの等電点である4.6に近づけば、電気的斥力の低下により大粒子化し沈殿する。上記カゼインの凝集分離を防止する方法としては、ペクチン、アルギン酸ソーダ、カラギーナン、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(以下、CMCと略)などの安定剤を添加する方法があり、実製造ではほとんどのメーカーで使用されている。しかし、上記安定剤にはその原料由来若しくはその製造時に発生した黒色異物、換言すれば未溶解物が混入しており、その量はペクチンに代表される天然糊剤の方がCMC等の合成糊剤と比較して多い傾向にある。一方、飲料容器としては、スチール缶、アルミ缶、ガラス瓶、紙パックに加え、最近では携帯適性や再飲簡便性よりペットボトルが多く使用される様になってきた。このペットボトルは無色透明であるため、未溶解物が飲料中に含まれると、商品陳列棚等に保存中に沈降し、底に蓄積すると黒色であるため、目につき易くクレーム発生の要因になることから、飲料メーカーでは未溶解物等の異物対策を強化すると共に、原料に対する改善要望が強くなっている。しかし、安定剤の品質に関する検討はかなりなされてはいるものの(例えば、特許文献1,2,3参照)、安定剤に含まれる未溶解物を低減するものとしては、CMC製造におけるマーセル化工程にてメタノールと過酸化水素を添加し、ゲルの少ないCMCを製造する方法(例えば、特許文献4参照)、CMC製造時に粉末状CMCに対し低級アルコールを10〜20重量部添加し湿潤させた後、水を添加して乾燥させて、篩い分けを行う方法(例えば、特許文献5参照)が知られている。しかし、これらの両方法では、ゲル状物若しくは繊維状物の低減は確認されるものの、除去手法的に限界がありゼロではなく、飲料メーカーが要望するレベルには達していないのが現状であった。
【0003】
【特許文献1】
特許第2697984号公報の特許請求の範囲
【特許文献2】
特許第3135853号公報の特許請求の範囲
【特許文献3】
特開平11−346648号公報の特許請求の範囲
【特許文献4】
特開昭58−89601号公報の特許請求の範囲
【特許文献5】
特開2002−47349号公報の特許請求の範囲
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するために創案されたものであり、高い安定性能を付与し、かつ未溶解物の少ない液状添加剤およびそれを用いた乳酸菌飲料または酸性乳飲料を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、簡便な製造法で高い安定性能を有し、かつ未溶解物の少ない乳酸菌飲料または酸性乳飲料について鋭意検討を重ねた結果、安定化剤として、深層ろ過タイプのフィルターエレメントを用いてろ過処理を施したカルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を主成分とする液状添加剤を配合することで、上記課題を解決できることを見い出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、CMC粉体から選択的に黒色異物等の未溶解物を除去することは非常に困難であるが、CMCを水に溶解させた後にろ過することは、未溶解物の簡便な除去法として有効である。また、未溶解物(カルボキシメチル置換度が低く、水に完全溶解しないものも含む)を除去することで、カゼイン粒子の表面に完全溶解したCMCがまんべんなく吸着し、皮膜を形成することで、乳蛋白の安定性を向上することができる。
【0007】
【発明実施の形態】
本発明の未溶解物が少なく安定性能に優れた液状添加剤は、市販のCMCを0.5〜10重量%含有した水溶液であり、かつ200メッシュのスクリーンを用いてその溶液を自然ろ過した際にスクリーン上に残存したもの(残渣物)の重量が100mg/L以下でなければならない。CMC配合量が0.5重量%未満の場合は乳蛋白安定性能が劣ること、一方、配合量が10重量%を超えると、飲料ののど越しが悪化するために好ましくない。また、200メッシュで自然ろ過した際に発生したスクリーン上の残渣物が100mg/Lを超えると、乳酸菌飲料または酸性乳飲料に持ちこまれる未溶解物が多くなり、クレーム発生の要因になること、また、カゼインが完全溶解したCMCだけでなく未溶解物(カルボキシメチル置換度が低く完全溶解しないCMCを含む)とも吸着し安定性能の低下を引き起こすために好ましくない。
【0008】
