JP2004296434A - 蛍光発光デバイス、蛍光ランプおよびガラス組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】蛍光発光デバイス製造工程における蛍光膜の剥離、変色およびそれに伴う蛍光発光デバイスの初期全光束の低下を抑制するとともに色シフトを改善することができる蛍光発光デバイスを提供する。
【解決手段】xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXOで表され、Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、x+y+a+b+c+m=100mol%であり、5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%および5≦m≦60mol%である蛍光体結着用ガラス組成物を有する蛍光発光デバイスとする。
【選択図】 図1
【解決手段】xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXOで表され、Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、x+y+a+b+c+m=100mol%であり、5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%および5≦m≦60mol%である蛍光体結着用ガラス組成物を有する蛍光発光デバイスとする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、蛍光発光デバイス、蛍光ランプおよびガラス組成物に関するものである。
蛍光ランプは、蛍光体膜を形成したガラスバルブ内での低圧水銀蒸気放電によって生じた紫外線を蛍光体膜において可視光や放射光に変換することにより光出力を放射するデバイスである。蛍光体膜の形成には、一般に蛍光体、蛍光体結着用ガラス組成物、及び増粘剤である高分子樹脂を、酢酸ブチルや水などの分散媒に分散させた蛍光体スラリーが用いられる。このスラリーをガラスバルブ内面に塗布・乾燥してスラリー成分中の分散媒を蒸発させ、さらにベーキングにより増粘剤を分解・燃焼させて除去することにより、蛍光体と蛍光体結着用ガラス組成物とから構成した蛍光膜を形成する。
蛍光体結着用ガラス組成物は、蛍光体の粒子どうしだけでなく、蛍光体の粒子とガラスバルブをも結着させる役割を有し、運搬による振動など実用上不可避な物理的衝撃による膜剥がれを防止している。一般に酢酸ブチルなどの有機溶剤を分散媒として用いる蛍光体スラリーでは、BaO・CaO・B2O3を基本組成とする硼酸塩が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、水を分散媒として用いた蛍光体スラリーでは、硼酸塩が溶解するため、他の組成の蛍光体結着用ガラス組成物が用いられる(例えば、特許文献2参照)。
蛍光膜に用いられる蛍光体は、三波長域発光形蛍光ランプにおいては、青色、緑色、赤色の3種類の蛍光体が用いられており、赤色蛍光体としては、ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y2O3:Eu)が一般に用いられている。しかし、この蛍光体を白色発光蛍光ランプに用いた場合、目立ち指数が最適ではない。(例えば、特許文献3参照)。
目立ち指数Mとは、光源の演色性に基づく明るさ感の指標であり、以下の式によって導かれる。
M=[G(S,1000(lx))/G(D65,1000(lx))]1.6×100
なお、上記式において、G(S,1000(lx))は試料光源Sおよび照度1000(lx)のもとでの4色試験色の色域面積を示し、G(D65,1000(lx))は基準光源D65および基準照度1000(lx)のもとでの4色試験色の色域面積を示す。
なお、上記式において、G(S,1000(lx))は試料光源Sおよび照度1000(lx)のもとでの4色試験色の色域面積を示し、G(D65,1000(lx))は基準光源D65および基準照度1000(lx)のもとでの4色試験色の色域面積を示す。
照明環境の明るさ感は、目立ち指数と光源の光束との積で表される。すなわち、目立ち指数を改善することによって、光源の光束が同じであっても照明環境を明るく知覚させる効果が得られる。いっぽう、目立ち指数Mが大きすぎても、視対象物が不自然な色に見えてしまう。すなわち、照明環境の明るさ感を高め、かつ色が不自然ではない目立ち指数の最適な範囲があり、その範囲は照明光の相関色温度によって異なる。
一般に用いられている相関色温度7200K、DUV=−3の3波長白色蛍光ランプの目立ち指数Mは、100程度である。この相関色温度での目立ち指数は111.9以上139.9以下が最適であり、また、これ以外の相関色温度を有する市販の白色蛍光ランプにおいても、目立ち指数は最適な範囲を下回っている。
目立ち指数を改善する一つの方法として、赤色蛍光体を最大発光ピークが611nmのユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y2O3:Eu)から、625nm以上に最大発光ピークを有する深赤色蛍光体に代えることが有効である。その中でも、ユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体(Y2O2S:Eu)は、626nmに最大発光ピークを有し、かつ、たとえばマンガン付活ゲルマン酸蛍光体など他の実用化されている深赤色蛍光体と比べて発光効率が高いことから、これを赤色蛍光体として用いることで、最適な目立ち指数を有する蛍光ランプを提供することができる。
特公昭37−515号公報
特開平08−190896号公報
特許第3040719号明細書
蛍光ランプの製造工程においては、蛍光ランプに一般に用いられているソーダガラスの軟化点以上の温度(700℃以上)が必要な封止、接合、および管曲げなどの熱工程が含まれる。このような熱工程では、蛍光体の酸化によって蛍光体自身の発光特性が低下するため、ガラス管内に窒素などの不活性ガスを封入することで蛍光体の酸化による特性低下を防いでいる。
