JP2004294308A - 雑固体廃棄物の溶融処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性キャニスタ1に雑固体廃棄物を投入して誘導加熱するにあたり、鉄よりも酸化されやすいSi,Al等の脱酸剤と、硼砂などの粘性低下剤とを導電性キャニスタ1内に投入する。これらは最初から雑固体廃棄物とともに導電性キャニスタ内に投入しても、溶融中に溶湯レベルが上昇したときに投入してもよい。酸化鉄を脱酸剤により還元するので、酸化鉄中の酸素が導電性キャニスタのカーボンと反応して溶湯中でCOガスの気泡が発生することがなくなり、また粘性低下剤が溶湯の粘性を低下させるため、気泡の浮上に伴う溶湯レベルの上昇が抑制される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、原子力発電所などの原子力施設から発生する放射性の雑固体廃棄物の溶融処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特公平3−2440号公報
【0003】原子力発電所などの原子力施設から発生する鉄材、アルミニウム、コンクリート廃材、ガラス繊維などの低濃度の放射性雑固体廃棄物は、従来から溶融炉で溶融して固化処理されている。この目的で使用される溶融炉は、上記の特許文献1に示されるように誘導加熱コイルを備えた溶融炉であり、雑固体廃棄物は誘導加熱が可能な導電性キャニスタ内に投入されて溶融されている。
【0004】ところがキャニスタ内に投入される鉄材の比率が高い場合には、溶融中に液面が盛り上がり、溶湯の一部がオーバーフローしそうになることがあった。その原因は、溶融中に鉄が高温で酸化されて酸化鉄になり、この酸化鉄が導電性キャニスタの材料中に含まれている炭素によって還元され、溶湯中でCOガスが発生するためであると想定される。そしてもし溶湯のオーバーフローが発生すると、微弱な放射性物質を含む固化物が炉内に付着したり、漏出溶湯貯留部の清掃が必要になるなどの問題を引き起こす可能性がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した従来の問題点を解決して、キャニスタ内に投入される鉄材の比率が高い場合にも、溶湯面の盛り上がりによるオーバーフローを防止することができる雑固体廃棄物の溶融処理方法を提供するためになされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するためになされた本発明は、導電性キャニスタに雑固体廃棄物を投入して誘導加熱するにあたり、鉄よりも酸化されやすい脱酸剤と粘性低下剤とを導電性キャニスタ内に投入し、溶湯レベルの上昇を抑制しながら溶融することを特徴とするものである。なお、脱酸剤と粘性低下剤とを最初から雑固体廃棄物とともに導電性キャニスタ内に投入する方法、あるいは脱酸剤と粘性低下剤とを、溶融中に溶湯レベルが上昇したときに導電性キャニスタ内に投入する方法の何れを採用することもできる。また脱酸剤としてSi,Al,Ca,Mnの単体または化合物を使用することができ、粘性低下剤として硼砂を使用することができる。
【0007】本発明によれば、鉄よりも酸化されやすい脱酸剤により酸化鉄を還元してOを溶湯中から除去し、COガスの発生を抑制する。このため気泡の発生量自体を抑制することができる。また本発明では粘性低下剤を用いて溶湯の粘性を低下させるので、気泡の浮上に伴う液面の盛り上がりを小さくすることができる。このため、鉄材の比率が高い場合にも、溶湯のオーバーフローを防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は第1の実施形態における雑固体廃棄物の溶融処理炉の概略的な断面図であり、1は導電性キャニスタであり、その内部に鉄材、アルミニウム、コンクリート、ガラス繊維などの低濃度の放射性雑固体廃棄物が投入され、溶融される。導電性キャニスタ1はアルミナやジルコニアなどの耐熱性に優れたセラミックからなるものであるが、その材質中に導電性を付与するためのカーボンを所定量含有させたものである。
【0009】2は導電性キャニスタ1が載せられる耐火物製の台座であり、図示を略した昇降機構がその下方に設けられている。導電性キャニスタ1は昇降機構により、台座2とともに図示のようにカバー3の内部に持ち上げられる。カバー3の周囲には高周波が通電される誘導加熱コイル4が設置されており、導電性キャニスタ1を1500℃程度の高温に誘導加熱し、その内部の雑固体廃棄物を溶融することは従来と同様である。
【0010】雑固体廃棄物は予め所定量が導電性キャニスタ1の内部に投入された状態で溶融が開始されるが、溶融が進行するにつれて溶湯の液面が低下するので、炉上部の監視カメラ5で液面高さを確認しながら、予め袋詰めされた雑固体廃棄物を投入口6から追加投入する。この実施形態では、雑固体廃棄物中の鉄材の比率が高い場合には、雑固体廃棄物の袋7の中に予め脱酸剤8と粘性低下剤9とを封入しておき、導電性キャニスタ1の内部に同時に投入する。
【0011】脱酸剤8は鉄よりも酸化されやすい物質であり、溶融時に有害ガスを発生することなくスラグ化するものが好ましい。そのような物質は多数存在するが、実際にはコスト面及び入手の容易性の点で、Si,Al,Ca,Mnの単体または化合物を用いることが好ましく、反応性の点から粒状のものが好ましい。なお、放射性ガスの処理に使用されているHEPAフィルタにはアルミニウムが使用されているので、これを使用することもできる。また粘性低下剤9はガラス質の溶湯の粘性を低下させるためのものであり、その代表的なものは硼砂(硼酸ナトリウム)である。