なお、使用するCMCとしては、グルコース残基当たりのカルボキシメチル置換度(以下、DSと略)が0.7〜1.1で、かつ溶液の粘度が100〜5000mPa・sの範囲にあることが好ましい。DSが0.7未満若しくはDSが1.1を超えた場合は、乳蛋白の分散安定性能が低下するために好ましくない。また、溶液の粘度が100mPa・s未満では乳蛋白安定性を付与するためには多くの添加量が必要になること、溶液の粘度が5000mPa・sを越えた場合は、乳酸菌飲料または酸性乳飲料の粘性が高くなりすぎて、のど越しが悪化するために好ましくないからである。より好ましくは、DSが0.80〜1.00、かつ溶液の粘度が200〜3000mPa・sの範囲である。本発明における粘度とは、B型回転粘度計(4000mPa・s未満の場合;ローターNO.3,回転数30rpm、4000mPa・s以上の場合;ローターNO.4,回転数30rpm)により、25℃にて測定した値である。
【0009】
また、未溶解物を除去する方法としては、CMC水溶液のろ過が簡便であり望ましい。ろ過の方法であるが、一般的な方法である定速ろ過若しくは定圧ろ過にて行うことが出来、使用するフィルターとしては粒子径70μmの標準ダストに対し95%以上の粒子捕捉性能を有する深層ろ過タイプのフィルターエレメントであれば特に問題なく使用可能である。深層ろ過タイプのフィルターエレメントを例示するならば、セラミックフィルター、ポーラスカーボンフィルター、デプスカートリッジフィルター、焼結金属フィルター等挙げられるが、耐久性および再生処理の簡便さを考慮すると焼結金属フィルターが好ましい。なお、焼結金属フィルターエレメントとしては、ポラールHPC−03、HPC−05、HPC−07、HPC−10、HPC−15、HPC−20、HPC−30、HPC−40(商品名、ヒューマンテクノ社製)等が挙げられ、処理量とろ過液の性状により任意に選定することが出来る。
【0010】
なお、本発明の未溶解物が少なく安定性能に優れた液状添加剤としては、固形分としてCMCを50重量%以上配合するものであり、その他の成分としては、従来使用されているペクチン、アルギン酸ソーダ、アルギン酸プロピレンエステル等の安定化剤が挙げられ、これらは単独もしくは併用して使用することが出来る。なお、必要に応じて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸をpH調整剤として添加し、液状添加剤のpHを3.0〜6.0に調整することもできる。また、腐敗防止の目的にショ糖エステル(リョートーシュガーエステルP1670)やエタノール等を腐敗防止剤として添加すること、およびまたは加熱殺菌に代表される各種殺菌工程を経たものであっても特に問題はない。
【0011】
本発明では、目的とする乳酸菌飲料または酸性乳飲料の性能に応じて、未溶解物が少なく安定性能の優れた液状添加剤を1.0〜400重量%(対溶液)添加し、製造するのが好ましい。液状添加剤の添加量が1.0重量%未満であれば、乳蛋白安定性の向上が見られない。また、添加量が400重量%を超えると、乳酸菌飲料または酸性乳飲料の粘性が上昇し、のど越しが悪化する若しくはさっぱりした食感が得られず、好ましくない。より好ましくは、2.0〜200重量%である。
【0012】
本発明における乳酸菌飲料または酸性乳飲料は、目的に応じた物性を付与するために、未溶解物の少ない安定性の優れた液状添加剤の他に、必要に応じて、糖分、酸性化剤、果汁、色素、pH調整剤等を本発明の効果を損なわない範囲で任意に配合することが出来る。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、配合量を示す「部」はすべて「重量部」を示した。
【0014】
[調製法1]
市販CMC(サンローズFT−1、DS 0.88、日本製紙ケミカル(株)製)80部を水920部で溶解し、得られた水溶液を焼結金属フィルターエレメント(ポラールHPC−30、ヒューマンテクノ(株)製)にてろ過し、液状添加剤−1を得た。
【0015】
[調製法2]
市販CMC(サンローズF04HC、DS 0.90、日本製紙ケミカル(株)製)40部を水960部で溶解し、得られた水溶液を焼結金属フィルターエレメント(ポラールHPC−40、ヒューマンテクノ(株)製)にてろ過し、液状添加剤−2を得た。
【0016】
[調製法3]
市販CMC(サンローズFT−1、DS 0.88、日本製紙ケミカル(株)製)80部を水920部で溶解し、液状添加剤−3を得た。
【0017】
[調製法4]
市販CMC(サンローズFT−1、DS 0.88、日本製紙ケミカル(株)製)110部を水890部で溶解し、得られた水溶液を焼結金属フィルターエレメント(ポラールHPC−40、ヒューマンテクノ(株)製)にてろ過し、液状添加剤−4を得た。
【0018】
[調製法5]
市販CMC(サンローズF300HC、DS 0.87、日本製紙ケミカル(株)製)3部を水997部で溶解し、得られた水溶液を焼結金属フィルターエレメント(ポラールHPC−40、ヒューマンテクノ(株)製)にてろ過し、液状添加剤−5を得た。
【0019】
<DSの測定方法>