しかしながら、ユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体(Y2O2S:Eu)のような酸硫化物蛍光体とBaO・CaO・B2O3を組成とする硼酸塩系の蛍光体結着用ガラス組成物とを含んだ蛍光体層は、700℃以上の不活性ガス雰囲気中において着色することに本発明者らは気づいた。さらに、この着色は、本来無色である硼酸塩系の蛍光体結着用ガラス組成物と酸硫化物蛍光体とが化学反応して着色したものであることがわかった。この着色は蛍光体層全体の発光効率を低下させる。すなわち、酸硫化物蛍光体を使用することで目立ち指数を最適値にできる一方で初期全光束が低下するため、照明環境を明るく知覚させる効果が実質的には得られないという課題が明らかになった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蛍光膜の剥離および着色を抑制するとともに、色シフトが改善された蛍光発光デバイスを提供することにある。また、他の目的とするところは、ユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体(Y2O2S:Eu)をはじめとする酸硫化物蛍光体を用いた蛍光発光デバイス製造工程において蛍光膜の発光特性劣化を生じない蛍光発光デバイスを提供するとともに、目立ち指数を向上させ照明環境を明るく知覚させる効果が得られる蛍光発光デバイスを提供することにある。
本発明の蛍光発光デバイスは、蛍光体結着用ガラス組成物と蛍光体とを備え、前記蛍光体結着用ガラス組成物は、xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXOで表され、Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%、5≦m≦60mol%、a≦40mol%、b≦10mol%、c≦10mol%かつa+b+c≧10mol%である。
前記蛍光体は、酸硫化物蛍光体であることが好ましい。
ある好適な実施形態において、前記yとmとが、0≦y<15mol%且つ6.5≦m≦60mol%である。
前記酸硫化物蛍光体がユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体であることが好ましい。
ある好適な実施形態において、Tb3+をさらに含有し、1≦Tb3+≦4mol%である。
本発明の蛍光ランプは、蛍光体結着用ガラス組成物と蛍光体とを備え、前記蛍光体結着用ガラス組成物は、xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXOで表され、Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%、5≦m≦60mol%、a≦40mol%、b≦10mol%、c≦10mol%かつa+b+c≧10mol%であり、前記蛍光体は、酸硫化物蛍光体であり、放電路が非直線状である。放電路が非直線状である蛍光ランプは、蛍光ランプの蛍光管が丸管、U字管、スパイラル、ブリッジ部を有する管、コの字管等であるものであり、蛍光体と蛍光体結着剤とを蛍光管内面に塗布した後に、蛍光管を加熱して屈曲や溶接を行った蛍光ランプのことである。
ある好適な実施形態において、前記yとmとが、0≦y<15mol%且つ6.5≦m≦60mol%である。
前記酸硫化物蛍光体がユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体であることが好ましい。
本発明のガラス組成物は、xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXOで表され、Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%、5≦m≦60mol%、a≦40mol%、b≦10mol%、c≦10mol%かつa+b+c≧10mol%である。
以上のように、本発明の蛍光発光デバイスは、xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXOで表され、Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%および5≦m≦60mol%である蛍光体結着用ガラス組成物を有することによって、蛍光体膜の蛍光管からの剥離を抑制し、発光デバイス製造工程における蛍光体結着用ガラス組成物の変色および色シフトを抑制し、蛍光発光デバイスの初期光束を改善する効果が得られる。
一般に、蛍光ランプの製造工程には、およそ400℃から550℃の温度を必要とするベーキングのほか、蛍光ランプに一般に用いられているソーダガラスの軟化点以上の温度(700℃以上)が必要な封止、接合、および管曲げなどの熱工程がある。ベーキング工程は、増粘剤を分解・燃焼させて除去する工程である。蛍光体結着用ガラス組成物のガラス転移点が550℃未満であると、この蛍光体結着用ガラス組成物がベーキング工程において軟化するため、増粘剤を完全に分解・燃焼して除去することができず、蛍光ランプの光束や光束維持率に悪影響を及ぼす。一方、蛍光体結着用ガラス組成物のガラス転移点が700℃以上であると、管曲げなどのガラス加工工程においてもこの蛍光体結着用ガラス組成物が軟化しないため、蛍光体の粒子どうし、また蛍光体の粒子とガラスバルブとを結着する効果がなく、ガラス加工時に蛍光膜の剥離が生じる。
これらのことから、本発明の実施形態の蛍光体結着用ガラス組成物のガラス転移点は550〜700℃の温度範囲にあることが好ましい。xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXOで表され、Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%および5≦m≦60mol%である蛍光体結着用ガラス組成物であれば、上記のような温度範囲のガラス転移点を有しながら、安定な非晶質となる。なお、ガラス組成範囲を上記のように限定する理由については、後述の実施形態において詳細に説明する。