【0012】現在用いられている導電性キャニスタ1の容量からみて、内容物がほとんど金属である場合の最大重量が500kgである。これに基づいて計算すると、脱酸剤8と粘性低下剤9との添加量は、いずれも金属50kgに対してそれぞれ0.1〜2kgであり、導電性キャニスタ1の全体に対してはそれぞれ1〜20kg程度が適当である。量が少なすぎると効果が不十分であり、量が多すぎるとその分だけ雑固体廃棄物の量が減少するため好ましくない。
【0013】上記した実施形態では袋7の中に予め脱酸剤8と粘性低下剤9とを封入し、雑固体廃棄物とともに導電性キャニスタ1内に投入するようにしたが、図2に示す第2の実施形態のように脱酸剤8と粘性低下剤9とを投入するための専用の投入口10を設けておき、監視カメラ5で液面を確認しながら、溶湯レベルが上昇したときに随時これらを投入するようにしてもよい。この場合には過剰の添加を避けることができるが、作業者の判断により投入操作を行う場合には、判断遅れが生じないようにする必要がある。
【0014】このように導電性キャニスタ1の溶湯内に鉄よりも酸化されやすい脱酸剤8を投入すると、酸化鉄が脱酸剤8により還元されて酸素を失うため、従来のように酸化鉄中の酸素が導電性キャニスタ1のカーボンと反応してCOガスを発生することが防止される。このため、発生したCOガスが気泡となって浮上することもなくなり、溶湯面の盛り上がりが防止される。しかもこの脱酸剤8とともの添加される粘性低下剤9が溶湯の粘性を低下させるため、溶湯面の盛り上がりがより確実に防止される。このため、溶湯レベルの上昇に伴うオーバーフローを招くおそれがない。
【0015】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。
原子力発電所から発生する雑固体廃棄物を予め選別し、鉄を主体とする金属、コンクリート、その他に分別した。鉄を主体とする金属は50kg単位で袋詰めしたが、そのときに粒径が5mmの金属アルミニウムと、粒径が1mmの硼砂とをそれぞれ0.5kgずつ同じ袋内に詰めた。なお、コンクリートとその他の廃棄物については、従来通りこれらは入れていない。
【0016】このようにして作成された雑固体廃棄物の袋を通常通りに順次導電性キャニスタ内に投入して1500℃で溶融し、監視カメラで溶湯レベルを観察した。しかし溶湯レベルの盛り上がりは観察されなかった。これに対して脱酸剤、粘性低下剤を全く用いないで通常通りの溶融処理を行った場合には、5〜20cm程度の溶湯レベルの盛り上がりが観察された。
【0017】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の雑固体廃棄物の溶融処理方法によれば、鉄よりも酸化されやすい脱酸剤と粘性低下剤とを導電性キャニスタ内に投入し、酸化鉄を脱酸剤により還元する。このため、酸化鉄中の酸素が導電性キャニスタのカーボンと反応して溶湯中でCOガスの気泡が発生することがなくなる。また粘性低下剤が溶湯の粘性を低下させる。このため、気泡の浮上に伴う溶湯レベルの上昇が抑制され、導電性キャニスタから溶湯がオーバーフローする危険を確実に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態における溶融処理炉の概略的な断面図である。
【図2】第2の実施形態における溶融処理炉の概略的な断面図である。
【符号の説明】
1 導電性キャニスタ、2 耐火物製の台座、3 カバー、4 誘導加熱コイル、5 監視カメラ、6 投入口、7 雑固体廃棄物の袋、8 脱酸剤、9 粘性低下剤、10 投入口
Claims (4)
- 導電性キャニスタに雑固体廃棄物を投入して誘導加熱するにあたり、鉄よりも酸化されやすい脱酸剤と粘性低下剤とを導電性キャニスタ内に投入し、溶湯レベルの上昇を抑制しながら溶融することを特徴とする雑固体廃棄物の溶融処理方法。
- 脱酸剤と粘性低下剤とを、雑固体廃棄物とともに導電性キャニスタ内に投入することを特徴とする請求項1記載の雑固体廃棄物の溶融処理方法。
- 脱酸剤と粘性低下剤とを、溶融中に溶湯レベルが上昇したときに導電性キャニスタ内に投入することを特徴とする請求項1記載の雑固体廃棄物の溶融処理方法。
- 脱酸剤がSi,Al,Ca,Mnの単体または化合物であり、粘性低下剤が硼砂である請求項1記載の雑固体廃棄物の溶融処理方法。
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JP2003088225A JP2004294308A (ja) | 2003-03-27 | 2003-03-27 | 雑固体廃棄物の溶融処理方法 |
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JP2007271492A (ja) * | 2006-03-31 | 2007-10-18 | Chugoku Electric Power Co Inc:The | 溶湯レベル管理方法、および溶湯レベル管理システム |
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