CMC(無水物)約1.0gを精秤し、白金皿に入れて550〜600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムを0.1N−硫酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、その滴定量(Aml)を次式で計算し、DSを求めた。
DS={162×A×f}/{10000−80×A×f}
(式中のfは0.1N−硫酸の力価)
<残渣物の測定方法>
47mmガラス製フィルターホルダーに200メッシュのスクリーンをセットし、液状添加剤1Lを注ぎ自然ろ過を行った。ろ過終了後、イオン交換水1Lで使用したスクリーンを洗浄し、再度自然ろ過を行った後、スクリーンを回収した。回収したスクリーンを乾燥機(105℃、3時間)にて乾燥し、ろ過前後におけるスクリーン重量増加分を残渣物重量とした。
【0020】
[実施例1]
食塩2.0部、脱脂粉乳17.0部を水181部に溶解させ、脱脂粉乳分散液を作製した。一方、調製法1にて調製した液状添加剤−1 10部に水240部添加し、5分間攪拌後、予め作製していた脱脂粉乳分散液200部を添加し、更に30分間攪拌した。その後、20℃に温調し攪拌しつつ、3.0%クエン酸水溶液25部を2分間かけて添加し、更に5分間攪拌した。攪拌終了後、80℃に温調した恒温水槽に20分間浸漬し加熱処理を行った後、流水にて十分冷却し、酸性乳飲料を調製した。
【0021】
[実施例2、比較例1〜4]
表1における配合で、実施例1と同様にして酸性乳飲料を調製した。試験結果を表1に示す。
【0022】
<乳蛋白安定性試験>
調製した酸性乳飲料を50ml採取し、目盛り付き先細遠心管に入れ、遠心分離機(2000回転、10分間)にかけた際に生じた沈殿量を測定した。なお、沈殿量が少ない程、安定性能は高いといえる。
【0023】
<貯蔵安定性試験>
調製した酸性乳飲料を150ml採取し、200ml容トールビーカーに入れ、5±1℃にて30日間静置保管した。保管後、トールビーカーの底部を目視にて観察し、沈殿物の発生状態を調査した。なお、評価は以下の通り。
評価 … ○:沈殿物なし、×:沈殿物あり
【0024】
<食感試験>
10人のパネラーを対象に調製した酸性乳飲料を試飲してもらい、官能評価を行った。評価の尺度は下記に示した○、△、×であり、10名のパネラー中で○および△を選定した人数の多少で判定した(表1参照)。なお、ここでの数値が高いほど良好な結果を示す。
評価 … ○:飲み易い 、 △:普通 、 ×:飲み難い
【0025】
表1
【0026】
【発明の効果】
本発明の液状添加剤を用いることにより、未溶解物の混入を低減するだけでなく、乳蛋白に対して高い分散安定性能を付与する乳酸菌飲料または酸性乳飲料を提供することが出来る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた安定性を付与し、かつ増粘安定化剤からの異物混入を低減させた未溶解物が少ない液状添加剤およびそれを用いた乳酸菌飲料または酸性乳飲料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
乳酸菌飲料または酸性乳飲料には、カゼインを主体とする乳蛋白が含まれているが、これは酸性領域において凝集し、分離沈殿を生じる。乳酸菌飲料または酸性乳飲料中で前記凝集や分離が生じれば、乳酸菌飲料または酸性乳飲料の外観を損なうことにより、商品価値が低下しクレーム発生の要因になる。カゼインは単一タンパク質ではなく、分子量75000〜375000(超遠心分離法にて測定)の分子の混合物でありかつ両性電解質であるため、中性pH領域においてはこれ以上の集合が起こらず乳蛋白の沈殿は生じない。しかし、乳蛋白のpHがカゼインの等電点である4.6に近づけば、電気的斥力の低下により大粒子化し沈殿する。上記カゼインの凝集分離を防止する方法としては、ペクチン、アルギン酸ソーダ、カラギーナン、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(以下、CMCと略)などの安定剤を添加する方法があり、実製造ではほとんどのメーカーで使用されている。しかし、上記安定剤にはその原料由来若しくはその製造時に発生した黒色異物、換言すれば未溶解物が混入しており、その量はペクチンに代表される天然糊剤の方がCMC等の合成糊剤と比較して多い傾向にある。一方、飲料容器としては、スチール缶、アルミ缶、ガラス瓶、紙パックに加え、最近では携帯適性や再飲簡便性よりペットボトルが多く使用される様になってきた。このペットボトルは無色透明であるため、未溶解物が飲料中に含まれると、商品陳列棚等に保存中に沈降し、底に蓄積すると黒色であるため、目につき易くクレーム発生の要因になることから、飲料メーカーでは未溶解物等の異物対策を強化すると共に、原料に対する改善要望が強くなっている。しかし、安定剤の品質に関する検討はかなりなされてはいるものの(例えば、特許文献1,2,3参照)、安定剤に含まれる未溶解物を低減するものとしては、CMC製造におけるマーセル化工程にてメタノールと過酸化水素を添加し、ゲルの少ないCMCを製造する方法(例えば、特許文献4参照)、CMC製造時に粉末状CMCに対し低級アルコールを10〜20重量部添加し湿潤させた後、水を添加して乾燥させて、篩い分けを行う方法(例えば、特許文献5参照)が知られている。しかし、これらの両方法では、ゲル状物若しくは繊維状物の低減は確認されるものの、除去手法的に限界がありゼロではなく、飲料メーカーが要望するレベルには達していないのが現状であった。