また、高温の不活性ガス中で生じる酸硫化物蛍光体と蛍光体結着用ガラス組成物との混合物の変色は、蛍光体成分と蛍光体結着用ガラス組成物との固溶反応によって生じる。一般に酸硫化物蛍光体は、蛍光ランプに用いられる酸化物蛍光体と比較して熱分解温度が低いので、酸硫化物蛍光体のほうが酸化物蛍光体よりも構成成分の蛍光体結着用ガラス組成物への固溶およびそれに続く反応が生じやすい。発明者らは様々な種類の低融点ガラスの試作・評価実験をもとに、前記固溶反応によるガラス組成物の着色が生じない組成を見出した。このため、本発明の実施形態における蛍光体結着用ガラス組成物の組成は、蛍光体として酸硫化物蛍光体を使用する場合に特に有効である。更に酸硫化物が、特に、ユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体である場合には、蛍光体結着用ガラス組成物の変色を防止した蛍光ランプの光束改善と同時に、目立ち指数を改善した照明光が期待できる。
本発明の実施形態におけるガラス組成物の組成範囲は、以下の3項目(安定性、ガラス転移点、変色試験)により判定を行なった。
1. (安定性) 本発明の蛍光体結着用ガラス組成物を作製するには、原料となる酸化物や1000℃以上の熱処理によって酸化物となる炭酸塩、蓚酸塩、水酸化物等を目標の組成となるような化学量論比で混合し、それらを白金坩堝等の耐熱性容器に入れて、原料が十分に溶融する温度(通常は、1000〜1500℃)で加熱溶融させた後、ツインローラー等を用いて急冷する。この際、ガラス状態(非晶質)が安定な組成であれば、完全に透明な組成物が得られるが、ガラス状態が不安定な組成であれば、一部、失透した組成物が得られる。全くガラス化しない組成では、完全に失透し、結晶化した組成物が得られる。表1から表11においては、安定性として、完全な非晶質のものを「○」、一部失透したものを「△」、全くガラス化しなかったものを「×」で表記してある。
2.(ガラス転移点) ガラス組成物のガラス転移点(Tg)の測定は、アルミナを参照試料として、ガラス組成物試料を昇温速度毎分10.0℃の示差熱分析法を用いて行なった。すでに述べたとおり、蛍光体ランプの製造工程上、蛍光体結着用ガラス組成物のガラス転移点は550〜700℃が好ましい。
3.(変色試験) ガラス組成物の変色試験として、ユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体に対して蛍光体結着用ガラス組成物を重量割合で5%混合し、窒素雰囲気下で800℃、5分間加熱したものの254nm紫外線励起による輝度測定を行なった。変色試験結果の値は、参照試料としてガラス組成物の代わりにアルミナを混合し、同処理を行なったものの輝度を100とした場合の相対輝度値である。蛍光体結着用ガラス組成物の変色度合いが大きいほど、蛍光体の発光が蛍光体結着用ガラス組成物に吸収されるため、上記の値は小さくなる。なお、95以上であれば、蛍光ランプの光束低下を防ぐ効果が十分あると判定した。また、相対輝度値が95よりも小さくても、90以上であれば実用上問題はない。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、表1〜11における各成分の組成の単位は、mol%である。
(実施形態1)
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるB2O3含有量の効果について以下に説明する。表1に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例1〜3および比較例1、2の組成および評価結果を示す。
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるB2O3含有量の効果について以下に説明する。表1に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例1〜3および比較例1、2の組成および評価結果を示す。
なお、実施例1の蛍光体結着用ガラス組成物は、モル百分率で、SiO2が30%,ZnOが20%、Al2O3が5%、CaOが20%、BaOが25%となるように、出発原料としてSiO2、ZnO、Al(OH)3、CaCO3およびBaCO3をそれぞれ秤量し、乳鉢で十分混合した後、白金坩堝に入れ、1500℃で80分間加熱溶融させ、ツインローラーに流し出すことで急冷した。得られた組成物は、完全に非晶質のガラスであった。これを乳鉢での粗粉砕、ボールミルでの粉砕、及び篩い分けにより約1μm程度の粒径とした。
上記の操作で得られた実施例1のガラス転移点は683℃であり、蛍光ランプに用いるガラス組成物として適切な温度範囲内にある。また変色試験の数値は96であり、蛍光ランプの光束低下を十分に防ぐことができる。
以下、後述の実施例及び比較例のガラス組成物の作製方法は、上記と同様にして行った。すなわち、所望の組成となるように酸化物、水酸化物、炭酸塩の各原料を秤量、混合し、1000〜1500℃で溶融後、急冷することによりガラス組成物を作製し、粉砕、篩い分けした。なお、本発明における蛍光体結着用ガラス組成物の作製方法は上記の方法に限るものではない。例えば、共沈法やゾル−ゲル法などの湿式法を用いても所望の組成物を得ることができる。
表1から明らかなように、実施例2、3のガラス転移点は、いずれも蛍光ランプの製造工程上適切な温度範囲にあり、また変色試験の値も95を超えており、蛍光体結着用ガラス組成物として有効である。
比較例2は、一般に蛍光ランプに用いられているBaO・CaO・B2O3ガラス組成物である。比較例1および比較例2のガラス転移点は、それぞれ561℃と597℃であり、どちらも蛍光ランプに用いるガラス組成物として適切な温度範囲内にある。しかしながら、比較例1および比較例2の変色試験の数値はそれぞれ80及び64であった。すなわち、酸硫化物蛍光体を使用した蛍光ランプの蛍光体結着用ガラス組成物として比較例1あるいは比較例2を用いた場合、蛍光体膜に変色が生じ、蛍光ランプの光束が低下する。
従来から蛍光体結着用ガラス組成物としては、ランプ製造における熱処理工程でガラスを十分軟化させるために、低融点化の効果を有するB2O3を多量に含有する組成が選択されてきた。しかしながら、実施例1〜3と、比較例1および比較例2とを比べると、蛍光ランプ製造工程におけるガラス組成物の変色を押さえるためには、含有するB2O3のモル百分率を少なくとも40%未満にする必要があるといえる。
さらに詳細にB2O3の添加量に関して、酸硫化物蛍光体を使用した蛍光ランプの変色について実験的に検討した。この実験として合成した本実施形態の蛍光体結着用ガラス組成物の組成、安定性、酸硫化イットリウム蛍光体とともに加熱した場合の変色の程度を表2に示す。なお、本実施形態の実施例は実施例4〜6であり、比較のための参考を参考例1として示している。
表2から、B2O3が15mol%未満であると変色試験値を確実に95以上とすることができる(他の実施例も参照)。したがって、B2O3含有量は15mol%未満が好ましい。
(実施形態2)
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるSiO2含有量の効果について以下に説明する。表3に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例7〜9および比較例3の組成および評価結果を示す。
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるSiO2含有量の効果について以下に説明する。表3に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例7〜9および比較例3の組成および評価結果を示す。
表3から明らかなように、実施例7〜9のガラス転移点は、どれも蛍光ランプ製造工程における適切な温度範囲にあり、また変色試験の値も95を超えており、蛍光体結着用ガラス組成物として有効である。
比較例3のガラス転移点は739℃であり、管曲げなどのガラス加工工程においても軟化せず、蛍光体結着用ガラス組成物として有効ではない。
SiO2はガラス形成酸化物であり、安定なガラス組成を得るためには含有することがより好ましい成分であるが、ガラス転移点や軟化点などの熱的物性温度を上昇させる働きがあるため、これを抑制するためには含有量を制限することが好ましい。実施例7〜9と比較例3とを比べると、ガラス転移点が蛍光ランプの製造工程上適切な温度範囲にあるためには、ガラス組成物中に含有されるSiO2は、70mol%以下とする必要があるといえる。
(実施形態3)
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるSiO2とB2O3の合計含有量の効果について以下に説明する。表4に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例10〜12および比較例4、5の組成および評価結果を示す。
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるSiO2とB2O3の合計含有量の効果について以下に説明する。表4に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例10〜12および比較例4、5の組成および評価結果を示す。
表4から明らかなように、実施例10〜12のガラス転移点は、どれも蛍光ランプの製造工程上適切な温度範囲にあり、また変色試験の値も95を超えており、蛍光体結着用ガラス組成物として有効である。
比較例4および比較例5いずれの組成も急冷後、失透し結晶状態となった。結晶状態では軟化がほとんど起こらないため、比較例4あるいは比較例5を蛍光体結着用ガラス組成物として用いると蛍光ランプにおいて蛍光膜の剥離が生じる可能性がある。
したがって、ガラス組成物が失透したり、結晶化したりしないようにするためには、SiO2またはB2O3のいずれか少なくとも一方を必須成分として含むことが好ましい。実施例10〜12と、比較例4及び比較例5とを比べると、安定に非晶質のガラス組成物を得るためには、ガラス組成物中に含有されるSiO2とB2O3の合計が20mol%以上である必要があり、より好ましくは25mol%以上がよいといえる。
(実施形態4)
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるZnO含有量の効果について以下に説明する。表5に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例13〜16および比較例6の組成および評価結果を示す。
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるZnO含有量の効果について以下に説明する。表5に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例13〜16および比較例6の組成および評価結果を示す。
表5から明らかなように、実施例13〜16のガラス転移点は、いずれも蛍光ランプの製造工程上適切な温度範囲にあり、また変色試験の値も95を超えており、蛍光体結着用ガラス組成物として有効である。
比較例6は、急冷後、完全に失透し結晶状態となった。結晶状態では軟化がほとんど起こらないため、比較例6を蛍光体結着用ガラス組成物として用いた蛍光ランプにおいて蛍光膜の剥離が生じる可能性がある。
ZnOは、ガラスの低融点化に寄与し、安定な低融点ガラスを得るには含有させることが好ましいが、含有量が多くなり過ぎると安定な非晶質が得られない。実施例13〜16と、比較例6とを比べると、安定に非晶質のガラス組成物を得るためには、ガラス組成物中に含有されるZnO量は40mol%以下である必要があり、より好ましくは、30mol%以下がよいといえる。
(実施形態5)
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるMgO含有量の効果について以下に説明する。表6に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例17〜19および比較例8の組成および評価結果を示す。
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるMgO含有量の効果について以下に説明する。表6に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例17〜19および比較例8の組成および評価結果を示す。
表6から明らかなように、実施例17〜19のガラス転移点は、いずれも蛍光ランプの製造工程上適切な温度範囲にあり、また変色試験の値も95を超えており、蛍光体結着用ガラス組成物として有効である。