【0003】
【特許文献1】
特許第2697984号公報の特許請求の範囲
【特許文献2】
特許第3135853号公報の特許請求の範囲
【特許文献3】
特開平11−346648号公報の特許請求の範囲
【特許文献4】
特開昭58−89601号公報の特許請求の範囲
【特許文献5】
特開2002−47349号公報の特許請求の範囲
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するために創案されたものであり、高い安定性能を付与し、かつ未溶解物の少ない液状添加剤およびそれを用いた乳酸菌飲料または酸性乳飲料を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、簡便な製造法で高い安定性能を有し、かつ未溶解物の少ない乳酸菌飲料または酸性乳飲料について鋭意検討を重ねた結果、安定化剤として、深層ろ過タイプのフィルターエレメントを用いてろ過処理を施したカルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を主成分とする液状添加剤を配合することで、上記課題を解決できることを見い出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、CMC粉体から選択的に黒色異物等の未溶解物を除去することは非常に困難であるが、CMCを水に溶解させた後にろ過することは、未溶解物の簡便な除去法として有効である。また、未溶解物(カルボキシメチル置換度が低く、水に完全溶解しないものも含む)を除去することで、カゼイン粒子の表面に完全溶解したCMCがまんべんなく吸着し、皮膜を形成することで、乳蛋白の安定性を向上することができる。
【0007】
【発明実施の形態】
本発明の未溶解物が少なく安定性能に優れた液状添加剤は、市販のCMCを0.5〜10重量%含有した水溶液であり、かつ200メッシュのスクリーンを用いてその溶液を自然ろ過した際にスクリーン上に残存したもの(残渣物)の重量が100mg/L以下でなければならない。CMC配合量が0.5重量%未満の場合は乳蛋白安定性能が劣ること、一方、配合量が10重量%を超えると、飲料ののど越しが悪化するために好ましくない。また、200メッシュで自然ろ過した際に発生したスクリーン上の残渣物が100mg/Lを超えると、乳酸菌飲料または酸性乳飲料に持ちこまれる未溶解物が多くなり、クレーム発生の要因になること、また、カゼインが完全溶解したCMCだけでなく未溶解物(カルボキシメチル置換度が低く完全溶解しないCMCを含む)とも吸着し安定性能の低下を引き起こすために好ましくない。
【0008】
なお、使用するCMCとしては、グルコース残基当たりのカルボキシメチル置換度(以下、DSと略)が0.7〜1.1で、かつ溶液の粘度が100〜5000mPa・sの範囲にあることが好ましい。DSが0.7未満若しくはDSが1.1を超えた場合は、乳蛋白の分散安定性能が低下するために好ましくない。また、溶液の粘度が100mPa・s未満では乳蛋白安定性を付与するためには多くの添加量が必要になること、溶液の粘度が5000mPa・sを越えた場合は、乳酸菌飲料または酸性乳飲料の粘性が高くなりすぎて、のど越しが悪化するために好ましくないからである。より好ましくは、DSが0.80〜1.00、かつ溶液の粘度が200〜3000mPa・sの範囲である。本発明における粘度とは、B型回転粘度計(4000mPa・s未満の場合;ローターNO.3,回転数30rpm、4000mPa・s以上の場合;ローターNO.4,回転数30rpm)により、25℃にて測定した値である。
【0009】
また、未溶解物を除去する方法としては、CMC水溶液のろ過が簡便であり望ましい。ろ過の方法であるが、一般的な方法である定速ろ過若しくは定圧ろ過にて行うことが出来、使用するフィルターとしては粒子径70μmの標準ダストに対し95%以上の粒子捕捉性能を有する深層ろ過タイプのフィルターエレメントであれば特に問題なく使用可能である。深層ろ過タイプのフィルターエレメントを例示するならば、セラミックフィルター、ポーラスカーボンフィルター、デプスカートリッジフィルター、焼結金属フィルター等挙げられるが、耐久性および再生処理の簡便さを考慮すると焼結金属フィルターが好ましい。なお、焼結金属フィルターエレメントとしては、ポラールHPC−03、HPC−05、HPC−07、HPC−10、HPC−15、HPC−20、HPC−30、HPC−40(商品名、ヒューマンテクノ社製)等が挙げられ、処理量とろ過液の性状により任意に選定することが出来る。