比較例8は、急冷後、完全に失透し結晶状態となった。結晶状態では軟化がほとんど起こらないため、比較例8を蛍光体結着用ガラス組成物として用いた蛍光ランプにおいて蛍光膜の剥離が生じる可能性がある。
MgOは、SiO2やB2O3を含むガラス組成においてガラス化を助ける働きがあるが、少量に抑制しないと失透の原因となる。実施例17〜19と、比較例8とを比べると安定に非晶質のガラス組成物を得るためには、ガラス組成物中に含有されるMgO量は10mol%以下である必要があり、より好ましくは、7mol%以下がよいといえる。
また、ZnO、Al2O3、MgOは、B2O3のかわりにガラスの低融点化に寄与し、安定な低融点ガラスを得るための成分である。このため、B2O3の含有量が少ないほどZnO、Al2O3、MgOの含有量を多くする必要がある。図1に示されているように、B2O3、ZnO、Al2O3、MgOの含有量の和を10mol%以上とすることにより,低融点かつ安定なガラス組成物を得ることができる。
(実施形態6)
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるCaO、SrO、BaO含有量の効果について以下に説明する。表7および表8に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例20〜30および比較例9〜20の組成および評価結果を示す。
本発明の蛍光体結着用ガラス組成物におけるCaO、SrO、BaO含有量の効果について以下に説明する。表7および表8に蛍光体結着用ガラス組成物の実施例20〜30および比較例9〜20の組成および評価結果を示す。
表7から明らかなように、実施例20〜30のガラス転移点は、いずれも蛍光ランプの製造工程上適切な温度範囲にあり、また変色試験の値も95を超えており、蛍光体結着用ガラス組成物として有効である。
また、表8から明らかなように、比較例9〜20のいずれの組成においても急冷後、完全に失透し結晶状態となった。結晶状態では軟化がほとんど起こらないため、比較例9〜20を蛍光体結着用ガラス組成物として用いた蛍光ランプにおいて蛍光膜の剥離が生じる可能性がある。
CaO、SrO、BaOは、SiO2やB2O3を含むガラス組成においてガラス化を助ける効果があり、さらにSrO、BaOは低融点化を助ける働きを有しているため、いずれか少なくとも一種を必須成分として含有することが好ましい。しかしながら、これらの含有量が過剰になると安定な非晶質が得られなくなる。実施例17〜19および20〜30と、比較例9〜20とを比べると、安定に非晶質のガラス組成物を得るためには、ガラス組成物中に、CaO,SrO,BaOの群から選択される少なくとも一つの合計が6.5mol%以上60mol%以下含有される必要がある。
実施形態1〜6の蛍光体結着用ガラス組成物は、紫外線に対してルミネセンスを有しない。このため、これらの実施形態の蛍光体結着用ガラス組成物を蛍光ランプ用結着剤とした蛍光膜を構成する場合、蛍光膜は蛍光ランプ用結着剤の含有量分だけ非発光物質を含んでいることになる。本願の発明者らは、蛍光ランプの発光効率を向上させるために、蛍光体だけでなく蛍光ランプ用結着剤をも発光させることを目論んだ。そこでこれらの実施形態の蛍光体結着用ガラス組成物に対して、発光中心として知られているランタノイドをはじめとした様々な元素を添加したガラスを試作し、ルミネセンスを測定する実験を実施した。その結果、サマリウムもしくはユーロピウムを添加することにより赤色発光が、またテルビウム(Tb3+)を添加することにより緑色発光が得られることがわかった。蛍光ランプにおいて発光効率を向上させるには緑色発光を付加することが有効であるため、以下、テルビウムの含有量とルミネセンス強度との関係を定量的に求めた。
テルビウムを添加したガラスサンプルは、実施形態1〜6の蛍光体結着用ガラス組成物の原料となる酸化物や1000℃以上の熱処理によって酸化物となる炭酸塩、蓚酸塩、水酸化物等を目標の組成となるような化学量論比で混合し、さらにテルビウムの酸化物を混合して、 それらをアルミナ坩堝等の耐熱容器に入れて、原料が十分に溶融する温度(1200〜1400℃)で加熱・溶融させた後、冷却して作製した。
環形蛍光ランプやU字管、ブリッジ接合部を有する管等の製造工程におけるベーキングや管曲げ、接合といった熱工程に対して、蛍光ランプ用結着剤の挙動を制御するパラメータの1つとしてガラス転移温度がある。本発明における蛍光体結着用ガラス組成物において、ガラス転移温度は主としてB2O3含有量で決定される。厳密にいえば、実施形態1〜6における蛍光体結着用ガラス組成物に対して、テルビウムを添加することによりガラス転移温度は変化する。ただし、これらの実施形態における蛍光体結着用ガラス組成物の光束を実質的にアップさせる範囲のテルビウム添加量では、B2O3以外の構成元素の場合と同様にガラス転移温度は実用上、大きな変化はない。
テルビウム添加による効果を調べるサンプルとした、本実施形態における蛍光体結着用ガラス組成物でB2O3含有量の異なる組成を表9に示す。実施例31は、B2O3含有量がゼロの組成であり、これは実施例1そのままである。B2O3含有量が2.5mol%および5mol%の組成を以下、それぞれ実施例32および実施例33と称する。
実施例31、実施例32、および実施例33それぞれに対して、テルビウム添加量を様々に変えたガラス組成物を合成した。検討した範囲におけるテルビウム(Tb3+)の添加量において、ガラス組成物はすべて完全な非晶質であった。これらのテルビウム(Tb3+)添加したガラス組成物サンプルに対して、254nmを含む200〜400nmの紫外線励起による発光の輝度とテルビウム付活リン酸ランタン蛍光体の発光の輝度との相対値を測定した。測定結果を図2に示す。また、蛍光体の発光強度データをもとにした計算解析により、本実施形態における蛍光体結着用ガラス組成物を三波長域発光形昼光色蛍光ランプの結着剤として用いた場合、従来の結着剤を使用した場合と比べて、前記輝度相対値が20%以上で有意な光束アップとなり、前記輝度相対値が40%以上であれば実用上さらに望ましい光束アップを見込むことができることを確認した。図2から、実施例31について、輝度相対値が20%以上であったテルビウム(Tb3+)含有量の範囲は1.0mol%以上4.0mol%以下であった。実施例32について、輝度相対値が20%以上であったテルビウム(Tb3+)含有量の範囲は1.0mol%以上20mol%以下であった。実施例33について、輝度相対値が20%以上であったテルビウム(Tb3+)含有量の範囲は1.0%mol以上12mol%以下であった。すなわち光束アップ率は、本実施形態における蛍光体結着用ガラス組成物の組成に依存するが、輝度相対値20%以上とすることができるのはテルビウム(Tb3+)の含有量が20mol%以下の範囲である。望ましくは、輝度相対値が40%以上の範囲であって、この場合のテルビウム(Tb3+)の含有量は1.0mol%以上4.0mol%以下である。
(実施形態7)
種々検討したガラス組成物と赤色蛍光体としてユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体を用いた蛍光ランプの実施の形態について以下に説明する。
種々検討したガラス組成物と赤色蛍光体としてユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体を用いた蛍光ランプの実施の形態について以下に説明する。
ユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体と、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体(以下、青色蛍光体)と、セリウム・テルビウム共付活りん酸ランタン蛍光体(以下、緑色蛍光体)と、実施例1の蛍光体結着用ガラス組成物を蛍光体の総重量に対して3%含むスラリーをソーダガラス管に塗布し、乾燥およびベーキングによって蛍光体層を形成した後に、窒素をガラス管内に封入した状態で加熱して前記ガラス管を屈曲させることにより、相関色温度7200K、DUV=−3の30W環形蛍光ランプA(以下、蛍光ランプA)を作製した。
同様にして、ユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体、青色蛍光体および緑色蛍光体とそれぞれ実施例2、3のガラス組成物を用いて、それぞれ30W環形蛍光ランプB、C(以下、蛍光ランプB、C)を作製した。
また、ユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体、青色蛍光体および緑色蛍光体とと比較例1および2のガラス組成物を用いて、30W環形蛍光ランプD、E(以下、蛍光ランプD、E)を作製した。
また、赤色蛍光体としてユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体の代わりに、一般に蛍光ランプに用いられているユーロピウム付活イットリウム酸化物蛍光体を用い、蛍光体結着用ガラス組成物としては、比較例2に示すような、一般に用いられているBaO・CaO・B2O3ガラス組成物を用いて30W環形蛍光ランプF(以下、蛍光ランプF)を作製した。
蛍光ランプA〜Eの初期点灯時の全光束および目立ち指数を表10に示す。なお、全光束は、蛍光ランプFを基準とした相対値で表している。
表10から、蛍光ランプA〜Eの初期全光束は、ガラス組成物中のB2O3含有量に依存しており、B2O3含有量が多いほど全光束が低下している。これは実施形態1で述べた本発明の効果により、ランプ製造工程におけるガラス組成物の変色が抑制できたためである。さらに、蛍光ランプA〜Eの目立ち指数は、蛍光ランプFに対して約1.2倍である。
蛍光ランプA〜Eは、蛍光ランプFと比較すると、それぞれの赤色蛍光体の発光波長が異なるため、初期全光束は低い。しかしながら、照明光源下での有彩色物体群から受ける明るさ感は、目立ち指数と全光束との積に比例する。すなわち蛍光ランプFに比べ、蛍光ランプA〜Cのように目立ち指数の比が約1.2であり、しかも全光束の比が0.85より大きい場合には、明るさ感は約1.05倍以上、さらに全光束が0.90より大きい場合には、明るさ感は約1.10倍以上となり有彩色物体群から受ける明るさ感の向上が実感できる。しかしながら、蛍光ランプDおよびEのように目立ち指数の比が大きくても全光束の比が0.85より小さい場合には,明るさ感は蛍光ランプFよりもかえって小さくなり、有彩色物体群から受ける明るさ感の向上は期待できない。すなわち、酸硫化物である赤色蛍光体を用いて、従来の蛍光ランプよりも高い明るさ感を期待できる三波長域発光形の環形蛍光ランプを構成するには、実施形態1〜6に示された組成範囲の蛍光体結着用ガラス組成物を用いることが必要である。
また、実施形態1〜6に示された組成範囲の蛍光体結着用ガラス組成物は,酸硫化物蛍光体だけでなく一般に使用されている蛍光体と組み合わせた蛍光ランプにおいて,点灯中の色ずれが小さくなるという効果を有する。
図4は、ユーロピウム付活酸化イットリウム、テルビウム付活リン酸ランタン、ユーロピウム付活アルミ酸バリウムを組み合わせた、相関色温度7200K、DUV=−3の環形蛍光ランプについて点灯時間と色シフト(点灯初期からの色度ずれΔx、Δy)との関係を示す図である。黒印(▲、●)は、結着剤としてBaO・CaO・B2O3 という組成を有する低融点ガラス60%と、ピロリン酸カルシウム40%とを混合した従来の結着剤を用いた蛍光ランプ(以下、従来蛍光ランプという)についての特性である。白抜き印(△、○)は、結着剤として実施例3のガラス組成物を用いた蛍光ランプ(以下、実施例蛍光ランプという)についての特性である。
図4に示すように、実施例蛍光ランプは、従来蛍光ランプと比べて、点灯時間に対する色シフトの量は半分以下である。6000時間点灯後の蛍光ランプと100時間点灯後の蛍光ランプとを比べると、実施例蛍光ランプ、従来蛍光ランプともに電気特性および蛍光体の発光特性に違いはなかった。しかしながら、100時間点灯後の蛍光ランプでは外観が白かったが、6000時間点灯後の蛍光ランプでは着色が見られた。この着色は、従来蛍光ランプでは、褐色であり、実施例蛍光ランプでは、薄灰色であった。
図4における色シフト(Δx、Δy)の符号が正であることから、蛍光ランプが発する照明光は赤みが加わる方向に変化する。この変化は、高い相関色温度の蛍光ランプをユーザーが購入しても点灯時間が増加すると低い相関色温度にシフトし、光環境が変化するという問題に繋がる。