【0010】
なお、本発明の未溶解物が少なく安定性能に優れた液状添加剤としては、固形分としてCMCを50重量%以上配合するものであり、その他の成分としては、従来使用されているペクチン、アルギン酸ソーダ、アルギン酸プロピレンエステル等の安定化剤が挙げられ、これらは単独もしくは併用して使用することが出来る。なお、必要に応じて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸をpH調整剤として添加し、液状添加剤のpHを3.0〜6.0に調整することもできる。また、腐敗防止の目的にショ糖エステル(リョートーシュガーエステルP1670)やエタノール等を腐敗防止剤として添加すること、およびまたは加熱殺菌に代表される各種殺菌工程を経たものであっても特に問題はない。
【0011】
本発明では、目的とする乳酸菌飲料または酸性乳飲料の性能に応じて、未溶解物が少なく安定性能の優れた液状添加剤を1.0〜400重量%(対溶液)添加し、製造するのが好ましい。液状添加剤の添加量が1.0重量%未満であれば、乳蛋白安定性の向上が見られない。また、添加量が400重量%を超えると、乳酸菌飲料または酸性乳飲料の粘性が上昇し、のど越しが悪化する若しくはさっぱりした食感が得られず、好ましくない。より好ましくは、2.0〜200重量%である。
【0012】
本発明における乳酸菌飲料または酸性乳飲料は、目的に応じた物性を付与するために、未溶解物の少ない安定性の優れた液状添加剤の他に、必要に応じて、糖分、酸性化剤、果汁、色素、pH調整剤等を本発明の効果を損なわない範囲で任意に配合することが出来る。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、配合量を示す「部」はすべて「重量部」を示した。
【0014】
[調製法1]
市販CMC(サンローズFT−1、DS 0.88、日本製紙ケミカル(株)製)80部を水920部で溶解し、得られた水溶液を焼結金属フィルターエレメント(ポラールHPC−30、ヒューマンテクノ(株)製)にてろ過し、液状添加剤−1を得た。
【0015】
[調製法2]
市販CMC(サンローズF04HC、DS 0.90、日本製紙ケミカル(株)製)40部を水960部で溶解し、得られた水溶液を焼結金属フィルターエレメント(ポラールHPC−40、ヒューマンテクノ(株)製)にてろ過し、液状添加剤−2を得た。
【0016】
[調製法3]
市販CMC(サンローズFT−1、DS 0.88、日本製紙ケミカル(株)製)80部を水920部で溶解し、液状添加剤−3を得た。
【0017】
[調製法4]
市販CMC(サンローズFT−1、DS 0.88、日本製紙ケミカル(株)製)110部を水890部で溶解し、得られた水溶液を焼結金属フィルターエレメント(ポラールHPC−40、ヒューマンテクノ(株)製)にてろ過し、液状添加剤−4を得た。
【0018】
[調製法5]
市販CMC(サンローズF300HC、DS 0.87、日本製紙ケミカル(株)製)3部を水997部で溶解し、得られた水溶液を焼結金属フィルターエレメント(ポラールHPC−40、ヒューマンテクノ(株)製)にてろ過し、液状添加剤−5を得た。
【0019】
<DSの測定方法>
CMC(無水物)約1.0gを精秤し、白金皿に入れて550〜600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムを0.1N−硫酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、その滴定量(Aml)を次式で計算し、DSを求めた。
DS={162×A×f}/{10000−80×A×f}
(式中のfは0.1N−硫酸の力価)
<残渣物の測定方法>
47mmガラス製フィルターホルダーに200メッシュのスクリーンをセットし、液状添加剤1Lを注ぎ自然ろ過を行った。ろ過終了後、イオン交換水1Lで使用したスクリーンを洗浄し、再度自然ろ過を行った後、スクリーンを回収した。回収したスクリーンを乾燥機(105℃、3時間)にて乾燥し、ろ過前後におけるスクリーン重量増加分を残渣物重量とした。
【0020】
[実施例1]
食塩2.0部、脱脂粉乳17.0部を水181部に溶解させ、脱脂粉乳分散液を作製した。一方、調製法1にて調製した液状添加剤−1 10部に水240部添加し、5分間攪拌後、予め作製していた脱脂粉乳分散液200部を添加し、更に30分間攪拌した。その後、20℃に温調し攪拌しつつ、3.0%クエン酸水溶液25部を2分間かけて添加し、更に5分間攪拌した。攪拌終了後、80℃に温調した恒温水槽に20分間浸漬し加熱処理を行った後、流水にて十分冷却し、酸性乳飲料を調製した。