ここで、従来蛍光ランプにおける色の変化は赤みが多くなるものであり、実施例蛍光ランプにおける色の変化は赤みの増加が少なく、変化の度合いは無彩色に近い。このことから、色シフトの違いは蛍光ランプの着色の違いによるものであるといえる。これらの着色の原因物質は、水銀であると推定することができる。そして、着色した色の違いは、蛍光ランプのバルブ内に封入された水銀の形態の違いによると考えられる。つまり、水銀単体は黒色であり、酸化第二水銀は赤色であるので、これらの色の違いが蛍光ランプの着色の違いとして現れていると考えられる。即ち、従来蛍光ランプでは、結着剤に含まれる硼酸が水銀を酸化することにより酸化第二水銀が生じ、実施例蛍光ランプでは、結着剤の硼酸含有量が小さいため水銀単体が比較的多く存在すると考えられる。
従って、長期間点灯することによる色シフトを低減するには、生成する酸化第二水銀の量を低減することが有効であり、このためには、結着剤として用いるガラス組成物中の硼酸の含有量を小さくすればよい。ガラス組成物に含有される硼酸による酸化反応の強さは、ガラス組成物単位重量当たりに含まれる硼酸量で決まる。従来の結着剤においては、ガラス組成物単位重量当たりに含まれるB2O3の量は28%である。長期間点灯することによる色シフトを低減するためには、硼酸含有量を28%よりも少なくすればよいと考えられ、具体的には28%の9割に当たる25.2%以下とすれば色シフトの低減効果が十分期待できると判定した。
色シフトの低減効果が期待できる硼酸含有量の上限は、表11の実施例35がそれに該当する。実施例35ではガラス組成物単位重量当たりに含まれるB2O3の量は25%であり、B2O3のモル含有量は30mol%である。ちなみに、図4に示す実施例3では、ガラス組成物単位重量当たりに含まれるB2O3 の量の上限が略等しくなる。この原因は、B2O3が電子を奪う作用、即ち酸化作用があるためである。着色の場合は、Y2O2SのS2-からB2O3が電子を奪い、S2-はS原子となってガラス組成物に拡散するために着色する。一方、色シフトは、長期間点灯中にHgの電子がB2O3 によって奪われてHgが褐色を呈するHg2+となり、これがガラス組成物または蛍光体に付着するため生じるものである。
次に、図5は、ユーロピウム付活酸硫化イットリウム、テルビウム付活リン酸ランタン、ユーロピウム付活アルミン酸バリウムを組み合わせた相関色温度7200K、DUV=−3の環形蛍光ランプについて点灯時間と点灯初期からの色度ずれΔx、Δyとの関係を示す図である。黒印(▲、●)は従来蛍光ランプについての特性、白抜き印(△、○)は実施例蛍光ランプについての特性である。図5から実施例蛍光ランプは従来蛍光ランプと比べて点灯時間に対する色シフトの量は半分以下である。この現象も上記と同様に、実施例3において硼酸の含有量が小さいことによるものである。
以上述べたように、本実施形態のガラス組成物を結着剤として用いた蛍光ランプでは、従来のガラス組成物を結着剤として用いた蛍光ランプよりも、点灯後の色ずれが色度座標にして半分程度になる。
また、蛍光ランプCとEとを比較した図5からわかるように、酸硫化物蛍光体を用いた蛍光ランプでも色ずれが小さい効果は同じである。
なお、実施形態1〜6において、SiO2とB2O3とZnOとAl2O3とMgOとCaOとSrOとBaOとのモル配合百分率の和は100となる組成で説明したが、今まで説明した着色や色シフト低減効果が得られる程度の量(微量)であれば、他の物質、例えばSc2O3、Y2O3、La2O3、他のランタノイド酸化物、ZrO2、TiO2、HfO2などが含まれていてもよい。
(実施形態8)
実施形態7とは異なる組成となるように、様々に組成を変更したガラス組成物と赤色蛍光体としてユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体を用いた蛍光ランプの実施の形態について以下に説明する。
実施形態7とは異なる組成となるように、様々に組成を変更したガラス組成物と赤色蛍光体としてユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体を用いた蛍光ランプの実施の形態について以下に説明する。
本実施形態の蛍光体結着用ガラス組成物の組成を表11に示す。
ここで表11に示された実施例のガラス組成物を蛍光体結着用ガラス組成物として用いて、実施形態7の蛍光ランプAと同様にして蛍光ランプを作製した。これらの中で例として、実施例34のガラス組成物を用いた蛍光ランプXは、初期点灯時の全光束が90%であり、目立ち指数が120であった。また実施例35のガラス組成物を用いた蛍光ランプyは、初期点灯時の全光束が88%であり、目立ち指数が119であった。
図3は、実施形態7の蛍光ランプA〜Eと本実施形態の蛍光ランプXとYとの、初期点灯時の全光束(ランプ全光束相対値)がB2O3含有量によりどのように変化しているかを示す図である。B2O3含有量が30mol%以下であればランプ全光束相対値が88%以上となっている。目立ち指数が約120なので、明るさ感が蛍光ランプFに比べて約1.08倍以上となり、有彩色物体群から受ける明るさ感の向上が実感できる。実施例36〜50についても、B2O3含有量が15mol%以上30mol%以下であって、目立ち指数が約120であるので、同様に明るさ感の向上が実感できる。
そして、本実施形態においても、これらのガラス組成物を結着剤として用いた蛍光ランプでは,従来のガラス組成物を結着剤として用いた蛍光ランプよりも、点灯後の色ずれが色度座標にして半分程度になる。酸硫化物蛍光体を用いた蛍光ランプでも色ずれが小さい効果は同じである。
また表11に示されているように、本実施形態の実施例34〜50の蛍光体結着用ガラス組成物は、十分な安定性を有し、ガラス転移点も蛍光ランプ製造工程における適切な温度範囲にある。また、実施例38,44,46〜50は変色試験の値が95以上であって、光束低下を防止する効果は大きく、その他の実施例についても変色試験の値は90以上であるので、光束低下を防止する効果は実用上十分であると言える。一方比較例7は、ガラス組成物作製の際、急冷すると失透し結晶状態となったため、蛍光体結着用ガラス組成物としては使用できない。