【0021】
[実施例2、比較例1〜4]
表1における配合で、実施例1と同様にして酸性乳飲料を調製した。試験結果を表1に示す。
【0022】
<乳蛋白安定性試験>
調製した酸性乳飲料を50ml採取し、目盛り付き先細遠心管に入れ、遠心分離機(2000回転、10分間)にかけた際に生じた沈殿量を測定した。なお、沈殿量が少ない程、安定性能は高いといえる。
【0023】
<貯蔵安定性試験>
調製した酸性乳飲料を150ml採取し、200ml容トールビーカーに入れ、5±1℃にて30日間静置保管した。保管後、トールビーカーの底部を目視にて観察し、沈殿物の発生状態を調査した。なお、評価は以下の通り。
評価 … ○:沈殿物なし、×:沈殿物あり
【0024】
<食感試験>
10人のパネラーを対象に調製した酸性乳飲料を試飲してもらい、官能評価を行った。評価の尺度は下記に示した○、△、×であり、10名のパネラー中で○および△を選定した人数の多少で判定した(表1参照)。なお、ここでの数値が高いほど良好な結果を示す。
評価 … ○:飲み易い 、 △:普通 、 ×:飲み難い
【0025】
表1
【0026】
【発明の効果】
本発明の液状添加剤を用いることにより、未溶解物の混入を低減するだけでなく、乳蛋白に対して高い分散安定性能を付与する乳酸菌飲料または酸性乳飲料を提供することが出来る。
Claims (4)
- カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を0.5〜10重量%含有し、かつ200メッシュのスクリーンを用いて自然ろ過した際、スクリーン上に残存した残渣物が100mg/L以下であることを特徴とする未溶解物が少なく安定性能に優れた液状添加剤。
- 前記のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩が、グルコース残基当たりのカルボキシメチル置換度が0.7〜1.1であり、かつ溶液粘度が100〜5000mPa・sである請求項1記載の未溶解物が少なく安定性能に優れた液状添加剤。
- 前記のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を水に溶解後、ろ過処理を行うことを特徴とする請求項1または2記載の未溶解物が少なく安定性能に優れた液状添加剤。
- 請求項1〜3記載の未溶解物が少なく安定性能に優れた液状添加剤を1.0〜400重量%(対溶液)配合することを特徴とする乳酸菌飲料または酸性乳飲料。
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---|---|---|---|
JP2003092353A JP2004298019A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 液状添加剤およびそれを用いた乳酸菌飲料または酸性乳飲料 |
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JP2003092353A JP2004298019A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 液状添加剤およびそれを用いた乳酸菌飲料または酸性乳飲料 |
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JP (1) | JP2004298019A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014507139A (ja) * | 2011-02-08 | 2014-03-27 | ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー | 動物タンパク質とカルボキシ−c1〜c3−アルキルセルロースとを含む液体 |
-
2003
- 2003-03-28 JP JP2003092353A patent/JP2004298019A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014507139A (ja) * | 2011-02-08 | 2014-03-27 | ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー | 動物タンパク質とカルボキシ−c1〜c3−アルキルセルロースとを含む液体 |
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