本実施形態の実施例34〜50の蛍光体結着用ガラス組成物を用いた蛍光ランプは、蛍光体結着用ガラス組成物中のSiO2の含有量が0mol%以上70mol%以下であり、B2O3の含有量が15mol%以上30mol%以下であり、SiO2の含有量とB2O3の含有量との和が20mol%以上であり、および、CaO、SrOおよびBaOの含有量の和が5mol%以上60mol%以下であるので、蛍光ランプの製造工程において蛍光体膜の剥離が生じることはなく、蛍光ランプの光束低下を抑制できると共に明るさ感を向上させることができる。
ここで、実施形態3と本実施形態の比較例7とを比較することにより、Al2O3含有量の効果について説明をする。
Al2O3は、ガラス化を促進させる効果があり、含有することが好ましいが、少量に抑制しないと安定なガラス化を妨げてしまう。実施例10〜12と、比較例7とを比べると、安定に非晶質のガラス組成物を得るためには、ガラス組成物中に含有されるAl2O3量は10mol%以下である必要があり、より好ましくは、8mol%以下がよいといえる。
実施形態7および8の蛍光ランプの形状については、ガラス管を屈曲させる工程を有する環形に限らず、直管形、U形、W形などのバルブにも適用でき、いずれの場合もソーダガラスの軟化点を超える熱負荷による酸硫化物蛍光体の発光効率低下を抑制できる。なお、本実施形態においては蛍光発光デバイスとして低圧水銀放電である蛍光ランプを例に説明したが、プラズマディスプレイ、ディスプレイ用蛍光発光管、希ガス放電による蛍光ランプなどに適用しても、使用中にデバイス内の蛍光体膜の色シフトを低減できる。特に酸硫化物蛍光体を用いた場合、製造工程における蛍光体膜の着色を防止できる。また、他の色温度およびDUVの蛍光ランプにおいても、酸硫化物蛍光体を使用できることから同様の目立ち指数改善の効果が期待でき、かつ実施形態1〜8に示された蛍光体結着用ガラス組成物を用いることにより蛍光ランプ製造工程における蛍光膜の発光特性劣化を抑制する効果が期待できるため実用的な全光束が得られる。
また、他の青色蛍光体および緑色蛍光体との組合せによっても同様の目立ち指数の改善およびランプ製造工程における蛍光膜の劣化抑制効果が得られる。例えば、青色蛍光体としてユーロピウム付活ハロリン酸バリウム・カルシウム・ストロンチウム・マグネシウム蛍光体、緑色蛍光体としてセリウム・テルビウム付活アルミン酸マグネシウム蛍光体などを使用することができる。
また、本実施形態における複数の蛍光体の組合せに限らず、実施形態1〜8に示された蛍光体結着用ガラス組成物を含む蛍光ランプおよび蛍光発光デバイスであれば、製造工程における蛍光体膜の劣化や剥離を抑制し、蛍光ランプおよび蛍光発光デバイスの初期全光束および色シフトを改善できる。
以上の実施形態1〜8において説明した蛍光体結着用として用いたガラス組成物はホウ酸含有量が少ないため、近傍の物質に対して酸化作用を及ぼしたり、ガラス組成物内に近傍の物質を取り込んだりして着色してしまうことはない。このため、このガラス組成物の用途は蛍光発光デバイスにおける蛍光体結着用のみに限定されるものではなく、一般に異種ガラス同士やガラスと金属とを接合するガラス組成物としても有効である。例えば蛍光発光デバイスにおいても、蛍光体の結着だけでなく、各種物質を封入した真空容器の封止や電極の接合に用いることにより、容器や封入物質、電極が酸化されることを防止できるため、電気・光特性を長期間維持できる。
以上説明したように、本発明に係る蛍光発光デバイス、蛍光ランプおよびガラス組成物は、蛍光発光デバイス製造時における蛍光体膜の蛍光管からの剥離を抑制し、蛍光発光デバイス製造工程における蛍光体結着用ガラス組成物の変色を抑制し、蛍光発光デバイスの初期光束を改善する効果を有し、種々の形状の蛍光発光デバイス等として有用である。
Claims (9)
- 蛍光体結着用ガラス組成物と蛍光体とを備え、
前記蛍光体結着用ガラス組成物は、
xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXO
で表され、
Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、
5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%、5≦m≦60mol%、a≦40mol%、b≦10mol%、c≦10mol%かつa+b+c≧10mol%である、蛍光発光デバイス。 - 前記蛍光体は、酸硫化物蛍光体である、請求項1に記載の蛍光発光デバイス。
- 前記yとmとは、0≦y<15mol%且つ6.5≦m≦60mol%である、請求項2に記載の蛍光発光デバイス。
- 前記酸硫化物蛍光体がユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体である、請求項2または3に記載の蛍光発光デバイス。
- Tb3+をさらに含有し、1≦Tb3+≦4mol%である、請求項1から4のいずれか一つに記載の蛍光発光デバイス。
- 蛍光体結着用ガラス組成物と蛍光体とを備え、
前記蛍光体結着用ガラス組成物は、
xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXO
で表され、
Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、
5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%、5≦m≦60mol%、a≦40mol%、b≦10mol%、c≦10mol%かつa+b+c≧10mol%であり、
前記蛍光体は、酸硫化物蛍光体であり、
放電路が非直線状である、蛍光ランプ。 - 前記yとmとが、0≦y<15mol%且つ6.5≦m≦60mol%である、請求項6に記載の蛍光ランプ。
- 前記酸硫化物蛍光体がユーロピウム付活イットリウム酸硫化物蛍光体である、請求項6または7に記載の蛍光ランプ。
- xSiO2・yB2O3・aZnO・bAl2O3・cMgO・mXO
で表され、
Xは、Ca、SrおよびBaからなる群から選ばれた少なくとも一つの元素であり、
5≦x≦70mol%、0≦y≦30mol%、x+y≧20mol%、5≦m≦60mol%、a≦40mol%、b≦10mol%、c≦10mol%かつa+b+c≧10mol%である、ガラス組成物。
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